【少女終末旅行SS】チト「なんでもできるユーと」ユーリ「弱気なちーちゃん」 (26)

重い感じのユーリが書きたかっただけ

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トトトトト…

チト「ユー」

ユーリ「なに?」

チト「今日やたらと暑くないか?」

ユーリ「え、何それ」

ユーリ「暑いわけないじゃん、雪まで降ってるのに」

チト「そうか」

ユーリ「うん」

チト「いや、暑いね」

ユーリ「は?」

チト「脱ぐ」ヌギッ

ユーリ「ちょっ、運転中に何してんの!?」バッ

チト「放せ!脱ぐんだー!!ジタバタ

ユーリ「危ないって!」

ユーリ「ほらハンドルが!!」グイッ

ドスン!

ユーリ「わーっ!」ベシャ

ユーリ「いたたたた…」

チト「うう…」

ユーリ「まったく、ちゃんと前見て運転しないから…」

ユーリ「いきなりどうしたのさ?ちーちゃんがご乱心だなんて珍しい」

チト「…」

ユーリ「ちーちゃん?」

チト「ユー…」ハァハァ

ユーリ「だ、大丈夫?」ジュッ

ユーリ「うわっ、すごい熱!?」

チト「ごめん」

チト「私はもう、ダメみたいだ…」

ユーリ「何言ってるのちーちゃん!?」

チト「」ガクッ

ユーリ「ちーちゃん!?」

ユーリ「ちーちゃーん!!」



チト「ん…」ムクッ

ユーリ「あっ、起きた?」

チト「ここは…?」

ユーリ「たぶん倉庫か何かの跡じゃないかな」

チト「ユーがここまで運転したのか?」

ユーリ「うん、まあ…屋根があるとこ探してさー」

ユーリ「前にちーちゃんがケガした時以来になるのかな?」

ユーリ「けっこう距離があったけど何とかできたよ」フフン

チト「そうか…」

ユーリ「熱は下がった?」

チト「うーん…」

ユーリ「汗がすごかったから拭いて、それから救急箱にあった解熱剤を飲ませたんだけど、どうかな?」

チト「だいぶ楽になった…、とは思う」

チト「まだ体は重いし関節は痛いけどね」

ユーリ「そうなんだ、食欲は?」

チト「正直あまり…」

ユーリ「ダメだよ?食べなきゃ!」グイッ

チト「お、おい…」

チト「何だこれは?」

ユーリ「ふっふっふっ…」

ユーリ「ユーリ様特製”おかゆ”です」

チト「おかゆ?」

ユーリ「変なものじゃないよ、この本の通りに作ったから」

ユーリ「と言っても、材料がそろわないからレーションで代用したんだけどね」

ユーリ「レーションを砕いてから、お湯に溶かして塩を入れたんだ」

チト「ちょっと待て」

ユーリ「あ、燃料使ったのバレちゃった?」

チト「そうじゃなくて」

チト「さっき本の通りって言ったけどお前、字は読めないだろ?」

ユーリ「あー、それね」

ユーリ「なんでいまだに勘違いされてるのかよくわかんないんだけど…」

ユーリ「まあ私もあえて否定しなかったし?」

ユーリ「面白がってわざと読めないフリをしてたってところもあるからなー」ウンウン

チト「おい、何の話だ?」

ユーリ「ちーちゃん、本当に覚えてないの?」

チト「?」

ユーリ「2人でいっしょにおじいさんに読み書き教わったこと」

チト「…」

チト「…あ!」

ユーリ「思い出した?」

ユーリ「それからだよね、ちーちゃんが本にハマったの」

ユーリ「私は本に全然興味なかったから読まなくて、それで勘違いしちゃったのかもね」

チト「そう、なのか…?」

ユーリ「もしかしてちーちゃんって…」

チト「ん?」

ユーリ「記憶力悪い?」

チト「お前にだけは言われたくない」

チト「でも、そうか」

チト「ユー、字が読めたのか…」

ユーリ「じゃなくて!」バン!

