西住みほ「西住流、禁断のコミュニケーション。ぎゅうぎゅう作戦です!」 (30)

西住邸

みほ「ふー。片付けはこれぐらいでいいかな」

みほ(お姉ちゃんから頼まれたとはいえ、色々出てくるなぁ)


まほ『――すまない、みほ。実家の整理を頼まれてほしい』

みほ『整理?』

まほ『庭に倉庫があっただろう。あの中を綺麗にさせたかったけど、色々と立て込んで結局できず仕舞いだった。私は暫く帰れないし、本当に悪いがみほに頼みたい』

みほ『いいけど、どうして?』

まほ『あの中にはいらないモノもあれば、私とみほの思い出の品も眠っているはずだから』

みほ『わかった。見つけたら、それを送るね』

まほ『そ、そういう意味では……。でも、そうしてくれると嬉しい』


みほ(ふふっ。お姉ちゃん、思い出のものを持っていきたかったのかな。ちょっと嬉しいかも)

みほ「えっと、お姉ちゃんとの思い出は……」ガサゴソ

みほ「あ……これって……!」

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しほ「みほ、お茶が入ったわ。そろそろ休憩にしなさい。お菓子も用意したわ」

みほ「……」

しほ「みほ?」

みほ「お母さん、これ……」

しほ「それは……!?」

みほ「この、大きな箱、なんだっけ……。思い出せそうで思い出せないんだけど……」

しほ「それは……あれです……。そう、西住流に伝わる、コミュニケーション能力を大幅に高めるものよ」

みほ「コミュニケーション能力を……?」

しほ「そう。西住家に生まれた者は、多くの者を従えて先頭に立ち、進み続けなければいけない」

しほ「長が他人と円滑なコミュニケートができなければ、指示を出すこともできない」

みほ「それを克服するための……」

しほ「そうです。では、お茶にしましょう」

みほ「あ、うん」

しほ「良い茶が手に入った。あと、美味しいミカンも」

みほ(思い出せないけど……これでお姉ちゃんと仲良くなれたような記憶がある……。この大きな箱……でも、どう使えばいいんだろう……)

しほ(まさか、アレがまだあったなんて……。早急に処分をしなければ……。かといって……)

みほ「……」ズズッ

しほ(賢しいみほのこと。ここで慌てた姿を見せれば、付け込まれる。今はまだ、様子を見るべき)

みほ「……」ピッピッ

しほ(電話……? 大洗の友人……?)

みほ「あ、もしもし、お姉ちゃん? 今、大丈夫?」

しほ(まほ……!? しまった!! 先手を打たれた……!?)

みほ「ごめんね。ちょっと聞きたことがあって。うん、今は実家だよ。そう、倉庫の片付けをしていたんだけど」

しほ(携帯電話を取り上げるか……。いえ、そんなことをしてしまっては、余計に怪しまれるだけ……。最悪、あのときのことを思い出してしまう可能性も……)

みほ「あのね、黒くて大きな箱のこと、覚えてない? 学校によくある掃除用具入れぐらいの大きさの箱なんだけど」

まほ『……いや、覚えていない。しかし、何故だろう、少しだけ動悸が激しくなってきた』

みほ「お姉ちゃん、大丈夫?」

まほ『心配はいらない。水でも飲めば落ち着くはず』

みほ「お姉ちゃんも覚えてないんだ……」

しほ(よかった……)

みほ「お母さん」

しほ「何かしら?」ビクッ

みほ「どう使えば、コミュニケート能力を高められるの?」

しほ「それは……」

みほ「それは?」

しほ「……そんなことはどうでもよろしい」

みほ「えっ」

しほ「ほら、ミカンを剥いておいたわ。食べなさい」

みほ「でも……」

しほ「食べなさい」

みほ「は、はい」ビクッ

しほ(これでよし)

みほ(お母さん、何を隠しているんだろう……)

しほ(あの箱、今日中に処分しなくてはいけないわね)

