ちひろ「ファンからの贈り物ですか?」 (89)



モバP「そうですね」

ちひろ「相変わらず凄い量ですね」

モバP「人気になってアイドルにプレゼントしてくれるのは嬉しいんですけど」

モバP「検閲が大変なんですよ」

ちひろ「このくらいなら私がやりますよ」

モバP「……本当にいいんですか?」

ちひろ「え?」

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ちひろ「あはは、もしかして心配してくれてます?」

ちひろ「大丈夫ですよ。このくらいの仕事でプロデューサーさんの負担が軽減できるなら」

ちひろ「私は喜んでやりますよ」ニコニコ

モバP「このくらい……ね」

モバP「まぁ試しに一つ開けてみますか」


モバP「んーまずは普通の……あ、この人なら大丈夫かな」ス

ちひろ「智絵里ちゃん宛のやつですね」

モバP「この人三ヶ月に一回プレゼント送ってくるので覚えてるんですよねぇー」

モバP「中身開けてみます?」

ちひろ「あ、では是非」ゴソゴソ

ちひろ(んんん、このモコモコした手触りは……)

バサ

ちひろ「セーター……ですか」

モバP「そうですね」

ちひろ「へぇ! いいじゃないですか!」


モバP「ちひろさん、よく見てください」

ちひろ「あ……」

モバP「セーター中央部にでかでかとしたハートマーク」

モバP「その下には智絵里ラブと書かれています」

ちひろ「自分で編んだやつなんですね……」

ちひろ「このセンスはちょっと……」

ちひろ「で、でも、贈り物のセンスは人それぞれですからね」

ちひろ「ちなみにこれはセーフですかアウトですか?」

モバP「いや、特にアウトにする理由もないので普通に智絵里に渡してますよ」

モバP「三ヶ月に一度同じようなセーターを毎回渡してるんですけど」

モバP「決まって苦笑いですよ」


ちひろ「ここまでしてもらえて嬉しい半面ちょっと困っちゃいますよね……」

ちひろ「まぁ、でもアイドルからファンへのプレゼントってこんなものじゃないですか?」

モバP「こんなもので済めばいいんですけどね……」チラ

モバP「あー次はこの人か」

ちひろ「どうかしましたか?」

モバP「こいつの中を開けてみてください」

ちひろ「千枝ちゃん宛の贈り物ですね」

ちひろ「中身は……」ゴソゴソ




ちひろ「……」ヒョイ

パカ

ちひろ「……プロデューサーさん指輪が入っていました」

ちひろ「しかもこれティファニーです」

モバP「中に紙切れ入ってませんでした?」

ちひろ「……」ゴサゴサ

ちひろ「……プロデューサーさん婚姻届の紙が入っていました」


ちひろ「こ、これはあれですかね」

ちひろ「将来的に僕と結婚してくださいとかそういうやつですかね?」

モバP「今すぐ結婚したいらしいですよ」

ちひろ「あ、あれ日本の女性の結婚出来る年齢って……」

モバP「千枝ちゃんは合法。だからセーフ」

モバP「が理屈らしいです」

ちひろ「合法とは一体……」


ちひろ「ちなみに千枝ちゃんには?」

モバP「渡してもないですし伝えてもないですよ」

ちひろ「当然ですよね」

モバP「でも物が物なんで捨てるわけにはいかないし返送してるんですけど」

モバP「またこうやって送ってきちゃうんですよねぇ……」

ちひろ「今度返送するときは大人になるまで待ってくださいというお手紙を入れたほうが良さそうですね」


モバP「次は……杏宛のやつですね」

ちひろ「杏ちゃんへのプレゼントですか」

ちひろ「もしかして飴玉とかですかね?」

モバP「そんな可愛いものだったらいいんですけど」ゴソゴソ

クマー

ちひろ「あら可愛いものじゃないですか。小さなウサギのぬいぐるみ」

モバP「……」

モバP「触ってみますか」ス



訂正


モバP「次は……杏宛のやつですね」

ちひろ「杏ちゃんへのプレゼントですか」

