翼　「だってぇ……も～！小鳥さんからも何か言ってくださいよー」ﾌﾟｸｰ

音無小鳥（以下、小鳥）　ｶﾀｶﾀ

翼　「……小鳥さん？」

小鳥　「あっ、ゴメンね。何かしら？」

翼　「小鳥さん、怖い顔して何やってるんですか～？」

小鳥　「……データが消えちゃったから、作り直してるのよ」ｶﾞｯｸﾘ

P　「普段から保存してないからじゃないですか」

小鳥　「あぅ……」ｶﾀｶﾀ

翼　「うわぁ、大変そ～……プロデューサーさん、手伝ってあげないんですか？」

P　「元々の書類内容が分からないからなぁ……音無さんが作った奴だし」

翼　「へぇ、そうなんだ～……」

翼　「あっ、そうだ！そういう事なら、わたし達のレッスン見に来てくださいよ～！」

P　「そういう訳にもいかないって、音無さんのフォローしなきゃいけないし」

翼　「……ダメぇ？」

Ｐ　「ダメ」ﾋﾟｼｬﾘ

翼　「あぅ……もー、イジワルぅ」ﾌﾟｸｰ

Ｐ　「まったく……分かったよ、レッスン頑張ったらご褒美やるから」

翼　「えっ、ホントっ！？」ｷﾗｷﾗ

Ｐ　「ああ、俺に出来る範囲でなら叶えてやるぞ」

翼　「やった～！そういう事なら、張り切っちゃおーっと！」ｸﾞｯ

Ｐ　「良いぞ、その意気だ！」

翼　「それじゃ、行ってきま～す！」ﾄｺﾄｺ

小鳥　「……いってらっしゃい」ｶﾀｶﾀ

―――――　

翼　「未来、静香ちゃんおはよ～！」

春日未来（以下、未来）　「あっ、翼！おはよ～！」

最上静香（以下、静香）　「もう、遅いわよ翼！」

翼　「え～？でも、まだレッスンの時間じゃないでしょ？」

静香　「そ、それは……そうだけど」

トレーナー　「伊吹さん、おはよう」

翼　「おはよ～ございま～す！」

トレーナー　「それじゃ皆揃った事だし、発声練習から始めるわねー」

翼　「…………」

―――――　

トレーナー　「それじゃ、いったん休憩ねー」

翼　「うー……つまんない～！」

静香　「もう翼、文句言わないの！」

翼　「だってぇ、発声練習ばっかりなんだもん！」

翼　「わたし、もっと歌いたいよ～！」

静香　「仕方ないでしょ……こういう事の積み重ねが大事なのよ？」

翼　「むぅ、そう言われてもー……ねぇ、未来はどう思う～？」ﾁﾗｯ

未来　「…………」ｼﾞｰｯ

翼　「未来、なんでスマホと睨めっこしてるの？」ｽﾞｲ

未来　「あっ、見ないでよ翼！」ﾜﾀﾜﾀ

翼　「残念、もう見ちゃったもんね～……」ﾁﾗｯ

翼　「あれ？これって、プロデューサーさん？カーワイー！」

静香　「プロデューサーが机で居眠りしてる……写真？」ｼﾞｰｯ

翼　「良いな～！いつ撮ったの？」

未来　「こ、この前たまたま……えへへ」

静香　ｼﾞｰｯ

翼　「そういえば、この前抱き枕にして貰ったんでしょ？」

翼　「ねぇねぇ、どんな感じだった？」

未来　「ど、どんな感じって……その」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

未来　「優しくぎゅってしてくれて……頭も撫でてくれて」

翼　「ふむふむ……」ｼﾝｹﾝ

未来　「それでそれで！私の事妹みたいーって……！でへへ～♪」ﾃﾚﾃﾚ

翼　「うわぁ、良いなぁ～……」

翼　「……そうだ！レッスン頑張ったご褒美に、わたしも抱き枕にしてもらおーっと！」

静香　「ええっ！？だ、ダメよ翼！そういう事、むやみやたらに……」

翼　「もう決めちゃったもんね～♪」ﾙﾝﾙﾝ

静香　「そ、そんな簡単に……！」

トレーナー　「みんなー？そろそろレッスン再開するわよー？」

翼　「はーい！それじゃ、抱き枕目指して頑張りまーす！」

トレーナー　「……！？」

―――――　

小鳥　「うう、ようやく終わった……」

P　「お疲れ様でした、それじゃ次の書類お願いしますね」

小鳥　「プロデューサーさんが冷たい……ちょっとは労わってくださいよぅ」

P　「だから、データをこまめに保存する習慣をつけてくださいよ。いい加減リカバリー効かなくなりますよ？」

小鳥　「うう、正論だから何も言えない……」ﾋﾟﾖﾋﾟﾖ

