モバP「LiPPS再建計画?」 (89)

いろいろと拗れたLiPPSをモバPが元通りにしていく話です
拗れた状態からスタートするので、原作とキャラがだいぶ違っている部分があります。

最後まで書いていますが、かなり長いのでキリの良いところで休憩しながら投稿していきます。

よろしくおねがいします

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1511589045

俺はしがない中堅プロデューサー。事務所のアイドルを何人か担当している。


そんな俺が美城常務に呼び出された。・・・何かやらかしただろうか?
緊張しながらも常務の部屋の前までやってきた。

コンコン

常務「入りたまえ。」

モバP「はい、失礼します。」

常務「今回君を呼んだのは、君に任せたい仕事があるからだ。」

モバP「はい。仕事・・・というと。」

常務「担当してもらいたいユニットがあるのだ。
    LiPPSの担当をしてもらいたい、ユニットは知っているな?」

モバP「し、知ってるも何も!ウチの事務所でトップクラスの人気ユニットじゃないですか!
    ・・・失礼ですが、いまさら自分などが担当する意味はあまり・・・」

常務「それが大有りなのだよ。確かに彼女達は一時期はウチの事務所の顔とも言える存在にまで
    なったが・・・今は、活動休止寸前まで追い込まれている。」

モバP「活動休止ですか!?確かに、最近テレビで見ることが減っていましたが・・・」

常務「どうやらこのユニット、今は問題を抱えているらしい。
    しかもメンバーがその問題を我々に隠しているようなのだ。おかげでこちらも困っている。」

モバP「つまり自分がLiPPSの担当になるのは・・・」

常務「そう。彼女たちが抱えている問題を解決し、LiPPSを立て直してほしい。
    君ならばそれが出来ると期待している。よろしく頼む。」

モバP「・・・わかりました。とりあえず、本人たちと話をしてみます。」

常務「うむ。今別の部屋にLiPPSの4人を集めている。このまま向かってくれ。」

モバP「はい。」


モバP「・・・ん?」

モバP「『4人』・・・?」

常務の言葉に引っかかりを覚えながらも
俺はLiPPSが待機しているという部屋の前までやってきた。

コンコン

モバP「失礼するよ。この度、新しく君達の担当になった・・・」

周子「ああ、常務から聞いてるよ~。新しい担当さんになったんだってね~。」

俺の自己紹介に塩見周子が割り込んできた。
ソファーに座ってスマホをいじりながら、興味なさげにしている。

モバP「ああ、今日から君達と一緒にLiPPSを盛り上げていきたい。」

周子「・・・前担当してたプロデューサーも、そう言ってたんだよね。
    もういなくなって、この惨状だけどさ。」

モバP「・・・惨状?」

周子「そっ!トップアイドルだったのも今は昔。今は事務所のお荷物ユニットなのだ~」

モバP「何言ってるんだ。あっ、美嘉、久しぶりだな。」

俺は周子から話題をそらすように、美嘉に話を振った
美嘉は担当ではなかったが、前に何度か一緒に仕事をしたことがある。
ギャルと名乗っているが根は真面目で、とても明るい子だったはずだが・・・

美嘉「・・・うん、久しぶり。」

今の美嘉は、その時の面影はまるでなく。
暗い顔をしながら、ずっと俯いていた。こちらに顔も向けやしない

モバP「それと・・・」

俺はフレデリカに目をやった。
前に仕事を一緒にしたときは、活発で場を盛り上げるムードメーカーだったが・・・


フレデリカ「・・・・フンフーン・・・」

こちらを見もせずに鼻歌を歌っている。心ここにあらずと言った感じだ。

そして残るはリーダーの・・・

モバP「奏。君がユニットのリーダーだったな。よろし・・・」

奏「あなたに話すことは、何もないわ。」


返ってきた言葉は、拒絶の言葉だった。

モバP「・・・いきなりひどいじゃないか。」

奏「事実だもの。私達はプロデューサーなんて必要としていないわ。
  私達は、私達の力だけで高みに行く。ねえ、みんな?」

周子「・・・そうやね。」

美嘉「・・・。」

フレデリカ「フンフーン♪」

モバP「・・・それともうひとつ聞いていいか。
     一人、足りないな。志希は、どうした?」

一ノ瀬志希。本来この部屋にいるはずのLiPPSのメンバー。
名前を出した途端、場の空気が微妙に変化するのを感じた。

周子「・・・志希ちゃんは、『失踪』しちゃったんだよね。まあ、いつものことだよ。」

モバP「・・・どのくらいいないんだ?」

周子「・・・一ヶ月ぐらいかな~」

奏「周子。余計なことは言わなくていいわ。」

周子「・・・へーい。」

奏「一ノ瀬志希はもういない。いなくなってしまったものは仕方ないわ。」

美嘉「奏!」

奏「黙って。事実よ。」

美嘉「・・・・うん。」

奏「そういうことだから。私達の担当をしたいならすればいいわ。
  でも私はあなたにプロデュースされる気なんてまったくない。覚えておいてね。」

モバP「・・・そうか。今はそれでもいいさ。とにかく、これから、よろしくな。」


俺はそれだけ伝えて、部屋をあとにした。

モバP(なるほどな、これは予想以上だ。)


何かに思い詰めている様子の城ヶ崎美嘉

心ここにあらず、ずっとぼーっとしている宮本フレデリカ

やる気のなさを隠しもせず、投げやりとも言える態度の塩見周子

普段の余裕ある態度とはうって変わって、敵対心をむき出しにしている速水奏


そして・・・『失踪』してしまった一ノ瀬志希。


モバP(これは・・・大変な仕事だな。でも、やるしかない。)

LiPPSの面々ととても和やかとは言えない顔合わせを済ませた翌日、
俺はさっそく動き始めることにした。

昨日の反応を見るに、4人で居るときに話を聞こうとしても同じことの繰り返し。
奏が強い拒絶反応を見せている以上、まともに話を聞けないだろう。

1人ずつ話を聞いていく必要がある。
まずはLiPPSに何が起きているのか把握しないと何も始まらない。
そして俺が最初に選んだのは・・・


モバP「美嘉!ちょっと時間いいか?」

美嘉「・・・・プロデューサーじゃん、何か用?」

美嘉だった。美嘉とは前々から付き合いがあったので話しかけやすかったのと、
なにより、あの場で一番思い詰めた顔をしていたので、
まず先に話を聞くべきだと思ったからだ。


モバP「はっきり言う。昨日顔合わせをしたが、LiPPSの面々の様子は異常だ。
     今LiPPSに何が起きているか把握したい。教えてくれないか?」

美嘉「・・・なんにも、ないよ。」

・・・まあそうなるよな。
いきなり教えてくれるなら、美嘉なら最初の日に教えてくれるはずだ。

モバP「ん、じゃあ質問を変えよう。どうしてお前、そんなに元気がないんだ?
     前に一緒に仕事したときは、もっと明るかったはずだ。」

美嘉「・・・そんなことないよー★ほら、元気元気・・・」

モバP「ムリするな、バレバレだぞ。」

美嘉「・・・・」

モバP「お前をそこまで暗くさせる何かが、今のLiPPSにはあるんだな?」

美嘉「そんなこと・・・・」

モバP「本当は誰かに相談したいはずだ。俺に、教えてくれないか?」

美嘉「・・・・・」

だんまりを決め込む美嘉。このままでは話も進まない。
なので、少し踏み込んでみることにした。

モバP「・・・一ノ瀬志希は、どこにいる?」

美嘉「・・・!」

・・・やはり。『失踪』した志希が、何かの鍵を握っている。

モバ「本当に志希は『失踪』したのか?何か知っているんじゃないか?」

美嘉「志希は・・・」

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志希「みんな、このことは私達だけの秘密にしよ?
    大丈夫、あたしなら『失踪』したってことにしてればオッケーだよ。
    にゃはは、アタシの失踪キャラがこんな風に役立つなんてね~~」

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美嘉「・・・私からは何も言えない。」

モバP「・・・ただの『失踪』じゃないんだな。いったい何があったんだ。」

美嘉「言えないって言ってるじゃん!もうこれ以上追求しないで!」
モバP「お前にこれ以上、つらい顔をしてほしくないんだよ。
     お前はカリスマギャルとして売り出しているが、
     本当は真面目で仲間思いなのは俺もよく知ってる。
     だからこそ、辛いんだろう?」