ちひろ「もしかして飴玉とかですかね?」

モバP「そんな可愛いものだったらいいんですけど」ゴソゴソ

ウサー

ちひろ「あら可愛いものじゃないですか。小さなウサギのぬいぐるみ」

モバP「……」

モバP「触ってみますか」ス


ちひろ「特に変なところは……」サワサワ

ちひろ「ん?」

モバP「貸してください」

ブチィィ

ちひろ「ああ! そんな! ファンからの贈り物を……!」

モバP「おお、ありましたありました」

ちひろ「なんですかその黒いの」

モバP「盗聴器です」

ちひろ「」


モバP「まったくバレないと思ってるんですかね」パキ

ちひろ「……」

モバP「どうしました?」

ちひろ「いえ……その……言葉が出なくて……」

モバP「ちひろさん」

ちひろ「なんでしょう」

モバP「男性からの贈り物ってしっかりとチェックしてますか?」

ちひろ「ちょっと家に忘れ物をしたので取りに帰ってもいいですか?」

ちひろ「さらに言うとプロデューサーさんにもお家についてきてほしいんですけど……」

モバP「勤務時間過ぎればいくらでも付き合いますよ」


モバP「気を取り直して次です」

ちひろ「これは菜々ちゃん宛のやつですか」

ちひろ「随分小さな小包に入っていますね」

モバP「開けてみます?」

ちひろ「……え、遠慮します」

モバP「段々とこの仕事の怖さがわかってきましたね」

モバP「えっと……中身は……」ゴソゴソ

アンメルツヨコヨコ

モバP「……」

ちひろ「……」


モバP「後で渡しておきましょう」

ちひろ「そ、そうですね。最近若い人でもよく肩こりますし」

モバP「きっと菜々なら喜んで受け取ってくれるはずです」

ちひろ「えっと次は……」

ちひろ「凛ちゃん宛のやつですね」

モバP「あ! そいつは待ってください」

ちひろ「ど、どうしたんですかそんな怖い顔して」

モバP「いや……その……手袋つけてからそいつを開けてもいいですか?」

ちひろ「て、手袋ですか?」


……

モバP「よかった。ただの造花でしたね」

ちひろ「なぜそんなに慎重だったんですか?」

モバP「いや、前に凛宛に少し生臭いティッシュを大量に詰めた箱を送られてきたことがあったので……」

ちひろ「な、生臭いって……」

モバP「あれはさすがにトラウマになったなぁ……」

寝ます


モバP「あ、これは小梅のやつですね」

ちひろ「頼みますから変なものが出てこないように……」

モバP「小梅の贈り物にはあんまり変なものが入ってないので大丈夫ですよ」

モバP「ほら、開けてみてください」

ちひろ「ええ、本当ですか?」ゴソゴソ

目玉

ちひろ「……」シロメ

モバP「そんなに驚かないでくださいよ」


ちひろ「そりゃびっくりするに決まってるじゃないですか!」

ちひろ「しかも妙にネバネバしててそれっぽさが……」

モバP「玩具なんで安心してください」

モバP「小梅の贈り物って凄くマニアックなものが多いんですけど」

モバP「アウトになるものが全然ないんですよね」

モバP「小梅も毎回喜んでますし」

ちひろ「でも開ける人間の心臓に悪いですね」

モバP「チャッキーの人形が送られてきたときはマジで心臓が止まるかと思いましたよ」


ちひろ「これは紗南ちゃんのプレゼントですね」

ちひろ「妙に大きな箱に入ってますね」

モバP「おそらくゲーム機でしょうね」

ちひろ「あー紗南ちゃんらしい贈り物ですね」

モバP「でもみんな考えることは同じで」

モバP「ほら……PSVが現時点で10個も届いてるんですよ」

ちひろ「うわぁ……扱いに困りますね」


モバP「一応ゲームソフト毎に使い分けてなんとか使用しているらしいです」

ちひろ「紗南ちゃん……なんていい子なんでしょう」

モバP「ただ中には普通の中古ならともかく」

モバP「手垢がべっとり付いたやつとか送ってくる人とかいるんですよね……」

