モバP「プロデューサー辞めちゃおっかな~」チラッチラッ (47)


P「……」カタカタ

ちひろ「……」カタカタ



P(はぁ~……なんか最近疲れちゃったなぁ……)

P(肉体的にというより精神的に疲れたって感じだ)

P(俺、自分で言うのもなんだけどものすっごい働いてるのに)

P(一人で何人ものアイドルの面倒見て、膨大な量の事務仕事もこなしてるのに)

P(なんか最近それを当たり前だと思われてるっていうかさ~)



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P(いや、当然ある程度の感謝はされるよ?)

P(でもめちゃくちゃ頑張ってる割には報われないというか……)

P(なんか俺のありがたみをあんまり分かってなくない?みたいな)

P(正直ちょっとやる気失せてくるわ~、仮に俺が辞めたら事務所は回らなくなるってのに……)

P(ん?辞めたら……そうだ!俺が辞めるそぶり見せたらみんな俺の重要性に気づくはず!)

P(きっとみんな泣いてすがり付いてくるゾ~、ここらで思い知らせてやれ!ニッシッシ!)


ちひろ「……」カタカタ

P(手始めにこの残虐悪徳セクシー事務員からだ!)

P(いつもいつも人をこき使いおってからに!このすっとこどっこい!)

P(どうせ俺のことなんか、プロデュースもしてくれるドリンク購入マシーンぐらいにしか思ってないんだ!)

P(見てろ~ド畜生め!)

P「ふぅ……あぁ~あ」

ちひろ「?」カタカタ


P「なーんか毎日毎日こんなに仕事多くて疲れちゃいますねぇ~」

P「プロデューサー辞めちゃおっかなぁ~」

P(オラッ!泣け!チビれ!床に額こすりつけろ!)

ちひろ「そうですね、アイドルのために頑張りましょうね~」カタカタ

P(ムッキィィィィィ!千川のくせにサラッと流しやがってぇぇぇぇっ!)

P(ちょっと可愛くていい匂いがして意外と巨乳で癒し系の声で美脚だからって調子乗るなよ!ガッデム!)

P(あとでお前のジャケット、ふかみどり色のやつにすり替えてやるからな!)


