二宮飛鳥「Hello,Good bye,my painful days」 (18)

もみの木の林にとって代わり高層ビルが乱立するこの都会には不似合いに思えてしまうような雪がしんしんと降っていた。

ヒトと車がせわしなく行き交うこの東京というジャングルでも深夜も10時となると流石に幾分か静けさを思い出したかのように運んでくる。

煩すぎず、静かすぎず、月が綺麗な空気の冷える夜は、騒がしい音楽を好むボクでも今の気分には打って付けだったようだ。

「ハァ・・・」

溜息が白い靄となって瞬く間に霧散していった。さっきまで自分のモノだった熱と水蒸気があっという間に消えていく様に今の自分を重ねてしまって嫌になる。

苛立ちは足振りとなって現れ、寄りかかる屋上の安全策にブーツのかかとをぶつけ、軋んだ音を奏でた。

―――ボクの悪い癖だ。どうにもむしゃくしゃすると何かに当たってしまう。

そう思うと途端にばつが悪くなって屋上を見渡す。・・・といっても、この時間に好き好んで此処にいるヤツなんてボクくらいなものか。

ホッとしたような胸のすくような寂寞に襲われたような、ないまぜになった感情が胸の中で渦を巻く。落ち着け。激情に身を任せると碌なことにならないと、ボクはあの時学んだはずだろう。

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深く深呼吸をする。肺と同時に脳がスーッと冷えていくような感覚。そうだ、それでいい。まずは因果のほつれを解き直そうか。何故こんなにボクが悩むハメになったのか。それは―――

「お、こんなところにいたのか飛鳥。もう夜も遅いし寮まで送ってくぞ」

ギィッと事務所から屋上へと続く扉の音を立てて現れたのは、他でもないボク、二宮飛鳥のプロデューサーだった。

「レッスンから事務所に戻ってきて何処へ行ってるのかと思ったら案の条ココである意味助かったよ。さ、帰るぞ」

・・・タイミングがいいのやら悪いのやら、ボクが重大な場面に直面すると彼は決まって現れる。それ自体が仕事の一環でもあるんだろうが、紆余曲折ながらも彼の発言が問題解決の糸口となることにボクは運命じみたものを感じずにはいられなかった。一種のお約束、とでもいえばいいのだろうか?

「・・・あぁ、わざわざすまないねプロデューサー。今いくよ」

もう少し独りごちていたい気分だったが、彼の誘いを断る程の理由も特にない。ほんの少しだけ屋上に積もった雪をサクサクと踏みしめながら扉をくぐり、階段を下りて行った。


雪という天候のせいなのか、都会という立地のせいなのか、ボクらを載せて寮へ向かう車は渋滞につかまりまるで亀のように低速ないしは停止を繰り返していた。

この分じゃ寮に着くのは11時回りそうだな、と運転席のプロデューサーが呟く。その表情には焦りも苛立ちもなく、ただ道の先を見つめていた。

車内を温めるヒーターとエンジン音の他には2人分の静かな吐息だけが周期的に響いてる。


乗車前に彼が自販機でボクに買ってくれた缶コーヒーをすする。今までのアイドル経験(正確に言えば少し異なるのだが)から微糖のそれを受け入れるに至ったボクを見透かしているのか、特に断りも入れず買って寄越したそれは、喉と同時に心まで潤すようだった。

体の内側の暖となる液体を半分ほど飲み終えペットボトルホルダーに缶を差し込むと、2人の間に再び静寂が訪れた。

おかしいな。いつもなら軽い冗談の1つや2つでも吐いて場を盛り上げようとする彼のことだ、何か特別な意味でもあるのだろうか?

