【咲 -Saki- 】優奈「佐々野先輩、お誕生日おめでとうございます!」 (62)




「カン!」ガッ


「嶺上―――…」


「開花ならずや!」タン


「…………」



愛宕 洋榎―――


飄々として、それでいて自信に満ちた佇まい―――


伝統的に中堅にエースを置く、強豪 姫松高校の絶対エース―――


そんな彼女に夏のインターハイ、ちゃちゃのんは負けたんじゃ――――





(ちゃちゃのんの一手はコレ…!)


(どうかいの!)ピシッ


「ロン」


「!?」


「清老頭!!」




ちゃちゃのん「――――ふぇぇっ!?」ビクンッ






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1513247658



【こんな感じの作品です】


・12月14日、ちゃちゃのん誕生日ということで見切り発車です。


・広島県 鹿老渡高校の津秋 優奈さんと、ちゃちゃのん(佐々野 いちご)を主人公とした咲SSです。


・【咲 -Saki- SS】 大学編 - いちご味 - ちゃちゃのん「おかえりなさい」と直接の繋がりはありませんが、一応 姉妹作的な感じです。

【咲 -Saki- SS】 大学編 - いちご味 - ちゃちゃのん「おかえりなさい」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1450099989/)

本編終了後はどん亀進行で、番外編を今もだらだらと書いてます。





http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira149693.png
◇ 津秋 優奈(つあき ゆうな)…2年。 鹿老渡高校 先鋒

全国大会 団体戦一回戦 先鋒戦にて、強豪 姫松高校を相手に5万点以上の差をつける活躍をみせた実力者。

長いあいだ名前のない怪物扱いだったが、第174局「好敵」にて登場。



http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira149670.jpg
◇ 佐々野 いちご(ちゃちゃのん)…3年。 鹿老渡高校 中堅。 12月14日生まれ。 身長148cm。