P「ちひろさんに適当なこと言ってデスクを抜けてきたぞ」

P「まさかちひろさんにまともに取り合ってもらえないとは」

P「ふん、まあいい……本命はアイドルだ」

P「こうやって事務所を徘徊し出くわしたアイドルに辞職をほのめかして」

P「涙を5リットル垂れ流すアイドルに対して俺はこう言ってやるのだ」

P「『な~んて冗談冗談、I am forever produce you☆』」

P「俺の重要性を再認識したアイドルは俺を崇め奉るようになりハッピーエンドゥというわけだ!」

P「む……あそこにいるのは」


P「おーい杏」

杏「プロデューサー、なんか廊下で一人ぶつぶつ言ってたけど気持ち悪いからやめたほうがいいよ」

P「気持ち悪いものか、それより杏が自分の足で歩いてるの珍しいな、明日はレイニーデイだな」

杏「杏だってたまには歩くよ、まあ運んでくれるっていうならやぶさかではないけど」

P「そんなことより、実はな……俺プロデューサー辞めようと思ってるんだ」

杏「いいねぇ、ようやくプロデューサーも休むことの大事さが分かったみたいだね」

杏「なんなら杏が休み方をレクチャーしてあげるよ、だから杏も休みをもらうね」

P「何言ってんだ、お前は働け。かわいいの持ち腐れが」

杏「横暴だー。ところでプロデューサー飴持ってない?」

P「溶けた5円チョコしかない、あ……賞味期限切れてる」

杏「じゃあやっぱり自分で取りに行かないとだめかー、というわけで杏は行くね、あとチョコは捨てな」

P「おう」ポイ

P「…………なんか思ってたのと違うな」


P「うん、まあ、今のは杏だからな、うん」

P「次だ次」

志希「にゃはは~、イイ匂いのモトはっけ~ん。ハスハス~」

P「うおっ、フェチノ瀬いつの間に」

志希「ふっふ~、志希ちゃんは神出鬼没なのだ~」

P「そうだ、実は俺プロデューサー辞めようと思ってるんだ」

志希「わお、そしたら失踪し放題だね~!志希ちゃんと一緒に失踪しよーよ!」

P「志希と一緒に失踪しても途中でお前だけさらに失踪しそうだな」

P「そういえばお前、今レッスン中じゃなかったのか?」

志希「……にゃはははっ!ただいま絶賛失踪中~!」スタコラ

P「あいつめ……まあいいか、今はもっと大事なことがあるのだ」


P「それにしても2連続で失敗か」

P「……いや、完全に人選が悪いなこれは」

P「そもそも2人とも本気で受け取ってたか怪しいよな……冗談だと思ってたっぽくない?」

P「うん、となると……次はもっと真面目な感じの奴がいいな」

P「お、あそこにいるのは……拓海だ」

P「……きた!これきたよ!勝ちパターンだこれ」

P「あいつ義理堅いからきっとわんわん泣くはずだ。『たくみんイヤだ』って言うはずだ」

P「なにより……俺とあいつは『マブダチ』だからよ……」

P「いざ、出発(デッパツ)だ!」ダッ


P「よう拓海!」

拓海「おう、Pか」

P「突然だけどな、俺プロデューサー辞めようと思ってるんだ」

拓海「…………」

拓海「そうか」

P(ん?)

拓海「もう次の職場は見つかってんのか?そっちでも頑張れよ」

P(んん?あれ~?なんだこれ)

P「お、おう、ありがとな、じゃあな」


拓海「……いいんだよな、これで」

拓海「P、それがアンタの選んだ道だってんならアタシは全力で応援するだけだぜ」

拓海「アタシが引き止めて決断を鈍らせちゃいけねえ……」


P「おかしい……こんなはずでは」

P「泣かないどころか否定的な言葉すらないじゃん、むしろ送り出そうとしてるじゃん」

P「それなりに信頼関係を築けていたと思っていたのは俺だけだったのか……?」

P「まさか本当は俺のことなんてどうでもよくて、むしろ辞めて欲しいと思ってる……?」

P「いやいやそれはない!たまたまだろ!だいたいまだ3人目だし、実質1人目だし!」

P「……ん?あれは……奈緒だ!」

P「あいつけっこう情に厚いし、眉毛も厚いし、わりと仲良くやってるからいけるだろ!」

P「あいつ絶対泣くっつーの!ほんで絶対『いきなり遅刻してもうたわ~』とか言うっつーの!もう読めたね!」


P「よう奈緒!」

奈緒「あ、Pさん」

P「俺実はな、プロデューサー辞めるつもりなんだ」

奈緒「はっ!?」

奈緒(嘘だろ……!?Pさん、アタシはアンタじゃないと……)

奈緒(……いや待てよ?この感じ……凛と加蓮が仕掛けてるドッキリなんだろ!?)

奈緒(何度も引っ掛けられていい加減慣れてきたよ、そういえばPさんの言い方もなんかホントっぽくないし)

奈緒(いつものアタシだったらここで普段は言わねえ本音を言ったりして)

奈緒(それをあとで散々からかわれるんだろうけど)

奈緒(残念だったな、凛、加蓮!そのへんで見てるんだろ!?今日のアタシは引っかからないぜ!)


奈緒「そっかぁ!突然でビックリしたけど」

奈緒「ま、アンタがそう言うんじゃ仕方ねえな!」

奈緒「ちょっとばかし残念だけどよ、まあアタシももう一人前だし」

奈緒「アンタがいなくてもやっていけるぜ!」

奈緒「だから安心して転職してくれよな!」

P「え……?あ……そう……」

奈緒(ふふふ、Pさんのやつ、予想外の反応に面食らってやがる)

奈緒「それじゃあな!」

奈緒(そして颯爽と立ち去るアタシ……)

P「……」


P「……あれ~?あれれ~?おっかしいな~」

P「だってあの奈緒だぞ……?あの!奈緒!だぞ……?」

P「…………まさか俺本当にアイドルに好かれてないんじゃ……」

P「うまくやってると思ってたのは俺だけで本当はみんな俺のことなんてどうでもいいと思ってるんじゃ……」

P「つーか俺もう引っ込みつかなくなってきてるんですけど……」

P「このままだとP久保本当に辞職せざるを得ないんですけど……」

P「こんなつもりじゃなかったのによぉ、チクショー……」

P「誰か……引き止めてくれるアイドルを探さねば……」

P「そうでないと俺の心が持たない……」

P「あれは……比奈」

P「比奈けっこう仲いい……いいよな?うん、いいはずだし大丈夫……大丈夫だよな?」


比奈「うおおおおおぉぉぉぉーーーーーっ!!!」ガリガリガリガリ

比奈「ヤバイっスヤバイっス原稿がヤバイっスーーーーーっ!!!!」ガリガリガリガリ

P「比奈、ちょっと話があってな……実は俺、プロデューサー辞めようと思ってて……」

比奈「悪いでスけど今〆切り近いんでそれどころじゃないっスっ!!」ガリガリガリガリ

P(……俺、漫画以下なんだ……やっぱりどうでもいいんだ……)