みほ(あの箱、大洗に持っていけないかな)

夕方 港

みほ「ごめんなさい。ここまで見送ってもらって」

しほ「気にすることはないわ」

みほ「……あの」

しほ「なに?」

みほ「また、帰ってきてもいいかな」

しほ「拒む理由はありません。好きな時に戻ってきなさい」

みほ「……はいっ!」

しほ「みほ。体には気を付けるのよ」

みほ「うんっ。お母さんも」

しほ「余計なお世話よ」

みほ「あははっ。行ってきます!」

しほ「いってらっしゃい」

しほ(何事もなく見送れてよかった)

みほ(もう連絡船のほうに来てるかな)

西住邸

しほ「……」ゴソゴソ

しほ「……ない」

しほ「……」ゴソゴソ

しほ「ない……」

しほ「……」ゴソゴソ

しほ「ない」

しほ「確かにここに仕舞っておいたはず……。あんなにも大きなものが消失するわけ……」

「家元、何をお探しですか?」

しほ「ここにあったはずの大きな箱が無くなっているわ。知らないかしら?」

「それなら先ほど運送屋がお見えになられて連絡船のほうへ運んでいきましたが?」

しほ「え……」

「どうもみほ様のご依頼だったそうで」

しほ「くっ……一手先を越されたということね……」

しほ「流石は私の娘……」

翌日 大洗女子学園 戦車倉庫

桂利奈「わー、なにーこれー?」

優季「掃除用具いれぇ?」

あや「でも、真っ黒だよ」

あゆみ「色は関係ないんじゃない」

梓「あ、鍵がかけられるようになってる」

紗希「暗証番号」カチカチッ

梓「あぁ、勝手にいじらない!!」

桃「おい、西住。これはなんだ。朝からあったようだが」

みほ「ごめんなさい。寮には置けなかったので、ここに直送させていただきました」

柚子「不思議なロッカーよねぇ」

お銀「中も特別変わった様子はないようだね」

カエサル「新たな収納庫と言ったところか」

みどり子「ちょうどよかったわ。掃除用具が増えてきたから仕舞う場所に困っていたのよね」

典子「バレーボールを仕舞ってはいけませんか?」

優花里「なんでも西住殿のご実家から持ってこられたとか」

麻子「なんでこんな大きなものを」

みほ「どうしてなのか、自分でも分からないんだけど、気になって」

華「気になるのですか」

みほ「うん。私とお姉ちゃんにとって、この箱は何か大きな意味があったように思えるんだ」

沙織「思い出の品ってこと?」

みほ「どうなんだろう。けど、使い方さえ思い出せれば、きっと昔の記憶も蘇るんじゃないかって思って」

沙織「なるほどね」

杏「つまり、この不思議な黒い箱の使い方をみんなで考えようってことだな」

ナカジマ「西住さんのお母さんに聞いてみるのが一番早いんじゃない?」

みほ「お母さんはこの箱のことを『西住流に伝わる、コミュニケーション能力を大幅に高めるもの』と言っていました」

希美「どうやってこの箱で高めるんですか」

みほ「それが分からなくて」

エルヴィン「今ので分かったのは、少なくともここに何かを収納するための箱ではない、ということか」

左衛門佐「しかし、どうみたって何かを入れるようのロッカーだろ。人間だって無理したら3人ぐらい入れそうなほど大きいぞ」

ムラカミ「私が入れば二人が限界だね」

ラム「そして相方は圧死する」

おりょう「拷問ぜよ」

妙子「何かを入れていたような感じもしないような」

あけび「中、綺麗だもんね」

忍「傷一つないっぽい」

カトラス「中からは扉が開かないようになってるみたい」

麻子「なに?」

