紗代子「部活かぁ…… 何にしよう?」【ミリマス】 (62)

超ビーチバレーの話です。

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紗代子「今年の4月から沖縄に引っ越してきて、今日から新しい学校」

紗代子「友達出来るかなぁ…… 不安だなぁ……」

紗代子「ううん、入学する前からこんな気持ちになっちゃダメ! 暗い子じゃ友達だってきっと出来ないもん!」

紗代子「そうだ! 学校に入って初めて会った子に話しかけて、初めての友達になろう!」

紗代子「あっ! あそこに居る編み込みの子 あの子に」

百合子「きょろきょろ」

紗代子「あのー」

百合子「戦闘力5…… ゴミめ」

紗代子(えっ、あの子何かひとりごと言ってる……)

百合子「ピピ…… ふん、この星の原住民はどいつも戦闘力の低いゴミばかりだな」

紗代子「……」

紗代子「よし! 次の子に話しかけよう!」

「部活! 部活入りませんかー!」

紗代子「あの人…… 上級生かな? うん、部活入るかどうかは後で決めるとして、話だけでも聞いてみよう!」

紗代子「あのー」

恵美「あっ、キミ新入生の子?」

紗代子「はい! 部活の話を聞きたくて」

恵美「おー! ウチの部活興味あるの!?」

紗代子「はい!」

恵美「良かったぁ! このままじゃ『超ビーチバレー部』廃部になるとこだったよー!」

紗代子「え?」

恵美「ん?」

紗代子(何か今『超ビーチバレー部』って聞こえた気がするけど…… まぁ普通のビーチバレー部だよね……?)

恵美「そんじゃ、案内するね」

紗代子「あの、超ビーチバレー部なんですか?」

恵美「うん、超ビーチバレー部だよ」

紗代子「『超』ビーチバレー部なんですよね?」

恵美「も~ しつこいな~」

紗代子「部員数は何人なんですか?」

恵美「アタシと…… 今ちょっと学校お休みしてる子で、二人かな」

紗代子「えぇ! それだけですか!?」

恵美「そ、学校から『最低でも選手二人居ないと部活としては認めない』って言われててキミが来なかったら廃部になるとこだったんだよね~」

恵美「あっ、自己紹介遅れてたね、アタシは恵美 気軽に名前で呼んでよ」

紗代子「あっ、私紗代子です よろしくお願いします! 恵美先輩」

恵美「んっ……」

紗代子「どうしたんですか恵美先輩?」

恵美「いやぁ…… 『先輩』って何だかむず痒くてさぁ……」

紗代子(先輩は3年生のはずなのに…… 今まで後輩も居なかったのかぁ……)

恵美「よし、ここが練習場だよ!」

紗代子「こ、ここって……」

紗代子「ただの砂浜じゃないですか!」

恵美「そうだよ! この大自然こそがアタシ達を強くするの!」

紗代子「確かに砂浜での走り込みって漫画とかでよく見るけど……」

恵美「ビーチバレーって結局砂浜でやるっしょ? だからここで練習するのが一番いーの」

紗代子「そうなんですか…… ?」

恵美「そんでさ、紗代子はビーチバレーやったことある?」

紗代子「えっと、一応中学ではバレーを」

恵美「おお! いいじゃんいいじゃん!」

紗代子「で、でもビーチバレーはやったことなくて」

恵美「大丈夫大丈夫、こっから練習すればきっと最強になれるから!」

「ほ? こんなところで何をしているのです?」

恵美「っ!?」

紗代子「だ、誰ですか?」

まつり「おひさしぶりなのです 恵美ちゃん」

恵美「まつり…… 何しに来たの?」

まつり「もちろん、恵美ちゃんをビーチバレー部に呼び戻しに来たのです」

紗代子(え、この学校普通のビーチバレー部あるの!?)

