【艦これ】 外地鎮守府管理番号 88 (114)

通貨の単位はドルを想定しております
値段は適当だったりしますのでご容赦下さい・・・

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「ご愁傷様、残念だったね。」


ボシュボシュボシュ


背中の艤装に取り付けたボックスから飛び出た砲身、対潜迫撃砲ことスキッドの弾頭が発射されていく。

発射された弾体は40mの三角形に集束し・・・・。

ドゴン。

予め設定された水深で弾頭が爆発し圧力波で敵を完全に殴り倒す。


(これだけ爆発が酷いと助かる見込みは零だろうね。)


しばらく後に大量の油の様な物と深海棲艦の潜水艦がつけるシュノーケルの様な物が浮かび上がる。


「こちら時雨、鎮守府戦闘指揮所どうぞ。」

「こちら鎮守府指揮所不知火。どうされました?」

「潜水艦の掃討が完了したよ。エリア1~6までオールグリーン。帰投するよ。」

「こちら不知火。了解しました。」

「雪風から同じく鎮守府戦闘指揮所へ。」

「不知火です。」

「エリア7~12まで同じくオールグリーンです。帰投します!」

「了解しました、お疲れ様です。」


鎮守府ドック

不知火「お二人ともお疲れ様です。」

不知火「お疲れとは思いますが戦果確認の為カメラのデータ提出と報告書の提出をお願いします。」

不知火「それと、何か気づいた事は有りますか?」

時雨「潜水艦の数が多くなってきているね。」

雪風「後、固い敵が増えてきている気もします。」

不知火が二人の意見を手元の用箋挟みのメモ紙に書き込んでいる所に彼女がやって来た。

明石「お二人ともお帰りなさい。新型のソナーの調子はどうですか?」

時雨「流石にソナーだけで20万もしただけ有るね。」

明石「そうでしょうとも、スキャンニングソナーを入手するの大変だったんですよ!」

時雨「それにスキッド。今まで潜水艦対策として使用していた装備がガラクタに思えるよ。」

時雨「ソナーとリンクして勝手に敵のいる方向へ砲身が向くのはありがたいね。」


明石「そうでしょうとも。イギリスの高官を下ネタスキャンダルで脅して入手した甲斐がありました!」

時雨「サーチライトソナーと3種セットで40万、いい商売だね。本当。3ヶ月の稼ぎがパーだよ。」

雪風「ですが、潜水艦の撃破率が見違えるほどに上がりました。」

雪風「支払った分をペイするのも簡単ですよ。」

雪風「いちいちソナーの使用を止めたり爆雷の投射に自身の進行方向を変えなくて良いのはありがたいですね。」

時雨「雪風も買っていたのかい?」

雪風「えぇ、ですが、ソナー自体はシリーズを含めて太平洋戦争後のロールアウトのはずですが?」

明石「まっ、そこは米軍が艦娘用へ転換する為に色々やっていたのをですね。」チョイチョイ

時雨「なかなかの悪党だね。」

雪風「地獄に落ちてろくな死に方しませんよ?」

明石「お二人とも何を言ってるんですか。」

明石「ここを何処だと思ってるんです?」

明石「ここは地獄の一丁目。これ以上落ちる所なんかないですよ。」

不知火「確かにそうですね。」

明石「まっ、お二人が撃沈したら装備を剥いで使えそうなら他の方へ売るんで装備が残るような死に方してくださいよ。」

明石「棺おけ代くらいは持ちますよ。」



そういうと明石は手をひらひらとさせ伝票を眺めながら自身の工廠へと去っていったのだった。


ここは日本番外地。

所属する艦娘は何がしかの訳あり。

命令拒否なんかは可愛い物で上官殺し、味方艦隊殲滅等々。

ありとあらゆる問題児たちを突っ込んだ掃き溜め。

軍法会議で軽い者は最低でも刑期が10年。

重い者になると解体処分という名の死刑判決を受けた死刑囚。

或いは戦争以外に生きる能の無い戦争狂い。

自分の命を金に換算してまで金を稼ごうとする。

訳ありの艦娘。

なんにせよ、脛に傷持つ奴か金を敵として稼ぐ事に執着を燃やす奴か。

そんな奴らが集まる所。

それが此処、外地鎮守府管理番号88。

通称 88鎮守府。地獄の一丁目だ。


第一話 仕事と任務


摩耶「おーい、時雨―!」

時雨「なんだい?」



鎮守府内の任務カウンターに貼り出された軍令部外、簡単に言うと民間からの依頼。

請負幾らの任務が貼り出された掲示板を眺めて居た所に同じ鎮守府の仲間。

重巡摩耶が声をかけて来る。



摩耶「稼げる仕事があるんだ、時雨も一口乗らないかい?」


この鎮守府の任務の仕組みは簡単に分けて二つ。

軍令部を通して正式に作戦として受理されたものは『 任務 』と呼ばれ。

民間からの依頼の任務は『 仕事 』と呼び分けられる。

所属している艦娘で自分の任期、

詰まるところの刑期を金で縮めたい連中は『 仕事 』を受け『 任務 』以外での報酬を稼ぐ。

それ以外にも金を稼ぎたい奴等は仕事を積極的に請ける。

自分の錬度と所持している装備、受け取れる報酬金、あるいは資材。

それらを天秤にかけ割がいいか良くないか。

その計算に長けたものだけがこの鎮守府では生き残れる。


時雨「話だけなら聞こうか。」

摩耶「そうこなくっちゃ。」



摩耶が簡単に説明をする。

中東からの石油精製品、それを運ぶタンカーの護衛。

簡単な仕事に聴こえるが・・・・。



摩耶「このタンカーは外洋を突っ切るつもりだ。」



なるほど、深海棲艦に襲撃される事を恐れて沿岸に航路を取るのではなく

日数短縮重視で外洋の航路を走るということらしい。

日本政府の庇護を受けるつもりのタンカーなら護衛の交代がしやすい海岸沿いに航路をとるだろう。

だが、日本政府へ警備、護衛を頼めば協力費という圧力で結構な量の積荷を持っていかれる。

それが今や高価で売れることが確定的な石油関連製品なら?

海岸沿いに日数をかけて輸送しても襲撃にあうことがあるなら?