ちひろ「そ、それは生理的にきついですね……」

モバP「そういうのは申し訳ないですけど廃棄コースになっちゃったりとかしますねー」


モバP「ん? これは文香宛ですね」

モバP「ああ、この人かー」

ちひろ「よく贈られる方なんですか?」

モバP「ええ。こいつは安全なんで見てみてもいいですよ」

ちひろ「やけに重いですね」ゴソゴソ

ちひろ「これは……原稿用紙に文字がびっしり書かれてますね」

モバP「自作の小説を送ってくれる人なんです」

ちひろ「それはまた変わった人ですね」


モバP「読んで見てください」

ちひろ「検閲ですしね。しっかりと読み込んで差し上げますよ」

……10分後……

ちひろ「……」

モバP「どうでしたか」

ちひろ「どうやらこれは文香ちゃんと送り主の恋愛小説っぽいですね」

ちひろ「ははは……」

モバP「まぁ、簡単に言えばラブレターですよ」

ちひろ「随分と愛が重いラブレターですね……」


モバP「もっと読み進めればいつも通りなら官能シーンがありますよ」

ちひろ「遠慮しておきます」

ちひろ「ちなみにこれは文香ちゃんには?」

モバP「色々考えたんですけどね」

モバP「文香に確認とったら是非読んでみたいとのことだったんで渡してます」

ちひろ「なるほど」

モバP「後日文香から赤ペンが入ったその原稿用紙を渡されるんですけどね」

ちひろ「もしかしてそれ、送り返してるんですか?」

モバP「はい」

ちひろ「やめてあげましょうよ!」

モバP「送り主もめげないで何回も送ってきてるんで大丈夫ですよ」


モバP「さて、ここらへんで半分ですかね」

ちひろ「まだまだ長そうですね」

ちひろ「あ、これは泉ちゃんへのやつですか」

ちひろ「これもまた小さな入れ物に入ってますね」

モバP「それもたぶん開けて大丈夫です」

ゴソゴソ

ちひろ「USBですね」


モバP「やっぱりそうか……」

ちひろ「中、確認してみます?」

モバP「やめておきましょう」

ちひろ「でも検閲しないと」

モバP「こういうやつに限っては泉と確認取るようにしてるんですよ」

モバP「一回確認してウィルスに感染させられたことがあったので……」

ちひろ「な、なるほど」


モバP「まぁ、中には面白いものもあるんですけどね」

モバP「セキュリティが掛けられていて泉がそれを突破したら」

モバP「中身はハッピーバースデーの画像が入ってるだけだったりとか」

ちひろ「それ……嬉しいんですかね?」

モバP「泉は結構喜んでましたよ?」

ちひろ「そうですか……」


ちひろ「色々変わってるんですね」

モバP「ちょっと変わってるくらいだったら笑って済ませるんですけどね」

ちひろ「これは芳乃ちゃん宛ですね」

モバP「そうですね」

ちひろ「……」

ちひろ「……凄い達筆な字でお布施って書かれてるんですけど」

ちひろ「……中身は?」

モバP「現金ですね」

ちひろ「えぇ……」

モバP「事務所のポストに直で入れてくる人がいるんですよ」」


ちひろ「この事務所はお寺かなにかでしたっけ?」

モバP「どこかで芳乃に助けられてる人がいるんでしょうね」

モバP「でも、正直これも結構困るんですよ」

モバP「芳乃は受け取らないと一点張りだし」

モバP「かと言って会社で受け取るわけにもいかないし」

モバP「人によっては車が買えるくらい包む人がいますから」

ちひろ「その人は芳乃ちゃんになにをしてもらったんですかね……」


ちひろ「次は美波ちゃん宛のやつですね」

モバP「……」

ちひろ「どうしたんですか。そんな嫌そうな顔して」

モバP「美波に関しては僕が見てからちひろさんに渡しますね」

ちひろ「か、構いませんけど」

……

モバP「はぁ……今回も、か」

ちひろ「中身はなんだったんですか?」

モバP「誰かの裸写真に美波の顔を貼っつけたコラでしたね」

ちひろ「えぇ……」


