( ^ω^)戦車道史秘話ヒストリア!のようです (87)

日本国が保有する【学園艦】は、2017年現在で実に198隻に上る。近年頻発し(国際戦車道連盟をガチギレさせ)た統廃合の影響で保有数一位の座をアメリカ合衆国に譲ったものの、三位イギリスには70隻近い差をつけており世界有数の学園艦大国の地位は未だに揺るがない。

この、平均全長十数キロにも及ぶ超巨大海上教育施設の維持には途方も無いコストがかかる。学園艦1隻辺りの維持費は軽く一県の年度予算に相当し、国から補助金を出すだけでも結構な財政圧迫となることは想像に難くない。これを言ってしまうと恐らく僕は戦車道履修者達の──それも河嶋さん辺りの──射撃翌練習の的にされてしまうだろうから口には到底出せないが、正直学園艦の統廃合が「必要だ」という文科省の言い分自体には幾らか理解するところがある。

特に近年は深海棲艦の出現によって太平洋側における海上防衛の重要性が増し、学園艦を200隻近く保有する日本はそれらを護るためにも様々な対策を取りざるを得ない。

はっきり言ってしまうと、感情論を抜きにすれば学園艦の削減というのは国益にも国防にも関わる、誰かが泥を被ってでもやらなければならない“必要悪”だ。……辻なんたらとかいうあのクソッタレ眼鏡のやり口の是非はまた別問題の話だが。

或いは我らが生徒会長の角谷さんも、国の事情自体には正当性があると認めているからこそ「文句のつけようが無い実績造り」のためになりふり構っていられなかったのだろう。

そういった“裏の事情”がどうであれ、この【大洗女子学園】がドラマのように劇的な経緯を経て廃校を──それも二度にわたって回避したというのが世間一般に広がっているイメージだ。ドキュメンタリーとしてドラマ化・映画化された作品がそれぞれ記録的なヒットを飛ばして海外公開までされたことも手伝って、この“奇跡の物語”は尾鰭もついて世界的に知られている。

中でも素人集団をまとめ上げて全国大会優勝を、さらには寄せ集めのチームを率いて大学選抜撃破を成し遂げた西住さんの名は“東洋のジャンヌダルク”なんてこそばゆい渾名付で海外の番組で紹介され、西住さん本人はしばらく恥ずかしさのあまり突然悶絶する発作に悩まされていた。

まぁそんなわけで、大洗女子学園には特に夏休み明けから国内外問わず多くの観光客が訪れるようになっている。学区は警官や警備員によって徹底して入場が禁止されているが、一歩商業区に踏み出せばそこは多くの人でごった返す。

日本国内からの旅行者は勿論、フィリピンにカンボジア、台湾に韓国、アメリカなど多くの国の人達が様々な言語での会話と共に街を行き交う。やはり近隣であるアジア系の人が多いが、中東やロシアからという人とも話したことは何度かある。ベルリンでの惨劇が起こるまではヨーロッパからの観光客も決して少なくは無かった。

最初こそ学園艦の至る所に“外”から来た人がいるということに戸惑ったが、慣れとは恐ろしいものだ。今では僕も、ドーナツを毎日一箱は平らげていそうなお腹をした金髪の中年が英語で韓国系と思わしき女性と干し芋を囓りながら談笑している光景を見ても自然にそれを受け止めている。

………それでも、流石に。

「ねぇ、そこの貴方?」

( ^ω^)「おっおー、僕ですか───」





(;^ω^)「────お?」

「そうよ。他に、誰かいるかしら?」

“その”観光客に声をかけられたときは、少々面食らったけれど。



~( ^ω^)戦車道史秘話ヒストリア!のようです~


.

僕が振り向いた先には、少女が一人立っている。

ハイヒールであることを加味すれば、身長の程は150cmに届くか届かないかぐらいだろうか。決して高いとは言い難いが、引き締まった四肢と大人びた立ち姿がその事を感じさせない。紺のロングパンツに冬物のジャケット、白いタートルネックのインナーという些かボーイッシュな出で立ちも、その印象に拍車をかける。

腰まで届く銀髪が風に靡き、流れる。この場に腕の良いカメラマンがいれば、そのままファッション雑誌の表紙をかざる一枚ができあがりだ。

“美少女を描いてごらん”という問題にもしも模範解答が存在するなら、或いは彼女の姿を描くことがそれにあたるのかも知れない。

とはいえ、僕が返事ができなかったのはその少女に見とれていたからでは──だいたい僕にはシュールな言動の大切な人がいる──ない。もっと別のことに、驚いていたからだ。

「…………ねぇちょっと、だから私は貴方に声をかけたわけだけど?」

ぱっちりと大きく、つり上がり気味の勝ち気な金色の瞳がすっと細くなる。声に、反応できずにいた僕に対する苛立ちが微かに現れる。

「素通りとかなら却って納得するけれど、わざわざ反応した上でのシカトというのは礼を失しすぎているんじゃないかしら?

それとも耳元で、鼓膜がぶち破れるまで大声で叫ばないと聞こえないクチ?」

(;^ω^)「………あー、申し訳ありませんお。大丈夫、僕の耳は正常です」

なんだろう、彼女の今の言葉の端に、“その程度のことはいつでもやっている”ような自然な響きがあったのは気のせいだろうか。

( ^ω^)「お答えする前に一応の確認なんですが…………大変失礼ながら、貴女は僕が以前会った叢雲さんだったりしますかお?」

「あら」

僕の問いに、少女───特型駆逐艦五番艦の【叢雲】さんは一瞬眼を見開き、拳を口元に当ててクスリと笑った。

「貴方とは初対面だけど……確かに私は叢雲よ。

他の“叢雲”に会ったことが?」

( ^ω^)「大洗鎮守府や横須賀司令府に所属していた方と、それぞれ一回ずつ顔をあわせる機会があったんですお」

「それはまた、後輩がお世話になったわ。でも、だとしたら私服はどのみち初めての筈なのによく解ったわね」

( ^ω^)「職業柄、人間観察は得意なモノで」

現国教師として、9000人の大洗女子学園高等部の子たちを請け負っている身だ。否が応でも記憶力や洞察力は鍛えられる。

しかし風紀委員はマジで何とかして欲しい。アヒルさんチームの三人を見分けられるようになったのもここに赴任してから2カ月を要したのだ。

何だあの量産型クローントルーパーか何かか。

「なるほどね」

頭の中をマタンゴの如く埋め尽くしたマッシュルームカット軍団を追っ払っている僕の前で、叢雲さんは合点がいったとでも言いたげに何度も頷いている。

「学園艦の関係者だとは思ってたけど、教師か何かかしら?しかも赴任してまだせいぜい一、二年って所ね」

( ^ω^)「………よく解りましたおね」

今度は僕が面食らう番だった。叢雲さんは小首を傾げ、いたずらっぽく微笑みながらこめかみに指を当ててみせる。

「これでも艦娘として戦って長いのよ?頭の回転も砲撃の腕と同じぐらい磨いてきたわ。

宿泊施設がある区画からこんな遠くにいるのにその身軽さは旅行者としては不自然かつ不用心だし、童顔を差し引いてもせいぜい20代半ばの人間が教歴云十年のベテランって事は有り得ない。睡眠薬を打つ前の毛利小五郎でも、多分これぐらいなら推理できるんじゃないかしら」

なるほど。いわれて改めて僕の出で立ちを見れば、ジャケット一枚にワイシャツ、後は外出の目的である、右手にぶら下げたビニール袋一つ。中身は買い出し品のハサミと木工用ボンド、それからセロテープと両面テープが2ロールずつ。

少なくともお土産物色にいそしむ他の観光客と思わしき人々と比べると、あまりにも荷が少なすぎだ。

( ^ω^)「お見それしましたお。

それで、改めてどういった用件で?」

「ええ、情けない話だけど、ちょっと道に迷ってしまったのよね。ここに行きたいのだけれど」

そういって、叢雲さんは折りたたまれたA4サイズの用紙を渡してそこに書かれた何行か…………否、何十行分もの地名・施設名の内一つを指さす。

( ^ω^)「あぁ、ここなら丁度反対方向ですお。そこの免税店の前にあるバス停で巡回バスが7分後に来るから、それに乗って6駅待てばすぐ近くまで行ってくれますお」

「……どうもありがと。とんだ無駄足踏んじゃったわね、やっぱり初めて来た場所を勘で歩き回るべきじゃなかったわ。

まっ、おかげで掘り出し物にも出会えたけど」

そういって彼女はほくほく顔で左手の手提げ袋を持ち上げてみせる。中には、戦車搭乗時のきりっとした表情をしている西住さんをドアップで写した画像を印刷したクリアファイルやら例のドキュメンタリー映画の小説版、Ⅳ号戦車アンコウチーム仕様のミニチュアなどが入っている。

( ^ω^)「………えーと、叢雲さんは西住さんの」

「ええ、大ファンよ♪西住みほさんだけじゃなくて大洗戦車道チームの選手は皆好きだし尊敬しているけれど、やっぱり別格ね!」

米について語ってるときのシューみてえな眼してるよこの人。

「まっ、私なんか大洗が優勝してからようやく追っかけ始めたミーハーだけどね。西住さんなんかは西住流の元で育ってたときからついてるファンの人もいるって聞くし、私なんかまだまだよ」

( ^ω^)「だいぶ問題になってますけどね、“昔からのファン”」

クールビューティーの具現化みたいな姉の反動でか普段は引っ込み思案な言動が目立つ西住さんには、「父性本能を刺激される」とやらでやたら年上の男性(オブラートな表現)の追っかけが多い。

彼女の「昔からのおっかけ」が街中でグッズを買い漁っている姿は、第三者から見れば異様極まりない。現にこの光景を眼にしてしまった秋山さんは一部観光客の乗船制限と警備の強化を強行に主張しているし、澤さんに至っては新会長に就任することとなった五十鈴さんに実施を直訴すべく中等部を巻き込んで署名活動中だ。

戦車道履修者の中でもとりわけ「西住フリーク」と言えるあの二人の反応は若干過保護のケがあるが、その気持ちが解らないでもない程度には僕もあの光景は気持ち悪いと思う。それに、グッズショップでの割り込みやところかまわずの写真撮影などマナーの悪い客も目立つ。

「とりあえず、道は解ったわ。………えーっと」

( ^ω^)「大洗女子学園高等部、現代国語教諭の内藤芳頼ですお」

「そう。改めてお礼を言うわね、道を教えてくれてありがとうブーン先生」

(;^ω^)「なんでや!!!」

「別に、何となくそんな呼び方だとしっくり来る気がしただけよ」

思わず叫んだ僕を見て、叢雲さんがまたクスクスと笑う。笑うときに拳を口元に当てる所作は、過去に会ったことがある他の二人の“叢雲”さんには見られなかった動きだなとふと気づいた。