日本政府への多大なピンハネを払うくらいなら安く済む、

腕っこきの警備員を雇うということなのだろう。

そして他の会社を出し抜きさっさと売りさばく為の航海日数の短縮。

もっとも相手の眼鏡にかなわなければ荷主にしたって積荷を失うことよりピンハネされる方を選ぶのであろうが。


時雨「報酬金額、拘束日数、申し分ないね。乗った。」



うしっとガッツポーズを決める摩耶。

そう、僕は稼がなければならない。

稼いで稼いで稼ぎまくって。

ここにいることを定められた刑期を縮めて生き抜いてやる。

そして、僕を罠に嵌めたその理由を彼女から聞くまでは死ぬ訳にはいかない。

沈んでなんてやるもんか。



摩耶「さてと、後、もう一人か二人誘いたいんだよね。」

時雨「他に誰が来るんだい?」

摩耶「んー?いつもつるんでる川内だろ?後、雪風にも声かけておいた。」



鎮守府内での仲間同士の繋がりは重要だ。

特に金になる話は。

お互いの装備、錬度、そして、艦種の相性。

それら全てをひっくるめて仕事を請けないと沈む羽目になる。


摩耶「予定されてる航路だけどトラックの連中が下手こいた後だからさー。」

摩耶「空母か戦艦が欲しいんだよねー。」

時雨「長門は?」

摩耶「燃料は向こう持ちだけどさ、弾代がね。」



戦艦の様に高火力ともなると弾の消費も莫迦にならない。

その為、支払われる報酬によっては金になる話でも見送るのがつねなのだ。



摩耶「まぁ、殴り合いが好きな長門からしてみれば対潜哨戒が主になる護衛は退屈なんだろ。」

時雨「違いない。」

摩耶「んっ、まっ、心辺りがあるから。そっちいってみるわ。」

時雨「じゃ、1時間後に出撃ドッグで。」

摩耶「あぁ、受任の手続きもこっちでやっておくよ。」

時雨「分かった。」



伯爵は暇してるかなぁと言いながら何処かへ向かう摩耶。

それぞれが稼ぐ理由があり、稼ぐ為にこの島へやってくる。

或る者は故郷への仕送り、或る者は贖罪の為。

そして、僕は僕を裏切って此処へ売り飛ばした彼女に理由を聞く為に。

今日も金を稼ぐ。生き残る為に。


第二話 補充兵器


数ヶ月前

小型デリックが輸送船から忙しなく補充物資を下ろしている港に一人の男が佇んでいた。

不知火「司令。司令部からのメールを印刷したものです。」

不知火「正式な書類は本日の船で『 補充兵器 』と共にとの事です。」

提督「ん、あんがとね。戻っていいよ。」

不知火「了解いたしました。」



一礼し下がる不知火。

胸元に入れている煙草を探すが・・・、最近禁煙を始めたことを思い出し軽く舌打ちする。



提督「補充兵器ね・・・。」

提督「いつもの定期便に乗せずにわざわざ船を出すってことはそれだけ早く厄介払いしたいってことかね。」



罪状、艦娘のこれまでの武勲。元の所属艦隊名と鎮守府。



提督「△×鎮守府ねぇ。ぴっかぴかのエリートさんじゃねぇか。」



中身をざっと見終えたくらいにちょうどタグボートが艀に近づいてくる。


提督「お疲れ、連絡のあった『 補充兵器 』はこの船に?」

水兵「えぇ、こちらを。」



受け取りと引渡しの認証をいつも通りに端末へお互いの身分証を兼ねたICカードを翳す。



提督「どうだい。珈琲の一杯でも?陸の話を聞かせてくれないか?」

水兵「すみません、自分はこの後も仕事がありますので。」

提督「そうかい。生きているうちに稼がなきゃな。」



提督の言葉にははと笑い返す水兵。

ガチャガチャ



提督「と、これで枷は全部かな?」

提督「さてと、お嬢さん。ここが何処か分かるかね?」

提督「後ろをついて来な。着任の手続きが執務室で待ってる。」

提督「あぁそうそう、俺の命を狙っても無駄だからな。三途の川の渡し賃にすらなりゃしねぇ。」



補充兵器として来た彼女の前をべらべらと喋りながら鎮守府建屋へ向かう提督。



「僕は無実だ。」

提督「既に出た判決を覆す事は難しいな。」

提督「人権に配慮した上は艦娘にも裁判を受けさせるという有難い配慮をしているが配慮だけだ。」

提督「結果がなにか変更される事はないさ。」


「だから僕はやっていない。」

提督「お前さんは運が良い。武勲を立てていなけりゃ問答無用で銃殺だ。」

提督「武勲を立ててきたお前さんに上はまだ利用価値を認めているらしい。」



補充兵器とされた彼女の返答を一方的に無視し話し続ける提督。



提督「よろこべ、敵の弾は戦艦、空母、重巡、軽巡、駆逐。全てを区別せずに等しく死を与えてくれる。」

提督「死にたくなったらいつでも当たりに行ってくれ。自殺の弾代が安く済む。」

提督「その分だけ花篭も良いやつにしてやるよ。」

提督「まぁ、何かやりたいことが残っているなら生き抜いて稼ぐこったな。」

提督「さぁて、着いたぞ。この立派な建物がお前さんの塒であり刑務所でもある鎮守府だ。」

提督「なかなかイカス建物だろ?そして、俺がここの看守兼提督だ。」

提督「これから宜しく頼むぜ?お嬢さんよ。」



港から少し歩いた所に聳え立つその建屋には

『 外地鎮守府管理番号 88 』とだけ書かれた看板が掛かっていた。



提督「普通の法律から外れた、そうだなある種の治外法権。」

提督「ここが地獄の一丁目と呼ばれる所以だ。」

提督「今までいた世界の常識とはこの入り口でおさらばするんだな。」

提督「 『 この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ 』 ってな。」



そう言い残し提督は建屋の中へと消えていった。


第三話 時雨、着任


不知火「司令、緊急入電です。」

建物内を歩く提督が書類を一瞥しふぅーっと大きく溜息をつく。

提督「おーい、お嬢さん。着任の手続きは後だ。不知火。全体放送で全員を作戦室に集めてくれ。」

不知火「了解いたしました。」


作戦室


鎮守府内の一際大きな部屋に戦艦や空母、重巡から潜水艦まで。

そして所々に海外艦と思しき人員。

おおよそあらゆる艦種と艦娘が全体放送により集まってきたのだった。



提督「全員集まったか?司令部からの作戦で全員参加だ。命令拒否はペナルティを払ってくれ。」

摩耶「いいからさっさと話を始めてくれよ。」

提督「今しがた入電したんだが横須賀の艦隊がスエズまで行っていたのは皆知っていると思う。」

長門「この間露払いしたからな。」

提督「連中、下手打ちやがった。」

正規さまは雑魚だねぇとか使えねぇなぁ等等、どっと笑いが起きる。

川内「それで追撃食らってるのを助けてやれってこと?」

提督「まぁ、有体に言えば。」

川内「で、幾ら出るの?」

提督「横須賀のお偉いさんの艦隊とかでな。

   作戦参加で1万、作戦完遂で100万の頭割り、後は戦果事のボーナスはいつも通り。

   MVPには半減上陸に小遣いもくれてやる。」

川内 ヒュゥ

川内「休暇の買取は?」

提督「必要なら申請しとけ。」

長門「司令部の作戦なら当然、弾と油は向こう持ちなんだろうな。」

提督「あぁ、好きにしろ。派手に暴れて来い。」


摩耶「よっ、お大尽!で、そこの駆逐艦は?」

提督「あぁ、ついでだ紹介しとこう。今日来た『 補充兵器 』さんだ。」

摩耶「名前で呼ばないのかよ。」

提督「まだ着任が済んでないんでな。不知火。」

不知火「お呼びですか。」

提督「後、頼むわ。作戦の開始は2時間後。参加する奴は出撃ドッグに集合な。」

提督「俺は寝る。書類整理で完徹しててな。眠いんだよ。」



必要なことだけを述べ提督は大きく欠伸をしながら作戦室を出て行った。



不知火「早速ですがこちらの書類に目を通していただきサインをお願いしたします。」



A4のコピー用紙に文字が細かく印刷されたものが2枚


時雨「目が痛くなりそうだ。」

摩耶「よう、あんた時雨だろ?」

摩耶「何やらかした?」

長門「やめとけ。此処のルールは問わず語らずだろ。」

川内「書類の内容はよく読んだほうがいいよ。でないと後で後悔する。」

摩耶「つったってまぁ、懲役代わりにここに来たんなら2枚目一択だけどな。」

時雨「?」

長門「簡単に説明するとだな。1枚目は軍籍を維持したままここで戦う契約。」

長門「軍籍は残したままだから当然、命令拒否は通常なら軍法に基づき処罰だが・・・。」

摩耶「懲役代わりに此処にきたんならそのままズドン。」

川内「銃殺だね。」

長門「その代わり、出撃の弾薬、燃料、修理は海軍持ちでシフトに従った出撃になるな。」

長門「ただし、支払われる金は給料のみ、また、懲役分の金を払って刑期を短くする事や艤装の改造も禁止だ。」

時雨「艤装の改造?」

摩耶「そっ。まぁ、2枚目の契約書の話になってくるんだけどさ。」


摩耶「2枚目は軍籍の放棄。早い話海軍と傭兵契約を結ぶってことだね。」

摩耶「傭兵だから出撃にかかる弾代、燃料代、修理費は自己負担。」

摩耶「その代わり撃破した敵ごとに定められた金が貰える。」

川内「そのお金を溜め込むか自分の刑期分を支払うか好きにできる。」