表情は―――先程までと変わらない、穏やかで落ち着いた顔だった。どうやら何かが気に障っただとか、気まずいだとかそういう類のものではないらしい。

彼との、アイドルとしての非日常を逡巡する。ボクを灰色な世界から連れ出してから、失敗・悔恨・諦観を経て輝き始めて今日に至るまでの物語を。

プロデューサーは不思議な人間だった。

初めに彼と出会ったとき、ボクは「あぁ、彼も『痛い』ヤツなんだな」と感じたものさ。

まるで自分がオペラの主人公であるかのように仰々とした喋り方でボクに語りかけてきた。全てのモノがくだらないだなんて嘯いていたころのボクにとって、自分に親近感を感じざるを得ない『痛いヤツ』の登壇がいかにモノクロの絵の具パレットに新たな極彩色を差す出会いだったか。

かくして黄昏が支配する公園でボクらは出会い、1人、いや2人のアイドルとプロデューサーになった訳だ。

それからは激動の日々だった。何せアイドルだなんてボクのような人間には一生縁のない人種だと思っていたものだから、その知識や技術なんて皆無に等しかった。

ビジュアル、ボーカル、ダンスのどれを取ってもてんでなっておらず、初期は白い目で見られたこともあったっけな。フフ、今となっては懐かしいものさ。

今だから言えるが、さっさと辞めてしまおうかなんて思ったことも数え切れないほどある。結局ボクが求めたモノも此処にはないのか、とね。


けれどそんなある日、彼はボクを捕まえてこう言った。

「お前は上手く歌おうとするより、叫んだ方がいいかもしれない」

おかしな話だろう?歌唱し舞うことで魅了するアイドルに「上手く歌わなくていい」だなんて。トレーナーさんだって見たこともない苦笑いさ。

けど、結果的に彼の目論見は上手くいった。元々騒がしい音楽が好きだったボクは、自分の思う全てを声に乗せて絞り出した。

自分の中の痛々しさを決して隠さず、レゾンテートルを掲げ、ボクは此処にいるとセカイへ伝えるような思いで紡いだ。

歌声を聴いて確信したのか、そこから二宮飛鳥は『中二病系アイドル』として売り込むことになり、闇の中の光―――共感者(シンパサイザー)としての道を歩み始めたんだ。

あのときの彼の言葉のように、彼の存在がボクのアイドルとしての暗闇に包まれた荒野を進むための篝火となり、人生の旅路を進むことが幾度となくあった。

ボクがボクを見失った時も、蘭子と理解り合えず喧嘩したときも、彼は方法こそ違えどそこに居て、次に進むための足掛かりとなる助言をくれたんだ。

ここまで思い出して、なかなかボクというヤツは痛々しい以上に厄介な奴なんだなと自嘲する。彼がいなかったら、輝けることもなく自分の評価を見誤り没個性以下の存在に成り果てて板だろうことを想像すると、温かい室内に反して背筋がゾッと冷えていく。

―――閑話休題。さて、そんなボクの篝火たる彼は、この温和な顔の下で何を考えている?

アイドル達の導き手であり、シンデレラの隣で寄り添う存在であるプロデューサー。ボクの観測範囲内ではそれに加えて先を見通す予見者のように感じていた。

理解し、見通し、導いていく。もし彼が、今現状ボクが抱えているもやを見抜いているのなら、アイドル活動の妨げとなるそれを見逃しはしないだろう。

それを知っていて閉口しているのならば、それにたる導くための由縁が存在しているはずだ。

「プロデューサー」

「なんだ?」

永遠に似た静寂をようやく打破する。何も言わないということは待っているんだ、きっと。

「少し悩みがあるんだ。運転してるところ悪いんだが、聴いてくれるかい?」

「構わないさ。むしろ待ってたんだ」

どうやら考察していた通りお見通しだったらしい。事務所が倒産しても、探偵事務所を開いてやっていけるんじゃないか?

