知久「それはとっても嬉しいなって」 (77)

父の日

タツヤ「ママ〜朝!朝!」

詢子「はいは〜い、今起きますよぉ」

タツヤ「おはよ〜!」

詢子「おはよぉ、タツヤぁ」

タツヤ「ごはん、ごはん!」

詢子「もうそんな時間かぁ...どれ、まどかの奴、頑張ってるかねえ」



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リビング


まどか「パパ、起きてよパパ!」ユサユサ

知久「」

杏子「まて、無闇に揺らすんじゃねえ!こういう時は気道を確保してだな...」

マミ「聞こえますか?聞こえますか!?」バンバン

さやか「AED持って来たよ!」

ほむら「でかしたわ、さやか!早速繋げて...あれ、どうやってやるのかしら?」


詢子「どういうことだおい...」

————————————

時は一週間前に遡る...



知久「はぁ...」

詢子「どうしたのさ、溜め息なんてついちゃって」

知久「まどかってさ...まだ反抗期が来てないよね?」

詢子「そういえばそうだな...って、なんでまたそんなことを」

知久「さっきTV見てたら、ちょうど反抗期についての特集をやっててね。まどかにもいつかはくるのかなぁ、って」

詢子「ま、くるだろうね。でもいいんじゃない?そういうのも成長するためには必要なことでしょ」

知久「いや、それ自体は喜ばしいことなんだ。でも、娘に『おい、糞親父!あたしのパンツとてめえのパンツ一緒に洗うんじゃねえぞ、キメエから!』
...なんて言われると思うとね...」

詢子「考えすぎだって。そんなこと言う奴なんて数えるくらいだし」

知久「そうだといいんだけど...」

詢子「つーか、そのまどかはなにやってんのさ。電話にもでないし、もう門限も過ぎてるよ」

バタン

まどか「た、ただいまー!」ゼェゼェ

詢子「遅いぞ、まどか。連絡はちゃんといれろって言ってるだろ」

知久「どうしたんだい、まどか?」

まどか「ちょっと友達のところに行ってて!本当にごめんなさい!」

詢子「さては、男じゃねえだろうな〜?」

まどか「そ、そんなんじゃないって」

知久「まぁ、次からは気をつけようね」スッ

まどか「い、いいよ。荷物くらい自分で運ぶから!」

ドタタタ

詢子「あんなに速く階段を駆け上がって...元気だね、うちの子は」

知久「......」

詢子「どうしたのさ?」

知久「まどか、僕とはあまり目を合わせようとはしなかった...」

詢子「...はい?」

知久「ついにきたか、まどかの反抗期...!」

詢子「考えすぎだっての」

—————————
翌朝

まどか「おはよー、パパ、タツヤ」

ビクッ

知久「お、おはよう、まどか」

タツヤ「おはよー!」

まどか「どうしたの、パパ?」

知久「い、いや、なんでもないさ。ママを起こしてくれるかな?」

まどか「はーい」

知久(今朝はいつもと変わりない...やっぱり、僕の思い過ごしかな?)

まどか「あ、そうだ」

知久「?」

まどか「私の部屋、勝手に掃除しないでね?」

知久「!?」

知久「ど、どうしてだい?」

まどか「いいから!お願いね?」ニコッ

知久「あ、ああ...」

知久(まどかは、掃除しておくと、お礼を言ってくれるような娘だった...)