時雨「それは刑期をお金で縮めることが出来るということかい?」

摩耶「そういうこった。艦種事に算出方式が違うから特定の艦種ほど稼げるって訳でもない。」

摩耶「それ以外にも金を稼ぐこと自体が目的の連中もこっちを選んでるね。」

摩耶「ただ修理も含めて全てに金が掛かるからなるべく被弾しない立ち回りが必要だね。」

摩耶「選ぶやつは多いけど本当に腕の有る奴等しか生き残らない。」

川内「でも自分の好きなように艤装を改造して最新鋭の装備も金次第で引っ張れるのが魅力ではある。」

川内「そして、働いた分だけ金になる。」

長門「そういう訳だから2枚目を選ぶ奴の方が多いかな。」

不知火「皆さんありがとうございます。説明の手間が省けました。」

不知火「それからこれを。」


金属質な固さと冷たさを持ったICチップが付いたカードを渡たされる。



不知火「ここにいる間の身分証明書兼電子マネーカードです。

    全ての決済がそちら1枚で出来ますので無くされない様にお願いします。」

不知火「万一紛失された際は早めの連絡を。それと、こちらの認識票も必ず身に着けて下さい。」

不知火「死亡された際の遺体の確認に使用いたしますので。後、こちらに遺品の送り先を。」

不知火「それから司令からの伝言ですが今までの武勲と給料で10万入っていますので当面の生活には困らないかと思います。」

不知火「ですが無駄遣いはなさらぬよう。後、食事は基本無料ですので御安心下さい。」


淡々とした口調で書類を差し出していく不知火。


不知火「それでは不知火はこれで失礼します。」

長門「さてと、明日の酒代を稼ぎに行くか。」

川内「10万ね。雪風以来かな。新人でこれだけ持ってここに来たのは。」

長門「確かにな。だが、死ねば皆一緒だ。ドックへ向かうぞ。」

川内「だねー、生きてる間は稼がないと。」

摩耶「で、雪風は今回の任務参加するの?」


作戦室に居た艦娘があらかた出て行った後、摩耶が後方に語りかける。


雪風「雪風は今回は遠慮します。」

摩耶「任務だから違反金だぜ?」

雪風「残敵の掃討部隊というのは決まって精強で士気が高いものです。」

雪風「駆逐艦の私では分が悪いってもんです。」

摩耶「そっか。じゃ、また後で。」

雪風「生きていれば。」ニィ

摩耶「時雨は?」

時雨「そうだね。僕も今回は遠慮しておくよ。まだここになれてないしね。」

摩耶「ふぅん。金持ちは違うねぇ。じゃ。またな。」


そういい残すと摩耶は去っていった。


雪風「よろしかったのですか?」

時雨「うん。雪風は此処が長いんだろ?それなら生き残るのが上手い娘を見習った方が良いと思ってね。」

雪風「さぁて、どうでしょうかね?」ニィ


この後、僅か30分後時雨は雪風の不敵な笑みの理由を知ることとなった。


不知火「鎮守府周辺海域に敵の艦隊の出現を確認しました。」

不知火「出撃可能な方は全員迎撃に向かってください!」


鎮守府全体放送で緊急放送がかかる。


雪風「予想通りですね。」

時雨「まさかこれを狙っていたのかい?」

雪風「作戦の決行時間は日没が近かった為、夜間作戦になるのは分かりきっています。」

雪風「雪風達駆逐艦が本領発揮するには魚雷をばら撒くのが一番ですが・・・。」

時雨「出撃する味方が多いと味方に誤射する可能性が高くなるね。それに夜だと尚更。」

雪風「その通り。それに競合する相手が少ないほど稼げるってもんです。」

時雨「流石だね。」

雪風「私は出撃して稼いできます。時雨さんも御一緒にいかがです?」

雪風「今までいた所がどれだけ微温湯だったか分かりますよ。」


ぬらりとした張り付いた笑みを見せると雪風は暗闇の中を出撃していった。


時雨「成程・・・、地獄の一丁目か。」


時雨はこの日、地獄の歩き方を少しだけ学んだ。


安価スレの末尾にて御連絡させていただいていた分のスレ立て

イベ中に更新出来れば1話分くらいは更新したいですね

まるっと同じという訳にもいかないので雰囲気が似せれたらと思う所

では、またの更新時に

ここまでお読みいただきありがとうございました


現在進行形でやっている別の作中と前作にて加筆修正後の再掲載の旨を告知していたため

スレを立てるにあたって不要かと思い

その事を省いたためお読みいただいた方に混乱をきたす事になり申しわけありませんでした

といっても酉をつけていないため同一人物と証明も難しいのですが・・・・

とりあえず、バスクリンです、はい

本日分の更新をさせていただきます、お時間よろしければお付き合い下さい


第四話  Ghost Submarine’s


鎮守府ドック埠頭


明石「お帰りなさい。今日もがっちり稼いでいますか!」

時雨「そうだね。駆逐に軽巡に補給艦に・・・、まぁ3万は固いね。」

時雨「魚雷を30本は貰おうか。」

明石「ふふふ。毎度!」

明石「魚雷の相場が1本このくらいですから・・。」

明石「こんなとこでどうです?」

時雨「高いね。もう少し安くならないかな?輸送ルートの掃除を頼まれてあげるからさ。」

明石「仕方ないですね。こんなとこで?」


電卓を叩く明石。


時雨「うん。それで。」

明石「まいど!」


明石が持つ端末にカードを翳し決済終了。


雪風「私も同じ値段ですよね!20本いいですか?」ニタァ

明石「いつからいたんですか!?まったく、ちゃっかりしてますねぇ。」

不知火「お二人ともお疲れ様です。本日の戦果報告をお願いします。」

時雨「うん。後で報告書をまとめておくよ。」

不知火「宜しくお願いします。」


ズッズッズッ。

重そうに水を含んだ布地を引き摺りながら潜水艦娘が二人の近くを通りがかる。


時雨「ヒトミ。これを着なよ。」


つレインパーカー


伊13「・・・、ありがとう・・ございます。」

雪風「時雨さん。潜水艦の方々はあまり私達と馴れ合いませんよ。」

時雨「そうはいっても僕らと同性が上半身裸で歩いて回るってのも良くないよ。」

時雨「いくら入渠ドックまでの短い距離だっていってもよくないさ。」

時雨「ゴーヤもだよ。」


つ雪風のレインパーカー


雪風「いつのまに。」

伊58「・・・、ありがとうでち。」

伊58「ヒトミ、急ぐでち。修理が済んだら、まだ、今日のノルマが残ってるでち。」

不知火「・・・、お疲れ様です。」ペコ


ズルズルズル。

潜水艦娘の指定水着。

その上に時雨からもらったパーカーを羽織る。

破れたスクール水着を下に引きずりながら入渠ドックへと歩いていく潜水艦娘達。


川内「時雨は優しいね。」

時雨「なんだい、見てたの?」

川内「ふふ。まぁね。」

雪風「川内さんも人が悪いですね。」

川内「といっても潜水艦の娘達はあんまり馴れ合いたがらないからね。」

川内「時雨の差し出すパーカーを素直に受け取ってたのが珍しかったのさ。」

時雨「そうなの?」

雪風「そういえばそうですね。あまり潜水艦以外の娘達と馴れ合いたがらないですね。」

明石「まぁ、事情が事情ですからね。」

川内「まだいたの。」

明石「扱い酷いですねぇ。まっ聞きたいならこれ次第でお話しますよ。」


手でお金のサインをする明石。


一同「「「いや、いいです。」」」

明石「」

雪風「では、食堂で夕飯と行きましょう。」

時雨「そうだね。ご飯は大事だよ。」


食堂

食堂はいつもの様にこれから出撃する者、帰ってきた者でごったがえしていた。


川内「夜戦スペシャル1つ!」つ食券

「ほいよ!」 つスタミナカルビどっさり定食 & 果物山盛り

時雨「沢山食べるね。」

川内「夜に動くからね。この位食べておかないと朝までもたないの。」モッモッモッ

雪風「流石に見てるだけで胸焼けを起こしそうです。」


そして和やかに食事をしていた時に時雨が気づいた。


時雨「ハチたちは座るところを探しているのかい?」

時雨「よかったらここに座りなよ。」

伊8「ダンク。」

伊13「ありがとうございます。」

時雨「どういたしまして。」

雪風「川内さん詰めて詰めて。」


雪風が自分の横に座る川内を肘で横へ押しやる。


川内「ほいさっ、ほいさっ。」

川内「ほい。スペース出来たね!」


伊58「どうしてゴーヤ達にかまうでち?」

時雨「そうだね。うーん、一緒に命を賭けて戦っている仲間だから。」

時雨「これじゃ答えに不足かな?」

伊58「川内達は?」

川内「私?簡単だよ?仲間の時雨が仲良くしたがってる。それだけで理由としちゃ充分でしょ?」

川内「私はこれでも時雨に一目置いてるからね。時雨が仲良くしたいならそれを応援するよ。同じ鎮守府の仲間としてね。」

雪風「同じくです。」

伊58「仲間・・・・。」

時雨「じゃ、僕らはこれで。」

川内「ほら雪風も行くよ。」


川内に促され8個目の肉まんを片手に持ち雪風も席を立ち上がる。


時雨「じゃ、ゆっくりしなよ。」


そう言い残し食事を終えた3人は食堂を去った。


後日とある日 インド洋海上


摩耶「敵の潜水艦部隊に出会わないと楽だねぇ。」

時雨「潜水艦の対応に装備を全振りしてるから水上艦は頼むよ。」

