妹「お兄ちゃんのバカっ!またステンレスのボルトなんて使ってからに!」 (22)

兄「ステンボルトの何がいけないんだよ!」

妹「わかってない!お兄ちゃん、解体する人の気持ち全然わかってない!」

兄「なにをぅ!ステンレスは錆びないんだ!鉄ボルトなんて、いざ解体しようとする時には錆びて動かないもんだろ?
だからステンボルトなんだよ!俺ほど解体業者のことを考えてる人間も中々いないぜ!?」

妹「じゃあ何?お兄ちゃんは解体する時、わざわざモンキーやスパナでも使うつもり?」

兄「まさか。俺ならインパクトを使うに決まっている!」

妹「インパクト(笑)。もうね、お兄ちゃんね。全然わかってない。話の根底からして間違ってる」

兄「勿体振りやがって!俺が間違っていると言うなら、何が違うかハッキリ言えばいいだろ!」

妹「そうやってすぐに思考停止して答えを求める……。今だから言うけど私、お兄ちゃんのそういう所、大っ嫌いだった!」

兄「ははは!お前がいかに俺を嫌ったところで
ステンボルトの優位性は揺るがんよ!絶対に!」

妹「ほぉう、ぬかしよってからに!ならばこれを見てもまだその余裕を貫けるかな?」

兄「そ……それは!ガス切断器!!?!?」

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兄「切断機……可燃性ガスと支燃性ガスを吹管内で混合ガスに調節することで鉄を溶断するというあの…!?」

妹「左様。これならば錆びてようが錆びてまいが関係ないわ。ガスでボルトの頭をトばして、後はバールか重機でチョイと小突けば簡単に解体できるの!」

兄「簡単にぃ?それを扱うにはガス溶接技能講習に合格しなければならないぞ!
お前はその条件を果たして満たしているのかい!?」

妹「もちろん先日合格したわ!あの、ガス『溶接』と銘打つ割には実技は『溶断』しかしない講習に合格したわ!」

兄「仕方ないさ。近年じゃあアーク溶接が主流で、ガス溶接なんて滅多に使わない!
それはさておき合格おめでとう」

妹「な、何よ!今更お兄ちゃんぶったっても、もう遅い……遅いんだよォォォー!!!!」

ボヒュゥゥウウウウウー!!!

兄「クッ!吹管に着火しやがった!なんという高火力!これでは迂闊に近づけない!?」

妹「クハハハハハァー!!お兄ちゃんはそこで指を咥えて待っときなよ。さっきお兄ちゃんが取り付けたステンボルトが溶断される所をよォォォー!!!」

兄「待てー!そのボルトはステンレス!鉄じゃない!鉄じゃないんだっ!わかっているのか!」

妹「うるさいうるさい!!それが鉄だろうとステンだろうとアルミだろうと鋳物だろうと、溶断するのが切断器という物よ!!」

兄(確かに。だが、わかっているのか妹よ。
こと鋳物の場合は、もっと大型の切断器で時間をかけてゆっくりと切らないととても溶断できるもんじゃないんだ…)

妹「チッ!中々ボルトが暖まらない。だからステンレスはクソなのよッ!」

兄(そしてステンレス。鉄ならば暖まった所で高圧を吹かし続けていくのが定石だが、ステンレスでは……)

妹「や、やだぁ…!高圧を吹かし続けても、薄皮がペリペリ剥がれてくだけで、芯は残ったまんまだよぉぅ……!」

兄「心配した通りだな。いいか妹よ。高圧は吹かし続けるんじゃない。小まめに断続的に吹かすんだ」

妹「──!?本当だわ!みるみる内にステンが削れていくっ!」




兄「なんとか一本、ボルトを飛ばせたな。やれば出来るじゃないか」

妹「嫌味ね。笑いたければ笑えばいい。助言がないとステンレスひとつまともに溶断出来ない不出来な妹だってね!」

兄「笑わないさ。お前は頑張り屋で、俺の自慢の妹さ」

妹「お兄ちゃん……っ!」

妹「やっぱりステンレスをガスで切るのは、無謀なのかしら……」

兄「そんなことはない。コツさえつかめばボルトくらいならいくらでも早く切れるようになるさ。
でも、まあ。切断器は危険だからね。逆火したら周りを巻き込む大事故にだってなりかねない。
だから今日は、インパクトを使おうか」

妹「ふんっ!散々私が苦労したステンボルトを
、インパクト如きでどうにか出来るとは思えないんだけど?」

兄「論より証拠さ。まあ見てろって」

ギュルルルルゥーーン!

妹「なにィィ!!凄まじい回転力と圧倒的Powerで、みるみるボルトが外れてイクイクイッグゥゥゥウ~~~ッッッ!!?」

兄「ボルトがステンだろうが鉄だろうが関係ない。解体に必要なのはその時その状況で一番ベストな道具をチョイスする判断力さ!」

妹「そしてお兄ちゃんがチョイスしたインパクト。それはまさか……?」

兄「ああ!マキタのインパクトさ!!」

妹「やっぱり!インパクトと言えばマキタ!マキタと言えばインパクト!
マキタと言えば誰もが知ってる工具の王様に他ならぬ!
マキタもお兄ちゃんも、同じくらい私だぁ~っい好きぃ~!!!」

兄「HAHAHAHAHA!照れるぜぁー!」



こうして兄が開発中だった『可燃ゴミを圧縮して鉄と火薬に変換する画期的発想な圧縮炉装置』はボルトが外れて瓦解した。
これによって起こり得た第三次世界大戦は、装置機能の消滅によって回避された事、まだ兄妹もマキタも知らない。


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