【咲-Saki-】求めあうしおるねSS【旧白糸台】 (19)

タイトル通り、咲-Saki-旧白糸台SSです
少し頭のおかしい宇野沢さんがるねさんを手籠めにしようとするお話になります。

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 私、宇野沢栞には好きな人がいます。
 
 彼女と出会ったのは一年生の頃、麻雀部に入部したとき。
 ちょうど一年前のことです。
 けれど部活中に少し話す機会があるくらいで、一年かけてもあまり仲良くはなれませんでした。

 学年が違うことや、お互い弱いなりに真剣に麻雀に取り組んでいたこともあって、なかなかお近づきにはなれずにいたのです。

 運が巡ってきたのは、私が二年生になったばかりの春のこと。
 彼女が三年になり、新入生が入ってきて数日が過ぎたころ。
 
 少し変わった一年生、宮永さんに誘われて入ったチームで、一気に距離を縮めることに成功したのです。

 それからなんやかんやとありまして、新チーム結成から一週間が過ぎる頃には、憧れの彼女、渡辺琉音先輩のことを――

栞「るねさん」

 と、下の名前で呼べる程度には、親しくなれていたのでした。
 るねさんも私のことを、まるで妻か何かのように『しおりィ』と呼びます。 
 二人で買い物に出かけたり、パンケーキを作ったり、一緒に宮永さんを餌付けしたり、これはもう充分に仲の良い先輩後輩の関係といえるでしょう。
 
 ここまで仲良くなれたということは、つまりはキスくらいしても全然かまわない関係、ということです。
 キスしてもOKだよ、しおりィということです。
 るねさん、私のことを誘っているのだと思います。


 そう気づいてしまった私は、ここ数日、眠れない夜を過ごしていました。
 早く彼女の唇をむさぼりたくて、辛抱堪らなくなってしまったのです。
 何度も何度もるねさんとのキスを想像して自分を慰めましたが、そろそろ我慢の限界が近い感じ。
 そこで私は、餌付けに成功した宮永さんに助力を請い、るねさん攻略作戦を敢行することにしたのでした。 

琉音「んだよ、こんなとこに呼び出して……」

 放課後、場所はとある空き教室。

 チームのことで相談があると呼び出し、先に教室に来ていたるねさんに背後から声をかけました。
 
 まどろっこしいのはるねさんも嫌いでしょうから、さっそく行動に移ります。
 
 こちらに向き直る彼女につかつかと歩み寄り、右腕で腰を抱き寄せ、左手を腋の下から背中に回し、後頭部を固定します。

琉音「……!? なっ、おいしおり……?」

 背丈はるねさんのほうが若干高いですが、背伸びが必要なほどの身長差はありません。
 問題は私自身の胸です。
 私の平均よりは大きな胸がるねさんへの接近を阻みますが、思い切り押し付けて無理にでも間合いを詰めます。 
 私の胸がるねさんの胸を、るねさんの胸が私の胸を、互いに圧迫しあいます。押し合いへしあい圧迫祭りです。
 この感触もまたずっと味わっていたい甘美なものでしたが、いまはキスです。

 突然の抱擁に驚き、体を硬直させたるねさんの唇を、そのまま一気に奪ってしまいます。

 いただきます。
 ぶちゅう。

琉音「~~~~っっ!?」

栞「んむ、はむ、あむ」


 緊張しているのか、るねさんは唇をぴったりと引き結び、がちがちに固まってしまっています。
 困りました。これでは舌を入れられません。何度か舌先で閉じた唇をノックしてみても、門戸は閉じたままでした。
 仕方がないので、少し顔を斜めにして、閉じたままの唇をはみはみすることにします。漢字で書くと、食み食みです。
 決して肉厚ではないるねさんの唇ですが、その感触は絶品でした。リップなどでしっかりとケアしてあるらしく、程よくしっとりとしたプルプルの唇を、歯を立てないように甘噛みしたり、舌で弄んでみたりします。

 やはり、妄想とリアルちゅーは全然ちがいます。内腿を熱い何かが伝っていくのを感じます。
 私ったら、お子様キスだけでほぼイキかけています。
 高まった興奮に身を任せ、私はるねさんの唇を一心不乱にむさぼりました。
 しかしるねさんは、一向に唇をオープンしてくれません。
 私としてはそろそろベロちゅーに移りたい気分だったのですが、るねさんサイドはまだほぐれていないようでした。

