しいたけ「わんっ!」 (28)

千歌「しいたけおっはよー!」

しいたけ「わんっ!」

千歌「おーおー今日も可愛いなお前はー!んじゃ、行ってきまーす!」タタタッ

しいたけ「わんっ!」


私の名前はしいたけ。
私が小さい頃、この高海家に拾われた。
今家から元気に飛び出していったのは千歌ちゃん。何でもスクールアイドルっていうのをやってるんだって。



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三渡「千歌~!あんた鞄持たずに学校行くつもり~!?」

千歌「へ?うわぁー忘れてたぁー!」


今日も朝から賑やかな高海家です。

そんな私と千歌ちゃん達の出逢いは、千歌ちゃんがまだ幼稚園の頃。

その日は凄い雨でした。


ちか「あめー!」

千歌ママ「こんなに降ってくるなんて思わなかった…あー車で来れば良かった…早く家に帰らないと。千歌、寒くない?」

ちか「おかーしゃんのてあったかいからへーきー!」ニコッ

千歌ママ「そう、ママも暖かいよ」ニコッ

ちか「えへへー!……あ、おかーしゃんあれ」

千歌ママ「ん?」チラッ


子犬「クゥーン……」


千歌ママ「あら、捨て犬…」

ちか「わんちゃんだぁ!」タタタッ

千歌ママ「あ!こら千歌!」

ちか「ねぇあなた!」

子犬「?」

ちか「さむいからウチこない?」

千歌ママ「ちょ、ちょっと千歌!ダメよ!」

ちか「えーなんでー?」

千歌ママ「ウチは旅館だしお客さんもいるからです!」

ちか「えー?やだやだー!このこかうー!」ジタバタ

子犬「……?」

千歌ママ「ダメです!」

ちか「うぅ…だってぇ……このこさむそうだよ…?かわいそうだよぉ……」グスッ

千歌ママ「そうだけど……」

ちか「おねがいおかーしゃん!ちかいいこになるから!おかーしゃんのいうこともきくから!おねがい!!」

千歌ママ「……はぁ、もうこの子は……」

ちか「………」

千歌ママ「ちゃーんとお世話するのよ?」

ちか「っ……!やったぁー!ありがとう!!」

子犬「???」

千歌「よかったねわんちゃん!きょーからあなたはかぞくだよっ!」ニコッ

子犬「わんっ!」

こうして私と千歌ちゃんは出逢い、高海家の一員になった。
最初は慣れない場所、慣れない匂い、知らない人達に囲まれて怖かったけど……。


美渡「名前何にするー?」

ちか「んー…」

志満「ポチでいいんじゃない?」

美渡「えーそんなの普通すぎてつまんないよ!もっとカッコいい名前のがいい!マックスとかアレキサンダーとか!」

志満「もっと日本人らしい名前の方がいいなぁ」

美渡「花子とか桃子とか?」

志満「うーん…そういう感じの子じゃないのよねこの子……」

美渡「……確かに、何かこう…まったりしてるよね…」

ちか「しいたけ!」

志満「え?」

美渡「は?しいたけ?」

ちか「うん!しいたけ!」

美渡「いやいやないない!千歌、あんたネーミングセンス無いから!そもそも何でしいたけなの?」

ちか「えーだってしいたけみたいだからー!」

志満「あー…言われてみれば」

美渡「うぇっ!?志満姉本気!?」

志満「うん、私は可愛くていいと思うよ?」

ちか「でしょー?」

美渡「えー?でも…しいたけかぁ…」

志満「それに千歌ちゃんが拾ってきたんだし、名付け親は千歌ちゃんが適任だと思うよ」

美渡「……まぁ、そういう事なら…」

ちか「ぃやったー!しいたけしいたけ!」ピョンピョン

子犬「……?」

ちか「よかったね!あなたはきょーからしいたけだよ!」ニコッ

子犬「…………」


しいたけ「わんっ!」


この日、私は素敵な名前を貰った。

それからの日々はとても楽しかった。
走っても走っても、どこまでも続く水溜まり。そこで千歌ちゃん、美渡ちゃん、志満ちゃんの3人でたくさん遊んだ。


