モバP「さちはる!」 (15)

・モバマスSS

・遅ればせながらバレンタイン

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晴「……うーっす」

幸子「あぁ晴さん、ってどうしたんですか浮かない顔して。それに今日は手荷物が多いみたいで」

晴「まーな……あのさ幸子、ちょっと相談に乗ってくれねぇ?」

幸子「ボクに? ははーん、さてはいよいよボクからカワイさの何たるかを学びに来たのですね!」

晴「今日、ってかバレンタインの事なんだけど……」

幸子「スルー!? ってそれよりバレンタインの事ですって!?!?」

晴「相変わらずリアクションいいよなー幸子」

幸子「芸人さんではありませんからね! じゃなくって、あの晴さんがバレンタインの事で相談とは……」

晴「何だよ、オレだって結構悩む時期なんだぞ?」

幸子「あ、いえ変な意味ではないんですが……てっきりこういったイベントに興味が無いものかと」

晴「興味は無いっちゃ無かったんだけどよ。で、聞いてもらえるか?」

幸子「もちろん! どんどんボクを頼ってくださいね、カワイイボクがすべてを解決してさしあげますとも」

晴「……ありがとな。早速だけど、1つ質問していい?」

幸子「えぇ、どうぞ」

幸子(とはいえバレンタインの事となれば、ボクに聞きたいことなんて1つしかないですよね。もしかして持ってる荷物の中にPさんへの……)

晴「幸子って今日さ――」

幸子「……」ゴクッ

晴「――チョコ、何個もらった?」

幸子「……うん? そっちですか!!」

晴「そっちって他にどっちがあるんだよ?」

幸子「えぇと、まずどこから確認したらいいんでしょう。それはファンからの贈り物という意味ですか?」

晴「いや、学校とかでの話だけど」

幸子「身近なところでの話でしたか。……え、もしかして晴さん学校でチョコ貰ってきたんです? あげたんじゃなく?」

晴「そうなんだよ聞いてくれよー!」

幸子「わっ、急に食いつきましたね!」

晴「別に甘いもの嫌いじゃねーし、オレだってもらえて悪い気はしないんだぜ? でもさー……」

幸子「? そういえば今日は荷物が多いみたいですけど、まさか」

晴「……もらい物だよ、おかげでサッカーボール持って帰れなかった」

幸子「うわぁ、こんなに?」

晴「まだ教室に半分残ってる」

幸子「半分も!? も、モテモテですねぇ……」

晴「や、そういうんじゃねーと思うぞ? やれ友チョコだとか作り過ぎた余りとか、渡しそびれていらなくなったとか単に味見役とか言ってさー」

幸子「それ、ほとんど口実で晴さん宛てのものが大半だと思いますよ?」

晴「えっ、マジ?」

幸子「本命かどうかまでは分かりませんが、はい」

晴「…………」

幸子「あの……ショックでしたか?」

晴「どうしよう、オレの小遣いじゃ返しきれねーよ……」

幸子「そっちですか!」

晴「そもそも誰からもらったかも覚えてねーんだけど……下の学年のヤツもちらほらいたし」

幸子「ま、まぁお返しまで期待してる方はあまりいないのではないかと。渡せるだけで満足って方も世の中にはたくさんいますよ」

晴「ほんとか!?」

幸子「そこはほら、それこそファンの方々からの贈り物、のような心理といいますか。あれを見てください」

晴「? なんだあのダンボール、あんなのあったっけ」

幸子「あの中には、飛鳥さんの女性ファンの方から贈られてきたチョコが大量に入ってるそうですよ」

晴「マジか! ……あれほんとに全部チョコなのか?」

幸子「それはボクに聞かれても困ります。ただ飛鳥さんはその中でも特に痛チョコをお気に召していたようで」

晴「板チョコ、ってその辺で買えるやつ?」

幸子「板、じゃなくて痛いの痛チョコみたいですよ。Pさんが飛鳥さんらしいって笑ってました」

晴「よくわかんねーけど、やっぱ手作りとかなのか……ん? まさかオレ宛てのなんて来てねーよな、なっ?」

幸子(おそらく結構来てるでしょうけど、今は言わないでおいてあげましょう……)

