偽勇者「魔王の孫?」孫「助けて勇者様!」 (153)

勇者とはその時代ごとの騎士の最高位でありどの国にも属さず、魔王が現れれば各国を束ね討伐軍を指揮する者のことだ。

そして俺がなる事できなかった存在だ。

勇者になる為の試験に合格できなかった俺は故郷にも帰らず、詐欺師のような事をしながら暮らしていた。

商人「お急ぎではない方!暇な方!寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!ここには有るはかつて先代勇者様所縁の伝説級の一品達!魔物狩りに使うもよし!家宝にするもよし!お買い得だよ!」

町人A「本当か?偽物じゃないのか?」

商人「本当です!それに今日は特別に当代の勇者様が武具の切れ味、性能を披露してくださるのでごゆっくり見学なさってください!」

町人A「ゆ、勇者様がこの場に…それはすごい」

偽勇者「お、俺が勇者だ!い、今からこの剣を使って演武する!はぁ!」

掛け声をと共に俺は武の型を披露する。

美しく力強い演武は偽物を本物だと思わせるほど観衆を魅了していた。

当たり前だ勇者になる為に全てを捨てて修行して来たのだから。

だから詐欺師のような事をしてる自分が情けない。

型を一通り披露した俺は観衆に一礼し、商人の後ろに下がった。

後は商人が口八丁でなんとかするだろう。


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と思っていたがどうやら今回はうまくいきそうにないみたいだ。

町人B「待てよ?本当にそいつ勇者様か?確かに動きはすごかったけどよ、当代の勇者様は女って話だぜ?」

町人A「え!じゃあ俺たち騙されてんのか?ふざけんなよ」

孫「……」

町人C「行こうぜー平和な時代だから武器なんて必要ないし」

商人「ああ…待ってください!話だけでも!行かないでください!今月ほんと厳しいんです!」

商人「……」

偽勇者「確かに平和な時代だから武器なんて必要ない、売れなくても仕方ないさ」

偽勇者「それに先代勇者所縁の品なんて嘘つかずに普通に売った方が売れるんじゃないか?」

商人「黙れ…!先代勇者が一度は手に触れた武器だ嘘は言ってない」

商人「それに平和な時代なんだ…色々と試行錯誤しないと武器なんて売れないよ」

商人「それに君の存在意義がなくなるじゃ無いか?君は僕に借金をしているから商売に協力させているんだ、普通に売ってたら君なんていらないんだよ」

偽勇者「……」

商人「当代の勇者様が女なら、いっそのこと君の男根切り落とすか?そしたら武器とか売れると思うんだけど?」

偽勇者「わかったよ!今まで通りにするから怖いこと言わないでくれ」

偽勇者「ん?」

孫「……」

孫「ジー」

商人「うぅ~勇者が女の子だなんて…これからどうやって武器を売ればいいんだ…やっぱりちんこを切り落として女装させるしか…」

偽勇者「お~い!お客さんだ」

商人「ん?」

孫「こんにちわー」

商人「こんにちわ、今日は街でおつかいですか?」

孫「ううん、お客さんです!」

商人「お客さん?ここにはお嬢ちゃんの欲しがるようなものは売っていないよ」

孫「勇者様に用があるの!私を助けてほしい」

偽勇者「俺?いや!お嬢ちゃん!さっき町人達が言ってたこと聞いてないのかい?俺は別に勇者じゃないよ」

孫「ううん!あなたは勇者様よ!私にはわかるわ」

偽勇者(わーすごい目をキラキラさせてるな勇者じゃないと言いにくいな、でも言わないとな)

偽勇者「だからね、お嬢ちゃん俺たちは武器を売るために嘘をついてたんだよ」

孫「フフン!それ嘘でしょ!私にはあなたが勇者様だと言う証拠があるわ!ほらこれ!」

偽勇者「あ……これは」

少女が俺に差し出したのは今一番見たくないものだった。

架空の勇者が世界を救う王道の物語が書かれた絵本だ。

そして俺の夢の始まりだ。

この絵本に描かれた勇者に俺は憧れたのだ。

だから夢に敗れた俺はこの絵本を見たくなかった。

偽勇者「ああ…まだ出版されてたのか、これ」

孫「だって!この絵本の勇者様と貴方の格好そっくりですもの!」

そっくりなのはその絵本の勇者の格好を真似たからだ。

俺は勇者ではない嘘つきの卑怯者なのだ。

偽勇者「お嬢ちゃんこの絵本はフィクションでほんとじゃないん」

ーバチン!

偽勇者「痛い!なにするんだ!」

商人「ゴメンね~このお兄ちゃんが酷い事言って…でも安心してね!このお兄ちゃんほんとに勇者様だから!」

孫「だよね!勇者様だよね!」

偽勇者「おい!嘘ついてもしょうがないだろ!」

商人「…チッ!ゴメンね!お嬢ちゃん裏で勇者様とお話しがあるから少し待っててね!」

孫「うん!」

ー店の裏ー

偽勇者「俺は別に話すことなんてないぞ」

商人「…偽勇者くん!」

偽勇者「なんだよ…」

商人「…わかるかい!君!子供は可愛いだよ!子供は宝なんだよ!子供は尊いだよ!」

商人「こんな目をキラキラさせた子に!君を勇者だと信じている子に!君が勇者じゃないとは言えないだろ!」

偽勇者「お前子供好きなのか?」

商人「そうだよ!小さい子が大好きなのさ!」

商人「でも恋愛対象とかそう言うんじゃないからね!」

商人「いいかい?嘘をつき通すんだよ!どうせ子供のお願い事なんだ!そう大したものじゃないよ」

偽勇者「そう大したものじゃないって他人事だから言えるんだよ…」

商人「わかったかい!!!」

偽勇者「わかった!わかった!」

ー食堂居酒屋ー

商人「それでお嬢ちゃんのお願い事ってなにかな?」

孫「私を西の都まで護衛して欲しいの!」

偽勇者「西の都だと!!」

商人「こりゃ物凄く遠いね…道中は野生の魔物もいるだろうし…大変だ」

偽勇者「何が大したことないだよ…恨むぜ」

偽勇者「でもなんで西の都なんだ?終戦したとはいえあそこはまだ平定されていないから魔族がウヨウヨいるぞ」

孫「私は実は魔族と人間のハーフなのです」

偽勇者「ハーフ?どう見たって人間じゃないか」

商人「そうだね?魔族とのハーフぱ必ず身体的特徴が現れるはずだけど…例えば肌の色とかね」

商人「でも君は私が羨ましいと思うほど真っ白な肌とすらっとした体…魔族の猛々しさがどこにもないじゃないか?」

孫「はい…私は1/4しか魔族の血を継いでないので身体的特徴が少ないんです、ほぼ人間と変わりません」

孫「頭のてっぺんに小さなツノが生えてるくらいです」

少女は顔を赤らめた。

偽勇者「でもなんで西の都に?ほぼ人である君じゃ危険じゃないか?」

孫「それは…私の生い立ち深く関係することです」

孫「私が物心ついた頃には既に血の繋がった家族は皆死んでいると育ての親に教えられました」

孫「私はずっと天涯孤独だと思っていました」

孫「でも最近になって育ての親が教えてくれたのです血を分けた兄がいる事を!」

孫「兄は人としてではなく魔族として生きようと西の都に旅に出たと教えられました」

孫「私は天涯孤独じゃないと証明したい!血の繋がった唯一の兄と会いたいのです!」

孫だとなんか変だと感じたので名前の安価を取ります

協力お願いします

安価下2

名前はカタリール・ナルバスタで決まりました

ありがとうございます

偽勇者「なるほど…お嬢ちゃん名前は?」

孫「カタリール・ナルバスタです…愛称はカナです」

偽勇者「良い名前だ!少し考えさせてくれ」

商人「うぅ~!こんな可愛い子が辛い目にあってるだなんて!」

偽勇者「なんで泣くんだよ!」

商人「だって可哀想だから!」

偽勇者「お嬢ちゃん…今の話を聞いて少し考えたがやっぱり頼み事は受け入れられない…リスクがでかすぎる」

カナ「…そうですか…仕方ないですよね」

商人「ううん!引き受けるよ!」

カナ「わかりました…諦めます…………え!?良いんですか!」

商人「良いよ!良いよ!引き受けるよ!」

偽勇者「オイ!何勝手に引き受けてんだ!」

商人「だって可哀想だろう?」

偽勇者「同情するのも良いがリスクを考えろ!」

商人「ふ~ん…偽勇者くん、最近は随分と生意気だね」

商人「君…私に借金あること忘れてない?」

偽勇者「ウッ!卑怯だぞ…」

商人「君が私に逆らってばかりなのがいけないんだろう?」

偽勇者「……」

商人「もし引き受けないのなら…今すぐ耳を揃えて借金を返しな!」

偽勇者「…引き受けるよ」

偽勇者「でも!タダじゃ引き受けない!それ相応の報酬を受け取りたい!」

商人「だって、お嬢ちゃんお金持ってる?」

カナ「はい!そんなにたくさんは持ち歩いてはいませんがこのくらいで如何でしょうか?」

そう言ってカタリールは2枚の銀票を机に置いた。

偽勇者「ひゃ、100両!!!」

商人「あわわわ、ど、如何しよう手が震えてきたよ!」

偽勇者「あ、慌てるんじゃない!こ、こういう時は落ち着いて深呼吸だ!」

偽勇者「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」

商人「ヒッヒッフー、ヒッヒッフー」

偽勇者「よしよし落ち着いた……お嬢ちゃん、いえ!お嬢様!道中どんな事があろうと俺が全力であなたをお守りします!」

カナ「ふふ!よろしくね!」

商人「うわあ金ですぐ態度変えやがったよ…こいつ」

カタリールと明け方、町外れの森で合流する事を約束し、俺と商人は宿を取り休んでいた。

商人「君が私の店を爆発させてから随分とたつけど久しぶりに大金を手にしたよ」

偽勇者「悪かったよ…でもこうして商人の手伝いをしながら返してるじゃないか」

商人「責めてるわけじゃないんだ…ただあの日…君が小麦粉倉庫に勝手に忍び込み、火をつけて暖を取ろうとしてなければ、私と君は出会う事がなかったのかなって思ってね」

偽勇者「ああ…そうかもな」

偽勇者「あと俺の銀票お前に渡すよ、借金の返済だ…店一つ壊してしまったんだ、50両じゃあ足りないけど返すよ」

商人「偽勇者…こうなっておいて何だけど…私はこの旅にはついていけない」

偽勇者「な!」

商人「私には大昔、この王国に滅ぼされた国家の血が流れているんだ…だから身分としては二等国民で指定された町以外の往来は原則禁止されてる」

商人「いうのが遅くてごめん…」

偽勇者「良いよ仕方ない」

商人「お金は半分だけ貰うよ、あとは帰ってきてから返してくれ」

偽勇者「ああ」

商人「だから残りの支払のために必ず、私の元へ無事に帰ってきてください」

偽勇者「ああ!絶対帰ってくる!」

ー町外れの森ー

カナ「勇者様!商人さん!おはようございます!」

カタリールは先に着いていたようで興奮した犬の様に手をブンブンと振っていた。

偽勇者「ああ…おはよう」

商人「おはよう!」

偽勇者「あ~勇者様って呼び方むず痒いからやめてくれるか?」

カナ「なぜです?私にとって勇者様は物心ついた頃からの憧れの存在なんですよ!」

偽勇者(絵本の勇者をずっと信じてるなんて本当に夢見がちな女の子だな)