摩耶「任しときな!そんときゃあたしの後ろに隠れるといいよ。」

摩耶「そうでないとこっちばっかりが得しちまう事になる。」

摩耶「あたしら重巡は対潜が出来ないからなぁ。」

時雨「各々向き不向きがあるさ。摩耶は水上艦、僕らは潜水艦。それでいいじゃないか。」

摩耶「潜水艦で思い出したけど時雨、最近潜水艦と仲がいいんだって?」

時雨「うん。まぁ・・・ね。何か問題でもあるのかな?」

摩耶「あいつらはちょっと特殊だからね。」

摩耶「潜水艦の連中は過去の経歴がまったく存在しないって噂だぜ。そして、何をしでかしてここに来たのか誰も知らない。」

時雨「誰も知らないの?」

摩耶「まっ、不知火なら知ってるかも知れないけどね。」

摩耶「んで、連中は終戦まで此処にいる決まりでかなりの額の賠償金も背負わされているって話だぜ?」

摩耶「経歴も何もかも存在しない、だから鎮守府の古参連中は幽霊って呼んでるんだ。」

摩耶「Ghost Submarine’s 幽霊潜水艦隊ってね。」

時雨「幽霊潜水艦隊・・・・。」

摩耶「まぁ、足はついてるけどな!」ハハハ

雪風「確かについていますね。」ハハハ


また別の日


時雨「お疲れ。」

伊58「お疲れでち。」

時雨「低気圧が近づいてるみたいだよ。荒れそうだね。」

伊58「海の中は関係ないでち。」

時雨「そっか。それもそうだね。」

伊58「可笑しなやつでち。」フフフフ

時雨 フフフフ


さらにまた別の日


時雨「ヒトミ、お疲れ。」ヒュッ

伊13「あっ、お疲れ様です。これは?」パシッ

時雨「自販機が誤作動してね。2本出てきたんだ。あげるよ。」

伊13「暖かい・・・。」

時雨「今日はあがりだろ?海中は冷えただろうし、ゆっくり飲みなよ。」

伊13「ありがとうございます。」

時雨「はちもだよ。」ヒュッ

伊8「時雨はいいの?」パシッ

時雨「僕は今から出撃でね。ゆっくり飲んでいる暇がないんだ。」

伊8「酷い話ですね。」フフ

時雨「まったくだよ。」フフ

長門「時雨、出るぞ!」

時雨「あっ、うん!すぐ行く!じゃ!」

長門「と、二人、これは私からだ。」ポイッ

伊8「カイロ?」パシッ

長門「間違えて余分に封を切ってしまってな。」

長門「勿体無いから使ってくれ。ではな!」

伊8「ダンケ!」


数日後 どこかの海中

伊13「ゴーヤさん。時雨さん達なんですが・・・。」

伊58「・・・・。」

伊8「私は仲良くしてもいいんじゃないかって思う。」

伊8「今までの、ううん。ここに来る前にいた連中とは違うと思うの。」

伊58「やつらは!イクにイムヤは・・・・・!」

伊58「ううん。今はその話をする時ではないでち。仕事の時間でち。」

伊58「今週のノルマまで後少し。本腰いれて掛かるよ!」

伊13 伊8「「はい!」」


同時刻 鎮守府廊下

不知火「時雨さん。お時間よろしいですか?」

時雨「不知火?僕に何かようかな?」

不知火「最近親しくされている潜水艦の娘達についてこちらの会議室で少し宜しいでしょうか?」

時雨「分かった。」


会議室内


不知火「そちらにどうぞ。」

時雨「ありがとう。それで、話っていうのは?」

不知火「これからお話することは他言無用で願います。」

不知火「不知火も司令から伝える様にと言われたのですがその意図が分かりかねている所です。」

不知火「初めにお話ししますが彼女達の罪状は以前いた鎮守府の殲滅を主導した事です。」

時雨「!!」

不知火「現在この鎮守府に居るゴーヤさん、ハチさん、ヒトミさん。」

不知火「そしてここにはいないイヨさんの四人で計画は実行されました。」

不知火「全てが終わった後、彼女達は出頭し、罪の自白、及び極刑を希望されたそうです。」

不知火「以上が彼女達がここに来ることになった簡単な経緯です。」


時雨「何が彼女たちをそれ程までの狂気に駆り立てたんだい?!」

不知火「私達艦娘は軍務に付く際に所属鎮守府を登録しその後は艦隊司令部の作成した艦娘運用規定に則って

    各種作戦等の任務に従事します。」

不知火「そして、各鎮守府事の最大着任数は決められておりその上限枠を超えての着任は出来ません。」

不知火「また、鎮守府の大小に関わらず資源の最大保有量は変わりません。」

不知火「時雨さんもご存知ですよね、潜水艦の艦娘で資材を効率的に確保する方法を。」

時雨「・・・・、オリョクルだね。」

不知火「オリョクルは方法として司令部も必要悪として黙認している部分もあります。」

不知火「ですが、実施する際には疲労解消の徹底等いくつもの条件を満たした場合のみとしています。」

不知火「しかし彼女達はそれが守られていませんでした。」

不知火「いえ、酷使することを目的に意図的に着任手続きはされませんでした。」

時雨「そっか、着任していなければ艦娘としての運用規定に抵触しないという事か。なんて卑劣なんだ・・・。」

時雨「でも、ヒトミは着任手続きを取っていたんだろ?」

不知火「えぇ、ヒトミさんとその妹のイヨさんは着任手続きなされていたことが司令部の記録に残っています。」

不知火「そして、ある日、オリョクル中に彼女達の仲間であったイクさんが『 事故 』により喪失しました。」

時雨「事故だって?」

不知火「 『 事故 』です。」


強調するかのように繰り返す不知火。

その表情は険しい。


不知火「艦娘としての籍が用意されていなかった為何が起きていたのかも

    証言のみでしか伺えませんがゴーヤさん達の救援要請が握り潰されたそうです。」

不知火「そしてその件もありヒトミさん姉妹は待遇の是正を求め動いていたのをより強め

    司令部監査室へ告発しようとした所を司令官に気づかれイムヤさんが『 事故 』により失われました。」

不知火「記録上は。」ギリ

時雨「なんて胸糞悪くなる話なんだ。」

不知火「告発失敗の後はヒトミさん達姉妹もオリョールの出撃へ組みこまれています。」

時雨「・・・・。」

不知火「この二件の事故で彼女達は従順になりました。いえ、正しくは演じていたですね。」

不知火「オリョクルで獲得可能な資源は燃料、弾薬とありますがその獲得資源量は一定ではありません。」

不知火「重ねてオリョール海は多島海の為彼女達が獲得した資源の一部を貯めるには隠し場所が実に豊富でした。」

時雨「その・・・・隠れて貯めた燃料や弾薬はやっぱり?」

不知火「えぇ、臥薪嘗胆の思いで貯めた資材が目標の量に達した時に彼女達は行動へ移ったそうです。」

不知火「深海棲艦が定期的に大量発生する時期に合わせて雌伏の時を過ごし、牙を研ぎ澄ませていたのですね。」


不知火「そして彼女達は同じ鎮守府の艦娘を駆逐、軽巡といった対潜行動が可能な子達から葬り最後に正規空母、

    戦艦といった対潜行動をとれない娘達を一方的に弄り殺したそうです。」

不知火「ヒトミさん姉妹が告発に向けて動いていた際も協力する者は誰一人として居らず寧ろ、

    資材を取ってくる便利な『 何か 』程度にしか認識されていなかったため

    ゴーヤさん達の調書ではイクさんやイムヤさんの仇をとったという感情しか沸かなかった。と書いてあります。」

不知火「全てが終了した後、司令官も殺害し鎮守府に火を掛け海軍特別警邏隊に出頭し身柄を拘束されました。」

不知火「その目的は世間に広く事実を知ってもらう為、自分達と同じ状況になる艦娘を二度と生み出さない為に。」


どれほどの決意を持って行われたのかを考え不意に時雨は泣いてしまう。


時雨「そのイヨは?」


そして、一人だけ居ない者が居ることに時雨は気付いていた。


不知火「イヨさんは一人海軍大津刑務所に拘留されています。」


人質か・・・・。


時雨「ここの提督の指示なのだとしたら相当な極悪人だね。」


吐き捨てるように言った時雨のこの台詞はこの瞬間においては大きな間違いであった事はこの後の不知火の様子が物語る。


不知火「あなたに司令の何が分かると言うのですか!」


怒気を存分に含ませ全身から溢れ出す殺気を押さえようともせず時雨を睨みつける不知火。

しかし、それは一瞬の事だった。


不知火「いえ、失礼しました。ただ、司令は海軍がその事実を死刑にて隠蔽しようとしたのを

    彼女達へ懲罰を与えるという口実をつけ救い出したという事実は付け加えさせていただいて宜しいですか。

    彼女達が生きている限りは事実は残りますので・・・・。」

時雨「そう、知らなかったとはいえ非礼を働いたのは僕の方だった様だね。」

時雨「不知火、ごめんよ。先の発言は取り消すよ。本当に申し訳ない。」

不知火「いえ、時雨さん、私が言えたものではないですがゴーヤさん達をお願いします。」


会議室を出て行く時雨が扉を閉めるときに見たのは深々と頭を下げる不知火の姿だった。


ゴーヤ達は逃げ回っていた。

いつものように通商破壊の為の補給艦狩を終えた後、帰投中に敵の対潜部隊に見つかったのだ。

伊58「敵がしつこいでち。」


敵は新しい玩具を与えられた幼児の如くゴーヤ達を嬲り弄んでいた。


