晶葉「できたぞ助手! アイドルがどんな暗示にもかかってしまうスイッチだ!」 (22)


晶葉「できたぞ助手! アイドルがどんな暗示にもかかってしまうスイッチだ!」

P「さすがあきえもん! 人間が人間であるための自由意志すらその邪悪な思想の毒牙にかける! ああ、なんとおぞましき悪性! 忌まわしき頭脳! 良識という自制を失った好奇心は人権すらも蹂躙する! 晶葉……おそろしい子!」

晶葉「マッドサイエンティストA・Iに不可能はない! 勘のいい助手のことだ、すでに気づいていると思うが説明しよう! このスイッチは以前の催眠スイッチを改良したものである! 膨大な電力消費の関係で一度しか使えなかった催眠スイッチとは違い、今回の暗示スイッチは効果時間と効力を制限することで劇的な省エネを達成! ワンプッシュあたり二六円のコストで対象に暗示をかける!」

P「なんということだ……目についたアイドルに片っ端から暗示をかけても、ちっひに雑巾絞りされた財布が痛まないなんて!」

晶葉「ふはははは! 人のことを悪だのなんだの言っておいて、助手こそアイドルに暗示をかけるつもりじゃないか! さあ言ってみろ! アイドルに暗示をかけて一体何をするつもりだ!」

P「晶葉。お前はプレゼントの中身を知っていて開けるのと、知らずに開けるの、どっちがいい?」

晶葉「……ふむ、後者だな。予想もつかないサプライズとは時として個人の人生すら変えうるものだ。ならばここは何も言わずにこのスイッチを助手に託そうではないか。せいぜい有効活用してくれたまえ!」

P「大願成就! 大願成就!」

晶葉「汝の意志することを行え、それが法の全てとなろう」


 ――屋上


P「ヒャッハー! 見つけたぞほたるぅ!」

ほたる「えっ……ええっ!? プロデューサーさん、どうして上から……ここ屋上ですよ……?」

P「そんな些細な問題はどうでもいい。それよりほたる、また一人で泣いてたのか」

ほたる「その……すみません。昔のことを思い出しちゃって……気にしないでください。少ししたら平気ですから……」

P「なんだお前。まだ自分が疫病神だと不幸を伝染させるんだとか考えてるんじゃないだろうな?」

ほたる「だって事実じゃないですか……何回も事務所が倒産してるし、歌鈴さんはバナナで転ぶし……そもそもプロデューサーさんだって、公園で私をスカウトして、その直後に……」

P「おう、あれか。泣いてるほたるに最高の笑顔で名刺を渡して、颯爽と立ち去っていく背中を見せようとしたら、道路に飛び出してきた子供を避けようとしたトラックに轢かれたやつな。あれは痛かったわ」

ほたる「笑い事じゃないです……目の前で見てて、本当に死んじゃったと思ったんですからね……?」

P「あの時のほたるは、本当に世界が終わったみたいな顔してたからな」

ほたる「それ、比喩じゃありませんよ……? 私に手を差し伸べてくれた人が……幸せになろうって、そう言ってくれた人が、舌の根も乾かないうちに轢かれたんですよ……? どうかしないほうがどうかしてます」

P「まあな。でも今だから言えるが、あのとき事故に遭ったのは仕方ないことだと思ってる」

ほたる「どういう、ことですか……?」

P「日本人が一年間で事故に遭う確率は大体0.9%っていわれてるんだが、それに対して人と人が出会う確率は二十四万分の一らしい。パーセントに直すと0.00000416%だ。つまり俺はほたるに出会ったことで、その日の運気を使い果たしてしまったんだな。むしろトラックにふっとばされたあとで、さらに対向車線の車に轢かれなかったことが奇跡といえる」

ほたる「そう……でしょうか?」

P「そうなんだよ。俺は白菊ほたるをスカウトできた時点で勝ち組なんだ。自分ではどうしようも出来ない、不運という理不尽にも負けない心を持った女の子。自分が幸せになるよりも、ファンの人たちを幸せにしたいと願う女の子。そんなほたるの手を引っ張ることが出来た。みんなの前で、歌って、踊って、笑えるアイドルだって、ステージの上で証明することができた。

 なあ、ほたる。ほたるは不幸じゃない。親御さんがいて、俺がいて、仲間がいて、ファンがいる。さっきも言ったが、人と人が出会う確率はミラクルなんだ。同じ時代に生まれて、同じ言葉を話して、こんなふうに手を取り合うことができる。そう考えれば人生は奇跡の連続だろ? これまでも、これからも。ワッツ・ワンダフル・ワールドってやつさ」

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ほたる「凄いですね。プロデューサーさんは、いつだって私に勇気をくれる。大切なものを与えてくれる。お仕事も、友達も、衣装だって……本当になんでも出来て……」

P「ほたる……?」

ほたる「そんなプロデューサーさんに、私は何が返せるんでしょうか……? 両手で抱えきれないくらいの幸せを受け取って……でも、私は一握りの幸福すら返せない……! みんなみんな、私なんかよりずっとずっと綺麗で、可愛くて……歌も上手くて、ダンスだって……それに比べて私は……なにも、できなくて」

P「考えすぎだ、ほたる。確かに俺は業界でも屈指の土下座ができるプロデューサーだ。企画、営業、広報、マネジメントから会場の設営に音響と照明も一通りのことはできる。でもこんなに仕事のできる俺でもな、できないことなんてのはいくらでもあるぞ。例えばあの日、公園で泣いてた女の子に、俺は手を差し伸べることしかできなかった」

ほたる「…………?」

P「その女の子は、事務所が何度も倒産して、まともなレッスンも受けられない中、やっとのことでこぎつけた仕事をバラされて、公園で泣いてた。普通ならもうとっくにあきらめてるさ。腐って当たり前だ。でも女の子はあきらめてなかった。差し出された手を取った。なあ、ほたる。あの時ほたるが首を横に振ったら、俺は何もできなかったんだぜ?