知久(それが今は、『勝手に部屋入ったら殺すよ?』的な笑顔を...やはり、きたみたいだね...反抗期が!)ガタガタ

—————————————————

まどか「おはよー、さやかちゃん」

さやか「おはよー、まどか!昨日は怒られなかったか〜?」

まどか「ちょっとだけね。ほむらちゃん達は?」

さやか「今日は日直だからって、先に行ったよ」

まどか「そっか。あ、さやかちゃん。今日の放課後...よろしくね」ニコッ

さやか「おう!このさやかちゃんにど〜んと任せときなさい!」

放課後

まどか「さやかちゃん、早くいこっ!」グイグイ

さやか「ままま、そう慌てなさんなって」

仁美「今日は一緒に帰らないのですか?」

さやか「ごめんね、仁美、ほむら。そうだ、よかったらあんたらもくる?あたしの家だけど」

まどか「えっ!?」

仁美「ごめんなさい、今日はお稽古がはいってて...」

まどか「」ホッ

ほむら「私は構わないわ」

さやか「おっ、助かるわ〜!よかったね、まどか。この万能美少女ほむらさんなら、なんでも...」

まどか「うぅ...」

ほむら「そ、そんなに私が嫌なの?」

まどか「ち、違うよ!その...恥ずかしくて...」

ほむら「...?」

——————————————
まどかの家

知久「今はまだ遠回しに言ってる感じだけど...そのうち、直接的になってくるんだろうなぁ...」ハァ

ピロン

知久「あ、メール。まどかからだ」

まどか【今日も友達と遊ぶので、遅くなるかもしれません。ごめんね、パパ】

知久「今日もか...いや、待てよ。もしもこの友達が、アレな人達だったら...」

******************

まどか「親父!金貸してくれや!」

知久「こ、今月分のお小遣いは渡したじゃないか...」

まどか「あぁ!?」

ガシャアアン

知久「ひっ!?す、すみません...」

まどか「けっ、最初っから素直にだしてりゃいいんだよ!」

「姉御〜早く行きましょうぜ〜!」

まどか「おう、今行く!じゃあな、晩飯はいらねえから!」

ブロロロロ

*****************

知久「...いや、さすがにないな。いや、でも...」ブツブツ

タツヤ「パパ、どうかしたの?」

さやかの家

ほむら「なるほど...父の日に備えて、料理の練習というわけね...それなら、さやかより巴さんの方がいいんじゃないかしら」

まどか「さやかちゃんは、私が下手だって知ってるからいいけど、マミさんや仁美ちゃん、ほむらちゃんみたいに何でもできそうな人達に下手だってバレるのが恥ずかしくて...」

ほむら「そんなことはないわ。私も、簡単なものしか作れないし」

まどか「簡単って、どんな?」

ほむら「そうね...もやし炒めくらいしか...」

さやか「ホントに簡単なものだな...」

まどか「凄い!そんなものまでできるんだね!」キラキラ

ほむら「えっ」


さやか「まぁ、まずはまどかがどのくらい成長したか見せてよ。昨日は、計画しただけだったからさ。
そうだな...これで炒飯でも作ってもらおうかな」つ炒飯の素

まどか「い、いきなりそんな高度な料理を?」

ほむら「!?」

さやか「大丈夫だって、この袋の裏に書いてある通りに作ればいいんだからさ」

まどか「...うん、私、頑張るね!」

台所

まどか「えーっと、これはこうして...」


リビング

ほむら「どういうことなの...?」

さやか「...あいつね、料理が下手って次元じゃないの。ある意味鬼才っていうくらい」

さやか「5年くらい前だったかな...なにかのキッカケで、あいつの料理食べることになったんだ。
その時、あいつは卵焼きを作ってくれたんだけどね...いやほんと、奇跡だったよ、あれは」

ほむら「どんな味だったの?」

さやか「いや、不味いワケじゃなかったんだよ...ただ」

ほむら「た、ただ?」

さやか「あん肝の味がした」

ほむら「...マジで?」

さやか「マジです。余計なもの使ってなかった筈なのに」

ほむら「で、でも、今は普通に作れるんじゃないかしら。ほら、お父さんは料理上手だし」

さやか「まあ確かに、ちょっと教えれば良くなると思うけど...」

まどか「おまたせ〜」

さやか「お、できたか。どれどれ...」


ゴゴゴゴゴ

何かドス黒いもの「」

さやほむ(...暗黒物質!?)

ほむら(え、ちょ、これ...ええええ!?)

さやか(なんてこった...レベルアップしてやがる...!)

まどか「ちょっと焦げちゃったけど、いつもよりは綺麗にできたんだ♪」

ほむら(綺麗?どこが?ひょっとして、全体的に丸く収まってることを言ってるの?)

さやか(ヤバイよ。現実で暗黒物質作れる人、初めて見ちゃったよ)

まどか「さあ、召し上がれ!」ニコッ

さやか(くっ...その笑顔に裏打ちされる、悪意の欠片もない純粋さ...それ故に恐ろしい!)

ほむら「...じゃ、じゃあ私から...」

さやか(ほむら!?)

ほむら(大丈夫...鮟鱇然り納豆然り、見た目がグロイものほど美味いって、どこかで聞いたことがあるわ。
ワルプルギスの夜を乗り越えた私に、怖い物なんてない!)

ほむら「いただきます!」

ほむら「」バリッ バリッ

さやか(食べる音が、炒飯のものじゃないんだけど...)