美嘉「・・・・・」

モバP「俺はまたお前に笑顔に戻ってほしい、それだけなんだ。
     そのためにLiPPSの問題を解決したい。教えて、くれないか。」

美嘉「・・・・・プロデューサ。あの、志希は・・・」

周子「ダ~メだよ美嘉ちゃ~ん。1人でプロデューサーに媚び売ったら。」



美嘉「周子!」

周子「まったく美嘉ちゃんは抜け目ないな~。
    早速新しいプロデューサーに自分を売り込み?
    カリスマJKはやることが早いね~。」

美嘉「違う!そんなんじゃ・・・」

周子「それでアタシたちの秘密を話してポイント稼ぎってわけね。
    いやーしたたかすぎてシューコちゃんちょっと引くわ~。」

美嘉「そんなことしない!アタシは・・・!」

モバP「俺が美嘉を問いただしたんだ。美嘉は悪くない。
     周子、お前も何か知ってることがあったら教えてくれないか?」

周子「お断り~♪あたしは美嘉ちゃんと違って、プロデューサーに媚び売るつもりないし。」

美嘉「周子!!」

周子「いい機会じゃん、美嘉ちゃん。
    こんな腐りかけのユニットなんかさっさと抜けて、プロデューサーさんとうまくやりなよ。
    今のLiPPSにこだわってても、未来はないよ?」

美嘉「・・・なんでそんなこと言うの。確かにみんなと知り合ったのは最近だけど、
    でもアタシは、LiPPSのこと・・・」

周子「あーパスパス。シューコちゃんそういうお涙頂戴ノリ嫌いなんだよね。
    ・・・抜けるのは勝手だけど、変なことプロデューサーさんに吹き込まないでね。

   ・・・それじゃ~ね~♪」

美嘉と俺と煽るだけ煽って、周子は去っていった。
そして美嘉は・・・

美嘉「・・・・」グスッ

泣いていた。

美嘉「・・・ごめんプロデューサー。ここで話したらみんなを裏切ることになる。
    言えないよ・・・」

これ以上の追求は・・・無理だな。

モバP「分かった。すまない、こんな気持ちにさせるつもりはなかった。」

美嘉「ううん、プロデューサーは悪くないよ。悪いのはアタシ達。
    ・・・どうしてこんなことになっちゃったんだろ。」

美嘉「フレちゃんも周子も奏も、みんな変わっちゃったんだ。
    でもあたしはやっぱり、LiPPSのみんなが好き。」

美嘉「何も話さないで、こんなこと言うのは図々しいかもしれないけど・・・」


美嘉「アタシたちを助けて。プロデューサー・・・」グスッ


再び涙を流す美嘉。今の美嘉にできる精一杯のSOSだ。
俺はそれに答えなくてはいけない。


モバP「・・・任せてくれ。俺が必ず、元のLiPPSに戻してみせるから。」


美嘉と約束をし、LiPPSを元に戻す決意を新たに固めた。

しかし翌日。事態は更に悪い方向に動き出す。


フレデリカ「フンフンフーン♪あっ、プロデューサー!」

フレデリカが俺のもとに駆け寄ってきた。
一昨日あったときと比べると、だいぶ機嫌がよいように見える

モバP「どうしたフレデリカ。機嫌よさそうだな。」

フレデリカ「あのね~!ずっと迷ってたんだけど、決心がついたんだ~。」

モバP「決心?なんのことだ?」

フレデリカ「フンフ~ン♪ではフレちゃんから重大はっぴょ~!」


フレデリカ「フレちゃん、アイドル辞めようとおもいまーす!」

突然のフレデリカの宣言に、俺はただ目を白黒させることしかできなかった。

モバP「フレデリカ・・・お前、何を言っているんだ?」

フレデリカ「ん~?そのままの意味だよ?アイドル、辞めようと思うの!」

モバP「どうして急に・・・何か理由があるのか?」

フレデリカ「理由?うーん、アイドルするのがね、つまらなくなっちゃった。」

モバP「・・・・それだけの理由じゃ、認めることはできない。」

フレデリカ「ぶ~!奏ちゃんと同じこと言う~!」

モバP「奏にも言ったのか?」

フレデリカ「ていうかメンバーみんなに伝えたよ。周子ちゃんはオッケーしてくれたけど、
       奏ちゃんはダメだって!だからプロデューサーさんに言ったの!」

モバP「周子は、いいって言ったのか・・・」

フレデリカ「うん!『フレちゃんがそうしたいなら、ええんちゃう?』だって!」

奏が拒否したのは・・・まあいいとしよう。
問題は周子だ。美嘉の時といい、まるでLiPPSをバラバラにしようとしているように見える。
いったい、何を考えているんだ?

いや、それよりもまず、目の前のフレデリカの問題だ。

モバP「俺の立場からしても、そのような理由じゃ認めることはできない。」

フレデリカ「え~、ケチ~。じゃあ活動休止でもいいよ。とにかく休みが欲しいの。」

モバP「同じことだ。ちゃんとした理由がないなら、認められない。」

フレデリカ「も~~!いいよ、認められなくてもフレちゃん仕事する気もうないから!
       じゃあね~~♪」


モバP「あっ!待て!」


俺の制止も聞かず、フレデリカはそのまま走り去っていってしまった。

モバP「さて、どうしたものかな・・・」

フレデリカは言動こそおちゃらけてはいるが、決して何も考えていないわけではない。
とても思慮深い人間だということは分かっている。
だから、ただつまらないという理由だけでアイドルを辞めると言い出すとは思えない。

美嘉「プロデューサー・・・」

きっと何か別の、俺に言えない理由が・・・

美嘉「プロデューサー!」

モバP「うおっ!美嘉、な、なんだ!」

美嘉「そんなにびっくりしないでよ!
    あ、あのさ、フレちゃんなんて言ってた?」

モバP「アイドル辞めると突然言い出した。
     アイドルがつまらなくなっただとか・・・」

美嘉「あのね、その理由たぶん、ウソだよ。
    アタシにはフレちゃんが辞めたい理由、わかる。」

モバP「・・・教えてもらってもいいか?」

美嘉「・・・たぶん、志希ちゃんのとこに行くつもりだと思う。」

モバP「・・・やっぱり志希か。」

このLiPPSの変化の裏には、いつも一ノ瀬志希の影がちらついている。
本当に志希は『失踪』しただけなのか?

・・・と美嘉に問い詰めたいところだが、ぐっと飲み込む。
秘密を守りつつ、それでも俺に協力しようとしてくれているんだ。
ここは美嘉の気持ちを尊重したい。

美嘉「ごめんね、今アタシが言えるのはこれだけなの。
    でもお願い、フレちゃんと・・・」

モバP「ああ。もう一回話をしてみるよ。ありがとうな、美嘉。」

美嘉「うん・・・」

場所は変わって事務所の一室。
今は俺とフレデリカの二人しかいない。
今後の進退について話がしたいとフレデリカを呼び出した。

フレデリカ「プロデューサー、フレちゃんの引退、認めてくれるの~?」

モバP「その前に話してほしいことがある。
     アイドルを辞めたい、本当の理由だ。」

フレデリカ「だから~言ってるよ~?つまらなくなったんだって・・・」

モバP「志希だな?」

いつもどおりのおちゃらけたテンションでしゃべるフレデリカに、
被せるように志希の名前を出した。

フレデリカ「・・・!」

途端にフレデリカの表情から笑顔が消えた。

フレデリカ「・・・どこまで知ってるの?」

モバP「まだ志希が『失踪』してるってことしか分かってない。
     美嘉もこれ以上のことは話してくれないんだ。」

フレデリカ「そっか・・・・」

モバP「お前と志希は、特に仲が良かったからな。
     心ここにあらずだったのも、アイドル辞めると言い出したのも。
     全部、志希が関係しているんだな?」

フレデリカ「・・・フレちゃんはね、ファンの人達のことすごい大事にしたい。
       でもそれと同じくらい、シキちゃんのことも大事にしたいの。
       アイドルになって初めて、『親友』って呼べる子だったから。」

フレデリカ「シキちゃんは今笑顔になれてないんだよ。
       だからアイドル辞めてでも、シキちゃんの傍に居てあげたい!」

フレデリカ「・・・な~んて、つい真面目になっちゃった~。
       こんなのフレちゃんのキャラじゃないよね~。」

モバP「いや、お前はすごい真面目なやつだよ。
     それでいて友達思いの、いいやつだ。」

フレデリカ「・・・そんなことないよ~。」

モバP「俺は必ず、志希をLiPPSに戻してみせる。」

フレデリカ「・・・・・」

モバP「でもその時お前がLiPPSにいなかったら、きっと志希はまたいなくなってしまう。
     フレデリカの力が必要なんだ。だから、まだ辞めないでほしい。この通りだ。」