 ほたるが何も出来ないなんて嘘だ。あの時、俺の手を取ったのは間違いなくほたるの意思だ。不運に打ちのめされて、それでもなお立ち上がって、一歩を踏み出した。それはほたる自身が持っている強さだで、とても尊いものなんだ」

ほたる「本当に……?」

P「そうなんだよ、ほたる。それに俺が与えたものなんて、ほたるの笑顔に比べたらなんでもないことさ。まあ、こんなことをいってもすぐには信じられないだろうし……だから、そんなほたるにステキな魔法をかけてあげよう。今日はそのつもりでほたるを探していたんだ」

ほたる「ステキな魔法……?」

P「暗示スイッチ~」

ほたる「えっ、えっ?」

P「大丈夫、ちょっと気分が高揚して素晴らしい全能感と共に心がウキウキするように暗示をかけるだけだから」

ほたる「あの、それ全然だいじょうぶじゃ……」

P「ヘーキヘーキ。ほたるにキレッキレの『Yes! Party Time!!』を歌ってもらいたいだけだから。というわけで覚悟しろぐへへへへ」ポチッ

ほたる「きゃっ!」

P「」

ほたる「………………? あの、プロデューサーさん?」

P「」

ほたる「スイッチの故障……? 晶葉ちゃんに電話しなきゃ……」

晶葉『はいこちら池袋未来ガジェット研究所』

ほたる「かくかくしかじか」

晶葉『やはりそうか。スイッチの電池のプラスとマイナスが逆に……つまり効果対象が逆転していたわけだ。私としたことが、弘法も筆の誤りというやつだな。それで助手はどうしてる? 無反応になっているか?』

ほたる「うん、ピクリとも動かないけど……」

晶葉『ではなにか一つ暗示をかけてやってくれ。その後スイッチを押せば暗示が適用され、元に戻るはずだ』

ほたる「暗示って、どうすれば?」

晶葉『ふむ。ここは行動を置き換えるものがいいだろう。コーヒーを飲む時は利き手を使ってはいけないとか、そういう簡単なものでいい』

ほたる「うん」

晶葉『暗示をかけたら助手にこっちに戻ってくるようにいってくれ。では切るぞ』

ほたる「暗示……簡単なもの? そういえば、プロデューサーさんは私に暗示をかけようとしたんだし、私もすこしくらい、いいよね? えっと、じゃあ……プロデューサーさんは、私が『幸せになりたい』といったら、私を抱きしめること。……これでいいのかな」

P「………………ハッ!? ここは屋上……? そしてほたる? んん? なにやら記憶が……」

ほたる「あの、プロデューサーさん」

P「なんだ、ほたる。というかちょっと待て、顔が赤いぞ。こんな寒いのに屋上にいるからだ。ほら、早く中へ――」

ほたる「私、幸せになりたいです」

P「はあ? まったく何を言ってるんだ。これでいいか?」

ほたる「……ぁ、ぅぅ……///」

P「ほたる? どうした、なんで顔を隠す?」

ほたる「な、なんでもないです。それより、私……もっと幸せになりたいです」

P「変なほたるだなぁ。ほらもっとくっつきなさい。ぎゅってしてやるから」

ほたる「………………えへへ……///」

P「というか屋上なんかにいるから顔が赤いんだぞ? あったかいココア作ってやるから、中に戻ろう」

ほたる「……だいじょうぶです。こうしていれば、寒さなんてへっちゃらですから……♡」

晶葉「できたぞ助手! アイドルとイチャイチャできるスイッチだ!」

P「さすがあきえもん! イチャイチャとはつまりコミュニケーションであり、社会性動物である人間において円滑なコミュニケーションとはあらゆるパフォーマンスを向上させるマジカルステッキ! 意思疎通の精度に比例して情報伝達の質と量が向上し、それに伴い生産性が上がって相対的に労働時間が短縮される! 心と心が通じ合う素晴らしき効率社会! すり減ることしかできない社会の歯車たちに潤滑油という潤いがもたらされ、行き違いも摩擦もなくなってみんなぬるぬるハッピーハッピー! 日本のGDPを底上げする発明を前にして、俺はいま猛烈に感動している!」

晶葉「マッドサイエンティストA・Iに不可能はない! というか助手の労働社会に対する不満が漏れ出ていて興味深いな。このスイッチがうまくいったらそういう方向性で研究を続けるのも一興か」

P「うまくいったらというと、まだ未完成なんです?」

晶葉「うむ。イチャイチャできるように作ったはずなのだがな。私自身が誰かとイチャイチャしたことがないので、完成したのかどうかがわからないのだ。そこで助手にはこのスイッチを使って、実際に私とイチャイチャできるか実験してほしい」

P「なるほど、事情は把握した。だが晶葉、大きな問題が一つある」

晶葉「言ってくれ。実験に際しては万全を期したい」

P「実は俺も……誰かとイチャイチャしたことが、ない」

晶葉「その歳になって一度も、か?」

P「俺の青春はアイドルで、俺の人生はアイドルだった。誰かとイチャイチャする時間も金もなかったんだ……笑ってくれ、晶葉」

晶葉「否、笑うものか。男としてのプライドより、助手としての義務を誠実に果たした助手に、私は心から敬意を表する。ありがとう」

P「こちらこそ、ありがとう晶葉。アイドルに入れあげて一人も友達が出来なかった高校時代の俺が、お前の言葉で救われたよ」

晶葉「それは重畳。さて、イチャイチャ未経験者が二人となると……人を呼んだほうがいいな。イチャイチャについて造詣が深そうで、時間のあるアイドルはいるか?」

P「んー、この時間だと美嘉が適任だと思う。なにせカリスマギャルだし」

晶葉「ああ、カリスマギャルなら間違いはないな。では美嘉に頼むか。ただ、できるならあと一人、冷静な意見を出してくれる人材がほしいところだが」

P「それなら凛でどうだ?」

晶葉「いいぞ、戦闘力も申し分ない。もしスイッチが暴走しても簡単に止めてくれるだろう。二人を呼んでくれ」

P「アイマム」



晶葉「というわけで説明は以上だ。二人にはイチャイチャスイッチの実験に付き合ってもらう」

美嘉「い、イチャイチャ……スイッチ……///」

P「うむ。カリスマギャルであらせられる城ヶ崎美嘉なら、イチャイチャにも一家言あると見込んでの判断だ」

美嘉「ま、まあね★ イチャイチャとかそういうのには、けっこーうるさいよ、アタシ」虚勢

凛「美嘉はいいんだ」

美嘉「え、なにが?」

凛「だって今からプロデューサーと晶葉がイチャイチャするところを見せられるんでしょ? 絵に描いた餅じゃん。そういう話なら私は遠慮したいんだけど」

晶葉「いや、サンプルは大いに越したことがないから、二人にもスイッチは使ってもらうつもりだが」

 ――ピポパポ

凛「もしもし、お母さん? 今日は帰り遅くなるから、夕飯はいらないよ。うん、レッスンがちょっとね……満足できるまでやっていきたいから……ありがと。お父さんにもよろしくね。それじゃ」