「いろいろ理論を捏ねくり回しても、結局戦場で生き残るのに必要なのは直感と武力なのよ。培った勘の鋭さについては自信があるわ」

(;^ω^)「鋭すぎですおそれ………」

殆ど予知じゃないかと呆れる僕のツッコミに叢雲さんは肩を竦めて、「それじゃあね」と背中越しに手を振ると丁度やってきたバスに乗り込むべくその場から駆け去って行った。

( ^ω^)「………艦娘の人と街中で話したのって多分初めてだおねぇ」

艦娘とて僕等と同じで泣きもするし笑いもするし、何より見た目はただの美人・美少女だ。或いは、気づかない内に二言三言言葉を交わしたことはあるのかも知れない。

しかしながら、明確に相手を“艦娘”と認識した上で雑踏の中で話したことはなかったので、何か不思議な感覚がある。

( ^ω^)「っと、買い出しはもう終わってたんだお。急がないと」

貴重な体験の余韻に浸る間もなく、僕も学校に戻るべく踵を返し────







「ぶーんせ・ん・せぇ♪」

「これは拡散ですねぇ~~~♪」

( ^ω^)「」

そこで小悪魔2匹───もとい、大野さんと宇津木さんのにやにや顔にぶち当たるハメになった。

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《Al■ ───ree RAAF-■■■-01 FO■-──》

《Sp■■■■■■ ─F─w──w■■■》

《Hi■, ■■■!!》

《………N■■■ive, t■■■■, I repeat────》

「そ、れ、で!ブーン先生、あのおしゃべりしてた女の子は誰なのかkwsk!!」

「ちょっと大人びた子だったけどぉ……私達と歳、変わらないわよねぇ?あれが先生が前に言ってた“シュー”さんなのかしら~?」

(;^ω^)「だーからあれは違うつってるお……ただ道を聞かれたから、教えて上げた。それだけだお」

「ほほーーぅ?その割にはにこやかに和やかに笑い合っていたような気がするんだけどナー?」

眼鏡を某アニメのネグレクトマダオの如く「クイッ」と持ち上げながら、大野さんが僕の顔を下から覗き込んでくる。デコピンの一発もかましてやろうかと思ったが、このご時世体罰云々が怖いから我慢我慢………

( ^ω^)「………」

「あいた!?」

よくよく考えたら(直接的には丸山さんとはいえ)杉山さんに首輪つけた時点で体罰以上に諸々アウトということに気づいたので、とりあえず一発かましておく。序でにいうとデコピンじゃなくてチョップにしておく。

「酷くない!?今のご時世体罰禁止でしょ!?」

( ^ω^)「体罰じゃなくて指導だからセーフ。だいたい学校から無断で抜け出して買い食いした身で教師のことをからかうんじゃねーお」

「でもぉ、先生もお買い物してるでしょ~?」

( ^ω^)「うん、仕事な?」

「おまけに、美人さんにでれでれしちゃって浮気まで」

( ^ω^)「道 案 内 な ?」

「………どうかしらねぇ~、私達のところだと、お話の声とか聞こえなかったしぃ」

僕が少し強めの口調で注意すると、宇津木さんはツンッとそっぽを向いてしまった。

「先生だって、男の人でしょ?なら、何も思わなかったってことはないんじゃないかしら~?」

(;^ω^)「はぁ……客観的に美人さんだなとは思ったけど本当に何にもねえお。

というか今日はえらく突っかかるおね」

「……別に?そんなこともないけれど?」

「ほら、優季ちゃんも難しい年ごr「あやはバカだなぁ」食い気味に!?」

(´・ω・`)ノ
《電撃的に東欧連合軍への支援を表明したイギリスのショボン=ウィリアムズ首相は、本日レイクンヒース空軍基地を視察しました。

リスボン沖事変以来独自路線を歩んできたイギリスの孤立主義的な姿勢を覆す動きに、専門家の間では様々な意見が出ており───》

僕等の大騒ぎを尻目に、頭上をゆったりと進む電光スクリーン付の飛行船にはニュース番組が映し出されている。画面の中では、4年前にウィリアム=ピットを抜いて22歳という若さで首相に就任した【グレートブリテンの貴公子】が柔和な微笑みを浮かべて周囲の観衆に手を振っている。

「………」

「………」

大野さんと宇津木さんは、漫才をやめていつの間にか飛行船を見上げていた。尤も、それは別にショボン首相に気を取られてのことではない。どちらかというとキャスターが口にした「イギリス」という───更に言えば、そこから連想される「ヨーロッパ」という単語に反応したのだろう。

二人の目に宿るのは、言いようのない漠然とした不安と“ある人”に対する気遣いと心配。

「………西住隊長、大丈夫かしらぁ」

( ^ω^)「………大丈夫、と安請け合いはできないけど」

そして、きっと

( ^ω^)「信じてあげるしかねえお、周りが」

僕の目にも、同じものが宿っている。

中須賀エミ。

西住さんが九州でまだ小学生だった頃に、初めて“戦車道”関連で出来た友達の一人。

まぁこれは武部さんからの又聞きで、更に言えば僕は「そんな友達が今はドイツにいるらしい」という話を聞いたに過ぎない。つい先日までは、僕はその少女の名前も顔も知らなかった。

そう、“つい先日”、その中須賀エミさんをテレビ画面越しに見るまでは。

『………………エミ、ちゃん?』

混迷を極めるヨーロッパの状況を特集していた、お昼のニュース。学食備え付けテレビの大画面に一瞬映された、赤い髪の少女。

周囲の人々同様“軍服”に身を包んだ東洋風の顔立ちをしたその子を目にした瞬間、西住さんは卒倒して保健室へと運ばれた。

あの、絶望に濡れた声は。この世の終わりを迎えたような呆然とした表情は。

未だにその場に居合わせた僕の目と耳から離れてくれない。

「………あやは心配しすぎよ~。隊長は、強い人だもの。あんまり心配するのも失礼よ?」

「………そりゃ、そうだけどさ」

( ^ω^)「……」

確かに、西住さんはとても強い人だと思う。復帰した後の彼女の言動も、一見するといつも通りだ。

ただ、それでも彼女はまだ学生だ。ようやく17歳になったばかりの、高校二年生の子供なのだ。友達が軍隊に入って死線の只中にある事実を、平然と受け止められるような年齢ではない。

そう、理解はしているのに。

( ^ω^)「………っ」

少なくとも僕には、教師として彼女にかけられる言葉も役に立てる力も持ち合わせていない。

ソレがなんとも、歯痒い。

「だーかーらー、アタシはここの関係者だって言ってんじゃない!いいから通しなさいよ!」

<ヽ;`∀´>「何度でも言うけどダメニダ!本官にはそういう権限はないから、学園内に入りたいなら身分証か入区許可証を提示するニダ!」

「………そ、その、忘れちゃったのよ!制服見れば解るでしょ、早く通してよ授業に遅れちゃうじゃない!」

<ヽ;`∀´>「大洗の制服なんてレプリカがそこら辺に売ってるし本官は本物と偽物を見分けられるような眼力がないからダメニダ!いいからせめてここでじっとしてるニダ、三月巡査を呼んでくるニダ!」

「ちょっ、あの人はやめてよ!先週侵入しようとしたときにガッツリ絞られてるんだから!」

気温差が激しいと風邪を引きやすいというのは割と常識の話だけど、これは僕は脳にも当てはまる話だと思う。もの凄く真剣な悩みを考えているところにもの凄く下らない光景や物事を突きつけられると、どうにも激しい頭痛に見舞われることが多いから。

<ヽ;`∀´>「侵入!?キミ絶対ここの生徒じゃないニダね!?」

「なななななななにを言ってるのよ!このアタシが大洗女子学園の強さの秘密を調べるために侵入を画策するスパイなワケがないじゃない!ほら、早うどきなされやおほほほほほ!」

<ヽ;`∀´>そ「言い訳下手くそすぎニダ!そんなん聞いて通す奴この世にいないニダよ!あと後半キャラ崩壊しすぎニダ!」

「…………あら~」

「…………ブーン先生、あれ」

( ∩ω∩)「大丈夫、見えてるから。ただ、ちょっと休んでからでいいかお?」

そう、例えば今のような状態が当てはまる。一人の性との悩みについて、真剣に考えてる最中に────







「あーもう拉致が明かないじゃない!このままだと風紀委員とかに見付かっちゃう……」

( ^ω^)「諜報活動ご苦労様ですお、アリサさん」

「………ゲ」

校門前で大騒ぎする、サンダース大附属からの(間抜けな)スパイを見つけたときとか。

出勤前投稿完了。本日夜に残り投下します

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「だーかーらー、アタシはここの関係者だって言ってんじゃない!いいから通しなさいよ!」

<ヽ;`∀´>「何度でも言うけどダメニダ!本官にはそういう権限はないから、学園内に入りたいなら身分証か入区許可証を提示するニダ!」

「………そ、その、忘れちゃったのよ!制服見れば解るでしょ、早く通してよ授業に遅れちゃうじゃない!」

<ヽ;`∀´>「大洗の制服なんてレプリカがそこら辺に売ってるし本官は本物と偽物を見分けられるような眼力がないからダメニダ!いいからせめてここでじっとしてるニダ、三月巡査を呼んでくるニダ!」

「ちょっ、あの人はやめてよ!先週侵入しようとしたときにガッツリ絞られてるんだから!」

ところで、気温差が激しいと風邪を引きやすいというのは割と常識の話だけど、これは僕は脳にも当てはまる話だと思う。もの凄く真剣な悩みを考えているところにもの凄く下らない光景や物事を突きつけられると、どうにも激しい頭痛に見舞われることが多いから。

<ヽ;`∀´>「侵入!?キミ絶対ここの生徒じゃないニダね!?」

「なななななななにを言ってるのよ!このアタシが大洗女子学園の強さの秘密を調べるために侵入を画策するスパイなワケがないじゃない!ほら、早うどきなされやおほほほほほ!」

<ヽ;`∀´>そ「言い訳下手くそすぎニダ!そんなん聞いて通す奴この世にいないニダよ!あと後半キャラ崩壊しすぎニダ!」

「…………あら~」

「…………ブーン先生、あれ」

( ∩ω∩)「大丈夫、見えてるから。ただ、ちょっと休んでからでいいかお?」

そう、例えば今のような状態が当てはまる。一人の生徒の悩みについて、真剣に考えてる最中に────







「あーもう拉致が明かないじゃない!このままだと風紀委員とかに見付かっちゃう……」

( ^ω^)「諜報活動ご苦労様ですお、アリサさん」

「………ゲ」

校門前で大騒ぎする、サンダース大附属からの(間抜けな)スパイを見つけたときとか。







キーン、コーン、カーン、コーン

みほ「起立、気をつけ、礼!」

一同「「「よろしくお願いしまーーす!!」」」

一部「「「ヨロシクオネガイシマース………」」」

( ^ω^)「はーい、よろしくだおー。で、久し振りの戦車道座学の時間になったわけだけど………」

典子「」チーン

桃「」ズーン

あけび「」ゴーン

桂利奈「」ドギャアーーーン

( ^ω^)「………あれだおね、テスト期間明けは悲喜こもごもがうかがい知れて正直メッチャおもろい」

あけび「ひ、他人事だと思って……」

( ^ω^)「他人事さハッハッハッ」

典子「そもそも、中間考査から一週間開かずに実力テストってさぁ………」

杏「いや~、悪いねぇ。大学選抜戦の後も、諸々の指示とか根回しとかで教師陣も含めて学園の上の方は総動員だったからさぁ」モッモッモッ

( ^ω^)「ぶっちゃけ作る側もキツかったお。問題被らせないようにしなきゃいけなかったし………んで、今度はなに喰ってんだお」

杏「甘納豆。先生もどう?」

( ^ω^)「いらんし食うのやめーや」

杏「んっしっしっ」モグモグ

桃「うぅ……解ってたのに……問題解ってたのに……解答欄が……」メソメソ

柚子「だからあれだけ落ち着いてやった方が良いよって言ったのに……」ヨシヨシ

桃「せっかくゼミでやったところが出たのに……柚子ちゃーーーん!!」エーン

( ^ω^)「まーた“高転び、仰のけに転ばれ”てしまったのか……あれ?」

桂利奈「」ドボギャーーーーーンッ!!!