まどか「ど、どうかな...?」

ほむら「意外にいけるわよ」バリッ バリッ

さやか「!?」

まどか「ほ、本当!?」

ほむら「ええ。炒飯に焼肉のおこげをふりかけた感じよ」バリッ バリッ

さやか「へ、へ〜え、ならあたしも少し...」

ほむら「......!」ガババッ

さやか「あ、ちょ、ちょっと!あたしの分まで...」

ほむら「ごめんなさい。意外に病みつきになるわね、これ」ケプッ

さやか「ちょっと食べてみたい気もしたかも...」

まどか「なら私がまた作って「私はケーキが食べたくなってきたわ」

さやか「えっ?」

ほむら「まどかが作ったケーキを食べたくなってきたのよ」

まどか「む、無理だよ、ケーキなんて」

ほむら「いけるって!まどか、あなたは自信を持ちなさい!」

まどか「...う、うん。頑張ってみるね!」

ほむら「でも、肝心の材料が無いわね。買いに行きましょう、さやか」

さやか「え、いきなり言われても...」

ほむら「いいから早く!まどか、料理を作るのは、私たちが戻ってきてからにしましょう」

まどか「う、うん」

さやか「あだだ!引っ張らなくてもいいって!」

公衆トイレ

ほむら「うぅ...」ピー ゴロゴロ

扉│さやか「...別に、無理して食べなくてよかったんだよ?」

ほむら「仕方ないじゃない!あんな無垢な笑顔を見せられたら、私は...私は...!」グスッ

さやか「だからって、なにも全部食べなくても...少しくらい、あたしが引き受けたのに」

ほむら「何も分かっていないわね...魔法少女の私だからこの程度で済んでいるのよ」

さやか「えっ」

ほむら「その証拠を見せてあげる...来なさい、インキュベーター!」パチン

QB「やあ。どうしたんだい?トイレなんかに呼び出して」

ほむら「何も言わずに、これを食べなさい」つ暗黒物質の一部

QB「...なんだい、これは?君の新しい武器かい?」

ほむら「炒飯よ」

QB「それはおかしいね。マミが作ってくれる炒飯は、こんな黒一色じゃ」

ほむら「いいから食べなさい。眉間に風穴空けられたくなかったらね」チャキッ

QB「わ、わかったよ...」バリッ バリッ

ほむら「どうかしら?」

QB「ふむ...形は歪だけど、個性的な味だね」バリッ バリッ

ほむら「味?あなたに味覚はない筈よ」

QB「えっ、僕は今、『味』と言ったのかい?」

ほむら「ええ。確かに『味』と言ったわ」

QB「おかしいな、個体にエラーがでたのか...な...」

ドクン

QB「あ...あれ...お腹のあたりがふわふわして...」

ドクンドクン

QB「あ...あぁ...!」

ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン

QB「———あ」

QB「グギャアアアアアァァ—————!!!!」ゴロゴロ

さやか「キュ、キュウべぇが扉の隙間から転がり出てきた!?」

QB「ウボロァアァァアアア——あ...あぁ...」ガクッ

さやか「な、何よこれ...どうなってんのよ...」ガタガタ

ガチャ

ほむら「これが、まどかの暗黒炒飯の威力よ。時間がたって、冷めてたから威力が上がったのね。
もしこれが魔法少女やインキュベーターでなかったなら...」

さやか「」ゾクッ

さやか「じゃ、じゃあ、知久さんに食べさせないようにまどかに言わないと...」

ほむら「あの娘の好意を無駄にするつもり?」

さやか「それで知久さんを殺しちゃったら、元も子もないでしょ!?」

ほむら「そのために、練習するんでしょうが!あと6日以内に、まどかの腕を上達させなさい!」

さやか「させなさいって...あんたは?」

ほむら「できる限り協力はするけど、もやし炒めの私は戦力にならなさそうだし、それに...うっ!」

バタン ジョバァ

さやか「...なんか、いろいろとごめん」

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さやかの家

さやか「おまたせ、まどか」

まどか「おかえり。あれ、ほむらちゃんは?」

さやか「急用が入っちゃったんだってさ。だから、ケーキはまた今度だって」

まどか「そっか...残念だったね。三人でケーキ、作ってみたかったのに」

さやか「まあ、今回は仕方ないよ。よっし!それじゃあ、練習再開といきますか!」

—————————————————

まどかの家

知久「今日は、ママも遅くなるってさ」

タツヤ「むう」プクッ

知久「まどかも遅くなるっていうし...これから、食卓を4人で囲むことも少なくなるんだろうなぁ」

タツヤ「ぼく、みんないっしょがいい」

知久「僕もさ。でもね、大人になったら、嫌でも離れて暮らさなきゃいけないんだ」

知久(そうだ...反抗期とか関係なく、始めはまどかが、次にタツヤが出ていってしまうのは、仕方ないことなんだよね...)