カトラス「内側に取っ手になる部分がない」

華「本当ですね」

沙織「それがどうかしたの?」

麻子「つまり、このロッカーのようなものは冷蔵庫のように内側から開けることを想定していない作りということだな」

優花里「ロッカーなら普通じゃないですか? 収納された物が扉を押して、開いてしまうといった事故を防げますし」

華「言われてみればそうですね。ロッカーとしてあるべき姿なのでは?」

みほ「……」

杏「気になる点はもう一つ。外側に暗証番号付きの鍵がついているってことだな」

優花里「収納するためのものなら鍵があっても不自然ではないのでは?」

お銀「けど、それは宝箱じゃないだろ。どうして鍵をかける必要があるんだい」

優花里「宝箱にしていくのでは?」

フリント「たからば~こ~それはぁ~パンドラのはぁこぉ~」

エルヴィン「パンドラの箱か……」

カエサル「開けてはならない、ロッカーだったのか」

おりょう「近江屋事件のようなロッカーぜよ」

エルヴィン「カチンの森事件のようだな」

左衛門佐「それなら衆道というのが……」

カエサル「左衛門佐、それは違う」

おりょう「違うぜよ」

エルヴィン「がっかりだ」

左衛門佐「えぇー!?」

みほ「あの、本当に内側からは開けられないのかな?」

優花里「どうしてですか?」

みほ「エルヴィンさんも言っていたことだけど、この箱は何かモノを収納するためではない。けど、内側から開けられないようになっている」

みほ「それはどうしてなんだろうって、今考えたんだけど」

麻子「考えられるとしたら、人を閉じ込めておくためのもの」

カエサル「これはアイアンメイデンとでもいうのか」

麻子「西住さんの推測が正しいとするなら、だが。しかし、そんなものが西住さんの実家に眠っていたというのもよくわからない」

みほ「……入ってみれば、思い出すかも」

沙織「はいっちゃうの!?」

華「危険です、みほさん」

みほ「けど……」

杏「あー、それは待った方がいいかもねぇ、西住ちゃん」

みほ「え?」

杏「これはまずいんじゃないかねぇ」コンコンッ

柚子「叩いているけど、ロッカーの材質が危険なの?」

杏「戦車に使われているカーボンで守られてるっぽいよ?」

みほ「えぇ!?」

ツチヤ「ちょっとまってよ。調べてみるから」

ホシノ「うーん」コンコンッ

スズキ「どう?」

ホシノ「うん。完璧に特殊コーティング済み。レオポンで接射したって壊れない」

優花里「な、何故……このロッカーにコーティングが……?」

ねこにゃー「西住家の闇が深い……」

ももがー「きな臭くなってきたぞな」

ぴよたん「西住隊長ー? その中に閉じ込められた経験とかないぴょん?」

みほ「え? うーん……ない、と思うんだけど……」

ツチヤ「もう一つ、面白い仕掛けがあったよ」

ナカジマ「どんな仕掛け?」

ツチヤ「多分だけど、内部に一定の重量のモノを入れたら自動的に施錠される仕組みじゃないかな」

ナカジマ「益々、何かを閉じ込めておくっぽいな」

ツチヤ「けど、その仕掛け、人一人が入ったぐらいじゃ作動しなさそうなんだよなぁ。多分、二人か三人ぐらいの重さがないといけないんじゃないかなぁ」

桃「だったら、一人が入ったところで問題はない、ということか」

みほ「なら、ちょっと入ってみようかな」

沙織「だ、ダメダメ!! みぽりん!! 出てこれなくなったらどうするの!?」

典子「そうです! 流石に根性ではどうにもならないかもしれません!!」