( ^ω^)「阪口さんが一番死んでるけど、何かあったのかお?今回国語以外も含めて全体的に点数悪くなかったと思ったけど」

梓「あっ、桂利奈ちゃんは三日以上遊べない日が続くとエネルギーが切れちゃうから……」

( ^ω^)「マグロか何か?」

紗希「……………アニメ版ゴジラ、第二章来年公開」ボソッ

桂利奈「あいっ!!!!」シャッキーーーーンッ!!!

沙織「復活した!?」

( ^ω^)「ツッコまねえぞ僕ァ。さて、じゃ、雑談もこの辺で終わりにしてそろそろ授業に………」

麻子「…………その前に、一ついいか先生」

( ^ω^)「おっ、何だお冷泉さん」

麻子「…………私の目の前に座っているこの簀巻きは、いったい何事だ?」

アリサ(簀巻き)「…………Shit」ギリギリギリ

華「大層お怒りみたいですねぇ」

おりょう「まぁ簀巻きにされて怒らない人間の方が珍しいとは思うぜよ」

( ^ω^)「あぁ、それはアレだお、スパイ」

優花里「まーた捕まってしまわれたんですかアリサ殿、懲りませんねぇ」ヤレヤレ

アリサ「そのLINEで煽り系スタンプとして使えそうな感じの表情やめなさいよ!!アンタがサンダースでスパイやってたこと踏まえると二重に腹立たしいんだけど!?」

優花里「自分は二度も三度も見つかったり捕まったりしてませんし?」ヘッ

アリサ「ッキィイイイ!!!」ジダンダ

梓「あっ、すみません少し静かにしてくれませんかアリサ(まぬけ)さん」ニッコリ

アリサ「今心の中で名前に滅茶苦茶ムカつくルビふらなかった!?」

あゆみ(……秋山先輩と梓ってこんなキャラだったっけ?)

( ^ω^)(この二人西住さん関連でいろいろストレス溜めてるからなぁ、秋山さんはおまけに新生徒会としてのプレッシャーも受けてるはずだし)

( ^ω^)(あとこの二人無線傍受の件もまだ許してなさそう)

左衛門佐「で、結局何故彼女をここに?警備員なり警察なり風紀委員なり、収容する場所なら幾らもあっただろうに」

そど子「なんなら許可貰えば今からでも連れて行けますよ?」

梓「或いは甲板から放り出してサメの餌……」

アリサ「Violence!!?」

( ^ω^)「落ち着け忠犬二号。

まず警察なんだけど……二田さん(<ヽ`∀´>)に確認したところ、今学園艦内で手が空いてる部署がないらしいんだお。なんでも第4商業区の方で騒いでる観光客の一団があるらしくて、そっちに人手を割きすぎたせいか連絡がうまくつかないらしいお」

沙織「……あれ?華、ゆかりん、そんな連絡私達の元に来たっけ?」

華「いえ……」

優花里「私も聞いてないです」

杏「小山、かーしま」

桃「いえ、私達もそういった話は全く受けてません」

柚子「そもそも、生徒会引き継ぎの旨は茨城県警にしっかりと伝えてあるので、私達の方に間違って連絡が行く可能性自体低いかと」

杏「…………まぁ、行楽シーズンだからってのも、あるのかな」

華「園さん、連絡があまりにも遅いようなら風紀委員の方から一度確認の連絡を入れて貰ってもよろしいでしょうか?」

そど子「ええ、解ったわ」

( ^ω^)「で、まぁ正直むざむざスパイされるのも何となく腹立たしいから、監視の意味でここまで引っ張ってきたっていうのは理由の半分だお。もう半分は、僕の個人的な意図だおね」

沙織「個人的な理由?」

優季「まさかの浮気かしら~」イヤンイヤン

( ^ω^)「今日どうしたんだよお前は本当に。

今日やる戦車道史の範囲が、丁度多分アリサさんの───というより、サンダースの得意分野に関わってくるんだお。授業を円滑に進めるのに、ちょっと協力して貰うことにしたんだお」

アリサ「アタシが協力!?はっ、忠告するけどね先生様、卵が孵る前にひよこを数えるのは賢い選択肢とは……」

( ^ω^)「澤さん、秋山さん、アリサさんから断られた場合彼女の処遇は君らに任せるお」

梓「解りました」

優花里「お任せ下さい」

( ^ω^)「アリサさん、協力していただけると助かりますお」

アリサ「Sir yes sir!!」

( ^ω^)「良い返事を貰えて何よりだお」

沙織「………ブーン先生っていつもニコニコしてて優しそうだけどさ、たまにさらっと怖いこというよね、みぽりん」ヒソヒソ

みほ「………」

沙織「………みぽりん?」

みほ「えっ!?あっ、うんそうだね!!劇場版ボコは本当に最高だよね!!」

沙織「ボコの話一文字もしてないけど!?」

麻子「……落ち着け西住さん。沙織の話が下らなすぎて眠くなったら気を遣わずにそういえばいいんだ」

沙織「麻子酷くない!?」

みほ「あはは……うん、大丈夫。ごめんね、ちょっと最近疲れ気味で」

優花里「西住殿……」

( ^ω^)「…………。

さ、そろそろおしゃべりもここまで!テスト明け1発目の戦車道史、始めるおー」

( ^ω^)「さて……立て続けのテストで大分期間も開いたことだしまずは簡単な復習からやってくおー。アリサさんにも授業の流れを把握しておいてほしいので、聞いて貰えると助かるお」

アリサ「Yes sir!!」

( ^ω^)「ごめん、脅しすぎたの謝るからそのノリやめて。

前回やったのは戦車道の原型、女性軍人文化の欧州における【衰退と復活】だったおね。キリスト教との対立から十字軍や魔女狩りを経て衰退した女騎士文化がマルティン=ルターの宗教改革や英西戦争に乗じて再び台頭し、最終的にナポレオンの元で【ヴィヴァンディエール】という女性戦車兵の礎が誕生するまでを学んだお」

エルヴィン「ノーマン=コーンの学説が覆ってたというのは驚いたな。それに、戦車道と魔女という一見別物の概念が大きな関わりを持っているというのも新鮮だった」

( ^ω^)「そこが歴史の面白いところだおね。っと、カバさんチームに今更歴史の面白さを語るのも野暮か」

ツチヤ「……あれ?ブーン先生って確か国語教師じゃ」

( ^ω^)「言うんじゃねえお。

そして、今日学ぶのは再び日本での戦車道の発展。安土桃山時代末期から江戸時代にかけてがその範囲になるおね」

おりょう「……」ガタッ

( ^ω^)「先に言っておくお。江戸時代の中で戦車道に関して取り上げるべき内容は、ない!!!」

おりょう「」ドンガラガラガラガッシャッシャーーーーンッ!!!

アリサ「」ビクッ

カエサル「おりょうーーーーー!!?」

エルヴィン「尼子騒兵衛かいしいひさいちかと言わんばかりの漫画的な転けっぷりだな!?」

麻子「……懐かしい名前だ」

優花里「しかし内藤教諭、江戸時代に“取り上げるべき事がない”というのは、私としてもいささか驚くものがあります」

忍「250年もの歴史があるし、武道って言うと何となく江戸時代の印象が強いですもんね……新撰組とか柳生十兵衛とかのイメージで」

( ^ω^)「まぁ、ちょっと今の言い方は語弊があるおね。正確に言うと、江戸時代に入ってからの戦車道の原型───織田信忠が広めようとした“砲車道”を祖とする女流鉄砲術は、幕末の動乱期までは特筆して取り上げるような出来事に乏しい反面非常に“安定的な発展”を遂げていくんだお」

柚子「安定的な………」

華「発展、ですか?」

( ^ω^)「江戸時代、徳川幕府は様々な理由から女流鉄砲術に対する支援を非常に手厚く行っていたんだお。幕府指定の地域であれば道場の建設に莫大な補助金が出たり、門下生も含めて納めなければならない税が軽くなったりとかなり優遇されていたようだおね」

( ^ω^)「勿論、探せば衰退の危機と言える事件も少なからずあるおね。例えば1657年の【明暦の大火】においては火元が女流鉄砲術の道場だったという噂が流れたせいで焼け出された人々による排斥運動が起きたし、松平定信による【寛政の改革】では幾つかの著名な鉄砲術流派家元が前老中田沼意次への収賄を行っていたせいもあって規模の大幅な縮小を検討されたりもしているお。

ただ、全体傾向として女流鉄砲術は時代の流れに従って流派を増やし、教えを体系化し、2世紀半にも及ぶ太平の世の中で緩やかな繁栄を謳歌するんだお」

パゾ美「………それはそれで意外」

ゴモ代「ねっ。歴史の授業とかで聞いてると、何となく江戸時代って庶民とか町民とか、一般の人にもの凄く厳しいイメージあるし」

おりょう「そのイメージは多分、さっきブーン先生が言ってた寛政の改革の影響がとりわけ強いと思うぜよ。幕政改革は質素倹約が中核に据えられることが多いけど、中でもこれは農民を無理やり元の土地に帰す旧民帰農令とか棄捐令でとにかく武家優遇だったから」シュバッ!!