美渡「いくよしいたけ!」

しいたけ「わんっ!」

美渡「それっ!」ポイッ

しいたけ「わんっ!」ダダダッ

志満「おぉ!」

ちか「おー!」

しいたけ「わぅっ!」パクッ

美渡「っしゃあ!ボールキャッチ!」

ちか「すごーい!しいたけはやーい!」

しいたけ「ハッハッハッ」タタタッ

美渡「よーしよし!いい子だな~お前は!」ナデナデ

しいたけ「わん」


頭を撫でてもらうのがとっても好き。


ちか「ちかも!ちかもなげるー!」

美渡「千歌じゃ遠くに投げれないでしょ?」

ちか「やりたいやりたいやりたい!」

美渡「あー分かったよ、ほら」

ちか「わーい!」

しいたけ「ハッハッハッ」

美渡「しいたけー、千歌のはそんなに飛ばないからガッカリするなよー」

志満「こら、そういう事言わないの」

美渡「にしし…!」

ちか「むー…ちかだってとおくになげれるもん!いっくよーしいたけ!」

しいたけ「わんっ!」

ちか「それっ!!」ポイッ

しいたけ「わんっ!」ダダダッ

美渡「お!」

志満「あ、風が…」

ちか「あー!ダメだよかぜー!」

しいたけ「わんっ!」ダダダッ

ちか「しいたけ!うみはあぶないよ!」

しいたけ「わんっ!!」


ドボンッ!


美渡「あー飛び込んじゃった…」

ちか「しいたけー!………あっ」

しいたけ「ハッハッハッ」ビショビショ

ちか「………」

美渡「………」

志満「………」

しいたけ「わんっ!」

ちか「……プッ…わははははは!」ゲラゲラ

美渡「あはははは!しいたけお前…頑張りすぎだってぇ…っ!」ゲラゲラ

志満「うふふふ…お茶目な子ね…」

しいたけ「わんっ!」


撫でてもらいたくて頑張った。
褒めてもらいたくて頑張った。
笑って欲しくて頑張った。
みんなの笑顔が、私の幸せだった。


お散歩に連れていってもらったり……。


千歌「しいたけ歩くの早いよー!」

しいたけ「わんっ!」

千歌「よーしそっちがその気なら競争だ!」ダダダッ

しいたけ「わんっ!」ダダダッ


美味しいご飯もくれたり……。


千歌ママ「じゃじゃーん!今日は豪華なご飯よしいたけ!」

しいたけ「わんっ!」

美渡「あーいいなぁしいたけばっかりー!」

千歌「そうだそうだー!私達にも豪華なご飯くれー!」

千歌ママ「今日は犬の日だから特別!」

しいたけ「わんっ!」ガツガツ

千歌「……美味しそう」ジュルリ

志満「えっ」

みんなで旅行に行ったり……。


志満「千歌ちゃん乗った?」

千歌「いるよー!」

美渡「美渡もいまーす」

千歌ママ「みんな忘れ物ないー?」

千歌「大丈夫大丈夫!」

美渡「ちゃんと確認したよー」

志満「よし、それでは出発───」

千歌「しいたけだぁっ!!」ガチャッ

3人「あ」

千歌「ごめーんしいたけ忘れてたー!」タタタッ

しいたけ「わん…」


千歌ちゃんや美渡ちゃんと一緒にイタズラして、志満ちゃんやお母さんに怒られたり……。


美渡「しいたけ、しーだよ?」

しいたけ「わん」

志満「ただいまー…ってあれ?誰もいない?」

千歌「…………」

美渡「…………」

しいたけ「…………」

志満「みんなーいるー?」ガラララッ

美渡「うぉぉぉぉぉぉぉ!!」ガバッ!

千歌「志満姉っ!!」ガシャン!

美渡「誕生日ぃぃ!!」ドカッ!

しいたけ「わんっ!」ビリッ!

「「「おめでとう!!(わん!)」」」バキッ!

志満「…………」

千歌「……志満姉…?」

志満「とりあえず、部屋片しといてね?」ニコッ

美渡「へ……?」

千歌「あ、あはは…やだなぁ志満姉、これはジョークだよジョーク…」

志満「片 し と い て ね ?」ギロッ

千歌「はいっ!」ビクゥ!

美渡「喜んで!」ビクゥ!

しいたけ「……」

志満「し い た け も よ ?」ギロッ

しいたけ「わふぅ!?」ビクゥ!