恵美「アタシはもうあそこへは戻らない」

まつり「それは困るのです。 恵美ちゃんが居なかったら誰が姫たちの練習相手になってくれるのです?」

恵美「アタシはあんた達のやり方が嫌い、それだけだから」

まつり「ふぅ…… 去年の恵美ちゃんのきらきらしてたあの頃が懐かしいのです」

まつり「それとも、まだ『あの子』のことを恨んでいるのです?」

恵美「っ!」

まつり「あれはあくまで『不幸な事故』なのです。 姫も恵美ちゃんも誰も悪くないのです」

恵美「…… そうだね」

まつり「でも姫もちょーっとは悪かったと思っているのですよ? だから謝るのです。 ごめ

恵美「消えて」

まつり「ほ?」

恵美「消えてって言ってるの、アタシの前から消えて、もう二度とあんたの顔は見たくない」

まつり「随分嫌われてしまったのです。 姫、しょんぼりなのです……」

まつり「えっと、そこの新入部員ちゃんは何て言うのです?」

紗代子「えっ、私? 紗代子です」

まつり「紗代子ちゃん ですね」

まつり「それじゃあ紗代子ちゃん、これから楽しく恵美ちゃんと砂遊びしてればいいのです」


そう言ってまつりさんは手を振って学校の方へ歩いて行きました。

紗代子「な、何なんですかあの人! 失礼ですよ!」

恵美「あいつはまつり、うちのビーチバレー部の副部長で今の高校ビーチバレー界のNo2プレイヤー 通称『クイーン』」

紗代子「な、ナンバー2!?」

恵美「ちなみにまつりのペア相手はNo1プレイヤー 通称『キング』ね」

紗代子「えぇ!?!? うちのビーチバレー部ってそんなに凄かったんですか!?」

恵美「まぁ…… ね」

紗代子(それなら私普通のビーチバレー部入りたかったな……)

恵美「あ、ちなみにNo4はアタシだよ」

紗代子「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!????????」

恵美「えっ、ちょっ! 今までで一番リアクション大きくない!? どういう意味よそれ!」

紗代子「あ、すいませんつい……」

紗代子「あれ? それじゃあもしかしてNo3は……」

恵美「そ、アタシのペア相手 今は怪我して休養中、しょーじき今年の夏の大会に出るのはムリ」

紗代子「世間って狭いなぁ……」

恵美「まぁでも当たり前っちゃ当たり前じゃない? 上手い人と練習してたら自然と上手くなるっしょ?」

紗代子「まぁ……」

恵美「だから紗代子も絶対上手くなる! なんたってアタシが教えるんだから!」

紗代子「そ、そっか…… 確かに……」

恵美「アタシは誰かを鍛えるのは上手いからね、紗代子ならきっとNo5くらいにはなれるって」

紗代子「いえ」

恵美「ん?」

紗代子「こんな恵まれた環境でNo5なんて甘えです」

紗代子「折角やるんだから、目指すは…… No1です」

恵美「ふぅん…… 面白いじゃん!」

紗代子「恵美先輩も、まつりさんも、『キング』さんも越えるプレイヤーに私はなります!」

恵美「いいね! やろう!」

紗代子「よろしくお願いします! 恵美先輩!」


こうして私の青春ビーチバレーは始まりを告げた……

一旦ここまで、続きは後程。

百合子「超ビーチバレー部…… ! きっと神と神との戦いの後『神の領域』に辿り着いて、その後恐れていた復活の『F』との戦いの後、別次元での戦士との手合わせ、未来でもう一人の自分と戦い、様々な次元の戦士と生き残りをかけ戦う……!」

紗代子「てそれ全部ドラゴンボール超だよね!?」

百合子「違うんですか!?」

紗代子「絶対違うよ!」

恵美「あっはっはっは! 百合子は面白いねぇ! No1だよ!」

百合子「ありがとうございます!」

紗代子「絶対誉められてないよ!」

何でだかわからないけど、百合子ちゃんも超ビーチバレー部に入ってきました。

恵美「はいはーい、走り込み走り込み~」

紗代子「ふっふっふっ……」

百合子「はぁはぁ……」

恵美「百合子~ 遅いよ~」

百合子「こ、高重力トレーニングとかなら慣れてるんですけど……」

紗代子(絶対嘘だ……)

恵美「ふふん、実はアタシのトレーニングを全てやり遂げると超サイヤ人になれるんだよ?」

百合子「ほんとですか!? うおおおおお!」

紗代子「ってはやっ!」

こうして恵美さんの指導のお陰か私はどんどんビーチバレーの実力を上げていった(百合子ちゃんは微妙)