俺は、フレデリカに頭を下げた。

フレデリカ「プロデューサー、そんなことしないで。」

フレデリカ「プロデューサーさんのこと、信じてもいいかなあ?」

モバP「・・・ああ!」

フレデリカ「じゃあフレちゃん、引退宣言撤回します!やめるのやめる!!」


・・・・なんとか、フレデリカを引き止めることができた。
まだまだ問題は山積みだが、とりあえず一息だ。

フレデリカと別れて事務所を出ようとした時だった。
ソロの仕事を終えた奏とすれ違った。


モバP「あっ、奏じゃないか。」

奏「・・・・気安く呼ばないで。」

むむ・・・キッツいな。しかし挫けてはいられない。


モバP「奏、ありがとうな。」

奏「何が?」

モバP「フレデリカを引き止めてくれたんだろう?
     おかげで引退を撤回してくれたよ。」

奏「礼を言われることなんてしてないわ。LiPPSにとってそのほうが良いと思ったからよ。」

モバP「仕事終わった後みたいだが、事務所に忘れ物でもしたのか?」

奏「バカ言わないで。今から個人でレッスンするのよ。」

モバP「今からか?もう時間も遅い、体を休めたほうが・・・
     というより、今のお前、余裕がなさすぎる。もっと肩の力を・・・」


奏「黙って。私はあなたをプロデューサーだと認めていないわ。
  私は私の力でLiPPSを高みに持っていくのよ。・・・じゃあね。」

スタスタと奏はレッスン場に向かっていってしまった。
美嘉とフレデリカとの距離は縮められたが
LiPPSのプロデューサーと認められるにはまだまだ・・・・・・先は長いようだ。

まだまだ先は長いので、ここで1回休憩します

―事務所の一室。奏・周子・フレデリカ・美嘉の4人が話し合っている。


周子「へー、フレちゃんやっぱりやめないんだ?」

フレデリカ「うん。もうちょっとだけ続くのじゃ!」

周子「なんなんその唐突なDBは・・・・」

美嘉「でも良かった。辞めるって聞いたときはびっくりしたんだから!ね、奏!」

奏「・・・そうね。でもあのプロデューサー気取りには、注意が必要ね。
   私たちの秘密を探ろうとしているわ。」

美嘉「そ、そのことなんだけどさ・・・・」

奏「・・・何?」

美嘉「あのプロデューサーには、話しちゃってもいいんじゃないかな・・・?」

奏「・・・・」ギロッ

周子(わー、奏ちゃんこわい顔~)



美嘉「う・・・・」

奏「ダメよ。これは他ならぬ志希の願いなんだから。」

フレデリカ「フレちゃん的には~。美嘉ちゃんに賛成~!」

奏「フレデリカまで・・・何を言っているの。」

フレデリカ「私もあの人は、信じてもいいと思うよ~?」

奏「ダメよ、認めないわ。私たちはこの秘密を抱えていかないといけないの。
  それが私たちに課せられた・・・罪なのだから。」


フレデリカ「ぶ~・・・・・」

周子「あーはいはい!もうすぐあの人来るから!この話ここまでにしよ?」

奏「・・・そうね。みんな、わかってるわね?」

美嘉・フレデリカ「・・・・・・」

フレデリカを引き止めた翌日。
事務所の廊下で俺は1人頭を悩ませていた。

モバP 「うーん、どうしたもんかな・・・」

美嘉は秘密を明かしてはくれなかったが、味方にはなってくれたと思う。
フレデリカもとりあえずは、俺のことを信じてくれた、と思いたい。

しかし、ここから先が手詰まりだ。
あの二人は味方になってくれたが、二人から今以上の情報は得られない。
奏は完全に俺を拒絶している。ロクに会話すらしてくれない。
周子はちょくちょくこちらにコンタクトを取ってくるが、言動の真意はまったく掴めない。
志希に至ってはいまどこにいるかも分からないのが現状だ。

志希をLiPPSに戻すとフレデリカに宣言したはいいが、いまだこの体たらくだ。


周子「どうしたの~プロデューサー。悩ましい顔して~。」

悩める俺の前に突然現れたのは、周子だった。

モバP「誰のせいで悩んでると思ってるんだ。分かってて言ってるだろう。」

周子「まあね~♪美嘉ちゃんとフレちゃんを味方につけたはいいけど、
    その先が進まない。大方、こんなところでしょ。」

モバP「悔しいが、まったくもってその通りだな。」

周子「あの二人は仲間思いだからね、これ以上は何も話さないよ。
    どんなにプロデューサーが距離を縮めても、奏がストップかけてる以上、
    口を開くことはないよ。義理堅いからね~。」

モバP「・・・だろうな。分かってるから、これ以上のことが聞けない。」

周子「・・・その膠着状態、あたしが動かしてあげよっか。」

モバP「・・・どういうことだ?」

周子「志希ちゃんに、会わせてあげる。」

周子の提案に、思わず息を呑んだ。

モバP「・・・それはとてもありがたいが、いいのか?」

周子「あたしははっきり言って、LiPPSに愛着なんてない。
    奏ちゃんに止められていようが、知ったことじゃないんだよね。」

モバP「俺はお前の真意が掴めない。美嘉を煽ってみたり、フレデリカの引退を認めたり。
     そして急に俺に協力してみたり。・・・・何を考えてる?」

周子「あたしのことなんか気にしなくていいよ。それよりこの話、乗るでしょ?」

モバP「ああ。真意はどうあれ・・・とにかく志希に会わないと、話が進まない。
     ありがたい限りだよ。案内してほしい。」

周子「おっけー。プロデューサーさん車運転できるよね?
    志希ちゃんのとこに案内してあげるから、運転よろしく~。」

モバP「ああ。・・・やっぱり居場所、知ってたんだな。」

周子「ま、ぶっちゃけLiPPSのメンバーはみんな知ってるよ。さっ、行こ!」

車内。周子に案内されながら、俺は車を運転している。

周子「しばらくこの道まっすぐだから。いまのうちに電話しちゃうね?」

モバP「電話?どこに?」

周子「決まってるじゃん。志希ちゃんだよ。」



周子『あ、もしもし志希ちゃん?これから志希ちゃんのとこ行くから!
    ・・・うん、例のプロデューサーも連れてくよ。
    ・・・奏ちゃん?話してないよ。大丈夫だって!あと10分ぐらいで行くから!』


周子「オッケーもらったよ。あ、ここ左ね。うん、その建物入って。」

モバP「・・・この施設は。」

周子「まっ。察してくれたかな?ロビーで待ってるってさ。いこいこ。」

俺と周子は車を降り、その『建物』の中に入る。

周子「えーと・・・あ!いたいた!志希ちゃ~ん!」

モバP「・・・・!」


入り口近くのロビーに、その少女は居た。

俺がプロデューサーに就いた時から『失踪』していて、
今のLiPPSの現状の鍵を握っているであろうアイドル、一ノ瀬志希。


志希「にゃはは~!周子ちゃんおひさ~!」

周子「おひさ~!ってほどでもないやん。2日前に来たばっかやで。」

志希「そうだっけ~。ここ退屈で時間の流れが遅いんだよね~。
    で、その後ろにいるのが、例の新しいプロデューサさん?」

周子「そっ。どーしても志希ちゃんに会いたいっていうから、連れてきちゃった。」

志希「へー。どーも始めまして!だね。一ノ瀬志希だよ~。」

モバP「・・・ああ。よろしくな。」


今までに会ったLiPPSの面々は、皆以前の様子とはまるで違っていた。
しかしこの一ノ瀬志希は、『失踪』する前とまるで同じテンションである。
周子と明るく会話する様子も、テレビや楽屋での一ノ瀬志希そのままだ。


