ありす「お父さんと」P「クリスマス」 (26)

続きの話ですが、ありすとPが親子、というのが分かってもらえれば大丈夫です。

前回:ありす「お父さんと」P「娘と」
ありす「お父さんと」P「娘と」 - SSまとめ速報
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ありす「お父さん、新聞なんか読んでないで、朝ごはん食べるのに集中してください」

P「許してくれー。これも仕事のうちなんだー」

ありす「まったく。食器洗いがいつまでたっても終わりません」

P「自分の分は後でやっとくから、適当に終わらしていいぞー」

ありす「結構です。お父さんに任せると洗いムラがひどくて、結局やり直しになりますから」

P「返す言葉もない」

ありす「まったくもう…」フフフ-フ- フフフ-フ-♪

P「…………」

ありす「まだか~な プレーシャス~♪」ンーンー

P「なんだありす、ご機嫌だな」

ありす「そうですか?」

P「歌いながら家事やるなんて珍しいじゃないか」

ありす「そんなこと…。そうですね、もうすぐクリスマスですから」

P「ああそうか、もうクリスマスなのか」

ありす「まさか、忘れてたとか言いませんよね」

P「これだけ街中がクリスマスで溢れてるのに忘れはしないさ」

P「……仕事が忙しくて、今日が何日か忘れてたのは事実だが」

ありす「やっぱり。まあ、お父さんが忘れてたとして、何も問題はありませんけど」

P「辛辣だな」

ありす「だって、今年はお父さんが忙しくて、うちでクリスマスのイベントは何もやりませんから」

P「確かに」

ありす「ツリーもないし、お部屋の飾り付けもないし」

P「悪いとは思ってるよ」

ありす「平気です。その代わり、クリスマスイブは事務所の皆さんとパーティーをしますので」

P「そうだな、事務所のパーティーは賑やかで豪華だから、うちでやるよりずっと楽しいと思うぞ」

ありす「あと、プレゼントもサンタさんが持ってきてくれましたし」

P「そうそう、プレゼントはサンタが持ってくるし……。プレゼント!?」

ありす「どうしたんですか、突然」

P「いや…、なんでもない」

ありす「変なお父さん」ジャー カチャカチャ

P「……ところで、毎年ありすから預かってるサンタへの手紙はどうした?」

ありす「今年はお父さんが本当に忙しそうでしたから、信頼できる大人の方にサンタさんへ届けてもらえるようお願いしました」

P「お、おう…。ちなみに、誰に渡したんだ?」

ありす「なぜ、お父さんに言わなければならないのですか」

P「いや、手間かけたお礼を言っておかないと…」

ありす「大丈夫です。お礼はいらないと、快く引き受けてもらえましたので」

P「そ、そうか…。ちなみに、クリスマスっていつだっけ?」

ありす「そこまで忘れているんですか? 明日はイブ。クリスマスはあさってです」

P「お、おう…。ありがとうな……」

ありす「それよりお父さん、そろそろ仕事に行く時間ですよ」

P「そ、そうだな、そろそろ行くか」

ありす「私は仕事も学校もお休みなので、うちで部屋の掃除や冬休みの宿題をやっています」

P「わかった。今日も遅くなるから、先に寝ててくれ」

ありす「夕ご飯も事務所で食べますよね。体こわさないように気をつけてください」

P「了解。行ってきます」

バタン





P(やっべーー!! すっかり忘れてたーーー!!!)

P(ありすが今年なに欲しいのか全くわかんねー!)

P(どうする? どうするおれ!?)

―――――――
――――
――

さあ、みんなでかんがえよう!