アリサ「あ、あれだけ盛大にずっこけてたのに復活早いわね……」

( ^ω^)「カバさんチームと秋山さんはちょっと特殊な人種だから……」

スズキ「だけど、割と一揆とかも起こってたって事はそれなりに厳しい政治だったんじゃないの?やっぱり」

( ^ω^)「野上さんもいうとおり決して優しい政治じゃなかったのは確かだけど、そっちはどちらかというと重農主義政策の限界が引き起こした節はあるおね。まぁこの話始めちゃうと経済学の方向に盛大にズレていくから深くはやらんが」

桃「割と言われてることだが、田沼意次の重商主義政策がうまくいった場合どうなってたかというのは私も興味深いな。寛政の改革はその反動だったわけだし」

( ^ω^)「浅間山『ダメです』」

※老中田沼意次の財政改革……所謂【田沼時代】終焉の大きな原因は1782年の天明の大飢饉、1783年の浅間山噴火と連続的に発生した天災によるところが大きいとされています。

おりょう「それに、江戸時代は身分差、分けても武器の規制が厳しいというのも一般の印象だが実際はそこまでじゃない。例えば町民でも、自衛のために武具を持つことはある程度認められてたんだ」

左衛門佐「決まった長さ以下のものであること、二本差しではないことなどの規定を満たした場合だけどな。鉄砲についても、結構な数が民間で所持されていたらしい」

ゴモ代「へー……」

( ^ω^)「武器所持の規定は定寸制度って奴だおね。脇差しや小刀のような武器なら持ち歩いてもOKというものだお。

鉄砲については流石に五代将軍徳川綱吉の時代に【諸国鉄砲改め】が行われる等それなりに強い規制もなされていたけれど、それでも民間で全く持っちゃダメという風にはならなかったしね。女流鉄砲術は狩猟用などと併せて“特例所持”として認められてたし」

麻子「……特に江戸の初期は、元亀天正の所謂“戦国時代”の気風がまだまだ残っていたからな。下手に強権的な規制をかければ、島原の乱に代表されるような大型の民衆暴動が起きかねなかったというのもあるんだろう」

梓「でも先生。私達が思っていたよりも江戸時代の規制が緩かったというのは解りますけど、なんで幕府は女流鉄砲術を支援したんですか?今までの話で“女流鉄砲術が廃れずに済んだ”理由は解りましたが、“緩やかな繁栄”には繋がらないと思うんですけれど」

( ^ω^)「おっおー、良いところに気づいたおね澤さん。実はそこには、戦国時代末期から江戸時代初頭にかけてで行われた、三つの大きな合戦が関係してるんだお」

左衛門佐「三つ……?」

( ^ω^)「そう。

【小牧・長久手の戦い】、【関ケ原の戦い】、そしてさっき冷泉さんも上げていた【島原の乱】。

この三つの戦いによって、砲車道………後の女流鉄砲術は、大きく運命を左右されていくことになるんだお」










《【H──S A■■■】 Lost!!》

《Op■n ・・・e!! ─wW─!!》

《Shit, T……et arrive!!》

《【HMAS Brisbane】 for HQ, We lost Mastery of the air!! We need air support!!》

.


( ^ω^)「先ず、小牧長久手から関ケ原までの流れをざっくりと紹介していくおー。

両方とも、普通に学校の授業でもやるから多分皆も簡単な内容は知ってるおね?」

典子「………………」

あや「………………」

( ^ω^)「なぁ?磯部さん、大野さん。なんで二人が目を反らしてるのか僕には皆目見当もつかないお」

あけび「キャプテン………」

典子「うぅ………だって年号とか人物名覚えるのもの凄く苦手で………」

アリサ「………」メソラシー

みほ「アリサさんもですか……」

優季「あやはバカだなぁ」

あや「言い返せないンゴ……」

優季「うふふ~」←日本史、国語は90点台がデフォ

( ^ω^)「大野さん、その言葉遣いは先生感心しないな。

まぁ、一応簡単に触れておくと………」

左衛門佐「さて、と」ガタッ

( ^ω^)「ここは本当に手短に終わらせたいから座れさえちん」

左衛門佐「だからその呼び方やめぃ!!!?」チャクセキッ!

( ^ω^)「小牧長久手の戦いは1584年、羽柴秀吉と徳川家康・織田信雄連合軍の間で行われた合戦だお。戦場となったのは尾張国北部、現在でいう愛知県。

山崎の戦い、賎ヶ岳の戦いに続いて行われた、【織田信長の天下統一事業の継承者】を決めるための戦いとして知られているおね」

( ^ω^)「よく誤解されがちなのが、メインイベントである【長久手の戦い】の経緯。羽柴秀次を総大将に池田恒興、森長可らによって率いられた三河奇襲軍二万余名を、動きを察知し先回りした徳川家康指揮下の一万三千余が撃ち破り天下に“東海道に家康あり”と知らしめた戦い。

実はこの戦い、よく家康の一方的勝利と思われてしまうけど実際には徳川軍も相当数の損害を出してるんだお」

麻子「ほぉ……大河ドラマなんかでも家康の凄さを魅せるイベントの一つとして扱われがちだから意外だ」

左衛門佐「天下の大英雄羽柴秀吉に寡兵で土をつけたってことで家康の戦巧者ぶりを示す解りやすい例になるからな。とはいえブーン先生が言うとおり、家康公の軍もかなりの深手を負ったのは事実らしい。

徳川実紀では、強襲部隊にも1000を越える損害が出たと書かれている」

( ^ω^)「徳川実紀の信憑性も考慮すると、その3倍から4倍の損害は受けたのではってのが定説だおね。徳川軍の迎撃部隊が一万三千だから、少なくとも1/4近い戦力を失った計算になるお」

優花里「当時の白兵戦主流の戦いでそれは壊滅に近いんじゃ……」

( ^ω^)「秀吉軍は5000を越える損害を出したらしいしま、多少はね?

とはいえ、三河奇襲軍に気づかれず背後を突き圧倒的優位に立っていたはずの戦いで、何故徳川軍がそれほど大きな損害を受けてしまったのか?

それを解く鍵こそが────“砲車道”に存在するんだお」

( ^Д^)←羽柴秀吉

彡(゚)(゚)←徳川家康

(・∀ ・) ('(゚∀゚∩ ←森長可&池田恒興

ξ゚⊿゚)ξ←池田せん(後の安養院)



( ^Д^)「家康の奴め、でっかい野戦陣地作ってそこに引きこもったまま動かないだぎゃー。戦上手の家康が率いることを考えれば真っ向から攻めかかっても大損害は必須、まともには攻めたくない」

( ^Д^)「……例えば奴の本拠地の三河なんて攻めりゃ、家康の奴も慌てふためくんじゃにゃあかなぁ」チラッ、チラッ

(・∀ ・)「! 秀吉殿、その任を私森長可と池田殿にお任せ下さい!」

('(゚∀゚∩ 「前哨戦(羽黒の戦い)でズタボロにされた汚名を返上したいよ!頑張れば池田家の武名がなおるよ!!」

( ^Д^)「おぉ!おみゃあらがやってくれるだぎゃ!

その意気やよし!秀次を総大将とした奇襲軍の先鋒を任せるだぎゃ!!」

~小牧城~

彡(゚)(゚)「あの猿ゥしびれきらしたか!2万もの軍勢動かしてバレへんワケがないやろ!!」

彡#(゚)(゚)「速やかに主力部隊集めて電撃戦や!奴等を背後から攻め立てて叩き潰すで!!」

~4月9日、【長久手の戦い】勃発!!~

榊原康政「死んで、どうぞ(迫真)」

秀次「ギャー」

('(゚∀゚;∩ 「秀次様の本隊瞬殺!?なにしに出てきたのあの人!?」

(・∀ ・;)「家康の野郎に裏回られたぞ!!迎撃準備急げ!!」

彡(゚)(゚)「阿部慎之助の足より遅いわボケぇ!!去ねや!!」

('(゚∀゚;∩ 「ぎゃー!総崩れだよー!?」

(・∀ ・;)「クソッ、このままじゃ壊滅する!!」

────ドギゥーーーーーンッ!!!

彡;(゚)(゚)そ「ファッ!?」

(;・∀ ・)「「!!?」」('(゚∀゚;∩

彡;(゚)(゚)「ワ、ワイの馬印が………何もんじゃコラァッ!!」




ガラガラガラッ!!

ξ#゚⊿゚)ξ「池田恒興の娘にして森長可が妻、せん!!

鉄砲車50台、女鉄砲衆200余名共々、羽柴秀吉様の軍勢にお味方いたぁああああす!!!」

(*゚∀゚) ノパ⊿゚)
「「「ぉおおおーーーーーーっ!!!!」」」
(*゚A゚) |w´‐ _‐ノv


ξ///⊿//)ξ「べ、別に夫のことを助けたくて来たんじゃないんだからね!!!」

ズダダダダダーーーンッ!!!

彡;(゚)(゚)「ファーーーーwwww

アレ信長公の率いていた砲車隊やんけ!エラい練度や、こっちの兵がバタバタ薙ぎ倒されとる!!」

堀秀政「家康の馬印撃ち抜かれとるやん!味方頑張ってるな、助けなきゃ(使命感)」

(・∀ ・#)「見よや我が妻せんの姫武者ぶりを!撃てば必中備えは固く、駆ける姿に乱れなし!!」

('(゚∀゚#∩ 「愛娘が手勢に遅れとらば、末代までの恥となろう!攻めや攻めや!総寄せじゃあ!!」

彡;(゚)(゚)「クソが……ここぞとばかりにキャラ変えよって……」

「殿!堀秀政勢の加勢もあり敵は果敢に攻めて参ります!お退きあれ!」

彡(゚)(゚)「アホがぁ!!ここ抜かれたら三河が蹂躙されるんやぞ!!逃げられるか!!」

彡#(○)(○)「三河武士の精強さ、見せるは今やぞ!!上方と尾張の弱兵共なんぞ吹き飛ばしたれぇ!!」

「「「おおおおーーーーーっ!!!」」」



( ^Д^)「………チッ」

沙織「せんさん、格好いい………」ポー

麻子「死んでる上に女性なワケだが」

華「しかも人妻ですね」

沙織「う、うるさいなぁ!」

( ^ω^)「因みに砲車隊こそ率いなかったけど、彼女は賎ヶ岳の戦いでも鉄砲衆の指揮官として参戦して戦功を上げているおね。秀吉から彼女に直々に送られた感状が残ってるけど、そこでは“貴女が男なら100万石を槍にて稼ぐ器量だっただろう”ともう彼女をべた褒めしまくってるお」

おりょう「すごい買いっぷりぜよ」

左衛門佐「………せん殿が女ってのもありそうだけど」

( ^ω^)「日本中の歴史家達が気づいてることだから言うな。

ともあれ、突如現れた200人もの砲車隊に撃ち竦められて徳川勢は一時的に混乱、味方の奮戦を見た堀秀政が後退しかけた軍を反転させて加勢。一進一退の攻防となる。

思わぬ大決戦となったことで秀吉側の損害が更に拡大したという一面もあるけれど、家康側は何とか奇襲軍を追い返したものの予定を大きく上回る痛手を受けてそれ以上の追撃は出来ず。池田恒興、森長可ら諸将も悉く取り逃がしてしまうお」

左衛門佐「堀秀政はせん殿の突貫がなければ退却してきたかも知れない、ということか……まさに戦況を動かした一撃だな」

ナカジマ「でも、二万人もの奇襲部隊が気づかれないと秀吉は本気で思ってたのかな……。私もそんなに日本史は得意じゃないけど、秀吉が戦上手ってのは流石に知ってるよ?

