【ガルパン】アンチョビ「アンツィオに入学したらCV331つしかなかった」 (14)

 戦車道は何かと金がかかる。金持ちスポーツだ、と誰かが言っていたがまさにその通りだと思う。

 長く続けるには金か或いは類稀なる才能がいる。中3の春、私はそれに気付いてしまった。

 下手ではなかった、と思う。どちらかといえば……いやかなり良い線はいっていたんじゃないか。うん。

 ただ金が積まれる程では無い……という事ぐらいは私でも分かる。なまじ腕があったから、そういう金が積まれる奴等との差ははっきりと分かってしまった。

 かくして、私の戦車道は15歳で幕を閉じた。










ーーはずだった。

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「おーい安斎」


安斎「…………」


「安斎ってば」


安斎「……あ、なんだ。お前か」


「お前とはなんだよ。人が呼んでるのにさ」


安斎「……ごめんちょっとぼっとしてた」


「お腹空いてんの? 干し芋食べる?」


安斎「いらない」

安斎「……で、なんだよ」


「あー、えっとなんか先生が呼んでたよ。進路についてだってさ」


安斎「進路……」


安斎「…………」


「はー、落ち込むなとは言わないけどさ、もうちょっとシャキッとしなよシャキッと」


安斎「………うん」


「ほら早く行ってきな」


安斎「……うん」


「大丈夫かぁー?」

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安斎「……戦車道の特待……生……? わ、私がですか?」


「ああ、アンツィオ高校という所から連絡があってね」


安斎「アンツィオ高校……」


安斎(聞いたことがないな……)


「戦車道の試合で君を見たらしくてね、是非とも来て欲しいと」


安斎「…………」


安斎「……考えさせて下さい」

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安斎「………」


安斎「……特待生か」


「何たそがれてんのさ」


安斎「むぐっ?! な、なんだよ!」


「いや口が開いてたから干し芋入れたくなってさ」


安斎「や、やめろよもう……」モグモグ


「……で、どうすんのさ特待生」


安斎「な、なんでもう知ってるんだ」


「さぁね~」

安斎「……分からない」


「なんでさ~学費免除に寮費免除でしょ。更には戦車道の予算にも力を入れるって話じゃん」


安斎「お前は…アンツィオ高校の名を戦車道してて聞いた事はあるか?」


「……んーん」


安斎「戦車道では無名校さ。戦車道なんてあって無いような高校さ」


安斎「大方、今の戦車道ブームで上から何か言われたんだろう。アンツィオも戦車道に力を入れろと」


「だろうね~」

安斎「だが、無名校じゃ有名な選手は来るはずもない」


安斎「そこで私に目を付けたんだろう。強豪に呼ばれる訳ではなく、自費で戦車道を続けるのは困難であろう私に」


「…………」


安斎「だけど、高校の戦車道はそんな急造の戦車道じゃ勝てない……」


安斎「いや、勝てないように出来てる……か」


「……そんなん分かんないじゃん。公式戦はフラッグでしょ?」


安斎「それでも勝つのは難しい……中学で戦車道で勝つのには何が必要かは思い知った」


安斎「お前も痛いほど思い知ったろう。…………だから、お前は」


「……まーね」



安斎「正直わたしは何で戦車道をやるのか分からなくなった……」


「………」


「……でもさ、私は続けた方が良いと思うよ」


安斎「え?」

「私はきっと……いや、安斎なら必ずアンツィオでも上手くやれると思うよ」


安斎「な、何を根拠に」


「多分言っても分かんないと思うよ~。でも、絶対続けてれば自分の戦車道に気付けるはずだよ」


安斎「………」


「続けなよ、安斎 」


安斎「……お前は、辞めるくせに」


「あはは、私はねーもういいや。……いいんだ私は」


安斎「……勝手な奴だ」


「あははー。……きっと大丈夫さ安斎なら大丈夫さ」


安斎「……」

わたしは、アンツィオ高校に入学した。

 しかし、アンツィオ高校で待っていたのはーー。









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安斎「……は? せ、戦車道履修者が一人もいない?」


「そ、それが……その………はい……」


「大々的に募集をしたのですが…」


安斎「わ、私以外にスカウトした者はいないのか?!」


「申し訳ありません……予算が少なく……」


安斎「た、たった一人で私はどうすれば良いんだ!!」


「す、すいません。戦車は用意いたしましたので……」

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安斎「なんだ……これは……」


 私に用意されたのはたった一つのCV33だけだった。部員が一人ではこれだけしか用意できないという事らしい。


安斎「こんなんで……どうしろと」


安斎「は……はは。結局、結局これかよ」


安斎「……」


安斎「……何が戦車道だ辞めてやる。クソが……」


安斎「…………」






続けなよ、安斎






安斎「……」

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安斎「……せ、せまいなぁ」ガチャガチャ


安斎「cv33……カルロヴェローチェ、快速戦車か」


安斎「……とりあえず、走ってみるか」


安斎「よっ、ほっ………」ガチャガチャ


安斎「行くか……おっと」ブルル


安斎「……結構スピードは出るんだな」


安斎「……」ガチャッ


 ハッチを開けると、風が頬を撫でた。柔らかな春の風だ。


安斎「……風、気持ちいな」


安斎「……」

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