エレン「素直になれない」 (16)


エレン「お前は俺の母親かよ!」

ミカサ「違う。私はエレンが心配なだけ、エレンは一人にしておくと危ないから」

エレン「いちいち構うなよ!ガキじゃないんだぞ!」

そう言って俺は、食堂を後にした。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371659908

ミカサが言っていることの真意はわかっている。

あいつは二度も家族を亡くして、俺しかいないこと。

だから、死んで欲しくないこと。
わかっている。

けれど、あいつはわかっていない。

本当は俺もミカサを守りたいことを。

けれどいつも力では及ばず、俺は苛立ちたまらずミカサに八つ当たりをしてきた。

それすらも軽く流され、淡々と話しているあいつを見ると余計に不甲斐なく、腹が立った。

俺を守ることに固執し、気持ちを察しないミカサにも、何もできない俺にも。

アルミン「エレン!」

エレン「アルミン、どうした?」

アルミン「いきなり出て行くから追いかけてきたんだよ!」

エレン「そうか…ごめんな」

アルミン「それはミカサに言うべきだよ、いくらなんでもあれは言い過ぎだ」
エレン「…」

エレン「アルミン」

エレン「俺はどうしたら、素直になれるんだろう」

アルミン「?」

エレン「俺はいつもミカサに助けられてばかりだ」

エレン「だから、俺はミカサにお礼が言いたい」

エレン「でもあいつは俺を守るのを義務みたいに思ってるだろ」

エレン「だから思わず頭に来ちゃうんだ」

話し始めると止まらなくなった。

俺は息をするのも忘れてただ話し続けた。

アルミンは黙って聞いてくれた。

エレン「……。まあ、そんなところだ」

エレン「俺はどうすればいいんだろう」

アルミンは俯いて何かを考えていたが、しばらくすると話し出した。

アルミン「正直、エレンがそんなこと思ってるなんて驚きだよ」

エレン「えっ?」

アルミン「エレンは単純ってイメージが強いからかな?」

アルミン「ミカサのことを本当に億劫に思ってると僕は感じてたよ」

エレン「そんなことないさ、あいつは俺の…」

エレン「唯一の、残された家族なんだ」

エレン「どんなことがあっても家族は味方だ」

エレン「俺はミカサが困ったり、辛いなら必ず助けてやりたい」

エレン「あいつがどんなに敵を作っても、支えてやりたい」

エレン「当たり前だろ?」

アルミンはなぜか少し呆れた表情だった。

アルミン「エレン、それはさ…」

アルミン「いや、なんでもない」

アルミン「とにかく、ミカサには伝えるべきだよ」

アルミン「ミカサだって不安なんだ」

エレン「不安?」

アルミン「エレンはミカサに迷惑を掛けたくないんだろう?」

アルミン「だから訓練もミカサには極力頼らない」

エレン「ああ」

アルミン「ミカサは何も頼ってくれないから怖いんだよ」

アルミン「エレンがどこかに行ってしまうかもしれない」

アルミン「エレンは自分を家族として思ってくれてないかもしれない」

アルミン「エレンは自分を嫌いかもしれない」

アルミン「だからああやって少しでもエレンを知ろうとするんだ」

エレン「…」

アルミン「エレンはさ」

エレン「なんだ?」

アルミン「ミカサがもし、エレンに全く構わなくなって」

アルミン「アニやクリスタ…特にジャンとばかり訓練してたりしたらどう思う?」

エレン「普通に、嫌だな」

エレン「嫌われたかな、って思う」

エレン「ジャンなら尚更嫌だ」

エレン「…いつも喧嘩してるからかもしれないな」

アルミン「…」

アルミン「同じことだよ」

アルミン「ミカサもそう思ってるだけだよ」

エレン「そうか…」

エレン「俺はあいつにわかってないと言いながら」

エレン「俺が一番わかってなかったんだな」

アルミン「まだ間に合うよ」

アルミン「家族なんでしょ?」

俺はアルミンに礼を言うと走り出した。

消灯まではまだ少し時間がある。

ミカサはもう、女子寮に行ってしまっただろうか。

もしかしたらさっきのことを気にしてまた不安になってるかもしれない。

そう思うと、走り込みで鍛えたはずの身体が重くなり息がしにくくなる。

食堂前まで戻る。

ちょうど食事時間の終わりなのか。

みんなが帰るのが見えた。

ミカサはいるだろうか。


いた。

一人で歩いている。

心なしか、いつもより背中が小さく見える。

エレン「ミカサ!」

ミカサ「っ!…エレン!」

その背中がびくっと動き、ミカサは驚いた顔で俺を見た。

エレン「ミカサ、少し話そう」

ミカサ「うん、うん!」

力強く、ミカサは頷いた。

エレン「あのさ、さっきはごめんな」

ミカサ「ううん。気にしてない」

エレン「そっか、あのさ」




エレン「いつも、ありがとう」

ミカサ「エレンの存在が、私の原動力」

ミカサ「絶対死なないで」

エレン「お前もな!」

ミカサ「うん!」

エレン「ミカサ、明日の対人格闘組もうぜ!」

ミカサ「えっ」

ミカサ「アニじゃないの?」

エレン「たまにはいいだろ?」

ミカサ「うん、もちろん!」

エレン「手加減すんなよ?」

ミカサ「わかってる、エレンはそういうの嫌いだもの」

その時突風が吹いた。

雲に隠れていた月が姿を現す。

月明かりがミカサの顔を照らし出した。

それは、久しぶりにみた満面の微笑みだった。

一個飛ばした


ミカサ「?!」

エレン「俺、いっつもお前に敵わなくて八つ当たりしてた」

エレン「でも、感謝してるんだ」

エレン「俺はミカサがいなかったら死に急ぎ野郎じゃ済まなかった」

エレン「絶対、無茶して死んでた」

エレン「ミカサ…ありがとう」

ミカサ「そ、そんなこと、ない…」

ミカサ「家族、なら、当たり前」

エレン「でも、お礼が言いたかったんだ」

ミカサの表情は雲に隠れた月のせいで見えない。

ただ、柔らかい、温かい感じがした。

ミカサ「それなら私も」




ミカサ「エレン、生まれてきてくれてありがとう」

短編かな?

乙! 久々にこんな爽やかな話を読めて私は満足だ

実際エレンの気持ちはこんな感じだよな

遅れたが作者です

もうちょい書きたかったんだが、長く書くのは難しいんだな…勉強します

エレンがミカサにごちゃごちゃ言うのは、反抗期的なもので心の底から信頼してるからじゃないかと思うんだ。

初めて書いたんだが、また読んでくれたら嬉しい。

これで完結です。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom