【ガルパン】優花里「不肖・秋山優花里の戦車模型講座!!」 (94)

このお話は、みんな大好き秋山殿が西住殿を巻き添えにして戦車プラモデルを作るというお話です。

キャラ崩壊についてはいつも通り。

のんべんだらりとダラダラ書くのもいつも通り。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1518533109


テンテン テ テテッテテンテン

テンテッテテ テテンテ チーン

ポッピッポー ポポピッピップッペッヒョロロ...


優花里「戦車好きの皆さんこんにちは! 普通2科2年C組、秋山優花里ですっ!」

優花里「女子高生と言ったら戦車道! 戦車道といったら戦車!」

優花里「そして戦車といったら……そう! プラモデルですよねっ!」

優花里「…というわけで、今回は戦車のプラモデルを作ってみようと思いますっ!」

優花里「ですが、皆さんの中には『プラモデルなんて初めて…』っていう方もいらっしゃるかと思います」

優花里「でも大丈夫です! 私、秋山優花里と一緒に初めての戦車プラモデルを作っていきましょーう!!」ビシッ




みほ「…どうして優花里さんがここにいるのかな」




優花里「これはこれは西住殿! 奇遇ですねっ!」

みほ「奇遇も何もここ私の部屋なんだけど…」

優花里「えへへ。お邪魔しちゃいましたー」

みほ「…おかしいよね。ちゃんとカギ閉めて出かけたはずなのに」

優花里「え?」

みほ「え?」

優花里「…」

みほ「…」

優花里「今から戦車プラモデルを作りますので、西住殿も是非!」

みほ「見事に話そらしたね…」



優花里「まぁまぁ西住殿、気を取り直して一緒に戦車プラモデルを作りましょう!」

みほ「戦車プラモデル?」

優花里「西住殿はプラモデルってご存知ですか?」

みほ「えっと、プラスチックの部品を組み立てて車とか船とかロボット作る…趣味? だよね?」

優花里「はい! その通りですっ!」

みほ「私はやったことないけど、優花里さんの家にはいくつかあったよね?」

優花里「ええ! それはもう作るのが大好きなんですっ! どれくらい好きかというと、西住殿の次くらいに」

みほ「順位が色々おかしいと思うんだ」



優花里「…さて、それではまず今回作る戦車プラモについてご紹介します!」

優花里「今回作る戦車は………」


まほ「ティーガーだ!」

ダージリン「チャーチルこそ、プラモデルで再現する価値のある戦車でしてよ」

ケイ「私はM4シャーマンがBESTだと思うなー☆」

西「様々な条件を鑑みましたが、ここはやはり"チハたん"こと九七式中戦車が良いかと…!」

アンチョビ「私はP40がいいと思うぞ! IV号戦車と似通ってるところがあるから親しみやすいハズだ」

カチューシャ「ミホーシャはそんなショボイ戦車つくんないわよ! カーベーたんこそピッタリなんだから!!」

ミカ「おや、冷蔵庫にマカロンとココアが入っているね? 私はこれにするよ」


ワイワイ ガヤガヤ

アーダコーダソーダドーラ

ドタバタバンバン


みほ「」アゼン

優花里「あはは…。プラモを作るって言ったらいつもの皆さんもついて来ちゃいました…」テヘヘ



まほ「みほ!」

みほ「ふゃいっ!?」ビクッ

まほ「大洗の隊長であるお前に問おう。戦車の模型を作るとした場合、己が一度は乗ったことのある戦車、つまり"ティーガー"を選ぶのが妥当ではないだろうか?」

みほ「えっ…あ…う、うん…」

ケイ「ノンノン。過去に拘ってないで新しいことに挑戦すべきよ! 生産性が高くて、誰でも簡単に扱える"M4 シャーマン"だって負けちゃいないからねミホ!」

みほ「え、あ、はい…そ、そうですよね……?」


カチューシャ「ふん。バランス型なんて言ってみれば特徴ナシじゃない! 外観も性能も特徴が多いカーベーたんが一番よミホーシャっ!」

みほ「あ…あはは…」

ダージリン「投入数が限定される戦車道では数より質が物を言いますわ」

ダージリン「その点"チャーチル"は鎧のような重装甲。高い走破能力はサラブレッドの如く。同じ淑女としての志を持つみほさんにピッタリです」

みほ「た…確かに…」


アンチョビ「"P40"だって負けちゃいないぞ! どっかの誰かさんが壊したからプラモよりウチにあるやつを組み立てて欲しいくらいだ!」

みほ「…じ、自動車部の皆さんに頼んでみます…」

西「西住さん! 私もあなたも日本人。他国のではなく、国産戦車"九七式中戦車"を作るべきと提言致しますぞっ!」

みほ「う、うーん…ここにいる人は全員日本人だと思います…たぶん」

ミカ「おや、雪見だいふくもあるんだね。私にピッタリだからこれも頂くとするよ」モフモフ

みほ「人の家の冷蔵庫勝手に開けないで下さい」パタン




優花里「見事に各校で意見がバラバラで全くまとまりがありません。よくこんな方々が集まって大学選抜チームに勝てたものだと今は不思議に思います」

みほ「今回はじめて優花里さんに同意できたよ…」ゲッソリ

優花里「…そんなことより、実を言うと作る戦車プラモはもう決まってるんですよね」

隊長たち「!!」

優花里「それではっ! 今回作る戦車プラモデルは…!」

各校隊長「…」ドキドキ



優花里「IV号対空戦車 メーベルワーゲン!」ドーン!!!



各校隊長「…」

優花里「………なーんて、冗談です♪ いわゆる秋山ジョークです。てへぺっ」

各校隊長「…」

優花里「…あ、あれぇ? 皆さんどうしちゃったんですかぁ!?」




まほ「良い事を教えてやろう。相手が面白いと感じて初めて冗談は成立する。覚えておくと良い」

優花里「うぇぇぇぇ!? 今のそんなに面白くなかったですかぁ?!」ガーン

ケイ「うーん。今のオッドボールをBaseballで例えるならデッドボールかなぁ~?」

優花里「な、なんですかその縁起の悪そうな名前は!!」

ダージリン「こんな格言を知ってる? "芸というものは、実と虚との皮膜(ひにく)の間にあるものなり"」

優花里「ち、近松門左衛門でしたっけ…?」

カチューシャ「シベリアが生暖かく感じちゃうほど寒かったわね今の」

優花里「そ、それはあんまりですよっ!」

西「あははははははは。良い冗句でしたぞ」

優花里「ありがとうございます西殿! ですが西殿が笑うと無茶苦茶怖いのは何故ですか!?」

アンチョビ「良いジョークだったぞ秋山。お礼に甘口抹茶小倉スパをご馳走してやろう」

優花里「なんですそのBC兵器みたいな料理は!」

ミカ「バウムクーヘンがあったよ。君も食べるかい?」

優花里「あ、いただきます」




優花里「…って皆さん? どうして無言でこっちに接近してくるのですか!?」

優花里「え? なに…? あ…ちょ、ちょっと…! う………うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」



みほ(髪の毛ワシャワシャし始めちゃったよ…)




優花里「も、もうお嫁に行けません………」グスッ

みほ「みんな一通りワシャワシャしたら満足そうに帰ってっちゃったね。一体何しに来たんだろう」

みほ「優花里さんは優花里でワシャワシャされ過ぎてドクターマシリトみたいになっているし…」

優花里「もーっ! 戦車プラモを作るんですよ! 私の頭で遊ぶコーナーではありませんっ!!」プンスカ

みほ「コーナー関係なく、優花里さんの頭はモシャモシャするものだと思ってたよ」

優花里「意味がわかりません!!」



~~~~



優花里「…気を取り直して、まずは今回作る戦車プラモをご紹介します」

みほ「うん」

優花里「今回のキットは………!」



https://i.imgur.com/WBv8XSh.jpg

優花里「1/35スケール ドイツ重戦車 タイガーI 初期生産型! キミに決めたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ヒャッホーイ!!






みほ「もう深夜だから大きな声出したらダメだよ…」

優花里「…すみません」シュン


ガチャ

まほ「それを選ぶとは流石だな。みほ」

みほ「選んだのは私じゃなく優花里さんだけどね。というかお姉ちゃんまだいたんだ…」

まほ「タイガーI(ティーガーI)は、多くの戦車乗りが知る、最も有名な戦車であることは言うまでもない」

優花里「はい! 私も戦車に興味を持ち始めた頃は戦車といって真っ先に浮かんだのがティーガーでした!」

まほ「8.8cm 高射砲と並行して開発された戦車砲『8.8cm KwK36』は連合軍のいかなる戦車の正面装甲をも貫き」

まほ「100mmの正面装甲は連合軍の主力戦車の攻撃を弾く。まさに最強の矛と盾を持つ王者と呼ぶに相応しい一輌と言えるだろう」

優花里「ティーガーは"エース"の存在も大きかったですよね。オットー・カリウス、ミハイル・ヴィットマン、ヨハネス・ベルター、クルト・クニスペル……」

まほ「ああ。単に性能が高いだけではない。優れた兵士がそれを扱うからこそ絶大な力を発揮し、その名を世界に轟かすことが出来た…!」

優花里「…という具合に有名すぎるティーガーIならみんなが知ってるわけですから、とっても作り甲斐があるわけなのです!」



みほ「…でも、有名だからと言って、作るのが大変なものだと初心者には敷居が高いんじゃないかな?」

優花里「いい質問ですねぇ西住殿!」

みほ「も?」

優花里「このタミヤの『ドイツ重戦車 タイガーI 初期生産型』を選んだ理由はネームバリューだけではありません!」

優花里「それはズバリ! 初心者でも作りやすいという点にありますっ!!」

みほ「そうなんだ?」

優花里「はい! 戦車プラモのメーカーは数あれど、タミヤはプラモデルの王道というだけあって作りやすさに定評があるんです!」

優花里「パーツ数が抑えらていますし、金属パーツ(エッチングパーツ)のような小さすぎるパーツもそれほど多くありません」

優花里「また、履帯も履板を1コマ1コマ接着するものではなく、1本モノのベルト式です」

優花里「なので組み立て・装着がしやすいし、最後に装着出来るので、車体と転輪の奥まった部分の塗装がしやすい!」

優花里「そ し て 何 よ り!」


優花里「初期生産型なので、時期的に迷彩塗装が施される前!!」


優花里「つまり、ドイツ戦車を作る上で鬼門となるあの"迷彩塗装"を避けられるというわけです!」

みほ「ほうほう」


優花里「迷彩については後述しますが、拘る人は『エアブラシ』という機材を使って塗装しています」

優花里「ですが、エアブラシ自体が高価なものですし、迷彩模様を描くにもそれなりにコツや知識が必要です」

優花里「そういったことから、迷彩塗装は初心者にはレベルの高い技法となってしまいます…」

みほ「優花里さんは迷彩塗装やったことあるのかな?」

優花里「えっ?」

みほ「迷彩塗装。優花里さんはやったことある?」

優花里「…」

みほ「…」

優花里「…」

優花里「それでは、まずプラモデルの組み立てで使う道具を用意しましょう!」

みほ(無いんだ…)


優花里(ちなみに、このタミヤの『ドイツ重戦車 タイガーI 初期生産型』は、西住殿の姉上殿が乗るティーガーIに最も近いというのも特徴の一つです)

優花里(姉上殿が乗る黒森峰の"ティーガーI 212号車"を再現したい場合は、別途で『モデルカステン』というメーカーの『MGデカール ガールズ&パンツァー デカールVol.5』を買うことで、砲塔番号や校章も再現できますっ!)



みほ「待って優花里さん。プラモデルはやったことが無いから道具は持ってないよ…」

優花里「大丈夫ですよ西住殿。ちゃーんと持ってきましたからっ♪」ガサゴソ


・ニッパー
・プラモ用接着剤
・瞬間接着剤
・カッターナイフ
・紙やすり
・ピンセット


みほ「…あれ? 思ったより少ないね??」

優花里「まずは"組み立て"で使うツールだけですからね。組み立てに関してはたったこれだけでオッケーです」

優花里「もちろんカッターナイフやニッパーは家にあるものを代用してオッケーです」

優花里「瞬間接着剤は主に金属パーツを接着するために使います。これも金属用であればアロンアルファとかで大丈夫です!」

みほ「あれこれ買うとお金かかっちゃうもんね…」

優花里「仰る通りです。確かにプラモデル用のツール・アイテムはいっぱいありますし、それらがあると製作が捗ります」

優花里「でも、道具でお金や時間を費やすのは本末転倒ですので、身近なモノで代用できるなら積極的に代用しちゃいましょう!」



優花里「さて、道具を揃えたのでさっそく…!」

みほ「優花里さん」

優花里「ん? どうされましたか西住殿?」

みほ「もう夜遅いから作るのは明日にしよ?」

優花里「ありゃ…話し込んじゃったせいでもうこんな時間ですね…」

みほ「あはは。楽しいことに夢中になると時間があっという間に過ぎちゃうもんね」

優花里「はい。まだ全然進んでませんがとっても楽しかったですっ!」

みほ「それで、今から一人でお家まで帰るのは心もとないから、良かったらうちに泊まっていく?」

優花里「ふぇ!? 良いんですかぁ?!」

みほ「うん。さすがにこんな時間に外に出るのは危ないし、特別にね?」

優花里「ありがとうございますぅ~! 西住殿と一つ屋根の下で過ごせるなんて、不肖・秋山優花里、感無量でありますっ!」ヒャッホーイ!!

みほ「そんな大げさな…」アハハ