 仕方ありません。ここは一計を案じることにします。
 断腸の思いで、いったん唇を離します。
 唇を好きにされながら、るねさんは三白眼をかっと見開いていました。
 なにか物言いたげです。これは一旦口を離せば――

琉音「ぷはっ――おまっ、いきなり何す――」

 ほら、口あいた。ちゃんす。

栞「いただきます」

琉音「は!? いや――待っ、んむっ!」

栞「あむ、むちゅ、れるれるら」

琉音「んん! んーー!!」

 慌てて口を閉じようとしたるねさんでしたが、時すでに遅し。
 私の舌はもう、彼女の口腔に侵入していました。


 るねさんの前歯が、一瞬わたしの舌を挟みます。しかし噛んではいけないと思ったのか、あれだけ頑なだった上顎と下顎がはっきりと開かれます(優しい)。

 これ幸いと、私は口腔内に舌を這わせました。
 舌先が濡れそぼった熱の塊に触れます。言うまでもなくるねさんのべろです。私のベロの侵入に緊張しているのか、舌の根に無用な力がこもっており、るねベロは口腔の奥に縮こまってしまっています。

 より強固に唇を密着させ、なんとかるねさんの奥に舌を伸ばしますが、私が一方的にちろちろするだけで、思っていたようなベロちゅーにはなりません。

 もっとこう……お互いに貪り合うように舌を絡め合い、唾液を交換し合ってじゅるじゅるのトロトロになるようなドロ甘キスを想像していたのですが……。

 困りました。るねさんサイドにももっと協力的になって貰わないと、べろべろできません。
 もどかしい思いで、触れた舌先をれろんと舐め上げます。
 するとどうでしょう。

琉音「!! んん……! は……!」

 その瞬間、るねさんの身体が私の腕の中でビビクンと痙攣し、同時に緩んだ舌がにゅるんと前に出てきました。
 どうやら苦しくて我慢しきれず、抵抗を緩めてしまったようです。
 何にせよ、これで思い切り舌を絡められます。
 るねさんの唾液をすべて舐めとるような貪欲な心持ちで、舌も歯も口蓋までも、べろんべろんのれろんれろんにしてやります。

栞「はむっ、あむっ、ちゅぱっ、ん、は……あむ、ちゅるっ」

琉音「!!!??……!???!?」

 るねさんの口の中は、少し歯磨き粉の味がしました。
 どうやらるねさん、お昼ご飯のあとにも歯を磨く偉い子のようです。

 偉いので、舌を絡め唾液を送り込みながら、後頭部をなでなでしてあげます。

琉音「!!???……!……?………ん……ふあ……」

 するとあら不思議。
 あれだけ強張っていたるねさんの身体が、少しずつ弛緩していくではありませんか。
 今まで聞いたこともないような甘い声が漏れています。
 どうやら私とのベロちゅーに、るねさんも興奮してくれているようです。
 


 嬉しい。
 しかし、さすがにキスを開始してから数分が過ぎていることもあり、るねさんは苦しげでもありました。   
 いったん口を離します。
 ちなみに体は密着させたままです。
 
琉音「ッぷあ! ハァ……ハァ……お、お前、いきなり何すんだよ……」

 いつもより少しだけ険の薄い三白眼。真っ赤なお顔。私に抱かれ、口の端によだれ(私とるねさんの唾液が混じり合ったもの)を垂らしたるねさんは、妙なことを口走りました。

栞「何って、ちゅーですが?」

琉音「ちっげーし……そういうことじゃなくて、あのっ……! お前どういうつもりで……!」

 じゅるっとよだれ(しお☆るねブレンド)を啜り、るねさんは赤面を深めます。
 かわいい。けど、言ってることは意味わかんない。

栞「……?」

 どういうつもり、とはつまり、キスをした意図を訊かれているのでしょうか。
 どういうつもりも何も、好きでもなければこんなことしないでしょうに。
 そんなこと、いくらなんでもるねさんだって承知のはず……。