みほ「けど、一人だけなら作動しないってツチヤさんも言ってるし」

ツチヤ「あんまりアテにしないでよぉ。間違ってるかもしれないし」

みほ「うーん……」

杏「なら、扉の間に干し芋でも噛ませておけばいいんじゃない? それでロックされることはないだろうし」

優花里「おぉ! 確かに!」

みほ「それならいけそう!」

沙織「だいじょうぶぅ?」

みほ「少し不安だけど、私、どうしても思い出してみたいんだ」

みほ「大切なお姉ちゃんとの思い出だから」

華「分かりました。ですが、みほさんだけでは心配です」

優花里「あの、それなら私がご一緒しても……」

お銀「待ちな」バッ

みほ「はい?」

お銀「これからのこともあるんだ。万が一、隊長が閉じ込められてしまったら大事だ」

お銀「この竜巻のお銀が中に入ってやろうじゃないか!!」

ラム「うほっ。さすが、おやぶぅん」

ムラカミ「ほら、拍手」

あや「わ、わー」パチパチ

優季「か、かっこいいなぁ」パチパチ

お銀「つまらない世辞はいらないよ」

みどり子「いいの?」

お銀「二言はないさ。男じゃないけどね」

桃「おい……」

お銀「桃さん、止めないでくれ。これも恩返しです」

お銀「ヨーソロー!!!」バタンッ

みほ「あ、入っちゃった……」

優花里「お、お銀殿ー。大丈夫ですかー?」

フリント「応答なし」

梓「中って光とか入ってこなさそう」

あゆみ「その上、狭いとかちょっと怖いかも」

モヨ子「けど、一人だけならある程度の余裕はありそう」

希美「どうなんだろう」

みどり子「ちょっとー、何かいいなさいよー」

桃「お銀!! なんとか言え!!」

柚子「中の居住性はどうですかー?」

カエサル「気になるところはそこか」

麻子「反応がないな」

みほ「開けてみましょう」

華「はいっ」ググッ

華「……あら? ふーん……!」グググッ

みほ「華さん? どうしたんですか?」

華「あ、開きませんわ」

みほ「えぇー!?」

優花里「それは困ります!!」

ねこにゃー「ここはボクたちの出番!!」

ももがー「まかせるぞな!!」

みほ「お願いします!」

ねこにゃー「行こう、ももがー、ぴよたん!」

ももがー「いくぞな!」

ぴよたん「いつでもオッケーなりぃ」

ねこにゃー「せーのっ!!!」

ももがー・ぴよたん「「うりゃぁあああ!!!」」ブンッ

みほ「え……」

ドォォォン!!!!

桂利奈「ロッカーがとんだー!!!」

ムラカミ「わぁぁぁ!!」ダダダッ

ラム「親分! 親分!!」ガッキンガッキン!!!

ムラカミ「大丈夫ですかぁー!!!」ガッキンガッキン!!!

カトラス「た、叩かない方が……」

フリント「か、鍵をあけて、はやく」オロオロ

みほ「そうでした! 鍵を……かぎ……」

沙織「みぽりん、どうしたの?」

みほ「暗証番号がわからない……。確か、お母さんの誕生日だったはずなのに……」カチャカチャ

沙織「えぇー!?」

梓「紗希! さっき弄ってたけど、番号変えた!?」

紗希「……」オロオロ

あや「変えちゃったかもしれないっていってまーす」

みほ「あぁ……」

ムラカミ「おい!! 戦車だ!! 戦車をもってこい!!」

優花里「特殊コーティングされていますから例え戦車でも壊せません!!」

麻子「あと、そんなことしたらお銀さんが吹っ飛ぶぞ」

ねこにゃー「ごめんなさい!! ボクたちの所為……」

ムラカミ「ごめんで済んだら、水軍はいらねえんだよ!!!」シュッ!!!

