穂乃果「花陽ちゃん、逃げるんだよ」凛「かよちん、早く」 (32)

ピシャーン ゴロゴロ

あの日は季節外れの大雨でとても暗く、酷く寒い日でした。

凛「はあ…どうしてこんな事に…」

穂乃果「凛ちゃん…」

花陽「私達は…いったい何から逃げてるの?」

穂乃果「それは…」

コツ コツ コツ コツ

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穂乃果「しっ。静かに」

凛「こっちに来てるにゃ…」

花陽「穂乃果ちゃん…凛ちゃん…」

ピシャーン ゴロゴロ

コツ コツ コツ………ガチャ。

穂乃果「あっ……ああ……」

凛「そ、そんな…」

花陽「え?」

…よ…花陽……花陽!

花陽「へ?」

にこ「何ボーッとしてるのよ」

花陽「あっ、ご、ごめんね。何だっけ?」

にこ「花陽はどうだったのよ?」

花陽「何が?」

にこ「テスト結果よ」

花陽「ああ…テスト結果…。えっと…可もなく不可もなく…かな?」

にこ「へえ」

花陽「にこちゃんはどうだったの?」

にこ「まあ…可もなく不可もなくって感じよ」

花陽「へえ…頑張ったんだね」

にこ「どういう事よ?あんたと同じだって言ってるのよ」

花陽「あっ、ご、ごめん。そうだね」

にこ「まあ…いつもより勉強はしたけど」

花陽「そうなんだ」

にこ「まあね。3年生だし赤点だと洒落にならないし」

花陽「本当は1年生でも2年生でも赤点はダメなんだよ?」

にこ「まあ、そうだけど。そう言えば…真姫は?」

花陽「真姫ちゃん?音楽室に行くって言ってたけど。真姫ちゃんに用事?」

にこ「まあ、用事って程じゃないけど。真姫にテスト結果の報告をしにいくのよ」

花陽「真姫ちゃんに?」

にこ「そうよ。真姫にテストで赤点取らないって宣言してたからね」

花陽「それで勉強頑張ったんだ」

にこ「別に…そうじゃないわよ」

花陽「」

花陽「ふふっ」

にこ「何笑ってるのよ。という事で、私は音楽室に行くから」

花陽「うん。私は部室に行くよ」

にこ「部室?雨なんだし練習は休みでしょ?」

花陽「凛ちゃんに部室で待ってるって約束してるんだ」

にこ「へ~。あの子は何やってるのよ?」

花陽「なんか…穂乃果ちゃんに用事があるって」

にこ「穂乃果にね。そう。じゃあ、私は音楽室に行くわ」

花陽「うん」

にこ「じゃあ」

花陽「にこちゃんって負けず嫌いだなぁ……はっ!私も一緒に音楽室に行けば良かった…。でも、凛ちゃん携帯のメールになかなか気がつかないしなぁ」

ゴロゴロ ピシャーン

花陽「雷凄いなぁ。まだ、夜じゃないのに外は真っ暗だ」

ゴロゴロピシャーン

花陽「なんか、心細いなぁ」

危なーーーーい。

花陽「え?」

ズドンッ

花陽「イタタタ…」

穂乃果「いてて…あれ?花陽ちゃん…」

花陽「穂乃果ちゃん…」

穂乃果「だ、大丈夫?」

花陽「うん。私は大丈夫。穂乃果ちゃんは?」

穂乃果「大丈夫」

花陽「穂乃果ちゃん、どうしたの?廊下は走っちゃダメだよ?」

穂乃果「う、うん。まあ…」

凛「穂乃果ちゃーーーん」

穂乃果「凛ちゃん」

花陽「凛ちゃん?」

凛「かよちん…」

花陽「あの…二人共?」

凛「穂乃果ちゃん、まずいよ。凛達の事まだ探してるみたいだよ」