そんなことを言えば彼は『お前らをトップアイドルにするまでは辞める気なんてないさ』なんて言いそうなものだ。あくまで想像でしかないけど、ね。

そう返事した彼の顔は先程より少しばかり引き締まって、真面目そうだった。勤務外だというのに、少し悪いことをしたかな。

それでも、ボクは伝えるんだ。信頼する彼に、道を遮る黒い霧の正体を。

軽く呼吸をして、覚悟を決めた。

「今までボクはボクとして―――『痛いヤツ』である14歳の二宮飛鳥として歩んできた。これでもキミには感謝しているつもりさ。キミがいなければボクはここまで来ることはできなかった。

・・・ボクは2月3日をもって15歳となった。あくまでそれは暦の上でカウントされるだけで、特段意味のあることなんかない、なんて思っていたんだ。

けど、ボクが『中二病キャラ』で売っていてその齢を越えた以上、自分の痛さともサヨナラしなくちゃいけないのかな、ってね」

この一年、ボクは痛さを抱えて声を上げ、誰かと響きあうように進みながら成長してきた。

しかしそれは中二病―――思春期の中学2年だからこそできるキャラ性であって、そうでなくなってしまったボクには不釣り合いなように思えてきた。

子どもから大人になるということを、ここ最近はどういうモノか考えてきた。この喋り方を止めれば大人と言えるのか?あるいはさらなる次元に昇華し完成されたパフォーマンスを発揮すれば大人とされるのか?

時は残酷だ。もしこの問に回答が出なくとも、少なくとも肉体だけは大人のそれに変成していく。そんな歪な存在に身を落としたくはなかった。

何をもって大人とするのか?その命題が己の内を駆け巡り、いつしか底なし沼を形成していた。以前のボクならそんな仄暗い退廃に身を任せて落ちていったのだろうが、輝きに包まれた今、それは耐え難い未来でしかない。

ボクは・・・どうあるべきなんだ?

前を向いたままプロデューサーはしばらく眉をひそめ考え込んだ。ボクを『痛いヤツ』としてプロデュースしてきたのは他ならない彼で、ボクの問にも何か抱えるモノがあるのだろう。

進まない車の列に反して歩いていく人並が車窓から見えて、まるでこの空間だけが静止しているような錯覚に見舞われる。

「飛鳥はさ、妙に律儀だよな」

数分間黙った後、彼は顔をほころばせて静かにそう言った。

「・・・その心は?」

「あぁ何、この言葉にそこまでの意味はないさ。ただ斜に構えている癖に人の頼みは無下にしなかったり、志希や杏っていうウチでも何するんだか分からないヤツとの連絡役を請け負ったりだとかそういう話さ。

俺が助言して進むこともあったけど、お前は自分の問題に立ち向かう強さをもったすげー奴だよ」

車が少しだけ進む。

「今の相談に対する俺の答えは・・・と言いたいところだが、そんなお前の強さを買ってる俺としては安易に答えを出したくない。

飛鳥が進むべき道は、必ず自分で切り開ける。俺ができることは、その道を進む手伝いを少しするくらいのもんだからな」

「随分とボクを買ってるんだね、キミは。ボクは何度も失敗してきただろう?」

「それでもお前は立ち上がった。それだけの話さ。それとも二宮飛鳥は提示された答えをすんなりと受け入れるような型にはまるような奴だったか?」

彼なりの信頼とはいえ、突き放されるというのは心に刺さるものだね、やはり。そんな返しをされたなら、立ち向かうしか道はないじゃないか。

そうだね、とだけいって口を閉じる。人間は考える葦ならば、やはり知識と思考をもって突き当たる壁に向き合うべきなのだ。

意識を思考に沈める直前に、プロデューサーはこう残した。

「俺が思うに、二宮飛鳥の本質は『14歳であること』なんかじゃない。それよりもっと大きな自分自身の輝きを、お前はもう持ってるんだよ」

瞼の暗幕を下げ、意識を思考に集中させる。身体の内側に目を向け、内と外の境界を感じられなくなるほど深く沈み込む。

彼はさっき、『ボクの本質は14歳であることではない』と言った。

本質、本質か。買い慣れた飴の味を確かめるようにその単語を反芻する。ボクは公言しているように「型にはめられる」ということが嫌いで、彼が示したその言葉も一度他人が放ってしまえばただの人格の決めつけだ。

