加賀さんが瑞鶴を赤面させるだけ (166)



☆甘口の一


瑞鶴(すぅ――ふぅ。よし!)


瑞鶴「失礼します! 着任の挨拶に伺いました!」

「――どうぞ」


瑞鶴「本日着任いたします、翔鶴型航空母艦、2番艦の瑞鶴です!」

加賀「鎮守府へようこそ。秘書艦の加賀です」

瑞鶴「よろしくお願いします!」

加賀「ええ――久しぶりね、瑞鶴。それなりに期待はしているわ」

瑞鶴「……えっ?」

加賀「――? 何か変なことを言ったかしら」


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瑞鶴「あのー、質問してもいい――いいですか?」

加賀「いいけれど」

瑞鶴「あの、建造ドックで言われたんですが。だいたい加賀さんは瑞鶴にきつい性格だから気を付けてって」

加賀「他のところがどうかは詳しく知りませんが……なんだか悪意を感じるわね」

瑞鶴「せめて第一印象が悪くならないように、と思ったんですが」

加賀「そんなに気にしなくて大丈夫よ。そもそも私は先輩だけれど、上官ではないし」

瑞鶴「そういえば、ここの提督さんはどこに?」

加賀「主力を連れて、南方海域へ出撃中。一応、私が留守を任されているわ」


加賀「貴女の指導と教育も、しばらくは私が見ることになるわね」

瑞鶴「あ、はい。よろしくお願いします」

加賀「そうね。きついのがお望みなら、それもやぶさかでないけれど」

瑞鶴「い、いえ! そんなことないです!」

加賀「まあ、せっかくまた会えたのだから仲良くしたいしね――ふふっ」

瑞鶴「っ!」


加賀「今日は鎮守府の案内で終わりの予定よ。荷物を置いていらっしゃい」

瑞鶴「は、はい! 失礼します!」


瑞鶴「――ふぅ。良かったぁ、何とかうまくやっていけそうで」

瑞鶴「加賀さんも優しそうなひとだし。それに」


瑞鶴「加賀さんの笑った顔……綺麗だったな」


瑞鶴「…………」

瑞鶴「何言ってんだろ私……」


(特に理由なく仲が良い)だけです。

いがみ合わないずいかがに違和感ある方はご注意願います。



☆甘口の二


加賀「桟橋とドックはもう見たわね? あっちに食堂、酒保、娯楽室と運動場」

瑞鶴「ずいぶん広いですね」

加賀「生活に必要な施設は一通り揃っているわ」

瑞鶴「あっちの建物は?」

加賀「あれはおか――鳳翔さんのお店よ。昼は割烹、夜は飲み屋さん」

瑞鶴「お母さんがいるの!?」

加賀「ええ、あとで挨拶すればいいわ。優しい方だから大丈夫よ」

瑞鶴「うわあ、楽しみだなあ――あれ?」

加賀「どうかした?」


瑞鶴「昼も夜もお店って……出撃とか演習は?」

加賀「ああ、鳳翔さんはね――」

鳳翔「呼びましたか?」

瑞鶴「わぁ、お母さんだ! 久しぶり!」

鳳翔「会えるのを楽しみにしていましたよ。これからよろしくね、瑞鶴ちゃん」

加賀「買い出しは終わったのですか?」

鳳翔「ええ。お留守番ありがとうね、加賀ちゃん」

加賀「お、おるすばん……ちゃんとできます、子供ではないのですから」


鳳翔「大事なことですよ、加賀ちゃん。ましてや提督の代理として――」

加賀「いえ、ですからその呼び方は……」

瑞鶴「……? なんか加賀さんが食い気味に」

鳳翔「ああ、それはね」

加賀「ちょっと鳳翔さん」

鳳翔「瑞鶴ちゃんの前でちゃん付けされて、子供っぽく見られたくなかったのよ」

加賀「わ、わかってるならやめてほしいのですが」

鳳翔「ふふ、ごめんなさいね。頑張ってるのを見てるとつい」

瑞鶴(わあ、赤くなってる加賀さんかわいい)


加賀「もう行くわよ、瑞鶴。――それでは」

瑞鶴「あ、はい。それじゃ失礼します」

鳳翔「あとでお店にも寄ってくださいねー」



☆甘口の三


加賀「さて、気を取り直して――ある程度練度が上がるまで、演習を繰り返してもらいます」

瑞鶴「出撃はまだ先ってこと?」

加賀「ここの方針でね。戦況に余裕があれば、改造まで視野に入れられるわ」

瑞鶴「そうなんだ、かなり慎重な提督さんじゃない」

加賀「堅実な方よ。未熟なまま損傷して、余計な資材も使わないで済むし」

瑞鶴「あ、そっか。正規空母の修復ってかなり資材使うのよね」

加賀「かなり時間もかかるわ。建造されたばかりでわからないかもしれないけれど」


加賀「そういうわけで、護衛の子たちを紹介します」

秋雲「横須賀生まれ横須賀育ちの秋雲さんだよ! また会えてうれしいよ、瑞鶴!」

朧「綾波型駆逐艦、7番艦の朧です。――今度はもっとお供したい、です」

瑞鶴「わぁっ、ほんと久しぶりね! こちらこそよろしくお願いするわ!」

加賀「偶然、五航戦の護衛の子たちが残っていたの。よかったわね」

朧「そう、ですね。偶然ですね」


加賀「少なくとも主力が戻るまでは、一緒に組むことになるから。仲良くやって頂戴」

瑞鶴「了解しました!」


秋雲「――実はね、瑞鶴。秋雲たちを置いてくよう提督に陳情したの、加賀さんなんだよ」

秋雲「昔の護衛と一緒のほうが、瑞鶴もやりやすいだろうってさ」

瑞鶴「え、そうなの!? 加賀さん優しい……」


加賀「なにか言った?」

秋雲「なななんでもありませんです! ハイ!」


瑞鶴「あ、2人とももう改なのね……私、ついていけるかな」

加賀「心配いらないわ。誰だって最初は未熟なもの」


加賀「それに、ここにいるのは、みんな優秀な子たちだから」

「「「!!」」」

朧「……照れる」

秋雲「ほ、褒めたってなにも出ないってー!! あっはっはー!!」

瑞鶴(あ、私、この子たちと仲良くやっていけそう……)


加賀「明後日から演習を組むわ。3人で洋上機動の確認に入りなさい」

「「「了解!」」」



☆甘口の四


瑞鶴「あ、加賀さんおつかれさま! 隣いい?」

加賀「いいけれど」

瑞鶴「ありがと! もー、お腹すいちゃってすいちゃって。いただきまーす」

加賀「はじめての演習はどうだった?」

瑞鶴「なんとか勝てたけど……あはは。ほとんど朧と秋雲のおかげ」

加賀「お茶、飲む?」

瑞鶴「むぐ……んぐ」コクコク

加賀「飲み込んでからでいいわよ」


瑞鶴「――ふう。加賀さん、今日は何か嫌なことでもあったんですか?」

加賀「どうして?」

瑞鶴「なんか機嫌悪そうだなって。眉間にちょっとシワがよってますよ」

加賀「……まあ、嫌なことというか」


加賀「テレビで、他の鎮守府の一般開放を中継してたのだけれど」

瑞鶴「ああ、そういえば今日だったっけ」

加賀「向こうの加賀と瑞鶴が、公開演習後にインタビューを受けていて――」


加賀『――勝因ですか? ……私の航空隊が、いち早く制空権を確保したことでしょう』

加賀『まあ、どこかの誰かが、私の援護をしっかりしていれば、もっと早く勝てたのですが』

瑞鶴『はあああ!? 私の子たちもちゃんとやってたじゃないの!!』

加賀『あら、誰とは言ってないけれど、自覚はあったのね』

瑞鶴『確かに私は大破したけど、相手も全艦撃破したし、MVPもちゃんと取ったわ!』

加賀『被害を極限まで抑えつつ、最大の戦果が戦闘の基本よ』

瑞鶴『相手の旗艦を仕留めたのはわ・た・し・の、艦攻隊なんですけど!!』

加賀『その前に、私が相手の対空艦を潰していたことを忘れないでもらいたいわ』

加賀『――どこかの誰かは、大物への攻撃に頭がいっぱいになっていたようだけれど』

瑞鶴『な、な、な……!!!!』


瑞鶴「あ、あー」

加賀「別に、瑞鶴への態度に文句を言いたいわけじゃないの」

加賀「後輩の指導方針に差が出るのは普通のこと……別人だものね」

瑞鶴「そうですね。……問題は、国防を担う艦娘の不仲をお茶の間に届けちゃったことよね」

加賀「生中継で公共の電波に乗せることの意味を考えて欲しいわね」

加賀「向こうの加賀しかり、瑞鶴しかり、不仲な二人にインタビューの許可を出した提督しかり」

加賀「そもそも、わざわざしかめっ面の艦娘にインタビューせずともいいでしょうに。まったく」

瑞鶴「……同じ顔で言うのは説得力あるわね」


瑞鶴「でも、大体どこの加賀さんも瑞鶴には厳しいらしいですよ」

加賀「それを知ったとき、私は不思議で仕方なかったわ」

瑞鶴「え、なにがです?」

加賀「戦果を比べれば、貴女のほうが明らかに優れているもの」

加賀「真珠湾からラバウル、珊瑚海、ソロモン、マリアナ――その他諸々」

加賀「航空隊の練度で負ける気はなかったけれども、貴女は間違いなく、日本の最殊勲艦のひとり」


加賀「たとえ冗談でも、加賀が瑞鶴につっかかるのが不思議だわ。本当に、不思議」

瑞鶴「…………」

加賀「ごちそうさま。お先に」



瑞鶴「////」プシュウウ……

朧「瑞鶴さんが真っ赤になって倒れてる」

秋雲「なかなかレアだね! スケッチしとこっと!」


新しいSSも久々になってしまいましたが、やっぱりほのぼの空母ものです。

またよろしくお願いします。

なんかいいね

なんだオワこれの方か


このシリーズと言うかこの世界観好き

これで終わりってこと?
今日の投稿が終わりってこと?

やさしい世界

加賀ちゃん瑞鶴ちゃん鎮守府思い出した乙


仲良きことはなんとやらさ



☆中甘の一


瑞鶴「来た時から気になってたんですけど……」

加賀「どうしたの」

瑞鶴「運動場のほかに、なんか大きなドームがあるわよね」

加賀「ああ、あれ。この鎮守府の売りのひとつよ」

瑞鶴「やたら目立つけど、あれ何なんですか?」

加賀「妖精さんと工廠の技術の結晶にして、わが鎮守府の福利厚生に大きな役割を担っている――」



加賀「温水プールよ」

瑞鶴「なんて無駄な」


加賀「む、聞き捨てならないわね。何が無駄だというの」

瑞鶴「ここが鎮守府だからに決まってるでしょ! 泳ぐなら目の前に海があるじゃない」

加賀「瑞鶴。プールが、泳ぐためだけにあるとでも思っているのかしら」

瑞鶴「いきなり存在意義が全否定されてる! それ以外に何があるんですか」

加賀「航行演習よ。造波装置を使って、艤装の具合を危険なく確認できるわ」

瑞鶴「えー? プールで航行の演習なんて意味あるんですか」

加賀「建造されたばかりの艦娘が、いきなり波の荒い遠洋に出るのは危険だから」

瑞鶴「確かに小さい子には危ないかも」


加賀「まあ、とにかく練度の低い子に向けて解放しているの。有意義でしょう?」

瑞鶴「そりゃ、そうかもしれないけど――あれ?」

加賀「どうかした?」

瑞鶴「私、最初の演習からいきなり海に出されたんですけど」

加賀「貴女はいいのよ。優秀だもの」


加賀「出しても問題ないと私が判断した子は出していいと、提督からことづかっています」

瑞鶴「////」



☆中甘の二


加賀「せっかくだから見学していきましょう。暖かいでしょう?」

瑞鶴「あ、ほんとだ。暖房もついてるんですね」

瑞鶴「でも、北方海域なんてここの比じゃない寒さよね。温水に慣れちゃったら大変じゃない?」

加賀「貴女の言う通り、冬の海で水練をしてみたことがあったのだけれど――雪風がかぜをひいてね」

瑞鶴「はぁ」

加賀「…………」


加賀「雪風がかぜをひいてね」

瑞鶴「あ、笑うとこでしたか」


加賀「それ以来、冬季の水練は温水プールをなるべく使うようにしているわ」

瑞鶴「今日みたいに寒い日は、水練以外じゃ誰もいないわよね――って、あれ?」



伊58「――プールの中からこんにちはー! ゴーヤだよ!」

瑞鶴「あ、こんにちは」

伊58「……驚かないの?」

瑞鶴「いや、プールだから。透明だからバレバレだし」

伊58「なーんだ。ずっと潜ってたのに損したでち」

瑞鶴「え、驚かせるためだけに潜ってたの?」


加賀「彼女は伊58。我が鎮守府の遠征を取り仕切っているわ」

伊58「よろしくでち、ゴーヤでいいよ。あとでボーキあげるね!」

瑞鶴「あ、ありがとう。今日はお休みなの?」

伊58「うん。昨日も南西諸島まで行ってきたから、潜水艦隊はお休み」

瑞鶴「へー、休みの日まで泳いでるなんてすごいわね」

伊58「泳ぐのは一日休むと勘がにぶるでち。休みの日ぐらいはあったかい水で泳ぎたいって、てーとくに言ったんだよ」

瑞鶴「え、貴女がここ作らせたわけ!?」

伊58「潜水艦隊が持ってきた資材でできたようなもんでち、気にしない気にしない」


伊58「加賀さんも泳いでいかない? ちょうど空いてるよ」

加賀「いえ、遠慮しておくわ」

伊58「残念でち。加賀さんだけは、何回誘っても一緒に泳いでくれないんだー。水練の時も監督役だし」

瑞鶴「……もしかして加賀さん泳げn」

加賀「艦娘、すなわち軍艦。軍艦は鋼鉄のかたまり、それが水面に浮いていることこそが、まずはこの世の奇跡。もともと海上にあるべきものを、あえて水面下に泳がせることになんの意味があるというのでしょう。さらに言えば艦娘の水練とは、泳ぐことによって水中の状況をつぶさに感じ取るために行うもの。私たちが海に出た時、対潜――足元の守りは水雷戦隊を信頼するとともに、その子たちを対潜任務に集中させるべく、空の守りを固めるのが正規空母たる私の役目。そう、私が駆逐艦たちの水練を監督するのは、あくまで効率がいいというそれ以上の意味はないわ」

瑞鶴「…………」



瑞鶴「泳げないんd」

加賀「泳げるけれど」

瑞鶴「あ、はい」



☆中甘の三


加賀「瑞鶴。貴女、鳳翔さんのお店によく行っているそうね」

瑞鶴「うん! 最近はお昼も夜もあそこで食べてるわ」

加賀「…………」

瑞鶴「すごいおいしいの! よかったら加賀さんもいっしょに――」

加賀「やめたほうがいいわ」

瑞鶴「え?」

加賀「そのままお店に通っていると、恐ろしいことが起こります」

瑞鶴(……どういうこと?)


瑞鶴(加賀さんはああ言ってたけど……)

鳳翔「瑞鶴ちゃん、また来てくれたのね。うんとサービスしますからね」

瑞鶴「ありがとお母さん! 今日もおすすめ、お願いね!」

瑞鶴(お母さんはいつも優しいし)


鳳翔「今日のお昼は親子丼、きのこと野菜の天ぷら、あんこう鍋ですよー」

瑞鶴「いただきまーす! ――おいしー!!」

瑞鶴(お料理はものすごくおいしいし、しかもリーズナブル)


鳳翔「そうそう、きな粉と和三盆を使ってブラウニーを作ってみたの。味見してくれますか?」

瑞鶴「もちろん! ――これもおいしー!!」

瑞鶴(しかも、食後にはスイーツも出してくれる)


瑞鶴(こんな優しいところで、恐ろしいことなんて起こるわけが――)

バルジが胸じゃなくて腹に増設されるんだな……

丸々太った七面鳥に



☆体重計


瑞鶴「きゃあああああ!!!!」

加賀「だから言ったのに」



☆中甘の四


瑞鶴「このままじゃ高速が低速になっちゃう! どうしよう!!」

加賀「どうするも何も、原因ははっきりしてるじゃないの。食べる量を抑えなさい」

瑞鶴「絶対イヤ!! あんなおいしいのに」

加賀「じゃあお店行くの控えれば?」

瑞鶴「それもイヤ!! お母さん寂しがるじゃない!!」

加賀「なら、食べた分だけ消化するしかないわね」

瑞鶴「それしかないか……幸福な鎮守府生活のために運動するわ!!」

加賀「1人じゃ辛いだろうから、講師をつけましょう。駆逐艦のメンタルケアを一手に担う名旗艦」



加賀「神通先生よ」

神通「絞ります」

瑞鶴「怖っ!」


神通「護衛対象たる正規空母は、駆逐の子たちの模範になる生活をしていただかねば困ります」

瑞鶴「お、お手柔らかにお願いするわ……」

神通「短期間で結果を出すには、多少の無茶も覚悟してください」

加賀「まあ、仕事に支障が出ない程度に頑張って――」

神通「加賀さんもですよ」

加賀「えっ」

神通「最近、ケーキを食べまくっているそうですね。そろそろお腹が気になるころでは?」

加賀「」

神通「ちょうどいい機会です。お二人とも、私の朝の鍛錬に参加してください」


加賀「しまった……藪をつついて鬼を出してしまったわ」

瑞鶴「鬼? 神通の鍛錬ってそんな厳しいの?」

加賀「彼女は華の二水戦の旗艦、その実力は鎮守府一厳しい訓練に裏打ちされているの」

加賀「それでいて駆逐艦たちからは慕われているのだから、本当に大したものだわ」

瑞鶴「よっぽどうまく指導してるってことよね、ついていければ痩せられそう……」


神通「お二人、何かおっしゃいました?」

瑞鶴「な、なんでもないわ! これからよろしく頼むわね!」


神通「わかりました。では明日の〇三〇〇、運動場に集合してください」

瑞鶴「えー!? 夜中じゃないの!!」

神通「加賀さんは提督の代理、瑞鶴さんも午前午後と演習があるでしょう」

神通「仕事に支障の出ない時間だと、どうしても早朝になります。頑張ってください」

瑞鶴「ぐぬ、頼んでいる立場としては断れないわ」

加賀「私たちに気を遣わせちゃって悪いわね。あまり早すぎても貴女がきつかったら――」

神通「ああ、問題ありません。私は着任以来、その時間から鍛錬しておりますので」

瑞鶴「」

加賀「……神通、ちゃんと寝ている? 良ければ休みを増やすけれど」

神通「体調は管理しています。ご心配なく」


神通「では明日から、よろしくお願いします。おやすみなさい」

瑞鶴「おやすみー……あー、えらいことになったわ。神通の言う通りではあるんだけど」

加賀「私も、仮にも提督代理。艦娘だけでなく上層部との会見もあるし、あまり情けない姿はさらせないわね」

瑞鶴「そういえばケーキ食べてるっていうのは――」

加賀「――ごほん。いずれにせよ、運動は手遅れになる前にすべきだと思っていたし」

加賀「いい機会ね。1人より、貴女が居てくれたほうが心強いわ」

瑞鶴「! そ、そうね! 私もよ!」

加賀「一緒に頑張りましょう」

瑞鶴「うん!」


頑張って更新早くしていきます。またよろしくお願いします。


>>22
もうちょっとだけ続くんじゃ。

貴い



☆大甘の一


鳳翔「――前に、加賀ちゃんから『ちゃん付け』をやめてほしいと言われたことがあってね」

瑞鶴「え、そうなの? どうしてだろ」

鳳翔「瑞鶴ちゃんが着任するちょっと前だったかしら。たぶん、貴女の前では子供っぽく見られるのが嫌だったのね」

瑞鶴「あはは、加賀さんらしい――あれ? でも、今もちゃん付けのままよね」

鳳翔「ええ。それでしばらく『加賀さん』と呼んでいたのだけれど」

鳳翔「私は空母の子たち、みんなをちゃん付けで呼ぶから、加賀ちゃんだけ仲間外れみたいに感じられたんでしょう」

鳳翔「ある日、涙目でプルプル震えた加賀ちゃんから『戻してほしいです……』って言われたわ」

瑞鶴「なにそれかわいい」


―― バタン!!