~~~~

友人とはいえ不法侵入した人間を泊める西住殿は天使かな

軍神だよ

あ~これは躾られるな。

模型戦車道にハマってた時期に作ったけど面倒がってランナー丸ごと缶スプレーで塗装した後に組んだもんだから後になってパーツが取れまくったなぁ

sage忘れ申し訳ない


【よくあさ】


チュンチュン


優花里「…ぁぁぁ………ダメですぅ…………いつみどのぉ………」ウーン...

優花里「……ふぁぁぁぁ………わたしは……えさじゃ………ぁ……ぇ………?」パチッ


みほ「ふぁふぁふぉん……おいひぃ…」モフモフ


優花里「」

みほ「……ンマァ………」ハムハム

優花里「…あ、あの、おはようございます…西住殿…?」

みほ「………んも?」パチッ

優花里「…」

みほ「…」



みほ「おぇ…」

優花里「人のほっぺ齧っといて"おぇ…"はあんまりですよ西住殿ぉ!!!」ウワーン!


~~~~



優花里「…さて、気を取り直してティーガー作りますよティーガー!」

みほ「うん。まずはどこから作るの?」

優花里「セオリー通りに説明書の手順で作っていきます」

優花里「…ただ、場合によっては順番を前後したほうが組みやすかったり、転輪のように数が多いものから取り掛かると後が楽だったりします」

みほ「うんうん」

優花里「…まぁでも、そういうものはある程度慣れてからではないと見つけにくいので、今回は説明書通りで行きましょう!」

みほ「ちなみに優花里さんだったらどこから始めるの?」


優花里「主砲です」


みほ「え」

優花里(…理由は後述します)



みほ「説明書によると、まずはドライブスプロケット(=起動輪)からだね。…でも…」

優花里「どうしました西住殿?」

みほ「起動輪が2種類あるけど…どっち使えばいいのかな?」

優花里「ふむふむ…起動輪は初期タイプと後期タイプとあるみたいですね」

優花里(ちなみにタイガー1型 後期生産型の説明書は http://www.1999.co.jp/image/10000282 で読むことができます)

みほ「でも今回のティーガーは"初期生産型"だよね? ということは初期の方を選べば良いのかな?」

優花里「そうですね。説明書にあるAタイプ(SS第101重戦車大隊)を作る場合は後期タイプですが、それ以外は初期タイプの起動輪を使います」

みほ「あはは…出だしでいきなり迷っちゃうね」


優花里「まぁまぁ西住殿。実物の戦車だって、同じ車種なのに製造時期や場所によって細かい部分の形状が異なるじゃないですか?」

みほ「うん。T-34とかM4A1あたりは生産された工場によって微妙に違ったりするし、IV号とかも生産時期によって仕様が違うもんね」

優花里「ええ。そういった実物戦車にみられる製造時期・場所の違いからなる差異をプラモデルでも再現してる場合があるんです」

優花里「それで、こういった"いずれかを選べ"という選択肢が説明書の中で出てきたりします」

優花里「それら選択肢のあるパーツの違いが何を意味するかを知っている人なら別に問題はありません」

優花里「…でも、そうでない人は説明書を参考にしたり、先人モデラーさんの作品を参考に選んでみるといいですよ!」

みほ「なるほど…」





優花里「…あるいはカンで選んでみたり」


みほ「カン…」

優花里「たとえば、IV号のH型以降(特にJ型)は実物においても"あるものから使え"の精神で部品を選んで組んでたりします」

優花里「あるいは製造する工場によって部品の在庫事情も異なってきます」

優花里「そのため、"この時期のこの車種にはこのパーツが使われていた"というのが不明瞭な場合があるんですよね」

みほ「へぇー」

優花里「IV号戦車のJ型といえば、IV号シリーズの最終バリエーションで、その中でも1944年末頃からは部品の節約や工程の簡略化で上部支持輪が4つから3つに減らされたりします」

優花里「…ですが、そんな大戦末期に作られたJ型でも誘導輪は従来タイプを使うというゴッチャなものもあるんです」

優花里「なにせ大戦末期ですので部品の在庫が無かったり、連合軍の空襲で工場が爆破されたりとテンヤワンヤ状態です」

優花里「塗料を節約するために錆止め剤の上から迷彩を描いた戦車とかもあるくらいです…」

優花里「えまさに"あるもの・使えるものを使え"という状況でして、それはプラモ作りにも通じますよね、西住殿!」


テレビ『やーってやる やーってやる♪』

みほ「やーーーってやるぞぉ♪」


優花里「ちゃんと話聞いてくださいよぉぉぉ!!!!」ウワァァァァァン!!


~~~~


優花里「…さて、それでは初期型の方の起動輪を組み立てます」

優花里「まずはニッパーで枠からパーツを切り離します」パチン

みほ「あ…少し切り残しが出ちゃった…」

優花里「大丈夫ですよ西住殿。この切り残しは"ゲート"と呼びますが、これは紙ヤスリで削ることで処理できます」ゴシゴシ

みほ「あ、本当だ」

優花里「ちなみに紙やすりなんですが、出来たら1000番、400番、180番…と言った具合に目の細かさ別に3種類ほど用意しておくと良いでしょう」

優花里「まず目の粗い180番(400番)で大まかに削り、1000番で仕上げるといった使い分けですね!」


優花里「整形が終わったら起動輪を組み立てます」

みほ「2つのパーツを組み合わせるだけだからここは簡単だね」

優花里「はい。パーツの内側に凹凸がありますので、そこに合わせましょう」

みほ「はーい」

優花里「ただし!」

みほ「」ビクッ

優花里「いきなり接着するのではなく、どのように噛み合うかを確認するため、まずは接着剤ナシで『仮組み』することを強く推奨します」

みほ「わ、わかった…」タジタジ


優花里「仮組みをしてパーツの位置関係がわかったら接着剤をつけます」

みほ「キャップにハケが付いてるんだ。なかなか便利だねー」

優花里「ええ。お手軽ですね。なのでビンのフチで接着剤の量を絞って、パーツの接着面につけます」ペタペタ

みほ「はーい」

優花里「ただし!!」

みほ「」ビクッ

優花里「付け過ぎは厳禁です! あくまで少量をつけましょう」

みほ「は、はい…」ビクビク


みほ「確かにはみ出したらベタベタになっちゃうもんね…」

優花里「はい。プラモ用の接着剤はパーツの表面を溶かして硬化させることでパーツ同士がくっつく仕組みになってます」

優花里「そのためハミ出するとその部分がザラザラになって修正が大変です…」

優花里「なのでハミ出さないよう注意しつつ接着しましょう」

みほ「はーい」チョンチョン



優花里(ですが、その接着剤をあえて砲塔や車体にベタベタと塗って"圧延均質装甲板"の荒れた質感を再現しちゃう方もいらっしゃいます)

優花里(まさにモノは使いようですっ…!)グッ



優花里「起動輪が出来上がったので次のステップに進みましょう!」

みほ「うん」

優花里「次はずばり! 最初の鬼門であるホイール(転輪)ですっ!」

みほ「鬼門?」

優花里「はい! 何と言っても転輪は数が多いので、多くのモデラーがここでHPをガリガリ削っていきます」

みほ「確かに転輪はたくさんあるもんね…」

優花里「ですから、出来るなら始めの方で転輪に取り掛かっておいたほうが後が楽です」


優花里(もっとも、転輪だけでなく、履帯も連結式タイプのものは片側80~90コマを1つ1つ整形して組み立てないといけません)

優花里(もっというと履帯のピンまで再現したモデルカs………おっと。何でもありません)



みほ「ティーガーは千鳥式配列だから転輪の数も多いよね…」

優花里「ええ。サスペンションを含めると相当なパーツ数になります。…それでは、まずはいつも通りパーツを枠から切り離します」

パチン パチン コロン..