P「清々しいほどの手のひら返し。頼もしさしか感じない」

美嘉「さすが凛。プロデューサーの事となると馬力がハンパじゃないね」

晶葉「では同意を得たところで早速イチャイチャしていこうと思う。スイッチオン!」ポチッ

P「よし晶葉! イチャイチャするぞ!」

晶葉「来い、助手! どうすればいいのかは全くわからないが、とにかく来い!」

P「はっはっは! 俺だってどうすればいいのかわからない! 早速だが助けてくれ、美嘉!」

美嘉「いきなりアタシ!? じゃ、じゃあまずは……手をつなぐ、とか……?」

凛(カリスマギャルの提案するイチャイチャが初々しすぎる件)

P「よし、つなぐぞ晶葉」

晶葉「うむ。連結だな、助手」

P「これでいいか、美嘉」

美嘉「い、いいんじゃないかな……?」

晶葉「なるほど。これがイチャイチャなのか」ニギニギ

凛「いや違うでしょ」

P「違うのか?」ニギニギ

凛「ぜんぜん違う。イチャイチャっていうのはこう、もっとベタベタしてて、見てる方が不快になるくらいドロ甘いやつだから。手をつなぐくらいじゃぬるいよ」

晶葉「ではどうすれば?」

凛「とりあえずキスかな」

美嘉「き、きききキス!? 凛、それはいくらなんでも……!」

凛「処女ヶ崎先輩は静かにしてて。ここでハードルを上げておけば後の実験で色々やりやすくなるんだから」

P「アドバイザー同士で相談しているところ悪いが、キスはダメだろキスは。アイドルとプロデューサーなんだから越えてはならん一線というものがあってだな」

凛「酒の席で酔っ払ってアイドルとキスしまくったプロデューサーそんな抗議が出るとは思わなかった」

P「冴え渡る言論の燕返しに拙者の心が真っ二つ」

晶葉「凛、私にはイチャイチャの作法とやらはわからんが、そもそもキスというのはイチャイチャを超える行為ではないだろうか?」

美嘉「そうだよ、キスはダメだって、キスは。それに初心者なんだからもっとこう、段階を踏んで……まずはナデナデからでいいんじゃないかな!」

凛(この程度でヘタれるとは……やはりLiPPSの中でも最弱……キスごときにビビるとはカリスマギャルの面汚しよ……)

P「ナデナデ? 頭を撫でればいいのか?」

美嘉「そう! それとハグもね! うん、そうしよう! というわけで晶葉ちゃんはプロデューサーに抱きついて、プロデューサーは晶葉ちゃんの頭をなでる! 完璧なイチャイチャだよ!」

晶葉「抱きついて?」

P「頭を撫でる?」

美嘉「そうそう。とりあえずやってみてよ★」

凛(あとでアタシもやってもらうからさ、とか考えてるんだろうな)

P「こうして」

晶葉「こうか」

凛「うん、そうだね。晶葉の頭を撫でる優しい手つき。プロデューサーのスーツをきゅっと握る細い指。まあまあのイチャイチャだね。この感情を熱量に変換するスイッチがあるなら、私はいますぐお風呂を沸かせるよ」

美嘉「二人ともやればできるじゃん。というわけで次はアタシがプロデューサーと――」

P「だが待ってほしい。これは本当にイチャイチャなのだろうか」

美嘉「え?」

晶葉「そうだな。これはイチャイチャではないな」

凛「は?」

P「いや、だってなあ」

晶葉「うむ。私たちは誰かとイチャイチャしたことはないが、こういった肉体的な接触は日常的に行っている。イチャイチャをしたことがない私たちがしたことのある行動はイチャイチャではない。証明終わり」

