【わたモテ】ゆり「黒木さんが吉田さんに乱暴された……?」 (69)

真子「おはよ」

ゆり「おはよ。二人は?」

真子「まだ来てないみたい」


??その日、黒木さんと吉田さんは欠席した。

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二人揃っての欠席。


別に、それだけなら大しておかしな話でもない。

黒木さんだって体調を崩す時はあるだろうし、吉田さんはよくわからないけどちょくちょく欠席する。

だから、この二人の欠席が被る事なんてそう珍しくもないこと。


「……ねぇ、聞いた?……」

「……あぁ、例のあの人と吉田さん?……」

「……ヤバくね? あれさ……」


……なんだけど。周りからすればそうでもないらしい。

聞き耳を立てなくても入ってくる同級生の会話によると、黒木さんが吉田さんに乱暴されたとか。

なんでも、路地裏から乱れた制服で出て来る二人の姿を見た生徒がいたらしい。


ゆり(どうせまた、黒木さんが何かやらかして吉田さんを怒らせたんだろうな)


……って。

普段の二人をよく知る私は、そんな風に考えていた。

いつもと、雰囲気が違う。

私がそれを察したのは、翌朝になってからだ。


ゆり「おはよう」

茉咲「あぁ」


いつものように制服を着崩して登校した吉田さんは、自分の席に着くと頬杖をついた。

眉間にシワを寄せて、じっと見つめる先は……黒木さんの席。


茉咲「おい」

ゆり「?」

茉咲「そいつ。まだ来てないのか」

ゆり「うん」

茉咲「そうか」


それだけ言うと、小さく舌打ちをして窓の外に視線を移す。

……結局、その日もまた、黒木さんは来なかった。

黒木智子、欠席。

五日目となれば、誰もが何かがおかしいと気付いている。

何というか、黒木さんは半端に真面目だから学校を休むにしても理由はちゃんとつける筈。

荻野先生に理由を聞いても答えてくれず――


荻野「黒木は……まぁ、ちょっとね……」

ゆり「……そうですか」


――その態度からして、何か簡単には口に出来ないことがあったのだと察してしまった。

黒木さんと絡みがある小宮山さんや、仲が良い成瀬さんも話を聞いていない。

メッセージを送っても既読すらつかないとのこと。


真子「大丈夫かな、黒木さん」

ゆり「……」


事情を知ってそうな吉田さんは自分からは何も言わない。

そもそも、最近は教室で見る回数の方が少ない。

……だけど、私はまだどこか楽観視していた。

どうせ黒木さんのことだから、下らない理由なんじゃないかって。

心のどこかで、そんな余裕を抱いていた。

黒木さんの欠席が続いて、ちょうど一週間目になった日。


いつもと同じ時間に始まる朝のHR。

教壇に立つ荻野先生の表情は、いつもよりずっと険しくて。


荻野「あ、後ろのドア閉めてくれる?」

荻野「今から大事な話をするから。他のクラスの子には絶対に言っちゃダメだからね」


先生の視線が、空席に向けられる。

黒木さんと、そして吉田さんの席。

よほど察しの悪い人でもなければ、この二人についての話だという事には気付くだろう。

そしてその態度は、私の楽観が間違っていた事を示していた。

――黒木さんが、性的な暴行を受けた。


先生の口から出たその言葉は、クラス全員の心を揺さぶった。

目を見開き、口を半開きにして。

誰もが、言葉を失っていた。


荻野「その時の黒木は――で帰りを急いでいて――」

荻野「近道をしようと――の路地裏に――」


正直、先生の言葉はあんまり耳に残ってない。

辛うじて覚えている事は二つだけ。

黒木さんはわいせつ行為を受けたが、辛うじて本格的な行為には至らなかったということ。

そして……ギリギリのところで、吉田さんが黒木さんを助けた……ということ。

HRが終わっても、暫くショックから立ち直る事が出来なかった。

今日の授業の内容も、半分は聞き流した。


真子「……大変、みたいだね」

ゆり「……」



そして、あっという間に放課後に。


真子も、何と言えばいいのかわからないような感じで。

私も一日中考えてみたけど……黒木さんに対して、何ができる事はないか。

もちろん、結論は出なかった。

慰める――どうやって?

励ます――何を?


