四月七日

提督(鎮守府に着任して四年・・・)

提督(提督としての業務をひたすらこなす一日)

提督(そんな一日の疲れを吹き飛ばすための物)

提督(一日の中で一番の楽しみだ)

提督「・・・よし」

提督(誰もいないことを確認する。見つかりでもしたら、大変だからな)

提督(執務室の机の一番下の引き出し。鍵が掛かっているので開けられやしない・・・)

ガチャリ

提督(引き出しの奥底にしまってあるストレス発散用のモノ・・・)

提督(それは・・・)

提督(求人広告だっ!)

提督(そう、俺は提督を辞めたい!転職したい!)

提督(こんなブラックな職場とはおさらばするんだっ!)

二十分後・・・

提督(うーん、この『速達!島風運送』もいいんだが・・・)

提督(こっちの『天龍建設』の夜勤もいいなぁ・・・)

提督(早く転職したいっ!そしてのんびり普通に暮らすんだ!)

ガチャッ

武蔵「提督、今回の遠征について話したいことが・・・」

提督「あっ」

武蔵「あっ」

提督「・・・」ﾒｿﾗｼ

武蔵「広辞苑第二巻スパーキングショット!!」ビュンッ

提督「そげぶっ!?」ドサッ

武蔵「なあ司令官」

提督「はい」

武蔵「つい先週も同じ様な事があったと思うんだが?」

提督「はい」

武蔵「その時に忠告したはずだが?」

提督「はい」

武蔵「『二度と転職なんて考えるな』と」

提督「はい」

武蔵「・・・」

提督「・・・」

武蔵「私達の何が気に入らないんだ?」

提督「・・・」

提督(俺だって最初からこの職場が気に入らなかった訳じゃない)

四年前・・・

熊野「提督、おはようございます」

提督「ん、おはよう」

浜風「提督、今日の業務はこちらです」

提督「ありがとう、浜風」

浜風「あと、新しい艦が到着したようです」

提督(そう、最初はよかった。日々の業務をこなし、艦娘達に出撃命令を出す)

提督(給料も悪くない。いい職場だった)

提督(しかし着任して一年が経つと・・・)

提督「あれ、俺の書庫が・・・」

『満潮の部屋』

提督「・・・おい浜風」

浜風「はい」

提督「俺の書庫が・・・、無くなってるんだけど」

浜風「新しい艦娘の部屋が足りなくなったため、仕方がないので提督の書庫を無くしました」

提督「そ、そっか。で、本は?」

浜風「資源回収へ」

提督「へ?」

浜風「えっ?」



提督「なぁ浜風」

浜風「はい?」

提督「俺の分の昼食が無いんだけど」

浜風「艦娘が増えて食費が増えました」

提督「そうだな」

浜風「なので食費削減として提督分をカットさせてもらいました」

提督「へ?」

浜風「これからはコンビニでお願いします」



提督「寒いな、ストーブ着けるか・・・」

提督「あれ?ストーブはどこいった?」

ペラッ

提督「うん?」

『艦娘達のため、ストーブお借りします
by浜風』

提督「・・・」

提督(最初の内は我慢したんだ・・・)

提督(しかし・・・)

提督「ん?なぁ浜風」

浜風「何ですか?」

提督「俺の給料、減ってない?」

浜風「はい、この鎮守府の電気代の内の六割を提督の給料から」

提督「へ?」

浜風「エアコンを設置してから、電気代が増えましたからね。上の方の了解も取ってあります」

提督「・・・執務室エアコン着いてないけど・・・」



提督「浜風」

浜風「何でしょう?」

提督「冷蔵庫にあった日本酒を知らないか?」

浜風「昨日の忘年会で皆と飲みました」

提督「俺呼ばれた覚えがないんだが・・・」

浜風「ええ、呼んでいませんから」

提督「えっ?」

提督「な、なんで・・・?」

浜風「男子禁制の艦娘用寮で行いましたから」

提督「いや、普通にいつもの食堂でやれば・・・」

浜風「日本酒、美味しかったです」

提督「・・・」

提督(もう無理だっ!)

