提督「安価で元帥にパナイ質問をするだって?」 (294)

大淀「とうとうこの日が来ましたね提督」

提督「……あれ? 今日なんかあったっけ?」

大淀「ああ、そういえば提督には言ってませんでしたね。実は今日お客さんが来るんですよ」

提督「そういうことなんで俺に言わないの? 一応この鎮守府のトップだよ俺」

大淀「あはは、すいません、言うほどのことでもないと思いまして」

提督「まぁいいか。で、誰が来んの?」

大淀「元帥ですよ」

提督「馬鹿か!!」

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提督「めちゃめちゃ大事なことじゃねえか! 何で黙ってたんだよ! 言えよ!」

大淀「あはは、すいません。言うほどのことでもないと思いまして」

提督「さっきと同じ台詞だからって今度はゆるさねえよ!」

大淀「提督。部下のミスを詰っていても話は進みません。これからどうするかを考えましょう」

提督「……お、おう。でも困ったな。急に来るっていわれても準備なんて全くしてない」

大淀「……? 普段の私たちを見せればよいのでは?」

提督「それが駄目だからこんなにあせってんだよ! お前らみんな基本ポンコツだろうが!」

大淀「ぐぬぬ。ミスした手前言い返せないのが悔しいですね」

提督「あーもう。俺の査定に響いたらどうするんだよ。言っとくけど、同じ鎮守府にいるお前らの評価も下がるんだからな」

大淀「そうなったらもちろん提督を切り捨ててほかの鎮守府に転属しますけど」

提督「悪魔かお前は」

大淀「まあでも安心してください。元帥といっても今回来るのはその直属の部下。要するに艦娘です」

提督「あ、そうなの?」

大淀「それに監査ってわけでもないですし、ただの挨拶回りみたいなものです。そんなに重く考えなくてもいいですよ」

提督「そっか。じゃ少しは安心だな」

大淀「……。ところで提督。話は変わりますが、今年の忘年会の企画、何するか覚えてますか?」

提督「あー、確か誰かにパナイ質問をしてその反応を見るってやつだっけ? 青葉が企画したやつ」

大淀「そうです。それで青葉さんがその企画の対象者を探してるところらしいんですよ」

提督「……。何で今その話するの?」

大淀「ですからそれをこれから来る艦娘に実行しようかと」

提督「お前らの危機管理意識いかれてんのか!」

提督「さすがにやばいって。元帥直属の部下に無礼働いたらやばいよ」

大淀「でも青葉さんとかノリノリで準備してましたよ。一人だけだったらばれるから助手まで雇って」

提督「今すぐやめさせろ」

大淀「えー、仕方ないですね。せっかくのチャンスなのに」

提督「首が飛ぶわ」

コンコン

「ごめんくださーい」

提督「……。もしかしてもう来たの?」

大淀「ああ、そういえばさっき連絡受けたの忘れてました」

提督「ばかやろう」

↓2 来た艦娘

大鳳「お初にお目にかかります。提督。装甲空母大鳳と申します」

提督「ええ、お会いできて光栄です。わざわざご足労いただいてありがとうございます」

大鳳「ふふっ。そんなに畏まらなくてもかまいませんよ。私自身はただの一艦娘ですので」

提督「ははは。お気遣い痛み入ります。では遠慮なく」

提督(それにしても装甲空母とは。たかが挨拶回りにこんな大物をよこすか普通)

提督(何考えてんだ。あの元帥は)

提督(でも今はそんなことよりも)

提督(今頃パナイ質問の準備をしてる馬鹿をどうするかだよ!)

提督(そ、そうだ!)

提督(別に、無理して艦娘に会わせる必要はない)

提督(挨拶回りだけって言ってたし、俺がこのまま対応してたら何事もなく終わるじゃないか!)

大鳳「ここは景色が綺麗ですね」

提督「はい、絶景だと自負しております。せっかく遠くからいらしたんだ。お茶でも飲んでゆっくりなさってください」

大鳳「ええ、ありがとう。でもせっかくだからこの鎮守府の艦娘に会わせてほしいわ」

提督「え、ええ。では大淀など」

大鳳「以外で」

提督(終わったー!!)

提督(そ、そうだ!)

提督(まだ手はある! 大淀だ。大淀に頼んで適当な艦娘を連れてきてもらうって体で、外に出てもらおう)

提督(そうすればみんなにあの企画は中止だって伝えてもらうこともできる)

提督(よし、これでいこう!)

提督「た、確かに。それはすばらしい考えだ。うちの連中のいい刺激にもなる。大淀、すまないが―」

コンコン

ガチャ

「失礼します、本日の戦果報告に……あれ?」

提督(終わったー!!)

↓2 入ってきた艦娘

ポーラ「は~い。ポーラで~す。戦果報告にあがりましたんですけど~。あれ? お客さんですか~」

提督「あ、ああ。ご苦労。では大淀、適当な艦娘を呼んできて」

大鳳「いえ、そこまでお手数をお掛けするのも申し訳ないですし、ポーラさんとお話してもよろしいかしら?」

提督「ま、まあ。いいんじゃないですか。ポーラは用事とかない?」

ポーラ「ん~。ないですね~」

提督(あれよ!)

提督(というかお前戦果報告になんて来たことねえだろうが! 何で今日に限って来るんだよ!)

大鳳「そう、よかった」

提督(いや、まだだ!)

提督(ポーラが青葉の手先じゃないって可能性もある)

提督(そうだ。さっき言ってたじゃないか。たまたま戦果を報告しに来ただけだ。そうだ。そうに違いない)

提督(な? そうだろ?)

ポーラ「……」ニヤ

提督(あ、ちがうわこれ。間違いなくパナイ質問しに来たわこいつ)

提督(くっそ。どうすんべ)

提督(あの企画中止ってこそこそ言うのも感じ悪いし)

提督(そ、そうだ!)

提督(合図だ! アイコンタクトを送れば通じるはずだ)

提督(ポーラ、あの企画は中止だ! わかってるよな?)

提督「……!」パチッパチッ

ポーラ「……? ……!!」ポンッ

提督(通じた?)

ポーラ「……」ニコッ

ポーラ「……」フリフリ

提督(わー、かわいい ……ってバカか!!)

ポーラ「わ~。すごいですね~。これ」

大鳳「ふふっ。私の装甲甲板、気になりますか?」

提督(もう会話始まってるし、いまさらこいつを部屋の外に連れ出して中止って言うわけにもいかんな)

提督(アイコンタクトもまったく通じないし……)

提督(このままでは、元帥直属の部下にポーラがパナイ質問をすることになる……)

提督(……かくなるうえは)

提督(俺がフォローに回るしかない!)

提督(こいつらがどんなにパナイ質問をしようとも、俺が全力でフォローに回って怒らせないようにする!)

提督(問題は俺が質問の内容をまったく知らないってことだが)

提督(それでもやるしかねえ!)

提督(さあ来るならきやがれ!)

見たいな感じで行こうと思ってます。ちょい飯食ってくるんで、9時くらいからやります。

よしやっか

↓2 パナイ質問の内容

ポーラ「あはは~」

大鳳「うふふ」

提督(よしよし。ちょっと心配だったが雰囲気はなかなか和やかだな)

提督「ふふふ……」

大鳳「あら? どうされたのですか?」

提督「いえ、美しい女性たちが仲良く談笑している姿は絵になるな。と思いまして」

大鳳「うふふ、お上手ですね」

ポーラ「あははは~。提督ってばそんなことばっかり言ってるから~モテないんですよ~」

大鳳「そういえば、提督さんは、ごケッコンとかは?」

提督「残念ながらみんなのお眼鏡にはかなわない様で。いまだに独り身ですよ」

大鳳「そうなんですか? うちのとは大違いですね」

ポーラ「え~」

大鳳「うちのは手が早いってのなんの。いつも手を焼いているんですよ!」プンスカ

提督「あははは、英雄色を好むといいますからね」

大鳳「あはは、ありがとうございます。でもあんなのがよそにいったら英雄扱いされるなんて。知っている身としては少し不思議ですね」

提督「なるほど、女房の目に英雄なしというやつですか」

大鳳「にょ、女房? ……そ、そうなりますね」

提督「ふふふ、こんな素敵な女性を娶るとは。元帥殿も果報者だ」

大鳳「えへへ……」

提督(ちょろいぜ!)

提督(いいぞ! このままいい気分のまま帰ってもらおう!)

提督(ポーラがまだ大人しいのがちょっと不安だが)

提督(あいつだって軍人だ。軍隊の上下関係の厳しさくらい知ってるはずだ)

提督(パナイ質問って言ってもどうせ大したことないだろ。ないよな? 頼むぜマジで)

ポーラ「あれ~」

提督「……!! ど、どうしたポーラ」

ポーラ「大鳳さんとケッコンしたってことは、あの噂も本当なのかな~」

大鳳「噂?」

ポーラ「風の噂で聞いたんですけど~」

ポーラ「元帥がロリコンってほんとですか~?」

大鳳「え?」

提督(ほんとにパネェな!)

大鳳「ど、どこでそんな噂を……」

ポーラ「ん~どこだっけな~」

提督「たしかに、私もその噂は聞いたことがあります」

大鳳「な、なんてことを……」

提督「ですが大鳳さん。あなたはそれを信じているのですか?」

大鳳「え?」

提督「考えてもみてください!」

提督「これほど! 成熟した! 妖艶な! 女性に!」

提督「指輪を送った元帥がロリコンのはずがないでしょう!」

大鳳「……!!」ハッ

提督「月に肌えを見するだに恥じらうおとめ。貞女も逃れられぬが世間の蔭口というではありませんか」

提督「どのような清廉潔白な人物も世間というものは悪く言うもの。それが地位の高い者なればなおさらです」

提督「しかし! そんな時に最もそばにいるあなたが元帥のことを信じてあげなくてどうするのです!!」

提督「あなたが支えてあげなくてどうするのですか!!」

大鳳「……!!」ガーン

大鳳「……確かに。提督のおっしゃるとおりですね。こんな流言に惑わされるなんて……。ありがとうございます」

提督(あっぶねー!!!)

提督(よし、なんとかなったな)

提督(さて、これで終わればいいが)チラ

ポーラ「……」ニヤリ

提督(まだあんのかよ……)

↓2 次のパナイ質問の内容

大鳳「でね。まったくあの人にも困るのよ」グチグチ

提督「そっすねー。大変っすよねー」

提督(勘弁してくれ。さっきからずーっと元帥の愚痴ばっかり)

提督「でもいいとこもあるんですよね?」

大鳳「……」パアア

大鳳「そうなのよ! この前だってね」

提督(結局惚気かい)

ポーラ「ほんとに仲が良いんですね~」

大鳳「……そうだといいんだけどね」

ポーラ「……?」

提督「そ、そういえばそろそろ今年も終わりですね。元帥殿もお忙しいんじゃないですか?」

大鳳「え? ええ、まあ。忙しそうにしてるわ」

ポーラ「今年ももう終わりですか~。なんだかあっという間ですね~」

大鳳「そうね。いろいろあったわね。ほんとうに……」

提督「ま、まあ。年末は忙しいですからねー」

ポーラ「あ、そうだ。今年の鎮守府の一番のビックニュースってなんですか~?」

大鳳「あ?」

提督(ちょっとは行間を読めや!!)

提督(この流れだったら絶対元帥が浮気したことってわかるだろうが!)

大鳳「そ、そうですね。ほら、レイテとか」

ポーラ「いや~、そうじゃなくて私生活のほうでですよ~」

大鳳「え、そ、そうね」

提督(どんだけ踏み込むんだよ! スパロボのエリート兵か!)

大鳳「あの人が浮気したこと、くらいかしらね」ボソッ

提督(ほらあ! やっぱりい!)

ポーラ「あー」ウンウン

提督(あー、じゃねえよ! 何分かるって感じでうなずいてんだよこいつ!)

大鳳「……」

ポーラ「……」

提督「……」

大鳳「もう、愛想をつかされたのかな」ボソッ

提督「そ、そんなはずはないですよ!」

大鳳「なんで?」

提督「シェイクスピア曰く、男の下半身は『良心なき正直者』というくらいですから。浮気をしたからといって、愛想をつかされたわけでは……」

提督(くそっ! 我ながら苦しいな! つーか浮気なんてしてんじゃねえよおっさん! はったおすぞ!)

大鳳「……? 何の話?」

提督「え?」

大鳳「え?」

提督「……元帥殿は具体的に何をされたので?」

大鳳「他の娘と一緒にご飯を食べてたの」

提督「ま、まあ特定の相手がいるのに二人きりでデートというのは褒められることではありませんが」

大鳳「食堂で、艦娘三人くらいと」

提督(この人の浮気のハードル低っ!!)