とある事務所のプロデューサーが、クリスマスと年末年始のイベント準備で大変忙しく、
娘のクリスマスプレゼントを用意するのを忘れていました。

娘はサンタを信じており、プレゼントに何が欲しいか直接聞くことはできません。

いつもはサンタへの手紙を預かることで事なきを得ていましたが、
今年は他の信頼できる大人へ渡してしまったようです。

問題は、娘の欲しいプレゼントがわからないことと、
その欲しいものが書いてある手紙の行方がわからないこと。

P「さて、どうする?」


梨沙「それで」

桃華「集められたのが」

仁奈「仁奈たちでごぜーますか」

P「頼む! 君たちは橘さんと仲が良いし、何かヒントでもいいから教えてくれ!」

桃華「と、言われましても」

仁奈「仁奈、何にも知らねーですよ」

P「そ、そうか……」

梨沙「ていうか、クリスマス関連で大人っていえば、あの人しかいなくない?」

桃華「イヴさん、ですわね」

P「もちろん、その可能性は真っ先に考えたさ」

P「でも、イヴは家業の手伝いとかで一週間前から休みとって事務所にいないし、携帯にかけても」

『はい、イヴです~』

『ただ今、私はとっても忙しいのでお電話に出られません~』

『ご用の方は、わけあって居残りのブリッツェンまでご伝言をお願いします~』

P「って、メッセージも受け付けなくて」

梨沙「あー、だからあのトナカイだけ、ここで一人ぼっちなのね」

桃華「心なしか、寂しい目をされていましたわ」

仁奈「置いてけぼりの気持ちになるですよ…」

P「後でケーキでも差し入れしてやろう」

P「って、ブリッツェンは置いといてだな、とにかく今は何か情報を。ありすが信頼してる大人は誰かわからないか」

桃華「うーん。信頼されてない人を探す方が難しい気がしますけれど」

梨沙「アッパラパーなのもいるけど、周りに気を使ってたり思いやりがあったり、なんだかんだ信頼できるものね」

仁奈「事務所のおねーさんたち、みんな大好きでごぜーますよ!」

P「だよなあ…」

梨沙「だいたい、信頼できる大人に手紙を渡したって言うのなら、その大人たちに聞くのが普通じゃない?」

梨沙「なのに、アタシたち子どもしか呼ばないって…。アンタ、やっぱりロリコン…」

P「違う違う! クリスマスと年末のイベントや番組はどうしても深夜になるものが多いから、大人組は忙しくて呼べなかったんだ」

桃華「それで、わたくしたち予定が空いているヒマ~な子を集めてみた、と」

P「なんか、言い方にトゲがあるな」

梨沙「悪かったわねっ! 人気が無いせいで仕事が少なくて!」

仁奈「仁奈たち、人気がねーでやがりますか?」

P「君らむしろ人気あるだろ! そうじゃなくて、桃華と梨沙は橘さんとユニット組んでるし、仁奈は互いのソロ曲でありすと一緒にライブをしたから、それでだな」

桃華「ふふっ、わかってますよ、Pちゃま」

梨沙「ちょっとからかっただけなのに慌てちゃって、情けないわねえ」

P「おお?」

仁奈「おお?」

仁奈「桃華ちゃんと梨沙ちゃんは、Pのことをからかってやがったんですね」

桃華「ええ、からかったと言うより、ちょっとした意趣返し、でしょうか」

仁奈「いしゅ?」

桃華「つまり、ありすさんのプレゼントを買い忘れたPちゃまにお仕置きを――」

P「とりあえず! 言葉の解説は後にしてだな、何かありすの欲しいものに手がかりはないか? マジでどうすりゃいいかわからないんだ…」

桃華「あら、本当に困ってらっしゃるんですのね」

梨沙「普段も落ち着きないけど、こんなに泡食ってる姿は初めて見るわ」

仁奈「ありすちゃんの呼び方が、いつのまにか苗字じゃなくなってやがりますし」

P「え? あっ! やべ!」

梨沙「別にいいじゃない、今ありすはここにいないんだから、名前で呼んだって」

桃華「そうですわ。むしろ、Pちゃまがありすさんだけ苗字で呼ぶのは、ちょっと違和感がありますもの」

P「いや、少しでもクセつけとかないと、すぐに名前で呼んでありすに怒られるから」

梨沙「そうね、いつものことよね」

桃華「すっかり、この事務所の風物詩ですわ」

仁奈「Pとありすちゃんは、いつも仲が良くてうらやましーなー!」

P「まあな! 世界で一番可愛い娘だからな! うっかり名前で呼ぶのも愛の証だ!」

梨沙「あーやだやだ。アタシがパパから言われるなら良いけど、友達の親が言ってるのを聞くのはむず痒くなるわ」

桃華「わたくしたちのほうが照れてしまいますわね」

仁奈「今度仁奈も、パパとママに仁奈のことが好きか聞いてみるです!」

梨沙「で、すっかり本題から外れたような気がするけど、アンタどうするの?」

P「ああそうだ! プレゼントどうすればいいんだよ……」

