ありす「お父さんと」P「娘と」 (21)

ありす「ほらお父さん起きてください。仕事に遅れますよ」

P「うぅーーん……」

ありす「いつまでも寝ぼけてないで、早く朝ごはん食べてください」

P「おぅ、おはよう、ありす……」

ありす「おはようございます。はい、目が覚めたらさっさとベッドから降りて」

P「ふぁああぁぁ」

ありす「あくびしている暇があったら、掛け布団たたんで、枕カバーとシーツはがして」

P「んーー、やっとくやっとく」

ありす「それから、顔洗って口ゆすいで、トイレも忘れずに行くんですよ」

P「わかってるよ。口うるさい娘だなあ」

ありす「口うるさくて悪かったですね。そんなふうに育ったのは、だらしがないお父さんのせいです」

P「はいはい、すいませんでした。ほら、部屋着に着替えるからちょっと外でてろ」

ありす「二度寝しないでくださいね。5分経っても来なかったら、また来ますからね」

P「はいはい、さっさと行け」

ありす「洗濯物はベッドに置いとかないで、ちゃんと洗濯カゴに入れてください」

P「はいはいはい」

ありす「あと、“はい”は一回だけです」

P「はいはいはいはいはいはい!」

ありす「まったくもうっ! ご飯冷めないうちに早く来てくださいねっ」


バタンッ!!