P「すまんな、忙しいところを……」トボトボ

比奈「そうっスよ!!プロデューサーを辞める話なんかしてる場合じゃないっス!!」ガリガリガリガリ

比奈「ん……?プロデューサーを辞める…………?」ピタ

比奈「辞めるぅぅーーーっ!!?」ガタッ

比奈「ちょ、ちょっと待つっス……!」ダッ

比奈「あっ、床に原稿が……」ズルッ

ゴツン

比奈「」チーン


P「比奈まで……やっぱり俺なんてどうでもいいのか……」

春菜「あ、プロデューサーさん、おはようございます」

P(春菜か……この流れだとちょっと聞くのが怖いが)

P「実はな、俺プロデューサーを辞めるつもりなんだ……」

春菜「プロデューサーを……やめる!?」

春菜(プロデューサーをやめる

        ↓

   俺はもう今までのプロデューサーじゃない

        ↓

   メガネデビュー!)



春菜「ついに決心していただけましたか!!」

P「ついに!?待ち望まれてたの!?」

春菜「ええ!全眼鏡ファンが待ち望んでいました!」

P(俺いつのまにか全眼鏡ファンを敵に回してたんだ……)

P「はぁ……」トボトボ

春菜「プロデューサーさんは眼鏡をかけたら絶対似合う人として業界の注目度も高いですからね」

春菜「こんなこともあろうかと似合いそうなフレームを二、三百種ほど厳選しておいたんですけど……」

春菜「あれ?プロデューサーさん?」


P「うう……気分が悪くなってきた」

智香「あ、Pさん!何か応援して欲しいことはありますかっ!」

P「あ、智香……実は俺、辞めようと思っていて……」

智香「? 辞めるのを応援すればいいんですね!」

智香「フレー!フレー!Pさん!辞めろ!辞めろ!Pさん!」

P「ウ……ウワアアアァァァァァンッ!!」ダッ

智香「Pさんっ!?」


P「そんな……みんな俺のことを……」

P「やっぱり俺はみんなにとってチョコワの象みたいないらない存在ということか……」

P「も、もうだめなのか……俺に希望はないのか……」

P「はっ!?いや、まだある!」

P「最後の希望!最終兵器ままゆが!」

P「待ってろまゆ!うおおおッ!」


P「はぁ、はぁ……見つけたぞ、まゆ……」

まゆ「Pさん……走ってまでまゆの元に駆けつけてくれるなんて……」

P「いいかまゆ、今から大事なことを言うぞ……」

P「俺、プロデューサーを辞めるつもりなんだ」

P(さあこいッ!)

まゆ「わかりましたぁ」

P(え……それだけ……!?)


まゆ「お話はそれだけですかぁ?まゆ、急用ができたので行きますね」スタスタ

P「…………お」

P「終わった……」ズシャア (膝から崩れ落ちる音葉)

P「そうか……そうだよな……あんな若い子が都合よく俺になびくはずないじゃないか」

P「まゆは気が利く子だから職場の人に社交辞令で愛想良くしてただけだ……」

P「現に今だって俺が辞めるとわかった途端に適当な言い訳して帰ったじゃないか」

P「なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだろ……」

P「…………やっぱりもうこの事務所に俺の居場所はないんだ」

P「辞めよう……」


まゆ「うふふ……Pさん、ようやくまゆと一緒になってくれるんですね」

まゆ「プロデューサーのままだと何かと障害がありますものね……ここは女狐も多いですし」

まゆ「Pさんが辞めるなら私もアイドルを続ける理由はありませんし、辞める準備をしないと……」


夜の事務所(変な意味ではない)



P「……」カキカキ

P「……できた」

辞表

P「オラァ!」辞表バァン

P「こんなふざけた事務所、こっちから辞めてやるよ!」

P「明らかに俺一人の仕事量が多すぎるしよぉ!」

P「残業ばっかでろくに休みもとれねえしよぉ!」

P「事務所の自販機はダ○ドーだしよぉ!」

P「もう今日限りで辞めてやる!明日から来ねえからな!困れ!」

P「…………」

ダッ

P「ウワアアァァァァァァァァァァァァン!!!」ビエーン

P(アバヨ……俺の青春)