紗代子「恵美さん」

恵美「ん? 何」

紗代子「そろそろ教えてもらえませんか? ビーチバレー部…… まつりさん達と何があったか」

恵美「あー…… それはナイショじゃ……

紗代子「ダメです」

百合子「私もそれは気になります…… 神龍の謎ですね……」

紗代子「百合子ちゃんは黙ってて」

恵美「もー仕方ないな~話すよ~」

恵美「でもあんまり気持ちいい話じゃないから、後で『聞いて後悔した』は無しだからね?」

恵美「アタシと…… 『あの子』は元々ビーチバレー部だったんだよ」

恵美「うちらが2年になったころにはそこそこ強くなって、まつり達と競ってあいつらともライバルだと思ってた」

恵美「2年の秋、部長と副部長は誰にするかって話で、アタシ達はその座をめぐってビーチバレーで戦って、負けた」

恵美「今思うと、そこで何が何でも勝っとくべきだったんだよ……」

恵美「あいつらが部長になってビーチバレー部は変わった。 極端な実力主義、そしてあいつらは自分たちが強くなるためにアタシ達他の部員を使い潰した」

恵美「そんで、あいつらの練習相手として一番使われたのは当時全国2番目のペアだったアタシ達で」

恵美「朝から夜まで、練習にひたすら付き合わされて、それでもアタシは耐えていた……」

恵美「けど、あの子は耐えられなかった」

恵美「練習試合中、あの子は大きな怪我を負った。 日常生活には問題ない、でもビーチバレーの選手として致命的な怪我だった」

恵美「『あれは事故』みんなそう思ってるけど…… 間違いない、あの事故が起きたのはあいつらの異常な特訓のせいだ」

恵美「だからアタシはあの部を辞めて、ビーチバレーを本当に楽しむために『超ビーチバレー部』を作ったんだけど……」

恵美「ま、フツーにみんな強いまつり達の方に付いていくよね、厳しくたって強くなりたいもん」

恵美「だけどさ、今でもあの部では選手の故障が起きてるらしくて……」

恵美「アタシがあの部に戻ればまた練習相手がアタシになって、他の子たちを守れるかもしれない。 でも今のアタシにはペアが居ない、こんな無茶を頼める子なんて居ない……」