 それでもなおそんなことを訊いてくるということは、これは「はっきり言葉にして欲しい」という、るねさんの乙女心から発せられた問いなのでしょう。

 いいでしょう。そういうことでしたら、私も一人の女として、堂々と愛の告白をさせていただくことにします。
 
栞「そんなの、るねさんのことがす――」

琉音「……っ!」

 ――き、と言おうとしたのですが、最後まで言い切る前に、るねさんはさっと眼を背けてしまいした。

 咄嗟に言葉を切ります。
 なんとなく、いま好きだと言っても拒絶されそうな気がしたのです。
 いったんその可能性に思い至ると、もう安易な告白はできなくなってしまいます。

 るねさんは気まずそうに俯いたまま、眼を合わせてくれません。

 ……あれ? 何この反応……。
 思っていたのと違います。


 てっきり、告白するそぶりを見せれば、るねさんも速攻で受け入れ態勢になってくれるものとばかり思っていたのですが、もしかしたら私、勘違いしていたのかも……。

 まさかとは思いますが、るねさんは私のこと、そこまで好きではないのでは……?
 もういつ手を出してもまったく問題ない関係だと思っていたのですが……。

 やばい、私、やらかしてしまったのかも……。
 ひとりで勘違いして、ディープキスまでしてしまいました。
 いきおい粘膜接触と唾液交換まで済ませてしまいました……。

 これはまずい。このままでは突如色魔に豹変した後輩として、るねさんに嫌われてしまいます。
 どうしましょう。
 とりあえず沈黙はまずいので、口を開きます。

栞「るねさん、私たちって、仲よしですよね……?」

琉音「あ? ああ……まあ、仲良いっちゃ良いと思うけど……?」

栞「ですよね。つまりですね、いまのちゅーは、仲良しちゅーなんですよ」

 何言ってるんでしょう、私。

琉音「!? な、仲良しちゅー……?」

栞「そうです。別にレズとかそういう重いのではありませんので、どうかご安心を」

琉音「仲良しちゅー……」

栞「はい、仲良しちゅーです」

 ……とっさに仲良しちゅーとかいう謎概念を生み出してしまいましたが、これ、通るのでしょうか。
 
琉音「仲良しちゅー…………そういうのもあるのか」

 ぼそりと、るねさんが呟きます。
 ……あれ、無スジど真ん中だと思ったのですが、通る? 通っちゃうの? 仲良しちゅー。

琉音「はあ……まったく……」

栞「……ゴクリ」

琉音「…………んだよ、ビビっただろうが。そういうことならちゅーの前に言えや」

栞「……!」

 と、通った……!?
 セーフ、セーフでした仲良しちゅーで通りました!
 仲良しちゅーはアリ……仲良しちゅーはるねさん的にアリ!

栞「え、えへへ。すみません。それじゃあ、るねさん、次は制服を脱いでいただけますか?」

 あれ…………なに言ってるのでしょうか、私。


琉音「はあ!?」

 眼を見開き、三白眼の真骨頂を発揮するるねさん。
 やだカッコかわいい……。 

琉音「ばっかお前、こんなとこで脱げっかよ!」

 極めてまっとうな反応です。
 そうです、こんなところで脱ぐなんてどうかしています。それを要求した私もまた、どうかしています。
 しかしそうとわかっていても、言わずにはいられませんでした。
 仲良しちゅーならレズじゃないからセーフ……。
 そんな理屈がまかり通るなら、そのさらに先はどうなのだろう――と、欲が出てしまったのです。
 
 仲良しちゅーのその先……つまりは――

栞「ですよね。脱げませんよね」
 
琉音「ったりめぇだろうが……だいたい脱いで何すんだよ……あとお前、いつまで私のこと抱いてんだよ」

栞「脱いで何するって、そんなの仲良しえっちに決まってます。あと、抱っこはやめません」

琉音「なにが抱っこだ……ったく、あとちょっとだけだぞ……って待て、え? は? いまなんつった? 仲良し……?」

栞「仲良しえっちです」

琉音「……いや、いやいやいや待てよ、しおりィ……それはいくらなんでも、しちゃったらレズなんじゃ……?」

 ええ……私もそう思いますよ、るねさん。
 ですがもう、すでに仲良しえっちとかいう謎の新提案をしてしまった後なので、引くに引けません。
 ここはゴリ押しさせていただきます。