加賀「それは! 内緒と! 言ったじゃないですか!」

瑞鶴「地獄耳!」

加賀「ああ、恥ずかしい……瑞鶴にだけは知られたくなかったのに」

鳳翔「いいじゃない、可愛いと思うわ」

瑞鶴「私もー。全然、その、可愛いと思いますよ」

加賀「当事者はそう思ってないのだけれど」

瑞鶴(加賀さんをこんな扱いできるの、お母さんだけだろうな……)


鳳翔「加賀ちゃん、何かあったのかしら」

加賀「……まあ、いいのですが」

加賀「包丁を研ぎ終わりましたので、お届けにあがりました」

鳳翔「ああ、ありがとう。ちょうどいいからお昼を食べていってね」

加賀「ありがとうございます、いただきます」

瑞鶴「いつも思ってたけど綺麗に研いであるよねー。長く使ってるの?」

鳳翔「ええ。このお店を開くときに、加賀ちゃんが贈ってくれたものです」


瑞鶴「加賀さんが選んだんだ。大切に使ってるのね」

鳳翔「そうね。命の次くらいに大切よ」

瑞鶴「なにそれ重い」

鳳翔「まあ私の命ではありませんけど」

瑞鶴「ホラーっぽくなった!じゃあ1番はなんなの?」

鳳翔「もちろん」

鳳翔「貴女たちの命に決まっているわ」

加賀「////」

瑞鶴「////」


加賀「……お母さんは、私が守りますから」

瑞鶴「わ、私も! 今度は絶対一人にしないから!」

鳳翔「そうですか、ふふっ。楽しみにしていますね」



☆大甘の二


瑞鶴「おはようございます」

加賀「おはよう。今日も演習、頑張って頂戴」

瑞鶴「……加賀さん」

加賀「なにかしら」

瑞鶴「ひとつ、聞きたいことがあるんだけど」

加賀「あら奇遇ね。私も、貴女に聞かれたいことがあったのよ」


瑞鶴「なんで私の紅白袴着てるんですか!! 間違ったわけじゃないですよね!?」

加賀「まあ、話せば長くなるんだけど――」


加賀「袴が乾かなかったのよ」

瑞鶴「短いじゃん」


朧「理由については、朧からご説明しましょう」

瑞鶴「おお、なんか久しぶりね朧。聞こうじゃないの」

朧「今週の洗濯当番は、朧と秋雲だったのですが」

瑞鶴「洗濯? 朧がやってくれてるの?」

加賀「いつもは鳳翔さんがやってくれてるんだけれど、みんな交代で手伝うようにしているわ」

朧「最近は主力の皆さんが出払ってますので、洗濯物も少なくて楽です」


朧「――ただ最近、加賀さんと瑞鶴さんの袴だけ妙に多く洗ってる気がするんですよね、たぶん」

瑞鶴(ぎくっ)


瑞鶴(まずい……太ったから突然運動し始めたなんて知られるわけには)

朧「まるで艤装をつけたまま走り込みをしていたような土ぼこり」

瑞鶴「あ、あのね朧」

朧「もしかしてお二人は――」

加賀「そう。よくわかったわね朧」


加賀「瑞鶴は改造を控えて特訓中。私もいい機会だから、基礎から鍛え直しているのよ」

朧「や、やっぱり! さすがですお二人とも!!」

瑞鶴「え、あ、うん。そうなのよ」

朧「頑張ってくださいね瑞鶴さん! 朧も陰ながら応援してますから!」

瑞鶴「う、うん。別に表立って応援してくれていいんだけど」


瑞鶴「……ふー。ごまかしてくれてありがと、加賀さん」

加賀「いいえ。貴女だけじゃなく私も、鍛錬している理由をでっち上げ……考えないといけなかったしね」

瑞鶴「それにしてもびっくりしたわ。加賀さんといえば青ってイメージだったけど、紅白も似合うわね!」

加賀「そう? ありがとう」

加賀「身長はそこまで変わりないから、着るのは問題なかったけれど――」

加賀「まあ、驚かせて悪かったわね。そろそろ乾いたでしょうし、着替えに行ってくるわ」


瑞鶴「――あれ? 袴の帯、替えたのね加賀さん。私のより細くなってるわ」

加賀「ええ、ちょっと持っていたから。返す時はちゃんと戻しておくわ」

瑞鶴「あ、はい。でも、赤い帯なんて持ってたんですね? 袴と同じ青だけだと思ってたわ」

加賀「――確かに、私は大規模改造を重ねても貴女と同じ色にはならないわね」

加賀「帯だけでも貴女とおそろい……じゃ、駄目かしら」

瑞鶴「いいいきなり何言ってるんですか」

加賀「ふふっ」



☆大甘の三


秋雲「そうそう、そのままそのまま……その体勢キープでお願いしまっす!!」

加賀「約束を忘れないでね。10分につき間宮チケット1枚よ」

瑞鶴「……何してんですか二人とも」

加賀「見ればわかるでしょう。漫画のモデルよ」

秋雲「いやー、弓なんて引けないから構図わかんなくてさ。加賀さんに時給付きでお願いしてるってワケ」

瑞鶴「それはわかるけど、なんで加賀さんが弓構えながらY字バランスしてるのよ」

加賀「主人公は『悲しい過去を背負いつつも、周囲にそれを隠して気丈に戦い続ける心優しき正規空母』らしいから」フンスッ

瑞鶴「どんなストーリーなのそれ……完成したら見せて、気になるから」


秋雲「――うしっ、一旦休憩入れますか。おつかれさんですー」

瑞鶴「秋雲、先月くらいまで忙しそうに漫画描いてたでしょ。また描いてんの?」

秋雲「ちっち。作家ってもんは飽きられないよう、常に新作を世に送り出さなくちゃいけないんだなーこれが」

瑞鶴「いやアナタ、作家の前に艦娘でしょうが」

加賀「結構人気らしいわよ。綿密な取材で、本物としか思えないほどリアルだって」

秋雲「艦娘の描写だけは他の追随を許さない、それが当サークルの売りのひとつなんだよねぇ」

瑞鶴「そりゃモノホンだものね。……サークルってなに?」


秋雲「――おっとっと、艦隊が戻ってきたさー。おっつかれちゃん♪」

瑞鶴「あ、秘書艦だったのね」

伊58「艦隊が戻ったよ……って、帰投のあいさつはゴーヤのセリフでち」

加賀「おかえりなさい。補給がすんだら今日は上がって頂戴」

瑞鶴「あれ、ゴーヤ。可愛いどてら着てるじゃない」

伊58「鳳翔さんが作ってくれたんだー、あったかいよ! 水着って言っても艤装だから大丈夫なんだけどね」

秋雲「真冬でもその恰好で出撃する潜水艦隊には頭が下がるよ、見てるほうが寒くなってくる」


加賀「秋雲としては、今は貴重なスク水の子が同じ職場にいてくれて助かるんじゃないかしら」

伊58「別に秋雲の素材のために着てるわけじゃないでち。写真1枚で大鯨チケット1枚ね」

秋雲「うへ、高いなぁ……って、仲間を素材としか見てないみたいに言うのやめてくんない?」


加賀「今日は私も上がらせてもらおうかしら。さっきのY字バランスのせいで少し疲れたわ」

瑞鶴「まだ仕事中だったんだ……そんなことしててよかったの?」

秋雲「加賀さん曰く」

加賀「みんな優秀な子たちですから」

秋雲「――って、ある程度放任したほうが、逆にいい結果出るんだってさ。旗艦やってみればわかるよ」

瑞鶴「ちょっと、プレッシャーかけないでよ!」

瑞鶴(加賀さんに信頼してもらえるのはすごいうれしいけど……)


伊58「あ、そうだ加賀さん。頼まれてたお砂糖は――」

加賀「ありがとう、厨房に置いておいて。これお駄賃ね」

瑞鶴「……?」



☆大甘の四


瑞鶴「痩せたー!!」

加賀「おめでとう」

神通「おつかれさまでした、お二人とも。あとは自主練で筋力を維持していってくださいね」

瑞鶴「ありがとう教官!! これでようやく――」




瑞鶴「改造できる……」

加賀「改の迷彩服、ギリギリだったものね」

瑞鶴「わー聞こえない聞こえない!!」


神通「よかったですね、加賀さん。これで苦労が報われましたね」

瑞鶴「え?」

加賀「……神通、知ってたのね」

神通「普段からしっかりなさっている加賀さんが、突然不摂生になりだしたら流石に心配しますよ」

神通「たまたま厨房に行ったとき見てしまったんです、ごめんなさい」

瑞鶴「なになに、何の話?」

神通「いえ――それでは、私はこれで失礼いたします」


加賀「……ふう」


瑞鶴「加賀さん?」

加賀「瑞鶴、いよいよ改造ね。こんなに早く改になったのは、私も見たことがなかったわ」

加賀「――本当によく頑張ったわね」

瑞鶴「あ、ありがとう。一生懸命やってただけなんだけど……えへへ」

加賀「主力艦隊もそろそろ帰ってくるし、貴女もその一員としてさらに励んでもらいます」

瑞鶴「はい! 早く加賀さんに追いつけるよう頑張るわ!」


加賀「――それで、ね。私、お祝いにケーキを焼いたのだけれど」

瑞鶴「お祝い……私に?」


瑞鶴「加賀さん、もしかしてケーキ食べまくってたのって」

加賀「貴女に内緒で驚かせようと思って、でも改造の日がわからなくて……とりあえず毎日作っていたのだけれど」

加賀「生ものだから置いておけないし、他の子にあげてたら貴女にあげないのは不自然だし、ましてや貴重な甘味を処分なんてできないし」

加賀「毎日自分でケーキを焼いては食べていたら――」


瑞鶴「……太っちゃったんだ」

加賀「……まあね」




瑞鶴「加賀さん太ったの私のせいじゃん!!」

加賀「いや、貴女は何も悪くないのよ……」


瑞鶴「そういえば、神通さんはどうして私のためってわかったのかな?」

加賀「おそらく、これを見たんだと思うわ」

瑞鶴「チョコのプレート……『瑞鶴 改造おめでとう』」


瑞鶴「……加賀さぁん……」

加賀「どうして泣くの。ふふっ」


加賀「おめでとう瑞鶴。これからも期待しているわ」

瑞鶴「ありがとう加賀さん!! いただきまーす!!」


一区切りのお話。次は主力の面々を追加していきたいです。
またよろしくお願いします。

瑞加賀結婚してくれ?