非日常感が強すぎて、考えても答えは出ない。

友達が強……姦されるなんて、想像できるわけもない。

もどかしいのか、上手く言葉に出来ないモヤモヤを胸に抱えたまま、私は真子と一緒に下校する。



ゆり「……あ」

真子「?」


そういえば、吉田さんはどうしているんだろう。

ふと気になったけれど……そもそも、私は吉田さんの連絡先を知らなかった。

結局、私たちにできる事は時間の解決を待つ事ぐらいなんだろう。

そして、一月後。


荻野「明日から、黒木がまた出席するから」

荻野「みんな、いつも通りに迎えてあげて」


その言葉に対するクラスの反応は、大体三つに分かれた。


驚いた顔。

どうでも良さそうに、早く帰りたいという顔。

そして……眉間にシワを寄せて、頬杖をつきながら、窓の外を眺める顔。

智子「お……お、は、ぁ……」

ゆり「……おはよう」

智子「……おは、よぅ……」


……翌日。

登校してきた黒木さんは、意外にも普段とそこまで変わらないように見えた。


ゆり「……」

智子「……」


それだけに、何を話せばいいのかがわからない。

いや、前からも無理して会話するような間柄ではなかったけれど。

事情が事情だけに、このまま沈黙を続けるのはよくない気がして。

明日香「おはよう黒木さん」

智子「あっ、お、おはよ……」

ゆり「……」

明日香「あ、後でノート見せよっか? 休んでた間の」

智子「あ、えっと……」


黒木さんの視線が、何度か教室内を行ったり来たり。

何を困っているのか、それだけではわからないけど。


智子「だ、大丈夫……もう、見せて、もらった、から……」

明日香「そう? わからないところがあったらすぐ言ってね」

智子「あ、あり……がとう……」


その後も、登校してきた真子や根元さんが黒木さんに挨拶をして。

特に、コレといって目立った出来事もなく。

前と同じように、いつも通りに昼休みの時間になった。


茉咲「……」

昼休み。

前と同じように、真子と黒木さんと机を繋げてお弁当を広げて。

ああ、何だか安心が戻ってきたような――そんな感覚、だった。


ゆり「黒木、さん?」

真子「それ、お昼……?」


黒木さんが、中に白米しか入っていないお弁当箱の蓋を開けるまでは。

智子「あ、うん。食欲なくて」


……そう、真顔で言う黒木さん。

白米だけの、それも少しだけしか入っていないお弁当を少しずつ箸で摘んで口に運んでいる。


真子「あ、えっと……おかず、分けてあげよっか? 食べやすいのもあると思うけど」

智子「いや、いいかな」

ゆり「それでもつの?」

智子「大丈夫」


表情からは無理をしているようには見えないし、本当に食欲がないみたいで。


ゆり「……」

真子「……」


私と真子が目配せをする中、黒木さんだけは平常運転で箸を動かしていた。


茉咲「……チッ」

そうして微妙な空気の昼休みの時間が過ぎて、5限目後の休み時間。

一日最後の授業に向けて、みんなが教科書を準備している中。


茉咲「……」


今までどこかに行っていた吉田さんが、コンビニのビニール袋を手にぶら下げて後ろのドアから入って来た。


茉咲「ほらよ」

智子「……え……」


そして、そのまま真っ直ぐ黒木さんの机に直行すると、ビニール袋を黒木さんの前に置く。

その中身は……ウィダーインゼリーや、カロリーメイト、あとは飲むヨーグルト?

……食欲がなくても、簡単に食べられるものばかり。


茉咲「昼飯に食い切れなかった。捨てんのももったいねーから、やる」

智子「あ、え、えっと……」

茉咲「あ゛?」

智子「あ、ありがと……」


困惑する黒木さんだけど、吉田さんの一睨みで頭を下げた。

そのまま、ビニールごとカバンの中に仕舞おうとして、


茉咲「今食え」

智子「え、」

茉咲「ウィダーくらいならすぐ食えんだろ」

智子「で、でも」

茉咲「……」

智子「う……い、いただき……ます……」


追い込みをかけるような吉田さんの目線で、おずおずとウィダーを口にする黒木さん。

ゆっくりだけど、確かに少しずつへこんで行くパック。

その様子を隣で見届けると、吉田さんは不機嫌そうに鼻を鳴らした。

やっぱり、黒木さんの様子がおかしい。

私たちがそう気付くのに、大して時間はかからなかった。


真子「――でね。その時、ゆりが――」

智子「へぇ」


下校時の、他愛ないおしゃべり。

黒木さんの視線は、誰に向かうでもなくただ前に向けられている。

それはまぁ、当たり前のことなのだけれど。


茉咲「オイ」

智子「あ……ご、ゴメン……」


目の前が赤信号なのにも関わらず、そのまま進もうとして吉田さんに肩を掴まれる。

心ここに在らずという言葉があるけど、今の黒木さんはそれをずっと酷くしたような状態だ。

黒木さんが復学してから、三日が経った。


……この人は、何も考えていない。

同じ言葉でも、今の黒木さんと一ヶ月前の黒木さんとでは大分意味が違うものになる。

話しかければ答えてくれるし、誘えば一緒にお昼もする。

今の黒木さんは、自分から行動を起こす事が殆どない。

ただ、一日の中で決められた『流れ』をこなしているような……そんな、感じがする。

何と言うべきか――酷いくらいに、無気力なんだ。



ゆり「どうすれば、いいのかな」

真子「わからない……けど……」


放っても、おけない。

真子と二人で相談しても、私たちに解決できる気がしなかった。

一応先生にも伝えているけど、どうにかなる問題ではなさそうだ。

結局、私たちにできることは先生の言っていた通り『いつも通りに接する』ことだけ。

後は、時間と専門の人に任せるしかない。


ゆり「……」


――そんなだから。

私には、黒木を救えなかったんだろう。

このクラスで、一番黒木さんを気にしているのは誰か。

それは、間違いなく吉田さんだ。

……本人に言っても否定されるだろうけど。

「あぁ? たまたまだよ」って不機嫌そうに。


茉咲「……」


最近の吉田さんは、サボらずに教室にいることが多い。

帰りも黒木さんと同じタイミングなのをよく見かける。

言葉にはしないけど、本当に黒木さんのことをよく見ていると思う。


ゆり(……でも)

一番わからないのは、黒木さん。


智子「……」


次の科目の教科書を机に置いて、ただじっとしている。

スマホを見て時間を潰すわけでもない。

前みたいに、寝たふりもしていない。


彼女は、何を思って日々を過ごしてるんだろう。

このままで、大学に行くことはできるのかな。

必要がなくなれば、外に出ることもなくなってしまいそう。

そんな風な、嫌な予感が胸を過ぎって……それでも、私には何もできなかった。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年03月12日 (月) 01:16:40   ID: cBilyHQr

私モテにシリアスはにあわいのじゃー...でも雰囲気いい感じにでてる

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