のぞにこ≪タンデムツーリング≫(50)



 希「大型二輪免許取ったで!」

 にこ「なんかデジャヴなんだけど」


 希「そういう訳やから、にこっちツーリング行こっ!」

 にこ「免許取ってから一年間はタンデムできないんじゃなかったっけ?」

 希「おお、よう知ってるなぁ」

 にこ「不思議とね。そもそもいきなり大型二輪って取れるの?」

 希「都道府県によっては取れるんよ」

 にこ「あら、そうなんだ」

 希「そして! ウチのスピリチュアルなパワーで取得一年未満でもタンデムを合法化させることに成功したんや!」

 にこ「スピリチュアルパワーって言っとけばなんでも許されると思ってんじゃないわよ!」


 希「いやぁ、法改正って案外簡単やね」

 にこ「衆議院と参議院の方たちに土下座して謝んなさい」

 希「大丈夫やって。他の世界線では女の子同士が普通に結婚したり子供作ったりしとるから」

 にこ「なんの話よ!?」

 希「まぁそれは置いといて。今度の日曜日ツーリング行こうよ!」

 にこ「それはいいけど、わたしヘルメット持ってないわよ」

 希「それは大丈夫や! にこっち専用のメットは既に買ってあるから!」

 にこ「なにそれ怖いんだけど」

 希「カードがウチに告げたんや。予備のヘルメットは買っておいた方がいいって」

 にこ「随分具体的に告げてくれるのね。ところでどんなバイクを買ったの?」

 希「これや! カワサキのZX-10R! D型や!」

https://i.imgur.com/tuPB1fE.jpg


 にこ「へー。・・・・・・なんでわたしの寝そべり乗っけてんのよ?」

 希「にこっち可愛いやん?」

 にこ「ま、まあ? 宇宙No.1アイドルのにこにーなら当然――」

 希「あ、本人やなくって寝そべりの方やよ?」

 にこ「ぬぁんでよ!」

 希「ぬぁんでよ頂きましたー」



 にこ「まぁわたしの寝そべりのことはいいわ。バイクには詳しくないんだけど・・・・・・。なんか速そうね」

 希「そうやね。リッターのSSやからね」

 にこ「りったー? SSってなに?」

 希「リッターはバイクの排気量が1000ccってこと。まぁ正確には998ccなんやけど、四捨五入やね。SSはスーパースポーツの略や」

 にこ「余計に訳分かんなくなったんだけど、速度は最高でどのくらい出るの?」

 希「300km/h」

 にこ「は?」

 希「だから、300km/hやって。逆輸入車のマレーシア仕様やから、国内仕様車の180km/hのリミッターは関係ないんよ」

 にこ「ごめん、日本語で喋ってくんない?」


 希「関西訛りはウチのアイデンティティやから」

 にこ「標準語で喋れって言ってんじゃなくて」

 希「まぁメーター上は299km/hで止まるんやけどね」

 にこ「まさか、出したの? 299km/h」

 希「そんなに出すわけないやーん」クスッ

 にこ「そ、そうよね」ホッ

 希「280km/hまでやん?」

 にこ「おんなじよ! は!? 思いっきり速度オーバーしてんじゃない!」

 希「にこっち落ち着いて。公道じゃなくてサーキットの話や」


 にこ「あ、そ、そうなん・・・・・・だ。でも、出しすぎじゃない? 危ないわよ?」

 希「確かに危なくないとは言えんけど、そういうモンやからとしか言えんなぁ」

 にこ「やめてよね、大怪我とか。心配になるじゃないの」

 希「おっ、心配してくれるん?」ニヤニヤ

 にこ「当たり前じゃない。大事な友達だもの」

 希「お、おおう//////」カアァ

 にこ「じゃあ公道じゃそんなに出してないのね?」

 希「うん、心の法定速度は守っとるよ」

 にこ「道路の法定速度も守りなさいよ!」


 希「にこっちを乗せるときはいつも以上に安全運転するから安心してな?」

 にこ「はぁ、分かったわよ」

 希「じゃあ日曜日に迎えに行くな~」

 にこ「はいはい」



 日曜日。


 ピンポーン。

 希「にこっち来たでー?」