P「……はあ。まったく、誰に似たんだか」

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P「ありす、来たぞー」

ありす「遅いですよお父さん。ちゃんと顔洗いましたか?」

P「洗ったよ。口もゆすいだ。トイレも行きましたー」

ありす「ご飯とお味噌汁はよそっておきましたから、納豆は自分で用意してください」

P「んー」

ありす「おかずが冷たかったら、レンジで温めてくださいね。あと、食べ終わったら食器は水につけておいてください」

P「ありすはもう食べたのか?」

ありす「今日は学校の日直ですから。私はもうすぐ出ます」

P「私立の学校は、家から遠いのがアレだなあ。もう少し近くに引越そうか」

ありす「お金がもったいないですよ。家から遠くても、早起きは得意ですから大丈夫です、誰かさんと違って」

P「稼ぎの少ない父親ですいませんねー」

ありす「お給料はどうか知りませんけど、普段もう少し早く起きてくれると助かりますね」

P「それは無理かな」

ありす「安心してください、期待していません」

P「だったら、もう少し優しく起こしてくれるとパパ嬉しいなあ」

ありす「はいはい。それじゃあ、ちゃんと火の元の確認や家の戸締り、お願いします」

P「“はい”は一回じゃなかったんですか?」

ありす「あげ足とる暇があったら、栄養しっかりとって、お仕事がんばってください」

P「ありすのためにがんばりまーす」

ありす「事務所へは学校から直接行きます。今日はインタビューが入ってましたよね」

P「夕方からだから、あまり急がなくていいぞ」

ありす「わかりました。それじゃあ行って来ます、お父さん。事務所で会いましょう、プロデューサーさん」

P「おう、行ってらっしゃい、ありす。インタービューよろしくな、橘さん」

―――――――
――――
――

ちひろ「プロデューサーさん、この書類の確認、お願いします」

P「分かりました。そこおいといてください」

ちひろ「よろしくお願いしますね」


がちゃ


ありす「お疲れ様です」

ちひろ「あら、ありすちゃん。お疲れ様です」

P「おう、橘さん、お疲れー」

ありす「はい、お疲れ様です」

P「そうだ。橘さん、今日のインタビュー少し遅れるって連絡があったから、しばらく休んでていいぞ」

ありす「分かりました。宿題でもしながら待ってます」

P「記者の人が来たら呼びに行くな。それと、後でインタビューについて打ち合わせするから、よろしくな」

ありす「はい。よろしくお願いします、プロデューサーさん」

スタスタ

ちひろ「ふふっ」

P「ん? なんですか、その含み笑いは」

ちひろ「いえ、親子なのに、プロデューサーさん、橘さんって呼び合うのがおかしくて」

P「自分でも違和感はありますけどね。なにしろ、俺も苗字は“橘”ですから」

ちひろ「でもそのおかげで、アイドルの皆さんとの距離が近くなりましたでしょう?」

P「そうですかね、あまり実感はないですよ」

ちひろ「近くなりましたよ。ありすちゃんと呼び分けるために、皆さんプロデューサーさんのことを名前で呼ぶようになったんですから」

P「ああ……。確かに、“Pさん”って呼ぶ子が増えた気はしますね」

ちひろ「実際どうですか? 色んな子たちから親しみを込めて名前で呼ばれるのは、悪い気がしないんじゃないですか?」

P「独身ならいざ知らず、娘までいる身では、照れより戸惑いの方が大きいですね」

ちひろ「あら、随分お堅いお答えですこと」

P「まあ、こういう職業ですから。親御さんから預かっている未成年の子も多いですし」

ちひろ「そういったところが信頼されてのお立場ですからね。いいと思いますよ」

P「肝に命じます」

ちひろ「それにしても、ありすちゃんはしっかりしていますね」

P「親の欲目かもしれませんが、あの歳にしては、だいぶ分別がついていると思います」

ちひろ「私もそう思います。なにしろ、公私の区別はつけるため、名前で呼ばないでくださいって言い出すくらいですし」

P「今でも思い出しますよ。この事務所にありすが初めて来た時に――」

ありす『名前で呼ばないでください。橘と呼んでください』

P「って言われた時は、ついに反抗期がやって来たかって、夜に枕を濡らしました」

ちひろ「でも、その後きちんと話し合って、誤解は解けたんですよね」

P「はい。失意で落ち込む俺を見かねたありすが――」

ありす『別にお父さんのことが嫌いになったわけではありません』

ありす『甘えてしまわないよう、仕事場ではあくまで他人として接してほしいだけです』

P「と言ってくれまして。これを聞いて、ああ、天使はここにいたんだ、と感激しました」

ちひろ「親バカですね」

P「否定しません」

ちひろ「それにしても、中年オヤジが枕を濡らすって、想像するとキモいフレーズですね」

P「ちひろさん、癒えかけた古傷をえぐるの、やめません?」

ちひろ「加齢臭が染み付いた枕カバーに、涙か汗か分からない黄ばんだシミが点々と」

P「えぐった傷に塩すり込むのも、やめません?」

ちひろ「キモいフレーズ、略してキモフレ」

P「怒られますよ、各所から色々と」

―――――――
――――
――

ありす「…………」カキカキ

P「おーい橘さーん、記者さん、もうすぐ着くって連絡あったぞー」

ありす「あ、はーい。今いきます」

テクテク

ありす「お待たせしました、プロデューサーさん」

P「ん。じゃあインタビューの事前打ち合わせな」