美嘉「それ……日常的にしてるの? 抱き合って、ナデナデしてるの?」

P「それほどの頻度じゃないけどな」

晶葉「そうだな、思い返せばそんなにしてないな。留美さんが厳選したねこ動画を見るときくらいか」

凛「詳しく」

P「言葉では説明しづらい……あ、そういえば新しいヤツを留美さんから受け取ってたな。ついでに見るか」

晶葉「百聞は一見にしかずというし、そのほうが早いだろう」


 ――動画準備中

P「よし見るか」

凛「待って」

晶葉「なんだ、凛。さては生粋のマッドサイエンティストである私が猫好きだと知って驚いてるのか?」

凛「驚いてるのはそこじゃないから。晶葉が当然のようにプロデューサーの膝に座ってることに対してだから」

晶葉「見ての通り、この部屋には一人用の椅子しかない。こうしないと一緒に動画が見れないのだ。助手の膝の上が最も合理的なポジションだろう?」

美嘉「じゃあプロデューサーが、晶葉ちゃんの腰を抱いてるのも?」

P「こいつ結構はしゃぐからな。腕でシートベルトしてないとずり落ちるんだよ」

晶葉「助手、私は断じてはしゃいでなどいないぞ。ぬこ動画にエキサイトするマッドサイエンティストなどと、私のイメージを不当に貶めようとするのはやめたまえ」

P「じゃあ俺がモニター見えなくなるまで身を乗り出すのは今後一切禁止な」

晶葉「それは……その、困る」

P「なら認めろよ。池袋晶葉はねこ動画でにゃんにゃんしちゃうキュートなアイドルだと!」

晶葉「くっ……!」

凛「いや、くっ……! じゃないから。認めるも何も晶葉はCu属性だから」

美嘉「というか二人ともどうして自覚ないのかわからないけど、現在進行系でめちゃくちゃイチャイチャしてるじゃん」

P・晶葉「な、なんだってー!」

凛「それはこっちのセリフだよ。いつもラボでコソコソしてるのは知ってたけど、まさかそんなふうにイチャイチャしてたの?」

P「し、知らなかった……まさか二人で動画を見ているだけでイチャイチャになるなんて……」

晶葉「これはイチャイチャスイッチを根本から再構築する必要があるな……すまない二人とも、今日の実験は中断――」

美嘉「ちょ、ちょーっと待った! 二人ともどこからどこまでがイチャイチャかわかってないみたいだし、スイッチを分解する前に客観的な視点が必要だよね!?」

晶葉「確かに」

美嘉「じゃ、じゃあ……その、晶葉ちゃんにはそこをどいてもらって……ぁ、アタシが、プロデューサーの膝に乗るから……えっと、プロデューサーはアタシに……晶葉ちゃんにいつもしているようにしてくれる? そしたら晶葉ちゃんは客観的に、こう、観察? できると思うから……り、凛もそれでいいよね?」

凛「すごいよ美嘉は。イチャイチャをイチャイチャとすら感じていなかった二人のぶっ壊れた距離感に、あえて自分をねじ込んでいく姿勢はどう考えても無謀だと思うけど、その勇気は尊敬する」

美嘉「遠い目をするのやめてくれる? ……じゃあ失礼するね、プロデューサー。……お、重くない?」

P「軽い軽い。けどやっぱり前が見えないな。ちょっと横にずれてくれるか? 背中は支えるから」

美嘉(プロデューサーの腕が背中に……! そんな、肩つかまれちゃった……///)

P「体重、もっとこっちにかけてくれるか? バランスがよくない」

美嘉「……うん♡」

凛「だいじょうぶ、美嘉? ほとんどお姫様抱っこだけど平気? 顔、まっかだよ? 辛くなったらいつでも代わるからいってね」

美嘉「お、オッケー★ 耐えきれなくなったらお願いするね」

晶葉「ふむ。ではポジショニングも済んだところで、私は二人の観察を行いつつ横からぬこ動画を鑑賞するとしよう」

凛「どんだけ見たいの?」

晶葉「あの猫大好きお姉さんが厳選したぬこ動画だぞ? 見たくないのか?」

凛「……見る」


 ――にゃーん。


P「満足」

晶葉「満悦」

凛「犬派だけど猫もいいよね」

美嘉「……最高だった……///」


晶葉「しかし助手、動画が終わってから気づいたのだが……二人ともイチャイチャしてないな」

P「いわれてみれば」

晶葉「思うに、普段の助手と私を再現しきれていないのが問題ではないか?」

P「なるほど。確かにいつもと違うと思ったが、美嘉が晶葉になりきってなかったな。俺もつい受け身になってしまった」

晶葉「ああ。これではいつもの自分たちを客観視するという目的が達成できない。もう一度見るぞ」

P「仕方ない。もう一度見るしかないな」

凛「二人とも動画が見たいだけなんじゃ……」

美嘉「というかプロデューサーと晶葉は普段、どういうふうに見てるの?」

P「いつもなら動画の途中で、晶葉が猫の真似をし始めるんだ」

凛「えっ?」

晶葉「つい癖でな。にゃーんと言いながら助手の身体に頬をこすりつけたりするぞ」

美嘉「えっ?」

P「それで俺も動画にならって晶葉をあしらうわけだが……そう、例えばこのシーンだ。猫がにゃーんといいながら飼い主の手に頬ずりする。飼い主が顔を撫でる。猫がうっとりする。撫でるのをやめる。猫がまたにゃーんと頬ずり。飼い主がまた撫でる。猫がうっとりする。エンドレス。普段の俺と晶葉なら、二人でこの一連のシーンを再現するわけだが……どうした、二人とも」

晶葉「なんだかハバネロみたいな顔色になっているが」

美嘉「り、凛……? さっきいったよね。辛かったら代わってくれるって……」

凛「ごめんね美嘉。私、犬派だから」ノーサンキュー

美嘉「いまそれ関係なくない!?」

凛「あるよ、うん。すごくある。だって犬派の私がにゃーんとかいっちゃったらイメージダウンするでしょ? それにこの二人のクレイジーな距離感を対して確認せず、闇雲に藪蛇した美嘉がすべての責任を負うのが物事の道理だと思うんだよね」

美嘉「せ、せめて半分こに――」

凛「やめてください(恥ずかしくて)しんでしまいます」

美嘉「アタシはいいの!?」

凛「犠牲は少ないほうがいいし」

美嘉「冷酷無情! 冷酷無情!」

晶葉「話はついたな? 再生するぞ」

美嘉「ちょっ、ま」


 ――にゃーん。


晶葉「ほら、美嘉。ちゃんと真似をするんだ」

美嘉「は、恥ずかしいよ……///」

P「最初は誰だってそうだ。けどな、美嘉。できるとかできないとかじゃないんだ。やるかやらないかなんだ。人生における本当の失敗は、挑戦しないことなんだ。挑戦しなければ人は何も得られない。挑戦して初めてその手になにかつかむことができる。たとえつかんだものが間違いや誤りであったとしても、それを次に活かすことができる。挑戦するということ自体が人間にとってプラスになるんだ。だから、少しだけ勇気を出してほしい。大丈夫だよ、美嘉ならできる」

美嘉「プロデューサー……うん、アタシがんばる……!」

晶葉「物凄い言いくるめを見た」

凛「これはひどい」

美嘉「い、いくよ……? …………に、にゃあ……///」

P「違うぞ、美嘉。もっと動画をよく見ろ。猫は羞恥心なんて感じてない。ただただ撫でられたいという顔をしているだろう? 飼い主に愛されたいというパッションがあの猫を突き動かしているんだ。あの表情を見ろ。美嘉も無心になれ。何も考えるな。俺のことだけを考えろ」

美嘉(プロデューサーのことだけを……? プロデューサーの身体……アタシを抱きしめてくれる……プロデューサーの腕……アタシを支えてくれる……プロデューサーの手……アタシを褒めてくれる……プロデューサーの目……アタシを見守ってくれる……プロデューサーの声……アタシを励ましてくれる……プロデューサー……プロデューサー……!)