全国大会 団体戦一回戦 中堅戦で姫松の愛宕 洋榎に清老頭をくらって全国に戦犯顔を晒しちゃった女の子。

その可愛らしいルックスと高い麻雀の実力で注目を集め、アイドル的な人気がある。







<1>


【広島・鹿老渡高校 麻雀部部室】12月某日―――



いちご「――――ふぇぇっ!?」ビクンッ


優奈「佐々野、先輩……?」


鹿老渡2年「いちごちゃん、ようやっと起きたみたいじゃね~~」ケラケラ


優奈「…………」


見知った顔ぶれに、見慣れた景色。


ここはちゃちゃのんが3年という時間を過ごした場所。




いちご「―――部室?」キョロキョロ


優奈「そうですが。 佐々野先輩、もしかしてまだ寝ぼけとります…?」


いちご「ふぇ……?」



彼女の名前は津秋 優奈ちゃん。


ちゃちゃのんの一つ後輩の高校2年生。


夏のインハイでは団体戦、最も実力が必要とされる先鋒を務めるほどの実力者。


実際 彼女は今年のインハイで、全国大会の常連校 姫松高校の先鋒さん相手に 5万点以上もの差を付ける大活躍をした。






優奈「佐々野先輩―――」


優奈「うちら後輩の練習 見とるうちに、そのまま寝ちゃったんですよ…」


いちご「あぅぅ… そうじゃった……///」


鹿老渡2年「いちごちゃんは、ホンにボケボケしとるけぇのぅ」アハハ


いちご「そ、そんなことはないじゃろ~~」


鹿老渡2年「いやいや、そんなんありまくりじゃろ~~」


いちご「むぅ~~~」


鹿老渡2年「いちごちゃんの可愛ええ ふくれっ面、頂きました~~♪」パシャッ


いちご「ちょっ…」


優奈「部活中―――」ムスゥ


いちご「あ… 優奈ちゃん、ごめんのぅ…」


鹿老渡2年「コイツは申し訳ない!!」


優奈「…………ハァ」



また怒られちゃった―――


優奈ちゃんはとってもしっかりした後輩ちゃんで、ちゃちゃのんはいつも怒られてばっかりじゃ―――






いちご「――――?」


いちご「ほうじゃ、このタオルケット……?」


いつの間にかちゃちゃのんにかけられとった、とってもぬくい にゃんこ柄のタオルケット―――




憩「優奈ちゃんが、眠れる森のいちご姫に優しく掛けたったんやで~~」ニュッ


いちご「ありゃ… 憩ちゃんじゃ……?」


優奈「さっきから、いましたよ…」


憩「どもどもやでーー♪ また勝手にお邪魔してますよーぅ」クスッ


いちご「そっか… 憩ちゃん、今日はようきんさったねぇ♪」ニコッ





いちご「それんしても…」


いちご「憩ちゃんは今日もピンクのナースさん姿が、とってもキュートじゃのぅ♪」


憩「えへへー♪ いつもキュートないちごちゃんから、とってもキュート言われてしまいましたよーぅ♪」ニコニコ


優奈「ただの社交辞令や思いますけど…」


憩「んもぅ~~ 優奈ちゃんのイケず~~」ツンツンッ


優奈「ちょ… 何、つついちょるんですか…」ヤメッ…



優奈ちゃんの後ろからひょっこり現れた、笑顔がとっても可愛ええショートカットの女の子。


少し間延びしたような大阪弁に、何故かいつもナース服を着た彼女は、北大阪の三箇牧高校2年生の荒川 憩(あらかわ けい)ちゃん。


麻雀がとっても強うて、団体戦では総合力で同じ北大阪の千里山女子に負けはしたものの―――


個人戦では全国2位っちゅう、とんでも成績を残しとるくらいの麻雀の鬼みたいな とっても凄い子じゃ―――





いちご「優奈ちゃん、タオルケットどうもありがとーの♪」ニコッ


優奈「風邪… ひかれても困りますから……」


憩「もぅ、優奈ちゃんはツンデレさんやねーー」クスクス


優奈「ちゃいますけぇ……///」プイッ


憩「うふふ… 優奈ちゃん、照れとる、照れとる~~♪」


優奈「照れちょらんけぇ……///」


憩「お顔が耳まで真っ赤やで~~」ニコニコ


優奈「夕日の関係で、そう見えちょるゆーだけです……」


いちご「えへへ……♪」


同い年で麻雀がとっても上手な二人。


特に優奈ちゃんは、憩ちゃんのことをライバルとして随分と意識しとるようじゃ。





優奈「そこ!! 何を笑っちょるんですか!!」ビシィッ


いちご「わひゃっ!? ゴメンなさい!!」


優奈「もぅ… 先輩なんですから、そんなんでイチイチ謝らんで下さい…」


いちご「ご… ゴメンなさい、なんじゃ…」


優奈「ほら、また…」


いちご「あぅぅっ……」シュン…



優奈「だいたい佐々野先輩は、先輩としての威厳が足りなさすぎるんです…」


優奈「そんなだから、後輩達からいちごちゃんとか呼ばれて―――」


鹿老渡2年「はいはい、優奈っち。 いちごちゃん涙目なっとるけぇ、そんくらいで許してやってな~~」


鹿老渡2年「いちごちゃんは、うちら鹿老渡のゆるきゃらじゃけぇ。 威厳出せゆーんは、ちぃーと難しいじゃろね~~」アハハ


優奈「あなたは、またそんなことを……」


優奈「…………」チラッ


いちご「」プルプル





優奈「少し言いすぎました。 ゴメンなさい…」ペッコリン


いちご「ん~~ん、優奈ちゃんのゆー通りじゃけぇ…」


いちご「ホンに、ゴメンのぅ……」


優奈「…………////」




憩「うふふ… 鹿老渡の子はみんなええ子やね~~」


憩「ご褒美にウチがなでなでしてあげますよーーぅ」ナデナデ


優奈「ちょっ… やめ―――」


いちご「えへへ……♪」


優奈「…………」ジトッ


いちご「わひゃっ!?」





いちご「それんしても憩ちゃん、お迎え行けんでスマンかったのぅ…」


いちご「憩ちゃん、わざわざウチの後輩の指導に顔出してくれたゆーに―――」


憩「そんな、気にせんでええですよーー」


憩「鹿老渡には立派なコーチ先生もおるんやし、ウチのは指導なんてそんなご大層なもんやないんやでー」


憩「ウチはただ可愛ええ いちごちゃんと優奈ちゃんと遊びたい思うて、こうして顔出しとるだけですよーー」ナデナデ


いちご「んもぅ… 憩ちゃんってば、またそんなことゆーて…」



高校入って少し経った頃、ちゃちゃのんが麻雀で伸び悩んどった時―――


大阪に麻雀がとっても 強い子おるゆー話を聞いて、会いに行ったことがちゃちゃのんと憩ちゃんの最初の出会い。


その頃の憩ちゃんはまだ中学生の女の子じゃったが、あの時はとにかく何かキッカケになるものが欲しかったんじゃと思う。


年の近い、麻雀の強い女の子と勝負して、ちゃちゃのんにゃぁ何が足らんのか…


ちゃちゃのんに必要なもの、それが何なのか―――この子と対局することで、何か見えるかもしれん思ったんじゃ。







結果は、ちゃちゃのんの完敗―――



世の中にゃぁ、ちゃちゃのんの想像も及ばんような 強い子がおるゆーことを思い知らされた―――





そして、それは―――



いくら手を伸ばそうと、絶対に届かん高みがあるんじゃと―――






そんな、残酷な現実を―――



実感としてうっすら感じることとなった、最初の敗北じゃった――――







憩「おかげさんで、いちごちゃんの可愛ええ寝顔もバッチリ見られましたし―――」


いちご「ね、寝顔! 見られちょったんか!?」


憩「ええ、それはもぅバッチリとーー」


憩「だらしなくよだれを垂らしながら、寝言にウチへの愛の言葉を囁く いちごちゃんはホンマ天使のようでしたーー♪」クスクスッ


いちご「ふぇぇっ!? ちゃちゃのん、そんなだらしない姿を見られちょったんかぁ!?」ウヒャーー


優奈「荒川さんの嘘に決まっとるでしょ!!」


憩「んもぅ… 優奈ちゃんのイケずぅ~~」ツンツン


優奈「ちょ… だから、どうしてツンツンするんですか!?」


いちご「う、嘘じゃったんか……」


優奈「まぁ、だらしなくよだれは垂らしてましたけど……」


いちご「~~~~!?」ゴシゴシ


鹿老渡2年「いちごちゃん、そん時の写メ見る~~?」アハハ


いちご「ひゃ~~ それ消して~~~!!」バタバタ


優奈「もぅ……」ハァ…






いちご「ほぇ……?」キョロキョロ


優奈「どうかされました…?」


いちご「今日は先生、まだ来ちょらんのじゃね…?」


鹿老渡2年「ぷっ… またいちごちゃんのボケ発動! 効果はバツグンじゃ…」


優奈「先生方は試験明けでテストの採点。 コーチは3年生の今後の事で、今日は部室にゃ顔出せんゆーとったでしょ―――」


優奈「じゃけぇ、うちらは絶賛 自主トレ中。 こうして荒川さんと打っとったんやないですか」


いちご「そ、そうじゃったの…」


憩「今日のいちごちゃんは、いつも以上にぽや~~んとしとりますねーー」クスクス


いちご「う~~~~///」






いちご「そういえば―――」


いちご「さっきまで、憩ちゃんと対局しとったんじゃよね―――?」


優奈「えぇ、まぁ……」





ロン―――



その掛け声に、ちゃちゃのんは起こされたんじゃった……?







