【モバマス】カップケーキ (16)

三村かな子の誕生日SSです。

出会いなどの設定はデレステ準拠で書いていくので、彼女のメモリアルコミュを読んでからだとより楽しめると思います。
また、今開催しているイベントの妄想が若干入ります。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1515246507

 かな子は時折、自信をスイーツに見立てる。そして俺はパティシエらしい。

 プロデューサーはアイドルというスイーツを作り、ファンという客に届ける。そしてライブを通してスイーツを食べた客は笑顔になる。なるほど、確かにプロデューサーとパティシエには共通点があるように思える。

 ふと、初めて出会った時に私にも魔法をかけて欲しいと言われたことを思い出した。あの時彼女は、パティシエはどんなものも美味しく変える魔法使いだと言っていた。今思えば,あの頃から俺のパティシエとしての道は始まっていたのだ。

 彼女と初めて出会ったときのことは今でも鮮明に覚えている。

 それは、某テレビ曲で番組の打ち合わせが終わり、事務所に戻る途中での出来事だった。

 街中を歩いているとき、テラス付きのカフェでスイーツを食べている女の子を見かけた。最初は、カフェでスイーツを食べるただの女の子だと思った。しかし、彼女が幸せな笑顔でスイーツを食べている姿を見て確信した。彼女、三村かな子は多くの人を魅了するアイドルになると……。

 彼女の笑顔に見とれている間に、気づいたらもう彼女は食べ終わり、席を立とうとしていた。俺はハッと我に返り、会計を済ませてカフェから出てきた彼女に声をかけた――

 彼女をプロデュースしていくうちに、俺自身も彼女の魅力に惹かれていった。

 お菓子を必死になって我慢する顔、お菓子を作る時の真剣な顔、そしてお菓子を食べている時の幸せそうな顔。その目まぐるしく変わる表情を見ていると、自然と笑顔になっている自分が居た。

 あの時の俺はさしずめ、作り途中のお菓子の味見をして満足しているパティシエだろう。

 あれから月日が経ち、彼女は俺の想像を超える立派なアイドルになっていた。そして今日は、そんな彼女の誕生日なのだ。

 毎年、年始に行うニューイヤーライブがある。彼女と一緒にライブをするアイドル達が、彼女の為にみんなで考えたサプライズをすると意気込んでいた。

 俺は、彼女の誕生日に何をしてあげられるだろうか……。

 そういえば彼女はよくお菓子を作って配っている。だが、逆に彼女がお菓子を貰っている姿はあまり見ない。
だったら手作りのお菓子をプレゼントするのはどうだろう。いつもは俺がお菓子を貰う側だが、たまにはこちらからあげるのもいいだろう。

 だが何を作ればいい? お菓子なんていっても種類は様々だ。結局、どんなお菓子を作るかでまた悩んでしまった。

 そんなとき、ふと思い出したものがあった。それは、彼女と初めて会った時にもらったカップケーキ。
友達のお土産にしようとしていたそれを、お近づきの印として俺にくれたのだ。

「あれだ……。あれを作ろう」

 俺と彼女が出会ったきっかけとも言えるとあるお店のカップケーキ。
俺は作るお菓子を決めると、今の仕事がひと段落したところで愛梨に連絡を入れ、事務所を出た。
味を再現するなら現物と、お菓子に詳しい人物が必要だろう。

 歓声の中、ニューイヤーライブが終わった。

 この後事務所でライブの打ち上げをするということで、これから車でみんなを乗せて事務所へ向かうところだ。
 俺は車の中かな子にでプレゼントを渡すと決めており、他の四人にも事前に話ておいた。
今、車の中に居るのは俺とかな子の二人だけだ。

「お疲れさま、かな子。いいライブだったよ」

 まだライブの余韻が抜けていないであろうかな子にねぎらいの言葉をかける。

「ありがとうございます、プロデューサーさん♪ みんな頑張っていたので、私も負けないように精一杯頑張りました!」

 そう言ってかな子は、俺の大好きな笑顔を俺に向けてきた。
 渡すなら今だろう。

「かな子……。初めて会った時から今までずっとお前をプロデュースしてきが、お前は俺の期待を超えるアイドルになってくれた。ありがとう。そして、これからもよろしく」

 俺はピンクの包装のプレゼントを渡す。

「これって……」

 かな子がそれを両手で受け取る。

「誕生日プレゼントだ」

「開けてもいいですか?」

「いいぞ」

 かな子が期待の眼差しで包装の紐をほどく。出てきたのは手のひらに乗るくらいの大きさのカップケーキだ。

「カップケーキ……。これってもしかして、プロデューサーさんが作ったんですか?」

「ああ」

「プロデューサーさんの手作り……」

 そう呟くかな子の目は、カップケーキをまっすぐ見つめている。
 ずっと隣でかな子を見てきた俺は、それがお菓子を前にして食欲を抑えられない表情だということがすぐにわかった。

「食べていいぞ」

「いいんですか? じゃあ、いただきます♪」

 目を輝かせたかな子がカップケーキにかぶりつく。一気に半分くらい食べるのが実にかな子らしくて見ているこちらも笑顔になる。

「あ、この味……。私がプロデューサーさんに初めて会った時にあげたあのカップケーキに似てる……」

 どうやらちゃんと覚えていたらしい。

「愛梨にあのカップケーキを食べさせて、同じ味を再現できる材料をそろえて貰ったんだ。あと作り方も教わってな。仕事の合間に練習して、一番の自信作がそれだ」


「私、今までたくさんカップケーキを食べてきましたが、こんなにおいしいのは初めて食べました♪」

 かな子は食べかけのカップケーキを両手でやさしく包み、愛おしいものをみるような顔でそれを見ながら言った。

「流石にそれは言い過ぎじゃないか? プロが作ったのと俺が作ったのなんか比べものにならないだろ」

 いくら自信作といえど、素人が数日頑張って作ったカップケーキがプロのそれに敵うわけがない。恐らくお世辞だろう。

「いえ、言い過ぎなんかじゃないです。このカップケーキにはプロデューサーさんの思いが入っています。それも、私ただ一人に向けてくれた思いです。大好きなお菓子を、大好きな人が心をこめて作ってくれたんです。こんな最高の隠し味が入ったカップケーキ、おいしくないわけないじゃないですかっ♪」

 思い……か。確かに料理の最高のスパイスは愛情だなんてよく言うもんな。ここは素直に受け取っておこう。

「ははっ、そう言ってくれるとこっちも頑張って作った甲斐があったよ」

 かなこがカップケーキを食べ終わり、車の中だが姿勢をこちらに向けてくる。

「プロデューサーさん、貴方は私に素敵な魔法をかけてくれました。そして今日はこんなにおいしいカップケーキを作ってくれて……。私、あの時プロデューサーさんに声をかけて貰えて良かったです! そして、やっぱりプロデューサーさんは私の中で世界一のパティシエですっ♪」

 そう言って見せてくれた彼女の笑顔は、今までで一番輝いていた。

短いですがこれで終わりです。お付き合いいただいてありがとうございました。


書けば出る……
限定かな子欲しい……

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