違っている部分は


周子に連れてこられたこの場所がリハビリセンターで


一ノ瀬志希が車椅子に座っている、というところだ。

モバP「・・・さてと、いきなりだけど話を聞かせてほしいんだ、志希。」

志希「いいよ~、答えられる範囲でなら、なんでも答えてあげる!」


答えたくないことは答えないってことか。まあいい


モバP「どうして車椅子に座ってるんだ?足を・・・ケガしたのか?」

志希「うん、そうだよー。なんかフクザツコッセツとかいろいろ言われてるけど
    よくわかんないや。でも、足はまったく動かないよ。」

モバP「まったく、か・・・」

志希「うん。まったく。手術とかもしたんだけどねー。一ヶ月もこのままだよ。
    リハビリとかしてるんだけど全然、立ち上がることも出来なーい!」

モバP「どうしてそんなケガを?」

志希「ん~?世界を救う旅をしてたら魔物に追い込まれちゃって~、ガケから転落したんだよ~。」


・・・これはウソだな。つまり、今の自分の状態に関しては別に隠さなくてもいいけど
この状態になった理由に関しては、言いたくないってことか。

モバP「理由に関しては置いておこう。しかし・・・辛いな。」

志希「そんなことないよ~?車椅子にも慣れてきたしー。
    実験とかなら車椅子でも全然問題ないしねー!」

志希「まあこんな足だからアイドルはできなくなっちゃったけど。
    しょうがないなーって感じかなー。志希ちゃんは切り替えが早いのだ、にゃはは~。」

モバP「そうか・・・。周子、このことを知ってるのは?」

周子「LiPPSのメンバーと、前のプロデューサーだけだね。・・・で、どう?」

モバP「どう?って?」

周子「諦めた?ってこと。見ての通り志希ちゃんは足がまったく動かない。」

志希「うごかにゃーい!」

周子「ステップもダンスもできない。もうアイドルは出来ないんだよ。
    この志希ちゃんを見ても、まだLiPPSを立て直すとか、言えるん?」


・・・なるほどな。周子はこの一ノ瀬志希の現実を見せることで、
俺に諦めさせようとしたってことか。

でも残念だったな周子。俺の気持ちは今、まったくの逆だ。


モバP「諦める?逆だな。むしろ確信が持てたよ。
     LiPPSは、必ず復活できるってな。」

周子「・・・本気で言ってるの?」

モバP「ああ。だって、志希は、失踪なんて、してなかったじゃないか。」

モバP「一ノ瀬志希は、ここにいる。」

モバP「ならあとは簡単だ。5人の気持ちがまたひとつになればいい。」


俺は鞄の中から、ひとつの企画書を取り出した。


志希「・・・なにこれ。」

周子「LiPPS復活ライブ?・・・アホちゃうの!?」

モバP「何がだ?」

周子「いまの志希ちゃんの状態を見たやん!
    ダンスどころじゃない!歩くことも、立つこともできないのに!」

モバP「それがどうした。そんなことは問題じゃない。
     大事なのは・・・一ノ瀬志希という存在そのものだ。」

志希「あたしの・・・存在?」

モバP「ダンスができなくても、ステップが踏めなくても!関係ないんだ!
     一ノ瀬志希がそこにいるだけで、ファンを喜ばすことはできるんだよ!
     どうしてかわかるか?志希。」

志希「・・・わかんない。全然論理的じゃないもん。」

モバP「難しく考えることはないんだよ。簡単なことだ。」

モバP「それは志希、お前が・・・」

モバP「アイドルだからだ。」

志希「・・・・・・あいどる。」

モバP「お前が本当にアイドルを諦めたんなら、身を引くさ。
     でも志希。それが本当にお前の本心か?」

志希「・・・・・・・」

モバP「お前さえよければ、俺はお前を再びステージの上に立たせる。
     一ノ瀬志希を、もう一度プロデュースしてみせる!」

志希「・・・さっき言ったことは、ウソのつもりじゃなかったんだよ。
    アイドルできなくても、実験とかして自由に生きるのも悪くないかなって。」

志希「でもね、さっきあたしはアイドルだって言われたとき、うれしいって思っちゃった。
    こんなになっても、あたしをアイドルとして扱ってくれるんだなって。」

志希「そう思ったら、またアイドルやりたくなっちゃったんだよ。
    にゃははは、ダメだね。全然自分の本音、騙せてなかったみたい。」

周子「志希ちゃん・・・・」


志希「・・・あたし、もう一度ステージに立ちたい!LiPPSの5人で立ちたい!
    プロデューサー・・・あたしを、プロデュースしてください!」

モバP「もちろんだ!俺に任せておけ。」

俺は志希の手を、ぐっと握り締めた。



志希「周子ちゃん、お願いがあるの。」

周子「・・・なーに?」

志希「奏ちゃんと美嘉ちゃんとフレちゃん、ここに呼べるかなあ?」

周子「・・・まだ時間早いし連絡つけば出来るとは思うけど・・・まさか。」



志希「みんなでこのプロデューサーさんに話そうよ。
    あたし達に何があったのか、全部。」

ここで半分くらいです。ちょっと休憩します

周子が電話をかけてから一時間後、
リハビリセンターに美嘉とフレデリカがやってきた。

フレデリカ「シキちゃーん!」ダキッ

志希「フレちゃーん!」ダキッ

美嘉「ちょっと!いきなりハグする普通!?・・・あ、周子。奏は・・・」

周子「・・・まあ来ないよね。分かってたよ。」

美嘉「うん。一応居たから声はかけたんだけど・・・
    『私はあの場所に行く資格はない』って言って。」

志希「んもー。そう言って一回もここに来てくれないじゃん!」

モバP「・・・一回も、来てないのか?」

志希「うん。美嘉ちゃんとフレちゃんと周子ちゃんは3日に1回は来てくれるけど、
    奏ちゃんだけは、『あれ』から1回もここに来てくれないの。」

周子「ねえ、志希ちゃん・・・本当に話す気なん?」

志希「話すよ?もうここまで着たらさ、腹くくろうよ~」

周子「はぁ・・・あたしはまだ反対だけどね。奏ちゃんがどう思うか・・・」

美嘉「私も奏は心配だけど、もうこれ以上隠すわけにはいかないよ。」

フレデリカ「フレちゃんも賛成ー。私たちも前に進まないといけないと思うよー。」

周子「・・・そうかも、しれないけどさあ。」

美嘉「周子。あたしたちも覚悟を決めよう。」

周子「・・・へーい。」

志希「じゃあ、初めていいかな~?」

モバP「ああ。頼む。」



志希「それじゃあ、始めるよ・・・」

-プロダクション・レッスン場

奏「ハァ・・・ハァ・・・」

奏「まだよ、まだ足りないわ。もっとレッスンしないと。でも・・・」

奏(周子から呼び出しがあったということは、あいつに全部話すつもりかしら。)

奏(私は認めない。私のプロデューサーは、あの人だけ。)