なんからしくないというか」

( ^ω^)「………ところでこの奇襲軍、秀吉が二人を先鋒にした理由は三河奇襲の序でに森長可と池田恒興にはあわよくば死んで欲しかったからという説があるお」

ももがー「えぇ………(ドン引き)」

沙織「………やだもー」

( ^ω^)「森長可は織田信忠の元与力、池田恒興は清洲会議の参加者である上母が織田信長の乳母、更にこの二人はせんを通じて縁戚関係。秀吉が疎んじてたとしても不思議じゃないおね。

壊滅ありきだとすると甥っ子の秀次をわざわざ総大将に任命して一族も護衛につけてる辺りが矛盾するから信憑性は微妙だけど、そういう噂があるのは厳然とした事実だお。池田恒興と森長可がそこから三年以内に立て続けに不自然な病死してるのも、いろいろ黒ーーい噂があるお」

梓「………やっぱり、歴史って怖いです」

( ^ω^)「ところで、砲車隊の参戦は【長久手の戦い】の戦況に影響を与えた以外にも、秀吉の“天下統一事業の引き継ぎ”の正当性を強めたという大きな政治的意味があったお」

ねこにゃー「え?それはまた、なんで……?」

桃「………その女鉄砲衆は、もしかして岐阜の出身者が主力ですか?」

( ^ω^)「河嶋さんお見事。御名答だお」

桃「ふふん」ドヤァッ

( ^ω^)「本番でそれをやってくれるなら我々教師陣は泣いて喜ぶお」

桃「……………ハイ」←解答欄をずらして全テスト壊滅

( ^ω^)「この時池田せんの呼びかけに応じ集まった200余名は、その多くが岐阜の女衆………更に言えば、長篠合戦で織田信忠の召集に応じた者達だったんだお。彼女達は合戦後も自分たちを使い捨てにせず、男女の区別もなく褒賞をくれた信忠に恩義を感じていた。

形式的とはいえ織田家の家督を譲られていた信忠に忠誠を尽くす遺臣達が、秀吉側に立って戦った………この事実は、信忠の遺児である三法師の後見役には羽柴秀吉こそが相応しいと彼女達が認めたとも言える。

事実この直後から、それまで中立を保っていた大名や旧織田家家臣、果ては信雄側に立っていた者達まで秀吉側へと着き始める。味方を失い戦意を喪失した織田信雄も秀吉と単独講和、大義名分を完全に失った家康も兵を退き秀吉の全国統一は大きく前進するんだお」

麻子「…………ん?」

沙織「どしたの?麻子」

麻子「……いや、前々回の授業で、秀吉は刀狩り令を発布して砲車道を衰退させたと確か先生は言っていた。そうなると天下統一に大きく貢献した女鉄砲衆を、秀吉は相当邪険に扱ったことになるが」

( ^ω^)「おっおー、流石の記憶力。それに、目の付け所も鋭いお。

この話で面白いのは、女鉄砲衆が味方した秀吉は彼女達に恐怖と警戒を、逆に刃を交えた家康は畏怖と敬意をそれぞれ覚えたという点だお」

(;^Д^)『あんなやべーのが織田家に忠誠誓った状態で岐阜に跋扈してるって冗談じゃにゃあよ……力を奪わにゃあ(使命感)』

彡(^)(^)『主君が討ち取られても鍛錬を怠らず、旧主の家臣の元にはせ参じ女の身であることも顧みず勇ましく打ち掛かる……武人の鑑やんけ!性別とか関係ないから支援したろ!!』

( ^ω^)「秀吉は大義名分を手に入れたが故に、自分が織田政権を奪おうとする“簒奪者”であるという負い目が却って重くのしかかり、後顧の憂いを立つために織田家と繋がりの深い者達に力を持たせ続けるわけにはいかなくなるお。

逆に家康はあくまで織田家の同盟者だという立場も手伝って、秀吉に戦略面で敗北し継承者争いから脱落した故にそう言った軛に縛られる必要性がなくなったんだお」

桂利奈「えーっと、えーっと……人間万事さいおーが馬!!!」

( ^ω^)「う、うーん………まぁいいやそれで。

ともあれ、秀吉は以前の授業で言ったとおりこの後女鉄砲衆に対する姿勢を急速に硬化させていくお。

岐阜を中心とした集会の制限に、1588年の刀狩り令で武具の取り上げ。更にそれと前後して全国的に行われた太閤検地では信忠から所領を得ていた一部女衆の所領召し上げや厳封などほとんど弾圧と言っていい処置を行っていたようだおね」

華「なんとまぁ……美しく咲いている野花を踏みにじるような行為ですね」

( ^ω^)「積極的にこの行為を肯定するつもりはないけど、出自が農民でバックボーンが薄かった秀吉の事情を考えるとしゃーない部分もあるけどね。

で、岐阜を追われた彼女達を保護したのが、他ならぬ徳川家康だお。彼は自身の城下町に彼女達を住まわせたり、一部の腕が立つものを【女備え】に加えて鉄砲隊の師範代にしたりと厚遇した。

果てには、秀吉が死去した後は五大老として彼の独断で希望する者を岐阜に返す“女衆出戻の御触書”を1599年に公布したりしてるお」

カエサル「入れ込みぶりが凄いな……」

( ^ω^)「幾ら三法師という看板を背負っていても、こうも扱いに差が出ればよくしてくれた方に傾くのは人間として当然。彼女達は信忠並びにその遺児三法師への忠節も忘れはしなかったけれど、徳川家にも深い恩義と親しみを感じるようになるお。

この女鉄砲衆を巡る政策の違いが、後に【関ケ原の戦い】で両家の明暗を分けることになるお」

左衛門佐「関ケ原………岐阜………女衆出戻りの御触書…………岐阜城陥落か!!」

カエおりょエル「「「それだぁあ!!!!」」」

( ^ω^)「正解だけどやかましいわ。

今杉山さんが上げてくれた“岐阜城の陥落”、これは西軍の実質的な総司令官だった石田三成の戦略を瓦解させたターニングポイントであり、誰もが応仁の乱のような長期戦になると思っていたこの戦がたった一日で決着する大きな要因となったお。何故なら天下有数の堅城で鳴らす岐阜城が僅か一日で陥落したことによって、三成は家康が得意とする野戦で彼と正面衝突せざるを得なくなった。

後は、史実が示すとおりの経緯だおね」

麻子「……関ケ原に布陣した石田三成指揮下の西軍は善戦するも、多くの部隊が裏切りや指揮系統の混乱、臆病風に吹かれる等して機能せず。最終的に小早川秀秋の裏切りにより全戦線が瓦解、関ケ原の戦いは家康ら東軍の勝利に終わる」

( ^ω^)「この岐阜城陥落の際に、徳川方に協力したのが“女衆出戻りの御触書”で岐阜に帰還していた女鉄砲衆達だお。犬山城の東軍への内応工作や岐阜城付近の拠点の破壊活動など、八面六臂の活躍だったらしいお」

優花里「しかし内藤教諭、私の知識では三法師───この当時ですから織田秀信殿は西軍側だったはずです。秀吉殿からの迫害にもかかわらず女鉄砲衆の皆さんが織田家に忠誠を誓っていたのなら、その行動は彼女達の主義に反したのではないでしょうか?」

( ^ω^)「そこは家康の巧さだおね。彼は秀信が豊臣家を護りたいという意志を持っていたのを知った上で、逆賊は三成の方であり秀信は三成に繋がる近習たちに騙されているのだというプロパガンダを女衆達に流したんだお。

恩義ある家康の言うことだからと信じたのか、或いは恩義あるが故にそれが嘘だと解っていても目を反らしたのか、彼女達の殆どは家康の情報に従い秀信を“佞臣から解放”するために奔走し………」

エルヴィン「その結果が、岐阜城の陥落ということか」

( ^ω^)「関ケ原で東軍の勝利に大いに貢献した女鉄砲衆を、家康はほとんど武家に近い扱いまで昇格させるなど益々重用。

女衆側もまた、大坂の陣で伊達政宗の騎馬鉄砲隊と連携して最前線で暴れ回り後藤又兵衛を狙撃するなど獅子奮迅の活躍でこれに応えるお。1615年、大坂夏の陣での豊臣家の滅亡と本格的な江戸幕府による統治体制の確立が急速に進んでいく中で、女鉄砲衆───この時徳川家の【女備え】に正式に昇格していた彼女達は“旗本”に準ずる扱いすら受けたお。

中でも後藤又兵衛を狙撃した田尻某を含め何人かは、八千石~一万石という女性としては破格の俸給を受けるに至った」

左衛門佐(冬の陣、夏の陣があっさり流されてしまった……)ズーーン

沙織「……それって凄いことなの?」

おりょう「現代なら子会社の社長に抜擢されて年収数億円になるぐらいの一大事ぜよ」

沙織「すっっごい!!」

アリサ「聖グロ隊長の御先祖様凄いのね……」

( ^ω^)「ダージリンじゃねえ田尻だ田尻。

因みに家康から後を継いだ2代将軍秀忠、3代将軍家光も彼女らに新たな特権を与えたり禄を貰うことを拒んだものに道場を開くことをかなり寛容な内容で許可したりとこの路線は受け継いだお。

徳川家と女鉄砲衆はこのようにして順調に良好な関係を築いていき………そして、徳川幕府治世において“女流鉄砲術”の立ち位置を決定的なものにする、ある事件が起きるんだお」

柚子「先程先生がおっしゃっていた、【島原の乱】ですね」

( ^ω^)「そう。さっき澤さんが疑問に持った女流鉄砲術の“安定的な発展”が約束される、最大のきっかけ。

欧州では間接的とはいえ一時女騎士文化を消滅まで追いやった“キリスト教”が、日本では女流鉄砲術……後の戦車道の飛躍のきっかけとなったのだから歴史ってのは数奇なもんだお」

( ・∀・)←天草四郎時貞

('ω`)←徳川家光

从 ゚∀从←ニコラス=クーケバッケル

(`・ω・´)←松平信綱

川 ゚ -゚)←九州女鉄砲衆頭領


('ω`)「天下はお祖父ちゃんとお父さんのお陰で徳川に定まったけれど、まだまだ元亀天正の気風が残るこの時代。改易した大名の浪人や豊臣家の残党もそこら中に溢れていて、治安も決して良くはない」

('ω`)「でもそれを解決しようにも、まずは幕府の政治体制をより確固たるものにしないと……ホカノコトハアトマワシニシヨ……」

('ω`)「九州天草で一揆?辺境地帯の暴動なんて鎮圧するのメンドウ。適当に現地の藩に任せよ………」

(;`・ω・´)「仕置き役を任じられたが、この戦大丈夫か……?総大将の板倉重昌殿は格が低いし、敵はなにやら士気が高いしで滅茶苦茶不安なんだが」







~1638年 2月14日~

ズダーーーーンッ!!!

重昌「ひでぶっ!?」バタッ

( ・∀・)「我が敬虔なるキリスト教徒達よ、今や幕府軍の総大将が我が奇跡(物理)によって土に消えた。
この輝きこそ我等一揆勢の正義の証しである。
決定的打撃を受けた幕府軍に如何ほどの将が残っていようと、それは既に形骸である」

(#・∀・)「敢えて言おう、カスであると!!」

( ・∀・)「それら軟弱の集団がこのシ・マバラ・ジョウを抜くことは出来ないと私は断言する。
人類は最後の審判に全てを委ね、はじめて真の救済を得られる、これ以上戦い続けては我らの魂の存亡に関わるのだ。
幕府の無能なる者どもに思い知らせ、明日の未来の為に我ら使徒は立たねばならんのである!」

\ジーク・シロー!!/

\ジーク・シロー!!!!/

('ω`;)「えっ、重昌君戦死しちゃったの!?ていうか天草四郎時貞って誰!?はっ!?豊臣秀頼の落とし胤!?ねーよ、あのマザコンがどこの誰と作る暇あったってんだよ!!」

('ω`;)「えぇ……でもその噂信じて多くの浪人衆が島原城の一揆軍に合流したの……?ロマンチスト多すぎだろ常識的に考えて………」

('ω`)「………これ以上モタモタしてると幕府の権威が弱まっちゃう。松平信綱君を改めて総大将にして叩き潰してモラオ……」

(`・ω・´)「総大将はお引き受けしますが、敵の士気は非常に高い。彼らは自分たちが“徳川家に弾圧されていた”という連帯感があるため団結しており、松倉勝家の圧政が原因のため参戦している大名達の中にも彼らに同情的な者が居ます。

策を弄さねば勝てません、九州で女備えを独自に編成する許可を下さい」

('ω`)「別にイイヨ……あ、勝家君は殺すね」

勝家「オワタ」


~2月20日~

ドドドドドドッ!!!