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さやかの家

まどか「つ、疲れた...」

さやか「さて、出来たのはいいですが...」

何か黒いもの「」モワァン

さやか(問題は、だれが毒見するかってことなんだよなぁ...さっきよりはマシになったみたいだけど...一口だけなら、大丈夫かな。
ほむらも、暖かい内ならギリギリセーフって言ってたし...ここは、覚悟を決めるしかない!)

ピンポーン

杏子「さやか—、飯食わせてくれ—!」

さやか「珍しいね、あんたがウチの方にくるなんて」

杏子「ついさっき魔女を倒したばかりだから、そのついでさ。マミの家より近かったからな。で、なにしてたんだ?」

まどか「料理の練習だよ。今日は炒飯なんだ」

杏子「炒飯?この黒いやつが?ま、ちょうどいいや」

さやか「あっ」

さやか(ヤバイ!口の悪い杏子にズバズバ言われたりしたら、まどかは立ち直れなくなるかもしれない!それに、いくら杏子といえども、あれを食べたら...)

杏子「ん...変わった味だな、これ」モッシャ モッシャ

まどか「そ...そうかな...?」

杏子「まあ、大丈夫だよ。全然食べれるし、炒飯じゃないって思えば問題ない」モッシャ モッシャ

まどか「やっぱり、下手クソなんだね、私...」

杏子「いいんじゃねーの?最初は、下手クソなくらいでちょうどいいだろ。後は上がっていくだけなんだし」

まどか「そうだよね...よーし、なんだかやる気出てきたよ!ありがとう、杏子ちゃん!」

さやか「...あれ」

さやか(思ったより好感触...いや、それよりも)

さやか「ちょっときて!」グイッ

杏子「な、なんだよいきなり」

さやか「あんた、なんともないの?」コソコソ

杏子「なにが?」

さやか「なにがって...その、お腹とか痛くなってない?」

杏子「?なんともねえけど」

さやか(救世主キタ———!!)

こうして、さやかと、杏子の誘いにより途中参戦したマミは料理指導。杏子は味見担当。ほむらはリタイアという役割分担ができた。

キリがいいので、今日はここまでで。続きは明日書きます

再開します

————————————
父の日前日

まどか「ねえ、パパ。明日は何の日か知ってる?」

知久「明日?...えっと、父の日...だったかな」

まどか「そうだよ。だからね、明日はパパにはゆっくりしてもらいたいの。家事は全部私がやるから」

知久「えっ、悪いよそんなの。それにまどかは料理が苦手だったんじゃ...」

詢子「いいじゃないか、やらせてあげなよ。こういう時はね、素直に甘えるもんだ」

まどか「そうだよ。それに、この日のために色々と頑張ってきたんだから」

知久「じゃあ、最近帰りが遅かったのは...」

詢子「明日のために準備してたんだよ。な、まどか」

まどか「うん!部屋に入らないでって言ったのも、ギリギリまでパパに知られたくなかったからなんだ。...心配かけてごめんね、パパ」

知久(反抗期とか、グレ始めたとか思ってた自分が恥ずかしいや...)

知久「いいや、謝る必要はないよ。それじゃあ、明日は頼んだよ、まどか」

まどか「任せて!特訓の成果見せてあげるから!」

詢子「でも、あたしも何もやらなくていいのかい?」

まどか「いいのいいの。明日は私一人でやってみたいんだ」

詢子「そうかい。まあ、疲れたらあたしが代わってやるからさ、あんまり無茶はするなよ?」

まどか「ありがと、ママ」

タツヤ「ねーちゃ、ぼくは?」

まどか「タツヤは...朝ご飯の時にママとパパを起こす係をやってもらおうかな」

タツヤ「あい!」

———————————————
ほむホーム



ほむら「よく集まってくれたわね。礼を言うわ」

さやか「よく言うよ...寝てるところを叩き起こしたくせして」

杏子「まだいいじゃねえか...あたしなんか拉致されたんだぞ」

マミ「それで、用件は?」

ほむら「明日のまどかのことよ」

3人(...やっぱりか)