P　「音無さんがやる分の書類は大体こっちで終わらせておいたので、後はお願いしますね」

小鳥　「はい、了解です……ふぅ」

P　「……とりあえず休憩します？これ、お茶です」

小鳥　「そうさせてください……」ｺﾞｸﾘ

小鳥　「生き返る……数少ない癒しだわ」ﾌｩ

P　「癒しって、大げさな……」

小鳥　「プロデューサーさんは良いですよねー……女の子と寝られて」

小鳥　「私だって、女の子を抱きしめて活力を貰いたいのに……」

P　「……言い方に悪意を感じるんですけど」

小鳥　「事実じゃないですかー……どうせ、次は翼ちゃんの事も抱き枕にするんでしょ！」

P　「いや、そんな事は……」ﾋﾟﾀﾘ

小鳥　「あー、どこかに私を抱きしめて癒してくれる王子様とかいないかしらー……」ﾁﾗｯ

P　「…………」

小鳥　「……プロデューサーさん？」

P　（そういえば。俺ひょっとして――）

P　（――翼に抱きつかれる事はあっても、抱きついた事ないんじゃないか？）

―――――　

翼　「でも、抱き枕になるってどうすれば良いんだろ……」ﾄｺﾄｺ

翼　「誰かに聞いてみよっかな～」

ｶﾞﾁｬﾘ

星井美希（以下、美希）　「むにゃ……えへ」ﾑﾆｬﾑﾆｬ

翼　「美希先輩……そうだ！」

美希　「もぅはにぃったら……もっとぎゅってしてくれても良いんだよ？」ﾆﾍﾗ

翼　「美希先輩～！起きてください～！」ﾕｻﾕｻ

美希　「んむぅ……もー、何？ミキ、ハニーとイチャついてたかったのにぃ」

翼　「美希先輩、お願いがあるんです！」

美希　「翼？なあに？」

翼　「プロデューサーさんの抱き枕になるコツ、教えて欲しいんです！」

美希　「そんなの、ミキが教えて欲しいの」ｷｯﾊﾟﾘ

美希　「ミキだって、ハニーの抱き枕になりたいのに……」ｼｭﾝ

翼　「でも、美希先輩。さっき、夢の中で抱き枕になってましたよ？」

美希　「ふふん。イメージトレーニングはバッチリ、なの！」ｸﾞｯ

翼　「抱き枕になるイメージ……どういう感じなんですか？」

美希　「んー、そんなに深く考える必要ないって思うよ？」

美希　「例えば……そう、アイドルと一緒なの！」

翼　「アイドルと抱き枕が一緒？美希先輩、どういう事ですか～？」

美希　「んーとね……アイドルだって、イメージに合った売り出し方があるでしょ？」

翼　「イメージ……」

美希　「そうなの！自分の長所を、しっかりとジカクするの！例えば――ココ！」ﾋﾞｼｯ

翼　「胸、ですか？」ｷｮﾄﾝ

美希　「そうなの！抱き枕っていうからには、きっと柔らかい方がいいでしょ？」

美希　「だから、こういう所も大事だって思うな！」

翼　「胸……そういえば、プロデューサーさんも見てたような」

美希　「ハニーはエッチだから……きっと強い武器になるはず、なの！」ｸﾞｯ

翼　「なるほど！流石美希先輩ですね！」ｷﾗｷﾗ


如月千早（以下、千早）　「そうね、心強い武器になると思うわ」ﾆｺﾘ


翼　「あっ、千早さん！おはよ～ございま～す！」

千早　「美希、伊吹さん。おはよう」

美希　「……千早さん、何時からいたの？」ﾀﾞﾗﾀﾞﾗ

千早　「ずっと居たわよ？プロデューサーの机を借りて、ちょっと宿題を片付けてたの」

美希　「そ、そうなんだ……」

千早　「…………」

美希　「……ご、ゴメンなさいなの」ﾍﾟｺﾘ

千早　「？私、別に怒ってないわよ？」

美希　「そ、そうなの？」

千早　「ええ、武器になるのは確かだし……くっ」

美希　「や、やっぱり怒ってるんじゃ」

千早　「自分の不甲斐なさに呆れてるだけよ……」

翼　「千早さんは、何か思いつく私の長所ありませんか～？」

千早　「思いつく長所？そうね……」

千早　「……それなら、そうね。私、一つ思いついたことがあるわ」

翼　「どんなのですか？」

千早　「伊吹さん、とっても甘え上手でしょう？それが伊吹さんの長所なんじゃないかしら」

翼　「そんなの、別に大した事じゃないと思うんですけど……」ﾓﾔﾓﾔ

千早　「そう？でも、私にはとてもじゃないけど出来ないから」

千早　「伊吹さんの素直に甘えられる所、私は凄いと思う」

翼　「甘える……」