提督「え、えー。それを浮気というかどうかは置いといて」

提督「私が思うに、本当に魅力的な男というものは結婚後も女性はほっとかないものですよ」

大鳳「……」

提督「元帥殿は優しくて、頭脳明晰でとても素敵な男性だ。これなら他の女性に魅力的に映るのも無理はない」

提督(あったことないから知らんけど)

提督「そんな彼の魅力にあなたも惹かれたのでしょう?」

大鳳「……うん」

提督「浮気というのは決して許されることではありませんが、正妻の余裕というのも必要ですよ。少々のことではあなたへの愛は揺らがない。そうでしょう?」

大鳳「……うん」

提督「大丈夫です。元帥殿はあなたを悲しませるような真似は絶対にしません。私が保証しますよ」

大鳳「……確かに少し嫉妬深かったかもしれないわ。鎮守府の飲み会くらいは許してあげることにする」

提督(今まで許されてなかったのかよ)

提督(今のはあっぶなかった。まじで。死を覚悟したもん)

提督(……まだ、あんのか?)チラ

ポーラ「……」ククク

提督(やっぱりあるのね……)

↓2 次のパナイ質問の内容

ポーラ「え~ほんとですか~」キャッキャ

大鳳「そうなのそうなの! それでね!」キャッキャ

提督(割と相性はいいのかな。ポーラが変なこと言い出さなければ)

ポーラ「たまには他の鎮守府の人と女子トークもいいものね~。後はお酒があれば最高なのに~」

提督(しらふでこれだからこいつは恐ろしい)

大鳳「お酒ですか? 実は私も結構いける口なんですよ」

ポーラ「えっへへ~。だったら今度みんなで集まって女子会するんですけど~、よかったら一緒にどうですか~?」

大鳳「ええ! よろこんで!」

ポーラ「あ、そうそう。女子といえば」

大鳳「……?」

ポーラ「元帥殿が実は女性だって噂があるみたいだけど本当ですか~?」

大鳳「……は?」

提督(どんだけ流言飛語乱れ飛んでだよおっさん!!)

大鳳「……っぷ。あはははは! それはないわよ!」

提督(お? 思ったより反応は悪くないな)

大鳳「ふふふ。あの人が女性……。あーおかしい」

提督「はっはっは。噂もここまで荒唐無稽だと笑ってしまいますね」

ポーラ「え~。でも確かに聞いたんだけどな~」

大鳳「うふふ。ポーラさんも噂にはだまされないように気をつけて……」

ポーラ「元帥が女風呂に入っていくところを見たって~」

大鳳「あ?」

提督(なにやらかしてんだよおっさーーん!!)

大鳳「……ほんとに?」

提督(こっえー。綺麗な人が本気で怒ったときの顔まじこえー。人が殺せるわ)

ポーラ「う~ん。噂ですけど~」

大鳳「へえ……。だったら確かめないといけないわね。ありがとうポーラちゃん」

ポーラ「いえいえ~」

提督(やっべえ。このままこの人返したら間違いなく元帥の逆鱗に触れる)

提督(またフォローするしかねえのかよ!)

提督「じ、実は! 私も女風呂に入った経験があります! 最近ですが!」

大鳳「……は?」

大淀「うわ……」

ポーラ「ないわ~」

提督(誰かちょっとはフォローしろや!)

大鳳「……そ、そうなんですか」ドンビキ

提督(こっえー! 綺麗な人のドン引き顔まじこえー! 人が死ぬわ!)

ポーラ「ど、どういった状況で、ですか~?」

提督「え、えーっと最近あったレイテ沖海戦のことをまだ覚えておいでですか?」

大鳳「……ええ、忘れるわけがありませんよ」

提督「私の艦隊は、元帥殿と違って貧弱でして、厳しい。そう。本当に厳しい戦いでした」

ポーラ「……?」

提督(そこは素直にうなずいとけよ馬鹿野郎!)

提督「……そんな戦いの中、恥ずかしながら重傷者を出してしまいましてね」

提督「完全に私の判断ミスです。そのときほど自分の浅学非才さをうらんだことはありませんよ」

大鳳「……そんな」

提督「息も絶え絶えで、苦しんでいる彼女を見て。ただ指をくわえて担架を待っていることが、私にはどうしても我慢できませんでした」

大鳳「まさか……。提督」

提督「ええ、そうです。私は彼女を背負って入渠(ドック)に行ったのです。そこは、女風呂も兼用してますが、ね」

大鳳「……!」

提督「それでも彼女を死なせるくらいなら、私の名声などどうでもよかった。彼女が助かるなら私は喜んで変態の名を受け取りましょう」

提督「元帥殿も私と同じだと信じております。あの方は何よりも、そう、自分の評判などよりも、艦娘を一番に考えるお方ですから」

大鳳「提督……!」

提督(あったことねえけどな)

大鳳「うふふふ。あの人ったら……」

提督(……機嫌がなおった! セーフ!!)

ポーラ「あ、もうこんな時間~。そろそろ失礼します~」

大鳳「あらほんとね。じゃあ私もそろそろ失礼するわ」

提督「……! ほ、ほんとですかー? いやー残念だなー。もっとお話したかったなー」

提督(……っしゃあ!!)

提督(色々あったが、なにはともあれ!)

提督(よかった。やっと終わった)

提督(これで、一件落着……)

大淀「そうですね。もうすぐ次のお客さんもいらっしゃいますしね」

大鳳「ええ」

提督「……は?」

大鳳「ではうちのにもよろしく伝えておきます。ありがとうございました。失礼します」

ポーラ「失礼しまーす」

提督「……」

大淀「さて、次の元帥直属の艦娘はどなたでしょうね」

提督「……今日来るのって一人だけじゃないの?」

大淀「……? そんなこといいましたっけ? まさか元帥がお一人しかいないとでもお思いなんですか?」

提督「普通はそうだよ!」

大淀「まあまあ。もうドアの前まで来てるみたいなので」

提督「何で来てんの!? ちょっとはインターバル設けろよ!」

コンコン

「失礼しまーす」

↓2 艦娘

飛龍ね了解

今日はこんなとこで終わっとく参加してくれたみんなありがとうお疲れ様でした

飛龍「こんにちは提督! 航空母艦飛龍です! よろしくね!」

提督「はっはっは。遠いところからようこそ。私がこの鎮守府の提督です」

提督(わかってるだろうな大淀)チラ

提督(俺が適当にこの人と話してるからお前はみんなに伝えてくるんだ)

提督(あの馬鹿げた企画は中止だってな!)

飛龍「提督、さっそくですけど、一つお願いがあります。この鎮守府の艦娘さんとお話させてもらえませんか?」

提督「そ、それは素敵だ。私もちょうどそうしようとしていたところですよ」

飛龍「ほんとですか!? やったあ! 実はもう来てもらってるんですよ」

提督「……え?」

飛龍「この部屋まで案内してもらう途中で意気投合しちゃって。その子から色々聞きたいなーって思ってたんですよ!」

提督「それはそれは。いやはや。はっはっは」

↓2 艦娘

加古「ヨッロシクゥ! お招きいただき恐悦至極! 加古ってんだー!」

提督(お前かよ! 今くらいの時間はいつも寝てるだろうが! 何で今日に限って元気溌剌だよ!)

飛龍「いやぁ、本当に助かりました! わざわざ入口でお出迎えまでしていただいてありがとうございます!」

提督「いやなに、お安い御用ですよ。はっはっは」

加古「そうそう。お安い御用だよぉ」

飛龍「でもあんなに大勢で迎えてくれるなんてびっくりです!」

提督「ははは。手の空いているものは向かえと命じていたのですが、うちの連中はどうもお祭り好きのようで」

飛龍「あはは。まあどこの鎮守府も同じですよ。ねっ?」

提督「……ちなみに誰がいました?」

飛龍「んー。青葉さんとか」

提督(準備万端かよ青葉ァ!)

加古「ふっふーん」

提督(どうやらこいつも多分青葉の手のものっぽいな。もうちょっと人選考えろといいたくなるが)

提督(どうせ通じないと思うけど一応試してみるか)

提督(加古、加古!)

加古「……?」

提督「……」パクパク

提督(ちゅ・う・し・だ・ぞ。わかってるよな?)

加古「……!」

加古「……」カァァ

提督(なんで!?)

加古「……」パクパク

提督(……? 何だ?)

提督(ア・イ・シ・テ・ル。じゃねえよ! ミスチルか!)

↓2 パナイ質問の内容

ごめん。ドリカムだったわ

加古「……」モジモジ

提督(何でこいつは俺がこのタイミングでいきなり告白したと思ってんの……)

提督(ありえねえだろ……。考えろよ……)

飛龍「え、えーっと、もしかしてお邪魔だった?」

提督「いえ! め、滅相もありません! ただのスキンシップですよ! いつものことです! はい!」

飛龍「ほんと? よかったあ。てっきり提督さんがこのタイミングで急に告白して加古さんがア・イ・シ・テ・ルって答えたのかと思ったあ!」

提督(それで大体正解だよ! 何だこの人!?)

提督「ははは。なかなか鋭い洞察力をお持ちで。さすが元帥殿の右腕なだけはある」

飛龍「はぁ。艦娘と仲がいいのは結構ですけどそういうのは私が帰ってからにしないとめっ! ですよ!」

提督「ごめんなさい……」

加古「なるほどね。その洞察力で調査にきたってわけ?」

飛龍「何が?」

加古「……少し聞きづらいんだけどさ」

飛龍「……?」

加古「うちの提督にスパイ疑惑がかかってるってほんとぉ?」

飛龍「え? そうなの?」

提督(青葉ァ!!)

飛龍「スパイなの? 提督さん?」

提督「いえいえいえいえいえ! 事実無根でございます!」

飛龍「……ほんとに?」

提督「ゼウスに誓って!」

加古「なんか怪しいなー」

提督「怪しくねえよ!」

加古「でもあたしたち提督のことあんまりしらないんだよなー。こう、壁を作ってるって言うかさー」

飛龍「え? そうなの? 怪しいなー」

提督「根も葉もない噂だ! 信じてくれよ!」

加古「とか言って実は?」

提督(どんだけ粘るんだよ! お前俺のこと嫌いなの!?)

飛龍「まあ、それはおいおい調査するとして」

提督(疑い晴れてねえのかよ)

加古「いずれわかることだよね」

提督(こいつはもう、なんなの……)

↓2 次のパナイ質問

皆早~いww
ところで一度に2つ以上の質問てあり?

加古「あ、そういえばさ。飛龍さんって色々な鎮守府を見てきたんだろ?」

飛龍「ん? まーそうね」

加古「提督業って結構ストレスたまるじゃん」

提督(ほんとにな)

加古「そのストレスが原因で体に不調をきたしたりした提督とかっているの?」

飛龍「んー。たとえばどんな?」

加古「……髪、とか」

飛龍「髪? ハゲたりってこと? んーいるんだろうけど、あんまりわからないなあ。で、それがどうしたの?」

加古「あのさ、カツラの提督ってどう思う?」

飛龍「えっ? い、いやーそうねー」チラチラ

提督(お前俺を陥れたいの!?)

提督「いや、言っときますけど私カツラじゃないですよ」

加古「知ってる知ってる! 提督がカツラじゃないのは周知の事実さ!)

提督(いや、フォロー下手か! 俺がカツラ被ってるのバレバレみたいじゃねえか!)

飛龍「あっ」

提督「……え?」

飛龍「ごめんなさい……」

提督「え? いえ……」

飛龍「……」

加古「……」

飛龍「あの」

提督「はい」

飛龍「時には、勇気を持って告白することも大切ですよ? さっきの件もそうですが、言葉にしないと伝わらないことってありますから」

提督「は?」

飛龍「それに、私は殿方の魅力は髪の量で決まるとは思ってないですし。大事なのは、そう! ハートですよハート!」

提督(何で俺が慰められる流れになってんの……)

>>72

さすがに二つ以上質問されたら俺の負担がパナイので勘弁してください

提督「いや私ほんとにフサフサですよ。触ってみます?」

飛龍「はい。わかってますよ。誰にも言いませんから」

加古「提督……」グッ

提督(てめー後でグラウンド50週させるからなマジで)

↓2 次のパナイ質問の内容

飛龍「で、その時大鳳が言ったの、いくら手を出せば気が済むんですか! 千手観音か! ってね」

加古「あははは! 何だよそれ!」

提督(どんなツッコミだよ)

提督「ははは。あっちの元帥殿の女癖の悪さにも困ったものですね」

飛龍「でもある程度は仕方ないよねー。鎮守府ってのは周りにかわいい子がいっぱいいる環境だし」

提督「飛龍さんが言うと不思議と説得力がありますね」

飛龍「えー、それどういう意味ですかー?」

提督「さあ、どうでしょう」

加古「あー、かわいいと言えばー」

提督「……?」

加古「あいつらも結構かわいい顔してるよなー」

提督「あいつらって?」

加古「深海棲艦だよー」

飛龍「え?」

加古「飛龍はさー、深海棲艦で一番かわいいのって誰だと思う?」

飛龍「深海、棲艦……で?」

提督(お前は俺の敵なの!?)

飛龍「……何? この鎮守府は深海棲艦と何かかかわりがあるの?」

提督「そ、そんなことは絶対にありえません!」

飛龍「ふーん。ま、いいですけど。で、一番かわいいのだっけ? あれじゃない? イ級とか」

加古「あー、弱いもんな」

提督「……」ダラダラ

提督(やっべえ。このままじゃこの鎮守府にスパイ容疑がかかってしまう)

提督(そうなったら、どうにでも誤魔化せる俺はともかく、あのポンコツ共にあらぬ疑いがかかる……)

提督(……くそ)

提督(こうなったら仕方ない)

提督(これだけはやりたくなかったが)

提督「……」

提督「すまなーい! 加古ー! 許してくれー!!」ドゲザッ

飛龍「……!?」

加古「……!?」

提督「俺が悪かった! もう二度とほかの女の人に色目を使ったりしない! 許してくれ!」

飛龍「え? え? どういうこと?」

提督「だからもうそんなに意地悪しないでくれよ! なっ? なっ?」

飛龍「……ああ。そういうこと」

提督「あっ」

提督「……いや、すまない。情けないところを見せてしまいました」

飛龍「はぁ……。ほんとにもう。てっきり本物のスパイかと思ったじゃないですか」

提督「……申し訳ない」

飛龍「さっきも言いましたけど、そういうのは私が帰ってからやってくださいね。めっ! 」

提督「……」ニヤ

提督(うまく、いった)

提督(コードネーム『痴話げんかはドックもドントイート』)

提督(今までのパナイ質問を全て加古の嫉妬からきた俺への意地悪と見せかけ、全てをひっくり返す荒業)

提督(最初の勘違いを利用したのがうまく功を奏したな)

飛龍「じゃ私はもう帰りますけど、あんまりけんかしちゃだめですよ?」

提督「ははは、肝に銘じときますよ。あ、この件はどうかご内密に」

飛龍「ふふふ。わかってますよ」

提督(よかったー! 死ぬかと思った! 社会的に!)