ほむら「明日、まどかが失敗しそうになった時のために、彼女のプランを確認しましょうか」

さやか「プラン?」

ほむら「この、まどかが明日の計画を記したノートを拝借してきたわ」スッ

マミ「いつの間に...」

ほむら「明日のコンセプトは、ズバリ『お父さん、今日は父の日だから、ゆっくりしてね♡』だそうよ」

杏子「つってもさあ、今さらあたし達に出来ることなんてないだろ?」

ほむら「いいえ。やるべきことはたくさんあるわ!例えば、知久さんは、毎朝5時に起きて野菜の世話をしている。
でも、まどかが起きているのは6時30分。だから、その目覚まし係として...」

さやか「ちょっと待て。知久さんが起きてる時間は、ノートに書いてあったんだろうからまだわかる。
でも、なんであんたがまどかのいつも起きる時間を知ってるのよ」

ほむら「...色々あったのよ。もし、あの時私が起きれていれば、まどかは...」グスッ

マミ「暁美さん...事情は聞かないけれど、きっとそれはあなたのせいじゃないわ...だからそんなに背負い込まないで...」ウルウル

杏子「何を我慢している!あんたは今、泣いていい!泣いていいんだ...!」

ほむら「巴さん...杏子...うう...まどかあああああぁぁぁ!!」ポロポロ





さやか「で、本当は?」

ほむら「...ストーカーとかじゃないんです。ただ、明日のために張り切りすぎて...」

さやか「...まあ、限度は考えような」

ほむら「...はい」

ほむら「それでは、役割分担をしましょうか。朝起こす係は、私がやるわ」

さやか「だったら、あたしは野菜を世話するのを忘れたら、それを促す係で」

マミ「じゃあ、私は掃除と洗濯をするのを忘れてたら、それを促す係ね」

杏子「なあ、さっきから促す促すって...直接言えばいいんじゃねえのか?」

ほむら「駄目よ。あくまでも、『まどかが自分で考え、行動した』という過程でないと意味がない。
だから、私たちはまどかに気付かれない様にフォローに徹するのよ」

杏子「無駄足になると思うんだけどなあ」

ほむら「無駄足なら、全然構わないわ。それだけまどかがしっかりしていたということだから」

杏子「そもそも、促すくらいならほむら一人でも...」

さやか「あたしはむしろやりたいかな。事の発端はあたしだし」

マミ「私も。弟子の特訓の成果はこの目でみたいわ」

杏子「わかったよ...やればいいんだろ、やれば。飯作るのを忘れてたら、それを促す係でいいよ」

ほむら「それじゃあ、寝過ごしたりしないように、今夜は皆でオールナイトしましょうか」

————————————
まどかの部屋


まどか(明日は、さやかちゃん達との特訓の成果を見せてあげるんだから!)

まどか「そのためにも、今日は早く寝なきゃ。目覚ましをセットして...これでよし」

まどか(そういえば、前に明日の予定を書いたノート...どこにやったの...か...な...)

スー スー

翌朝

ジリリリ  バン

まどか「むにゃ...5時ちょうど...よし、起きれた」

まどか「よ〜し、パパ孝行、がんばるぞっ!」

まどか「パパ達を起こさないように、静かにやらないと...」コソコソ



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ほむホーム

ほむら「楽しいね鹿目さん...えへへ」zzz

まどか「まずは、野菜に水やりとお手入れ!」

まどか「あげすぎないように、気をつけないと...」

まどか「やっぱり、雑草抜く方が先かな」

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
ほむホーム

さやか「恭介...なんで魔法少女の恰好を...むにゃ...」zzz

マミ「ティロティロティロティロティロティロ...ティロ・フィナーレ(さよならよ)!」ビシッ zzz

杏子「マミ...その掛け声と決めポーズはだせえぞ...あと、訳が無茶ありすぎだ...」zzz

まどか「ふうっ、雑草は抜き終ったかな」

知久「おはよう、まどか。頑張っているね」

まどか「パパっ!?まだ寝てていいのに」

知久「いや、いつもこの時間に起きてるから、自然に目が覚めちゃうんだよ」

まどか「もう...なら、テレビでも見て、ゆっくりしてて。今日は私一人でやるんだから」

知久「わかった。でも、あんまり無茶はしないでね」

まどか「はーい」

———————————————

タタタタタ

ほむら「まさか、全員寝過ごすことになるとはね...」ハァ ハァ

マミ「やっぱり、一日中起きてるなんて無理だったのよ...」

杏子「さやかが眠気覚ましにビデオ見ようとか言うからだろ!?なんで恋愛ものを選んだんだよ!?」

さやか「トドメはあんたの桃鉄でしょうが!」

ほむら「どうするのよ、これで手遅れになったら!」

マミ「大丈夫よ...きっと」

さやか「あたしたちの指導力を舐めないでよね!...あたしは食べてないけど」

杏子「そうだ、あたしの舌を舐めんなよ!...皆に合うかはわからないけど」

ほむら「先行きが不安になってきたわ」

———————

知久「...ゆっくりしていろっていわれてもね...」

『燃やしつくせ!命の燃料の一滴までなぁ!ふへはははは!!』

ピッ

『僕の大事な玉をおおおぉぉ!!』

知久「何もしないと、それはそれで落ち着かないんだよなあ...」

まどか「ご飯できたよ、パパ!」

知久「ありがとう、まどか」

黒いなにか「」モッサ

知久「...まどか、これは...?」

まどか「卵焼きと、ハムトースト...です...」

知久「か、変わった形をしているね」

まどか「あ、あのね、形はあれかもしれないけど、味は悪くないと思うから!良かったら、ママたちが起きる前に味見してみる?」

知久「そうだね...じゃあ少しだけ...」

——————————
まどかの家の近くの建物

双眼鏡│ほむら「...なんでまだ暗黒物質なのよ」

マミ「暗黒物質といえども、侮ってはいけないわ」

さやか「同じ金剛阿含でも、6巻と37巻とじゃ全然違うでしょ?」

ほむら「何その微妙に安心できない例え...じゃなくて、これヤバイんじゃないのって私は聞いてるのだけど」

杏子「心配すんな。あたしは喰えた」

ほむら「あなただけが食べれても意味ないでしょ」

杏子「うるせえ!あたしたちが頑張ってる間、ほとんどトイレ通いだった奴にとやかく言われたくねえよ!」

ほむら「食中毒を舐めないで!それと、トイレをバカにしないで!便器は文化の神髄であり、友達よ!」

さやか「落ち着きなって。...ここは信じてよ、ほむら。あたしたちじゃなくて、あいつを、さ」

—————————————

知久「じゃあ、卵焼きから...」

まどか「」ドキドキ

知久「」パクッ

まどか「ど、どうかな...?」

知久「!これ...普通においしい...」

まどか「ほ、本当!?」

まどか(事前に味見しておいてよかった...)ホッ

——————————————

盗聴器『普通においしい...』

杏子「っしゃあ!やっぱあたしの味覚は間違ってなかったんだ!」

マミ「やったわ!練習の成果が出たわね、鹿目さん!」

さやか「よくぞあん肝から成長した!あたしは嬉しいよ!」グスッ

ほむら「よかったね、まどか...本当によかった...」ウルウル

『それじゃあ、早速ママたちを起こして...皆、で...』

『ドサッ』

『パ、パパ!?』

「!?」



ほむら「双眼鏡貸しなさい!」

杏子「お、おう」

双眼鏡│ほむら「あ、あれは...知久さんが...倒れている...!?」