 にこ「はいはい、いらっしゃい。すぐ準備するから上がって待ってて」ガチャ

 希「お邪魔しまーす」

 にこ「」

 希「? どうしたん?」

 にこ「希・・・・・・。その格好はなんなの?」

 希「これ? 革ツナギや!」ドヤァ

 にこ「かわつなぎ?」


 希「そう! これ着てないとサーキット走れんのよ」

 にこ「え? なに今日ってサーキット行くの?」

 希「ちゃうちゃう、そうじゃなくって。サーキット走れるくらい安全な服装ってことやん」

 にこ「あぁそう・・・・・・。なんか動きにくそうね」

 希「まぁ前傾姿勢が基本のSS用やからね、立体裁縫で直立はできんなぁ。でもその代わりバイクの操作は驚くほどしやすいんよ?」

 にこ「ちっとも理解できないんだけど、歩きづらいんじゃツーリングには向いてないんじゃない?」

 希「そこは否定できんなぁ。でもな? 前のファスナーをこうやって開けて・・・・・・」

 にこ「ちょちょちょ! いきなり何脱いでんのよ!」//////

 希「にこっち落ち着いて。ちゃんとインナー着けてるって」


 にこ「そうかも知れないけど・・・・・・(そのインナーが蒸れてあんたの胸に張り付いてんでしょうがっ! 鏡見てきなさいよすごいことになってるわよ!)」

 希「ほんで両腕だけ抜いて、ファスナーを鳩尾辺りまで上げれば・・・・・・ほら! ちゃんと立って動ける!」

 にこ「そんな直立歩行の可を嬉々として報告されても・・・・・・」

 希「それから、はい。にこっちの分のプロテクター」

 にこ「ありがと。着けてくるから少し待ってて」

 希「了解やー♪」



 にこ「お待たせ。じゃ、行きましょ」

 希「おっ、可愛いリュックやね」

 にこ「こころとここあがお小遣い貯めてプレゼントしてくれたのよ。自分のために使いなさいって言ったのに、日頃の感謝ですって♪ 因みに中には虎太郎が描いてくれた似顔絵が入ってるわ。わたしのお守り兼、宝物よ」

 希「そかそか♪ それは大事にせんといかんなぁ」

 にこ「勿論よ。死ぬまで使うわ」

 希「それは流石に無理なんじゃないかなぁ~・・・・・・」アハハ

 にこ「で、あれが希のバイクなのね」

 希「そう! 中古やけど5000kmしか走ってないお買い得品や! マフラーにはツーブラザーズレーシングのスリップオン、スクリーンはゼログラビティのダブルバルブ、フェンダーレスもしてあり、ノーブランドながらバックステップまで付いて本体価格なんと100万円! これは買うしかないでー!」

 にこ「あんたバイク屋の回し者? 言ってることの2割も理解できなかったけど」


 希「まずスリップオンっていうのはな?」

 にこ「説明しなくていいわよ!」

 希「まぁまぁ、興味なかったら聞き流し・・・・・・もとい読み飛ばしてええから。オタクは語りたがりなんよ」

 にこ「いつからオタクになったのよあんた。バイクオタク?」(注:読み飛ばし推奨ここから)



 希「スリップオンっていうんはマフラーの先端にある消音器のことや。これを外した状態を直管って言って、物凄いうるさい排気音になるで。スリップオンは素人でも簡単に脱着できるから巷で好まれるカスタムやね。ツーブラザーズレーシングはアメリカのマフラーメーカや。あんまりメジャーではないかな?」

 希「スクリーンは正面上部にある防風シールドのことやん。ウチのはダークスモークやから黒い車体にぴったりや! ゼログラビティ、通称ゼログラは結構有名なスクリーンメーカーやで。ダブルバルブいうんはスクリーンの形状のことで、伏せたときの防風効果を高めるために二段階の湾曲で作られとる」

 希「フェンダーレスは純正のリアフェンダーを取っ払って、よりスタイリッシュに見えるようにしたカスタムのことや。ウチの10Rはウィンカーがビルドイン、つまり車体と一体になっとるからフェンダーレスしやすい。これも割りとメジャーなカスタムの一つで、ナンバーの角度が度々問題になったりするなぁ。ウチのは勿論車検対応やで♪」