 通らば――

栞「大丈夫ですよ。あくまでも仲良くえっちなことをするだけですので」

琉音「いやぁ……でもなあ……えっちはさすがに……」

 意外と純情ゆえに仲良しちゅーは通用した……しかし純情ゆえに、えっちまでは通用しない……といったところでしょうか。

 ここは押しても駄目な場面と見ます。
 引いてみることにします。

栞「ハァ……わかりました。それじゃあ、私が脱ぎます」

琉音「はぁ!? なんでそうなるんだよ……」

栞「なんでも何も、どちらかが脱がないことには、えっちができません。それなら私が脱ぎます」

 いや、脱がなくても出来ることは出来ると思うのですが。
 しかし、るねさんのことです。こう言えば、

琉音「! ばっかお前、後輩に恥かかせられっかよ、それなら私が脱ぐ!」 
 
 そう言ってくれると信じていました。


 「仲良しえっち」とかいう謎行為が承認された瞬間でした。


栞「フ……どうぞどうぞ」

琉音「お、おう……!」

 抱っこを解除します。
 るねさんはさっそくブレザーのボタンに手をかけ、制服を脱ぎ始めました。

 すとりっぷの始まりです。
 おっかなびっくり一枚ずつ脱いでいくるねさんの姿に異様な興奮を覚えながら、携帯を取り出し、協力者に連絡します。

栞「……ああ、私。もう出てきてもいいよ」

?『お邪魔なのでは……?』

栞「近くで確実に良い画を撮ってほしいの。急いで。脱いでるところもしっかり撮ってね」

?『りょうかい……報酬の件は……』

栞「パンケ生クリ、イチゴ、バナナ、キウィ……チョコソースも用意してあるよ」

?『……!』

 電話の向こうで、ゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえました。
 本当、可愛い後輩ができて私は幸せです。 

?『すぐ行きます』

 教室後方のロッカーが開きます。
 中からカメラを構えた宮永さんが現れます。 

琉音「!? 宮永、おまっ! そんなとこで何して……!?」
 
 前を開けたブラウスと靴下だけになったるねさんが、驚愕に目を剥きます。

栞「パンケ生クリフルフルフルチョコソで雇ったカメラマンです。わたしたちが仲良くする一部始終を撮影して貰います」

琉音「撮影って……! あとなんだよ、そのパンケ生クリなんとかって……」

栞「パンケ生クリフルフルフルチョコソ。パンケーキに生クリームと三種のフルーツを乗せ、チョコソースをかけたものです」

琉音「へ、へえ……まあ、それはわかったけど、撮影する必要あるか……?」

栞「友情の記念です。私とるねさんの」

 本当はキスシーンの盗撮だけをお願いしていたのですけれど。

琉音「友情の記念……それはいいけど……いや、でも……えっちするわけだろ……? それを映像に残すってのもな……」

照「……既にキスシーンは撮影済み」

琉音「!?」
  
栞「大丈夫ですよ。決して外部には漏らしません。私だけの秘蔵映像なので」

琉音「……宮永が見てるだろうが、すでに」

栞「まぁまぁ」

照「まぁまぁ」

琉音「流そうとすんな!」

 流されてはくれないようです。仕方がないので正直に説明します。


栞「定点カメラでは不安があったんですよ。最初からカメラマンがいたらるねさんが逃げてしまうと思いまして」

琉音「いや、逃げるけどさ、そりゃ……でも、あの……」

 裸にボタンを外したブラウスを羽織り、あとは黒のソックスだけを履いている状態のるねさんは、何やらもにょもにょと口ごもっています。

栞「でも、なんでしょう?」

琉音「別に。なんで宮永呼ぶんだよマジで……」

栞「?」

 ……? 宮永さんがいることに何か不都合でもあるのでしょうか。
 いや、誰がいてもるねさんにとっては不都合なのでしょうが。
 
 ははあ、わかりました。るねさん、きっと後輩に裸を見られるのが恥ずかしいのでしょうね。
 お風呂とかならともかく、こんなところで脱いで、あまつさえそれを後輩に撮られるなんて、照れ屋のるねさんには耐えがたい羞恥でしょう。
 
 ここはるねさんが正気に戻って服を着てしまう前に、ゴリ押ししておく必要がありそうです。
 始まってさえしまえば、あとは流れでどうとでもなるのです。

栞「まあ、それはともかく、とっととおっぱじめましょうか!」

琉音「そういうノリなの? その、仲良しえっちって」

 いや、私も知らんけど。

栞「それはもう、仲良しというくらいですから!」

 そういうことにしておきましょう、知らんけど!