奏(・・・もう、あの日から一ヶ月も経ったのね・・・)




~~~~~~~~~~~~~


はーい!というわけでここからしばらくは志希にゃんが語り部しまーす!
え?ふざけてないで早く始めろって?いいじゃん。

どうせここからはずっと暗い話なんだからさ。

まず最初に紹介しておかないといけない人がいるんだ。
あたしたちの最初のプロデューサー。ややこしいから、「前P」って呼称にするよ。

前PはLiPPSが立ち上がる時に担当になったプロデューサーなんだけど
そもそも最初は奏ちゃんのプロデューサーだったんだよね。
だからあたしたちも前Pさんは好きだったけど、とりわけ奏ちゃんはあの前Pさんを信頼してた。

LiPPSも起動に乗って人気が出てきたある日、あたし達5人は前Pに呼び出されたんだ。

前P「みなさん、お疲れ様です。少し、話したいことがあるのですが、よろしいですか?」

すごい物腰丁寧な人で、あたしやフレちゃんが好き勝手してても怒ることはなかった。
だから呼び出されたとき、なんだろうって思ったんだ。


前P「実は、皆さんにお伝えしないといけないことがあります。」

美嘉「なになにー?改まって、珍しいねー★」

フレデリカ「フレちゃんたちの活躍で特別ボーナス出たとか?」

周子「お、いいね~、シューコちゃん回らないお寿司食べたいな~」

前P「ははは・・・そうだったら良かったんですけどね。残念ながら違うんです。実は・・・」



前P「今月いっぱいで、今の仕事を辞めることになりました。」


その言葉を聴いたとたん、浮ついた空気が一瞬で沈んだよね。
特に・・・

奏「・・・うそ。」

奏ちゃんはかなりショックを受けてた。

その後前Pさんが説明してくれたことをまとめると、
実家の母親の調子が悪い、これを機会に地元に戻り家業を継ぐことにする。
今度のライブを最後に引退する。そんな感じだったけど

アタシ達はみんなショックを受けていて、まともに理解できる状態じゃなかった。


前P「そんな顔をしないでください。私は皆さんと出会えて幸せでした。」

奏「やめてよ・・・そんな言葉、聞きたくない。」

前P「奏さん。あなたとは一番長い付き合いでしたね。
   だからこそ・・・お願いがあります。
   私がプロデュースできる最後のライブ・・・最高のものにしてください。」

奏「・・・分かったわ。みんな、今回のライブは・・・本気で行くわよ。ついてきてね。」



奏ちゃんの言葉に異を唱える人はいなかった。
みんな前Pさんにお世話になってたし、最高のライブをしたいって気持ちで一致してたんだ。

・・・・その時は。

奏「美嘉!そこのステップ違うわ!もう一回最初から!」

美嘉「うひ~!」

奏「フレデリカ!また勝手に予定と違う動きをしたわね。」

フレデリカ「ん~フレちゃん流アレンジなんだけど・・・ダメかな?」

奏「ダメよ、いつもは認めてるけど、今回はダメ。
  ・・・周子、今の動き、こっそり手を抜いていたわね。」

周子「やだな~、そんなこと・・・」

奏「次同じことしたら、抜けてもらうわ。」

美嘉「ちょっと、奏!言いすぎだよ!」

奏「次のライブ、最高のものにしようって言ったじゃない。」

周子「・・・へーい。気をつけまーす。」

レッスンは奏ちゃんを中心に今までにない厳しいものになった。
今まではある程度自由にやってたあたし達にも、厳しい訂正が入るようになった。特に・・・


奏「志希。5分遅刻よ。今度遅れてきたら許さないって、言ったわよね?」

奏「志希。このステップを覚えるまで、このレッスン場を出ることは許さないわ。」

奏「志希。・・・」

奏「志希。・・・」



普段からおちゃらけてたあたしに対する風当たりは特に強かった。
だからかな。主にあたしとフレちゃんが
少しずつ奏ちゃんに対する反感を持つようになっていったんだ。

美嘉ちゃんは・・・険悪な雰囲気になっていくのを感じて、だんだん笑わなくなっていったよね。
相変わらず苦労人ポジションだよね~

逆に周子ちゃんはいつもどおり。奏ちゃんの指摘ものらりくらりとかわしてた。

そのあたりから少しずつ、アタシ達LiPPSが歪んでいったんだ。
そして一ヶ月前のあの日・・・事件が起きたんだよね。

その日はステージの上での予行練習だった。
練習が一通り終わったあと、奏ちゃんは言ったんだ。

奏「みんな。このステージの上に残ってなさい。」

あたしは直感したね。説教の始まりだって。


奏「今日の練習、出来としては最悪だったわ。まるで連携が取れてない。
  特に志希とフレデリカ。まったくやる気を感じないわ。」

もうこの時は奏ちゃんに対する反感がMAXになっててね。
練習も真面目に取り組まなくなってた。
前Pさんのためにって気持ちはあったけど、それ以上に奏ちゃんが嫌いだった。

志希「・・・あたし、もう奏ちゃんの言うことききませーん。」

だから我慢の限界になって、こんなこと言っちゃった。

奏「・・・何を言っているの?」

志希「奏ちゃんと一緒に練習してても、楽しくないんだもーん!
    あたし、楽しくないことはしたくないんだよね~。」

フレデリカ「アタシもアタシも!最近楽しくなーい!」

アタシの発言にフレちゃんも乗ってきた。

美嘉「ちょっと志希!フレちゃん!・・・奏も落ち着いて!」

美嘉ちゃんは、不穏な空気を察して止めに入ったよね。


周子「・・・・」

周子ちゃんはどっちの味方にも付かなかった。

奏「今度のライブは前Pさんに見せる最後のライブになるの。
  最高のものにしないと、いけないのよ!」

確かにそのとおりだったよ。でもその時のあたしはもう頭に血が上っててね。
だから・・・言っちゃったの。

志希「アタシも前Pさんにはお世話になったけど、LiPPSになってからだもーん。
    奏ちゃんほど付き合いながくないしー、そこまで思い入れ強くないしー。」

うわ・・・今思い出すとひっどいこと言ってるなああたし。自分で引くよ。
こんなこと言っちゃったから案の定、奏ちゃんは激高した。

奏「志希!」

アタシの胸倉に掴み掛かってきた。

志希「離して、よっ!」

アタシは奏ちゃんを振り払おうとした。
でもその時に、バランスを崩して・・・よろけて・・・

フレちゃん「シキちゃん!!」

フレちゃんの叫び声が聞こえたときにはもう遅かった
アタシはステージの上から、落下しちゃったんだ。

志希「・・・・!!」

状況を把握したと同時に走る激痛。
両足が曲がっちゃいけない方向に曲がってる。

フレデリカ「シキちゃん!」

周子「大丈夫!?」

フレちゃんと周子ちゃんがアタシに駆け寄ってきた。


奏「あ・・・あ・・・」

美嘉「奏!しっかりして、奏!」


ステージの上からは、奏ちゃんと美嘉ちゃんの声が聞こえる。
こんな時だけど、自慢の頭の回転の早さを発揮しちゃってね。
このことがバレたらいけない、奏ちゃんがアイドルできなくなるって、とっさに思ったんだ。

周子「いま救急車を・・・!」

志希「待って・・・!ダメだよ。そんなことしたら、みんなにバレちゃうよ・・・!」

フレデリカ「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

志希「ダメ。こんなことがバレたら、みんなアイドルできなくなるよ?
    あたし自分でわかるもん。足ひねっただけだよ。」

フレデリカ「でも・・・!」

志希「みんな、このことは私達だけの秘密にしよ?
    大丈夫、あたしなら『失踪』したってことにしてればオッケーだよ。
    にゃはは、アタシの失踪キャラがこんな風に役立つなんてね~~」

志希「・・・おねがい。」


最終的に、アタシのお願いが通った形になった・・・



ま、結果から言ったら、大丈夫じゃなかったんだけどね。
こっそり美嘉ちゃんと周子ちゃんに肩を貸してもらって病院行ったけどさ。

骨折してた上に、最初に適切な処置を行わなかったから、余計悪化しちゃって。
あの日からまったく歩けなくなっちゃって、足がピクリとも動かないんだ。

~~~~~~~~~~~~~~~~

志希「アタシから言えるのはここまでだね~。こっからどうなったのかはみんなから話してよ。」

美嘉「うん・・・そのあと、前Pさんには、志希が失踪したとだけ伝えたんだ。
    予定してたライブは中止になった。
    最後に前Pさんと奏ちゃんが何か話してたけど、アタシ達にはわからない。」

フレデリカ「前Pさんも引退して、実質活動休止になったよね。
       それぞれのソロのお仕事はするけど、LiPPSとしての仕事はなくなった。
       そこにプロデューサーさんが来た、って感じかなー。」

モバP「そうか・・・。」

周子「これがあたし達の真実。どう?引いたでしょ?」

美嘉「隠しててごめんなさい。ほんとは言わなきゃいけなかったんだけど・・・」

フレデリカ「これがみんなに知れたら、今度は奏ちゃんが潰れると思って・・・」

モバP「志希、今は奏のこと、どう思ってるんだ?」

志希「・・・はやく謝りたい、かな。ひどいこと言っちゃってごめん、って。」

フレデリカ「でも奏ちゃんがあれ以来、ずっと塞ぎ込んじゃって・・・」

美嘉「何度も志希のところに会いにいこうって誘ったんだけどね。
    『私はあの子に会う資格がない』の一点張りで・・・」

モバP「そうか・・・ありがとな。辛い出来事を話してくれて。
     時間も遅いし、そろそろ帰ろう。家まで送るよ。」

周子「・・・そうやね、もう外真っ暗やもん。」

モバP「志希、また来るよ。ライブのことについて詳しいことは、その時話す。」

志希「うん。待ってるよ~。みんな、じゃあね~。」

~~~~~~~~~~~~

前P「奏さん。志希さんがケガした件について。
   みなさんは志希さんが転んだと言っていますが、本当ですか?」

奏「ええ・・・本当よ。」

前P「そうですか・・・ならこれ以上追求はしません。」

奏「・・・。」

前P「ごめんなさい。私の存在が、重荷になってしまいましたね。」

奏「そんなこと・・・!」

前P「私は今日で終わりですが、どうか思いつめないで。
   笑顔でいることを、どうか忘れないでください。では・・・お元気で。」

奏「待って・・・私は、私は・・・!」


~~~~~~~~~~~~~~

奏(・・・そろそろあいつに話終わった頃かしら。)

奏(志希がアイドルを出来なくなったのは、間違いなく私のせいよ。)

奏(だから私は、志希の分までアイドルとしての努めを果たさないといけない。)

奏(私が志希の代わりを十分務められたといえるようになるまで、あの子には会えない。)