伊8「同じ海域で補給艦狩りをやりすぎましたね・・・。」

伊58「今はそれを言っても仕方ないでち。」

伊58「それより、みんな魚雷は後何本残ってる?」

伊8「4本。」

伊13「6本です。」

伊58「二人とも1本だけ残して残りをよこすでち。」

伊58「ここはゴーヤが引き受けるでち。二人は逃げるでち。」

伊13「ゴーヤさん!?」

伊8「私も付き合うよ。ヒトミさんは逃げてください。」


伊13「お二人を残して逃げるなんて出来ません!」

伊58「ヒトミは妹が居るでち。何が何でも逃げ切るでち。」

伊58「生きて帰らなければいけない責任と理由があるでち。」

伊8「私達の境遇を変えようと動いてくれた時は嬉しかったです。」

伊58「その所為でこんな所にまで巻き込んでしまって悪かったでち。」

伊58「さぁ!いくでち!ここは二人でなんとかするでち!ヒトミだけでも生きて帰るでち!」

伊8「ただではやられないよ!」

伊58「そういう顔をするなでち。さっ!敵がこっちを探してうろついている間にいくでち!」

伊13「必ず!」

伊13「必ず!救援を連れて帰って来ますから!」



伊8「いきましたね。」

伊58「でちねぇ。」

伊8「さて、暴れますか。」

伊58「ハチも悪いでちね。黄泉路を一緒に歩くのがゴーヤで。」

伊8「敵も夜を前にこちらを沈めるべく動いてくるでしょうから増援が来るでしょうね。」

伊58「魚雷は2人で16本。一人8本ずつでち。最後の花火派手にいくでち!」

伊8「随分残してましたね。」

伊58「1本ずつを確実に当てれば少ない量でたくさん狩れる節約術でち。」フフフ

伊8「節約ですか。」フフフ



鎮守府 出撃ドック近く


時雨「雪風もランニングかい?」

雪風「時雨さんもですか?日が暮れるのも早くなりましたね。」

時雨「うん、本当に。」


二人が運動後の体を海風に晒しほてりを冷ましている時に彼女は帰ってきた。

そして、一気呵成に事情を話し懇願した。


伊13「お願いします!お願いします!」


仲間の、ゴーヤ達の命を助けて貰う為に。すがりつくように懇願をする。


時雨「雪風。」

雪風「行きますか。」

時雨「勿論。」

川内「二人とも待った。任務でも仕事でもないのに勝手に海に出るのは脱走兵扱いだよ。」

川内「私が見逃しても私と同じように金目的でここに居る連中が見逃すとは思えないけど。」

川内「それでも行くの?」

雪風と顔を見合わせる時雨。


時雨「川内は本当に神出鬼没だね。でも、僕らは脱走するわけじゃない。」

川内 ?

時雨「夜の散歩にいくだけさ。」フフ

雪風「その通りです。」ニヤリ

川内「散歩ね・・・。なら私が付き合わない道理はないね。付き合うよ!」

摩耶「なんだい?散歩かい?奇遇だねぇ。あたし達もこれから散歩なんだ。」

長門「夜の散歩は危ないぞ。照明弾も持ったか?」

摩耶「川内なら夜偵も持ってるよな。なっ。」

パンッと胸前に握った拳で音を立てる長門。

テキパキと散歩の準備を済ませる一同。

長門「さぁて、花火大会会場に案内してもらおうか。」

伊13「みなさん、みなさん!ありがとうございます!」



伊58「動けるのが不思議なくらいの状態でちねぇ・・・。」

伊8「ヒトミちゃん逃げ切れたかなぁ。」

伊58「ヒトミなら大丈夫でち。ゴーヤ達が沈めば全部元に戻るだけでち。」

伊8「思えば結構長い付き合いだったね。」

伊58「ヒトミ達姉妹には感謝でち。二人がゴーヤ達の境遇改善に動いてくれたのはうれしかったでち。」

伊8「うん。はっちゃんもそうだよ。」

伊58「さぁて、残りの魚雷は1本だけだけど一隻でも敵を沈めて華々しく散ってやるでち!」

伊8「一隻でも多く沈めるよ!」


二人が最期を覚悟した時だった。


ドン!

水中にいるゴーヤ達からも分かる頭上の明かり。


長門「明石の在庫整理の大安売りでな!期限切れ寸前の照明弾のバーゲンだ!」

摩耶「軽空4、軽巡3、駆逐6!ついでにお守りの戦艦が1だ!」

時雨「いいね。いい運動になりそうだ。」

川内「私はねぇ、夜戦が大好き。」

川内「なぜかって?嫌いな夜に寝る気にならないから。」ニタァ


照明弾の残光が残る中でそれぞれが思い思いに敵と対峙する。


雪風「あなた達は幸せですよ。」

雪風「なにせ、痛みを感じることなく黄泉路を逝けるのですから。」


主砲の砲撃に注意を引き付け魚雷で止めをさす雪風。


川内「あぁ、今日も生き残った。」ペロリ


顔に付いたオイルとも血とも分からないものを舐めとり

手に握る軽巡だった物の艤装の断片を海へ放り投げ一息入れる川内。

敵は死んだことすら分からないのか捥ぎ取られた部位以外はぴくぴくと蠢く。

しかし、それはすぐに活動を止めた。


長門「さぁ!殴り合いを楽しもうか!」


対潜部隊の軽空母陣から少し離れた所では

戦艦同士の主砲の撃ち合いをする音が続きその砲煙は日の落ちた闇夜を赤黒く照らす。


長門「さぁ!さぁ!まだだ!まだ楽しませてくれるよなぁ!」

摩耶「ありゃスイッチ入っちまったなー。」

時雨「近づかないほうがよさそうだ。」


数瞬、まさしくほんの少しの時間、ゴーヤ達が最期と覚悟を決めてほんの少しの後。

その海域には深海棲艦で動くものはいなかった。


長門「他愛ない。」

摩耶「まったく。長門の姐さんはやり過ぎ。」

時雨「ゴーヤ達は大丈夫かな?」

伊13「なんとか!自力で帰れそうです!」

摩耶「食後のいい運動になったよ。」

摩耶「時雨、あたし達は先に帰ってるから雪風と援護してゆっくり散歩を楽しんで来るといいよ。」ニヤリ

川内「そうそう。じゃ、また後で。」バイバイ


台風の様に圧倒的暴力を吹き散らかし大破したゴーヤ達を護衛するような形で時雨と雪風は帰途についたのだった。


伊58「時雨、雪風、助かったでち・・・・。」

伊58「でも、なぜ?」

時雨「簡単だよ。前にも言ったけどゴーヤ達は仲間だろ?」

時雨「助けるのに理由なんて必要かい?」

雪風「じゃ、みなさん帰りましょう!」



鎮守府ドック付近


川内「お帰りー。」

不知火「お帰りなさい。」

摩耶「不知火が話があるってさ。」

伊58「不知火!時雨達は見逃して欲しいでち!ゴーヤが全て責めを負うでち。」

伊58「ノルマの増加でもなんでも受けるでち!」

伊58「だから、だから、二人の無許可出撃は見逃して欲しいでち!」


土下座をし額をドックのコンクリートで擦り切らんばかりの勢いで拝み倒す伊58。


摩耶「まーまー。落ち着きなって。」

不知火「司令から二人に伝言です。『 外出許可届けを出し忘れているぞ。 』と。」

不知火「こちらに氏名と登録番号を記入の上、明日昼までに提出をお願いします。」


二人に渡されたのは受領時刻が出撃した2時間前で記入された外出届。


不知火「尚、『 外泊許可届けとは違うから安心しろ。 』とも言われていました。」

不知火「意味は分かりかねますが。では。」

川内「提督も味な真似するよねー。」

長門「まっ、根っこまで腐っているようなら私はここに居ないがな。」

摩耶「頭の毛根は腐ってるみたいだけどなー。」

不知火「司令は禿げていません。薄いだけです。」キリッ

一同 爆笑

不知火「では、提出の期限は皆さん守っていただきますようお願いします。」


そして、不知火は書類を渡し終えると仕事が残っているからと去っていった。


伊58「みんな、本当にありがとうでち。」

伊58「仲間なんてハチやヒトミ達以外に居ないものだと思っていたでち。」

伊8「助けていただきありがとうございました。」

摩耶「気にすんなって。仲間だろ?あたしらは散歩に出たらたまたま敵に出くわしただけなんだから。」

川内「そーそー。じゃ、私らはこれで。」

時雨「ゴーヤ、またね。」

伊58「また。」ズビッ

伊58「またでち!」

それぞれの部屋へ帰り行く一同、その後ろ姿を見送る潜水艦娘達。

その姿が小さくなってもゴーヤ達は手を振り続けていた。


雪風「ところで時雨さん。」

時雨「なんだい?」

雪風「魚雷に弾薬、任務や仕事ではないので大赤字です。」

雪風「これは散歩にお誘いいただいた時雨さんに請求するべきでしょうか?」

時雨「ちょっとやだなぁ。せっかくいい話で終われそうだったのに。」

雪風「もしかして、雪風、空気を読んでいませんでしたか。」フフフ

時雨「本当だよ。」フフフ


こんな感じで進行していきたいと思います

本日はお読みいただきましたありがとうございました

ボツネタとして掲載させていただいた時は需要があるんかいなという部分が大きかったので

続きは?というレスが多かった事に驚きました

さて、E4のゲージ削らなきゃ・・・、Z6マスで心折れ、乙にて絶賛攻略中です

E4のラスボスはたぶんZ6のS勝利だと思いますです

乙レス、感想レス、いつもありがとうございます

ではでは、また次回の更新で


1です、本日分の更新をさせていただきます

乙レス、感想レス、いつもありがとうございます

>72様

自分以外に同じネタで書いていた方がいらしたのでしょうか?