紗代子「……」

恵美「まっ、こんな感じかな」

百合子「過剰なトレーニングによる故障…… 人造人間編の御飯も一歩間違えばそうなっていましたね……」

紗代子「百合子ちゃんはちょっと黙って」

紗代子「恵美先輩」

恵美「ん?」

紗代子「私と…… ペアを組んでもらえませんか?」

恵美「え……?」

紗代子「私、恵美先輩のペア相手ほど上手くはなれないと思います。 でも強くなって、恵美先輩と一緒に戦います!」

恵美「いや、ちょちょちょ! これはアタシの問題で、紗代子を巻き込むワケには」

紗代子「でも! 『超ビーチバレー部』を作ったのには…… まつりさん達を倒す、そのための相方を見つけるためなんじゃないんですか?」

恵美「……」

紗代子「悔しいんですよね! 負けたあの日のことが! 今度こそ勝って、大切なものを守りましょうよ!」

恵美「紗代子……」

百合子「そ、そうです! サイヤ人は一度負けてボロボロになった後に回復することで戦闘力を大幅に上げる特性があります! 今度は絶対勝てるはずです!」

紗代子「百合子ちゃん本当お願いだから後30分くらい黙ってて!」

恵美「あいつら、本当に強いよ」

紗代子「大丈夫です」

恵美「もしかしたら怪我するかも」

紗代子「私、体はすっごく丈夫なんで」

恵美「……」

恵美「はぁ、とんだ新入部員来ちゃったよ……」

紗代子「あっ…… す、すいません私先輩に向かって失礼なことを!」

恵美「いやいいよ、やってやろうじゃん まつり達からビーチバレー部を取り戻そうよ!」

百合子「これは

恵美「フリーザの真実を知ってたったひとりで最終決戦を挑むバーダックだよ!」

紗代子「いえ、ひとりじゃありませんよ」

百合子「そうです! 私を含めて3に

紗代子「絶望の未来の中、ふたりで戦う御飯とトランクス! それが私たちです!」

恵美「にゃははっ、それって負けちゃうじゃん」

紗代子「あっ、そうでしたね」

百合子「……」

百合子「私のアイデンティティが…… まるで四身の拳をセルにコピーされた天津飯です……」

書き貯めのストック尽きたので続きは金曜日くらいに。

百合子「その後、恵美さんと紗代子さんは精神と時の部屋にて血のにじむようなトレーニングを始めました」


恵美「はぁっ!」

紗代子「ぐっ…… っ なんて強烈なスパイク……」

恵美「言っとくけど、アタシのスパイクすら受けられないようじゃまつりのスパイクなんて到底受けきれないからね」

百合子「紗代子さん! イメージするんです! 宿敵の姿を、フリーザの姿を思い浮かべながら戦うんです!」

紗代子「もう一本お願いします!」

恵美「行くよ!」

百合子「そして、ついに勝負の日」


まつり「ほ? 珍しいお客さんなのです ……まさか私たちに挑む気?」

恵美「まつり…… 試合の前にひとつ約束して、アタシらがもし勝ったら部長の座をアタシに譲って、今のビーチバレー部のやり方を変えるって」

まつり「ふぅん…… じゃあもし恵美ちゃんが負けたらどうするのです?」

恵美「ふっ、戦う前から負ける時のことを考えるわけなくない?」

まつり「ほ? そんな勝負受けられないのです。 そうやって姫を煽ればノーリスクで戦えるとでも思ったのです?」

まつり「戦いの世界は常にハイリスクハイリターン、何かを得るためにはそれ相応のものを賭ける必要があるのです」

恵美「っ……」

「まぁ、いいじゃないですか~」

紗代子「あの人が……」

百合子「『キング』…… 現高校ビーチバレー界最強の女……」

美也「はい~ キングですよ~」

まつり「美也ちゃん、勝負受けるつもりなのです?」

美也「はい、恵美ちゃんはとーっても強いですから、きっとわたし達ももっと強くなれるはずですよ~」

まつり「姫は反対なのです。 負けたら美也ちゃんが部長を辞めるなんて大変なのです」

美也「大丈夫ですよ~ 何て言ったって……」

美也「わたし達は負けませんから」

紗代子「っ……」

紗代子(すごい…… 見た目はとっても緩そうな人だし、強そうな感じなんてしないけど……)

紗代子(間違いない、私よりも、恵美先輩よりも圧倒的に強い…… !)

美也「勝負、するってことでいいんですよね?」

恵美「…… やっぱり

紗代子「はい、やりましょう」

恵美「ちょっと紗代子っ!」

紗代子「恵美先輩、私たちはビーチバレー部を取り戻しにきたんですよね? もう逃げないって、今度こそ勝つってそう決めたじゃないですか」

恵美「……」

紗代子「勝ちましょう。 それだけです」

美也「紗代子ちゃんはやる気たっぷりみたいですね~?」

恵美「そうだね、その通りだよ……」

まつり「姫たちが勝ったらどうするか、試合中に考えておくのです♪」

紗代子「試合前に約束したこと、忘れないでくださいね」

美也「いいですよ~」

まつり「それじゃあルールは1セット21点先取、7点ごとにコートチェンジでいいのです?」

恵美「いーよ、時間も無いしさっさと決めてあげる」

紗代子「いい勝負にしましょう?」

美也「よろしくお願いします」


百合子「じゃんけんの結果、サーブは美也さんからです」

百合子「紗代子さんは正式な試合は初めてですけど大丈夫でしょうか……」

紗代子(落ち着け私…… いつも通り、いつも通り……)

美也「では~ それ~ !」

美也さんの放った球はふわりと私に飛ぶ、うん 角度はキツいけどこれならちゃんと返せる!

紗代子「先輩っ!」

恵美「おっけ!」

恵美先輩の渾身のスパイク、コースも威力も申し分ありませんでしたが美也さんは難なくそれを返します。

恵美「ツー!」

空を舞うボールを追うようにまつりさんが跳ねて……

紗代子(来る!)

まつりさんの前には恵美先輩が立ってる。 クロスで来るはず!

まつり「ほっ!」

紗代子「よしっ!」

思い描いた通りのコース! 恵美先輩のアタックより少し早いけど返せない球じゃないはず!

球が落ちる箇所に私は腕を伸ばしボールが触れた…… 瞬間

紗代子「っ!?」

重いっ…… !

まつり「紗代子ちゃんじゃまだまだ姫のスパイクを返すには力不足なのです」

紗代子「あぁっ!?」

恵美「っ!」

私はレシーブに失敗し、ボールは明後日の方向へと流れていった……

紗代子(くっ…… なんて強くて重いボール…… 全然返せる気がしない……)