穂乃果「そ、そんな…」

花陽「あの…一体…」

凛「今こっちに向かって来るよ」

穂乃果「逃げなきゃ…」

花陽「え?あの…」

穂乃果「話は後で。とりあえず逃げなきゃ」

凛「どこに逃げようか?」

穂乃果「一番いいのは学校の外だよね」

凛「でも、凛のスクールバックは教室に置きっ放しにゃ」

穂乃果「穂乃果もだよ。と言う事はスクールバックを回収してから学校の外に逃げる。それで行こう!」

凛「うん。そしたら早く行かなきゃ。話してる暇なんてないにゃ」

花陽「ね、ねえ?二人は何から逃げてるの?」

穂乃果「それは…今は言えない…」

花陽「え?どうして?」

穂乃果「でも、逃げなきゃ」

凛「捕まったら大変な事になるにゃ」

穂乃果「さあ、行くよ。凛ちゃん。後方に注意してね」

凛「うん」

花陽「二人共…何に追われてるんだろう」



ー2年生教室ー

ガラガラ

穂乃果「………」

凛「どう?」

穂乃果「うん。居ない。中に入っても大丈夫」

花陽「穂乃果ちゃん…」

凛「あっ…ああ…」

穂乃果「何?どうしたの?」

凛「来た……」

花陽「へ?」

穂乃果「そ、そんな…」

凛「来たにゃ……」

穂乃果「に、逃げよう…」

凛「ダメだよ。今、廊下に出たら見つかっちゃうよ」

穂乃果「くっ…」

凛「きっと教室にも入って来るよ」

穂乃果「隠れよう。隠れてやり過ごすしかないよ」

花陽「え?」

穂乃果「花陽ちゃん、早く」

花陽「で、でも…」

穂乃果「こっちに」

花陽「り、凛ちゃんは?」

凛「凛は大丈夫だから」

穂乃果「花陽ちゃん、お願い。早く」

花陽「うん」

穂乃果「………教卓の中って女子高生二人だとキツイね」

花陽「そ、そうだね。凛ちゃんは大丈夫かな?」

穂乃果「大丈夫だよ。大丈夫。うん、大丈夫だから…」

花陽「穂乃果ちゃん…」

穂乃果「………」

花陽「………」

ガラガラ

穂乃果「……っ!?」

コツ コツ コツ

穂乃果「き、来た…」

花陽「うぅ……」ドキドキ

コツ コツ コツ

花陽(ち、近づいて来た)

穂乃果「くっ……」

花陽(今、多分…目の前に居る)

コツ コツ コツ

花陽(あれ?帰っていく?)

ブーブーブー

花陽「…っ!?」

穂乃果「え?」

花陽(け、携帯が……)

ブー ブー ブー

花陽(お願い。鳴り止んで…)

コツ コツ コツ………。

花陽「み、見つかる…」

穂乃果「花陽ちゃん。行くよ」

花陽「え?」





穂乃果「走って教室から出るから」

花陽「で、でも…」

穂乃果「行くよ。走って。早く」ダッ

花陽「…」ダッ

や……りこ…に…たね。

ピシャーン ゴロゴロ

花陽「え?」

穂乃果「振り返らないで。早く」








花陽「はあ…はあ…はあ…」

穂乃果「なんとか逃げ切れたね」

花陽「でも、凛ちゃん…」

穂乃果「凛ちゃんなら大丈夫。用具入れから教室の様子は見えるし何より私達の事を追いかけて来るはずだから。それに、花陽ちゃんの事を凛ちゃんと間違えてるかもしれない」

花陽「そっか。あっちは二人だと思ってるから」

穂乃果「うん。花陽ちゃん…振り返った時見えた?」

花陽「ううん。よく見えなかった」

穂乃果「そっか」

花陽(よく見えなかったけど…私達に向かって何か言ってた)