優奈「………悔しいですけど、やはり荒川さんは強いです…」


憩「またまたぁ、優奈ちゃんは鹿老渡高校 期待のエースやないですかーー」


いちご「うんうん、優奈ちゃんはとっても強い子じゃよぉ~~」


優奈「それでも、荒川さんにゃぁ 及びませんでした……」


いちご「そりゃぁ、憩ちゃんはとっても強いけぇ―――」


優奈「そんなんは、何の言いわけにもなりゃしません……」



優奈「さっきの対局にしたって、結局 最後は荒川さんに持ってかれてしまいましたし―――」


鹿老渡2年「ま~~ 振り込んだのは、ウチなんじゃが―――」アハハ


鹿老渡2年「まさか… あんなん狙っとったとは、まったく想像出来んかったわ…」


いちご「まだ、卓の方はそのままになっちょるん―――?」ヒョイ


優奈「あ―――」


いちご「!?」







『ロン』



『!?』



『清老頭!!』



『32000―――思ったより 痛いんとちゃうか?』



『そんなん 考慮しとらんよ――――』ズ…





それは―――あの夏の日のフラッシュバック



いくら手を伸ばしても、努力だけでは届かん高みがあると―――





そのとても残酷な現実を―――



愛宕 洋榎、彼女との対局で―――



ちゃちゃのんは、実感として 感じてしまった――――





ちゃちゃのんにゃぁ、みなの期待に応えるだけの才能など ありはしないと――――








いちご「――――清老頭」


いちご「それに、この流れって……」


優奈「…………」


憩「…………」


鹿老渡2年「いちごちゃん………?」




いちご「へへっ……」


いちご「そりゃぁ、これはちょっと 考慮出来んよね……」


鹿老渡2年「あ~~ はい。 荒川さんにまんまと してやられたって感じです…」ポリポリ


いちご「…………」


優奈「…………」



あの夏のインハイで―――



ちゃちゃのんが振り込んだ、考慮出来んかったカタチじゃ―――






いちご「ちゃちゃのん、ちょっとお手洗い行ってくるのぅ…」アハハ


憩「アイドルでもお手洗い行くんやねぇ。 ほなウチもご一緒してええやろか~~♪」ソソッ


いちご「ちょ… ちょっと、いちご狩りに行くだけじゃよ~~///」


バタンッ タタタッ



鹿老渡2年「いちご狩りて、何じゃいな。 せめてお花摘みじゃろうに……」


憩「やっぱりいちごちゃんは、ナイスなリアクションしてくれますねーー♪」クスクス


優奈「あんまウチの先輩で遊ぶん、ヤメて貰えます……」


憩「ゴメンな~~ いちごちゃんばっか構っとったら、優奈ちゃん寂しなってまうよね~~」


優奈「そ、そういう話じゃのぅて――――」





憩「因みに殿方の場合、『ちょっと雉撃ちに行ってくる』ゆーらしいでーー」


鹿老渡2年「ほぇ~~ そりゃ初耳じゃ…」


優奈「モンゴル人の場合、『ちょっと馬を見てくる』ゆーらしいですよ…」


憩「ぶふっ… 優奈ちゃん、それドコ情報?」


憩「ちゅーか、それ自分らどこまで行く気やねんなーー」アハハ


憩「は~~ おもろいわーー」クスクス


優奈「ホンに、ええ性格しとりますよね……」ハァ







<2>



女子部員「荒川さ~~ん。 ちょっと休憩にして、紅茶とスイーツでも いかがです?」ゴッソリ


憩「これはこれは、いつもご丁寧に すみませんー♪」


優奈「そうですね。 ちょっと休憩にしましょうか」


鹿老渡2年「サンセー!!」


ワイワイ ガヤガヤ




憩「ん~~♪ このいちごのショートケーキ、えらい美味しいですねー♪」


憩「それに、この紅茶もえらい美味しいですし。 ホンマ鹿老渡のティータイムは、豪勢やねーー♪」


鹿老渡2年「これぞ鹿老渡名物、スイーツ地獄ゆーやつじゃな!!」


優奈「それ、失礼ですよ……」





女子部員「あはは、実はこれ みんな頂き物なんですよ」


憩「それは、どちらの足長オジさまから…?」


優奈「鹿老渡の商店街だったり、後援会の皆さまからのご好意ゆーやつです―――」


優奈「後は、佐々野先輩への個人的な贈り物だったり…」


女子部員「実際は、佐々野先輩への贈り物が大半なんですよね~~~」


鹿老渡2年「いちごちゃんだけじゃとても食べきれんゆーけぇ、こうして食べ物は部員みんなで ありがたく頂いとるんじゃよ」


憩「それはそれは… 何か妙なものとか、入ってませんよねーー?」ニコニコ


優奈「……………」ングッ


鹿老渡2年「だ、大丈夫じゃよ!! 今まで異物混入とか、そんなんなかったけぇ!!」ア、アハハハ…


憩「ちょっとだけ、不安になってきましたよーー」






ピンポンパンポーーン


『3年・麻雀部 佐々野 いちご―――』