* * *


紗代子「まつりさんと美也さんってどんなペアなんですか?」

恵美「うーん、まぁ完全分業タイプかな、美也はほとんど打ってこないし、まつりは余程じゃないとネット前から動かない」

紗代子「なるほど…… まつりさんのスパイクは恵美先輩より強烈なんですよね?」

恵美「そうだね」

紗代子「正直、私は恵美先輩以上のパワーなんて想像出来ないです……」

恵美「パワー、か…… ちょっと違うんだよね」

紗代子「え?」

恵美「単純なパワーなら多分アタシの方が上」

恵美「まつりの強さは『無駄の無さ』あいつの完璧なフォームから打たれるスパイクは一切のパワーロス無くコートに打ち付けられる」

恵美「コツを聞いて真似しようとしたけど、全然出来なかった」

紗代子「そうなんですか……」

恵美「そ、だからアタシのアタックをレシーブできないくらいじゃまつりのを取るのは絶対ムリ!」

紗代子「はい! 頑張ります!」


* * *


まつり「どうしたのです? まだ1ポイント取っただけなのです、よ?」

今回はここまで
年内には完結させるつもりで頑張ります。

tes

紗代子(そうして、私はほとんどまつりさんのアタックを返せないまま、点差は広がっていくばかり)


まつり「いくのです!」

恵美「通さないよ!」

紗代子(恵美先輩がブロックしてるし、来るならクロスのはず……)

まつり「ふっ……」

まつりさんの放ったボールは私の予想した方向と逆、コートの外側へ飛び出した…… ?

紗代子「ミス…… ?」

恵美「紗代子っ! それ! 入るっ!」

紗代子「えっ!?」

恵美先輩を避けるように打たれたボールは回転を続け、弧を描き……

私たちのコートへ着地した。

紗代子「っ……」

まつり「どうなのです? 姫のびゅーてぃほー! なテクニックは?」

恵美「落ち着いて、今の奇襲は一発芸みたいなものだから、知ってれば簡単に返せるはず」

紗代子「はい……」

恵美先輩の言う通り、さっきのボールはそんなにスピードも無いしもう一度来たらきっと返せる。 だけど存在自体が厄介

あのボールを意識すれば普通のスパイクへの対応が疎かになってしまうし……

まつり「ほっ!」

恵美「ワンチ!」

紗代子「これならっ!」

百合子「返した!」

恵美先輩により勢いの弱まったボールは何とか私でも返せる威力になっていた。

紗代子「恵美先輩!」

恵美「いくよ美也っ!」

恵美先輩の放つ渾身のスパイク、でもそれを美也さんはいとも簡単に返してしまう。 何度も何度も見た光景。

そして浮き上がったボールを高く飛び上がったまつりさんが捉える。 その瞳の先に居るのは…… 私

まつり「いくよ」

紗代子「っ!」

さっきまつりさんのスパイクを受けたばかりで、体勢を立て直せてない私に再びまつりさんの強烈なスパイクを返せるはずもなく……

紗代子「……」

まつり「これで12-4、紗代子ちゃんはこの程度なのです?」

美也「勝負になりませんね~?」


ダメだ…… 勝てない、このままじゃ……!

紗代子「恵美先輩」

恵美「何々? もしかして諦めたとか言わないよね~?」

紗代子「いえ、違います」

恵美「…… 嫌だ」

紗代子「先読みしないでください」

紗代子「前衛と後衛、入れ換えましょう」

恵美「ダメ」

紗代子「恵美先輩は元々後衛だったんでしょう? それなら今の陣形の方が変ですよ!」

恵美「あのね、紗代子がもし前衛に出て怪我したらどうすんの? あいつらは紗代子が試合するの初めてだからって手抜かないし全力で打ってくるよ?」

紗代子「大丈夫です。 私丈夫ですから!」

恵美「だから…… !」

紗代子「恵美先輩、まつりさんのアタック何回止められました?」

恵美「っ……」

紗代子「1回も止められてませんよね?」

恵美「自分なら止められるって言いたいわけ?」

紗代子「わからないです。 でも少なくともこのまま試合を続ければ私たちは負けます、確実に」

紗代子「私は勝ちに来た、そうでしょう!?」

恵美「……」

紗代子「私は逃げませんし、引きません! 誰からも」

恵美「……わかった、アタシの負け その提案乗るよ!」


まつり「ほ? ポジションを変えるのです?」

紗代子「はい、今度は私が前です!」

まつり「はいほーっ!」

紗代子「恵美先輩!」

恵美「はいよっ!」

まつりさんのスパイクを恵美先輩は難なく返しました。 やっぱり先輩は凄い!

紗代子「お願いします!」

恵美「いくよっ!」

紗代子(まつりさんが動かない…… っ!)

