テロリスト「「「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」」」 (620)




【12月31日 午前9時】

――サッポロ駅 売店


白ドレス「おぉー! バターサンド、メロンゼリー、ルイズの生チョコにじゃがホ○ックル……」キラキラ

白ドレス「さすがはホッカイドーはデッカイドー! どれもおいしそうだなぁ~!!」ルンルン

店員「あはは。どれにしますか?」

白ドレス「んー、迷うけど……。やっぱり、定番の白い愛人を20箱!」ビシッ

白ドレス「白い愛人っていいよね。響きがアダルティー、ってカンジで。あと何より白いし」

店員「白い愛人を20箱ですね。11520円になります」ジャコジャコジャコ チーン

白ドレス「はい、20000円ですね。……。……あ、あれ?」ゴソゴソ

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・全部で600レスほどの予定です
・九日間に分けて更新します
・感想、質問等々、大歓迎です

※この作品はフィクションです。実在の人物や団体等とは関係ありません



白ドレス「お、お金が……。あんまりない……!!」ガーン

白ドレス「どどどどうしよう。あ、あるにはあるけど、いま使ったら車内販売で飲み食い出来ないよ……」

白ドレス「こ。困ったなぁ……」


紳士「おや。お会計でお困りですか? 少ないですが、私の分をお使いください」サッ


白ドレス「……! えっ、お、お金出してくれるんですか!?」パァッ

紳士「ええ。その白い愛人の数、ご友人に差し上げるのですかな? ご友人思いですな、お嬢さん」

白ドレス「お嬢さんだなんて、しかも良い声で、まったまたぁ~。……むふふぅ。事実だけどお」テレテレ


店員「ありがとうございましたー」



紳士「ふぅ……。無事に買えて良かった。良いところで会いましたな」コッ コッ

白ドレス「ナイスな紳士さん、ありがとうございました! ええ、本当に良いタイミングで会って……」コッ コッ


                            __
                        /ニ!
            l三-三l-------=-≦三]

            |‐=―T xz==ぅ :ヤ    ̄`.
            r┴┐l.|/`ヾ  ̄`丶   __ノ
            |―「l,リ./ '   Ⅵ _}¨丁
           _|_Ⅵ//.{    }} { {_ノ
          ノ:l:l:l7x彡'|   ,リ `7
            /^≧-Ⅳ`ヽ .l   ノ イ
     ---ミ_{ {   }  }└=''"} _」

   /       ̄ ̄ ̄ ̄ ミ、-- 7
  ノ              . . `¨ヽ

 ./              . : : -- イ       Π       .∠ ̄ ̄/
. /,,           . :  Ⅵ  リ    | ̄ :  ̄ ̄| ∠二  二7    _
'"                   `デ´       ̄| | ̄| |   / /   ┌ ┘! ‐┐
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  . : : : : : : : : : : : : : : . . .イ

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イ    `''<l_l_l_l>'"



白ドレス「……!」

紳士「……ええ。本当に、良いタイミングで会った」


紳士「―――動くな。妙なマネをすれば、即刻撃つ」


白ドレス「わぁーお……。ひゅう。この往来の多い駅で、よくそんなダイタンなコトするねえ」チラッ

紳士「前を見て歩け。心配せずとも、拳銃は布で隠している。不自然な動きをするな」

白ドレス「そっか、拳銃か。でも拳銃なら、運が悪いと一発じゃ死なないかもね」コッ コッ

紳士「……チッ」

白ドレス「タダより高いモノはない、ってコトですかあ。私も用心しなきゃな~」



紳士「……普通のオトナならあの場面は、気持ちだけ受け取っておきます、と言うべきところだ」

紳士「楽園暮らしが裏目に出たな。特級指名手配犯00046号」

白ドレス「……ふっふっふっ。そこまで知ってるんだ。笑えてきちゃうなあ」


白ドレス「ってコトは、アレか、君。いつも私を追っかけ回してるコネコちゃん?」

紳士「その通りです。閣下の記憶に刻んでいただけているとは、恐悦至極」

白ドレス「あっはっはぁ~。そっかぁ。どーりで聞き覚えのある声してると思った」


紳士「……本当に?」

白ドレス「うっそでーす。一ミリも疑ってませんでしたぁ」



紳士「正直でよろしい」

白ドレス「ふふ。君たちにウソなんかついたら、私たちの品位がガタ落ちするモンでね」


白ドレス「……それで? 今日は何の用?」

白ドレス「知っての通り、お金は無いよ? それに、このあと予定があるんだよねえ」


紳士「……“サッポロ発、オーサカ行き”」

白ドレス「!」

紳士「本州縦断特急。『ドライ・ブラー号』に乗車する、という予定ですか?」

白ドレス「……うわぁ~、なんでそこまで知ってるのぉ。ぞくぞくしてきたあ。なに君、ストーカー?」



紳士「仕事柄ですよ。他にもお教えしましょうか? たとえば、今日の貴女の朝ゴハンは、白身の……」

白ドレス「わーっ! いい。言わなくていい。プライバシー侵害、ダメ、ゼッタイ!」ブンブン

紳士「貴女にこの国の人権が適用されるのでしょうか? まあ、ともかくですね……」


紳士「貴女は一時間後にこの駅から出発する、本州縦断特急『ドライ・ブラー号』に乗車する」

紳士「マチガイありませんね?」

白ドレス「マチガイありませーん。ひゅーう、尋問も気合い入ってるぅー。なんなら乗車券も見せようか?」


紳士「それには及びません。それと、乗車の理由も当てましょう。……ズバリ、“見世物”の見物だ」

白ドレス「うえー。本当に何でも知ってるんだねー。胃がムカムカしてきた」



紳士「しかし、その“見世物”とは……。ひどく恐ろしく、そして熱い……」

白ドレス「そうだね。やっぱ年末年始はエンジョイしたいからさ、どっかに旅行しようと思ったんだけど」

白ドレス「今日この日なら、世界中で、ココで起きる事件が一番面白いと思ったんだ」


白ドレス「―――『ドライ・ブラー号乗っ取り爆発大炎上事件』」


白ドレス「……ね? ワクワクするでしょ?」

紳士「……なんですか、そのトンチキな名前は。事件のプロファイルに見覚えはありませんが」

白ドレス「だって私が今考えたんだもん」

紳士「そうですか、良かったですね」



白ドレス「とにかく、今日。ドライ・ブラー号が、乗っ取られ、爆発、大炎上する」

白ドレス「それはマチガイないのでしょう?」

紳士「ええ。正確には、今日の夕刻から、明日の未明にかけて、ですが」


白ドレス「……で? そんなコト私に聞いて、どうするの? さらに詳しい身辺調査?」

紳士「その列車に、私たちも乗車します。実は私のバイクも今、搬入中です」

白ドレス「ほー。なんで?」

紳士「ある指名手配犯の標的と、ある白いモノが大好きな指名手配犯の女が乗るモノで」

白ドレス「うへぇー。それって片方、私のコトでしょう」

紳士「ご明察。白いモノが好きだという自覚は、あるんですね」



白ドレス「そりゃモチロン! 空前絶後のォ、超絶怒涛の真っ白さ! 純白を愛し、純白に愛された女!」

白ドレス「それが……。私」キラッ

紳士「まぶしい。歯も真っ白いのか……」


紳士「……そして。列車に乗って、事件という見世物を見て。最後に、どうするおつもりですか?」

白ドレス「ん? 私、バッドエンドは嫌なんだよねぇ~」

白ドレス「そんなさ、たくさんのヒトが死ぬ! みたいなさ」

白ドレス「虫唾が走る、っていうか。気に入らない」

紳士「なるほど……。それを聞いて、安心しました」チャッ

白ドレス「おぅ?」



白ドレス「銃、下げちゃっていいの? 私、逃げるよ? ぴょーんと逃げちゃうよ?」

紳士「どうぞ、ご自由に。ここで貴女を逃がしたとしても、列車で再び出会う。確実に」


紳士「……それよりも。取引をしませんか?」

白ドレス「……取引? マネーがトレードでウィンウィンなアレ?」

紳士「ええ。貴女にとっても悪いハナシではないと思いますよ」ニコ


白ドレス「わっるいカオだあ。さっき騙されたばっかりなんだよねえ。信用できないなあ」

紳士「そう言わずに。すぐにヒトを信用する貴女の純粋さは美徳ですよ」

白ドレス「は、恥ずかしくなるようなコト言わないでよ。照れちゃうから」テレテレ



紳士「嫌味ですよ……。私が提供する報酬は、今回、貴女の身柄を見逃すコトです」

白ドレス「ほー。任務の片方を投げ出すとは、大きく出たね。そんなにもう片方の標的がダイジ?」

紳士「貴女なら今回逃がしても、いつでも捕まえられると思いまして」

白ドレス「侮辱ぅ!」


紳士「しかし、貴女は安心して列車の旅ができる。私たちは頼み事を聞いてもらえる」

紳士「良いコトづくめだと思いませんか?」

白ドレス「まあね。双方にとってプラスってやつだね。それで、そっちの頼み事ってのは?」


紳士「……私たちが提示する条件は二つ。一つは、私たちの任務を妨害しないコト」



白ドレス「もう片方の、指名手配犯の標的を捕まえるのをジャマするな、ってコト?」

紳士「そういうコトです。貴女の横やりには、今まで散々頭を痛めさせられてきたので」

白ドレス「むふふぅ。照れちゃうな~」

紳士「ほめてません。そして、もう一つの条件は……。そうですね、貴女風に言うのであれば……」


紳士「バッドエンドを回避するコト」

白ドレス「……!」


白ドレス「ふーん。それ、私がさっき言った目的まんまじゃん」

白ドレス「何考えてるの? 君」



紳士「さあ。何を考えているのでしょうね」

白ドレス「ポーカーフェイスだねぇ。人生楽しい?」

紳士「貴女に私の人生をとやかく言われる筋合いはありません。ほっといてください」

紳士「もっとも、貴女に比べれば、たいていの人間の人生はつまらないモノでしょうが」


紳士「……私たちの要求は以上です。呑んでいただけますか?」

白ドレス「うーん。まあ、条件に異存は無いんだけどぉ」


白ドレス「ちょいとセコくない? ゼニガタのとっつぁんが、ルパンに振り込む報酬にしてはさぁ」

紳士「なるほど。では、そういうコトを言うのであれば――――」



紳士「先ほど私が支払った11520円。返していただけますか?」ニコ

白ドレス「うぐ!!」


白ドレス「き、汚い奴だ。か、金で私を買うなんて。呪ってやる、末代まで呪ってやる……!」

紳士「それほぼ永遠ですよね。さて、どうですか? もうすぐ列車の出発の時間ですが」

白ドレス「……くっ! べー、だぁ! 覚えてろ!!」ダッ タッタッタ…


紳士「……行ったか。すごく、疲れた……」

紳士「……一年を川に例えて、一番厳しい所を皆で乗り越えるから年の瀬、だっけ?」シュボ チリチリ…

紳士「私も、お正月くらいは実家に帰ろうかなあ」フゥー



駅員「すいません、ここ禁煙です」

紳士「え? げほっ。あ、スミマセン……」


ゴーーーーーー



                          l|                 /   /
                          l|            /   /
.                        l|            /   ./   /
                           l|              /_  ./   /
                      l|           ┌ナ|:| ̄/   /
                      l|           / |:| ./  /
.                         l|         /   |:|/ ./
                       l|          /   /|:|/    ゴトン
                        l|________________/___./__|:|        ゴトン
.                        | `丶 、/ /  / /|:|
                      | ____/___`_メ_、/__/ |:|

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                    -┬┬-   /|| / /     .|:|
                  ┌┴〒 ̄〒┴┐ ||/     .|:|              本州縦断特急
                   h===.|r--i|===i|.  ||      |:|
                   ||_____||____||_____||  ||      |:|                     『 ドライ・ブラー号 』
                    |______.| i-i |______|  ||      |:|
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【12月31日 午後4時】

――6号車【食堂車】


車掌「失礼します、お客様……。午後4時になりましたので、ティータイムは終了とさせていただきます」

乗客「ん? ああ、もうそんな時間か。悪いね、車掌さん。これ、お会計だ」ガタッ

車掌「ありがとうございます。引き続き、年をまたぐ特別な列車の旅、ごゆるりとお楽しみください」


ウェイター「車掌さーん、食堂車の掃除終わったぜぇー。ああ、疲れた」

ウェイトレス「食器洗浄も、完了。日も暮れるし、休憩したい」

車掌「お二人とも、ご苦労様でした。そうですね、ではディナータイムまで私たちも乗務員室にいましょうか」



――1号車【展望車・前】 運転室


副運転士「サッポロ発、オーサカ行き」

副運転士「本州縦断特急―――『ドライ・ブラー号』!」グルッ


副運転士「この豪華旅客列車は今、今年最後にして来年最初の運行と題して」クルクル

副運転士「年の変わり目をまたぐ、スペシャルでゴージャスな列車の旅をしている!」バッ

運転士長「おいおい」


副運転士「今日の朝10時にサッポロを出発したこの列車は、22時間のあいだ運行し」ルンルン

副運転士「明日の朝8時にオーサカへ到着する予定……」タッタッ



副運転士「つまり、列車の中でハッピーニューイヤーってワケですね!!」ビシッ

運転士長「はっはっは。上機嫌そうだな」


副運転士「そりゃそうですよ! この歴史あるドライ・ブラー号が行う、今年最後の運行は……」

副運転士「まさしく、登場してからこれまでのドライ・ブラー号の集大成!」


副運転士「そして、この年の集大成は、次の年のドライ・ブラー号の第一歩でもある……」

副運転士「こんな歴史的瞬間に立ち会えるというのに、なぜ興奮せずにいられるのでしょうか!?」

副運転士「いや、興奮せずにはいられない!」ランラン


運転士長「はっはっは……。まあ、とにかく運転席につきたまえ。仮にも走行中だぞ」



運転士長「たしかに今日の運行に立ち会えるのは名誉なコトかもしれないが、私たちは乗務員だ」

運転士長「乗務員の役目は、乗客の方々に上質な列車の旅を提供すること」


運転士長「私たちがお客様以上に浮かれて、本来の職務をおろそかにしてはいけないよ」

副運転士「むっ……。たしかに。そう、私はこの列車の副運転士なのです」


副運転士「乗客の皆さんに列車の旅を楽しんでもらうコトこそが、副運転士たる私の役目の第一!」

副運転士「今日の乗車券を買った方々は、皆、楽しい年末年始の旅を期待している……。なら!」

副運転士「今までのどの年末年始よりも楽しかったと言ってもらえるような運行にしたいモノです!」

運転士長「ああ、その意気だ」



運転士長「実のところ、私も高揚している」

運転士長「今日と明日の一日は、ドライ・ブラー号にとっても、重要な二日間となるだろう」

運転士長「ドライ・ブラー号の運転を開始から見てきた私としても……」

運転士長「今日の運行を無事に終え、新たなる歩みの初めとしたいモノだよ」


副運転士「へ? 士長、この列車のコト、完成した時から知ってるんですか?」

運転士長「ああ。こう見えて、幼い頃から列車というモノが好きでね」

運転士長「初めて運転室の席に座ったのも、このドライ・ブラー号だったんだよ」

副運転士「へーえ……。ドライ・ブラー号と共に生き、ドライ・ブラー号と同じ景色を見てきた、生き証人!」

副運転士「なんだかドラマティックでロマンティックですねえ!!」



運転士長「はっはっは……。だが、そんな美談ではないよ」

運転士長「ドライ・ブラー号の歴史は、すなわち、戦いの歴史でもあった」


副運転士「は? 戦い?」

運転士長「ああ。……たとえば、このフロントガラスの窓枠。ところどころ丸い穴が開いているだろう?」

運転士長「これは運転室で銃撃戦があった時の弾痕だ」

副運転士「えぇ!?」


運転士長「また天井には、黒いシミや、刀傷が大量についているが……」

運転士長「これは戦いで傷みすぎてダメになった床板を天井に張り替えている。戦いを忘れないために」



副運転士「……あっはっは、またまたぁ~! 士長はジョーダンが上手いですねえ!」

運転士長「いや、実際にあった出来事で……」

副運転士「ぷぷー! この平和な日本で、そんなコトあるワケないでしょう」

運転士長「……他にも、謎の赤い自爆スイッチなどもあるが。まあ、平和であるに、越したことはないがね」


運転士長「とにかく、長かった一年も、今日が最後だ」

運転士長「今年最後の運行も、何事もなく終わる、いつも通りの運行にしたいモノだな」


副運転士「そうですね! まあ、今年一年何も無かったし、今日も何も無いと思いますケド」ギシッ

運転士長「いや、油断はキンモツだ。事件は忘れた頃にやってくる」



運転士長「それが、このドライ・ブラー号だ……」

副運転士「またまた。おどかして~」


副運転士「ああ、夕焼けがキレイだなぁ……。トワイライト、っていうんですか?」

副運転士「まるでドライ・ブラー号の晴れ舞台を祝福しているかのようです!」

副運転士「こんなにも日の入りが幻想的で美しい大晦日に、何かが起こるハズが――――」


バンッ

白ドレス「起こるんだなぁそれが!!!」


副運転士「どぅっ、えっ!? わったっ、たったったぁぁああ!!」ガタタッ ドシン!!!



運転士長「……!」ガタッ


白ドレス「そこな乳臭いガール、知ってるかな? 薄暮とはつまりタソガレ、オーマガドキ!」

白ドレス「彼は誰だ、ニンゲンか? と書いて誰彼。魔に逢うと書いて逢魔時」

白ドレス「昼と夜のキョーカイがアイマイになる時間にこそ、ヤバいのはいっぱい出る!」


白ドレス「そうっ! 私のように!!」ビシッ

副運転士「わ、私のようにって、何イバってんですか! あ、痛た……」

副運転士「それに乳臭いガールってなんですか! み、見た目同じくらいに見えますけど歳!?」

白ドレス「木を見て森を見ず、井の中の蛙大海を知らず。知性足りてないよ、ガール」



副運転士「はああああッ!? さっきからガール、ガールって何なんですか、ムキー!!」

運転士長「怒る所そこかね、君……」


運転士長「……ここは関係者以外は立ち入り禁止だ。ましてや列車の中枢を司る運転室」

運転士長「何人であれ外部の者の侵入は許されない。お引き取り、願おうか」

白ドレス「おや? 私も乗客ですよ、眼帯のクミチョーさん。そんなにゾンザイに扱ってもいいのかな?」

運転士長「士長だ。……礼儀なき乗客に、向ける敬意などあるまいよ」

白ドレス「すごい。カタブツだ。私好きだよ、そういうの。ラストサムライ、ってカンジで」コッ コッ


白ドレス「うん。良いヒトたちだね、アナタたち。合格です。それじゃあ、簡潔に伝えましょうか」カタッ



運転士長「……? いったい、何を……」


白ドレス「―――今日この日、何らかの理由により、この列車は爆発する」


副運転士「は?」

運転士長「……!」


白ドレス「うーん、もうちょっと詳細に言おうか?」

白ドレス「今日この日、このドライ・ブラー号は、乗っ取られ、爆発、大炎上する」バッ

白ドレス「ああ、いや……。正確には、今日の夕刻から、明日の未明にかけて、だっけ」

副運転士「全然詳細じゃァありませんけどッ!!?」



白ドレス「なるほど! たしかに信じられないかもしれない! 事実、私の言っているコトは荒唐無稽だ!」

白ドレス「だけど……。それがこの列車の運命というモノ、です」


白ドレス「南無三!!」パチン


副運転士「……。な、なんなんですかこのヒト……」

運転士長「わからん……。アヤしいモノでも服薬しているのかもしれんな」

白ドレス「あーッ! いま私のコト、ヤク中扱いしたでしょ!? 迂遠に言ってもわかるんだから!」


白ドレス「最近の若い奴ってのはさぁ、ワケわかんないコトがあるとすぐ解決を科学に頼るよね!」

白ドレス「そういうのいけないと思うよ! たまにはオカルトを信じて、諦めるのもダイジ!」



副運転士「うわぁ……。なんか若者批判はじめましたよ。私と同年代のクセして」

副運転士「しかもオカルトマニアですよ。ワタシ霊感があるのー、とか言っちゃうやつですよ」

運転士長「うむ……。他の乗客の不安をいたずらに煽ってもいけない。留置室に放り込むか」

白ドレス「え? この列車、留置室とかあるの? 何それ鉄格子? こわ!!」


運転士長「さあ、ご同行願えるか」ズイッ

白ドレス「や! イヤだよ! せっかく楽しい旅を期待して乗車券買ったのに――――」バッ

副運転士「……!」

白ドレス「なんでブタバコにぶち込まれなきゃいけないかなあ!」

運転士長「そうは言ってもだなあ……。ヘンなウワサされるのもイヤというか……」



副運転士「―――待ってください。士長」

運転士長「どうした?」

副運転士「私。……この人のコト、少しは信じようと思います。爆発というのは、いつ起きるんですか?」

運転士長「……正気か?」

白ドレス「おお、感心感心。最近の若いのも、捨てたモンじゃないね。でも――――」


ドゴォォォン…!!!


副運転士「うわっ……!?」グラッ

白ドレス「……もー、はじまっている」



――8号車【ロビー】 屋根の上


…バラララララ


昼と夜が混じり合う、この薄暮の時間。世界を侵食せんとする宵の色にまぎれて、
迷彩に姿を隠した一機のヘリコプターが、ドライ・ブラー号の上空に迫っていた。


パイロット「目標地点、到着。すぐに降下しますか?」

キノコ頭「ああ、今すぐ飛び降りる。……お前たち、準備は良いか?」


テロリストA&B「「準備オーケーです!!」」

テロリストC&D「「いつでも行けます!!」」



キノコ頭「……よし。それでは、作戦を開始する」

パイロット「我らが悲願、作戦の成功を祈る。グッドラック」

キノコ頭「―――ああ、必ずや我らに勝利を。グッドラック」

バッ!!!


スタッ スタッ スタッ スタッ スタッ

キノコ頭「……全員いるな?」

テロリストA「はい、間違いなく」

キノコ頭「……武器、爆薬は?」

テロリストC「ここに、ありったけ! さっそく脅迫用の爆弾も設置しました!」



キノコ頭「問題ない」


バラララララ…


キノコ頭「……行ったか」


キノコ頭「……もう一度確認しよう」

キノコ頭「今から我々は、この本州縦断特急『ドライ・ブラー号』を襲撃する」

キノコ頭「なぜなら。“最強の兵器”を開発したという、若き天才科学者、通称“教授”が――――」

キノコ頭「今日、この列車に乗るという情報を手にしたためだ」

キノコ頭「…………」



キノコ頭「……このミッションから、降りるなら今のうちだ」

テロリストB「!」

キノコ頭「……先の戦争に、我々は敗北した」

キノコ頭「我々は敗北し、多くの同志を失った」

キノコ頭「もし同志たちがこの場にいたならば……。我々の短絡的な行いを止めるかもしれない」

キノコ頭「我々は戦争に敗北した。その事実を、甘んじて、粛々と受け入れるべきだと」

キノコ頭「……、……」


テロリストD「……もとより承知の上です」

キノコ頭「!」



テロリストA「……俺たちは、そんなコトはすべて呑み込んだうえで、今ここにいます」

テロリストB「俺は、敗北は認めますが……。だが、それでも奴らの行いを許せない」

テロリストC「我ら戦争の生き残り、それぞれ動機は違えど、目的は同じです」

テロリストD「一蓮托生ってやつですよ。まったく、今さら、リーダーらしくもない」

キノコ頭「……。お前たち……」


キノコ頭「ああ、ならば行こう。もはや迷いはない」

キノコ頭「俺たちは、この一日で歴史を変える。敗北を覆す。悲願を現のモノに」


キノコ頭「―――教授の持つ、“最強の兵器”を、この手にして」



――7号車【ラウンジ】


教授「“最強の兵器”、ねぇ……」ブラブラ

執事「あっ、そういえば。結局完成したんですか? 例の、“最強の兵器(仮)”とやら」

教授「ううん。一文字の、仕様書案すらも書いてない」

執事「まじですか」


執事「……どうするんですか? 明日オーサカについたら、昼には“最強の兵器(仮)”の発表会ですよ?」

執事「やばくないですか?」

教授「うん、やばい。8月31日なのに夏休みの宿題に何も手つけてないくらいやばい」



執事「はあ。そりゃまた、古典的な例えで。でも、今年の夏もたしかそんな……」

執事「…………」


執事「……まさか」

教授「そう、やばい。実は、リアル高校の冬休みの宿題も何も手つけてない」

執事「うわ。終わってる、この人」

教授「大丈夫! まだ私、若いし、未来があるから」

執事「いま科学者としての貴女が社会的に死にますよ……」

教授「勉強と仕事の両立って、むずかしいよね……」

執事「ハナシを逸らさないでください」



執事「まったく。俺も手伝いますから、列車がオーサカにつくまでに終わらせましょう」

教授「おっ、わっかるぅー。じゃあ、こっちの数学の宿題お願い」ドサッ


執事「やれやれ。……って、“最強の兵器(仮)”のほうじゃないんですか!?」

教授「いやあ。私の担任の、数学教師、コワくってさぁ……」

教授「あのマッチョに怒鳴られるくらいなら、記者会見で叩かれたほうがマシっていうか……」

執事「くっそ神経の図太いお嬢様をビビらせるほどの方ですか。一度会ってみたいモノです」


執事「……で、“最強の兵器(仮)”のほうは? どうなさるんですか?」

教授「そっちはね、努力じゃなくて、ヒラメキだから……。あ、そこのき○この山、取って」



弓使い「……ねぇ、剣ちゃん、オーサカにはまだ着かないの~?」

剣使い「あ? あと16時間くらいだな……」

弓使い「長! 列車の旅、長!! やっぱ飛行機のほうが良かったんじゃないのぉ~?」


剣使い「姐さん……。なら、一つ訊かせてもらうが」

弓使い「おう。おねーさんに何でも訊いていいんだぜ」ドンッ

剣使い「ポストに入ってた招待状見つけて、オーサカ行きたいー、って言ったのは誰だった?」

弓使い「ギクゥ!!」


銃使い「…………」ガシュガシュ



弓使い「そ、それはぁ~。一時の、気の迷いっていうか~……」

剣使い「やっぱ時代は山だよね、とか、山の風景がどうたら言ってた姐さんはどこ行ったんだ?」

弓使い「死にました。山でお腹は膨れません」

弓使い「やっぱ時代は食だよね。たこ焼き、お好み焼き……。さすがはオーサカ、食の都」

剣使い「オーサカ着いてから、やっぱ時代は海だよねとか言ってオキナワに行かないコトを祈る」

弓使い「そうだなあ、オキナワもいいよね」


剣使い「しかし、列車に乗ってると腕がナマるのも事実だな……。どこかに、模擬戦闘室はないものか」

剣使い「なあジュー、お前付き合わないか?」

銃使い「…………」ガシュガシュ



剣使い「……まーた食ってんのか?」

銃使い「うん」

剣使い「うまいか? それ」

銃使い「隊長も食べる? おいしいよ」

銃使い「たけ○この里」


剣使い「…………」

剣使い「いや、いいや。俺、甘いの苦手だしな」

弓使い「あ、じゃあ私は一個もらおーっと」

銃使い「はい。あーん」



弓使い「あーん。むふふ、銃ちゃんかっわい~♪」ナデナデ

銃使い「…………」ポフポフ


コロコロ…


剣使い「ん?」


教授「あー、き○この山、一個落としたー」ボリボリ

執事「何やってんですか、もー。ええと、たしかこのへんに……」ボリボリ

教授「き○この山食べながら喋ると汚いよ」ボリボリ

執事「お嬢様に言われたくはありません!!」ボリボリ



剣使い「おい……。もしかして探してるのは、コレか?」

キラーン


教授「ああ、それそれ! 見つかって良かった、ありがとうお兄さん」

教授「でも落としちゃったから、もういいや。お兄さんにあげる」

剣使い「え……。いや、一度床に落としたモノをヒトに勧めるのは、俺でもどうかと思うぞ……」


執事「お嬢様。そういう少しの油断が、週刊誌に隙を与えるのですよ。謝って下さい。私からもすいません」

教授「そうだね。ごめんなさい」

剣使い「なんかセツジツな理由だな……」



剣使い「しかし、じゃあコレどうしようか……。食べてもいいが、俺、甘いの苦手だしな……」

銃使い「じゃあ食べる」パク

執事「あ」


銃使い「おいしい」ボリボリ

教授「え。ちょっと、食べて良かったの……?」

銃使い「うん」ゴクン

執事「そうですよ。この発明オタクで鈍感な頭ネバーランドのお嬢様のき○この山を……」

教授「ごめん今日ちょっと言い過ぎじゃない?」

弓使い「あ、き○この山食べてるの? いいなー」



執事「おや。良かったら、き○この山食べますか?」

弓使い「え? いいの!? うれしーなー!」

銃使い「うん。じゃあ、こっちはたけ○この里を」


教授「うーん。なんか、ヒラメキそうなヨカン……。ヤカン……。ガッチャン?」

剣使い「お。なんだか難しそうな勉強してるな」

執事「そうなんですよ。ホント、最近の数学って難しくって……」ガシュガシュ

弓使い「よし、おねーさんが勉強を見てあげよう。どれ……。ごめん、無理」ボリボリ

銃使い「とりあえず代入だよ」ボリボリ

教授「私が手伝えればいいんだけどね~」ガシュガシュ



――8号車【ロビー】


スタッ スタッ スタッ スタッ スタッ



革ジャン「……ん?」

黒コート「……? どうかしたか?」

革ジャン「いや。今、なんか……」


革ジャン「ケータイの電波調子悪くね?」ブンブン

黒コート「本当だ。電波強度が弱になってる」



革ジャン「俺のもアンテナ一本しか立ってねえな」ブンブン

黒コート「アンテナ……? ともかく、トンネルにでも入ったか?」


ゴトン ゴトン


黒コート「……入ってないな」

革ジャン「く、くそ。ガキ使の前番組の総集編観てたのに、いいところで切れやがって……!」

革ジャン「ゆるせん! 俺の職務権限で、この列車、回線の速い電波に付け替えさせてやる!!」ガタッ

黒コート「お前にそんな職務権限ないぞー。ほら、ガキ使ならロビーのテレビでも観れるだろ」

黒コート「スミマセン、お姉さんー! テレビのチャンネル、ガキ使にしてもらってもいいですかー?」



フロント「テレビのチャンネルですか? ええと……」

フロント「すいません、そこのお客様、テレビのチャンネルを変えても構わないでしょうか?」


魔族A「えっ!?」

族長「……ああ、構わない」


フロント「では、失礼して……」ピッ

テレビ「デデーン マツモトー アウトー」


フロント「これでよろしかったでしょうかー?」

黒コート「あ、ありがとうございますー。……ほら、これで良かったか? 革ジャン野郎」



革ジャン「いや、ガキ使は、もういい……」

革ジャン「それよりも電波が悪くなった原因がわからなくてモヤモヤする……!」ガシガシ

黒コート「おいおい」

革ジャン「よし、俺は窓から屋根の上に登って原因を調べる! ココは任せたぜ、センパイ!」ガタガタ

黒コート「は? 屋根の上? なんで!?」ガタッ

革ジャン「バカと煙は高いトコと決まってる! 犯人がいるなら、マチガイなく上だ!」ガラッ

革ジャン「よいしょっとー!!」ヨジヨジヨジヨジ


黒コート「…………」

黒コート「はっ、まったくその通りだな……」ドサッ



黒コート「ココは任されちゃったよ、ったく」

黒コート「それにしても、全然それらしい奴が通らないな……」

黒コート「まあ、バカ正直に仮面なんていつも被ってるワケないか。何か他の方法考えないと……」


族長「手始めに、隣の車両の者たちに訊いてみる。行くぞ」ガタッ

魔族D「行動の精神、マジリスペクトっす!」


黒コート「あの乗客とか、体青いし、めっちゃアヤシイけど」

黒コート「体青いなんて特徴聞いてないし」チラ


黒コート「……っくっく、ガキ使ってなんで昔からこんな面白いんだろうな」



族長「…………」


族長「……夜か」ギン

魔族A「ええ! 体に、魔力があふれてきます……!」

魔族B「あと一刻もすれば、万全の状態になるかと!」


族長「ふむ……。昼間の人間界では魔力が生成できない、というのは本当か……」

族長「だが、それでこそ。不利な条件でこそ、我らがニンゲンに勝ると証明できる」

魔族C「族長、シブい……!」

魔族D「不屈の精神、マジリスペクトっす!」



フロント「テレビのチャンネルですか? ええと……」

フロント「すいません、そこのお客様、テレビのチャンネルを変えても構わないでしょうか?」


魔族A「えっ!?」

族長「……ああ、構わない」


魔族B「テ、テレビのチャンネルを変える、だと……!?」ザワッ

魔族C「テレビとは何だ……? よもや、ニンゲンの妖しげな魔術では……」ガタガタ

魔族D「族長……。まったく動じていませんでしたが、テレビをご存知なのですか!?」

族長「わからん」



族長「だが、そこの板を見てみろ」

魔族A「……?」


テレビ「デデーン マツモトー アウトー」


魔族A「……これは?」

族長「板の中で、マッチョが尻を叩かれているだけだ」

族長「我々にとって、さしたる害も無い。ニンゲンの為すコトには意味の無いコトも多い」

族長「ゆえに。ニンゲンの一挙手一投足事あるごとに怯える必要は無い」

魔族A「……た、たしかに……!」



族長「それよりも。我々は、魔力の満ちた今こそ」

族長「この列車に乗った意義を果たす必要がある」


魔族A「はい……。先週、我らはニンゲンどもに召喚され、奴らの戦争に巻き込まれかけました」

魔族B「しかし、ニンゲンどもが我ら魔族に敵うハズもなし。その場で撃退した、それはいいのですが……」

魔族C「奴ら! 我らを召喚しておきながら、我らの信念を侮辱した!!」

族長「ああ。しかし、奴らの信念もまた、ホンモノ……。であれば、最後にモノを語るのは、チカラだ」グッ

魔族D「聞けば我らを召喚したニンゲンの一派、明日の昼にオーサカで何やら発表会を行うとのコト」

魔族D「そして折りしも運行していたのが、オーサカ行きの、この列車! まさしく、僥倖!」

族長「そう。その発表会を我らが潰し、我らの信念を宣言する。それでこそ、恥辱はそそがれる」



族長「しかもこの列車、かつて多くの同胞が狙い、そして返り討ちに遭った……」

族長「超級の魔力塊を搭載し、動力源にして走る火薬庫、『ドライ・ブラー号』だという」


族長「ならば……。手始めに、同胞たちの誰もが為し得なかった、この列車の魔力塊の強奪を果たす」

族長「そして! その魔力塊のチカラを利用し、ニンゲンどもの発表会にて覇を唱える……!」グッ


魔族A「しかし。その、魔力塊を搭載している動力源とやら……。この列車の、いったいどこに?」

族長「わからん。だが、わからなければ、この列車の者に訊けばよい」

族長「手始めに、隣の車両の者たちに訊いてみる。行くぞ」ガタッ

魔族D「行動の精神、マジリスペクトっす!」



――7号車【ラウンジ】 屋根の上


ザッ ザッ ザッ ザッ

テロリストA「……リーダー! ターゲットの教授を発見しました! この真下です!」

テロリストA「コチラに気付いた様子はありません。仕掛けますか?」

キノコ頭「ああ。ならば、今すぐ襲撃する。我らの栄光を、ここから始めるとしよう――――」


革ジャン「―――いや、ここで終わるんだよ」

キノコ頭「……!? 何者だ!」

革ジャン「俺の電波を遮った罪は重いぜ。―――死んで詫びろや」チャッ



――7号車【ラウンジ】


ザッ ザッ ザッ ザッ



教授「……あれ?」

執事「……? どうかしましたか?」

教授「いや。今、なんか……」


教授「ケータイの電波調子悪くない?」ブンブン

弓使い「本当だ。電波強度が弱になってるね」



教授「せっかくゴーグル先生に英語の翻訳訊こうと思ったのに」

執事「あのですね。お嬢様は外国の方と話す機会も多くなるのですから、これから苦労しますよ」

教授「ふーんだ。今の英語でも十分苦労してるもーん」


剣使い「あ、すまねえマスター。ノド渇いてきたから、飲み物が欲しいんだが。コーヒーあるか?」

マスター「ございますよ。他の方々は、いかがですか?」

弓使い「あ、私お酒ほしいな! でもまだ夕方だし、シードルでいいや」

執事「水で」

銃使い「トニック」

教授「……シ、シードル? トニック? あ、私はコーラで……」



――7号車【ラウンジ】~8号車【ロビー】 連結部


族長「さて……。人間界で扉の向こうの者にモノを尋ねる時は、どうするのだったかな」

魔族A「たしかノックを2回するのでは?」

魔族B「それトイレじゃね?」

魔族C「4回が礼儀正しいんだっけ」

魔族D「それ逆にうるさくないか?」

族長「ふむ……。迷うな……。人間界の乗り物では、強く扉を開ける時に何か礼儀があると聞いたが」

魔族A「ああ、そういえば。強く扉を開ける行為は、ハイジャックというらしいですね。知りませんけど」

族長「ハイジャック……。悪くない響きだ。今日はそれでいこう。―――行くぞ!」ガチャッ



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第一章「薄暮・前」は以上になります。
列車の旅、あこがれます。

第二章は、明日12/24(日)の18時ごろ開始の予定です。

なんかすごい

レスありがとうございます。

それでは、第二章「薄暮・後」を開始します。
60レスほどの予定です。



――7号車【ラウンジ】


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弓使い「っ!」クルッ

銃使い「―――!」バッ

剣使い「……!」チャキ

執事「…………」スッ

教授「え? 何!?」


ドカドカドカドカ

魔族A「やいやいやい、動くな!」

魔族C「動くんじゃないぞ!!」

族長「…………」ザッ



教授「何、アイツら……? 体が、青い……」

弓使い「……アイツらは魔族だね。この世の裏側、魔界に住む住人。いわゆる悪魔ってやつだ」

執事「魔族!? そんな存在が、実在……」

剣使い「あれは魔族でも青鬼族ってやつだな。……おい、まだ撃つなよ。まだ」

銃使い「…………」


魔族B「へへッ! 族長、奴らビビって動けやしませんぜ!」

魔族D「族長、一発キメゼリフお願いします!!」

族長「……ああ。そうだな」

族長「…………」



族長「―――ニンゲンどもよ。貴様らの長は、誰か」

執事「……お嬢様。お下がりを」ザッ

剣使い「俺……、ってコトでいいぜ。魔族のオッサン。何の用だ?」

族長「我らのコトを知っているか。ならばハナシは早い。我らの問いに、答える用意はあるか?」

剣使い「問い? 降伏するか、ってぇ問いなら……。首をタテには降れねぇなあ」

族長「……そうか。ならばこう言うしかあるまい」スゥゥゥ…


族長「脆弱なるニンゲンどもよ! 魔界の炎に怯え、神妙に聴くが良い!!」ボオオオオッ


族長「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」



剣使い「―――ハ、ハイジャックだと!?」

執事「口から炎を!?」

銃使い「……!」バッ

弓使い「皆、逃げるんだ! 部屋が炎にまかれる!」

教授「炎も青いんだ。すごいなあ……」


魔族A「出たーッ! 族長の必殺、青い炎!」

魔族B「この炎にビビらず立ち向かってきた奴はあんまりいないぜ!」

メラメラ メラメラ

族長「今の宣言と、この炎を前にしてなお、臆せぬならば……。その勇者のみ、かかってこい」



――7号車【ラウンジ】 屋根の上


革ジャン「俺の電波を遮った罪は重いぜ。―――死んで詫びろや」チャッ

テロリストB「で、電波だと? 何の話だ!」

テロリストC「死んで詫びろだと? ナメた口を……」

革ジャン「死ね!!」バンバンバン


テロリストD「ぐぁッ!!」

キノコ頭「ぐっ……。拳銃を持っているだと……? 貴様、何者だ!?」

革ジャン「俺かい? 俺は――――」



革ジャン「―――ただのおまわりさんですよってね」


キノコ頭「パトロール!? 俺たちの動きを、どうして知って……」

革ジャン「おっと! パトロールと聞いて弁明しない! それすなわち、悪人ってコトだ」

革ジャン「ならば悔いは無いな? それじゃあ……」

メラメラ メラメラ

革ジャン「……お? あ、熱つッ!!」バタバタ

キノコ頭「なんだ、コレは……? あ、足下が燃えている!?」バッ

キノコ頭「おい、パトロール! お前の仕業か!?」

革ジャン「いや俺知らね」ブンブン



テロリストA「た、大変ですリーダー! 持ってきた爆薬に引火します!!」

シュボッ

キノコ頭「い、引火!? そりゃ、お前、まさか、ば―――、ばくは――――――」


                                            _                                  _.  _   _
                               ヽ`              | | ロロ                              | | | | | |
                              ´               | |_   __ロロ   _       _     _      _    | | | | | |
                               ´.              .| __|   |   |.  _| |_  _| |_   _| |_   l二l | |   |_| |_| |_|
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  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
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――7号車【ラウンジ】


ドゴォォォン…!!!

剣使い「ば、爆発!?」

族長「何事だ!?」


革ジャン「うわああああッ! 落ちるううううッ!!」ヒュウウウウ

キノコ頭「くそがああああああああ!!!」ヒュウウウウ


ドサッ ドサッ ドサッ ドサッ

教授「空からヒトが!?」



テロリストA「いてて。リーダー、大丈夫ですか!?」

キノコ頭「あ、ああ。なんとか」


キノコ頭「……? ここは……。―――はっ!!」

教授「……?」


テロリストB「……! いました、教授です!」

教授「え、私!?」

キノコ頭「く、この状況だが、やむを得まい……。こら、聞け!!」パァン


キノコ頭「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」



弓使い「え!」

執事「またハイジャック犯!?」

キノコ頭「ま、また!? い、一体どういうコトだ!!」

族長「あ……。何やら悪いな。我々が先にこの列車をハイジャックしてしまった」

教授「ハイジャックに後も先もないと思うんだけど」

テロリストA「何やらものすごい場所に来てしまった」

革ジャン「いてて……。何がどうなっていやがる?」

魔族A「人間界ってニギヤカだなあ」

剣使い「ど……、どうすんだこの状況!?」

銃使い「…………?」



――13号車【展望車・後】


ドゴォォォン…!!!