P「さあ、美嘉。猫の気持ちになるんだ、美嘉!」

美嘉「にゃーん★」

P「よーしよし、そうだ美嘉。いいぞ、その調子だ。やればできるじゃないか、美嘉。かわいいぞ、美嘉! 美嘉は最高だ!」

美嘉「ふみゃっ♡ にゃっ♡ みゃーん♡」スリスリハスハス

凛「うわあ……」イラッ

晶葉「例えようもない目でアレと私を見比べるのはやめてほしい」

凛「見るに堪えないイチャイチャだったから、つい」

晶葉「いやいや、普段の私と助手もさすがにあそこまではやっていないぞ?」

凛「認めたくないのはわかるけど、科学者なら都合の悪いデータも直視するべきだよ」

晶葉「その点は私も同意するが……あの過剰な反応にはイチャイチャスイッチも関わっていると思われる」

凛「というと?」

晶葉「私は人間がイチャイチャする上で羞恥心がブレーキになると考えた。そこでまずそのブレーキの効きを弱める効果をスイッチに付与したのだ」

凛「それじゃあ美嘉がああなったのも……」

晶葉「スイッチは私と助手にしか効果を発揮していない。美嘉がああなったのは美嘉自身の素質だ」

美嘉「みゃみゃあ♡ うみゃあ♡」

P「よーしよし、よーしよし! 美嘉はカワイイなあ! 抱きしめてやる!」

美嘉「にゃーんっ♡」

P「かわいいなあ! 美嘉は世界で一番かわいいなあ!」

凛「…………………………チッ」

晶葉「舌打ち」

凛「……あのさあ、ブレーキの壊れた自転車でさえ危険だっていうのに、プロデューサーの感情のブレーキを抑制したの? 前から思ってたけど、頭だいじょうぶ?」

晶葉「……………………ふむ」

凛「なんなの、奥歯に物が挟まったみたいな顔して」

晶葉「批判はもっともだが、いつも以上に態度が辛辣だと思ってな。あの二人に怒ってるのか、素直になれない自分に怒っているのか、判断しかねているところだ」

凛「は? いきなりなに? 私は別に、美嘉が羨ましい妬ましいとかプロデューサーの胸板に鼻を埋めて深呼吸したいとか、ああいう感じでベタベタに甘えて猫可愛がりしてほしいとか、そんなのこれっぽっちも思ってないんだけど?」

晶葉「あ、うん。そうだな。失礼なことを言ってすまなかった。お詫びと言ってはなんだが、ここにとあるスイッチがある」

凛「感情を熱量に変換するスイッチならやめといたほうがいいよ。今の私ならきっと地上のすべてを焼き尽くせる」

晶葉「人類に愛がある限り、199X年は永遠に訪れないぞ? さて、このスイッチは凛が少しだけ素直になれる効果があるのだが……どうする?」

凛「愛をとりもどせ」

晶葉「その意気やよし。ではアイドルがメス猫になるスイッチ、オン」ポチッ

凛「………………」ユラァ

P「ん、どうした凛」

美嘉「みゃあ?」

P「へんじがない。ただのしかばねの……あっ、ちょっと、美嘉。顔を舐めるのは――」

美嘉「にゃあ♡ にゃあ♡」ペロペロペロペロ

しぶにゃん「フシャァァァァァアアアアアア――――――ッ!!!」

美嘉「きゃあああああ!?」

P「うわああああああああ!?」

 ――にゃーん。

晶葉「今日もドッタンバッタン大騒ぎ、っと」

晶葉「できたぞ助手! アイドルがおしゃぶり大好きになるスイッチだ!」

P「さすがあきえもん! ここ最近はクリスマスパーティーの準備やらなんやらで、イマイチ様子を見れなかったからどうしているのかと心配していたが、とうとう頭のほうがどうかしてしまったようだね!? クリスマスが無事に終わってほっとした俺の心の空隙を衝くように、そんな物騒なものを作ってしまうのはどうしてなのかな!? かなァ!?」

晶葉「マッド・サイエンティストにA・Iに不可能などないと証明するために! そこに発想と意欲と材料と工具があれば私は私の力を使うことをためらわない! 恐れない! 振り返らない! 制作に必要なのは清水の舞台から飛び降りるが如き思い切りの良さ! そして気づいたら三日間徹夜していた私の勢いはもはや天を衝かんばかりである!」

P「気炎万丈! 気炎万丈!」

晶葉「ふはははは! 我が胸の内に燃え盛るプロメテウスの火はもはや何人にも止められぬ! ショート寸前の思考回路から生み出されたこのスイッチがどのような災いをもたらそうと私は知らん! 私はもうとにかくおしゃぶりして横になって寝たいのだ!」