みほ「あ…また切り残しが出ちゃった…」

優花里「こればかりは仕方ありません。ゲートを無くそうとツライチで切り離そうとするとパーツまで抉ってしまうので、ゲート少し残るくらいが無難です」

みほ「そうだよね。出っ張った部分はヤスリで削れば良いけど、ヘコんじゃったら直せないもんね」

優花里「そうなんですよねー。…なお、転輪のゲートをヤスリなどで処理するときは、ヤスリで転輪の外周を撫でるように"一方通行"で削ってください。」

みほ「ん? どうして?」

優花里「そうしないと一箇所だけ削れてしまい、丸い転輪がヘコんだような形になってしまうんです」

みほ「へぇー」

優花里「ですので、前後にゴシゴシ削るのではなく、シュッシュッシュッと一方通行で削ってやるとこの通り。転輪の形を保ったままゲートを処理が出来ちゃうんですっ!」

みほ「ほんとだ! …あれ?」

優花里「ん? どうされました西住殿?」

みほ「よく見ると転輪の外周に線みたいなのが入ってる…?」


優花里「良いところに気が付きましたね西住殿!」

みほ「そ、そうかな…?」

優花里「この筋というのは"パーティングライン"と言いまして、プラモ工場がパーツを作るときに出来ちゃうものなんです」

みほ「?」

優花里「プラモデルはプラスチック、つまり"樹脂"ですよね?」

みほ「うん」

優花里「たい焼き機をイメージするとわかりやすいかと思いますが、プラモデルのパーツはドロドロの樹脂を凹凸になった型(金型)に流し込んで成形します」

優花里「この金型と金型を挟んだ時に出来る"隙間"にたまる樹脂がいわゆるパーティングラインです」

みほ「何となくわかったかも」

優花里「こういった製造時にどうしても出来てしまうラインは実物に無いものです。見つけたら除去しておきましょう」


みほ「どうやってぱんてぃら

優花里「パーティングラインですっ」

みほ「……パーティングラインをどうやって消すのかな」

優花里「方法は2つあります。まず一つは紙やすりで擦って消す方法」

優花里「そしてもう一つは、カッターナイフを垂直に当ててカンナがけの要領で、ラインをキュッキュッと撫でるように削ぎ落とす方法です」

みほ「ほうほう…」

優花里「後者のほうが手っ取り早いですから、私はいつもカッターでパーティングラインは除去しています」キュッキュッキュッ

みほ「あはは。まるでカツオ節みたいにパーツの削りかすが………って、優花里さん!?」

優花里「ふぇ? どうされましたか?」

みほ「カーペットの上が削りかすだらけ!!」

優花里「うわぁぁぁぁぁ新聞紙敷くの忘れてましたぁぁぁぁぁぁごめんなさぁぁぁぁぁい!!」


~~~~~~


優花里(ふぅ…。ようやく削りカスを一掃できました…)

優花里(皆さんはこうならないように、プラモを作るときは床や机に新聞紙を敷いたり、すぐに捨てられる空き箱などの上でパーツをカットしたり整形して下さいね)

優花里「…ところで西住殿は?」


テレビ『コォ~ンにぃ~生まれたァ~このぉ~命ぃ~♪』

みほ「わわわわー♪」


優花里「」ピッ

みほ「あ…ちょっと!」

優花里「組み立ての続き始めますよ西住殿」

みほ「む」


優花里「それでは次は…」

グゥゥゥゥ

優花里「…おっと、失礼しました////」

みほ「そういえば朝ご飯食べずにずーっとやってたもんね」アハハ

優花里「お恥ずかしい限りです///」テレテレ

みほ「とりあえず朝ご飯食べようよ」

優花里「えっ?! 私もご一緒して良いんですかぁ?!」

みほ「うん。せっかくだからね」

優花里「不肖・秋山優花里、お泊りだけでなく西住殿の手料理まで食べられるなんて我が生涯に一片の悔い無しでありますっ!!」ヒャッホォォォォイ!!



みほ「それじゃあコンビニ行こっか♪」ルンルン

優花里「………はい」


【コンビニエンスストア】


みほ「あっ、新商品出てる…!」

みほ「こっちには季節限定商品もある!」

みほ「おおっ、向こうにはコンビニ限定ボコストラップ!!」キラキラ

みほ「はぅ~全部お持ち帰りしたいなぁ~」ホクホク

優花里「あはは。相変わらずコンビニがお好きですね西住殿は」

みほ「だってコンビニだよ? 24時間営業なんだよ?」

優花里「うーん…よくわかりませんが、何となくわかりました」


?「ほうほう…バレンタイン特集かぁ」


優花里「おや…?」

?「…ってバレンタインって聖グロの戦車の特集じゃない!!」ヤダモー

?「ん…聖グロのDと知波単のNの熱愛報道?! ちょっと何これ大スクープじゃない!!」ーモダヤ

?「なになに…? チャーチルのプラモデルを一緒に作ってるところを激写………」

?「めっちゃラブラブじゃない~!!」

優花里(…なんか日刊戦車道立ち読みしながらクネクネしてる人がいらっしゃいますが、あれは…)


?「えぇぇ~~めっちゃラブラブじゃない~~超羨ましい~~~」クネクネフリフリ

みほ「沙織さん…?」

沙織「ふぇ!?」

優花里「武部殿…」

沙織「ふぁっ?!」

みほ「…」

優花里「…」

沙織「…」


沙織「ノーノー。ワタシ、サオリ ジャナク、シャオリー ネ。 インドネシアカラ留学ネ。ニポンマジエエトコヤワー」


みほ「…」

優花里「…」

沙織「…」

みほ「帰ってプラモの続きやろっか…」

優花里「…そうですね」



沙織「うわぁぁぁぁあぁぁぁぁん!! みぽりん達に見られたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



優花里(その後色々あって武部殿も合流し、リア充がどうのこうの言いながら朝食をご一緒しました)

優花里(で、プラモデルの話をしたら意外にも興味を持って頂けたので、そのまま武部殿も参戦しました)

ちょっとD×Nについてkwsk

期待



みほ「ふぅ。お腹いっぱいになったね」

優花里「腹が減っては戦は出来ぬと言いますし、これでプラモ作りに専念できますね!」

沙織「お腹いっぱいになったのは良いんだけどね」

みほ「うん?」


ピュゥゥゥゥゥゥ


沙織「この寒い時期に公園でご飯食べるのはどうかと思うよみぽりん…」ガタガタ

みほ「そ、そうかな…?」ブルブル

優花里「たまに西住殿の感性に理解が追いつかない時があります…」

みほ「えぇ…見晴らしの良い公園でご飯食べたらきっと美味しいだろうって…」


ビュォォォォォォォォ!


沙織「これじゃ見晴らしどころか吹きさらしだよ!」

優花里「浜風が徐々に体温を奪ってきます」ブルブル



    Π Π
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


沙織「しかもココ皆であんこう踊りやった公園(※アンコウウォー参照)じゃん!!」ヤダモー

みほ「う、うん」

優花里(凍えながら朝食を取った後、西住殿のお部屋に戻りました)



【みほのいえ】


沙織「へー、ティーガー作ってるんだぁ」

みほ「うん。なかなか作り甲斐があるんだよ」

優花里「西住殿は途中何度もほっぽり出してテレビ見てたじゃないですか…」

みほ「え? そうだったっけ」ウフフ


沙織「組み立てはどこまで進んだの?」

優花里「転輪の整形が一通り終わったところですよー」

沙織「ということは、まだまだ始まったばかり?」

優花里「ええ。最初の鬼門を通過したばかりです」

沙織「き、鬼門…」アハハ


優花里「そんなわけで転輪の整形も終わりましたので、続きをやりましょう!」

みほ「これも2枚の転輪を貼り合わせるだけだよね?」

優花里「はい。ただ、交互に挟み込むこれら転輪は一見形が同じように見えても別物です」

優花里「なので、今回のようにいっぺんに切り離して整形した場合は、組み違いをしないよう仮組みしてから接着しましょう!」

沙織「はーい」




沙織「それにしても同じ形のパーツがたくさんあるね…」ゲッソリ

優花里「ティーガーは片側だけで24枚の転輪がついてますからねぇ…」

沙織「プラモデルだからまだいいけど、本物のティーガーだったら大変だよ」

優花里「ええ。奥の転輪でトラブルが発生したら周囲の転輪もいくつか外さないといけませんからそれはもう…」

みほ「そう考えるとIV号は転輪が軽いから整備がすごく楽だよ」

優花里「そういえば西住殿も昔はティーガー乗っておられましたもんね」

みほ「うん…。しかもティーガーはすぐ足回りの調子悪くなるからしょっちゅう修理していたから体中痛くて…」

優花里「重戦車の宿命です…」


沙織「それにしてもティーガーって下の方はこんな風になってるん

ポロッ

コロコロ…

沙織「あ゛っ!!?」

みほ「あ…転輪取れちゃった…」

沙織「ご、ごめんね!! みぽりん、ゆかりん!!」ドゲザッ

優花里「落ち着いて下さい武部殿。転輪はまだ接着しておりませんから大丈夫です」

沙織「えっ? ということはただはめ込んでいただけってこと…?!」

優花里「その通りです」

沙織「そ、そうなんだ…寿命が縮まったよ…」



みほ「でも接着しなくていいの?」

優花里「はい。この時点では接着はせずに仮組みのままにしておきます」

みほ「なんで?」

優花里「転輪を先に取り付けると、車体の奥の方や転輪の裏側の塗装がやりづらくなっちゃうんです」

沙織「なるほど…確かに下の方は転輪や履帯取り付けると塗りにくそう」

優花里「個人的にはパーツ全部取り付けてから塗装に入りたいんですけど、どうしても塗装を考慮すると順番が前後しちゃうんですよねぇ…」


みほ「ん? 履帯は"ベルト式"だから最後に装着出来て、車体と転輪の奥まった部分の塗装がしやすい、ってさっき言ってなかったっけ?」

優花里「ええ」

沙織「え? どっちなの??」

優花里「西住殿のおっしゃる通り、ベルト式履帯なので、先に車体や転輪を塗装して、その後から履帯を取り付けることが可能です」

沙織「だったら先に転輪つけちゃっても良いんじゃない?」

優花里「車体の奥や転輪は良いんですけど、転輪の外周にある"ゴム"の塗装が難しくなっちゃうんですよね」


沙織「ゴム………あ!」

優花里「はい。互いに転輪を挟み込むような配列になっている関係で、接着しちゃうと重なる部分のゴムが塗装しづらいんです」

みほ「確かにそう言われると、手前の転輪と重なる部分は塗れなさそう…」

優花里「もちろん接着した後からでも見える部分の塗装は出来ますし、"見えない部分は存在しない部分"として割り切ることはできます」

優花里「…でも、バラバラの状態で塗装した方が確実ですし何より楽なんです!」

沙織「なるほどね…」



優花里「これが"ティーガー後期型"や"ティーガーII"系列とかでしたら転輪を先につけても良いんですけどねぇ」アハハ..

沙織「なんで?」

優花里「これらの車輌の転輪は"鋼製転輪"といって、外部にゴムが無いタイプの転輪なので、ゴム部分を塗る必要が無いんです」

沙織「鋼製転輪?」

優花里「大戦後期のドイツでは戦略物資であるゴムを節約するため、転輪の外周にゴムをつけるのではなく、ゴムを内蔵した転輪を使うようになったんです」

優花里「その結果、単純にゴムの節約になっただけでなく、転輪そのものの耐久性も向上しました!」

優花里「そのため、ティーガーIの後期型、ティーガーII、ヤークトティーガー、MAN社が生産したパンターG型の一部ではこの鋼製転輪を使用していたりします」

優花里「あとは"IV号駆逐戦車"の転輪のうち前2つが鋼製転輪になってるのも、パンター同等の砲を搭載してフロントヘビーになったために、ゴムの消耗を避けるための措置です」

優花里「あとは単純に生産が追いつかなくなったという末期戦車あるあるな理由とかもあります」

優花里「…というのが鋼製転輪です。これで武部殿もまた一つ戦車の知識が増えましたねっ!」


優花里「あれ? 武部殿??」


テレビ『本日のゲストはホシノ監督です』

テレビ『大新井はワシが育てた。明日のヤークトスワローズ戦はもらった』

テレビ『ワハハハハ!』


沙織「ホシノ監督って中日ドラゴンモデルズの監督じゃなかったっけ?」

みほ「それ昔の話だよ。今は軍神ティーガースだよ」

沙織「へぇ…」


優花里「(´;ω;`)ブワワッ」


沙織「ご、ごめんねゆかりん?! ちゃんと聞いてるから泣かないで…!」

優花里「どうぜわだじなんでぇぇぇぇぇ…」ズビビ

みほ「ゆかりさん泣かないで! ほーら! 期間限定の肢体切断ボコだよぉ~」

沙織「なにそれ怖いよみぽりん! あたしが泣きそうだよ!!」



優花里(…ただ…ヒッグ……鋼製転輪でも…エグッ……摩擦による金属光沢を再現するために……ズビッ……外周をダークアイアンで…ゲホッ…塗装するモデラーさんはいます………ジュルルッ…)