いつしか志希が言ったように、自己存在は本人のみにしか定義することが出来ない。ボクらは進化していく以上、「こいつはこういうヤツだ」なんてテンプレートに鋳造されるほどちっぽけなものじゃないはずさ。

けど、プロデューサーはボクがそう信じているのを理解した上で本質という単語を用いた。つまるところその符号が示すのは『お前が信じる二宮飛鳥はなんだ?』といったところだろうか。

ボクが信じるボク自身、か。やれやれ、なかなかに哲学じみた話になってしまったな。

自己評価をするならばボクはひねくれて器量が狭くただの少女で、未だにダンスが苦手なアイドルの1人、といったところだろうか。

自分は凄いだなんて虚栄心に塗れていたこともあったね。そんなものはアイドルになった瞬間に粉々に叩き潰されてしまったが。

けどそんなちっぽけなガラスのハートにひびが入る度、それと同時に光に包まれた偶像達に影響されたのか、その出会い1つ1つが二宮飛鳥という城を形成していった。

蘭子、志希、夕美さん、悠貴、巴、みく、美嘉さん、柑奈さん、詩織さん、音葉さん、莉嘉、美玲、小梅、杏、ありす、文香さん、周子さん、奏さん。

列挙しきれないほどの多くの輝きと響きあい、ボクは光を少しだけ知った。蛹が夜明けに羽化するように、ゆっくりと確実に。

気が付かないうちに、二宮飛鳥は孤独ではなくなったらしい。同僚やライバルだけじゃなく、ファンだってそうだ。

ボクは転換した方針通り、あるがままの痛いヤツとしてそこにいた。始めは小さな産声も、やがて多くを巻き込んでいつしかその数は「人気アイドル」の内に数えていい程度にはなった。

似たパーソナリティは引き合うのか、ファン達はボクに似て痛いヤツが多かった。

気取った言い回しを好む少年、過去に心の傷を負った少女、絶望の淵からボクが救い上げてくれたと息を巻く青年。

それぞれの想いを胸に、彼ら彼女らは痛々しいボクの叫びに引かれて周りに集まってくれた。その数が増えていく度に過去の灰色なセカイが新たな色に変わっていく感覚がボクは好きだった。

蘭子との一件を経て、ボクは寂しさという感情を学んだ。胸が締め付けられ喪失していく感覚を、叶うのならばもう得たくないものだということも。

今にして思えば、ボクは孤独に恐怖していたのかもしれない。だからこそ魂の共鳴を感じた蘭子との遭遇に心を躍らせたものだし、共感者(シンパサイザー)であるプロデューサーを信頼していたこともその裏返しだったのかもしれない。

ボクの声が誰かに響き、こだまのように返ってくる誰かの声にまた応じたのも、返ってくる声に喜びを感じていたから。

響いて引き合う周波数はやがて大きな波紋になり、痛みを抱えた小さな声は集い生きている証を今に刻み込む。そんなライブを何度も経験し、ボクらは独りではないことを叫び続けた。

孤独を抱えているヤツがいるのなら、ソイツに手を差し伸べればいい。幸せはそこにある、手を伸ばせ、ってね。

ボクは信じているんだ。孤独なんてものは手を伸ばせば振り払えるものなんだって。

そうか、そうだったんだ。一度脳でカチリとはまった歯車が急速に加速する。

始めは「ただの二宮飛鳥」だった。孤独を抱えて没個性に沈んでいるだけのただの少女だった。

次に「アイドル候補生二宮飛鳥」だった。スカウトされレッスンをし、その中でボクは変わっていった。

そして「アイドル二宮飛鳥」になった。孤独を叫ぶ声は響きあい、ボクの力になった。

共鳴すること。それがボクのマスターピース―――掛け替えのない力の根源だったんだ。


なんだ。簡単なことだったじゃないか。何故ボクはこんなにも当たり前のようなことを忘れていたのだろう?