奏「・・・みんな新しいプロデューサーに絆されているようだけど、関係ないわ。」

奏「もっとレッスンしなきゃ。志希に、前Pに、贖罪できるようになるまで・・・!」

俺達は志希の話を聞いたあと、リハビリセンターを離れた。
周子・美嘉・フレデリカを乗せて、車を走らせた。

車内の会話は決して多くはなかったが、
美嘉とフレデリカの表情は心なしか少しだけ晴れやかだった。
秘密を抱えていたという罪悪感から開放されたからだろうか。

フレデリカ・美嘉の順に、家の近くまで送った。


周子「んじゃ次あたしの番ねー、あたしの家はねー、ここを左で・・・」

周子が自分の家の場所を説明しようとしたが、俺はそれを遮った。

モバP「いや、次に行くのはお前の家じゃない。事務所だ。」

周子「・・・へ?」

モバP「二人きりでじっくり話がしたい。いいか?」

周子「はー・・・そういうこと。プロデューサーさんも人が悪いねー。」

モバP「こうでもしないとお前はのらりくらりと逃げるからな。
     志希の真相は聞かせてもらったが、まだ周子の本心を聞けてない。」

周子「あたしの本心とか・・・どうでもよくない?」

モバP「よくない。お前を含めて、LiPPSだからな。」

周子「はぁ~あ。どうせ逃げられないし、付き合ってあげるわ。
    はーやだやだ。あたしこういうの嫌いなのにさ~。」

--事務所にて

周子「すっかり日も沈んじゃったのに事務所に監禁されるあたし、不幸だわー。」

モバP「そういうなよ、そんなに長くかけるつもりはない。」

周子「ほんまに?」

モバP「お前が素直に話してくれればすぐ終わる。」

周子「それ無理なやつやわ~。分かってて言ってるでしょ。」

モバP「そうだな。一方的に聞くだけじゃフェアじゃない。
     俺の方から先に本音を語ろうじゃないか。」

周子「へえ?なになに?そのやる気ない態度はなんだ、とか?
    この前の美嘉ちゃんに言ったことへのお説教?」

モバP「・・・ありがとな。」

周子「・・・え?」

モバP「俺はお前が何を考えてるのかずっとわからなかった。
     でもようやくすべて繋がった。お前はずっと、メンバーのために動いていたんだな。」

周子「・・・意味わかんなーい。」

モバP「美嘉を煽ったのは、塞込んでいる美嘉をLiPPSから切り離して開放しようとしたから。」

モバP「フレデリカの引退に賛成したのは、フレデリカのやりたいようにさせてあげたかったから。」

モバP「さっき志希に会ったとき2日ぶりだと言ってたな?
     つまりそれぐらいの頻度で会っていた。志希に孤独を感じさせないために。」

モバP「そしてそのやる気のない態度は、暴走する奏へのストッパーになるためだ。」

モバP「これが俺の考えた答えなんだが、どうだ?当たってるか?」

周子「買いかぶりすぎだし。シューコちゃんそこまでいい子じゃないよ。」

モバP「いや、いいやつだ。周子、お前はすごいいいやつだよ。
     この一ヶ月間、ずっと一人でLiPPSを支えてくれてたんだな。」

モバP「だから、ありがとう。そして、気付くのが遅れて・・・すまない。」

周子「やめてよ。あたし、そんな立派なことしてない。」

周子「美嘉ちゃんを元気付けることも、フレちゃんが辞めないようにすることも、
    志希ちゃんに復帰を決意させることも、奏ちゃんを止めることも出来なかった。」

周子「あたし、何も出来なかったんだよ・・・」


モバP「違う。お前がいなかったら、俺が来る前にLiPPSは解散していたと思う。
     ここまでLiPPSが存在していたのは、お前のがんばりのおかげなんだ。」    

モバP「・・・だからお前に聞きたいんだ。お前はいつもメンバーのために動いていた。
     でもそのなかに、周子自身が含まれていないんだ。」

モバP「お前の行動には、自分がどう思われても構わない、嫌われても構わないという、
     そんな意思が見え隠れするんだ。どうしてそこまで、自分を犠牲にする?」

周子「・・・あの事件が起きたのは、あたしのせいだもん。」

モバP「そんなことは・・・」


周子「ほんとは、奏ちゃんが暴走し始めたときにあたしが止めなきゃいけなかった。
    ほんとは、フレちゃんと志希ちゃんのことをなだめてあげなきゃいけなかった。
    ほんとは、志希ちゃんと奏ちゃんの間に割って入らなきゃいけなかった!」

周子「でもあたしは、それで誰かに反感を買うのを恐れて・・・
    中立を気取って、何もせずに、ずっと静観してたんだ。
    志希ちゃんがステージから落下する、その時まで。ね、卑怯者でしょ?」


周子「だからね、決めたんだ。
    もうみんなから嫌われても構わない、あたしがみんなを守らなきゃって。
    それで・・・」

周子「・・・・!」

辛そうに話す周子を、俺はそっと抱きしめてやった。

モバP「悪いな、ほんとはこういうの、アイドルにやっちゃまずいんだけどな。」

周子「・・・プロデューサー。」

モバP「今まで辛かっただろう。メンバーのことを、一人で背負って。
     でももういい、もう一人で全部背負う必要はないんだ。」

周子「・・・・・」グスッ

モバP「俺がメンバーみんなを笑顔にしてみせる。
     もちろん周子、お前もだ。だから聞かせてくれ。周子の願いは・・・なんだ?」

周子「あたしはさ・・・LiPPSで最高のライブをしたいとか、そんな立派なものは持ってないんだ。
    でもさ・・・あたしLiPPSの楽屋が好き。」

周子「本番前だってのに志希ちゃんとフレちゃんがはしゃいでさ、
    被害を受けるのはいっつも美嘉ちゃんでさ。
    奏ちゃんはそれを見てにこにこ笑ってるんよ、面白そうに。」

周子「あたしはそれを見て、自分の気分で好きな方につくの。
    志希ちゃんフレちゃんと一緒にはしゃいでみたり、美嘉ちゃんの味方してみたり、
    奏ちゃんと一緒ににこにこして眺めていたり。」

周子「そういう楽屋に・・・戻りたい。これがあたしの・・・願いだよ。」


俺は周子を抱きしめるのを止めて、周子の潤んだ瞳をまっすぐ見つめる。


モバP「取り戻してやる。お前の好きな、その楽屋の風景を。」

周子「うん。でも・・・そのためには・・・」

モバP「ああ・・・わかってる。」

周子「お願い、奏ちゃんを・・・助けてあげて。」

周子「あの子、あの事件が全部自分の責任だって思ってる。
    最高のライブをすることでしか、自分は許されないって思ってるんよ。」

周子「それを拠り所にしないと・・・きっと奏ちゃんは潰れちゃう。
    メンバーみんなそれが分かってるから、何も言えない。」

モバP「きっと奏を止めるためには、俺の力だけではだめだ。
     お前を含めたLiPPSみんなの力が必要だ。協力して・・・くれるか?」

周子「・・・うん。」

モバP「みんなの力で、速水奏の笑顔を取り戻そう。」

ここで一区切り、ちょっと休憩
次でラストまでいきます

志希に会った翌日。
俺は事務所の廊下を一人で歩いていた奏に、声をかけた。

モバP「おはよう。奏。」

奏「・・・志希に会ったみたいね。」

モバP「ああ。全部聞いたよ。」

奏「そう、それじゃあ私がどれだけ罪深い女か、分かったでしょう?
  勝手に一人で盛り上がってメンバーの反感を買って。」

奏「それで噛み付かれたらステージから突き落とす、最悪よね。」

モバP「結果的にそうなっただけだろう、あれは事故だ。
     志希だって、お前を責めるようなことは言ってはいなかった。」

奏「関係ないわ。結果的に私は志希からアイドル生命と自由を奪ってしまった。
  だから私は、志希のぶんまで最高のライブをしないといけないの。」

モバP「・・・今のお前じゃ無理だ。奏。」

奏「・・・なんですって?」

もともと険しい顔をしてた奏の顔が一層険しくなった。
だが、俺は続けた。

モバP「俺が思うアイドルの最高のライブってのはさ。
     ファンもアイドルも一緒になって笑顔になれるライブだと思うんだよな。」

モバP「笑顔を忘れたお前に、ファンを笑顔にすることなんてできっこない。」

奏「・・・!黙って。」

モバP「まだあるぞ、仮にその『最高のライブ』が出来たとして、
     その後は、どうするつもりだ。」

奏「あなたには関係な・・・」

モバP「アイドル、辞めるつもりなんだろう?」

奏「・・・」

モバP「それが志希を含めたLiPPSへの贖罪と思っているんだろうけどな、
     それじゃあLiPPSはずっとバラバラのままだ。そんなことは俺がさせない。」

俺は奏に、LiPPS復活ライブの企画書を見せた。

奏「・・・なにこれ。」

モバP「見てのとおりだよ。志希を含めた5人で、復活ライブをする。」

モバP「志希のアイドル生命を奪った?勝手に[ピーーー]なよ。
     志希はもう、ステージに戻る気まんまんだぞ?」

奏「・・・バカげているわ。」

モバP「志希はリハビリセンターで自主連してる。
     さあレッスン場に行くぞ。美嘉とフレデリカと周子が待ってる。」

モバP「お前もこのライブに向けて、『4人一緒に』レッスンをしよう。
     もう1人で無茶なレッスンを繰り返すのは禁止だ。」

奏「・・・」

モバP「どうせ『最高のライブ』をするなら、5人一緒にしようじゃないか。」

あっこれNGなのか、ちょっと直します

>>53
メール欄にsaga
sageじゃないぞ、saga

>>52はこっちに差し替えで。)