ここからさらに超とか極とかに甘くなって行くのか……ゴクリ

瑞鶴にべた甘な感じしゅき



☆素甘


加賀「――瑞鶴が着任、ですか?」

『うん。神戸の工廠から連絡があってね』

『正規空母が君しかいないのも負担が大きいだろうし、ちょうどいいからここに着任してもらうことになった』

『あいにく私は留守だが、君なら問題ないだろう』

加賀「あまり買い被られても困るのだけれど」

『いろいろと苦労をかけるな。主力が戻るまで、鳳翔と協力してうまくやってくれ』

加賀「ご命令とあらば従いますが。それで、着任はいつですか」

『今日の夕方だ』

加賀「は?」


加賀「まったく急すぎる。帰ってきたら食べ放題を要求しましょう」

加賀「しかし困りましたね。後輩の面倒を見るのは初めての経験ですし……」

加賀「今は正規空母が私しかいないのだから、私が指導するのは道理ではありますが」

加賀「――そうだ。他の鎮守府の加賀が、瑞鶴にどう接しているか見てみましょう」

加賀「うまくやっているところがあれば参考になるかも」


瑞鶴『ちょっと加賀さん!! 私のプリン食べたでしょ!!』

加賀『あら、いたの五航戦。ちょうどお腹が空いてたからもらったわ』

瑞鶴『後で翔鶴姉と食べようと思って2つ買ってきたのに、どっちも食べちゃうなんて!!』

加賀『誰のものかなんてわからないわ。名前でも書いておきなさい』

瑞鶴『ふん、お腹が空いたからとりあえず食べるなんて、まるで本能で動く動物よね!!』

加賀『頭に来ました』

瑞鶴『何よやろうっての!? 表出なさい!!』


加賀「…………」



加賀「他の私はなんでああなのか!」

鳳翔「今日は随分と荒れてますねぇ」


加賀「どうしてあそこまで仲が悪いのでしょう、同じ艦娘とは思えません」

鳳翔「他のところは置いておいて――瑞鶴ちゃんのこと、貴女自身はどう思っているのですか?」

加賀「……すごい子だと思います」

加賀「私たちの後を継いで機動部隊の中核を担い、文字通り矢尽き刀折れるまで戦ったこと――」

加賀「誇りに思います。ちょっと羨ましいくらいに」

鳳翔「そう。それをしっかり、瑞鶴ちゃんに伝えてあげればいいんじゃないかしら」

加賀「うまくできればいいのですが。ただ他のところの私を見ていると、何気ない一言があの子を傷つけてしまいそうで」


鳳翔「僭越ながら、ひとつ助言を差し上げてもよろしいですか」

加賀「ぜひ」

鳳翔「たとえ発奮させることが目的であっても、相手を貶めるようなことは決して言わないことです」

鳳翔「言葉は発した人だけのものではなく、受け取った人のものでもあるということですね」

加賀「……肝に命じます」

鳳翔「加賀ちゃん。貴女が素直でいい子なこと、私はちゃんと知ってますからね」

鳳翔「大丈夫よ。貴女の思い、きっとあの子にも伝わるわ」

加賀「ありがとうございます。頑張ってみます」


加賀(鳳翔さんの言う通り、問題など何もなかった)

加賀(私たちの誇りを継いだ、あの子を私がどう思っているか――)

加賀(答えなどもう、私の中に持っていたのでした)



「失礼します! 着任の挨拶に伺いました!」

そう、私はあの子に会えることを――


加賀「――どうぞ」

心待ちにしていたのだ。

来てたか、乙
まだ続くよね?



☆淡甘の一


瑞鶴(そわそわ)

加賀「少し落ち着きなさい、瑞鶴」

瑞鶴「だって今日、翔鶴姉が帰ってくるんだよ! 出迎えてあげないと!」

加賀「気持ちはわかるけれど。貴女がしっかりしてないと、お姉さんも心配でしょう」


―― 艦隊が帰投しました ――

瑞鶴「きたきた! ――翔鶴姉! おかえりなさい!」

翔鶴「……瑞鶴」


翔鶴「うわぁあああああん!! 会いたかった瑞鶴ぅううううう!!!!」

瑞鶴「」


翔鶴「瑞鶴、瑞鶴瑞鶴! 久しぶりね、会いたかったわ」スリスリ

瑞鶴「ちょ、みんな見てるから! 頬ずりはやめて!」

翔鶴「まさか出撃中に妹が着任するなんて、提督もお人が悪すぎます……」

加賀「瑞鶴に飛びつく前に報告しなさい――まったく、妹のほうがよほどしっかりしてるわ」

翔鶴「加賀先輩、一か月近く我慢してたんです! 瑞鶴恋しや、ほーやれほー」

加賀「後で話せばいいでしょう、いいからとっとと執務室へ来なさい」

翔鶴「ああまだ話したいことが! お姉ちゃんを助けて瑞鶴ぅううう――」ズルズル

瑞鶴「…………」


瑞鶴「翔鶴姉、あんな性格だったっけ?」


「――君が瑞鶴だね」

瑞鶴「提督さん?」

提督「ああ。初めまして、しばらく会えなくてすまなかったね」

瑞鶴「いえ、これからよろしくお願いします」

提督「こちらこそ。優秀な子が来てくれて頼もしいよ」

瑞鶴「え、そんな優秀だなんて」

提督「加賀から、もう改造が済んだと聞いた。今までで一番早いと褒めていたよ」

瑞鶴「か、加賀さんが? そう、なんだ……」


提督「それからもう一人、新しい子を連れてきたんだ」

初月「秋月型駆逐艦、その四番艦、初月だ。よろしく」

瑞鶴「初月! また会えるなんて、とっても嬉しいわ!」

初月「僕もだよ、瑞鶴。これからお世話になるね」

提督「まだ不慣れなこともあるだろうけど、仲良くやってほしい。できる限り協力するよ」

瑞鶴「ありがとうございます! 初月、あとで鎮守府を案内するから。駆逐寮の前で待ち合わせね」

初月「うん、お願いするよ」

提督「じゃあ、明日からよろしくね。私は執務室に戻るから」

瑞鶴「はい、おつかれさまです!」


瑞鶴(……あれ? 提督さん指輪してる)

瑞鶴(ケッコンカッコカリか、誰だろう)


>>74
続きます……が、遅れてごめんなさい。



☆淡甘の二


瑞鶴「――これでだいたい見終わったわね。一度で覚えられないと思うけど」

初月「うん、ずいぶん広いんだな。早く覚えないと大変そうだ」

瑞鶴「最後に、この鎮守府で一番大事な施設を紹介するわ!」

初月「最後? 工廠やドックは一通り見てきたが……」

瑞鶴「ここよ!」

初月「ここ、って」

初月「……鳳翔さんのお店じゃないか」


瑞鶴「間違いなく、当鎮守府の最重要防衛目標よ。みんなの士気を一手に引き受けてるからね」

初月「軍事施設よりも上の扱いなのか、瑞鶴」

瑞鶴「とにかく、すごいおいしいんだよ。南方からずっと航行しっぱなしで、お腹もすいたでしょ」

初月「いや、確かにお腹はすいているけど、僕だけ外で食べるのは……」

瑞鶴「遠慮しないの、今日は私がおごってあげるから!」ガラガラ


加賀「いらっしゃいませ」

瑞鶴「」


瑞鶴「なんで加賀さんがお店にいるの、お母さんは?」

加賀「鳳翔さんは……えー、外出中よ」

瑞鶴(和服に割烹着の加賀さんも新妻って感じでイイ)ボソッ

加賀「その間は私がお店を切り盛りしているわ。今までも何度か経験はあるから」


加賀「……今何か言った?」

瑞鶴「い、言ってない」

加賀「……まあ、いいけれど」

初月「?」


加賀「ご飯に来たんでしょう、とりあえず座って頂戴」

瑞鶴「あ、それじゃ初月のリクエストを聞いてあげて」

加賀「そうね。初月、何か食べたいものはあるかしら」

初月「な、なんだって!? 食べたいものを頼んでいいのか!?」

瑞鶴「不憫な子……いいんだよ、お刺身でもステーキでも」

加賀「そう。でも、あいにく今日は野菜カレーしかないの」

瑞鶴「ならなぜ聞いた」

初月「食べられるだけ幸せなことだ。ありがたく頂こう」

瑞鶴「初月、貴女苦労してるのねぇ」


加賀「遠慮なく召し上がれ」

初月「ありがとう。ではいただきます――」

初月「」モグモグ

初月「」モグ……


初月「………………」


瑞鶴「初月?」

初月「……決めたよ。僕は、加賀さんの子になる……」

瑞鶴「泣くほどおいしかったの……?」

加賀「あら。私、まだ相手がいないのだけれど」

瑞鶴「突っ込む所そこなんですか」


更新空いてしまってすみません、もう少し続きます。
次の甘さを何にするかで結構悩んだのは秘密


瑞雲祭り落ちました(憤怒

おつ

乙でち!