偽勇者(今更だが罪悪感がある…)

偽勇者(まあでも…もう良いか…今更考えても仕方ない、嘘を突き通そう)

偽勇者「わかった!その呼び方でいいよ」

カナ「はい!」

商人「偽勇者…本当にごめんね」

偽勇者「だから気にするな!ただ、このお嬢ちゃんを西の都に送るだけ」

偽勇者「誰かと戦うわけじゃないから大丈夫だ」

商人「うん…ありがとう、ちゃんと戻ってきてね借金を返さず逃げるのは許さないから」

偽勇者「このやり取り何回めだ?わかってるよ…戻ってくるさ」

偽勇者「じゃあ、行ってくる」

商人「うん…」


それから商人は偽勇者達が見えなくなるまでその場所に居た。

ー森ー

カナ「うーん?」

カナ「あの!勇者様!質問があります!」

カタリールは手をピシッと挙げて言う。

偽勇者「ん?どうした?」

カナ「勇者様と商人さんは恋人なのですか?」

偽勇者「え?」

偽勇者「……違う!違う!ただの仕事仲間だよ!」

カナ「本当ですか?どう見ても恋人みたいでしたよ?」

偽勇者「どこがだ!」

カナ「客観的に見てそう思えるのです!…少なくとも商人さんは勇者様に好意を抱かれてるのでは?」

偽勇者「そりゃあねぇ…仲間だから好意ぐらい持つさ」

カナ「いえ!あの乙女オーラはどう考えてもライクではなくラブです!」

偽勇者「……」

偽勇者(この子メンドくさいな…)

偽勇者「俺は色恋沙汰があまり得意じゃないからわからないな…」

カナ「あ!そうですか…すみません勝手に盛り上がってしまって…」

カナ「私…浮いた話が大好きで、でも友達が居ないからいつも壁と話して居たんですよね」

カナ「だから久しぶりに人と色恋沙汰について話せると思うと嬉しくてつい気分が高翌揚して…」

カナ「迷惑ですよね…」

偽勇者「いや~全然気にしてないよ」

カナ「はい…ありがとうございます、気遣っていただいて」

偽勇者「……」

偽勇者(あー!やばい!空気が重たいよ!助けて商人様!)

ー魔王残党討伐部隊駐屯地ー

団長「なに!魔王の孫を見失っただと!それに側近も仕留め損なったのか!」

副団長「…申し訳ありません」

団長「ふざけるな!!!二人の分断を成功させた、またとない機会を逃すとは何事だ!」

団長「側近はまだいい、奴は我々の力でなんとかできる!魔族らしく肌の色も違うので探せばすぐ見つかる!」

団長「だが!娘だけはダメだ!あの娘は外見だけなら我々とほぼ変わらないからそう簡単に見つからない!」

団長「それに魔王の血族が残ってると知ったら魔族達は再集結し、また!人の世が脅かされるのだ!」

副団長「たかが小娘でしょう!そこまで恐る必要があるのですか?現に娘は我々から逃げ回ってるでしょう!」

団長「貴様はあの娘と戦ったことがないから知らんのだ…あの娘は化け物だ!何せ馬鹿でかい魔翌力を持っている、それもでか過ぎて判らないくらいにな…」

団長「私が初めて対峙した時はまだ、ただの魔翌力の塊を放つことしかできなかった…だが!それでも私が率いる部隊が一瞬で消滅したのだ!」

団長「あの娘は悪魔だ、成長すればかつての魔王以上の災厄になりかねん…それもたった1人で国を滅ぼすことのできる化け物になるだろう」

団長「だからその前に我々は娘を確実に殺さなければならない!!!」

団長「くそ!どうすれば」

副団長(臆病者め…こんな男の部下になるなんて俺はなんと運が悪いんだろう)

団長「……おい、目星はついているのか?」

副団長「はぁ?」

団長「奴らがどこに向かったか目星はついているのかと聞いている!」

副団長「え!は、はい!奴らの今までの足取りを確認したところ、西に向かっていた模様です」


団長「西?そういえば西の都はまだ平定されていなかったな?」

副団長「はい!それに現在、西の都には旧魔王軍幹部や魔族の族長などが集まっているとの情報が入って来ています」

副団長「ですので娘が西の都に向かっている事はまず間違いないと思われます」

団長「なんだと!そうか!やはり魔王軍再興が娘の目的か!まずい!まずいぞ!非常にまずい!」

団長「このままではこの国が…」

団長「……」

団長「…そうだな最早、出し惜しみをして居る場合ではないな」

団長「よし!勇者様の協力が得られるよう皇帝陛下に打診しろ!」

副団長「よろしいので?ただでさえ無能と呼ばれている我々が勇者様に頼るなど」

副団長「皇帝陛下の我が軍団への評価がさらに下がりますよ!」

団長「そんな事はどうでもいい!この国が滅ぶか滅ばないかの瀬戸際なんだ!プライドなどいらん!」

団長「それに失態続きのこの軍団に今更、下がる評価などない!既に下がりきっているわ!」

副団長「ぐっ!わかりました…ではそのように」

団長「あとは小娘が通ったと予測される町に賞金付き人相書きをばらまけい!子供の足だ、そう遠くには行けないはずだ」

団長「滞在していた町さえわかれば現在地など簡単に予測が立てられるだろう?」

副団長「…はい」

副団長(くそ!冗談じゃない!ただでさえ無能団長の采配で出世が出来そうにないんだ…勇者なんて呼んでしまえばますます出世から遠ざかる!)

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ーとある町ー

兵士「おい!この荷馬車は貴様のものか!」

商人「そうだけど…兵隊さんが何の用だい?私は武器売りだ…ここには武器しかないよ?自前の武器でも買いに来たのかい?」

兵士「ふん!俺は貧乏だ!そんな金は無い!武器など軍からの支給品で十分だ!」

商人「それ威張りながら言う事ですか?」

商人「それと支給品ってひのきのぼうですか?」

兵士「貴様はいつの時代の話をしているんだ?我々がひのきのぼうで戦っていたのは魔王軍が最大勢力を築いていた時代だ!」

商人(皮肉だったのにすごく真面目に答えてくれるな)

兵士「無駄話はもういい!この人相書きをこの荷馬車の一番目立つところに貼らせてもらう!」

商人「ちょっと待って!勝手なことをしないでおくれ!」

兵士「なんだ!邪魔をするのか?」

商人「物事には順序ってものがあるだろ?いきなり人相書きを貼ると言われてハイそうですかとはいえないでしょう!」

兵士「なにぃ~!…わかった物事には順序があるな!」

商人「やけに物分かりがいいですね?」

兵士「では商人?この荷馬車には移動販売の許可証が貼っていないがもちろん持っているのだろう?」

商人「あ…!」

兵士「商売にも順序がいるんだ…まずはこの国の許可が必要だ」

商人(偽勇者の馬鹿が私の店を壊してしまうから、店にあった許可証も紛失したし、色んなところに損害賠償を支払った所為で許可証を買うお金もなかったんだ、仕方ないでしょう)

商人「も、持っておりません」


兵士「本来なら無断営業の罪で罰金を支払ってもらうか、しょっ引く所だが…そんな面倒なことは憲兵の仕事だ俺はしたくない」

兵士「だからこの人相書きを貼らせて貰えれば見逃してやろう」

商人「うぅ…わかったよ!」

兵士「よろしい!では!」

商人「……」

兵士「協力感謝する!それと早く許可証を貰うように!」

兵士が遠くに行ったことを確認してから商人は叫んだ。

商人「ご丁寧二枚も貼りやがって!どうせ安い糊で綺麗に剥がせなくなるんだ!本当!もう二度と来んな!」

商人「全く!どこの誰だよ!人相書きに描かれてる奴は」

商人はそう言いながら人相書きを見る。

商人「へー、うわぁ~!すごい!懸賞金十万両!小さい城なら買える金額じゃないか」

商人「どんなことしたらこんな金額つけられるんだよ、凄い凶悪な顔してるんだろうな」

商人「……」

商人「あれ?この顔、カナちゃんだよね?」

商人「どうしよう…偽勇者もしかしたら私たち大変な事に巻き込まれてしまったかも」

商人「偽勇者…大丈夫かな?