俺は奏に、LiPPS復活ライブの企画書を見せた。

奏「・・・なにこれ。」

モバP「見てのとおりだよ。志希を含めた5人で、復活ライブをする。」

モバP「志希のアイドル生命を奪った?勝手に死んだことにするなよ。
     志希はもう、ステージに戻る気まんまんだぞ?」

奏「・・・バカげているわ。」

モバP「志希はリハビリセンターで自主連してる。
     さあレッスン場に行くぞ。美嘉とフレデリカと周子が待ってる。」

モバP「お前もこのライブに向けて、『4人一緒に』レッスンをしよう。
     もう1人で無茶なレッスンを繰り返すのは禁止だ。」

奏「・・・」

モバP「どうせ『最高のライブ』をするなら、5人一緒にしようじゃないか。」

レッスン場にはすでに、美嘉とフレデリカと周子が待っていた。

フレデリカ「奏ちゃん、おそいよ~!」

美嘉「次のライブに向けて、がんばろ★」

周子「シューコちゃんも珍しくやる気だからね~!がんばっちゃうよ~!」

奏「・・・あなた達、本気であいつの言うライブ、やるつもりなの?」

フレデリカ「もっちろん!なんかさ、わくわくしてこない?」

美嘉「ね!また5人でステージに立てるの、楽しみ!」

周子「ファンの人に忘れられる前に、顔見せておかないとねー!」

奏「・・・でも私には、そんな資格・・・」

美嘉「いいからいいから!さっ、レッスン始めよ!」

奏「ちょ、ちょっと・・・」

>>54ありがとうございます、次から参考にします

美嘉たち3人に引っ張られる形で、しぶしぶ奏もレッスンを始めた。
いろいろあったが、美嘉もフレデリカも周子も、心強い味方になってくれた。

美嘉「~~★」

フレデリカ「フンフーン♪」

周子「~~~♪」


3人とも、肩の力が抜けてよい動きが出来ている。
この3人に関しては、もう心配いらないかな。ほっと胸をなでおろす。

奏「・・・・・・」

奏に関してはまだ動きに固さが残る。
連日の無茶な1人レッスンの疲れも見え隠れする。

美嘉「・・・」

そんな奏の様子を見て。美嘉が踊るのを辞めて奏に近づいた。

奏「・・・どうしたの美嘉。何か言いたいことでもあるのかしら。」

美嘉「・・・ごめんね、奏。」

奏「・・・あなたに謝られることなんて、何もないわ。」

美嘉「今回のことで一番苦しかったのは奏なのに。
    アタシはただ落ち込んで、被害者ぶって。奏に何もしてあげられなかった。」

奏「何を・・・言ってるの。」

フレデリカ「あ、はいはーい!私も奏ちゃんに謝りたーい!
       ・・・シキちゃんと一緒になって奏ちゃんを煽ったりして、ほんとごめんなさい。」

奏「・・・あれは、あのときは。」

フレデリカ「それだけじゃないよ。あたし奏ちゃん見捨てて、
       シキちゃんの傍に居たいってだけでアイドル辞めようとしたんだもん。
       奏ちゃんだって辛い思いしてたのに、それは違うよね、今だからわかるよ。」