色んな事が初めての経験で、とっても楽しかった。



月日が経って、千歌ちゃんが高校2年生になったある日。


千歌「しいたけ!」

しいたけ「わん?」

千歌「紹介するね!桜内梨子ちゃん!」

梨子「……あの、こ、こんにちは…」


千歌ちゃんがお友達を連れてきた。
曜ちゃんや果南ちゃんとは違った匂いの子。
私はその子に惹かれた。


しいたけ「……」

梨子「ひぃっ!千歌ちゃん…凄い睨まれてる…」ビクビク

千歌「大丈夫だよ、しいたけはおっとりしてて優しい子だから」ナデナデ

梨子「そ、そう……なんだ……」

しいたけ「………」

梨子「え、えっと…あ、頭…撫でるね…?」ソォーッ

しいたけ「わんっ!」

梨子「ひぃっ!?!?」ビクゥ!

しいたけ「わんっ!」ダダダッ

梨子「ぎゃあああああああ!!!」ダダダッ

千歌「あ!ちょ!しいたけ!?」

しいたけ「わんっ!わんっ!」ダダダッ

梨子「ひぃぃぃぃ!!追い掛けて来ないでぇぇ!!やだぁぁぁぁぁぁ!!」ダダダッ

千歌「駄目だってしいたけ!大人しくしなさい!!」ダダダッ

しいたけ「わんっ!」ダダダッ

梨子「千歌ちゃんの嘘つきぃぃぃ!!」ダダダッ


梨子ちゃんを見てると、私のイタズラ心がくすぐられた。経験した事の無い反応だったからかな?私は梨子ちゃんが大好きになった。
梨子ちゃんは私の事苦手みたいだけど。

そんな梨子ちゃんが初めて私の頭を撫でてくれたのは、夏が終わり、少し涼しくなってきた秋の頃。
大好きな梨子ちゃんに撫でてもらえた事が凄く嬉しかった。
私の事、嫌いじゃなかったんだって。
凄く心が満たされたんだ。
追いかけっこが出来なくなるのはちょっぴり寂しいけど、それでもやっと梨子ちゃんと向き合えた事が何よりの幸せだった。
あの時の手の暖かさ、僕は忘れないよ。













そして、更に月日が経った。

千歌ちゃんが似合わないピシッとした服を着てる。鏡とにらめっこして髪を整えてる。


千歌「よし…変なとこ無いかな…?」

しいたけ「……」

千歌「しいたけ、どう?似合ってる?」

しいたけ「わん」

千歌「あははーやっぱり?私もねーもうちょいラフな方が────」

美渡「千歌ー!あんたいつまで身支度に時間掛けてんのよ!新幹線の時間間に合わなくなるよ!」

千歌「大丈夫大丈夫、心配しなくても10時までに家出れば間に合うし!」

美渡「その10時をもう過ぎてるんですが?」

千歌「嘘」

美渡「さっさと車乗れぇッ!」

千歌「うわぁぁぁぁぁ遅刻だぁぁぁぁぁあ!!」ドタドタ


この光景も何度見たんだろう。
本当に賑やかで退屈しないなぁこの家族は。


美渡「千歌!早く乗って!」

千歌「うん!あ、ちょっと待って!」

しいたけ「!」

千歌「じゃあねしいたけ!行ってくるから!」ナデナデ

しいたけ「わんっ!」

千歌「会える機会減っちゃうけど、お盆やお正月は帰って来るからね?」ナデナデ

しいたけ「わんっ!」

千歌「いい子いい子、またいっぱい撫でてあげるからね!じゃあ行ってきます!」タタタッ

しいたけ「わんっ!」


見違えるほど大人になった千歌ちゃんとお別れをした。あんまり寂しくはなかった。
頭にまだ残った千歌ちゃんの匂いがそれを掻き消してくれたし、また帰って来るって言ってくれたから。
だから私はいつまでも待ってるよ。
またあなたに撫でて欲しいから。