~~~~


沙織「ところで、その転輪を取り付けるパーツについての説明はナシ?」

優花里「そうですね。転輪の前に『サスペンション』を取り付けますが、これは割愛ちゃいます」

沙織「どうして?」

優花里「サスペンション自体はパーツを切り離して整形して接着するだけなので、特にコレといった説明は無いんですよね」エヘヘ

沙織「そうなんだ。まぁ最終的に転輪とかで隠れちゃうしねー」


優花里(…と、言いましたが、実はこのサスペンションも"一工夫"することで、リアルな車体を作ることができます)

優花里(本来ならサスペンションは車体側にある突起に合わせて接着しますが、その場合の角度だと転輪と車体に隙間が多く出来るのでやや軽い外観になってしまいます)

優花里(なので、あえて車体側の突起を切り落としてサスペンションの角度をを少しだけ水平寄りに接着することで車高を沈ませることが出来、より重量感を出すことが出来ます)



沙織「あっ、でもこの項目はサスペンション以外にも、車体の後ろに大きいパーツを取り付けるみたいだよ?」つ[説明書]


https://i.imgur.com/WtV10zJ.png


優花里「あ、それは"リアパネル"ですね」

沙織「うん」

優花里「確かにパネルを取り付けないと車体上部パーツが取り付けられませんし、今のうちにやっておきましょう」


優花里(なお、サスペンション以外にもここまでで最終減速機カバーとか色々パーツを取り付けますが、特に説明は不要だと思ったので割愛しちゃいました。えへへ)

優花里(皆さんならもう大丈夫ですよね?)




みほ「まずは仮組みからだね。………あれ…?」

優花里「ん? どうされました西住殿?」

みほ「大きいパーツだから、普通に接着しようとすると車体に隙間ができちゃう…」

沙織「本物と違ってプラモデルだし、誤差とか出ちゃうから仕方ないんじゃない?」


優花里「ふふふ…」

沙織「え」

優花里「さすが西住殿です。目の付け所がシャープです!」

みほ「私はパナ

優花里「こういう時はまず仮組みします」

みほ「…うん」ムスッ


優花里「ポイントは車体パーツとリアパネルの間に隙間が出来ないように、気持ち抑えながらです!」

沙織「でも手を離すと隙間が…」

優花里「そ・こ・で、こいつを使うのです!」



沙織「…セロテープ?」

優花里「はい! 『マスキングテープじゃねーのかよ!!』と心の叫びが聞こえてきそうですが、ここでは身近なもので代用します!」

優花里「もちろん気軽に貼って剥がせるマスキングテープの方が使い勝手が良いので、持ってるならそっち使った方が断然楽チンです」


優花里「…で、このセロテープを隙間が出ないように車体とリアパネルに"キツめに"貼り付けます」ペタッ ペタッ

優花里「これで隙間を無くした仮止め状態になります」

沙織「あれ? 接着はしないの?」

優花里「もちろん接着しますよ。…で・す・が、ここで秘密兵器を使っちゃいます」


みほ「秘密兵器?」

優花里「はい。『流し込み』タイプの接着剤ですっ!」

沙織「流し込み? 普通の用接着剤とどう違うの?」

優花里「通常のプラモ用接着剤はドロッとしています。これは接着力を強めるために中に樹脂が入っているからなんです」

沙織「うんうん」

優花里「一方で流し込み接着剤は液状でサラサラな接着剤です」

優花里「なので、この車体とパネルのような"隙間"にちょんとつけることで、すぅーっと接着剤が隙間を伝うように浸透していくんですよぉー!」



チョン

スゥー....


沙織「おおおおおおっ!」

優花里「ね? 凄いでしょう?」

沙織「みぽりん今の見たぁ?! 本当にすぅーって隙間に浸透していったよ!!」ユサユサ

みほ「わっ! み、見たから見たから! おお落ち着いて沙織さ、うっぷ……」グラグラ

優花里「テープと流し込み接着剤があれば車体や砲塔などの大きなパーツも隙間を作らず接着出来ちゃうんです西住殿ぉ~!」

みほ「ふぁぁ…しゅごい………」クラクラ


優花里(大きいパーツを隙間なく接着するのはもちろんですが、装甲の溶接跡や断面などを再現するディテールでも流し込み接着剤は活躍します)

優花里(予算に余裕があるなら通常の接着剤と一緒に持っておくと重宝しますよぉ!)


沙織「あれ…でも、説明書を見るとこのパネルにも色々パーツつけるみたいだけど先に取り付けちゃって大丈夫なのゆかりん?」

優花里「そうですね。リアパネルには排気管とか工具類、そして初期型の特徴でもあるエアクリーナーが後々とりつけられます」

沙織「うん」

優花里「でも、リアパネルは先に取り付けないと車体上部のパーツが取り付けられませんので、先に取り付けます」

沙織「あ…たしかに」

優花里「それに、リアパネルにパーツをコテコテ接着したあとに車体に取り付けようとすると、手で持つ部分が少なくなり、変なところを持てば最悪パーツがもげちゃいます…」

沙織「うっ…」





優花里「ひとまずこれで転輪以外の車体下部が大まかに出来上がりました」

みほ「まだまだ戦車って感じはしないけど、それでもかなり組み立てが進んだ感じがするよね」

優花里「はい! プラモデルは小さな完成の繰り返しですっ! 少しずつ確実に完成させましょう!」

みほ「うん」


優花里「というわけで、次は車体上部の前面装甲板を作りましょう」

沙織「前面装甲板ってどのへんだっけ?」

優花里「冷泉殿が覗くクラッペ(視察窓)や武部殿が構える車載機銃がある場所です」

沙織「ああ、あそこね…って私や麻子がすんごいお世話になってる場所じゃない!」ヤダモー

みほ「あはは。前面装甲板が無かったら麻子さんも沙織さんも大変なことになってるよね」

沙織「怖いこと言わないでよみぽりん!」



優花里「では前面装甲板は通信手席側にある車載機銃を組み立てます」

沙織「あっ! これあたしがいつも使ってるやつだ!」


https://i.imgur.com/Ft2z6ch.png


優花里「車載機銃といえば、プラウダ戦の時に武部殿が機銃を撃ってフラッグ車の進行ルートを変えたのが勝利につながりましたよね!!」

みほ「え?」

沙織「え?」

優花里「…え??」


沙織「あの時撃ったのあたしじゃないよ?」

優花里「…あれ?」

みほ「撃ったのは華さんだよ?」

優花里「ありゃ…?」

華「僭越ながら、わたくしが致しました」

沙織「だよねぇ! さすがにあんなキレイな射線、華じゃないと無理だもん」

みほ「うん。それに主砲と同軸の機銃の方が角度的に良いかなと思って華さんに任せたのが正解だったね」

優花里「なぁーんだ、そうだったんですかぁ。あはははははっ」

沙織「もー、ゆかりんったら忘れちゃったの?」エヘヘ

優花里「お恥ずかしながら…」テレテレ







優花里「…って、五十鈴殿いつの間っ!!!?」




みほ「」

沙織「」

華「あの…、先程からおりましたが…」

優花里「一応念のためお伺いしますが、五十鈴のおっしゃる"先程"とは…?」

華「優花里さんが"リアパネル"と仰った辺りでしょうか…」

みほ「」

沙織「」

優花里「」

華「?」


沙織「…みぽりん。腐っても女子高生なんだからちゃんと家の鍵閉めておかなきゃダメだよ…?

みほ「まだ腐ってないと思うけど、おかしいな…ちゃんとカギかけたはずなのに…」


優花里(きっとどこかに異次元空間か何かがあって、そこからいらっしゃったのでしょう。…もう深く考えないようにします)


華「ところで皆さんは一体、何をしておられるのでしょう?」ソワソワ

沙織「ティーガーIのプラモデルを作ってるんだ」

華「ぷらもでるとは?」

みほ「部品を組み立てて車や船や戦車といったものを作る趣味…かな? 今はティーガーIを皆で作ってるよ」

華「…確かに、箱を見るとティーガーIの写真が掲載されていますね?」

優花里「ときに五十鈴殿はこういうのは初めてでしょうか?」

華「ええ、お恥ずかしながら…」

優花里「ではでは、五十鈴殿も一緒にプラモデルを作りませんか?!」

華「え、わたくしで宜しいのですか?」

優花里「もちろんですっ!」

華「ありがとうございます」パァァァァ


優花里(ということで、五十鈴殿が仲間になりました)

優花里(手先が器用なので細かいパーツの取り付けで活躍してくれること間違いナシです)



~~~


優花里「ということで、前面装甲板の車載機銃を作りますっ!」

み・沙・華「はーい!」

優花里「この車載機銃ですが、説明書には特に何も記載がされていませんが、機銃はグリグリ動くようになっているんです」

沙織「動く?」

優花里「はい! ゲームのコントローラーのスティックみたいにクリクリ動いてくれるんですっ!」

沙織「つまりあたしが使ってるやつと同じように可動するってこと?」

優花里「そうです! …ただ、説明書を見るとその旨の記載がなされておらず、何も考えずに接着しちゃうと角度が固定されちゃいます」


https://i.imgur.com/bgOh7u7.png


優花里「上の説明書でいう"A51"のパーツは接着せず、前面装甲板のパーツとその後ろに取り付ける"A50"とで挟み込むようにして装着します」

華「装甲板と機銃の受けとなる部品は接着して、中で円形の部品がグリグリ蠢くようにすれば良いのですね?」

優花里「その通りです!」


優花里(今回の車載機銃に限らず、プラモデルでは実物のような可動ギミックが再現されている場合があります)

優花里(戦車の砲身が上下に動く、ハッチが開閉できる、転輪が回る、サスペンションが動く…などなど)

優花里(そういったパーツは"接着しないで下さい"というマークがついている場合が多いので、仮組して何がどう動くのかをしっかりチェックしましょう!)





沙織「あはっ! 本物みたいにグリグリ動く~♪」クリクリ

みほ「動かしすぎて折らないように注意してね」

沙織「わかってるよ♪ ところでみぽりん」

みほ「うん?」

沙織「あたしも機銃撃ってみたいから今度指示してよ♪」

みほ「え」

沙織「だって構えたことはあるのに撃ったこと一度もないんだもん」


優花里「あはは。通信手席の機銃は前方にいる兵士を狙うためのものですから、戦車道ではあまり使わないかと」

沙織「でもでも華は撃ったじゃん!!」

優花里「前回のプラウダ戦のような展開になればそういった機会はあるかもしれませんが、主砲の同軸機銃も本来は歩兵や非装甲車両といった柔目標を狙うためですし」

優花里「あるいは超大まかな弾道補正として使うといった用途ですね」

華「ですが、同軸機銃では弾着位置や距離による弾道低伸といった補正が利きませんので、やはり照準器を使う方が確実です」

みほ「機銃の弾と戦車砲弾とでは弾道が違うもんね」

華「はい」

沙織「ぶぅ!」プクー


優花里(ひとまずこれで前面装甲板は完成ですが、車載機銃の銃身は0.5ミリくらいのピンバイスで軽く穴を開けておくとソレっぽくなりますよ)