☆淡甘の三


翔鶴「それでね、その時私が――もうっ、瑞鶴。聞いてる?」

瑞鶴「うん、聞いてる聞いてる。加賀さんが格好良かったって話ね」

翔鶴「やっぱり聞いてないじゃない、お姉ちゃんいじけちゃうわよ」

初月「翔鶴は本当に瑞鶴が好きなのだな」

秋雲「まー、久しぶりに会った妹だしねぇ。五航戦の仲間として感慨深いよ」

初月「五航戦か。僕が護衛に入ったのは一航戦の時だったが――」

朧「その話、翔鶴さんの前でしないほうがいいよ。トラウマ入っちゃうから、たぶん」

初月「う、うん。そうだな」


加賀「――あら初月、ちょうどいいところに。手が空いてたらお料理を手伝って頂戴」

初月「ああ、もちろんだ母上」

瑞鶴「ファッ!?」


加賀「初月、野菜の皮をむいてもらえるかしら」

初月「了解だ、母上」

加賀「終わったらお肉のアクを取っておいてね」

初月「任せてくれ、母上」

瑞鶴「ぶふっ……子になるって本気だったの、初月」

初月「何事もまず形からだ」

朧「だから今日は、わざわざサイドテールにしてたんだ」

秋雲「2人ともあんまり感情出さないから、真剣な表情なのもまた笑えるねぃ」


鳳翔「加賀ちゃんも初月ちゃんも、手伝ってくれてとっても助かるわ」

翔鶴「娘というか、加賀先輩に妹さんが居たら、初月ちゃんみたいな感じでしょうか」

加賀「そうかもしれないけど。一人っ子だとよくわからないわ」

鳳翔「あら、そんなことはありませんよ。我が国の航空母艦は、みんな私の娘のようなものですから」

秋雲「じゃあ鳳翔さんから見れば、加賀さんも翔鶴も瑞鶴も姉妹艦ってことだね」

朧「機動部隊の創設から最期までを見守った母の言葉、重みが違います」

瑞鶴「……そう言われてみれば、そうか」

瑞鶴「…………」

加賀「瑞鶴?」



瑞鶴「――か、加賀姉? えへへ」

加賀「…………」


加賀「瑞鶴、私の肉じゃが食べていいわよ」

瑞鶴「え、あ、ありがとう」

加賀「ほら、遠慮しないでデザートも食べなさい」

翔鶴(あの加賀先輩が自分の食事を!! 明日は槍が降るわ!!)

瑞鶴「でも、加賀さんの分が足りなくなっちゃうよ」

加賀「平気よ。――翔鶴、確か肉じゃが嫌いだったわよね。半分食べてあげるわ」

翔鶴「え、いやあの、私お母さんの肉じゃが大好きで――」

加賀「槍を降らせるのに体力をつけないとね」ヒョイッ

翔鶴「うわーん後輩いびりだー!!」

加賀「余計な事を言うからよ」

鳳翔「まったく……ほら、まだありますから」



☆淡甘の四


加賀「――ふう」

瑞鶴「あれ、加賀さん? どうしたの、段ボールなんか運んで」

加賀「ちょっと倉庫の整理をね。なかなか片付けの時間がなくて」

瑞鶴「そうだったんですか、言ってくれれば手伝ったのに」

加賀「貴女は演習終わったばかりでしょ。休みなさい」

瑞鶴「あ、ありがとうございます。でも大丈夫よ、手伝います」

加賀「そう? それじゃ捨てるものを運ぶから、廊下に出してもらえる?」

瑞鶴「わかりました」


加賀「――ちょっと収集業者に連絡してくるから、ここお願いね」

瑞鶴「あ、はーい」

瑞鶴「よしっ、今のうちに全部出して、加賀さんを驚かせてあげるわ!」

瑞鶴「――ん、あれ? このケースは」

瑞鶴(バイオリンだ。しかもちゃんと手入れしてある)

瑞鶴(…………)ウズウズ


加賀「瑞鶴、トラックが来るから――瑞鶴?」

『~~~~♪♪』

加賀「……瑞鶴」

瑞鶴「あ、加賀さん! ごめんなさい、ちょっと弾いてみたくなって」

加賀「……いえ、いいのよ。瑞鶴、バイオリン弾けたのね」

瑞鶴「うん、なぜだか手が覚えてるのよね。練習したわけじゃないんだけど」

加賀「なんという曲だったかしら」

瑞鶴「エドワード・エルガー、威風堂々」

加賀「そう。行進曲も、ソロで聴くと趣深いわね」


加賀「――それ、貴女にあげるわ」

瑞鶴「え、いいんですか? 大切なものじゃ」

加賀「今となっては弾く人もいないし。楽器も使われたほうが幸せでしょう」

瑞鶴「そうですか、それじゃ……ありがとうございます」

加賀「いいえ。――あとは業者さんが運んでくれるから。ありがとう、また明日ね」

瑞鶴「あ、はい。おつかれさまでした」


瑞鶴(……あれ? 誰も弾く人がいないって)

瑞鶴(それじゃ、このバイオリンは誰のだったんだろう)


遅れてごめんなさい。もう少しだけ続きます、また近日。

乙舞ってる

イイネ!


今週に更新します、放置して本当申し訳ありません……


あとアイスショー誰か一緒に行きませんか



☆甘苦の一


加賀「――演習終了です。2人とも戻って頂戴」

瑞鶴「了解。翔鶴姉、何か直すところあった?」

翔鶴「大丈夫よ、射形もきれいだったわ――それにしても」

翔鶴「ふふっ。まだ日が浅いのにそこまで上手だと、妹に嫉妬しちゃいそう」

瑞鶴「そ、そんなことないよ。私なんてまだまだ」

加賀「残念ながらそうも言ってられないわ。南方海域に、敵機動部隊が増派されているの」

加賀「出撃はもう少し先だけれど、正規空母2隻編成の予定よ。私たち3人で回すことになるわね」

瑞鶴「激戦区ね。でも、精一杯頑張るわ!」


加賀「随伴は……秋雲に朧、初月あたりがいいかしらね」

翔鶴「そうですね。瑞鶴とも気の置けない仲になったみたいですし」

加賀「ついでに、高角砲の改修も提督に具申しておくわ」

翔鶴「敵空母の対策は、いくらしてもしすぎることはありませんからね」

翔鶴「私も随伴艦の子たちも、訓練時間を増やすことにします」

加賀「……大丈夫? 翔鶴」

翔鶴「ええ、もうあんな事にはさせません。絶対に」

加賀「…………」


瑞鶴「翔鶴姉、何のこと?」

翔鶴「あら、聞いてない? 前にね、赤城先輩が――」

加賀「翔鶴」

翔鶴「あ……な、何でもないわ。すみません、先輩」

加賀「いえ。――じゃあ私は、執務があるから」

瑞鶴(……赤城さん?)



☆甘苦の二


加賀「…………」キョロキョロ

瑞鶴「――Zzz」

―― ガチャ パタン


瑞鶴「…………」

瑞鶴(まただ。また、加賀さん夜に抜け出してどこか行ってる」

瑞鶴(――よし。今日こそ、どこに行くのか突き止めるわ)


加賀「…………」キョロキョロ

瑞鶴(あんなに人目を気にしてる加賀さん、初めて見るわ)

加賀「…………」ガラガラ


瑞鶴(……敷地を出て行く)

瑞鶴(加賀さん、鎮守府の外まで何の用事なの……?)

瑞鶴(こうなったら、行けるところまで行ってみるか)


瑞鶴「抜き足、差し足、忍び足……っと」コソコソ

神通「――こんな夜更けに何をなさっているんです?」

瑞鶴「ぎゃあああああ!! じっ、神通教官!!」

神通「驚きすぎでは? あと、敬礼は結構ですよ」

瑞鶴「突然気配もなく後ろから声かけられたら、そりゃ驚くわよ」

神通「それは失礼。クセになってまして、音殺して動くの」

瑞鶴「なんで艦娘が暗殺の技術を……」

神通「何か言いましたか、瑞鶴さん」

瑞鶴「いえ言ってません!」


神通「ところであれは――ああ、加賀さんですね」

瑞鶴「そう、何回か夜に抜け出してるの。聞いてもはぐらかされるから気になっちゃって」

神通「あまり感心しませんね、瑞鶴さん。その人が隠したいことに深入りするのは」

神通「乙女には秘密の一つや二つ、あってもいいものですよ」

瑞鶴(……教官から乙女なんて聞くとちょっと違和感が)


神通「何か思いましたか、瑞鶴さん」

瑞鶴「いえ思ってません! おやすみなさい教官!」

神通「はい、おやすみなさい。ゆっくり休んでくださいね」


神通「…………」

神通「――瑞鶴さんは帰られましたよ」

鳳翔「あら、気付かれてましたか。流石ですね」


神通「こんな夜更けに如何されました」

鳳翔「私は少し寝付けなかったので、散歩を……神通さんも?」

神通「いえ、日課の夜の鍛錬です。終わったらしっかり休みますので、ご心配なく」

鳳翔「……もう〇一三〇ですよ、ちゃんと睡眠はとっているのですか」

神通「鍛錬を欠かしてはならない――と、教えてくださったのは鳳翔教官では?」

鳳翔「夜戦を教えた覚えはありませんよ」


神通「ところで――隠し通すのもそろそろ限界かと」

鳳翔「別に隠しているわけではないと思いますが……」

神通「まあ、そうですね。私にはバレているわけですし」

鳳翔「加賀ちゃんなら大丈夫と思ってましたが。最近、根を詰めすぎてるように見えますね」

神通「ええ、私も気にしておきます。鳳翔さんもお願いしますね」

鳳翔「了解しました」



☆甘苦の三


瑞鶴「加賀さん、午後の演習の準備できましたよ」

加賀「ふぁ――ごくろうさま」

瑞鶴「あれ? 加賀さんがあくびなんて珍しいわね、寝不足?」

加賀「いえ、何でもないわ。最近、少し眠りが浅くてね」

瑞鶴「…………」

瑞鶴(加賀さん、やっぱり昨日の……)


瑞鶴「ところで、加賀さんにもらった、このバイオリンなんだけど」

加賀「ああ、この間の……どうかした?」

瑞鶴「裏に、小さく名前が彫ってあったわ。『赤城』」

加賀「……そう」

瑞鶴「これ、赤城さんのだったのね。勝手に使っちゃまずいんじゃない?」

加賀「大丈夫よ。私に、好きに使っていいと言われているもの」

瑞鶴「でも、元の持ち主だったんでしょ? すごく丁寧に使ってたみたいだし」

加賀「……そうね」

瑞鶴「どんな人なの? 私も赤城さんに弾いてもらいたいんですけど」


加賀「……赤城さんはね」

加賀「この鎮守府の先輩であり、同僚であり、戦友であり」

加賀「優しくて気配りもできて、何より強い人だった」

加賀「――そうね。私の憧れの人だったわ」

瑞鶴「!」

加賀「昔、いろいろあって――赤城さん、今は現役ではないのよ」

加賀「このこと、あまり話さないようにしてるの。ごめんなさいね」

瑞鶴「い、いいえ! 私こそごめんなさい」


加賀「もうすぐ演習でしょう。私もそろそろ用意しないと」

瑞鶴「あ、はい。先に行ってますね」


瑞鶴「…………」

瑞鶴(もしかしたら、まずいこと聞いちゃったかな)

瑞鶴(でも――)


加賀『――そうね。私の憧れの人だったわ』


瑞鶴「あんな顔の加賀さん、見たことなかったな」


復活した……?
近く更新します

まってる



☆甘苦の四


瑞鶴(今まで笑顔もたくさん見てきたのに……)

瑞鶴(赤城さんのことを話す、あの悲しげな微笑)

瑞鶴(なぜだか、加賀さんの顔が、頭から離れない――)


――かく、瑞鶴!!