 全裸は厳しいようなので、裸ブラウス黒ソックスの状態でおっぱじめてしまうことにします。

 るねさんの肩を抱きます。緊張しているらしく、がちがちに固まっていました。
 側頭部に手を伸ばし、優しく撫でてあげます。


栞「るねさん、座りましょうか……ふーっふーっ……」

琉音「お、おう……それはいいけど、左耳に息ふきかけるのはやめてくれな?」

 ゆっくりと床に腰を下ろするねさん。
 その身体を、背後から抱きしめるように包み込みます。

 充電充電(私がるねさんを)。

栞「るねさんの左耳すてきですね、ずっとこうしたかったんですよ……ちゅっちゅっ」

琉音「ばか、首筋にキスすんな……! このあと部活なんだぞ」

栞「そうでした。それではそれ以外の場所をちゅっちゅっしますね」

琉音「それ以外って、ちゅっちゅっって……!」

 せっかくの放課後の教室というシチュエーションです。
 いきなりおもちや、るねさんのるねさんにタッチするのも風情に欠けるので、まずは優しく慈しむようにお腹を撫でます。
 みぞおちの辺りから下腹部にかけて、さすりさすりと撫でまわします。

琉音「ふっ……! ん……!」

 あ、今度は気持ちよさそう。相変わらずの険しい目つきですが、表情が少し蕩けてきました。

栞「今日は我慢しますけど、いつか首筋にキスマークつけさせて下さいね」

琉音「なんで……! んっ……!」

 お腹の前面を撫でる手を、脇腹に移動させます。そして腋の下まで撫で上げて、るねさんのバストラインをブラウス越しにするりと撫でます。

栞「キスマークつけて部活に出て下さい。隠さないで」

琉音「んっ……や……! そんなの無理……! 恥ずかしい……!」

 思い切り揉みしだきたい欲求を必死に抑え、服越しにるねさんのおもちを撫でます。
 ブラウスの上からでもはっきり判るほど固くなった先端の感触に理性が吹き飛びそうになりながら、噛んで含めるように言い聞かせます。

栞「恥ずかしいのは我慢してください。るねさんは私のものだって、みんなにわかって貰わないといけませんから。ね?」

琉音「そんなことしなくたって……! 私はしおりの……!」

栞「しおりの……?」

琉音「っなんでもない!」

 


 しおりの、なんでしょう。
 「そんなことしなくても私はあなたのもの」だとか、そんな嬉しいことを言ってくれるのでしょうか。
 だとしたら、脈はなくもないということでいいのでしょうか。

 脈があるのなら、もっと思いっきり触ってもいいということでしょうか。

 もう理性も限界に近いときにそんな可愛いことを言われたら、私、私――

栞「るねさん、ハァ、ハァ、ッるねさん、私――!」

琉音「や、待って、しおり――待って、やっぱり――!」


照「……」REC

  
琉音「や、やっぱりやだ! こんな、こんな……!」

 ブラウスの中に手を入れ、直におもちに触れた瞬間、るねさんは激しく身をよじりました。
 なんとか抱きしめて宥めようとしますが、彼女はそのまま私の腕を振りほどき、立ち上がります。
 そしてカメラを構える宮永さんを指差し、叫びました。

琉音「こんな、DQNのエロ動画撮影みたいな初えっち、絶対にいやだ!!」

 な――ッ!?

栞「ド、DQN――!?」

照「エロ動画撮影……!?」

 る、るねさんが生娘だったことは喜ばしい――

 ですが、それは置いておいて、私と宮永さんの間に衝撃が走ります。

 DQNのエロ動画撮影……!? 

栞「いや…………え?」

照「……!?」

 待って、ちょっと待って。

 いや、確かに、放課後の教室という猥褻行為NGな場所でむりやり唇を奪い、服を脱がせて「これは友情の記念だから」とか言って性的関係を迫り、あまつさえそれを後輩に撮影させている以上、これはDQNのそしりを受けてしまうのも致し方ないことだというのはわかるのですが……。

 正直、今るねさんに言われるまで、まったく自覚はありませんでした……!
 全然まったく、そんなこと思っていませんでいた!
 なんだったら、外見だけならるねさんが一番DQNっぽいじゃん! とか、反感を抱いてしまっているほどです……!