~~~~


優花里「次は車体の後ろに取り付けるエンジン点検用のハッチですね」

みほ「ハッチを開けるときに握るハンドルの部品が細長いから丁寧に扱わないと折れちゃいそう」

沙織「うん、パーツもすんごい細いから切り離すときにポキッといっちゃいそうだよコレ…」

優花里「そうなんですよね。…実を言うとハッチのハンドルは戦車プラモのパーツの中で一二を争うほど小さいパーツなんですよ」

沙織「うぇぇ…」

華「あの…」

優花里「どうされました五十鈴殿?」

華「その、細かいパーツ、私にやらせて頂けないでしょうか?」

優花里「良いですよ」

沙織「そうだよ! 華は手先が器用だしこういった小さいパーツは華に任せれば良いんだよ!」

優花里「五十鈴殿の精密さは大洗一ですからねぇ!」

華「ふふ、恐縮です。…では」


華「…」スッ

優花里「…」ゴクリ

華「では…いきます…!」

沙織「…」ドキドキ

華「………」





グゥゥゥゥゥ


華「すみません。お腹が空きました」


ガタンッ!!!!


華「…あれ? 皆さん???」

みほ「…そういえばもうお昼だね」ヒリヒリ

優花里「じ、時間が過ぎるのは早いです…」ズキズキ

沙織「華がこの時間まで我慢できたことが凄いと思うよ…」ジンジン

華「恐縮です」



優花里(…ということで、また作業を中断して私達はお昼ごはんを食べに行きます)

優花里(なかなか作業が進みませんがプラモデルは趣味なのです。ですので慌てずじっくり時間があるときにやると良いでしょう)

優花里(ああっ! 完成が待ち遠しいですっ…!)


みほ「ところで優花里さんはさっきから誰と話してるのかな?」

優花里「…受講者の皆さんです」



優花里「今更な話ではありますが、今日は冷泉殿がおりませんね?」

沙織「あー、麻子ならまだ寝てると思うよ。今日お休みだし」

華「たまの休日ですから、ゆっくり休んでもバチは当たりません」

みほ「そうだね。でも折角皆がこうやって集まってるから麻子さんにも声かけてみよう」

華「ええ。ちょうどお昼ごはん時ということもありますから、是非ご一緒にと」

沙織「そだね。この間みたいに布団剥いで無理やり連れてこなくっちゃ!」アハハ

みほ「それはちょっと可哀想だよ」アハハ

沙織「ところで今からどこに行くの?」

みほ「ファミレスだよ?」

優花里「…西住殿、自炊なされないのですか?」

みほ「あはは」

優花里(西住殿…意外にズボラだったりします…?)

沙織「まぁまぁ、そんなことより早くファミレス行こーよ! あたしもうお腹ペッコペコだよ」

みほ「そうだね」


ガチャ



麻子「」スヤァ....

4人「」



みほ「え…? え…???」

優花里「あ…ありのまま今起こったことを話します…!」

優花里「"皆とファミレスへ行こうと扉を開けたら玄関口で冷泉殿が寝ていた"」

優花里「な…何を言ってるのかわからないと思いますが、私も何が起きてるのかわかりません…」


沙織「ちょっと麻子ぉ!? アンタなんでみぽりんの家の前で寝てんのよ?!」ユサユサ

麻子「もが…」スピー

華「歩き疲れてしまったのでしょうか…?」

みほ「百万歩譲ってそうだとしても、せめてピンポンだけは押して欲しかったな…」


麻子「ぅぁ…? ここは…どこだ…??」

優花里「西住殿のお部屋の前ですよ冷泉殿」

麻子「…」

優花里「…」

麻子「…」


麻子「…おばぁ、若返った?」


優花里「何をどう間違えたらおばぁ殿と見間違えるんですかぁぁぁぁぁ!!」



【CHINESE RESTAURANT オバァミヤン】


麻子「なるほど、プラモデルか…」モソモソ

優花里「はい! これがまた奥が深いのですよ冷泉殿ぉ!」

麻子「細かい作業が苦手だからそういうのとは無縁だな…」ペロペロ

優花里「手先を鍛える良い機会ですよっ!」

麻子「図工の授業で使った接着剤のニオイも好きではなかったな…」モチャモチャ

優花里「リモネン系の接着剤でしたらニオイはそこまでキツくありません!」

麻子「…あとは…工具とかの使い方もよくわからない」ゴクゴク

優花里「大丈夫です。みなさん初めてなのにあっという間にマスターしましたから!」

麻子「…それに…塗装も難しそうだ」ボリボリ

優花里「全体の塗装は缶スプレーを使うのでものすごく楽ですよ♪」


麻子「……秋山さん、何故そこまでして私にプラモデルを勧めたがる…?」




優花里「それはもう! 皆さんがプラモの魅力を知って楽しんで頂いているのですから、冷泉殿だけ仲間外れには出来ませんっ!!」

麻子「その気持ちは嬉しいが…」

優花里「西住殿はプラモ始めてからというもの、神経が研ぎ澄まされて今なら聖グロにだって勝てちゃいそうです!」

みほ「さすがにそこまで

優花里「五十鈴殿は"プラモは花を生けるのに丁度いい"と申されました!」

華「確かにあの大きさでしたら生けるのにピッタリなサイズです」

優花里「武部殿はプラモを始めたら毎日モテ

麻子「それは絶対ない。断言する」

沙織「何でそこだけ断言すんのよっ!!」

麻子「長年の勘だ」

沙織「意味分かんないよ!!」


みほ「ところで、麻子さんはどうして家の前で寝てたのかな?」

麻子「ああ…西住さんに渡すものがあって家まで行ったけど、途中で眠くなってしまって…」

みほ「う、うん…大体そうだとは思ったけど、せめて家の中で寝て欲しかったかな…」

麻子「…それについては申し訳ないと思っている」

みほ「ちなみに、渡すものというのは…?」

麻子「中身はわからないが、宛名には"西住"とあった」

沙織「もしかしてラブレター!?」キャー

麻子「宛名を間違えるようなやつのラブレターなどヤギに食べさせてしまえ」

華「紙って美味しいのでしょうか?」

優花里「早まらないで下さい五十鈴殿」


みほ「…開けても大丈夫なのかな?」

華「仁侠映画などでは脅迫として手紙の中にカミソリや銃弾が入っているとお聞きしましたが…」

沙織「それニュースとかでも見かけるよね」

優花里「送っていただけるのでしたら50口径あるいは.338ラプアマグナムを希望します」

みほ「これから開けようとする時に怖いこと言わないでよ…」


ビリビリ




みほ「………なにこれ??」

沙織「銀色の網…?」

華「一体何に使うのでしょう?」

麻子「さっぱりわからん」


優花里「これエッチングパーツじゃないですかぁ!!」ガタッ


沙織「エッチなパーツぅ!? ゆ、ゆかりんったら!////」ヤダモー!

優花里「ち、ちがいますっ! エッチなんかじゃありません! エッチングパーツですっ!!」

みほ「二人ともあまり大きな声でエッチエッチ言わない方が…」


アノコタチ、エッチナンダッテ...

ネェノンナ エッチッテナーニ?

エッチ...ジンセイニヒツヨウナコトダネ...

ワイワイ ガヤガヤ


沙・優「うっ…//////」カァァァァ...


沙織「…それでそのエッチって何?」ボソボソ

優花里「ですからエッチではなくエッチングパーツです!!」ヒソヒソ

麻子「エッチング"パーツ"というのだから、プラモデルで使うものじゃないか?」

優花里「その通りです冷泉殿。この平ぺったい網はティーガーのエンジングリルに貼り付けるメッシュパーツです」

麻子「ふむ」

優花里「異物が混入しないように取り付ける金網ですが、これをプラモデルでも再現したしたものですね!」

華「ですが、これはプラスチックではなく、金属なのでは…?」

沙織「ホントだ」

麻子「金属とプラスチックとでは"モノ"が違ってこないか?」

優花里「そこなんですよ!」

沙織「そこ??」



優花里「エッチングパーツの最大の特徴は、プラスチックでは作れないほどの"極薄パーツ"を再現できるという点にあります!」

優花里「というのも、プラスチックはパーツの強度や整形技術の関係でどうしても薄く作るのに限界があります」

麻子「エッチングにだって薄さの限度はあるだろう?」

優花里「はい、もちろんエッチングパーツにも限界はありますが、それでもプラスチックよりもず~っと薄く作ることが出来ちゃうんです!!」

麻子「そうなのか」

優花里「ですので、今回のエンジンメッシュや車載工具の金具や蝶ネジ、フェンダー、予備履帯のラック…などなど」

優花里「"薄さ"が求められる場所はこのエッチングパーツで再現するということですっ!!」

沙織「言われてみればこんなうっすいのをプラスチックで作ろうとしたらすぐに折れちゃうよね…」

優花里「エッチングパーツはアフターパーツとして別途で購入しますけど、海外メーカーのキットでは最初から付属していたりします。お得ですよね!」



沙織「組み立てる時はプラのパーツとは何か違ったりするの?」

優花里「薄いパーツなので、切り離しや整形ではプラパーツ以上に丁寧に扱う必要があるのと」

優花里「金属ですから接着には瞬間接着剤が必要です」

優花里「ついでに塗料のノリが悪いのでプライマー塗っておいたほうが良いですね」

沙織「なんだか難しそう…」

優花里「確かに、エッチングパーツはプラパーツよりもデリケートです。でも今回のは折り曲げたりする必要が無いので楽な方ですよ」

沙織「ならエッチングパーツも華に任せちゃおっと」

華「あの、出来ましたらもっとお手柔らかに…」


優花里(海外メーカーのエッチングパーツは削りカスと区別がつかないほど極小なものがあります。ボルトやリベットを再現したものとかですね)

優花里(あと小さいエッチングを折り曲げてワイヤーや工具類を固定する金具を作るのも精神修行のレベルです)

優花里(こんなものを自由自在に扱えるようになったらその時点でもう初心者の領域脱出してます)



優花里「ところで、先ほどから西住殿が静かですね…?」

沙織「そういえばそうd


みほ「」


沙織「ちょ、どうしちゃったのみぽりん! 死んだ魚の目しちゃって!?」

華「食べ物を喉に詰まらせてしまったのでしょうか?!」

沙織「華じゃないんだから!」

みほ「…その…ね…?」

沙織「うん…」

みほ「そのパーツと一緒に手紙が入ってたんだけど…」

沙織「うん?」


みほ「カミソリや銃弾の方がまだ良かったなぁ…って……」


沙織「」

華「一体どのような内容のお手紙でしょうか?」

みほ「はい……」つ[手紙]