ちひろ「とてもじゃないですけど見せられないですね」

ちひろ「傷ついてしまうかもしれませんし」

モバP「そういうのがいいみたいですよ。まったく共感できませんけどね」

モバP「前はコンサート中の美波のスカートの際どい写真を大量に送りつけられたり」

ちひろ「うわぁ……」

モバP「美波のファン層にはこういう輩もいるんで凄く困りますよ……」




ちひろ「なんていうか怖いですね」

モバP「こういう変なのも多いんでなるべく俺が確認するようにしてるんですよ」

ちひろ「アイドルも大変ですね……」

モバP「まぁ、その分嬉しいこともありますしね」

モバP「いい例だと……これとかいいですね」

ちひろ「乃々ちゃん宛のやつですね」

モバP「中身は手紙です」


ちひろ「読んでも大丈夫なんですか?」

モバP「検閲ですから」

ちひろ「では……」チラ

ちひろ「……」ブワァ

モバP「どんな内容でした?」

ちひろ「内気でコミュニケーションに悩む女子小学生からの手紙でした……」

ちひろ「でも、乃々ちゃんがテレビで頑張ってる姿を見て自分も少しずつ変わるよう努力してるって……」

モバP「乃々はこういう手紙が多いんですよね」




モバP「まぁ、大体プレゼントはこんなものですね」

モバP「どうでしたか?」

ちひろ「とても個性的だと思いました」

モバP「ものはいいようですね」

ちひろ「ただ私にはこの仕事はちょっと……」

ちひろ「さっきの手紙みたいのやつがほとんどだったらやりたいんですけどね」

モバP「やっぱりそうなりますよね」

ちひろ「ん……? この机の下の箱に分けられているやつはなんですか?」

モバP「あ、それは駄目です!」

ちひろ「なにをそんなに慌てて……」

ちひろ「これ! プロデューサーさん宛の贈り物じゃないですか!」

ちひろ「凄い、すごいですよ! プロデューサーさんファンにも認知されているんですね!」

モバP「……」


モバP「ちひろさん。悪いことは言わないんでこいつらのことは忘れましょう」

ちひろ「えー、なに恥ずかしがってるんですか」

ちひろ「あ、この大きい箱とかなにが入ってるんですかね」

モバP「勝手に開けちゃマズイですって!」

ちひろ「なに言ってるんですか。さっきの贈り物とは違って変なものなんて――」

ちひろ「キャッ!」

モバP「あーあ。またひどいなぁ」

ちひろ「な、なんなんですかこれなんなんですか!」

モバP「なにって見た通りじゃないですか?」

モバP「クマのヌイグルミの顔に俺の写真が貼ってあって」

モバP「腹部には大量のカッターナイフが刺さっているだけですね」

ちひろ「普通に嫌がらせじゃないですか!」


モバP「だから開けちゃいけないって……」

ちひろ「こ、こんなの送られてくるんですか!?」

モバP「まぁ……過激な人間からちょくちょくと」

モバP「だから俺宛のやつは全部見ずに捨ててるんですよ」

ちひろ「どうしてこんなこと……」

モバP「自分の好きな人の近くに仕事付き合いであろうと男がいるのが嫌なんじゃないんですかね」


モバP「気持ちはわからなくはないんですけど」

ちひろ「ここまで来るとやりすぎ感が出ちゃいますよ……」

モバP「というわけでこいつらは全部破棄ということで」

ちひろ「そうなっちゃいますよねー」


――

モバP宅

モバP「ふぅ。ちひろさんの家に寄ったら結局この時間か」

モバP「とりあえずちひろさん家からなにもでなくて一安心か」

モバP「贈り物……か」

モバP「そういえばこの空気清浄器もアイドルの皆からもらったものだっけ」

空気清浄機「……」

モバP「……」

モバP「今日は疲れたなぁ。風呂にでも入るか」スタスタ

空気清浄機「……」

空気清浄機「……」ジー

END

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