幸子「話を戻しますけど、晴さんの相談ってその溢れんばかりのチョコをどうしたらいいか、でいいんですよね?」

晴「まーな、それもあるっつーか……うん。ほんとにお返しはしなくてもいいんだよな?」

幸子「破産したいならしてもいいとは思いますが。気になるなら知らない方はさておき、身近な方だけにでも」

晴「そっかー、危うく消しゴムを千切りながら渡して回るとこだったぜ」

幸子「それじゃ仕返しじゃないですか! あぁでもファンの方ならそれすらも喜んでくれそうですね」

晴「なんだそれ!? 自分で言っててどうかと思ったのにアリなのかよ!」

幸子「お返しまで期待してない方なら、その人から何かを返してもらえたという事実だけでも、嬉しいんじゃないですか?」

晴「そういうものなのか? 消しゴムは言いすぎにしてもよー」

幸子「まぁボクなんかはチョコの見返りを期待せずとも、十二分なお返しが貰えるでしょうけどね。とってもカワイイので!」

晴「へー、どんなお返しがもらえるっつーんだ?」

幸子「きっとお仕事ではなくプライベートでボクのファンの方にチョコあげたら、来月には家が建ちますね」

晴「チョコ1つで家が建つのか……なんつー日だよ」

幸子「ボクほどカワイイアイドルから貰えたらそれくらい当然ですよ!」

晴「ふーん、じゃあ幸子は今日どのくらいチョコもらって来たんだ?」

幸子「えっ」

晴「女が女からこんなにチョコもらうのって変じゃないんだろ? 最初に聞いたじゃんか、幸子は何個もらったかって」

幸子「いや、あの、ボクは別に……晴さんや飛鳥さんほど女性ファンが多いわけでもないですし、たぶん」

晴「もらってないのか?」

幸子「…………あんまり?」

晴「やっぱ女が女からこんなにもらうのおかしいんじゃねーかぁ!!」

幸子「わーーすみませんすみません! って、どうしてボクが謝ってるんですか!」

晴「……とりあえず、食うの手伝ってくれよ。痛チョコになっちゃうだろ」

幸子「痛チョコはそういう意味ではないと思いますが……それにボクだって、及ばずながらファンの方から贈られてきてますので」

晴「ぐぅぅ……やっぱ親父と兄貴に手伝ってもらうか。バレンタインなら喜ぶかな」

幸子「そこは晴さんの貰い物としてのチョコをご家族が貰っても、バレンタインとしてはあんまり嬉しくないんじゃないですかね」

晴「あーーめんどくせぇ! どうしたらいいんだ!」

幸子「頑張るしかないんじゃないですか?」

晴「オレ、さすがに幸子ほどは身体張れねーよ……」

幸子「そこまで張ってませんからね!? お仕事に芸人さん張りの無茶振りが増えてきましたけどボクは不服ですからね!?」

晴「はぁ、なんでバレンタインなんて日があるんだろうなー」

幸子「スルーしないでください! ……あの、そもそもバレンタインは晴さんにとっては誰かにチョコを贈る日ではないんですか?」

晴「オレが?」

幸子「てっきりボク、晴さんにはチョコをあげたい人がいて、どうやって贈ればいいかの相談を受けるのかと思いましたよ?」

晴「うっ……」

幸子「違うんですか? あ、興味ないんでしたっけ」

晴「…………」

幸子「晴さん?」

晴「べ、別に……オレからそんなのもらったって、……う、嬉しかねーだろっ!?」

幸子(――ああああ!! ボクとしたことが、なにこの人凄くカワイイとか思ってしまったああああ!!)