美渡「しいたけ~、散歩いくよ~」

しいたけ「わん」


千歌ちゃんとお別れしてから少し経ったある日。日課のお散歩の時間。

いつもは私がみんなより前を歩いていたのに、気が付けばみんなが私の前を歩いていた。


美渡「しいたけ、少しペース早い?」トコトコ

しいたけ「わん」トコトコ

美渡「んじゃ、少しペース落とすか」トコトコ


昔は私がみんなを引っ張っていたのに、いつの間にか立場が逆になっちゃったね。

何でだろう。






ドサッ






美渡「ぅおっと、しいたけまたトイレ?」クルッ

しいたけ「……」

美渡「………………え、しいたけ……?」

しいたけ「……」

美渡「ちょ、ちょっとやだ!しいたけ!?しいたけッ!!」ユサユサ















長い長い夢をみてた。

昔の夢。

千歌ちゃん達と出逢った頃の夢。

名前をつけてくれた時の夢。

一緒にボールで遊んでくれた時の夢。

イタズラして怒られた時の夢。

旅館に来てくれたお客さんに撫でてもらった夢。

千歌ちゃんのお友達と遊んだ夢。

梨子ちゃんにイタズラした時の夢。

千歌ちゃんの学校に遊びに行った時の夢。

千歌ちゃん達がやってるスクールアイドルを観た時の夢。

一緒に暖かい布団で寝た時の夢。

旅行に連れていってもらった時の夢。

怖い怖い病院に連れていかれた時の夢。

色んな夢をみてた。
たくさんの、本当にたくさんの夢。
幸せな日々を、私は長い時間思い返していたんだね。
……だけどその時間ももうおしまい。
そろそろ起きないと、お散歩の時間だ。



「……っ!だ………って…じゃ………っ…」


誰かの声が聞こえる。
誰かが怒ってるみたい。
また千歌ちゃんと美渡ちゃんがイタズラして怒られてるのかな。

あれ、この声……千歌ちゃんの声だ。


志満「やめて千歌ちゃん!美渡ちゃんは…」

千歌「だってそうじゃん!!」

美渡「…………」


千歌ちゃんが怒ってる…何したんだろう。
あんまり怒らないでほしいな…。
みんなには笑っていてほしいよ…。


千歌「しいたけは家族なんだよ!?家族のしいたけが倒れたらすぐに連絡くれるのが普通でしょ!?何ですぐに連絡くれなかったの!?」

美渡「…………」

志満「だから美渡ちゃんは千歌ちゃんの事を想って……」

千歌「私の事よりしいたけを想ってよ!!」

美渡「……っ」


千歌「仕事なんかどうでもいい…!ノルマ?信頼?そんなのどうだっていい!家族のピンチなんだよ?家族のピンチだったら仕事なんてほっぽり出して駆けつけるよ!」

美渡「……だよね」

千歌「だったら何で……!」

美渡「……あんた、すっごい頑張ってたからさ…。前まであんなに幼かった千歌が凄く大人に見えて……それで、そんな千歌の邪魔をしたくないって思ったら…連絡、できなくて……」

千歌「邪魔って……だから私よりもしいたけを───」

美渡「しいたけの気持ちになって考えたんだよ!!」

千歌「っ!」

美渡「あの子は何よりも私達の笑顔が好きだったでしょ…?私達を笑わせる為に体張ったり、無茶したり…だから、千歌が仕事を犠牲にしてまでしいたけは来て欲しくなかったんじゃないかな……って……」