『校舎内にいたら、至急 進路指導室まで来るように―――』


ピンポンパンポーーン


『繰り返す!! 3年・麻雀部 佐々野 いちご~~~!!』




優奈「佐々野……先輩?」


憩「おんや~~? いちごちゃん、何や 呼び出しされとりますねーー」


鹿老渡2年「いちごちゃん、何かやらかしたんじゃろか~~?」シシッ


優奈「ほんなら進路指導やのぅて、生活指導でしょ―――」


優奈「それにさっきの放送は、顧問の堂郷先生…?」


鹿老渡2年「堂郷んヤツがいちごちゃんに、何のようじゃ―――?」





憩「これってひょっとすると、ちょっとエッチな漫画の定番―――」


憩「先生が学園のアイドルを個室に呼び出し、ドキドキワクワク大人の進路指導いうやつなんじゃ~~///」ヒャーー


優奈「~~~~~!?」ブッ


女子部員たち「うっそ、マジでぇ~~~!!」キャーーーッ


女子部員たち「いやでも、全くありえん話じゃないよ~~~」キャーーーッ


女子部員たち「堂郷のヤツ、絶対いちごちゃんのこと特別扱いしちょるじゃろ~~」ワイワイ


女子部員たち「それ分かるわぁ!! いっつもいちごちゃんのこと見ちょるし、声かける時もぶちドモっちょるじゃろ!!」ガヤガヤ


女子部員たち「いちごちゃん可愛ええけぇ、心配んなってきたの~~」ヤンヤ ヤンヤ





優奈「そないアホなこと、あるわけないじゃろ!!」バンッ


優奈「堂郷先生は暑苦しいだけで、生徒想いな真面目な先生じゃけぇ!!」


鹿老渡2年「うぉっ!? 優奈っちがキレた!!」


鹿老渡2年「なんじゃぁ、優奈っちはあ~いうムサいオヤジが好みか~~?」


優奈「違います!!」


鹿老渡2年「即答かよ。 哀れ堂郷……」チーーン



優奈「荒川さんも、おかしなこと言わんで下さい!!」モーー


憩「あはは、えらいすんません~~」エヘヘー


憩「優奈ちゃんって、興奮すると方言 強うなるよねーー?」ウフフッ


優奈「そ… そがーなこと… あ、ありません……///」プイッ






キーーン コーーン カーーン コーーン…


鹿老渡2年「ん… もぅ、こげん時間じゃ…」


憩「いちごちゃん、なかなか戻らんねーー」


優奈「大方、進路指導の方が長引いとるんやないですか…」


鹿老渡2年「ほんで優奈っちぃ。 今日は、この後 どないするんじゃ?」


優奈「あ… 今日の部活はこれでシマイなんで、後片付けして 皆さん解散させといて下さい」


鹿老渡2年「ほ~~い!! 了解じゃ!!」


鹿老渡2年「荒川さ~ん、今日はたくさん勉強させて頂きました~~!!」


憩「ウチも楽しかったでーー♪」バイバイ



乙 ちゃちゃのん誕生日おめ♪



ガヤガヤガヤ…


センパイ、オツカレサンデース…


バイバーーイ…




憩「―――ほんで、正味な話なんやけどー」


憩「いちごちゃん… ま~だインハイでのこと、気にしとるん?」


優奈「ええ、まぁ…」


優奈「おそらくですけど……」



優奈「夏のインハイで、姫松高校に―――」


優奈「あの愛宕 洋榎に負けて以来、佐々野先輩 どっかうわの空ゆーか…」


優奈「ま~~ 元々ほっとくと、どっか遠くの空ばかり眺めとるような―――」


優奈「そんなうすらボンヤリした人なんですけど―――」





憩「団体戦 終わった後は、どないな感じやったんかなーー?」


優奈「団体戦 終わった後ですか…」


優奈「そりゃ~ もぅ―――」


優奈「ずっと大粒の涙こぼして、ぽろぽろ泣いとりましたよ……」


憩「いちごちゃん、泣き虫やもんな~~」


優奈「…………」




優奈「ほんでも翌日にゃぁ、いつもと変わらん明るい先輩に戻っとりました…」


優奈「今にして思えば、それが表面上のもんで―――」


優奈「うちらを心配させんための、精一杯の空元気だった気ぃもしますけど……」





憩「いちごちゃん、秋のコクマ(国民麻雀大会)でも調子悪そうやったよねーー」


優奈「たぶん、そん頃からでしょうか…」


優奈「佐々野先輩、麻雀の対局を避けとるよぅで―――」


優奈「あんなに大好きやったはずの麻雀に、ちっとも身が入っとらん感じで―――」


優奈「最近はアイドル活動の方が忙しくなってきたゆーて、麻雀やっとるトコあまり見かけないです…」


憩「やっぱりインハイでの 洋榎ちゃんとの対局が―――」


憩「いちごちゃんの中で、トラウマみたいになっとるんやろかーー?」


優奈「…………」





優奈「佐々野先輩は―――」


優奈「うちらにとって、特別な人だから―――」


憩「特別―――?」



優奈「ええ。 ホンでどうしょうもないアホです…」


憩「いやいや、アホかどうかは 別にええやろー」パタパタ


優奈「いえ、そこはとても大切なトコなので……」