提督(でもこの人の中の俺のイメージって、『加古に頭が上がらないカツラのハゲ親父』だよな)

提督(パネェ)

加古「あ、帰りもあたしが案内するわー」

提督「……よろしく頼む」

パタン

提督「大淀ー。加古と青葉の明日の訓練量、倍にして。教官に無理しない程度に死なせろって伝えといて」

大淀「ええ、わかりました」

提督「はー、しかし疲れたわ。で、どうせまだ来るんだろ?」

大淀「はい。あ、次の艦娘さんがくるのあと20秒後ですから」

提督「一息くらい入れさせろ! お前のスケジュール管理どうなってんだよ!」

↓2 次に来る艦娘

ゴーヤね了解

飛龍編が終わったところで今日は終わりお疲れ様でした

伊58「こんにちは。伊58です。ゴーヤって呼んでもいいよ」

提督「こんにちは。お世話になります。ゴーヤさん」

提督(今度は潜水艦か。元帥の人選どうなってんだ)

伊58「……どうしたんですか?」

提督「いや、潜水艦の艦娘には久しぶりにお会いしましたもので。潜水艦の任は輸送に偵察にと色々と気苦労も多いので大変でしょう?」

伊58「んー、そんなに大変でもないよぉ。戦果さえ挙げとけば、オリョールいく振りしてその辺の島でサボれるし」

提督(営業回りのリーマンかよ)

提督「いや、その戦果を挙げるのが大変なのでは?」

伊58「え?」

提督「え?」

伊58「だって適当に魚雷2,3発撃ったら、大体敵にあたらない?」

提督(何この人。神に愛されてんの?)

伊58「ま、あんまり早くあっちに帰っても仕事させられるだけなのでしばらくは時間つぶさせてね」

提督「ええ、まあ、それは構わないですが」

伊58「一応意見交換するって言って出てきてるからそちらの艦娘さんにお話聞かせてもらっていーい?」

提督「も、もちろんです。あ、そういえば」

伊58「……?」

提督「出迎えの艦娘はどうしました?」

伊58「出迎え? 特になかったけど」

提督「……え? いなかったんですか?」

伊58「うん」

提督「……」

提督(よし! 今度こそ大淀に……)

提督「おっかしーなー。確かに頼んだはずなんですが。仕方ない、大淀誰かほかの子を……」

伊58「でも来る途中に食パン咥えた艦娘とぶつかったから一緒に来てもらったでち」

提督(何素敵な出会いを演出してんだよ青葉ァ!)

↓2 艦娘

伊19「遅刻遅刻~! イクなの!」モグモグ

提督(こいつか……。うちの中でも屈指のぶっ飛びを誇るやつが来ちゃったよ……)

提督「あ、ああ。イクか。構わないよ。よろしく」

伊19「ありがとうなのね!」モグモグ

提督「……というかなんで食パン咥えて走ってたの?」

伊19「え? えーっと。あ! 朝ごはん食べ損ねたからなのね!」モグモグ

提督(もうとっくに昼だよ馬鹿野郎)

伊58「いやー、さすがのゴーヤもパンを咥えた潜水艦とぶつかったのは生まれて初めてでち」

伊19「奇遇なのね! イクもなの!」モグモグ

提督(多分本邦初公開だよ! そんなイカれたシチュエーションは!)

伊58「で? テートクさんさっき潜水艦娘に会うの久しぶりって言ってなかったっけ?」

提督(やっべえ。ジロジロ見てたの誤魔化すために適当なこと言ってたわ)

伊19「え? ひどいのね! テートクはイクのことなんてアウトオブ眼中なの?」モグモグ

提督「いや、ほかの鎮守府のという意味でして……」

伊19「せっかくイクはこんなにテートクのことを思っているのに~」モグモグ

提督(いい加減食うのをやめろ!)

提督(こいつは幸先不安だな。ほんとに)

提督(で、こいつも青葉から仕組まれたパナイ質問を持ってきたんだろうな)

提督(まあ恐らく、絶対、確実に通じないだろうが一応合図を送ってみるか)

提督「……」スッ

伊19「……?」

提督「……」ペケ

伊19「……!」ポン

伊19「……」スッ

提督(食いかけの食パンが欲しいんじゃねえよ! お前もそれでいいのか!?)

↓2 パナイ質問の内容

伊58「まあ、テートクさんがゴーヤの水着姿をジロジロ見てたのはおいとくね」

提督(ばれてたー!)

伊19「しょうがないのね。テートクはそういうお年頃なのね」

提督「いや、申し訳ない。妙齢のご婦人の水着姿につい見とれてしまいまして」

伊58「ふーん、ありがとでち。でもテートクさんもこのセーラー服にスクール水着の着こなしがわかるとはなかなかのものだね」

伊19「そうそう! 意外にマッチしてると思うのね! スクール水着と魚雷の組み合わせ!」

提督(いやしてねーよ。何だその着こなし。セーラー服と機関銃か)

伊19「これをデザインしたそちらの元帥さんはいいセンスなのね!」

伊58「……? どういう意味でち?」

伊19「え? だって潜水艦用の水着はそちらの元帥さんが裏で全部デザインしてるって噂なのね」

伊58「……え?」

提督(そんなわけねえだろ! 仮にデザインしてたらよっぽどの変態だよ!)

伊58「……」

提督「そ、そんなわけがないだろう。何を馬鹿なことを」チラ

伊58「……」

提督(やべえ……。めっちゃおこってるやん……)

伊58「……」ピーン

伊58「……」パシッ

提督「……?」

伊58「……表、か」

提督(何でコイン投げたの?)

伊58「あ、水着はうちのテートクがデザインしてるでち」

提督(よっぽどの変態だったよ!! どうなってんだようちのお偉いさんは!)

伊58「スクール水着は別に嫌いじゃないけど、目立ってしょうがないよ。だから無人島でしかサボれないし」

提督(ほんとにリーマンみたいだなこの人)

伊19「うんうん。裏表ないひとなんていないよね」

提督(何の話?)

↓2 パナイ質問

提督「制服にするのはスクール水着が一番無難でしょうからね。いたし方ありません」

伊58「機能美にあふれてるからね」

提督「そうなんですか?」

伊19「テートクなのに不勉強が過ぎるのね」

伊58「スク水のことに精通していないなんて、珍しいテートクさんもいたものでち」

提督「ぐっ……。申し訳ない」

伊19「ふふーん。スク水は露出もあんまりないし、とっても清楚な水着なのね」

伊58「そうそう」

提督「ははは。まあビキニで仕事するよりはましかもしれませんね」

伊19「え?」

提督「え?」

伊19「あれ? 噂で聞いたんだけど、元帥の下ではマイクロビキニが指定されてるんじゃないの?」

伊58「……え?」

提督(噂できいたって言えばどんな質問しても許されると思ってんじゃねえよ!)

提督「ま、マイクロビキニを……?」

伊19「そうそう! また聞きなんだけどね。気になるのね~」

提督「いやいや、待ってくれよ。マイクロビキニを指定の制服にするなんていくらなんでもそんなド変態な元帥がいるわけが……」

伊58「……」ピーン

伊58「……」パシッ

伊58「表、か」

伊58「確かにマイクロビキニを指定されているよ」

提督(いんのかい! ド変態な元帥がよ!)

伊58「でも上にセーラー着てるからあんまり露出的には変わらないんだけどね」

伊19「もしそうなったら水着だけのイクは悲惨なのね……。テートク、出世はあきらめてほしいの」

提督(うちの軍は、変態じゃないと上にいけないの!?)

提督「ところで、あの、質問が」

伊58「どうしたの?」

提督「さっきから、コインを弾いているのは、その、なんなんですか?」

伊58「ああ、あれ?」

提督「さっきからずっと表ですけど、表が出たらどうなるので?」

伊58「知りたい?」

提督「ええ、まあ」

伊58「……」スッ

提督「……!」

伊58「明日、天気になる」

提督「……」

提督(何だこの人。ぶっ飛んでんな)

伊19「裏の裏は表ってことなの。何が言いたいかはもうわかるのね? イクはわからないの」

提督(あ、うちのも負けてねえわこれ)

伊58「雨が降ったらお仕事さぼりやすくなるんだけどなあ」

提督「でもマイクロビキニだったら寒いんじゃないですか?」

伊58「大丈夫。こっそり上からスク水を羽織ってるよ」

提督(スク水羽織るって何だ)

↓2 パナイ質問

伊19「マイクロビキニってこの時期は寒そうなのね」

伊58「そんなでもないよ。クールビズみたいなものだしね」

提督「クールビズってそういうのでしたっけ?」

伊19「じゃ、もしかしてそのスク水の下も?」

伊58「無論、マイクロビキニでち」

伊19「おぉー。やっぱマイクロビキニなのね」

伊58「当然、マイクロビキニは義務だよ」

提督(会話の中にこんなにマイクロビキニって単語が出ることある?)

伊19「そーいえば他の人もゴーヤさんみたいに上にスク水を羽織ってるの?」

伊58「いや、さすがにそこまでする人はゴーヤだけじゃないかな」

伊19「あれ? じゃあみんな元の水着はどうしてるの?」

伊58「さあ? 処分してるか取って置いてるかだと思うけど」

伊19「……これは噂で聞いたんだけどね」

伊19「元帥さんが処分したはずの潜水艦娘の水着をこっそり保管しているらしいけど本当なの?」

伊58「……え?」

提督(それ一辺倒か! もうお前ゴリ押しだな!)

提督「こっそり保管してるって元帥がなんで、そんなことを?」

伊19「テートク、艦娘たるもの怪力乱神を語らぬものなの。元帥さんがそれを使って何をしているかなんて語るものじゃないの」

提督「ま、まあな。いやでもさすがにいくら元帥どのでも水着を保管しているってことは……」チラ

伊58「……」ピーン

伊58「……」パシッ

伊58「表、か」

提督(表か、じゃねえよ! 何で何回も明日の天気占ってんの!?)

提督(というかそもそも何でこのタイミングに占うの!? もうわけがわかんねえよ!)

伊58「それは、違うでち」

提督「そ、そうですよね。安心しましたよ」

伊58「テートクはちゃんと処分してない水着も保管してるよ」

提督(より洗練された変態だったよ! なにやってんだおっさん!)

伊58「ま、さすがに今着てる水着の保管は断られることが多いけどね」

伊19「……だったら処分した水着は大体保管しているの?」

伊58「……でち」

提督「……」

伊19「あのね、ちょっと考えたんだけど、それってまさかみんなのスク水を確保するためにマイクロビキニを……」

伊58「……でち」

伊19「うっわ~。ドン引きなのね」

提督(ちょっとは言葉選べ!)

