戦士「…」 将軍「さあ…」 (11)

戦士「…」
将軍「…さあ、始めましょう!」

-----------------海上-------------------

雷雨の中響き鳴る大砲の音に弓を弾く音が微かに聞こえ
2国の船が共に一隻ずつ争っている

兵士1「船長!!船が揺れるせいで大砲が当たりません!!」
船長「こうなれば接近戦だ!野郎どもに突っ込め!」
兵士2「ですが距離がありすぎます!いい的ですよ!」
船長「砲弾も残り少ないだろう!!やるしかないのだ!!」
戦士「…」

荒れ狂う波の上を船が速度を増しもう一つの船に向かい始める
しかし、言った通り向こうからすればいい的であった
大砲の音がさらに響き、飛び散る人と船の木屑
火が大蛇のようにうねり空に吠え始める

兵士1「船長!やはり無謀だったんです!もうもちません!」
船長「クソっ!!このまま火に焼かれ沈むなら、何か一つ敵に呪いを!!」
兵士4「こんなはずじゃなかった!俺には家族が待っているのに!!!」
兵士12「熱い!!クソが!!」

まもなく船は黒く焦げ、二つに分かれながら沈んでいった
勝利を挙げた船では歓声が上がる
いつからか、晴れ間も覗き始めていた
戦士「…」

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戦士(…周りには矢に刺され死んだ兵士と焦げ落ちたなにか…また生き残ったのは俺だけか。しかし、俺のやることは敵の首を挙げその日暮らしの金を得るだけ。まだ終わってはいないのだ)

浮かぶ死体のなかに男はそれをかき分け、祝杯をあげる船に少し、また少しと近づいていく。
寄るにつれ歓声や悲鳴、嬉々とした音が頭を響かせる
だが、男の脳には何も届いていない。
遂に手を掛け船の船首によじ登った。

-----------------船上-------------------

兵士A「俺たちの勝利だ!!」
兵士B「また国へ帰れるぞー!!」
兵士F「祝い酒だ!こんやはのむぞ!!」

兵士M「将軍!やりましたね!さすが将軍です!」
将軍「ああ、君たちもよく頑張ってくれたよ。さすが私の仲間だ。だが…」
兵士M「なんです?まだ何か?」
将軍「なにか悪い予感がするんだ」
兵士M「ふふ、冗談よしてくださいよ!さあ、将軍も宴に加わりましょう!」

その時宴の声と音は一転、悲鳴と剣の音に変わった

兵士M「なんだなんだ!何があった!!」
兵士T「急に男が現れて!仲間が続々と!」
兵士M「なんだと?!くそ!君はその場を凌いでくれ!私は将軍を!!」
兵士T「はっ!」

兵士M「将軍!!謎の敵襲が!!逃げますよ!」
将軍「やはりか…クソっほかの仲間は?」
兵士M「分かりません。ですが…。小舟を出します!急ぎましょう!!」
将軍「クソっ…しかたない!頼むz」

言い終わるその時、兵士の喉を剣が貫いた…

戦士「…小舟も、仲間の心配もする必要は無いぞ」
将軍「看板にいた兵士もすべて君だけで殺したのか?」
戦士「…ああ」
将軍「噂には聞いてたけど、本当にいるとはね。戦場に行っては一人だけで生き残り戦果を挙げ帰ってくる、味方からも敵からも死神と恐れられている奴がいると。流石だね」
戦士「…兵士も殺され、次は自分の番だというのに悠長だな」
将軍「余裕があるように見えるかい?私はこれでも怒っているんだ…」

将軍「さあ!始めようか!」

男より女の手が一瞬早く剣にかかる
すかさず男も剣を持ち攻防に出る
空を裂く音がなったと思うと剣先は男の眉間についていた

戦士「…なぜ殺さぬ」
将軍「君は何を思っている?その目には何も写っていない。国、主君への忠誠。仲間への信頼。未来への希望。君の目、表情を見ても何もわからない、何故だ?」
戦士「…」
将軍「答えろ!!私の家族を殺したその報いとして!仲間へのせめてもの手向けだ!!」
戦士「…語ることなど何も無い。国、主君、家族、友人、恋人。俺が生まれた時から何も無かった。お前のような愛だのなんだのを口にした瞬間俺の住む国では死んでいたのだ。お前も知っているだろう?敵国として俺の住む国を…」