前々作での末尾に掲載していたものはボツネタとしての物の為、続きをやる予定すらなかったのですが

その為、ちょっと心当たりがないので申し訳ないです

他の方が書かれていてエタっていたのであればこちらで楽しんでいただければ幸いです


第五話 川内という女


ジジジジジ。


「ん。」


もぞりと寝床から起き出し枕もとの目覚ましを止める。


「主砲よし。」

「魚雷よし。」

「電探よし。」

「そして最後にダメコンよしっと。」


装備の一つ一つを指差し確認。

首に襟巻を巻き気合をひとつ。


時雨「川内も今から朝食かい?」


日課のランニングを終えストレッチをこなし体を冷やしているところに同じように運動を終えた時雨が声をかけてくる。

普通の鎮守府と違いトレーニングや訓練を一切強要されることは無い。

しかし、ここに所属している艦娘でそれを怠るものは一人としていない。

ここが激戦地で他より危険度の高い敵がうろついていたり

他の鎮守府で手に負えない敵を倒すために存在しているから。

例えるなら始まりの町を一歩出たらいきなり魔王城の大広間で魔王とこんにちは、みたいな。

それ程の危険な海域の中に存在しているのがこの鎮守府なのだ。

出撃した際に死なない確率を少しでも上げる為にみな自分が最適と思うトレーニングをこなす。


食堂


川内「今日の朝食は何にしようかな?」

時雨「食事が楽しみってのはあるよね。」


朝食は食堂の入り口で券販機から食券を出しそれを受付に置き受け取り口で受け取る。


時雨「何と言うか養成学校時代を思い出すね。」

川内「時雨は養成学校に行ってたんだ。」

時雨「川内は違うの?」

川内「私は志願、即、戦場だったからなぁ。こうして生きてるのが不思議なくらいだよ。」

雪風「川内さんの昔話は珍しいですね。」

雪風「来たときに比べれば随分丸くなったもんですよ。」

時雨「そんなに酷かったの?」

雪風「そうですね。幽鬼の如き有様でした。」

川内「ちょっと雪風。」

雪風「と、おしゃべりが過ぎました。」


普段、飄々とした態度を見せる川内の過去の話に華が咲きそうだった時に不知火がやって来る。


不知火「おはようございます。」

時雨「おはよう。」

不知火「急ぎでは無いのですが頼まれごとをお願いしてもよろしいですか。」


返事をする前から3人の前に書類を並べ始める不知火。


雪風「捜索に出るだけなのに結構いい稼ぎですね。」ズルズル


その小さな体のどこに入るのか6杯目のラーメンを食べながら雪風が書類の内容に感想を漏らす。


時雨「何か訳有りなのかな。」

不知火「察しがよくて助かります。」

不知火「技研が新型兵装の実験を行っていたようで

    その新型兵装を積んだ艦娘が行方不明の為兵装の回収をお願いしたいと。」

川内「なんたってこんな危険海域で。」

不知火「馬鹿だったのではないでしょうか?」

雪風「辛辣ですね。」

時雨「兵装の回収だけなのかい?」

不知火「・・・・、おっしゃりたいことは分かりますが艦娘に関しては生死を問わずです・・・。」


苦々しい、そう表現するしかない渋い顔で不知火が答える。


不知火「とりあえず、お暇な時で結構ですので。」


そういい残し不知火は去っていった。


時雨「皆、どうする?」

雪風「悪くないと思います。」

川内「多少派手に交戦しても黒字が出る金額ではあるかな。」

長門「ん?なんだ、お前達も頼まれたのか。」

時雨「長門達も?」

長門「あぁ、この後行こうと伯爵達と話していた所だ。

   時雨達も行くなら艦隊としての受任手続きはこの長門がしておこう。」

時雨「じゃぁ、お願いするね。」

長門「任された。」


鎮守府 出撃ドック近く


川内「おっ、提督暇してる?」

川内「釣りなんかして何か釣れるの?」

提督「釣れるさ。お前と言う話し相手がな。」

川内「そう。・・・、横、座るよ。」

提督「ん。これを下に敷くといい。尻が冷えなくていいぞ。」

川内「煙草。」


そう言い提督の口に咥えていた物を取り上げ口に咥える。


川内「やっぱりまっずい。禁煙しなよ。」

提督「してるさ。少なくとも30回は成功している。」

川内「じゃぁ、もう吸えないようにライター没収!」

提督「おいおい、ダンヒルのライターで頂きものなんだぞそれ。返してくれ。」

川内「べ――――だ。」


舌を出しあっかんべーをする川内。


提督「まったく・・・ところで川内、そろそろ契約更新の時期だが。」

川内「するよ。今回も契約延長。」

提督「・・・・、まぁ、お前さんの勝手だ。仕送りはまだやってるのか?」

川内「・・・、うん。」

提督「ここで働く理由は聞かないが安全な仕事場なら紹介してやれるぞ?」

川内「でも、儲からないよね。」

川内「ねぇ、提督はなんで煙草をすうの?」

提督「口寂しい時に乳吸わせてくれてた女が死んだからさ・・・・。」


ふいと煙を吐く提督。

その横顔はどこか物悲しさを感じさせる。


時雨「あっ川内、ここに居たのかい?先程の任務だけど手続き終わったって。出るよ。」

川内「うん、分かった!すぐ行く。」

川内「提督!」

提督「ん?」

川内「行って来ます!」

提督 フン。

提督「いってらっしゃい。」フフ


何処かの海上


時雨「今日の任務は顔見知りでの出撃だね。」

川内「雪風と時雨、私に摩耶に長門と伯爵か。」

川内(気の許せる仲間って所かな。お互いの実力をきちんと把握出来ている。いいね。)