ユーリ「今そんなことどうでもよくない!?」

ユーリ「ほら、おかゆが冷めちゃう!」グイッ

チト「い、いいよ…」

ユーリ「だーめ」

ユーリ「あーんして、あーん」

チト「やめろよ、恥ずかしいだろ…」カアア

ユーリ「私たちしかいないのに恥ずかしいも何もないじゃん」

ユーリ「ほら、あーん」

チト「わ、わかったよ…」

チト「食べればいいんだろ!?」パクッ

ユーリ「お、いい食いつき」

チト「///」

ユーリ「どう?」

チト「う、美味い…」

チト「塩加減が絶妙だ」

ユーリ「でしょー」ニコニコ

ユーリ「やっぱり私ってこういう才能があるっていうかー」

ユーリ「ちーちゃんもそう思わない?」

チト「うっ…」ポロポロ

ユーリ「えっ何…ど、どうしたの!?」

ユーリ「どこか痛いとか?」オロオロ

チト「いや…」

チト「ユー、ちゃんと運転できるし、字も読めるし…」

チト「美味しいおかゆも作れるし、病人の介護もできるんだな」

チト「ホントに才能あるよ…」

ユーリ「ご、ごめん…ちょっと調子乗りすぎちゃったかな!?」

ユーリ「そんなことちーちゃんはいつもやってることだよね…」

ユーリ「運転とかもっと代わってあげればよかったし…」

ユーリ「何て言うか、今までちーちゃんに甘えることに慣れ過ぎちゃってたからさー」

ユーリ「って、言い訳になってないなこれ…」

チト「違う、そうじゃないんだ」

ユーリ「え?」

チト「私は…、ユーにもっと頼ってもらいたいんだ」

チト「ユーに頼られることが私の生きがいだと思ったから…」

チト「だから今まで、ユーの事を何にもできないダメダメな奴だと思い込んでた」

チト「日記にもユーの事ボロクソに書いたし…」

ユーリ「ちょっと!?」

チト「でも今回、はっきりわかったよ」

チト「私が迷惑かけて、熱出して何にもできない時でも、ユーはちゃんと対応できた」

チト「別に私の助けなんて必要なかったんだな…」

ユーリ「そんな…」

チト「なあユー」

チト「ユーが何でもできるなら、私の存在意義はいったい何なんだ?」

ユーリ「何を言って…」

チト「いや、そんなことどうでもいいか…」

チト「ユーが一人でも大丈夫だってことがわかったんだし、むしろ喜ぶべきなんだよな」

チト「この分ならユーは私が死んでも大丈夫そうだ」

ユーリ「ちーちゃん…?」

チト「ユー、もしも私がこのまま死んだら…」

チト「今じゃないかもしれないけど、明日、この先…その時が来たら」

チト「その時はせめて…、私の分まで生きてほしい」

ユーリ「あのさぁ…」ハァ

ユーリ「ちーちゃんはまーた勘違いしてる」

チト「ユー?」グスッ

ユーリ「ちーちゃん、私たちが出会ったのっていつだっけ?」

チト「いつ…?」

ユーリ「気付いたら一緒にいた、そんな感じしない?」

チト「…」

ユーリ「ずっと昔から私たちはふたりで旅してきて、今があって…」

ユーリ「そしてこれからもずっと、ずーっと続けていくんだと思う」

チト「…?」

ユーリ「…つまりさ、私たちはふたりでひとつなのであるわけでして」

ユーリ「なんていうか、お互いがお互いにとっての存在意義というか…」

ユーリ「あーもう、何でわかんないかなあ!?」

チト「!?」ビクッ

ユーリ「ちーちゃんが私と一緒にいてくれること!それがちーちゃんの存在意義なの!!」

チト「なっ…///」

ユーリ「ちーちゃんがいないと私、生きていけないもん…」

ユーリ「私にとってのちーちゃんはそんな存在」

ユーリ「…ちーちゃんにとって、私はそうじゃないの?」

チト「そ、そんなことは…」

チト「そんなことは、ない…」

ユーリ「よかった」ニコッ

ユーリ「だったら…」

チト「?」

ユーリ「めっ」デコピン

チト「いたっ」

ユーリ「ただの熱でしょ?」

ユーリ「そんなことで死ぬなんて冗談でも言わないでね?」キッ

チト「ごめん…」ヒリヒリ

ユーリ「もしちーちゃんが死んだら、私もすぐ死ぬから」

チト「えっ」

ユーリ「ちーちゃんがいない世界なんて生きる価値ないよ」

チト「ユー…」

ユーリ「だから、私のために生きてね?」

チト「…わかった」

ユーリ「さてと、今日はもう寝て」

ユーリ「明日は元通り元気なちーちゃんを見せてよね」

チト「うん…」

チト「あ」

ユーリ「?」

チト「お礼、まだ言ってなかったよな?」

チト「ありがとう、いろいろ…」

ユーリ「どういたしまして」

チト「おやすみ」

ユーリ「おやすみ」



トトトトト…

ユーリ「今日は昨日とうってかわって、いい天気だねぇ…」

ユーリ「絶好の旅日和だ」

チト「そうだな」

ユーリ「本当に体調は大丈夫なの?」

チト「まあな、おかげさまで」

チト「ユーこそ大丈夫なのか?運転」

ユーリ「もっちろん、まかせて!」

ユーリ「ちーちゃんは寝てていいよ」

チト「そうか、悪いな」

ユーリ「これからはどんどん私を頼りにしていいから!」

チト「…って言ったよな?」

ユーリ「あはは…」

チト「それなのに、なんで…」

チト「なんで!溝に!ハマるかな!?」

ユーリ「いやー、これは仕方ない」

ユーリ「誰だって気付かないよ」

チト「それ以前の問題だろ?」

チト「まっすぐ運転できましたか?」ゴゴゴ

ユーリ「できませんでした…」

チト「だよな?」

ユーリ「ハイ」

チト「あーあ、どうしよう…」ハァ

ユーリ「でもさ、考えようによっては良かったんじゃない?」

チト「何が?」イラッ

ユーリ「ちーちゃんの生きがいを取り戻せたじゃん」

チト「調子に乗るな」ゴン

ユーリ「ぐえっ」

ユーリ「いたい…」ヒリヒリ

チト「まあでも?」

チト「やっぱりユーは、私がいないとダメみたいだな」

ユーリ「うん、そうだよ」

チト「…」フーッ

チト「まったく…しょうがないなあユーは」

ユーリ「えへへ…」

チト「…引き上げるから、何か挟めるもの持ってきて」

ユーリ「りょーかい!」

おわりです。
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