ヒーロー「……。始まったか……」


ヒーロー「午後4時過ぎ、ラウンジカーでの謎の爆発から、この事件は始まる」

ヒーロー「ここまでは歴史通りだ……」

ヒーロー「だが、このままではいけない」


ヒーロー「誰かがこの歴史を変えねばならぬ!!」



ガチャ


車掌「な、なんですか今の爆発は!?」ダッ ダッ

ウェイトレス「誰かがデッカいオナラでもしたんじゃないのー」

ウェイター「爆音くらいで、いちいち騒ぐこたぁないって。それよりオジサン、昼寝の続きがしたいなぁ」

車掌「いや、どう考えても一大事でしょう! もっと危機感持っていただけますか!?」


ヒーロー「ふふふ……。その通り!」

車掌「な!?」

ヒーロー「―――とう!!」バッ



ヒーロー「すたっ」


車掌「な……。なんですか、あなたは!?」

ウェイトレス「全身ポリマースーツの赤色仮面だ」

ウェイター「まごうコトなき変態だな、ありゃ」


ヒーロー「私は変態さんではなァァいッ!!」ビシッ

ヒーロー「そう、私は。言うなれば、そう……。正義の味方! そう、なので、ゆえに……」


ヒーロー「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」



車掌「―――は?」

ウェイトレス「いま正義の味方って言ったよね?」

ウェイター「正義の味方ってハイジャックするモンだっけか?」


ヒーロー「ふふふ……」

ヒーロー「私のまさかの発言に、度肝を抜かれているな……」


車掌「なんだかよくわかりませんが……。彼を縛り上げてください」

ウェイトレス&ウェイター「「はーい」」

ヒーロー「……あれ?」



――7号車【ラウンジ】


教授「……状況を整理しよう」


キノコ頭「この列車をハイジャックしようと思ってたら、突然炎にまかれて爆発した」

剣使い「学生のお姉ちゃんの問題解いてたら、突然魔族がやってきて爆発した」

革ジャン「俺の電波を遮った不届き者を撃ったら、突然床が爆発した」

族長「この列車をハイジャックしたら、突然屋根が爆発した」


教授「一度に喋るな!!」

銃使い「…………」ガシュガシュ



キノコ頭「……?」


キノコ頭「待て、チビッコ。お前、何を食っている?」

銃使い「たけ○この里。食べる?」

キノコ頭「……! ……クククッ、そうか」


キノコ頭「……クククッ、クハハハハッ……! 何たる巡り合わせ、何たる因果……!!」

テロリストA「リ、リーダー……? どうかしましたか?」

キノコ頭「おい、お前たち、予定変更だ。最初の標的を変更する」

キノコ頭「まずはコイツを消さねば、俺たちのハイジャックは始まらない」クルッ



キノコ頭「売り上げという名の暴力でき○こ派を追いつめ、俺たちを壊滅に追いやった悪の菓子……」


キノコ頭「たけ○この里を滅ぼさねば、俺たちのハイジャックは始まらないのだ!!」ビシッ


剣使い「……な? んだと……?」

キノコ頭「先週の、き○こたけ○こ戦争は、俺たちき○こ派の敗北に終わった……」

キノコ頭「だがココに、き○こたけ○こ戦争を真に終わらせる、“最強の兵器”があるという!」

キノコ頭「教授からソレを奪うのが、俺たちのハイジャックの目的だ」

教授「……なるほどね。そういうコト」


革ジャン「―――ちょっと待てよ。今のハナシ、聞き捨てならねえな」



キノコ頭「何?」

革ジャン「き○こたけ○こ戦争? とかいうのは初耳だが……」


革ジャン「―――俺はどっちかっていうと、たけ○こ派だ」


キノコ頭「―――何だと?」ピクッ

革ジャン「で、お前ら、き○こ派のうえ、俺のケータイの電波妨害まで行った……」

革ジャン「これはもう、まぎれもない悪だよな?」チャッ

キノコ頭「ほざいたな、政府の犬が……!!」チャッ


族長「―――くだらぬ」



剣使い「……!」

族長「くだらぬ。……実にくだらぬ」

族長「人間界に召喚されてみれば、どいつもこいつも、き○この山、たけ○この里と」

族長「実にくだらぬ」


キノコ頭「何だと……? 貴様にき○この山の何がわかる!」

革ジャン「ほう。俺にたてつくなら、かかってこいよ」

族長「き○この山? たけ○この里? はっ、笑止千万――――」


族長「チョコ菓子ならアル〇ォートが至高に決まっておろうがァァァッ!!!」



執事「アル、○ォート……っ!?」

族長「たけ○こ派のニンゲンどもは、先週我らを召喚し、き○こたけ○こ戦争への参加を要求した」

族長「だが、魔界では、アル○ォートこそ至高と決まっている。アル○ォート以外あり得ない」

族長「ゆえに、明日の発表会を潰し、アル○ォート派こそ最強と示すつもりだったが……」

教授「ええええ」

族長「これは捨て置けぬ。捨てては置けぬ。き○こ派、たけ○こ派――――」


族長「両者が同じ場にまみえたならば、アル○ォート派としての誇りを示すまで!!」

魔族A「族長、カッコイー! き○こもたけ○こもぶっ潰せ!!」

弓使い「アホだ、このヒトら」



キノコ頭「俺たちの肩には、き○こ派の命運がかかっている。ココで退くワケにはいかない……」

革ジャン「たけ○こ派とかいうのに義理立てする気はないがよ。声がデカいぜ、お前ら……」

族長「やはりニンゲンどもには、アル○ォートの素晴らしさはわからぬか……。ならば、チカラで示すまで」


弓使い「……ちなみに、どのお菓子もおいしいジャン、というワケには、いかない……?」

キノコ頭「ナメてんのか」

革ジャン「いくワケあるか」

族長「強い奴が一番強い」

弓使い「でっすよねー」

銃使い「…………」ボリボリ



執事「……大変なコトになりましたね、コレは」

教授「うん、大変なコトになった。私の知らないところで」

執事「お嬢様が“最強の兵器(仮)”をさっさと完成させないからですよ。このヒトたちが集まったの」

教授「ううう。責任重大だあ……」


剣使い「……あー、なんだ」ゴトッ

剣使い「き○こだ、たけ○こだ、アル○ォートだ、そんなのは知らねえが」

剣使い「魔族のオッサン。最初に仕掛けてきたのは、アンタだ」ビシッ

族長「!」

剣使い「臆せぬ勇者はかかってこい、と言ったな。ならば俺が、相手になろう」チャキ



族長「……いいだろう、ニンゲン。き○こ派でもたけ○こ派でもない身で、よく吠えた」


族長「貴様の得物は長剣か。ならば、俺も正々堂々、シャムシールだけで応じよう」ジャキ

族長「かかってこい、ニンゲン。その器、真に勇者を名乗るに値するか、見極めてやろう」

剣使い「……あとで吠え面かくなよ、魔族。少しは俺を楽しませろ」


剣使い「…………」ジリジリ

族長「…………」ジリジリ

剣使い「……いざ」


剣使い&族長「「勝負ッ!!」」バッ



――8号車【ロビー】


ドゴォォォン…!!!


黒コート「うわっ! なんだ、爆発!?」ガタッ


黒コート「か、仮面の男の仕業か……!?」

黒コート「ねえお姉さん、いま揺れましたよね!?」

フロント「ええ、揺れましたね。おそらく、先ほどの魔族のお客様のせいではないでしょうか?」

フロント「この列車では、よくあるコトですよ」

黒コート「よくあるコトなんだ」



黒コート「すぐ近くだったな。7号車か……? いったい、何が起こって……」


バン!!!

黒コート「な!?」


バッ ヒュッ ドタン

剣使い「ふっ!!」キン キン キン キン

族長「なんのッ!」カン カン カン カン

ズザァ!!!


黒コート「き、斬り合い!? なんだなんだ何なんだ!!?」



7号車で始まった剣使いの男と、青鬼族の族長の一騎討ちは、数合打ち合う内にもつれ合い、
戦いの場を7号車から隣接する8号車へと移動させる。

扉を開けると同時に、剣使いがもんどり打って8号車になだれ込む。
空中で族長のシャムシールの切っ先が剣使いの鼻をかすめるが、受け身をとって姿勢を立て直し、
長剣とシャムシールが打ち合うこと一度、二度、三度、四度。

四度目の激突は両者にとって重い衝撃になったのか、直後に両者は後方へ飛びすさる。


剣使い「ハァ、ハァ……」

族長「……、……」


剣使い「なかなか、やるじゃねぇか。魔族のオッサン」

族長「……ソレはコチラのセリフだな。ニンゲンの剣士よ」



剣使い(……こりゃあ、なかなかヤベェ奴にケンカ売っちまったな)

剣使い(同じ体格の、同じ武器の、同じ戦法の人間の敵と戦うのとでは、ワケが違いすぎる)

剣使い(内包するパワー! 桁違いの膂力! 振り下ろされる斬撃の重さ!)

剣使い(すべてが、人間のソレを優に上回る……。俺に勝てるのか!?)


族長(このニンゲン……。生白い小僧かと思ったが、認識を改めねばなるまい)

族長(奴は間違いなく、幾多の修羅場を切り抜けた戦士だ。奴の剣技がソレを語る)

族長(自らの得物である片刃の刀の特性を知り尽くした、間合い、斬り込み、攻撃のいなし方)

族長(ただの力押しでは、永劫勝負がつかぬ。……剣一本で十分と侮った己が慢心よな)



族長(……ならば)グッ

族長「―――ふっ!」ダッ

剣使い「くるか!!」チャキ

バッ!!


剣使い(……踏み込みが浅い! 体力が切れたか!? やはり消費するパワーは比例するのか……)

剣使い(いずれにしろ、コレが好機! 取って返せる!!)グッ


剣使い「浅いぞ! もらッ――――」

族長「…………」ニヤ



剣使い(なッ―――!?)


静寂を破った族長の右足の踏み込みは、たしかに浅かった。
それは事実である。

だが剣使いは、それを、体力が減った故の息切れと解釈した。

―――経験の差。

人間と魔族の違いなどではない、戦士としての経験の差が、
隙を作らせたと感じた剣使いに隙を作ったのだ。

この場に族長と同等の力量を持つ戦士がいたならば、叫んだだろう。
いや。族長と同等の戦士であれば、たしかにこの場一人、居合わせた。


黒コート「違うぞ坊主! 青いのの狙いは―――、フロントのテレビだっ!!」



――7号車【ラウンジ】


弓使い「うへぇー、行っちゃったよ……」

キノコ頭「すごい斬り合いだな。俺にはマネできそうもない」


魔族A「待ってくださいよー、族長~」タタタッ

魔族D「あ、すんません、どうもお騒がせしましたー」タタタッ

教授「ああ、うん……。行っといで~」

銃使い「…………」ガシュガシュ


執事「……さて、残る問題は」



革ジャン「俺たち、ってワケか」チャッ

キノコ頭「おっと。イキがるなよ」チャッ


テロリストA&B「「…………」」チャッ チャッ

テロリストC&D「「…………」」チャッ チャッ

キノコ頭「お前は一人だが、コッチには俺の他にも四人いる」

キノコ頭「たとえお前が俺を脳天をぶち抜いたとしても、その後にお前はハチの巣というワケだ」

革ジャン「…………」


革ジャン「……だから、どうした?」



キノコ頭「何……?」

革ジャン「なるほど、俺がお前をヘッドショットする、そこまではいい」

革ジャン「だったらその後、俺が同時にあと四人撃てばいいだけだろ?」

キノコ頭「……!」


キノコ頭「……っ。ナメた口を」

革ジャン「どうした? 手元が震えてるぜ」

革ジャン「まあ、当然だな。お前はき○こ派とかいう、一回の戦争限りの兵士だが――――」


革ジャン「こちとら叩き上げのおまわりさんだ。技術も覚悟も違うんだよ」



教授「……ねえ、おまわりさんってあんなヤバい殺し屋みたいなのばっかりなの?」

弓使い「う、うーん。まあ、普通は違うと思うけど……」


銃使い「警察とは、何度か戦ったコトがある」

銃使い「あいつらは一兵卒。責任を組織に任せ、死を恐れず突っ込んでくる。わりと」

銃使い「でも、あの革ジャンの警察は違う」

銃使い「まるで、自分は絶対に死なないというような、余裕、姿勢……、信仰」

執事「無頼漢、というコトですか?」

銃使い「すこし違う。あいつは、自分の命のコトを、重く見ている」

執事「……なるほど」



執事「では、あのキノコ頭の一団のほうは?」

銃使い「あれは典型的な戦闘組織。自らを一兵卒と割り切り、死を恐れない」

銃使い「仲間のためなら特攻も辞さない。……いちばん戦いたくないタイプ」

執事「いずれにしろ、並以上の戦士、というワケですね」

執事「……なんでそんなのが、よりにもよって、この列車に」ハァ


教授「だから私のせいでしょう」

弓使い「え? そーなの?」

教授「うん。あの警察官は、ただ暴れてるだけみたいだけど……」

教授「キノコ頭のほうは、私と、私の発明品を名指しした。明確に」



弓使い「ふーん。そっかァ……」

執事「……?」


弓使い「じゃあ、キノコ頭と革ジャンが戦ったとして、革ジャンが勝てばそれで良し」

弓使い「だけど。もしキノコ頭が勝ったら、私たちは貴女のせいで危険にさらされる」

教授「そうだね」


弓使い「じゃあ私たちは、貴女をキノコ頭に売り飛ばすのが最適解、ってワケだ?」


執事「……! 貴様……」バッ

弓使い「……ふふふ。イイ顔するね。イケメンだよ、執事くん」



弓使い「ねえ、どうする? 執事くん、お嬢様」

弓使い「もしココで、私たちが君たちを裏切って、斬りかかってきたとしたら」

弓使い「まあ、何の契約もしてないし、裏切りでも何でもないんだけどね」


教授「…………」

執事「……俺は、この命を引き換えにしてでも、お嬢様を守る」

教授「! ……っ。バカなやつ」

執事「バカで結構です。それが執事たる、俺の役目ですから」

弓使い「うん、うん。自己犠牲の精神、たいへん結構」

弓使い「私たちがいちばん戦いたくないタイプだ」



弓使い「……で、お嬢様のほうは?」

教授「教授、でいい」

弓使い「そう。教授は、私たちが斬りかかってきたとしたら、どうする?」

教授「…………」


教授「戦いはコイツに任せて物陰に隠れる」


執事「……!」

教授「だって私じゃこのヒトたちに勝てないけど、でも死にたくないし」

執事「お嬢様……。けっこう薄情ですね」



弓使い「…………」

弓使い「……ぷっ」


弓使い「あっはっはっはっは! 面白い、面白いねお嬢様、いやさ教授!!」バンバン

教授「ぐえ。痛い……」


銃使い「……姐さんって、思ってもいないコト言うの好きだよね」

弓使い「ああ、やっぱりわかってた? やっぱお芝居ヘタだなー、私!!」

執事「……え?」


弓使い「ゴメン! 今のはちょっとしたジョーク! 裏切るつもりとか無いから、忘れてね!」



教授「笑えないジョークだなあ」

執事「ホントですよ……。この状況で、からかうのはやめてください」

弓使い「ゴメン、ほんとゴメンってば。ふふ」


弓使い「でも、物陰に隠れる、か……。良い判断だ」

弓使い「いちばんバカな雇い主は、自分から敵に突っ込む奴。守れって言っといて、そりゃないよね」

弓使い「戦場から逃げる奴は、まあ普通かな。逃げた先まで守れる保障は無いけれど」

弓使い「初めから高みの見物は、妥当だけど……。あんまし、気分良くないよね」

教授「え? って、コトは……」

弓使い「ええ。戦場だって、ビジネスの場所。私たちが貴女たちのコト、守ってあげようか?」



教授「……!」

執事「……金ならあります。ぜひ、お願いしたい」

弓使い「オッケー! そうこなくっちゃ。羽振りも心構えも良い雇い主の下で働くのは、気分が良い」

弓使い「そうと決まれば、あのキノコ頭と革ジャン……。まとめてやっつけちゃおうか?」

銃使い「…………」コク


執事「……あの!」

弓使い「ん? なあに?」

執事「戦闘論理に詳しく、金で雇われて戦う……。貴女たちはいったい、何者なんですか?」

弓使い「……通りすがりの、フリーターです☆」



キノコ頭「…………」ジリジリ

革ジャン「…………」ジリジリ


弓使い「いい……? 銃ちゃん。剣ちゃんがいないから、前衛は私に任せて」

弓使い「奴らの銃弾は、剣を飛ばして弾く。だから、安心して狙撃に専念して」

銃使い「わかった。……死なないで」

弓使い「わかってるって。……さあ、ちょいとデートとシャレ込もうか!!」

グッ


マスター「―――そこまでだ」



キノコ頭「……!」

革ジャン「お前……。ここの、ラウンジのマスター、か……?」

マスター「いかにも」ズゥッ


マスター「―――ここは乗客の皆様のための、憩いの場」

マスター「―――お引き取り願えますかな」


銃使い「……!」ビクッ

弓使い「……ヤバいヤバいヤバい。何、何なの、あのおじいさん……? 尋常じゃない威圧感だ」

弓使い「あれ、半身、キカイか……? ちょっとちょっと右腕、なんで光ってるのかな」



革ジャン「―――イヤだね、……と言ったら?」

マスター「むろん」グッ


マスター「お相手するしかなくなりますな」


革ジャン「…………」チャッ

キノコ頭「……ふん。引き揚げるぞ」


革ジャン「……! ……腰抜けが」

キノコ頭「腰抜けで結構。俺たちはこの列車に、死にに来たワケじゃないんでな。おい、行くぞ」

テロリストA「ま! 待ってくださいリーダー……!」



マスター「そうですか。では、ワタクシもこれにて」

革ジャン「おい! 逃げるのか……!!」

マスター「――――」ギン

革ジャン「……!」


マスター「―――ここは乗客の皆様のための、憩いの場」

マスター「……それだけですので」

革ジャン「ちっ。……興醒めだ。じゃあ、あばよ。皆々様がた」テクテク


教授「……こ、これは……。助かった、のかな?」



――8号車【ロビー】


黒コート「違うぞ坊主! 青いのの狙いは―――、フロントのテレビだっ!!」


剣使い「何!? ――――」

族長「ご名答! だが、遅い!!」ブンッ


族長は右足を踏み切った直後、左足で床を蹴り飛ばし、
左へ直角に跳ねて剣使いの突進をかわす。

そして、フロントに備え付けているテレビをシャムシールですくい上げるように剣使いに投擲し、
族長自身もまた、左腕を支点に、フロントを蹴り飛ばして剣使いに上段から襲いかかる。

剣使いの視界をテレビで奪いつつ、反動の勢いを利用する、族長の決死の一撃であった。



剣使い(テレビがジャマだ! コレが狙いか……!)

剣使い「ぐッ。だが、なら……」


剣使い「テレビごと斬り飛ばすまでだァァッ!!」

族長「何!?」


剣使いの、長剣の斬り上げによる、裂帛の一撃。
次の瞬間、テレビはバターのように切り裂かれ、真二つの板片と化す。

そして、切り裂いたテレビの向こう側に現れたのは、
空中より斬り下げの一撃を放たんとする族長。

刹那。白き雷鳴と、青き紅蓮が、入り混じった。



剣使い「ぐぁッ!!」ビリッ

族長「むぅ……ッ!」ビリッ

カーン カーン


ロビーに響いたのは、乾いた二つの音。

お互いに予知しなかった、真っ向からの剣戟の激突により、
金属を伝えて流れる電流が両者の体をかけ巡る。

その衝撃が、互いの剣を、互いの後方へと弾き飛ばした。


剣使い「……ハァ、ハァ」

族長「恐れ入ったよ、小僧。……いや、白銀の剣士よ」



族長「ニンゲンにも貴様ほどの、戦士がいるとはな」

剣使い「へぇ。そりゃあ、お褒めに預かり光栄だな」


テクテク

革ジャン「……ちっ。おい、センパイ! 客室に戻るぞ!」

黒コート「お、おい革ジャン野郎!? お前、なんでそんなボロボロで……」

革ジャン「うるせえ! いいから休む! 俺は疲れた!」


族長「…………」チラッ

革ジャン「…………」キッ



族長「……どうやら、アチラは終わったようだな」

剣使い「ああ。俺たちも、ここまでにしておくか」


族長「―――待て!」

剣使い「……?」


族長「まずは此度の勝負、感謝する。族長の座に収まってから忘れて久しい、血湧き肉躍る戦いだった」

族長「だがこの決着は、必ずつけたい。次、貴様と俺が相見えた時……。列車を降りる、その前に」

剣使い「……ああ、いいぜ。その約束、違えるなよ」

族長「感謝する」



――1号車【展望車・前】 運転室


ドゴォォォン…!!!


副運転士「うわっ……!?」グラッ

白ドレス「……もー、はじまっている」

運転士長「むぅ……ッ!」ガクッ


副運転士「爆発音、振動……! 列車の後ろのほうから!?」

運転士長「女……! コレは、貴様の仕業か!?」

白ドレス「ノン、ノン! 私が爆発なんて起こすワケないじゃない?」



白ドレス「だから、さっきも言ったでしょう?」


白ドレス「―――これは、この列車の運命だと」


運転士長「運命……」

副運転士「……お、お姉さん! 貴女はいったい何者なんですか? この爆発を止める方法は!?」

白ドレス「ゴメン、その質問は二つともNGだよガール。もっと具体的な質問内容なら考えよう」

副運転士「え、えぇ……。な、なら。乗っ取られ、爆発、大炎上するのが、この列車の運命なら……」


副運転士「お姉さんは、どうしてソレを私たちに知らせに来たんですか!?」

白ドレス「…………」



白ドレス「……そうだね。一つは、死神との契約によるモノだ」

白ドレス「私は死神に、君たちに運命を伝えるよう差し向けられてしまった」

副運転士「死神……?」

白ドレス「ああモチロン、字義通りの死神じゃないよ? 死神みたいな奴、って意味だね」


運転士長「また死神か。私には、貴様がこの列車にとっての死神に思えるがな……」

白ドレス「それは解釈の違いってやつだね! 死神はたしかに死ある場所に現れる」

白ドレス「だけど、死神が現れるから死ぬのと、死ぬから死神が現れるのでは、大違いでしょう?」

副運転士「……?」

白ドレス「まあ、私は後者みたいに、運命をお知らせしに来ただけですよってコト」



白ドレス「そして、もう一つは……。私個人の善意によるモノだ」


白ドレス「君もさ、バッドエンドは嫌でしょう?」

白ドレス「たくさんのヒトが死ぬ! みたいなさ」

副運転士「……アタリマエです! 乗客の皆さんが危険にさらされる、というのなら!」

副運転士「命を懸けてでも、私が皆さんを守ります!!」

白ドレス「うん、良い心意気だ! 君みたいな善意のカタマリに、人々は救われるんだよ!」


運転士長「善意、か……。その言葉は本心としても、その思惑の裏に何がある?」

白ドレス「こちらは大人らしく老獪だね。でも、それを証明する手段は無いからノーコメントとしよう」



副運転士「……まだ質問があります」

白ドレス「何かな? 可能な範囲で答えよう」

副運転士「……この列車の運命っていうのは、未来の出来事ですよね」

白ドレス「なぜ未来の出来事なのに確信を持って言えたのか……って、問いかな?」

副運転士「…………」コク


白ドレス「それは、私がスゴいからだよ! スゴいから未来だってわかる!」

運転士長「……ふざけたコトを」

白ドレス「ふざけてなんかないよ? 特に君は、なんとなくわかると思うけどな。眼帯クン」

副運転士「……でも、もし貴女が、本当にスゴいヒトだっていうのなら……」



副運転士「そのチカラで、この列車の運命を変えてはくれないんですか?」

白ドレス「イタいところを突いてくるね。クリティカルヒットだ」


白ドレス「そうだねえ……。チカラというのには、常に代償がつきモノだ」

白ドレス「代償なきチカラは、妬まれ、嫉まれ、いずれ悪意によって封印される」

白ドレス「私が今回の事態に対して何も出来ないのは、その代償ゆえと思ってほしい」


運転士長「……女。悪魔とでも契約したのか?」

白ドレス「ノン、ノン! 視野が狭いね」


白ドレス「……そろそろ時間かな」



ジリリリリリ!!!


運転士長「……? 内線の電話、13号車の乗務員室!?」

運転士長「13号車にも何かあったのか!?」

ガチャ

運転士長「もしもし、コチラ運転室。……車掌か!?」


運転士長「……何? ハイジャック犯を名乗る変質者を捕らえた?」

運転士長「そ……、そうか。なら、とにかく、私が行く。それまで……」

運転士長「……いま縄を解いて脱走した!!?」



白ドレス「この列車の運命の発端は、とても、とてもササイでバカバカしいモノだ!」

白ドレス「き○こ? たけ○こ? アル○ォート? そんなの普通ありえない!」

白ドレス「だけども、信念を持って行動する彼らは、理由はどうあれ、皆本気だ」

白ドレス「ナメてかかればイタい目見ると、私は予言者らしく予言しよう」

白ドレス「高みの見物を決め込むような黒幕は、たいてい引きずり出されてボコボコにされるモノさ」

副運転士「え……? それって……」


白ドレス「それに、役者はまだ出揃っちゃいない」

白ドレス「事態を知りながら、まだ関わらずにいる者も……。少なからずいる」

白ドレス「たとえば私たちのすぐ近くにも、案外いるかもね?」



白ドレス「運命は絶対ではない! 歴史にイフはある! 過去だって未来だって思うがまま!」

白ドレス「だけど、それを為せるのは……。その時間に生きる、意志ある者たちだけ」

白ドレス「私はそんな君たちが生きあがき、運命を変えるコトを期待する!」


ガチャ

白ドレス「ほんじゃま。グッドラック、ってコトで」

副運転士「貴女は……。いったい、どこへ行くんですか?」

白ドレス「さあ? 雲のように自由気まま、それが私。すぐ会うかもしれないし、もう会わないかもしれない」


白ドレス「でも。私が必要とされれば、いつでもどこでも出てくるよ! じゃーねー!」



副運転士「…………」


副運転士「『運命は絶対ではない』……」

副運転士「『それを為せるのは、その時間に生きる、意志ある者たちだけ』……かぁ」


副運転士「…………」


副運転士「……いや。そんなコトより、私は私の役目を果たさないと!」

副運転士「この年末年始の運行を成功させて、新たな一年を迎える……」


副運転士「それが乗客の皆さんから期待されている、副運転士の役割なんだから!」

第二章「薄暮・後」は以上になります。
自分は3つとも大好きです。

第三章は、明日12/25(月)の18時ごろ開始の予定です。

まだ続くのね

こんな列車絶対乗りたくない

それでは、第三章「夜中・前」を開始します。
60レスほどの予定です。



――1号車【展望車・前】 屋根の上


桜色の女「―――へっくしゅ!!」クシュン


ゴーーーーー


桜色の女「……う、ううぅ。今、誰かに拙者のウワサをされたような」ズビ

桜色の女「いや、確実にしたでござるな? どこからか話し声が聞こえてきたでござるよ!?」ガタッ


シーン


桜色の女「…………」



桜色の女「……やっぱり気のせいでござるか」ドカッ


桜色の女「まあ、列車の屋根の上なのに、ヒトの話し声が聞こえるワケないでござるな」

桜色の女「きっと聞き間違いでござる。でなければ、怨霊、物の怪、怪異のたぐい」


桜色の女「……しかし、この、ドライ・ブラー号といったでござるか?」

桜色の女「この列車……。何やら不可思議な魔の者によって呪われている」

桜色の女「“いわくつき”の列車らしいでござるからなあ。さっきも何やら後方で爆発が」


桜色の女「まったく、鉄仮面卿も、物好きでござる。こんな列車に乗り込むとは」

ゴーーーーー



桜色の女「しかし……。鉄仮面卿がこの時代で暴れたと聞いて、ひとつ仕置きのため追いかけてみたが」

桜色の女「どうやらこの列車、相当人気の旅らしく、乗車券の一つも取れない始末」


桜色の女「さりとて、列車の旅を前にして諦めるも、口惜しい……。というワケで」

桜色の女「この列車に無賃乗車で乗り込んだのでござるが」


ゴーーーーー


桜色の女「……寒い! 先頭車の屋根の上とか、風がモロに当たって凍え死ぬでござる!!」

桜色の女「おかしいなあ。この時代の今日は、いったい何日でござるか……」

桜色の女「……12月31日!? ははは……、日にちは同じか。道理でしばれるでござる。ござる」



桜色の女「……たしか、鉄仮面卿は、正規の乗車券を手に入れていたでござるな」

桜色の女「駅の改札に通していたのを見たから、マチガイないでござる」


桜色の女「となれば、知り合いのヨシミで、鉄仮面卿の客室にお世話になるでござるか」

桜色の女「うん。それがいい。名案でござる!」ガタッ


ゴーーーーー


桜色の女「……でも、鉄仮面卿の客室は、いったい何号車なのでござろうか?」

桜色の女「…………」

桜色の女「またフリダシでござる」ドカッ



桜色の女「……はあ、すっかり日も暮れたでござるなあ。とっぷり」

桜色の女「年末年始もヒマだからといって、怖いモノ見たさで友人の後を追わなければ良かったでござる」


桜色の女「…………」グウウウウウ

桜色の女「ハラの虫も泣いているでござる。よよよ」


桜色の女「もうすぐ夕食の時間でござるなあ……」

桜色の女「たしかこの列車には、食堂車もあったでござるな」

桜色の女「利用にいちいち乗車券は確認されるのでござろうか?」


桜色の女「……ま、腹が減っては戦ができぬ。ご厄介になるでござる」



【12月31日 午後4時】

――6号車【食堂車】


車掌「失礼します、お客様……。午後4時になりましたので、ティータイムは終了とさせていただきます」

乗客「ん? ああ、もうそんな時間か。悪いね、車掌さん。これ、お会計だ」ガタッ

車掌「ありがとうございます。引き続き、年をまたぐ特別な列車の旅、ごゆるりとお楽しみください」


ウェイター「車掌さーん、食堂車の掃除終わったぜぇー。ああ、疲れた」

ウェイトレス「食器洗浄も、完了。日も暮れるし、休憩したい」

車掌「お二人とも、ご苦労様でした。そうですね、ではディナータイムまで私たちも乗務員室にいましょうか」



――7号車【ラウンジ】


乗客「…………」テクテク

乗客「午後4時、か」


乗客「改変した歴史通りならば、ここ7号車で、まもなく事件が始まる」

乗客「早々に離れたほうが良さそうだな」テクテク


執事「おや。良かったら、き○この山食べますか?」

弓使い「え? いいの!? うれしーなー!」

銃使い「うん。じゃあ、こっちはたけ○この里を」



――8号車【ロビー】


黒コート「まあ、バカ正直に仮面なんていつも被ってるワケないか。何か他の方法考えないと……」


族長「手始めに、隣の車両の者たちに訊いてみる。行くぞ」ガタッ

魔族D「行動の精神、マジリスペクトっす!」


乗客「……!」


乗客「時空環境整備課まで乗っているのか。僕の動きを嗅ぎつけたか……?」

乗客「いや、この招待状がそもそも彼女らのワナという可能性も……。油断できないな」



【12月31日 午後8時】

――10号車【寝台車五】 客室


乗客「……あれから4時間が経った」

乗客「おそらくラウンジでの事件は収束し、乗務員たちが今後の対策を練っている頃だろう」


乗客「キョーミ本位で、この時代のき○こたけ○こ戦争に介入した結果、歴史が変わったのが先週」

乗客「だが歴史が変わった結果、発生するドライ・ブラー号ハイジャック事件と僕は、直接関係ない」

乗客「なのに、その事件に何故、僕が呼ばれたのか?」スッ


仮面の男「―――この、時空指名手配犯である、鉄仮面の僕が」カポ



仮面の男「この、昨日僕の元に届いた、今日のドライ・ブラー号の運行への招待状……」

仮面の男「年末年始の特別な列車の旅に招待してくれたはいいが、差出人は不明だ」


仮面の男「―――この招待状の真意が、たけ○こ派の客将だった僕への、き○こ派の復讐だとしたら?」

仮面の男「―――あるいは、指名手配犯の僕をおびき寄せるための、時空整備課のワナだとしたら?」

仮面の男「―――それとも、僕に近しい人物による、僕のためのサプライズパーティーだとしたら?」


仮面の男「くくく……。いずれにしろ、今年の締めくくりにふさわしい、馬鹿騒ぎには違いない」

仮面の男「祭とは人々の熱狂が生み出すモノ。だが熱狂が源ゆえに、冷却までの時間は長くない」


仮面の男「さて、そろそろ夕食の時間だな。今年の年末年始は、刺激的なモノになりそうだ」ガタッ



――13号車【展望車・後】 屋根の上


ヒーロー「……ふぅぅぅ。まったく、ヒドい目に遭った」


ゴーーーーー


ヒーロー「まさか、この時代を救いに来た俺を、いきなり縛り上げるとは……」

ヒーロー「この時代の人間の考えるコトは度し難い!!」


小型メカ「貴方がいきなりハイジャックとか叫ぶからいけないのだと思いますけどね」フヨフヨ

ヒーロー「おお、オペ子ちゃん。今回もよろしく頼むぜ」



小型メカ「気軽に言ってくれますね。時空環境整備課から出向している、私の身にもなってほしいモノです」

ヒーロー「しかし、昨日俺が唐突に思い立って縄抜けの術を会得していなければ、この時代は終わってた」

ヒーロー「ほんのササイなコトが歴史を決めてしまうのだなあ……。ブルブル」

小型メカ「貴方が唐突に思い立ってハイジャックなどと言わなければ縄抜けも必要無かったでしょうがね」

小型メカ「しかし、何故いきなりハイジャックなどと? むしろ我々は、ハイジャックを止める側でしょう」

ヒーロー「いやあ……。俺がハイジャックして列車が止まれば、ハイジャックも起こらないかなって」

小型メカ「うーん、問題はさらに大きな問題で塗り潰してしまえという感じですね。ちなみにその格好は?」


ヒーロー「この時代の正義の味方の正装だという! 俺は正義の味方だからな!」

小型メカ「私たちの時代では変質者の正装ですね。正義の味方が投獄されないコトを祈ります」



小型メカ「では、改めて我々の任務を確認しますね」


小型メカ「まず、我々の大目的……。それは、『き○こたけ○こ大戦』の勃発を阻止するコトです」

ヒーロー「き○こたけ○こ大戦? なんだ、それは?」

ヒーロー「俺たちの目的は、この列車がハイジャックされて大惨事になるからソレを阻止する、では?」

小型メカ「そうですが、ハイジャックの阻止は、き○こたけ○こ大戦の勃発を阻止する手段にすぎません」


小型メカ「はぁ……。これは、もう一度、最初から説明したほうが良さそうですね」


小型メカ「まず事の発端は、とある時空指名手配犯が、この時代の歴史を改変したコトでした」

小型メカ「通称・仮面の男。鉄仮面卿とも。彼はき○こたけ○こ戦争に介入し、戦争を終わらせたのです」



ヒーロー「ふむ……。それだけ聞くと、戦争を終わらせた英雄のように思えるな」

小型メカ「ええ。実際、き○こたけ○こ戦争は、ここで終わらなければ、私たちの時代まで続き……」

小型メカ「誰も得しないプロレスバトルとして形骸化。あっても無くても、歴史への影響はありません」

小型メカ「なので、戦争を終わらせた仮面の男を英雄視する声は一定数あり、その結論に異議は無い」


小型メカ「ですが、問題はここからです」


小型メカ「仮面の男の行動の問題は、戦争の結果はともかく、その先の歴史が変わるコトでした」

小型メカ「ゆえに彼は以前から指名手配されています。この事態でシッポを掴み、私の同僚も動いている」

小型メカ「そして、歴史が変わった結果、一人の天才科学者を乗せた列車がオーサカまで運行します」



ヒーロー「それがこのドライ・ブラー号……、というワケだな」

小型メカ「はい。彼女はたけ○こ派に依頼され、戦争を完全に終わらせる“最強の兵器”を開発中でした」

小型メカ「しかし観測された歴史では、今日列車は大惨事に巻き込まれ、彼女の発明は灰燼に帰します」

小型メカ「その原因をたけ○こ派は、き○こ派残党の陰謀と断定。……き○こたけ○こ大戦に突入します」


ヒーロー「そんな……、許せない。大惨事は俺が止めてみせる、未来の市民ボランティアの名にかけて!」

小型メカ「貴方の上役は大戦の阻止のために私を雇い入れたのではなかったのですか? まったく……」


ヒーロー「だが正史にも登場する人物たちには既に招待状を送った。条件は揃った。何も問題はない!」

小型メカ「仮面の男にも招待状を送ったんでしたっけ? まあ放置もマズいですか。って、アレは……?」



――7号車【ラウンジ】


魔王「何? このラウンジでの爆発に、魔族が関わっていた?」


パラ パラ


マスター「ああ。青い体、黒い角。そして得物のシャムシール。十中八九、魔界の青鬼族というやつだろう」

魔王「ほー……。この焼け跡、たしかに青いな。魔力を帯びている。青鬼族の特徴だ」ザラ

魔王「しかもまあ、ラウンジの天井なのにデカい風穴がコンバンハしちゃって。よほど手ひどく暴れたか?」

マスター「原因は魔族だけではないが。だが、この列車の魔族からの防衛をお前に任されたのは俺だ」

マスター「魔族からは俺が乗客を守ろう。お前が今日列車に乗ったのも、件の魔族を止めるためか?」



魔王「…………」

魔王「たしかに魔族の人間界との接触は、干渉だけならまだしも、侵攻はご法度だ」

魔王「それは慣習でも常識であり、こないだの魔界統一の折にも、魔王会議で採択された条約でもある」

魔王「だが、俺は唯一無二の人間の戦友であるお前を信頼している。普段ならこうして出張りはしない」

マスター「何……? 魔族は関係ないのか? ならば、まさか……」

魔王「ああ。俺は今日、スイートルームの乗車券の譲渡を頼み込んでまで、この列車に乗り込んだ」

魔王「魔族が人間界で暴れたのも問題だが、事は青鬼族どころじゃない。……心して聞け――――」


魔王「今回の列車ハイジャック事件。天界が関わっている」

マスター「……!!」



マスター「天界、だと? どこでソレを知った? なぜ、あの天界がこの列車に関わる?」

魔王「天界の動きを知ったのは、つい今朝だ。天界から何者かがこの列車に降り立ったと連絡が入った」

魔王「そして、天界がこの列車に関わるならば……。理由は、おそらくは。わかるだろう?」

マスター「……ああ。目的は魔族と同じ、か。だが、動機は違う。天界はそのホンシツを知っている」


魔王「―――古き人間と魔族の約定。大戦を終わらせた、大術士たちの、“最強の兵器”」

マスター「この列車の動力源である、その封印が解かれれば……。文字通り、太陽のフタが開く。か」


魔王「急務だ。俺は食堂車あたりに潜伏し、天界の使者をあぶり出す。そして、可能であれば、止める」

マスター「ああ。最悪の事態だけは、避けねばならん……。だが魔王、侮るなよ。天界は、強い」



――6号車【食堂車】


魔王(の、ハズが……)


料理長「ステーキ二つ、あがり! バイトくん、コレ持ってってー!」

魔王「あ、ハイ! わっかりましたー……」

ゴトッ

魔王「うわっ! しまった、転げ――――」

ウェイター「おっと! 大丈夫か、バイトくん? 気をつけろよ」ポスッ

ウェイトレス「気をつけろよー」



魔王「あ……、ハイ。ありがとうございます」


魔王(食堂車で、ディナータイム中の乗客たちを見張っていたところ)

魔王(なぜか列車のアルバイトと勘違いされ、給仕の手伝いをさせられている)

魔王(ど、どういうコトだ? 時給はちゃんと出るらしいからいいんだが……)


魔王(って、そうじゃない。俺の本来の目的を忘れるな……)

魔王(今もここで食事をしているかもしれない、天界の何者かを見つけ出さないと。あとついでに魔族も)


乗客B「ちょっと、そこのバイトさん。お水ちょうだい」

魔王「あっ、はーい! 今すぐにー!」



――1号車【展望車・前】


副運転士「……これで、今回の爆発に関わったヒトたちは全員ですか?」


車掌「そういうコトになりますね」

教授「騒ぎを起こした張本人たちは、誰もいないけどね」

執事「犯人の方々に自首していただければ、事件は解決なのですが」

剣使い「いや待て、それは困る。あの魔族とは再戦の約束をしたからな」

弓使い「再戦の約束とかしたんだ? アツいね、男の友情だね」

銃使い「…………」ボリボリ



運転士長「……ただし、ハイジャックを宣言した赤色仮面を目撃した場に、車掌と共にいた」

運転士長「ウェイターとウェイトレスは、現在、食堂車でディナータイムの給仕に回っている」


運転士長「7号車のマスターや、8号車のフロント担当もまた、そのまま持ち場で後始末を任せている」

副運転士「あんな事件があっても、運行を続けられるだけマシ、って感じでしょうか……。はぁ」


剣使い「さて、さっそく例のハイジャック犯の対策会議といこうか」

教授「『運命は絶対ではない』、だっけ? じゃあハイジャック犯全員潰せばいいんじゃない?」

車掌「そうは言ってもですね。私どもとしては、あまり事を荒立てたくはなく……」


副運転士「ちょ、ちょっと! 勝手に喋り出さないでください!!」



副運転士「ま、まずは。事件のあらましを再確認したいのですが……」

剣使い「む、そうだな。悪い、副運転士の嬢ちゃん」


剣使い「……と言っても、事態は単純明快だ」

剣使い「俺たち五人がラウンジに集まってたところ、突然ハイジャック犯たちが現れた」

剣使い「ハイジャック犯たちは三組。キノコ頭の一団、警察を名乗る革ジャン、そして青い体の魔族」

剣使い「それぞれき○こ派、たけ○こ派、アル○ォート派とかいうのを名乗ってやがる」

剣使い「また、後ろの二組の目的が何かは不明だが、少なくとも平和的じゃないのは確かだ」

剣使い「そして。最初の、き○こ派の目的は……。教授の嬢ちゃん?」

教授「ええ。私が明日オーサカで発表する予定の、“最強の兵器(仮)”。それがき○こ派の狙い」



副運転士「さ、“最強の兵器”? それはいったい……」

教授「“最強の兵器(仮)”。カッコカリ、を忘れないで」

副運転士「は、ハイ。でも、なんでカッコカリ……?」

教授「……完成どころかアイデアすら浮かんでいないからだけど」イラッ

副運転士「え。あ、なんかゴメンナサイ……」


執事「“最強の兵器(仮)”とは、お嬢様が、き○こたけ○こ戦争での、たけ○こ派に開発を依頼された」

執事「き○こたけ○こ戦争を終わらせるための、文字通りの“最強の兵器(仮)”です」

副運転士「そ、それは、具体的にはどういうシロモノなんですか……? スゴい爆弾とか?」

教授「それすらも何も決まってない。だからカッコカリなの。プライドが傷つくから、これ以上言わせないで」



剣使い「だが、実際に“最強の兵器(仮)”が何なのか、実際に存在するのか。そんなのは関係ねぇ」


剣使い「き○こ派の連中は、教授の嬢ちゃんが“最強の兵器(仮)”を既に持っていると」

剣使い「完全に思い込んで、そのうえで襲ってきやがる」

車掌「なるほど。であれば、もし仮に、我々が“最強の兵器(仮)”など無いと主張しても……」

弓使い「そんなの狂言だと判断されて、攻撃してくるだろうなー」

執事「あいにく、“最強の兵器(仮)”が存在しないというコトを、証明する手段もありませんしね」

運転士長「無いを証明するのは不可能に近い。悪魔の証明というやつだ」

教授「その悪魔ですら今回の事件に関わってるんだから、ふざけてるよね」

銃使い「…………」ガシュガシュ



副運転士「ええと、つまり。その、き○こ派のヒトたちが、この列車をハイジャックするのは」

副運転士「教授さんの“最強の兵器(仮)”が目的で。だけど、“最強の兵器(仮)”は存在しない……」

教授「そう。もし本当に存在するなら、思いついた瞬間くれてやる」

執事「しかし、き○こたけ○こ戦争を終わらせるって、実際にどう使うんでしょう?」

教授「だからソレが思いつけば苦労しないって何度も何度もさっきから言ってるでしょう!!」

副運転士「な、なるほど……。では、もしき○こ派のヒトたちが襲ってきた場合、対処は……?」


剣使い「戦って倒すしかねぇだろ」パシッ

弓使い「き○こ派の奴らは、一人一人はそんなに強くなさそうだしね」

副運転士「で、ですよねー」



副運転士「て、ていうか……。何なんですか? その……」

副運転士「き○こ派とか、たけ○こ派とか、アル○ォートっていうのは」

剣使い「なんだ嬢ちゃん、わからねぇで聞いてたのか?」


車掌「ほら。お菓子にあるでしょう? き○この山と、たけ○この里。車内販売にも在庫がありますね」

弓使い「でもさ、き○この山が好きなき○こ派と、たけ○この里が好きなたけ○こ派の対立って」

弓使い「けっこう根深いモノなんだよねー」

銃使い「どっちもおいしいと思う」

弓使い「うん。世間的には、この娘の言ってるコトが普通だと思う」

運転士長「だが、二派のうちの一部が暴徒化。それが、き○こたけ○こ戦争、というワケか……」



副運転士「そういえば。白ドレスのお姉さんも、何か言ってたような……」

執事「しかも、その戦争に何故かアル○ォート派までもが参戦している。まったく混迷した事態です」

教授「アル○ォートって会社違うよね? 一線超えちゃってるじゃん」


運転士長「ともかく。動機はどうあれ、き○こ派と、たけ○こ派と、アル○ォート派の三組は」

運転士長「それぞれが、この列車のハイジャックを宣言している……。そういう状況だな?」

車掌「はい。まさにこの列車は、今やチョコ菓子界の三国志、というワケです」

剣使い「三国志って、アレだっけ? リュービと……」

銃使い「ソーソーと」

弓使い「ホクサイ……、だっけね」



副運転士「ワケがわからない……。あ、そういえば車掌さん」

車掌「はい? どうかしましたか」

副運転士「貴方が目撃したという、赤色仮面とは、いったい……?」

車掌「ああ、そのコトですね……。実は、わかっているコトのほうが少ないのです」


車掌「奴は、ラウンジでの爆発の直後、突如として13号車に現れました」

車掌「出で立ちは、赤を基調としたポリマースーツと、仮面。はっきり言って変質者です」

車掌「そして、正義の味方を名乗り、この列車のハイジャックを宣言しました」

車掌「その後、縄で縛ったのですが、すぐに脱走……。事実だけを列挙すれば、こうなります」

副運転士「ううう。もっとワケがわかりませんね。手がかりが少なすぎるので、一旦保留で」



剣使い「あとは、嬢ちゃんの言ってた白ドレスの女、ってやつだな」

副運転士「……はい。彼女は午後4時ごろ、爆発が起こる前の時間、運転室に現れました」

副運転士「初めは何事かと思ったのですが……」


副運転士「会話するうちに彼女は、ラウンジでの爆発を、それが起こる前にピタリと言い当てたのです」

弓使い「なにそれ、未来人か何か?」

執事「摩訶不思議な現象が立て続けに起きていますから、もう未来人くらいじゃ驚きませんよ」

教授「そして言い残したコトバが、『運命は絶対ではない』……」

銃使い「『それを為せるのは、その時間に生きる、意志ある者たちだけ』……」

運転士長「私も車掌と電話をしながらだが、それは聞いた。本人も言っていたが、まるで予言者だな」



副運転士「他にもいろいろ言ってたんですけど、抽象的なコトばかりで、よくわかりませんでした」

副運転士「だけど、まとめると、この列車は爆発するけど頑張れば何とかなる、って感じです」


副運転士「それに私には、彼女の言っているコトが本当の出来事のように思えました。……おそらく」

教授「うえぇ。本当に抽象的だなあ。論理的じゃない。まあ、信じるしかないけど」


運転士長「……さて、現状のまとめはこんなところか。事件の原因である悪漢を止める必要がある、と」

車掌「ええ。次は、キノコ頭、革ジャン、魔族への対抗策を考えないと――――」


バンッ

革ジャン「おい!!!」



弓使い「ッ!?」バッ

銃使い「――――」チャッ

運転士長「…………」スッ


執事「貴様、ラウンジの、たけ○こ派の革ジャン!!」

車掌「何、コイツが……!?」

剣使い「ハナシが早くなったじゃねぇか。コイツを袋叩きにすれば、問題は一つ解決だ」


革ジャン「は? お前ら、何を言って――――」ドカッ!!!

革ジャン「ヌゴッ!!!」バタッ



副運転士「……? 突然倒れた!?」


黒コート「『は? お前ら、何を言って――――』……、じゃないだろ」

黒コート「まずはスミマセンだろうが!!」ドカッ!!!