 希「バックステップは足を乗せるところと、ブレーキやシフトレバーを操作する機構を一緒に少しずつ後方上部に移動させたカスタムや。なんでそんなことするかというと、バイクはバンク・・・・・・車体を傾けて曲がる乗り物なんやけど、ステップが下の方にあると地面に擦ってしまうからなんや。それだけじゃなくて、ステップ位置を上げて重心を高くすることで車体を倒しやすくする効果もあるな。ウチのは無メーカーやけど、十分に使えるてるで」



 にこ「今夜の夕飯はなにがいいかしら?」(注:読み飛ばし推奨ここまで。ここからは読んでくださいお願いします)

 希「にこっち聞いてた!?」

 にこ「聞いてないわよ。聞き流していいんでしょ?」

 希「そうは言ったけど、ウチ熱心に独り言語る変な人になってまうやん」

 にこ「安心なさい。元から大分変よ」

 希「にこっちのツッコミはキッツいなぁ」タハハ

 にこ「っていうか、これ相当高かったんじゃない? あんたどこにそんな大金あんのよ?」

 希「"今まで転勤続きで済まなかった。せめてもの詫びにこれで最高のバイク仲間を見つけてくれ"ってパパが」

 にこ「あんたのお父さんも結構ズレてるのね・・・・・・」


 希「免許代、バイク代、任意保険代、ヘルメット代、レーシングスーツ・グローブ・ブーツ代、それからガソリン代として毎月の仕送りにプラス1万されたなぁ。至れり尽くせりや♪」

 にこ「あ、それ知ってる。親の金レーシングとか言うんでしょ?」

 希「・・・・・・なん・・・・・・や、それ・・・・・・?」

 にこ「あれ、知らない? まぁネットスラングみたいなもんだしね。気にしなくていいんじゃない? アリだと思うわよわたしは、そういうのも」

 希「にこっち・・・・・・。なんか目が冷たくなってない?」

 にこ「気のせいよ」



 希『次のサービスエリアで休憩するなー』

 にこ『はいよー。それにしても便利ねー、これ』

 希『せやろ? インカムはタンデムツーリング必需品や♪』

 にこ『ていうかスピード出しすぎじゃない?』

 希『一応100km/hやで?』

 にこ『身体が剥き出しだから速く感じるのかしら・・・・・・。まさか高速道路に乗るとは思わなかったわ』


 ※免許取得後3年以上で高速二人乗り可の法律は希のスピリチュアルパワーで(略)