P「おしゃぶりして!? 横になって!? 寝る!? 晶葉、それはいけない! 未成年がそれはいけない!」

晶葉「ええい離せ! 微妙なへっぴり腰でまとわりつくな! 私はたくさんおしゃぶりするんだ! しゃぶり倒してぐっすり寝たいんだ!」

P「頼むからその花のように可憐で天使のように愛らしい唇を閉じろ! 喋るな! 俺のワガママボーイをほいほい挑発するんじゃ――あっ」ポチッ

晶葉「……押したな、助手」

P「俺は悪くねぇっ! 俺は悪くねぇっ!」

晶葉「誰も死んでないんだからそう喚くな。それよりもちゃんと責任は取ってくれるんだろうな?」

P「おおお仰る意味がよくわからないのですががが」

晶葉「おしゃぶりしたくてたまらない私に協力すればいいだけだ。さあ、仮眠室はあっちだ。ほら行くぞ」

P「いや、その、晶葉? そういうのはダメだと思うよ? 法的にも職業倫理的にもアウトだし……それにほら、ばっちいよ?」

晶葉「ばっちい……? なぜだ? 新品だぞ? 衛生的に問題はないが」

P「」

晶葉「助手?」

P「いや――うん、すごいわ。知的美少女に新品とか言われたうえに、一切の疑いのない真顔で首を傾げられてるの、本当に心が抉り抜かれるみたいで興奮しかない」

晶葉「それに、助手は知らないかもしれんが、おしゃぶりをしたまま寝るとぐっすり眠れるらしいぞ」

P「したまま寝るの!? いったいどこでそんな邪悪な知識を!?」

晶葉「ワールドワイドウェブ」

P「このすばらしきせかい(白目)」

晶葉「さあ、頭を抱えてないでキリキリ歩け」

P「だが断る。俺は俺自身の尊厳と矜持となにより晶葉の将来のため、今ここで自由への逃走を――」

晶葉「条件を満たすまで部屋から出られなくなるスイッチ」ポチッ

P「マジかよ壁がすり抜けられねえ。床もだ。ドアも開かねえ……ちなみにその条件って?」

晶葉「無論! 私が満足するまでおしゃぶりすることだ!」

P「天の国への道は閉ざされた!」

晶葉「観念しろ、助手。諦観を胸に沈めてさっさと入れ」

P「うっ……うぅ……晶葉謹製の酸素カプセル……くそぉ……巡り巡る季節の内に染み込んだ晶葉のにほひにベッドインしちゃうぅ……こんなの絶対元気(♂)になっちゃうよぉ……」


晶葉「ほらもっと詰めろ。私が入れないだろうが」

P「晶葉が無理やり入ってくるぅ……39kgしかない美少女が密着してくるぅ……書類送検されちゃう……」

晶葉「ふむ……これはなかなか興味深いな。この状態でのおしゃぶりか……想像以上によさそうだ」

P「なあ晶葉、やっぱりやめよう。アイドルとプロデューサーとかそういう問題じゃなくて、人間としてこういうのはいけないと思うんだ」

晶葉「おしゃぶりのなにがダメなんだ?」

P「えっちなのはいけないと思います!」

晶葉「……えっち? おしゃぶりが?」

P「なんでそんな理解に苦しむという顔をされなきゃならんのだ」

晶葉「いや、だって、おしゃぶりだぞ? これをえっちというのは……つまり助手はおしゃぶりに性的興奮を覚えるのか? 私は性的な知識には疎いが、流石にそれは特殊性癖すぎると思うぞ?」

P「制服+白衣+天才+眼鏡+ツインテール+前髪パッツン+14歳JCって数え役満だからね?」

晶葉「ユカタン半島」

P「というかだな。そもそもろくに動けないカプセルの中で、向き合っている状態からどうおしゃぶりするのか詳しく」

晶葉「ごく普通に、こうして咥えるだけだが」パクッ

P「………………は?」

晶葉「なんあ、しょしゅ」

P「それ、あかちゃんのおしゃぶりだよね?」

晶葉「ひはひほ」

P「……晶葉、スイッチの効果について詳しく解説してくれるか? おしゃぶりは外して」

晶葉「説明しよう! おしゃぶり大好きスイッチとは! アイドルの口唇欲求を極限まで高めるスイッチである! 赤ん坊がおっぱいでおとなしくなるのと同様に、口唇欲求を満たされることでアイドルは素晴らしいリラクゼーション効果を得ることができる! その効率たるやなんと和久井留美編集のぬこ動画、高森藍子のゆるふわ空間、三船美優のひざ枕にも匹敵するのだ! どうだ助手! 凄いだろう!」

P「いや、うん。凄いけど……つまり徹夜続きの晶葉は、ただ癒やしを求めてその狂ったスイッチを作ったということ?」

晶葉「Exactly(そのとおりでございます)」

P「……はぁ~。よかった、流石に今回ばかりはもうダメかと思ったわ」

晶葉「助手、前髪に息がかかってくすぐったいのだが……それより何がダメかと思ったんだ?」

P「深く追求されると俺の人間性が危ういのでそっとしておいてほしい」

晶葉「そうか。では胸を借りるぞ」

P「はい?」(杉下右京)

晶葉「おしゃぶり。抱きまくら。ハグ。いずれも安眠に効能があるとされている。そしてダメ押しの酸素カプセルだ。これによって私は今から人生で最も充実した睡眠時間を得ることとなるだろう。ではおやすみなさい」パクッ

P「晶葉? え? ちょっ……え? もう寝たの?」

晶葉「……zzz」

P「本当に寝てるよ……起きる気配がしねえ。ほっぺぷにぷに。きゃわわ」

晶葉「……ん……んぅ……」

P「てか寝るときくらい眼鏡外せよな。ほら顔上げろ……ったく。フレーム曲がったらどうすんだよ」スッ

晶葉(眼鏡OFF)「……すぅ……すぅ……」

P「おっと、これは……いつもは自信たっぷりなおめめを閉じてですね? 年相応のあどけない寝顔でおしゃぶりを咥えてすやすやしている晶葉って、もしかしなくても可愛さテラブレイクなんですけど……メガネを外すと俺のストライクゾーンにスパークボルトなんだよなぁ……そして問題はそんな美少女と酸素カプセルの中で添い寝しているという事実なんですよねぇ……しかもちょっとやそっとじゃ起きなさそうだし……あれ? これって完全犯罪のチャンスでは?」

天使P(落ち着け俺。晶葉がこうも無防備なのは俺への信頼の現れ。その信頼を、アイドルを、裏切っていいと思っているのか?)

悪魔P(でも一緒の酸素カプセルに入って添い寝とかどう考えても誘ってるだろコレ)

天使P(その点は否定できない部分もあるが、アイドルの笑顔を守護るのがプロデューサーの務めなれば)

悪魔P(それはそうだけどさ。この小さな身体を抱きしめて、前髪に鼻を押し付けて、スカートをめくってさ? 俺の暴れん坊をパンツとプリプリのふとももでデルタサンドして深呼吸したらどうなると思う?)

天使P(緊急射精案件!)

悪魔P(主砲装填完了!)

天使&悪魔(我射爆了ッ!)