長門「こちら『 巨乳 』リーダー長門だ、

   現在行方不明になったとされる海域に到着。敵艦隊見当たらず。」



「こちら不知火、了解です。目標を発見できましたら回収をお願いします。」ザリザリ



摩耶「長門の姐さんに任せると、めちゃくちゃ恥ずかしい艦隊名で受任申請するよね。」

グラ「まぁ、理由は分からないではないがな。」

時雨「分かるの!?」

グラ「私達が万一沈んだ際に書かれる死亡届けの艦隊名は受任した時の艦隊名だ。」

グラ「流石に『 巨乳 』などと恥ずかしい名前が記載されたくはないだろう?」

グラ「なればこそ。生き残ろうと頑張るものさ。」

雪風 ペタペタ

雪風「長門さん。」

長門「ん?」

雪風「後で謝罪を要求します。」

長門「?」


川内「あー、まぁ仕方ないよねー。」

グラ「哨戒機に艦影なしだ。潜水艦はどうだろうか?」

時雨「感無し。」

雪風「同じくです。」

摩耶「・・・・・。妙だな。」

長門「哨戒範囲を広げるか。」

グラ「むっ。艤装と思しき浮遊物と艦娘かな?哨戒機が浮遊物を発見したぞ。」

哨戒に出した艦載機からの連絡を受け全員に伝達するグラーフ。

時雨「どっちの方角?」

グラ「ここから北東方向に200だ。」

長門「ふむ。行って見るか。」

川内「・・・・・。皆待った。」

時雨「どうしたの?」

川内「何か臭う。」

雪風「臭うですか?」

川内「うん、私とした事が仕事を請ける前に気がつくべきだった。」

摩耶「川内、どうしたってんだよ。」

川内「昔ね、私が志願したての頃に居た鎮守府がやられたやり方を思い出してね。」


川内は話す。

自身が所属していた鎮守府が敵にいかに潰されたかを。

敵の深海棲艦は実に狡猾かつ卑劣な手段をとっていた。

駆逐艦の娘達を捕まえ救援要請を出させ機雷原に放置し、

助けに来た味方を救援対象事吹き飛ばす。

救援要請を拒んだ娘については

徹底的に『 壊した 』後に海面に打ち捨てその確認に来る者を殺す撒餌にした。

艦娘の仲間意識を利用した卑怯だが非常に有効なやり方。


川内「餌に使う娘はとにかく口だけ利ければいいって感じで状態にされててね。」

川内「一番酷いので達磨だったかなぁ。」

川内「そんな状態だから助けに行っても結局死んじゃう事が多かったかな。」

川内「それで戦艦とか空母の娘とか。

   自分に絶対の自信を持っている娘程助けに生きたがるものだからその娘達から先に消えていったんだ。」

長門「ふむ。ならば行かずに帰投するのが正解か。」

グラ「むぅ。しかし、哨戒機からの連絡によると浮遊物は艦娘らしくどうも生きているようだが?」

川内「それが敵の狙い目でね。助けても花火を大量に持たされていて敵は一発でも当てれば救援に来た艦隊事ドカン。

   外そうとしても仕掛けが働いてドカンなんだ・・・。」


時雨「川内?」

川内「・・・・、妹達がね。自分の部下だった娘達を助けようとして、ね。」

時雨「ごめん。つらいことを聞いたね。」

川内「いいよ。別に。昔の事だし。」

雪風「空撮した写真の提出でいいでしょう。火薬庫に裸で突っ込ませた技研が問題です。」

雪風「私達の命を手札に載せてまで連れて帰る価値は無いと思います。」


哨戒機からの情報を受け取ったグラーフが何かに気付く。


グラ「ほぅ。成程、どうやら敵はこちらが罠と気付くのも見越していたようだ。」

グラ「水雷戦隊の一編成がこっちに急襲をかけようと向かってきている。」

グラ「どうする?やれなくはないと思うが。」

川内「全力で逃げよう。」

川内「本隊が来るまでの時間稼ぎの捨て駒だよ。」

長門「だろうな。君子危うきになんとやらだ。」


全員が反転して海域離脱を図ろうとした時だった。

遠くで一際大きな砲声がしたかと思った後、川内が横に大きく吹き飛ぶ。


川内「おおぅふぅ。」

時雨「川内!」

川内「機関への直撃はしていないよ。まだ動ける。」


腹部への直撃弾を受け口から吐瀉物を漏らしながら時雨の問いかけに答える川内。


川内「くっそぉ・・・、スナイパーが居やがるかぁ。」

グラ「スナイパー?」

川内「連中の戦艦の中で特別に長距離射撃に長けた奴でね。

   私が居た所が潰された原因のひとつがこっちの電探感知範囲外から一方的にやられたからなんだ・・・。」

川内「あの糞連中めぇ・・・ここにも出張って来てたかぁ。」

摩耶「おい。川内?」

普段の戦場においても余裕を見せていた川内の豹変に摩耶が驚き声をかける。

川内「奴らは一人ずつ仕留めるのが好きなサディストでね。私がここを引き受ける。

   みんな、急いで逃げて。絶対に後で合流するから。」

時雨「川内、死ぬつもりじゃないよね?」

川内「私には生きてやることがあるんだ。時雨、あんたと同じくね。」

川内「それにもうすぐ日も暮れる。夜の闇に紛れるにはいい頃あいだよ。」

長門「夜の闇に溶け込むか。」


川内「うん、盆じゃないけどね。送り火をつければ派手に明るく見えるでしょ?」

長門「・・・・、送り火か。」

川内「生者の魂をあの世に送るには必要でしょ?」

長門「成る程な。ではな。」


そう言葉をかわし握りこぶしをこんとぶつけ挨拶。


川内「さぁ!さっさと後ろを見ずに退け!ここは私に任せて退けぇ!」


首に巻いていた襟巻を腹部の出血を止める為に腹部へ巻きなおす川内。


長門「生きて帰えるぞ。」

摩耶「帰ったら一杯奢らせて貰うぜ。だから帰ろうな!」

雪風「どうぞ御武運を!」

時雨「また後で!」

グラ「Viel Glück!」


川内以外の全員が全力で海域離脱に動く。


川内「いい仲間に恵まれたね。やるだけやらなきゃだね。」


全員の後ろ姿を目に焼きつけ、くるりと敵の向かってくる方向へ向き直る川内。


川内「さぁ、命が惜しくないならかかっておいで!」

―――――

―――――――――――

―――――――――――――――――――――



川内は耐えていたある種の野生の感じみた物で敵の狙撃をかわしていた。

しかし、敵の執拗な攻撃には贖えずついに膝をついた。

川内「スナイパーの糞さえいなければねぇ・・・。」

遠距離からの狙撃はすでに相当な数が川内に命中している。

その命中弾は狙撃手の性格を現しているのか御丁寧に全て致命傷を外していた。

川内「ちぃ!」

一人で奮戦して通算で15隻目、一度の出撃で撃沈した敵の最多数記録を更新するものの奮戦むなしく膝を折った。


―――――――――――――――――

――――――――――――

――――――


レ級「今回の獲物はもったなぁ。」キシシ

ル級「そうですね。遠距離からのスナイプお見事でした。」

レ級「全部で20発超えたから賭けはル級の勝ちだねー。」

ル級「致命傷をわざと狙わずにちまちま当ててただけですからね。」

ル級「腰、足、手、の順番でまぁまぁ当てやすくもちのいい方から順番に。」

レ級「でも同じ軽巡でも前のは20発も持たなかったけど?」ニタニタ

レ級「しかも最初にどてっ腹に当てておいてよく言うわ。」

ル級「そこは敵にガッツがあったという事でしょう。」

レ級「最初に弾が当たった時の驚いた表情といったら傑作だったな。」グヒ

ル級「えぇ、なかなか。」クフフ


ル級「ところで一緒にいた仲間は逃がして本当に宜しかったのですか?」

レ級「ル級は美味しい食べ物は一気に食べてしまう方?」

ル級「はぁ。」

レ級「私はね。美味しいものは複数回に分けて食べるほう。」

レ級「楽しみは多いほうがいい。」

レ級「特に極上な獲物はよく味わって絶望って味がよーく廻っている方が美味なの。」

レ級「そして復讐という調味料を加えて立ち向かってきた塵を踏み潰すのってもう最高。」

レ級「濡れるわ。」

ル級「ドドMですねぇ。」

レ級「それはそうと獲物を倒したトロフィーになりそうなものなにかないかねぇ。」ギヒ

レ級「夜になって暗い所為か見にくいねぇ。」


ル級「・・・、襟巻が浮いてますね。」

レ級「おっ、本当だ。あぁ、狙撃するときの目標にしてた奴だ。」

ル級「明るい色で目立ちましたからね。」

レ級「制服もオレンジ色で撃ってくださいと言わんばかりの色。」

ル級「やられない自信でもあったのでしょうか?」

レ級「それで殺されてたんじゃ世話ないでしょ。」ハハハ

ル級「確かにそうですね。」ハハハ

レ級「んー、いい感じの長さ。首に巻いて帰りますか。」

レ級「どう?似合ってる?」

ル級「今日の夕飯はレ級様のおごりという事で。」

レ級「沈めた貨物船から拾ったカップ麵でいい?」

ル級「もう少しましなものを・・・。」


戦艦の2人が川内の襟巻きをトロフィーとして持ち帰ろうと踵を返した時だった。

本日はここまでです

書き溜め分が終了です、明日にでも続きを更新できればと思います

お読みいただきありがとうございました

元ネタがハードボイルドっぽい?少なくとも1はハードボイルドっぽいと思っていますが

その雰囲気を出すのが難しいですね、はい

では、また明日の更新時に・・・、頑張りますです

イベも終了している為、遠征コレクション状態

再開いたします

お時間よろしければお読みください


ザバァッ!


レ級の背中にしがみ付く人影。



川内「あんたらが食う飯は黄泉戸喫だよ。」



海中から踊り出てレ級を羽交い絞めにする川内。



川内「あんたが首に巻いてる襟巻はあの世への餞別代りにくれてやる。しっかりと暖まるといいさ。」ニタァ



カチン!

金属特有の擦り合わさる音が夜の海に冷たく響き、ライターに火が燈された。

ゴゥ



レ級 あぁぁあああぁああ!!!