伊58「たしかにちょっと引くけど、まあ、テートクだし仕方ないよね」

大淀「元帥はスク水フェチの変態」メモメモ

提督(……)

提督(やっべえ……。このままじゃ元帥の悪評が広がってしまう。いやそれは全然かまわないんだけど、悪評が広がった元がうちの鎮守府だってわかったらやばい)

提督(フォローするしかない……)

提督「……なるほど、元帥殿はやはりすばらしい人物だ」

伊58「え?」

提督「えーっと、どこにあったか」ゴソゴソ

提督「ゴーヤさん。これを」スッ

伊58「えーと、何々海洋汚染のニュース!? これって……?」

提督「ええ、つい昨年の情報です。海底に蓄積された深海棲艦の残骸が、海を汚染する原因になりうるということが発表されました」

提督「そして、汚染が特に著しいと考えられるのは……。オリョール海近郊」

伊58「……!!」

提督「ご存知でしたか?」

伊58「知らなかった……」

提督(そりゃそうだろうな。これ3,4年前に否定された研究だし)

提督「海洋汚染で恐ろしいのは、知らず知らずのうちに汚染物質が体内にたまっていくことです」

提督「海上で戦う艦娘ならまだしも、海中に潜む艦娘ともなればその影響は無視できない」

提督「彼はなんとしてもそれを確かめたかった。しかし要らぬ心配は掛けたくない。だから」

伊58「ゴーヤたちの着ている水着を……」

提督「そう。保管したのです。汚染を調べるために」

提督「女性社会のこの軍隊で彼のやり方は反感を買うことは必至でしょう。なにしろ一見ただの変態行為にしか見えない」

提督「周りの艦娘たちは止めたはずです。もうちょっといいやり方があると。しかし周りの環境がどうであっても、周りが何をいってこようとも彼はやり遂げた」

提督「蓮は泥中より出でても決して泥には染まらない。そのあり方を私は、間違っているとはとても、思えないのですよ」

伊58「そんな……」

提督「そして、これを」スッ

伊58「……えっと、さっきの研究がまったく根拠のないデマだと否定されたぁ!?」

提督「そう。結果だけ見れば彼のしたことはただの変態のそれです。しかし私は一人の男として、一人の提督として、彼に尊敬の念を抱かずにはおられません」

提督「元帥は決して己の業績を誇ることはしません。しかしあなたにだけは知ってほしかった。誰にも知られずに艦娘を守ろうとした一人の愚か者がいるということを……」

伊58「テートク……」

提督(さっきから俺、元帥のフォローばっかしてんな)

伊58「おっと、そろそろ定時でち。ゴーヤ、家に直帰します」

提督「ええ。面白いお話をありがとうございました」

伊58「こちらこそ勉強になりました。いろいろ知られてよかったです。テートクのこととかね!」

提督(俺は尊敬すべき元帥がスク水フェチのド変態だったなんて知りたくなかったけどな)

伊19「じゃイクも行くの」

提督「ああ。ちゃんと今度は案内してやってくれよ」

パタン

大淀「提督、提督! 見てください! 明日の天気は晴れみたいですよ!」

提督「どうでもいいわ。で? 次の艦娘は何秒後だ? それとももう来てるのか?」

大淀「……お疲れ様です提督」

提督「え? まさか……」

大淀「ええ。今日の来客はゴーヤさんで最後です」

提督「……っし!!」グッ

提督「やり遂げた……。成し遂げたんだ俺は……。やった……。やったぞ……!」

トントン

「ごめんくださーい」

大淀「まあ、嘘なんですけどね」

提督「何で希望持たせるような真似したの!?」

↓2 艦娘

秋津洲「こんにちは! 水上機母艦秋津州よ! よろしくね!」

提督「ああ、よろしく」

提督(水上機母艦か。珍しいな。相変わらず妙な人選だな)

提督(だが今はそれよりも……)キョロキョロ

提督(……近くに艦娘の気配はないみたいだな)

秋津州「……なるほど。客人とはいえ見知らぬ人が近付いてきたら周りを警戒する。なかなか優秀な提督さんかも」

提督「え? ま、まあ。根が小心者なもので……ところで、秋津州さん。ここまではうちの者の案内などはありました?」

秋津州「特になかったかも」

提督「来る途中に誰かにあったりとかは?」

秋津州「……? 別に誰にも会ってないよ」

提督「……まいったな。せっかくいらしてくれたのだから誰か艦娘と交流を深めてほしかったのですが、いやはや今日はみな暇がないらしい」

秋津州「そうなの?」

提督「ええ、手が空いているものは案内に行けと命じたのですが、誰もいないとは。どうもスケジュール調整を誤ったようだ。大変申し訳ない」

秋津州「んー」

提督「仕方がないからここは私が対応するということでご勘弁願いたい。いやー、まいったまいった」

秋津州「でも、この送られてきた文書では今日一日みんなオフって書いてあるみたいですけど……」ピラ

提督「……。ちなみにその文書の担当者は誰になってます?」

秋津州「青葉さん」

提督(下準備も万端かよ青葉ァ!)

↓2 艦娘

瑞穂「提督、瑞穂推参いたしました。暇だったので」

提督「あ、ああ。ご苦労。大淀を使いに行かせようと思ったんだが」

瑞穂「いえ、それには及びませんとも。お呼びとあらばすぐに参上します。なにしろ暇なので」

提督「う、うむ。ありがとう」

秋津州「へー。この鎮守府にも水上機母艦がいるのね。珍しいね」

瑞穂「はい。私も自分以外の水上機母艦を久しぶりに見ました。色々ご指導してくださるとうれしいです。なんせ今日一日ずっと暇なので!」

提督(よし、青葉の用意周到さには驚いたが、人選はこっちで決めることができた)

提督(瑞穂はうちの鎮守府でも数少ないまともな艦娘。普段はみんなのブレーキになることも多い)

提督(暇暇と連呼してるあたりどうせ青葉の息がかかってるだろうが、これまでのやつらと比べたらずいぶんましだ)

提督(瑞穂なら俺のフォローの必要もないだろう。ようやく楽ができそうだな)

↓2 パナイ質問

秋津州「なるほど。ここの鎮守府では水上機母艦を有効に使えてるかも」

提督「ええ。性能はピーキーですが、水上機母艦にしか出来ない役割はある。あとはそれをどう活かすかですよ」

瑞穂「……」

提督(さっきから瑞穂がずっと黙ってる。質問のタイミングをうかがってるのか?)

提督(いや、待てよ。瑞穂のことだ。こんな馬鹿げた企画には乗っていないという可能性もあるんじゃないか?)

提督(本当にたまたま暇だったから来ただけで、瑞穂はパナイ質問には関係ない?)

提督(そうだ! きっとそうだ! さっきからずっと黙ってるのもただ具合が悪いだけで……)

瑞穂「あ、あの!」

秋津州「……? どうしたの?」

瑞穂「秋津州さんは、その、ど、どのような人がお好きなのですか?」

秋津州「え? 好みのタイプってこと? うーん。そうだなあ」

瑞穂「た、例えば! 私のような古風な女性はお好きですか?」

秋津州「ふぇ!?」

提督(なんでこの子急に口説いてんの!?)

瑞穂「どうなんですか?」

秋津州「え、えーっと、その、嫌いじゃない、かも」

瑞穂「それはその、嫌いじゃないけど、好きでもないという……」

秋津州「そ、そんなことないよ」

瑞穂「……じゃ、好き?」

秋津州「……かも」

瑞穂「そ、そうですか……」

秋津州「……」

瑞穂「私、今日一日暇ですので」

秋津州「あ、あー。そうなんだ……」

瑞穂「……」

秋津州「……」

提督(なんだこれ!!)

瑞穂「……」ニコッ

秋津州「……」カァァ

提督(俺はこんなとこにいていいの? 消えたほうがよくない?)

↓2 パナイ質問

瑞穂「……」パクパク

秋津州「……?」

秋津州「……!」カァァ

提督(めちゃめちゃ居心地悪い。俺はなんのためにここにいるんだろう)

提督(……。それにしてもいきなりのぶっ飛んだ行動。やっぱり瑞穂も青葉の手のものなのか?)

提督(いや、馬鹿野郎! 信じろ! 瑞穂はパナイ質問なんてしない!)

提督(たまたま秋津州さんに一目ぼれして口説いただけだ!)

提督(そんでたまたまそれが成功して、秋津州さんと秘密の合図をする仲になっただけだ!)

提督(それがたまたま上官の目の前で起こって! たまたま相手がお偉いさんの部下だっただけ! すべては偶然だ!)

提督(そうだ! そうに違いない!)

提督(だろ? 瑞穂?)チラ

瑞穂「はぁ。かもかもって、その語尾ってあの人の趣味なのですか? 私言ったよね? やめてって」

秋津州「ご、ごめんなさい……」

提督(なんで険悪な雰囲気になってんの!?)

瑞穂「あなたっていつもそうよね。いつまでも元彼のことを引きずって」

秋津州「え? そ、そうなの……?」

瑞穂「……」

秋津州「……」

瑞穂「はぁ。いいわ、もう」

秋津州「え?」

瑞穂「あなたがそういう人だってこと。私知ってるつもりだから」

秋津州「あ、うん」

瑞穂「はい。これで、仲直り」ニコッ

秋津州「あ、はい、どうも」

提督(なんだこれ!! 何なんだよこの空間は!!)

瑞穂「……」ニコッ

秋津州「……」メソラシ

提督(俺はもうこんなところにいたくない。いますぐ消えてなくなりたい)

↓2 パナイ質問

瑞穂「……」

秋津州「……」

提督「……」

提督(さっきとは別の意味で気まずい……)

提督(それにしても瑞穂はなにがしたいんだ? いきなり口説いたかと思えば、喧嘩しだすし)

提督(……。やはり瑞穂も青葉の手先なのか?)

提督(いや、そうか! わかったぞ!)

提督(頼みごとを断れない瑞穂のことだ。おそらくいったんは青葉の頼みを受けた)

提督(だからさっきいきなり口説いたんだ)

提督(しかし元帥の部下とそんな関係にはなれない。でももう口説いてしまった。これをどうにかしないといけない)

提督(それであえて喧嘩して険悪な雰囲気を作り、私達合わなかったみたいねといって別れを切り出す!)

提督(つまり、さっきのパナイ質問を清算しようとしているんだ!)

提督(さすが瑞穂! わが鎮守府の良心!)

瑞穂「……あ、あの」

秋津州「……?」

提督(やっぱりか瑞穂。別れを切り出すみたいだな)

瑞穂「その、あなたに言いたいことがあるのですけれど」

秋津州「え、えっと何かな?」

提督(よし、後のフォローは俺に任せろ。適当にシェイクスピアの戯曲でも持ってきて……)

瑞穂「結婚を前提に私とお付き合いしていただけますか?」

秋津州「ふぁ!?」

大淀「えんだああああ!」

提督(もうお前何がしたいの!?)

瑞穂「ど、どうでしょうか?」

秋津州「え? で、でも私あなたのことよくわからないし」

提督(奇遇っすね! 俺も瑞穂のことがよくわかんないっす!)

大淀「いやあああああ!」

提督(そんでうるせえなこいつ!)

瑞穂「そこを何とかお願いできないですか?」

秋津州「え? そ、そのう……」

瑞穂「だ、だめですか?」

秋津州「え、えっと……」

提督「……」

提督(どうも失敗しそうだな。ま、当たり前か)

提督(段階すっ飛ばしすぎって話だ。いきなり結婚とか何だお前。ショットガンマリッジかよ)

瑞穂「……」チラ

提督(え? 何?)

瑞穂「……」チラチラ

提督(え? 俺っすか?)

瑞穂「……」コクコク

提督(フォローしろってことっすか?)

瑞穂「……」コクコク

提督(……まじすか)

提督(しかしここでこいつらをくっつけないと、『出会った日にいきなり口説いてきて、痴話げんかを仕掛けてきて、挙句の果てにプロポーズしてきたパナイ艦娘』がいる鎮守府ってデマが広まってしまう……)

提督(……)

提督(いや、何一つ間違ってねえな! なんだこれ!)

提督(つーか初日にどんだけハイペースでイベント消化すんだよ! 生き急ぎすぎだろ!)

提督(正直、このままほっときたいんだけど……)チラ

瑞穂「……」シュン

提督「ぐっ……」

提督(やるしかねえ!)

提督「シェ、シェイクスピアの戯曲の一節に『若くて結婚、人生の欠損』という台詞がありますが!」

秋津州「は?」

提督「……」

提督(あ、やっべえ。間違えた。別れを切り出した場合のやつだこれ)

秋津州「欠損? まあそうかもね。若いうちに結婚なんて……。瑞穂さん、申し訳ないけど……」

瑞穂「……」ギロッ

提督「あ、秋津州さん! あなたは欠損という言葉にとらわれすぎています!」

提督(言ったもんは仕方ねえ! もうこれでいく!)

秋津州「……?」

提督「え、えーっと……。日本人は昔、不完全なもの、不恰好のものに趣を見出しました」

提督「それが、侘び寂びの心というものです」

秋津州「それが何の関係が?」

提督「さて、秋津州さん。どうして日本人はそんなことをしたのだと思います?」

秋津州「……さあ?」

提督「簡単です。暇だったからですよ」

秋津州「なにそれ」

提督「言い換えれば、余裕があった。不恰好でも不完全でも、どんな弱さにも趣を見出す心の余裕がね」

秋津州「心の、余裕」

提督「秋津州さん。あなたはどうにもそれがないように見える」

秋津州「……! そ、そんなこと!」

提督「ではなぜ最初にお会いしたとき、すぐに私が周りを警戒していたことに気付いたのですか?」

秋津州「……!」

提督「用心深さは美徳ですが、それもいきすぎると健全とは言いがたい。水上機母艦はたしかに、ピーキーな性能ゆえ戦艦や空母と比べると見劣りすることもある。だから焦っているのでしょう?」

秋津州「……そうかも、しれない」

提督「『若くて結婚、人生の欠損』大いに結構ではありませんか。あえて不完全になり、人生の欠損を愛する。そのような余裕も人生にはまた、必要だと。私は思いますがね」

秋津州「……」

提督「瑞穂はただ、あなたに伝えたかったのですよ。あなたの弱さも不完全さもすべて愛する。だからあなたにはそのままでいてほしいと――」

提督「受け入れろといっているのではありません。しかしその気持ちも汲んでやってほしい。わたしのささやかなお願いです」

秋津州「……」

瑞穂「……」

秋津州「……瑞穂さん」

瑞穂「え? あ、はい」

秋津州「やっぱりいきなりお付き合いってのは難しい、かも」

瑞穂「そ、そうですか」

秋津州「だから――」

秋津州「お友達から始めるってのはだめ、かな?」

瑞穂「は、はい!」

秋津州「えへへ。じゃあね瑞穂ちゃん」

瑞穂「はい。また、あとでね」フリフリ

瑞穂「あ、提督。私もこれで失礼します」

パタン

提督「……」

大淀「何とかなりましたね!」

提督「つーかあいつらこのまま付き合いそうだけどそれはいいの?」

大淀「あ、提督。それよりも」

コンコン

「失礼しまーす」

大淀「スケジュール詰まってますからね。そんなこと気にする心の余裕なんてないですよ」

提督「どんだけ過密なんだよ! アイドルか!」

↓2 艦娘

大和「はじめまして提督。大和型一番艦大和です。お会いできて嬉しいです」

提督「……まじかよ」

大和「……? どうされました?」

提督(どうしたって。大和だよ大和! 俺でさえ名前を知ってるくらいの超有名人だよ! とんでもねえビッグネームがきやがったな)