革ジャン「ぐえっ!! ごぼっ!!」


教授「え……? いったい、何を……」


革ジャン「えー……と。このたびは、御列車のラウンジで暴れてしまって……」

革ジャン「本当に申し訳ありませんでした」ガバッ

黒コート「私からもスミマセン。私の監督不行き届きです」ガバッ



副運転士「な、なんだかわからないですけど、頭を上げてください!!」


革ジャン「そうだな。ずっと下げてるのも性に合わねえし、上げよう」ガバッ

黒コート「お前は一生頭下げてろ。むしろ地中に埋まってろ」ギリギリギリ

革ジャン「アイタタタ痛い痛い痛いギブギブギブ」バンバンバン


剣使い「……どうやら、実は敵じゃなかった、ってコトでいいのか?」

弓使い「あの暴れっぷりはあの中でいちばんヤバいと思ったんだけどなー」


運転士長「……すまない、黒コートの方。貴女はハナシが通じそうだ」

運転士長「良ければ、素性を教えてもらえるか?」



黒コート「貴方がこの列車の責任者でしょうか? このたびは、連れが本当に失礼をしました」

黒コート「私ども……。こういう者です」カパッ


副運転士「……え? なになに……」

教授「時空環境整備課、所属……。つまり、どういうコト?」

黒コート「……そうですね。誤解なきよう、端的に申し上げるならば」


黒コート「未来のタイムパトロール、といったところでしょうか」


銃使い「タイムパトロール!!」

執事「本当に未来人来ちゃいましたよ」



運転士長「じ、時空警察……。そりゃまた、突飛な登場人物が現れたな」

車掌「しかし現状、もはや未来人が現れてもおかしくない、といった状況になっていたところ」

黒コート「ええ。どんな状況ですか……」


副運転士「あ、あの。どうして未来のタイムパトロールさんが、この列車に?」

黒コート「……実は、私たちが追っている、とある時空指名手配犯が、この列車に乗り込んだのです」

黒コート「何をしでかすかわかりませんから、いちおう特徴を伝えると……」


黒コート「仮面の男です」

車掌「そいつ会いましたよ!?」



黒コート「ま、マジですか!? どこで!?」

車掌「この列車の最後尾、13号車で。一度は捕まえたのですが、逃げられてしまい……」

黒コート「……そうですか。しかし、この列車にいるという情報は本当だったか」


黒コート「もう少し、外見の情報を詳しく教えていただけますか?」サッ

車掌「ええと、背丈や体格は、普通の大人の男といった感じでしょうか」

車掌「全体的に赤色で、ポリマースーツを着て、仮面を被っていました」

車掌「あ、ポリマースーツって未来にもありますか? 全身を覆う、光沢がすごい硬質の素材です」

黒コート「完全に変質者ですね。よくわかりました。ご協力感謝します」カキカキ

革ジャン「そんなヤバい見た目なのに今まで見つからなかったのかよ……」



黒コート「……それでは、今度はコチラからお聞きしたい」

黒コート「先刻、ラウンジでは、いったい何があったのですか?」


黒コート「コイツに訊いても、電波妨害がどうだの、まったく要領を得ず……」

黒コート「乗員の方ならご存知かと、恥を忍んで参った次第です。コイツが電波だろってハナシですよね」

革ジャン「おい! サラっと何、侮辱して……」

革ジャン「ぐぁッ!!」ゴスッ!!!

運転士長「……そうですね。端的に言えば、き○ことたけ○ことアル○ォートの三つ巴です」

黒コート「はぁ?」

運転士長「詳細に申せば、これこれこういうコトでして」



黒コート「なるほど。事情はおおむね理解しました」

黒コート「つまり、き○こ派と、たけ○こ派と、アル○ォート派の三つ巴であると」

運転士長「そういうコトです」

副運転士「理解、早っ……。私でも2時間はかかったのに」


黒コート「ですが、たけ○こ派ってコイツのコトですし。問題は、残りの二組だけでは?」

車掌「……たしかに。これで問題は一つ解決した、と考えても良いのでしょうか」

黒コート「ええ、そう考えてもらって構いません。つぎ暴れたら私がコイツの脳天ぶちぬきます」

黒コート「わかったか、革ジャン野郎。列車降りるまで、たけ○こがどうとか一切口にするなよ」

革ジャン「はいはい。たけ○こは悪。たけ○こは春までお預け、っと」



黒コート「しかし、私どもの追う仮面の男は、三つ巴には関わっていないようだ……」

黒コート「事件の解決に協力したいのは山々ですが、私どもにも任務があります」

黒コート「キノコ頭や魔族を見たらなるべく倒しますので、そちらも仮面の男を見つけたらご連絡を」

黒コート「もし仮面の男の身柄を確保できた場合は、貴方がたに全面協力させていただきます」

運転士長「わかりました。私どもも、未来の方々にすべてを押し付けるのは忍びない」


黒コート「では、現状はいちおうの協力、というコトで。私たちは次は2~5号車の客室を調べてみます」

黒コート「おらっ、行くぞ」グイ

革ジャン「痛い痛いお気にの革ジャン引っ張るなちぎれるちぎれる!」ズズズッ

副運転士「お、お勤めお疲れ様ですー……」



バタン

副運転士「……大変なコトになってきましたね」

運転士長「ああ、大変だ。まさか、本当に未来人が現れるとは……」


車掌「ですが、元たけ○こ派と協力関係を結べた。これは一歩前進では?」

剣使い「たしかに。あとは、き○こ派とアル○ォート派だな」

弓使い「だけど、コッチは待つだけってのも、シャクだなあ。何かおびき寄せて叩く方法、ないかな?」

教授「必要なら、私がオトリになってもいいよ。雇い主としては、失格かもだけど」

執事「お嬢様。それ、俺が犠牲になる案ではありませんでしたか」

銃使い「…………」



運転士長「……一ついいか?」

副運転士「はい。なんですか? 士長」


運転士長「たしか、アル○ォート派というのは、魔族の一派なのだったな?」

剣使い「ああ。俺がじかに戦ったから間違いない。あの風貌、パワーは、間違いなく魔族だ」

運転士長「……そうか。もしそうであれば、アル○ォート派の狙いがわかるかもしれない」

副運転士「ほ、本当ですかっ!?」


車掌「……もしや、12号車に搭載している動力部、ですか?」

運転士長「そうだ。過去に何度も魔族がこの列車を襲撃に来たが、みな一様に動力源を探した」



副運転士「こ、この列車、何度も魔族に襲撃されているんですか!?」

運転士長「だから言ったろう。窓枠の弾痕も、天井の刀傷も、すべてホンモノだ」

車掌「私も最初に赴任した時は驚きましたよ。でも、おかげで強くなれました」

副運転士「そんなボディビルディングみたいな」


教授「ふーん。でも、なんで魔族が動力源を狙うの?」

運転士長「それは、この列車の動力源が、強力な魔力塊でもあるからだ」

運転士長「実はドライ・ブラー号は、魔力で動いている……。ゆえに停車もせず本州を縦断できる」

副運転士「し、知らなかった……」

運転士長「そして魔力塊のコトは魔界に広く知られているようでな。年一くらいで撃退するのだよ」



車掌「そういえば貴女は今年度からの着任でしたね。最後に魔族と戦ったのは、前年度末の春か……」

車掌「あの時は、桜が舞う空を闇で覆い尽くすほどの死神族に襲われて、もうダメかと思いましたよ」

運転士長「ああ。だが、あわやというところで、ラウンジのマスターが敵の首魁を倒し……」

運転士長「ザコどもをちぎっては投げ。料理長、フロント、ウェイター、ウェイトレスたちもよく戦ってくれた」

副運転士「み、みんな武闘派だったんですか……。異次元に来てしまったようです」

執事「やっぱりマスターさんが最強だったんですね。良かった。あれ以上がいなくて」


弓使い「……ちょっと待って。ハナシを戻すけどさ。なら」

剣使い「動力源の前で張ってりゃ、魔族はいずれ現れる、ってコトだな!?」パシッ

銃使い「…………」ボリボリ



運転士長「そういうコトになるな。普段から厳重に施錠しているから、そうカンタンには奪われないと思うが」

車掌「善は急げ、ですね。では、お三方は12号車を守る、というコトでいいですか?」

剣使い「おうとも!」


弓使い「教授も私たちと一緒に来るー?」

教授「いや、やめておく。魔族に加えてキノコ頭たちまで相手にしたら、さすがに不利でしょう」

執事「お嬢様は俺が守るので、ご安心を。ですが、いざという時は、助力をお願いします」

銃使い「任せて」コク


車掌「では、言ってまいります。皆さんも、お気を付けて」

副運転士「車掌さんたちも頑張ってくださーい!」



バタン

教授「……ここも静かになってきたね」

運転士長「ああ。残っているのは、四人か……」

執事「さすがに出来るコトが限られますね。何をしましょうか?」

副運転士「うーん、私は戦えないしなあ……」


教授「ていうかお菓子が元でここまで争えるってどういう状況なんだろうね」

執事「それこの事件に関わってるヒトのほぼ全員が一度は思ったコトでしょうね」

運転士長「しかし、そのホンシツがわからなければ、“最強の兵器(仮)”とやらは完成しないのでは?」

教授「む。痛いところを突かれた」



教授「ホンシツ……、ホンシツかぁ~……」

教授「いったい何故ヒトはお菓子が原因で争うのか……」

教授「き○この山や、アル○ォートが何をしたというのか……」

副運転士「そうですよねえ……」

執事「何もしてないハズなんですけどねえ」

運転士長「本来、食間に食べるためだけのお菓子だからな」

副運転士「…………」


副運転士「あっ、そうだ!!」スクッ

運転士長「……? どうしたんだ?」



副運転士「そうですよ、士長!」

副運転士「お菓子は本来、おやつの時間に食べて幸せになるためだけの食べ物なんです!」

運転士長「お、おお。そうだな」


副運転士「だから、夕食が終わった食堂車のヒトたちに、お菓子を配ってあげましょう!!」

副運転士「そしたら、それを見た、き○こ派のヒトたちや、アル○ォート派のヒトたちも……」

副運転士「お菓子の本来の役割を思い出して、改心してくれるかもしれませんよ!?」

執事「は、はぁ……」

教授「そんなムチャな。非現実的だ」

運転士長「まあ、車内販売や、引き揚げたロビーの商品には、お菓子もある。やってみるか」



――6号車【食堂車】


副運転士「はい、どーぞ! き○この山です!」カタッ

乗客A「あ、ありがとう」


執事「列車からのサービスです。たけ○この里です」サッ

乗客B「おや、ありがとう。君、イケメンね」


教授「アル○ォートだよ。良かったら食べるといい」ポスッ

乗客C「おねえちゃん、ありがとう!」

教授「……どういたしまして」



料理長「……あの、士長。いったい何をしているんですか?」

運転士長「う、うむ……。実は、今回の騒動の原因は、き○こたけ○こ戦争でな」

運転士長「だが、だからこそ、お菓子のホンシツを思い出そう、というワケらしい」

魔王(ど、どういうコトなんだ……?)


料理長「なるほど。たしかに、食べ物はヒトを笑顔にしますからね。彼女も目の付け所が良い」

魔王(どういうコトなんだ……)


副運転士「はい、どーぞ! たけ○この里です!」カタッ

仮面の男「ありがとう。とても麗しい女性」ニコ



副運転士「……?」

副運転士(仮面被ってて表情がわからないな……)


仮面の男「ん……?」ピクッ


教授「さて、私の分は配り終わったかな……」

仮面の男「―――君!!」ダッ

教授「え? な、何!?」

仮面の男「とても、とても、とても麗しい女性……。僕は君に一目惚れだ。良ければ名前を教えてほしい」

教授「は? ……な、名乗るほどの者じゃない。だが、それでも呼びたければ教授、と呼ぶと良い」



仮面の男「わかった! それでも呼びたければ教授さん! 僕は君に一目惚れだ!!」

仮面の男「僕は君と時空の彼方まで飛んで行きたい……」

仮面の男「それでも呼びたければ教授さん! 僕と結婚してください!!」

教授「お断りします。それと、それでも呼びたければ、は余計」

仮面の男「ガーン!!!」


副運転士「し、執事さん。教授さん、仮面のヒトに絡まれてますよ」

執事「はあ。まあ、彼女もこれから色んなヒトと出会うだろうから、あしらい方を覚えるのも修行ですよ」

執事「……それにしても、仮面か。まあ、赤色じゃないから別人かな」

副運転士「そういえば。最近は、仮面被るのが、はやってるんですかね」



――6号車【食堂車】 屋根の上


ヒーロー「あ、あれは……! 仮面の男!!」

小型メカ「さっき食堂車に歩いていったのは、見間違いじゃありませんでしたか。黒コートたちは何を……」


小型メカ「とはいえ、私たちには関係ないので、無視しても差し支えありませんが……」

ヒーロー「何を言っている! 言い寄られている女性が困っているだろう!」

ヒーロー「貴様、それでも正義の味方のハシクレか!?」


小型メカ「私は正義の味方になった覚えはないのですが」

ヒーロー「そうと決まれば、とーう!!」ブンッ



小型メカ「ちょっ―――、待っ――――」                           「 7  i77
                                                __| /   V/
                                               └ ┐ 二 ヽ

      .ヽ  ...l .l       ,!   \   l三L  .r|    iゞ   .!  ./  ./ i′.   | /  | |.     ., -'''″
-、、     ヽ  " ヽ.      !     \  .!三l /│  ./    │ ./   ./ /     .|/   | |. _,、,/
  `''-..、   .!'、、  .\    /         ヽ.,!三三三} ,i、/     l‐l゙  ,ノン゛      ,,/,..-|/./
、    `''、, .l  \   ヽ  │           l゙三三三| / . l′   ./ .! シ´       .に> //
. ゙''-、    .\.l   .`'-、.ヽ. !        /.三三三|/  .l    ,l lン゛      . / に>  /
   `''-、.   ..゙!、     ゙ゝゝ         /三三三三 !、  l   ./ | ."     . /    ./ /      ... -ー''',゙
      . l    ヽ      ト、、    /三三三三三 l. !!  ./ ;;l゙     .,,./      .\/_「 |_./ _..-'"´
       .l    ヽ    ..l三゙''-、__/三三三三三三 ∨} / 三|   .,ン/'゙    .,/;∨  .└┐ rァ/'″
        l     `-、   ヽ三三三三三三三三三三 テ三三| .,..‐゙/  . _..-'"三r'" ̄ ̄ ̄.∨..
.、、         l.     .゙i..、  .ヽ三三三三三三三三三三三三 !‐"; / ._..-'''´三三/  _ 「.,、  __. ..,.. - ̄ ̄ ̄
  ゙'';;- ___l      ヽ`'-..,, ヽ三三三三三三三三三三三三 l゙‐'´三三三 iiン-‐''゙゙´三...| |. ゙̄ii./ ″
¬ー-___--ー''''″    __⊥三三`ゝ三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 | |.三三二=―---
.―- __、._..-''" ̄ ゙̄'、三iv.三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三.| | 三二― ̄ ̄ ̄ ̄

    _.. ‐'″       ヽ;;;゙''-_二三三三三三三三三三三三三三三三三二-──--、_. | |.''"゛   _____
_-'"゛            !三三三三三三三三三三三三三三三三三三`'-、 \ ___,゙ゝ.| /  _..-'"゛
                   〉三三三三三三三三三三三三三三三三三三三 \,i,二-‐'' ̄ン'"゛. /
 ̄――--___,゙'-、,、  ,/三三三三三三三三三三三三三三三三v-、三三三三三三三{二フ//.,,_
             `'ジ7"三三三_,,vi丶三三三/.i三三三三三三三三ヽ_ `|三三三三o三三. / /.  .`\__、
      ._,, -'' /  ./ ;;.,r‐'''"゛ ./゙三三三/ .、 |三三三三三三三三三~ 三三三三\ ..く   /. `'-、、 ‐. ̄ ̄
   _..-''´._ /   / ./   、 l三三三/  / .!三三三三三三三三____三三三三三l,_.\/     `゙''''ー- ..
^'''" _ /    ./,./    .,/-l三三三/  _,!__/三三三三三三三三三゙'''ー、, `'''ー ..__三三゙'-、
._..-'"     ,/;i./ .ー ̄^゙'、.,..-''゙三-''7;i,゙_‐´ .,./ 三三三三三 ! ヽ三三三三三゙ゝ、__二ュ三三ヽ、
     ._.. -゙‐─^゙~゙''ー ../゙'''ク´   /三三゙'゙三三三三三三l′ |三三三三三三,____三三三、三三`'、
__‐''"            /     l三三三三三三 /.l三三ヽ .!三三三三 |     ̄ !.、 `'''ーxy..ミll― .__
               /     l丶;.,./ 三-、三/  .l三三三三、三三三|      .| .!     `'-,,ヽ、
                /     ./ /  / ゛  ..l′   .l三三三./ \三三|      .| .|       `'ヽ、
_,,.. -‐''''^゙ ̄ー―┐       ,/'"  /      l,    .ー!'、.;;ノ    `''''、;;.!     │.ヽ            `'-、、
        / /      ,/    ./       .,イ     .! \         ゙' li      ヽr'"'、,
     ,/゛ .`./     /     ./       / .!     .!   ヽ       .ヽ      ヽ  .|'-



副運転士「えっ……!?」クルッ

執事「運転士さん、危ない!!」バッ


魔王(っ! 乗務員の女に窓ガラスの破片が……!)


魔王「―――間に合ええええええええええええ!!!!!!」ヴン


運転士長「……っ!? 貴様、魔族か!?」

運転士長「よせ! 常人に向かってそんなバカげた量の魔力を出すんじゃない!!」

魔王「うるせえ言ってる場合か!!」

魔王「うおおおおおおおおおおおおッ!!!」ヴヴヴヴヴン



教授「……!? 運転士さんの、周りの時間が……」

執事「止まっている!?」

仮面の男「これが魔族の芸当か……!」


魔王「長くは保たんそこの兄ちゃん女を引っ張れええええええ!!!」

執事「え? あ、ハイ運転士さん、引っ張りますよぉぉぉっ!!!」

副運転士「え―――――、一―――――体――――――」

グッ!!!


執事「うおおおおおおおおおおおおッ!!!」



魔王「もう無理!!!」パッ


ガッシャァァァァァァン!!!!!!


執事「うあッ!」ドタッ

副運転士「っ――――」バタッ


教授「バカ執事!! 大丈夫!?」

執事「え、ええ……。なんとか」グッ

運転士長「おい! 大丈夫かね!?」

副運転士「――――」



ヒーロー「やいやいやいそこの仮面の男ォォ!! 貴様、嫌がる女性に言い寄っていたな!?」ビシィィ

仮面の男「何のコトかな……。嫌がる女性に言い寄る、とは」


仮面の男「既に私と彼女は婚約済み。なのに嫌がるとは、どういうコトか」

ヒーロー「飛躍しすぎだろオイぃぃぃ!!? どう見たってガーンってジェスチャーしてたろうが!!」


仮面の男「それは目の錯覚、というモノ……。ああ君、それともアレかな」

仮面の男「その鬱陶しそうな仮面をつけているから、目の前の物事が見えていないのでは?」

ヒーロー「仮面ならお前だってつけてるだろうがァァ!!!」

仮面の男「男は、誰だって……。ココロに仮面をつけているのサ」



――5号車【スイート】 屋根の上


ガシャーン

魔王「―――間に合ええええええええええええ!!!!!!」ヴン

ヴヴヴヴヴン

ガッシャァァァァァァン!!!!!!



桜色の女「お……? これは、モメゴトの気配!!」

桜色の女「今ならコッソリ厨房に忍び込んでもバレない!」

桜色の女「やはり果報は寝て待て! 今こそ好機でござる!」



――6号車【食堂車】


教授「へ。変態仮面と変態仮面が、言い争っている……」

執事「お嬢様、ああいう状況がお好きなのですか?」

教授「ンなワケないでしょう。それよりも、運転士さんの容態は……」


運転士長「……おい。こ、これは……」

魔王「ああ……、うん。うん。これは、これはとてもマズいコトになった」

副運転士「」


魔王「死んでいる。完全に」

第三章「夜中・前」は以上になります。
夜中の読みはヤチュウです。

第四章は、明日12/26(火)の18時ごろ開始の予定です。

井坂幸太郎のマリアビートルみたい
そんで死人が出ねえ、


と思ってたら死人が出て草

列車なのにハイ

楽しそうでとてもよい

普通の人間は撃たれたり爆発すれば死にます。

それでは、第四章「夜中・後」を開始します。
60レスほどの予定です。



――冥界


副運転士「……う、う~ん」ムクッ

副運転士「あ、あれ?」


副運転士「こ、ここは……?」


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副運転士「う、薄暗い森? 私、なんでこんなところにいるんだろう?」

副運転士「さっきまで、たしか私、ドライ・ブラー号に乗ってたよね……」


副運転士「そう。食堂車の皆さんに、お菓子を配ってて……」

副運転士「教授さんが、仮面のヒトに絡まれてて……」

副運転士「そしたら、突然窓ガラスが爆発して……」

副運転士「…………」


副運転士「……え? どういうコト? 理解できない」


冥王「―――そら、無理もありまへんなぁ」ザッ



副運転士「え!?」クルッ


冥王「おはようさん。よう眠れましたか?」

副運転士「え。私、寝てました?」

冥王「んー? いや、わても、いま見つけたばっかりやから知らんけど」

副運転士「そ、そうなんですか。ううん。仕事中なのに気が抜けてるなぁ、私……」


冥王「大丈夫でっか? 立てますか? お手をどうぞ」スッ

副運転士「……わぁっ、白い手。しかもイケメン」ギュッ

冥王「せやろか? ははは。たいしたことないですよ」グッ



副運転士「あ、ありがとうございます。あの、お兄さんは、どちら様で……?」

冥王「わてですか?」


冥王「わては、この冥界をあずからせてもろてる、冥王の立場におるもんです」


副運転士「へえ。この冥界の、冥王さん……」

副運転士「……?」

冥王「ははは。ようわからん、いう顔ですなぁ」


冥王「他の死神たちも、全然来おへんし。誰か来るまで、お話でもしますか?」

副運転士「え、ええ。ゼヒお願いします」



冥王「うーん。いうても、どっから説明したもんか……」

副運転士「あ、あの。じゃあ、まず、ココはどこなんですか?」

冥王「ここ? ああ、その質問ならかんたんやな」


冥王「ここは冥界。体を離れた魂が訪れる、死後の世界いうやつです」


副運転士「え。し、死後の世界……?」

副運転士「じゃ、じゃあ私、死んじゃったんですか!!?」

冥王「たぶん、そうなんやろなあ……」

副運転士「たぶんって!!」



冥王「でも、なんもないのに死なへんやろ。なんか心当たりあらへん?」

副運転士「こ、心当たり、ですか……」


副運転士「うーん。そういえば、さっき、目の前で窓ガラスが爆発したんですけど……」

冥王「ははあ。ガラスの破片の刺さりどころが悪ぅて死んだ、いうわけか」

副運転士「いやいやいや! ガラス程度じゃ即死したりしませんよ!!」

冥王「そうかなあ。生き物って、案外かんたんに死ぬもんやで?」


冥王「せや、ほならクイズや。今の時分、特に年始の頃は日本人よう死ぬんやけど、なんでやと思う?」

副運転士「え? 日本人限定ですか? なんだか不謹慎クイズですね……」



副運転士「そうですねえ。寒くて死ぬヒトが多い、とか?」

冥王「そんなん日本人どころか、人間でも他の生き物でも、地球の半分はせやろ」

冥王「冬眠したまま出てこおへん虫さんとか動物とか人間とか、ようおるで」

副運転士「う。生々しいコトを言わないでください……」


副運転士「うーん、難しいなあ。何かヒント、ありませんか?」

冥王「せやなあ。まあうまいけど、なんであんな危険なもん、よう噛まんと食うんかわからんわ」

副運転士「……あっ! もしかして、おモチですか!? お雑煮の!」

冥王「正解。正月は、モチ一気に食うてポックリ逝きよる年寄り多いから、注意したってな」

副運転士「は、はい。喋りながらだと、どうしても咀嚼がおろそかになるんですよね……」



副運転士「……って、いったい何のクイズしてるんですか」

冥王「ははは。ほな、話続けよか」


冥王「ここは冥界。生き物の魂いうんは、生を終えたら死後、天界にいくんやけど……」

冥王「冥界は、外界から天界に向かう時に通る、死後の廊下みたいなもんやな」


副運転士「し、死後の廊下……。それって、三途の川みたいなモノですか?」

冥王「ええ。ありますえ、三途の川。おおむね日本の人は皆、そう言わはりますな」


冥王「ちなみに三途の川の渡り賃は、六文銭やのうても、三百円くらいでええですよ?」

副運転士「意外とリーズナブルだ」



冥王「でも最近は、舟渡すより、でかい橋通したほうがええんちゃうか、いう意見も出ててなぁ……」

冥王「船頭の仕事がなんや、公共事業や、利権やなんやで揉めてるんやわ」

副運転士「へえ。冥界も大変なんですね……」


冥王「さて。しかし、魂いうのは、全部が全部すなおに冥界には来てくれまへん」

冥王「でも来てくれな、わてらとしては困る。そこで、魂の運搬を任せてんのが……」

副運転士「……! もしかして、死神、とか……?」

冥王「そう。魔界の死神族。魂を運ぶ力を持った、特別な一族」

副運転士「や、やっぱり。さっきの前年度末の春のハナシ、本当だったんだ……」

冥王「やっぱ死に関わるせいで、魔界でも忌まれますなぁ。彼らが悪いわけや、ないんですが」



冥王「あれ、今の口ぶり……。死神族のこと、知ったはるんですか?」

副運転士「え、ええ。直接関わった、ワケじゃないですが……」

副運転士「私の働いてる列車が、今年の春に、死神の大群と戦ったらしいんです」

冥王「ははあ。すると、あんさんが……」


冥王「お嬢さん。本州縦断特急、ドライ・ブラー号の乗務員さんか?」

副運転士「え! 私たちの列車をご存知なんですか!?」

冥王「ええ、そらもう。懐かしいなあ。それが今回、冥王のわてが出張ってきた理由なもんでして」


冥王「―――今日の夜。乗員乗客が全員死ぬ、ドライ・ブラー号の大量の魂をきちんと回収するために」



――6号車【食堂車】


運転士長「……おい。こ、これは……」

魔王「ああ……、うん。うん。これは、これはとてもマズいコトになった」

副運転士「」


魔王「死んでいる。完全に」


執事「運転士さん!! 大丈夫ですか!?」ダッ

教授「士長さん! 運転士さんのケガは? まあ、悪くても切り傷くらいだろうけど……」

魔王「すまない」



魔王「死んでいる。完全に」


教授「は……?」

執事「い、いや。ガラスの切り傷くらいで、ヒトはなかなか死なないでしょう……」

執事「というか貴方は誰ですか? 給仕の方!!」


魔王「―――フ。よくぞ聞いてくれた!」バッ

執事「マント!? いったいどこから」

魔王「我こそは、あまねく魔性を統べる者。預かる座席は碧夕王。そう、わかりやすく言えば――――」

料理長「ああ、彼はうちの食堂車のバイトだよ」



魔王「そう! わかりやすく言えば、この食堂車のバイト!!」


魔王「って違うから!! この食堂車でバイトしてるのは成り行きですから!」

料理長「え、違うの? そうだったのか……。まあ、ちゃんとシゴトしてくれれば問題ないよ」

魔王「それじゃあ結局バイトじゃないですかッ!!」


教授「え? え? いったいどういうコトなんだ……」

執事「わかりません。士長さん、貴方はどう思われ――――」


運転士長「ホンモノだ」

執事「えぇ!?」



運転士長「……あまねく魔性を統べる者。誉れ高き、七魔公王がその一人」

運転士長「預かる座席は碧夕王。最も多くの魔族の長。……そうだな?」


運転士長「―――魔王よ」


教授「ま……!」

執事「ま、魔王!? そ、それはもしや、読んで字のごとく……」

運転士長「ああ。さっきも現れたという魔族、その王だ」


魔王「お、おお! やっとハナシのわかる奴が現れたな! そう、我こそは――――」

ウェイトレス「うわああああ!!!」



魔王「ええもう今度は何!?」

料理長「ウェイトレスちゃん! どうした!?」


ウェイトレス「ど、どろぼー!!」

運転士長「ドロボウだと!?」

ウェイター「大変だ、料理長! 厨房に、料理を取りに戻ったら……」

ウェイター「料理が着物姿の女に全部食われちまってたんだ!!」

料理長「なんだって!?」


桜色の女「ふうー。さすがは豪華旅客列車の料理。今まで食べた中でも、なかなか美味でござった」シーハー



ウェイター「あ、アイツだ!!」

料理長「なんだと!? 死ね!」バッ


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              f>::..、,r=、
. ィ┐   r=、   人ニ三//゙"'''ー- _                ,.イ ., =7
/:エ!   {三\    >/∧゙丶、::::::::::::::::゙"'''ー- _          | |//
i王l    ∨三:゙'┐    ̄ \ ``*::、::::::::::::::::::::::::: ̄≠ァ     | / , =7   ,イ二.7
王l     ∨三/゙ヽ、     ゙丶、 __ ゙゙"''''''''''''''''"´,..<       | |//   _/ム_   ,イ,イ ,イ
ィへ     }三/ヽ::::`ヽ、        ̄ ''''''' "´            |_,/    '──‐'   レレ //
,:イ´        ̄\ ヽ::::::::`ヽ、                                       /'
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__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==

―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━


桜色の女「な!? どぅおっわったったったぁぁぁ!!!」サッ

ドズッ ヴウウ…ン



料理長「ちっ。仕留め損ねたか……」

桜色の女「な、こ、こ、殺す気でござるか!? ていうか今どっからナイフ出したでござるか!」

桜色の女「……って、刃先にチーズがついてる。これ、料理包丁でござったか!!」


料理長「―――つまみ食い、死すべし。食い逃げ、死すべし。食後のシーハー、死すべし……」

料理長「貴様は今、この料理長の三つの禁忌をすべて破った!! もはや生かしてはおけぬ!!」

料理長「ウェイターさん、ウェイトレスちゃん! 何としても、この女を殺せ!!」

料理長「なます切りにして明日のブレックファーストメニューにしてやる!!」


桜色の女「言ってるコトがシャレにならないでござるよぉぉぉ!!?」



桜色の女「ひいぃぃ。くわばら、くわばら。こんな危険地帯からは、さっさと退散するでござる……」

ガチャッ

桜色の女「ぬゴッ!!」ゴツン


桜色の女「な、いったい、な……。今度は、ひとりでに扉が開いて……」


革ジャン「あー、くそ。2~5号車はカラブリだったな……」

革ジャン「全客室で聞き込みしたが、怪しい乗客は、部屋で白い粉吸ってた白ドレスの女くらいで……」

黒コート「あ、ああ。だが彼女の身元に、不審な部分は無い。どこからどう見ても普通の乗客だった」


革ジャン「やれやれ。仕方ない、俺たちも食堂車で腹ごしらえを……。ん?」



ヒーロー「だいたいお前の仮面、アクシュミだよなぁぁ!! 鉄! ただの、鉄だし!!」

仮面の男「ふふふ……。この仮面は実は、僕専用の、オーダーメイド品なのだよ」

仮面の男「このツヤ、この感触……。わかるかい? たしかに素材は鉄だが、見た目ほど重くはない」


仮面の男「しかしなんだね君、その安っぽい、プラスチックの仮面は……」

仮面の男「まるで百均の仮面だ。あれかね君、百均ヒーローかね?」

ヒーロー「ああそうだ! この仮面は百均だ! 庶民の味方の百均は正義の味方だぁぁぁ!!」


革ジャン「あれは、俺たちが追っている指名手配犯の、仮面の男!!」

黒コート「―――が、二人!!?」



黒コート「ほ、ホンモノはどっちだ……?」

黒コート「追っていると言っても、仮面の男という情報しか貰ってないからなぁ……」

黒コート「せめて鉄の仮面か、赤の仮面か、わかればいいんだが……」

黒コート「さっきの乗務員のハナシじゃ赤色だったってコトだし、赤いほうか?」


革ジャン「……センパイ。何を迷う必要がある?」ジャキ

黒コート「は?」

革ジャン「よく考えてみろよ。平和な国の、平和な時代の列車で、仮面なんて被ってるんだぜ……」


革ジャン「どっちも不審者に決まってるだろうがああああああ!!!」ダッ



黒コート「待てコラ革ジャン!!!」バン!!!