前衛であるまつりさんはネット前から飛ぶ素振りも見せず、じっとボールの行方を追っているだけ。

恵美「はぁっ!」

恵美先輩の打ったボールは鋭く相手のコートに突き刺さり……

美也「はいっ」

ませんでした……

まつり「前と後ろを切り替えたくらいじゃ勝てないのです!」

恵美「くっ……」

* * *


紗代子「それで、美也さんはどんなプレイヤーなんですか? 後衛なのはわかりましたけど……」

恵美「まぁ簡単に言えばどんなボールでも拾える って感じだね、まつりが下がる必要が無いくらいの守備範囲を持ってるよ」

紗代子「ビーチバレーのあの広いコートをひとりで守るなんて、そんなこと可能なんですか……?」

恵美「出来るんだよ、美也にはね」

恵美「美也の強みはふたつ、圧倒的な選球眼と無限って言えるほどのスタミナ」

紗代子「選球眼とスタミナ?」

恵美「そ、基本的に美也にはフェイントは通じないし、逆を突くのも無理、こっちの打つ方向を完璧に読まれる」

恵美「そして美也は試合終了まで決して息切れることなくボールを拾ってくる」

恵美「そして、美也が完璧に守るってことはまつりが攻撃に集中出来るってこと」

恵美「美也のバックアップによってまつりは常に100%のポテンシャルを発揮してくる、と」

紗代子「…… 恵美先輩の話を聞くだけじゃ想像出来ませんけど、恵美先輩たちが勝てなかったってことは相当強いんですよね」

恵美「そうだね、アタシとあの子じゃどうやっても勝てなかった」

紗代子「弱点とか無いんですか?」

恵美「わからない…… けど、作戦はある」

紗代子「作戦?」

恵美「負けたあの日からずっと考えてた。 いつかあいつらともう一度戦う時、勝てるような作戦を」

恵美「それは……」


* * *

恵美「そして、美也が完璧に守るってことはまつりが攻撃に集中出来るってこと」

恵美「美也のバックアップによってまつりは常に100%のポテンシャルを発揮してくる、と」

紗代子「…… 恵美先輩の話を聞くだけじゃ想像出来ませんけど、恵美先輩たちが勝てなかったってことは相当強いんですよね」

恵美「そうだね、アタシとあの子じゃどうやっても勝てなかった」

紗代子「弱点とか無いんですか?」

恵美「わからない…… けど、作戦はある」

紗代子「作戦?」

恵美「負けたあの日からずっと考えてた。 いつかあいつらともう一度戦う時、勝てるような作戦を」

恵美「それは……」


* * *


恵美「やっぱ単純な力押しじゃ勝てないよね……」

恵美「『作戦』行きますか…… !」

紗代子(あのサイン……)

恵美先輩の後ろ手でサインが示される。 勝つための、あの作戦!

紗代子「はいっ!」

恵美先輩の考えた作戦、通じるかわからないけどまつりさん達に勝つにはこれしか!

まつり「はいほー!」

恵美「んっ!」

紗代子「恵美先輩!」

私の上げたトスに向けて恵美先輩は飛び上がる。 放たれるのは全力の一撃、じゃない

美也「っ! まつりちゃん!」

紗代子「バレた!?」

恵美「いくよっ」

さっきまでの全力のスパイクとは違う。 恵美先輩の放ったボールはふわりと浮かび、まつりさんの後ろに落ちる。

まつり「っ、姫を狙うつもりなのです!」

今までネット前にずっと張り付いていたまつりさんが初めて後退しボールを受ける。

美也「まつりちゃん」

まつり「ほっ!」

突然の事態にも崩れることなく返球してきたけど、やっぱりまつりさんのスパイク さっきまでより弱い!

恵美「ヒョロいよ! まつりっ!」

作戦成功だ!

恵美先輩の考えた作戦は『分断』

美也さんとまつりさんが完全な分業をしてる限り崩れないなら、攻守のリズムを乱れさせるしかない。

そのために恵美先輩がずっと練習していたのがポーキー 『浮くボール』

まつりさんの頭上をすり抜けて少し後ろに落ちる、美也さんじゃ取れないけどまつりさんならギリギリ拾える位置への攻撃。

これによってまつりさんをネット際から離して、万全の状態でのスパイクを封じる。

試合開始からずっとずっと機を伺ってた。 相手を乱す最高のタイミングを!

紗代子「これで決まりです!」

まつり「くっ……」

いける…… 勝てる!