提督「い、いえ、まさか大和さんがこんな僻地にいらっしゃるなんて……」

大和「僻地だなんて。私はなかなか好きですよ。ここ」ニコニコ

提督「は、ははは……」

提督(こんな超大物相手に無礼をかましたらやばい……)

提督(ましてやパナイ質問なんてしようものなら提督生命に響く)

提督(何としてもうちのポンコツどもに会わせないようにしないと……)

提督「そ、そういえば大和さん。今日ここに来る途中誰かに会いましたか?」

大和「え? いや、あってないですけど」

提督「……そうですか。誰にも、会わなかったんですね?」ニヤ

大和「……!」

提督(よし、まずはオーケーだ)

提督(しかし青葉のことだ。まだ油断はできんな)

提督(まずは、艦娘が入ってこられないようにドアに鍵をかけて)ガチャ

大和「……!!」

提督(青葉がどこからか様子を見ているかもしれないから、カーテンも閉めておこう)シャッ

大和「……!!!」

提督(一応、大淀にも念を押しておくか)

提督「ところで、大淀」

大淀「はい?」

提督「今日はこの鎮守府には誰もいない。そうだったよな?」

大和「わ、私に一体なにをする気ですかー!?」

↓2 艦娘

バーン

長波「提督っ! 長波サマをお呼びかい!?」

提督「よく来てくれた!」

大和「よく来てくれました!」

長波「お、おう。こんなに歓迎されるとは思わなかったけどよ」

提督「せっかくのオフなのに急に呼び出して悪いな」

長波「なーに、お安い御用だよ」

大和「……あれ? でも先ほどこの鎮守府には誰もいないっておっしゃってたような?」

提督「あ、えーっと、それはですね」

長波「いやー、タイミングがよかったよ。たまたま今さっき買い物から帰ってきたばっかだからな!」

大和「ああ、お買い物にいってらしたんですか?」

長波「そうなんだよ! ここの連中が町に買い物に行くとなると一日がかりさ! 服を一着選ぶのだって長いの何のって! ま、あたしはめんどくさくなって途中で帰ったけどな」

大和「まあ」クスクス

提督(大和さんの誤解がなかなか解けなくて、艦娘を呼ぶことになった時はどうしようかと思ったが……)

提督(ナイスフォローだ長波! お前さんを呼んだ俺の選択は間違ってなかった!)

↓2 パナイ質問

大和「……」キャッキャ

長波「……」キャッキャ

提督(うむ。すごく距離を感じる。自業自得だが)

提督(ま、長波なら心配要らないだろ多分)

長波「いやー、大和さんとこんな風に話ができるなんて早めに帰ってきてよかったよ」

提督「ああ。大和型に会う機会なんて滅多にないからな。いろいろ学ぶといい」

長波「いや、大和型にあったのはこれで二人目だよ」

提督「は?」

大和「あれ? じゃあ、武蔵にも会ったことがあるの?」

長波「ああ、少し前になるけどな。いや、しかしはじめてあったときはびびったよ」

大和「うふふ。私もよく言われますよ。こんな大きな砲を持ってるのだからしょうがないけどね」

長波「いや、そっちじゃなくてさ――」

長波「武蔵の格好ってなんであんななんだ?」

大和「え?」

提督(急にすげえ言葉のエッジ効かせてくんな!)

長波「あたしもチラッと見ただけなんだけどさ、結構」

提督「ま、まあなかなか個性的な格好をしているといいますか」

長波「露出すごいよな。艦娘は露出多いやつも割といるけどあのレベルはめったにいないんじゃねえか」

提督(俺が濁したこと全部言いおったわ!)

長波「なあ、大和さん。武蔵さんはなんであんな格好してんだろうな?」

大和「し、知りませんよ!」

長波「……」

大和「……」

長波「武蔵さんにさ、前に同じ質問をぶつけてみたんだ」

大和「え?」

長波「『どうしてそんな格好しているんですか』って。今考えたらとんでもなく無礼な質問だよ。ぶん殴られたって文句は言えねえ」

長波「でもさ、武蔵さんは笑って言ったんだ『フッ、こうして装甲を薄く見せていたら敵が私を狙ってくれるだろう?』って」

大和「……!」

長波「武蔵さんはこうも言ってたよ。一番強いやつが一番無茶な仕事をして、一番頑丈なやつが誰よりも体を張るべきだ。それが強者の務めだ――」

長波「ノーブレスオブリージュって言うんだっけ? こういうの」

長波「……武蔵さんには口止めされたけどさ。姉のあんたくらいには知っておいてほしかった。誰に何を言われようが、武蔵さんは自分の生き方を曲げねえ、最高の艦娘だってことをな……」

大和「な、長波さん……!」

提督(……)

提督(武蔵に会ったことねえだろ。何言ってんだこいつ……)

大和「へー、長波さんって武蔵と仲いいのね。知らなかった」

長波「ああ。武しゃん、おつうって呼び合う関係だ」

提督(おつう要素どこだよ)

長波「信濃には会ったことないけどな。いつかは話をしてみたいな」

大和「ふふふ。なかなか会えないんだけど、二人とも私の自慢の妹よ」

提督(しかしすげえな。あったこともないのによくスラスラでまかせがでるもんだよ)

提督(でもこれ以上はさすがに限界だな。武蔵に会ったことがないことがバレたら一気に鎮守府の信用が落ちる)

提督(武蔵との関係に深く突っ込まれる前に俺がフォローしなくては)

長波「ああ、それはよく知ってるさ。あ、大和さんって徹甲弾胸パッドをしてるってほんとか?」

大和「え?」

長波「それでそれを考えたのが元帥だってのもほんとか?」

大和「は?」

提督(このタイミングでぶっこめんのかよ! すげえなこいつ!)

大和「……誰から聞いたんですか? それ」

長波「誰だったっけ? 武蔵さんじゃないし……。あ、提督だっけ?」

提督(まさかの流れ弾!)

提督「いや、違いますよ! ほらよく思い出してくれよ長波!」

長波「んー、やっぱり武蔵さんだっけ?」

大和「え? いつの話ですかそれ?」

提督「そういえば、俺が長波に言った気がします! いいえ、間違いありません!」

大和「えぇ……。な、何でそんなことを?」

提督「え、ええと……。そ、そう! 後学の為、戦艦の装備について学んでいたらそんな話を小耳に挟んだもので」

長波「提督は勉強熱心だからな! 艦娘の着けてるものに興味津々なんだよ!」

大和「……うわあ」ドンビキ

提督(言い方!)

困ったらどっちも書く

大和「それ自体はあってますよ。でもパッドじゃなくて正しくは胸につけるサポーターですけどね」

提督「あ、あはは。そうなんですか?」

大和「……勉強になりました?」

提督「ま、まあ」

↓2 パナイ質問

長波「サポーターってそんなにかたいもんなのか?」

大和「ええ! うちの自慢の一品ですから! なんなら触ってみますか?」

提督(最初は安心してたけど、長波もどうもぶっとび勢みたいだな。悲しいことに)

提督(いや、待て。長波はうちの艦娘に珍しく、本当に珍しくまともな艦娘だ)

提督(こいつがだめならうちの艦娘はみんな頭空っぽってことになるんじゃないか?)

提督(……最後まで様子を見てみるか)

長波「へー、ほんとだ。かたいな」テシテシ

大和「でしょ? 戦艦の砲弾だって通さないんだから」

長波「ふーん。……やっぱり大和さんって胸でかいなー」テシテシ

大和「な、何言ってるんですか!? もう!」

長波「ん、あれ? おっかしいな」

大和「……? どうしたんですか?」

長波「大和さんの胸の谷間ってバナナパフェなのか?」

大和「はあ?」

提督(あ、わかったわ。やっぱうちの艦娘ってみんな頭空っぽだわ。夢詰め込まれてるわ)

大和「えっと……。どういう意味でしょうか?」

長波「あたし今日さ、バナナパフェ食ってきたんだ」

大和「え、ええ」

長波「なんかおかしいなあとは思ってたんだよ。で、しばらく食ってから気がついた。このパフェ、バナナが入ってない」

大和「はあ」

長波「バナナが入ってないバナナパフェはバナナパフェか否か。馬は生まれる。人間も生まれる。だがバナナパフェは生まれない。作られるのだ」

大和「よ、よく意味が……」

長波「バナナパフェにはバナナがいるんだよ。バナナがないバナナパフェはただのパフェだ」

大和「……?」

長波「ふぅ……」

長波「ま、あとは提督が説明してくれるさ」

提督(こいつとんでもねえパスしてくんな!)

提督(えーっと、よ、要するにバナナパフェになるにはバナナが必要で、大和さんの胸の谷間にはバナナがな……)

提督(……)

提督(あっぶねえ。こいつとんでもねえトラップしかけてくんな)

大和「……?」

提督「……」

提督(まいったな。なーんも思いつかねえ。ここは俺にもよくわからんって言っとくか)

長波「一緒に言った武蔵さんは何食ってたっけなー?」

大和「え? 武蔵と一緒だったの?」

提督「バナナパフェとは! そう!」

大和「な、何なんですか?」

提督「……私もつい先日バナナパフェを食べてきました。大変おいしかったです」

大和「はあ」

提督「大和さんも好きですか? バナナパフェ」

大和「ええ、まあ。甘いものなら大概好きですけど」

提督「それはよかった。しかし長波はバナナが入ってないことに文句を言ってましたけど、バナナパフェのおいしさってバナナがないだけで失われるものですかね?」

大和「まあ多少は失われると思いますけど」

提督「でも完全には失われない。だったらバナナパフェをバナナパフェたらしめているのはバナナじゃない。じゃあ大和さんを大和さんたらしめるものは何だと思います?」

大和「え? さあ」

提督「それが胸の谷間。つまりは心ですよ」トントン

大和「……!」

提督「心ある限り、大和さんは大和さんであり、バナナパフェはバナナパフェなのです――」

提督「自らに目覚めるのだ。おお、人間の姿をした神の族よ!」

提督「私は知っていますよ。大和さんの胸の谷間が誰よりもバナナパフェだということを。そして誰もが認める最高の艦娘の一人だってことを、ね」

大和「……提督」

提督「……」

長波「……」

大和「ごめんなさい。やっぱりよくわからないです」

提督(おれにもよくわからないです)

大和「あら、もうこんな時間? やることは終わったし戻ろうかしら」

長波「じゃあたしも戻るかー。またな提督」

大和「お疲れ様でした提督。それではまた」

パタン

提督「……なぜか俺は敗北感に包まれている」

大淀「ちょっと最後の詰めを曲げすぎましたね。バナナシュートかって話です」

提督「やかましいわ」

大淀「さーて、次の予定は……」

提督「あ、そうだ。大淀、俺ちょっとトイレ行ってくるから」

大淀「あはは、何言ってるんですか。提督はあと二時間は持つでしょう?」

提督「何でわかんの?」

大淀「当然です。提督のトイレ具合くらい把握しておりますとも」

提督「何でしてんの?」

↓2 艦娘

足柄「初めまして、提督。私は妙高型三番艦。重巡洋艦よ。ふふ、よろしくね」

提督「ええ、お会いできて光栄です」

足柄「……安心した?」

提督「え?」

足柄「今まで、戦艦や空母みたいな大型艦ばっかりだったでしょ? 気の休まる暇なんてなかったんじゃない?」

提督「ははは、確かにそうですね」

提督(別の意味でな)

足柄「そこをいくと私は重巡。根も適当ないい女。だからおいしいお茶とお茶菓子でも出してくれたら、あの人には素晴らしい鎮守府だったって報告しておくわ。……どう?」

提督「それは素敵だ。大淀、すまんがお茶を頼む。とびきりのやつをな」

足柄「ふふ、ありがとう。いただくわ」

提督「あ、そういえばまだお名前を聞いていませんでしたね」

足柄「え?」

提督「なんとお呼びすれば?」

足柄「が、餓狼……」

提督「……は?」

足柄「近しい人からは、餓狼と呼ばれているわ」

提督「……」

提督(また変な人が来た)

提督「えっと、その、餓狼というお名前なんですか?」

足柄「いえ、コードネームみたいな……」

提督「コードネーム?」

足柄「……うちの鎮守府では名前じゃなくて、決められたコードネームで呼び合ってるの。『餓狼』とか『狂犬』とか『玉兎』とか」

提督「……」

足柄「名前は名乗っちゃだめって言われててそれで……」カァァ

提督「はあ」

足柄「そ、その、私の趣味じゃなくて。あの人がスパイ映画にはまってて」

提督「元帥殿の趣味で?」

足柄「……そうね」

提督「あー」

提督(もしかして俺の鎮守府はすごいまともな方なんじゃなかろうか)

提督(でもこの餓狼さんはいい人っぽいな。疲れてる俺に気を遣ってくれてるし)

提督(こんないい人に変なことはしたくない。外と話を通すいい口実がなにかないか)

大淀「あの、提督。申し訳ありません。ちょうどお茶菓子を切らしてしまっていて」

提督(よし、ナイスだ大淀!)