千早　「せっかく抱き枕になるなら、いつも以上に甘えてみたら良いんじゃないかしら」

千早　「……ごめんなさい、アドバイスが下手で」

翼　「全然そんな事ないですよ～！ありがとうございます、千早さん！」

美希　「千早さんは凄いの……ミキ、そんなの思いつかなかったのに」

千早　「美希と伊吹さんは考え方が似てるのよ。だから、そういう所を見落としていたんじゃないかしら」

千早　「……さて、それじゃ私はそろそろ帰るわね。二人とも、お疲れ様」

美希　「あっ、千早さん！待って！」

千早　「美希？どうかした？」

美希　「あのね？用事がなかったらで良いんだけど……ケーキ屋さん、一緒に行かない？」

千早　「特に用事はないけれど……美希？私、本当に怒ってないから良いのよ？」

美希　「元から行きたかった所なの！千早さん、いっつも春香と帰っちゃうから……」

美希　「……ダメ？」

千早　「……ふふっ、良いわよ」ﾆｺｯ

美希　「良いの！？やったやったやったー！」ｸﾞｯ

美希　「それじゃ、早速行くの！ケーキ、スッゴク美味しいから期待しててね！」

千早　「そうなの？それは楽しみね」

美希　「えへん、ミキのお墨付きなの！それじゃ翼、留守番は任せたの！」

翼　「了解で～す、いってらっしゃ～い！」ﾌﾘﾌﾘ

翼　「……甘える、かぁ」ﾎﾞｿｯ

―――――　

翼　「…………」

ｶﾞﾁｬﾘ

P　「ただいまー……って、翼？一人なのか？」

翼　「あっ、プロデューサーさ～ん！おかえりなさ～い！」

翼　「も～、女の子を待たせるなんてダメですよ？」

P　「ご、ゴメン……あれ？なんか翼と約束してたっけ？」

翼　「もー、忘れちゃったんですかー？」

翼　「レッスン頑張ったらご褒美くれるって、言ってたじゃないですか～！」

P　「ん、それは確かに言ったけど……えっ、今からか？」

翼　「はい、今からです！」

P　「でも、今から遊びに行くとか、そんな時間ないと思うんだけど」

翼　「大丈夫で～す！ささ、こっち来てくださいよ！」

P　「お、おう……？」

―――――　

翼　「……えへ、オトナのコイビトっぽいですね！」

P　「なぁ、翼。未来から聞いたのか？」

翼　「はい！モッチロン！」

P　「……未来を抱き枕にしたいとか軽々しく言うんじゃなかった……」

翼　「まーまー！良いじゃないですかー！」ﾆｺﾆｺ

P　（……まぁ、翼が嬉しそうならオッケーなのか？）

翼　「…………」

P　「…………」

翼　「……プロデューサーさん、ぎゅってしてくれないんですか～？」

P　「そ、そう言われてもな」

翼　「…………」ｼｭﾝ

P　「翼？」

翼　「未来は、ぎゅってしてもらえたのに……」

P　「ぐうっ」ｸﾞｻﾘ

翼　「……わたしは、いっつも抱きついてばっかりで」ｳﾙｳﾙ

P　「つ、翼？」

翼　「たまには抱きしめてくれたって、良いじゃないですかぁ……！」ﾎﾟﾛﾎﾟﾛ

P　「…………」

ｷﾞｭｯ

翼　「プロデューサーさん……？」

P　「ゴメン、そこまで思い詰めてたとは思ってなかった……」

P　「……ホント、ゴメンな」ｷﾞｭｩｳｳ

翼　「…………」ｺﾞｼｺﾞｼ

P　「翼？」

翼　「えへへ……ちゃ～んと抱きしめてくれたから、オッケーでーす！」ﾆｺﾆｺ

P　「！？お、お前さっきまでの涙は」

翼　「えへへ、どうでした～？演技力レッスンの成果ですよ、成果！」ﾆｺﾆｺ

P　「ウソ泣き！？お、お前……俺、本気で心配したのに」ﾌﾙﾌﾙ

翼　「……お、怒っちゃいました？」ｵｽﾞｵｽﾞ

P　「……いいや、全然」

P　「確かに、抱きつかれてばっかりだったなーとは思ってたからさ」

翼　「よ、良かった～……」ﾎｯ

翼　「……でもですね？さっき、プロデューサーさん、私の事心配してくれたじゃないですか」

翼　「それは、とっても嬉しかったですよ！」ﾆｺｯ

P　「……そうか」

翼　「ほらほら！プロデューサーさん、ぎゅーってしてくれないと嫌ですよ？」ﾀﾞｷｯ

P　「分かった分かった……」ｷﾞｭｯ

翼　「たまには、こういうのも良いですね……♪」ﾙﾝﾙﾝ