革ジャン「ぎゃあ!!!」ドサッ


革ジャン「な、何しやがるんだテメエ! 鉢金巻いてなきゃ即死だったぞ!?」

黒コート「さっき1号車で言ったハズだ。つぎ暴れたら私がお前の脳天をぶち抜くと……」

黒コート「まさかさっきの約束、もう忘れたってほど鳥頭じゃないよなぁ……?」グリグリ

革ジャン「熱い熱い銃口でグリグリしないでヤケドする」ジュウウウウ


運転士長「タ、タイムパトロールの方!?」ダッ

黒コート「おや、この列車の責任者の方。さきほどぶりです」



運転士長「ど、どうしてココに……?」

黒コート「いや。さっきお話した通り、2~5号車の事情聴取が終わったのですが、カラブリで……」

黒コート「次は客室に戻るか、9~11号車の取り調べをするか、それともこの食堂車で夕食をとるか」

黒コート「相談していた結果、とりあえずココを通った、というワケです」

革ジャン「そんな相談一言もしてねえだろ……、完全に独断じゃねえか……」

ゴツン

革ジャン「あいたっっ!!」


運転士長「なるほど……。しかし、申し訳ない。食堂車は今、この有様で……」

黒コート「は?」



仮面の男「百均だ、庶民だと、下品だな。仮面を被るなら、言動もミステリアスにすべきではないかね?」

ヒーロー「シャーーラップ! 仮面は正体を隠すためだけのモノ! 正体隠して弱きを助ける、ヒーロー!」


教授「し、死んだとか、ウソでしょ!? 運転士さん!!」

魔王「すまない、本当のコトなんだ……。本当にすまない」

執事「なんとか彼女を助ける方法は無いんですか!?」


ウェイター「俺はアンタに恨みは無いが嬢ちゃん、年貢の納め時ってやつだ!!」ビュッ

桜色の女「モ、モップと箒とは思えない、その棒さばき! さてはおぬしら、ヒトカドの戦士でござるな!?」

ウェイトレス「ううん、ただの掃除屋だよ」シャッ



黒コート「……こ、これは。ひどい」

革ジャン「昨日の状況以上だな。この列車、なんかヤバいモン憑いてんじゃねえかあ?」

運転士長「う、うむ。たしかに、厄ネタを積んでいるといえば、積んでいるが……」


料理長「ええい、チョコマカとっ!!」ババババッ

桜色の女「ぬおおおおっ!!!」キンキンキンキン

桜色の女「ふ、そこな、ふくよかな料理人……。拙者に刀を抜かせるとは、やるでござるな……」


運転士長「……肝心の料理長すら、この有様で」

黒コート「優雅に食事を、という状況には程遠いですね……」



黒コート「良ければ、この状況を収めるのに、ご協力しましょうか?」

運転士長「本当ですか!?」

黒コート「ええ。運良く、私たちの目的である、仮面の男……」


仮面の男「はっ! 君がヒーローだというのなら、私はさしずめ、悪の怪人・鉄仮面卿かな!!」

ヒーロー「なんだとおぉぉぅ!? よし! そこになおれ! 俺が直々に正義の鉄槌を下す!!」


黒コート「……のどちらかも、あの中にまぎれているコトですし」

桜色の女「……? 鉄仮面卿!?」バッ


仮面の男「ふふふ、いいだろう。僕の左は……。スゴいぞ?」スッ



桜色の女「ちょっ、ちょっ―――! 待った! 待ったー!!」

料理長「なんだ……?」

桜色の女「ご、誤解でござる。拙者は敵ではないでござる!」


桜色の女「そこのお姉さん!!」

黒コート「へ。私か……?」

桜色の女「そうでござる。もしや、あの仮面の男と敵対しているのでござるか?」

黒コート「あ、ああ。鉄のほうか、赤いほうか、イマイチ断言しかねるが」


桜色の女「なら、鉄のほうは、拙者に任せてほしいでござる」



黒コート「何?」

桜色の女「だから、鉄仮面のほうは、拙者が仕留めるでござるよ。つまり、おぬしらの味方でござる」


桜色の女「なので料理を食べたコトは見逃してほしいでござる! この通り、カンベン!」

料理長「貴様、そんなコトで許されると思って……」

ウェイター「まあまあ、状況が状況だぜ。おやっさん。ここは休戦といこうや」

ウェイトレス「うん。正直戦うのめんどくさい」


革ジャン「ってコトは、俺の相手は、赤いほうか……。オーケー、だな?」

運転士長「うむ。各自良ければ、私に異存はない」



魔王「彼女を助ける方法か……。まあ、あるにはあるが」

執事「それはいったい!?」

魔王「実は、世界には、生き物が死んだ後に魂が行くコトになる、冥界って場所がある」

魔王「もう死ぬべき人間、まだ死ぬべきでない人間。それは、冥界で一括管理されている」


魔王「そして今の嬢ちゃんは、俺が魔力の浴びせすぎで殺してしまった、いわば事故だ」

魔王「加えて、冥界の王である冥王は、俺の知り合いだ」

魔王「だから、俺が冥王に頭を下げて、お願いすれば……」

執事「まだ死ぬべきでない人間として、蘇生できるかもしれない!?」

教授「あ、頭が痛くなってきた……」



魔王「そうだ。だが冥王はシゴト熱心だからな」

魔王「ウカウカしてると嬢ちゃんの魂も、彼岸に連れていかれるかもしれん」

魔王「そして天界に連れていかれれば、どうダダをこねても蘇生は不可能だ」

執事「そんな……!」


魔王「だから事は一刻を争う。一刻も早く、俺が行って、嬢ちゃんを連れ戻さないと」

教授「待って……。冥界には、どうすれば行くことが出来る?」

魔王「おい待て。まさかお前さんも行く、なんて言うんじゃ……?」

教授「……今回の事態は、私が遠因のようなモノ。彼女がこうなった、責任の一端は私にある」

魔王「……。最近の人間も、やっぱ捨てたモンじゃないな」



魔王「だがダメだ。冥界は、死神族が跋扈する、魔族の領域」

魔王「魔族である俺なら出入りも自由だが、人間だとそうはいかない」

魔王「……ここは堪えてくれ。嬢ちゃんの魂は、俺が責任を持って必ず取り戻す」

教授「……わかった。信じるよ、魔王」


魔王「それじゃ、よいしょっと……」ガタッ

執事「……? 壁にもたれかかる必要が、あるのですか?」

魔王「ああ。冥界へ行くには、外界に肉体を残して、魂だけを飛ばす必要があるから、な」

魔王「だが俺の肉体に何かあれば、外界へは戻ってこれない。俺が戻るまで、俺を守ってくれよ」

教授「ええ。ならば私も、貴方の頼みに責任を持つ」



――冥界


副運転士「え! 私たちの列車をご存知なんですか!?」

冥王「ええ、そらもう。懐かしいなあ。それが今回、冥王のわてが出張ってきた理由なもんでして」


冥王「―――今日の夜。乗員乗客が全員死ぬ、ドライ・ブラー号の大量の魂をきちんと回収するために」


副運転士「え……?」


副運転士「乗員乗客が、全員死ぬ……」

副運転士「……って、どういうコトですか」キッ



冥王「おや。目つきが変わりましたなぁ」

副運転士「……あのですね。冥界の冥王だか、なんだか知りませんが」


副運転士「いくらイケメンでも言っていいコトと悪いコトがありますよ……!!」グイッ

冥王「え、エリ首捕まんとってください。わてが殺してるわけやあらへんし」ググググ


副運転士「…………」

冥王「く、詳しくお話しします。やから、放してくれまへんか」ググググ

副運転士「っ……」パッ

冥王「ふ、ふう……。お嬢さん、見かけによらず、力ありますなぁ」



副運転士「……もう一度、おうかがいします」

副運転士「今日の夜。ドライ・ブラー号の、乗員乗客が全員死ぬ、ってどういうコトですか」

冥王「……。それなら、まずこれを見てくれまへんか――――」


死神A「め、冥王さま~! 勝手に動き回らないでください!」

冥王「お。死神はん、お疲れさんです。探してるの、この人ちゃいますか?」

死神B「……! ド、ドライ・ブラー号の制服! マチガイない、この女性です!」

副運転士「え……? あの……」


死神B「乗務員さん! その節は、本当に申し訳ございませんでした」ガバッ



副運転士「え? あ、あの、何か知りませんけど、頭上げてください!」

副運転士「と、頭部はついてないみたいですけど」

死神B「い、いや。そういうワケには……」


死神B「覚えていらっしゃいませんか? その、ですね……」

死神B「今年の春、ドライ・ブラー号にごメイワクをおかけした、死神族の者なんですが……」

副運転士「……えっ、ああ! 今年の春の!?」

死神B「そうです! 思い出していただけましたか!?」

死神B「その節は、本当にごメイワクをおかけしました。申し訳ありません」

副運転士「いやいや、いいんですよ。それに私、その当時いた乗務員じゃありませんし」



死神B「そうなんですか? しかし、私たちが貴女のご同僚に、ごメイワクをおかけしたのも事実……」


死神B「……それと。今回のコトは、本当に災難でした。お悔やみ申し上げます」

副運転士「……?」

死神B「けれど、今年の春の罪滅ぼしというワケではありませんが……」

死神B「ドライ・ブラー号の皆さんの死後のお世話は、私たちが責任を持ちたいと思います」

死神B「どうぞご安心ください」

副運転士「し、死後の世話……。それに、今回のコト、とは」


冥王「お嬢さん、それですよ。わてが今から見せよう思たんは」スルルッ



副運転士「え……? なんですか、この巻物は?」

冥王「そうですなあ。いわゆる、エンマ帳ってやつやろか。その複製品です」

副運転士「エンマ帳……! それって、これから亡くなる人物の名前が書かれているという……?」

冥王「そうです。それで、ここを見てくれまへんか。今日の部分です」


副運転士「……う、うそ。そ、んな…………」

副運転士「ド、ドライ・ブラー号のみんなの名前が、ビッシリ、と……」

冥王「わかってもらえましたか?」

冥王「何も悪気があって、乗員乗客が全員死ぬとか言うてるんちゃいます」

冥王「単に、このエンマ帳に名前があるから、魂に取りこぼしが無いよう来ただけなんや」



副運転士「そ、そうだったん、です、か……。…………」

副運転士「……ごめんなさい。冥王さん。さっきは、掴みかかっちゃって」

冥王「いやいや。ええんですよ。誰にでも、マチガイはあります」


冥王「でも、どうしてそこまで……?」

冥王「例えば、わてが冥界の役人ごと、天界の主神はんに消されることになったとしても……」

冥王「そんな主神はんに掴みかかるほど怒らへんと思うけどなあ」


副運転士「……私、今日列車が大変なコトになるって、知って。誓ったんです」

副運転士「この年末年始の運行を、絶対に成功させるんだって」



冥王「え……?」

副運転士「どんな大変なコトがあっても、乗客の皆さんを守るって」

副運転士「そう決めてたんです」


副運転士「だから、ドライ・ブラー号のみんなや、乗客の皆さんが死ぬ、なんて言われて……」

副運転士「つい、カっとなっちゃって」


副運転士「…………、…………」グス


副運転士「……でも、だったら、だからこそ!」

副運転士「やっぱり私は、こんなところで死んでなんかいられません!!」



副運転士「お願いです、冥王さん! 今すぐ、私を生き返らせてください!」

副運転士「私は今すぐドライ・ブラー号に戻って、みんなを助けなきゃいけないんです!」

冥王「わ、わがままやなあ、あんさん。ちゃんと大学出たはるか? いくつ?」

冥王「あのな。このエンマ帳に書かれた、天界の意思いうのは絶対や。わてらには変えられへん」

冥王「そしてわてはただの執行者。執行者が、自分の意思で、上の命令に背いたらいかんのや」

副運転士「うぐ……。わかります。シゴトではちゃんと命令に従わないとですよね」

副運転士「でも、そこをなんとか! これは、これだけは! 絶対に譲れないんです、私は!!」

冥王「おろろ……」


魔王「……お――――――い!」



死神A「……おや? どこからか、声が」

冥王「なんや聞きなじみのある声やなぁ」


魔王「お――――い! 誰かいないか~……」


冥王「ああ、やっぱり。おーい、こっちやで~」ノシ

魔王「お――……。お? お!! ……あー、やっと見つけたぜ!」


魔王「あんた、ドライ・ブラー号の乗務員の嬢ちゃんだな!?」


副運転士「え……?」



冥王「おや、魔王はん。久しぶりですなあ。いや、今は碧夕王やったか?」

魔王「それはただの称号だ。お前こそ元気みたいだな、冥王」

冥王「ははは。みんな死んどる世界で、元気にやらせてもろてます」


魔王「しっかしお前、久し振りに来たが冥界、相変わらずアクシュミだなあ……」

魔王「お前さ、こんな鬱蒼とした森じゃなくて、もっとキラキラしたネオンビルとかにしねえ?」

魔王「死んだ魂もさ、死んだうえに来たのがこんなトコじゃあ、そりゃあ萎えちまうってモンだぜ」

冥王「はあ。しかし木ィ切り倒すにしても、冥界環境保護団体がうるさぁてなあ……」


副運転士「え、あの……? あれ、ええと?」



魔王「―――お。そうだ、お嬢ちゃん。俺の用は、お前だ」


魔王「帰るぜ、今すぐ。あんたの職場、ドライ・ブラー号に」


副運転士「え……!?」

冥王「ちょ、ちょっと。なに言うてはるんですか?」

冥王「魔王はん。いくらあんさんでも、それは困ります」

冥王「死者の魂を如何するかは、冥界の領分。魔王の仕事とちゃいます」


魔王「ああ、それだけどな。その女の子、俺が間違って殺しちまったんだ」

魔王「つまり完全な事故ってワケ。過失事故。となれば本来、彼女はここで死ぬ運命じゃない」



魔王「なら、外界に戻っても、何の問題も無いだろう?」

冥王「ふむ……。魔族による、事故ですか。魔界との規定もある。せやったら、まあ……」


冥王「せやけど、それはそれで、また別の問題になるんちゃいますか?」

冥王「魔界の魔王、それも七魔公王が、魔界のルールを破って人間殺したとか……」

魔王「うぐっ! そ、ソーベリーウィーク……」

魔王「ま、ま。そこは俺とお前の仲ってコトで? ちゃちゃっと揉み消しといてくれよ」

冥王「はあ……。わかりました。なら、そのように手配しときます」

魔王「よっしゃ!!」

冥王「まったく。そんなコトで、部下の魔族に示しがつくんやろか……」



副運転士「あ、あの……? 貴方は……」

魔王「ん、俺か? 俺は、たまたまドライ・ブラー号に乗り合わせた魔王の者だ」


魔王「良かったな、嬢ちゃん。また冥界から人間界に戻れるコトになったみたいだぞ」

副運転士「え……。ほ、本当ですかっ!?」

魔王「ああ。本当だ。魔王、ウソつかない」キラ


死神A「あ、あの……! 七魔公王の、碧夕王さまですよね! サイン貰えますか!?」

魔王「ん? 死神族のところの死神か。俺の管轄じゃないが……。ああ。お前の着てるローブでいいか?」

死神A「あ……! ありがとうございます! 一生タイセツにします!!」



冥王「……はい、はい。今、このお嬢さんが外界に戻れるようにしといたで、魔王はん」

魔王「ありがとうよ、冥王。やっぱ持つべきモノは友だな」

冥王「せやけど、意味あるんやろか? お嬢さんも含めて、列車の乗員乗客は、今日皆死ぬ運命やで」


魔王「何……?」

冥王「ほら。エンマ帳の、ここ見てみ。こんだけの人が死ぬんやから、相当な事故や思うが……」

魔王「……本当だ。乗務員の嬢ちゃんはモチロン、教授の嬢ちゃんや、執事の兄ちゃんまで」


魔王「ちなみに、死因はなんだ?」

冥王「死因? ええと。―――なんやこれ? 火砕流に、土石流。火山弾、やと?」



魔王「火砕流、土石流、火山弾!? や、やっぱり……」

冥王「ま、まさか。ドライ・ブラー号で、アレが目覚めるとでも……」


冥王「……ちょっと待て、魔王はん。今、『やっぱり』て言うたか? あんた、なんか心当たりあるんか!?」

魔王「俺の独自の調査だが。今回のドライ・ブラー号の事件には、天界が関わっている。十中八九」


冥王「……なるほど。そういうことか。ちょっと、お嬢さん。一つええですか?」

副運転士「え。あ、ハイ。なんですか……?」

冥王「さっきあんさん、『今日列車が大変なコトになるって、知って』……って、言いましたな」


冥王「―――それ。誰から聞いた情報や?」



副運転士「え、ええと。言っても、信じてもらえるか、わからないんですけど……」

副運転士「夕方ごろ、運転室に突然現れた、白ドレスの女のヒトです」

魔王「……!!」


魔王「おい、嬢ちゃん! ソイツは何を言っていた? いったい何と名乗った!?」

副運転士「いや、名前は聞いてないんですけど。要約すると、この列車の運命は、私たち次第だ、と」


魔王「……白ドレス。白色。運命。なるほど。なるほどなあ」

冥王「なにやら、きな臭ぁなってきましたなぁ。このエンマ帳に、書かれていることも」パンッ

魔王「ああ。エンマ帳を発行しているのは、天界……。これはひと悶着、ありそうだぜ」



魔王「おい、乗務員の嬢ちゃん! そうとなれば、急いで、列車に戻るぞ」

副運転士「えぇ? そりゃ、列車には戻りますけど……。どうして、急いで?」

魔王「俺たちのいない間に、悪さをされちゃあ困るからだ。そう、今回の黒幕――――」


魔王「―――“白の大天使”、にな」


副運転士「だ、大天使!? それはいったい……」

魔王「読んで字のごとく、だ。大天使。大いなる天の使い」

魔王「中でも白の大天使といやあ、神出鬼没、自由奔放、ハタ迷惑で有名だが……」


魔王「そのエンマ帳の、死亡リスト。それも白の大天使が原因の可能性がある」



副運転士「と、というコトは……!?」

魔王「ああ。エンマ帳の死亡リストは天界の管理。つまり、白の大天使をとっちめれば……」


魔王「その死亡リスト。無かったコトにだって、出来る」


副運転士「……!」

副運転士「よ、よくわかりませんけど。それはつまり……」

副運転士「ドライ・ブラー号のみんなや、乗客の皆さんを、助けるコトができるんですねっ!!?」

魔王「ああ。その通りだ」


冥王「やれやれ。知らんうちに、なんか大事になってきましたなぁ。しかし、なら、ついに……」



魔王「というワケで、俺たちは外界に戻る!」

魔王「もしもエンマ帳の中身が書き換わった時の対応! それと、俺の不祥事の揉み消し!」

魔王「頼んだぜ! 冥王!!」

副運転士「あ、あの! 冥王さん、お世話になりました! また会いましょう!!」


冥王「はいはい。いや、あんまり会わへんほうがええと思うで……」


死神A「……あの、冥王様。つまり、これはいったいどういう?」

冥王「うーん。まあ、このエンマ帳の中身も、運命も、絶対やない。いうことかなあ」

死神B「はあ……?」



――6号車【食堂車】


魔王「―――はっ!」パチクリ


執事「ま、魔王さん! お戻りですか!?」

魔王「あ、ああ……。なんとか。当初の目的は、達成できたみたいだ」


副運転士「う、うーん……。あれ、ここは?」パチッ


教授「う、運転士さん!! 良かった……」ギュッ

副運転士「きょ、教授さん!? く、くるしい。……って、あれ?」



桜色の女「―――ふっ!」フォン

仮面の男「おっと危ない!」バッ


スパッ


仮面の男「ふう……。後ろのテーブルが音も立てずに真っ二つ、とは。腕を上げたね」

仮面の男「それよりも、君もこの列車に乗っていたんだね。春風の旅人よ」

桜色の女「ああ。元々は、この時代にメイワクをかけたという、貴様を誅するためだったが……」


桜色の女「今は、一人の剣客として。貴様の血が欲しい」スッ

仮面の男「僕を列車の者に売り渡す、か。それもいいだろう。僕たちの戦いは、行雲流水なれば……」スッ



黒コート「革ジャン! そっちに行ったぞ!!」


革ジャン「くそがあ、チョコマカとっ!!」バンバンバン

ヒーロー「ふははははっ!! 当たるか当たるか、当たるモノかぁっ!!」ヒュンヒュンヒュン

革ジャン「てめえ! バク転しながら避けるとか、ナメてんのかああああ!!?」

ヒーロー「いやいやいや!! ナメてなどいない!! 単に君の弾道が非常に読みやすいだけだ!!」


黒コート「―――そうだな」フワッ

ヒーロー「え……?」クルッ

黒コート「お前の動きも、非常に読みやすい」



乗客A「な、なんなんだね、これは。さっきから……」

乗客B「こんなイベント聞いてないけど!?」

乗客C「すごーい! たのしい!」

ウェイター「コチラ、当列車のサプライズイベントとなっております」

ウェイター「危ないので、白線の内側でご観覧ください」

ウェイトレス「ごかんらんくださーい」


副運転士「な、なんですかコレは……!? な、何がいったいどうなって」

運転士長「おや、気がついたか。いや、君が気を失う前後に色々あってね……」

副運転士「色々ってレベルですか!?」



―――それは春風などという生易しいものではなかった。


桜色の女「―――。―――っ」

仮面の男「ふっ―――、ふっ! やはり君の剣筋、美しい! 客室に刀を置いてきた僕が恨めしい!!」


女の剣筋に一切の無駄はなかった。

一振り、一振りが、男の首を正確に狙う一撃。すんでのところで避けられた斬撃は、
取って返す刀で、再び男の首に追いすがる。その姿はまるで、獲物に食らいつく狼のように。

いや。狼と形容するならば、この刀の使い手こそが、この場で最もふさわしいだろう。

桜色の女の、普段の風来坊らしい、泰然自若とした余裕の姿は消え失せ。
ただ敵の赤い命の奔流を求める、かまいたちの如き飢狼だけが、そこにいた。



―――突如としてそれは、赤い仮面の真後ろに現れた。

ポリマースーツは、けっして革ジャンの男の銃技をあなどっていたのではない。
単純に、革ジャンの男の銃弾は、彼にとってバク転が最も避けやすかったのだ。

正確ではないが、常人の反応速度をゆうに超えた速さで放たれる、早撃ち。
まともに目測で指の動きを読んでいたのでは、その瞬間に既に撃ち抜かれている。

ならば、それを上回る速さで回ればいいじゃないか。ヒーローはそう考えた。

だが、その合理的な考えが、正義の味方気取りの男の背後に、致命的な隙を与えた。


黒コート「時空整備課を……」

ヒーロー「――――あ」

黒コート「ナメるなァァッ!!!」



黒コートの女は、ただの一般人である。

少し運動の才能に優れ、少し技術の努力を積み、少し踏んだ場数が人より多いだけの、
付け加えるならば少し未来からきただけの、ただの一般人である。

特別な能力など、何も持っていない。
魔族や一部の傭兵のように、魔法を使えるわけでもない。
ましてや、この日を待ちに待ったテロリストのように、重火器があるわけでもない。

―――そう。彼女が持っているのは。


ヒーロー「ぶべらああああああああああああああああああ!!!!!!」


鍛え抜かれた筋肉。漆黒に覆われた、長い肢体から放たれる――――

一撃必殺の体術。赤い硬質な背中を撃ち抜いた、ただ一発の蹴撃であった。



桜色の女「な―――? 赤いカタマリ……!?」

仮面の男「えっ? あの、ちょっ―――、待っ――――」


―――仮面の男は、完全に気を取られていた。

いや、彼の名誉のために言い替えるならば。
仮面の男は、完全に自分たちの戦いに酔いしれていた。

桜色の女との、幾度目かになる決闘。
彼と彼女の戦いは、必ず偶然によって起こる、戦いのためではない戦いだった。
だからこそ仮面の男は、その戦いの“意味の無さ”に、酔いしれていた。

そう、酔いしれていた。

酔いしれていたがゆえに、桜色の女は気付き、彼は気付かなかった。
とある黒い警察官が蹴り飛ばした、赤い塊が、自分たちの元に飛来していることに。



小型メカ「まったく。さっきから、何をしているんですか? バタバタと……」フワフワ

小型メカ「いいですか? ヒーロー気取りのお兄さん」

小型メカ「貴方の目的は、私たちの同僚が追っている、鉄仮面の男ではなく――――」

ヒーロー&仮面の男「「ぶべらああああああああああああああああああ!!!!!!」」


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                         | イ...::| く>      仮面の男&ヒーロー →  ',’,・/⌒ヽ(|  |:::::::::::::::::::::::::
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                  【 食堂車の壁 】                             【 線路の近くの木 】
                         |   ..::|                               |  |:::::::::::::::::::::::::
                     ,、,...、...|   ..::|.... ,,、,.                               |  |:::::::::::::::::::::::::
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  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
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                 ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙
                    ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙|lii|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´`゙
                         ´゙゙´`゙``´゙`゙´``´゙`゙゙´´



小型メカ「ええええええええええええええええええええええええ!!!!!?」

革ジャン「あ、オペ子ちゃんのメカじゃん。こんなとこで何やってんだ?」

第四章「夜中・後」は以上になります。
登場人物はこれで全員です。

第五章は、明日12/27(水)の18時ごろ開始の予定です。

キャラ増えすぎて分からないからまとめてみた、ついでに目的も

白ドレス(女)  :特級指名手配犯00046号、目的は「“見世物”の見物?、乗客たちが運命を変える?」事
店員       :サッポロ駅売店のただの店員
紳士(男)    :白ドレスの追っかけ、目的は「任務を遂行する?」事
駅員       :紳士の喫煙を注意したただの駅員
車掌(男)    :ドライ・ブラー号の車掌、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
ウェイター(男) :食堂のウェイター、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する 
ウェイトレス(女):食堂のウェイトレス、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
副運転士(女)  :ドライ・ブラー号の副運転士、一度死んでいきかえった、目的は「乗客の方々に上質な列車の旅を提供する」事
運転士長(男)  :ドライ・ブラー号の運転士長、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する、目的は「乗客の方々に上質な列車の旅を提供する」事
パイロット    :キノコ頭とテロリスト達を運んできた、ヘリで来た
キノコ頭(男)  :テロリスト達のリーダー、き○こ派、目的は「教授の持つ、“最強の兵器”を手に入れる」事
テロリストABCD  :キノコ頭の部下、き○こ派、
教授(女)    :高校生で科学者、“最強の兵器”持つというが実は完成してない、冬休みの宿題に手を付けてない、目的は「オーサカで“最強の兵器”の発表会をする」事
執事(男)    :教授の部下、目的は「教授を守る」事

弓使い(女)   :自称通りすがりのフリーター、目的は「オーサカへ行く」事
剣使い(男)   :目的は「オーサカへ行く、族長と再戦する」事
銃使い(女)   :子供、目的は「オーサカへ行く」事
革ジャン(男)  :タイムパトロール、後輩、たけ○こ派、目的は「時空指名手配犯を捕まえる」事
黒コート(女)  :タイムパトロール、先輩、目的は「時空指名手配犯を捕まえる」事
フロント     :過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する
族長(♂)    :青鬼族の族長、必殺技は青い炎、アル〇ォート派、目的は「魔翌力塊の強奪、オーサカで行われる発表会を潰す、剣使いと再戦する」事
魔族ABCD     :族長の部下、アル〇ォート派
マスター(男)  :ラウンジのマスター、半身機械、目的は「魔族から乗客を守る」事
ヒーロー(男)  :全身ポリマースーツの赤色仮面、仮面は百均、目的は「き○こたけ○こ大戦の勃発を阻止する」事
桜色の女     :ござる口調、無賃乗車、武器は刀、目的は「“鉄仮面卿”を倒す」事
仮面の男     :ただの乗客じゃなかった、時空指名手配犯、
小型メカ     :ヒーローの相方、オペ子ちゃん、常にフヨフヨ浮いている
魔王(男)    :碧夕王、周りの時間を止める力を持つ、目的は「天界の使者をあぶり出す」事
料理長(男)   :食堂の料理長、ふくよか、過去に魔族の襲撃に遭うも撃退する、目的は「乗客の方々に美味しい料理を提供する」事
冥王(男)    :関西弁、イケメン
死神ABC      :過去にドライ・ブラー号を襲撃

おお、キャラまとめお疲れ様です。やっぱ人数多いですね。ちなみに列車の構造はこんな感じです。


先頭

  1号車【展望車・前】
  2号車【寝台車一】
  3号車【寝台車二】
  4号車【寝台車三】
  5号車【スイート】
  6号車【食堂車】
  7号車【ラウンジ】
  8号車【ロビー】
  9号車【寝台車四】
 10号車【寝台車五】

 11号車【寝台車六】
 12号車【謎車】
 13号車【展望車・後】
後方


それでは、第五章「深夜・前」を開始します。
60レスほどの予定です。



――12号車【謎車】 屋根の上


ドゴォォォン…!!!


キノコ頭「な、なんだ!?」ガバッ


テロリストA「ぜ、前方車両で爆発です!!」

テロリストB「……と、思ったら、爆発が後方に遠ざかっていった」

テロリストC「ど、どういうコトだ……?」


キノコ頭「…………」



キノコ頭「……あれは、爆発が遠ざかっていったんじゃない」

テロリストD「え?」

キノコ頭「遠ざかっていってるのは、俺たち、この列車だ」


キノコ頭「つまり。まず、前方車両のどこかで爆発の原因が発生した」

キノコ頭「ただし、爆発自体は、前方車両から外に出て、列車の外で起こった」

キノコ頭「だから実際に爆発したのは……。列車の外の木か、何かだろう」

キノコ頭「そして今、列車は爆発地点から猛スピードで遠ざかっているから」

キノコ頭「爆発が後方に遠ざかっていくように見えた……。というところか」

テロリストD「お、おお……。さすがですリーダー、今の一瞬でそこまでわかるとは!」



キノコ頭「たいしたコトじゃない。それよりも問題は、今の爆発の原因だ」

キノコ頭「俺たち以外に、この列車で、また暴れている奴がいるのか……?」

テロリストA「例の、たけ○こ派や、アル○ォート派の連中でしょうか?」


テロリストB「あ、爆発の煙だけは、車両からも出ていますね……」

テロリストB「どうやら爆発の原因が発生したのは、6号車のようです」

キノコ頭「6号車といえば、食堂車か……? 飯時に、何かあったのだろうか……」


テロリストC「う、うう。俺たちも腹が減ってきましたよ、リーダー」

テロリストD「本当なら今ごろ、教授を捕らえて、アジトで祝勝会のハズだったのに……」



キノコ頭「……そうだな。くそっ、あの忌々しいたけ○こ派や、乗務員どもめ……」

キノコ頭「奴らさえいなければ、俺たちは何の問題もなく達成し、教授の身柄を確保できたモノを……」

テロリストA「リーダー……」


テロリストB「……いえ、リーダー! 俺たちの戦いは、まだ終わっちゃいません!」ガタッ

キノコ頭「……!」

テロリストC「そうですよ。リーダー。こんな寒い所でクヨクヨしてるなんて、リーダーらしくもない」

テロリストD「俺たちの目的は、“最強の兵器”を開発した教授の身柄を抑え、たけ○こ派を倒すコト」

テロリストD「たとえ一度失敗しても、それは変わりません。ならばもう一度、挑戦すればいいだけです!」

キノコ頭「……。お前たち……」



キノコ頭「……そうだな。いちいち悩むのも、俺らしくはなかった」

キノコ頭「ならばもう一度、襲撃を仕掛けるとしよう! 教授の身柄を確保するために!」

キノコ頭「そしてたけ○こ派たちをも出し抜き、あの乗務員どもに一泡吹かせようではないか!!」

テロリストA~D「「「「おお!!!!」」」」


キノコ頭「よし。そうと決まればさっそく、もう一度……」


シュボオオオオオオ!!!!!! ガン!!!!!!


テロリストA「え……?」

キノコ頭「ん? なんだ、今の音? 後ろから聞こえたな。13号車か……?」



――12号車【謎車】 動力室の前


剣使い「な、なんだ今の音!?」


車掌「後方から聞こえましたね。しかし、13号車は施錠しています。となると、屋根の上で何か……?」

弓使い「シュボオオオに、ガン、か。何かが火を出してる音に……、金属音かな?」

銃使い「…………」ガシュガシュ


剣使い「なあ、車掌さん。さっきも、前のほうの車両で、爆発のような音がした……」

剣使い「この列車。ラウンジが荒らされた時みてぇに、また何か起こってんじゃねぇのか?」

車掌「…………」



弓使い「1号車のほうには、教授も残してるしねぇー。き○こ派に襲われてないか、心配だな」

銃使い「…………」ボリボリ


車掌「―――だとしても」

剣使い「……!」

車掌「だとしても。私は、士長や、新米の彼女、このドライ・ブラー号の乗務員を信じます」

車掌「二人だけじゃない。食堂車には、料理長や、ウェイター、ウェイトレスたちもいる」

車掌「ラウンジには、貴方たちも見たでしょう。マスターもいるし、ロビーにはフロント担当もいる」


車掌「ご心配ならば、私が断言します。教授さんや乗客の皆さんのコトは、彼らが必ず守っていると」



剣使い「……、…………」

車掌「…………」


剣使い「……そっか」

剣使い「アンタらも、アンタたちの絆で、繋がってるんだな」

車掌「ええ。その通りです」


弓使い「絆かぁー。いいよね、そういうの! 同じ職場のみんなが、一つにまとまってるとかさ!」

弓使い「こりゃぁ私たちも負けてられないね。そう思うでしょ、銃ちゃん!?」バンバン

銃使い「そうかな」バスバス



剣使い「……悪かった。アンタらのシゴトを疑ったりして」

剣使い「ならば教授の嬢ちゃんたちのコトは、アンタらに任せよう」

剣使い「だから、俺たちも。俺たちのシゴトを確実に果たす」

車掌「ええ。私たちの役目は、乗客の皆さんを守り、今日の運行を無事成功させるコト……」

車掌「そしてその目的は、貴方がたの目的とも共通しているハズ。共に頑張りましょう」


弓使い「でもさー、それでもやっぱ何の襲撃も無いっていうのは、やっぱりヒマだよねー」

弓使い「アル○ォート派の魔族っていうのは、本当にこの12号車の動力室を襲うのかなあ?」

車掌「おそらくは。過去襲撃してきた魔族は皆、この動力室の動力源を狙いました」

車掌「今回の魔族も、動力室の場所に勘付けば、きっとココに現れるかと」



車掌「それに、この12号車から繋がる、13号車は、この列車の要の一つ……」

車掌「もし教授さんを狙うき○こ派や、謎の赤色仮面が、列車の機能を狙って襲ってきても」

車掌「ここに張ってさえいれば。迎え撃ち、懸案を一つ減らすコトが出来ます」


プルルルルル…

銃使い「ん。電話?」

車掌「おや……。乗務員の誰かでしょうか。……失礼。もしもし」ピッ


弓使い「やれやれ。こりゃあ、年をまたぐ、大シゴトになりそうだねぇ。朝まで気合い入れていこうか!」

剣使い「ああ、そうだな……。……魔族。お前たちは今、どこにいる?」



――11号車【寝台車六】


ヴヴヴヴヴン


族長「……ッ!?」ガバッ


魔族A「ぞ、族長? 今、族長も感じましたか!?」

族長「あ、ああ……」

魔族B「絶大な魔力の奔流……! 前方車両から……」

魔族C「これほどの術を発動するとは。手練れの術士でも乗っているのか?」

魔族D「あるいは、我々と同じ魔族か……?」



族長「…………」


族長「……いや。今の魔力の波動には、心当たりがある」

魔族A「え?」

族長「まず、魔力を使った術というのは、我々が使っているそれと」

族長「一部の人間が使うそれは、似ているようで、根本的に違うという」


族長「そして、俺の経験から言えば……。今のは、魔族の使う術の波動だ」

魔族B「というコトは、今の術の主は、魔族……?」

族長「おそらくはな。そして、今ほどの術となれば、使えるのは魔族でも、ほんの一握り……」



魔族C「……ま、まさか?」

族長「ああ、そうだ……」


族長「マチガイない。今の術の主、この列車に乗っている魔族とは、魔王の誰かだ」


魔族D「魔王……!!」

魔族A「そんな。魔王のような大物が、どうしてこの列車に……」

族長「わからん。だが、我々の行動の範疇で、考えられる原因は……」


族長「人間界に干渉した我々の行動を誅するために、魔王が直々にやって来た、という可能性だ」

魔族B「な……!」



魔族C「そ、そんなまさか。ははは、そんなワケないッスよ」

魔族D「そ、そうッスよ。いくら俺たちの行動が、魔界のルールを破るモノだとはいえ……」

魔族D「そんな、魔王さまが、俺らみたいな木端を直々に罰しに来るモンすかねえ?」

族長「だが、ならばこの状況。他にどう説明する?」

魔族A「!」


魔族B「そ、それは……」

魔族C「……、……」

魔族D「……ぞ、族長。もし魔王さまが、本当に俺らを捕まえに来たら……。どうします?」

族長「…………」



族長「……たしかに、我々の行いは、魔界の規範を越えて、人間界に干渉するモノだ」

族長「もし魔界に発覚すれば、処罰は避けられまい。一族の取り潰しもあり得る」

魔族A「そ、そんな。じゃあ……」


族長「―――だが、それがどうした?」

魔族B&C「「……!」」

族長「我らの決意は、その程度のコトで崩れるようなヤワなモノであったか」

族長「改めて誓おう。是が非でも俺は、この列車の動力源を奪い、アル○ォートこそが至高と知らしめる」

族長「果たさねばならぬ約定もある。ココで退くワケには、いくまいよ。例え敵が魔王だろうと天使だろうと」

魔族D「……うおおおおっ!! 反逆の精神、マジリスペクトっす!!!」



【1月1日 午前0時】

――1号車【展望車・前】


運転士長「―――“白の大天使”?」


魔王「ああ、そうだ。あんたたちが会ったという、白ドレスの女の正体……」

魔王「そして。今回の一連の騒動の黒幕である可能性が最も高い存在だ」


執事「テロリスト、悪魔、未来人ときて、とうとう天使が出てきましたか……」

教授「もう今さらって感じだよね。私は何も驚かないよ。あ、き○この山もらえる?」

副運転士「はいはい、どうぞー」



副運転士「さて、今回ここにお集りいただいたのは。ディナータイムでの、食堂車での騒動の関係者……」


革ジャン「へーえ。あの赤いポリマースーツが、お前を雇った、未来の市民ボランティアのねぇ」

小型メカ「たしかに彼は完全に不審者でした。ですが、車外に蹴り飛ばすのは、やりすぎでしょう……」

黒コート「う、うう。すまない。まさか、私たちの標的は、あの鉄仮面のほうだったとは」

桜色の女「まあまあ。過ぎたるは、なお、及ばざるが如し。アル○ォートでも食べて元気出すでござるよ」

魔王「ん? 人間のコトワザの、過ぎたるはナントカって、そういう使い方だったか?」

ウェイター「あ、オジサンたちも周りで掃除してるけど、事情よく知らないから気にしないでねー」

ウェイトレス「もう深夜だから、ほとんど乗客のヒトは寝てるだろうし、これ以上騒がないでねー」

運転士長「では料理長、食堂車の後始末はよろしく頼む。はあ、これで連絡は最後か……」ピッ



執事「それと、俺とお嬢様の二人。居合わせただけの乗客の皆さん以外は、これで全員でしょうか」

副運転士「そうみたいですね。こんな遅い時間に、ご協力感謝します」

教授「なんだか、まとめ役が板についてきたね」

副運転士「そ、そうですか? えへへ……」


副運転士「それにしても、もう深夜の0時ですか……」

教授「本当なら、皆でハッピーニューイヤー、って言ってるような時間だね」

教授「あいにく、私たちにそんな余裕は無いけれど」


運転士長「さて……。それで、ミスター・魔王。白の大天使、とは、いったい……?」



魔王「ああ。ここまで事態が大きくなれば、詳しく説明せざるを得ないな」

魔王「乗務員の嬢ちゃんには、軽く説明したが……。改めて詳しく説明するとしよう」


魔王「まず、この世界の裏には、天界という場所がある。生き物の魂が最後に行き着く場所だな」

魔王「世界の裏と言ったのは、物理的な上でも下でもないからだ」

魔王「通常の方法では行き来できない世界……。まあ、既に俺たちの出身の魔界や」

魔王「乗務員の嬢ちゃんも行った冥界なんかも関わってるし、そういうモノと理解してほしい」


運転士長「え。君、冥界に行ってきたのか……?」

副運転士「は、はい。死神のヒトや、冥王さんなんかとも会ってきちゃいました」



魔王「次に、天界は、多くの神々と、多くの天使によって運営されている」


魔王「神々のシゴトは、この世のコトワリを正常に運営するコトだ。そうだなあ、わかりやすく言えば……」

魔王「ハッキングから今晩のオカズまで、ってやつか? このコトバ、どっかで聞いたが面白いよな」

魔王「天界には、今晩のオカズを司る神から、ハッキングの神まで、色々いる。本当に色々だ」


桜色の女「ほー。今晩のオカズを司る神様とは、具体的にどんなコトを?」

魔王「俺も詳しくは知らないが、まあ、献立に迷ってる主婦の思考を助けたりとかだろうな」

魔王「あんたの思いついた今日のメニューも、案外、今晩のオカズの神の助けかもだぜ?」

副運転士「す、スゴい地味なコトしてるんですね……」



魔王「いやいや、ハデなコトしてる神々もいるぜ? 隕石の軌道を変えたり、冥界からの魂を処理したり」

魔王「そんなワケで、主神みたいなまとめ役もいるが、神々ってのは基本的に皆平等で、色々いる」


魔王「そして……。これが本題だな。天使……。神々の意志を実行に移す者だ」

魔王「天界の使いと書いて、天使。枕コトバに、“大いなる”とつけば、大天使」

魔王「下っ端の天使はウジャウジャいやがるが、上司である大天使の数は限られている」

魔王「それだけに、大天使のチカラは強力無比。俺たち魔王も何人いれば、一人とようやく渡り合えるか」

執事「魔王さんは天使と戦ったコトがあるんですか?」

魔王「小競り合いなら、何度か。だが魔界と天界の全面戦争となると、俺たちにとっても神話の時代だな」

教授「私の知らないコトもまだまだあるモンねぇ~。知的好奇心がくすぐられる」ウズウズ



魔王「最後に。その大天使の中で、少なくとも騒動への関係はマチガイないのが……」

魔王「―――白の大天使。混沌を司り、自由と無秩序を愛する、ハタ迷惑な、乳デカ姉ちゃんだ」


ウェイター「お。胸が大きいのは良いねえ。お兄さん、直接会ったコトがあるのかい?」

魔王「あんた、気が合いそうだな。……うん、まあ、俺とアイツは、色々とな」

ウェイトレス「貧乳はステータスだ! 希少価値だ!」


革ジャン「白い乳デカ姉ちゃん? っとすると、もしかして、さっきの……」ドスッ!!!

黒コート「お前は黙ってろ!!」

小型メカ「うわあ。痛そお。毎日黒コートさんに殴られて、よく死にませんよね」フワフワ



副運転士「なるほど。その白の大天使さんが、今回の騒動を招いたと?」

魔王「ああ。大騒動、事件、イベント事だいすきの、アイツのコトだ……」


魔王「奴さん、ヒマに飽いて、この列車に揉め事を大量に集めやがったんじゃねえか?」

副運転士「うーん。そんなふうには、見えなかったような……」

副運転士「……いや、やっぱり見えたような?」


魔王「そして、この列車は、魔族にもよく狙われる厄ネタを積んでいる……。そうだな?」

運転士長「……! そこまで知っているのか、ミスター・魔王」

魔王「ああ。ドライ・ブラーの魔力塊のハナシは、魔界でも有名だからな」



魔王「まあ、その魔力塊の、本当の意味まで知る者は少ないが」

運転士長「本当の意味だと? この列車の動力源、というコトではなく?」

魔王「違う。古き人間と魔族の約定……。魔力塊はその要石、といったところか」

魔王「この列車の路線が、この国最大の霊峰の傍を通るのも、そのためだ」


魔王「簡潔に言おう。白の大天使は、魔力塊を破壊し、古の封印を解こうとしている可能性が高い」

魔王「なぜなら。それが俺の考えうる限り、この列車における最大の“大騒動”になるからだ」


副運転士「大騒動って……。その封印を解くと、いったい何が起こるんですか?」

魔王「要石が動かされれば、封印された神々の怒りは解き放たれ、最悪の大戦が始まる」



魔王「具体的に言うと。ある山が突然噴火して、みんな死ぬ」

副運転士「……!」


副運転士「それが……。あのエンマ帳の、真相……?」

魔王「そうだ。皆、聞いてくれ」


魔王「俺が冥界に行ったところ、今日の分の人間の死亡リストを確認するコトが出来た」

魔王「―――そこに、このドライ・ブラー号の乗員乗客、全員の名前があったんだ」

革ジャン「なんだと……!」

桜色の女「聞き捨てならないでござるな」



魔王「死因は、火砕流に、土石流。加えて、火山弾」

魔王「……マチガイない。件の、封印が解かれた結果の山の噴火によるモノだ」


執事「なるほど。列車の魔力塊とやらが、封印の要石であると知っているのは……」

魔王「ああ。魔界でもごく一部。さもなくば、封印された側の、天界の者だけだ」

運転士長「私でも知らなかったな。あの魔力塊に、そんなヒミツがあったとは……」


黒コート「つまるところ。白の大天使を捕らえるのが最優先、というワケか……」

小型メカ「私たちの問題も、教授の死亡がトリガーですから。山の噴火とやらが原因かもしれませんね」

教授「え、なになに? 私って有名人?」



小型メカ「あ、そういえば教授。“最強の兵器”ってどこにあるんですか?」

教授「げ。それか……。ゴメン、まだ無い。今現在絶賛思案錯綜中」

小型メカ「そ、そうなんですか……。なるべく早く作ってくださいね。未来のために」


教授「ねえ運転士さん。運転士さんは、さ。さっき、なんで食堂車の乗客にお菓子を配ったの?」

教授「それも、き○この山も、たけ○この里も、アル○ォートも、関係なく」

副運転士「え? あ、そういえばアレ、イマイチ意味ありませんでしたね……。あはは」


副運転士「いやあ。どれもおいしいお菓子なんだから、皆で一緒に食べればいいんじゃないのかな、って」

教授「……どれも、皆で、一緒に、か」



革ジャン「なるほどなあ。んじゃあ、俺たちで、その白の大天使って奴をとっちめてみますか」ジャコ

黒コート「は!?」

革ジャン「いやあ、俺たちは仮面の男を追ってたワケだけど、センパイが外に蹴り飛ばしちゃったジャン」

革ジャン「それにせっかくこんなヤバい列車に乗ってるのに、俺たちだけ仲間外れってのも、シャクだろ」

革ジャン「だったら、自分から悪を探す! そして倒す!」バン!!!

革ジャン「……それが。俺のポリシー」ヒュウ


黒コート「……お前のポリシーなど誰も訊いていないんだが」

小型メカ「まあ、私の相方も一緒に飛んでいってしまいましたしね……。やるコトが無いのはたしかです」

桜色の女「―――いや。奴は、必ず戻ってくるでござるよ」



黒コート「え?」

桜色の女「―――仮面の男。拙者は、何度もあの男と戦った」

桜色の女「ある時は一対一で倒し、ある時は戦艦ごと落とし、ある時は空中庭園ごと叩き潰し……」

桜色の女「それでも、奴は、ケロリとして次の戦いに現れた」


桜色の女「タイムパトロールどの。あまり、あの男を、侮らぬほうがいい」

桜色の女「あの男は必ず、この列車に戻ってくる。そして、……拙者と戦うコトになる」


桜色の女「仮面の男の身柄が目的なら、まだ諦めるのは早いでござる」

桜色の女「拙者が奴と決闘し、討ち果たした後に……。奴の身柄を、おぬしらに引き渡そう」



黒コート「なるほど……。そういうコトなら、仮面の男の打倒、ぜひお願いしたい」

桜色の女「承知した。そして、標的を譲っていただいたコト、かたじけないでござる」

小型メカ「あの正義の味方気取りも、しぶといですから、なんだかんだで戻って来そうですね」

革ジャン「ヒーロー野郎もオペ子ちゃんの味方だってんなら、やっぱ狙いは大天使だけだな」


魔王「ハナシはまとまったか? それじゃあ、俺もさっそく動きたい」

魔王「白の大天使は事件が大好きだ。だから、こちらからも事件を作って、おびき出す」

魔王「俺は魔王として、この列車に乗った魔族に灸をすえる必要もある。だから、まず魔族の奴らを……」


ミシッ



運転士長「ん? 今……」

副運転士「……ミシッ?」


ミシッ ベキベキベキベキ

ドゴン!!!!!!


ヒーロー「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!」ヒュウウウウウウ

仮面の男「おや! そこにいるのは! 我が麗しの、それでも呼びたければ教授さん!!」ヒュウウウウウウ

教授「ま、またお前か!? それと、それでも呼びたければは余計だ!!」

キノコ頭「落ちるうううううううううううううううううう!!!!!!」ヒュウウウウウウ



執事「な、なんだ? また空からヒトが!?」

黒コート「か、仮面の男……!」

革ジャン「おっ、こりゃちょうどいい! 死ねぇ!!」バン!!!

テロリストB「あっ待て、拳銃なんか撃ったら、爆薬に引火して――――」シュボッ


                                            _                                  _.  _   _
                               ヽ`              | | ロロ                              | | | | | |
                              ´               | |_   __ロロ   _       _     _      _    | | | | | |
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  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
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――6号車【食堂車】


黒コート「時空整備課を……」

ヒーロー「――――あ」

黒コート「ナメるなァァッ!!!」

ドゴッ!!!


ヒーロー「ぶべらああああああああああああああああああ!!!!!!」ヒュウウウウウウ


桜色の女「な―――? 赤いカタマリ……!?」サッ

仮面の男「えっ? あの、ちょっ―――、待っ――――」



ズガッ!!!!!!


ヒーロー&仮面の男「「ぶべらああああああああああああああああああ!!!!!!」」ヒュウウウウウウ


ズドオ


ヒーロー「れ、列車の外に投げ出される!?」ヒュウウウウウウ

ヒーロー「そ、そんなワケにはいくか! 俺は列車に残って、まだやるべきコトがあるのだ!!」ジタバタ

仮面の男「むぅ……。このままでは線路の近くの木に叩きつけられて終わり、か……」ヒュウウウウウウ

仮面の男「ならば!!」チャッ

ヒーロー「な、何を!!?」ヒュウウウウウウ



仮面の男「こうするまでよ!!」ヒュッ

ヒーロー「ば、爆弾!? そんなモノお前、いったいどこに隠し持って――――」ヒュウウウウウウ

カッ


ドゴォォォン!!!


ヒーロー「ぶるああああああああああああ!!! 爆風に吹き飛ばされるうううううう!!!!!!」

仮面の男「ここからだ! しっかり捕まっていろ!!」シュボオオオオオオ

ヒーロー「あ、足からジェット噴射!? そんなモノお前、いつの間に装着して――――」ヒュウウウウウウ

ヒーロー「うおああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」



――7号車【ラウンジ】 外部

ヒーロー「うおああああああああああああああああああ」

――8号車【ロビー】 外部

ヒーロー「ああああああああああああああああああああ」

――9号車【寝台車四】 外部

ヒーロー「ああああああああああああああああああああ」

――10号車【寝台車五】 外部

ヒーロー「ああああああああああああああああああああ」



――11号車【寝台車六】 外部

ヒーロー「ああああああああああああああああああああ」

――12号車【謎車】 外部

ヒーロー「ああああああああああああああああああああ」

――13号車【展望車・後】 外部

ヒーロー「ああああああああああああああああッ!!!」

仮面の男「―――む」


仮面の男「そこだアアァッッッ!!!」

シュボオオオオオオ!!!!!!



ヒーロー「ジェット噴射で列車の最後尾に近づいている!?」

ヒーロー「でも、一手足りない、届かない……ッ!!」

仮面の男「ならば一手伸ばすまでよおおォッッッ!!!」ビヨヨーン

ヒーロー「う、腕が伸びたああああああああああああ!!?」

ガン!!!!!!


ビュオオオオオオ

仮面の男「そら! 飛び乗れ!!」

ヒーロー「わかった!!」ダンッ

クルクルクル



ヒーロー「すたっ」


仮面の男「ふぅ……。危機一髪、といったところだったな」

ヒーロー「ああ……。仮面を被った変態かと思ったら、スゴいんだな。お前」スッ…

仮面の男「ふふふ。君こそ。良いアクロバティックだった」スッ…


        r-〈`,
        |  ', ',`,
          !  ', ', ',                        γ 〉-、
           l  ', ', ',    `                  ,ヘ´ / /
  {`ヽ       }  ', ', ',     \ ,,_人、ノヽ         / 丿/ /
  ',´ ヽ     /     }     )ヽ    (         / / / /
   ',  ヽ、_/     /  - <       >─    / / /  {  r'´ヽ
   ヽ        /      )     て       {     |   l  l
     `,       〃     /^⌒`Y´^\       |   /ヽ_、ノヽ/
     ゝ       ,'                     | イ        /
     ヽ      !                     |.  ヽ   /
       l      l                     |      /
       |       !                    !     i
                                l     l
                                !     |



テロリストA「え……?」

キノコ頭「ん? なんだ、今の音? 後ろから聞こえたな。13号車か……?」


ドタドタドタドタ


ヒーロー「ん……? 何やらコッチに走ってくる人影がいるな……」

仮面の男「こんな時間の、しかもこんなところで、何者だ……?」


テロリストB「―――た、大変です! 誰かいます!」

テロリストC「仮面を被った変態二人組です!!」

キノコ頭「なんだと!!?」



ヒーロー「変態とは失敬な!!」

仮面の男「我ら仮面の元に意気投合した二人組!!」


ヒーロー「マスク・ド・ヒーロー!」シャキーン

仮面の男「マスク・ド・スティール!」シャキーン

ヒーロー&仮面の男「「二人合わせて――――」」


ヒーロー「……あれ、何にしようか」

仮面の男「そこまで考えていない」


テロリストD「やっぱり変態だああああああああああああ!!!」



キノコ頭「く。どうしてこう、次から次へと、イレギュラーが……」

キノコ頭「……? 待て、鉄仮面のほう。お前、もしや……」


仮面の男「ん……? どうかしたかね、頭マッシュルームくん」

仮面の男「僕は君のような男に脳ミソヒトカケラほどの記憶も無いのだが……」


キノコ頭「……いや。お前が覚えていなくとも、俺は知っている……」

テロリストA「リーダー?」

テロリストB「あっ……! まさか、もしや……!」


キノコ頭「お前!! たけ○こ陣営に突然現れて、き○こ派壊滅の原因になった、仮面の男だな!!!」



仮面の男「ああ……。き○こたけ○こ戦争の」

ヒーロー「ああ……。き○こたけ○こ戦争の」


キノコ頭「……お前のせいで、俺たちが、どれだけの屈辱的大敗を喫したか」

キノコ頭「……お前の発案で、吊るされ火あぶりにされた、き○この山は数知れず」

キノコ頭「……お前の参戦で、ついにスフ○ラトゥーン決戦で、き○こ派は壊滅となった」


キノコ頭「―――お前のせいで、チョコとビスケットを分離され、街中に転がされたき○この恨み!!」

キノコ頭「今こそ思い知れ!! ファイヤアアアアアアァァァ!!!」

ボオオオオオ!!!!!!



ヒーロー「火炎放射器だと!?」ダッ

仮面の男「ううむ……。これは、逃げるしかあるまい」ダッ

仮面の男「ついでに10号車の客室の僕の武器も拾っていくとしよう」

キノコ頭「待てやゴラアアアアアアアアアアアア!!!」ボオオオオオ


テロリストC「で、出た……! リーダー必殺の、火炎放射器だ!」

テロリストD「き○こ派の憤怒の炎を体現したリーダーは、もはや誰にも止められない!!」


テロリストA「行くぞ! 俺たちも追いかける! お前ら、残りの爆薬を分けて持て!」ダッ

テロリストB「ああ。だけど今度は、火炎放射器の炎で引火させたりするんじゃないぞ!?」ダッ



――1号車【展望車・前】 屋根の上


キノコ頭「ファイヤアアアアアアアアアアアアァァァ!!!」

ボオオオオオ!!!!!!


仮面の男「くっ……! しつこい奴らだ! 列車の端から端まで追いかけてくるか!」フォン

ヒーロー「隙あり! 今必殺のォォ―――、カカト落とし!!」メキャ

キノコ頭「ぐあ!!!」ビタンッ

仮面の男「ま、待て! 炎の熱さと冬の寒さでモロくなった屋根に、そういうコトをすると……」

ミシッ



運転士長「ん? 今……」

副運転士「……ミシッ?」


ミシッ ベキベキベキベキ

ドゴン!!!!!!


ヒーロー「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!」ヒュウウウウウウ

仮面の男「おや! そこにいるのは! 我が麗しの、それでも呼びたければ教授さん!!」ヒュウウウウウウ

教授「ま、またお前か!? それと、それでも呼びたければは余計だ!!」

キノコ頭「落ちるうううううううううううううううううう!!!!!!」ヒュウウウウウウ



執事「な、なんだ? また空からヒトが!?」

黒コート「か、仮面の男……!」

革ジャン「おっ、こりゃちょうどいい! 死ねぇ!!」バン!!!

テロリストB「あっ待て、拳銃なんか撃ったら、爆薬に引火して――――」シュボッ


                                            _                                  _.  _   _
                               ヽ`              | | ロロ                              | | | | | |
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  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;.............................              ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
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魔王「うおおおおお、また爆発した!?」

小型メカ「よく爆発しますねこの列車は!!」

桜色の女「―――やはり、現れたか」チャキ


副運転士「士長……! あのキノコ頭、教授さんや剣使いのヒトたちのお話通りなら……」

運転士長「うむ。奴こそが、ハイジャック犯の片割れ、き○こ派の総元締め……!」

ウェイター「あー、もう。せっかく掃除したのにグチャグチャだよ。オジサン、ショック」

ウェイトレス「まったく。ヒトの苦労を何だと思ってるのかなー」


ヒーロー「あ、いたたた……。まったく、ヒドい目に遭った」



小型メカ「自称ヒーローさん! ご無事でしたか!?」

ヒーロー「あ、ああ。なんとか。あの仮面のおかげで、列車に戻ってこれたぜ」

小型メカ「なんで指名手配犯と仲良くなってんですか……」


キノコ頭「むッ……。あれは、教授……!!」

教授「キノコ頭!」クルッ

キノコ頭「……クッ、ククハハハハ。俺たちは事故にはよく遭うが、天運もついている……!」

キノコ頭「やれ、者ども!! 再び奴とまみえたは僥倖!! 教授を捕らえろ!!」

テロリストA~D「「「「イェッサー!!」」」」

執事「ぐ……ッ!」



ドタン!!! バタン!!!