3人「なんですって!?」



杏子「どういうことだおい!?」

さやか「知久さん、おいしいって言ってたよね!?」

マミ「ま、まさかやせ我慢だったの?」

ほむら「...とにかく、手遅れにならないうちに行くわよ」


まどか「パパ、大丈夫?パパ!?」

知久「」

まどか「ど、どうしよう、どうしよう...」オロオロ

ほむら「お邪魔するわよ、まどか!」

まどか「ほ、ほむらちゃん。それに皆!どうして...」

ほむら「細かいことは後!早く救命措置をするわよ」

————————————————
そして現在

リビング


まどか「パパ、起きてよパパ!」ユサユサ

知久「」

杏子「まて、無闇に揺らすんじゃねえ!こういう時は気道を確保してだな...」

マミ「聞こえますか?聞こえますか!?」バンバン

さやか「AED持って来たよ!」

ほむら「でかしたわ、さやか!早速繋げて...あれ、どうやってやるのかしら?」


詢子「どういうことだおい...」

知久「」スー スー

詢子「成る程ね、こいつを喰ったからパパはこんな目に...」つ黒いなにか

まどか「ごめんなさい...私のせいで...パパ、きっと無理して食べたんだ...」グスッ

杏子「それは違うぞまどか。知久も言ってただろ、美味しいって。それは嘘じゃねえよ。あたしのお墨つきだ」

まどか「でも、実際にパパは私の卵焼きを食べて...」

QB『それについては、僕が説明してあげるよ』

ほむら『キュゥべぇ...』

QB『この前食べさせられた暗黒物質を研究してみたところ、何故まどかが暗黒物質しか作れないか、その原因がわかった』

マミ『原因?』

QB『まどかの魔力のせいさ。まだ契約していないまどかは、その魔力を持てあましている。そのため、まどかの身体から溢れだした魔力が、作った料理に移り、暗黒物質と化したのさ。
その魔力に耐え切れなかったために、ほむらは食中毒を。僕は発狂してしまったんだ』

杏子『でも、あたしは無事だったじゃん』

QB『それは半分は君の胃袋の丈夫さ。もう半分はさやかに感謝することだね。どうやら、込められる魔力はまどかの料理の腕と反比例するらしい。そのため、君は助かったというわけだ』

さやか『アハハッ、感謝だなんて...なんか照れますなぁ』

QB『マミとさやかの指導のおかげで、まどかの腕は上達し、込められる魔力も最小限に抑えられた。でも、素質のないまどかの父親にとっては少量の魔力でも毒になってしまう。
そのため、彼は倒れてしまったのさ。まあ、命に別状はないから、すぐに目を覚ますと思うよ』

知久「う...う〜ん...」

詢子「おっ、起きたかい?ほれ、水だ」

知久「あ、ありがとう...僕は何を...?」

まどか「パパぁ!」ガバッ

知久「ま、まどか...?」

知久(そういえば、まどかの卵焼きを食べて、それで...)

まどか「ごめんなさい...ごめんなさい!私が...駄目な子だから...」グスッ

知久「...それは違うよ、まどか」

知久「月並みなことをいうかもしれないけど、こういうのは気持ちが大切なんだ。だから、一生懸命頑張ったまどかは、駄目な子なんかじゃない」

まどか「でも...でも...」

知久「それに、頑張った成果も出ている。あの卵焼き、本当においしかったよ。気持ちも十分に伝わってきた。まどかの頑張りは決して無駄なんかじゃなかったってことさ」

まどか「パパ...」ジーン

知久「...そうだ、せっかくの父の日だから、一つだけ我儘言ってもいいかな?」





ほむら「...これ以上の手出しは、無粋になるかしら」

マミ「そうね。ここはそっと帰りましょう」

杏子「暗黒物質はあたしが食べるよ。この流れで一家全滅はまずいからな」

詢子「もう帰っちゃうのかい?」

ほむら「はい。もう用事は済みましたから」

詢子「わるいね、まどかが迷惑かけちまったみたいで」

さやか「いえいえ、あたしたちも楽しかったんで」

杏子「あたしは、こうして飯にありつけたから、感謝したいくらいだけどね」モシャモシャ

詢子「そうかい、そいつはよかった。...これからも、あいつのことよろしく頼むよ」

マミ「もちろんです!」

————————————

さやか「さてと、あたしも父さんになにかしてあげなくちゃ!」

ほむら「私も...電話くらいはしないと」

杏子「あたしは...なにかお供えでもしとくか」

マミ「私も、しっかり親孝行しなくちゃね」

ほむら「巴さん、あなた両親は...」

マミ「いるわよ?育ての親が」

杏子「えっ、そうなの?」

マミ「ふふっ、皆には笑われるかもしれないけどね」

知久日記

今日は、家族皆で家事をしました。

4人でご飯を作って、4人で掃除をして、4人で洗濯物をして...