-----------------某国(戦士6歳)-------------------

横たわった肉塊にカラスとネズミがたかっている
少し遠くでは、骨と骨がぶつかり喘ぐ声と少しばかりの喧騒が。
既に生を諦めた目でその肉を見る少年。それが戦士であった
彼はその手を音のしないよう静かに動かしかつ、光の如く伸ばした。
その手中にはネズミが囚われていた。軽く力を入れそのネズミを終わらせる。
彼の親を餌にしたネズミに対しての憎しみではない。空腹を満たすためであった。既に親への愛はなく。自己への懸念もない。本能だけが彼を動かしていた。

食事が終わり、彼は夜の街に出る。獲物を探し、狩り、そして金を得るために。また今日も狩るのだ。

-----------------船上-------------------

戦士「俺はその腕を買われ少ない金で雇われているだけだ。お偉方の手を汚さないために、既に汚れたこの手を少し動かすだけで金が入る。そこには忠誠も信頼もましてや愛など必要ないのだ。」
戦士「そして今日はお前を殺しまた日々の無に戻るのだ」

戦士「…分かっただろう?俺には何も無いのだ。あるとすれば、今突きつけられている死であろう。いや…生きてすらいないようなものなのだから死すら存在しないのか」

男は嘲笑気味に言い放つと少し前に出る。
剣先が少し肉を先血を伝わせる。彼の言葉とは裏腹にまだ生きているのを叫び知られるように、川のように流れていく。

戦士「…殺さないのか?」
将軍「興ざめだ…怒りすら通り越して呆れたよ。死神と言われるほどだ、君にはどんな思いがあって何のために私の仲間を手にかけたのか、[ピーーー]前に知りたかったが。結局ただの子供なのであろう?何も知らない無垢な子供なのだ。」

突きつけられた剣がだらりと下がる。
女は少し微笑み、男は驚き目を見開いた

戦士「…なぜだ!なぜ殺さぬ!!俺は貴様の仲間を皆殺しにしたのだぞ!!!なのに…」

被せるように女は言った

将軍「今じゃないのさ、何も知らない人間を[ピーーー]にはね。もう少し生きてもらわないとな。それに、これは戦争だったんだ。誰が死のうが結果に私情を挟むのは良くない。悔しいが…それが戦いだ」

女は少し下唇をかみ、剣を収め仲間の死体に手を添えた

将軍「分かっただろう?君は殺さない、今のところ捕虜ということだな。お腹も減っただろう?まずは散っていった仲間たちへの別れを手伝ってくれ。」

将軍「これで最後…か」

女の肩からゆっくりと仲間の死体が下ろされた。
一人一人等間隔に並べられた死体の列、それに対し女は膝をつき手を揃えた。

将軍「君たちの死は無駄にはしない。君たちがいたから今日までの私がある。まだ私にはやることがある、それが終わるまではあと少し待っていてくれ。そしたらほかの仲間とあとを追うさ。おやすみ」
戦士「…。」
将軍「手伝ってくれありがとう。さて、君の処罰についてだが…」
戦士「晒し首にしろ。大勢の観衆の前で俺が醜く腐っていくのを俺は望むぞ。」
将軍「はっ、馬鹿なことを言うな。殺さないと言っただろう?君は私の捕虜になってもらう。せいぜい恥を忍んでいきていくんだね。
まあそんなことは私の国についてからでもいい。それより!!」

急な大声に男は少し体を震わせた

将軍「ご飯だ!!!お腹が減っただろう?きっと君はまともなものも食べてないのであろう?料理するよ!」

男は口と目が閉じないようだった

今日はここまでで。期待と言ってくれた方ありがとうございます。拙い文ですがお付き合いいただければ幸いです。

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