晶葉「…………zzz」

P「本当によく寝てるな……このままじゃまずいし、たぶんおしゃぶりを抜いたら起きるよな?」

晶葉「……ん……んぅ……ちゅっ、ぽっ」

P(半開きになった口)(唾液で濡れた唇)(艶かしくも愛らしい舌先)(唇の裏側に覗く真っ白な歯)(呼吸に合わせてゆっくり上下する肩)(漏れ出る吐息の熱)(シャンプーとかすかなオイルが混じり合った香り)(強く抱けば壊れてしまいそうな肉体)

晶葉「……ちゅっ……じゅっ……ん、ん……」

P(おしゃぶりに吸い付く口唇)(耳にこびり付く卑猥な音)(どこまでも無垢で安らかな寝顔)(さらさらの髪)(ツヤのある長い睫毛)(整った鼻梁の先にある気の強そうな鼻)(薄紅色のやわらかな頬)(細い顎から続く白いうなじへの芸術的な曲線)(華奢な鎖骨を載せた胸元)(貸した胸にすがりつく細い指)(信じられないほど小さな爪)(眠りに落ちたシンデレラ)

P「一発だけなら誤射かもしれない……」ゴソゴソ

 ――コンコン

P「ッ!?」

唯「はろー(ニッコリ)」

P「……ど、どうしてここに……?」

唯「いつだってそばにいるから」

P「……これは、その……違うんだ……」

唯「ラララララ♪ ほら外に出ようぜ」

P「アッハイ」

唯「説明」

P「おしゃぶりスイッチが(中略)俺は逃げようとしたが晶葉のせいで部屋から出られなくて(責任回避)やばいと思ったが、性欲を抑えきれなかった(自白)」

唯「ふーん。それで晶葉ちゃんに手を出そうとしたんだ」

P「いや、晶葉にナニをしようとかそういうつもりは全然なくって」

唯「ズボンをごそごそしてたのに?」

P「いざとなったら舌を噛み切るつもりだった」

唯「相変わらず行き過ぎた自制心だよねぇ……というか、そもそもゆいがいるよね?」

P「???」

唯「みんなには内緒だけど、ゆいはもうPちゃんのコイビトだよね? えっちしたくてむらむらしたら、コイビトにお願いするのが当たり前じゃない?」

P「それが当たり前かどうかはともかくとして、俺と唯が恋愛関係っていうその前提条件がまずおかしいよね?」

唯「…………………………」

P「ゆ、唯サン……?」

唯「…………うん。そっか、そうだよね。わかるよ、Pちゃんがなにを考えてるのか。だからそういうことにしておいてあげるね?」

P「日本語で会話しているのに話が通じていない件」

唯「ところでPちゃん……ゆいね? さっきからすっごくおしゃぶりしたくてたまらないんだけど……これもスイッチのせいなのかな?」

P「口唇欲求を高めるというからたぶんそうだろう。効果範囲については何も言ってなかったが……ところで唯、どうしてこう……なんというか、肉食獣のような身のこなしでにじり寄って来るのかな? 舌なめずりとか乙女としてはしたないとは思わない?」

唯「ふふふふ。ゆいねぇ、キャンディがなくなっちゃって……もうガマンできないんだぁ……ナニかおしゃぶりしたいなぁ……お口いっぱいに頬張って、じゅるじゅるして、ぺろぺろして……どこかにナニかないかなぁ……ねえ、Pちゃん……?」

P「ちょっとコンビニで飴ちゃん買い占めてくる。………………ンン!? なぜだ! なぜ開かない!?」

唯「晶葉ちゃんが満足するまで部屋から出られないんでしょ?」

P「いやでも、唯はこうして部屋に入ってきて――」

唯「出られなくなるだけで、入れなくなるわけじゃなかったってコトだね」

P「ということは、つまり?」

唯「袋のネズミ」ポチッ

P「土下座スイッチ!?」

唯「邪魔されても嫌だしー、鍵かけちゃおっと♪」

P「唯、待って。晶葉がいるから! 待って!?」

唯「三日も徹夜したんだから、ちょっとやそっとのことじゃ起きないってば☆」

P「そういう問題じゃないからね!?」


唯「それにぃ、ドキドキしない? すぐそばに他のアイドルがいるのに、ゆいとらぶらぶするの」

P「べ、別にしねぇし……」ドキドキ

唯「あー、Pちゃんウソついたー。ウソつきにはバツを与えないとねー」

P「なにを……」

唯「この前ね、晶葉ちゃんが土下座スイッチをアップデートしてくれたんだー。Bluetoothでスマホのアプリと連動してね? 土下座している人の姿勢を操作できるの。アプリを開いてポーズアイコンをタップすると……」

P「抗えぬ強大なパワー……ッ!」

唯「土下座Pちゃんが、あっという間によつんばいPちゃんに!」

P「動けない!? なんということだ! 晶葉の科学力がすでに魔法の領域に達していたとは……! 知ってた!」

唯「そしてゆいはね、よつんばいになったPちゃんの下に潜り込むのでーす」

P「待て待て待て待て! どうして俺の股を広げようとする!?」

唯「どうしてって、足を広げないと下から入れないじゃん。上からだとスカートめくれちゃうよ? あ、それともゆいのパンツが見たかった? しょうがないなあ、じゃあ上から――」

P「そのままずり上がってきてください」

唯「ほーい。お邪魔しまーす。……うんしょ、っと」

P「へいらっしゃい」

唯「なんかコレ、Pちゃんに押し倒されてるみたい……マジヤバイ……えへへ……ちょっち恥ずかしいねぇ……///」

P「じゃあやめよっか」

唯「やーだ。だってゆい、すっごくドキドキしてるもん。Pちゃんってやっぱり男の人なんだね……肩幅とか、腕の太さとか、ゆいと全然ちがって……なんか今にも食べられちゃいそう……」