 以前ネットで拝読した「DQNと呼ばれる人たちは、自分のことをDQNだと思っていない。自覚できる知性があったなら、その人はそもそもDQNにはなっていないのである」というお話は本当だったようです。

 私、自覚する知性がなかったので、DQNになってしまったようです。 
   

   
照「う、宇野沢さん、私たち、DQNなの……?」

栞「……!」

 これはいけない。
 地方出身で純情可憐な宮永さんは、自分がそうとは知らずDQN行為に加担してしまったことに強いショックを受けているようです。
 カタカタと震えています。
 それでも甘いものへの執着か、カメラはるねさんに向けられたままでした。その点、天晴というほかありません。
 しかし目に涙をためているので、フォローはしてあげないと。

栞「お、おち……ッ! 落ち着いて宮永さん……!」

照「で、でも、渡辺さんが……」

栞「DQN行為を働いてしまったといっても、あなたは私の指示に従っただけ、つまり今DQN認定を受けたのは私だけということよ」    

照「そ、そう……なんだ、よかった。私てっきり、取返しのつかないことをしてしまったのかと……」

 宮永さんの表情が安堵にゆるみます。しかし次の瞬間、彼女の表情はきりりと引き締まりました。

照「でも、それはおかしいのでは? あんなに美味しいパンケーキを作ってくれる宇野沢さんが、DQNだとは考えにくい……ろんりてきに考えておかしい……」

栞「宮永さん……」

 本当、この子は可愛い後輩です。
 どうやら、私のことを庇ってくれているようです。 

照「渡辺さん、訂正してください。あんなに美味しいお菓子を無償で提供してくれる宇野沢さんが、DQNなはずありません……! なぜなら、甘いものをくれる人が悪い人であるはずがないからです……! 証明終了……!」

琉音「やかましいわ! DQN行為どころか、これもう犯罪だろ! レイプみたいなもんだろーが!」

 再び、私たちに衝撃が走ります。

栞・照「「れ、レイプ……!?」」

 あ、あわわわ……!


栞「あわわわ……!」

、言われてみれば、そうかもしれません……!
 というか、その通りです。

 ここで一度、今日の自分の行いをおさらいしてみましょう。

 相談があるとだまして呼び出す→強引なキス→仲良しえっちとかいう謎理論によるゴリ押しで性行為を強要→それを撮影(しかも事後承諾)。

 ……!
 なんということでしょう。

 これって、琉音さんの主張次第で、この一連の流れが強姦未遂事件として扱われても何もおかしくないのでは……!?

照「れれれれれれれレイプ……!?」

 がくがくと震えながら、宮永さんが床にくずおれます。

照「わわわ私、なんてことを、けけけk刑務所に入れられてしまう……! もう咲にあえなくなってしまう……! 出所してもレイプ魔の姉なんて絶縁されてしまうに決まってる……!」

 顔面蒼白で、ついにはぽろぽろと泣き出してしまいます。
 それでもカメラを離さないあたり、本当に甘味への執着はすさまじいです、この子。
 カメラマンの仕事だけは絶対に投げ出さない、そんな強い意志を感じます。こんなに頑張り屋で責任感の強い後輩を犯罪者呼ばわりだなんて、るねさんはひどい人です。
 宮永さん可哀そう……ほんと、可哀そう!

栞「るねさん酷い! 可愛い後輩二人をレイプ魔扱いだなんて!」

琉音「うっせーよ! ていうか主犯はてめぇだろうが!」

栞「! しゅ、主犯……!? まるで人を悪人みたいに!」

 いや、その言い分はもっともなのですが、他の誰でもないるねさんに悪人扱いされたことが悲しくて、つい反発してしまいます。

琉音「みたいじゃなくて悪人なんだよ!」

栞「!」
 
琉音「そもそも最初のキスからしておかしかったんだよ! 何が仲良しちゅーだ! レズじゃないから大丈夫だ! 友達同士であんなベロンベロンのキスなんかするわけないだろ普通! 聞いたこともないわ!」