秋雲「瑞鶴危ない!! 前、前!!」

瑞鶴「え? あ、きゃあ!!」

翔鶴「いたっ! ず、瑞鶴!?」


朧「お二人とも、大丈夫ですか?」

瑞鶴「う……うん。ごめんなさい、翔鶴姉」

翔鶴「瑞鶴、思わずお姉ちゃんに突撃したくなっちゃう気持ちはわかるけど、演習中はちょっと――」

加賀「なに言ってるの。一歩間違えば大事故なのよ」

神通「ベタ凪の航行中に衝突とは、珍しい光景ですね……」

伊58「瑞鶴、演習中にボーっとしてちゃダメでち!」

翔鶴「なっ、ゴーヤさん! 姉を慕う妹の気持ちを無下にモガモガ」

秋雲「はいはいー、加賀さんが怒る前にそこまでね」


提督「――加賀、聞こえるか!!」

加賀「聞こえます。慌ててどうしました?」

提督「救難信号を受けたんだ。別の鎮守府の遠征艦隊が奇襲されたと!」

加賀「! ……油槽船護衛の遠征ルートですね。私たちが一番近いようです」

提督「敵空母の報告はないが、陣容は不明だ。いけるか?」

加賀「全員燃料を確認なさい――時間の余裕はありませんね、すぐに出ましょう」

提督「そうだな。旗艦を加賀、随伴は瑞鶴、神通、朧、秋雲だ」


翔鶴「なっ、なぜ残らなくてはいけないのですか!?」

提督「先発はあくまで時間稼ぎなんだ。君には後詰めの指揮を執ってもらう」

翔鶴「でも……」

提督「それに、正規空母の艦載機の半分は演習用装備のままだ。君はすぐに換装作業に入れ」

翔鶴「……わかりました。瑞鶴、気を付けて。お姉ちゃんすぐ行くからね」

瑞鶴「う、うん」

提督「ゴーヤもすまないな、高速艦で固めたいから。準備次第、潜水艦隊で出撃してくれ」

伊58「りょーかい。すぐ戻るでち」


提督「すぐ増援の準備はする。頼んだぞ加賀」

加賀「了解」

提督「退避の時間を稼ぐだけでいい、目的は敵の撃滅では――」

加賀「承知しております。……あの時とは立場が逆ですね」

提督「その通りだ――ちゃんと全員無事でいてくれ、また同じように怒られたくない」

加賀「ふふ、それは怖いですね……ご心配なく、無理はしませんから」

瑞鶴「…………」


加賀「――瑞鶴、一緒に前線に出るのは初めてね」

瑞鶴「はっ、はい!」

加賀「慌ただしい出撃になったけど、貴女なら大丈夫。普段通りやるのよ」

瑞鶴「でも提督さんの言う通り、私たちの艦載機の半分は演習用のままで」

加賀「その通りよ。だからしっかり連携しないとだめ」


加賀「貴女の頑張りは私が一番よく知ってる。自信をもってやりなさい」

瑞鶴「……はい」

お 再開か






時間を惜しんで出撃したのが功を奏して、救援は間に合った。

装備を整える時間はなかったけれど、敵空母の位置が判明していたのも運がよかった。
制空権を獲れば追撃を気にしなくて済む。

航空隊で敵を牽制して、タンカーを先に離脱させる。その後は、護衛をしていた遠征の水雷戦隊。


「――神通は観測機の情報を艦隊に送って、退避を援護して」

「朧、秋雲はそのまま対潜警戒に集中。敵艦の相手は私と瑞鶴に任せなさい――」


加賀さんは強い。

今だって航空隊に指示を送りながら、全艦隊の位置まで気を配っている。
掛け値なしに優秀だ。欠点などないように見える。


でも私は、強いだけではない加賀さんも知っているのだ。

そうだ。なぜ、加賀さんの寂しそうな笑顔が、頭から離れなかったのか。


――頼ってほしかったからだ。


何か悩み事があるなら、話してほしい。私も貴女の力になりたい。

我ながら、思い上がりも甚だしくて笑ってしまう。
歴戦の正規空母に対して、たかだか建造されて数か月の新参者に頼ってほしいなどと。


それでも――加賀さんが苦しんでいるなら、分かち合いたい。支えになりたい。

そう思っていたのに。


気付いた時には体が動いていた。

艤装が損傷して遅れ始めていた駆逐艦。
その背中に、敵が砲門を向けるのが見えたのだ。
私は思い切り体を捻って方向転換し、その子を突き飛ばして――


「がっ――ガボッ」


腰部艤装に直撃した砲弾は、簡単に私の体を吹き飛ばし、無様にも顔面から海に突っ込ませた。
すぐ体勢を整えようとする、しかし出力が上がらない。機関部が損傷したのだから当然だけど。

そこへ、狙い澄ましたかのように敵の爆撃隊が急降下してきた。
いや実際に狙っていたのだろう、今度は脚部の艤装を的確に破壊した。敵ながら天晴れな腕ね。


「――瑞鶴っ!?」


かろうじて顔を上げると、敵を吹き飛ばした加賀さんが向かってくる姿が見えた。

応えたかったけど無理だった。
完全に浮力を失った私の身体は、ごぼごぼと耳障りな音を立てて海に引きずり込まれてゆく。


応急修理女神が発動した艦娘の話を聞いたことがある。


例え轟沈の心配がないとしても、もう二度とあんな体験は御免だという。

泳ぐとか、もがくとか、そんな自分の意志とは関係なく、身体が動かなくなるんだって。

きっと軍艦の身で一度沈んだ私たちは、海の中の恐怖を、魂が覚えているんだって。


本当に怖い体験だったと思う。

きっと本当に怖いのは、沈むことそれ自体ではなく、また海の底で1人になることなんだろう。

人の身を得た私たちは、再びみんなと会えた喜びを知っている。
その温かさをもう一度手放して、また孤独に戻ること。独りぼっちになること。

そう、ひとりで、海の底は――冷たくて、さみしい。



『――瑞鶴!!』


最期の、こんな時に聴こえるのも、やっぱり加賀さんの声。
声の聴こえるほうへ、私は必死で手を差し出して……

そうだ――わたしは――ひとりじゃ――





「ぷはーっ! ――まったく、2人ぶん引っ張り上げる身になるでち!! 早く支えて、水吐かせて!!」

「げほっげほっ……瑞鶴! 瑞鶴しっかりして!」

「加賀さんもしっかりするんだよ、自分から艤装外すなんて無茶して!!」

「秋雲、色々言うのは後。一か所に集まってるのは危険……たぶん」

「すぐ煙幕を焚いて! 二人は曳航の準備をしてください――ゴーヤさん、私とお付き合い願います」

「できるだけ長く足止めするでち、神通。朧、秋雲! 加賀さんには言いたいことがたくさんあるから、しっかり――」



「――瑞鶴、――!!」

「……か……が、さ」


なんだ……加賀さん、泳げたんじゃない。

薄れていく意識の中で、なぜかそんなことを思った。


スレ立てから1年とは信じられないですね、書くスピードの遅さに……
ほとんど書き終わってるので今週投下します。


>>122
ありがとうございます。

乙乙
待ってるで

今週投下しますといって投下した人は
ほぼいない模様

鯖の長期クラッシュで去った作者も多い中帰ってきただけでも僥倖






瑞鶴「……ん……?」

「――あら、目が覚めましたか。良かった」

「何があったか覚えてます? 加賀さんが艤装を外して海に飛び込んで――」

「2人してゴーヤさんに引っ張り上げてもらったんですって、ふふっ。あとでお礼を言っておいてくださいね」

瑞鶴「覚えてます……ここは?」

「修理ドック併設の医務室です」

「ああ、そういえばここに入るのは初めてでしたね。貴女、被弾したことがなかったから」

瑞鶴「私を知ってるんですか? 貴女は?」

「昔、ここで働いていたものです。今は施設の管理人みたいなことをしてますが」



「――かつては航空母艦、赤城と呼ばれていました」

瑞鶴「え……あ、赤城さん!?」


赤城「ああ、寝たままでいいですよ。無理しないで」

瑞鶴「……ごめんなさい」

赤城「初めまして、瑞鶴。こんな形になってしまいましたが、会えて嬉しいです」

瑞鶴「あの、赤城さんはずっとここに? 鎮守府のほうには行かないんですか?」

赤城「ええ、私は艤装を解体していますから。見ての通り車いすですし、普段は裏方に回ってます」

赤城「だからいきなり、貴女が担ぎこまれてきたのは驚きました」

赤城「とても心配していましたよ、皆さん。いい報告ができそうで良かったわ」


瑞鶴「……加賀さんも?」

赤城「ええもちろん。一番に報告しないとね」


瑞鶴「……赤城さん。なにが、あったんですか」

赤城「え?」

瑞鶴「加賀さんが赤城さんのことを、特別に思ってるのはなんとなくわかります」

瑞鶴「でも、加賀さんは話してくれないので……まだ新参の私が、首を突っ込むのもあれなんですけど」

瑞鶴「加賀さんが思い悩んでいるなら、私も力になりたいんです」

赤城「新参かどうかは関係ありませんよ。同じ鎮守府の仲間なんですから」


赤城「――それにしても、目が覚めて最初に聞くのが加賀さんのこと? 本当に好きなのね」

瑞鶴「え!? いえ別に好きとかそういうのでは」

赤城「まあ、加賀さんが話したくないのも、ちょっとした事情があるんですよ」



まだ私が、艦娘として働いていたころの話です。


他の鎮守府の艦隊が遠征の帰還中に、敵の艦載機に触接されたと報告が入りましてね。
遠征は、比較的安全な航路を選んで行われますが……深海棲艦の名の通り、敵は突然、海の奥底から湧き出でることがあります。