 希『ETC付きやからストレスフリーや!』

 にこ『うるさっ! インカムで大声出さないでよ!』

 希『いや、悪かったけど・・・・・・。にこっちの声も大概大きいやん・・・・・・』キーン


 にこ『あ、ごめん』

 希『びっくりすると思わずアクセル全開にしてまうからな?』ニシシッ

 にこ『それはやめて。普通の加速だけでもちょっと怖かったのに・・・・・・。絵里のとは大違いね』

 希『えりちのはニーハン単発やからなぁ。バイクの方向性が違うんや』

 にこ『方向性? バイクって前に進まないのもあるの?』

 希『そうやなくって。えりちのジェベルはオフロード車やから未整地路を走破するのに優れていて、ウチの10Rは舗装路を速く走るのに適してるんよ』

 にこ『ふぅん? ピュアピュアで売っていくアイドルとクールで攻めるアイドルみたいなモンかしら』

 希『にこっちらしい例えやなぁ。っと、ここに入るよ』

 にこ『結構広いのね。・・・・・・ていうかどこまで行くのよ』

 希『二輪専用スペースが奥の方にあるんよ。あ、ここやここ』


 にこ『他にもバイクが停まってるわね』

 希『ツーリング日和やからね。じゃ、インカム切るよー』ポチ

 にこ「お疲れさま。・・・・・・ん」

 希「ん? にこっちどうしたん? 両手をこっちに突き出して。抱っこをせがむ子供みたいやで?」

 にこ「誰が子供よ! バイクから降ろしてほしいのよ! 落ちそうで怖いし」

 希「なんやそういうこと。よいしょ」ギュッ

 にこ「手間かけさせるわね、よっと」スタッ

 希「えりちとツーリング行ったときはどうしてたん?」

 にこ「・・・・・・今みたいに一瞬抱えてもらってたわ」


 希「ということは、乗り降りの回数を多くすれば正当な理由でにこっちにモギュッとできるわけやな?」ニターッ

 にこ「んなっ!?/// つ、次からは一人で降りるわよ!」

 希「遠慮せんでもええんやで? ウチの豊満な身体で受け止めてあげるから♪」

 にこ「なにバカなこと言ってんのよ! 小腹が空いたわ! 何か食べるわよ!」

 希「はいはい♪」クスクス



 にこ「結構美味しかったわね。サービスエリアも中々バカにできないわ」


 希「ご当地の名産を扱ってるところも多いからね。・・・・・・ん? ウチのバイクに誰かいる・・・・・・?」

 にこ「あっ!? にこのリュック!」

 希「持ってかれたぁ!? ちょ、何してんねんっ!!」ダッ

 窃盗犯「っ!? 早く出せ!」

 にこ「やられた! 後ろで待機してた車で逃げるなんて卑怯よ!」

 希「にこっち、早く被って!」ポイッ

 にこ「え、え!?」アタフタ

 希「追いかけるんよ!」キュキュキュッ、ヴォォォォンッ!!

 にこ「でもあのっ、警察とか・・・・・・!」

 希「そんな時間はあらへん! 早くしないと逃げられちゃうよ!」

 にこ「あ、わ、分かったわ!」ギュッ


 希「行くで!!」ヴォオオオオッッ!!

 にこ「きゃあっ!?」

 希『にこっち、聞こえる!?』ポチ

 にこ『き、聞こえるわ!』

 希『なんでリュック持ち歩いてなかったん!』

 にこ『ちょっとのつもりだったし、隣のバイクも荷物置きっぱだったからいいかなって思っちゃったのよ!』

 希『あれはシートバックっていって、バイクに固定されてるから簡単に持って行けないようになってるんよ!』

 にこ『そ、そんなの知らないわよ!』

 希『まぁここで言ってもしょうがあらへん! とにかく取り返すで!』ヴォオオオオオオオオオッッ!!!

 にこ『ちょ、スピード! 出しすぎじゃないの!?』


 希『大丈夫や! これくらい慣れとる!』

 にこ『でも・・・・・・!』

 希『にこっち、ウチを信用して。絶対に、にこっちのリュックは取り戻してみせる』

 にこ『希・・・・・・』

 希『この先はしばらくインターチェンジもないし、パーキングエリアもあらへん! 絶対に見つける!』

 にこ『いた! 遠くの方の白いワゴン車! あれよ!』

 希『よっしゃ! まかしとき!』

 にこ『あっ!? スピード上げたわ! 気付かれたのかしら?』

 希『180km/hのリミッター付いた国産車が、ウチから逃げられると思うなァァァァっっ!!』ヴォオオオオオオンッ!!

 にこ『ちょ!? あんたキャラ変わりすぎよ!』


 希『追いついたでぇぇぇ!』

 にこ『これからどうすんのよ!?』

 希『さっきのサービスエリアで渋滞情報見たんやけど、この先真っ赤っかなんよ!』

 にこ『真っ赤っか!? どういうこと!?』

 希『めちゃくちゃ渋滞してるってこと! 車はすり抜けできないから、停まらざるを得へん!』

 にこ『なるほどね!』

 希『交通量も多くなってきたし、そろそろやと思う・・・・・・』

 にこ『あっ、向こうの方の車が詰まり始めたわ!』

 希『渋滞やね! これで御用や!』

 にこ『っていうかどうやって捕まえるのよ! 二人以上いて、少なくとも片方は男よ!?』


 希『安心しい! ウチのヘルメットはフルフェイスや!』

 にこ『だから!?』

 希『問答無用で頭突いたるっ!』

 にこ『勇ましいけど危険じゃない!?』

 希『にこっちのリュックを取り戻すためや! 多少の危険くらいどうってことない!』

 にこ『希、あんたなんでそこまで・・・・・・あっ!?』

 希『路肩走りよったあンのおたんこなす!』

 にこ『希それ下ネタよ一応!』(※男性のアレが短いという意味。詳しく知りたい方はにこちゃんに訊いてください)