( ・∀・)「……幕府軍が撤退したと思ったら、なんか騎馬の集団が来たな」

川 ゚ -゚)「我らは岐阜よりはるばるはせ参じし、女備え300余名!!総大将が討たれ意気消沈する幕府軍の囲みを撃ち破り、ここまで参った!

“ペトロ様”の遺志を受け継ぎ、これより天草四郎時貞殿にお味方いたぁす!!」

( ・∀・)「ペトロ……」

(*・∀・)「おおっ!!織田秀信公の!よくぞ参られた!城内へ入られよ!!」

川 ゚ -゚)「ありがたき幸せ────」









川 ゚∀ ゚)「とでも言うと思ったかクソボケ茄子がぁーーーーーっ!!!!」ズダダダーーンッ!!!

(;・∀・)「えええええええええええええっ!!!!?」

川 ゚ ∀゚)「誰が孤立無援の負け犬クソ一揆軍になんか着くかバーーーーーカwww

城ん中入りゃこっちのもん、皆殺しターーーーイム!!!」

(;・∀・)「お前いくら公式記録に名前残ってないからってもう少しキャラ何とかならなかったのかよ!?」

川 ゚ ∀゚)「ヒャッハーー!!!汚物は消毒だーーーーっ!!!」

从 ゚∀从「おっ、城内で騒ぎが起きたぞ!全砲門開け、幕府軍を掩護する!!」

从#゚∀从「Open Fire!!」ドォオオオオオンッ!!!

(;・∀・)「ヒイッ!?大砲!!?」

(`・ω・´)「オランダ軍の掩護もはじまった、討ち入れ!!!」

「「「オオォーーーーーーッ!!!!」」」

ねこにゃー「今までの流れから覚悟してたし、想像もしてたのに………」

あや「その想像を、遙かに上回るレベルでえげつない………」

カエサル「それにしても、天草勢はちょっと不用心が過ぎるな」

エルヴィン「うむ、幕府軍が退いた後に都合良くそんな奴等が突然現れたら、普通は警戒するはずだが」

( ^ω^)「それは後世から結果だけを見た僕等の言い分だお。当時実際に島原の乱を戦っていた一揆軍は、どれほど胡散臭くても後先考えずそれに飛びついてしまうぐらい実は追い詰められていたんだお」

おりょう「そもそも一揆勢は籠城は下策だと解ってたからな。どれだけ物資を蓄えたとしても、援軍の来ない籠城など補給が盤石な大軍の前には絶対に勝ち目がないぜよ」

( ^ω^)「それでも天草四郎以下一揆軍は、おざなりな対応とはいえ迅速に迎撃を開始した幕府軍に対し守勢に回りざるを得なくなった。総大将を討ち取ったのも実態は軍をまとめきれていない小物の戦死、大局的には彼らが絶体絶命であることに変わりなかったんだお」

麻子「……そこへ颯爽と現れた援軍。幕府軍は理由が存在する上で“たまたま”退却中、しかも彼女達が騙るはキリシタン大名であり女鉄砲衆との繋がりも深かった織田秀信の遺志。

……なるほど、確かに一揆軍が浮かれて飛びつくのも無理はない」

( ^ω^)「総大将の戦死という凶報を相手の心理に隙を作る手段として利用し、機を逃さなかった松平信綱の見事な采配でもあるおね。序でに言うと、この時潜入した女衆は全員現地で急募した人達で何一つ織田秀信とは関係ありません」キッパリ

沙織「ひっどい………」

( ^ω^)「さて、島原の乱が九州女鉄砲衆と松平信綱、オランダ艦隊の活躍で終息した後、幕府はポルトガルやスペインと国交を段階的に断絶。【キリスト教を広めない】と固い約束をしたオランダとの貿易は継続しつつも、鎖国政策とキリスト教廃絶政策を併行し国内の統制を強めていく。

一方でこの乱の鎮圧に大きく貢献した九州女備えはこちらも正式に徳川幕府に登用され、名目上は熊本藩細川家の与力という形式で石高を得るお」

( ^ω^)「こうして日本中世における【最後の大規模内戦】が終結し、徳川の治世が完全に確立された江戸時代の“本格的な始まり”。この、幕府の力が安定しきるまでの最序盤を様々な形で支えた女鉄砲衆は、確固たる地位を築くことに成功するお」

ぴよたん「関ケ原、大坂の陣、島原……全部で勝利の決め手を作ってるだっちゃ」

おりょう「獅子奮迅ぜよ。そりゃあ幕府も彼女達に足向けて寝られん」

( ^ω^)「この後江戸中期~後期にかけての女流鉄砲術については、幾つか事件もあったけれど基本的には最初に言ったとおり“安定的な発展”を遂げていくお。ただ、この発展には鉄砲術に【競技的な要素】が増していくという大きな特徴があったんだお」

優季「きょーぎてきなとくしょく?」

ホシノ「スポーツみたいな発展の仕方をしていったってことかな?ヨーロッパとは真逆だね」

( ^ω^)「ホシノさんお見事だおー。女騎士文化は前回やったとおり、復活も再発展もあくまで【戦争】と共に歩んでいったお。英西戦争、八十年戦争、フランス革命、そして、ナポレオン戦争。

“ヨーロッパにおける戦車道の道は屍で塗装されている”……まさにこの言葉通り、【女騎士】が【ヴィヴァンディエール】へと、そして第一次世界大戦の【女性戦車兵】へと繋がっていく一連の流れには常に闘争が付きまとったお」

桃「対して日本の女流鉄砲術は、島原の乱以降で考えても2世紀を超える太平の時代に入り剣道や柔術のように戦争の技術でありながら戦争と殆ど関係ない発展を遂げる機会を得たということか」

( ^ω^)「ヨーロッパがキリスト教内の壮絶な宗派間対立もあって常に紛争の火種が転がっていたのに対し、日本は島国である特性を生かして徹底的にキリスト教を排除できたのも大きいおね。

ともあれ、幕府の支援を受けながら“スポーツ”としての女流鉄砲術は少しずつ全国に広まっていくお。同時に、当初は美濃・岐阜流が大半を占めた武術としての【型】に地方ごとの、そして流派ごとの特色が生まれだしたのもこの頃から。

街道整備が進んだ19世紀中頃には、他地域との交流や大手流派の地方巡業も盛んに行われていたお。『東海道五十三次』で有名な歌川広重の描いた、『百田流砲術百中之絵』は国立美術館に現存してるから興味がある人は見に行って欲しいお」

おりょう「浮世絵の大家にこんなこと言うのもあれだけどタイトルまんますぎぜよ広重さん」

典子「ねえ隊長、西住流のことを描いた浮世絵もあったりするの!?」

みほ「うーん……甲冑とか古い書物は本家の倉庫に一杯あったけど……」

( ^ω^)「まぁ、あっても不思議じゃないおね。

………さて、長きにわたり独自の発展を遂げてきた女流鉄砲術。でも、あえて言葉を選ばずに言うなら、本質はやはり“戦争に使う”技術。

太平の 眠りを覚ます 上喜撰────“ある国”との接触によって、日本は再び動乱の時代を迎える。同時に女流鉄砲術………この時はもう“砲術道”と呼ばれるようになっていた戦車道の礎もまた、眠りから覚め戦場で今一度振るわれようとしていたお」

( ^ω^)「そして皆さん、今日のその時が、やって参ります(松平定知風)」

紗希「……ヒストリアじゃなかったのかよ」ボソッ

優季「紗希ちゃん!?」

今日のその時(今日投稿できるとは言ってない)
残余はそう多くないのですが体力的に限界なので明日にまわさせていただきます、申し訳ありません

( ^ω^)「“幕末”という時代の……立たなくていいからな野上」

おりょう(き、機先を制されたぜよ……)

( ^ω^)「“幕末”という時代の区分については諸説あるけれど、基本的には1853年の【黒船来航】によるアメリカ合衆国との本格的な交流開始からと言われているお。

この授業でもこの説に則って話を進めるわけだけど……さて、アリサさん」

アリサ「な、なによ」

( ^ω^)「アメリカ合衆国との本格的な国交樹立によって、日本の【鎖国政策】は終わりを告げたお。では何故、アメリカははるばる太平洋を越えて日本にまで手を伸ばす必要があったのか?

アリサさん、当時のアメリカの状況を踏まえて皆に説明してみて欲しいお」

アリサ「………よくサンダースがアメリカ史に力入れてるって知ってるわねアンタ」

( ^ω^)「教師の情報網を嘗めて貰っちゃ困るお」

アリサ「ヤレヤレだわ……」ガタッ






みほ「…………そういえば簀巻きでしたね、アリサさん」

( ^ω^)「マジで忘れてたお」

アリサ(横倒し)「…Fuck!!!」

.







《Garuda-04, Signal lost!!》

《【Black Bird】 in coming!! Break, Break!!》

《Mayday Mayday Mayday────》

《【■■■】 have no damage!!

I repeat, 【■■■】 have no damage!!》









~特別授業・アリサさんのざっくり☆アメリカ史~

アリサ「………ま、脅されて引き受けたはいいけど、アタシだって同じ学生だから他人に教えるのなんか慣れてないし。本当にざっくり行くわよ」

( ^ω^)「おっおー、構わんおー」

アリサ「前々から思ってたけどアンタのその語尾は何なのよ本当に……確か、エド時代の日本に何故アメリカが接触を図ったのか、だったわよね」

桂利奈「お友達になりたかったから、とかじゃないの?」

アリサ「んな理由だったらあんなハチャメチャ不平等条約なんか押しつけるか。一言で言っちゃうと、植民地獲得競争に参加したかったから。合衆国は、アジア各地の植民地化レースに加わる橋頭堡に日本を選んだってわけ」

あや「まーたドロドロ話がはじまってしまうのか(呆)」

沙織「やだもー(食傷)」

アリサ「19世紀っつったら、ヨーロッパとアメリカは【産業革命】の成功でとんでもない技術革新を遂げて、市場には大量生産された商品が溢れかえっていた時期。機関車や蒸気船といった移動手段の機械化によって、それらの輸送速度も急速に上昇していたわ。でも、その“溢れかえったモノ”を国内だけで捌こうとしてもデフレーションが起きるだけ。

ではどうするか?決まってる、外国に売ればいいのよ」

カエサル「それならそれでヨーロッパ市場でよかったんじゃないのか?わざわざ太平洋を越えてアジアに市場を探す意味が解らないのだが」

アリサ「そりゃ合衆国も出来るならそうしてたでしょうね。

ただ当時のアメリカは独立して1世紀すら経ってない新興国、コネもパイプも積み重ねも足りてない。オマケに米英戦争や米墨戦争の影響で大得意先のイギリスと険悪になり、“世界の工場”によるパクス・ブリタニカからつまはじき。比較的友好国のフランスはナポレオン戦争の痛手から未だに立ち上がれずで貿易どころじゃない。