桃華「そういえば…」

P「そういえば!?」

梨沙「がっつきすぎ」

桃華「この前ありすさんに、大人っぽい手袋とはどのようなものか聞かれましたわね」

P「手袋?」

梨沙「ああ、そういえばアタシも、パパがどんな手袋つけてるか聞かれたわ」

仁奈「仁奈も、パパにどんな手袋をあげたいか、ありすちゃんに聞かれたですよ」

P「そうか、手袋か! ちなみに、ありすにはどんなふうに答えたんだ?」

梨沙「茶色の革手袋」

桃華「革の手袋、ですわ」

仁奈「もこもこのポンポンがついたフワフワの手袋!」

P「わかった、大人っぽいフワフワの革手袋だな。大人っぽいはありすが好きな言葉だし、間違いないだろう」

P「みんなありがとうな、助かったぞ!」

桃華「お役に立ててなによりです」

P「よーし! これでなんとかなりそうだ。ヒャッホウ!」

ダダダダダ

梨沙「はー…。相変わらず、せわしないヤツ」

桃華「ありすさんのご苦労が偲ばれますわね」

仁奈「ありすちゃんは大変だなー」

梨沙「ところで、ありすのあの質問、自分が欲しいというより、むしろアイツにプレゼントしたいんじゃ…」

桃華「それを言うのは、野暮ってものですわよ」

仁奈「やぼ?」

桃華「つまり、ありすさんはPちゃまのことが――」

―――――――
――――
――

P「よしよし、手袋だな。これならすぐに用意できるぞ」

P「あとは、いつどうやって買いに行くかだが……」

ちひろ「あ、プロデューサーさん探しましたよ。どこにいたんですか?」

P「おっ」

ちひろ「年末進行で予定が詰まっているんですから、居場所はきちんと伝えてください」

ちひろ「それで、この後の会議について連絡事項が――」

P「ちひろさん!」

ちひろ「はいっ!」ビックリ

P「この後の会議、欠席しますから」

ちひろ「はい!?」

P「いやあ、私事で外せない用事が出来ましてですね」

P「すいませんが、後よろしくおねがい「ダメに決まってます!」バシッ

P「いてっ」

ちひろ「なにバカなこと言ってるんですか、ただでさえ忙しいのに」プンスカ

P「ですから、どうしても行かなければいけない用事がですね」

ちひろ「どうせ、ありすちゃん絡みでしょう? 安心してください、明日は私たちがしっかりとお預かりしますから」

P「いやそうだけどそうじゃなくてですね、なんとか2時間、いえ30分だけでも!」

ちひろ「ダメです! 今日明日とイベントの最終打ち合わせが山ほどあるんですから。ほら行きますよ」ガシッ

P「後生ですから! なにとぞ、なにとぞ!」

ちひろ「あさってはプロデューサーさんお休みにしましたでしょう。その時に用事をすませればいいじゃないですか」

P「あさってじゃ遅いんです! なんとか今日中、もしくは明日中に!」

ちひろ「お休み作るためにプロデューサーさんのスケジュール調整するの、大変だったんですよ」

ちひろ「そんな私を労うためにも、今はお仕事を頑張りましょうね」ズリズリ

P「うわー! だれかー! プリーズギブミーァタイーム!!」

ちひろ「はいはい、キリキリ歩いてテキパキ働きましょう♪」

P「おにー! あくまー! ちひ」ゴチン!!

P「…………」ガクッ

ズルズルズルズル

―――――――
――――
――

ぴんぽんぱんぽーん

『迷子のお知らせをいたします~。和歌山県よりお越しの楓ちゃんのご関係者様~』

『地下1階、お酒売り場にてお預かりしていますので、至急お越しください~』


P(とうとう、クリスマス当日。結局、昨日までにありすの手袋は買えなかった…)

P(今日は休みだからありすと一緒にデパートにきて、さっきこっそり大人っぽい革の手袋(ファーのモコモコつき)を買ったが)

P(今日の朝、枕元に置けなきゃ意味ないし)

P(ありす、サンタからのプレゼントがなくて、がっかりしてるだろうなあ…)

ありす「~♪」

P(…でもその割には、ご機嫌なんだよな)

ありす「どうしたんですか、お父さん。さっきから一言もしゃべっていませんけど」

P「ん? ちょっと考え事をな」

ありす「せっかくのお休みなんですから、そんな難しい顔しないでください」

P「いや、ありすは今年、クリスマスプレゼントもらえなかっただろ。だから落ち込んでるんじゃないかと思ってさ」

ありす「……はい?」

P「はい?」

ありす「なに言ってるんですか。プレゼントは、もうもらいましたよ」

P「……、え?」

ありす「おとといの朝も言ったじゃないですか。サンタさんからプレゼントはもらったって」

P「え? そうだっけ?」

ありす「そうですよ。人の話はちゃんと聞いてください」

P「言ってたっけなあ…」.。oO( >>3 )

ありす「ところで、その手に持っているものは何ですか?」

P「いやっ、これはっ」アタフタ

ありす「このブランドは……。もしかして、私が買ったところと一緒?」ボソッ

P「そのなんというかありすがいつも頑張っているからその労いというかご褒美というか別にクリスマスとか関係なく仕事も家のこともありがとうという感謝をだな」

ありす「なに言っているのか早口でよく聞き取れませんが、でも……」ゴソゴソ

P「ん? ありす?」

ありす「本当は家で渡そうと思っていましたけど、お父さんも買ってるのなら……」

ありす「はい」つ田

P「これは……」

ありす「お父さん、いつも外を走り回っていて、いつも寒そうで」

ありす「でも、手袋持っていなくて、忙しくて買いに行く暇もなさそうで」

ありす「だけど、お父さんは大人で、サンタさんからプレゼントはもらえなくて」

ありす「だから……」

P「…………」




ありす「私からお父さんへ、クリスマスプレゼント、です」


P「お、おおおぉっぉぉおおおおぉ」

ありす「ちょっ! ここは家でも事務所でもないんですから、変な行動はしないでくださいよ」

P「わ、わかってる、わかってるさ」グスッ

ありす「なら、いいですけど……」

P「ん……、ありす、今日は鼻まで真っ赤だぞ」ズビッ

ありす「お父さんこそ、涙目で鼻水まで出て、カッコ悪いです」

P「うるせえやい、赤っ鼻のトナカイ」

ありす「最近、ちょっと太ったんじゃないですか? 大きいお腹のサンタさん」

P「……ぷっ」

ありす「ふふっ」

アハハハハ

P「まあ、とにかく。父さんからもクリスマスプレゼントだ、はい」

ありす「ありがとうございます」ニコッ

ありす「……、今、開けても良いですか?」

P「もちろん。ありすのも開けるな」ペリペリ

ありす「わあっ、かわいい……」

P「おお、シックな鹿革の手袋だな。少し真面目な印象もあるか」

ありす「お父さんは、いつもアワアワしてますからね。せめて手袋だけでも落ち着いた雰囲気が出るよう選びました」

P「余計なお世話だ」

ありす「お父さんがくれた手袋も、革ですか?」

P「ああ。女性向けの一番小さいサイズだが、大人用だから少し大きいかもしれないな」

ありす「そっか。でも、革の手袋で、お父さんとおそろいですね」

P「そうだな。色も、図らずも一緒か」

ありす「これから、外に行くときは毎日つけていきます」

P「夏の間もか?」

ありす「もう、そうやってすぐあげ足を取るの、悪いクセですよ」

P「へいへい、気をつけまーす」

ぴんぽんぱんぽーん

『ご来場のお客様にご案内いたします~』

『ただいまより、館内特別企画、ホワイトクリスマスショーを開催いたします~』

『不思議なパワーで特別な雪が降りますので、どうぞお楽しみください~』


P「お、なんだ? クリスマスショー?」

ありす「……、あっ、お父さん見てください。雪が――」

    シンシン
        フワフワ
 ハラハラ

P「おお……。すげーな、本物の雪みたいだ」

ありす「手や床に当たると、ちゃんと溶けますよ。すごい……」

P「はあ……。思わず、見入っちゃうな」

ありす「そうですね……。これで、もう一つのクリスマスプレゼントも叶いました」

P「もう一つ?」

ありす「できたらホワイトクリスマスがいいなって、思っていたので」

P「なるほど。サンタクロースが聞き届けてくれたんだな」

ありす「はい」


    シンシン
        コンコン
 チラチラ


P「ところで、ありすがサンタに頼んだプレゼントって、一体何だったんだ?」

ありす「クリスマスプレゼントですか? それはですね――」



 サンタさんへ

お父さんと一緒にクリスマスをすごしたいです

                ありす

―――――――
――――
――

ちひろ「まったく。誰が“おにあくま”ですか」

ちひろ「こんなに優しくて腕の良いアシスタントは他にいませんのに」

ちひろ「ひどいと思いませんか? ねえ、ブリッツェン」

ブリッツェン「…………」ピスピス

ちひろ「ふふっ、ありがとうございます。一緒にケーキでも食べましょうか」

ブリッツェン「…………」ピスピスピスピス

---おわり---

世のお父さん全てに幸せが訪れますように。
メリークリスマス。

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