ワー!!! ギャー!!! ワー!!!


魔王「……なんか、エラいコトになってきたなぁ」

魔王「いや、でもちょうど屋根に大穴が開いた! 今がチャンスだ!」


フワッ

魔王「……もしやこの事態すらも、白の大天使の掌の上という可能性もあるか?」

魔王「いや、それは穿ちすぎか……。いずれにせよ、俺は今、魔族を呼ぶという役目を果たすべきだ」


魔王「さあ! この列車のすべての戦いに、決着をつける時だ! ふんっ!!!」ヴヴヴヴヴン



――11号車【寝台車六】


ヴヴヴヴヴン


族長「……!」


魔族A「ま、また魔力波です、族長!」

魔族B「今度は明確な指向性を持っています! 1号車の、屋根の上から……!」

族長「…………」


魔族C「……? 族長?」



族長「―――お前たちはココに残れ」


魔族D「え!?」

族長「今の魔力の波動は、間違いなく魔王様だ……」

族長「『この列車に潜伏せし魔族よ。申し開きがあるならば、この魔王の元に馳せ参じよ』」

族長「この魔力波は、そういう意味を持った、念話だ……」


族長「……おそらく、俺がいけば、魔王様との戦いになる」

族長「それにお前たちを巻き込む必要は無い。お前たちは、ここに残れ」

魔族D「―――族長」



魔族A「……そんな冷たいコト、言いっこナシですよ」

族長「何……?」

魔族B「族長の、アル○ォート派として覇を唱えたいという気持ちは、俺たちも同じです」


魔族C「だったら、たとえ魔王さまが相手でも、一人では行かせられません」

魔族D「一蓮托生ってやつッスよ、族長!!」

族長「……。お前たち……」


族長「そうか。ならば、行くとしようか、バカども。―――魔王を倒しに」

魔族D「下克上の精神、マジリスペクトっす!!」



――12号車【謎車】 動力室の前


弓使い「……?」


剣使い「ん? どうかしたか、姐さん?」

弓使い「いや。今なんか、聞こえなかった?」

銃使い「物音……? 何も、しなかった」

車掌「私も、特には。弓使いさんは耳が良いのですか?」

弓使い「まあ、耳は良いほうだけど。そうじゃなくて……」


弓使い「頭の中に直接響いてきた感じ。テレパシーってやつかな?」



剣使い「テレパシー? そいつは、まさか……」

車掌「魔力によるモノですか? 弓使いさんは、魔法の素養がおありで?」

弓使い「まあね。本職の魔法使いほどじゃないけど、魔法も戦闘に使う」


弓使い「みんなには聞こえなかった? じゃあ、指向が限定的なモノなのかな」

剣使い「テレパシーってコトは、内容があるんだよな。なんて言ってた?」

弓使い「うん。盗み聞きしたみたいなモノだから、よくは聞こえなかったんだけど……」


弓使い「『おしおきするから、魔王のところに来ーい!』……みたいな?」


車掌「ま、魔王? いわゆる、魔族の王の……?」



銃使い「おしおきってコトは、上司が部下に罰を与える、ってコト?」

剣使い「ちょっと待て。魔王が罰を与える相手、ってのは……」


車掌「……! この動力室を狙っているハズの、魔族!?」

弓使い「つまり、アル○ォート派の魔族の、上司の魔王がこの列車に乗っていて……」

弓使い「その魔王が、部下の魔族を、いま呼び出した。ってコトか」


弓使い「……なら、さ。いつ魔族が勘付くかわからない、この動力室で待ってるよりも」

剣使い「俺たちも今のテレパシーの主の魔王を探したほうが早い、か!?」

車掌「そうですね。魔王が動いたとなれば、また新たな騒動が起きるのかもしれない」



――1号車【展望車・前】


魔王「ふぅぅぅぅ……。これで魔族のほうは、おとなしく降参してくれるだろ」


教授「うぐっ!?」

キノコ頭「フゥーハハハァー! 教授の身柄は、俺たちき○こ派が預かった!」

テロリストA「教授さえいればこの列車に用はありません! 脱出しましょう!」


執事「待て、下郎ども……ッ!!」

副運転士「し、士長! 私たちの乗客を、彼らに誘拐させるワケにはいきません!」

運転士長「ああ。この列車の総力を持って、き○こ派、ハイジャック犯どもをここで止める!!」



仮面の男「おお! 我が麗しの、それでも呼びたければ教授さん……。今この鉄仮面が、お助けに」


桜色の女「―――悪いが、ここは通行止めだ」ザッ


仮面の男「……! またしても君か。一度ならず二度までも会うとは、君は僕のファンなのかな?」

桜色の女「さてな。だが、その得物……。貴様も、私との戦いを予期していたのではないか?」

仮面の男「ほう……。これはこれは。運命とは、知らず知らずのうちにヒトを動かすらしい」

桜色の女「その言葉、どこまで本心かな。私は自分の欲望に正直になろう。少なくとも私は期待していた」


桜色の女「貴様と二人で死合うこと。忘我の果てに、獣のように踊り狂い、鮮血の華を咲かせること」スッ…

仮面の男「下品だね。だがそれがいい。僕たちの戦いに装飾は不要。必要なのは、互いの刃のみ」スッ…



黒コート「始まるか……。彼女らの戦いに割って入るのは、彼女らへの侮辱になるな」

革ジャン「ようし、それじゃあセンパイ! 白の大天使とやらを、探すとしようぜ!」

黒コート「は!? お前、本気で言ってるのか? それ、あの魔王が勝手に言ってるだけだぞ!」

革ジャン「ん? でも、なんか腹立つンだよな。俺の見えないところで、動いてる奴がいるってのは」


ヒーロー「はっ! 無辜の乗客の女性がさらわれた! おのれハイジャック犯!!」

ヒーロー「悪は滅ぶべし! 正義は必ず勝つ! 俺の目の黒いうちは、好きにはさせんぞ悪党!」ダンッ

小型メカ「ああっ、待ってください! もう……。本当に勝手なんだから」

小型メカ「申し訳ありません、革ジャンさん。大天使とやらは、お任せできますか!?」

革ジャン「おうよ。お互い、悪党は全員お天道様の元に引きずり出して、初日の出を迎えるとしようぜ!」



――4号車【寝台車三】


ドズン…!!!


白ドレス「お。この音……。これは、ついに始まったかな? 始まっちゃったかな!?」

白ドレス「『ドライ・ブラー号乗っ取り爆発大炎上事件』における、最後の大騒動が!!」


白ドレス「ラウンジでの爆発、食堂車での爆発……。正直爆発にも飽きてきてたんだよね」

白ドレス「さて。乗っ取りが起きて、爆発が起きれば……最後に起きるのは、なーんだ?」


白ドレス「―――さあっ! 私も、ただ一人の傍観者として、特等席での見物といきますか!」ガチャ

第五章「深夜・前」は以上になります。
物語も折り返し地点です。

第六章は、明日12/28(木)の18時ごろ開始の予定です。

列車をハイジャックは日本語間違ってるぞ

キノコ頭、必殺技が火炎放射器なんか…

はたして教授は“最強の兵器(仮)”を完成させる事が出来るのか

>>319
いや間違ってないから
ハイジャックのハイはHighのハイじゃねーよ

ハイジャックのハイは英語で挨拶にあたる「Hi」の事
ハイジャックは交通機関の乗っ取り全般を表したりするけど、カージャックやシージャックのように
「場所や乗っ取る対象の名前+ジャック」も通用するのでハイジャックでもトレインジャックでも好きなのを使ってどうぞ

火炎放射器、ひゃっはーです。

それでは、第六章「深夜・後」を開始します。
60レスほどの予定です。



――1号車【展望車・前】 屋根の上


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魔王「……、…………」


魔王「……?」ピクッ



ザッ ザッ


族長「…………」ザッ

魔族A~D「「「「……っ」」」」ザッ


魔王「…………」

族長「…………」


魔王「……来たか」


ビュオオオオオオ



魔王「……まずは、勇ある魔界の民として、この魔王の召喚に応じたコトを褒めてつかわす」

族長「ありがたきお言葉」

魔王「我ら魔族のコトワリとはチカラがすべて。強き者が世界を支配し、弱き者を護らねばならん」

魔王「そのコトワリに反し、戦場から遁走するのであれば……。貴様らの命、そこで潰えていたところだ」

魔族A「……っ」ゴク

魔王「―――改めて名を聞こう」


魔王「貴様らの素性は既に知り得ている。だが、これが魔族の作法だ。貴様ら、何者の魔族だ?」

族長「……青鬼族。緋雷王一の臣下にして、かつて魔界に勇名轟かせた青鬼。俺はその現当主だ」

魔王「そうか、緋雷めの……。奴め、部下の管理はゾンザイと見える。今度注意しておかねば」



族長「僭越ながら、コチラからもお尋ねしたい」

族長「その魔力、その風貌、その威厳。貴方様が魔王の一角であるコトは疑いの余地も無い」

族長「だが俺は浅学ゆえ、その真の名に思い至らぬ。閣下は何者の魔王であらせられるか?」

魔王「……我が魔王であると知り、なお参じる勇。なお臆せぬ猛。なるほど、緋雷の臣下にふさわしい」


魔王「ならばその矜持に敬意を表し、我の座を名乗るとしよう」

魔王「……我は、あまねく魔性を統べる者。誉れ高き、七魔公王がその一人」

魔王「最も多くの魔族の長。守護宝石はペリドット。預かる座席は―――碧夕王、であるッ!!」

族長「リヒトヴァルツ、碧夕王……!!」

魔族B「先の魔界統一戦争において、我らの軍の中核を為し、緋雷王様とも共に戦った……!?」



魔王「いかにも!! 我が黄昏に照らされし、常緑の輝きに平伏するが良い!!」

魔王「そしてこの碧夕王が問おう、青鬼の族長よ!」

魔王「勇ある貴様が、なにゆえ魔界の法を破り、人間界へと攻め入ったか!?」

族長「…………」


族長「……貴方様には詮無きコトだ、魔王よ」

族長「我らはアル○ォートをニンゲンに侮辱されたがゆえに、人間への復讐を誓った」

族長「それ以上でも、それ以下でもない。些末なコトと断じるならば、嗤うが良い」

魔王「……。なるほど、チョコ菓子が原因、か」

魔王「存外世界は狭い。菓子が原因の揉め事など古来より在る。だが、俺はそれを一笑に付しはしまい」



魔族C「……と、いうコトは、我らの主張を認めてくださるのですか!?」

魔族D「やはりアル○ォートこそが至高であると!?」

魔王「―――たわけ!!」


魔族D「……!」ビクッ

魔王「どのチョコ菓子を愛そうが、貴様らの自由だ。俺は貴様らの主義主張に口を挟むつもりはない」

魔王「だが、それと魔界の法を破ったコトとは、別問題だ」

魔王「理由が如何であれ。魔族の人間界との接触は、干渉だけならまだしも、侵攻はご法度」

魔王「そして貴様らは、人間の、この列車で暴れた。……もはや弁解の余地はあるまい」

族長「…………」



魔王「…………」


魔王「……だが、まあ。俺とて、鬼ではない。いや貴様らは鬼だが、鬼神ではあるまい」

魔王「貴様らもまた、我が同胞。それも我が盟友たる緋雷めの臣下なれば」

魔王「おとなしく我がもとに下るのであれば、俺が上には取りなそう。なんとか、処罰を免れるよう……」


族長「―――断る」


魔族A「……!」

魔王「……何?」

族長「聞こえなかったのか、魔王? ……断る、と言ったのだ」



魔王「…………」ピクッ

魔王「貴様……」


族長「既に罪を犯した我らに、なお罰を免れんと説得してくださったコト。感謝する」

族長「きっと貴方様は、魔族であれ、ニンゲンであれ、同じように救いの手を差し伸べるのだろう」

族長「その慈愛、その度量。チカラがすべての魔界にあって、まさに魔王と称されるにふさわしい」


族長「―――だが、それでも我らは、貴方様の軍門に下るつもりはない」

族長「我らは魔界の民として、ニンゲンに打ち勝つため人間界の門をくぐった。人間との別の約定もある」

族長「ならば。我らは、チカラをもってそれを為すまで。たとえ敵が、魔王、貴方様であろうと!!」



魔族B「族長……!」

魔族C「そうッスよ、族長! 俺らが束になれば、きっと魔王さまにだって負けません!」

魔王「なるほど」


魔王「―――よく吠えた」


族長「……!!」ゾワッ

魔族D「な……っ。急に雰囲気が……ッ」ビリビリ


魔王「……ああ、久しい。久しいな。魔界より争いの種が絶えて久しい」

魔王「今日に至るまで、一戦士としての昂ぶり、滾り、喜び。忘れ去って久しい」



魔王「だが、今しかと甦った。青鬼の族長よ」


魔王「その強者におもねぬ精神! チカラで強きを倒す気概! 自らの意志を押し通す蛮勇!」

魔王「それこそが魔界の民のホンシツたるモノ、魔界の民が魔族たる所以だッ!!」


魔王「ならば……。俺は、魔王として、貴様らのチカラにはチカラで応えよう」

魔王「その精神、如何に崇高か。その気概、如何に頑強か。その意志、押し通すに値するか!!」

魔王「来るがいい、青鬼族の精鋭どもよ……。そして体現して見せよ、魔界のコトワリを!!」


族長「……望むところだ。いくぞ、お前たち!!」

魔族A~D「「「「応ッ!!!!」」」」



――1号車【展望車・前】


ズンッ…!!!


仮面の男「おや……」


仮面の男「どうやら、上は始まったようだね。開いた大穴から、青い炎や、碧の光が見える」

桜色の女「…………」


仮面の男「では、僕らも始めるとしようか」フォン

仮面の男「君とは幾度となく戦ったが。この戦いを、今までで最上の、甘美の一時としたい」



黒コート「っ……」ゴクッ

桜色の女「……黒コートどの」

黒コート「……! な、なんでしょうか」


桜色の女「まこと勝手な願いで、申し訳ないのだが……」

桜色の女「私と奴との、決着がつくまで、おぬしらにはこの部屋の外にいてほしい」

黒コート「……そ、それは何故ですか?」

黒コート「たしかに貴女がたには劣るかもしれませんが、私たちも歴戦の身」

黒コート「戦いにおいて自分の身くらいは守れる。そして仮面の男の身柄は逃がせない」

仮面の男「……無粋だね、時空環境整備課」



黒コート「は?」

桜色の女「…………」

仮面の男「そうだね。彼女の口には訊きにくいだろうから、僕が彼女の思いを代弁するとしよう」


仮面の男「―――彼女は。自分が本気で戦っている姿を見せるのは、恥ずかしい、と言っているんだよ」


黒コート「……え?」

仮面の男「おかしなコトかな? 人間、誰にだって、見られて恥ずかしいコトの一つや二つはある」

仮面の男「彼女にとって、それは。自分が本気で戦っている姿、というワケだ」

革ジャン「俺だってそりゃあウンコしてるトコに入ってこられたらなあ」



黒コート「そ、そうなのか……」

黒コート「それと革ジャン、お前は本気で黙ってろ」


仮面の男「だから。彼女の思いを汲むのであれば、どうか部屋の外で待ってほしい」

仮面の男「心配せずとも、僕は負けは潔く認めるほうだ。もちろん、勝ったら逃げるけどね」


仮面の男「それともアレかい、整備課。君は女のコを辱めるのがシュミなのかい?」

黒コート「い、いや。そんなワケないが……」

桜色の女「…………」


桜色の女「黒コートどの。どうか私からもお願いしたい」



桜色の女「私は、本気で戦っている私の姿を見られたくない」

桜色の女「私は、彼との死合を余人に見せたくはない」

桜色の女「―――少し、恥ずかしい」


桜色の女「普段の小競り合いなら、まだしも。この立ち会いは、特別なのだ」

桜色の女「どうか、私を信じ……。この勝負を任せてくれまいか」

桜色の女「この刀に誓って、約束しよう。鉄仮面卿は、私が必ず仕留める」

黒コート「…………」


黒コート「……わかりました。ならば私は、時空整備課は、貴女を信じます」



黒コート「よし、じゃあ行くぞ、革ジャン野郎。さらわれた教授さんを助ける」ダッ

革ジャン「ん? 例の大天使じゃねーのか? おい、待てよ!」ダッ


桜色の女「…………」

仮面の男「……行ったみたいだね」


桜色の女「…………」

仮面の男「…………」


仮面の男「ああ、もういいよ。彼女らは行った。これ以上隠す必要は無い」

桜色の女「……そうか」



桜色の女「ならば、良かった。これで私は、本当の私を、貴様以外に見られずに済む」

桜色の女「……はぁっ。はぁっ……」

桜色の女「本当の私を、貴様に。さらけ出す、コトが、出来る」

仮面の男「……いい顔だ」


桜色の女「先刻、貴様と数合だったが、斬り合って理解した」

桜色の女「やはり私がすべてをさらけ出せる相手は、貴様しかいないと」

桜色の女「私が心から刀を向けるコトが出来るのは、貴様しかいないと!」

仮面の男「ああ。僕もだよ、チェリーガール。僕が振るうべき刀は、君だけのモノだ」

桜色の女「だから、聞いてくれ。私が、これまで秘めてきた、いや、目を背けてきた、思い」



桜色の女「―――私は。貴様が、欲しい」


仮面の男「…………」

桜色の女「私は、貴様の、肉を。心を。刃を。頭を、顔を、手を、体を、足を、技術を、人生を――――」

桜色の女「すべて、私のモノにしたい。貴様のすべてを征服したくて、仕方がない」

桜色の女「……。ふぅっ……」


桜色の女「ああ、もうおかしくなりそうだ。目がとろけて、口が定まらない、頬が締まらない」

桜色の女「私は、貴様を感じたい。貴様のすべてを、この刀で斬り刻みたくて、仕方がない!!」

仮面の男「……君は、その思いを普段は胸の内に閉じ込めている。なるほど、素晴らしい擬態だと思うよ」



桜色の女「ああ、普段の拙者は、ただの風来坊……」

桜色の女「ひがな、風光明媚を求め、各地を漫遊するばかりでござる」


桜色の女「……だが、本当の私は、違う」

桜色の女「本当の私は、強い敵を、斬りたくて、斬りたくて、斬りたくて斬りたくて斬りたくて仕方がない」

桜色の女「敵を斬って、自分を確かめたくて。敵を斬って、相手を貶めたくて」

桜色の女「敵を斬って、血を見たくて。血をすすりたくて。血を満たしたくて」


仮面の男「……まったく。変わった女性だ」

仮面の男「僕は君のようなヒトを、今までに見たコトが無い。だが、だからこそ、愛おしい」



桜色の女「―――いざ。覚悟めされよ、鉄仮面卿」


桜色の女「その、ココロを隠す気障な仮面、叩き割り……」

桜色の女「すべてを私の前にさらけ出せ」フォン

桜色の女「私の目を見ろ。私の手を見ろ。私の足を見ろ。私の刀を見ろ。私の、私の――――」

桜色の女「私の、モノに、なれ」

仮面の男「断る」


仮面の男「あいにく、僕は、楽しい年末年始の旅行中なのでね……」

仮面の男「ここで君に生を絞り取られるワケにはいかないのさ!!」ダッ



――2号車【寝台車一】


ダダダダダダ


執事「待てェェェェェェッ!!!」


キノコ頭「待てと言われて待つバカがいるか! それ、窓から飛び降りろ!」

教授「はなせー!!」ジタバタ

テロリストA「こ、この列車時速何キロだと思ってるんですか!?」

テロリストA「さすがに生身で転げ落ちたら死にますよ!!」

キノコ頭「う、むむ……。言われてみれば、そうだな」



テロリストB「なら、一度屋根に登って、そこから飛び降りましょう!」

テロリストB「上からほぼ垂直にジャンプすれば、衝撃は最低限で済みます!」

キノコ頭「それだ! お前ら、そこのハシゴから屋根に登れ!」

運転士長「―――させるか!!」カチ


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――3号車【寝台車二】


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キノコ頭「何? 屋根への通路が塞がっただと!?」

運転士長「ふふふ……。この列車の防衛システムの一つ、隔壁封鎖だ」


運転士長「本来は対魔族用にと仕掛けた、戦闘の被害を最小限に留めさせるシステムだが……」

運転士長「こうして侵入者の逃亡防止に応用するコトも出来る。驚いただろう?」

副運転士「そりゃ驚きますよ!? なんでドライ・ブラー号ってそんなモンついてるんですか!!」


運転士長「これで列車の内部は、ウナギの寝床のように一本道だ……」

運転士長「ハイジャック犯よ、逃げ続けろ! 逃げたところで逃げ道は無いがな!!」

キノコ頭「くっ……!!」



――4号車【寝台車三】


白ドレス「―――さあっ! 私も、ただ一人の傍観者として、特等席での見物といきますか!」ガチャ


執事「逃げるなァァァァァァ!!!」

キノコ頭「俺たちとて逃げたところで逃げ道がないなら逃げたくなどないッ!!」

ドドドドドド

白ドレス「え? え? なになになに!? う、うわあ――――――ッ!!」ドカバキグシャポテ


白ドレス「う、うぅ……。ヒドい、ヒドすぎる……。大天使たる私を足蹴にしまくっていくなんて。がく」

黒コート「まるで台風だな……。いや、正しく、列車を襲った嵐か。……って、あ、アレ?」



革ジャン「あれ? この女、客室でヤクやってた白ドレスの姉ちゃんじゃねーか」ヒョイッ

白ドレス「だから私ヤク中じゃないからねっ!?」ガバッ

黒コート「ちょっと、何でお前が踏まれて……。いや、貴女が踏まれてらっしゃるんですか?」


革ジャン「あれ? 待てよ……」

革ジャン「白い、乳デカ姉ちゃん……。やっぱりコイツが、件の白の大天使じゃねえのか?」

黒コート「ギク!!」


白ドレス「ちょ、ちょっと、ハナシが違うよ時空整備課? 私の身柄は見逃すんじゃなかったの!?」

黒コート「っ~~~……。ああ、もう!!」



――5号車【スイート】


キノコ頭「スイートルーム……! つまり、ここを抜ければ食堂車の6号車だ!」

キノコ頭「さっきの爆発で、食堂車の壁には穴が開いていたハズだ! そこから脱出するぞ!」

テロリストC「了解!!」

ダダダダダダ


執事「そうはさせるか! くらえッ、回し蹴りっ!!」ブンッ

キノコ頭「え? 何、ゴハアアアアアアッッッ!!!」カチ

副運転士「ん? 今、カチって……」



運転士長「あ、あれは! 魔界の術式自動防衛装置だ、伏せろ!!」

副運転士「え。術式……?」


チュドオオオオン!!!!!!

キノコ頭「ぎゃああああああああああああ!!!!!!」

テロリストD「あばばばばばばばばばばばばばばばばばば」


運転士長「コレはこの列車のモノじゃない。スイートルームの乗客が防衛用に仕掛けたモノだな……」

ウェイター「相当用心深い性格の魔族の乗客なのかね? しかし、部屋が焼けちゃったよ」

ウェイトレス「掃除するのは私たちなのに、ホント、困るなー」



――6号車【食堂車】


キノコ頭「し、死ぬかと思った……。だがココが食堂車だ!」

ヒーロー「そうはさせるか! とうっ!」クルッ

キノコ頭「なっ! 俺たちの上を飛び越えただと!?」


ヒーロー「すたっ」

ヒーロー「HAHAHA! どうだ! 食堂車の穴を使いたければ、立ち塞がる俺を倒して……」


料理長「ぬっ! さっきの赤色仮面!!」

ヒーロー「え?」クルッ



料理長「死ね!」バッ

ヒーロー「投げナイフぅぅぅっ!!?」グサグサグサグサ

バタッ


キノコ頭「何か知らんが、全弾命中したぞ! 今だ、穴に飛び込め!」

小型メカ「―――させません!!」フィィン

バララララッ!!!


テロリストA「あ、圧縮レーザー砲!? 焼けるうううううう!!!」

キノコ頭「最近のメカは高性能だなあ! くそっ、ラウンジの屋根にも大穴があった、そこから逃げる!!」



――7号車【ラウンジ】


マスター「―――なにやら、騒がしいですな」キュッ


キノコ頭「しまった! ラウンジにいるのは、あのマスターだ!!」

テロリストA「無理です俺たちじゃ絶対に勝てません!」


白ドレス「ああああああどいてどいてどいてぇ――――――!!!」ビュウウウン

キノコ頭「なんだ? 翼の生えた女が飛んできた!?」

教授「あれってウワサの白の大天使じゃないの?」

副運転士「白ドレスのお姉さん? と、お姉さんに捕まってるのはタイムパトロールのお二人!?」



黒コート「白の大天使、この状況を何とかしろ! お前なら出来るだろ!?」

黒コート「出来なきゃ殺す!!」チャッ

白ドレス「ふえーん、キョーハクだぁー。普段は冷静な人がパニクると一番手がつけられないよぉ」

革ジャン「なあ、お前……。俺たちの味方なのか、敵なのか、どっちだ?」

白ドレス「低い! 声が低いよコワいよ!? 私が君たちに何をしたっていうのかなぁ!!?」


マスター「―――天使の翼!! 貴様が、魔王の言っていた天界の者か!!」シュボッ

白ドレス「ちょっシュボッって何、ああ、右手を飛ばした音か―――ってええええええッ!!?」

ドォォォォン!!!!!!

キノコ頭「食堂車どころか、ラウンジまでも……! くそ、こうなりゃ逃げられるところまで逃げてやる!!」



――8号車【ロビー】


キノコ頭「ロビー!! たしかココは、アル○ォート派が戦いに行ったくらいで、他には何も……」


フロント「ああ、ガキ使終わっちゃったなぁ……」

フロント「あの後テレビを修理して、ついつい最後まで観ちゃったけど」

フロント「やるコト無いし、朝まで寝てようかな?」


テロリストB「フ、フロントにも乗務員がいます!!」

キノコ頭「こ、この列車の乗務員の例なら普通じゃない! 気をつけろ!」

副運転士「フロントさん、ソイツら捕まえてください!!」



フロント「え? また揉め事ですか?」

ズッ…


テロリストC「ハ、ハルバードです! あのフロント、斧槍を持っています!!」

キノコ頭「なんで列車のフロントがハルバードなんか持ってるんだぁぁぁ!!?」

テロリストD「後ろの絵画とかと同じ飾りモノじゃないのか!!」


フロント「……? それはモチロン、銀行でもどこでも、真っ先に狙われるのはロビーなので」

フロント「襲撃があった場合、初めに襲撃のあった場所で迎撃するのは当然では?」ブンッ ドガシャァァァァン!!!

キノコ頭「暴力団の事務所か何かか、この列車は!? う、うわああああああっ!!!」



キノコ頭「ロ、ロビーもダメだ! 9号車に逃げるぞ!」

テロリストA「はい! で、でも、どこまで逃げるんですか!?」


ガチャッ

車掌「いや、貴方がたの逃亡劇は、ここまでですよ」


キノコ頭「新手の乗務員!?」

副運転士「車掌さん!」

運転士長「車掌くん! 無事だったか!」

車掌「ええ。今のところ後方車両では何も起こっていませんので、コチラの応援に駆けつけました」



副運転士「あ、そういえば。車掌さんと一緒にいた、剣使いのヒトたちは……?」

車掌「ああ、彼らですか……」


車掌「彼らは既に向かいました。自分たちが行くべき、戦場に」

運転士長「……そうか。ならばココからは、我々の戦いというワケだな」


執事「さあ……。お嬢様を返してもらおうか」

テロリストB「へっ、やなこった! 俺たちは教授の“最強の兵器”でたけ○こ派を倒すのだ!」

教授「バカ! 私のコトはいいから、お前は逃げろ!」


キノコ頭「ぐ……。だが、この状況……」



副運転士「さあ、追いつめましたよー!」

運転士長「年貢の納め時というやつだな」

フロント「というか何でこんな状況になってるんですか?」

車掌「実は、き○ことか、たけ○ことか、色々ありまして……」

執事「ジャマするならば……。倒す!!」


キノコ頭(数の上でならば、5対5……。正面から戦えば、勝てないとは限らない)

キノコ頭(だが俺たちは、教授の拘束に一人を割いている。その時点で不利)

キノコ頭(とはいえ、後ろの副運転士とか運転士長とかいうのは、本当に戦闘力があるのか……?)

キノコ頭(いや、普通に見えても、この列車の乗務員だ。きっと何かを隠し持っているに違いない)



キノコ頭(くそっ、万事休すか……!?)


テロリストC「リ、リーダー。どうします……?」

キノコ頭「手持ちの弾薬も、底を尽きている。正直、もう打つ手が……」


テロリストD「あ、ちょっと待てよ。そういやお前、アレ仕掛けてなかったか?」

テロリストC「アレ?」


テロリストD「ほら。この列車に来た時に仕掛けた、脅迫用の爆弾。たぶんこの車両だったよな?」

テロリストD「おとなしく従わないと爆破するぞー、って言うための。まあ、結局使ってないけど」

キノコ頭「それだ……!!」



キノコ頭「お前ら、動くな!!!」


副運転士「……!」

運転士長「なんだ!?」


キノコ頭「……くっ、くくくくくく……。くくくっ、クハハハハハ……!」

キノコ頭「ハハハッ、クハハハハハ……ッ!!」


キノコ頭「お前たち、すっかり忘れているようだな。この俺たちが、何者かというコトを!!」

副運転士「何者か、って……? たしか、たけ○こ派のヒトたちでしたっけ?」

キノコ頭「違う! き○こ派だ! ソコはいちばん間違えてはいけないところだろうが!!」



キノコ頭「そうではなく……。俺たちがこの列車に来て、初め、何をしたかというコトだ」

執事「……ま、まさか!!」


キノコ頭「そうだ! もう一度言う、動くな!!」

キノコ頭「―――俺たちはこの車両に爆弾を仕掛けた!!」

フロント「何ですって……!?」

車掌「コシャクな……!」

キノコ頭「クッククク。形勢逆転というやつだな。爆破されたくなければ、おとなしくしろ!」


キノコ頭「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」



――1号車【展望車・前】 屋根の上


新たな年の、新たな日が昇る前の、わずか数刻の宵闇。
その刹那の時の黒に一つ、まばゆく輝く青が存在した。

北の大地から西の大都市までを走る道中にある列車の上を、青き紅蓮が駆けていた。

青き紅蓮は、列車から立ち昇る煙を切り裂き、強大な魔力の主へと斬りかかる。


族長「―――ぬぅッ!」

魔王「チョコマカと……!」


対する碧の光は、自らの背後の空中に三十にも届こうかという数の魔法陣を展開する。
その魔法陣の機能は、魔力の圧縮放射。一つ一つが大軍を焼き払う魔王の絶技であった。



魔王「焼け消えろ! 砕け散れッ!!」


魔王の号令一下、海の色から樹の色までの十色の光が夜空に煌めく。
直後、光は熱線となって魔族たちを襲い、列車の屋根を焼き払う。


族長「くっ……! 避けろ!」


魔族A「ぐぁッ!!」ジュワッ

族長「っ……、しまっ――――」

魔王「どこを見ている、青鬼の族長!!」

族長「!」



熱線をしのぎ、爆風をやり過ごした族長の前に現れたのは、昏き夕暮れ。
この日既に過ぎ去ったはずの、薄暮の光景であった。


魔王「碧夕の名の下に命じる! 光よ此処に、舞い戻れ!」

魔王「大いなる光輝は此の手に、大いなる漆黒は此の空に!」

魔王「逆光の輝き放つ落陽、今ひとたびの静寂を!!」


族長「……っ」

魔王「―――吹き飛べ!!」


瞬間、列車に、群青に包まれた赤き光が飛来した。



――1号車【展望車・前】


仮面の男「なんだ!?」

桜色の女「……!」


幾十度目か、仮面の男と桜色の女が剣戟を交わさんとした時、
突如、戦いの舞台である1号車の天井が崩落した。

空より墜ちるは、屋根を形作っていた瓦礫、煙、そして、
今まさに水平線に沈まんとする夕陽のごとき黄昏の光。


仮面の男「茜色の光だって……? いったい、上ではどんな戦いが」

桜色の女「―――っ!」ダッ



仮面の男「うおっと!」

キィン

桜色の女「……! 脇が甘いッ!」

仮面の男「まったく。喋っている途中だというのに、容赦がないな、君は……!」


頭上を見上げていた仮面の男に、裂帛の勢いで桜色の女は右から斬り上げの一撃を放った。
しかし仮面の男は間一髪で対応。数合打ち合ったのち、大きく後方に距離を取る。


桜色の女「さもありなん。貴様は会話の最中に突然手元をいじり出す相手を許せるか?」

桜色の女「我らの戦いに、場の如何など、詮無きこと。ただ肝要なのは」

桜色の女「この場に立っている者がいるか。いるとすれば、それは誰なのか、それだけだろうッ!」



仮面の男「っ……!」


吐き捨てて、桜色の女は再び仮面の男に狼のように食らいつく。

薙がれては、斬り。払われては、斬り。二の足を踏ませては、斬る。
繰り返すこと十数度。桜色の女の剣筋は鈍らない。彼女の体は、衰えを知らない。

いや、衰えを知らないという表現は正確ではない。
彼女の思考は、自らの体の衰えを、考慮などしていなかった。


桜色の女「あぁ……」

仮面の男「…………」

桜色の女「あぁ……っ」



仮面の男「…………ッ」

桜色の女「あぁ……っ!」


桜色の女の大きく踏み込んだ左足は、仮面の男の懐を捉えた。

瞬間、閃光。彼女の斬り上げと、彼の防御が、再び交差する。


桜色の女「あぁ……、あぁ……っ、あぁ……っ! この感触!」

桜色の女「刀の交差する音! 汗と汗の混じった醜悪な匂い! 鉄と血の混じったかぐわしき薫り!」

桜色の女「貴様の表情、わからぬなぁ……。貴様はその仮面の内で、私の表情を、どう見る?」

                 タノ    タノ    タノ   タノ
桜色の女「私はこのうえなく楽しい、愉しい、快しい、悦しい!!」



桜色の女「貴様のその刃に、私の刃をぶつけるのが!」

桜色の女「貴様のその刃を、私の刃が受け入れるのが!」

桜色の女「貴様に近づき、その手の震えを感じるのが……」

桜色の女「貴様に近づき、私の臓の鼓動を伝えるのが……」

桜色の女「貴様と競り合い、鉄の冷たさに私の体温を教えるのが」

桜色の女「貴様と競り合い、私の温かさが貴様の冷血を教えられるのが」

桜色の女「貴様を斬り、貴様の濁った血を浴びるのが……!」

桜色の女「貴様に斬られ、私の濁った血を浴びせるのが……!」


桜色の女「私は、たまらなく、たのしい……っ!!」



仮面の男「多弁なコトだ」

桜色の女「私と貴様の戦いは運命だ」スッ


桜色の女「私と貴様は、出会うべくして出会った……」

桜色の女「ならばこの立ち会いは、運命だ。因果だ。宿命だ」

桜色の女「どちらかが倒れるまで、死合は終わらぬ」

桜色の女「そして終わった時、私が貴様の血をすするのか、貴様が私の血をすするのか」

桜色の女「斯様なことは、些末で、どうでも良い」

桜色の女「どちらにせよ、貴様は私のモノで、私は貴様のモノだ」

桜色の女「欲しいんだ、私は、心から。貴様の体が、心が、すべてが……!!」ダッ



仮面の男「まったく。ワガママだね、君は」

桜色の女「ヒトが我が儘であることの何が可笑しい!!」


桜色の女の刀が、仮面の男の鉄仮面をなぞる。
仮面の男の刀が、桜色の女の頬をなでる。

鉄仮面には亀裂が走り、刀は鮮血を吸った。
頬には刀傷が刻まれ、刀は鮮血を吸った。

桜色の女の表情は歓喜に緩む。
仮面の男の眼光は冷徹に細まる。


仮面の男「いや、可笑しくはないさ。とうてい笑えるモノではない」

仮面の男「だがそれは、獣の道理ではないかな?」



桜色の女「獣だと……?」

仮面の男「そうさ。ヒトは、獣とは違い理性を保てるから、ヒトたれるのだろう?」

仮面の男「男女は相手を思いやるコトから始まると。学校で習わなかったかい?」

桜色の女「あいにく、色恋には興味があらぬのでな」


桜色の女「だが……。刀を見ると、瞳が熱くなる」

桜色の女「強者を見ると、口元が熱くなる」

桜色の女「戦を見ると、体が熱くなる」

桜色の女「貴様を見ると、腹の底が地獄のように煮えたぎる」

桜色の女「その高まりを、貴様にぶつけたい……。それが、私の思いやりというモノだ」



仮面の男「……ぷっ」

仮面の男「……ふふ、くふふ、ふふはははは!!!」

仮面の男「面白い、面白いよ。やはり君は面白い」

桜色の女「―――貴様。くだらぬことを考えているな」

桜色の女「下卑た口を閉じろ。語るべき言葉があるなら、刀で語れ」

仮面の男「いやいや……。君もあれだけ語ったんだ。僕にも喋らせてくれよ」


仮面の男「まったく。ディスコミュニケーションだ。相互不理解だ。戦闘言語だ」

仮面の男「どうやら、君に刀以外での気遣いというのは……。存在しないらしい」

仮面の男「いや、正確には存在するが……。だが君にとっての最上の交流は、刀だ」



桜色の女「そのとおり。言葉での気遣い、行動での気遣い……。どれも存在するが、上辺は超えられない」

桜色の女「だが刀は、虚言を弄さない。刀に訊けば、どんな人生で、どんな人間か、おのずとわかる」

桜色の女「物言わぬ木偶を斬っても仕方がない。そして、冷えた屍の死は尊重されるべきもの」

桜色の女「私が斬りたいのは、ヒトだ……。斬ることで、相手を感じたい」

桜色の女「それこそが、私の生きる意味、私が存在する意味……。人生の意味だ」


仮面の男「なるほどね。ヒトも薄皮一枚剥がせば、しゃれこうべ」

仮面の男「君にとって、獣とヒトは、明確別個たるモノで……。斬るべきはヒト、というワケだ!!」


桜色の女「来るか。それでこそ我が望み、我が人生……! 鉄仮面卿、この刀の錆となれ!!」



――1号車【展望車・前】 屋根の上


魔王「―――ここまでか」


言って、音もなく魔王は屋根の上に降り立つ。
列車の屋根には、横たわる四人の魔族と、剣を片手に跪く一人の魔族がいた。


族長「ぐ……ッ」


魔族A「ぞ、族長……」

魔族B「大丈夫、ですか……」

族長「大丈夫、だ。あとは俺に任せろ」



魔族C「そういうワケには、いきませんよ。族長……」

魔族D「一蓮托生だって、俺たち。約束しましたから……」

族長「……。お前たち」


魔王「……なるほど。貴様らの、主従たる絆は真実、まことのようだ」

魔王「だが無謀な戦いからは部下を遠ざける勇気も必要であると、俺は魔王として忠告しよう」

族長「…………」

魔王「いや、もう遅いか」


魔王「青鬼の魔族たちよ。此度の戦いは、良い戦いであった」



魔王「魔界における大いなる戦の終わった今、その矜持を持つ魔族もそうはいまい」

魔王「だが貴様らは特別だ。緋雷王の部下だからなどではない」

魔王「俺がじかに戦って、感じた。貴様らは、魔族を名乗るに値する、勇者であると」

族長「…………」


魔王「今なら、俺のチカラで魔界に送り返してやる。どうだ」

族長「断る」

魔王「そうか……」


魔王「ならばここで散れ! この俺の魂に名を刻む栄誉に震え、そして、逝き果てろ!!」



王は号砲のごとき宣言を叫び放つ。そして、その頭上に、小型の魔力剣が現れる。
剣の柄は王の右手に吸い込まれると、刃を族長の首元にぴたりと押し当てた。


魔王「何か言い残すコトは」

族長「…………」

魔王「……終いだ」


魔王の剣は、族長の左肩の上で角度を水平に変える。

そして、剣の刃が、右から左へと薙がれんとした時。
“それ”は、魔王の左胸を穿った。


魔王「っ、ガ…………ッ!!?」



族長「……!?」


魔王の左胸、心臓の位置に的確に突き刺さったのは、一本の矢。
魔力を帯びた、魔王の防護障壁を貫く、ただ一本の矢だった。


魔王「魔力の矢だと……? いったい、どこから」

ビュオッ!!!