訂正

商人「ご丁寧二枚も貼りやがって!どうせ安い糊で綺麗に剥がせなくなるんだ!本当!もう二度と来んな!」 ×

商人「ご丁寧に二枚も貼りやがって!どうせ安い糊で綺麗に剥がせなくなるんだ!本当!もう二度と来んな!」 ◯

そうですかアドバイスありがとうございます
次からは気にしないようにします

ー野営地テントー

副団長「ふん!誰が勇者など呼ぶものか」

副団長「あの臆病者は必ず殺せと言っていたが皇帝陛下は出来るなら生かして捕らえろと言っていた」

副団長「…皇帝陛下の思い通りに動いた方が手柄は大きい…そうなれば二階級特進どころではない…か」

兵士B「失礼します!」

副団長「なんだ!入れ!」

兵士B「はっ!」

副団長「どうした…何かわかったのか?」

兵士B「はい!魔王の孫が滞在していた町が判明したことと現在地の予測が付いたので報告に参りました」

副団長「よし!よしよし!でかした!」

副団長「具足を用意しろ!すぐに出陣するぞ!報告は行軍しながら聞く!」

兵士B「は!」

ー森ー

偽勇者(少し早いペースで移動してるが
さすがに西の都まで、まだまだ距離あるもんな…子供の足じゃきついだろう)

偽勇者「なあ」

カナ「なんでしょう?」

偽勇者「次の町で馬でも借りないか?」

カナ「…嫌です」

偽勇者「なんでだ?馬を使った方が早く着くぞ?金を出したくないのなら俺が出してもいい」

カナ「嫌なのは嫌なのです!とにかく理由は言えません」

偽勇者「そ、そうかすまん」








兵士長「娘を見つけたな」

兵士「ええ、副団長に報告しに行きましょう」

ー麦と馬神の村ー

カナ「わあ~!凄い!森を抜けたら一面麦畑じゃないですか」

カナ「黄金色に輝いて綺麗です!」

カナ「畑の中心にあるのが村ですね!」

偽勇者「ああ…そうだな」

村人「おや?旅人さんかい?」

全身に麦を巻いた男が話しかけて来た。

偽勇者「ああ、そうですが、どうかしましたか?」

村人「いや何も、ただ、いい時に来たと思ってね!今この村では収穫祭が行われいるのよ」

偽勇者「へえ、それは面白そうですね」

カナ「おじさんの奇抜な格好も収穫祭に関係あるんですか?」

村「ああ、もちろん!この土地の神は人間の前には決して姿を現さないんだ…だからこうやって麦になってるわけさ」

カナ「へえ!人間が麦になるんですか面白いですね」

村人「まあ、格好だけだけどね」

カナ「私もっと収穫祭のこと聞きたいです」

村人「いいよ、話してあげるよ」

それから村人は村に着くまでの間、収穫祭について話してくれた。

祭の起源はこの村にやってきた豊作の神である馬神を麦に扮した村人達が捕らえ無理矢理、引き留めたのが始まりだ。

当然、捕えられた馬神は怒り、麦が全く育たなくなったそうだ。

まずいと思った村人達は馬神の怒りを鎮めるため美しい牝馬を馬神に献上したのだ。

馬神は牝馬の美しさに惚れ、怒りを鎮め村人達を許したそうだ。

そして…子をたくさん作り、この土地にたくさんの実りを与え、村はそれからずっと豊かなのだ。

こんな逸話があるため、祭では村一番の良馬を馬神とし、村人達は身体中に麦を巻き、祭の儀式としてこの話と同じことを行っている。

あと馬と麦はこの村の大きな収入源らしい。

村人「というわけだ!馬神を追いかけるのは今夜だ。良かったら見物していけばいいさ!」

偽勇者「それは面白そうだ、情報ありがとう!」

カナ「喜んで見物します!」

ー牧場ー

夜になり、収穫祭の催し物を見学するため俺達は村の牧場に来ていた。

すでに祭りは始まっており、たくさんの村人達が馬を追いかけるが、なかなか捕まらない。

たまに馬を掴んだり、乗ることに成功する者もいるが振り払われ落馬している。

なかなか気性の荒い馬の様だ、あれでは当分捕まらないだろう。

しかし、馬を追いかける松明の光は夜を照らし、美しかった。

カナ「私!もうちょっと近くで見学します!」

そう言ってカナは人混みの中へ消えた。

馬神「久しぶりだね…君の救った世界はまた、破滅にむかっているよ」

偽勇者「っ!?」

なんだこいつは俺が1人になった瞬間、まるで最初からそこに居た様に突然、姿を現した。

喋る馬、一体何者だ?こいつは魔物なのか?

馬神「どうした?そんなに驚いて?会うのは初めてじゃないだろう?」

偽勇者「お、お前はなんだ?魔物か?」

馬神「……ああ、そうか僕が間違えたのか」

偽勇者「質問に答えてくれ」

馬神「僕は魔物じゃないよ、馬神だ」

偽勇者「馬神だと?」

馬神「僕の知り合いに君と似た格好をした人間がいてね、思わず声をかけたのさ」

馬神「でも、人の寿命は短いから君は他人だろう?」

馬神「人違いだから僕は消えるよ…人と話すのは苦手だからね」

偽勇者「待ってくれ!世界が破滅に向かっているとはどう事なんだ…教えてくれ」

馬神「良いよ…ここであったのも何かの縁だからね…忠告もしてあげるよ」

馬神「君と共にいる娘…アレは魔王の孫だね?」

偽勇者「あの子が魔王の…」

馬神「ああ、知らなかったのかい?まあ良いや」

馬神「あの子の魔翌力は恐ろしい…一人で世界を滅ぼせる力を持っている」

馬神「だから…人の手にも魔族の手にもあの子は渡しちゃいけないよ…どちらかが完全に滅びるまで利用されるからね」

偽勇者「争いを回避する方法はないのか?」

馬神「ないね、全ての陣営があの子のことを狙っているからね」

馬神「世界を救うには君があの子を守り抜くか…君の手で[ピーーー]ことだ」

馬神「まぁ、手っ取り早いのは君があの子を[ピーーー]ことだよ…そうすれば世界は数年か数十年の平和が訪れるけど君はどうする?」

簡単な選択肢だった。

俺は勇者志望だった男だぞ、だから迷わない。

偽勇者「あの子を守り抜いて!そして!どちらも滅ばせない!」

馬神「人間違いだったけど…やっぱり君に話しかけてよかったよ…君は彼と同じことを言う人間でよかった」



馬神「消える前にもう一つ言っておくことがある…もうすぐあの娘を追う者達が来る」

偽勇者「……」

馬神「僕は無理矢理ここの村に引き留められたけど永くいるうちにここの村人が好きになってね…危険な事に巻き込みたくない」

馬神「だから申し訳ないけど、直ぐにこの村から立ち去ってほしい」

偽勇者「わかった…情報をありがとう」

馬神は消えた。

もうここには何の痕跡も残っていない。

偽勇者「さてとカナといろいろ話さないとな」





カナ「わあー惜しいな…もう少しだったのに!」

偽勇者(見つけた)

