武内P「クローネの皆さんに挨拶を」 (1000)

武内P「……と、思ったのですが、今は速水さんだけのようですね」

奏「あら? 私だけじゃ満足出来ないなんて、欲張りな人ね」

武内P「……いえ、そういう意味では」

奏「ふふっ! 貴方のそういう所、とってもチャーミングだと思うわ」

武内P「……」

奏「ところで……どうして口元を隠しているのかしら?」

武内P「……」

奏「……?」

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武内P「……それでは、また機会を改めます」

奏「ねえ、待って。さっきの質問に答えて貰ってないわ」

武内P「……それは……その」

奏「そんなに焦って、何かあるの?」

武内P「……」

奏「ふふっ! もしかして、私にキスされると思って隠してしまってるのかしら?」

武内P「あ、いえ、それは……!」シドロモドロ

奏「……」

武内P「その、実は……渋谷さんとアナスタシアさんに言われているのです」

奏「あの二人が? へえ、それは気になるわね」

武内P「……その、速水さんともし二人きりになったら、絶対口元を隠せ、と」

奏「ふぅん? それで、貴方はそれを忠実に実行してるわけね」

武内P「はい……その、すみません」

奏「あら、良いのよ」

武内P「……」

奏「恋愛映画は苦手だけど、こういうのは障害があった方が燃えるって言うじゃない?」

武内P「!?」

武内P「は、速水さん!?」

奏「本当、誠実で不器用な人ね」

武内P「……そ、その」

奏「近寄ったら離れていく……逃げられたら、追いたくなるのも仕方ないわよね」

武内P「あの、いえ……速水さんの半径3メートルは大変危険だ、と言われているので」

奏「……」

奏「あの二人、私の事を猛獣か何かと思ってるのかしら」

武内P「その……冗談は、もう」

奏「あら、貴方には今の私の行動が冗談に見えるの?」

武内P「……」


ガチャッ


ありす「おはようございま――」


武内P「……!」

奏「……」


ありす「――って、何をやってるんですか……?」

奏「ねえ、ありすちゃん」

ありす「橘です! 何だか、プロデューサーさんが困ってるように見えます」

武内P「はい、とても……その、困っています」

奏「プロデューサーさんが悪いのよ」

ありす「えっ? プロデューサーさんが悪いんですか?」

武内P「ま、待ってください! それは誤解です!」

ありす「えっ? えっ?」

ありす「ど、どっちを信じたら……?」

武内P「橘さん」

ありす「は、はい」

武内P「貴方は、その年齢にも関わらず、とても立派にアイドルとしての活動をしています」

ありす「は、はぁ……あ、ありがとうございます」

武内P「その勤勉さを私も見習わなくてはと思い……そうですね、尊敬、している部分もあります」

ありす「わ、私を尊敬ですか!?……え、えへへ///」

武内P「そんな貴方に一つ、お願いがあります」

ありす「お願い?」

武内P「助けを……呼んできてくださいませんか?」

ありす「……わかりました! すぐに誰か呼んできます!」


ガチャッ、バタンッ!