さらに悪いことに、相手は姫級らしい――とのこと。


あの時私たちは、その帰還中の近くの海域で演習中でした。
着任したばかりの加賀さんと翔鶴を、私と鳳翔さんで教導していたのです。


SOSを受信したとき、それはそれは焦りましたよ。
なにぶん演習中で、実弾を装填済みなのは、随伴の神通さんと秋雲さんだけでしたから。

私たちの艦載機ですが、爆弾や魚雷は演習用のものでした。
今から換装を始めても、姫の相手には不十分な数しか揃えられないでしょう。

このことがあってから、提督は演習時も半分は実弾を装備させているんですけど……まあそれは後の話で。


提督は、鎮守府に残っていた他の子たちをすぐに出撃させて――
私たちの扱いにずいぶん悩んだようです。

本来、姫級は全鎮守府の総力を持って当たるべき強敵ですから、発見即撤退が基本です。演習中ならなおさらですよね。
ただ今回は、すぐ近くに味方の艦隊が助けを求めていましたから。


提督も複雑な立場ですよね。
不十分な戦力のまま敵に当たるのは愚策です。でも救援を出さなければ、後日それをどんな形で責められるかわかりませんし。


見捨てて帰るという選択肢が、誰の口からも出なかったというのが、我が艦隊最大の欠点で――いいところだとも思うのですけれど。


時間に余裕はありませんでした。

姫級になると思考能力も高度になり、今までの常識が通じないことがあります。
こちらを狙って進路を変えてくることも十分に考えられたのです。

そうなると私たちの演習用装備では、艦隊を守り切れません。

加賀さんも翔鶴も、「自分も戦う」と申し出ましたが――鳳翔さんが許しませんでした。
正規空母とはいえ練度の低いまま姫と対峙するのは、流石に相手が悪すぎます。



――その2人ですか?
鳳翔さんの剣幕に押されて、先に帰投しましたよ。不承不承、ではありましたが。

帰ることも、大切な仕事なんですけどね。



提督を説得して、私と鳳翔さん、神通さん、秋雲さんで救援に向かいました。

艦戦隊は上空直掩に専念。
砲雷撃は最大射程で行い肉薄は厳禁、絶対に深追いしない……という条件付きで。


増援が来るまで、時間を稼ぎに稼いで、なんとか外洋まで押し返すことには成功しましたが――

不覚にも、直撃弾を受けてしまいましてね。

そう、ちょうど貴女と同じ場所ですよ。腰の艤装のところに爆撃を。
ドックでは外傷はすぐに治ったのですが、艤装との接合部が深刻な状態だったようで。


下半身と利き腕が、うまく動かなくなってしまったのです。


艤装は基部に歪みが出たせいで、修復しても強度に問題があるとのことでした。

それなら思い切って解体して、新しく作ったほうがいいだろうと。
慣れ親しんだ艤装とお別れするのはちょっと寂しかったですけど、命には代えられませんしね。



帰ったあとは大変でしたよ。
加賀さんも翔鶴も大泣きしましてね、ずーっと私に謝ってました。
私たちが弱かったせいで、と。

そのあと鳳翔さんが一喝して収まったんですけど。
いつまでも泣いてばかりじゃ私も心配でしたから。


そもそも一生残る後遺症というわけではないんですよ。
何回か手術とリハビリを繰り返せば、日常生活は問題なくできるとのことなので。

それまでは、鎮守府の諸々の雑用をこなさせてもらってます。
また弓を引けるようになる頃には、うーん。筋力が落ちてそうですね。



――え? ああ、この指輪ですか。

当時はケッコンカッコカリの指輪が届いたころで、提督は私に渡してくれる、と言ってくださっていたんですけど。
ほら、艤装を解体したら、練度の上限突破も、燃費の向上も意味がないじゃないですか。

だから、えーと、その。――本物の指輪をもらって、結婚しちゃいました。えへへ。

何回か、加賀さんが夜に寮を抜け出す日があったでしょう?
あの人の帰りが遅くなる日は、加賀さんが私たちの部屋に来て、家事を手伝ってくれるんですよ。


まあ、そんなことがありまして。

加賀さんと翔鶴は鍛錬を重ねて、この鎮守府を守ってくれてます。
2人とも、昔の私より実力は全然上なんですけど、何かと気遣ってくれて面はゆいですね。



前に加賀さんが赤い袴を着けていたことがありましたよね。

実はあれ、私のなんですよ。
体格も似てるし、捨てちゃうのももったいないですから。

私はしばらく使わないので、いつでも着ていいと言ってたんですが……
まあ、恥ずかしがってめったに着てくれないんですよね。

あの日は朝からそわそわしていたわ、貴女とおそろいが嬉しかったのかもね。



――洗濯が間に合わなかったって?

はあ、そんなことを言いながら着てましたか。
同じ日に瑞鶴のも洗濯してるのに、加賀さんのだけ乾かないわけはないでしょう?

単に照れ隠しの言い訳です、言い訳。


鳳翔さんは、普段は出撃せずに、機動部隊の演習を指揮してくれてます。

妖精さんが撃墜されると、命を失うことはない代わりに、今までの経験の記憶がなくなってしまいます。
つまり、今まで磨いた操縦技術――熟練度が失われることになります。

だから航空隊の練度向上はもちろん、撃墜時のトンボ釣りを重視してくれてますね。
妖精さんたちもすごく信頼してるみたいです。

加えて、食事処の運営も。
ああいった楽しみがあると、是が非でも無事に帰ってきたいと思うんですよね。


出撃しないといっても、戦わないわけじゃないんですよ。
整備も鍛錬も、毎日欠かしていないみたいですし。文字通り最後の砦ですね。

私は共に戦っていましたけど、鳳翔さんより強い人は見たことがありませんね、今の加賀さんたちも含めて。
今の体制になるにあたって、鎮守府の機動部隊は鳳翔教官のもと、猛訓練したんですけど――


そのかいあって、私が抜けても戦力的に何ら問題ないくらい、皆さん成長していらっしゃいます。誇らしいですね。



赤城「――加賀さんが瑞鶴に言わなかったのは、戦えなかった自分に、まだ責任を感じているからかもしれませんね」

赤城「問題なのは加賀さんの練度ではなく、ただ時期が悪かっただけで。私も何度も言ってるんですけど」

赤城「ほら加賀さん、頑固なところがありますから。ね?」

瑞鶴「そう、ですね。そうかもしれないです」

赤城「さっき瑞鶴は、加賀さんが私のことを特別だと思っていると言ってましたけど」

瑞鶴「はい。赤城さんのことを話してる加賀さん、すごく穏やかで、優しくて」


赤城「あら、そんなことありませんよ、瑞鶴」

瑞鶴「え?」

赤城「だって加賀さん、私と会っても、最近は貴女の話題ばっかりですもん」

赤城「『見どころのある子が入ってきた』とか、『努力を怠らない、向上心もあっていい子だ』とか」

赤城「私のほうが聞いてて嫉妬しちゃうくらいです、うふふ」

瑞鶴「え、あ、そ、そうなんですか……でも、あんな柔らかい表情は」

赤城「そう見えたなら、そんな顔を見せるぐらい、信頼されていると思ってください」


赤城「さっき、家事の手伝いに来てくれていると言ったけれど――」

赤城「ただ最近は、その手伝いの頻度も上がってきていてね。疲れがたまってるのに無理しないでください、って何度も言ったんですが」

赤城「きっと張り切ってたんでしょうね、貴女が来て。私には後輩の指導方法とか、いろいろ聞きに来ていました」

赤城「加賀さんは真面目で冷静に見えて、すぐに熱くなっちゃうから。力の抜きどころがわからなくて、すぐに無茶するのよ」

瑞鶴「…………」


赤城「――だから瑞鶴。貴女がちゃんと、加賀さんを見てあげてね」

瑞鶴「……はい!」


赤城「さて、修復は終わっているので、もう退院して大丈夫ですよ。加賀さんを連れて行ってあげてね」

瑞鶴「え、連れて行く?」

赤城「ふふ、気付かなかった? 部屋の隅ですよ」

瑞鶴「え? あ――」

加賀「zzz……」


瑞鶴「……ありがとう、加賀さん」






提督「瑞鶴!! 申し訳なかった、私の判断ミスだ!!」

瑞鶴「そんな、気にしないで。提督さんは救援要請に応えただけじゃないの」

赤城「戦闘詳報と日誌を作成しますから、加賀さんとよく話してくださいね」

加賀「もっと他に選択肢はなかったのか、編成の判断は正しかったのか、しっかり聞かせていただきます」

提督「う……お手柔らかに頼む……」


赤城「あら、他の人のほうがいいですか?」

加賀「なら鳳翔さんにお願いしておきま――」

提督「加賀でお願いします!!」

瑞鶴「即答!? 昔何があったのよ提督さん!」


翔鶴「ず゛い゛か゛く゛!゛!゛ よ゛か゛っ゛た゛!゛!゛  び゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛え゛え゛!゛!゛!゛!゛」