提督「おっと、そりゃまずいな。仕方ない。間宮さんに頼んで持ってきてもら」

バーン

「提督! お菓子をお持ちいたしました!」

大淀「だから持ってくるよう頼んでおきました」グッ

提督「そうかい。ありがとよ」

↓2 艦娘

那智「お茶菓子を持ってきてやったぞ提督」

提督「ありがとう。悪いな」

那智「何、町に行ったときに買ってきた余りだ。そう上等なものじゃない」

足柄「ね、姉さん。久しぶり……」

那智「ああ、久しぶりだな。何だ、ぜんぜん変わってないじゃないか」

足柄「そ、そうかしら?」

那智「遠く離れてもお前はお前のままだな。いや、安心したよ」

足柄「うーん。これでも自分では結構成長したつもりなんだけどな」

那智「ははは、そうだな。確かに変わったものもある。あしが……。いや、今は餓狼だったか?」ニヤ

足柄「~~~!!」

提督(やめたげてよお!)

↓2 パナイ質問

提督「そういえばお二人は姉妹艦でしたか」

足柄「ええ、鎮守府が離れているからあまり会うことはないけどね」

那智「盆暮れ正月くらいか。こいつは出不精でな。なかなか会いにこないんだ」

足柄「うっ……。だって電話とかで連絡は取れるし」

那智「まったく。直接会わないと話せないこともあるだろう」

足柄「わ、わかったわよ。次の休みには顔を出すから。……あ、ごめんなさい提督。二人で話しこんでしまって」

提督「ははは、私には兄弟がいないのでこんな会話も新鮮で楽しいですよ」

那智「そうか、提督は一人っ子なのか」

提督「そういえば姉妹って集まったときどんな話をするんですか?」

足柄「基本は近況報告とかね」

那智「ああ、そうだ、それで思い出した」

足柄「……?」

那智「餓狼、貴様男はできたのか?」

足柄「~~~ッ!!」

提督(もう聞いてるこっちが辛えよ!)

足柄「いや、ま、まだですけど」

那智「む、そうか。近くにいい人はいないのか?」

足柄「近くにいるのはあの人くらいだし。近くにいい男がいないだけだし」

那智「だったらこの提督なんかはどうだ?」

提督「え? 俺?」

那智「そうだ。言動はチンピラのようだが、なかなか優しいところもある。恥ずかしながら私もそこそこ尊敬している」

提督「別に恥ずべきことじゃなくない?」

足柄「んー、そうね」チラッ

足柄「……提督さんはとっても素敵だけど、今はあの人のお世話で精一杯だから。遠慮しておくわ。ありがとう姉さん」

那智「そうか……。残念だったな。提督」ポン

足柄「ごめんなさい。あの人放っておくと曲芸撃ちとかして腰壊すから」

提督(元帥ってのは駄目人間しかいないのかな)

那智「ところで私にコードネームがついたら何になるんだ?」

足柄「『ウイスキー』とか?」

那智「では相方は『テキーラ』か。提督、テキーラはいける口か?」

提督「俺は日本酒とビールしか飲まないんだ」

那智「そうか。では提督のコードネームは『提督a.k.a.GORILLA 』だな」

提督「俺だけ方向性違くない?」

↓2 パナイ質問

那智「餓狼」

足柄「な、なによ」

那智「そのコードネームは誰が考えたんだ?」

足柄「……あ、あの人だけど」

那智「『狂犬』『玉兎』もか?」

足柄「そうね」

那智「やはり、か」

那智「ところで『GORILLA』」

提督「提督だ」

那智「元帥の机の引き出しには中学生が書いたような秘密のノートがあるというのは本当か?」

足柄「……え?」

提督(何で俺に聞くの!?)

提督「秘密のノートって?」

那智「元帥が考えたコードネームがびっしり。事細かに設定も書いてあるという」

提督(誰かに見つかったら立ち直れないやつか……)

那智「おまけに軍服を改造して、いたるところから武器が出てくるようにしたいらしくその設計図も書かれているらしい」

提督「なんていうか、その、すげえな」

提督(そういえばスパイ映画にはまってるっていってたな。でもこのうわさ本当か……?)チラッ

足柄「~~~ッ!」プルプル

提督(めっちゃ泣きそうな顔でうつむいてる! リアルだ! これ!)

那智「おまけに、今度その設計図を会議に通す予定とか。まいったなこれが通れば提督の服もスパイ仕様になってしまうな。なあ餓狼」

足柄「~~~ッ!!」プルプル

提督(ドSだこいつ!)

提督「改造って具体的にどうなるんですか?」

那智「服が防弾にでもなるんじゃないか?」

足柄「……変わるのはそれよ」スッ

那智「提督の胸についてる甲種勲章?」

足柄「それが燃料になるの。火をつけると燃える。つまりそこを撃たれたら火達磨になるわ」

提督「……」

提督(元帥って馬鹿なの?)

↓2 パナイ質問

足柄「あの人の奇行もそろそろ止めようとは思ってるけどね」

那智「ああ、妥当だな。さすがに軍服改造は困る」

提督「あははは。まあ、スパイ映画は男性の憧れですから。私もわからなくもないです」

足柄「ああ、そういえばあなたスパイ疑惑があったわね」

提督(その話まだ生きてたの!?)

足柄「その話をあの人にしたら喜んでたわ。同士ができたって」

那智「そうなのか? やったな。提督」

提督(なんで軍のトップなのにスパイがいることに喜んでんの!?)

那智「ふふふ。ああ、奇行といえば『バーボン』」

提督「GORILLAだ。違った。提督だ」

那智「元帥殿は最近怪我もしていないのに腕に包帯を巻いたり病気というわけでもないのに突如苦しみだすなどの奇行が目立っていると聞くが何かあったのか?」

足柄「……え?」

提督(若えな元帥!)

提督「そうなのか? 俺はそのうわさは聞いたことがないけど」

那智「貴様なら知っていると思ったんだが。いや、衝撃的な噂だけに足柄に直接聞くのは憚られてな」

提督(だからって何で俺に聞くの!? たとえワンクッションおいたところで衝撃は殺しきれねえよ!)

足柄「……そっか。姉さんも知ってるのか。ほんとのことを言うのはちょっと恥ずかしいんだけどね」

提督(……! まさか本当に元帥はいまさら中二病にかかってんのか……?)

提督「わ、わかってますよ! 元帥殿は歴戦の勇士。古傷が痛むのでしょう? 包帯はそのためのもの!」

足柄「……」フルフル

提督「み、みんなには内緒にしているけど実は胸を患っているとか!」

足柄「……」フルフル

提督「敵国外患無き者は国恒に亡ぶの教えにのっとり、元帥殿は戦いの中に身をおいていることを忘れないよう常に包帯を巻いているのでしょう!? さすが元帥殿だ! 軍人の鑑!」

足柄「……違うわ」フルフル

提督「あとは、あとは……」

足柄「いいの、いいのよ。もう」

提督「で、でも」

足柄「でもあんまり人には言わないでね。かっこわるいもの」

提督「足柄さん……」

足柄「だって曲芸撃ちに失敗して腕を怪我したなんてね」

提督「……え?」

足柄「おまけに腰も悪いのに無茶するから、たまに突然うずくまるし。悪化してるのかしら」

提督「……それだけですか?」

足柄「……? ええ。それだけだけど。何だと思ったの?」

提督「……」

提督(もう若くねえな元帥)

足柄「もう、それだけのことなのに。大事にしないでよ。姉さんの馬鹿」

那智「ふふふ、許せ足柄。少しからかいすぎた」

足柄「わかったわよ。たまには顔を出せってことでしょ?」

那智「ああ、お前の惚気話を聞きたくて、たまらないやつらがいるからな」

足柄「べ、別に惚気じゃないしー」

那智「提督。悪かったな。いろいろ付き合わせて」

提督「いや、姉妹仲良くな」

那智「じゃあな」

バタン

提督「……いまさらだけど、この組織って大丈夫なの?」

大淀「私も心配になってきました。あ、バナナ食べます?」

提督「なんでお茶菓子にバナナもってきたのあいつ」モグモグ

↓2 艦娘

葛城了解
あけましておめでとうお疲れ様でした

>>217 いまさらながら『バーボン』じゃなくて『テキーラ』だわ

葛城「こんにちはっ! 航空母艦葛城です!」

提督「……」モグモグ

葛城「あっ。ごめんなさい。もしかしてお食事中だった?」

提督「あはは、これはお恥ずかしい。部下がお茶菓子を持ってきたので少し休憩していた所です。すぐに食べ終えますので少々お待ちを」

葛城「えっ? お茶、菓子? それが?」

提督「……よろしければどうぞ」スッ

葛城「ええ、じゃあ、いただきます」

提督(お茶と全然あわねーなこれ)モグモグ

葛城(なんでこの人お茶菓子にバナナ食べてるの? ゴリラなの?)モグモグ

↓2 艦娘

提督「お待たせして申し訳ない」

葛城「全然気にしてないわよ! バナナもおいしかったしね! ごちそうさま!」

提督「お粗末さまでした」

提督(そろそろ来るか? 多少はまともなやつだったらいいんだが)チラ

バーン

隼鷹「ひゃっはー! 提督、いつものように果物持ってきたぜ!」

提督「……? ああ、ありがとう。置いといてくれ」

提督(隼鷹か。少し不安だが悪くない。青葉とかそのあたりのやつらに比べたらな)

隼鷹「……あれ? 提督、今日はいつものあれしないのか?」

提督「あれって?」

隼鷹 「ほら、バナナ握りつぶして握力計るやつ」

提督(そんなことするやついる!?)

提督「いや、いつもそんなことしてねえだろ。何言ってんだ」

隼鷹「おっかしーな。あたしの思い違いだったっけな。たしか青葉から聞いたんだけど。ちょっと連れてくるか」

提督「……っ!」グシャァ

提督「……」ポタポタ

提督「……130キロってとこか。衰えたな」

隼鷹「提督すっげー!」

葛城(何この人。ゴリラなの?)

↓2 パナイ質問

隼鷹「やっぱさー。烈風と流星だよな! あのブーンて来てドカーンってなるのが最高なんだよ!」

葛城「そうそう! あなたなかなかわかってるじゃない!」

提督(やっぱり居座りやがったなこいつ。しかも話し弾みまくってんな)

隼鷹「いやーでも艦載機トークができるのは楽しいな! この鎮守府あんまり空母がいないからさあ」

葛城「うんうん。わかるわその気持ち。私もあんまりほかの空母と面識ないしね。こういう話ができる人にあえてよかった!」

隼鷹「へー、じゃ今日はあたしとあんたが出会った記念すべき日ってわけだ!」

葛城「んー、そっか。そういうことになるわね」

隼鷹「それじゃあこのすばらしい出会いを祝して」コト

葛城「……?」

隼鷹「どうだい? 一杯」

葛城「ワイン?」

葛城「え、で、でも仕事中にお酒飲むわけには」

隼鷹「大丈夫大丈夫。これ酒じゃなくて般若湯だから!」

提督「おいおい。あんまり無理にすすめるな。悪い酒だ。相手がほしいなら後で俺が付き合ってやるから」

隼鷹「それがな、いい酒が手にはいったんだよ。見てくれよ!」

提督「……! ピションラランドか! しかも82年もの!」

葛城「これって良いものなの? ワインはあんまり詳しくなくて」

提督「超高級というわけではありませんが、買うとなったら10万円は下らないでしょう。それにしてもよく手に入ったな」

葛城「じゅ、十万円……!」ゴクリ

隼鷹「へへー、ま、今日のためいろいろと準備しておいたのさ。どうだい? 葛城さんも」

葛城「じゃ、じゃあ、少しだけ」

葛城「……あ、おいしい」

隼鷹「だろー? たまにはワインもいいよなー!」

提督「……うん。旨い。なんかつまむものがほしくなるな」

隼鷹「なんかないの?」

提督「バナナしかねえ」

葛城「いや、ゴリラか」

↓2 パナイ質問

葛城「んー! おいしい! もう一杯!」

隼鷹「あら、もうないみたいだな」

提督(結局、ボトル一本あけてしまった。ちょっと勿体無かったかな)

葛城「あれー? そうなんだ。ふーっ。のど渇いちゃった。何かない?」

提督「大淀お茶を」

大淀「切らしてます」

提督「さっきまであったのに!?」

隼鷹「すまねえ。バナナしかないみたいだ」

葛城「いや、ゴリラか! あはははは!」

提督(自分で言って自分で笑ってる……)

隼鷹「でもよお、バナナってよ」

隼鷹「酔ってると無性に頬張ってくわえ込みたくならない?」チラ

提督(何聞いてんのこいつ!?)

葛城「いやー、そんな。ゴリラじゃあるまいし」

提督(ゴリラそんなことしねえよ!)

葛城「んふふー。でも少し分かるかも。バナナってたまに頬張りたくなるのよねー」チラ

提督「は、はあ。そうですか」

葛城「あーっ! 赤くなってるっ! なに想像したの? このこのー」

提督(いやあんたのほうが赤くなってるよ!)

隼鷹「そういえば提督はバナナを握りつぶした後、何か言いたそうにしてあたしを見るからな。あれは何かのメッセージかもな-」

葛城「きっとあれよ! 僕のもこうしてほしいってことよ! キャー! このスケベッ!」バシッ

提督(酔っ払いくそめんどくせえ!)