奏「……小学生に助けを求めるのって、どうなのかしら」

武内P「……言わないでください」

奏「けれど、そうね……誰かが来るまでの時間は、貴方を独占出来るのよね」

武内P「速水さん、その、本当にもうやめてくださいませんか……?」


奏「そうね……それじゃあ、キスしてくれたら許してあげる」


武内P「い、いけません! 死んでしまいます!」


奏「!? べ、別に死にはしないわよ!?」

武内P「あ、いえ、速水さんは17歳ですし、アイドルとプロデューサー以前に社会的に……」

奏「あ、ああ……そういうこと」

武内P「……」

奏「……」

奏「……ふふっ、けれど、貴方って本当に面白いわね」

武内P「わ、私がですか?」

奏「ええ、今までに会ったことのないタイプの人。とっても可愛らしいわ」

武内P「……そういう事を言われたのは、初めてです」

奏「けれど、残念。もう時間切れみたいね」

武内P「……」ホッ


ガチャッ


フレデリカ「やっほー♪ なんだか楽しいことやってるって聞いて、急いできたよー♪」

周子「こんちはー。急いだって言っても、すぐ近くに居たんだけどねー」


武内P「……ど、ど」

奏「……あら、もしかして、延長戦かしら?」


武内P「どっちの助けを呼んでいるんですか橘さ――ん!?」

フレデリカ「ありすちゃんがすっごい急いでてねー、これはアタシも急がねばと!」

周子「いやいや、フレちゃん。普通に歩いてきたじゃん?」

フレデリカ「あれ? そうだっけ? そうだとしても、あれはフレちゃんダッシュなんだよ」

周子「そっかー。それじゃあ、あたしの歩きも実はシューコダッシュだったんだね」


武内P「……」ホッ

奏「もしかして、このままなし崩し的に助かると思ってない?」

武内P「あ、いえ、その様な事は……」


フレデリカ「それじゃあ、このままフレちゃんダッシュで捕まえちゃうよー♪」

周子「それじゃ、あたしもシューコダッシュで~」


武内P「!?」

フレデリカ「アタシは左利きだから、左手をしるぶぷれ~?」

周子「フレちゃん、あたしも左利きだから」

フレデリカ「あれ? それだったらどっちも左手を捕まえちゃう?」

周子「別に、あたし達の利き手がどっちでも良いんじゃないかな」

フレデリカ「そっかー♪ さっすがシューコちゃん、冴えてるね~♪」

周子「いやいや、それほどでも~」


奏「ねえ、貴方は二人の事を知ってるのかしら?」

武内P「……ええ、はい」

奏「本当かしら? なんだか疑わしいわね」

武内P「い、いえ! 十分、存じているつもりです!」

武内P「そうですね……まず、宮本さんですが」

武内P「宮本さんは、まずその容姿に目を奪われます」

武内P「整った顔立ちに美しい金髪は、フランスハーフと言えども特筆すべき点でしょう」

武内P「しかし、私はその大きな青い瞳が、宮本さんの一番の魅力だと思います」

奏「周子は?」

武内P「塩見さんですか……そうですね」

武内P「塩見さんも、京都出身という経歴ながら、美しい銀髪と挑発的なつり目が魅力的ですね」

武内P「そして、私個人の意見ですが、透き通るような白い肌も素晴らしいです」

武内P「それらが合わさって、塩見さん特有の神秘的な雰囲気を感じさせてくれます」

奏「ふぅん、よく見てるのね」

武内P「いえ、私は……プロデューサーですから」

奏「けれど、二人の魅力は見た目だけじゃないでしょ?」

武内P「勿論です!」

武内P「お二人とも、素晴らしい歌声の持ち主で、それぞれソロ曲も大変素晴らしい出来でした」

武内P「ラジオやテレビに出演した時も、その自由奔放さが――」


ガシッ!