瑞鶴「ちょ、翔鶴姉! 大げさだよ」

朧「翔鶴さんは……瑞鶴さんが目覚めるまでの間、妹のかたき討ちと称して毎日出撃していました」

瑞鶴「え、そうなの!?」

朧「先日の救援に翔鶴さんの戦果を合わせて、提督には勲章が2つ贈られるみたいです」

瑞鶴「数日でそれって、どれだけ無茶な出撃だったの……」



秋雲「」チーン

初月「」チーン

朧「そして、その無茶な出撃に付き合わされた後のものがこちらです」

瑞鶴「ご、ごめんね。そりゃ1人で出るなんて言われたら断れなかったよね……ご飯おごるから」


秋雲「まったくパクパク……加賀さんと翔鶴を……モグモグあそこまで泣かせるとはねぇ」

初月「その通りだ……ムグムグ、あまり母上に心配をムシャムシャ、かけてはだめだぞ」

瑞鶴「加賀さんのその呼び方、まだ続いてたの」

翔鶴「2人とも、飲み込んでからしゃべりなさい。料理は逃げませんよ」

伊58「大吟醸おかわりくださーい。あと大トロの炙り焼き、松茸の土瓶蒸しと比内地鶏の親子丼――」

瑞鶴「ちょちょちょっと!! それ接待用の最高級メニューじゃないの!!」

伊58「命が助かったんだから安いものでしょ。味わえるのも生きてるからこそでち」

瑞鶴「ぐぬぬぬぬ」


神通「瑞鶴さん、身体はもう大丈夫ですか」

瑞鶴「うん、心配かけてごめんね」

加賀「ところで、どうして私たちが呼び出されたのかしら」

神通「今回の一件、お二人を鍛えた教官として不徳の致すところ。鍛え直して差し上げようかと」

瑞鶴「えっ? いくら教官でも、正規空母2人と戦うなんて無理なんじゃ」

加賀「……甘く見られるのは、あまり好きではないのだけれど」

神通「慌てないでください。昼戦の相手は私じゃありません」


神通「ご本人たってのご希望で参加していただいた――」

神通「鳳翔先生です」

鳳翔「かかってらっしゃい。2対1で結構」

加賀「えっ」

鳳翔「あまり心配をかけさせられるのも嫌ですから。久々に航空戦の腕を見せてもらいます」

神通「そのあとは私と夜戦演習です。もちろん発艦は危険ですから、避けるだけでいいですよ」

神通「――避けられるものなら、ですが」

瑞鶴(あっこれ死んだ)



加賀「…………」

瑞鶴「…………」

加賀「瑞鶴、生きてるかしら」

瑞鶴「なんとか……まさか明け方まで続くなんてね。私いちおう病み上がりなんだけど」

加賀「もう体は大丈夫なのね?」

瑞鶴「うん、平気平気。一日ぐっすり寝たから、もうすっかり元通りよ」

加賀「あまり心配をかけさせないでちょうだい」

瑞鶴「安心して。もうあんなこと起きないように鍛えるし」

瑞鶴「今度は私が加賀さんを守るからね!」


加賀「…………」

加賀「そう。いいけれど」


瑞鶴「あれー? 加賀さん、なんか顔赤くない?」

加賀「……いいえ。朝焼けのせいでしょう」

瑞鶴「まだ暗いじゃん。ねぇってばー」

加賀「頭に来ました」

瑞鶴「痛った!! いきなりデコピンなんてひどくない!?」

加賀「私を守るとは大きく出たものね。なら打たれ強さも身につけないと」

瑞鶴「こういうのとは関係ないでしょ! あんまり意地悪すると不貞腐れますよー?」

加賀「……ふふっ」


加賀「なら精進しましょう。お互いが背中を預けあえるようになるように、ね」

加賀「これからもよろしくお願いするわ、瑞鶴」

瑞鶴「……////」


加賀「あら、貴女が赤くなってるじゃない」

瑞鶴「ちっ、違いますー!! 朝焼けのせいですー!!」

加賀「ふふ。まだ暗いわよ」

瑞鶴「ちがっ、さっきより明るくなって――もー、何笑ってるんですか加賀さん!!」







加賀さんが瑞鶴を赤面させるだけ

おしまい。



☆追加の甘味一皿  ~特製カスタードプリン ホイップとカラメルソース~


瑞鶴「へぇ、新しいお菓子屋さんができたんだ」

翔鶴「そうなのよ。救援した輸送艦隊と、そのあと解放した海域のおかげで、原料を仕入れられたんですって」

瑞鶴「おいしそう! でも、値段も高いんじゃ……」

赤城「そんなお二人に朗報ですよー」

瑞鶴「赤城さん?」

赤城「今回のお礼に、ペア招待券が届いてます。甘味バイキング、今日限り有効」

翔鶴「えっ、本当ですか! 嬉しい!」

赤城「…………」



赤城「おお、見よ、我が心を突き動かす数々の甘味写真を」ブツブツ

赤城「いえだめよこれはこうはいがいっしょうけんめいはたらいたおれいであって」ブツブツ

翔鶴「あの、赤城先輩?」


赤城「……ハッ」

赤城「早く持って行ってください、私が飛び出していく前に、さあ早く!」

翔鶴「あ、ありがとうございます赤城先輩。じゃあ瑞鶴、これから――」

神通「こんなところにいたんですか翔鶴さん、出撃のお時間ですよ」

翔鶴「」


翔鶴「き、今日はやめておきましょう。明日2倍敵を倒すから、ねっ?」

神通「旗艦が何を仰っているんです、もう全員揃っていますよ。さあお早く」ガシッ

翔鶴「待って、今日じゃないとダメなの!! 瑞鶴助けて、瑞鶴ぅううう――」ズルズル

瑞鶴「……そういえば運の改修は済んでないって言ってたわね」


加賀「いったい何の騒ぎ?」

瑞鶴「あ、加賀さん。良かったらこれ、一緒に行きません? 翔鶴姉にもらったの」

加賀「招待状? ……甘味、食べ放題……」


加賀「――開店と同時に突撃するわよ。すぐ準備なさい」

瑞鶴「り、了解……加賀さん、ダイエットしてたこと忘れてない?」

加賀「これは流石に――気分が、高揚します」ダッ

瑞鶴「あっちょっ! ……行っちゃった」

瑞鶴「私も準備しなきゃ。何着ていこうかな……」



瑞鶴(あれ? ナチュラルに誘ってしまったけど)

瑞鶴(よく考えたらこれって初めて2人っきりでお出かけじゃ……)

瑞鶴(////)


瑞鶴「うわ、初日だけあって混んでるわね。加賀さん?」

加賀「瑞鶴、手ぶらで席に着く前に甘味を運びなさい」

瑞鶴「8皿も持てないよ! レストランでも3枚くらいが限界でしょ!」

加賀「鳳翔さんのお店を手伝ってるときに、お皿運びは徹底的に叩き込まれたわ」モグモグ

瑞鶴「もう食べてる!」

加賀「テンポよくいかないとね。貴女も遠慮せず食べなさい」

瑞鶴「こりゃ翔鶴姉に悪いことしたわね。今度は私が連れてきてあげよう……」


瑞鶴「…………」

瑞鶴「――ねえ加賀さん」


瑞鶴「ちゃんとお礼が言えてなかったです。加賀さん、助けてくれてありがとうございました」

瑞鶴「他の子を助けたことは後悔してないけど……改めて、沈むことの怖さを実感した」

瑞鶴「今回のことを忘れないように、目標を立てようと思ったの」

瑞鶴「戦いながらいろんなところに気を配って、艦隊のみんなだけじゃなく自分の身もしっかり守れるような」

瑞鶴「いつかきっと、加賀さんみたいな立派な艦娘になるわ」


加賀「…………」


加賀「…………」モグモグ

瑞鶴「加賀さん?」

加賀「あら、ごめんなさい。このプリンが私を離してくれなくて」モグモグ

瑞鶴「聞いてないー!?」

加賀「だって時間制限が。貴女も無駄にしては駄目、尊い犠牲となった翔鶴のためにも」

瑞鶴「死んでないよ!」

加賀「今度はちゃんと聞くわ、もう一回言って」

瑞鶴「……////」

瑞鶴「い、いい! 私もケーキ取ってくる!!」




加賀「…………」

加賀「いきなり神妙な顔で何を言い出すかと思えば」

加賀「まったくもう。そういうことは、もっと静かなところで言うものよ」


でも、本当にもう一度言われたら……ふふっ。

今度は、赤面を隠せないかも。
なんてね。


読んでいただき本当にありがとうございました。
長い間かかってしまい申し訳ありません。自分の好きな要素を詰め込もうとして相当延びてしまいました。
また機会がありましたら読んでいただけると嬉しいです。


艦これ、リアルイベが色々と凄まじいことになっていますね。ここまで飽きないコンテンツは初めてです。
ジャズ当たってほしいけど仕事始めが……



約一年も大変だったと思うが面白かったし凄く良かった
書いてくれてありがとう


面白かった

おつ
大変良かった

今まで見た瑞加賀の五指に入るいい瑞加賀だった。
次作期待してます。


長い間楽しませてもらった、ありがとうございます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年12月25日 (月) 08:10:28   ID: dcHCKWlr

仲良きことは美しきかな

2 :  SS好きの774さん   2017年12月25日 (月) 22:25:06   ID: n81jZyQv

加賀さんが瑞鶴に厳しいのは
自分と同じ轍を踏まないように
しようとしている
そう思っています

3 :  SS好きの774さん   2017年12月31日 (日) 17:14:08   ID: in7grfcw

肥るな此はw

4 :  SS好きの774さん   2018年03月01日 (木) 19:13:40   ID: q2m8AOGd

良いぞ……

5 :  SS好きの774さん   2018年04月01日 (日) 21:01:38   ID: DMoEuCa-

神かぁ!

6 :  SS好きの774さん   2018年05月10日 (木) 23:23:34   ID: FZI_YD9a

最の高としか言えない

7 :  SS好きの774さん   2018年06月05日 (火) 14:56:42   ID: yQPpTDfD

最&高、上の上ですね……

8 :  瑞鶴   2018年08月21日 (火) 13:04:35   ID: Lm2HIRkI

瑞鶴、蛸壺屋『TK』同人誌、艦娘『太平洋戦争』シリーズ第7巻『レイテに散る。』瑞鶴を旗艦とする小沢艦隊はハルゼー率いる機動部隊の吸引に成功、瑞鶴はサンドバッグ状態となり沈没、しかし、大和を旗艦とする栗田艦隊はレイテ湾に突入しなかった。瑞鶴の断末魔の叫び『大和はレイテに突入したのか!!?』は余りに虚しく、哀しかった。

9 :  SS好きの774さん   2018年08月30日 (木) 05:54:53   ID: guwJs2YZ

落ちたな(泣)
赤城が嫁艦なのかね

10 :  ジャイアン提督   2019年08月27日 (火) 00:52:30   ID: WQny9Esr

わしの鎮守府に吹雪型駆逐艦を送ってください。敵によって我々の鎮守府の所属の全艦娘がやられた。

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