ありす「想定される質問内容と、それに対する答えの確認、ですよね」

P「うん。今回は、今年の振り返りと来年への抱負がテーマだから、橘さんが思ったことを素直に答えればいいだろう」

ありす「その素直が、結構難しいんですが」

P「まあ、思ったことをそのまま伝えればいいんだよ」

ありす「思ったこと……」

P「あまり深く考えず、質問されて心に浮かんだ言葉をとりあえず言ってみる、でいいんじゃないかな」

ありす「うーん。他に、何かアドバイスとかありませんか」

P「そうだなあ。心に浮かんだ一言だけだと伝わりづらいから、その言葉に関連した時系列を説明したり、その時に感じた気持ちも言ったり、とかかな」

ありす「前後の出来事と、その時思った感情……」

P「ただ、あまりこういったテクニック的な答え方は勧めないけどな。型にはまった答えだと記者の人もつまらないだろうし」

ありす「つまり、先方は私に子どもらしい自然な回答を望んでいるから、変にしっかりした答えは逆に趣旨に反してしまう、と」

P「その通りだけど、あまりそれを意識しすぎてもダメだぞ」

ありす「あれもダメ、これもダメ。プロデューサーさんはダメダメですね」

P「悪かったな、あまり参考にならないアドバイスで」

ありす「安心してください、元から期待していません」

P「悪かったな、あまり頼りにならないプロデューサーで」グスッ

ありす「もう…、すぐに落ち込むんですから……」キョロキョロ

P「ん? どうした橘さん、誰か他に頼りになる人を探しているのか?」イジイジ

ありす「いえ、そうではなく、周りに誰もいないか確認を」

P「え?」

ありす「うん、よし」

ありす「……いいですか、お父さん」

P「ちょ、橘さん?」

ありす「静かに。他の人に聞かれると恥ずかしいですから」

P「……」

ありす「確かにお父さんは、いつもだらしがなくて頼りないですけど」

P「うぅ…」

ありす「それ以上に、アイドルの皆さんのためにお仕事をがんばっていて」

ありす「たくさんの偉い人に頭を下げて一生懸命働いていて、そして……」

P「そして?」

ありす「私を、アイドルにしてくれました。だから……」

P「…………」

ありす「お父さんには、感謝しています」


いつも ありがとうございます お父さん

P「……………………」

ありす「あの、何か言ってください。無言でいられると、その…、少しいたたまれないので」

P「い」

ありす「い?」

P「いやっほーーーーーううううう!」

ありす「は!?」

P「よーし! パパお仕事がんばっちゃうぞー!」

ありす「ちょっ! 恥ずかしいからやめてください!」

P「行くぞありす! インタビューの記者さんが待ってるからなあ!!」ワハハハ

ありす「だから仕事場では橘と呼んでくださいと、ちょっとプロデューサーさん? あの、ちょっと!?」




ちひろ「まったく、本当に仲のいい親子なんですから」クスッ

―――――――
――――
――

P「ただいまー」

ありす「ただいま戻りました」

P「いやー疲れた。なかなか盛り上がったインタビューだったな」

ありす「インタビューは良かったですけど、その前のアレはもうやめてください」

P「へいへいすいませんでしたー、っと」ポイポイ

ありす「また! そうやって靴を脱ぎ散らかさないでと何度言えばいいんですか!」

P「わかってますよっと。ほいほい」

ありす「足で靴を寄せるのも行儀悪いですよ。ちゃんと靴の棚に入れてください」

P「べつにいいだろ。口うるさい女はモテないぞ」

ありす「口うるさいのは誰のせいだと……。私が行き遅れたら、お父さんは反省するべきです」

P「ありすが結婚なあ。うーん……」

ありす「なんですか。いつまでも結婚できない女になるとでも思ってるんですか」

P「いや、可愛い娘を嫁に出すのは、まだ考えたくないなあと」

ありす「かわいい……。まあ、そういうことなら別にいいですけど」

P「なんだどうした? 耳が真っ赤だぞおいこのお」

ありす「うぅうるさい! わかっててもそういうことを言わないのが大人でしょうが!」

P「大人だけどダメな大人ってありすに言われるしー。照れる娘をいじるのも楽しいしー」

ありす「ああ言えばこう言う、そういうところがダメなんです!」

P「そういえば、インタビュー前のあの時も耳真っ赤だったな」

ありす「ああもう! なんでそうデリカシーがないんですか! だいたいお父さんはですね――」

P「はいはい。ほら、旨い飯作ってやるから、早く行くぞ」

ありす「まだ話は終わってませんよ、お父さん!」

P「はいはいはい、後でじっくり聞いてやるから、まずは飯だ、めし」

ありす「“はい”は一回!」

P「はいはいはいはいはいはい!」

ありす「もうっ!」

P「っとそうだ、言い忘れてた」

P「今日もお疲れ様、橘さん。おかえり、ありす」

ありす「お疲れ様です、プロデューサーさん。おかえりなさい、お父さん」

---おわり---

娘になったありすがどうしても見たかったので、地産地消しました。
アンケートで娘にしたいアイドルがあったら、1位になったはずです。
どうか今後とも、ありすをよろしくお願いします。

母親は?


ありすのおかんはお空の上(notグラブル)なのか、Pとお別れして橘ではなくなったのか…(無粋な疑問)

>>15
>>16
想像にお任せします!

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