何より、当時の欧州各国は後の【ブロック経済】に繋がる対植民地・従属国貿易を経済の中核に据えていた。

ヨーロッパの“市場”にアメリカの製品が入る隙間なんて、ポップコーン一粒分だってありゃしなかったわ」

麻子「……アメリカはイギリスへの経済依存を米英戦争で解消していたはずだが」

アリサ「レイゼン、アンタが天才なのは知ってるけどその考え方は頭がいい“だけ”の奴の発想ね」

麻子「…………」ムッ

アリサ「独立ってのは響きこそ勇ましいけれど、裏返して言えば常に“孤立の危機”と隣り合わせ。依存先、従属先があるってのは、ある意味孤立とは無縁のぬるま湯なのよ」

麻子「っ」

沙織「……麻子?」

そど子「冷泉さん?」

アリサ「話アメリカ合衆国は二度の独立戦争を経てこの時確実に“孤立”の危機に直面していたわ。その危機を脱するために、当時の合衆国政府は地球の裏側に………ヨーロッパ諸国が激しく利権を奪い合う、アジア市場への介入に踏み出したってわけ。

そして、これがエド幕府と合衆国の本格的な交流の開始───1853年の【黒船来航】ヘと繋がるわ」

( ^ω^)「ん、アリサさんありがとうだおー。正直予想以上に完璧に解説してくれてちょっと驚いてるお」

アリサ「ハンっ、サンダース女をナメんじゃないわよ。じゃ、アタシはm」

( ^ω^)「秋山さん、澤さん、Go」

ゆかあず「「Yes sir!!」」

アリサ(簀巻き)「Why!!!!?」

( ^ω^)「手伝いは依頼したが解放するとは言ってない(冷酷)

当時のアメリカ合衆国の状況は、今アリサさんから解説があったとおりだお。実際には米墨戦争によって新たな利権も得ていたので完全に干上がるような事は考えづらいとはいえ、当時の世界経済におけるイギリス帝国の存在はあまりにも巨大だったお。パクス・ブリタニカ───【世界の工場】に左右されない経済成長を遂げるために、自力での市場開拓は急務だったと言えるお」

おりょう「後、捕鯨船の修理・補給基地が欲しかったってのもあるぜよ」

( ^ω^)「自分たちの乱獲でさんざんっぱら鯨減らしておいて今更日本に口出ししまくるあの厚顔さ………ゴホンッ!!」

( ^ω^)「とにかく、色々な理由からアメリカはアジア市場への足がかりが必要だったお。ただ、他の先進国は大航海時代には既にアジアの様々な地域に拠点を築いていて、この頃にはもうアメリカが介入する隙は殆どなかった」

おりょう「中国………当時の清ですらアヘン戦争で叩き潰されてイギリスの軍門に降っていたからなぁ」

( ^ω^)「進退窮まった彼らは何とかつけいる場所はないかと眼を皿のようにして探し、その国の───東洋に浮かぶ、侍達が住まう島国の存在に気づいたんだお」

(*^○^*)←マシュー=ペリー

(´・_ゝ・`)←阿部正弘

(,,゚Д゚)←徳川斉昭

(*゚ー゚)←神発流砲術道師範


(*^○^*)「産業革命の産物蒸気船!!

はんせんより、ずっとはやい!!!」

(*^○^*)「オマケに最新鋭大砲も山盛りなんだ!これで未開なアジアの猿なんかケチョンケチョンなんだ!」ポジポジポジポジ

(*^○^*)「オラァ琉球!!日本に行くから中継地点やれやぁ!なんだ!!」ジョウリクー

尚泰王「ヒィッ」

(*^○^*)「気持ちいいんだ!やっぱりUSAがナンバーワンなんだ!この調子で日本の腐ったドアも蹴破ってやるんだ!」

(*^○^*)「アメリカはアジア市場拡大競争に出遅れてるけど、この島国を拠点に巻き返すんだ!

東洋にもこんな植民地候補があるんだ!!」

~ペリー来航前年・江戸城~

(´・_ゝ・`)「オランダから書簡が来ている。何でも、亜米利加がこの日ノ本との交流を求めて、軍艦を率いて向かっているらしい。対応を誤れば、“重大な脅威”に繋がるだろうと」

(,,゚Д゚)「はんっ、自分たちも“脅威”の一つのくせによく言いやがるぜ。とはいえ、信用できる話なのか?」

(´・_ゝ・`)「彼らは日ノ本と交易する数少ない西洋国の内の一つだ。利権を脅かす存在には敏感だろうが……」

幕臣1「いやいや、阿蘭陀は以前も“えげれす”の軍人(香港総督のサミュエル=ジョージ=ボナム)が来日すると予告していたが、結局何も起こらなかったではないか」

幕臣2「左様左様、そもそも阿蘭陀とて邪教を信仰する国、腹に何を抱えているか解りませぬ。下手に騒ぎ立てず、ここはじっくりと構えるのがようございます」

(´・_ゝ・`)(………本当にそうだろうか)

(,,゚Д゚)「しかし、風説書には亜米利加は最新の軍船を従えて此方に来る、とある。しかも中には向こうの兵士を満載して、だ。俺は守りを固めるべきだと思うぞゴルァ」

幕臣3「いやいやいや、斉昭殿。それは心配が過ぎますぞ」

幕臣4「左様左様。だいたい、亜米利加も邪教を信奉していると聞き申す。神州日ノ本に近づいたとて、八百万の神々がその土を踏む前に海に沈めてしまうかもな」

幕臣5「ありそうですな!」

\ハッハッハッ!/

(´・_ゝ・`)(………太平の世が長く続きすぎたな)

(,,゚Д゚)(清国を一方的に叩き潰した奴等がその“神州”の周りを我が物顔で船旅してるってのに………それに亜米利加は、【異国船打払令(※)】の件で幕府にいい感情を持ってない可能性も高いんだぞ?)

※1837年のモリソン号事件のこと。日本人を救助して本国へ送り届けようとしたアメリカ商船を日本側の砲台が攻撃した

(,,゚Д゚)「阿部殿は流石に真剣に受け止めていたようだが、他の幕臣共はダメだ。奴等は西洋の技術力・軍事力を甘く見すぎている」

(,,;-Д-)「奴等に国防を任せても、シャムや天竺、清の二の舞になる。ならば我ら水戸藩が、日ノ本の要となり国体と民を、そして帝をお守りしなればならん」

(,,;゚Д゚)「だが、藩政改革で西洋の武器を取り入れ始めたはいいが更新はまだまだ進んでない。大砲の量産・改良も、亜米利加が到着するまでに完了させるのは無理難題」

(,,;-Д-)「何か………他に策は…………」


      |
   \  __  /
   _ (m) _ピコーン
      |ミ|
   /  `´  \
     (,,゚Д゚)!

     ノヽノヽ
       くく

(,,#゚Д゚)「急ぎ阿部殿に使者を!それと、誰ぞ速やかに神発流砲術道の師範を連れて参れ!!!」

~1853年 6月9日・久里浜~

(*゚ー゚) ズダダーーンッ、ズダーーーンッ!!

(*^○^*)「…………」

(*゚ー゚) ドギゥッ、ズダーーンッ、チュインッ、バギュンッ!!

(;*^○^*)「……………」

(*゚ー゚)

(*- -) )) ペコリ

(;*^○^*)「お、お見事なんだ…………」パチパチパチ

(´・_ゝ・`)「いやぁ、申し訳ありませんでしたペルリ殿。我が主君徳川家慶は病に伏せっておりまして、貴方方をどのようにもてなすか、誰が代表となるかで少し話し合いが必要でして。

結果、皆様をこれほどお待たせしてしまいました」

(;*^○^*)「き、気にしてないんだ!アメリカ合衆国は日本と仲良くなりたくて来たんだ!ちょっと待たされたりしたぐらいで怒るわけないんだ!」

(´-_ゝ-`)「お気遣い感謝致します」

(,,゚Д゚)「………そういえば先日は、浦賀港の方でペルリ殿の兵達が“船遊び”に興じていたとか。如何でしたか、日ノ本の海は」

(;*^○^*)「とても綺麗だったなーなんて……アハハ……」

(,,゚Д゚)「本日はたまたま、我が水戸藩の神発流砲術道による御前射芸(※将軍の前で鉄砲術のお披露目をすること)の日でしてな。上様が伏せっておられる故中止の手筈でしたが、ペルリ殿が来られると聞いて特別にもてなしのためご披露させていただいたのですよ」

(*^○^*)「それは、“歓迎”を感謝するんだ………」

(;*^○^*)(合衆国軍ではもう影も形も見ないような旧式の鉄砲、僕等からしたら化石も同然の銃なんだ)

(;*^○^*)(そんな骨董品で、150ヤードは離れた位置から直径1フィートもない円形の的のど真ん中を撃ち抜く、それも10発以上連続で……精度が尋常じゃないんだ、僕の連れてきた兵士にそんなことができる奴一人も居ないんだ)

(,,゚Д゚)「彼女は我が藩屈指の達人でしてな、まさに百発百中の腕前です。他の者も的の中心までなら何とかなるのですが、ほぼ同じ位置を撃ち抜くとなるととてもとても」

(;*^○^*)「は、ははは……因みに、彼女の配下は何人ほどで?」

(,,゚Д゚)「今年徴募した者も含めて、400人になりますな」

(;*^○^*)(冗談じゃねえんだ!こんな奴が400人もいるような国、僕等との技術格差を考慮しても凄まじい出血を強いられちゃうんだ!植民地化どころじゃないんだ!!)