カナは祭りを真剣に楽しんでいた。

その顔は世界を滅ぼす力を持った少女には見えない。

1日1日を精いっぱい楽しもうとする普通の女の子だ。

偽勇者「カナ」

カナ「あっ勇者様!何でしょうか?」

偽勇者「君の正体を知った君は魔王の孫なんだろう」

カナ「……勇者様それは誰から聞いたのですか」

偽勇者「この村の馬神様から聞いた」


カナ「そうですか…そうですね、馬神様の言う通り私は魔王の孫です」

偽勇者「大金を持っているのに馬を借りなかったのも居場所が割れるからか?」

カナ「その通りです…借りる馬には盗難防止のために発信機が付いてますから…大金はおじいさまが残してくれた遺産の一部です」

偽勇者「君は本当に俺を勇者だと思って頼ってきたのか?」

カナ「……そんな訳ないじゃないですか、もう夢を見るには色々と有り過ぎたんです…貴方がお人好しな感じがしたので利用しただけですよ」

偽勇者「そうか…じゃあ」

カナ「もうやめましょう!質問なんて意味ないです!だってあなたは私を捕らえるのつもりでしょう?」

カナ「当然ですよね…私は貴方は巻き込もうとしたのですから…どうぞ私を捕まえて英雄になってください」

カナ「私は疲れたのです…精いっぱい明るく毎日を楽しく過ごそうと努力しました」

カナ「でもダメなんです!生まれて来た事が悪と言われ、世界中から命を狙われるのは私には辛過ぎます」

カナ「私を育ててくれた側近も死んで本当に一人になりました…だからもういいんです」

偽勇者「君はお兄さんに会うんだろう?それともお兄さんの話は嘘だったのか?俺は嘘だと思わなかった」

カナ「それは本当です…でも!もういいじゃないですか…さっさと捕まえてください」

偽勇者「いやまだだ!さっきと似た質問だけど君は本当に俺を勇者と思わなかったのかい?」

偽勇者「そんなにボロボロな絵本を持ってるのは誰かに勇者に助けて欲しかったからだろ?」

カナ「実は少しだけ期待してました…貴方の格好が余りにも似ていたので、もしかしたら私を助ける為に絵本から出てくれたのかも知れないと思いました」

カナ「でもそんなことはあり得ないのです」

偽勇者「そうか…それを聞いて安心した」

俺は今から嘘をつく。

世界を敵にする嘘だ。

でも後悔はしないこの子を助けると決めたからだ。

絵本の話だが、俺の憧れた勇者は魔王すら救った男なのだから。



偽勇者「カタリール!実は俺は絵本から飛び出してきた勇者…なんだよ、君を助ける為に現れたのさ」

カナ「今更そんな嘘つかないでください!」

偽勇者「嘘じゃないよ!君が信じてくれれば嘘じゃなくなるんだ」

カナ「でも!私を助ければ貴方も命を落とすかもしれないんですよ!」

偽勇者「大丈夫!勇者は死なないから!あとは君が俺を信じてくれれば良いんだ!」

カナ「でも!」

偽勇者「カタリール・ナルバスタはどうしてほしい?」

カナ「本当に頼って良いんですか?」

偽勇者「良いよ」

カナ「私が世界を滅ぼしちゃうかもしれないんですよ」

偽勇者「そんな事はさせないよ絶対止める」

カナ「……」

カナ「じゃあ私を助けてくれますか?」

偽勇者「助けるよ、君が信じてくれれば俺はあの絵本の勇者だ!彼は魔王も救った男だぜ?君を救わないはずないだろう?」

カナ「うわーん」

カタリールは沢山泣いた。

泣き過ぎて乾いてミイラになってしまわないか心配するほど泣いた。

終わります

偽勇者「カナっ泣くのは後だ!」

カナ「グス…ハイ!」

偽勇者「今は逃げるぞ!」

カナ「でもどうやって逃げるのですか?もう近くまで来てるのでしょう?」

偽勇者「大丈夫!正々堂々と真正面から逃げるさ」

カナ「真正面から?」

偽勇者「カナ、実は俺、凄く強いんだぜ!」

副団長「この村にあの子娘は居るのだな?」

兵士長「ハイ!間違いありません!ただ…妙な男と共にいました」

副団長「少し気にはなるが大方、側近の代わりに雇った案内役だろう…恐れることはない」

副団長「しかし、その男には同情するな…何も知らないのにこれから魔王の血族に協力した罪で捕まるのだからな」









偽勇者「憲兵でもない軍隊が逮捕するのか?」

カナ「…」


副団長「誰だ!」

偽勇者「こんばんは!勇者です!」

カナ「魔王の孫です!」

副団長「ハア?どういう事だ!理解出来ん!貴様らは逃げてたのではないのか!」

副団長「なぜ私の目の前にいる!」

偽勇者「逃げるさ!ただ…」

偽勇者 カナ「「正々堂々正面から逃げるだけだ!」」

少ないですがとりあえず投下しました

回想

カナ「真正面からと言うことは、こちらから攻めると言うことでしょうか?」

偽勇者「ああ…そうだ、俺たちは逃亡者だ、まさか正面から攻めてくるとは思わないだろう?だからそこを利用して奇襲をする」

偽勇者「そして先に敵の指揮官を倒し、指揮系統を混乱させたら西の都には向かわず、商業都市国家に向かう」

カナ「なぜ西の都に向かわないのですか!?」

偽勇者「ここから西の都までまだまだ遠い、この長い道のりで、ずっと追っ手の相手をするのは正直無理がある」

偽勇者「なので西の都に行くには遠回りになるが一旦、俺たちの出会った町に戻り、そこから商業都市国家を目指す」

カナ「…?」

偽勇者「わからないって顔してるな」

偽勇者「奴等は軍隊だ…勝手に他国に侵攻することは許されない、戦争になるからな」

カナ「ナルホド…国境を越えてしまえば、正規の手続きを踏まないと私達を追えないわけですね!」

偽勇者「そして商業都市国家まではここから全力で向かえば1日で国境を越える距離だ」

偽勇者「かなり無茶な作戦だが…」

カナ「私はあなたを信じます!」





副団長「うるさい!魔王軍に関しては我々は憲兵と同じ権限を持つ!」

副団長「狙い分からんがチャンスだ!奴等を…グヒャッ!?」

兵士「…あ、ひのきの棒だ」

兵士長「何をした!見えんかったぞ!」

命令を下すより先に気絶する程度の威力で頭を打ち抜き馬から引き離す。

これで副団長を守るために兵力多少は割く筈だ。

そして部隊の長が乗っている馬だ駄馬なわけがないこれを奪って逃走しよう。

偽勇者「カナ掴まれ!」

カナ「ハイ!」

カタリールの手を掴むと一緒に馬に騎乗してその場を後にした。


兵士長「くそ!逃げられた!俺は副団長を守るから兵士よ!何人か足の速い奴を使って追ってくれ!」

兵士「了解しましたー!お前ら行くぞ!」

カナ「凄いです!あんなにも簡単にあんな大軍から逃げるなんて!」

偽勇者「だろう!なんてな…ここからが大変だ」

偽勇者「こちらは常に背中を向けた状態で、背後からの攻撃を避けないといけないからな二人乗りの状態で」

偽勇者「後はどれくらいの規模の部隊で追って来てるかだけど?アレ五人だけか?」



兵士「あの距離は追い着くのは難しいだろうな…それにあいつ強いし勝てるかな、最悪…娘だけでも殺して逃げることができれば上出来だろうが…」

終わります
取り敢えず目標は百五十スレで完結を目指したいです。

兵士「あの距離は追い着くのは難しいだろうな…」

兵士「給料分のことはするか…狙わなくていい適当に弓と魔法を放て」

兵士「奴等の馬が怖がればいい…出来るだけ大きな音がする様にな」



偽勇者「撃ってきたか!」

カナ「でも、全部、変な方向に向かって飛んでますよ!これなら逃げ切れるんじゃないですか!」

偽勇者「ああ…敵はどうやら適当に撃ってるみたいだ…これだと、どこに着弾するか予想しづらい」

偽勇者「しかもそんなに威力は高くないのにわざわざ大きな声を立ててやがる…馬をビビらせるのが目的だな」

偽勇者「追ってる奴はなかなか出来る奴みたいだな、これは二人で逃げ切るのは無理そうだ」

カナ「そんな…」

偽勇者「……」

偽勇者「橋だ!カナ…馬には乗れるか?」

カナ「乗れますよ…でもまさか一人で戦うのですか?」

偽勇者「ああ…その通りだ、大丈夫、俺は強いから心配しなくていい…だからカナ後ろは振り返るな!全力で国境に向かってくれそこで合流しよう」

カナ「必ず合流しましょう、もう一人は御免ですから!」



俺は橋を渡り切った後に飛び降りた。

兵士「男が殿を務めるみたいだな…アレは放っておけばいい娘を追うぞ!」

偽勇者「いや構ってもらう!そらぁ!」

ひのきの棒を思い切り振り橋を破壊した

偽勇者「これで馬は渡れない!」

兵士「やられた…」

兵士「やたら強そうだし、これは給料分じゃないな」

兵士「よし!お前ら!あの男…剣の腕は一流だ!だから絶対に間合いに入るな!中距離から魔法や弓で対処しろ!」

兵士達「「了解!」」

偽勇者「そうはさせない!」

「グホッ!」

「ガハッ!」

二人を吹き飛ばし気絶させる!

兵士「速いな…それに間合いも広い…!」

偽勇者「オラァ!!!」

兵士「グゥゥッ!」

兵士は上段から振り下ろしになんとか耐える

偽勇者「お前が指揮官だな!」

偽勇者は右足の蹴りを繰り出すが後ろに飛んで避けられた。

しまった馬から降りた描写を書いてなかった
いまは馬から降りた状態で兵士達は戦ってるということにしてください

すいません

兵士「足に魔翌力を集中させて、あの速さを出しているのか?」

偽勇者「タネを明かすわけないだろ」

兵士「それもそうか……」

偽勇者「まだやるかい?」

兵士「いや…もう追っても無駄だ…給料分は働いたから…帰るぞ!」

兵士B「よろしいのですか?この男だけでも捕らえてあの娘がどこに向かったか吐かせるべきでは!」

兵士「俺たちじゃあの男を捕まえるのは難しいだろうな、よくても相討ちだ…そんなの凄く無駄なことだろ」

兵士B「はぁ」

兵士「だからこれでいいんだ…どうせ副団長様はもう終わりだしな…命令違反で勝手に軍を動かして娘を捕まえれなかった」

兵士「団長に処断される…だからもういいのさ」

兵士B「納得は行きませんがわかりました」

兵士「気絶した奴は落ちない様に縛って運ぶぞ!」

兵士二人「「はい!」」

兵士達は馬に乗り去っていった。

偽勇者「ふぅ…久し振りに戦って正直辛かったな…早くカナと合流しよう」

今日は終わります

副団長「うっ!うう」

団長「目覚めた様だな…」

兵士「……」

副団長「団長…一体何の様で…私は小娘を追っている最中でして」

団長「もう追わなくていい、正確にはもう追えなくなったのだ貴様のせいでな」

団長「副団長…貴様は命令違反と失態を犯した…軍規に基づき処断する」

副団長「……ふざけるな!俺は貴族だ!平民出身の貴様に!処刑されてたまるか!」

副団長「元々は貴様が臆病者だから行けないのだ!勇者などに頼らず我々の手で捕まえると言うべきだった!」

副団長「俺は殺されんぞ!抵抗してやる!」

副団長は剣を抜いた。

副団長「俺はただ貴族というだけでこの地位まで上り詰めた訳じゃない!貴様らなど返り討ちしてやるわ!」



団長「最後まで情けない…潔くせい」

団長は抜こうとした剣を止められた。

兵士「ここは私にお任せを…」

副団長「喰らえ!」

兵士「ッ!」

副団長「あっ?」

ストン

兵士は副団長の振った剣を避け…静かに首を落とした。

兵士「終わりました…」

血濡れた剣を拭きながら兵士は報告した。

団長「よくやった…しかし側近は捕らえたが肝心の娘が国外に逃げてしまっては我々の出番はないな…」

兵士「そうですね…今度こそ勇者に依頼をしましょうか」

団長「急いで伝書鳩を飛ばそう、世界の命運がかかっている」

王の間

大臣「陛下…魔王残党討伐軍の団長から伝書鳩が届きました」

皇帝「ん、読み上げなさい…」

大臣「我、追撃に失敗せり娘は商業都市国家に逃亡した模様、至急勇者様の派遣を求む」

皇帝「うむ分かった…大臣、今読み上げたことを実行しなさい」

大臣「はい…そのように」

大臣は背を向けずに王の間から去った。

皇帝「あの男には期待してたのだがな…まあ側近を捕らえただけでも良しとするかの」

皇帝「しかし…勇者に任せてしまえば、生かしたまま娘を我が国で利用することは難しくなるな」

皇帝「…最悪、心臓さえ手に入れられれば威力は半減するが戦略兵器を手に入れられるが…どうするか」

国境

偽勇者「カナ!!」

カナ「勇者様!無事で良かったです!」

偽勇者「このまま一番近い街を目指そう…そこで宿泊してゆっくりしよう」

カナ「泊まるのですか?ゆっくりして大丈夫なのですか?」

偽勇者「不安になる気持ちも分かるが、今は休むチャンスなんだ…奴らは外交をして何度も交渉を重ねてから俺たちを探すのだからな」

偽勇者「休むのも逃げるためには必要な事だ」

カナ「…はい」

このときカタリールは不安であった。

そして、この不安は的中する事になる。

偽勇者は見落としていたのだ。

勇者という国に縛られない唯一の存在を。

ガンツのスレに間違って書き込んでしまいました
本当に申し訳ありませんでした
こちらのスレでも謝ります

とある町

偽勇者達が宿を見つけ休息をしていた頃であった。

団長「が商人だな…大人しく着いて来てもらおうか」

兵士達「「……」」

商人「こんなに夜遅くに大勢で何の用ですか?」

団長「貴様は今、魔王軍との繋がりを疑われている」

商人「魔王軍との繋がり?そんなものないよ!こら勝手に触るな!持って行くな!」

商人「兵士を止めろ!不当じゃないかこんなこと!」

兵士「預かるだけだ…解決すればすぐ返す」

団長「我々は今、世界を守ろうとしている…」

商人「ハア?」

団長「魔王の孫が生き延びれば世界は終わる…どんな破廉恥で卑劣なことをしてもそれは阻止しなければならない」

商人「何が言いたいんですか?」

団長「貴様は娘と共にいた男の雇い主だろう?あの男は娘の正体を知っているにも関わらず我々を退け国外に逃亡した」

団長「だから…貴様を捕らえるのだ…あの男と繋がりを持つものだからな」

商人「あの子が魔王の孫?嘘だ!人相書きにはそんな事、書いてなかった!」

団長「当たり前だ…魔王の血筋残ってる事が知れたら無用な混乱を招く」

商人「…う」

団長「貴様には我々に協力してもらう…協力すれば何もしないと誓おう」

商人「協力って何をすれば良いんだ…」

団長「あの娘が貴様にどんな事を話したのか教えてもらう…そして人質のふりをしてもらう」

団長「我々はこれからこの国と国外に広く宣伝するつもりだ」

団長「投降しなければ捕らえた側近と商人[ピーーー]とな」

商人「そんな」

兵士(これエグいな仮に娘が投降を拒んでも…男の方は商人を人質にされたら迷いは生じるだろう、どちらに転ぶかは分からないけど)