栞「ぬ……! 酷くないですか? 最後のほうは自分からも舌絡ませてきたくせに……! 悦んでたくせに!」

琉音「なッ……!」

栞「だ、だいたい、自分から制服脱いでそんな格好になっておいて、人のことレイプ魔呼ばわりとか、どの口が言うんですか!」

琉音「ッ……!」

 いけません、これでは完全に「同意の上での行為だった」と恥知らずに言い張るレイプ魔の物言いです。
 売り言葉に買い言葉で、ついこんなことを言ってしまいしたが、控えめに言ってクズです私。


 るねさんは顔を真っ赤にして、肩を震わせています。
 ぶるぶる震える手で慌ててブラウスのボタンを閉じ、スカートを拾い上げています。

琉音「うう~~! ヒグッ…!」

栞「あ――」

 あかん泣く、これ、るねさん泣いちゃう。
 やばい謝らないと、ガチで嫌われる……。

琉音「……グスッ……だって、あれはしおりが……!」」

 るねさんは嗚咽を抑えつけながら、必死の様子で言葉を絞り出します。

琉音「ヒック……しおりがちゅーしてくれたのが、嬉しかったから……ッ!」

栞「……!」

琉音「いきなりでびっくりしたけど、う、嬉しかったのに……ヒグッ……仲良しちゅーとか、わけわかんないこと言い出すから……!」

栞「るねさん……?」

琉音「仲良しえっち……グスッ、ヒッ、しないと、嫌われると、思ったから勇気だして、ぬ、脱いだのに……!」

 あ、やばい。マジのやつです、これ……。

栞「るねさんわかった、わかりましたから……」

琉音「ひぅっ、エグ……! お風呂も入ってないし、学校の教室でなんて嫌だったけど、ングッ、がんばったのに……!」

 感情のピークに達したのか、るねさんはいったん言葉を切り、きっと私を見据えます。

照「渡辺さん……あの……」
 
琉音「なんで宮永連れてきてんだよ! 二人きりだと思ったのに!」

照「」ビクッ

栞「わかりました……! わかりましたから……!」

琉音「わかってない! 私、本当にチームの相談だと思ってここ来たんだぞ! したらいきなりハグされて、なんの脈絡もなしにディープキスだよ! 訳わかんねぇよ!」

栞「あわわ、ごめんなさい、そうですよね、るねさん的にはそうですよね……」

 そりゃそうです。るねさん的にはすべてが唐突です。
 私としては、もうこういうことしちゃってもOKという暗黙の了解が出来上がっている関係だと思い込んでいたのですが、やはりそうではなかったようです。