憩「あぁ… さよかーー」





優奈「佐々野先輩は―――」


優奈「それ程おもちでもないクセに、昔から妙に華があって注目度バツグンの人やったでしょう」


優奈「特に去年のインハイでの活躍後は、テレビや雑誌なんかでもたびたび特集されとったし―――」


優奈「アホなくせして、応援団や後援会の規模も地元 広島だけやのうて、全国規模にまでなっとりましたし―――」


憩「優奈ちゃ~~ん、さっきからバブルスライムみたいんなっとんでーー」ドクドク シトルデ…


優奈「え… そうでしょうか―――?」


憩(この子も、大概やねーー)





憩「でもま~~ いちごちゃんはうちから見ても国民的 美少女や思うし、天性のアイドルちゃんやもんなーー」


憩「可愛くて素直なうえに麻雀も上手いとくれば、そら周囲のモンもマスコミもほっとかんよ~~」


優奈「佐々野先輩は、あくまで麻雀第一 ゆーとりましたけど…」


優奈「あの人 基本的にサービス精神旺盛なうえに、流され体質でしょう…」




優奈「自分を応援してくれる皆に喜んで貰いたい、落ち込んでる人を元気づけてあげたい―――」


優奈「そんためにも自分は絶対に負けられんとか、そんなことを大真面目に考えとったみたいなんですよね…」


憩「そういう一途で一生懸命なトコ、ホンマいちごちゃんらしい思うんやけど―――」


憩「それがプレッシャーになって、本人の気付かんトコで身動き出来なくなるような重荷になっとったんやろかーー」


優奈「…………」





優奈「鹿老渡高校の一回戦負けは、全部 自分のせいじゃって…」


優奈「試合が終わった後も、そりゃもぅ 何度も何度も泣きながら謝ってましたよ…」


優奈「別にうちらは、佐々野先輩のせいで負けたとは思っとらんのですけど―――」


優奈「―――でも佐々野先輩は、やっぱりそうは思えんかったよぅですね…」


憩「あ~ 見えて、えらい責任感の強い子やからね~~」


優奈「ようするに、アホなんですよ…」





優奈「応援してくれた人たちの期待に 応えられんかったことにしても―――」


優奈「今でも相当、気にしとる思いますよ……」


憩「…………」






憩「辞めるかもしれんねーー」



優奈「え―――?」







憩「いちごちゃん―――」



憩「このまま、麻雀―――ヤメてまうかもしれんね……」



優奈「まさか―――」



優奈「そんな……」





あの佐々野先輩が、麻雀をヤメる―――



荒川さんにそう言われるまで、何故かうちはそないなこと 考えもせんかった―――








<3>



【遡ること、1年と数ヵ月前―――】



広島でも指折りの麻雀の名門・鹿老渡高校 麻雀部―――


新入部員やったうちは、そこで初めて 佐々野先輩と出会った―――



優奈「津秋 優奈、1年です。 宜しくお願いします!」


いちご「お~~ 優奈ちゃんじゃな!! 鹿老渡高校 麻雀部へ ようきんさったね~~♪」


いちご「ちゃちゃのんは、ちゃちゃのんじゃよぉ~~♪」エヘヘーー


優奈「ちゃちゃのん―――?」


鹿老渡先輩「佐々野ぉ!! ちゃちゃのんじゃ 分からんじゃろぉ!!」パカンッ


いちご「あいた~~~!!」


優奈「おぉっ……」




いちご「へへっ、ゴメンのぅ~~」


いちご「うちは、佐々野 いちご。 麻雀部の2年生じゃよ~~♪」ニッコリ


優奈「は、はぁ……」


優奈(高校生にもなって、自分のことちゃちゃのんって―――)


優奈(ていうか、もしかして佐々野じゃけぇ ちゃちゃのん…?)イタイ…





いちご「えへへ♪ 優奈ちゃん、これからよろしくのぅ。 あくしゅ、あくしゅ♪」ニコニコ


優奈「あぁ… はい……」ニギニギ


優奈(後輩相手にヘラヘラして、変な人―――)




優奈「…………」


優奈(ていうか、この人―――)


優奈(もしかしなくても、メチャクチャ美少女―――?)ジーーー


いちご「ほぇ―――?」



優奈(少し舌っ足らずな甘い声、微かに漂う甘いストロベリーの香り―――)


優奈(ピンクがかったふわふわウェーブ髪に、ゆるふわツーサイドアップ―――)


優奈(そして全身から漂うこの甘くて柔らかい、全てを包み込むような癒し系まったりオーラ―――)


優奈(何なん、この生き物は… モテ神さまか? 地球温暖化? 世の中、やっぱり何かが 間違っとるんじゃ……)イラッ





いちご「お~~い… ゆうなちゃ~~ん!!」ジーー


優奈「は――――!?」



いちご「お~~ 起きた 起きた♪」


いちご「優奈ちゃん、さっきまで立ったまま 寝こけちょったんじゃよ~~」


優奈(いや、別に寝とらんし… 何故、そう思った……?)