 希『路肩走るんは道交法違反やボケ!』

 にこ『速度超過もね!』


 希『こうなったら持久戦や! ガス欠するまで追いかけたんで・・・・・・っ!?』グイッ

 にこ『ひゃっ!? ちょっとどうして追うの止めちゃうのよ! 逃げちゃうじゃない!』

 希『平気やへーき。ウチなんかよりも頼りになるパンダさんが追ってくれるから♪』クスクス

 にこ『は? パンダさん?』


 ウーッ、ウーッ!


 にこ『あ』


 パトカー「白いワゴン車の運転手さん、停まってください」


 希『ね?』


 にこ『なるほどね。素直に停まると思う?』

 希『いやー停まらんやろ。なにせ窃盗の証拠品抱えたままなんやから』

 にこ『どうすんのよ』

 希『逃げ切れると思う?』

 にこ『・・・・・・思えないわね』

 希『せやからウチらはゆっくり追えばいいんよ』

 にこ『そうね。なら落ち着いたところで訊きたいことがあるんだけど』

 希『ん? なんや改まって』

 にこ『どうしてあんなに必死になってくれたの?』

 希『・・・・・・・・・・・・』

 にこ『さっきまでのあんた、ここまでしてくれて言うのもなんだけど、ちょっと怖かったわよ。鬼気迫るっていうか、まるで何かに追われてるみたいな・・・・・・いや、追ってたのはこっちなんだけど』


 希『ウチな、一人っ子なんよ』

 にこ『・・・・・・知ってる』

 希『転校も多くって、両親以外から何かをプレゼントされたことがなくってな。あ、えりちから誕生日プレゼントなら貰ったことあるけど、日頃の感謝とか、日常のふとしたときのプレゼントに憧れてるんやろか』アハハ

 にこ『・・・・・・・・・・・・』

 希『せやから今朝のにこっちが眩しくて羨ましくて、なんかウチまで幸せな気分になったんよ。んで、それを持って行ったあの人たちが許せなくて、悲しむにこっちを見たくなくって・・・・・・つい、な』

 にこ『・・・・・・希』

 希『嫌ってくれてええよ。自分勝手な理由でにこっちを危険に晒してしもたんやから、当然や』

 にこ『ばかね、嫌うわけないじゃない。感謝してるわよ。今回だけじゃない、ずっと前から』ギュッ

 希『にこっち・・・・・・』


 にこ『というか、ふとしたときにお弁当作ったりしてあげてるじゃない。あれじゃダメなの?』

 希『いやぁ~、あれはあれですごく嬉しいしありがたいんやけど、形に残るものが欲しいっていうかなんていうか・・・・・・』

 にこ『なに贅沢言ってんのよ!』ワシワシ!

 希『ひゃあっ!?』

 にこ『・・・・・・ツナギのせいで硬くて面白くないわ。ちょっと脱いでくんない?』

 希『いきなり何言うてんの!?』

 にこ『タンデムっていいわねー。揉みたい放題だもの』

 希『にこっちってわしわしの願望あったん!?』

 にこ『普段はないわよ。でも、こうやってバイクの後ろに乗って腰に手を回してると・・・・・・こう、手持ち無沙汰というか、丁度いいところに揉み応えのあるモンがあると・・・・・・つい、ね』

 希『つい、で揉まんといて!?』


 にこ『あんただってメンバーによくわしわししてんじゃない!』

 希『あれはスキンシップだからええの!』

 にこ『よかないわよ!』

 希『あ、ほらほら! さっきの車がパトカーに捕まってる! よかったね!』

 にこ『誤魔化してんじゃないわよ! ちょっと!』


 ギャイギャイ!