優花里「西住殿がヤケになるほどですから差出人は大体想像できますが…」

沙織「どれどれ…」


/////////////////////////////////////////////////////

みほへ

戦車の模型を作っていると聞きました。それもティーガーIとのことですね

そんなあなたにとって大いに役に立つものを送りました。西住流の名に恥じぬものを作りなさい。

なお砲身は左右分割式です。貼り合わせた時に出来るスジが残らないようにすること。

またツィメリットコーティングはポリエステルパテを推奨しますが、再現する車輌の生産時期に注意しなさい。

その他、履帯のたるみを再現する場合は、ピアノ線を使う方法と転輪に接着する方法があるので、好きな方を選びなさい。

余談ですが、エナメル溶剤はパーツの接着を剥がすので、使い過ぎは厳禁です。


追伸:私はあなたをまだ認めたわけではありません。





                       母より


///////////////////////////////////////////////////



沙織「」

みほ「」

優花里「やっぱり………」

麻子「一つだけ確かなのは、西住さんのお母さんもプラモデルに没頭してるってことだな」

優花里「カミソリのような鋭い目をしてパーツ接着する姿が脳裏に浮かびます」アハハ





みほ「おかしいよ…どうしてお母さんは私がプラモ作るって知ってるの……」オロオロ

沙織「女のカンってやつ?」

麻子「そこは母親のカンと言うべきだろ」

華「カンだけに監視されているのでしょうか?」

みほ「寄ってたかって怖いこと言わないでよ…」

優花里「でも泣く子も黙る西住流の家元が、ホビーショップで『これ下さい』ってエッチングパーツ買う姿想像したらちょっとだけシュールですよね」

沙織「その西住ママンがしかめっ面でプラモデル作る姿が既にシュールだよ…」

麻子「もっと言えばその"シュールな西住流家元"は、娘と間違えて私の家にコレを送って来た」

沙織「…もしかして、みぽりんのお母さんって天然だったりする?」

みほ「あれは天然どころか宇宙だよ……」

沙織「へぇ…」

華「ふふっ。この親にしてこの子ありという言葉もありますもんね」

みほ「どういう意味かな華さん」

宇宙ボコ



【みほのへや】


優花里「さて、それでは作業を再開しましょう!」

沙織「えっと、確かエンジンハッチの組み立てだよね?」

優花里「はい。細くて折れやすいハンドルを取り付けます」

沙織「出番だよ華」

華「はい」

優花里「五十鈴殿、細いパーツは無理に根本を切ろうとすると折れてしまいます」

優花里「ゲートは少し残してカット下さい」

華「かしこまりました…!」クルクルクル...

麻子「おぉ…」

華「…」スチャッ

沙織「やる気マンマンだね」

華「花を生ける時のように集中して………」ブツブツ


パチン パチン


華「………ふぅ」

優花里「お見事です五十鈴殿! 誰もが一度はへし折る極細パーツを無傷でカットしましたねっ!!」

みほ「すごいよ華さん」

麻子「これで脅威は去った…!」

華「わたくし…やりました…!」


優花里「この感動を忘れず、次はハンドルをハッチに取り付けましょう!」

沙織「あれ? ハンドルのゲートは処理しないの?」

優花里「しますよモチロン。ただ先にハッチに接着したほうが個人的にやりやすいなぁと思いまして」

沙織「そうなんだ」

優花里「ではでは五十鈴殿! 引き続きハンドルをハッチに接着して下さい!」

華「承知致しました…!」


優花里(ちなみにハッチのハンドルなど細くて脆いパーツは、折れない真ちゅう線を使うモデラーさんもいます)


数分後



沙織「そろそろ接着されたかな?」

優花里「そうですね、もう整形しても大丈夫だと思います」

沙織「だけど、この状態でも下手に触るとポキッといっちゃいそうだよ?」

優花里「はい。ですのでヤスリは力を入れずに表面を撫でるように優しく行います」

優花里「ヤスリも目が細かいものを選び、焦らずじっくり…!」

華「はい…!」スリスリ


沙織「なんかもう華の表情や手つき見てるとプラモデルというより工芸品作ってるような雰囲気だよね」アハハ

麻子「職人技とは言ったものだ」

優花里「プラモデルも極めれば芸術ですからね」

沙織「そうなの?」

優花里「ホビーショーなどで展示される作品を見ればわかりますが、ものすごいリアリティー溢れるものばかりです」

優花里「塗装の剥がれや錆、砂利の質感まで徹底的に拘っており、モデラーさんの表現力と観察力の鋭さには圧巻されます!」

優花里「私もいつかあの方々に並ぶような作品を生み出せるようになりたいです!」

優花里「その為には不肖・秋山優花里、毎日が勉強でありますっ!!!」


優花里「………あれ? 皆さん??」



沙織「あっ!! なんであんな所にバナナ置いたのよ?!」

麻子「お前だってさっき甲羅投げただろう。お互い様だ」

華「この紫色のトゲトゲの甲羅はどのように使えば良いのでしょうか?」

みほ「私が1位の時でなければいつ使っても大丈夫だよ」


優花里「」ピッ

4人「あ…」




~~~~


優花里「さて、完成したエンジンハッチと前面装甲板を車体上部パーツに貼り付けます」

みほ「これも大きいパーツだし流し込み接着剤を使えばいいのかな?」

優花里「はい。…でも、その前に普通の接着剤を点付けしておきます」チョンチョン

優花里「そしたらそれを車体に貼り付けて」ペタン

優花里「最後に流し込み接着剤で補強する」スーッ

優花里「…といった感じです!」

沙織「やっぱゆかりんがやると作業が早いね」

麻子「好きこそ物の上手なれとはこの事だな」

みほ「私達がやるより5倍は早いかも」

華「装填手は速度が命ですものね」

優花里「褒めて下さるのは嬉しいですが、組み立てが進まないのは皆さんがテレビ見たり他事するせいですからね?」



優花里「さて、次は西住流のお母さんから頂いた"エッチングパーツ"をエンジングリルに貼り付けましょう!」

みほ「…送料着払いで送り返したいけどダメかな?」

優花里「ダメです」キッパリ

みほ「ぁぅ…」

麻子「これは普通の接着剤では駄目なんだよな?」

優花里「はい。金属のパーツですので瞬間接着剤を使います」

華「切り離したり形を整えるのにも丁寧に、ですよね?」

優花里「ええ、金属ですが薄いので力を入れすぎると簡単にひしゃげてしまいますからね」

沙織「やっぱデリケートだね…」

華「繊細なところは生花と似通っていますね」



優花里「ではまず切り離すのですが…」スッ..

みほ「え? カッターナイフ使うの?」

優花里「下に硬いものをあて、カッターナイフでストン! と押し出すように切り離します」

麻子「ニッパーじゃダメなのか?」

優花里「ニッパーだと刃こぼれしちゃうんですよねぇ…」

沙織「それはカッターだって同じじゃない?」

優花里「ご指摘の通りです。でもニッパーと違ってカッターナイフはポキッと折って新しい部分が使えますし替刃だってあります」

沙織「あ、たしかに」


優花里「また、刃こぼれの問題だけでなく、エッチングはランナーとパーツとの間が狭い場合が多いです」

優花里「そこへニッパーの歯を入れようとしても太すぎて入らず、無理をすればパーツがひしゃげてしまう危険だってあります」

優花里「その反面カッターナイフでストンとやれば変な向きに力が加わってパーツが変形することもありません」

みほ「なるほど。色んな理由があるんだね」

優花里「これも先人の知恵です」


優花里(かくいう私もその昔、エッチングパーツをニッパーで強引にカットしようとしてニッパーの刃を折ってしまったことがあります…)



優花里「続いて、ランナーから切り離したエッチングパーツの整形に突入します」


優花里「目の細かいヤスリを使って、ゲートを優しく撫でるように丁寧に削ります」

優花里「粗いヤスリだと引っかかってパーツが曲がっちゃいますからねぇ~」

優花里「力を入れる必要なんて一切ありません。触れる程度でゆっくり優しくですよぉ~」

華「本当に表面を撫でるだけですが、これで削れているのでしょうか?」

優花里「安心して下さい。削いでますよ♪」


優花里「そして削る時もなるべくパーツの根本を持って、万が一ヤスリが引っかかってもパーツが引っ張られないようにします」

みほ「下の方を持つとグラグラしちゃうもんね」

優花里「あとはゆ~っくり、ゆ~っくりですよぉ~?」コリコリ

優花里「ハイ、出来ました! えへへ、我ながらいい感じですっ♪」



沙織「削り方は分かったけど、何かゆかりんのセリフの一つ一つがいやらしく聞こえるのは気のせい?」

優花里「気のせいですっ!!!」ガァァ




麻子「次は接着かな?」

優花里「はい!」

みほ「繰り返しになるけど、通常の接着剤じゃダメなんだよね?」

優花里「その通りです。なので先述の通り瞬間接着剤を使います」

沙織「これもプラモデル用?」

優花里「いえ、金属用であればホームセンターとかで売ってるものでOKですよ」

優花里「…ただ、ここで注意したいのは、瞬接を直接パーツに付けようとすると多く出過ぎてしまいます」

麻子「確かに瞬間接着剤の口を見るとドバッと行きそうだ。…どうすれば良い?」

優花里「そ・こ・で! こいつの出番ですっ!」


[牛乳パック]


沙織「…牛乳パック?」

優花里「まずはこの牛乳パックを適当な大きさにカットします」チョキチョキ

優花里「カットした牛乳パックの上に瞬間接着剤を適量出します」トロリ

優花里「そして爪楊枝など先が細いもので接着剤をすくい取ります」

優花里「あとはパーツの上を撫でるように薄く接着剤を塗ります」ススッ

沙織「あ、コレなかなか良いアイディアだね」


優花里「接着剤だけでなくパテや塗料のパレットとしても牛乳パックは使えます」

優花里「塗料皿なんてのも売ってますが、そんなものを買わなくても牛乳パックですからすぐ手に入ってしかも安いです!」

優花里「そのうえ塗料皿と違って使い終わったらゴミ箱に捨てられますから洗浄の手間もありません!!」

優花里「簡単に手に入り、大量生産でき、しかも安い!!」

優花里「牛乳パックは初心者からベテランまでオススメできるアイテムですっ!!!」

みほ「あははっ、牛乳パックさまさまだね」

優花里「ええ! それはもう! 『不肖・秋山優花里の牛乳パック講座』を実施してもいいほどですっ!!」

みほ「あはは…」

沙織「みぽりんの"あはは"ほど相手に伝わりにくいものは無いよ…」



優花里「接着剤を点付けしたエッチングパーツはエンジングリルに被せるように取り付けます」

優花里「くっつけたら爪楊枝の先端を駆使して、プラとエッチングの隙間に瞬接を刷り込ませます」

優花里「このとき瞬接はほんの少しで大丈夫です。むしろ多すぎると周りがギトギトになっちゃいますから注意です」

優花里「…と言った感じで、他のエッチングパーツも同じように接着します」

優花里「これでティーガーの車体後部がディテールアップされました! う~ん、たまりませんっ!!」


麻子「網ひとつあるかないかでここまで印象がかわるんだな」

優花里「そうなんです! だから"ディテールアップ"パーツなんですっ!!」

みほ「あはは。また優花里さんハイテンションだね」

華「エッチングハイというものでしょうか?」

沙織「わかってはいるけど卑猥に聞こえちゃう」



優花里(…と、エッチングパーツについて力説しちゃいましたが、黒森峰のティーガーIを再現する人はエンジングリルにエッチングは付けないで下さいね)



優花里「さてさて、これで車体上部の基盤が出来上がったので、車体下部と合体させます!」

沙織「もう他に取り付けるもの無いの?」

優花里「他にと申しますと?」

沙織「え…? それは…えっと…」

みほ「工具とか牽引用のワイヤーとかかな?」

沙織「そうそう、それを言おうとしたの!」

優花里「もちろん取り付けます。…ですが、早く戦車の土台を作りたいので先に上下車体を取り付けたいんですよね」エヘヘ

麻子「あと、操縦手や通信手のハッチの説明もまだだ」

優花里「ハッチは開いた状態か閉めた状態のどちらかを選択して取り付けます」

優花里「ただ、開けたハッチから未塗装の内部が見えると残念な気分になるので、今回は閉めた状態にしました」

麻子「そうなのか」

優花里「ここにフィギュアとかを乗せるのであれば開けておきますが、今回はフィギュアはありませんからね」

麻子「ふむ」


みほ「確かに、ハッチもキューポラも閉じちゃったら中がどうなってるか分からないもんね」

優花里「はい。中に誰もいませんのでハッチは閉じちゃって知らんぷりです」


沙織「…なんか説明が雑になってきてない?」

優花里「否定はしませんが、"手を抜けるところは手を抜く"というのもプラモ作りでは大事なんです」

沙織「えー…」

優花里「聞こえは悪いかもしれません。拘るのもプラモですが拘らないのもまたプラモなんです」

優花里「というのも、プラモデルはこだわり出したらキリが無いんですよね」

優花里「なのでいわゆる"沼"にハマってしまうと、プラモ作りが趣味からだんだん"作業"に変わっていって楽しめなくなっちゃう場合があります」

優花里「ですので"良いものを作りたい"という気持ちも大事ですが、最初のうちは純粋にプラモ作りを楽しむことを第一にすべきだと思います」

麻子「いきなり凄いものを作ろうとしたところで、知識も技術も無ければどだい無理な話だろう」

麻子「理想と現実のギャップに苛まれ、趣味を趣味として楽しめなくなったら本末転倒だ」

優花里「冷泉殿の仰る通りです。まずは楽しむことが第一です」

沙織「なるほど…!」

華「何だか、みほさんが大洗で戦車道を始めた頃を思い出しますね」


優花里(この考えには賛否あるかもしれません)

優花里(でも、やっぱりプラモは趣味です。趣味である以上トコトン楽しむべきです)

優花里(そして、楽しんでいるうちに知識や技術が身に付いて良いモノが作れるようになるんです)

優花里(西住殿が我々に戦車道の楽しさを教え、優勝へと導いてくれたように…!)

コップのフチ子さんでも乗せるか