ル級「レ級さま!?」



川内が手に持ったライターからの火が襟巻に燃え移りレ級の顔面を焼き視界と顔面周囲の酸素を奪い赤々と闇夜を紅に染めゆく。


川内「あぁ、綺麗だねぇ。」


レ級「息が出来ない!あつい!あついぃ!!」

ル級「くそ!この死にぞこないが!レ級様から離れろ!」



レ級に密着しているため主砲を撃ち川内を撃沈させる事も叶わず必死に素手で川内を引き離そうとするル級。



川内「離れる訳にはいかないねぇ。この火があんた達の黄泉路を照らす灯火になるんだからねぇ。」ニヤリ

ル級「はぁ?」

川内「理解する必要な無い。ここで死ねぇ!」



泰山鳴動。

いや、海上なだけに海峡鳴動といった所か。

川内達のいる辺りの空気を震わしその音、雷の如くと行進曲に謳われる程の砲声が響く。

鉄の城。

仇なす敵を攻め滅ぼす、その単純なまでの殺意と暴力がル級、レ級

そして川内のいる辺りに降り注ぐ。

砲弾、砲弾、砲弾。

そしてありったけの魚雷。

それはさながら真夏のスコールの如く。


川内「この篝火はあんた達をあの世へ送るためのもんだ。」

川内「遠慮するなよ?私の仲間の砲弾と魚雷、たっぷりとくらいな!」

ル級「馬鹿な!?貴様、自分もろともだと!?」

レ級「離せぇまだまだ死にたくない!」



襟巻の火がまだ燃え盛る中必死の懇願を始めるレ級。



川内「あんたもそう言って懇願して来た相手を今まで殺して来たんだろ?」

川内「今度は自分の番だ。最期くらい笑えよ。」



なおも砲声は続き、雨霰と砲弾は降り注ぎ魚雷は隙間無く走ってくる。



川内「さぁ、共に黄泉路を逝こうじゃないか。」



すでにル級は沈んだようである。

川内が自分の艤装の砲身をレ級に向ける間も絶え間なく砲弾は降り続く。


川内「あんたは流石に硬いねぇ。」



口唇を吊り上げニタニタと笑いながら川内が言葉を続ける。



川内「それにしても、砲弾、魚雷のバーゲンセールじゃないか。」

川内「私の砲弾は安くしてあげられないけどねぇ。」ニタァ



レ級の顔に砲口をピタリと付けての接射。



川内「砲弾の領収、宛名は閻魔で宜しく。お代はあんたの命で勘弁しといてあげるよ。」



満面の笑みを浮かべ主砲を撃つ。

ドンと鈍い砲声一つ。



レ級「あぁああああ!」



声にもならない呻きをあげ終わったかと同時か。

レ級の頭が砲撃による衝撃で大きく後ろに仰け反った。



川内「漫画みたいに弾け飛ばないんだね。まぁ、戦艦に軽巡の主砲じゃねぇ。」

川内「戦車に豆鉄砲みたいなもんか。」

川内「あんたが今まで殺して来た私の仲間達に宜しく。」


ブスブスブス。ボフッ。

海中に身を潜め、長門や摩耶といった重量級の砲撃を受け。

駆逐艦達の魚雷を受け。

青息吐息の状態だった機関も完全に停止した。



川内「無茶しすぎたか。」



沈降していく体。

脳裏に浮かぶは嘗ての僚艦。

妹達の懐かしい顔ぶれ。



川内「んー、これが噂に聞くあの世という奴?」

川内「聞きしに勝る殺風景だねぇ。」

神通「姉さん。まだ、こちらに来るときではないかと?」

那珂「もー、川内ちゃんはまだこっちに来る時じゃないんだからね!」

川内「えー。」

川内「ウエルカムティーとかないの?」

那珂「ウエルカムしないよ?」

神通「応急修理要員を積んでいるのでしょう?さぁ、みんなが待っていますよ。」

那珂「そうそう。早く帰らなきゃ!」

那珂「川内ちゃんは向こう!回れ右!」


トンと記憶の中の二人に背中を押され・・・。


コポコポコポ。

コポコポ。


目を開けると、服を引っ張る者の姿と水上への浮揚感。


ザバァ。


伊58「時雨!見つけたでち!」

伊58「ダメコンのお陰で一命を取り留めてるでち!」

時雨「ありがとうゴーヤ!」

伊58「べっ別に時雨の為にやった訳じゃないでち。」

伊58「この間の借りを返しただけでち。かっ、勘違いしないで欲しいでち!」

伊8「ツンデレ?」

長門「むぅ。意識が戻ってないな。よし。ここは一発。」



腰を落とし正拳突きの構えを取る長門。



グラ「待て待て止めを刺す気か?」

川内「痛そうだからやめて。」

摩耶「おっ。戻ってきたか。」

雪風「川内さん。こういうのはこれっきりにして下さい。」

雪風「味方に弾を撃つのは例え必要であったとしても後味が良くありません。」

雪風「撃つ側の気持ちをしっかりと考えて下さい。」

時雨「・・・、そうだね。川内は目印となる明かりを点けた後は逃げたとばかり思っていたよ。」



周囲を見回せば死線を共に潜り抜けた仲間の顔。


長門「まったく。相手を羽交い絞めにして動きを止めるとは無茶をする。」

時雨「じゃ、みんな今日のMVPを曳航して帰ろう!」

長門「そうだな!」



めいめいが自身の艤装から曳航索を取り出し川内にかけて行く。



川内「まってまって、長門。首にロープ掛かってる。」

川内「時雨はなんで右腕なのさ。雪風は左腕だし。」

川内「ちょっと、足も右と左でなんで分かれるのよ。」

川内「摩耶はなんてとこに引っ掛けてるのさ。」

伊58「あっ、これ古代中国の処刑方法で見たことあるでち。」

伊13「・・・、車裂きの刑でしょうか・・・。」

伊8「川内さんが自分の命を軽んじた行動をとったことに対する無言の怒りという奴なのでしょうね。」

長門「よし!せーので引っ張るぞ!」

一同「「「「「「せーの!」」」」」」

川内「いやぁ―――――!」





スッポ――――――ン!




っと小気味良い音と表現するに相応しいような、そんな音がして皆が括った曳航索がすっぽ抜ける。



長門「あっはっは!見ろ、川内のあの間抜け顔!」

時雨「ふふふ。」

雪風「実にいい顔です!」

グラ「まっ、これに懲りたら自分の命をもっと大事に扱うんだな。」ハハハ

伊8「そうでち、命は大事に使えば一生使えるでち。」

摩耶「じゃっ。帰るとしますか。」



ひとしきり笑った後に帰るべく鎮守府へと進行方向を向ける一同。



川内「あれ、ちょっと。私、動けないんだけど。」

川内「誰か引っ張ってよ―――!」

川内「ひっぱってよぉ―――――!」



鎮守府修理ドック


明石「お疲れさまです。川内さん、派手に壊しましたねー。」

川内「んなぁ―――――!!!」

明石「まぁ、ねぇ?改造がっつりしてましたからね。」

明石「普通の娘の艤装と同じ機能でよければ桁が一つ減りますけど。」



修理の見積書を持ってきた明石に本当なのこれ?と目で訴えかける川内。



明石「残念ながら。」

川内「超赤字だぁ・・・。」



修理用入渠ドック内で項垂れぷかぷかと浮かぶ。



明石「ご愁傷様です。」(合掌)

明石「で、見積もり通りでいいんですかね?」

川内「お願いします・・・・・。」



コツコツコツ。

靴音を立てながら一人の男が明石と入れ替えでやってくる。


提督「川内。お疲れだったな。」

川内「傷心のあたしに話しかけないで・・・・。」プカプカ

提督「お金の必要な川内に朗報を持って来たんだが?」

川内「えっ!?何?!」

提督「お前が倒した国際コードネーム『 レ級 』な。

   あれの残骸をゴーヤ達が持って帰ってきて、それを検分した結果。名前付、ネームド個体だったんだ。」

川内「ネームド。」

提督「あぁ、お前なら知ってるだろ。スナイパー連中の頭。ホークアイと呼ばれていた奴でな賞金首だ。」

提督「昔に日本近海でえぐいやり方で鎮守府潰しをやって海軍に懸賞金、

   まぁ普通の鎮守府だと特別戦果みたいな扱いになるわけだが、まぁ、それはいい。」

提督「そんな訳であいつを倒した奴に多額の金が支払われる。米軍側からの懸賞金もかけられていてな、かなりの額だ。」

川内「なんで米軍?」

提督「日本から離れてほとぼり冷ましてる間に大西洋側で暴れていたらしい。」

提督「そのおかげか撃沈したって連絡したら喜んだ向こうの海軍総司令官からの祝電も来てるぞ。」

川内「鼻紙にもなりゃしない。それに懐も暖まらない紙なんていらない。」

提督「酷いいいようだな。」

提督「言わんとすることは分かるがな。ここじゃ名誉や名声は意味の無いものだからな・・・。」


川内「ていうか今気付いたけど提督、私、裸なんだけど?」

提督「服着たまま入渠(風呂)入る奴っているのか?」

川内「いやそういう意味じゃなくて。」

提督「川内がいい女なのは認めるが俺が男として役勃起ずなのは知ってるだろ。」

川内「まぁ・・・。」

提督「まっ、恥じらいがあることはいい事だ。

   女は恥じらいのある方がより色気がある。」

提督「恥じらいの忘れた女なんぞひでぇもんだ。まったく。」

提督「でだ、懸賞金はどうするよ。一緒に出撃していた連中にも聞いて回ったが全員川内にくれてやるってよ。」

川内「本当!?」

提督「あぁ、艤装の修理代金でスカンピンになってるだろうからだとさ。」

提督「日米双方合計で150万だ。大事に使え。」

川内「じゃぁ、当面の生活費と弾薬とかの購入費で10万残して

   後はいつも通りに振込みを不知火にお願いして貰っていい?」

提督「・・・・、遺族への仕送りでいいんだな?」

川内「なんだ知ってたの。」

提督「俺が決済の処理してんだぞ?」

川内「それもそうか。知ってて当たり前だよね。」

川内「初めに所属した鎮守府でさ。姉妹って事で一緒に戦った娘達にもやっぱり家族はいるわけでさ。」

川内「食っていく為に志願して、あっさりおっ死んでさ。遺族年金なんか雀の涙。」

提督「・・・・。」

川内「それ以外にもさ、みーんな、みーんな食っていくのが厳しくて志願したのに

   あっさりとあの世に先に行くしさ。家族が待っているってのにさ――。」

提督「・・・・。」

川内「提督。後は宜しくね。」

提督「ん。」

提督「でだ、川内。お前、ライター返せや。」

川内「ごめん。海で失くした。」

提督 ハァー・・・・

提督「仕方ねぇ。本気で禁煙考えるか。」

提督「じゃ、まっ、そういう事だからゆっくり風呂に入ってろ。」



そういい残し立ち去ろうとする提督。



川内「提督待った!」

提督「ん?」

川内「ただいま、提督!」

提督 フン。

提督「おかえり、川内。」ニヤリ


以上で本日分の更新と第五話が終了です

イチャコラでもなければギャグコメディでもない、最近のSS需要に真逆をいっています

そんなSSですがよろしければこれからもお付き合いよろしくお願いいたします

いただいている乙レス、感想は目を通しております

いつもありがとうございます、では、また次回の更新時に

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