提督(我慢できず、浜風の人事異動を求める書類を送るも返事が来ず・・・)

※後日書類がゴミ箱に捨てられているのを発見

提督(諦めて辞表を提出するも何故か却下され・・・)

※後日辞表がゴミ箱に捨てられているのを発見

提督(どうしようもないので本営に掛け合ってみるが・・・)



上官『提督候補生の確保が全然出来てないからな・・・、許してくれ・・・』



提督(と、辞任することを拒まれ・・・)

提督(そうか、逃亡してしまえ!、と思い付くも・・・)

提督(二日後に憲兵に見つかり・・・)

提督(国外逃亡を謀るも・・・)



浜風『そこの不審船、止まりなさいっ!』



提督(浜風に船を撃沈され・・・)

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提督(・・・と思い返しながらも武蔵に不満を告げると・・・)

提督「埋められた・・・」ﾕｶｳﾏﾘ

提督「俺悪くないよね!?というか皆の態度おかしいよね!?何なの?反抗期なのか!?」

提督「畜生・・・」(泣)

提督「・・・夕食買いに行こ」

提督「よいしょ・・・」ｸﾞｲ

提督「ん?抜けない・・・」

提督「グギギ・・・」ｸﾞｲ

提督「抜けねぇぇぇぇっ!!」ｸﾞｲ

午後11時48分

提督(誰もいない食堂・・・)

提督「・・・」

提督(コンビニで買ってきた弁当を温める)

チン!

提督「いただきます・・・」

提督(弁当が余計に温かく感じる・・・)

提督「転職したい・・・」

四月八日　朝

提督「うっ、腰が・・・」

提督(寝室は新しい艦娘の為に空ける事になり・・・)

提督(今は執務室のソファーをベッド代わりにしている)

ガチャッ

浜風「おはようございます、提督」

提督「・・・おはよう」

浜風「これが今日分の書類です」

ドサッ

提督(山積みの書類・・・)

提督(明らかに着任当時の三倍近くに増えている)

提督「はぁ、分かった」

浜風「あと、新しい艦娘が到着しています」

提督「了解」

浜風「では、よい一日を」

ガタン

提督(よい一日を、ね・・・)

コンコン

提督「ん、入っていいぞ」

ガチャッ

「し、失礼するぜ」

天龍「お、俺は天龍・・・」

天龍「ど、どうだ!怖いだろ!」

提督「はじめの挨拶が勇ましいのは結構なことだが・・・」

提督「せめてドアの影から出てきてくれないか?」

天龍「う、うるさい!」

提督「えっと、とりあえずお前が新しく着任する艦娘ってことでいいんだな?」

天龍「あ、ああそうだぜ!俺が夜戦のスペシャリストこと、天龍様だっ!」

提督(変わった娘が来たな・・・)

コンコン

浜風「浜風です、失礼します」

ガチャッ

浜風「提督、確認終わりましたか?」

提督「あぁ、あとは頼んだ」

浜風「了解しました。天龍さん、こちらへ」

天龍「わ、分かった!」

提督「それじゃあ今日からよろしくな、天龍」

天龍「・・・よ、よろしくな」ﾎﾞｿｯ

提督「はぁ、いくらやっても終わらないなあ・・・」ｼｮﾙｲﾄﾞｻｯ

提督「こりゃあ今日も徹夜だな」ｶﾘｶﾘ

提督「・・・気が付けばもう昼か」

提督「とりあえず飯食うか・・・」

提督「確か袋麺の買い置きがあったと思うんだが・・・」

提督「あった!」

提督「お湯沸かすか・・・」



鎮守府　食堂

天龍「なぁ、提督は食わねえのか?」

浜風「経費削減のため、提督にはご自身で食事を取っていただくようにしています」

天龍「・・・そっか」