 交通機動隊1「・・・・・・なんだあの騒がしいバイク」

 交通機動隊2「なんかこっちに来てね?」

 窃盗犯「・・・・・・・・・・・・」


 希「すみませーん。ちょっといいですかー?」

 交通機動隊1「はい、どうかされましたか?」

 希「こっから数キロ手前にあるサービスエリアで、その人たちにリュックを盗まれてしまいまして。確認してもいいですか?」


 交通機動隊2「ん? もしかしてあの可愛いリュックですか?」

 にこ「あった! にこのリュック!」

 交通機動隊1「盗んだのか?」

 窃盗犯「・・・・・・・・・・・・」

 交通機動隊2「中身の確認をしてもらっていいですか?」

 にこ「はい。えっと・・・・・・あった! 虎太郎が描いてくれた似顔絵! よかったぁ~!」ギュッ

 交通機動隊2「なるほど。そのリュックはあなたので間違いなさそうですね。被害届は出されますか?」

 希「どうする? にこっち」

 にこ「それって時間かかりますか?」

 交通機動隊2「そうですね。少々お時間頂くことになります」


 にこ「じゃ、別にいいわ。リュックも似顔絵も無事に帰ってきたし」

 希「ホントにええの? こいつらにこっちの大事なモンを盗んで・・・・・・」

 にこ「アイドルがそんな言葉遣いしちゃダメよ。これ以上こんな奴らに構ってるくらいなら希とツーリングしてた方がいいに決まってるわ」

 希「ん、分かった」

 交通機動隊2「本当によろしいのですか?」

 にこ「はい。どうもお騒がせしました」

 交通機動隊1「分かりました。お気を付けて」

 希「それじゃ」ヴォオオーン



 希『すっかり予定が狂ってもうたなぁ』

 にこ『もうお昼過ぎだけど、さっき食べたからお腹は空いてないわね』


 希『今から目的地に行ってたら帰りえらい遅くなってまうやん。どないしょ』

 にこ『この辺でいい所ないの?』

 希『一口にいい所って言うても難しいなぁ。とりあえず次のインターで下りて近くのコンビニに停まるわ』

 にこ『ん、了解』

 希『この近く、この近く・・・・・・』ブツブツ

 にこ『別に特別なところに行かなくてもいいわよ? なんだかんだで楽しかったし』

 希『う~ん、そう言ってくれるんはありがたいんやけど、折角にこっちとツーリングしてるやし・・・・・・』

 にこ『また行けばいいじゃない。今日限りってわけでもないんだし』

 希『ん、分かった。なら少し走ったところにお茶屋さんがあるから、そこに行く?』

 にこ『あら素敵じゃない。そうしましょ』



 対向車ライダー「」フリフリ

 希『おっ』フリフリ

 にこ『なに? 手を振り合ってたけど、知り合い?』

 希『ちゃうちゃう、あれはヤエー! や』

 にこ『やえー?』

 希『ライダー同士の挨拶みたいなモンや。街中ではほぼやらんけど、ツーリング先の田舎とかでは頻繁に行われてるで』

 にこ『ふーん?』

 希『にこっちも振り返してあげて? 結構楽しいで』

 にこ『ん、分かった。・・・・・・あ、えっと・・・・・・お、おーい!///』フリフリ

 対向車ライダー「」ニッコリ、フリフリ

 希『おー、自分から振るなんて積極的やね』フリフリ

 にこ『今すっごい笑ってくれたんだけど! なにこれ楽しい!』


 希『せやろー? まぁ全員が全員返してくれるわけやないけどね。気が付かなかったり、無視されたりすることもしょっちゅうあるで』

 にこ『そうなの? 寂しいわね』

 希『そもそもヤエーを知らない人もおるやろうし、そこは仕方ないんよ。でもその分、返してくれたときは嬉しさ倍増や!』

 にこ『そうね! あ、また! おーい!』フリフリ!

 対向車ライダー「」ピース!