フレデリカ「プロデューサーの左手、つっかまえたよー♪」

周子「あたしは右手……って、うわ! 筋肉すっご!」


武内P「!?」

奏「ふふっ、その自由奔放さが二人の魅力よね?」

武内P「……!?」

武内P「お、お二人とも、いつの間に!?」

周子「いや、普通に近づいて、普通に捕まえただけだよ?」

フレデリカ「それにしても、あれだけ褒められちゃうと照れるよねぇ」

武内P「あの、お二人とも! は、離れてください!」

周子「あたしは18歳だから問題無いんじゃないかなー?」

フレデリカ「フレちゃんも19歳だからおっけーだね♪ やったねプロデューサー♪」

武内P「いけません! お二人とも、いけません!」

奏「ちょっと、暴れちゃ駄目よ? アイドルに怪我をさせるなんて……ねぇ?」

武内P「……!」

武内P「しかし、あの、本当に……!」


ガチャッ


武内P「!!」


文香「……おはようござ……えっ、何が……?」


フレデリカ「おっはーフミカちゃん♪ フミカちゃんも、プロデューサーで遊ぼうよ♪」

周子「はよーん。両腕はもう捕まえてるから、腰でも捕まえとく?」

奏「どうする? 文香も参加する?」


文香「えっ……? えっ……?」


武内P「た、助けてください! 助けてください鷺沢さん!」

文香「……えっ!?」

文香「た、助ける……?」


フレデリカ「うんうん! やっぱり、クローネのメンバー同士、助け合わないとね!」

周子「良い事言うねフレちゃん。さあ、文香ちゃん、ガシッといっとこー!」

奏「あの人、とってもチャーミングでしょう? だから、文香も楽しみましょ」


文香「えっ!? あ、あの……!?」


武内P「さ、鷺沢さん! お願いします! 皆さんを止めてください!」


文香「わ、私は……その……」

文香「……」

文香「……すみません……読みたい本が……その、すみません」


武内P「!?」

武内P「ま、待ってください! さ、鷺沢さん!?」


奏「あら、残念。文香は不参加みたいね」

フレデリカ「読みたい本があるならしょーがないよね♪ アタシはよくわかんないけど」

周子「あたしも、今はプロデューサーで遊んでるのが楽しいかなー」

文香「……」


武内P「さ、鷺沢さん? あの、さ、鷺沢さん!?」


文香「……」


武内P「お願いします! ファンタジーな世界に逃げないでください! お願いします!」

武内P「せめて携帯で助けを呼ぶなり……鷺沢さーん!」

奏「無駄よ。文香、ああなったら周りでどれだけ騒いでようと反応しないもの」

武内P「!?」


文香「……」

武内P「……!」

フレデリカ「あれれ? どうしたの、顔が真っ青だよー?」

周子「でも、火って温度が上がると赤から青になるよねぇ」

フレデリカ「そっかー♪ じゃあ、ものすごーく照れてるって事だね♪ いやーん、フレちゃんも照れちゃう♪」

周子「ほらほら、両手に花だよー? 嬉しそうな顔しても良いんだよー?」

武内P「!? い、いけません! アイドルが、プロデューサーにそんな真似をしては……!」


奏「それでも、そんな反応をされたらこっちも火が付くと思わない?」


武内P「!?」

奏「ねえ、私って魅力が無いかしら」

武内P「……い、いえ、そんな事はありません」

奏「……」

武内P「……」

奏「けれど、貴方の反応を見た限りそうは思えないのよね」

武内P「すみません……ですが、速水さんはとても魅力的です」

奏「本当にそう思う? 例えば、どんな所が?」

武内P「そうですね……速水さんの魅力は、年齢にそぐわない妖艶さかと」

武内P「歌も踊りも、どちらもとても水準が高く、非常にレベルの高いアイドルだと思います」

武内P「時折見せる、年齢相応の……そうですね、とても、いい笑顔をする所も素敵です」

奏「……本当にそう思ってるのかしら」

武内P「はい。あまり口は得意ではないですが……思っている事を真っ直ぐ伝えたつもりです」

奏「……そ、そう///」

武内P「……」

奏「……」

武内P「ですが……いえ、だからこそ、これ以上は……」


フレデリカ「いやーん♪ アタシ達、いっぱい褒められちゃったねー♪」

周子「うんうん、これは何かお礼をしないといけないよねー」

奏「そうね……あまりにもストレートで、柄にも無く照れちゃったわ」


武内P「お、お礼……ですか……?」


奏「お礼の内容は……わかるでしょう?」

フレデリカ「プロデューサー、背が高いからしにくいなー、ジャンプで届くかなー?」

周子「それは大変そうだから、ちょっとしゃがんでくれない?」


武内P「あの……!? 皆さん、一体何をするつもりですか……!?」


奏・フレデリカ・周子「キス」


武内P「!?」

武内P「だ、駄目です! いけません、本当にいけません!」


フレデリカ「プロデューサーって、こういう反応は弄りたくてムラムラしちゃうよねー♪」

周子「知ってる? キツネって、結構肉食性が強いんだよーコンコーン♪」

奏「女に恥をかかせた責任……貴方ならその責任の取り方は知ってるわよね」


武内P「……だ、誰か! 誰か助けてください!」

武内P「お願いします! 誰か、誰か――っ!!」


ガチャッ!