~~~~~~~~


カァー カァー


沙織「あ、もうこんな時間だ」

麻子「そろそろ帰らないとおばぁに怒られる」

華「では私はこれでお暇します」

みほ「うん、またね」

優花里「長い時間お付き合い頂きありがとうございましたぁ」ペコリ


シーン....

みほ「…」

優花里「…」


みほ「なんで優花里さんは帰らないのかな?」


優花里「え?」

みほ「え?」



優花里「私は早くこのティーガーを完成させたいので…」

みほ「う、うん…気持ちはわかるけど…」

優花里「西住殿…」

みほ「うっ…」

優花里「にしずみどのぉ…」ウルウル

みほ「わ、わかった…! 今夜もウチにおいで」

優花里「はいっ!!」

みほ「優花里さんがそんな手を使ってくるとは思わなかったなぁ…」

優花里「えへへ」スリスリ

みほ「こら、おすわり」

優花里「はい」チョコン

みほ「お手」

優花里「わ、私は犬じゃありません!」ポン



みほ「それで、どこまで進んだっけ?」

優花里「えっとですね、車体上部に前面装甲板やエンジン点検用ハッチを取り付けました」

優花里「ですので、それを車体下部と合体させちゃいましょう」

みほ「今までの中で一番大きいパーツを接着するわけだよね」

優花里「ええ。ですからパネルの時と同じようにまずは仮組みをしっかりして噛み合いをチェックしましょう」

みほ「はい」カポッ

優花里「…で、確認ができたらテープをキツ目に貼って上下車体の隙間をなくします!」

みほ「はい」ペタペタ

優花里「そして、隙間が無いことを確認したら、流し込み接着剤を塗っていきます!」

みほ「はい」スススー

優花里「あとは接着剤が乾くまで乾燥させます!」

みほ「はい」カンソー

優花里「…西住殿の今日のパンツはTバックですか?」

みほ「はい」

優花里「…」

みほ「え? あっ、ちち違うからっ!!//////」

優花里「…生返事してたんですね」ジトー

みほ「ボコのこと考えてただけだよ」



みほ「乾燥まで時間かかりそうだし、テレビ観てても良いよね?」

優花里「ええ。良いですよ」

みほ「よかったぁ」

優花里「?」

みほ「これで優花里さんが『ダメですぅ! 次の作業があるんですぅ』なんて言い出すなら鎖で繋いでおかないといけないから…」

優花里「人を躾のなってない犬みたいに言わないでください!」

みほ「えへへ。…おっ、始まった」


テレビ『おいらボコだぜっ!!!』


ペーッペペペッペッペペッペッペーッペー

ピーヒョロロー ヒョロー


みほ「やってやる やってやる やーーってやるぜ♪」

優花里「やっぱりボコですか…」アハハ

みほ「そうだよボコだよ」

優花里「もはや西住流ではなくボコ住流ですね」

みほ「あ、それ良いかも」


ボコ『お前ら! 今日はプラモを作るぞ』


みほ「!」

優花里「お?」


ボコ『へっへっへ! こう見えておいらはプラモを作るのが得意なんだぜ?』

ボコ『みんな驚いてアゴ外すなよぉ?』


みほ「へー、知らなかったなぁ」

優花里「私も知りませんでした。ちょっと興味深いです」


ボコ『よーし出来た!!』

ボコ『うーん、我ながらまぁまぁかなっ♪』


優花里「どこが"まぁまぁ"なんですか! 砲身はスジ入ったままだしゲート処理一切ナシ! しかも塗装もしてない! 手抜きにも程がありますっ!!」プンスカ

みほ「すごいなぁ…!」キラキラ

優花里「どこがですっ!!」



ボコ『それじゃ、完成したコイツをホビーショーに持っていくぞ! これでメディアから取材殺到して出演料で大儲けだぁ!』テクテク


優花里「ボコって銭ゲバなんですね……」

みほ「それがボコの良いところだよ?」

優花里「幼児向けアニメですよね? サブタイトルに"こ●亀"って書いてませんよね???」


アヒル『ちょーっと待ったぁ!!』

ボコ『げっ!』

ウサギ『あぃー! ここから先は行かせないよー!』

カバ『はっはっは! チェックメイトだ!』


優花里「何処かで見た子がある脇役ですね…」

みほ「?」

優花里「いえ…もうツッコんだらキリがないのでやめましょう……」ゲッソリ


ボコ『オイラの"レオパルドI A4 ディスプレイモデル"は誰にも渡さないぞぉー! かかって来やがれぇ!!』


優花里「ちょっと待って下さい! なんでそんな激レアプラモ持ってるんですかッ!!」

みほ「優花里さんどいて。テレビ見えない」



ボコ『ぐぁぁぁ………おいらのレオパルトがぁぁぁぁ………』


優花里「ぐぁぁぁ………幻のディスプレイモデルがぁぁぁぁ………」

みほ「何だかんだ言って優花里さんもボコにハマっちゃってるよね」アハハッ

優花里「そりゃあんなオジサマ世代の激レアプラモ出てきたら誰だって食い入るように見ちゃいますよぉ!!」

優花里「しかも脇役がボコもろとも粉砕するなんて、このアニメの製作者は戦車モデラーに親でも殺されたんですか!!?」

みほ「優花里さん知らないの? 小さな子供だけでじゃなく大きくてマニアックなお友達もたくさん楽しめるのがボコなんだよ?」

優花里「…そうですか。じゃぁ次は竹書房でも壊しに行ってください」ムスッ

みほ「…」

優花里「…」

みほ「…」チラッ


[タイガー1型 初期生産型]




優花里「待って下さいやめて下さい!! 私が悪かったですからぁ!!!」ウワァァァァン



ボコ『っぅ…今日も負けちまったけど……視聴者からのお便りを紹介するぞ…』ボロッ


優花里「なんか痛々しくて見てられないです」

みほ「それがボコの良いところだよ」

優花里「西住殿、サイコパスって言われたことありません?」

みほ「?」


ボコ『今日の応援メッセージは…!』ヒリヒリ

ボコ『アリスちゃん! 君に決めたッ!!』


みほ・優花里「!!」


ボコ『"こんにちはボコ。今日はプラモデルを作る回だから急いで作りました"』

ボコ『おお! ボコレリのインテリアモデルだぜ! エンジンまでしっかり作り込まれててすげーやっ!』


優花里「…このボコの中身誰なんです?」

みほ「中に誰もいないよ?」


ボコ『"私は戦車道をやってます。そして負けたくない人がいます!"』

ボコ『なるほど、戦車道かぁ。オイラはよくわかんないけど、まっ、とりあえずがんばれ!!』


みほ「っ…!」

優花里「このアリスって人…まさか…!」


ボコ『"戦車道では負けちゃったけど、プラモ作りじゃ絶対に負けない自信があります…!"』

ボコ『そうだよなぁ。オイラもプラモ作りだけは絶対誰にも負けたくないぞ!!』

ボコ『お便りは以上だ! それじゃぁ来週また会おうぜ!』バキッ!!