晴「ちょ、何をそんなに頭抱えて悶えてるんだ?」

幸子「ふ、ふふふ……いろんな意味での新たなライバルの誕生に処理が追いつきませんでした、もう大丈夫です。ボクはカワイイので」

晴「そうか? ……オレだって似合ってねーことくらいわかってるよ。でも、少しは世話になってるしさ?」

幸子「ん?」

晴「別にオレがやらなくてもアイツは他のヤツからもらえるだろうし、数もらえりゃいいってもんじゃないのはオレもよくわかってる」

幸子「んん?」

晴「まぁでも、日頃の感謝の気持ちってやつを自然と伝えるにはちょうどいい日でもあって……あー、えっと。すまん、上手くまとまんねーちょっと待ってくれ」

幸子「ボクの方もちょっと待ってください――ボクはカワイイ、ボクはカワイイ――はい、大丈夫です」

晴「とにかくだな……たしかに、どうやって渡したらいいかなんてわかんねー」

幸子「晴さん……」

晴「家族には嫌々だけど毎年チ○ルチョコあげられてたのにな……」

幸子「そこはせめてもう少し奮発してあげましょう……」

晴「オレからもらってもとか、笑われるだろうなとか、考えちまうんだよ。慣れねーことはするもんじゃないな」

幸子「……大丈夫ですよ! 晴さんからの大切な贈り物を、似合わないなんて笑ったり邪険にしたりなんてするはずないじゃないですか!」

晴「そう、かな」

幸子「自信を持ってください。こんなにカワ、……カワイイ人から気持ちのこもったチョコを貰えて嬉しくないはずがありません!」

晴「なんか一瞬ためらいがなかったか?」

幸子「きっと来月には、そうですねぇ――犬小屋くらいなら建ちますよ!」

晴「いらねー!! そもそもオレ犬苦手なんだけど!?」

幸子「とにかくですね、そんなに気が引けるならボクも一緒についててあげます! 晴さんもPさんに渡したいんでしょう?」

晴「えっ」

幸子「えっ、って、あれ? 違うんですか?」

晴「……。誰もPに渡したいとは言ってないぞ?」

幸子「」

晴「それより、へー。幸子はなんだかんだ言いながらPに渡すつもりだったんだな。へー……」

幸子「あの、ちょっ、えっ、なんですかこれ、あ、だめです! こっち見ないでください!」

晴「…………くくく、嘘だよ、うそ! やっぱりいいリアクションするよなー幸子」

幸子「? …………ああああ! 勘違いじゃなかったんですね! 酷いですよ、人が真面目に話してたのにー!!」

晴「ごめんごめん、悪かったって! いきなりPの名前出てきて、つい、な。オレだってどーよーしたんだよ!」

幸子「逆ギレしないでくださいよ! ま、まぁ事情は分かりましたから、もう怒ってはないですけど……どうします?」

晴「どうします、って何がだ?」

幸子「その、ボクもPさんに渡したい物がありますし、一緒にいきますか?」

晴「…………ぷっ」

幸子「……今度は何ですか?」

晴「いや、Pが幸子のために来月家を建てるのかと思ったら面白くってな」

幸子「フフーン! ボクにとってPさんは名誉ある最初のボクのファンですからね! 家――までは求めませんが、期待は出来ますよ♪」

晴「オレにとっても最初のサポーター、か。……大事にしてやらないといけないよな?」

幸子「ボクとしてはもっとボクのことを大事に扱ってほしいものですがね、じゃあ今からいきましょうか?」

晴「そうだな、渡せそうなうちに渡しとかねーと。……なぁ、幸子」

幸子「はいはい、今度は何でしょう?」

晴「…………ありがとな。幸子に相談してよかったぜ!」

幸子「……ふふっ。やっぱりいろんな意味でボクのライバルになりそうですね、晴さん?」

幸子「……おや、先客がいらっしゃるみたいですね」

晴「やっぱ他のアイドル連中も用意してんだな」

幸子「ここからでも鼻の下が伸びてるのが丸わかりですねぇ。まったく、ボクというものがありながら」

晴「…………」

幸子「晴さん、どうかしましたか?」

晴「なんだろ……急にあげたくなくなってきた」

幸子「晴さん!?」

晴「見ろよあれ、親父だってあんなにだらしねー顔しなかったぞ」

幸子「そりゃ嫌々ながらチ○ルチョコ渡されたらカワイイ愛娘からといえど複雑な気持ちになりますよ!」

晴「うーっ、でもアレだぜ?」

幸子「気持ちはわからなくもないですが、落ち着きましょう! 日頃の感謝を伝えるのでしょう? 大事にしてあげるんでしたよね?」

晴「わかってるよ! わかってっけど……あー何かモヤモヤする!」



P「…………」

ちひろ「どうされたんですか、プロデューサーさん? そんなところで立ち尽くしちゃって」

P「幸子と晴が来て、貰いました」

ちひろ「へぇ、珍しい組み合わせですね。……で、どうしてそんなの持ってるんですか」

P「そんなの?」

ちひろ「それですよ、その消しゴムを千切ったような」

P「これ? 晴から貰いました」

ちひろ「晴ちゃんが!? プロデューサーさん、晴ちゃんに何かしたんですか?」

P「……家宝にします」

ちひろ「プロデューサーさん!?」







その後、幸子に諭されながら戻ってきた晴からチョコを貰えたPは無事、天に召されていきましたとさ


終わり

キャラバン晴ちんスタラン15&特訓前まで集め切れたので書きました つらかった

晴ちんがモバマス出たばかりの頃にこの2人でSS書いたことありましたが、やっぱり書いてて楽しい組み合わせですね


それではここまでお読みくださりありがとうございました

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