団長「我々に協力してくれるか?」

商人「……フゥ」

商人「断るよ!私にはどう考えても!あの子が!世界を滅ぼそうと考えてるようには見えないし!世界を滅ぼす力を持っているとは思えない!そんな妄想するなら税金を下げやがれ!こんちくしょう!」

団長「そうか…では捕らえよ」

兵士「はい」

商人「ちょっと!断るって言ったろ!」

団長「そうだ…君はもう協力者ではない、ただの魔王軍に与した人間だ…」

商人「な!?それなら断っても一緒じゃないか!」

団長「言っただろう?どんな破廉恥で卑劣なことをしても世界を守ると」

商人「偽勇者…ごめんよ」

ありがとうございます

そうですね

こちらのスレにわざわざ書き込む必要もなかったですね

今後はこのような事はないように気をつけていきます

宿の部屋

偽勇者「もうこんな時間か…ちょっと眠るつもりだっただがな」

少しだけ仮眠を取るつもりであったがいつのまにか昼になっていた。

偽勇者「カナは…まだ寝ているな」

カナ「…」

落ち着いている本当にリラックスして眠ってるみたいだ。

偽勇者「ちょっと出かけるよ」

俺は外から開けられないように扉と窓にロックの魔法をかけ…解除せずに無理に開けようとすれば大きな警戒音がなるようにした。

これで何かあってもすぐ駆けつけられる。

偽勇者「さすがにひのきの棒じゃ厳しいからな」

まずは武器屋に向かおう…そのあとは良さそうな飲食店があればカナを起こして遅めの昼食だ。

武器屋

偽勇者「うーん?」

どうやら近くの武器屋はココしかないようだ。

しかし値段だけ高くて質の良いものは売ってないな…店もそんなに繁盛してるようには見えないしな。

武器屋が不況なのは何処も同じか。

偽勇者「掘り出し物を探さなきゃ…」

「「コレとかいいかな」」

「「え?」」

声が同調したことに少し驚いたが声を発した人物を見た。

中性的な青年だった…いや少し女性のようにも見える。

多分、長めの黒髪が原因だろう。

青年?「ああ…君もこの剣を?」

偽勇者「そうだ…欲しいと思ってる」

青年?「そうかい…僕も新しい剣を探していてね、すまない譲ってもらえないか?」

偽勇者「残念だがそれは出来ないな…この店で一番良さそうなのがこの剣だからな」

偽勇者「それに君は背中にもう剣を背負ってるじゃないか…俺が持っているのはひのきの棒なんだ剣は俺に譲ってくれよ」

青年?「ふむ…んん?君の格好…フフ!ハハハ!」

いきなり青年は笑い出した。

偽勇者「何がおかしい!」

青年?「ハハ…すまない…まさか僕の前でそんな格好をする人間がいるとは思わなくてね」

偽勇者「…?」

青年?「面白いものを見せてもらったからね剣は譲るよ」

偽勇者「あ、ありがとう」

偽勇者「なぁ!このあと予定とかあるのか?」

青年?「んー?特にはないかな…まさか僕をデートに誘ってるのかい?」

偽勇者「野郎をデートになんか誘う気はない!ただ剣を譲ってくれたからな食事でもどうだ?」

青年?「野郎か…?フフやっぱり君…面白いね…その誘い受けるよ」

偽勇者「そうか…良かった、連れがいるんだその子も一緒にで良いか?」

青年?「構わないよ」

青年は柔らかな表情で言った。

魚介類を扱ったバルで食事をする事になった。

商業都市国家は内陸部だが流通が盛んでいろんな地方の名物が集まっている。

魚介類などは海のある国で食べるのが美味いが、さすがは商人の国…新鮮な魚介を仕入れている。

いや…ある程度熟成され…釣ったばかりの魚よりも美味しい。

青年?「彼女が君の連れかい?可愛い子だね」

偽勇者「ああそうだ…えっと名前は…」

カナ「…!」

カナの方見るブンブンと顔を振ったどうやら本名は言わないほうが良いみたいだ。

偽勇者「俺が偽勇者で…この子がカトレアだ」

青年?「偽勇者とカトレアちゃんか…よろしくね…今日はご馳走になるよ」

カナ「よろしくお願いします!」

青年?(この少女どこかで見た気がするが…)

偽勇者「久しぶりに男との食事だ…俺の雇い主はなぜか女ばかりだったからな」

青年?「そうかい…僕はそんな魅力がないかな…ちょっと悲しくなってきたよ」

偽勇者「ん?どういう事だ?」

青年?「嫌なんでもない…楽しそうだしね、余計なことは言わないよ」

カナ「勇者様…多分この方…男性では」

偽勇者「何か言ったか?」

青年?「どうした…カトレアちゃん?」

カナ「いえ…なんでもないですよ…」

カナはまだ日も暮れてないというのにお酒を飲み始めた二人に引いていた。

胃がキリキリする…風邪ですか?

早く良くなると良いですね

青年?「しかし今、君は彼の事を勇者様と言ったね…今の勇者はわた……女だったはずだが?」

カナ「それはこれです!私にとって彼が勇者様なのです!」

カナは絵本を差し出す

青年?「やっぱりコレか…母がよく読み聞かせてくれたよ…僕もこの勇者に憧れてたんだっけ…」

青年?「と言うことは…今、君はコスプレをしているわけだ」

偽勇者「コスプレって!コスプレとは違うぞ!少しでも彼に近づきたいと思っているだけだ」

青年?「君はこの勇者になりたいのかい?だが君はどう見ても偽物だよ」

偽勇者「そうだ…今は偽物かもしれないが彼みたいになりたい」


青年?「ふうん…君の目指している勇者は理想を信じて敵も味方も救った男…」

青年?「でもね…この世は絵本じゃないんだ理想だけでは何一つ救えないよ、時には何かを捨てないと…ね」

偽勇者「確かにそうかもしれない…だが俺は理想を捨てたくない…甘いだろう?」

青年?「いや…羨ましいよ…きみはぼくの捨てたものを持っている」

それから青年とは他愛のない会話をして、酒も入ってたせいか日が暮れていた。

青年?「今日は楽しかったよ…君達はいつまでこの街に滞在するのかな?明日も一緒に食事しないか?」

偽勇者「すまない…明日にはこの国を発つんだ」

青年?「そうか…それは残念だ」

青年?「そう言えば僕の名前を教えてなかったな…ん?鳩か」

一羽の鳩が青年肩に止まる。足首には手紙が巻かれていた。

青年は手紙を読んで少し震えたあと。

勇者「残念だよ、君たちを討たないといけないみたいだ…勇者としてね」

冷たい顔で言った。


そうだったんですね、病気じゃなくてよかったです

勇者の名前を募集します
協力お願いします(変な名前でなければオーケー)
安価下1

ありがとうございます

ハイン・アレクトリアとなりました。

アレク「僕の名前はアレックス…今代の勇者さ…大人しく捕まるなら酷い目に合わせたりはしない…偽物…選べ、待ってあげるよ」

一瞬…空間が歪んだような気がした…アレックスの発した魔翌力と威圧に恐れ、俺は錯覚したのだ。

ヤバイ…無理だ…どうしようもない…鍛えているから解る、勇者の実力は俺の遥か上を行く…

こんな奴に出会ったことがない。

勝てない…勝てっこない。

体が震える…コレが殺されるという感覚なのか…足が動かない…

情けない…本当に情けない、本物の勇者になると誓ったばかりなのに…こんな。

カナ「逃げましょう!」

偽勇者「え?」

何を言っている…こんな化け物から二人で逃げられわけないだろう?

俺を囮にしてカナに逃げろと言いたい…だが怯えて声を出せない。

そのときグッと手を握られた。

カナ「大丈夫です…あなたが震えて動けないなら私があなたを支えます…だから逃げましょう!」

偽勇者「あ…」

彼女の手はひどく汗ばんで震えていた。

そうか…カナは自分も怖いのに俺を助けようとしてくれたのか。

ありがとう…。

偽勇者「フーッ!フーッ!」

大きく息を整える。

心臓の鼓動がうるさい、だけど視界はクリアだ。

勝てない、なら逃げてみせる。

偽勇者「投降はしない!」

カナ「きゃ!」

足に魔翌力を込めると同時に地面に煙玉を投げる。

そして…カナをお姫様抱っこし、猛スピードで路地裏を駆ける。

アレク「うわぁ!ゴホ!ゴホ!煙玉か!クソ!」

煙が消え、遠くに偽勇者が見える。

アレク「ふーん…足に魔翌力を込めて高速移動か…基礎の応用は出来ているみたいだね」

アレク「でも普通は一瞬のブーストでしか使わないからずっと魔翌力を込め続けたら足、いかれちゃうだろうなぁ」

アレク「元々、普通の人間は魔翌力を持っていないからね…」

アレク「おっと…解析している場合じゃなかったね…追いかけようか…加速!」

偽勇者「ハア…ハア…早く町の外に!足が逝かれてしまう前に!」

人は魔翌力を持っていない…心臓に魔翌力炉がある魔物と違い、人は外から魔翌力を取り入れ魔法を使う。

一回で取り込める魔翌力は人によって違うのだが…限界を越えれば人体は損傷する。

偽勇者「城門!もう少しで外だ!カナ!奴は付いて来ているか!」

カナ「大丈夫です!居ません!」

偽勇者「逃げ切れたのか!」

カナ「わかりません!だけど後ろには誰もいません!」

偽勇者「そうか…逃げ切れた?」

俺たちは城門を抜け町の外に出た。

逃げたという安堵が包み。

そして直ぐに悪寒が走った。

アレク「やあ!遅かったじゃないか偽物くん?」

そこには勇者がいた。

今日はここまでします

偽勇者「なんで!そんなに早ければ!街を出るまでに追いついたはずだ!おれたちをおちょくってるのか!」

アレク「すまないね…そうなつもりはないんだ…ただあのまま戦ってたら街に被害が出るからね」

アレク「勝手に外逃げてくれれば万々歳だったのさ」

アレク「もう一度聞こう…投稿する気はないか…僕の目的は彼女だけだ…今なら君には何もしない…何故なら勇者とは人を守るために存在し、聖剣は人を切るためにあらずだからね」

偽勇者「投降はしないし…逃げられないなら戦うしかないだろう?」


アレク「そうか残念だ …だが安心しろ君を殺しはしないさ…ただ再起不能になってもらう二度と勇者と名乗れないようにね」

偽勇者(力の差は歴然だ…だから剣を抜く前に倒す!)