魔王「……! 俺に二度同じ術が通じると思うな!!」


再度魔王を襲った、今度は額を狙った矢を、魔王は魔力剣で弾き落とす。
だが直後、矢が射抜き損ねた額に、小さな鉄の塊が、数個の黒い斑点を作った。

魔王「つうッ! これは、魔力でないな。鉄……、鉄砲か!?」



剣使い「ああ、そうだ。気付くのが遅すぎるぜ、奴さん」

魔王「何!?」


最後に、突如として彼は現れた。

夜空の星の光を照り返して輝く、白銀の髪。
その刀身は魔王の頭蓋を狙わんときらめく、白銀の長剣。

偉大なる魔族の長の命を刈り取らんとする雷鳴が、そこにいた。


剣使い「ヘッドショットだ、お山の大将!!」

魔王「人間……ッ」

魔王「この魔王を侮るなっ!!」ズバッ



剣使い「うおっと!!」ズザッ

弓使い「よっと! うわ、こりゃヒドい状況だなぁ~。大丈夫? 剣ちゃん?」

剣使い「ああ……。何とかな」


銃使い「立てる? 魔族のヒト」ザッ

族長「……! 貴様らは……」

剣使い「よう。夕方ぶり、だな。魔族のオッサン」ビッ

族長「……。お前たちが、どうしてここに……」

剣使い「ん? そんなの決まってるだろ」


剣使い「ポっと出の魔王なんぞに倒されちゃ、困るんだよ。……お前を倒すのは、この俺だ」

第六章「深夜・後」は以上になります。
実際の今年の大晦日は曇りや雨になるらしいです。

第七章は、明日12/29(金)の18時ごろ開始の予定です。

ほとんどのキャラが活躍してるなー

群像劇は大変ですが面白いです。

それでは、第七章「未明・前」を開始します。
60レスほどの予定です。



【1月1日 午前4時】

――1号車【展望車・前】 屋根の上


魔王「ぬぅぅ……ッ、この魔王の玉体にキズをつけるとは」

魔王「貴様ら、何者だ!!?」


弓使い「通りすがりのフリーターです☆」

魔王「ただのフリーターが剣や弓や銃を使うワケあるかぁぁっ!!」


剣使い「さて、魔王だか何だか知らねぇが……。とっとと、この列車から退場してもらおうか」

銃使い「…………」ガシュガシュ



族長「貴様ら、本気か……?」

族長「魔王様は、強い……。魔界でも七本指に入るからこその、七魔公王」

族長「たかがニンゲン風情が勝てる相手ではないぞ……」

剣使い「ンなモンやってみなきゃ、わかんねぇだろ?」

弓使い「本当にコレ勝てるの? 死ぬよ!? なんてシチュエーション、今までにも何度もあったもんねー」

銃使い「人間死ねば、それまで。だけど、だからこそあがいてみせる」

魔族A「……!」


魔族A「……ぞ、族長」

族長「……なんだ?」



魔族A「俺は。コイツらのコト……。信じてみても、良いと思います」

族長「何……?」

魔族B「そうですよ。俺たち魔族でも、魔王さまに逆らおうなんて奴、なかなかいない……」

魔族C「だけど、相手が強者たる魔王であるとわかって、なお挑む……」

魔族C「それは。俺たち魔族の真の精神、そのものではありませんか……?」

族長「……!」

魔族D「不屈の精神。リスペクト、ってやつですよ……!!」


魔王「……人間」

剣使い「なんだ?」



魔王「貴様らの考えは、よぉくわかった」

魔王「つまり俺が、魔王であると知って。七魔公王の一角であると、なお知って」

魔王「それでも脆弱な人間の身でありながら、なお、この俺に挑むと?」

剣使い「ああ。そして、倒す」ジャキ


魔王「…………」

剣使い「…………」


魔王「…………。フッ」


魔王「良い目だ」



魔王「俺はかつて、同じ天雷のごとき稲光のような目をした人間の男と出会ったコトがある」

魔王「俺が唯一、友と認めた人間のコトだ」

剣使い「へえ。そんな奴がいて、今も生きているなら、俺も一度戦ってみたいモンだな」

魔王「ああ。案外、すぐ近くにいるかもしれん。奴が手隙になれば、訪ねてみるがいい」


魔王「―――もっともその未来、訪れるに能わぬ、夢物語であろうがな!!」


剣使い「……!」

弓使い「すさまじい魔力……! 並の人間なら、浴びただけで昏倒だろうね」

銃使い「…………」チャッ



族長「……待て」グッ

剣使い「おい! 大丈夫か、立てるのか!?」

族長「このくらいでくたばっては、族長の始末がつかぬ。こやつらへの示しもつかぬ」


族長「お前たちは、よく戦った。後は、俺に任せて休んでいろ。お前たちは、俺のジマンの部下だ」

魔族A「族長……っ!!」


族長「……魔王よ。ここからは、魔族と魔族の戦いではない。貴方様を倒すためだけの戦いだ」

族長「たとえ俺たちが勝利せしめても、我らの処罰は変わらぬであろうが……。だがそれでも剣を取ろう」

魔王「ふん。貴様たちの全力に、その助力が加わるのは当然だ。条件は変わらぬ」



魔王「来い! 人間どもよ、魔族どもよ。その小さき手で、大いなる栄光を奪い取ってみせるがいい!!」


剣使い「望むところだ、魔王。姐さん、ジュー、行くぞ!!」

弓使い「おうよっ!」

銃使い「…………」ゴソゴソ


魔王「まずはアイサツ代わりだ! ふんっ!!」


宣戦布告の一言と共に魔王が直立のまま浮上し、両手を大きく広げると、
先刻と同じ魔法陣の軍勢が魔王の背後に展開される。

煌めくは、海の色から樹の色までの十色の光。
その一発一発の最大火力が、この列車を蒸発させるに相当する、必殺の一撃である。



弓使い「あらまあ、オオゲサなコトですよって……。でもその戦法、ちょっと大味過ぎない!?」


対して弓使いは、余裕の表情一つ変えず、静寂の夜に響き渡る明朗な声で詠唱する。
彼女が指先を伸ばした先は、星空。漆黒の世界に突如現れるは、彗星。


魔王「何!?」

弓使い「私の得意技は奇襲なモンで! その魔法陣、最初に見た時に、セットしておいたんだよ!!」


彗星は一瞬ごとに輝きを増し、樹の色の砲門へと近づく。
迫る彗星が弓使いの放った矢の時間差攻撃であると魔王が気付いた瞬間にそれは、射抜かれた。

光に一瞬遅れて、爆発。大量の魔力を備えた砲門は、魔力を暴発させ、四散する。

魔王「ちぃっ……!」



剣使い「足下がお留守だぜ、魔王さん!!」

魔王「なんだと!?」


魔王が狼狽したその一瞬に、剣使いが電流のように斬り込む。
跳躍と共に放たれた下段からの斬撃。魔王は先刻の魔力剣でかろうじて切り結ぶ。


魔王「ぐっ……。まずはあのスナイパーを始末せんコトには始まらんか!!」

弓使い「おっと私狙い!? 参ったなあー、オトリとか慣れてないんだけど、まぁそれはそれで!」


強大な魔力の主が向けた赤い眼光。だが弓使いは恐れる素振り一つすら見せず、
踊るような足踏みで後退し、機関銃のごとき勢いで弓矢の連射を行使する。

魔王「ぐぬううううううっ!!!」



族長「避けさせんよ、その連射! 燃えろ、燃えろ、燃えろ!」


魔法陣の展開を諦め、列車の屋根の上に戻らんとした魔王に、
族長の口から放たれた青き炎が襲いかかる。

その炎は、ただの火炎ではなく。青鬼の呪いが込められた、傷口を焼く青き炎であった。


魔王「うおおおおっ!! こざかしいッ!!」

銃使い「よっと」


銃使いは、たしかに銃を得物として使うが、扱えるのは銃だけではない。
拳銃、機関銃、狙撃銃、重火器。すべてが彼女の専門であり、役割である。

ならば、屋根に近づいた魔王の足下に転がる手榴弾の主も、また明白であった。



――1号車【展望車・前】


                                            _                                  _.  _   _
                               ヽ`              | | ロロ                              | | | | | |
                              ´               | |_   __ロロ   _       _     _      _    | | | | | |
                               ´.              .| __|   |   |.  _| |_  _| |_   _| |_   l二l | |   |_| |_| |_|
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  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
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                 /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
                `;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `,  ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
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仮面の男「こ、今度は大爆発だって!?」

桜色の女「くッ……!!」


上階の戦闘の影響は、当然階下の戦場にも現れる。

屋根の上を包んだ青き炎。その屋根が再び崩落したとなれば、
当然、青き炎は、彼らの戦場をも焼き尽くす。


仮面の男「やれやれ、1号車が丸焼けだ……。床も、柱も、展望台も、何もかもが燃えている」

仮面の男「こうなっては僕らの身も危ない。ここは一旦、お開きとするべきじゃないかな?」

桜色の女「場の如何など詮無きこと、言ったはず」

桜色の女「ここがどこであれ、二匹の剣の鬼が出会ったならば。果たし合うは、ただ一つのみ」



仮面の男「二匹の剣の鬼……、か」

桜色の女「そうだ。貴様の理に則るのであれば、犬でも、獣でも、狼でもよいぞ」

桜色の女「いずれにしろ、敵の肉を食らい尽くすのは変わらぬ」


仮面の男「なるほどね。それが君の、相手への思いやり、気遣い、理解、と言ったか」

仮面の男「だがそれは、あまりにも悲しくはないか?」

桜色の女「何?」

仮面の男「僕らはヒトだ。こうして語るべき言葉を持ち、ささやくべき愛を持つ」

仮面の男「だのに、殺し合うしか、理解の手段が無いとは……」

仮面の男「いささか不便、ではないかな?」



桜色の女「そんなことか。ならばそれも、言ったはず」

桜色の女「言葉もいいだろう。行動もいいだろう。それはヒトのみが持つ、理性の表現なれば」

桜色の女「だが、私には……。どうしてもそれが、虚ろに見える。まるで鏡面の出来事のようで、訝しい」

桜色の女「だからこそ、刀に訊く。刀が斬った体、流した血は……」

桜色の女「すべて真実であるだろうから」


仮面の男「僕はそこまでは思わないのだがね」

仮面の男「この世は楽しい。たとえ命のやり取りなどせずとも、ヒトは争えるし、ヒトは助け合える」

仮面の男「もっとも、僕が介入したせいで、少々大事になってしまったようだがね……」

桜色の女「何の話だ」



仮面の男「僕はこの戦いで君に斬られるコトはない、というハナシさ」

桜色の女「……!」


仮面の男「だって、そうだろう? この世には、美しい女性もたくさんいる」

仮面の男「さっきだって、それでも呼びたければ教授さんに再会したばかりだ」

仮面の男「君を倒して、僕は、彼女を追わねばならない」

桜色の女「何かと思えば、女の話か……」


桜色の女「気に食わぬな。虫唾が走る。不愉快だ。決闘の最中に、他の女のコトを考えるなど」

桜色の女「構えろ、鉄仮面卿。貴様の脳髄を、私の血で染めてやろう」



仮面の男「……くっくく。だから君、それは……」

仮面の男「……いや、やめておこう。君の理解とは、殺し合いそのもの」

仮面の男「常人のモノサシで測れるそれではなかったね」


仮面の男「だが安心してくれ。いつだって、君が僕にとってのいちばんだ」

仮面の男「君のような、ねじ曲がった表現を持つ女性を、他に見たことはない」

仮面の男「だからこそ、僕は君のトリコなんだよ」

仮面の男「ラブズッキュンだ」

桜色の女「殺すぞ」

仮面の男「すまない」



仮面の男「だけども、僕は自称しよう! 愛と正義の戦士を!」

仮面の男「そりゃあ、度が過ぎて、君に斬られるコトもあるが……。そこはそれ」

仮面の男「僕は女性の愛のために戦い、万人の正義のために戦う」

桜色の女「妄言だな」

桜色の女「言葉では何とでも言える。行動では如何とでも出来る」

桜色の女「その感情、その想念が、真実か。それは刀に訊けば、わかることだ」


仮面の男「やれやれ。議論は平行線、というワケか」

仮面の男「だがそれでいい。僕の言葉一つで変わってしまう君など、君ではない」

仮面の男「しかし、愉悦に浸る、君ではなく……。桜のように可憐な君も、一度は見てみたいモノだ」



仮面の男「ゆえに、僕はここで死ぬコトは出来ない」

仮面の男「僕は剣の鬼であっても、それだけではない」

仮面の男「生きる。生きて、逃げおおせ、愛と正義のために生きる」

仮面の男「そのために、僕は君を倒そう。……春風のごとき、桜色の剣士よ」


桜色の女「上等だ」

桜色の女「ならば、その生ぬるい心構え! 散り行く桜の嵐となるがいい!!」


桜色の鬼は、刀に青き炎を宿らせる。
炎は燃える。かつて女が吸った血を薪にして、強く、青く、猛々しく。

さながらそれは、逢魔時の風に吹かれて妖しく揺れる、満開の夜桜のように。



仮面の男「君との戦いは、本当に楽しい……」

仮面の男「だけど女性を斬るのは僕のポリシーに反する! 難しいモノだ!」


対して、仮面の鬼は、未だ刀も仮面と同じように冷たい。
鉄は輝く。女が放つ炎を反射して、強く、青く、猛々しく。

さながらそれは、逢魔時の空にいつの間にか現れる、満月の白光のように。


桜色の女「ぜああああああッ!!!」

仮面の男「ぬうっ!」


反響する刀と刀の音は、二人以外には誰にも聞こえない。
すべて炎に包まれ、吸い込まれ、かき消され、燃えて、消える。



天井がまた崩れる。
階上での戦闘が激しくなるたびに、列車の屋根は見る影もない瓦礫の山と化す。

だが荘厳なる列車の精気を吸って、二人の刀は、なお妖しく輝く。

かたや、互いを殺すために斬る、狂人の刀。
かたや、互いを生かすために斬る、戦士の刀。

しかし、この場に狂人と戦士の優劣は無く。
ただ、純粋なる、剣の鬼が二匹いた。


桜色の女「これで終わりだァッ、鉄仮面―――!!」

仮面の男「来い、桜色の剣士よ……!」


仮面の男「この一撃をもって、君への花束としよう!!」



――6号車【食堂車】


ヒーロー「ま、待ってくれ! 俺たちは味方だ!」

ヒーロー「この列車をハイジャック犯から助けに来た正義の味方なんだ!!」

料理長「何……?」ピタ

小型メカ「そ、そうなんです。この風体では、信じてもらえないかもしれませんが……」

小型メカ「実は、私たち、き○こたけ○こ大戦を止めるために、未来からやって来たんです」

料理長「ふむ。何やらき○こたけ○こを巡る未来人がいる、とは士長から聞いていたが……」

料理長「それが君たちだったのか!」

ヒーロー「ソ、ソッコーで理解してもらって助かる。というワケで、良かったらナイフ、抜いてください。イタイ」



小型メカ「しかし、キノコ頭のハイジャック犯たち、既にどこかに行ってしまいましたね……」

小型メカ「教授さんを助けるにしても、居場所を探すのから始めるのは、この状況では」

料理長「それなら、屋根の上から探せばいいんじゃないかな?」

ヒーロー「それが屋根への道は、あの士長が隔壁封鎖してしまってな……」


料理長「そういうコトか。それなら、この食堂車に開いた穴を使うといい」

料理長「案外君たちは良いヒトそうだ。き○こたけ○この争いを止める、と言ったね」

料理長「食べ物をダイジにするヒトに、悪いヒトはいない」

小型メカ「さ、散々ナイフ投げといて、なんだか説得力がありませんけど……」

ヒーロー「まあ、なんでもいいさ! ありがとう料理長! それじゃあ屋根の上に出てみるとしよう!」



――7号車【ラウンジ】 屋根の上


白ドレス「ハッ……!!」

黒コート「え……? どうかしたか、大天使」

マスター「―――隙あり!!」

ズバッ


革ジャン「あっ」

白ドレス「ぎゃああああああ!!? つ、翼がもげた―――!?」

マスター「この腕は、神殺しのための武器……。天使であれば、斬るもたやすい」



白ドレス「う、うう。死ぬ。このままじゃ死んじゃうよ、この列車、バケモノばっかりじゃん……」

白ドレス「っと、そんなコトよりも! 聞いてください、時空整備課!」

黒コート「はっ!? 右の翼がもげたのは、そんなコトで片付けないほうがいいと思うが」

白ドレス「いや、そんなコトだよ! 今から数分後、ある乗客の命が危ない!」

黒コート「……! いつもの大天使の未来視か!?」

白ドレス「そう! 直前になって詳細が見えた、だからとにかく、この列車と同じくらい――――」

白ドレス「速く移動できるモノを出して! これが大天使としての、君との契約の遂行だ!!」


黒コート「列車と同じくらい早く移動できるモノ……。わかった、行くぞ革ジャン野郎!!」

革ジャン「あ、ああ。……、……。なーんか、腹立つんだよな」



――8号車【ロビー】


キノコ頭「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」


運転士長「なんだと……!?」

副運転士「たけ○こ派のヒトたち……! もう乱暴はやめて、降参してください!」

キノコ頭「き○こ派っつってるだろうが!! ワザとか!!」


フロント「この車両に爆弾を仕掛けた、ですか……」

車掌「切羽詰まった末の、コケオドシという可能性もあります。一気に対処すれば問題ありません」

キノコ頭「はたしてそうかな? コレを見ても、同じコトが言えるか―――!」カチ



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副運転士「な……っ!」

運転士長「屋根が吹き飛んだ……!!」



キノコ頭「クッククク……」

キノコ頭「これで爆弾がホンモノだというコトがわかってもらえただろうか」


キノコ頭「何度でも言う! 動くな!!」

キノコ頭「俺たちに逆らえば、次の爆弾を爆破する!!」

キノコ頭「爆弾が爆発すれば、この女は列車の外に吹っ飛ぶぞぉぉ!!」

教授「ぐ……ッ」


執事「お嬢様! 安心してください、俺が絶対に助けます!」

教授「バカ執事……! 逃げろって言ったでしょうが!!」



教授「親でも見放すヘンクツな私に、優しくしてくれたのは、アンタだけだった……」

教授「だから、アンタだけには生きてほしい! たとえ私が死んだとしても!!」

執事「お嬢様……ッ、ハナシが違うじゃありませんか……っ!!」


キノコ頭「ククク……。いいぞ。全員、まずは武器を捨てろ」

キノコ頭「そして手を上げろ。その後で縄で縛ってやる」

運転士長「くっ……」


テロリストA「……あ、あの。リーダー。早急に申し上げたい要件が」

キノコ頭「ん? どうした? この余裕の状況だ、何でも聞いてやるぞ」



テロリストB「あの、いま爆発させた、この車両に仕掛けた爆弾ですが」

テロリストC「アレ。脅迫用だったので、見た目ハデに爆発するように……」

テロリストD「一つ起爆したら全部誘爆するようになっています」

キノコ頭「ははは。そうか。一つ起爆したら、全部誘爆するように――――」


キノコ頭「―――は?」


副運転士「え、全部誘爆って……」

運転士長「まさかそれは……」


シュボボボボ



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    ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .;. __ノ   /  |  / _| |\ .|  / ム--、            | ^ヽ_j⌒l
    /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li   ' ;   .` .;    il,.;;.:||i ../____/    し'  (_ .二ノ  ゝ――‐'            しヘ、__,ノ
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          ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´



副運転士「ぎゃああああああああああああ!!!」

キノコ頭「部屋の四方八方が全部吹き飛んだああああああ!!!」


突然の全方位爆発によって、ロビー車は一瞬にして、吹きさらしの展望車両と化した。

そして、高速で走行する列車が生み出す暴風は、
無防備な乗員乗客を外に吸い出さんと、ロビーへと襲いかかる。


運転士長「皆、床に伏せろ! どこかに捕まれ! でないと、外に吹き飛ばされるぞ!!」

フロント「み、皆さん! 私のハルバードに捕まってください!」

車掌「ありがとう、フロントさん!!」

テロリストA「恩に着ます!!」



キノコ頭「お前たち! 大丈夫か!?」

テロリストB「は、ハイ。ですが、さすがに自分の身を守るのが精一杯で……」


教授「うわああああああっ! 吹き飛ばされるううううううっ!!!」

副運転士「教授さん!!」


ロビーを襲った暴風は、その中で最も力無き者から、漆黒の世界へといざなうため牙を剥く。
教授の体が宙に浮く。その脚が、胴が、腕が、列車の外へと吸い出される。
だがその腕を掴んだのは、一人の、勇気ある女運転士だった。


副運転士「うぐ、あ、あ。腕が、もっていかれる……!!」

教授「運転士さん、手を放して! でないと、貴女まで……!」



副運転士「そういうワケには、いきませんよ……」

副運転士「乗客の皆さんをお守りするのが、私たち、乗務員の役目なんですから……!!」

教授「……!」


フロント「新米ちゃん!」

運転士長「いいぞ、その調子だ……! 車掌くん、ハルバードを少しずつ動かせ!」

車掌「了解!! 大丈夫ですか、このハルバードに捕まって……」ズズズ…



魔王「――――――うわヤベ、エラい方向にビーム飛ばしちゃった!!」

ビュイイイイン



執事「何!?」

副運転士「あの声は、魔王さん!? え、ビームが飛んでくるって……」

シュゴ!!!


             ┌──┐                                        "
             │::::::::: │                                          ,   ,
             │::::::::: │ ┌─┐            ┌──┐               /
             │::::::::: │ └─┼─┐        │::::::::: │  ┌┐         /   '
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              │::::::::: │                   │::::::::: │              /              /::::::::/
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                  i       ,              /               /           く :::::::::::::: /
                  |i       /             "             /           ̄ ̄ ̄
         <7         人_    /(         /         ,      /
            、 、   ,:彡'三 ≡ヾV  て      /く>  !      /     /
             \_)\/ミ:::.:..  ..:.::ゞ-≡三ミミ:、  "   _,人,、_   /(      '    '
        `ヽ.__ノーシ=二≡=、;::=-::.:.. ’.:.::=、彡 、  ,:彡'=三≡ヾV  て  /     ◇
    _    ヾ:;:./=≡:::.....:.:/ミ::.:.    ..:.:::-=ヾ:_)\/ミ:::.:.  ..:.:::ゞ-≡三ミミ:、 /
            _冫三::;  ..:.:::::::|ミ:::.:.. .・.::`ヽ._三ノー.シ=二≡=、;::=-::.. ’.:.:::=三|!l/(_ /    ´
         )三:::...    ..::::゙ミ、:..   ..::-=:ヾ:;:./=≡:::.....:.:/ミ::.:..   ..:.::-=ミ:v'  て_ _
         ⌒ヾミ=-:/=::... ..:.::゙ミ:=-=彡'::. _冫三::;  ..:.:::::::|ミ:::.:.. .・.:.::-=彡':.;. (_      <>
    <7      )ミ/三::.     ..:::`ミv彡::.:.. )三:::...    ..::::゙ミ、:..  ..::-=彡三=三ミミ:v'´
         _ノ三|三:::::... ∵  ..:.::=il=::.. ⌒ヾミ=-:/=::... ..:.::゙ミ:=-=彡'::.. ..::::=三|!l
          ´⌒):..ヾミ=-.::;    ..-彡ミ:::..  . )ミ/三::.      ..:::`ミv彡:::.:.. .::-=彡ノム _
             ヽ∧ヘ、ヘ人从ヽ∧ヘヘ从ヽ_ノ三|三:::::... ∵  ..:.::=il=::.  ・..:.::三ミ:、て ̄
                              ´⌒):.ヾミ=-.::;    ..-彡ミ:::...   . ..::::ノソ⌒` 、
                                ヽ∧ヘ、ヘ人从ヽ∧ヘヘ从ヽ∧ヘ、ヘノ(



キノコ頭「どああああああああああああ!!!」

運転士長「何を考えているんだ、あの魔王はアァァッ!!!」


教授「うぐ、あ……!!」

副運転士「て、手が……っ!」


不慮の事故が無ければ、女運転士の勇気ある行動は結実したかもしれない。
だが、列車の旅にアクシデントはつきものだった。
魔王が放ったビームの爆風は、ついに教授の体を列車から引き剥がす。


教授「うわああああああああああああ!!!」

副運転士「そんな、教授さん…………っ!!」



運転士長「なんだ? どうなっている!?」

フロント「士長! 教授さんが外に!」

車掌「吹き飛ばされました、ここは私が――――」


執事「――――――っ!!」

全身の力を込めた踏み切りと共に、列車の外に飛んだのは、男だった。
列車の外に投げ出された彼女を、誰よりも慕い、誰よりも理解していた、男。


運転士長「……!」

副運転士「執事さん……!」

執事「皆さん……。後のコトは、頼みます」



――列車の外 空中


教授「うぐ、あ、ああ……!!」

教授のけっして小さくはない体は、空中で無秩序に回転する。
だが、その回転を止め、彼女の手を取る、白い手袋があった。

教授「……!」

執事「……お嬢様。ご無事ですか」


教授「アンタ。どうして……」

執事「お嬢様は、ご自分が死んでも、俺に生きてほしい、とおっしゃいましたね」

執事「それでは意味が無いのです」



執事「お嬢様がいなくては、俺も、生きる意味が無い」

教授「……!」


教授「でも、このまま、地面にぶつけられたら」

執事「ええ。タダでは、すまないでしょう」

執事「だけど。俺は、それでもいい」


執事「最後まで、お前と一緒にいれるのなら……。それが、俺の本望だ」

教授「…………」


教授「……ばか」



黒コート「―――させるかァァァァァァッ!!!」

その時、列車の上で駆動する音があった。非効率的で暴力的な鉄の馬が、煙を吐いて嘶く。


教授「え――――?」

執事「あれは……? 黒い……!」


革ジャン「おいおいセンパイ、本当にカっ飛ばす気か!?」

黒コート「ああ! 死にたくなければ捕まっていろ!!」


黒コート「悪魔や天使は、非道だが、契約は必ず守る。なら人間の私がそれを反故に出来るか」

黒コート「そしてっ! 目の前に助けを呼ぶ声あらばっ、それに応えずして何が警察かァァァッ!!!」



――12号車【謎車】 屋根の上


革ジャン「だけど、さっきこの車両の格納庫から出したばっかりで」

革ジャン「エンジンもフカしてないのに、何が出来……」


ビュイイイイン

魔王「――――――うわヤベ、エラい方向にビームまた飛ばしちゃった!!」

ドドン!!!


黒コート「エンジンが温まっていないなら……」

黒コート「おあつらえむきに飛んできたビームの爆風で浮いてカっ飛べばいいだろうがあああ!!!」



教授「あ――――」

執事「あれは――――――」


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―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━―― ̄ ̄___

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                                   |.|                      ヽ=.--7/レ'レ'
                               从                            //
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                   -=ミ:、  / , -==ミ:、`{ f~   jf∧∧   /          ヽ=.-- '. ,イ,イ ,イ    .,ィ
                     )/ム./  /////⌒Vハ j  ./::::::::}⌒`¨´              レレ //    / }
                , =-z≦< /  / ///   ,zシ^/:::::::_::∨_ __                 /'   ./ /
               (: : :(__     ∧ {///{   //  /:::://///フ'⌒>x::::>x                 //
           ___   `.ー=≦⌒ヽ∧ \//>=イ/  /: ///////::::::::::::::::::::::::::if^>:、              ´
          /:\\ヽ _    ≧x: : ∧>'^/¨¨ ./:: //////::::::::::::::::::::::::::::::::::i|〕iト .,\          ., イ
       ,∠斗=ミ: : :\\:.~> '^⌒`ヽ /! ./   /::::::://////:::::::::::::::::::::::::::::::::::::j}//// 〕iト .,        .レ'
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―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━―― ̄ ̄___



黒コート「ぐっ! 接地したぞ革ジャン! エンジン全開だ、落ちてくるヒトを受け止めろォォッ!!」

革ジャン「はいはい……。ってぇぇ、オトナ二人かよおおおおおお!!?」


執事「タ、タイムパトロールのヒト!? 潰れますよ!!」

教授「ゴメンなさいどいてどいてどいてぇぇっ!!」


黒コート「ゴメンで済むなら警察は要らないっ、革ジャン何とかしろおおおおおお!!!」

革ジャン「何とかしろで何とかなるなら警察は要らないと思いますがねヨイショっとぉ!!」ガタッ


革ジャン「うんむ……。絶景、絶景。バイクの上に立って見る景色は格別かな」

教授「だからどいてってば―――!!」



革ジャン「そして、どいてでどく警察もいないッ! オラァッ!!」


空中を舞う二人に、仁王立ちした男が乗ったバイクが迫る。
しかし二人をまとめて受け止めるのは不可能と判断した男は、代替処置として、回し蹴りを放った。


執事「ぐぼはっ!!」

教授「ちょっ、大丈夫!?」


革ジャン「そらあ吹き飛べ! 俺たちに出来るのはここまでだ!」

革ジャン「あとは列車の屋根の上にいる誰かさんに、何とかしてもらいな!!」


ヒーロー「―――任せろ!!」ダンッ



またも飛んだ魔王のビームの光を背に受けて、列車の上にいるそれは輝く。
赤色のポリマースーツ。正義の味方を象徴する、その出で立ち。


執事「あ、貴方は……」

教授「食堂車の変態仮面!!?」


ヒーロー「だから変態仮面ではないとうっ!!」


革ジャンの蹴り上げによって再び空中を舞った二人を、
屋根から空中を突進してきた、とあるヒーローが見事に受け止め抱きかかえる。

そして、ヒーローは突進した先にある線路の脇の木の幹を蹴り飛ばし、
空中で一回転することで、二度のステップと共に列車へと帰還を果たした。



革ジャン「よお未来の市民ボランティア! やるじゃねえか!!」

ヒーロー「ふははははっ、これくらいは朝飯前だ!」

ヒーロー「ようやくヒーローの面目躍如、といったところかな!!」


教授「た、助かった……」

執事「ありがとうございます。皆さん!!」

黒コート「気にするな! これも警察の務めだからな!」


執事「あれ。でも、警察のお二人は、どうやって列車に戻ってくるんですかーっ!?」

黒コート&革ジャン「「あっ」」



革ジャン「あっ、て……。まさかセンパイ、何も考えてねえのか!?」

黒コート「う、ううん。正直、バイク出して走らせるところまでが、精一杯の想定というか……」

革ジャン「じゃあ、あの天使女に、いいように踊らされたってコトかよ!」ダンッ

黒コート「どうしてそうなる。ううーん。しかし、列車と並走は出来ても、どう戻ったモノか」


黒コート「おい、そこの市民ボランティア! 何か良い案はないか!?」


小型メカ「ゴメンなさい黒コートさん、なんとか助けてあげたいんですが……!」

ヒーロー「すまない! まったく思いつかない!」


革ジャン「言い切りやがってクソがぁぁぁ!!」



教授「あっ、でも。待って……」

執事「お嬢様?」

教授「さっきから魔王のビームが飛びまくってるけど、それを利用すれば?」

ヒーロー「それだ!!」


ヒーロー「おい、タイムパトロールの諸君! 魔王のビームを利用するんだ!」

黒コート「なんだと!?」

ヒーロー「さっきから魔王のビームが飛びまくっている! その爆風に乗るんだ!!」

革ジャン「はっ。ヤブから棒に、勝手なコト言いやがるぜ……。爆風なんかでバイクが飛べるか?」

黒コート「だが、それに賭けるしかない。魔王は先頭車両だな、速度を上げるぞっ!!」



――1号車【展望車・前】 外部


魔王「オラオラオラオラオラオラオラオラぁっ!!」

剣使い「姐さん! なんとかあの魔法陣、また狙撃で潰せねえか!?」

弓使い「やってるけど数が多すぎ! っとと、うおわぁっ!」ボカン

銃使い「っ! 族長、爆弾! 空中で火をつけて!」ヒョイッ

族長「任せろ!!」ボッ

ドォォォォン!!!!!!


革ジャン「なんとか先頭まで来たが、何だありゃぁ!? この世の終わりか!?」



黒コート「爆発の破片が……! かわすぞ!」ギュン ギュン

革ジャン「ってオイ右に左に揺れるうううううううううううう!!!」ガク ガク


魔王「くそっ、チョコマカと逃げ回りやがるせいで狙いがつけにくい……!」ビュイイイイン

ドドン

剣使い「くそっ、逃げ回りながらだから、決め手に欠けるな……!」サッ


魔王「うわヤベ、エラい方向にビームまたまた飛ばしちゃった!! もう気にしない!」ビュイイイイン

ドドン


黒コート「っ! 今だぁぁっ!!!」



そのビームは、黒コートたちが乗るバイクの眼前に着弾した。
足下の地面が焼け、爆発し、煙が立ち上る。

だが爆発の瞬間を、黒コートは見逃さなかった。
彼女は革ジャンの体重を大きく後ろに預けさせ、自らはハンドルを引き上げる。

たしかに通常の爆風であれば、鉄の馬をはばたたかせるには不十分だろう。
しかし魔王の放った圧縮光線の爆風は、浮いたバイクの前輪の下を走り、
そして、その役目を果たした。


黒コート「うおおおおっ……」

黒コート「飛べええええええええええええッ!!!」


魔王「―――? なんだっ!?」クルッ



剣使い「あ――――」

弓使い「ウソ……」

銃使い「あれは――――」

族長「天馬……! 翼の無いペガサスだっ!!」


魔王「な、なんでバイクが空を飛んでるんだぁぁぁぁぁぁ!!?」


革ジャン「ふ……。良い夜空、だな……。センパイ。星がいつもより近く見えるぜ」

黒コート「ああ……。お前とのランデブーでなければ、いつまでもこうしていたいくらいだ」

黒コート「だが、ただ一点……」



黒コート「今からすぐに落ちるという問題点に目をつぶればだがなああああああああああああ!!!」

革ジャン「落ちる落ちる落ちる落ちるうおえいあああああああああああああああ!!!!!!」


魔王「な――――」


バイクの二人の感想に、つけ加えるならば。
その光景は、傍観していた五人の戦士たちにとっても、どこぞの洋画のような幻想的な光景だった。

ただ一点の問題点。

傍観していた戦士たちのうちの一人の頭上。
魔王の上に、そのバイクが落下する、という問題点に目をつぶれば。


魔王「しまった! 魔力防壁……、ってコレは魔力由来の攻撃にしか意味は無い、あっ――――」



ドカバキグシャ


魔王「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙――――っ!!!」


弓使い「魔王の顔面にバイクの後輪がメリ込んだ!!」

銃使い「今しかない!!」


剣使い「行くぞ! 族長!」

族長「ああ。剣使い。遅れを取るな!」


剣使い&族長「「うおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」



魔王「いてて、ヒドい目に遭った……。はっ!?」

剣使い「これでトドメだ!!」

族長「我が刃、受けるがいい」

魔王「なんでだ、こんなハズじゃあっ……! ぎゃアアアアアアアアアアアア!!!」


剣使いが振り下ろしたのは、白銀の長剣。
族長が振り上げたのは、炎をまとったシャムシール。

刹那。白き雷鳴と、青き紅蓮が、入り混じった。


革ジャン「うおっ、なんかやったみたいだぞ!」

黒コート「私たちが気にしてる場合か!? 1号車に落ちるぞおおおおおお!!!」



――1号車【展望車・前】


ドシャ

革ジャン「ぐあっ!!」

黒コート「い、痛い……。ここは?」


桜色の女「…………」

仮面の男「…………」


バイクの二人が落ちた先。そこでは、顔と仮面に無数の傷をつけあった男女が、
お互いの首に刃を入れながら、しかして動かず、永遠とも思える一瞬の時を過ごしていた。



桜色の女「……今日は、来客が多い日でござるな」スッ

仮面の男「おや。もう終わりかい?」

桜色の女「ああ。此度の戦い、これで無聊を慰めるには十分だ」

桜色の女「ジャマが無ければ、このまま死合うのも、やぶさかでないが……」

桜色の女「ちと来客が多すぎる。余人にも見られた。今宵はここまでとしよう」チャキ


仮面の男「そうかい。では僕も、これにて」

仮面の男「やはり君は、面白い……。また別な場所での、再会を期待しよう」ガチャ

桜色の女「ああ。そしてまたその時は、私の望みを満たさせてくれ」

革ジャン「ってオイオイなに満足気にどっか行こうとしてんだ!?」



桜色の女「ぬおっ!? み、見てたのでござるか!?」

仮面の男「はっはっは。これは手厳しい」


黒コート「剣士さん……。勝負には、勝ったのですか?」

桜色の女「……ははは。そこは想像にお任せするでござるよ」


革ジャン「時空指名手配犯の仮面の男だな。おとなしくしやがれ!」

仮面の男「やれやれ。しかしここで逃げるのも美学に反する。今はお縄につくとしよう」


革ジャン「さてセンパイ。これで目的達成、か?」

黒コート「ああ。それと、この列車の戦いも、おそらくすべて終わったハズ……」



――6号車【食堂車】 屋根の上


ウェイター「おっ、静かになった」

ウェイトレス「全部終わったみたいだねー」


ウェイター「ラウンジの爆発に始まって、食堂車の爆発に、色んな車両での大乱闘か……」

ウェイトレス「ニギヤカな年末年始だったねー。疲れたし、今年は平和だといいなぁ」


         .,、-ー''ア:;、-'/       ,,、-'7         / ̄/_
       ノ  ////了      / /     ,-ー―" __/
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      ,|  ノ:ノz''"// ,,、-ー ''"  ,、-ー''"  /// /
      ,リ /;;;、-''了  / ,、z''"/| /       |/ ./ /  ./\
      i   ,、-ー'   '"/ / / /        //   \/;;、-'/
     / 「"       ,ノ /  / /              、-",、 '
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      |  |                                | /
      |/                                 レ"


ウェイトレス「え!?」グラッ

ウェイター「うおっ。今の音、今の揺れ……。なんだ!?」



――1号車【展望車・前】 屋根の上


族長「おい、なんだあれは? 山が噴火している!?」

魔王「くそっ。最悪の展開だ……。謀ったな、白の大天使……!」

白ドレス「え? 私、なんもしてないよー」ザッ

魔王「なっ! えっ、お前、いつからいた……!?」

マスター「どうやら事態はそれどころではないらしいぞ、魔王」


剣使い「あの噴火してる山は、高さと方角からいって……。富士山か?」

魔王「違う。あの山は、富士山だが、富士山ではない。其は、き○こたけ○この生みの親……」


魔王「―――ア○ロ。あれなるは、アポ○富士山だ」


                              __  ,.
                           ,..イ_  / ヘ \-、
                         .-'     ヽ;; ;;ヽ .- ::,、.._

                      _..-''        ヘ;;;;  ;;__   、  !.
                    ..‐"    ..        ;;; ;";;;;;;;` ̄\_ ヽ、
                 _..,-"/           / ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;  _ヽ : ヽ
               ..‐"/': イ'"/: 'ソ: VYニ_. 丿υ/!‐ヘ!v\,;;;;;;;;-''^. : : : : : -、..........

           : : : : : : : '' イ: : : ;;: : ノノ: : : : : `¨´: : : ;;;; ''^´_  `‐-´  ^ー: : :       ^` -,,,
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第七章「未明・前」は以上になります。
今回のコミケも大盛り上がりなようで、いよいよ年の瀬です。

第八章は、明日12/30(土)の18時ごろ開始の予定です。

列車がどんどん廃墟と化していく…
き○こ、たけ○こ、ア○フォートときて次はア○ロか、○ッキーじゃないのか


残りはあと三章くらいかな?乙です


列車もうボロボロやな…
最初に出て来た紳士が黒コートなのか?