奏「私のことなんて、どうでもいいのよ・・・」

周子「よくない。あたしもプロデューサーに言われたけどさ。
    自分の幸せを除外しちゃダメなんよ。それじゃあほかの人も幸せになれない。」

周子「・・・あたしも謝らないといかんね。みんなが険悪になってるのわかってて、
    傍観者で居続けたのは卑怯やったもん。ごめんね、奏ちゃん。」

奏「みんな・・・やめて。悪いのは私よ。私が一番・・・」

美嘉「ううん。今回のことはみんな悪いの、誰が一番悪いとか、そういうのはナシ!」

フレデリカ「うんうん。そうそう~♪あとファンのみんなにも、謝らないといけないよね~!
       一ヶ月も空けて、ごめんなさいって!」

周子「だったらなおさら、今度のライブ成功させないあかんね!」

奏「・・・そうね。」

周子「でもさ、奏ちゃん1人で頑張りすぎる必要ないんよ?
    ほら、肩の力抜いてこ?あたしみたいに。」

美嘉「周子ほど抜いたら抜きすぎだけどね★」

周子「あっ、言ったな、このこの~。」

フレデリカ「このこの~♪」

美嘉「ちょ、ちょっと!どこ触ってんの!やめてよ!」


・・・意図してか意図せずかわからないが、だんだん元のLiPPSの雰囲気に戻ってきたな。
だがまだ、奏に笑顔は戻らない。もうあと少し、必要なピースがあるんだ。

それはきっと志希と、もう1人・・・


・・・奏はあいつらに任せて、俺も動き始めないとな。

それから二週間。奏達はレッスンを重ねた。
この期間はほぼほぼ美嘉たち3人に奏を預けていたことになる。

今の3人なら、不安定な奏を預けていても安心だと信頼していた。
もちろん俺も、ちょくちょく顔を出してはいたがな。

そして今日はライブ前日。俺はリハビリセンターにも顔を出し、志希と話をしていた。

モバP「・・・というわけで会場はステージに車椅子でも上がれる場所を選んだ。
     志希は歌で、ライブに参加してくれ。無理な動きは、しちゃダメだぞ。」

志希「おっけ~♪さすがに志希ちゃんも二回ステージから落ちるのはごめんだし、
    ちゃんとそのへんは弁えるって~。」

モバP「歌の練習は、してくれてたんだろ?」

志希「もっちろん!動けないぶん、アタシの美声で魅了しちゃうんだから~♪」

モバP「ああ、よろしく頼む。」

志希「それで・・・奏ちゃんの様子は、どうなの?」

モバP「ああ。美嘉たちのおかげで、前より切羽詰まった感じはなくなった。
     でもまだ・・・笑わないな。」

志希「大丈夫だよ。一ヶ月とまってた時計は、少しずつ動きだしてる。
    ・・・見て見て。」

そう言うと、志希は車椅子から降りようとした

モバP「お、おい!」

志希「いいからいいから~♪」

志希は足を震わせながらも、立ち上がった。俺の目の前で。

志希「どう?まだ歩けないけど、なんとか立てるようにはなったんだよ?」

モバP「すごいな・・・でも無理するな、明日ライブなんだから。ほら、座ろう。」

俺は志希の身体を支えて、座らせた。

志希「この前秘密を話したあとから、ちょっとずつ回復してきたんだ。
    きっとプロデューサーさんが、あたし達の時計を動かしてくれたんだね。」

モバP「何言ってるんだ。時計を動かしたのは、お前達自身だよ。」

志希「・・・きっと明日のライブで、奏ちゃんの時計も動き出すんだ。
    動かしてみせる。明日、あたしがんばっちゃうからね。」

モバP「ああ・・・、いいライブに、しような。」

志希「・・・うん。」

そして、LiPPS復活ライブ当日がやってきた。


周子「はー、結構大きめの会場やったねぇ。」

美嘉「でも、チケットすぐ完売になったらしいよ?」

フレデリカ「みんなフレちゃんたちのこと忘れてなかったんだねぇ♪
       みんなの期待に、こたえなくちゃね!」

美嘉「そうだね★・・・でも、プロデューサーと志希ちゃんがまだ来ないね。」

周子「遅れるとは連絡あったけど、大丈夫かなあ?リハーサルも終わっちゃったやん。」

奏「・・・・」

そして、LiPPS復活ライブ当日がやってきた。


周子「はー、結構大きめの会場やったねぇ。」

美嘉「でも、チケットすぐ完売になったらしいよ?」

フレデリカ「みんなフレちゃんたちのこと忘れてなかったんだねぇ♪
       みんなの期待に、こたえなくちゃね!」

美嘉「そうだね★・・・でも、プロデューサーと志希ちゃんがまだ来ないね。」

周子「遅れるとは連絡あったけど、大丈夫かなあ?リハーサルも終わっちゃったやん。」

奏「・・・・」

あっすみませんミスった、>>64はなしで

モバP「待たせたな。」

俺は志希の車椅子を押しながら、4人の前に姿を見せた。

美嘉「あっ、プロデューサー、遅いよー!」

フレデリカ「シキちゃーん!」ダキッ

志希「フレちゃーん!」ダキッ

周子「なんなん?会うたびにハグしなきゃいけないルールとかあるん?」


フレデリカとの挨拶代わりのハグから開放された志希は、奏に目を向けた。

志希「奏ちゃん、お久しぶり~♪」

奏「・・・そうね、久しぶりね。」

志希「積もる話はあるけど、とりあえずライブしよ!」

奏「足は・・・大丈夫なの?」

志希「志希ちゃんの驚異的回復力で、立てるところまで回復したんだ!すごいでしょ~。
    ダンスはできないけど、歌で勝負するから!」

奏「・・・そう。」


まだぎこちなさが残るな。仕方ないか。一ヵ月半ぶりだからな。

モバP「みんな、もうすぐ本番だが、その前にちょっといいか?
     お前たちに会わせたい人がいるんだ。」

今日、俺が連れてきたのは志希だけじゃなかった。
この2週間で連絡先を探し出し、頼み込んでこのライブに来てもらった。

美嘉「へ?」

周子「それって・・・」

フレデリカ「もしかして!」

モバP「入ってきてください。」

俺が手招きして、入ってきたのは・・・

前P「お久しぶりです、皆さん。」

LiPPSの前のプロデューサーであり、奏の最初のプロデューサーでもある人だった。


奏「・・・・!!」

前P「奏さん、お久しぶりです。」

奏「どう・・・して・・・」

前P「今のプロデューサーさんに頼みこまれましてね。
    奏さんの笑顔を取り戻すには、私が必要だと。」

奏「・・・」

前P「みなさんにお願いがあります。どうか、自分が楽しいと思うライブをしてください。
    それが、きっと最高のライブになると思います。」

奏「自分が、楽しい、ライブ・・・」

奏(前Pさんに最高のライブを見せようとするあまり、私は自分が楽しむことを忘れていた・・・?)

美嘉「奏、行こう!」

フレデリカ「久しぶりのライブだもん!楽しもうよ!」

周子「そうすればきっと、ファンも喜んでくれる!」

志希「笑顔笑顔!楽しくやろーよ!」

奏「・・・・そうね。」

その時俺は見た。初めてかもしれない。
奏が少しだけだが、確かに・・・笑顔を見せた。

奏「みんなで、楽しめるライブにしましょう。」

満を持して。満員の観客の前に、LiPPSの5人が姿を現した。
車椅子で登場した志希が出てきたとき、会場はどよめいたが

志希「ごめんね~!最近いなかったのは、足をケガしちゃってたからなのだ~♪
    でも志希にゃんはこれぐらいでアイドルやめないよ!
    今日は歌だけだけど、またみんなに志希にゃんの華麗なステップ見せるから~!」

そう宣言すると、会場は大いに沸いた。
一ノ瀬志希というアイドルは、車椅子に乗っていようとトップアイドルなのだ。


そして曲がスタートする。俺と前Pさんは舞台袖で見守っていた。
決して長い付き合いではないが、いろいろとあったこの3週間を思いながら。

美嘉「~~~♪」

美嘉が最初に俺にSOSを出してくれた。
美嘉の涙が、俺をここまで動かしたんだ。ありがとう。
他人のために悲しんで、他人のために笑えるところが、お前のいいところだ。

フレデリカ「~~~♪」


フレデリカはマイペースなようで、誰よりも優しいやつだった。
志希の傍に寄り添い、今は奏の傍に寄り添おうとしている。
みんなその優しさに、救われているんだ。

志希「~~~♪」

懸命に歌う志希、とても楽しそうだ。
今回の騒動も、裏を返せばそれだけみんなの中でお前の存在が大きかったことを示す。
リハビリには時間がかかるかもしれないが、お前なら必ず乗り越えられるさ。

周子「~~~♪」

周子のことは最初はドライなやつだと思っていたが、
本当は誰よりもメンバーのこと大事にする気配りのできるやつだった。
お前は自分で思っているよりずっと、みんなから好かれているんだ。


そして、曲はサビに入る。

奏、どうだ?


LiPPSの5人でやるライブ


楽しいだろう?


奏「・・・~~~♪」


そうだ、笑顔になれ。全力で楽しめ!


最高のライブだとか、贖罪だとか、そんなくだらないことは考えるな!


お前が全力で楽しんだライブこそが、LiPPSにとって最高のライブになるんだ!


なぜなら、LiPPSのリーダーは、お前なんだから!


奏「・・・なんてね♪」





そして曲が終わり、大歓声の中ライブは終了した。

舞台袖に全員が下がる。
そして奏は・・・車椅子に乗った志希に抱きついた。

奏「ごめんなさい・・・・ごめんなさい・・・・!」

涙を流しながら、奏は志希を強く抱きしめる。

奏「あなたは縛ってはいけないのを分かっていたはずなのに・・・!
  自由に遊びまわることで、一番輝くのを分かっていたはずなのに・・・!
  あのときの私は、それを忘れて、あなたにひどいことを・・・!」

志希「・・・やめてよ奏ちゃん、あたしも、奏ちゃんが前Pさんのことどれだけ大切に思ってたか、
    分かってたのに、あんなこと言っちゃったんだもん、ごめん・・・ごめん・・・!」

志希も釣られて涙を流して・・・
いや、ほかの3人も一緒だな。志希と奏の様子を見ながら、みんな泣いている。

奏は志希から離れて、美嘉たち3人に向き合った。目を真っ赤にしながら。

奏「皆も・・・ごめんなさい。最初に、こうやって謝るべきだった。
  でも私は弱かった・・・勇気が無かった。だから『最高のライブ』なんてものに逃げてたの。」

奏「私は頼れるリーダーなんかじゃなかった。
  大人ぶっていたけど、ただの打たれ弱い女子高生に過ぎなかった。」

奏「こんな私だけど・・・受け入れて、くれる?」

美嘉「あったり前じゃん★」

フレデリカ「そういうところも含めて、私たちの好きな、奏ちゃんだよ!」

周子「奏ちゃんがいなかったら、LiPPSはLiPPSじゃない。今回よく分かったよ。」

志希「にゃはは。今日からまた、5人で一緒にがんばろうね・・・!」

奏「みんな・・・!ありがとう・・・!」

涙で顔とメイクをぐしゃぐしゃにしながら、今度は5人で抱き合っている。
俺と前Pはそれを、少し離れた場所で見守っていた。


前P「・・・ありがとうございます。彼女たちを、救ってくれて。」

モバP「行かなくて、いいんですか?」

前P「私はもうプロデューサーを降りた身ですから。
   今彼女たちが必要としているのは、私じゃない、あなたです。
   言葉を返すようですが・・・行ってあげてください。」

モバP「あの中に入れって?正直気後れしますよ。」

前P「大丈夫。あなたはもう、立派なLiPPSのプロデューサーです。・・・ほら!」


前Pさんに背中を押されて、俺は5人の近くまで歩いていく。

モバP「みんな・・・お疲れさん!」

俺が声をかけると、5人が揃ってこちらを向いた


「「「「「プロデューサーさん!!」」」」」


こうしてLiPPS再建計画は終了。
今日から再び、個性豊かな5人のユニットLiPPSは活動を再開するのだ。
俺のプロデューサー業も、今日からが本番だ。

終わりです。

この話にはモデルがあります。
ジャンプで連載していたソウルキャッチャーズという漫画の「舞う桜」編です。
そのキャラクターをLiPPSに当てはめたらという妄想をしていたのですが、
デレマスとソウルキャッチャーズの両方を知っている人はなかなかいないので
モデルにしたうえで自分なりにオリジナルのシナリオにしました。

初投稿かつ長い話でしたが、お付き合いありがとうございました!

美嘉「プロデューサーじゃ・・・速見奏は止められない。」

周子「プロデューサーじゃ・・・城ヶ崎美嘉は掴めない。」

フレデリカ「プロデューサーじゃ・・・塩見周子は起こせない。」

奏「やるわけ、ないでしょう。」

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