偽勇者「カナ… 逃げろ!」

カナ「勇者様…」

偽勇者「あああああっ!」

アレク「……」スゥ

スパンと音がなった時には俺は切られていた。

偽勇者「は?…グゥ!あああっ」

俺はどうしようもなく地に伏せた。

偽勇者「ハアハア…クソふざけるな…ハアハア…こんなっ!」

アレク「……」

カナ「勇者様!」

カナがそばに駆け寄る。

偽勇者「ハアハア…逃げるんだ!カナ!」

カナ「でも…!」

偽勇者「ハアハア…あれ?」

偽勇者「……ハアハア?切られていない?」

間違いなく聖剣は俺の胴を切ったはずだ。

なのに血の一滴も出ていない。

アレク「言っただろう?聖剣は人を切るためにあらずと…この剣に人は切れないんだよこの剣が切るのは魔物のみ…魔物であればどんなに硬くても隙間に通すように切れる」

偽勇者「…ハンデというわけか」

アレク「そういうわけじゃない…僕の持つ剣はこれだけだからね」

アレク「僕は怒ってるのさ…羨ましい…僕の捨てた理想を追い求める姿が」

アレク「そして…たいした実力もないのに理想を求める姿が不愉快だ」

偽勇者「俺は…俺の全てをかけて勇者になろうとした…理想を実現する勇者になるためにな…理想を捨てて勇者になったお前が俺には不愉快だ!」

アレク「全てをかけてだと!だったら!勇者になれなかった時点で潔く死ぬべきだったんだ!君は!」

偽勇者「カナ…俺が戦っている間に逃げてくれ…」

カナ「だから!あなたを置いて逃げません!」

偽勇者「大丈夫だ…負けるために戦うわけじゃない!勝つために戦う!勝たなきゃダメなんだ!こいつには!」

アレク「待て!逃がさないよ!魔王の孫!君はまだ逃げるつもりなのか!家族がいたであろう兵士たちを殺して…!」

アレク「君のせいで!商人は捕まったぞ!君の育ての親も捕まっている!…そこに居る偽物もこれから不幸になる!これ以上、人を巻き込むんじゃない!逃げるな!」

カナ「うう…私はただ…」

偽勇者「ふざけるなあああ!」

プチっと何かが切れた気がした。

気付いたら俺は切りかかっていた。

だが簡単に受け止められ鍔迫り合いになる。

アレク(……速い!?先ほどよりも…!)

偽勇者「カナは小さな子供だぞ!それは鬼畜の言う事だ!」

アレク「そんなことは分かっている!理想は捨てたと言っただろう!」

俺は弾き飛ばされた。

偽勇者「クッ!」

偽勇者「加速!」

アレク「見切ってるんだよ!」

全て受け切られ…切られた!

偽勇者「ガハッ!…まだだ!」

勇者の足元に煙玉投げつける!

アレク「視界を…小賢しいな!」

小道具を駆使して翻弄するのが、大きな魔翌力を扱えない俺の戦闘スタイルだ。

アレク「だが煙玉など…意味はない!竜巻よ!」

勇者を中心に暴風が起きた。

魔法だ。

煙は吹き飛び…俺はカウンターを食らった。

偽勇者「クソ!痛え!だがまだ!」

閃光弾を構える。

だが遅かった。

勇者はすでに目の前で剣を構えていた。

アレク「悪いが君に何かをさせるつもりはない!」

偽勇者「……!?」

勇者の全力のフルスイングが俺を十メートル先の岩まで吹き飛ばした。

カナ「勇者様!」

アレク「彼は死んだ…君のせいでな」

爆音が森に響く…最早、生きてはいないだろう……

偽勇者「…まだだ」

アレク「しぶとい…」

それから何度も倒された…何度も意識を刈り取られた…だがその度に立ち上がった。

アレク「ハアハア…いい加減にしろ!」


偽勇者「どうした…息が上がってるぜ…ハアハア」

カナ「勇者様!もう立たないでください!死んじゃいますよ!」

偽勇者「ハアハア…さっき潔く[ピーーー]とか言ってた割には俺を殺せないみたいだな…ハアハア」

アレク「うるさい!さっきから言ってるだろう?この剣は人は切れないんだ!」

偽勇者「違うだろ?ほんとは殺したくないんだ…心のどこかで理想を求めている…だから俺を殺せないんだ…鉄の剣でバカスカ殴れたら普通は死ぬからな」

アレク「違う…ぼくは[ピーーー]気だった!」

偽勇者「剣が震えてるぜ…」

アレク「!?」

偽勇者「だけど俺がお前に勝てないのも事実だ…だから頼む見逃してくれないか?頼む…」

アレク「……」

アレク「残念だが…それはできない…」

偽勇者「そうか…仕方ないだったらそうなるまで立ち上がるだけだ…」

カナ「眠り魔法…」

急に眠気がダメだ意識が遠のく…

偽勇者「…カナ何で?」

カナ「ごめんなさい…もう見てられないんです…アレックスさん!大人しく捕まります!だから…勇者様に手を出さないでください」

カナ「お願いします…」

カナは深く頭を下げた。

偽勇者「カナ…何を言うんだ…俺はまだ…」

ダメだ…立てない…

アレク「わかった君の提案を受け入れよう…」

アレク「だが彼に一言…言わせてもらう」

アレク「彼女の処刑は一週間後に行う!旧魔王城の入り口!君がまだ諦めていないなら!まだ理想を求めるなら助けに来い!相手になってやる…以上だ!」

俺は負けた…この話しを聞いた後、俺は完全に意識を失った。

終わります

宿

商人「…zzZ」

偽勇者「カナァ!!ココは…?」

商人「うわ!」

商人「偽勇者!良かったよー!目覚めたんだね」

偽勇者「商人…か、俺はどのくらい眠ってた?」

商人「2日以上かな…いつから寝てたかはわからない…君と再会したのは昨日だから」

偽勇者「そんなに眠ってたのか……カナの処刑の日はいつかわかるか?」

商人「4日後だよ…私もカナちゃんのおかげで釈放されたんだ…」

偽勇者「そうか…あんまり時間はないな」

俺はベットから立ち上がり装備を整えていく…

ああ痛い…体を動かすたびにどこかが痙攣する。

商人「待てよ!そんな身体で何をするつもりだ!」

偽勇者「……カナを助けに行く」

商人「無茶だ!君はたった一人の人間に勝てなかったんだろ!」

商人「今から君のいく場所は、その一人と各国の軍隊が集まっているんだぞ!」

偽勇者「わかっている…」

商人「わかってないよ!絶対に宿から出さないよ!せっかく助かった命なんだ!無駄にすることは許さない!カナに失礼だ!」

偽勇者「商人!!!」

商人「!?なんだよ」

偽勇者「頼む…行かせてくれ!俺のわがままを聞いてくれ…」

商人「泣きそうな顔して言うなよ…卑怯だよ…私だってカナには死んでほしくないんだよ」

偽勇者「……」

商人「……」

商人「…ふぅ、わかったよ!助けに行きなよ!」

偽勇者「……商人!」

商人「ただし!条件がある!」

偽勇者「条件?」

商人「まず一つ!完璧な装備で行くこと!二つ目完璧な体調で向かうこと!」

商人「三つ目…必ず行きて帰ること…無事に帰って私を迎に来る事!……私は君の事が好きだ!だから必ず帰ってきてこの気持ちを伝えたいから…」

偽勇者「……それってもう言ってるんじゃ…」

商人「うるさい!そんなところを突っつくな!」

偽勇者「わかった…俺も帰ってきたら商人に伝えたい…君の事が好きだと」

商人「それってもう……」

偽勇者「ああ…言ってるよ…」

商人「…あっ」
















俺は商人と唇を重ねた。

勇者…




商人「さあ…約束を守ってもらおう」

商人「完璧な体調で…」

偽勇者「完璧な装備だな?」

商人「うん…これが君が眠っていた間に手に入れることのできたポーションと薬草…そして」

商人「これを君に託す…本当に正真正銘…勇者様の使っていた剣だ」

商人「伝説の武器でもなんでもない…ただ切れ味のいい剣だけど…確かに勇者が使っていたものだ」

偽勇者「ありがとう…フン!」

ポーションを飲み

受け取った剣を振った!

風邪を切る音と重さが心地いい。

値段の高いポーションだったのだろう。

さっきまでの辛さが嘘みたいだ。

申し訳ない高価なものをたくさん貰って、生きて帰れるかもわからない所に向かうのだから。

商人「行くんだね…」

偽勇者「うん…ポーションありがとう」

商人「…うん」

偽勇者「おかげで体調は万全だ…必ず帰るから」

商人「うん…行ってらっしゃい」

カナ「……あの」

アレク「なんだ…」

カナ「なんで…女の勇者様が牢の見張りをしているのですか?」

アレク「……人間の中には処刑の前に君を殺し死体を奪おうとする輩がいるからな…」

アレク「こうして見張っているわけだ」

カナ「私の死体を…ですか?」

アレク「君は死んでいても利用価値があるみたいだからな」

カナ「そうですか…」

アレク「君が死んだら…君の死体はバラバラにされ各国に采配される…君の死体は戦略兵器としても使えるそうだ」

カナ「なぜ配るのですか?」

アレク「人間同士で争わないためだよ…僕の聖剣は君を切れても、消し去る事は出来ないからね」

カナ「…なぜあの場で私を切らなかったのですか?なぜあんな約束を…」

アレク「約束はついでだよ…君をあそこで[ピーーー]よりも魔王城で処刑をした方が残党達に敗北感を与えられる」

アレク「それに釣ることもできる…もしかしたら残党が助けに来るかもしれないからね」

カナ「そうですか…」

アレク(建前はね…救えるものなら救ってみせろ!)

