北条加蓮「さて、ここに奈緒のチョコがある訳だけど……渋谷君」 渋谷凛「はい」 (15)


加蓮「改めて状況の説明を願えるかな」

凛「はい。現在は2月15日の夜。バレンタインデーの終焉から約20時間が経過しました」

加蓮「ふむ……これは?」

凛「神谷奈緒ちゃんが手作りしたバレンタイン・チョコレートです」

加蓮「可愛らしい包みだね」

凛「はい。作り手の性格が如実に表れています」

奈緒「なぁ」



加蓮「ん?」

奈緒「帰っていいか?」

凛「許すと思う?」

奈緒「だよな」

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凛「それで、バレンタインデーはとっくに終了した訳だけど」

奈緒「ああ」

加蓮「何で奈緒のチョコがこの場にあるのかなー?」

奈緒「……渡さなかったから」

凛「三人一緒に作って、三人一緒に渡そうとしてたよね」

加蓮「うん。だから私も凛もチョコは持ってないんだけど」

凛「奈緒はどうして持ってるのかな」

奈緒「…………渡さなかったから」

凛「どうして渡さなかったの?」

奈緒「いや、なんか……急に……恥ずかしくなった、つーか」

加蓮「やーい恋する乙女」

奈緒「やかましい」


凛「いやびっくりしたよ。あの場でまさかのガン逃げだもん」

加蓮「Pさんめちゃくちゃ落ち込んでたよ」

奈緒「……本当かよ」

加蓮「私がウソついた事ある?」

奈緒「あ。そういや加蓮お前先週の日曜に服屋で」

加蓮「まぁそれはそれとして」

奈緒「おい」

凛「というかさ、今からでも渡せばいいじゃん」

奈緒「……」

加蓮「ちょっと遅れるくらい可愛いもんでしょ」

奈緒「……正直な所さぁ」

加蓮「ん?」

奈緒「今さらになってチョコ渡されたら……どう思うかな、Pさん」


加蓮「うーん……」

凛「……そうだね」

奈緒「やっぱ、あんまり良い気は……」



凛「昨日は恥ずかしくてつい逃げ出しちゃったけど」

加蓮「やっぱり、あなたにだけは嘘をつきたくなくて」

凛「どうしても我慢できずに、チョコを渡したかったんだと思われて」

加蓮「めちゃくちゃキュンとされると思う」



奈緒「やっぱ帰っていい?」

加蓮「許すと思う?」

奈緒「だよなぁ」


奈緒「……逆に訊くけどさぁ」

凛「うん」

奈緒「その、アレだ。二人が渡したのも……本命、チョコ……だろ?」

加蓮「そりゃね」

凛「当然」

奈緒「何でそんなほいっと渡せるんだよ……」

加蓮「そりゃあ、自信あるし?」

凛「ね」

奈緒「……」

凛「奈緒は自信、ないの?」

奈緒「そりゃ……昔より少しはついたけど……それでも二人みたいに可愛くはないし……」



凛「え?」

奈緒「ん?」

加蓮「え?」


奈緒「いや、だからあたしは……二人みたく」

凛「自信って、チョコの話だけど」



奈緒「……」

凛「……」

加蓮「……」



奈緒「穴掘って埋まりたい」

加蓮「奈緒はもっと自信持っていいと思うよ」

凛「うん。今かなりキュンときた」

奈緒「うるさい」

加蓮「というか、奈緒の本命チョコとか私が欲しいくらいだし」

凛「同じく」

奈緒「……じゃあ、お前らにやるって言ったらどうするんだ」



凛「いや、プロデューサーにけしかけさせるけどね。面白いし」

加蓮「奈緒かわいい……」

奈緒「面白くない。あと加蓮は日本語喋って」


P「……ん? 何だ三人とも、こんな遅くまで事務所に」



奈緒「帰る!」

加蓮「止める!!」

凛「けしかける!!!」

奈緒「いつもいつも何なんだよその連携は!」

P「とりあえず落ち着いてくれ」



加蓮「という訳でほら、奈緒。棚からモバコインだよ」

凛「据え物斬らぬは女の恥だよ」

奈緒「……あぁもう! そっ、の……Pさんっ!!」

P「お、おう?」

奈緒「こ、これっ……あげるっ! 遅れてごめんっ!」


P「……」

奈緒「……」

凛「……」

加蓮「……」

P「……」

奈緒「……な、なんか言えよ」

P「……奈緒」

奈緒「……なんだよ」

P「正直……正直な」

奈緒「……」




P「めちゃくちゃキュンときた」

加蓮「いぇーい」

凛「へーい」

奈緒「だから何なんだよその連携は」


おしまい。

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