葛城「このバナナなかなかいけてるわねー」カジカジ

提督(ああ、そうやって食べるのね)

隼鷹「あたしは提督がどんな性癖でも受け入れる気でいるからな、だから安心してくれ。この豚が」

提督(何歩み寄ろうとしてくれてんの!? 器の広さアピールいらねえから!)

↓2 パナイ質問

葛城「それでさー、最近天城姉と提督がいい感じでさー。ああいうの見ていると寂しくなっちゃって。いいなー天城姉」

隼鷹「へー、そいつはすげえや」

提督(酔っ払いだ。酔っ払い同士の会話だ)

葛城「ねえ、聞いてんのあなた」

提督「ええ、聞いてます聞いてます」

葛城「んー?」ジー

提督「……?」

葛城「よく見たらあなたなかなかいい男じゃない」

提督「できればその台詞はしらふで聞きたいですね」

葛城「言うわねー。このこのー」バシバシ

隼鷹「でもわかるよ。その気持ち。部屋に一人でいるとな、ふと人肌が寂しくなるときもあるんだよ」

提督「はあ、そんなもんなのか」

隼鷹「葛城だってバナナ挿れたことくらいあるだろ?」

提督(急に何言ってんのこいつ!?)

葛城「いや、ゴリラか」

提督(だからゴリラそんなことしねえよ! いや知らんけど!)

提督(困った。話がどんどんシモの方にいってる)

提督(いくら酒が入ってるとはいえ、酔いがさめたらまずいんじゃないかこれ)

隼鷹「で、どうなんだ?」

葛城「あはは、そうねー、バナナ……。バナナ……?」パタ

提督「……?」

葛城「……」スーッスーッ

隼鷹「ありゃ。寝ちまったか」

提督「もしかしてこの人は酔ったら記憶がなくなるタイプ――」

大淀「ではないです」

提督「ではないな! ちくしょう!」

隼鷹「どうする? 起こそうか?」

提督「……いや、大丈夫だ。とりあえず隼鷹は部屋に帰っててくれ」

葛城「……」パチ

葛城「……」ガバッ

葛城「あ、あれ? もしかして寝てました? どのくらい?」

提督「おはようございます。そうですね。10分くらいでしょうか」

葛城「ご、ごめんなさい」

提督「いえいえ、あ、そうだ」

コト

葛城「……?」

提督「しじみのスープです。インスタントですが。で、こっちはフルーツジュース。隼鷹が持ってきたもので作りました。酔い醒ましにはちょうどいいと思って」

葛城「あ、ありがとう……」

提督「……少し悪酔いが過ぎました。申し訳ありません」

葛城「い、いえいえ、私の方こそ! いろいろ失礼なことを」

提督「……? なんのことですか?」

葛城「え?」

提督「いや、すいません。私は悪酔いすると記憶がなくなるタイプでして。何かありました?」

葛城「……いえ、何も、みんなで楽しく飲んだだけ」

提督「それは何より。それより少し部屋で休んでいかれるといいでしょう。元帥殿には適当に話しておきます」

葛城「ありがとうございます。……やっぱりあなたなかなかいい男ね」

提督「……聞かなかったことにしておきますよ」

バタン

提督「……」

大淀「手馴れてますねえ」

提督「うちは酒飲みが多いからな。しかし今回のは危なかった。下手をするとセクハラだ」

大淀「下手をしなくてもそうだと思いますけど」

提督「酒が入っていたからよかったようなものを。あいつらには困ったものだ」

大淀「怒ってます?」

提督「酒の席だし、あれくらいじゃ怒らんよ。それに」

大淀「それに?」

提督「美味い酒も飲めたことだしな」

大淀「提督……」

コンコンコン

「失礼しまーす」

大淀「あ、綺麗に締めたところ悪いですけどまだ来ますよ」

提督「まだ続くのこれ!?」

↓2 艦娘

陽炎「遅くなってしまい申し訳ありません! 陽炎型駆逐艦の陽炎です! ご指導ご鞭撻よろし――」

提督「……あ」

陽炎「……つかぬ事をお伺いしますけどそれは?」

提督(やべ。ワイン飲んだまま片付けんの忘れてた)

提督「……こ、これはですね。深いわけがありまして」

陽炎「お酒、飲んでたの?」

提督「……実はこれぶどうジュースでして」

陽炎「ボトルに思いっきりワインって書いてあるんだけど」

提督「ははは。駆逐艦に一人、どうしてもお酒が飲みたいって言って聞かない娘がいましてね。仕方ないからぶどうジュースをワインボトルにつめかえて飲ませていたんですよ」

陽炎「あ、そうなんだ。ごめんね。てっきり勤務中にお酒を飲んでるダメ司令さんかと思っちゃった」

提督「こちらこそ、誤解させるようなことをして申し訳ない」

提督(よしっ! なんとか切り抜けた! 即興で考えたにしてはなかなかだったんじゃないか? 勤務中に酒を飲んでたなんて元帥に知られたら大変だからな)

陽炎「……あれ? そのバナナは? なんかぐちゃぐちゃだけど」

提督「あー、それはさっき私が握りつぶしたんですよ。握力を測ろうと思って」

陽炎「……は?」

提督「あ」

陽炎「……へ、へー。そ、そうなんだ。すごいですね」

提督「……」

提督(酔った勢いってことにすればよかった)

↓1 艦娘

提督「ごめんなさい。普通に飲んでました」

陽炎「はじめからそう言ってくれればよかったのに。告げ口なんて真似しないわよ」

提督「酔っ払って年甲斐もなくはしゃいでいたなどと知られるのは恥ずかしくてつい、申し訳ない」

陽炎「私だったからよかったけど、偉い人だったら問題になってわよ」

提督(いや、あなたも偉い人なんじゃないか)

陽炎「ま、遅れた私も悪いってことで。うわ、結構いいやつ飲んでる」

提督「残念です。もうちょっと早かったらちょっとは残っていたのですが」

陽炎「うーん。そりゃ残念だなあ。もうちょっと早かったら現場を押さえられたのに」

提督「……」

陽炎「……」

提督「やっぱり怒ってます?」

陽炎「怒ってないよ?」

バーン

あきつ丸「提督殿! 話し相手にお困りですか!」

提督(こいつら、だんだん乱入が雑になってきたな)

↓1~3くらい パナイ質問

あきつ丸「はじめまして。自分は揚陸艦のあきつ丸であります!」

陽炎「揚陸? ってことは」

あきつ丸「はい。自分は陸の人間であります」

陽炎「噂には聞いていたけど、陸軍の艦娘ってほんとにいたのね。はじめてみた」

あきつ丸「自分も海軍の艦娘ははじめてみたのであります。ははは」

提督(毎日見てるだろうが。なんで早速適当なこと言うの)

陽炎「ねえねえ、陸軍ってどんなところなの?」

あきつ丸「ああ、今日はいい天気でありますな」

陽炎「え? そ、そうね」

あきつ丸「……」

提督「……」

陽炎「で、陸軍って」

あきつ丸「まわりの仲間より優れていることは、特に立派なことではない。本当の気高さとは、過去の自分より優れていることだ 」

提督「は?」

あきつ丸「ヘミングウェイの言葉であります」

陽炎「はあ」

あきつ丸「……」

提督「……」

陽炎「陸軍ってさ」

あきつ丸「……」

陽炎「あの」

あきつ丸「くぅ……。はっ! 自分落ちてたのでありますか? で、なんの話でありますか?」

提督(この子話そらすのめっちゃ下手!)

陽炎「そ、そんなに陸軍の話をするのが嫌なの?」

あきつ丸「嫌というわけではありませんが、別段面白い話でもないのであります」

提督「そうなのか? まあ無理して話さなくてもいいが」

あきつ丸「あ、面白い陸軍式ジョークならいくつかあるのでありますが」

提督「いや、それは別にいい」

あきつ丸「ではくだらない話をひとつ」コホン

提督「だからいいって! まじで!」

あきつ丸「自分最近車買ったのであります。もちろんいっぱい荷物が入るやつであります」

陽炎「は?」

あきつ丸「『DAIHATSU』はははは! なーんちゃって! 陸軍式ジョーク! であります!」

提督「うわあああ! 本当にくだらねえ!」

あきつ丸「どうです? 陽炎さん。すこしは陸軍のことがわかっていただけたでありますか?」

提督「いままでのやつ、プレゼンテーションのつもりだったのか……」

陽炎「いや、もう、どうしたらいいのか」

あきつ丸「ふっ。気付かなかったでありますか? 先ほどの他愛ない会話の中に、陸軍の心得が含まれていたことに!」

陽炎「え?」

提督「まじか」

あきつ丸「ひとつ! 陸軍たるもの常に天候を確認せよ! であります!」

提督「天候が悪ければ地面がぬかるむ。かといって良ければ日差しに体力が奪われる。天候に応じた行軍が必要だ。ということをいいたいんだな」

あきつ丸「ひとつ! 常に昨日の自分より強くあれ! であります!」

提督「陸軍の訓練はハードだと聞く。時に挫けそうなこともあるかもしれない。しかし自分を破壊するに至らないすべてのことが自分をさらに強くする。常に気高くあれ、ということだろう」

陽炎「一理あるかも」

あきつ丸「ひとつ! 睡眠は、えーっと、大事であります!」

提督「あー、不眠は、パフォーマンスを8割も落とすらしい。どんな状況でも眠れる技術がプロフェッショナルには必要だ。ということです」

あきつ丸「ひとつ! ユーモアは、えーっと、大事であります!」

提督「えー、うん。あれだ。リラックスすることも大切だということでしょう」

陽炎「……」

あきつ丸「……」

提督「……」

陽炎「あ、ありがと。なんとなーくわかったわ」

提督(気を遣われている! こんな小さい子に! 俺が!)

あきつ丸「いえいえであります。未来の同僚に陸軍のことを知ってもらうのも仕事のうちであります」

提督「未来の同僚?」

あきつ丸「ええ、陽炎殿。そろそろ陸のほうに来るという話のご決断をば」

陽炎「え? 何の話?」

陽炎「そんな話あったっけ?」

あきつ丸「ええ、陸軍はいまかいまかと首を長くして待っているであります」

提督「……」

陽炎「え、えー? 忘れてたのかな。いやでも、うーん」

提督「あー、すまん。その話だが俺のところで止まってた」

あきつ丸「え?」

提督「俺のミスだ。陽炎さんに話すつもりがすっかり忘れていた。悪い」

陽炎「……ふーん」

提督「陽炎さんにその気もないみたいだし、上には俺から断っておくよ。あきつ丸もそれでいいか?」

あきつ丸「ふむ。しょうがないでありますな。なぜ提督殿が陸の上層部とつながってるかという話は置いといて」

陽炎「……あれ? そういえば確かに。もしかして陸のスパイ?」

提督(なんでこの鎮守府の艦娘共は嬉々として俺をはめようとしてくるんだろう……)

陽炎「ごめんね? 陸軍が嫌ってわけじゃなくて私は駆逐艦だから」

あきつ丸「いえ、無理なお願いをした自分も悪いのであります」

提督「あんまり勧誘とかはしないでくれよ。みんな大事な戦力だからな。あとおれはスパイじゃない」

あきつ丸「え? スパッツ?」

提督「聞く気あんのか」

あきつ丸「失敬な! ちゃんと聞いてたであります! 提督殿が、その、スパッツを履いてみた、と」

提督「俺が!? なんでだよ! 履かねえよ!」

あきつ丸「え? スパッツじゃないとしたら下は何を?」

提督「下着だよ」

あきつ丸「……? つまり?」

提督「あれだよ。パンツだよ」

あきつ丸「え? スパッツ? 履くのでありますか?」

提督「だから履かねえっつってんだろ!」

あきつ丸「申し訳ないであります。自分スパッツが好きなので、そうだったらいいのになと」

提督(だからって何で俺だよ。なりふり構わなすぎだろ)

あきつ丸「ふー。残念であります。なかなかスパッツにめぐり合えないものですなあ」

提督「そういえば、最近スパッツ履いている娘も見なくなったな。昔は結構いたんだけどなあ」シミジミ

大淀「引くわ」

提督「なぜだ」

陽炎「あ、私履いてるわよ」

あきつ丸「おお!」

提督(おお、じゃねーよ)

あきつ丸「し、下は? 下はどうなのでありますか?」

陽炎「下?」

あきつ丸「スパッツの下は履いているのでありますか? 自分は履いてないほうがいいであります!」

陽炎「は?」

提督(何てこと聞いてんの!?)