カナ「あの~私の側近はもう死刑になりましたか?」

アレク「まったく…質問が多いね…捕まえたのは僕じゃないから詳しくは分からないけど…生きてるよ」

カナ「本当ですか!」

アレク「貴重な上級魔族だからね…実験動物か洗脳して生物兵器にでもすると思う…あの帝国は覇権を狙っているからね」

カナ「そんな……」

側近「オイ!誰か居ないのか!チ!外が騒がしくて眠れん!」

側近「…姫は無事だろうか…?」

側近「私の牢の前の看守も慌てて何処かに消えてしまったな…この騒がしさと何か関係があるのか?」

側近「…誰だ!見かけない顔だな…何者だ」

偽勇者「…勇者だ…協力してほしい」


使い魔「魔王様…妹様が見つかりました」

新魔王「そうか…それで今は何処に?」

使い魔「三日後…魔王城にて処刑されるそうです」

新魔王「…我が妹カタリールか…奴の力利用価値がある…奪いに行くぞ…」

死刑当日

アレク「時間だ…行くよ」

カナ「……」カタカタ

アレク「…」

何も聞こえなかった

分かるのは手錠は恐ろしく重いことと

身体の震えが止まらない事だ。

役人「チッ!手間を取らせるんじゃない!」

役人に腕を引っ張られる無理やり立たされる

カナ「…っ!ああ…うう」ジョロロロ...

うまく言葉が発せないし立てない。

私は今漏らしたのだろう。

死に向かうのはこんなにも怖い。

カナ「た、助け…」

役人「こいつ漏らしやがった!掛かったじゃねーか!」

カナに振り下ろされる平手打ちはアレクに止められた。

アレク「やめろ…」

役人「勇者様!しかしコイツは!」

アレク「やめろと言った…」

役人「くぅ…」

アレク「カナ…死ぬのが怖いか…」

カナ「……はい、た、助けてください」

アレク「それは僕の立場上できない…僕に出来るのは君を出来るだけ苦しまないように逝かせること」

カナ「嫌」

アレク「死刑台まで君が歩くのを手助けする事だ…立てないなら持ち上げて行くね」

カナ「……」カタカタ

アレクはカナを抱えた

湿っていたが気にはしていない様子だ。

あっという間にカナは処刑台の上に座っていた。

アレク「コレより!魔王の孫カタリール・ナルバスタの処刑を行う!」

カナ「嫌…嫌…嫌」

アレク「この処刑を魔王城で行う事により!西の都の残党の士気は著しく下がるだろう!」

アレク(まだ来ないのか!)

アレク「……っ!役人…薬は持ってきているな」

役人「はい…魔族に効くかは分かりませんが…」

アレク「よし…嗅がせろ…」

アレク(早く来い!偽勇者…証明するんだろう…長くは引き延ばせないよ…)