いちご「熱とか大丈夫け…?」


いちご「おでこは―――」ピトッ


優奈「いやいや、熱とか全然 ありませんけぇ!!」////




佐々野 いちご―――



正直うちは、この変な先輩のことが ちょっぴり苦手じゃった―――







いちご「…………」トッ


麻雀部員「…………」トンッ


優奈「…………」スッ


いちご「それ、ロンじゃよ!!」パララッ


優奈「――――!?」


麻雀部員「あちゃ~~ また、いちごちゃんに持ってかれたか…」


いちご「えへへ、ゴメンのぅ♪」ペロッ


優奈「…………」




優奈(やっぱりこの人、麻雀だけは凄く上手い……)


優奈(あとその舌出しウインクポーズ、イラっとくる……)ジッ


いちご「――――ほぇ?」


優奈「…………」ジィーー





いちご「優奈ちゃん、いぇ~~い!!」ビシィッ


優奈(……あ、そのポーズも腹立つかも……)クスッ


いちご「えへへ… 優奈ちゃんの可愛ええ笑顔、ゲットじゃね♪」ニコニコ


優奈「あぅ… しまった……///」




いちご「優奈ちゃんとっても難しい顔しとったけぇ、やっぱり麻雀は楽しくやらんとね♪」ニコニコ


優奈「そういうの、うちは不謹慎じゃ思いますけど…」


いちご「えぇ!? そ、そうじゃろか……?」


いちご「ちゃちゃのんは、皆が楽しんだ方がええ思うんじゃが―――」


優奈「楽しいのは、いつだって勝った人だけ―――」


優奈「勝ち負けを決める真剣勝負の最中に楽しむなんて、やっぱりおかしいでしょう…」


優奈「勝負の世界は勝つか負けるか、それが全てなんですから―――」


いちご「そ、そうかのぅ……」





いちご「ほいじゃが、ちゃちゃのんは―――」


鹿老渡先輩「佐々野ぉ!! 対局中に何をお喋りしとるんじゃ!!」ベシッ


いちご「―――ふみゅっ!?」


優奈「おぉっ……!?」




いちご「んもぅ~~ 先輩、酷いんじゃよぉ~~」サスサス


鹿老渡先輩「対局中のお喋りは、周りのモンに迷惑じゃろ!!」


いちご「そりゃ~ ま~ そうかもしれんのじゃが…」


いちご「そんなパカパカ叩かれたら、ちゃちゃのんおバカになってまうよ~~」


麻雀部員「いちごちゃんの場合―――そりゃ、もぅだいぶ手遅れかもしれんの~~」アハハハッ


麻雀部員「確かに!!」カッカッカッ


いちご「酷い!?」

ワッハッハッハ…

ワイワイガヤガヤ…


優奈「…………」




麻雀を楽しむ―――


正直、何を甘っちょろいことをと思った―――




ただ、いつも楽しげに麻雀しとる先輩の姿にゃぁ


妙に周囲のモンを惹きつける、そんな何かがあったような気がする―――






【鹿老渡高校 資料室】


ウィィーーン… ピッ… ピピッ…


優奈「…………」


優奈(大生院の戒能に、千里山の藤白―――)


優奈(それに加えて、今年2年の白糸台 宮永―――)


優奈(控えめにゆーても、やはり全国はバケモンばっかりじゃ……)


