三船美優「純愛ラプソディ」 (23)



『プロデューサーさん……これからもずっと……愛しています……』




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流されるまま生きてきて……

もともとこれと言った取り柄もなくて……

あの日……ヒールが折れて……立ち上がれなかった私……

OLの仕事でも……そう……人生でもつまずいていた私に……貴方は手を差し伸べてくれて……

そして貴方は

「アイドルになりませんか?」

って言ってくれましたね……

困惑する私に

「決めるのは貴女自身です」

そう言ってくれて、私は自分の意志でアイドルになると決めたんです……


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『アイドルになる』

そう決意したはいいものの

最初は自信がなくて……恥ずかしくて……

レッスンですらもうまくできるかわからなくて……

そんな私を、貴方はいつも支えてくれて……アイドルの楽しさを教えてくれました……

初めてのお仕事でも

ディレクターさんに言われたことしか出来なかった私に

「自分で考えたことをやればいい」

と、自分の意見を持つことの大切さを教えてくれて……

私はアイドルの道に一歩踏み出せました……


アイドルになってからの日々は

恥ずかしいこともありましたけど

新鮮で……楽しくて……驚きに満ちていて……

それに……貴方と出会って、ずいぶん心が安らぐようになりました……

留美さん、楓さん、心さん、仁奈ちゃん……他にもたくさんの大切なお友達も出来ました……

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貴方に出逢えたことは『きっと神様からの贈り物だった』と今でも思います……

貴方は私の仕事を見守り……褒めて……時には指摘してくれて……

くじけそうになった私をいつも導いてくれました……

そんな日々を過ごしていくうちに、貴方の存在は私の中でどんどん大きくなっていって

優しい貴方に惹かれていって

いつからか、貴方のことばかり考えるようになりました……

多分……いいえ、多分ではないですね

はっきりと言えます



『貴方を愛していた』んです


こんなに誰かを想ったのは生まれて初めてでした……

でも、アイドルとプロデューサーの恋愛は業界でご法度でしたし

「好きです」なんて告げる勇気は私にはありませんでした……

誰にでも優しくて誠実な貴方だから……他の子たちにもすごく慕われていて……

でも、貴方は『真面目なプロデューサー』だから

その子たちの思いは尊重しつつ、応えたりはしないって分かってはいました

でも……そう分かってはいても

『誰かと結ばれてしまうんじゃないか』

『私のことを見てくれなくなるんじゃないか』

私も、そんな焦燥感にかられていたんですよ……?


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そんな私にも、貴方に気持ちを伝える日がくるなんて……


忘れもしません……

あの日……温泉ロケで、菜々ちゃん、心さん、楓さん、早苗さんと私でロケを終えて

女将さんのご厚意で泊まらせてもらえることになって、皆で宴会をしましたね……

宴が進み、酔いが回ってきたので

「少し火照ってしまったので夜風に当たってきます」

と言ったら

「大丈夫ですか?付き添いますよ」

そう言って、貴方も付いて来てくれましたね……

表面上では遠慮していましたけど

内心……すごく嬉しかったんですよ……?


それから、二人で旅館の外に出て

ライトアップされた綺麗な紅葉を一緒に見ましたね……

「綺麗な紅葉ですね……」

私がそう言ったら

「紅葉も綺麗ですけど、美優さんはもっと綺麗ですよ」

なんて、貴方がいつもの笑顔で言うから

私の中の愛しい気持ちが抑えきれなくなってしまって……



「好きです……プロデューサーさん……愛してます……」


男の人に抱き着いて告白するなんて……

しかも『愛してます』だなんて……

今考えても恥ずかしい……

お酒が入ってたから……かもしれません……



でも……私の恋は成就しませんでした……



「……美優さん、お気持ちはとても嬉しいです」

「でも、僕たちはあくまでアイドルとプロデューサーという関係です……それに」

そう言って貴方は一枚の女性が写った写真を見せてくれました……

「この……方は……?」



「僕の……婚約者です」



その時、私の中で何かが壊れた音がしました……

抱き着いたまま、貴方の胸で惨めに泣いて……

優しい貴方は泣きじゃくる私をそっと抱きしめてくれました……

あの時はそのぬくもりだけが救いでした……

その後は……あまり覚えていません……


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あのロケの後、幸いしばらくオフだったので、自宅で色々と考えました


『そんな素振りなかったのに……』

隠してたわけではなかったのでしょうね……

あとで聞いたら、知ってた人もいましたから……


『もっと早く出逢えていたら……』

でも、時はもう戻せません……

貴方の心にいるのは私じゃない誰か……


『この気持ちはどうしたら……』

婚約者がいても、貴方を好きな気持ちが消えるわけじゃない……

私のこの気持ちはどこへ持っていけばいいの……?


情けない話ですが、そんな感じのことをうじうじと考えてしまいました……

『アイドルを辞めてしまおうか……』

そんな考えも頭をよぎりました……


でも、ふと目に付いたファンレターを読んで

『貴方との出会い』

『初めてのお仕事』

『初めてのステージ』

『初めてのファンレター』

それから

『一緒に高めあった、貴方と、大好きなみんなとの日々』

を思い返して

『私はなんて愚かなことを考えてしまったんだろう』って思ったんです


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今も私はアイドルとして活動をしています

貴方も変わらず見守ってくれて……

あの後、いつもと変わらない態度の貴方を見て

『『貴方と人生を共に歩む』ことは出来ないけれど、『アイドルとプロデューサーとして共に進む』ことは出来る』

そう気がつけたから……


瞳を閉じればいつもそこに貴方の笑顔があって……

貴方と過ごした楽しくて優しい日々や

泣いてしまった私をそっと抱きしめてくれたあのぬくもりが、私に力をくれます……


私は、貴方のために今日もアイドルとして輝きます

これからも……輝き続けます……

だから……ずっと……見守っててくださいね……?



口には出せないけれど……



『プロデューサーさん……これからもずっと……愛しています……』


終わりです
タイトルでわかりますが、竹内まりやさんの『純愛ラプソディ』という曲を聞いて思いついた話です
jewelriesで選ばれたらぜひカバーしてほしいですね
HTML依頼出してきます

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