 マジフォローが必要な事態になってしまいました。
 泣きながら制服を着なおしたるねさんに、歩み寄ります。


栞「あの、るねさん……私本当に……」

琉音「……言えよ」

栞「え?」

 すん、と鼻を啜りながら、るねさんが呟きます。

琉音「言えよ、さっきのあれ……」

栞「あの、何を……?」

琉音「さっき、ちゅーのあとになんか言おうとしただろ、あれ、最後まで言えよ……」

 すでに激情は去っているようですが、涙でぐずぐずになった弱々しい目元から、不思議と強い怒気を感じます。
 
栞「えっと、なんのことでしょう……」

 鋭い視線に射すくめられ話を逸らそうとしますが、るねさんは見逃してはくれませんでした。

琉音「とぼけんなよ。『るねさんのことが』なんちゃらって、言いかけただろうが。私のことが何なんだよ、はっきりしろよ」

栞「えっと、それは……」

 数分前のあのテンションなら告白なんて余裕だったのですが、今の状況では非常につらいものがあります。

 ごにょごにょと誤魔化しの言葉を探していると、るねさんがカツアゲでもするような調子で凄みます。

琉音「言えよ……! 大事なことだろうが、あ?」

栞「ア、ハイ……エット」

琉音「もっとでかい声で!」

栞「ハイ、ア、ハイ! あっ、あの! 私、るねさんのことが好きだからちゅーしました! すんませんした!」

 思い切り頭を下げます。上げます。すると、るねさんは私を見て赤面し、ふるふると震えていました。

琉音「……! おま……っ! わっけわかんねぇ! なんでちゅーの前にそれ言わねぇんだよ!」

栞「はい! はい、ほんと、 仰る通りなんですけど……! なんか私、気持ちが高ぶってしまって、ほんと、ごめんなさい……!」

琉音「ったく……そういうことなら早く言えってんだ……」

 るねさんはブレザーを羽織り、教室の入り口へと歩いて行きます。


栞「あの、るねさん、許していただけたんでしょうか……私、るねさんのこと本気で……!」

琉音「お前さ……」

 扉に手をかけ、こちらを振り返り、彼女は言いました。

琉音「誰にでもあんな……『仲良しちゅー』とか言ってキスすんの?」

栞「まさか! あんなことるねさん以外にしません!」

琉音「そ。ならいいんだよ。おら、お前ら、部活行くぞ。予選まで時間ねーんだからよ……」

栞「る、るねさん……!」

 なんか、落ち着いてしまっているのが逆に怖いです。思い切り叱られたほうがまだマシな気分です。
 なおも謝罪の言葉を重ねようと、彼女を呼び止めます。
 しかし、

琉音「しおり」

 るねさんは私の言葉を遮ります。

琉音「明日、部活終りに時間あるか?」

栞「? はい、空いてますけど……」

琉音「……近所の雑貨屋によ、良いアヒルさんが入ったんだけどよ……」

栞「……はい? それが、なにか?」

琉音「明日、一緒に見に行くぞ」

栞「――え。それって……」

琉音「デートだよ、デート。キスとか……その、えっちの前に、やることがあんだろうが。順序ってものを考えろ」

 好きです→デート行くぞ。
 順序を考えろ→順序を間違えなければやっていい……?

 これはつまり……つまり……!

栞「るねさん、それってつまり……!」

琉音「うっせーよ! 行くのか行かねーのか!」

栞「い、行きます! るねさんとデート!」

琉音「うし。絶対だぞ。おら宮永、いつまで呆けてんだ! 部活行くぞ!」

照「わ、渡辺さん、私、レイプ魔なの……?」

琉音「まだ言ってんのかよ! ちげーよ。あれはなんつーか、言葉の綾っつーか……とにかく、お前は犯罪者じゃねーから安心しろよ」

照「ほっ……なんだ、よかった……」


琉音「……あと、いつまで撮ってんだ。いい加減カメラ向けるのやめろ」

照「……?」

栞「もういいよ。報酬はあとでね」

照「はい、それじゃあ」

 宮永さんからカメラを回収し、私も教室を出ます。
 
 先を行くるねさんを小走りに追いかけて、横に並びます。

 しかし、並んで歩かせてはもらえませんでした。
 耳まで顔を赤くしたるねさんは、私が横に並ぶと歩調を速め、さっと一歩前に出てしまいます。

 仕方がないので、半歩後ろを歩きます。

 すると後方から宮永さんが追いついて来て、小声で言いました。

照「渡辺さん、怒ってる……?」

栞「ううん。平気。あれは怒ってるわけじゃないから」

照「? 本当……?」

栞「本当。宮永さんは何も心配しなくていいからね」

 彼女を安心させようと頭を撫でていると、前方を行くるねさんがこちらを振り返り、私を睨みつけていました。

 そしてそのまま何も言わず、ふいと前に向き直り、ひとりでさっさと歩いて行ってしまいます。
 
 ……今のはもしかすると、妬いてもらえたのでしょうか。

栞「……ふふ」

照「宇野沢さん、安心したらお腹空いた」

栞「休憩時間まで我慢してね」

 宮永さんに同感です。私も、気が抜けたら急にお腹が空いてきました。

 少々暴走してしまったせいで危うくすべてを失うところでしたが、終わってみれば私の望むものはすべて手に入りました。

 手に入れたもの、それは、るねさんの唇、盗撮動画、デートの約束……。

 本当はもう一つ、るねさんからもはっきりと気持ちを口にして欲しかったという願望もありますが、それはまた今度にとっておきましょう。

 宮永さんの手を取り、るねさんを追いかけます。

 追いついてきた私たちを見て、彼女は拗ねたように顔を背けてしまいました。

 そんな仕草もまた愛おしく、私はやはりるねさんのことが大好きなのだと、改めて思ったのでした。

 
 
                                槓


以上で終了です。ありがとうございました。

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