P　「…………」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

P　（さっきは泣いてた翼に動転して考えてなかったけど……）

P　（やっぱり、翼の身体って……っ！）ｺﾞｸﾘ

翼　「……あれー？プロデューサーさん、顔赤くなってますよ？」ﾆﾔ

P　「あ、赤くなってなんかないぞ！」ｶｧｱ

翼　「ホントかなー……えいっ！」ﾑｷﾞｭｯ

P　「――ッ！」ﾄﾞｷﾄﾞｷ

翼　「あーっ、やっぱり顔赤くなってるー！」

P　「う、うぐぅ……」

翼　「えへへ、どーですか？」

P　「……つ、翼は柔らかいな」ｶﾁｺﾁ

翼　「もー、もっと素直に言ってくださいよ～！」ﾑﾆｯ

P　「…………」

P　（ゴメンな、静香……柔らかい方が良いかもしれない）ﾎﾞﾝﾔﾘ

翼　「でも……こうされてると何ていうか」

翼　「えへ、クセになっちゃいそうですよね……♪」ﾃﾚ

P　「……こういうの、誰彼構わずやっちゃダメだぞ？」

翼　「？プロデューサーさんにしかしないに決まってるじゃないですか～」

P　「……め、面と向かってそう言われると恥ずかしいな」ﾌﾟｲｯ

翼　「も～、こっち向いてくださいよ～！顔が見えないじゃないですか～！」

P　「……うぐ」ｼﾞｯ

翼　「…………♪」ｼﾞｰｯ

P　「……ほ、ほら！今日もレッスンで疲れたんだろ？」ｱﾜｱﾜ

P　「ぎゅってしておいてやるから、そろそろ寝たらどうだ？」

翼　「近くで寝顔見るまで寝ないもんねー♪」

P　「俺の寝顔なんて見て何が楽しいんだ……」

翼　「別に良いじゃないですか～ほらほら、プロデューサーさんの方こそ！」

P　「そ、そうは言っても……なぁ」ｳﾂﾗ

P　（マズイ、翼が温かいから眠気が余計に……）

翼　「良いんですよ？ゆーっくり寝てくださいね」ｷﾞｭｯ

P　「そ、そういう訳には……」ﾕﾗﾕﾗ

P　「…………」ｽｰ

翼　「……寝る時のプロデューサーさん、こんな表情してるんだ」ｼﾞｯ

翼　「なんか子供っぽいかも……！」ﾂﾝﾂﾝ

P　ﾑﾆｬﾑﾆｬ

翼　「……おやすみなさーい、プロデューサーさーん……♪」ﾆｺﾆｺ

―――――　

P　「おはようございます」

翼　「あっ、プロデューサーさ～ん！おはようございま～す！」ﾀﾞｷｯ

P　「だから、挨拶代わりに抱きつくなって……」

翼　「……ダメぇ？」ｼﾞｯ

P　「……はいはい、分かった！」ｷﾞｭｰｯ

翼　「～～♪」ﾙﾝﾙﾝ

P　「まったく甘えん坊なんだから……音無さんもおはようござ――」ﾁﾗｯ

小鳥　「…………」ｼﾞｰｯ

P　「……な、なんですか」

小鳥　「未成年アイドルといかがわしい事してるって律子さんに報告しなきゃ……」

P　「言い方に悪意しか感じないんですが！やめてくださいよ！」

小鳥　「だってだってぇ！なんで、仕事場でイチャイチャ見せつけられなきゃいけないんですかぁ！」

小鳥　「当てつけですか、当てつけなんですか！？」

P　「い、イチャイチャなんて……」

ｶﾞﾁｬﾘ

未来　「おはようございまーす！」

静香　「プロデューサー、なんで翼の事抱きしめてるんですか！？」

P　「あ、えっとこれはだな……」

翼　「～♪」ｷﾞｭｩｳ

未来　「翼ずるい！私も！」ﾀﾞｷｯ

P　「未来も便乗するな！翼もほら、離れて……」ｽｯ

翼　「嫌で～す！離さないもんね～♪」ｶﾞｼｯ

静香　「鼻の下伸ばさないでください、プロデューサー！」

翼　「静香ちゃんも羨ましいなら抱きつけばいいのにー」

静香　「わ、私は……その」ﾓｼﾞﾓｼﾞ

小鳥　「…………」

P　「……音無さん？」

小鳥　「も、もう社長に言いつけてやるんだからーっ！」ﾀﾞｯ

P　「あっ、ちょっと待ってください音無さん！」

静香　「ほら、翼も離れて！」

翼　「い～や！離さないもんね～！」ﾆｺﾆｺ


翼　「今日もいっぱい甘やかしてくださいね、プロデューサーさん♪」

　おしまい

未来、静香って来てるんだから翼で〆。ここまで読んでくださった方、ありがとうございました！

何故か異様に待ち望まれてたアイドルが居た気がしますが、それについては考え中です