 にこ『わっ、ピースサイン返された!』

 希『結構色んな返し方があるんよ』

 にこ『そうなの? それなら・・・・・・にっこにっこにー!』ピョコピョコ

 対向車ライダー「!?」フリフリ

 希『今の人めっちゃ戸惑っとったやん』

 にこ『・・・・・・ヤエーではやめた方がいいのかしら』


 希『いや、ええと思うよ? にこっちらしくて』

 にこ『そう? そうよね! ステージの上だろうがバイクの上だろうがにこはトップアイドルなんだから! にっこにっこにー!』ピョコピョコ

 希『楽しそうで何よりや。っと、到着やで』

 にこ『結構山の方にまで来たわね。バイクも何台かすれ違ったし』

 希『インカム切るでー』ポチ

 にこ「お疲れさま。よっと」ヒョイ

 希「あぁ、本当に一人で降りられるようになってしもたんやね・・・・・・」ションボリ

 にこ「なに悲しそうな顔してんのよ・・・・・・」

 希「うぅ~、にこっちをモギュってしたい・・・・・・」

 にこ「なに恥ずかしいこと口走ってんのよ/// いいからホラ行くわよ!」


 店員「いらっしゃいませー! 空いてるお席へどうぞ!」

 にこ「どうせなら外のスペースで食べましょ」スタスタ

 希「なぁにこっち、ちょっとだけでもさせてもらえへん? ちょっとだけでええから。さきっちょだけでええから」

 にこ「さきっちょだけってなによ!? しないわよ!」///

 希「むぅ~、こうなりゃ甘いもんガッツリ食ったんでー!」

 にこ「お昼食べたばっかりでしょ、太るわよ」

 希「ウチはいくら食べても太らんもーん」

 にこ「油断してると痛い目見るわよ」


 希「せやかてにこっち、このメニュー見てみ?」


 メニュー「」美味しそうなスイーツの数々


 にこ「・・・・・・・・・・・・」ゴクッ

 希「やろ?」

 にこ「ま、まぁ? 普段から動いてるし、たまにはいいわよね?」
 
 希「そうそう。たまにはいいやん? ウチはこのジェラート盛り合わせ! 君に決めた!」

 にこ「ならわたしはケーキと珈琲のセットにしようかしら」

 希「じゃあ店員さん呼ぶなー? あ、すみません。このジェラート盛り合わせを一つ。種類はえっと、木苺ミルクと抹茶と胡桃で。あとアメリカンコーヒーをお願いします」

 にこ「わたしはケーキと珈琲のセットで。ケーキは・・・・・・モンブランで、コーヒーはウィンナーコーヒーをお願いします」


 店員「かしこましました。少々お待ちください」

 希「ウィンナーコーヒーってウィンナー入ってるん?」

 にこ「んなわけないでしょ。ウィーン風のコーヒーのことをそういうのよ」

 希「へぇ、物知りやん」

 にこ「小さいころママに同じ質問をして、教えてもらったの。それを覚えてただけよ」

 希「なるほどなぁ」

 にこ「因みに、これは日本独特の言い方だからウィーンでウィンナーコーヒーって言っても通じないわ。アメリカンコーヒーもそうだしね」

 希「おお、勉強になるなぁ。この調子で学校の勉強もしたらええのに」

 にこ「それとこれとは別よ」


 希「またえりちや海未ちゃんに怒られるで?」クスクス

 にこ「うっ・・・・・・それは嫌ね」

 希「よければウチと一緒に勉強する?」

 にこ「そうね、お願いしようかしら」

 希「よっしゃ、任しとき! うーん、今から楽しみや! これでわしわしし放題!」

 にこ「漏れてるわよ心の声が。ここの会計あんた持ちにするわよ」

 希「千円前後でにこっちのおっぱいを好き放題できるなら安いもんや! なんなら前払いするで? 10回分を諭吉さんで」

 にこ「あんたわたしの胸になんの恨みがあんのよ!?」

 店員「あの、ご注文の品をお持ちしました・・・・・・」

 にこ「え、あっ、すみません!」

 店員「あと、他のお客様もいらっしゃいますので、もう少し声量の方を落として頂けませんでしょうか?」


 にこ「はい、すみません。気をつけます、すみません」ペコペコ

 希「すみません、気をつけます」ペコリ

 店員「ごゆっくり御くつろぎください」

 にこ「あんたのせいで怒られちゃったじゃないのよ」ジトッ

 希「ウチのせいなん? ひどいわー。にこっちそれはないわー」

 にこ「」イラァ

 希「に、にこっち? アイドルがしたらアカン顔になってるよ? 大丈夫? おっぱい揉む?」

 にこ「揉まないわよジェラート一口寄こしなさい」

