幸子「ラーメン大好き?」幸子P「輿水さん?」 (21)

モバマスSSです
輿水幸子がラーメンを食べるだけです。
某今期アニメ要素は殆どありません。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1518415523

「幸子ォ! 北海道行くぞォ!」

「は?」

「──で、流されるままここまで来たわけですけども」

「流石北海道、超寒いわ」

 東京からおよそ3時間。北海道は旭川へと降り立った幸子とプロデューサーの二人は、摂氏2度の冬空から逃げるように駅前のホテルに引きこもっていた。

「全く、情けないですね。これくらいの寒さ、あの時のノルウェーに比べたらあったかいくらいです」

「じゃあやっちゃう? 『コロリもあるよ! アイドル寒中水泳大会』。実はスキーだけじゃなくてこっちもオファー来てたんだけど」

「絶対に嫌ですよ!」

 そんなこんなで暖をとりながらうだうだと話していると、突然グゥ~という音が部屋の中から聞こえた。慌ててプロデューサーから目を逸らした幸子が時計を見ると夜の8時。

「飯食うか……」

「そうですね……」

「っし、行くか」

「ちょ、ちょっと待ってください! さっきまで寒い寒い言っておきながらなんで外に出ようとしてるんですか!」

「だって、わざわざ旭川まで来たんだから食わなきゃ損でしょ。旭川ラーメン」

 旭川ラーメン。それは旭川の中で進化した拉麺。加水率低めの中細縮れ麺が特徴の醤油ラーメンが主流とされている。

「なんですか今の……」

「どうした突然。ともかく、すぐ側だからさっさと行くぞ」

「ああもう! 待ってくださいプロデューサーさん!」

 そう言って飛び出したプロデューサーを追いかけ歩くこと数十秒。横断歩道を渡ってすぐの所にラーメン屋の看板が大きく掲げられていた。その名前は、幸子も何度か目にしたことがある。

「ここだ」

「案外近いんですね……」

 それでも寒いものは寒いので、二人はそそくさと店の中へ。なにやらパーカー一枚で歩いている人がいたような気もしたが、それは気のせいだと幸子は自分に言い聞かせる。

「いらっしゃいませ。2名様でしょうか?」

「はい」

「お掛けになってお待ちください」

 店員に促され、二重扉のすぐ奥にあるベンチへ腰掛ける二人。だがそれも束の間、運良く空いたカウンターへと案内された。

「こちらメニューです」

「あっ、ありがとうございます。俺はもう決まってるんだけど、幸子はどうする?」

「ならプロデューサーさんのおまかせで。ボク、ラーメン詳しくありませんし」

「あいよ。すみませーん」

 すぐ後ろにいた店員を呼ぶ。しかし、どうやら空の丼を運んでいたらしく一度奥へと引っ込んでからやってきた。

「えっと、塩2つお願いします。一つは学割で」

「かしこまりました。塩と学割の塩ですね、少々お待ちください」

 軽く店内を見回してみる。あまり席数の多くない店内は見事に満席で、どう考えても混雑状態だった。

(こりゃ、結構待ちそうだな……)

「どうかしましたか?」

「んにゃ、なんでもない。もーちょい空いてる時間に来た方が良かったかなーって思っただけだ」

「ボクは別にいいですよ? 待ち時間も楽しみの一つですし。それに、きっとプロデューサーさんが食後のデザート買ってくれるって信じてますから」

「最後で台無しだよおい。まあいいけどさ」

 結局15分程待ってようやくラーメンが着丼。ラーメンの丼にしては珍しい綺麗なお椀型の分厚い丼の中を覗くと、白湯と書いてバイタンと呼ばれるスープの中央に真っ赤な小梅が乗っていた。

「そんじゃ、いただきます」

「いただきます」

 まずは蓮華でスープを一口。『こってり』とも『あっさり』の中間のような優しくまろやかな風味が口の中に広がる。豚骨と聞くと強い臭みを連想するが、臭いはあまり気にならない。
 スープの中を漂う麺をつまみ上げ、一気に啜る。細めのストレートで、少し固めの麺だ。

(ラーメンと聞くと縮れ麺ばかり想像してましたが、これはこれで中々……)

 麺二口目に入る前にここでキクラゲに箸を伸ばしてみる。大きくてコリコリとした歯ごたえがある。だが、やはりというか殆ど味はしない。一気に食べきり再び麺へ。

「ふー、ふー。ズズッ、ズズルッ…………。あれ、さっきまでと違うような……?」

「そうだな。麺がスープを吸ってモチモチになってる」

 なるほど、と幸子は勝手に納得する。弾力があり程よくスープの味が染みた麺は、最初とはまた違った味わいを見せていた。麺が三分の一減ったあたりで箸休め代わりにメンマを食べてみる。

「あふっ!?」

 想像を遥かに超えた熱さに思わず声が出る。しかし、程よい塩気とザクザクとした食感のお陰でまた麺へと箸が進む。

「ズルッ、ズズズッ……」

「ズズズルッ……。美味いか?」

「ズルルッ……。はい、プロデューサーさんにしてはなかなかのチョイスです」

 最小限の会話だけを交わし、ようやくチャーシューにターゲットを決める。分厚い一枚を4等分しているのか、大人なら一口でペロリといけそうなサイズのそれを小さく噛み切る。
 トロトロで柔らかいチャーシューは、軽く噛むだけでも旨味が染み出てきた。

 そうして丼の中身が半分ほど減った辺りで、いつの間にか白濁したスープの中に隠れた小梅を発見した。口直しとばかりに口に入れると、梅干しの酸味のおかげかなんだか口の中がさっぱりしたような気がする。

(口直しにはいいんですけど、これを“小梅”と呼ぶには抵抗がありますね……カリカリ梅?)

 そんなことを考えながら、残り半分に手をつける。あまり味もキツ過ぎないお陰で、普段は少食の幸子でも気づけば丼の中は殆ど空になっていた。

(残りのスープの中にご飯入れても美味しそうではあるんですけど、流石にはしたないですかね……。それにそんなことしたら食べきれなさそうですし)

 結局スープを少しだけ飲んで終わりにすることに。

「ふう、ごちそうさまでした」

「ごちそうさん。んじゃ戻るか」

 会計を済ませて店を出る。肌寒い風が吹いてはいるが、ラーメンのお陰で体はポカポカと暖かかった。

 ──翌日

「うっっっわ寒っ!」

「昨日はアレでまだ暖かかったんですね……道路もツルツルですし」

「アレであったかいとか冗談だろ……こんなん顔凍るっての」

 昨日の暖かさはどこへやら、風に乗った雪と氷点下の冷たい空気に肩を震わせるプロデューサー。防寒具で多少風は和らいでも、やはり寒いものは寒い。対して幸子は撮影用のウェアのお陰か平気そうな顔をしている。

「はぁ……仕方ないですね。情けないプロデューサーのためにも、一発で終わらせてきてああげますよ! その代わり、ご褒美は弾んで貰いますからね!」

 そう言って駆け出す幸子。結局大見得を切った通り撮影は一度で完璧に終わるのだが、慣れないスキー靴のせいでこのあとすぐに転んでしまう。

「へ? うぇああっ、ふぎゃん!」

以上です。
元々単発ネタの為続くかは分かりません。

依頼出してきます

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