陽炎「下はまあ、履いてるけど普通に」

あきつ丸「そうでありますか。残念であります」

提督「あきつ丸。気持ちはわかるが、陽炎さんが困っているだろう。その辺にしてくれ」

あきつ丸「申し訳ないのであります」シュン

陽炎「いや、謝るほどじゃ」

あきつ丸「……ふぅ」

提督「……? どうした? あきつ丸」

あきつ丸「……だめでありますな。自分は」

陽炎「え?」

あきつ丸「今日の自分、少しおかしいのであります」

提督「……? 何を」

あきつ丸「申し訳ありません。好きな人の前ではどうしても張り切りすぎて、我を忘れてしまうであります」

提督「好きな人……?」

提督「……!」

『陽炎さん。そろそろ陸のほうに来るという話の決断を』

『スパッツは好きなのであります』

提督(あきつ丸……。お前まさか)

あきつ丸「こんなことしてもどうしようもないってわかっているのに、本当に駄目であります。アンポンタンであります」

あきつ丸「アンポンタンの艦娘がいるとしたら、誰でありましょう? それはきっと、自分のことであります」

陽炎「あきつ丸さん……」

提督「あきつ丸……」

あきつ丸「それでも知っておいてほしいのであります。あなたの想っている人間がここにいると」

提督「……。陽炎さん、こいつは不器用かもしれないが決して悪いやつじゃない。私が保証します。だから少し話をきいてやってほしい」

陽炎「……? え、ええ」

提督(俺にしてやれるのはここまでだ。あとはお前次第だ。がんばれあきつ丸)

あきつ丸「……」スーハー

あきつ丸「で、では」

陽炎「……はい」

あきつ丸「はじめてあったときからずっと、慕っておりました」

あきつ丸「提督殿」

提督「俺のことかい!!!」

提督「え? あきつ丸の好きな人って俺?」

あきつ丸「そ、そうであります。多分」

提督「え。えー……。陸軍に来てほしい云々は?」

あきつ丸「……だから我を忘れて変なことを口走ってしまったと」

提督「スパッツが好きってのは?」

あきつ丸「て、提督殿が好きなものを自分も理解しようと思いまして」

提督「……別に俺スパッツ好きじゃないけど」

あきつ丸「え? でも提督殿は艦娘のつけているものに興味津々だと伺って」

提督「そうだった。忘れてたけど俺、艦娘のつけてるものに興味津々だった」

あきつ丸「いや、そもそも何でこの流れで陽炎殿だと思うのでありますか? 女同士なのに」

提督「……。完全にそのとおりだわ。さっき似たような流れがあったから、それが普通だと思ってた」

提督「え、えー。まじか」

陽炎「あーあ、こりゃ責任取らないといけないわね。なにせさっき悪いやつじゃないって言ってたし」

提督「いや、でも、俺は」

あきつ丸「提督殿、自分は、そ、その……」

提督「……」

あきつ丸「……」

提督「……」

あきつ丸「な、なーんちゃって! 陸軍式ジョーク! であります! ははは」

提督「……」

あきつ丸「はは」

提督「……」

あきつ丸「あ、あの何かしゃべってほしいのであります……」

提督「え、えーっと」

あきつ丸「……」ドキドキ

提督「ほ、保留で」

あきつ丸「は?」

陽炎「はあああ!?」

あきつ丸「ど、どういうことでありますか?」

陽炎「ひっどー。せっかく女の子が勇気を出して告白したのに。答えがそれって」

大淀「さいてーだ! さいてーとくだ!」

提督(なんで俺こんなに責められてるんだろう……)

提督「その、ちゃんとした答えを出したいのは山々ですが、今日はいろいろなことがありましていまだちょっと混乱してて」

あきつ丸「……?」

提督「その、自分が嬉しがってるのかうんざりしてるのか。それすらよくわかってない状態でありまして」

提督「こんな状態で答えを出すのはフェアじゃないし、何より相手に対して失礼だ。と思いまして」

提督「……」

提督「だから、その、少し時間をくださいということで」

陽炎「うわー」

大淀「ないわー」

提督「ごめんなさい」

陽炎「で? いつ答え出すの? 今?」

提督「できればもうちょっと時間をください」

あきつ丸「一週間くらいでありますか? まあ気長に待っているのであります」

提督(こいつはこいつで何で急に余裕綽々だよ)

あきつ丸「まあ、それはそれとして、そろそろでありますか?」

提督「……?」

陽炎「そうね。時間的にはちょうどいいんじゃない?」

大淀「はい、もういい頃合ですね」

提督「……は? それってどういう?」

大淀「では……」スッ

パーン

「「「提督! いつもお疲れ様ー!」」」

提督「……」

提督「は?」

提督「え? え? 何だこれ。どういうことだ大淀。場合によってはしばくぞ」

大淀「提督。今日、何かおかしいなと思いませんでしたか?」

提督「思ったよ。おかしいことだらけだよ」

大淀「例えば、最初のお客さんが大鳳さん、次は蒼龍さん、伊58さん。この順番に何か意味があるなとは思いませんでしたか?」

提督「秋津州さん、大和さん、飢狼さん、葛城さん、陽炎さん……。まさか! 三の倍数の艦娘は!」

大淀「そう! 何の意味もありません!」

提督「じゃあ何で言ったの!?」

大淀「つまりは今日のことはすべて、仕込だったというわけですよ。この提督お疲れサプライズパーティのための」

提督「サプライズパーティ?」

大淀「はい。だから今日は提督を部屋の外に出すわけにはいかなかったんですよ」

提督「じゃあまさか休む暇なく艦娘がきたのも!」

大淀「ええ、提督を外に出さぬよう予め用意しておきました」

提督「大淀が外に出ようとしなかったのも!」

大淀「はい。タイミングを外に知らせるためにここにいる必要があったのです」

提督「じゃお客さんが元帥の部下ってのも嘘なんだな!?」

大淀「いや、そこはリアルですが」

提督「なにしてくれてんの!?」

大淀「大丈夫です。今日呼んだ方はすべて私と青葉さんの友人ですし」

提督「そ、それならまあよかったのか?」

大鳳「でもあんな質問されるなんて聞いてませんでしたけどね」

提督「うわっ! か、帰ったのでは?」

大鳳「帰りませんよ! パーティーのために来たんですから!」

提督「……ほかの方も?」

蒼龍「もちろん! いますよ!」

提督「そっか。ほんとに、全部、仕込みだったのか。よかった」

大和「ふふ、安心しました?」

提督「大和さん。ええ、本当に。しかし、失礼なことをしたのには違いありません。お詫びとして今日は存分に飲み食いしていってください」

大和「え? いいんですか?」

提督「え? まあ、はい」

大和「ほんとに? ほんとにですか? やったー! うふふ、ありがとうございます!」ペコリ

提督(たかがパーティの料理くらいで……。変な人だな)

二番目に来たの飛龍じゃない?

青葉「司令官! どうでしたか? 青葉のサプライズ!」

提督「青葉か。いや、忘れてたよ。お前らは基本ポンコツだけど、こんなくだらないことには懸命に取り組むやつらだったな」

青葉「む、褒めてます? それ」

提督「いや、すごいうれしいよ。ありがとな」

青葉「ま、司令官にはいつもご迷惑をお掛けしてますから! その恩返しですよ!」

提督「自覚はあったのか……。あ、そうそう青葉、一つ聞いていいか?」

青葉「……? なんですか?」

提督「このパーティーの費用と集めた人の交通費。どこから工面するんだ?」

青葉「は?」

提督「……え?」

終わり

エピローグ

提督「ここにいたのか。あきつ丸」

あきつ丸「提督殿。お早い起床ですね」

提督「なぜか目が冴えちまってな。酒を飲んだ次の日はいつもこうだ」

あきつ丸「では自分が子守唄でも歌いますか? 今なら膝枕もオプションで付けますが」

提督「勘弁してくれ」

あきつ丸「冗談であります」

提督「あきつ丸は? 眠れなかったのか?」

あきつ丸「自分も提督殿と同じであります」

提督「……?」

あきつ丸「お酒を飲んだ日はいつも、眠りが浅くなるのであります」

提督「あー、たまに寝言いってるもんな」

あきつ丸「え? な、何と……?」

提督「『提督殿、大好きであります』」

あきつ丸「~~っ!! 不覚でありますっ! もう死ぬしかないであります!」

提督「い、いや、冗談だ。陸軍式ジョークだ」

あきつ丸「提督殿は意地悪であります」

提督「はっはっは」

あきつ丸「……はぁ、もう」

提督「……」

あきつ丸「提督殿パーティは楽しかったでありますか?」

提督「ああ。楽しかったよ。なんだいきなり」

あきつ丸「いえ、昨日はその、サプライズのためとはいえ、上官に対して失礼な言動をしてしまったのであります」

提督「……。うわ、そういやそうだわ。上官だったわ俺。あいつらがあまりにアレだから麻痺してた」

あきつ丸「申し訳ないのであります。自分最近の艦隊の雰囲気に呑まれているであります。反省」

提督「別にいいよ。それだけあきつ丸が艦隊に馴染んできたってことだしな」

あきつ丸「……」

提督「何だ? まだ何かあるのか?」

あきつ丸「提督殿は、その、嫌ではないのでありますか?」

提督「何が?」

あきつ丸「昨日のフォローのことであります。身内がへまをして、それでそのためのフォローに時間をとられて。それでも自分の評価が上がるわけではない。そんなことをしていて嫌にはならないのでありますか?」

提督「嫌なこと聞くなあ」

あきつ丸「……」

提督「たしかにまあ、嫌になるときはあるな。この野郎と思うときもある」

あきつ丸「やはり……」

提督「でもその分、報われているよ。俺は」

あきつ丸「そうでありますか?」

提督「ああ。みんながお疲れ様って言ってくれて、いつもありがとうって言ってくれて。ああしてサプライズパーティまでしてくれる」

提督「普段はポンコツで手を焼かせるくせに、ああいうことは全力でやるんだ。あいつら」

提督「……だから報われている」

提督「あきつ丸が思っている以上に、俺は、報われている」

あきつ丸「……」

提督「納得したか?」

あきつ丸「ふむ。彼氏のたまに見せる優しさに騙されて、なかなか別れを切り出せない都合のいい女みたいでありますな」

提督「ほっとけ」

提督「お、そろそろ明るくなってきたな」

あきつ丸「そうでありますな。そろそろみんなを起こさなければ。であります」

提督「……なあ、あきつ丸」

あきつ丸「なんでありますか?」

提督「俺は、出世コースから外れている。出世はたぶんもう望めない。こんな僻地に飛ばされているしな」

あきつ丸「知っているのであります」

提督「おまけに部下の管理も満足に出来ない。勝手に色々やりやがるからなあ、あいつら」

あきつ丸「知っているでのあります」

提督「あと優柔不断で、よく雰囲気に流される。昨日もなかなか格好悪いところみせちまった」

あきつ丸「それも、知っているのであります」

提督「だから」

あきつ丸「だから?」

提督「今日は仕事をほっぽってこのままデートに行くというのはどうだろう?」

あきつ丸「お仕事は、いいのでありますか?」

提督「昨日は散々苦労させられたんだ。今日くらい優秀な秘書艦様に任せるよ」

あきつ丸「元帥殿の部下もまだいるというのに」

提督「そこは後で何とかするさ。何を隠そう。俺はフォローが得意なんだ」

あきつ丸「ふむ。それは、知らなかったでありますな」クス

「だからこのままデートに行こう」

もう一度誘った。口説き文句はこれしか知らない。

彼女はしょうがないなあという顔をして笑って。つられて俺も笑った。

それから彼女の手を引いて、堂々と正門から外に出た。

もしかしたら誰かに見られていたかもしれない。でも、なぜだかそれでもいいと思った。

たった二人の、一日限りの、逃避行。きっとみんなは許してくれると思ったから。

少し歩いて、鎮守府のほうを振り返って、二人で顔を見合わせて、もう一度笑った。

とある潜水艦の占いは当たっていて、本日の天気は晴朗なれども波高し。

つまりは、絶好のデート日和である。

(……)

大淀「ふー、会費を集めて、みんなからカンパしてもらって、それでもまだ赤字ですか。というか大和さんどんだけ食べてるんですか。ほんとに」

バーン

鬼怒「た、大変だよ! 大淀さん!」

大淀「どうしたんですか? そんなに慌てて」

鬼怒「ほらこれ! 元帥からお手紙が来たの!」

大淀「へ?」

鬼怒「ちょっと見てよ!」ペラ

大淀「……ふむふむ」

鬼怒「もしかしたら、この前のパナイ質問のこと? さすがに怒らせちゃったかなあ」

大淀「んー、どうもそんなことではないようですよ」

鬼怒「へ? そうなの?」

大淀「うだうだ書いてますけど、要するにこっちの提督もあっちに挨拶に来いってことですね。もちろん艦娘を連れて」

鬼怒「つまり?」

大淀「やられたらやり返す、と」

鬼怒「あー」

とある鎮守府は僻地にありまして、お偉いさんの目に付かないのをいいことに、いつも誰かが悪巧み。

誰かが何かをやらかして、提督に大目玉をくらって、挙句の果てには外を走らされるのです。

今日も海はひたすら波高く、陸ではもっぱら重巡洋艦が走らされ、空はただただ一人の軽空母のものでした。

いつも通りの光景ですが、いつもと少しだけ違うのは、提督と一人の艦娘がいないこと。

「でもさ、黙ってやり返される私たちじゃないよね?」

「当然です。さて、提督のいないうちに作戦会議といきましょう」

「よしきたっ! 今回こそは鬼怒もやるんだから!」

いつも誰かが悪巧み。はてさて今回は一体どうなることやら。

これはとある鎮守府のポンコツな艦娘たちと、そのフォローをする提督のお話です。

>>279

ほんまや二番目にきたの飛龍でしたごめんなさい

更新遅れて申し訳ない魔人退治してました

安価とってくれたみんなありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年12月14日 (木) 16:19:20   ID: 1mlzusyW

提督のツッコミ力レベリングかな?(すっとぼけ)

2 :  SS好きの774さん   2017年12月15日 (金) 16:20:21   ID: hEhhAYOF

なかなか好き
割りと外道なやつばっかりで草

3 :  SS好きの774さん   2018年06月20日 (水) 17:29:14   ID: OcLvOEd9

スパッツとスポーツの違いは何ですか?

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