P「動けなくなってるのは俺の方なんですが」

唯「ふふふ……そうだったね。じゃあ今日は唯からするね? たくさんたくさん、いままでできなかったぶんもあわせて、いっぱいするね?」

P「食べないでくださいぃ!」

唯「……そんなにゆいとキスするのいや?」

P「好き嫌いの問題じゃなくてね? アイドルとプロデューサーがこういうことしちゃいけないって知ってるよね?」

唯「お酒の席でさんざんキスしまくったPちゃんが真顔でそれ言う?」

P「アレは不可抗力ですしおすし」

唯「じゃあ今回のもそれでいいでしょ?」

P「相手が未成年となるとさすがに全身全霊で抵抗しますわ。俺の社会的生命をかけて」

唯「……ふーん、そっかぁ。でもPちゃんがキスしてくれないってなると、ゆいはいったいナニをおしゃぶりして、このムラムラした気持ちを発散したらいいんだろう?」

P「キャンディならあとでたくさん買ってくるから――」

唯「いますぐおしゃぶりしたいんだけど」

P「じゃあ晶葉を起こして――」

唯「晶葉ちゃんが満足したら開くんだよね? 途中で起こしても開かないんじゃないかな?」

P「俺にどうしろと……」

唯「おとなしくゆいとキスするか、それともゆいがおしゃぶりで満足するナニかを提供するしかないよね。具体的にいうとココにあるPちゃんのおちn――」サワサワ

P「よーし唯! キスするぞ!」自暴自棄


唯「あきらめの早いPちゃん大好き! それじゃあ失礼してぇ……えいっ♡」

P「ちょ、唯!? なに腰に足回して……!」

唯「だいしゅきホールドっていうんだよね? ゆい、知ってるよ? えっちなお勉強いっぱいしたから」

P「一人で?」

唯「比奈ちゃんせんせーに教科書を借りました」

P「あとで説教だぞ荒木ィ……!」

唯「それでぇ、だいしゅきホールドからの、磁力スイッチ!」ポポチッ

P「すげー。スイッチで乳首押されたと思ったら、一瞬で俺の上半身と唯の上半身がボーイ・ミーツ・ガールでおしくらまんじゅう(B84)」

唯「思ってたよりピッタリくっついちゃったね。これってゆいだけじゃなくて、Pちゃんもゆいのこと大好きってことだよね?」

P「その件については返答を差し控えさせていただきます……というかここまでしなくてもいいのでは?」

唯「ええー。だってキスだよ? 二人の間にスキマがないくらいにくっついて、ちゅうしたいじゃん☆ それに……ほら。ゆい、『Radio Happy』でも歌ってるよね? ……大好きな君に届けたいよ、って」

P(唯の声って本当にちんこに届くよなぁ)

唯「……ねえ、届いてる? ゆいのドキドキ……ちゃんと伝わってる?」

P「コメントは控えさせて頂きます」

唯「そんなこと言って、耳まっかだよ?」

P「……お前だってリンゴみたいなほっぺしてるぞ」

唯「これから好きな人とキスするだもん。女の子ならみんな赤くなるよ」

P「そういう返しはずるい」

唯「どうして?」

P「口で勝てる気がしないから」

唯「うるさいおくちはどうすればいいか知ってる?」

P「……それは、その」

唯「えへへ……ゆいが、教えてあげるね?」

 ――Chu♡


唯「しちゃった……ね///」

P「してしまったな……」

唯「ゆいのキス……どう?」

P「どうといわれても……」

唯「他の人と比べて、気持ちよかった?」

P「それは……その……いや、こういうのは比べるようなものじゃないと思うんだが……」

唯「くらべるものだよ? だってゆいのイチバンはPちゃんだもん。ならPちゃんのイチバンもゆいじゃないとダメだよね?」

P「二位じゃだめなんでしょうか?」

唯「」

P(あっ、地雷踏み抜いたわ)

唯「イチバンじゃないとダメっていってるじゃん。どうしてそんなひどいこというの? Pちゃんていっつもそうだよね? Pちゃんはいつもゆいじゃない女の子と仲良くして、ゆいにわざと意地悪して……こんなにもPちゃんのことが好きなのに、なんでわかってくれないの? なんでゆいのキモチはいつも届かないの? ゆいはこんなにも、Pちゃんのことが大好きなのに……」

P(人生終了のお知らせ)

唯「許せない。あんなにしてあげたのにこんなこといわれるなんて思ってなかった。もう手加減とかしないから。Pちゃんの全部をゆいで塗り潰すまでやってあげる。お仕事してるときも、ご飯を食べてるときも、一人でいるときも、他の女の子といるときも、夢の中にいるときも、寝ても覚めてもゆいのことしか考えられないようにしてあげる」

P「」

唯「ゆいがそばにいるだけで幸せに感じるようにしてあげる。

  ゆいが話しかけてあげるだけで喜びを覚えるようにしてあげる。

  ゆいが触るだけで死んじゃうくらい嬉しくなれるようにしてあげる。

  Pちゃんを……ゆいと同じになるまで、壊してあげる♡」

P「……ど、どうやって?」

唯「まだ何も考えてないよ? でもそうだなぁ……とりあえず磁力スイッチをオフにして……んっと、あったあった。

  ほら、いつものやつ(感度3000倍スイッチ)。まずはこれを使うね?

  磁力スイッチでぴったり逃げられないようにしてから、敏感になったPちゃんにゆっくりキスするの。

  唇で唇を挟んで、吸って、舌で嫐って。それから鼓膜を性感帯にして、Pちゃんのベロをおしゃぶりしてあげる。

  両手で耳をふさいでね? ぬちゃぬちゃ、れろれろって、口の中で舌と舌がドロドロに溶け合う音で、頭の中を犯してあげる。

  そうやって理性が溶けたら、ゆいがPちゃんの耳を舌でほじくる音を聞かせてあげる。

  そのあと、気持ちよすぎてかすれちゃったゆいの吐息で鼓膜をくすぐってあげる。

  最後は汗ばんだ肌で抱きしめながら、ゆいのぜんぶで、Pちゃんをとろかしてあげる。

  ふふふっ……ゆいのカラダとクチビルで……じっくりと、ゆっくりと、とろっとろにして、ア・ゲ・ル♡」ポチッ

P「(相手が)お前じゃこの先生きのこれnいぐいぐいぐいぐぅぅぅううううううう!!!!」




 年越しまで起きていられなかったちゃまをお布団に運びたいだけの年末だった。よいお年を。

 ※書き忘れていました。下品です。

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