千歌「…………」

志満「…………」

美渡「ごめん……完全に私のエゴ……」

千歌「……バカ美渡姉……っ」

美渡「…………」

千歌「私、約束したんだよ…?必ず帰って来るからって……また頭撫でてあげるからねって……なのに、しいたけ死んじゃったら約束……っ、破っちゃうじゃん……!」

美渡「……っ…ごめん…」


「わん」


3人「!!」


千歌「……しいたけ…?」

しいたけ「クゥーン…」

美渡「目覚ましたんだ…!」

志満「千歌ちゃん、撫でてあげて?」

千歌「……うん」


何とか声が出た。
いつもなら普通に声が出るのに。
やっぱり最近の私はおかしいな。
だから3人とも喧嘩しちゃったのかな。
ごめんね、みんな。


千歌「しいたけ、ただいま」

しいたけ「……」


おかえり、千歌ちゃん。
声に出せなくてごめんね。その代わり、いっぱい尻尾を振って、元気だって伝えるから。


千歌「よしよし……いい子だね……」ナデナデ

千歌「よしよし……いい子だね……」ナデナデ


ううん、私はいい子じゃないよ。
千歌ちゃんが頑張ってるのに、私のせいで迷惑かけちゃったし、美渡ちゃんも私のせいで怒られちゃったし、私は悪い子だよ。


千歌「いっぱいいっぱい…撫でてあげるからね…」ナデナデ


いいのかな。悪い子なのに。
こんなにいっぱい撫でてもらえるなんて。
私はとっても幸せだよ。


千歌「いっぱいいっぱい……っつ、これからも…、ぅ……いっぱいいっぱい撫でてあげるからっ……!」ポロポロ


何で泣いてるの?
嫌だよ。みんなには笑っていてほしいのに。
私が舐めて笑わせてあげなきゃ。


しいたけ「………」ジタバタ

千歌「……っ!しいたけ……うぅ……!」ポロポロ


あれ、おかしいな。
ごめんね千歌ちゃん。
起き上がれないや。舐めてあげられないや。
ごめんね。ごめんね。


千歌「いいんだよ…っ…しいたけ…ありがとうね…」ナデナデ


ごめんね千歌ちゃん。
元気になったらまた遊ぼうね。
いっぱいいっぱい遊ぼう。

千歌「……っ、美渡姉ぇ…」グスッ

美渡「………」

千歌「しいたけ倒れてからどのくらい…?」

美渡「………5日……」

千歌「……5日…」

志満「お医者さんによると、もって3日だって…」

美渡「っ…よく頑張ってるよしいたけは!
出されたご飯もお水もちゃんと食べるし、歩けもしないのにいつもの場所でトイレしようとするし…本当に…本当……っ」ポロポロ

千歌「……そっか、私が帰って来るの待っててくれたんだね……ありがとうっ…」ナデナデ


うん。ずっと待ってたよ。
こちらこそ、ありがとう。
撫でてくれて本当に嬉しいよ。


志満「千歌ちゃん、多分今日が…」

千歌「……うん」

美渡「………見送ってあげようか」

千歌「…っ…うん」


みんな、泣きながら笑ってる。
不思議な人達。
でも、また笑ってくれた。やっぱりみんなには笑顔でいてほしいな。
みんなの笑った顔をみると、私も嬉しい気持ち
になるんだよ。

 


 
ガラララッ


美渡「あ、千歌、来たみたい」

千歌「うん。ほらしいたけ、来てくれたよ」

梨子「久しぶり、しいたけちゃん」ニコッ


あぁ、梨子ちゃんだ。
懐かしいなぁ。千歌ちゃんと同じで大人になったね。でも、私を呼んでくれる声は昔と変わらない。


千歌「ごめんね、遠いのに来てもらって」

梨子「全然。むしろ呼んでくれてありがとう」

しいたけ「グゥ…ッ…」

梨子「いいよ。大丈夫。ちゃんと聞こえてるよ」ニコッ


声が出ないのに凄いなぁ。
ありがとう梨子ちゃん。


梨子「しいたけちゃんと出逢ってから、見るものが変わってきたんだよ?」

しいたけ「……」

梨子「一人暮らし始めたんだけど、お金に少し余裕ができたから犬を飼い始めたんだ」

しいたけ「……」

梨子「しいたけちゃんがいたから犬嫌いを克服できたし、パートナーがいる喜びとか、絆や信頼って大切だなぁって改めて思わせてくれたんだよ」

しいたけ「……」

梨子「だからありがとう、しいたけちゃん」ナデナデ

しいたけ「……」


私からもありがとう。
とっても、とっても楽しかった。


梨子「本当に久しぶりだね…っ、前はもっと大きかったのに、いつの間にかこんなに小さくなっちゃ……っつ、も……と、たべなきゃ…ダメだよ……?」ポロポロ

千歌「うぅ……っぐ、ぅ……っ!」ポロポロ

梨子「こんなに体も……冷たくなって…っ、風邪…ひいちゃ……ぅよ…っ…?」ポロポロ


梨子ちゃんの手……あったかい……。
とっても……あったかい……。


千歌「みとねぇ…っ!しまねぇっ…!」グスッ

美渡「うんっ……!!」スッ

志満「うぅっ……!」スッ

千歌「みんなでなでてあげよ……?」スッ

梨子「うん……うん……っ!!」ナデナデ


みんなの手……すごくあったかい……。

ねむくなっちゃうくらい……。

おさんぽのじかんだけど……。

ちょっとねてからいこう……。

ちょっとねて…おきたらみんなでおさんぽにいこうね……。

千歌ちゃん……。

美渡ちゃん……。

志満ちゃん……。

梨子ちゃん……。

撫でてくれてありがとう……。

大好きでいてくれてありがとう……。

僕も大好きだよ……。

じゃあ…………。

おやすみなさい……



「わん」



その日、私達は大切な家族を失った──







数ヶ月後。


上司「高海さん、またここ間違ってるわよ」ピラッ

千歌「えぇ!?またですかぁ?」

上司「いや、こっちの台詞なんだけど…」

千歌「すみません!すぐに訂正します!」ペコリ

上司「えぇ、お願いね」

千歌「はぁ……」トボトボ

上司「……あら、しいたけ」

千歌「え?」クルッ

上司「あ、いや…そのペンダント、可愛いわね」

千歌「あぁ、これですか?」チャラッ



千歌「おまもりです!」ニコッ





~終わり~

終わりです
ペットとの時間は大切に

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