(´・_ゝ・`)「さて、そろそろペルリ殿はお発ちになる刻でしたな……斉昭殿」

(,,゚Д゚)「うむ………“車”を持てぃ!」

「ハッ!!」







ガラガラガラガラ………ンモーーーッ!!!

http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira149612.jpg


(*゚○゚*)「ファッ!!?」

まーたPCからの、画像がおかしくなってますね……

再掲
http://fsm.vip2ch.com/-/hirame/hira149613.png

(´・_ゝ・`)「どうかなされましたか、ペルリ殿」

(*゚○゚*)「ここここ、これはいったい何なんだ?!ば、馬車みたいに見えるけど、全部鉄で覆われて……牽いてるのは、牛?こっちもなんか鎧みたいなの着てるんだ!?」

(,,゚Д゚)「ははは、そう驚かれますな。常陸国で特別に作らせた“いくさ車”でして、ペルリ殿のおそばを守るため取り寄せたのです」

(*゚○゚*)「………」

(,,゚Д゚)「中には鉄砲衆が二人乗り込んでいて、此方は鉄の荷台で射撃を遮りつつ一方的に敵を撃ち竦めることが出来るという寸法です。

どうにもこの辺り、“上喜撰”の飲み過ぎで浮かれた者どもが不逞の輩として彷徨いておりましてな。貴殿が港に着くまでは、これで脇を固めさせていただきましょう」

(*^○^*)「………感謝するんだ」

(,,゚Д゚)「よし、行けぃ!」

モーーーーッ、ガラガラガラガラ……

(*^○^*)(明かな軍事恫喝だけど、文句言えないんだ。先に蒸気船で港に乗り込んで湾内測量までやってたのがバレてる以上、悪いのは僕等なんだ)

(*^○^*)(………あわよくば艦砲射撃でとっとと首都を焼き尽くした後力で抑え付けて植民地にでもしてやるつもりだったけど………“未開な猿”だなんてとんでもないんだ。今は武器が古いだけで、こいつらは十分に“戦う力”を持っている国なんだ)

(*^○^*)(結局本格的な条約の“詰め”は1年後に先送りされてしまったけど、仕方ないんだ。

強硬路線は無理だと本国に伝えて、改めて日本と交渉し直すんだ)

(*^○^*)「I'll be back!!なんだ!!」







( ^ω^)「【安神車】。この兵器の名前は日本人なら………特に、戦車道に携わる人間なら絶対に一度は聞いたことがあるおね」

( ^ω^)「設計者は御三家水戸藩藩主、徳川斉昭。現実的な問題になりつつあった西洋諸国による日本侵略の危機に備えて開発された、“装甲陸上兵器”だお」

杏「確か、アヘン戦争で清に対してイギリスが行った内陸への電撃的な浸透攻勢の様子を聞いて作らせたって言われてるよね」

( ^ω^)「真相は不明ながら最有力説ではあるおね。河川への敵小型艦の侵入を許した際に、陸戦隊の上陸を許さないための拠点防衛用兵器として考えていたというのが通説だお」

おりょう「しかしながらそれはあくまでも設計段階の話で、完成した時は考案者である斉昭公でさえ“実用的な兵器”だとは思っていなかったぜよ。黒船来航の直前に大砲73門共々献上された二台の【安神車】についても、当初はその珍妙な外見でペリー提督を驚かせるぐらいの役割でしかなかった」

( ^ω^)「しかし実際には、この兵器は日本の歴史を変えるほどの猛威を戦場において振るうことになる。

【戊辰戦争】………日本最後の武家政権が崩壊し、文明開化がはじまるきっかけとなった大規模内戦。この中で利用された【安神車】は、新政府軍────後の明治政府に、“装甲兵器”と“近代火力”の恐ろしさを徹底して刻み込んだお。

それは同時に、日本の砲術道が正真正銘の“戦車道”へと急速に姿を変えていくきっかけでもあったんだお」

アリサ「…………ダグラス=マッカーサーはこう言ったわ。

もしも日本に戦車道が存在しなければ、我々はあと二年早く勝利の美酒に酔いしれていたことだろう。それに、こんな苦い酒にもならなかったはずだ、って」

( ^ω^)「1947年8月15日、首里城での日本による降伏調印を受けての言葉だおね。

二年、かどうかはともかくとして………実際アメリカ軍は、太平洋戦争において当初上層部が予想していたものからは比べものにならないほどの甚大な損害を受けることになる」

( ^ω^)「ガダルカナル、フィリピン、マレーシア、沖縄、ペリリュー、そして…………硫黄島。太平洋の島々で行われた激戦の中で、アメリカ軍の前には常に精強無比の大日本帝国陸軍戦車団が立ち塞がった。

乏しい資源の中で日本がそれほど強力な戦車戦力を保有して島嶼防衛で十二分に活用できた最大の要因は、【安神車】の戊辰戦争における活躍でいち早く“装甲戦力”の重要性に気づけたからだお」

カエサル「そして安神車が誕生した要因は、更にその前から営々と積み重ねられ続けてきた“歴史”があるからこそ、か」

( ^ω^)「もしも戦車道がなかったら………過去三回で紐解いてきた戦車道史を見ても解るとおり、それは決して荒唐無稽な仮説じゃない。日本でも世界でも、どこか一つでもピースが欠ければ誕生し得なかった存在、それが“戦車道”なんだお。

これが無かったらどうなっていたかは、僕には解らない。

ただ、“今のような日本”は絶対に存在しなかったことだけは間違いないお」

すみません、頭が回らないのでちょっと仮眠取ってきます。エピローグは本日中に投下します

キーン、コーン、カーン、コーン

( ^ω^)「っと、終業のチャイムだおね」

おりょう「」

カエサル「幕末に入る直前で生殺しにされたおりょうが白目剥いてる……」

沙織「女の子がしちゃダメな顔つきになってる!!」

( ^ω^)「幕末は次回安神車の掘り下げと併せてがっつり触れてやるから落ち着けお。

ほらほらー、まだ授業はあるんだから早く教室を出て」

ビーーーーーッ、ビーーーーーッ、ビーーーーーッ、ビーーーーーッ

( ^ω^)「…………へ?」

ビーーーーーッ、ビーーーーーッ

沙織「へ?へ!?」

あや「なになになに?何の音これ?」

ビーーーーーッ、ビーーーーーッ

桂利奈「新しいチャイムかな……?」

おりょう「ンなわけないぜよ」

カエサル「だいたいさっき普通のチャイム鳴ったばっかりだろ」

ビーーーーーッ、ビーーーーーッ、ビーーーーーッ

杏「………っ、マジかい!」

(;^ω^)「皆!一回静かに!角谷さん!」


杏「解ってる!河嶋、武部ちゃん、放送室!園ちゃん、風紀委員で手が空いてる子全員に招集かけて!」

そど子「解りました!」

桃「了解です!武部、行くぞ!」

沙織「は、はぃい!」


杏「先生テレビつけて!多分もう情報出る!」

(;^ω^)「了解だお!」ピッ

みほ「………冷泉さん、この音って確か」

麻子「………あぁ、でもそんな……何かの間違いだろう………?」

ビーーーーーッ、ビーーーーーッ、ビーーーーーッ、ビーーーーーッ、ビーーーーーッ

麻子「この国には……自衛隊も艦娘もいるんだぞっ……!?」















紗希「─────J-ALERT」

《………道をお伝えします。特に太平洋側沿岸部にお住まいの皆様は、出来る限り多くの人と共にこの放送を聞いて下さい。

政府は先程、新型の深海棲艦がフィリピン海において浮上したことが確認されたと発表。この新型は、現在日本本土に向けて北上中とのことです》






「ニュージーランド海軍、全艦艇が沈黙!オーストラリア空軍のF/A-18も投入機は全て信号消失!」

「潜水艦【ランキン】、【ファーンコム】、連絡が途絶えました!」

「米原子力潜水艦【キー・ウェスト】、連絡取れません!護衛艦娘の伊-400、伊-58ら5名も応答なし!」

「バカな、“海軍”仕様の艦娘だぞ!?それが五人ともやられたってのか!?」

「瑞鶴、葛城、鳳翔より相次いで入電!敵対空砲火により投入艦載機を全機喪失とのこと!また、タウイタウイ泊地の水雷戦隊から応答がありません!」

「巡航ミサイル群、全て着弾しましたがここまでダメージ全く確認できません!速度に変化無し、敵艦間もなく防衛線を突破します!」

「准将、指示を……指示を………!!!」

「…………CPより全艦船・全戦闘機に通達。最早我が輩たちに余力はない、速やかに攻撃を中断し敵艦進路より離脱せよ」

「じ、准将………」










(;ФωФ)「敵新型艦────【学園艦棲姫】の迎撃は失敗。フィリピン海防衛線は崩壊した。

“海軍”総司令部、関係各国、何より日本政府への連絡を急げ、奴は……今までの深海棲艦と明らかに“格”が違う」






とんだ【黒船来航】もあったものだ────そんな、くだらないジョークが思わず脳裏に浮かぶ。

《政府発表によれば、この新型個体は高い戦闘能力に加えて航空戦力も保有しているとのことです。航行速度からこの個体の本州到達までは約23時間がかかる見込みですが、敵航空隊による空襲が行われる恐れがあります。

これから指定があった地域の皆さんは、自治体、警察、自衛隊の指示に従い落ち着いて避難を開始して下さい》

静まり返った教室に、国営放送アナウンサーの声が響く。淡々としたバリトンボイスで冷静にニュースを読み上げる姿が人気を博している彼の額には、見たことも無い量の汗が噴き出してスタジオの照明を反射し輝いていた。

《茂名官房長官は、国内に残存する陸海空自衛隊と艦娘戦力を総動員し“新型”の領海侵入を死守すると宣言。

既に一部の航空自衛隊基地と離島鎮守府からは、青ヶ島・硫黄島を中核とした海上防衛線を構築すべく次々と出撃する───》

「「「…………」」」

「Oh my god……」

ふと気づくと、教室内の誰もが真っ青な顔でテレビに釘付けになっていた。澤さん、冷泉さん、ナカジマさん、五十鈴さん、鈴木さん、アリサさん…… いつも“元気”を人間の形にしたような言動の磯部さんや阪口さんですら、血の気が失せた真っ白な表情でニュースを呆然と眺めている。

「……………んくっ」

J-ALERTが鳴り響いた直後は冷静な指示を飛ばしていた角谷さんでも、それは例外じゃない。喉がこくりと動き、生唾を飲み下したのが解る。

気丈に噛みしめられた唇は微かに震え、今にも泣き出しそうになってしまったのを辛うじて堪えているようにも見えた。

その光景を見て、改めて僕は実感する。

例え彼女達が学園艦を救った“英雄”だとしても、どれほど彼女達が戦車道で修羅場をくぐり抜けてきた猛者だとしても、中身はあくまでも成人すらしていない一介の少女に過ぎないのだ。

戦車道が時として戦争に例えられることもある激しい競技とは言え、特殊カーボンに守られたスポーツの範囲内の“戦い”とはワケが違う。本物の“戦争”がすぐ近くまで迫ってきている状況に、怯えないわけがないのだ。

教師である僕が、同じように怯えてどうする。

(;^ω^)「今ニュースでもやっていたとおり、深海棲艦がここに来るのにはまだ間があるお!皆、落ち着いてまずは外に出るんだお!」

「…………まずブーン先生の指示に従おう!爆撃が本当に来たときに建物の中は一番危ない、すぐに校庭に───」

震えそうになる声を抑えて、叫ぶ。最初に我に返った角谷さんがそれに続いてくれて、全員が弾かれたように動き出し─────





(;゚ω゚)「おっ!!?」

「うわっ!?」

「きゃあっ!!?」

ドンッ!と、真下から突き上げるような衝撃と共に。

艦全体が、激しく揺れる。

そして─────







『─────ァアアアア』

声が。

『『『アァアアアアアアアアッ!!!!』』』

さび付いた金属を摺り合わせるような、耳障りな“咆哮”が、響いた。




.




【エンド・オブ・オオアライのようです】へ続く

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終わりました。
この内容で三日(実質四日)はかかりすぎでした、申し訳ありません。

エンド・オブ・オオアライはまた長編になるので年末に投稿開始を目処としています。マッスル鎮守府との本格コラボ第三弾という形になりますが、次回作もお楽しみいただければ望外の喜びです。

では、HTML申請してきます

※このお話はss速報vip、内藤ホライゾン、大洗女子学園の提供でお送りしました

    \早く最終章見てえお/

        /⌒ヽ
  ⊂二二二( ^ω^)二⊃

           /       ブーン
       ( ヽノ
       ノ>ノ 
    三  レレ

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