だが、列車の旅にアクシデントはつきものだった。

それでは、第八章「未明・後」を開始します。
60レスほどの予定です。



――1号車【展望車・前】 屋根の上


剣使い「あの噴火してる山は、高さと方角からいって……。富士山か?」

魔王「違う。あの山は、富士山だが、富士山ではない。き○こたけ○この生みの親……」


魔王「―――アポ○。あれなるは、ア○ロ富士山だ」


剣使い「あ。アポ○……? チョコ菓子の?」

魔王「そうだ。チョコ菓子のアポ○だ……」


魔王「…………」



魔王「おい、白の大天使」

白ドレス「ハイハイ。何かな、まおーちゃん♪」

魔王「ちっ。やっぱチョーシ狂うわ、お前……」


魔王「白の大天使。今、お前は何もしていないと言ったが……」

魔王「それは本当か? お前は本当に今回の事態に何も関わっていないのか?」

白ドレス「うん! いやあ、この列車で事件が起きるのは、天界からフワっと見えてたんだけどね……」

白ドレス「むしろ私は、その事件を止める側っていうか。年末年始の旅行がてら? 来ちゃった?」フリフリ

魔王「来ちゃった? じゃねぇよ、ったく……」

魔王「すると、アレか。アポ○富士山の噴火は、まったく別の要因によるモノか? いったい何が……」



白ドレス「あ、ソレだけど……。一つ心当たりがあるんだよね」

魔王「何? それは本当か!?」

白ドレス「うん。でも、関係者にはキチンと話したほうがいいし、一回全員集めましょ」


白ドレス「そこの君たちも、それでいいかなー?」

剣使い「お、おう……」

弓使い「なんだかタダゴトじゃなさそうだね。面白くなってきたぁ!」

銃使い「…………」ボリボリ

族長「お前たち、立てるか?」

マスター「ワタクシがご案内します。場所は……、まあ、階下の展望室で良いでしょう」



――1号車【展望車・前】


弓使い「おっ、教授~。久しぶり~」

教授「弓使いさんたち、こんなにボロボロで……。いったい何が?」

ヒーロー「ぬぬっ、貴様らがハイジャック犯だったのか!」

キノコ頭「さっきは知らないで戦ってたのか……」

桜色の女「おっ、おいしそうでござるな。貰っていいでござるか?」

銃使い「どーぞ」ガシュガシュ


副運転士「はいはい!! 皆さん、静かにしてください!!」パン パン



剣使い「静かに、つったってなぁ……」

族長「この一日で因縁の出来た者も多い。それが一堂に会すれば、騒がしくもなるモノよ」

テロリストA「あ、さっきはハルバードに捕まらせてもらってありがとうございました」

フロント「いえいえ。執事のキミも、ナイスガッツでしたね」

執事「いや。あの時は、無我夢中で……」

魔族A「魔王さま、さっきはどうも……」

魔王「いやいや、戦いは終わったんだから気楽にいこうぜ! それも魔界のコトワリだ!」

小型メカ「次の仕事の件なんですが……こういう場合はいったいどうすれば……」

料理長「ああ、それなら……とにかく上質な素材のゴリ押しで……一個1000円くらいの……えっ、違う?」

革ジャン「そんなクソ高ェのジャンクフードじゃねえよ」



黒コート「鉄仮面……、それはそれとして。キズだらけだが、大丈夫か? 治療するか?」

仮面の男「ふ……。これは名誉の負傷、というモノだよ。彼女の思いを受け流してはいけない」

マスター「え、今はせいぜい飛ぶくらいの術しか行使できなかった? それは、失礼しました」

白ドレス「ホント! 天界の者だからって、問答無用で斬りかかったりしないでよね!」

ウェイター「増えに増えたってカンジだよなあ」

ウェイトレス「未来人だけで六人もいるって本当かなあ?」


運転士長「ひ、ふ、み……。おそらく、これで全員じゃないか?」

車掌「アバウトですねえ。まあ、誰なら全員を把握してるんだ、って感じですが」

副運転士「あのー、すいません! 今からハナシをまとめるので、聞いてもらっていいですかー!?」



教授「待って、運転士さん。なんだか知らないけど、私たち、モメてる場合じゃないんでしょう」

教授「だったらせめて、この場で改めて、全員の素性を一通り確認すべきだと思うのだけど?」

魔王「そうだな。今から俺たちは全員が協力する必要がある。なるべく不理解による内ゲバは避けたい」

副運転士「そ、そうですね……。では、お一人ずつ、身分と目的を明かしていただいて良いですか?」

執事「わかりました。では、俺たちから」スクッ


執事「俺たち二人は、ただの一般乗客です。ですが、彼女は。“教授”と言えば通りが良いでしょうか……」

執事「元日の昼、彼女がオーサカで行う発表会のため。オーサカ行きの、この列車に乗車しました」

キノコ頭「情報はマチガイなかったか。だが、もう一度誘拐を試みれる状況でもないな……」

教授「おいそこ」



副運転士「なるほど。お二人は、この列車自体に何か用があったワケではない、というコトですね」


剣使い「ただオーサカ行きだから乗っただけ、というなら俺たちも同じだな」

弓使い「そうそう。ポストにあった招待状に、この列車のチケットが入っててね」ピラー

ヒーロー「あ。ちなみに彼らに招待状を送ったのは、俺だな」

剣使い「なんだと? 変態仮面、お前が俺たちのところに招待状を?」

ヒーロー「その通りだ。歴史を調べたところ、今日この列車には君たちが乗っていたのでな」

銃使い「そうだったんだ」

運転士長「そういえば、今日のチケットが事前にやたら買い占められていた。犯人は君かね……」

仮面の男「とすると、僕の招待状も、君の差し金か。サプライズパーティーではなかったか」



キノコ頭「謎が解けたようで結構だ。ならばこの流れで言わせてもらおう。俺たちはハイジャック犯だ」

副運転士「いやなんでこの流れなら言えると思ったんですか!?」

キノコ頭「いずれ言わなければならないのだから、仕方がないだろう……。ああ、だが安心してくれ」

キノコ頭「俺たちの目的は教授の身柄だが、何やら事態が逼迫しているのだろう? なら黙っている」

教授「それは、事態が逼迫しなくなったら、私をさらいに来るってコトかな……」

弓使い「おおっと、教授狙い? だったら、私たちを倒してからにしてよね」

テロリストA「なんでお前たちがジャマをするんだ!?」

副運転士「と、とにかく。き○こ派のテロリストさん、というコトで良いですか? 良いんでしょうか……」


族長「構わんだろうよ。そういう意味なら俺たちも、アル○ォート派のテロリストだな」



運転士長「魔族……」

族長「そう身構えるな。たしかに俺たちの目的は、この列車の動力源だった」

族長「だが、動力源の場所は皆目見当がつかず……。そして、その動力源は今回の事態のカギだという」

族長「ならば我らも事態を静観するとしよう。むろん、列車がオーサカにつけば、発表会は潰すが」

教授「なななんで私の発表会が今の流れで出てきたんだ!?」

魔族D「初志貫徹の精神、マジリスペクトっす!」


ヒーロー「では私たちも宣言しよう! 私たちの目的は、この列車のハイジャックを阻止することだ!」

小型メカ「はい。正確には、ハイジャックによって未来で起こる、き○こたけ○こ大戦の阻止が目的です」

副運転士「そ、その口ぶりからすると、もしや未来の方ですか……? 味方なのは嬉しいですが」



黒コート「では、未来繋がりで。私たちは、未来のタイムパトロール。区の警察署の時空環境整備課です」

革ジャン「おらおらおら、この中に時空指名手配犯はいねえか? 逆らうならバラしちまうぞ!」

黒コート「完全に言動が悪党だろうが! 誤解されるから黙ってろ!」ゴスッ

革ジャン「お、おえっ」

仮面の男「シゴト熱心だねえ、時空整備課。それで、時空指名手配犯の僕を捕まえなくていいのかい?」

黒コート「いや。今すぐにでも捕まえたいところだが。だが、事態はそれどころではないだろう」

黒コート「まずは事態の収拾に手を貸せ。だが働き次第では、上に減刑をかけあうコトも考えよう」

仮面の男「おお、温情痛み入る……。ありがたい。あの整備課にも良心はいた。しかもよく見れば美人だ」

黒コート「……大丈夫か? 後ろ、ニラまれてるぞ?」



桜色の女「……このキザな仮面男のコトは、置いておいて」

桜色の女「拙者は、通りすがりの風来坊。旅を求めて、この列車に立ち寄った者でござる」

桜色の女「いや、この列車、すばらしいでござるなあ! 特に料理が美味でござる!」

フロント「おや……? おかしいですね。このようなお客様には、見覚えが……」

桜色の女「ぎ、ぎく!」

仮面の男「そういえば。根無し草で文無しの君が、どうやってこの列車の乗車券を手に入れたんだい?」

桜色の女「……て、鉄仮面卿! ここは拙者をおぬしの連れ、というコトにしておくでござるよ!」ヒソヒソ

仮面の男「ん? 構わないが。……ふっ、しかしさっきの立ち合いの時の君はどこへやら」

副運転士「お二人はお知り合いなのですか? 腕の立つ方がたくさんいらっしゃるのは、心強いです!」



魔王「そして、俺たちが最後か。俺については、数時間前も自己紹介したな? 魔王だ」

白ドレス「アーンド、謎の白いお姉さん改め、白の大天使でーす。よろしくぅ!」ビッ

革ジャン「おい。さっきの魔王のハナシじゃお前、今回の黒幕なんだよな? ん?」チャッ

白ドレス「へ、私が黒幕? 何それ!? 私、今回はなにもしてないよ。清廉潔白。だ、だから銃下ろして」

魔王「ああ、すまん……。コイツが黒幕というのは、俺の早とちりだったようだ」

革ジャン「なんでえ。チッ!!」サッ

白ドレス「舌打ちの音が大きい! で、まおーちゃん……。何でも私のせいとか、そりゃないよねぇ?」

魔王「うぐ……。だが、今回は、だろう。今までお前がしてきたコトを思い出してみやがれ!!」

黒コート「まったくだな。億万回思い出して、爪の垢ヒトカケラほどでも良心が苛むなら、自首するといい」



白ドレス「揃って同じようなコトを言わない! 仲良しかっ!!」


副運転士「え、ええと……。とりあえず、事態に関わった普通じゃない乗客の方は、これで全員ですか?」

運転士長「あとは我々だな。もう察していると思うが、私たちは、この列車の乗務員だ」

車掌「こちらは、この列車の副運転士、運転士長。私は車掌です。そして……」

ウェイター「ウェイターでーす。日雇いで雇われてる、掃除屋の中年でーす」

ウェイトレス「ウェイトレスでーす。ドライ・ブラー号には、ごヒイキしてもらってる美少女でーす」

料理長「皆さんの食事を任されているコックです。雑菌は即消毒、がスローガンです」

マスター「ラウンジのマスターでございます。お見知りおきを」

フロント「ロビーのフロントです。……さて、ではそろそろ本題に入りたいのですが」



魔王「ああ。まずは、この列車―――いや、この世界に迫っている危機についてハナシをしたい」


白ドレス「はいはい! 詳しいコトは私から! このウソツキ冤罪野郎の魔王なんてアテにならないよ!」

副運転士「白ドレスのお姉さん。またお会いしましたね!」

白ドレス「へいガール、今まで頑張ったね。あとはお姉さんに任せなさいっ!」ドンッ

魔王「お前が出てくるとハナシがこじれるから黙ってて! 疑ったのは悪かったから!」


魔王「オホン……。まずは、この世界の現状を説明したい」

魔王「カンタンに言うと。アポ○富士山が噴火して、世界の危機だ」

剣使い「アポ○富士山……? さっきも聞いたが、そりゃ何だ? 富士山じゃねぇのか?」



魔王「いい質問だ。まずはアポ○富士山の来歴から説明しよう」


魔王「富士山とは……。この日本で最大の標高を誇る山で、世界文化遺産にも登録されている霊峰だ」

魔王「だが、今の富士山は、あれが完全なカタチではない」

教授「何? あの台形みたいなカタチじゃないの?」

魔王「違う。富士山の真のカタチとは、こういうモノだ。車内販売の、ちょっと、貸してくれるか?」

副運転士「はいはーい。どうぞ」コト


      △
     △△
    △△△

   △△△△
   ▲▲▲▲▲
 ▲▲▲▲▲▲▲



銃使い「あっ、アポ○チョコレートだ」

魔王「そうだ。だいたい誰でも知っているだろう。いわゆるアポ○だ」

魔王「そしてコレが、アポ○富士山の真の形態でもある」

執事「は? どう違うんですか?」

魔王「富士山は台形だが、アポ○は三角だろう。上に三角がついた富士山こそが、アポ○富士山だ」

弓使い「は? ちょっとついていけないけど皆ついてきてる?」


魔王「ハナシを続けよう。古来、アポ○富士山とは台形ではなく三角だった」

魔王「だが……。古に、血で血を洗う、ある大戦があった。神々はその争いに怒り、富士山を噴火させた」

魔王「このままでは、世界が終わる。故にそれを防ぐため、古の大術士たちは、“最強の兵器”を作った」



教授「“最強の兵器”……?」

魔王「大戦を終わらせたという兵器だ。別に、スゴい爆弾とかじゃないぞ」

教授「ふうん。そこの発想は同じなんだ」

魔王「は……? ともかく、“最強の兵器”の開発によって、大戦は終わった」

魔王「そして、古き人間と魔族の約定……。人間と魔族が和平協定を結ぶことで、争いは終息を迎える」


魔王「その和平協定の内容とは!!」

魔王「―――人間と魔族が、き○この山と、たけ○この里では、もう争わないというコト!!」

魔王「き○こたけ○こ戦争、ひいては、き○こたけ○こ大戦を起こさないというコトだッ!!!」

副運転士「な……!!」



キノコ頭「なんだとっ? き○この山が!?」

革ジャン「おいおいマジかよ……! ココでソレが繋がってくるのかよ!!」

族長「思わぬところで登場したな、我らの戦いが……」

ザワザワ ザワザワ


魔王「え……、何? 今のとこ、アホらしすぎて絶対ドン引きされるから」

魔王「勢いで押し切ろうと思ったんだけど……」

魔王「むしろ、『そうだったのか!』『なるほどなー』みたいなこの空気はナニ……?」

白ドレス「そっか……。なるほど、私にも事態の全貌が見えてきたよ」

魔王「なんで一人でナットクしちゃってるんですかねこの天使は」



副運転士「そ、それでは、昔のヒトは……」

副運転士「き○この山と、たけ○この里が、原因で争ったために」

副運転士「神々の怒りを受けてしまったと……?」

魔王「うん。そういうコトだ」


魔王「アポ○といえば、き○この山や、たけ○この里の製造方法の元となったというお菓子」

魔王「ゆえに神々は、上位たるアポ○富士山のチカラで、き○こたけ○こ大戦を押しつぶそうとした」

魔王「そこで、古の大術士は、アポ○富士山の頂点の三角の部分をもぎ取り、“最強の兵器”に変えた」

魔王「そして富士山はチカラを封印され、不完全なカタチとなり、台形の姿で知られている……」

魔王「というのが、アポ○富士山の来歴、ひいては古のき○こたけ○こ大戦の顛末だ」



運転士長「なるほど、古のき○こたけ○こ大戦とやらのコトは、よくわかった……」

運転士長「だがそれが、今回のアポ○富士山の噴火と、何の関係がある?」

運転士長「ハナシによれば、“最強の兵器”とやらで、アポ○富士山は封印されたのではないのか?」

魔王「そこだ。俺には、そこだけがわからない」


魔王「“最強の兵器”で、アポ○富士山は封印されている。二度と噴火するハズが無い」

魔王「だが事実、アポ○富士山は噴火した。とすれば、考えられる原因は二つ」

魔王「まず一つ目。古の“最強の兵器”が破壊された、という可能性だ。だがそれはありえない」

魔王「なぜなら“最強の兵器”とは、このドライ・ブラー号の動力源。今も12号車に安置されている」

運転士長「なんだと? ……いや、それがさっき言っていた……!」



族長「……と、いうコトは、我々が狙っていたのは。魔力塊ではなかった?」

魔王「いや、“最強の兵器”は優れた魔力塊には違いない。古の大術士たちの魔力が込められている」

魔王「だが、間違ってもソレを持ち出そうなどとは思わぬコトだ」

魔王「“最強の兵器”は、アポ○富士山の周囲を回遊する、この列車だからこそ安置されている」

魔王「アポ○富士山から近すぎては魔力が集まりすぎるし、遠すぎては封印の効力が薄れるからな」


魔王「まあ、ドライ・ブラー号の動力源は優れた魔力塊だ、というウワサが独り歩きしすぎて」

魔王「この列車を狙う魔族が後を絶たないが……。そこはそれ、防衛をコイツに一任している」

マスター「ワタクシです。もちろん、この列車の乗務員は、皆精強。ワタクシだけのチカラではありません」

族長「な、なるほど……」



魔王「しかし、“最強の兵器”は今もココにある。なら、アポ○富士山の噴火の原因とは、何か」

白ドレス「そう! 考えられるのは、二つ目の原因」

白ドレス「“き○こたけ○こ戦争が再び勃発したんじゃないか”……」

白ドレス「だよね? まおーちゃん」

魔王「そうだ……。しかし、これも。そんな馬鹿げたコト、あるハズが……」


キノコ頭「…………」

革ジャン「…………」

族長「…………」

魔王「なぜアイマイな表情で沈黙しているっ」



副運転士「あの……、魔王さん?」

魔王「なんだ?」

副運転士「実はこの列車の騒動の原因、き○こたけ○こ戦争です」

魔王「なんだとっ!!?」


魔王「……ははあ。ああそう、ああそういう……。うんうん」

魔王「うーん。え、マジで?」

白ドレス「大マジだよ。まおーちゃん。き○こたけ○こ戦争が中心なのは、私にも見えてたけど」

白ドレス「まさか、最後のアポ○富士山の噴火の原因まで、き○こたけ○こ戦争とはなー」

魔王「うっわー、頭イタくなってきた……」



白ドレス「そこで私は、ある一つの結論に行き着いた」

白ドレス「今、封印の要たるこの列車では、き○こたけ○こ戦争が起こっていた」

白ドレス「それは、人間と魔族が、き○この山と、たけ○この里では、もう争わない、という」

白ドレス「古き人間と魔族の約定を根底から揺るがすモノ。ゆえに“最強の兵器”はチカラを失った」

白ドレス「だから、封印が徐々に解かれ、アポ○富士山が噴火した……」


白ドレス「ってところかな?」

副運転士「う……。ニワカには信じがたいハナシですが……」

魔王「そう考えると、ガテンがいく……。いっちゃう」

車掌「まさか、き○こたけ○こ戦争が、諸悪の根源だったとは……」



ヒーロー「すまない。ややこしすぎて意味がわからないのだが」

副運転士「そ、そうですね。では情報をまとめましょう。ホワイトボード、あります?」

車掌「ここに」


    1.昔、古のき○こたけ○こ大戦を、神々がアポ○富士山の噴火で止めようとしたので封印した

    2.アポ○富士山を封印したのは、古の大術士たちの“最強の兵器”である

    3.“最強の兵器”とは、現在のドライ・ブラー号の動力源である

    4.しかし、き○こたけ○こ戦争で封印のチカラが弱まったため、アポ○富士山がまた噴火した


副運転士「こんなところでしょうか……」キュッ



桜色の女「おお。字がキレイでござるな」

副運転士「あ、ありがとうございます」

仮面の男「それは状況を理解していないがゆえの指摘だな、君」

桜色の女「難しいコトはよくわからんでござる」


桜色の女「しかし。肝要なのはコトの仔細、その把握ではなく」

桜色の女「今、拙者たちは何をすべきなのか、ではないでござるかな?」


副運転士「む。たしかに……。魔王さん、私たちはいったいどうすれば?」

魔王「そうだな。もう一度言うぞ。今、アポ○富士山が噴火して、世界の危機だ」



魔王「そも、アポ○富士山の噴火とは、神々の怒り……」

魔王「き○こたけ○こ大戦ごと世界を押し流す、という物騒極まりないモノだ」

黒コート「もうちょっと別の方法は無かったのか? 神々というのは」

白ドレス「だって神々だからね。脳ミソまで筋肉だよ」

魔王「お前に言われたかないーっ」


魔王「そして、俺たちは何をすればいいか? これは単純明快だ」

魔王「まず、アポ○富士山の噴火の原因。“最強の兵器”の封印のチカラの弱まり」

魔王「これを解決しなくてはならない」

副運転士「つまりソレは、具体的に言うと……?」



魔王「き○こたけ○こ戦争の休戦」


キノコ頭「……!」

革ジャン「なるほどね」

族長「ほう……」


魔王「“最強の兵器”の封印のチカラの弱まりは、この列車で起こったき○こたけ○こ戦争が原因だ」

魔王「だから、まずはその休戦。そして和解」

魔王「その後、世界からき○こたけ○こ戦争が無くなるよう、しかるべき措置を施すのが理想的だ」

キノコ頭「だが、待て! 俺たちは確固たる理想を持ってき○こたけ○こ戦争に参加している!」



キノコ頭「なのに、急に和解しろなどと言われても!」

魔王「お前らかよ原因は。とっとと和解しろや」

族長「だが、魔王様……。俺もアル○ォート派として、一言物申したい」

魔王「あっ、そうかお前らアル○ォート派か! こじれてきたなぁ」


族長「我らのチョコ菓子を愛する気持ちはホンモノ。だからこそ、お互いを認めろなどと……」

族長「そのようなコトは不可能だ。俺も、アル○ォートこそが至高だと信じている」

魔族A「そうだそうだー!」

キノコ頭「笑止。俺たちは、き○この山こそが最強と主張する。その思いに揺るぎは無い」

魔王「はぁー……、やっぱ根深いんだな、こういうの。たかがき○こたけ○こ戦争と侮ったか」



副運転士「しかし、ここは和解してもらわないと……。それも心から」

副運転士「そうでないと、アポ○富士山の噴火は止まらないんですよね?」

魔王「ああ。まずは封印のチカラを復活させないコトには……」


教授「―――ちょっといい?」

魔王「なんだ? ヘンクツそうなガキンチョ」

教授「ヘンクツそうは余計だ。その、封印のチカラの主、“最強の兵器”って言った?」

魔王「ああ。具体的には、アポ○富士山の頂点にあった、三角の部分。あれこそが“最強の兵器”だ」

魔王「今も12号車にはアポ○富士山の頂点にある三角の部分が存在するってワケだな」

教授「そう。古の大戦を止めた発明も、“最強の兵器”……。これも何かの因果なのかな」



教授「みんな、聞いてください」

教授「私は教授と呼ばれている、若き天才科学者です。発明とかやってます」

執事「自分で言いますか、お嬢様」

教授「私は先日、たけ○こ派から、ある依頼を受けました。その内容は――――」


教授「き○こたけ○こ戦争を終わらせる、“最強の兵器”を開発するコトです」


族長「……!」

キノコ頭「…………」

魔王「えっ、“最強の兵器”? 同じ通称!?」



教授「はい。き○こたけ○こ大戦を止めるのは、いつの時代も“最強の兵器”、というコトなのでしょう」

教授「き○こたけ○こ戦争に勝利する、のではなく、終わらせる。私はそう依頼を受けました」


教授「そして、私には。その“最強の兵器”の、具体的なプランがあります!!」


キノコ頭「なんだと! それは本当か!?」

族長「明日の、いや、日付で言えば今日。オーサカで、発表されるという……」


執事「ああ、また大ボラを……。“最強の兵器(仮)”は、まだアイデアの一つも出ていないのに……」

教授「…………」ニヤ

執事「……?」



執事「あれ、ちょっと待て。さっきから仰っているのは、“最強の兵器(仮)”じゃなく、“最強の兵器”……」

執事「というコトは、まさかお嬢様、本当に“最強の兵器”のプランが組み上がっている!?」

教授「ええ、その通り。この発明は、き○こたけ○こ戦争を止め……」

教授「き○こたけ○こ大戦の勃発を阻止する、神の一手」


教授「今日の昼のオーサカでの発表会で、私は、現代の“最強の兵器”を公開する」

教授「その内容は、き○こ派、たけ○こ派の双方がナットクできるモノであり……」

教授「かつ、き○こたけ○こ戦争をココで終わらせるモノだと、私は約束しましょう!」


キノコ頭「…………」



キノコ頭「……信じていいんだな?」

教授「ええ。誓えるモノは無いけど、この私を信じなさい」

キノコ頭「…………」


キノコ頭「……わかった。その言葉、信じよう。教授」

テロリストA「いいんですか? リーダー」

キノコ頭「ああ。あの小娘が今日の昼、何を発表するのか。それを見届けてからも遅くはあるまい」


革ジャン「あ、先に言っとくけど、俺はたけ○こ派をそこまで強硬に主張する気は無いからなー」

黒コート「誰も聞いてないぞ。ハナシがこじれるようなコトを言うな」



族長「そうか……。俺のアル○ォートへの思いは変わらぬ」

族長「だが俺もその発表会、馳せ参じよう。貴様が何を発表するのか、小娘」

教授「人間でも魔族でも、誰でも来なさい。目にモノ見せてあげる」フフン


族長「ああ。だがそれは今は関係の無いコト。魔王様、ハナシを続けてください」

魔王「わかった」


魔王「この列車におけるき○こたけ○こ戦争は、一旦和解、というコトでいいな?」

魔王「なら、古の“最強の兵器”の封印は、徐々に復活するハズだ。放っておけば問題ない」

魔王「だが……。現在、既にアポ○富士山は噴火を始めている。それも止める必要がある」



ウェイター「たしかに、アポ○富士山の山頂から、煙が出ていたなあ。悪化するとどうなる?」

魔王「おそらく、火砕流、土石流、火山弾が世界を覆い尽くす」

副運転士「……! それは、もしかして……」


冥王「―――エンマ帳に書かれている死亡理由と、同じこと。ですなあ」ザッ


運転士長「……! 何者だ!?」

副運転士「士長! あの男のヒトが、私の会った、冥王さんです!」

運転士長「何、彼が……!?」

冥王「乗務員さん、さっきぶりですなあ。皆さん、冥界を管理してる冥王です。よろしゅう」



魔王「冥王。何かあったか? どうして出張ってきた?」

冥王「そら、魔王はん。あのアポ○富士山がやっぱり噴火したて、聞いたさかい」

冥王「わてもアポ○富士山の封印に立ち会った一人やからなあ。気にならへん言うたら嘘になる」

魔王「なるほど……。そうか、ならチカラを貸してくれ」


冥王「情報の共有はどこまで?」

魔王「アポ○富士山の噴火の原因が、き○こたけ○こ戦争であるコト」

魔王「最終的に、アポ○富士山を物理で止める必要がある、というコトまでだ」

冥王「なるほど。ほぼ全部ですか。エンマ帳に書かれていることが現実になってもうたら、困るやろなあ」

副運転士「その、エンマ帳に書かれているコトは……。覆せるんですか?」



冥王「基本的には無理や。せやけど、発行者が内容を改変するなら、その限りやない」

副運転士「……! それはつまり?」

冥王「天界のもんに内容を書き換えさせる、いうことやなあ」

魔王「さて。この中で天界の者、というと……」


白ドレス「げ! 私ぃ?」

魔王「そうだ。アポ○富士山を物理で止めるコト。お前も協力してもらうぜぇ……」ガシ

白ドレス「ひーん。私はただ、年末年始の旅行を楽しみに来ただけなのになあ……」

革ジャン「けっ、本当かよ」

黒コート「それはいちおう、本当だ。私が保障できる」



革ジャン「なんでお前が保障するんだよ……」


魔王「さて。天界の者がエンマ帳に書かれているコトを打ち消す行動をすれば、エンマ帳は効力を失う」

魔王「つまり、このドライ・ブラー号の乗員乗客は、誰も死なずに済むというワケだ!!」

ウェイトレス「ひゃっほーう。生きれるのバンザーイ」


冥王「ただし、一つだけ注意点があります」

冥王「エンマ帳に書かれているコトは、内容が消えるまでは、絶対。効力を失いまへん」

冥王「そして、このエンマ帳の今日の分の有効期限は、当然今日まで……」

冥王「冥界の基準で言うたら、次の朝日が昇るまで、いうことになります」



副運転士「というコトは……?」

魔王「ああ。エンマ帳の書き換えが有効なのは、次の朝日まで」

魔王「つまり、初日の出までに、すべての決着をつける必要がある!!」


ヒーロー「なるほど。わかりやすくなってきたな」

小型メカ「つまり、き○こたけ○こ大戦の勃発を止めるには……」

小型メカ「あとは、朝までにアポ○富士山の噴火を止めればいいと」


桜色の女「ここまで理解しやすくなれば、拙者にもわかるでござるよ」

仮面の男「ああ。アポ○富士山の噴火を物理で止める……。それだけだ」



副運転士「しかし、物理で止める、と言っても、どうやって?」

副運転士「やっぱりアポ○富士山に向かってビームでも撃ちますか?」

魔王「ううん。俺一人がビーム撃っても、たかが知れてるしなあ……」


冥王「…………」

冥王「……これは、“あの機能”を使う時が来たようですなあ」

副運転士「“あの機能”? それはいったい……」


冥王「きたるべき、再決戦の日に備え、大術士たちが遺した、最後の遺産」

冥王「―――“最終決戦艦ドライ・ブラーモード”の起動です」



運転士長「さ。最終決戦艦……」

車掌「ドライ・ブラーモード!!?」

副運転士「な、なんですか? そのいかにも、変形しそうなカンジの名前は!!」

冥王「なんでもなにも、文字通りの意味です」


冥王「かつて、古の“最強の兵器”を作った大術士は、あることを恐れました」

冥王「き○こたけ○こ大戦の再びの勃発です」

冥王「もしまたアポ○富士山が噴火したら、自分たちのおらんそん時は、始末がつけられへん……」

冥王「せやから、自分たちの代わりにと、ある列車をこの世界に遺しました」

冥王「それが、このドライ・ブラー号。そして“最終決戦艦ドライ・ブラーモード”いうわけです」



副運転士「は、はんなりした言い方で、何ロボティクスなコト言ってるんですか」

冥王「おや、興味あらへん? おもろいよ? ロボット」

車掌「もしやその最終決戦艦ドライ・ブラーモードとかいうの、最初に言い出したの、このヒトじゃ……」

運転士長「ううむ……。私はドライ・ブラー号の運転を開始から見てきたが」

運転士長「とすると、その古の大戦とは、案外最近のコトなのか……?」

魔王「まあ、き○この山やたけ○この里が既にあるくらいだからな」

魔王「人間の時間感覚は、俺たち魔族には正直よくわからんが」


副運転士「と、ともかく……。そのモードを起動できれば、アポ○富士山を止められると?」

副運転士「だったら、さっさと起動しちゃいましょう! そしてアポ○富士山をやっつけましょう!」



冥王「血が騒ぐなあ。でも、その前にやらなあかんことが一つある」

副運転士「やらなければいけないコト?」

冥王「そう。最終決戦艦となったドライ・ブラー号を操縦する、艦長の存在を探すことや」


運転士長「艦長か……。このドライ・ブラー号の責任者は私だが、あいにく戦艦の操縦経験はな」

マスター「そのような機能があると知っていれば、ワタクシが勉強しておいたのですが……」

車掌「これは、困りましたねえ。一介の一般人である私たちには、どうにも」

副運転士「むむ……。艦長、戦艦……。そういえば一連のどこかで、誰が言及してませんでしたっけ?」


桜色の女「……?」



桜色の女「ああ、それなら。拙者のコトではござらんか?」

副運転士「え? 剣士さん、もしや戦艦の操縦経験が?」

桜色の女「あいや、操縦したのが拙者、というコトではなく。言及したのが、というコトでござる」


桜色の女「たしかに拙者は言ったでござる。あの男を戦艦ごと落としたコトがある、と」

仮面の男「……待ちたまえ、君。それは、もしかすると。いや。もしかしなくても……」

桜色の女「そう! このムッツリ仮面のコトでござる!」ババーン

仮面の男「君に言われたくはないのだがね!?」


副運転士「ええっ! 仮面さんが……、戦艦を……?」



仮面の男「ああ……。実は、ちょいと戦艦を調達して、小さな国を征服に乗り出したコトがある」

仮面の男「その時は彼女に嗅ぎつけられて、出航少しした後に戦艦ごと爆散、となったがね」

桜色の女「へへへ。やりすぎちゃったでござる」

副運転士「やりすぎちゃったって規模ですか……? いや、ともかく!」


副運転士「仮面さん! お願いします、ナントカモードの操縦をお願いできませんか!?」

仮面の男「おお……。麗しき女性の頼みは、断りがたい……」

仮面の男「いや、しかし……。僕は決闘の直後。満身創痍でね。体力の使う戦艦の操縦などは……」

教授「変態仮面。私からもお願いしたい」

仮面の男「喜んでぇっそれでも呼びたければ教授さん!!!」



教授「ああもう、その名前でいいよ……」

桜色の女「現金な奴でござるなあ」

副運転士「良かった……! ありがとうございます、仮面さん!」


運転士長「しかし、そのモードの起動は、いったいどうやって……?」

冥王「もうええの? それやったら、運転室に赤い自爆スイッチがあるやろ? それを、ポチっとな」

運転士長「じば……? あの、謎の赤い!?」

冥王「ああ、安心してええで。間違って押さんよう、自爆スイッチとか言うてるだけやし」

冥王「そんなん、ほんまに自爆するためだけのスイッチなんかつけるわけないやん! あっはっは」

運転士長「た、たしかにそうだな……。それでは、さっそく起動してくるとしよう」



――1号車【展望車・前】 運転室


副運転士「運転室は、無事でしたか……。展望室に大穴開いたし、もうダメかと」

運転士長「ここまで侵入されたコトも、たびたびあったがな……。おっと、コレだな」


      \   ',    ___________   / /  ,  ´
 丶     \  ',.  /|             ./|  /  , '
    丶    丶 /|  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´i  |   ,  ´
`  .     丶.    |  | i|――――――――i | i|
    `   、 ` 、|  | l| 謎の自爆スイッチ | | l|     _,,.. -‐ "´
           |  | l|――――――――'| l|           _
..,,_          |  | l|     _      | l|     -  "¨~
   `   ‐-     |  | l!    〃, --、ヽ     .| l!
二ニ=― -     |  | l!o  {{::{::::::::::}::}   o  | l!    - =≡ニ 二
_,,.  -‐  "´     |  | |   ゝ ` ー'ノ     | |     ‐-   ..,,_
           |  l |       ̄       l |     ` ''  ..,,_
    ,   ´   |  l ! | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  l !    丶      `
,.   ´    /    |  | .l: |_______|  | .l       `丶、
      /   /  |  レー――――――――一ァ'   ヽ      丶、
   , /     / , |/              /       \
 /   〃 /'  /   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄    ' ,      \



副運転士「うわ、胡散くさ……。コレ、本当に押すんですか?」

運転士長「う、うむ……。だが、それも安易に押さないための対策というコトらしい」


運転士長「まあ、イチかバチかだ!」ポチ


副運転士「…………」

運転士長「…………」


副運転士「何も、起きませんね……」

運転士長「ああ、そうだな……」

ゴウン!!!



副運転士「え? 今――――」


アナウンス『―――対アポ○富士山決戦仕様、起動要請、確認』

アナウンス『―――最終決戦艦ドライ・ブラーモードを起動します』

アナウンス『―――これより本艦は空中に浮上します。急な揺れにご注意ください』


ゴウンゴウン ゴウンゴウン

運転士長「く……? いったい、何が……」

副運転士「あ、士長! 窓の外見てください、窓の外!」


運転士長「……な―――に? まさか、そんな―――!」


                          l|                 /   /
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                            |二ニ弋ニ=- i{」」ト._|_   ,/
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    ヽ::/       l,/ /::/ヽ'  .ヽ/  . /      _ -‐,             ./'/-‐===  ...:::::::-=z  ..::: ̄>--< ,斗
                /::/     ,ィヘ          /:::....才             /   /´ -‐=  ―=''゙´ ..::::-=:::::::::
                l,/      ヽ/      ノγ)/                   /''゙´  /斗 ''゙~^´ ̄ ̄>―__
                           γー '' /'        //                   /ー<
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              | \\          _」__  |─|─|‐ノ| 「|_     //      _ ‐¨ /
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             _、厶=-          +± ¨   _) 弌二二ア⌒  `丶、、    最終決戦艦
          .  ´ '´          ± ¨  _ - ⌒  _ - ⌒      く/
    <二二ア〈  ̄y ̄\    _─ _  _ - ⌒  _-_ ̄_______>、、     『 ドライ・ブラーモード 』
      〈У_`¨¨´ /7  ヽ_ -  ̄____/`ヽ 。s≦ニ=-ァァ========rrrrrr──=彡
        { ∩ ∩ `y'7   }r‐┐_>'^ヽ_、<二二ニ=- /     ━乂_乂━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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                                  ̄ ̄   ̄ ̄        |/                ̄ ̄ ̄



副運転士「ド、ドライ・ブラー号が……」

運転士長「飛んだぁぁぁぁぁぁっ!!?」


冥王「いや、それだけやあらへん」ザッ

副運転士「冥王さん!」


冥王「最終決戦艦モードとなったドライ・ブラー号は、並外れた戦闘能力も有しとる」

冥王「たいていの障害物は撃ち落とす主砲を始め、小うるさいハエを叩き落すアーム」

冥王「機関砲、光線砲、数十門……。極めつけは、一日一発だけの、とっておきの切り札や」

副運転士「とっておきの切り札や、じゃありませんよいったい何言ってるんですか!?」



冥王「でも、この艦なら、アポ○富士山を倒すことが出来る」

冥王「もはや最終決戦艦ドライ・ブラーモードを使う以外に道はない、いうことやな」

副運転士「そんな~」


白ドレス「ところで――そんな装備で大丈夫かな?」パチーン


ドクン…


副運転士「え……?」

運転士長「白ドレスの女!」

白ドレス「さて、エンマ帳の打破には、天界のチカラが必要と言ったかな? ならば私もチカラを貸そう」



白ドレス「戦艦に翼! なかなか良いシュミしてるね! だから今、私は、戦艦の翼に加護を与えた!」

白ドレス「それは、不沈の加護! 墜落するという運命を覆す、“再び羽ばたく”ための翼!」

副運転士「え? いったいどういうコトなんですか!」


白ドレス「人が持つ唯一絶対の力――それは自らの意思で進むべき道を選択する事だ」

白ドレス「ほぼ全知の私だからこそ知り得るコトだけど、ある世界の堕天使は言った」

白ドレス「君は常に人にとって最良の未来を思い、自由に選択していけ」


白ドレス「さあ! キザハシの向こう側の世界はすぐそこに! クズカゴだってカっ飛ばしていけ!」

白ドレス「神じゃなくとも私が言おう―――! 全てを救え、と―――!!」

副運転士「だからどういうコトなんですか――――――ッ!!!」



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第八章「未明・後」は以上になります。
ドライ・ブラーのスペルは「DRI BLAH」。墜落する、の反対です。

最終章は、少し文章量が多いので、時間を早めて
明日12/31(日)の17時ごろ開始の予定です。

魔王「アポ○といえば、き○この山や、たけ○この里の製造方法の元となったというお菓子」

そーなの?


ドライ・ブラー、名前意味あったんだな
戦場になって廃墟になって戦艦になって空飛んで…
他の乗客達は驚いているだろうな

らしいですね、公式ホームページに載ってあります。

それでは、最終章「薄明」を開始します。
100レスほどの予定です。



                              鬥鬥鬥只鬥鬥鬥          //        //
                                ̄ ̄rz幵幵┐ ̄        //        //
              xヘ                「|_7_|_|_う        //       _ ‐¨/

              | \\          _」__  |─|─|‐ノ| 「|_     //      _ ‐¨ /
              \  \>        ∠/:::ハ二二>'゚ |zzz辻_  //   _ -ァ''"  /
                 ̄\\        [;;;] 〕:::し'─i|__|///__/|∠∠   / /   /
                   \\ ━只7´ ̄ ̄ ̄/〉|cccニ〔__|_|//〉─〉━/ /   /
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               /(_ -          + ± (  _00二⊥-<`¨´         l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/   ∧      /~7 /)
             _、厶=-          +± ¨   _) 弌二二ア⌒  `丶、、       二コ ,|     r三'_」    r--、 (/   /二~|/_/∠/
          .  ´ '´          ± ¨  _ - ⌒  _ - ⌒      く/      ./__」           _,,,ニコ〈  〈〉 / ̄ 」    /^ヽ、 /〉
    <二二ア〈  ̄y ̄\    _─ _  _ - ⌒  _-_ ̄_______>、、    '´              (__,,,-ー''    ~~ ̄  ャー-、フ /´く//>
      〈У_`¨¨´ /7  ヽ_ -  ̄____/`ヽ 。s≦ニ=-ァァ========rrrrrr──=彡                                `ー-、__,|    `"
        { ∩ ∩ `y'7   }r‐┐_>'^ヽ_、<二二ニ=- /     ━乂_乂
       { リ リ 〔_{]   .: [二i o。s≦ィ(⌒ ooo_、-⌒

       ∨ ̄ ̄乂「   / _〕‐ ⌒ィi〔⌒
        ゝ   ⌒>'゚⌒  ィi〔⌒
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                      _..-''        ヘ;;;;  ;;__   、  !.
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――1号車【展望車・前】


副運転士「発進してから、かれこれ二時間は撃ち合っていますが……」

運転士長「一向にラチが開かないな」


黒コート「一気に突撃してアポ○富士山を沈黙させるコトは出来ないのか?」

仮面の男「不可能だね」


仮面の男「叩くとすれば、火山弾やら一切合切を放っている火口だが……」

仮面の男「あまり火口に近づきすぎると、艦全体を覆うシールドが破壊される」

仮面の男「だからこうして中距離からチマチマと砲撃せざるを得ないんだ」



冥王「さすがに火砕流や土石流は空中に飛んでこおへんやろうし」

冥王「エンマ帳に書かれとることが実行されるとしたら、原因は十中八九、火山弾やろうからなあ」

車掌「防護シールドを放棄して、特攻に転じるコトは……」

車掌「アポ○富士山にみすみす弱点を晒すも同じ……」

黒コート「それで決め手に欠ける攻撃を続けざるを得ない、というワケか」

革ジャン「くそっ。しゃらくせえな」


運転士長「……だが、そう悠長なコトを言っていられる状況でもなくなったようだぞ」

副運転士「え?」

運転士長「窓の外を見てみなさい」



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副運転士「あれは、アポ○富士山の向こうに見えるのは……」

車掌「朝日……!!」

魔王「くそっ、タイムリミットが迫ってるってコトかよ!」



冥王「さっきも言うたとおり、朝日が昇りきれば、冥界での一日は終わりです」

冥王「となれば、今日の分のエンマ帳の事項は確定。わてらの敗北や」

魔王「そういうワケにはいかねえだろうがぁッ! この列車の乗員乗客の命がかかってんだぞ!?」

副運転士「魔王さん……」

白ドレス「ふむ……」


         .,、-ー''ア:;、-'/       ,,、-'7         / ̄/_
       ノ  ////了      / /     ,-ー―" __/
       .イ  i::/ / / /       / ,r',,,,,、- ァ/-z''"  /
      ,|  ノ:ノz''"// ,,、-ー ''"  ,、-ー''"  /// /
      ,リ /;;;、-''了  / ,、z''"/| /       |/ ./ /  ./\
      i   ,、-ー'   '"/ / / /        //   \/;;、-'/
     / 「"       ,ノ /  / /              、-",、 '
     / /         |/    レ                   / /
      |  |                                | /
      |/                                 レ"


副運転士「っ……?」

運転士長「こ、今度はなんだ!?」



ピー ピー

仮面の男「警報アラーム……? この反応は甲板からか」

仮面の男「今の音は、この艦の甲板に火山弾が直撃した衝撃音らしいが」

仮面の男「どうやらそれだけではないらしい」


副運転士「それだけではない? とは……」

車掌「直接甲板に出て確認したほうが早いでしょう。皆さん、ついてきていただけますか?」

桜色の女「承ったでござるよ」

冥王「甲板は元の1号車の屋根の部分。つまり、この上の大穴を抜けた先や」

仮面の男「ああ、ただし運転士長と副運転士くんはココに残ってくれ。オペレーターが必要だ」



――アポ○富士山 甲板


車掌「っ……。何だ、コイツら……!?」


アポ○モンスターたち「「「アポ○、ポ○ポ○ポ○―――!!!」」」


執事「甲板に着弾したアポ○型の火山弾が意思を持って動き出している!?」

教授「きもちわるっ!」

剣使い「だが……。コイツらがアポ○富士山の子機だってのなら、放置するのはマズいんじゃねぇか?」

弓使い「そうだね。今にも、襲いかかってきそうな感じだし」

銃使い「敵? なら、倒す」



桜色の女「この列車には一飯の恩義もある。その借り、ここで返すでござるかな」

キノコ頭「おい! お前たちが持っている余りの弾薬はあるか? あるなら貸せ!」

車掌「仕方がありませんね。格納庫から持ってきた予備の弾薬ですが、良ければ」

族長「チョコなど炎で溶かせば消える。何、造作もあるまいよ」


ヒーロー「元来ヒーローとは孤独に戦うモノなのだがなっ! とうっ!」ドゲシ

アポ○モンスター「ポ○ポ○ポ○―――!」

革ジャン「ちっ、数が多いのが面倒だな。センパイ、バイクで轢き殺せねえか!?」バンバンバン

黒コート「バイクならさっき1号車に激突してオシャカだ」

小型メカ「何か奴らを一掃できる手段でもあればいいのですが……」



料理長「この一戦に乗客の命が懸かっている、か……。責任重大だね」

マスター「―――我が腕よ。お前は、この時のために、俺と共にいたのか?」

フロント「では、私は使い慣れたハルバードで……。ふふ、この子もうずいています」


魔族A「あれ……? そういえば、魔王さまはどこに?」

テロリストA「冥王や、白の大天使とかいうのもいないな」

ウェイター「冥王さんなら、1号車に残って士長たちと話してるのを見たぞ?」

ウェイトレス「待って……。なんだろう、アレ。空の上」


車掌「……っ! あ、アレは――――――!?」



――1号車【展望車・前】


副運転士「―――“ドライ・ブラー砲”?」


冥王「ああ。言うたやろ? ―――この艦の、とっておきの切り札」

冥王「12号車の“最強の兵器”こと魔力塊のエネルギーを利用した、特大ビーム砲や」

運転士長「魔力塊のチカラを使えば、そんなコトが……」

冥王「発射位置は船首から。火山の火口かて吹き飛ばせる、文字通りの必殺の一撃や」


冥王「せやけど、撃てるのは、一日一回。魔力塊の魔力供給量から言うて、それ以上は無理」

冥王「溜めの時間も大量に食う、つまりイチかバチかの秘蔵っ子いうわけや。どや、使ってみるか?」



白ドレス「使ってみるも、何も。やるしかないでしょう!」

副運転士「本気ですか!?」

仮面の男「キマリだね」


白ドレス「そうと決まれば、まおーちゃん、冥王くん! 行くよ!」

魔王「は? 行くってどこに!?」

白ドレス「アポ○富士山の上空だよ。私たちで、ドライ・ブラー砲を撃つための隙を作る必要がある!」

冥王「我ら三界の力を以てすれば、不可能ではありまへんか。さて、わても本気出しますかな」

仮面の男「役者は揃った! これよりドライ・ブラー砲でアポ○富士山を沈黙させる! 最後の戦いだ!」

副運転士「えぇ……。どうなっても知りませんよーっ!!?」



――アポ○富士山 上空


魔王「よ……っと!」


魔王「ひゅう、いい眺め! これが富士山頂から見るご来光ってやつか!」

冥王「そのご来光を、山頂で待っていた人々は……。すべて避難を終えたはりますか」

冥王「ならば、わても本気を出せるいうもんです」


魔王「あれ? そういや、お前が戦ってるところは見たコト無いな。どうやって戦うんだ?」

冥王「ふふ……。冥界の王とは、死の管理者。決定権は無くとも、裁決は絶対です」

冥王「で、あれば。飛んでくる火山弾を“殺す”ことくらい、造作もありまへんよ」



白ドレス「おおーっと! 私もいるよー」

スイーッ


魔王「おうおう。見事に翼もがれてんなあ。ラウンジのマスターは強かったろ?」

白ドレス「なに、彼、まおーちゃんの知り合い? どーりで殺意むき出しだと思った!」

白ドレス「だったら君から言っておいてよ! 天界の神々や天使は、もっと敬えって!」

魔王「ははは。俺たちは、その恩恵以上に、メイワクかけられてるコトのほうが多いからな」

白ドレス「むう! じゃあちょっと、大天使っぽいとこ、見せちゃおっかな!」

白ドレス「しっかし、ラウンジの彼。この事態を見越して乗せるとは。まおーちゃんも抜け目が無いなあ」

魔王「何……?」



白ドレス「じゃあ、おしゃべりはこのへんで! さっそく攻撃を仕掛けるとしますか!」


白ドレス「いと高き天界の神々よ! この白の大天使の声に応え、天雷を授けたまえ!」

白ドレス「え? 自分たちの山に雷落としたくないって? 知らなーい! そーれっ、自業自得だー♪」

ドシャァァァァン!!!


魔王「うおっ、始まったか……。じゃあ、俺も負けていられねえな!」

魔王「碧夕の名の下に命じる! 光よ此処に、舞い戻れ! 以下略! おらあっ!!」

ドドドドドン!!!


冥王「やれやれ……。お二人さん、やることが派手ですなあ……」



――アポ○富士山 甲板


車掌「魔王と冥王と大天使の、お三方が上空で火山弾を迎撃している!?」

教授「あれが神々に準ずる者たちの本当のチカラってワケか……!」


アポ○モンスターたち「「「アポ○、ポ○ポ○ポ○―――!!!」」」バッ

剣使い「よっと! コッチの戦いも、大変なんだけどなっ!」キン

弓使い「ちょっと目ざわりだよ! そらっ、一斉掃射!!」ババババッ

アポ○モンスターたち「「「ポ○ポ○ポ○ポ○ポ○ポ○ポ○!!?」」」

執事「チャンスだ、アポ○たちの動きが止まりました! 仕留めるなら今です!」



銃使い「ありったけの爆弾! 食らえ!」ブンッ

キノコ頭「全弾、撃ち尽くせ!!」バラララララ

革ジャン「集中砲火だああああああ!!!」ドンドンドンドン

族長「食らえ、炎! 燃えて溶けて弾けて吹き飛べ!!!」ボオッ


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アポ○モンスターたち「「「ポ○ポ○ポ○ポ○ポポ○ポ○―――!!!」」」

小型メカ「アポ○たちが、熱にやられて、溶けて消えていきます……!」

ヒーロー「まだ終わらんよ! 今、この列車の魔力を借りて、必殺の!!」ボオオオッ

黒コート「なんで不死鳥のオーラをまとってるんだ、ちょっと、お前!」


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ヽ  ゙li、                       ヽ               /夕/  |                     /
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   l ! ゙l、                    ヽ.      ̄/     ,___ニ=弋                 /
   リ  l  、                        \     厶       /  ̄                ,..‐"
      | / !                     ゙‐'一''¨       l                  _/゛
      ,!./ l 、                        、  /    {               /´
  ,/   l/  ソハ                        /   /゛   /    __人   .,/
 ノ 乂    ノ  )                      /   /     .トー'''''´¨    ヽ彡
¨   /      ./    .__          _,,, -          /     !
  ./      .l゙  ,,-''″  ̄>-゙゙´              .  l      |
  l      .l  ,i"     .l  _____    r''    /   ./      l        _
  ,!     .! ./       |:Y´       ,フ /    ノ   /  .-t ,ノ| .,i" /.l   //  ._,, _,, -/
'、 .!      |,l         リ    ,ィ彡'/   _     ,i′   ソ′|./l./ / ./ ./ ..‐ン''"゛ ./
. ヽ l      リ           __ >イ __ -'ブ              { 丿  iシ゛ .メ"  . _..-‐'" ._,、     _..-'7 ハ
  .l八       __ッ-‐==ニニ--―'''''゙゙゙´ _/   ,.       /リ´          ,ィ彡-‐''"゙./   ._,,, -r'"  / /
   !│   ,;;シ‐'''"゛    _,, ―- -''彡;;广 /      , /    ..|7,.イ    |7,.イ     |7,.イ   |7,.イ.../ /
   .l/   .i'"゛     ,..-'゙,゙.. -― ¨¨._;;'彡'" .r  ,-7 ./ iゞ    ト-'' イ  ト-'' イ  ト-'' イ  ト-'' イ..//  /
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           /,i′       ./  _../″ ,i'ゞ  ! .l   /  、//| |  .、//||  .、//||  .、//||   7 「  トイ ,ヘノ| イ |
              ,!l゙       / .,..-'"./   .!   l゙ │  .//"..し' :|/   し' :|/   し' :|/   し' :|/  /,イ」  し'  ヽノ  し'
           リ     ,/.,/゛   !  i| .!  .l  /   〃                         //
          _,.. -ッ'  / /     |  l .l.!  イ /    ″                         〃
      _..-'"゛ ∠.   !:/         Y ! ゙l}、 ソ
  _..-‐''″    ,ツ'´    ソ           ! /  .!|
 ̄        /                   !/    リ



ヒーロー「ドライ・ブラー・フェニックス―――!!!」


ズガァァァァン!!!!!!


アポ○モンスターたち「「「ポ○、ポ○、ポ○、ポ○……ポ――――――」」」スウウゥ


桜色の女「あ、消えていったでござる」

料理長「でも、今のフェニックスの余波が、上空にまで……!」

フロント「それだけじゃありません! 列車の魔力に反応したのか、アポ○富士山から火柱が……!」

車掌「なんだって!?」

マスター「…………」



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                        :   ヽ. ;";;;;;;;;;;;.; .;:;:              ;;;;;;;;.;;;;;;;;;-、;;;
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                  _,,..-'''''"´      `'‐         ____/三/     レ'      ノ三/.   /三/
              _,, ー'''''"´               '、'、       ヾ三三三三il/           /ニ/     /il/
       ._,,.. -'''″         /  .、 ,      ゙>.゛   ......;;;....;;;;;;;;;..l,      .-、  ..._ィ≦il>’    ./三〉
  ._.. -‐'"              l│;;;;;.! .ゝ              ;.;;;;;;\      .\     .\. `'-,,,.ヾ三/
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    /   ,i′、    .;;./                / .....;;  .′ ヽ          ;.;ヽ,
;. ./   : ′     ;./                   ゙ .;;;;;;;;;:        ,..,        ゙′     .、、
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――アポ○富士山 上空


魔王「うおっ、アチチッ! 不死鳥!? それになんだ、アポ○富士山から火柱が!?」

冥王「あかん! ドライ・ブラー号が、呑み込まれるでぇ!!」


魔王「ふざけるな……、ここまで来て……」

魔王「させるかよォォッ!!!」


魔王は展開していた魔法陣をすべてかき消し、魔力を自らの周囲へと回帰させる。
そして、詠唱と共に、アポ○富士山上空に現れるは――――


魔王「火柱がなんだっ! 異次元に飛びやがれぇぇぇ!!!」



冥王「アポ○富士山上空に空間の穴を作って、火柱を異次元に!?」

冥王「どんな修行積んだら、一介の魔族がこんな大技使えるんや……!?」


冥王「おっといかん、魔王の魔法陣が無くなった今、火山弾は元気に飛んできよる……」

冥王「せやったらわてが、魔王の代わりせな、なあ!!」


冥王が一言呪詛を呟くたびに、飛来する火山弾が一つ、また一つと“殺される”。
これこそが、冥王の使う、万物を“殺す”冥界の秘技であった。


魔王「くそっ、だが火柱が立ったままじゃあ、ドライ・ブラー号がアポ○富士山に近づけねえ……!!」

白ドレス「……ふむ」



白ドレス「―――ドライ・ブラー号の主砲による砲撃。歴戦の戦士たちによる迎撃」

白ドレス「加えて冥王の呪詛。これらによって、アポ○富士山が放つ火山弾はかき消える」


冥王「な……!?」


白ドレス「そして、突如アポ○富士山から立ち昇った火柱。神々が遺した、最後の防衛装置か」

白ドレス「しかしこれも魔王が全魔力を投じた異次元転送によって、目下の危機は見送られる」


魔王「なん……」


白ドレス「―――だが、まだ足りない」



白ドレス「アポ○富士山は、まだその機能を停止していない」

白ドレス「機能を停止させるには、すべてを無に帰す絶対破壊の一撃が必要」

白ドレス「しかし、その一撃を放つには、機能の停止した隙が必要」


魔王「お前、何を……」


白ドレス「そう。ムジュンだ」

白ドレス「アポ○富士山を止めるのに必要な攻撃には、アポ○富士山が止まるほどの隙が必要」

白ドレス「これでは道理に沿わない。能わない」


白ドレス「なら、何故このようなムジュンが発生するのか?」



白ドレス「それは、アポ○富士山のチカラが、神々の権能であるからだ」

白ドレス「人間や魔族たちと神々の間には、絶対的なチカラの差が存在する」

白ドレス「ゆえに、外界の者たちは、甘んじてそのムジュンを受け入れるしかない……」


白ドレス「だが、そんなムジュンを、果たして生きとし生ける者たちが許容するか?」

白ドレス「少なくとも私は知らない。神々に屈しおもねる外界の者たちなど、私は知らない」

白ドレス「では、小さき者たちはどうしたか?」

白ドレス「答えはカンタンだ。―――神をも殺し得る武器を、自らの手で鋳造した」


魔王「……!!」



魔王「おい、まさか、ソイツは―――!」

白ドレス「カンの良い観客なら、もうわかったかもしれない」


白ドレス「そう。今回の登場人物に、“神殺し”を為し得る人物が、一人だけいる」

白ドレス「まるで、あたかも、そのためにいたような。そのためだけに配置されたような人物が」


冥王「神殺し……! たしかに先刻、1号車で……」


白ドレス「―――さあ! そのチカラを振るうがいい、大英雄!!」

白ドレス「ドライ・ブラー号最強の戦士、ラウンジカーの守護者よ!!」

白ドレス「そのチカラは君たちのモノだ! アポ○富士山が大口をひらけて待っているぞ!!」



マスター「――――――」


フロント「マスターさん……、まさかアレを使うのですか!?」

料理長「今までのドライ・ブラー号の戦いでも、ついに完全開放はしなかった……!」


マスター「―――ああ」


マスター「―――俺は前半生を、戦いに費やした」

マスター「―――戦って、戦って、戦って。魔界の争いに関わり、多くの魔族を屠った」

マスター「その過程で、多くのモノを失った……。あるハズだった幸福。日常。この右腕も、その一つだ」

マスター「―――だが、同時に得たモノもある」



マスター「―――それは得難き、友の存在であり……」

魔王「…………」


マスター「―――神をも殺し得る、我が右腕の存在だ」


マスター「ドライ・ブラーは争いには巻き込まれても、天界が関わるコトはなかった……」

マスター「俺もこの右腕は、役目を果たすことなく、我が身と共に朽ちるのだと思っていた……」


マスター「―――だが、今思えば」


マスター「―――我が右腕は、今この時のためにあったのだろう」



マスターが自身の体に魔力を通すと、その右腕は白く光り輝く。
それは神気に似て非なる存在。

チカラ無き者が、チカラある者を打倒するための、最終兵器。
それはまさしく神話の再現とも言える、万夫不当の神殺し。

天銀の腕は、朝日を覆い隠すほどの規模となり、そして、最初の朝の空にきらめく。


マスター「アポ○富士山が、神々の怒りであるならば」

マスター「それすなわち、我が断じるべき宿業なり」


マスター「ドライ・ブラーが、外界の希望であるならば」

マスター「それすなわち、我が護るべき至宝なり」



マスター「ならば此処に示そう、最強の証を! 砕いてみせよう、神々の怒り―――!」


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                           !  |il| i
                          | i | !
                      i   .i |  |i | i
                   {i    |   :| ii  i :|
                   i :  | i  |:i:   |
                   :i   | i   i:|    i! :
                    i  .| i  :i |    |: i|      /
                     :i  | : i!|!     !|!i    /
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                 >、ミ、≧: >:.>      ;'  ,’.//
                  >ヽゞヾ、ゞ        イ <
                     ≧/ ,    ヾ`、く
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                            | : '
                            |i  `
                            |



――1号車【展望車・前】


運転士長「ぐぅッ……!」

副運転士「空が光って……! いったい、何が!?」

仮面の男「……!?」


仮面の男「あ、アレを見ろ!!」

副運転士「……?」


副運転士「……!」

運転士長「あ、あれは……」



光は去った。
残るのは、正しき朝日が放つ曙光のみ。

炎は去った。
残るのは、正しき神山が醸す威容のみ。


運転士長「火柱が消えた……!?」

副運転士「か、火山弾もです! 勝ったんですか!?」

仮面の男「いや、まだだ! 12号車の魔力反応は異常な数値のままだ!」


仮面の男「これは、アポ○富士山が、まだ活動を停止していないという証左……」

仮面の男「今の光を受けても、魔力塊はまだ、アポ○富士山と共鳴している!」



副運転士「くっ……。では、どうすれば!?」

仮面の男「決まっているだろう!」


仮面の男「―――今こそ、ドライ・ブラー砲を撃つ!!」


副運転士「……!」

運転士長「たしかに、やるなら今しかない……。起動するぞ!」

副運転士「ああもう、どうにでもなれ―――!!」


仮面の男「ドライ・ブラー号、回頭! アポ○富士山の火口の上空へ接近せよ!!」



仮面の男「ドライ・ブラー砲、発射用意!」


運転士長「エネルギー弁閉鎖! エネルギー充填開始! セイフティーロック、解除!」

運転士長「ターゲットスコープ、オープン! 電影クロスゲージ明度20! エネルギー充填120%!」

運転士長「対ショック、 対閃光防御! 最終セイフティー、解除!」


運転士長「……さあ、最後の合図は、君がするといい」

副運転士「え? 私ですか!? ああもう、ワケわかんないですけど、やればいいんでしょう!」



副運転士「ドライ・ブラー砲、発射―――!!!」





               l ̄/
               l /   _
         | ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄/
         |___     / __ __

              / / ̄l /  l ./ l. / l  /
             /./  //.  l/ l/ l /               .ri iー‐-、
             //  //         //               |イ `ヽ  ``ヽ、
               `´   ´       l/                  | ト、  )    ァ ャ、
                                       .| t_t,ノ´    { ハ `ヽ、
                                       |, ー‐-.、,_  λ_丿  .`ヽ、
                                       .|_________ ``ヽ、_    . `ヽ、

                                       キ\\\\   ``ヽ、_    `ヽ、
                                        キ. ヽ ヽ ヽヘ      `ヽ、_    ヽ、    ___ ェェ ___
                                        キゝゝゝゝゝ.ヘ       `ヽ、_  `ヽ  `[]=|Ξ|=t]´´

                                         キ ミミミミミミヘ         `ヽ、  `ヽ、rー‐‐‐‐ー‐--
                                         キ ミミミミミミミ}           `ヽ、 ヘニニニニ`ー-

                                          λ二ニニ=丿             \ヘ ( ")") /
                                           \_ΞΞノ          .rt     ``ヾ  /
                                            ヽ、 ̄             [| 〉        彡
                                             メ、           〃ミミョェ_       キ

                                              彳ヽ                      }
                                                  ヽ           _______,,,,,,---‐‐ー`ヽ、
                                                  冫------‐‐‐ー''''´´        ノ
                                                 /                 _,;ノ´
                                                /                 ,/レー‐ァ
                                               /                /[ニニニ]ア``ヽ
                                              /              ,/

                                              {            _,/
                                              ゝ         _, -'´
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 !ヽ   ・            '.   ':,      ':, '.            ':, . ':.     .r:、._丿  .`ヽ、
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                                              {            _,/
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                         .-'     ヽ;; ;;ヽ .- ::,、.._

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【1月1日 午前7時】

――1号車【展望車・前】


副運転士「う……」

運転士長「やった……、のか?」


バンッ

車掌「お二人とも!!」


副運転士「車掌さん!」

運転士長「他の皆も……。その顔は……、終わったのか。すべて」



車掌「ええ! ドライ・ブラー砲は、見事にアポ○富士山の火口を撃ち抜きました!」

車掌「その結果、アポ○富士山は火山活動を停止!」

車掌「もはや噴火の兆候はありません。……我々の勝利です!」

運転士長「そうか……。なら、良かった」

副運転士「はぁ~~~。肩の荷が、下りましたぁ……」


マスター「……ふふ。年甲斐もなく、張り切ってしまったよ」

フロント「大丈夫ですか? マスター。肩をお貸しします」

副運転士「皆さんも! 本当に、本当に、お疲れ様でしたっ!!」

料理長「ああ。だが僕たちのシゴトは、まだ終わっちゃいない」



料理長「今日のドライ・ブラー号の運行は、午後8時、オーサカに到着するまで……」

料理長「少し、遅めになるが。乗客の皆さんのための、朝食をお作りしないとね」

副運転士「―――。はいっ!!」


フロント「私も、ロビーの修繕をしないと。吹きさらしですが、一時間もあれば何とかなるでしょう」

ウェイター「え? 吹きさらしなんだよね、ホンキで言ってる?」

フロント「ええ。ウェイターさん、ウェイトレスさん。掃除屋として、ご協力お願いします」

ウェイトレス「ひえ~、重労働だぁ~」

マスター「では、ワタクシも、ラウンジに戻りますかな」

マスター「本来のワタクシは、しがないラウンジの老マスターですので」



副運転士「士長……。長い、長い。本当に長い、夜でしたね」

運転士長「ああ。―――だが、明けない夜はない」

運転士長「新たな陽の昇らない日は無く、新たな日出づらぬ年は無い」

運転士長「古い一年が終われば、新たな一年がやってくる」

運転士長「それは、この世界も、ドライ・ブラー号も同じコトだ」

車掌「ええ。この年末年始運行は、もうすぐ終わります」

車掌「ですが、次の運行も、早晩訪れる。私たちに出来るコトは、その運行も良きモノとするコトです」

副運転士「……そうですね。次も頑張りましょう、皆さん!!」

ウェイター「いやー、刺激的な年末年始だったなー」

ウェイトレス「でもやっぱり、ドライ・ブラー号はこうでなくちゃねー」



副運転士「あれ……。そういえば、仮面さんは?」

運転士長「おや。艦長席が、カラになっている……」


運転士長「あの男め。自分の役割は終わったと見て、早々に去ったか」

副運転士「ふふ。あのヒトらしいですね」


副運転士「……でも、仮面さんって、たしかタイムパトロールさんたちが追ってるヒトなんじゃ?」

運転士長「それは赤色の仮面のほうじゃなかったか?」


運転士長「まあ……。ここから先は未来の領分だ。彼女らが何とかするだろうよ」

副運転士「そうでしょうか? まあ、そうですね!」



――ドライ・ブラー号 甲板


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執事「朝日……、ですね」

教授「うん……。空の上から見る太陽は、こんなにもまぶしい」



執事「お嬢様……。俺は、貴女が無事で、本当に良かった」

教授「ふふ。いつもありがとうね、バカ執事」

執事「お褒めにあずかり光栄でございます、バカお嬢様」


執事「そういえば……。例の、“最強の兵器(仮)”とやら、本当に完成したのですか?」

教授「おうとも。もう、“最強の兵器(仮)”じゃなくて、“最強の兵器”だよ」

教授「それに、作るのに必要なモノは、カンタンだ。有り合わせのモノが、二つあればいい」

執事「そうですか……。では、今日の発表会。期待していますよ」

教授「ええ。私の名演説に、期待しときなって」

教授「古の大術士たちが作ったという、古の“最強の兵器”。それにも負けないモノをね」



弓使い「教授~! 執事さ~ん!」

銃使い「生きてる?」

桜色の女「とほほ。今日はヒドい目に遭ったでござるなあ~」


執事「お二人と、桜色の剣士さん……」

教授「無事で何より。全部終わったね。皆は、これからどうするの?」

銃使い「オーサカの観光」

執事「皆さんもオーサカに留まるのですか? では、ぜひお嬢様の発表会を見ていってください」

教授「今回の事件を真の意味で終わらせる、“最強の兵器”。目にモノ見せてあげるよ」

弓使い「本当? 発表会に誘ってくれるの!? 嬉しいな~。でも、その前に……」



剣使い「……ようやく、決着がついたみたいだな」

族長「ああ。―――では、我らの決着も、ココでつけるとしよう」

剣使い「そうだな……」

ジャキ


魔族A&B「「族長、がんばれー!!」」

魔族C&D「「剣使いの人間も、良い戦い、期待してるぞー!!」」


剣使い「……いざ」


剣使い&族長「「勝負ッ!!」」バッ



キン! キン! ドォン!!!


弓使い「おー。やってる、やってる」

教授「もう戦いは終わったのに、まだやってるの? 男どもは飽きないなあ」

執事「男というイキモノは、たいてい譲れないモノの一つか二つを持っているのですよ」

銃使い「…………」ガシュガシュ ボリボリ

桜色の女「うーん。いい戦いでござるなあ。……いや、しかし」


ザワッ

桜色の女「……?」



仮面の男「…………」


桜色の女「おーい! 鉄仮面卿ー!」

仮面の男「おや……。春風の剣士か」


桜色の女「鉄仮面卿ー、なーんで艦橋のテッペンに立ってるでござるかー?」

桜色の女「上空は風が強いから落ちるでござるよー」

仮面の男「ふふ……。僕は、高いところというのが、好きでね」

仮面の男「低いところというのは、どうも気に入らない。君と戦ったのも、戦艦や空中庭園だったろう?」

桜色の女「意味も無く高いところに登るのは、ただのばかでござるよー」



仮面の男「ははは。これは手厳しい」


仮面の男「それに、ただの趣味で高いところに登っているワケじゃないさ」

仮面の男「ここがいちばん、この戦艦で逃げやすい場所なのでね」

桜色の女「ああ……。そういえばおぬし、歴史改変の罪で、追われていたのでござるな」


仮面の男「そうだ。き○こ派の諸君には、たけ○こ派に加担して、本当に悪いコトをした……」

仮面の男「だが、今回の戦艦の指揮でチャラ、というコトにはならないかな?」

桜色の女「それは本人たちに訊いてみないとわからないでござるなー」

桜色の女「まあ十中八九、なます斬りにされるでござろうが!」



仮面の男「ははは。これはまたも手厳しい」


仮面の男「だが。この列車に乗り込んで良かった……。刺激的な年末年始を楽しめた」

仮面の男「そして、君という好敵手とも、再戦するコトが出来た!」


桜色の女「…………」

桜色の女「次、会った時が。貴様の命日だな、鉄仮面卿」

仮面の男「ふふはははは。それはカンベンしてほしい」

仮面の男「僕は君を愛おしく思っている。今までに会った、どの女性よりも」

仮面の男「その君の美しい姿を見るのが、次限りというのは、いただけない」



桜色の女「減らず口を叩きおって。ならば今回は、とっとと失せるがいいでござる」

仮面の男「そうだな。まあココなら時空環境整備課も気付かないだろうが……」

仮面の男「君との立ち合いの後逃げないという約束は守った。なので、そろそろオイトマするとしよう!」

仮面の男「それでも呼びたければ教授さんにヨロシクと伝えておいてくれ!」


仮面の男「さらばだ、ドライ・ブラー号のユカイな仲間たち!」

仮面の男「君たちとの年末年始はとても魅力的なモノだった!」

仮面の男「願わくば、そのユカイな営みを続けたまえ! ならば、僕はいつでも現れよう!」


仮面の男「とうっ!!」ダンッ



桜色の女「おぬしは厄介事を持ち込むのだから、もう来なくていいでござるよー」


桜色の女「…………」

桜色の女「あやつとの立ち会い、久方ぶりに血のうずくモノだった」

桜色の女「やはり私は、あいつでなければ……」


桜色の女「いや、そんなことはあるまい」

桜色の女「これは私の経験不足。人を斬りたいのではなく、刀を斬りたいのだというもの」

桜色の女「さて、この感情。真に好敵手を求めるがゆえのものか、否か……」


桜色の女「今は奥底に閉じ込めて。オーサカ観光を楽しむでござる」



キノコ頭「……終わったか」

テロリストA「そうですね……」


キノコ頭「大量の装備を揃えて、無防備な列車をハイジャックするのだから」

キノコ頭「カンタンなシゴトだと思ったのだがな……」

テロリストB「ええ。世界は、存外広いというモノです」


テロリストC「ですが、その広い世界で、“最強の兵器”なるモノの存在とも出会いました」

テロリストD「……オーサカに行きましょう。教授の発表会、見届けようではありませんか」

キノコ頭「そうだな……。―――よし、行くぞ!!」



仮面の男「ふははははっ!! さらばだ、諸君―――!!」

ゴオオオオオ


黒コート「……!」ガバッ

黒コート「あいつ……! オイコラ待てっ!!」


小型メカ「あれは……。指名手配犯の、仮面の男ですね」

小型メカ「艦橋から雲海にフリーフォールしていきましたよ。もう助からないのでは?」

黒コート「いや……。奴は、落ちる戦艦や、崩れる空中庭園からも生還したという」

黒コート「仮面の男も、白の大天使も一筋縄ではいかないが。またいずれまみえる機会もあるだろうよ」



小型メカ「……? 妙に、すがすがしい顔ですね」

小型メカ「時空指名手配犯を相手にした任務の失敗は、いつものコトとはいえ」

小型メカ「何か。イイコトでも、ありましたか?」


黒コート「ああ……。そうだな」

黒コート「年の瀬とは、皆で乗り越えるから年の瀬、だと思ってな」


黒コート「そして、年の瀬を乗り越えた正月は。頑張った分、ゆっくりと休まねばなるまい」

黒コート「私も年末労働の分の休暇を貰って。お正月くらいは実家に帰るとするよ」

小型メカ「いいですね。私も実家に帰りたいモノです。私たちは、まだ次の仕事があるのですが」



ヒーロー「さあ、オペ子ちゃん! ウカウカしていられないぞ、さっそく次の仕事だ!」

ヒーロー「次はハンバーガー業界でマ○クとケ○タ&モ○バ連合が激突するらしい!」

ヒーロー「ジャンクフード存亡の危機だ! この大戦も何としても止めなくてはなるまい!」

ヒーロー「それでは行くぞ! ドライ・ブラー号の皆さん! アディオス、アミ―――ゴ!!!」

ズギュウウウウン


小型メカ「ああ。行っちゃいました」

黒コート「き○こたけ○こ大戦とかいうのを止めたばっかりだというのに、お前たちも大変だな」

黒コート「私はどっちかというと、ロ○テリア派だが……」

小型メカ「これ以上ハナシをややこしくしないでください。私たちは1000円バーガーでゴリ押します」



小型メカ「では、私も彼の後を追って、行ってきますね」

黒コート「ああ。頑張ると良い。また整備課の事務室で会おう」


小型メカ「あれ、そういえば……。革ジャンさんは、どうしたんですか?」

黒コート「ん? アイツか……」シュボ チリチリ…

フゥー


黒コート「アイツは、最後の任務を果たしに行ったよ」

小型メカ「最後の任務?」


黒コート「ああ。誰の命令でもない、アイツだけの任務をな」



――アポ○富士山 上空


魔王「これで一件落着、か……」

冥王「ええ。お疲れさんでした。魔王はん」


冥王「おや。エンマ帳……の、複製品が」

パラパラパラ


フワッ…


魔王「エンマ帳に書かれた、文字が……。空中に浮いて、消えていったな」



冥王「エンマ帳に書かれていた内容が無効になった、いうことやろなあ」

魔王「まったく。世話が焼けるぜ」


魔王「天界の動きを止めに来ただけなのに、まさかき○こたけ○こ戦争に巻き込まれるとはなあ……」

冥王「しかしその結果、古からの因縁を、再び断ち切ることができた」

冥王「終わり良ければ総て良し。ちゃいますか?」

魔王「ああ……。そうだな」


魔王「おい、冥王。お前は、これからどうする?」

冥王「ん? そうですなあ……」



冥王「ひとまずは、冥界に戻って今回の件の後始末、やろなあ」

冥王「エンマ帳の内容を信じて動いてる死神たちも困ってるやろうし」

冥王「無駄に部下を派遣させられた、死神の魔王のクレームもあしらわなあかん」

冥王「ああ、そうそう。魔王はん、あんたの人間殺したいう不祥事の揉み消しもな」

魔王「おおう……。ホントそれ、頼むぜ」

魔王「こんだけ部下に魔界の法をうるさく言って、なのに魔王が率先して破ってたんじゃあ」

魔王「俺一人の処分ならいいが、また魔界戦争に突入しかねん」

冥王「ははは。魔王はんもむつかしい立場ですなあ」

魔王「ホント。魔王って大変だぜ?」



魔王「さて、俺も……。早々に魔界に戻って、青鬼族の減刑をかけあうとしよう」

魔王「たしかに今回、青鬼族が独断で人間界に侵攻したのは、まぎれもない事実だが……」

魔王「俺も色々頑張ったし。実質的な被害は別に出てないし。列車が大破? 知らんなあ」

魔王「き○こたけ○こ大戦にかこつけて神々の責任にすれば、他の魔王も黙るだろう」

魔王「幸い、あいつの直接の上司の、緋雷王はハナシのわかる奴だからな」

冥王「緋雷王はんは、純粋で活動的なお人ですからなあ」


冥王「あれ……。そういえば、大天使はんは、どないしはりました?」

魔王「ん? さっきまでそこにいたんだが、消えたな」

魔王「さては、今回の責任の追及から、逃げたな……」



冥王「でもハナシによると今回、大天使はんは、なんもやってへんのやろ?」

魔王「ううん。そこなんだよな」


魔王「天界の者、しかも白の大天使が、あのドライ・ブラー号に乗り込んだんだから」

魔王「きっと何かをやらかすと思ったんだが……」

魔王「アイツの言うところによると、ただの観光兼、人間たちへの助力とは」


冥王「神々や天使の考えることは、わてらには想像も尽きまへんからな」

冥王「かんたんにわかるんやったら、魔界、冥界、天界なんかに分かれてへんて」

魔王「そうだなあ……。だが俺には、何か裏があるような気がしてな……。勘繰りすぎか?」



――ドライ・ブラー号 船首


白ドレス「―――うん、うん! 今日もハッピー、いい天気!」

白ドレス「今年も世界は何事もなく、いつもと変わらず、平和だあ!」


白ドレス「天界で、ドライ・ブラー号が、乗っ取られ、爆発、大炎上する未来がおぼろげに見えた時は」

白ドレス「楽しそうだなあ、それと、このままじゃマズいなあ、と思ったけど」


白ドレス「これで契約を完遂する! 時空環境整備課の、コネコちゃん!」

白ドレス「君は満足かい? ああ満足だろうね、大天使が意のままに動いたのだもの!」

白ドレス「ただの人間の身で、大天使と契約を結ぶ。これ以上の傲慢は世界になかなか無い!」



白ドレス「ああ、でも……。今日は本当に楽しかった!」

白ドレス「人間や魔族の世界は、本当に、本当に、驚きに満ちている!」

白ドレス「だから私も、チャチャを入れつつ、その未来を守りたいなと思うのです!」


白ドレス「さて……。それじゃあ、私も帰るとしようかな」

白ドレス「今日はきっと、天界の神々と天使たちの新年会だ」

白ドレス「私も白い愛人20箱を手土産に、乗り込むとしますか!」


バンッ!!!


白ドレス「おひあッ!!!」



白ドレス「え? 何、何、何。銃声……?」

白ドレス「って、ぎゃああああああ!!! 残ったほうの翼にも穴が開いてるー!!!」


革ジャン「よお。ようやく、二人きりになれたな……」


革ジャン「白の大天使!!!」

白ドレス「げぇっ! 君、コネコちゃんのところの、狂犬!!」


白ドレス「どどどどうして君がココにいるのかな……。君、整備課の君。契約違反だよ?」

白ドレス「君たちを妨害せず列車を助けるコトで、私を捕まえるコトもしないって約束だったよね?」

革ジャン「あ? なんだそりゃ?」



革ジャン「契約だなんだか知らねえが、俺はそんなハナシ、聞いちゃいねえ」チャキ

白ドレス「しまった……! あの契約が有効なのは、私とコネコちゃんとの間だけか……!」

白ドレス「謀ったね、時空環境整備課。これだから人間は信用ならないんだ!」


革ジャン「……始めに言っとくが、俺は時空整備課だから、ココにいるんじゃねえぜ」

白ドレス「え? 私、特級指名手配犯だけど、関係ないの?」

革ジャン「お前、特級指名手配犯なのか? まあ、それも関係ねえ」


革ジャン「俺がココにいるのは。―――お前が、気に入らないからだ」

白ドレス「は?」



革ジャン「チョコマカ、チョコマカ、事態の裏でコソコソしやがって」

革ジャン「気に入らねえんだよ。黒幕気取りの、乳デカ姉ちゃん」

白ドレス「げぇっ! 何それ、何その理由!? い、意味が通ってな――――」


革ジャン「だから死ねぇっ!!!」バンッ


白ドレス「ぎゃあ―――!! 反対、暴力反対!」ダダダダダダ

白ドレス「そんなワケのわからない理由で死ねないよー!!」

革ジャン「皆そう言って死んでいったよ!!」バンッ!!! バンッ!!! バンッ!!!

白ドレス「こいつイカれてる! こんなとっつぁんはイヤだぁ―――!!!」



【1月1日 午後3時】

――オーサカ駅前 発表会 会場


                                                    /
                                                  /
                                                 /    ./
.                                                |::    /レ'レ

                               .,斗ぅrx                 |:: ./レ'レ'レ'レ'
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                |二二二二二二二|
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パシャ パシャ  パシャ パシャ パシャ  パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ
   パシャ パシャ パシャ パシャ パシャ  パシャ パシャ パシャ  パシャ  パシャ
 ∧_∧      ∧_∧     ∧_∧  ∧_∧    ∧_∧     ∧_∧
 (   )】      (   )】    (   )】 【(   )    【(   )    【(   )
 /  /┘ .   /  /┘.    /  /┘ └\ \   └\ \   └\ \
ノ ̄ゝ     ノ ̄ゝ      ノ ̄ゝ     ノ ̄ゝ    ノ ̄ゝ     ノ ̄ゝ


教授「あー、テステス……」キーン

教授「本日は晴天なり。今日も変わらず、晴天なり」

教授「業務連絡、業務連絡。ううんっ。オッケー」



執事「お嬢様……。ジュンビはよろしいですか?」

教授「問題ない。いつでもいける!」


教授「―――それでは皆さん、お待たせしました」

教授「これより、狂気のチョコレートサイエンティスト、皆さんの呼ぶところの教授による……」

教授「世紀の大発明! き○こたけ○こ戦争を終わらせる、“最強の兵器”!」

教授「その発表会を始めたいと思います!!」


記者A「おおおおおおっ!!!」パシャパシャパシャ

記者B「それで……、教授。その、“最強の兵器”とは、いったい?」



教授「ふふ……。まあ、焦りなさんなって」

教授「“最強の兵器”は、一斗缶の中にあります」

ドンッ!!!


記者A「一斗缶の中に……? そう、大きくはないな……」

記者B「き○こ派もたけ○こ派も吹き飛ばす爆弾とかじゃないんですか?」

教授「お菓子の戦争にそんなモノ持ち込んでどうする気なのかな」

教授「流れる血は、鼻からだけで十分です」

記者C「しかし、一斗缶か……。これではまるで、お菓子の箱だな」

教授「……ふふふ」



教授「では、お見せしましょう! この教授の、世紀の大発明!」


教授「遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ!」

教授「細工は流々、あとは仕上げを御覧じろ! あと、なんだっけ……」

教授「まあいいや! オ―――プン!!!」

パカッ


記者A「おお、おお―――!?」

記者B「こ、これは―――!」

記者C「まさしく、まさしく―――!!」



教授「ふふふ……」


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|  i" Me○ji           _,,,,ィi彡=-''"" ̄      ̄ ~^"''''''ヘミtr、,_             `i  .!
|  |           _,,,xイ〃'゙                      ~^ヾミt、 ,  -‐- ,,__,, -ヘ|.  !
|  |  ,r‐'"`ー、 , ≠'"r-、     日月 ○ チ ョ コ ス ナ ッ ク    _ Y ほっと ひといき ,イ  |
|  |  ヽ_、_,  , )/{~^l  lー、 ,. '  ̄ `ヽrー----、 , -‐- 、    |  l  ヽ'"ヾ、, ̄`ー'⌒'" .|  |
|  |     `7/   二ゝ .!二./       ',. ----' / , -‐‐、 .ヽ.r‐、 .!  l  r‐┐ ヾ|li       |  |      __
| _,,!,,,_  _   ill!   !、_l ヽ_!          l      i l /7 i i.|  | |  |  ! .l   Yl!     .|  |       \ \  ./\  l ̄l l ̄l
|'":::::::::r"  冫!l!   , ヘ ヽ=' 、        ,'..    ヽ`' / ノ / .|  |_|  l_!  !  ,i|l! r'^~ )  !  |         \ \/  /  l_l l_l
|:::::::::::::::`'''"ヽ ヾx   ヽ、  ̄ ̄!ヽ . _ .. '.,,_  ̄ ̄,i  ̄  ヽ '  l _____!--!  ,ノi|!    ̄  .|  l          ヽ   ./
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|::|~~~i::::::::::::::::/;; ゙̄''ヽ、~^^.i;;;;;;;;;;;、;;\..,*"  _   _                _____ "*、::::::ヽ、.!        〈   ' ̄ ̄/
|イ‐‐‐ト─---i;;;;;;、;;;;;;;;;;;ヽ  l;;;;ヽ;;;;;;ヽ;,*  =//=== |_| =={}=_、-- .,_.===== , - 、 |├┬┤l   *._::::::::::::i           ̄ ̄ ̄ ̄_
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|‐v'⌒ヽ //ム、ヽ;;;;;; -' \ 、_;.ミ㌻ * 〈/ === |_| 〈/.',      ,'.`ー‐ュ¨  ==!==   ,*゚'i`r'⌒|                / /
|::::::::::::::::`-、 !__ヾ''" ヽ   \-‐.ミ㌻ "*,    ,-..、   .゙' --- '゛  ̄     =='== * _ r":::::::::!            /  ヽー、 /ヽ
|_::::_:::::::::::::::)、 ̄ ==、、、    i::::::l   ,-、_* 。 {く:::.丶   _    _詰め合わせパック *゚<:::::!.::::、:,::l             / /`ー、 ヽ /
| V/:::::::r‐、__i,,    } } ヽ __ノY:::::ヽ_.ト::-ト、.、.!::ノ`:_::〉/´::::{ /;::-::´|/:::>、  |:X:::::}<::::::::::/ - l|. !           / /    \,/
|/::; -┘   ヽ-、"/    ~..___ {::v':::メ::〉レ´ //X:::v::}(::x::::::::::/|ー::::ヽ !::::::::::l  `ヽ/    /_.l            ̄
|::::::i         i      r':.>―‐< 丶一"フ ー‐'〈/_::\::l \ーっ! !― 、:! |::_~' )ー '    /_/.|
|::r'          )ヽ    !.i/////」   ̄       ー― '    ̄  、 __ノ   ̄      /_/. !
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



記者A「おお、おお――……?」

記者B「こ、これは―――?」

記者C「まさしく、まさしく―――。……なんですか、コレ」


教授「ふふふ……。やはり凡人には、この天才科学者たる私の発想は理解できないか……」

執事「お嬢様、続けてください」


教授「おほん。これなるは、き○こたけ○こ戦争を終わらせる、“最強の兵器”!」

教授「爆弾? 魔力塊? そんなモンじゃない! お菓子の問題なんだから、お菓子で解決!」


教授「『き○この山 with たけ○この里 詰め合わせパック』です!!!」



記者A「は……?」

教授「今日から、き○この山と、たけ○この里の単独販売は停止します!」


教授「代わりに、この詰め合わせパックを販売!」

教授「片方食いたきゃ、両方買え! これでバッチリ問題は解決!」


記者B「あの、それって、抱き合わせ商法じゃ……」

教授「うっさい! これはセット販売!」


教授「アンタらね、いいオトナがいつまでもお菓子で争ってちゃダメだよ」

教授「き○こも、たけ○こも、どっちもオイシイ! 一緒に食べれば、皆ハッピー!」



教授「どれもおいしいお菓子なんだから、皆で一緒に食べればよろしい!!」


キノコ頭「そんなコトで……」


教授「え?」

キノコ頭「そんなコトで許されると思っているのかああああああ!!!」

テロリストA~D「「「「どけどけどけどけぇ!!!!」」」」


執事「彼らは……、ドライ・ブラー号のき○こ派!」

教授「生きていたの!?」

キノコ頭「やいやいやいやいやい教授ゥ!!」



キノコ頭「なんだその日和った商品は!」

教授「やかましいわ何が日和った商品だ!! うつけは去れ!!」


キノコ頭「まったく。き○こたけ○こ戦争を終わらせる“最強の兵器”を開発したと」

キノコ頭「その発表会くらいは見届けてやろうと、こうして来てみれば……」

キノコ頭「き○ことたけ○この抱き合わせ商法などで問題が解決したとでも思っているのか!?」

教授「だから抱き合わせ商法じゃなくてセット販売っつってるでしょうが!!」


キノコ頭「問答無用! 俺たちはここにき○こたけ○こ戦争を再開する!」

キノコ頭「この会場は俺たちがハイジャックした!!!」



記者A「うわあああ! テロリストだ!!」

記者B「逃げろおおおおおお!!」


執事「お嬢様、お下がりを」サッ

教授「ええ。私の発明にケチつけるコイツらまとめて、ぶっ飛ばしちゃいなさい!」

執事「お嬢様、それは無理です」


剣使い「やれやれ。お菓子の発表会でまで、揉め事とは……」スクッ

弓使い「世も末だねー。食の都、オーサカじゃなかったの?」


教授「フ、フリーターの皆!?」



銃使い「…………」ガシュガシュ ボリボリ

桜色の女「オーサカ観光の前の、食前運動。腹ごなしにはちょうどいいでござる」


キノコ頭「貴様らか……! 一度ならず、二度までも!」

キノコ頭「まあいい! ココでもろとも滅ぼしてくれるわぁぁっ!!」

テロリストA~D「「「「カクゴするんだなァ!!!」」」


バンッ!!!


キノコ頭「ッ! なんだ!?」

タケノコ頭「―――その発明品。我らも異議を唱えたい」



教授「え、誰!?」

キノコ頭「お前は……。たけ○こ派のリーダー!!」


タケノコ頭「―――かような商品。許されると思っているのか?」

教授「何、そこのタケノコ頭まで、私の発明品にケチつける気!?」

教授「このわからず屋のボンクラどもめっ!!」


タケノコ頭「いや、詰め合わせパックという発想。そこまではいい」

タケノコ頭「だが。何故だ……」


タケノコ頭「なぜ名前が、き○この山が先で、たけ○この里が後なのだァァッ!!!」



教授「そこ!!?」

タケノコ頭「しかも、パッケージでの扱いもこころなしか、たけ○この里のほうが小さい……」

教授「それは気のせいでしょう!」


タケノコ頭「ゆえに、我らは求めよう」

タケノコ頭「商品名の、『たけ○この里 with き○この山 詰め合わせパック』への改訂」

タケノコ頭「そして、パッケージではたけ○この里を強調するコトを!!」

教授「勝手なコトを言うなーっ!!」


キノコ頭「ほう……。いい度胸だ」



キノコ頭「ならば、教授を締め上げる前に」

キノコ頭「たけ○こ派。まずはお前たちを滅ぼすとしよう!」

タケノコ頭「望むところだ。かかってこい、き○こ派の愚者ども!!」


ワー!!! ギャー!!!

教授「ああ、もうメチャクチャだ……」

弓使い「やっぱ、き○こたけ○こ戦争、どうしようもないね……」

桜色の女「さて。しかしこの事態、どうケリをつけたモノでござるか。……ん?」


族長「―――くだらぬ」



銃使い「……!」

剣使い「その声は!?」


族長「くだらぬ。……実にくだらぬ」

族長「やはり、き○こ派とたけ○こ派の争いなど、笑止千万……」

族長「チョコ菓子ならアル〇ォートが至高に決まっておろうがァァァッ!!!」


教授「出たああああああ!!!」

執事「アル○ォート派の魔族……!」


魔族A~D「「「「俺たちもいるぜぇ!!!!」」」」



キノコ頭「また貴様らか……!」

タケノコ頭「き○こたけ○こ戦争にアル○ォート派が介入するな!!」

族長「来るか? ならば、かかってくるがいい」


族長「あのような発明品で、き○こたけ○こ戦争を収めるのは不可能……」

族長「ならば、我らアル○ォート派が。ことごとくを焼き尽くしてくれよう」

教授「どいつもこいつも私の発明品をディスりやがって!!」


執事「お嬢様……。この状況、どうしますか?」

教授「どうするも、こうするも……。私の発明品の素晴らしさを理解しないバカどもに用は無い」



教授「帰る!!」


剣使い「ははは……。教授の嬢ちゃんも、苦労するな」

弓使い「それじゃあ私たちも、オーサカ到着一発目、ひと暴れといきますか!」

銃使い「…………」チャッ

桜色の女「こやつらでは腹の足しにもならんが。まあ、それもいい」


執事「お嬢様、帰ったら何しますか?」

教授「何って、今は正月なんだから。そりゃ、コタツでグータラ……」


数学教師「―――待てやゴラああああああッ!!!」



教授「でぇッ!! タコ頭のマッチョ! どうしてココに!?」

執事「え? まさか、あのヒトが、お嬢様の数学の担任の……!?」


数学教師「そうやァァ!! 何アホな発表しとんねん、モヤシ女ぁぁ!!」

数学教師「コタツでグータラもええがなぁ、ホンマに冬休みの宿題終わっとんのかァァァ!!?」

教授「ギクゥ!!!」


執事「あ。そういえば、列車では戦いに巻き込まれて、全然終わってませんね」

教授「ま、まだお正月だから。まだ冬休みの期間残ってるから!」

数学教師「夏休みもそう言うて、まともに終わらんかったやろうがワレェェェ!!!」



族長「なんだ? 巨人族か!?」

タケノコ頭「あのタコ頭……。我らと同じなら、もしや、タコせん派の刺客では!?」

キノコ頭「何! 綿菓子やリンゴ飴、チョコバナナと祭屋台のシェアを奪い合っているという、あの!?」


桜色の女「ほう……。あの筋肉。斬り応えがある」フォン


数学教師「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!」バキバキバキバキバキ!!!!!!


教授「ぐ……。こうなりゃ逃げる。逃げの一手!」

教授「―――行くよ、バカ執事!!」ダッ

執事「ええ。―――お嬢様!!」ダッ



【そして――――】

――ドライ・ブラー号 1号車【展望車・前】 運転室


ガチャ

副運転士「あっ、士長! おはようございます!」

運転士長「ああ、おはよう。年始の一件以来だな」


副運転士「いやあ、あの運行は大変でしたね……。一年分働きました」

運転士長「ははは。そうだな。だが、また気持ちを切り替えていかなければなるまい」

副運転士「そうですね。だって、なんてったって、今日は――――」



副運転士「栄えあるドライ・ブラー号の、今年初めての通常運行の日なんですから!」


運転士長「特別運行も、通常運行も、私たちが運行にかける思いは変わりない」

運転士長「どちらにせよ、お客様に満足いただける列車の旅を提供せねばな」


副運転士「それにしても……。驚きました」

副運転士「あれだけ大破して、変形までした、ドライ・ブラー号が……」

副運転士「まさかわずか半月ほどで元通りになっているとは」


運転士長「ああ。ウェイターとウェイトレスの二人を中心に、業者が頑張ってくれた」

運転士長「さすが、ただの掃除屋の二人だな」



副運転士「ええ……。本当にスゴい……」


副運転士「…………」

運転士長「どうした?」


副運転士「『運命は絶対ではない』……」

副運転士「『それを為せるのは、その時間に生きる、意志ある者たちだけ』……」

運転士長「あの白ドレスの女、いや、白の大天使が言っていたコトバか」


副運転士「はい。あの戦いでは色々ありましたが、結局私たちは今、普段通りです」

副運転士「私たちは運命を変えるコトが出来たのでしょうか? そして、私は、本当に……」



運転士長「そうだな……」


運転士長「ええと。たしか資料がココに……」ガサガサ

運転士長「あった。年末年始運行の乗客は、全員オーサカに無事送り届けた」

運転士長「また、運行後アンケートもその時に取ったが……」

運転士長「アクシデントの演出も含め、おおむね高評価だったぞ」


副運転士「マ、マジですか!? てっきりクレームの嵐かと……」


運転士長「ああ。私たちは、無事に年末年始の運行を成功させて、新たな一年を迎えた……」

運転士長「そして乗客の方々に満足していただいた。これは、運命を変えたというコトではないかな?」



副運転士「……そうですね。そうかも、しれませんね……!」


運転士長「さて。残るは、君だ」

副運転士「え。私ですか……?」

運転士長「そうだ」


運転士長「私たちは、このドライ・ブラー号の記念となる、年末年始運行を終点まで導いた」

運転士長「アクシデントはあったが、運行に問題は無い。運行は成功と言っていいだろう」

運転士長「だが……。乗務員である、君は。今回の運行、楽しかったか?」

副運転士「……!」



副運転士「……ええ。それはモチロン」

副運転士「この運転室に現れた白ドレスのお姉さんから、色々あって」

副運転士「色んなヒトたちと出会って、戦って」

副運転士「すっごく、すっごく。楽しかったです!!」

運転士長「なら、良かった」


運転士長「このドライ・ブラー号は、ヒトを運んでいる」

運転士長「様々な思いを持った、ヒト……。それには乗客はモチロン、私たちも含まれる」

運転士長「そのヒトの思いが交差して生まれる運行を。楽しいと思ってもらえたのなら、何よりだ」

副運転士「はい! こんなニギヤカで楽しい列車は、他になかなか無いでしょう!」



運転士長「ははは。それでは、今は格納したが、この列車の“翼”」

運転士長「それを再び羽ばたかせるとしよう」


運転士長「車掌たち、他の乗務員も、全員が既に配置についている」

運転士長「あとは君の掛け声一つだ」

副運転士「そうですね! では、いつものアナウンスを!」


副運転士「ふぅ……」

カチ


副運転士「…………」




副運転士「すぅ……」



副運転士『お待たせ、いたしました』


副運転士『本列車はサッポロに向け、まもなく発車します』

副運転士『お見送りのお客様はホームからお願いしますっ』



ジリリリリリ…







                         ━━ 登 場 人 物 ━━


ttps://www.youtube.com/watch?v=rY5VnM8AGM0








【乗務員】

副運転士

運転士長

車掌

ウェイター

ウェイトレス

料理長

マスター

フロント


【教授&執事】

教授

執事


【傭兵】

剣使い

弓使い

銃使い


【き○こ派】

キノコ頭

テロリストA

テロリストB

テロリストC

テロリストD


【青鬼族】

族長

魔族A

魔族B

魔族C

魔族D


【未来の市民ボランティア】

ヒーロー

小型メカ



【時空環境整備課】

革ジャン

黒コート


【桜色剣士】

桜色の女


【鉄仮面卿】

仮面の男


【魔界】

魔王


【冥界】

冥王


【天界】

白ドレス


【その他】

店員

駅員

パイロット

乗客A

乗客B

乗客C

死神A

死神B

アポ○モンスター

記者A

記者B

記者C

タケノコ頭

数学教師



                          l|                 /   /
                          l|            /   /
.                        l|            /   ./   /
                           l|              /_  ./   /
                      l|

                      l|         『テロリスト「「「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」」」』
.                         l|
                       l|          /   /|:|/
                        l|________________/___./__|:|
.                        | `丶 、/ /  / /|:|
                      | ____/___`_メ_、/__/ |:|                        〈 ̄ヽ
.                           |--''" ̄ / / /  ̄.|:|                  ,、____|  |____,、
                    -┬┬-   /|| / /     .|:|                 〈  _________ ヽ,
                  ┌┴〒 ̄〒┴┐ ||/     .|:|                  | |             | |
                   h===.|r--i|===i|.  ||      |:|                  ヽ'  〈^ー―――^ 〉   |/
                   ||_____||____||_____||  ||      |:|                     ,、二二二二二_、
                    |______.| i-i |______|  ||      |:|                    〈__  _  __〉
          .rロ、.    |.。○.| !-! |.○。|.  ||      |:|     _,;;-''                |  |  |  |
-v''ヘ-、__,,、___  ゙コビ.    ゙tェェョ|===|ェェョ/__,,_||_,、_____,,、, ,.|:|ノ-''=''" ::::::              ./ /  |  |    |\
:::::::::::::::::::::::::::::: ̄!-|-!~゙''"`'' ̄`''E|三三|ヨ"  :::!!::::::::::::::::::::::!:!:::::::::::::::::::::::::         ___/ /  |  |___| ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!:    _,, ='' 三三三 ''= .,,_   :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::         .\__/   ヽ_____)
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以上を持ちまして、最終章「薄明」および『テロリスト「「「この列車は俺たちがハイジャックした!!!」」」』を
完結といたします。皆さん、ここまで感想等、ありがとうございました!

年末年始を舞台にてんやわんやの群像劇を描きたいと思い
作品を書きましたが、もしお楽しみいただけたなら幸いです。

このスレはしばらくの後にHTML化申請させていただきます。それでは、良いお年を。

ガキ使見てた

教授ちゃん結局宿題終わらなかったのねww
数学教師はどーやって来たんだwwwwww

剣使いとか、魔族とか、タイムパトロールとか変わった世界観だったし、
最初読んだ時、もうこれダメなんじゃないかと思ったけど
最後はきちんと終わって良かった


過去作、次回作(書く気)あるなら見てみたい
とにかく乙でした!!

乙でした
楽しく読ませて頂きました
世界観ハチャメチャだけどその分賑やかで楽しかった

おつでした
名前の感じとか文体とかどっかで見た事あるよな気がしたんだけど、良かったら過去作なんか教えてほしいな

スパロボとかアベンジャーズとかのお祭り感あふれるかんじが楽しかった
それぞれのキャラクターの単独作品が見たくなった

お疲れ様

グランドセフトオートV
ストーリーモード#2

『GTA5で生きる。2日目』
(21:42~放送開始)

https://www.youtube.com/watch?v=kK1qYi_1Mac

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