恵美「決まりっ!」

15-7 コートチェンジだ。

紗代子(相手のリズムを崩すことで私たちのペースが生まれてる、これなら)

まつり「ねぇ紗代子ちゃん」

紗代子「な、なんですか……?」

まつり「もしかして…… 『勝てる』なんて思ってる?」

紗代子「……」

紗代子「『勝てる』じゃありません 『勝つ』です」

まつり「ふーん……」

まつり「私たちは負けない。 貴女たちに負けられない理由があるように、私たちだって絶対に負けられない理由があるから」

紗代子「っ……」

まつりさんの目はまっすぐ私を見据え、一切の揺らぎが無かった。 試合の流れは確かに私たちが掴んでるはずなのに、それも自分の想定内とでも言いたげなそんな目。

気圧されちゃいけない。 まつりさん達がリズムを取り戻す前に一気にポイントを取って勝つ!

恵美「それっ」

まつり「もう対策済みなのです!」

早くもまつりさんは浮くボールに対応し始めてる…… けど!

まつり「はいほっ……」

紗代子「させない!」

今まではまつりさん達の動きに翻弄されるばかりだったけど、今ならブロックも出来る。

まつりさんの強烈なボールは私の手に触れ……

紗代子「落ちろーっ!」

まつり「っ!?」

紗代子(やった……!)

私の手に弾かれたボールはまつりさんの横をすり抜けそのまま地へ落ちる。

相対するまつりさんの顔が崩れるのが見える。 この一点はただの一点、だけどこれを取ることでこの勝負は完全に私のペースになる。

絶対の一撃だったはずのまつりさんのスパイクをブロック出来るようになったんだから…… !

勝負を分かつ決定的なボールがゆっくりゆっくりと砂に着……

美也「はぁぁぁぁぁっ!」

紗代子「えっ!?」

瞬間、美也さんが強烈な勢いでボールを拾い上げた。

美也「まつりちゃんっ!」

まつり「OKなのです!」

動揺する私と動き出した二人では流れる時間の早さが違うかのようで、体勢を建て直す暇もなく美也さんのスパイクがコートへ突き刺さった。

美也「勝つのはわたし達、なんですよ?」

紗代子「くっ……」

恵美「負け…… か……」

そこからは早かった。 私たちの作戦は完全に対策され、手も足も出ないまま負けた。

まつり「まぁまぁ、いい勝負だったのです よ?」

そんなことない。 スコアで見たら21-7 私たちの惨敗だ。

『絶対に勝つ』そんな大言を吐いておいてこのザマ、考えてみれば当たり前だ。 ここに居るのは高校女子ビーチバレートップクラスの選手たちばかりで、本来私みたいな初心者が立ち入れる領域じゃないんだ……

紗代子「ごめんなさい…… 恵美先輩……」

恵美「…… アタシこそ」

まつり「恵美ちゃん、紗代子ちゃん、この試合をする前に話したこと覚えているのです?」

恵美「アタシに部活に戻れって?」

まつり「もちろん恵美ちゃんには戻ってきて欲しいのですけど、紗代子ちゃんにもビーチバレー部に入って欲しいのです」

紗代子「私も…… ですか?」

まつり「はい、ビーチバレーはひとりじゃ出来ない、今の恵美ちゃんのペアは間違いなく紗代子ちゃんなのです!」

恵美「やめてよ、あんた達のめちゃくちゃな練習に紗代子も付き合わせるつもり!?」

まつり「もちろん、今の試合で課題も見つかったし、ふたりが協力してくれたら姫たちはもっとぱわほー!?になれるはずなのです」

恵美「やっぱりアタシ達のこと練習相手としか思ってないんだね……」

恵美「ねぇなんで!?なんでそこまで強さに拘るの!??もうあんた達は全国一のペアじゃん!?後輩を潰してまで自分たちが強くなりたいワケ!?」

美也「自分たちが一番強い……?それはただの慢心ですよ~」

恵美「は?」

美也「確かにわたし達は前回の全国大会を制して高校女子ビーチバレートップの座につきました。?だけどそれはあくまで前期の話です」

紗代子「どういうことですか……??」

まつり「練習して強くなってるのは、姫たちだけじゃないってことですよ」

美也「春の合宿、そこでわたし達は様々なペアを見ました。?前期は公式戦に出ていなかった2年の新人がどんどん頭角を表していました」

まつり「王座に胡坐をかいてはいけない。?いつだって自分の限界のその先を目指さないと勝利はあり得ない。?だから練習相手として恵美ちゃんに戻ってきて欲しかったのです」

