男「一日だけ全くスマホにさわらない生活をしてみることにした」 (27)


男「今の人って、みーんないつでもどこでもスマホいじってるよな」

友人「まぁな」

男「俺だって、家でも外でも、下手すりゃ寝ながらいじってることもあるもん」

友人「風呂場でいじる奴すらいるらしいぜ」

男「マジかー」

友人「マジマジ」


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男「よし、決めた!」

友人「何を?」

男「俺、一日だけ全くスマホにさわらない生活をしてみようと思う!」

友人「一日だけかよ」

男「目標に無理があると続かないからな」

友人「あ~……でもたしかに、一日だけでもかなりキツイかも」

男「明日は休日だし、さっそくやってみるよ」

友人「頑張れよ」


~ 自宅 ~



男「……ん」ムクッ

男(やべえ、ずいぶん朝寝坊しちゃったな)

男(あ、そうか……スマホのアラーム切ってたからな)

男「とりあえず、どこか出かけるか」

男(今日はスマホ使わないって決めたけど、万が一の時のために携帯だけはするようにしよう)


~ 駅 ~



男「たまにはどこか、めったに行かない駅に行ってみるか」

男(えぇ~と、時刻表をスマホで調べ……)スッ

男(って危ない危ない! いきなり禁を破るとこだった!)


男「おー、着いた着いた」

男「ちょうど昼飯時だし、どこか入ろうかな」

男(ハズレを引くのは勘弁だから、さっそく口コミサイトを……)スッ

男(ってまたかよぉ!)

男(スマホには頼らず、自分の勘だけで入る店を決めるんだ!)


~ ラーメン屋 ~



男「味噌ラーメン」

店員「あいよー!」

男「……」

男「……」

男「……」ソワソワ

男(ヒマだな……)

男(いつもなら待ってる間、ずっとスマホいじってるから退屈しないけど)

男(スマホを使わないとこうも時間を持て余すとは……)


男「あぁ~、うまかった」スタスタ



通行人A「おい、このニュース見たかよ! 俳優の○○が書類送検だって!」

通行人B「マジで?」



男(おおっ、気になるニュースだ!)

男(うう……ニュースサイトを見たい!)

男(掲示板でこのニュースがどう語られてるか知りたい……!)


男(ああ~……スマホいじりたい)

男(あのサイト見たい……あの情報検索したい……暇潰しにゲームしたい……)



インターネット… 検索機能… 動画… 画像… 音楽… 地図… ゲーム…

LINE… 電子書籍… カメラ… 辞書… 天気… 買い物… 財布代わり…



男(こうして考えると、スマホは誘惑のかたまりだな!)


~ 自宅 ~



男「ふぅ~……」

男(どうにか一日スマホを使わずに済んだぞ)

男(ところで今何時だ? スマホで……)

男「あぶねええええええええ! 最後の最後でやっちまうとこだった!」


――

――――



友人「一日スマホなし生活はどうだった?」

男「予想以上にキツかった」

男「普段、自分がいかにスマホに頼り切ってるかってのがよく分かったよ」

男「ちょっとしたことでいじりたくなるもん」

友人「だよな、よくやり遂げたもんだよ」

男「だからこれからも、連絡とかを除いてなるべくスマホを使わないようにするよ」

男「多分すぐ挫折するだろうけど」

友人「そうやって意識するだけでも違うだろ。偉いよ、お前は」


一週間後――



友人「どうだ?」

男「まだ続いてるよ。本当に必要な連絡の時以外は、スマホ使わなくなった」

友人「なにか効果はあったか?」

男「まず……自分に自信がついたな。スマホに頼らなくなったから」

男「あと、スマホやらないと当然目も疲れないし、やることないから夜更かしもしなくなったな」

友人「偉いなぁ、俺もちょっとやってみたけど半日でギブだった」


~ 自宅 ~



男(スマホは使わないから、インターネットする時はパソコンで……)カタカタ

男「ってこれじゃ意味ないじゃねえかぁ!」

男「よし、決めた! パソコンも使うのやめよう!」

男「あと……元々そこまで見てなかったけど、テレビもやめよう」

男「情報はなるべく新聞で仕入れるんだ!」


友人「おーっす」

男「おう」

友人「なんかだいぶ健康的になったな」

男「ああ、スマホ、パソコン、テレビをやめたからな」

友人「パソコンやテレビまでやめたのか!」

男「おかげで目がすっきりして、前みたいにしょっちゅう目薬さすこともなくなったよ」


友人「ふぅ~、最近はすっかり寒くなったな~」

男「ああ、家じゃいつも毛布にくるまってるよ」

友人「え? お前んち、たしかストーブあっただろ?」

男「ああ、今はもう冷暖房に頼るのもやめたんだ」

友人「へ? どうして?」

男「なんていうか、ああいうのはズルなような気がしてさ。やっぱり気候をそのまま受け入れないと」

友人「へ、へえ~……」


友人(あいつんちの近く通りがかったけど、電気ついてないな……留守か)


ガチャッ


男「あれ、奇遇だな」

友人「いたのか! 電気ついてないから、てっきり留守かと……」

男「電気を使うのをやめたんだ」

友人「電気を!?」

男「おかげで日が沈んだら寝るしかないから、すっかり健康さ!」


友人「久しぶり~……ってなんだその服!?」

男「俺手作りの服さ。似合うか?」

友人「あ、ああ」

友人(布と葉っぱを組み合わせた、いかにも手作りって感じの服だ……)

男「店で衣服を買うって、なんか違う気がしてな。服は自分で作ることにしたんだ」

男「よかったら、お前の分も作ってやろうか?」

友人「いやいや! 俺は店の服でいいや! ハ、ハハハ……」

男「そうか」


男「お、これは食える雑草だ!」ブチブチッ

友人「お前なにしてんだ……!?」

男「飲食店に入ったり、店で売ってるものを食べるのはやめにしたんだ」

男「これからは食料は自然から調達!」ムシャムシャ

友人「いや、いくら食える雑草っていっても、生でいくのかよ……せめて煮るとか」

男「火は怖いからな!」

男「うん、うまい!」


友人(あいつがアパートから消えたのは、それからすぐのことだった)

友人(もちろん、いくら電話しても繋がらない)

友人(きっとあいつは自分の住居も、現代的な建物には頼らないことにしたのだろう)

友人(一体どこにいっちまったのやら……)



――――――

――――

――


友人(それからしばらくして――)

友人(スマホをいじってたら、こんなニュース動画を目の当たりにした)



『猿とも人ともつかない全裸の生物が、山中で飛びまわってる姿が目撃され……』

『ウホホッ! ウホホホッ! ウーホーッ!』



友人(あいつ、ついに野生化したのか……)

友人(だけど、動画に登場するあいつの顔は、どこか幸せそうで羨ましかった)







― 終 ―

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