 希「は、はい・・・・・・」

 にこ「あら、木苺のジェラート美味しいわね。希もモンブラン食べる?」

 希「ええの? じゃあ一口」パクッ

 にこ「あっ、あんた一口が大きいのよ! 三分の一くらい持ってかれてるじゃない!」


 希「ケチケチせんでもええやーん。ほら、他のジェラートもあげるから」

 にこ「全く、しょーがないわねー」

 希「じゃあ胡桃をあげる。ほい、あーん」

 にこ「ちょ、いいわよそんなの!」

 希「あーん」

 にこ「しないからね!? いくら待ってたってしないわよ!?」

 希「あーん」

 にこ「・・・・・・・・・・・・」///

 希「あーん」

 にこ「・・・・・・あ、あー・・・・・・ん」//////

 希「ふふっ♪ 美味しい?」ニコニコ

 にこ「お、美味しいわよ・・・・・・//////」フイッ!

 希「次は抹茶ね」


 にこ「まだやんの!?」//////

 希「三種類あるんやから当然やん? ほら、あーん」ササッ

 にこ「(まぁ二回目だし・・・・・・)あー・・・パシャッ・・・ん!?」

 希「おっ、撮れた撮れた」ニシシッ

 にこ「あんたなに盗撮してんのよ!?」ガタタッ

 希「にこっちとラブラブ~なところをえりちに見せたろ思て」

 にこ「思て♪ じゃないわよ! 消しなさい今すぐ!!」

 希「しょーがないな~。ほい、消したで」

 にこ「や、やけに素直ね。消したんなら許してあげ――」ピロン♪

 希「あ、しもた」

 にこ「ま、まさかあんたグループLINEに上げたわね!?」


 希「あ、でもえりちとの三人のやつや。セーフセーフ」

 にこ「なにもセーフじゃないわよ!」

 店長「お客様」

 にこ「なによ!? ・・・・・・あっ」

 希「あ」

 店長「お静かに願えますかな?」

 のぞにこ「「はい、すみません・・・・・・」」



 店員「ありがとうございましたー!」

 にこ「あんたのせいで怒られちゃったじゃないの」ムスッ

 希「にこっちが騒ぐからやろ?」

 にこ「原因はあんたでしょうがっ!」


 希「まぁまぁ、ケーキもジェラートも美味しかったし、ええやん♪」

 にこ「いいわけないでしょ!? なんであんたも絵里もわたしが何か食べるところを撮ろうとするのよ」

 希「にこっちが小動物みたいで可愛いからやん?」

 にこ「ふんっ、にこが可愛いのは当たり前でしょ!」

 希「流石にこっちやんね。じゃあそろそろ帰ろうか」クスクス

 にこ「・・・・・・ちょっと待ちなさい」

 希「ん?」

 にこ「お店の前で記念撮影するわよ。希との初ツーリングなんだから」

 希「おっ、そやね! 撮ろ撮ろ♪」ウキウキ


 にこ「変なことしないでよ?」

 希「しないしない、したこともない」

 にこ「どうだか・・・・・・」




 絵里「あら? 希からグループLINEがきてる」




 のんたん<写真を送信しました

 のんたん<にこっちとデートなう

 にこにー☆<なにがデートよ! 絵里! 写真消しなさい! 今すぐ消しなさい! 分かったわね!

 のんたん<写真を送信しました

 のんたん<にこっちとツーショット♪


 のんたん<ラブラブやろ?

 にこにー☆<スタンプ(ご想像にお任せ)

 のんたん<スタンプ(ご想像にお任せ)




 絵里「あら、楽しそうね。今度は私も一緒に行こうかしら」フフッ





 終わり


 着地地点を見失って終盤グダグダになってしまった。

 にこえり≪タンデムツーリング≫
 にこえり≪タンデムツーリング≫ - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1511274049/l50)

 これのほんのり続きでした。

 のぞえりのツーリングが見たいという意見もあったので、いつか書くかも。

 貧乏穂乃果≪このままじゃ、穂乃果倒れちゃう≫
 貧乏穂乃果≪このままじゃ、穂乃果倒れちゃう≫ - SSまとめ速報
(http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/14562/1509361803/l50)

 前作もよかったら読んでみてください。

 お目汚し失礼しました。

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