数日間悩んでいたのが馬鹿みたいだ。本当に答えは自分の中にあったというのに、ね。

そう思うと安心からか急に眠気が支配権を主張し、ボクはまどろみの中に落ちていった。

「・・・すか・・・飛鳥、起きろ」

グラグラと三半規管をゆすられる衝撃で強制的に目を覚ます。あぁそうか、ボクは寝ていたんだっけか。

「・・・そんなに大げさにゆすらずとも、ボクはもう起きているさ」

「全く幸せそうな寝顔だったさ。寝顔で写真集なんて作ったら売れるんじゃないか?」

まったく。ふと窓の外を見やると我らが寮がそこにあった。スマホで時間を確認すると、ボクが意識を手放してからおよそ30分が経過していた。

日がまわる直前に寮には着くことが出来た。さっさとシャワーを浴びて、明日の準備でもしないとね。・・・冗談さ。

「ボクなりの答え、出たよ」

「あぁ、聞かせてくれ」

エンジンを切ってこちらを真剣に見つめるプロデューサーにボクは告げる。

「いくら年齢を重ねたとしても、ボクは響く限りの声を上げ続けよう。

たとえ分不相応だと糾弾されても構わない。ボクは数多の共鳴の末此処にいるんだ。手を引いたファンを裏切るなんてどうしてできようか?

セカイに闇が蔓延るのならばボクが切り開こう!ボクは此処に居ると叫び続けよう!

ボクは飛鳥、二宮飛鳥だ!ボクはいつまでもボクであり続ける!」

今まで渦巻いていたもやを吐き出すようにまくしたてる。一息ごとに枷が外れていくように体が軽くなっていった。

ボクの演説を一通り聞き終えたプロデューサーはというと、

「やっぱり自分で答え出せたんだな」

なんて含み笑いをしていた。誰かの筋書き通りになるというのはあまりいい気分ではないが、このときばかり妙な安心感があった。

「さて、二宮さん。大声でのご高説のところ悪いんだけど、今何時か分かってる?」

「うっ・・・」

前言撤回。しばらくは寮の窓からのぞいてるアイドル達からの質問攻めと、彼のちょっかいに悩まされることだろう。

やはり激情に身を任せるというのは時と場を選ばなければいけないなと自嘲しつつ、脳裏に浮かんだ素朴な疑問を彼にぶつけてみる。

「もし、もしもだ。ボクがこの運命の分水嶺たるこの選択で『痛さを消す』ことを選んだとしたら、キミはどうするつもりだったんだ?」

「どうもなにも、飛鳥がそうしたいならそれにそったプロデュースをするまでさ」

「もしそれがアイデンティティーの喪失であり、滅亡に向かう一歩だと予見していても、かい?」

「二宮飛鳥はお前にしか表現できない。お前の道は、お前が切り開くんだ」

そこまで聞いて、あぁ、ボクが出会ったのがプロデューサーで良かったなと再確認した。

クサい台詞回しや派手な演出好きがここまでハマる人間なんて、そう出会えるものじゃない。

それから明日の予定を少しだけ確認しあい、プロデューサーは車を再発進させ家路へとついていった。

空を見上げるといつからだったのか雪は止み、雲は晴れ、澄み切った空気に月が金色に輝いて明るかった。

たとえ15歳になったとしても、ボクの歩むべき道は変わらない。前例がないというのなら寮前に積もったまだ踏みしめられていない雪の上を歩くように進むだけだ。

「ボクは、此処にいる」

そう呟いた声は静寂の寒空に人知れず消えていく。たとえそこに誰も居なくても、遠く離れた誰かの下に届くことを願いながら。

次の1年はどんなヤツに出会うのだろうか?どんな仕事が待ち受けているのだろうか?答えは分からない。

ボクが生きて進み続ける限り、あらゆる困難が襲うだろう。構わない。これがボクの選んだ道なのだから。

「さぁ―――往こうか」

再び空に放った言葉に、はるか彼方の6等星が瞬いた気がした。

以上です。誕生日ssのつもりが大遅刻してしまいました。

HTML依頼出してきます。

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