みほ「次会う時までに戦車プラモ作れるようにしないと…!」

優花里「いや、西住殿の場合プラモより戦車道の方を……まぁプラモ仲間が増えるのは大歓迎ですけど」

みほ「優花里さん! こうしちゃいられないよ! 組み立ての続きやろうよ!!」

優花里「さっきまでの無関心がまるでウソのようです。恐るべきボコパワー…」



☓ 優花里「何処かで見た子がある脇役ですね…」

○ 優花里「何処かで見たことがある脇役ですね…」



みほ「それより優花里さん、車体の上下の接着が終わったけど、次は何をするの?」

優花里「車体の後部に排気管、そしてエアクリーナーのボックスを取り付けていきます」

優花里「特にエアクリーナーはティーガーの初期生産型の最大の特徴でもあります!」


みほ「何で初期以降は無くなっちゃったんだろう?」

優花里「被弾による故障が頻発したからだそうですよ」

みほ「あ…そう言われてみるとIV号に付いてるエアクリーナーもよく取り替えてるもんね」

優花里「ええ。ですから我らがIV号戦車も"J型"になると同様の理由で撤去されちゃうんですよね。ちょっぴり寂しいです」


みほ「でもエアクリーナーがあっても車内の空気はあまりキレイになってる感じはしないかな…」

優花里「あはは。エアクリーナーといっても車内の空気ではなく、エンジンに送る空気をキレイにするものですからね」

みほ「あれ? そうなんだ?」

優花里「北アフリカ戦線のような砂漠地帯での戦いでは砂埃が侵入するとエンジンが壊れちゃいますからねー」



みほ「そっか…」

優花里「でも安心してください西住殿! 車内は車内でちゃんと"ベンチレーター"とよばれる換気扇がついていますよっ!」

みほ「! そうだよね!」

優花里「薬莢の排出と同時に燃焼ガスも出て車内が充満しちゃいますからね。そこを気にかけて頂けるなんてさすが西住殿ですぅ~!」


みほ「どちらかと言うと人のガスが気になるかな…」


優花里「…」

みほ「…」

優花里「………私じゃありませんよ?」




~~~~~


優花里「…ということで、まずは排気管が出来上がりました」

みほ「あはは。優花里さん一言も喋らず黙々と作ってたね」

優花里「えへへ。プラモデルを作ってるとどうしても無言になっちゃうんです」

みほ「何かに集中するとなるよね。でも喋らない優花里さんってなんだか違和感あるなぁ」

優花里「え、そうですか?」

みほ「うん。バスガイドみたいに戦車のことを解説するのが優花里さんなんだもん」

優花里「あ、それはあるかもしれません」


みほ「ところで、排気管の組み立ての説明とかは大丈夫だったの?」

優花里「排気管にも細かいパーツはありましたが、細かいパーツの扱いについては既に解説済みですからね」

みほ「言われてみたら…。あの時の華さんの器用さに助けられたもんね」

優花里「ええ。そんな五十鈴殿には及びませんが私も戦車モデラーの端くれです」

優花里「これしきのパーツを扱えないようで装填手は名乗れませんっ!」

みほ「いや、装填手は名乗って良いと思うよ?」アハハ



優花里「では次の」

みほ「あれ?」

優花里「どうしました?」

みほ「マフラーやエアクリーナー以外にもいろいろ取り付けるパーツがあるみたいだよ?」

みほ「例えばこれ…足回りで故障したときに車体を持ち上げるジャッキかな?」

優花里「はい」

みほ「そしてこっちの"Z"字のものはエンジン始動クランクだと思う」

優花里「そうです」

みほ「…工具類は取り付けないの?」

優花里「実を言うとそこは迷いましたが、工具はあとから取り付けることにしました」

みほ「えっ? そうなの?」

優花里「はい。ティーガーの車載工具の一部は排気管のそばについてます」



みほ「さっきのジャッキやクランクがそうだよね」

優花里「ええ。それらの工具は位置的に取り付けてからだと塗装が極めて難しいんですよ…」

みほ「あ…確かに。ジャッキの上にはエアクリーナーのボックスもあるし、塗装するの大変そう…」

優花里「ですので、この段階ではあえて車載工具は取り付けず、車体や工具の塗装が終わってから取り付けようと思います」

みほ「うん、その方が楽だもんね」

優花里「はい! 塗り分けが必要な工具以外のパーツを取り付けちゃいましょう」



優花里(ただ、塗装した車体の上に接着するので接着した後に位置がズレるとその部分の塗装が剥げちゃいます)

優花里(それが嫌な人は先に工具類を接着して、車体塗装のあと工具を塗り分けちゃいましょう。私も先に取り付けちゃう派です)




優花里(ちなみに、まほ殿が乗るティーガーについている工具は、


●車体後部
・ジャッキ(塗装されていません! 車体と同じ色ですっ!)
・牽引用シャックル

●車体上部
・ジャッキ台
・消化器(こちらも車体と同じ色です)


といった程度で、スコップやワイヤーといったものはありませんでした)


優花里(まほ殿は国際強化選手に選ばれる実力者だけにファンも多く、まほ殿のティーガーを再現しようとするモデラーさんも多いでしょう)

優花里(そういった方に考慮してあえて塗装が難しい車載工具を最低限にして下さったのかもしれません…!)

優花里(…ただ、工具が無い代わりに工具を固定する金具はついてますので、技術的に可能であれば写真を参考に追加してみてください!)




みほ「排気管やフェンダーは今までと同じように接着すれば良いよね?」

優花里「はい。もちろん仮組みをしてどこに取り付けるか確認してからですよー」


みほ「エアクリーナーのボックスは"初期型"って書いてある方を選べばいいんだよね?」

優花里「おっしゃる通りです。部分的に違えど、形状はソックリなのでパーツナンバーをしっかり確認して切り離して下さいね」


みほ「クリーナーのパイプの部分はどうするのかな?」

優花里「付属のパーツがありますので、それを説明書に記載されている長さにカットします」

優花里「ただ、パイプの長さは2種類なのでちょっとだけ注意です」

みほ「うん。わかった」チョキチョキ

優花里「また、クリーナーパイプの接着は瞬間接着剤を使います。説明書をよく見て付ける場所を確認してください」

みほ「オッケーだよ」ペタッ


優花里「ライトは説明書通りに組み立ててOKです。ただ、ライトの基部が細くて折れやすいので、接着は最後でも構いません」

優花里「強度が不安って場合は一度カットして基部とライト本体に穴を開けて真ちゅう線をインサートして補強するって手もあります」

みほ「補強は難しそうだから、ライトは組み立てだけやって最後に取り付けるよ」

優花里「その方がいいかもしれません。組み立てに夢中になるとちょっとした拍子にボキッとやっちゃいますから…」




優花里「つぎのSマイン発射筒は5つありますが、説明書を参考にAを2つ、Bを3つ作りましょう」

みほ「Sマインって?」

優花里「戦車に接近してきた歩兵を攻撃するための近接防衛兵器です」

優花里「ボンと飛び出てバーンと弾けて破片で接近してくる歩兵を攻撃するんです…!」

みほ「そんなものまであるんだ…」

優花里「火炎瓶や吸着地雷、爆雷といった対戦車兵器抱えて戦車に肉薄する命知らずな兵士も大勢いましたからね」

みほ「ほうほう…」

優花里「映画『プライベート・ライアン』の終盤で、ティーガー相手に靴下で作った爆弾を使うシーンは有名です」

みほ「えっ、靴下で?!」

優花里「はい。靴下の中に火薬や導火線を詰め込んで、外側にグリスを塗ってくっつきやすくした即席の対戦車爆弾です」

みほ「そんなので戦車と戦えるの?」

優花里「撃破は無理でしたが、履帯を外して足止めするのに成功しましたよ」

みほ「…だよね。そんなものでティーガー撃破出来るなら偵察のついでに優花里さんにお願いしちゃうかも」

優花里「絶対にイヤですっ!!」



優花里(言わずもがな戦車道で近接防衛兵器を使うことはありませんので、まほ殿のティーガーIを作る場合は取り付けないでください)

優花里(また、できるならSマイン発射筒の取り付け基部ごと取っ払ってください)


みほ「次は」

優花里「"フロントハッチ"こと、通信手席と操縦手席のハッチの組み立てです」

みほ「あれ? でもハッチはさっき

優花里「このハッチはオープンとクローズどちらかを選んで組み立て&取り付けます」

みほ「…」ムスッ

優花里「ただ、先述の通り、開けても中に誰もいませんので、今回は閉じた状態で作ります」


みほ「優花里さん優花里さん」

優花里「はいはい? どうされました?」

みほ「ハッチは普通に組み立てるの?」

優花里「ええ。そうですよ?」

みほ「そうなると、外側に出てくる"ペリスコープ"の塗装ってどうすればいいのかな?」


優花里「おお! いい質問ですねぇ!」


みほ「そ、そうかな…?」

優花里「そこに目が行くとはさすが西住殿です! 着眼点が素晴らしい!」

みほ「えへへ、照れるなぁ…」テレテレ

優花里「いやぁ、長年戦車に携わっているだけあって本当に良いところに目が行きます! 不肖・秋山優花里うれしいですっ!」

みほ「もー優花里さんったら褒めすぎだよぉ…////」

優花里「それで、ペリスコープなんですが、」

みほ「うんうん」ワクワク


優花里「特にこれと言って何もありません。普通に組み立てて後で塗装します」キッパリ


みほ「…別に良い質問でも素晴らしい着眼点でも何でもないじゃん」



優花里「…というのは冗談で、ここも車載工具と同じようにやりやすいやり方を選べばオッケーです」

みほ「やりやすいやり方って?」

優花里「例えばさっき言ったように、普通に組み立ててあとから細い筆つかって塗装する方法がまず一つ」

みほ「うん」

優花里「次に、ペリスコープを先に塗装して、その部分だけマスキングテープを貼っておいて、あとは組み立て、車体の塗装をして、最後にマスキングを剥がす」

みほ「うんうん」

優花里「と言った具合に、選択をしますが、現時点で私達は塗装のツールを持っていませんので、今回は前者にしたという次第です」

みほ「そうなんだね」




みほ「あとは説明書を参考に排気管カバーを取り付ければ車体の後部は終わりみたいだね」

優花里「ええ。急ピッチで作ったおかげでだいぶ進みましたね」フゥ...

みほ「うん」



優花里「いかがでしたか? 西住殿」

みほ「ん?」

優花里「ここまで作ってみた感想ですっ♪」

みほ「うーん…」

優花里「」ワクワク

みほ「足回りや上下車体の合体まではいろんな作業があったけど、それ以降は細かいパーツの取り付けを繰り返すって印象かな?」

優花里「なるほど…!」

みほ「うん。だから、このあたりなら細かいパーツをなんとか扱えるようになれば大丈夫かな? って思った」

優花里「」ニコニコ

みほ「え…ど、どうしたのかな…?」オロオロ

優花里「あの西住殿がここまで戦車プラモに夢中になってくれたので秋山優花里、感謝感激雨霰ですっ!!」

みほ「あははっ。優花里さんがあれだけ熱心に解説してくれたら誰だって夢中になれちゃうよ」





みほ「ありゃ…気づいたらもうこんな時間だ」

優花里「昨日に続いて今日も随分と熱中しちゃいましたね!」

みほ「うん。でもかなり進んじゃったから皆にはちょっと申し訳ないかな」

優花里「あはは。その時はもう1輌つくっちゃいましょう!」


みほ「また同じティーガー作るの?」

優花里「今度は海外メーカーのキットとかいかがです?」

みほ「海外メーカーだと今作ってるのとどう違うの?」

優花里「パーツ数が多くてより細かい部分までしっかり再現されています」


みほ「そうなんだ? 作り慣れたら挑戦しても良いかもだね」

優花里「」ニヤニヤ

みほ「え」

優花里「参考までにこちら某・海外メーカーのIV号の説明書です。どうぞ♪」

みほ「うん? どれどれ?」パサッ


https://i.imgur.com/kfQfbZB.jpg


みほ「げぇっ!!」

優花里「いかがです? 作り甲斐がありますよねっ♪」

みほ「無理無理! こんな細かすぎるの私作れないよ!」

優花里「今じゃなくてある程度プラモ作りに慣れてから挑戦すれば良いですよ。いきなりやれなんて言いませんので安心して下さい西住殿♪」

みほ「むう…優花里さんのいじわる…」


面倒でもー♪手ー抜きダメー♪

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