ねこにゃー「ごめんなさい! ごめんなさい!!」パシッ

ムラカミ「謝りながらパンチを受け止めるんじゃねえ!!」

ももがー「あぁ……こんなことになるなんて……」

ぴよたん「失敗だぁ……」

みほ「たった四桁の暗証番号……。0000から9999まで順番に試していくしか……」

華「何時間もかかってしまいます」

典子「根性でひけー!!」

忍「うおー!!!」グググッ

妙子「だから、鍵がかかってるんですってば!!」

杏「お銀ちゃーん、もしもーし。きこえるー?」

お銀『あぁ……きこえる……』

杏「おぉ。ケータイ電話は通じるみたいだねぇ」

お銀『いったい……どうなったんだい……?』

左衛門佐「西住隊長、ここは拙者にお任せを」

みほ「え?」

左衛門佐「相手が錠ならば、忍道で学んだものが役に立つかもしれない」

みほ「忍道って鍵開けも習うんですか」

左衛門佐「まあ、見ていてほしい」カチャカチャ

杏「怪我はない?」

お銀『多分ね。真っ暗だから分からないけど』

杏「こっちの声はきこえてた?」

お銀『いや。こっちこそ大声で叫んでいたんだけど、聞こえてなかった?』

杏「なんて叫んでたの?」

お銀『それは言いたくないね』

杏「じゃ、聞かない」

お銀(今更……助けてと何度も叫んでしまったことは、誰にも言えない……)