優奈「…………」



優奈「三箇牧に行ったアイツじゃったら、どう戦うんじゃろ……」


優奈「ん… もぅこがー時間か…」チラッ


優奈「ふぅ… そろそろ帰るかの……」ガタタ






【鹿老渡高校 職員室】


ガララ…

優奈「堂郷先生、資料室の鍵 ありがとうございました」


堂郷「お~~ 津秋かぁ!! こんな時間まで、いつもお疲れさん!!」


堂郷「それにしても、津秋は本当に研究熱心だな~~!!」ハッハッハ


優奈「えぇ、まぁ。 牌譜とか過去の映像データなんかは、出来るだけ多く目を通しておきたいですし…」


堂郷「ハッハッハッ!! 鹿老渡かたまらんよう気をつけて、あまり日が呉線(くれせん)うちに帰るんだぞぉ!!」


優奈「ぶふっ……」


堂郷「おっ!? 今のダジャレは、なかなかだったか!!」


優奈「ぁ… まぁまぁ、でしょうか……」フイッ


堂郷「ハッハッハッ!! そ~~か、そ~~か!!」


堂郷「因みに今のダジャレはだなぁ、過労と鹿老渡がだな―――」ハッハッハ


優奈「……………」


堂郷先生、何年か前に竹原南からこの学校に赴任してきた体育教師―――


生徒想いで 悩み相談なんかも親身になって聞いてくれる、とてもええ先生なんじゃが―――


生徒たちの間では、地元広島ダジャレがキツいゆーことで 変人扱いされとる―――


因みに、うちは先生のダジャレ―――そんなに嫌いでもない……





堂郷「そういえば、佐々野のヤツはもぅ帰ったのか?」


優奈「佐々野先輩、ですか―――?」


優奈「部室の方にゃぁ、もぅおらんかったよぅですけど―――」


堂郷「そうか。 アイツはいつもいつも、あっちにふらふら、こっちにふらふら―――」


堂郷「いつまで経っても、落ち着きがなくて困る!!」


堂郷「大体、アイツときたらだな―――」


優奈「あの、うちはこれで―――」


堂郷「おっ、そうか!?」






【鹿老渡高校 玄関外】


ボーーン ポンポンポンポン…


優奈「―――うぅっ」ブルッ


優奈「梅雨も近いゆーに、この時間になるとまだ結構 冷えるのぅ…」


校舎から外に出ると、もぅだいぶ日も傾き、海の向こうへと沈みかけていた。




優奈「堂郷先生、佐々野先輩の話になると長いし―――」


優奈「――――!?」


そこにフッとうちの頭上を後ろから何かが通り抜け、べちゃっと墜落するよう地面に落ちた。





優奈「紙飛行機―――?」


優奈「何か、凄く不格好な落ち方じゃったな―――」ベチャッテ…


優奈「誰が飛ばしたんじゃろ…」ヨイショ


優奈「これって―――」





優奈「えと、どっから飛んできたんじゃ―――?」キョロキョロ


視界に人影らしきものはなく、既に校庭側の教室や廊下の窓も閉められていた。


優奈「―――てことは……」






【鹿老渡高校 屋上】


ギィィィィィ…


優奈「ロン、みたいじゃな――――」


???「―――――?」


少し重い金属の扉を押し開け、屋上へ出てみると―――


そこには金網状のフェンスを背にした佐々野先輩が、一人 ぼんやりと立っていた。





いちご「優奈、ちゃん―――?」


沈みかけた夕日が、あらゆるものの陰影を深め


それを背に立つ先輩の表情を、読みとりづらいものにしていた。





優奈「…………」


優奈「寂しそう―――」ボソッ


いちご「ほぇ―――?」


優奈「な、何でもないけぇ!!」リョウテ、バタバタッ


いちご「――――?」


優奈「~~~~~////」



うちの知っている、佐々野 いちごという人は


いつだって周囲の人を和ませるような、そんな優しい笑顔を浮かべている人だった。



だが沈みかけた夕日を背に、一人 屋上で佇む先輩の姿を見た時―――


とても綺麗だなと思うと同時に、本当は凄く寂しい人なのかもしれないと―――


その時のうちは、何故だかふと―――そんな風に思ってしまった。







いちご「もしかして―――」


いちご「優奈ちゃんが―――?」


優奈「は―――?」




いちご「あ―――うぅん、何でもないんじゃ!!」ヘヘヘッ


優奈「はぁ……?」



その時の佐々野先輩は―――


ちょっと気恥かしげな、そんな妙な愛想笑いを浮かべていた。





優奈「えと… この紙飛行機って、先輩のですか―――?」ヒョイッ


いちご「おぉっ… それはちゃちゃのんが飛ばした『いちご一号!?』」


いちご「ほいじゃが、どうして優奈ちゃんが―――?」


優奈「まぁ、帰り際にコレの墜落現場に居合わせたゆーか―――」


優奈(―――てか何じゃ… その妙な韻を踏んだ、だっさいネーミング…)