まつり「姫たちが恵美ちゃんに戻ってきて欲しい理由、わかってもらえたのです?」

恵美「……」

まつり「私たちは勝ちたい。?連覇を成し遂げて自分たちの名前を残したい。?そのためにはもっともっと強くならないといけないの!」

まつり「だから……?ビーチバレー部に戻ってきて?」

恵美「……」

紗代子「わかりました」

恵美「え、ちょ紗代子!?」

紗代子「試合に負けたんだから素直に聞かなくちゃダメですよ、恵美先輩」

恵美「いやだけどさ……」

紗代子「それに、これはチャンスなんです」

美也「チャンス?」

紗代子「ビーチバレー部に入って強くなるのは何もまつりさん達だけじゃありません、私たちももっともっと強くなれるはずです!」

紗代子「そしてまつりさん達を上回れば、今度は私たちが全国で戦える……?そうですよね?」

美也「たしかに……?その通りですね~」

まつり「ほっ……?紗代子ちゃんは本当に面白い子なのです」

紗代子「それに、まつりさん達に勝つって目標はまだ達成出来ていません。?強くなって、強くなって、まつりさん達に勝ちましょう!」

恵美「……」

紗代子「恵美先輩!」

恵美「あー、わかったわかった!?もうホント紗代子には言いくるめられてばっかだよ!」

恵美「いいよやってやろうじゃん!?戻るよビーチバレー部」

まつり「わーい!?なのです~」

恵美「まつり!?あんた達は絶対にリベンジするから!?コートの上で待ってろ!」

まつり「ふふ、望むところ?なのです!」

紗代子「恵美先輩、改めて……」

紗代子「私と、正式にペア組んでもらえますか?」

恵美「……」

差し出した私の手、それはすぐにはとられなかった。

けど、数秒の後しっかりと私の手は握られた。

恵美「いいよ、一緒に行こう?全国!」

紗代子「はい!」

ビーチバレー部に入って、私の挑戦が本当に始まるんだ……?!

百合子「あの……?皆さん私のこと完全に忘れていませんか……?」

百合子「餃子は置いてきた?この戦いにはついていけそうにもない?ですか……??」

まつり「ほ??貴女は誰なのです?」

百合子「七尾百合子です!?普通の紗代子さんの同級生ですよ!」

紗代子「百合子ちゃんは普通では無いと思うけどな……」


おわり

動き出しためぐさよペア……?だが?

恵美「紗代子!?動き悪い!」

紗代子「ご、ごめんなさいっ!」


『あの子』の帰還!?

「待たせちゃってごめんね……」

恵美「っ……?!」


めぐさよペア解散!?

恵美「ごめん、やっぱりアタシは紗代子とは組めない……」

紗代子「解散……?ですか……」


本気を出した結果?

紗代子「えっ!??百合子ちゃんが試合に出るの!?」

百合子「待たしちまってわりかったな……」


全国を戦うのは一体誰!?

紗代子「頼みましたよ……?一緒に勝ちましょう!」


次回『全国への挑戦編!?激闘の高山紗代子!』


続かない

俺たちの戦いはこれからだ
乙です

http://i.imgur.com/QNYLMdS.jpg

新入生役 高山紗代子(17) Vo/Pr
http://i.imgur.com/LoRteOS.jpg
http://i.imgur.com/BXCpqFF.jpg

先輩役 所恵美(16) Vi/Fa
http://i.imgur.com/66p29Ha.jpg
http://i.imgur.com/Dsude19.jpg

キング役 宮尾美也(17) Vi/An
http://i.imgur.com/jF3bceI.jpg
http://i.imgur.com/qjNHsyK.jpg

右腕クイーン役 徳川まつり(19) Vi/Pr
http://i.imgur.com/kytcdri.jpg
http://i.imgur.com/kBtVKYP.jpg

同級生役 七尾百合子(15) Vi/Pr
http://i.imgur.com/6FDxWWn.jpg
http://i.imgur.com/xJIDaJa.jpg

宣言通り、ギリギリ年内に終わらせました。
紗代子誕生日おめでとう。 来年もよろしくお願いします。

ということで2017年に投稿した奴全部宣伝しまー


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2017年は支部に投げたの含めて多分55本くらい書きました。 来年はもっと書けるように頑張ります。
読んでくれた人ありがとうございました。


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