慣れない家事で、まどかとタツヤはくたくたになってしまったのか、昼寝をしてしまいました。

そして、まどかは、寝言でこう言ったんです。

『パパ、ママ、いつもありがとう』って

一生家族が一緒にいることは無理だけれど、少しでも多く家族皆で過ごせれば、それはとっても嬉しいなって思うのでした。

———————————
おまけ

QB「ただいま、マミ」

マミ「お帰り、キュゥべぇ。今日はお仕事どうだったの?」

QB「最近、あまり契約がとれないんだ」

マミ「それは残念だったわね」

QB「君がそれを言うかい?真実を全て話してから契約を持ち掛けた方がいいって言ったのは君たちじゃないか」

マミ「でも、事実でしょう?」

QB「まあ、以前ほどは魔法少女たちに怒られずに済んでるけどね」

マミ「...ねえ、キュゥべぇ。ちょっとこれ着けてみてもらえないかしら」

QB「これは...蝶ネクタイだね。でも、なんでだい?」

マミ「今日は父の日だから、そのプレゼントよ」

QB「妙なことを言うね、マミは。僕は君の」

マミ「育ての親、よ。いいの、私が勝手にもう一人のお父さんだと思っているだけだから」

QB「.....」

マミ「うん、よく似合ってるわよ、キュゥべぇ」

QB「褒めたところで意味はないよ。僕には嬉しいという感情はないからね」

マミ「もう、いつもそんなことばかり言って。嫌なら返してくれるかしら」

QB「まあ、迷惑だという感情も持ち合わせてないからね。これは貰っておくよ。
ありがとう、マミ」

マミ「ふふっ、素直じゃないんだから」

マミ「今日の晩御飯は何が食べたい?あなたが決めていいわよ」

QB「マミの好きなものにするといい。君の作る料理は栄養のバランスがとれているから、僕はなんでもいいよ」

マミ「あら、そう...なら、今日は何にしようかしら...キュゥべぇの好きそうなものといえば...」ウーン

QB「......」

QB「...ねえ、マミ。どうして、君は僕に優しくするんだい?」

マミ「どうしたのよ、いきなり」

QB「君は僕を恨まないのかい?君も最初は言っていたじゃないか。どうして両親を助けてくれなかったんだって」

マミ「......」

QB「それだけじゃない。君を、いつかは魔女になる魂にしたのも僕だ。それも、君たちがいう、わけのわからない理由でね。
君たち人間からしたら、恨まない理由がないだろう?」


マミ「恨まない理由か...そうね...」

QB「考えるほどのことかい?」

マミ「...ねえ、ちょっと抱っこさせてくれる?」

QB「...構わないよ。それで君の答えが聞けるならね」



マミ「懐かしいわね。昔は、怖くなったり寂しくなった時には、いつもこうやって抱っこさせて貰ってた」ギュッ

QB「そうだね」

マミ「...これが答えになるのかな?」

QB「どういうことだい?」

マミ「確かに、真実を聞かされた時はあなたを憎んだ。それに、どうして家族を助けてって願わなかったんだろうって、自分が嫌になった」

QB「......」

マミ「でもね、もしあなたが現れなかったら、今の私はいないの。今回みたいに皆でなにかをすることも、過去を振り返って懐かしむことも、後悔することもできなかった」

マミ「それに、さっきも言ったけど、あなたは私にとって育ての親なのよ」

QB「僕が?」

マミ「私が泣いている時に、あなたはいつも傍にいてくれた。家族として側にいてくれた。それが演技だったにせよ、どんな目論見があったにせよ、私は十分救われたの」

QB「ふ〜ん...やっぱりよくわからないなぁ」

マミ「そのうち、わかるようになるわよ。私達がお互いにわかりあおうと頑張ればね」フフッ

QB「コロッケか...うん、いいじゃないか」ハグハグ

マミ「どう?おいしい?」

QB「やはり、マミの料理は素晴らしいね。栄養のバランスがよく考えられていて、なによりおいし...」ピタッ

マミ「どうしたの、キュゥべぇ」

QB「...ちょっと、キャットフードを持ってきてくれないか?」

マミ「え、ええ。いいけど...」

QB「...やっぱりだ」ハグハグ

マミ「なにが?」

QB「マミの料理の『味』と、キャットフードの『味』がわかるようになったみたいなんだ。
どうやら、あの時のまどかの暗黒物質によって、僕達にも味覚が目覚めたようだね」

マミ「本当に!?やったわね、キュゥべぇ!」

QB「...君たち人間は、他人に何か利益があると喜ぶようだけれど、それは何故なんだい?」

マミ「理屈じゃないの。大切な人には喜んでほしい...そういうものなのよ」

QB「ふーん...」

QB(やっぱり、僕には理解できないなぁ。でも...)

QB「マミ、次は炒飯を作ってみてくれないかい?」

マミ「あら、炒飯でいいの?」

QB「いいんだ。せっかく味が分かるようになったんだから、あの時のまどかの暗黒物質と比べてみたいんだ」

QB(こういうのも、悪くはないかな)


終わり

この前のサザエさん見てたら、ふと父の日ssを書きたくなったのでやりました。
叛逆の方で、鹿目家の活躍があったら、それはとっても嬉しいなって思いました。

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