左衛門佐「あいたっ」カチャン

みほ「よかったぁ! お銀さん、今、開けます!!」ガチャ

お銀「ふっ。まぁ、いいスリルだったかな」

ラム「おやぶぅん」ギュゥゥ

ムラカミ「無事でよかった」ギュゥゥゥ

お銀「くる、しい……!」

みほ「はぁ……本当によかった……」

ねこにゃー「ご、ごめんなさい」

お銀「気にするな。そういうこともある」

ももがー「器がおおきいぞな」

ぴよたん「ほれるぅ」

お銀「ふっ」ファッサァ

華「弱音を吐いてもいいんですよ?」

お銀「うるさい」

沙織「いやぁ、ほんとに危ないロッカーだよね、これ」

みほ「けど、暗唱番号もわかったし、もう大丈夫」

沙織「はいるの!? 今の見てもまだ入りたくなるの、みぽりん!?」

みほ「これが私とお姉ちゃんの大切な思い出かもしれないから」

沙織「そんなことあるかなぁ」

優花里「西住殿はそう直感したからこそ、ご実家からここへ持ってきたんですよね」

みほ「うん」

優花里「おぼろげでも記憶が残っていたりしなければそうした直感は生まれないと思います。何か覚えてはいないのですか」

みほ「それが、本当に覚えてなくて……」

華「みほさんのお母様はなんと仰っておられたのでしょうか」

みほ「お母さんは、言いたくなさそうだったから上手く聞けなかったの」

麻子「言いたくなさそう?」

みほ「強引に話題を変えられちゃって。だから、お母さんには追及できなくて」

麻子「西住さんのお母さんにとって、この黒い箱は何か都合でも悪いのか」

みほ「さぁ……」

杏「あるいは、思い出してほしくないのかもねぇ」

桃「だとすれば、この箱は西住にとっても西住まほさんにとっても、あまり良くないものなのでは?」

柚子「それならしほさんが見つけた段階で廃棄するんじゃないかな? ずっと倉庫に眠ってたんでしょ?」

ナカジマ「仮に都合が悪いものだとしたら、さっき西住さんが言ってた「コミュケーション能力を高めるための物」っていうのも嘘臭くなるんじゃない」

みほ「あ……」

典子「しかし、西住隊長のお母さんがそんなウソをつくメリットが分かりません」

梓「嘘をつくなら別の嘘でもいいような……。それこそ、ただの掃除用具入れだって説明しちゃえば西住先輩がここまで持ってきちゃうことはなかったかもしれないのに」

みどり子「言われてみればそうよね。だったら、コミュニケーション能力を高めるっていうのは本当なのかも」

みほ「それは私もそう思います。お母さんが意味のない嘘をつくことはないはずですから」

ねこにゃー「それじゃあ、そもそもの疑問なんだけど、どうやってこれでコミュ障が治るの?」

杏「コミュ障が治る治らないの話だっけ?」

ねこにゃー「コミュニケーション能力が上がるなら、自然とコミュ障も治るかなって……」

カエサル「どのようにしてこの黒い棺桶を使用すれば交流できるんだ」

お銀「中は一切の光が入り込まない。まるで大洗のヨハネスブルクにイカスミを流し込んだような世界だった。まあ、イカスミはイカスミパスタでしか味わったことないけどね」

ナカジマ「構造的には何かを閉じ込めておくためのもので間違いなさそうだけど、人を閉じ込めてコミュニケーション能力は上がらないし……」

杏「2人か3人が一緒に閉じ込められたら、自然と仲良くなるんじゃない?」

典子「おぉ!!」

みほ「いや、ないと思いますけど……」

麻子「角谷さんの発言、一理あるかもしれない」

沙織「えぇー? ないってー」

麻子「私も閉じ込められた者たちが仲良くなるとは思わない。が、都合の悪い記憶には結びつく可能性はある」

沙織「どゆこと?」

麻子「この黒い箱は人が3人ぐらいは入ることができるぐらいに大きい。二人が一般的な女子の体格なら閉じ込められたとしても少しばかりの余裕があるぐらいだ」

みほ「そうだね。麻子さんと角谷さんなら窮屈とは感じないかも」

柚子「逆に私と桃ちゃんなら窮屈かもね」

桃「どういう意味だ」

典子「私と河西が一緒に閉じ込められても大丈夫だ!」

忍「悲しくなるので言わないでください」

妙子「私とあけびちゃんだったら苦しいかな」

あけび「うん、息苦しくなりそう」

あや「私と優季ちゃんは?」

優季「やだぁ、いわないでぇ」

ねこにゃー「何気にスタイル良い人が多い……。その点、ボクは……はぁ……」

優花里「冷泉殿、つまりはどういうことになるのですか」

麻子「二人が閉じ込められても、窮屈とは感じない。すなわち、何時間か閉じ込められていても命の心配はまずない」

華「別の問題がありそうですけど」

麻子「ずっと鮨詰め状態じゃないだけはるかにマシだろう」

沙織「そうだけどさ」

みほ「麻子さん、もしかして私とお姉ちゃんが閉じ込められていたってこと?」

麻子「可能性としては十分にあるだろう。西住さんのお母さんが話題を強引に変えたというのも気になるし、箱の用途についても不明瞭だしな」

ももがー「まさしく、西住家の闇……」

ぴよたん「こわいぃ」

杏「折檻のために用意された黒い箱、ってことかぁ」

桃「せ、せっかん……」

柚子「何だか、急におどろおどろしいものに見えてきちゃった」

みほ「全然、覚えてない……そんなに怖いものなら鮮明に覚えていてもいいような……」

エルヴィン「記憶に鍵をかけてしまったでは?」

ムラカミ「怖すぎて記憶を封印していることはあり得るな」

みほ「閉じ込められるだけなら、そんなに怖くないだろうけど……」

沙織「えぇ……?」

優花里「みなさん! ちょっと待ってください!! そうマイナスにばかり考えるのはおかしいと思います!!」

華「優花里さんは何か別の解をお持ちなのですか?」

優花里「考えてもみてください。戦車道の二大流派、西住流の本家なのですから、そこで生を受けた西住殿は常日頃から戦車道の訓練をされていたはずです」

優花里「このロッカーはしほさんが西住殿、いえ、みほさんとまほさんに用意したトレーニング器具なのかもしれません」

麻子「何故そう思う?」

優花里「まず、このロッカーが特殊コーティングされている点です。このロッカーは戦車内を再現しているとも言えます。

おりょう「確かに、戦車内の狭さと同等と言えなくもないぜよ」

左衛門佐「居住性の再現か」

優花里「はいっ。この中に入ることで戦車特有の圧迫感と閉塞感に慣れる訓練だったのかもしれないじゃないですか」

エルヴィン「いい視点だ、グデーリアン。私はそれに一票」

カエサル「コーティングまでする必要があるだろうか?」

優花里「砲撃を受けたときの衝撃に慣れるための訓練も兼ねていた可能性だってあります」

華「つまりみほさんとまほさんがその箱に入っているとき、砲撃を受けていたのですか? かなり本格的ですね」

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