翌日



ちひろ「た、大変です!今朝来たらプロデューサーさんの机に辞表が……!」


「「「ええっ!?」」」


ちひろ「時間になっても出勤してきませんし、いくら電話しても出ません……」

ちひろ(軽い愚痴だと思っていたのにそこまで思いつめていたなんて……)

まゆ「あ、まゆも辞めますねぇ」

杏「杏があんなこと言ったからなのかな……」

拓海「……」

奈緒(おいおい、今回のドッキリ、なんか規模でかくないか?)

比奈「アアアアタシがあんなことを言ったから……」アワワ

春菜「あれって……」

智香「プロデューサーを辞めるってことだったんだ……!」

春菜・智香(もしかして大変なことを言ってしまったのでは……)


数時間前



P「う~んムニャムニャ、もう食べられないよ~……かな子じゃあるまいし……」Zzz

P「……ん?」パチ

P「えっ!?もうこんな時間!なんで目覚ましかかってな……」

P「あ……そうか、仕事辞めたんだ……」

P「ラッキー!忍法二度寝の術!」バサッ

ピンポーン

P「え?誰だこんな朝早くに……よいしょっと」

ガチャ

P「どちらさま?」

志希「ぐっもーにんっ!」

P「志希!?お前なんでここに……」

志希「もしかしてキミ寝起き?スメルが濃い~」ハスハス

P「どうどう」


志希「へぇ~ここがキミの部屋なんだー」

P「待たせたな、身支度完了した」

P「で、何の用だ?そして何故ここを知っている」

志希「ふっふ~、なぜ知ってるかはヒミツ~」

志希「用件は昨日言ったよ~、一緒に失踪!」

P「お前あれ本気だったのか!?」

P「……まあ無職で自由だし、たまには当てもなくふらついてみるのもいいか」

志希「いいね~、それでこそキミだよ!じゃあレッツゴー!」ガシ

P「今すぐかよ!ちょっと待て、まず財布と、あと携帯……携帯どこだ」

志希「携帯なんて必要ナッシン!失踪は路銀さえあればいいのだ~!」グイ

P「うおっ、ああもう、引っ張るな!」

志希「とりあえずアメリカ行こっか~、案内するよ」

P「ビール感覚で海外行くのか……」


P(アメリカにやってきた俺たちは、志希流の失踪法にのっとって)

P(興味のおもむくままに歩き、食べ、飲み、遊び……俺は久々に仕事のストレスを忘れるほど楽しんだ)

P(次はどこに行こうかとなったとき、俺の頭に浮かんできたのはエンターテイメントだった)

P(ミュージカル、演劇、コンサート……初めて生で見るアメリカのショーに俺は心躍った)

P(この演出は面白いな、俺だったらここはこうする、あのアイドルにこういうことをやらせたら面白そうだ)

P(観ながら自然とそんなことを考えている自分に気づき、ハッとした)

P(俺はやっぱりプロデュースが好きだ。俺の失われていたプロデュースの情熱に再び火がともるのを感じた)

P(ならば俺のとる選択はひとつ……翌朝一番の日本行きの飛行機を予約し)

P(俺は現地のホテルでぐっすりと眠りに就き……そして夜が明けた)


※ドラクエの宿屋のSE


P「恥ずかしながら帰ってまいりました!!」

P「都合のいいことを言っているのは分かっていますがもう一度チャンスをください!!」

ちひろ「戻ってきていただけるんですね……!」

ちひろ「こちらこそすみませんでした、また一緒に頑張りましょう!」

まゆ「うふ、今日のPさん、一段とやる気に満ち溢れていて素敵……」

ちひろ(なぜかまゆちゃんもしれっと戻ってきてる)

志希「楽しかった~!また一緒に失踪しよーね~!」

杏「……ばか」

拓海「……へへ」コスッ

比奈「うわーーん!良かったっスーーっ!」ビエーン

春菜「涙でレンズが濡れてら……」グスッ

智香「CGプロ、ファイト!オー!」


P(俺は馬鹿だな……こんなに良い職場に恵まれていたのに)

P(心機一転、プロデュースがんばるぞ!)



奈緒(ネタバラシまだかな)





HAPPY ENDU



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