花陽「そう言えば…携帯…」

穂乃果「え?ああ…」

花陽「穂乃果ちゃんの携帯だった?」

穂乃果「うん……絵里ちゃんからだ」

花陽「絵里ちゃん?」

穂乃果「うん」

花陽「そうだ。絵里ちゃんに電話して助けて貰おうよ」

穂乃果「ダメだよ」

花陽「え?」

穂乃果「絵里ちゃんを巻き込まない」

花陽「そっか…。うん。そうだよね」

穂乃果「花陽ちゃん、ごめんね。巻き込んじゃって」

花陽「大丈夫だよ。それよりも、この後どうするの?」

穂乃果「1年生の教室に行こう」

花陽「私達の?」

穂乃果「うん。凛ちゃんも一年生の教室に向かうと思う。そこで凛ちゃんと落ち合わなきゃ」

花陽「そうだね」

穂乃果「うん」

花陽「ねえ?」

穂乃果「何?」

花陽「穂乃果ちゃん達は何で追われてるの?」

穂乃果「だから…それは…」

花陽「じゃあ、せめて…これだけは。学校の外に出れば逃げ切れるの?」

穂乃果「それは…ごめん、わからない」

花陽「そうなんだ…」

穂乃果「でも…今学校に居るよりは…確実にマシだと思う」

花陽「今日逃げ切れば解決する話でも」

穂乃果「うん。確実に来る。向き合う日が。でも、それは今日じゃない」

花陽「穂乃果ちゃん…」

穂乃果「なんか不安にさせちゃったかな」

花陽「そんな事は…」

穂乃果「大丈夫。全て上手くい。全て上手くいから。ね?」

そう言って、私に笑い掛けたけど穂乃果ちゃんの足は震えていました。

穂乃果「それじゃあ、一年生の教室に行こうか」

花陽「うん。えっと…どうやって…」

穂乃果「あっ…」

花陽「え?」

穂乃果「そ…そんな…巻いたと思ったのに…もう追いついて…」

花陽「穂乃果ちゃん?」

コツン…コツン…コツン…コツン…。

花陽「ま、まさか…」

穂乃果「ダメ。振り返っちゃ」

花陽「…」

穂乃果「くっ…逃げるよ」

花陽「穂乃果ちゃん…そっちは…」

そっちに逃げればもう3年生の教室にしか……。

穂乃果「失敗だった」

花陽「……」

穂乃果「ごめん。慌てちゃって。逃げ場なくなっちゃったね」

花陽「うん…」

穂乃果「ゲームオーバーかな?こっちに逃げて来たの見られちゃったもんね」

花陽「穂乃果ちゃん…」

ガラガラ

穂乃果「き、来た」

花陽「うぅ…」

凛「穂乃果ちゃん、かよちん」

穂乃果「え?凛ちゃん?」

凛「二人が逃げた後に凛もすぐ逃げ出したの。それで、二人を探してたら3年生の教室の方に向かって行くから」

穂乃果「そうなんだ。凛ちゃんだけでも逃げてくれれば良かったのに」

凛「二人を置いていけないよ」

穂乃果「凛ちゃん…」

花陽「ねえ、凛ちゃん?教室に入る時大丈夫だった?」

凛「え?何が?」

穂乃果「私達、追いつかれちゃってさ。3年生の教室に逃げ込んで来たんだけど…」

凛「でも、凛が来た時は大丈夫だったよ?この教室ってはじっこだから入るのに向かうの廊下から来るか階段から上がって来るかしかないもん」

花陽「それじゃあ、諦めてくれたのかな?」

穂乃果「うん。だとしたら、このチャンスを」

コツン

穂乃果「え?」

凛「どうしたの?」

穂乃果「今、足音が聞こえたような」

花陽「本当に?」

凛「でも、廊下の足音が教室まで聞こえるかな?」

コツ コツ

穂乃果「しっ。やっぱり…」

花陽「聞こえる」

穂乃果「隠れなきゃ」

凛「凛、もう掃除用具入れは嫌だにゃ。はあ…どうしてこんな事に…」

穂乃果「凛ちゃん…」

コツ コツ

穂乃果「早く隠れなきゃ」

ガラガラ

穂乃果「あっ…」

絵里「あら?」

穂乃果「へ?」

凛「え、絵里ちゃん?」

花陽「絵里ちゃん…」

絵里「あなた達…3年生の教室で何やってるの?」

穂乃果「えっと…」

絵里「はあ…探したのよ?電話しても出ないし」

穂乃果「ご、ごめん」

絵里「さあ、もう大丈夫だから。それと、花陽?音楽室でにこが待ってたわよ?」

花陽「え?にこちゃんが?」

絵里「ええ。約束してたんじゃないの?」

花陽「行くかもしれないとは…言ったかな?」

絵里「まあ、いいわ。花陽は音楽室に行きなさい」



その後、私は絵里ちゃんに言われがまま音楽室に出向きました。結局、二人が何から逃げていたのかも分からないまま…。

にこ「あら?花陽来たの?」

花陽「え?う、うん」

真姫「凛は一緒じゃないの?」

花陽「凛ちゃんは…絵里ちゃんと一緒に…」

にこ「ねえ?聞いてよ。にこがせっかくテストでそこそこの点数取ったのに大した事ないですって」

真姫「だって、赤点にならなかったってだけで平均点ギリギリじゃない」

にこ「だから可もなく不可もなくって言ってるじゃない。穂乃果や凛なんこ赤点取ったらしいからね。それに比べたら全然良いじゃない」

真姫「そんなの自慢にならないわよ」

にこ「なんですってぇ。人の努力を…って花陽?聞いてるの?」

花陽「え?あっ、うん。聞いてるよ」

穂乃果ちゃんも凛ちゃん音楽室に来ました。元気のない二人の様子を見てなんとなく二人が何から逃げていたのかは想像が付きました。

でも、一つだけ腑に落ちない事が。2年生の教室でのあの時…

「やっぱりここにいたね」

どう考えても口調も声も違ったから…。

おわり

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