優奈(やっぱこの人、自分 大好きじゃろ―――)ジト…




優奈「いくら土に還るゆーても、ゴミのポイ捨てはあまり感心しませんよ―――」


いちご「へへっ、ゴメンのぅ~~」


いちご「一応、後で拾うつもりはあったんじゃよ~~」






いちご「それんしても、よぅコレがちゃちゃのんのって分かったのぅ―――?」


優奈「まぁ… 紙飛行機に使われた便箋を見た時から、何となく―――」


いちご「――――?」




優奈「佐々野先輩、こーゆーの好きそうだし―――」


優奈「確か、こんな可愛ええ ねこの絵柄の便箋 持っちょったなって―――///」


自分で言っていて、そげん細かなことまで覚えとったゆー事実が 妙に気恥ずかしく感じられた―――





いちご「えへへ… 優奈ちゃんはちゃちゃのんのこと、よぅ分かっちょるんじゃね♪」


優奈「たまたまです!! ホントたまたまなんで―――///」ブンブンッ


いちご「そうじゃったとしても、やっぱり嬉しいけぇ♪」ニッコリ


優奈「アホ―――」


いちご「えぇっ!?」


優奈「あ―――」



優奈「すみません、つい本音が漏れました…」


いちご「もぅちょい、フォローして~~!!」


いちご「ちゃちゃのん、これでも先輩じゃよぉ~~~」


優奈「まぁ、それはそれとゆーことで……」


いちご「うぅ… 優奈ちゃんは、厳しいのぅ~~」


優奈「…………」



それはズルいじゃろとゆーような、どこまでも真っ直ぐな笑顔を向けてくる―――


この人のそういうトコが、たまらなく嫌いじゃ―――






優奈「―――そんなことより、佐々野先輩!!」


優奈「こんなトコで何しとったんです? 大体、ここって結構 海風も強いし……」


いちご「ん~~ そうなんじゃよぉ~~」


いちご「まだまだこの時期、外は結構 冷え込むんじゃね~~」ズズ…


優奈「ほんなら、何でこんなトコに―――?」


いちご「う~~ん……」




いちご「どうも、今日もちゃちゃのんの 待ちぼうけみたいじゃ……」ヘヘヘッ


優奈「あ――――」


いちご「ん……?」


優奈「あ… いえ、別に―――」


いちご「優奈ちゃん……?」


優奈「………」





もしかすると、佐々野先輩は―――


誰かに恋を…… しとるんじゃろか―――




それも、きっと上手くいっていない、片想いの恋――――



いつもとちょっと違う先輩の様子に、うちはふと… そんなことを思った。







優奈「えと、先輩はまだ ここに残るんですか―――?」


いちご「ん~~ ほうじゃのぅ……」


いちご「もぅお日さんも暮れかけとるけぇ、そろそろ帰ろぅ思っちょるよ…」


優奈「そ… そうですね。 日が呉線うちに、早う帰った方が ええですね……」


いちご「日が、くれ せん……?」キョトン


優奈「あ……///」シマッタ…



痛恨のミス―――


堂郷先生の地元ダジャレが伝染った―――





いちご「あはは、優奈ちゃんの地元ダジャレじゃ~~♪」ケラケラケラ


優奈(案外、ウケちょる……?)ドキドキ







【帰り道―――】


いちご「ほうじゃ… 優奈ちゃんはこんな時間まで、何しとったん―――?」


優奈「うちですか? うちは資料室で過去のインハイ データを漁ったりとか―――」


いちご「やっぱり、優奈ちゃんは麻雀のこと 大好きなんじゃねぇ~♪」ニコニコ


優奈「と、当然です!! 麻雀では誰にも負けたくない、そう思ってますから…」


いちご「優奈ちゃん、負けず嫌いじゃもんね~~」ヘヘヘッ


優奈「やるからには勝たないと、意味ありませんし……」


優奈「…………」チラッ


いちご「ほぇ……?」



やっぱり、先輩はとっても綺麗な人だと思う。


ちょっと天然でアホなトコもあるけど、そんなトコも含めて とてもモテる人だ。



先輩みたいな人でも、恋のことで悩んだり―――


好きな相手に振り向いて貰えない、そんな片想いとかするんだろうか―――?






優奈「…………」ジーー


いちご「ゆ、優奈ちゃん…?」


優奈「―――何です?」


いちご「もしかして、さっきから 何か怒っちょる…?」ドキドキ


優奈「別に、何も怒っちょらんですよぉ…」ムスゥ…


いちご「うぅ… ぶち怒っちょるんじゃ……」


優奈「ふん……」



佐々野先輩が、片想い―――?


もしかして、待ち合わせ すっぽかされた―――?





優奈「何か、ちょっとムカつくかも―――」チッ


いちご「うひゃっ……!?」ビビクッ







【鹿老渡高校 麻雀部部室】


麻雀部員「…………」トッ


鹿老渡先輩「ほっ……」タンッ


優奈「ツモです。 3000・6000…」パララッ


鹿老渡先輩「げ… また津秋じゃ……」ハヤッ


鹿老渡先輩「自分、ホンマえげつないのぅ~~」


優奈「どうも……」


麻雀部員「これが才能、ゆーヤツなんかのぅ…」ハハッ


優奈「―――才能?」


優奈「そんな特別なものがあるなんて、思ったこともないです…」


優奈「うちに出来ることなんて、せいぜい日々の練習と対戦相手の研究と対策くらいなもんです―――」


麻雀部員「は~~ 優奈ちんはホンにドライじゃの~~」





鹿老渡先輩「今年は佐々野んヤツも勢いあるし、こりゃ今からインハイが楽しみじゃな!!」


優奈「夏の―――インターハイ……」ゴゴゴ…


麻雀部員・鹿老渡先輩「…………」



優奈「何か―――?」


麻雀部員「あ、いや~~」


麻雀部員「優奈ちん、結構 分かりやすいよな~~て……」クスッ


鹿老渡先輩「確かに―――」ハハッ


優奈「べ、別に、そんなことは……///」






優奈「そういえば、佐々野先輩はどうしたんです―――?」


優奈「今日はまだ見かけてませんけど、もしかして サボり…?」


麻雀部員「いや~~ いちごちゃんはいちごちゃんで、超がつく程の麻雀バカじゃからのぅ…」


麻雀部員「あの子が練習サボっとるトコ、ちょっと想像つかんじゃろ~~」


優奈「む… 確かに……」


鹿老渡先輩「美味しそうなカタチの雲を追っかけて、そのまま授業 遅刻したりはするがの―――」


麻雀部員「食いしん坊か……」


優奈「アホなんですか、あの人は―――」


鹿老渡先輩「ま~~ アホじゃな。 本人はそう思っとらんようじゃが…」


優奈「それで、サボりじゃないなら どうしたんです…」





鹿老渡先輩「あぁ… 佐々野じゃったら、保健室でぐったり寝込んどるはずじゃ―――」


優奈「えっ!? 何かあったんですか!?」


鹿老渡先輩「堂郷のカッター訓練あるじゃろ…」


麻雀部員「あぁ、あの堂郷式・地獄のカッター訓練……」ウゲ…


優奈「カッター訓練って、オール使って集団でひたすらカッターボートを漕ぎ進む……」


麻雀部員「優奈ちんも、オリエンテーションでやったじゃろ?」


優奈「えぇ、まぁ… 研修指導員の堂郷先生がスパルタで―――」


優奈「危うく手足 バラバラになるかと思いました―――」ゲンナリ…


鹿老渡先輩「そうそう! そのカッター訓練!!」





鹿老渡先輩「佐々野のヤツな、訓練中に力尽きて海にドボンしたんじゃって―――」カカッ


優奈「えぇっ、それってわりと笑いごとじゃないんじゃ!?」


麻雀部員「いちごちゃん、ドンくさいからのぅ…」


優奈「そもそも、先輩って泳ぎの方は…?」


麻雀部員「島っこなのに、カナヅチじゃ…」


優奈「あぁ、やっぱり……」


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