役人は布袋に火をつけた何かの葉っぱを入れるこちらに近づけてきた、中からは白い煙が上がっている。

カナ「嫌…やめて!やめてったら!」

コレを嗅がされれば、いよいよ殺されると必死に抵抗した。

役人「こら!動くな!」









「上級火炎魔法…」



アレク「……ッ!」

業火が迫る

聖剣を取り出し一閃した。

新魔王「ほお…炎を切ったか…いや違うな構成する魔翌力を切ったのだな」

新魔王「ということは…お前が勇者か?」

2メートルはある体躯に黒色の鱗が輝く…人と龍が混ざったような姿をしていた。

新魔王「初めまして魔王だ…早速だが妹を返してもらおうか?」

アレク「…君はお呼びじゃないんだけどね」

投稿が遅くなりすいません

投下していきます

上空 処刑場の真上

側近「人間…降下するぞ!捕まっていろ」

偽勇者「待て!何かおかしい勇者と何かが戦っている…魔物か?」

側近「魔物?ならば我々の仲間ではないか?」

偽勇者「俺は魔王軍に入ったつもりはない」

側近「今更何を言うか私を助け…姫も助けるのだろう?もはや人の側には居られんぞ」

偽勇者「……かも知れないな」

人間の国ではもう普通には生きれないだろう。

側近「どうする…降りるか?」

偽勇者「……」

当初の予定では実力では処刑寸前に降下しカナを手早く助け出すつもりだったが状況が変わった。

いま勇者と戦っている魔物がカナを利用する目的ならば敵だ。

勇者と魔物、同時に相手しないといけない。

そんな実力はない。

それならば勇者が魔物を倒した後、安堵した瞬間に助けるのが一番良いのではないか。

偽勇者「…いや、勇者が魔物を倒した後、油断したところを狙う」

側近「なっ!同胞を見捨てろと!それに三人がかりならば、勇者が相手とはいえ簡単には負けないのでは?」

偽勇者「勇者には全ての魔物に特攻の聖剣がある…三人で闘った所で勝てるかもわからない、それに長引けば軍に囲まれる…そうなったらもう絶望的だ」

偽勇者「それに今はカナを助けるのが目的だ」

側近「そうだが!ぐっ…!わかった、我が主君の姫を助けるためだ同胞のことは諦めよう…」

偽勇者「……」

アレク「君、カッコつけて登場したところ悪いけど、敵のど真ん中に一人で来て無事で済むと思ってるの?周りを見てみなよ、たくさんの軍に囲まれてるし僕もいるんだよ」

魔王「貴様こそ自惚れている…僕がいるんだよ?貴様は世界で一番、自分が強いとでも思っているのか?それに我は一人ではないぞ…」

魔王が指を鳴らす…すると魔王城を囲む人の軍を包囲する様に魔物の軍団が現れる。

人間の軍は突然の出来事に対応しきれず押されている。

アレク「な!あんな大群が現れれば包囲される前に気付くはず…まさか…空間転移させたのか!あの大群を!馬鹿げてる…失敗したら全滅するんだぞ!」

魔王「だが失敗しなかった…ただ…それだけだ、しかし貴様が相手ならば一人でもやれていたさ…そしてまだ終わっていないぞ!」

もう一度指を鳴らす。

魔王を守るように三匹のドラゴンが現れる。

魔王「貴様達は近づくものを殺せ…我が相手をする、邪魔はするな」

ドラゴン達「「はっ!仰せの通りに…」」


魔王「さて形勢逆転だな?勇者くん」

アレク「何も変わらないよ、まずは直ぐに君を斬り伏せて魔物共の士気を削ぐさ…こんな大規模な空間転移…成功したのが奇跡なんだ何度もできることじゃない」

アレク「つまり逃げることはできないし君を殺せば魔王軍は総崩れだろう、何百年もかかっているけど魔王軍はこれで完全に壊滅だ」

多少は強がりだ…全体の形勢は不利だが弱気は見せられない。

それに魔王を殺せば確実に総崩れする。

大丈夫、こちらには聖剣がある魔物に対しては確実な致命傷を与える。

こちらが有利だ。

魔王「…フン!そんなナマクラで我が切れると思っているのか?」

アレク「切れるさ!これは魔を払うため人々の想いで打った劔だ!人を守るために存在する劔は魔物を滅する為にある!」

魔王「ならば試すが良い!」

アレク「言われずとも!」

魔王「なかなか素早いな…さすがだが…いつまで続くか?」

アレク「こいつ…魔翌力の通っていない瓦礫を高速で飛ばしてくる…やり辛い!こんな事になるなら、あの剣…譲るんじゃなかったな」

勇者の持つ聖剣は魔翌力を宿す魔族や魔法には有効だが魔翌力の通わないものにはなまくら刀よりも使えない。

一撃が通れば勇者の勝ちだがなかなか自由に動かせてもらえない。

アレク「くっ!どうするべきかな…!」

先程も言ったように人の軍は包囲され瓦解寸前、立て直すにはこいつの首級を上げるしかない。

カナ「あの方が私のお兄様…」

カナの周りにいた役人はすでに逃げていた。

だがカナは逃げられないでいた。

逃げた役人が戦いの余波で死んでしまったからその場から動けなくなったのだ。

しかし二人はカナのいるところには余波が飛ばないよう闘っていたので、カナはこの場所で蹲っていた。

闘いは互角。

しかしこの均衡も崩れる時が来た。

魔王が動いたのだ。

魔王「これで終わりだ!!!」

周囲の瓦礫をを飛ばし、瓦礫と共に駆け、魔王は乱暴に腕を上段から振り下ろす。

アレク「ニィ!…この瞬間を待っていたんだ!」

魔王「なっ!」

迫り来る瓦礫を避けもせず当たりそうな部分を魔翌力で防御し、聖剣のカウンターを魔王の胴に一閃した。








魔王「……ニィ!」

アレク「……?」





……一閃したはずだった。


アレク「…切れて…ない!」

魔王「残忍だったな!我は人間だ!」

アレク「まずい!」

直ぐに回避行動に移ろうとしたが遅かった

魔王「おっと逃がさんぞ!」

アレク「ぐっ…くそ」

魔王は首を掴み勇者を持ち上げていた。

魔王「少し力を入れるだけで貴様の首を握り潰すことが可能だ」

アレク「ば、化け物め…」

魔王「化け物だと!」

魔王「貴様らはいつだってそうだ…異形の者を化け物と扱う…我は…俺は人間だ!」

魔王「本当の化け物はそこに蹲っている俺の妹だ…無害な見た目をしているが中身は世界滅ぼす力を持った化け物だ…」

カナ「……っ!」

魔王「俺は妹が羨ましい…できるならこの妹の様な見た目に生まれたかった」

アレク「…さっきから聞いてれば、気持ち悪いんだよ!」

魔翌力を拳に込め、首を掴む魔王の腕を殴る。

アレク「なっ!魔翌力が吸われたのか」

魔王の腕は何事もなかったかの様に無事であった。

腕に拳が当たった瞬間、力を吸われた様な感覚であった。

魔王「ふふ…俺の身体の鱗は魔翌力を無効化するのさ…貴様の持つ聖剣、何で出来てると思う前魔王の鱗を剥ぎ取り作ったのだよ!」

魔王「魔を払うために人々の想いが打った劔だと笑わせるな!我が祖父の死体から剥ぎ取り作ったのだ!」

魔王「ハアハア…ふう…少し喋りすぎたな…そろそろ[ピーーー]としよう…最後に言い残すことは?」

アレク「クソ喰らえ」

魔王「そうか…[ピーーー]」

力を入れ首を潰そうとした瞬間それは空から降ってきた。


偽勇者「勇者アアアアアアアアア!俺を浮かせろ!」

偽勇者は空から落ちる勢いのまま首を掴む魔王の腕を切り落とした。

魔王「なっ!?ぐああああ!腕が!」

アレク「はぁ!?落ちてきた!?中級風魔法!」

偽勇者「ふぅ…危うく飛び降り自[ピーーー]るところだった」

アレク「…派手な登場の仕方だ」

カナ「…勇者様!!!」

偽勇者「カナ!今度こそ助けに来た!」


魔王「グゥゥ!クソ!腕を!俺の腕を!」

赤い血が流れている。

魔族の血は緑や紫だ…本当にこの魔王は人間なのか…

魔王「貴様!何者だ!」

偽勇者「カナの勇者だ!」

魔王「カナの?ならば何故!そこの勇者を助ける!カナを処刑しようとした者だぞ」

偽勇者「…俺はあらゆる物からカナを守るつもりだ…殺そうとする者や利用しようとする者からもな!」

魔王「チッ!面倒なっ!」

偽勇者「だからお前の腕を切り飛ばした」

側近「オイ!いきなり飛び降りて死ぬつもりか!」

偽勇者「知り合いがもう少しで死にそうだったから…」

側近「だからといって目的は姫様だろう!」

アレク「また、降りてきた…あれは側近か!」

側近「ああ!姫!姫!無事でしたか!」

カナ「側近!あなたもよくぞ無事でいてくれましたね!」

魔王「貴様…側近か…まさか人間の仲間になっていたとはな…」

側近「…もしかして貴方は王子でしょうか…私は魔族を裏切ったりなどはしてません!」

側近「ただ…姫様を助ける為に協力しただけです!」

魔王「ほう…ならば証明するんだな…こいつら2人の相手をしろ…」

側近「……この男は私を助け…姫を助けた者です…」

魔王「それがどうした…魔王の腕を切り落としたのはその男だ…敵だろう?」

魔王「安心しろ…聖剣…俺の手にある貴様1人で十分やれる」

側近「……」

アレク「いつのまに…!」

側近「わかりました…私がこの者達の相手をいたします魔王様」

魔王「頼むぞ…カタリールついてこい」

カナ「イヤです!離してください!勇者様!助けて下さい!勇者様!」

魔王「…ちっ!うるさい!この男が来てから更にうるさくなった」

偽勇者「カナを離せ!…もう一つの腕も切り落としやる!」

魔王「……ふんやってみろ…貴様は偶然で俺の腕を切り落としたに過ぎない、貴様程度が戦えると思うな」

魔王「お前は側近にすら勝てんよ」

魔王「…さらばだ…転移魔法!」

カナ「勇者ッ…さ!」

_____シュンっ!

偽勇者「…待っ!またカナがさらわれた…くそおお!」

偽勇者「…待っ!またカナがさらわれた…くそおお!」


アレク「嘆くのは後だ!来るぞ!」

偽勇者「…危っ!」

側近「…上級風魔法!吹き飛べ!」

アレクのタックルのおかげであの魔法には当たらずに済んだ。

アレク「ふぅ…良かった怪我はないね」

偽勇者「…すまん助けられた」

アレク「……きみ何か武器はないのか…流石に何もないはキツイのさ」

偽勇者「…ある」

アレク「…用意がいいね…僕の相棒にならないか?」

偽勇者「カナを助けたら…カナを狙うんだろう?じゃあ相棒にはなれないよ」

アレク「それは残念…だ、これはきみと出会った時の剣か…」

偽勇者「不満なら俺の剣と変えるが…?」

アレク「いやこれでいい」

アレク「いやこれでいい」

偽勇者「なぁ勇者…一緒に戦おうとしてくれてるところ悪いが側近の相手はおれに任せてくれないか?」

アレク「…死ぬ気か?…冗談でも君の敵う相手じゃないよ」

偽勇者「わかってる…だけどこのまま2人で相手をしていたら…人間の軍を全滅させた魔王軍が押し寄せる…そしたらどっちにしろゲームオーバーだ」

アレク「そのくらい分かっている…だが」

偽勇者「…勇者とはその時代ごとの騎士の最高位でありどの国にも属さず、魔王が現れれば各国を束ね討伐軍を指揮する者のこと…だろ?」

アレク「…っ」

偽勇者「君は俺が成れなかった本物の勇者だ…君しか人間の軍を救える者はいない」


偽勇者「それに…中ボスを倒せない奴にラスボスは倒せないだろ?」

アレク「フッ…!」

アレク「…そうか…まぁ、ラスボスを倒すのは君みたいな脇役じゃなくて主役である僕だけどね…!」

偽勇者「じゃあ脇役として精一杯頑張るよ」

ドラゴン,s「「逃すと思うか?小僧!」」

待機していたドラゴン達が勇者に襲いかかる。

アレク「…ついでだ…君達の首は落としていくよ」

________スンッ!

ドラゴン,s「「舐め……えっ?」」

ドラゴン達の首と体が崩れ落ち土埃をあげる。

________ズンッ

偽勇者「……俺はあんな奴と戦って生きてたのか恐ろしい」

アレク「偽勇者…!死ぬなよ…」

偽勇者「……」

返事はしなかった…その代わり右手を上げた。

偽勇者「…待っててくれたんだな」

側近「…姫を助けてくれた者だからな…これくらいは待ってやる」

今夜はこれで終わります

側近「…戦う前に一度聞いておきたい…我ら魔族の味方にならないか?」

偽勇者「……」

側近「聖剣も失われ…姫様も魔王様の元にいる…人間に勝ち目はない…」

側近「私も命を救ってくれた恩人を殺したくはない…姫様も慕っている…お前の腕前ならば高い地位を頂けるだろう…どうだ」

偽勇者「だが残念だったな…お前は俺を殺せるつもりでいるみたいだがお前に俺は殺せねえよ…なんたって可愛い女の子達が俺を信じてくれているからな」

偽勇者「…お前こそ、もう一度俺の仲間にならないか…?」

偽勇者「一緒にカナを守ろう」

側近「…っ!」

偽勇者「…カナのお兄さんについて行かず、側近はカナをずっと守っていたんだろう…だったら…!今度も!」

側近「…ふざけるな!個々の力に限界があるのだ!私は思い知らされてきた」

側近「確かに…戦争の道具に使われるのは姫様の本意ではない!しかしだ!たった2人で守るよりは魔王軍が守るほうが安全だ!」

側近「私はずっと愚行を繰り返していたのだ…その私にまた愚行を犯せと言うのか!!!」

偽勇者「そうだ!…それにそれはカナのお前の主君が望んだことだ!」

側近「…グッ!貴様はその心をへし折ってから殺す!」

新魔王城

魔王「…はぁはぁ!クソ!あんな戦いで俺の腕が切り落とされるとは…無様だ!」


魔王は傷口を抑えていた。

切られた腕の筋肉で閉じさらに上から手で押さえている。

魔王の鱗は魔翌力を無力化する回復魔法も無力化してしまうから傷口が自然に閉じるのを待つしかないのだ。

普通…魔王の身体に刃が通ることはない…それ程…強靭なのだが流石に空から降ってくることは想定外だ。

鱗のない掌、口内 から魔翌力を扱うことは出来るのに回復魔法は鱗に阻まれる…本当に難儀な身体だ。

魔王「…ふ、ふう」

カナ「……腕、痛むんですか?」

魔王「……うるさい貴様には関係のない事だ!」

カナ「回復魔法をかける部下は居ないんですか?」

魔王「うるさいと言っているだろう!」

カナ「それじゃあ…感染症になりますよ…回復魔法…!」

魔王「な…!」

魔法の力により腕が再生する…。

魔王の身体は外からの魔法を無力化するにも関わらず、その魔王の身体に魔法で干渉しているのだ…この少女は。

魔王にはそれが恐ろしくて堪らなかった。

団長「くそ…こんな所で…!」

魔物達「「グロロロ!」」

左翼は壊滅し中央も指揮官が地べたに這いずり戦う始末。

軍は混乱し建て直すものはいない。

この戦いは人間の敗北だろう。

全滅という最悪の結果で負ける。

新しく軍を再編するにもそれなりに時間がかかる。

団長「我々の負けか…」

魔物「キシャアアアア!」

魔物の爪が迫っていたが反応できなかった。

いや反応しようとしなかった…もう諦めていたのだ。

魔物「……ガッ?」

…ドサッ!

兵士「…勝手に諦めないでください…団長まだ終わってないですよ…」

団長を襲う魔物は兵士が斬り伏せた。

団長「しかし…この状況では…!」

兵士B「兵士!」

兵士「戻って来たか!右翼はどうだった!」

兵士B「団長…!右翼は未だ健在です激しく抵抗しています!勇者様が直接指揮を取るようです!」

団長「勇者様が!魔王城に居たのでは?まさかあの数を単騎で抜けて来たのか!」

兵士「団長…どうです!勝つことはできなくとも撤退する位なら出来そうですよ!」

団長「そうか…まだ」

団長「…」

団長「…よし!中央軍は右翼と合流させ…勇者の指揮下に入る」

団長「兵士…!俺は中央軍の有志を率いて壊滅した左翼の生き残りを掻き集め建て直す…そして殿を務めよう」

兵士「なっ!団長が殿をする必要はありません…私が!」

団長「…兵士!貴様が我が軍団で一番優秀な男だ…それに若いまだまだ国の為に働いてもらわないとなぁ」

団長「もう助からん左翼と心中するのは老兵だけでいい」

兵士「わかりました…」

団長「これ渡そう!」

兵士「これは…階級章ではないですか!」

団長「正式な昇任ではないが…ただの兵士に軍は動かせないからな…勇者と共に脱出しろ」

兵士「わかりました…団長代理として務めを果たします!」

団長「少しでも多くの味方を戦場から脱出させる!」

この戦いは後に魔王城の戦いと呼ばれる。

転移魔法により完全なる魔王軍の包囲が人間の軍を全滅まで追い込む。

だが、中央軍が右翼と合流したことと勇者が指揮をし、さらに死にかけた左翼が殿を務めることで撤退に成功する。

だが追撃はもちろんあり…魔王城に参陣した軍の半分は消失した。

魔王城 処刑場

側近「中級火炎魔法?中級風魔法!」

凄まじいスピードと勢いで膨張する炎が迫る。

逃げ場をなくして一気に決着を付けるつもりだろう。

偽勇者「逃げ場がないなら突っ込んでやるさ!」

偽勇者「加速!?下級風魔法!」

身体灼き焦げる前に炎の中を突き抜け…側近に攻撃する 。

かなり無茶だがこれくらいのレベルの差がある。

無茶をしなければ倒せないならするのみだ。

風魔法を防具の様に身体にまとわりつかせる。

これで少しは熱を弾くはずだ。

偽勇者「うおおおお!」

側近(この広範囲の攻撃…避けるには上に飛ぶしかない!上に飛んで身動きが取れなくなった瞬間もっと強力なものを打ち込んでやる)

?


+

訂正

側近「中級火炎魔法?中級風魔法!」

側近「中級火炎魔法+中級風魔法!」

偽勇者「加速!?下級風魔法!」

偽勇者「加速!+下級風魔法!」

+が何故か?になっていたので訂正です

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