美嘉「こーらアンタ達★ さすがにおふざけが過ぎるわよ!」

唯「う、うわうわ/// え、何この状況!?///」


美嘉「全く、アンタもしっかりしてないから! もっと毅然とした態度で――」


武内P「助けてください! 助けてください大槻さ――ん!!」


美嘉「……」

美嘉「はっ?」

唯「た、助けてって……えっ、ゆいが!?」

武内P「お願いします! どうか……どうか……!」


美嘉「ちょ、ちょっと……?」


奏「……ふぅ、どうやら、今日はここまでみたいね」

フレデリカ「うーん! でも、楽しかったねー♪」

周子「CPのプロデューサーって、からかってて楽しいなぁ」


美嘉「そ、そうよね!? アタシが来たからには、さすがに好き勝手――」


奏「唯には刺激が強すぎるもの」

唯「ふえっ!? お、同い年だし、そんな事ないよ!?」

フレデリカ「あっ、そろそろレッスンの時間だねー」

周子「うーん、十分楽しんだわー」


美嘉「あの……もしもーし?」

フレデリカ「それじゃあ、ばいばーいプロデューサー♪」

周子「また遊んでなー」

奏「ふふっ、今度は逃げられるかしら?」

武内P「皆さん……もう、今後はこういった事は無いようにお願いします」


奏・フレデリカ・周子「さあ?」ニコリ


武内P「皆さん……! その、困ります!」


武内P「困りますが……良い、笑顔です」


美嘉「……」

唯「えっと……問題解決、ってカンジ?」

武内P「はい。おかげさまで、助かりました」

唯「えへへ、なんだかわからないけど、良かったね!」

武内P「はい、ありがとうございます」


美嘉「……」


唯「っと、そうだ! ゆい、文香ちゃんを呼びに来たんだった!」

唯「文香ちゃーん! おーい!」

文香「……? あ、おはよう……ございます」

唯「オハヨッ! なんか、ありすちゃんが探してたよ?」

文香「ありすちゃんが……?」

唯「なんか、助けが必要とかどーとか?」

武内P「それは……恐らく、もう必要ないかと」

唯・文香「?」


美嘉「……」

  ・  ・  ・

武内P「……あの」

美嘉「……何?」

武内P「あの……すみませんでした」

美嘉「何が?」

武内P「いえ、その……城ヶ崎さんに助けを求めず……はい」

美嘉「別にー? アンタが、アタシの事をどういう風に思ってたかわかって良かったんじゃない?」

武内P「……」

美嘉「ねえ、何か言ったら?」

武内P「……にょ、にょわー」

美嘉「ぶっ飛ばされたいの?」

武内P「……す、すみません」

美嘉「……」

武内P「……」

武内P「……城ヶ崎さんは」

美嘉「何?」

武内P「とても……素晴らしいアイドルだと、私は思います」

美嘉「な、何よ、急に?」

武内P「整った容姿だけでなく、それを際立たせるギャルメイクがとても似合っています」

美嘉「お、おだてたって許さないんだからね」

武内P「カリスマJKというキャラクターにも魅力で、先日のモデルの仕事も大変素晴らしいものでした」

美嘉「そ、そう? 別に……アタシなら、あれ位チョー余裕だし★」

武内P「今日も、また城ヶ崎さんの魅力に気付かされました」

美嘉「ど、どこ? っと、そういえば、アンタ、アイツらにき、キスされそうになってたのよね?」

武内P「そうですね。はい、とても……困りました」

美嘉「……そ、そう」

美嘉「でも、内心満更でも無かったんじゃないのー?★」

武内P「そ、そんな事はありません!」

美嘉「じゃ、じゃあさ……目をつぶって、神に誓える?」

武内P「目をつぶって? あの、それにどんな意味が……?」

美嘉「良いからほら! さっきの、悪いと思ってるなら早く!」

武内P「は、はい」

美嘉「ん、よし★」

武内P「……?」

美嘉「そのままちょっとしゃがんで」

武内P「……はぁ」

美嘉「……///」


美嘉「それで……今日気付いた、アタシの魅力って?」


武内P「オチ要員です」


美嘉「オッケー★ そのまま歯を食いしばってなー★」




おわり

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書きます



未央「プロデューサーが一人で専務の元へ!?」

未央「一体、どうしてそんな真似を!?」

美波「なんでも、シンデレラプロジェクトから外される、って……」

莉嘉「えーっ!? Pくんが!? 嘘でしょ!?」

アーニャ「ニェート! ダメです、そんなの!」

ちひろ「お、落ち着いて皆!」

未央「こうしちゃいられない! すぐに、私達も行こう!」

美波・アーニャ・莉嘉「!」コクリ


ちひろ「うろたえるな小娘ども!!」

ガカァッ!!


未央・美波・アーニャ・莉嘉「うわあああっ!?」

未央「むうう……!」

美波「どうして止めるんですか、ちひろさん!?」

莉嘉「そうだよ! アタシ達が行かないと、Pくんが!」

アーニャ「お願い、です! 行かせて下さい!」


ちひろ「笑止」


未央・美波・アーニャ・莉嘉「……!」


ちひろ「貴女達が行って何になるんですか?」


未央・美波・アーニャ・莉嘉「それは……!」


ちひろ「プロデューサーさんも、覚悟を決めての事」

ちひろ「貴女達が行ったら、邪魔になる可能性もあります」


未央・美波・アーニャ・莉嘉「っ……!」

未央「それでも! 私達はシンデレラプロジェクト!」

美波「ええ! 平和と愛を守る、プロデューサーさんのアイドル!」

莉嘉「だから、こんな所で立ち止まってる訳にはいかないって☆」

アーニャ「そこを通してください。アー、力ずくでも、通ります!」


ちひろ「フ……何を言っても無駄みたいですね」

ちひろ「わかりました、もう止めません」


未央・美波・アーニャ・莉嘉「ちひろさん!」


未央「――いこう、皆! プロデューサーを助けに!」

美波・アーニャ・莉嘉「おーっ!」

ダダダダッ!



ちひろ「……プロデューサーさんをお願いします」

ちひろ「シンデレラプロジェクトの、アイドル達よ……!」

  ・  ・  ・

未央・美波・アーニャ・莉嘉「……!」

ダダダダッ!

未央「もうすぐ、二階へ行く階段だね!」

美波「まさか、エレベーターが点検中だと思わなかったわ……!」

アーニャ「だったら、階段で行けばいいだけ、ですね?」

莉嘉「うん☆ ちょっと上らないとだけど、ヨユーヨユー☆」


凛「――待って」


未央「しぶりん?」

美波「凛ちゃん、プロデューサーさんが大変なの!」

アーニャ「リン、そこを通してください」

莉嘉「っていうか、一緒に行こうよ!」


凛「この私の目が黒い内は、先に行かせないから」


未央・美波・アーニャ・莉嘉「何っ……!?」

未央「どうしてそんな事言うの、しぶりん!?」

美波「プロデューサーさんに、危機が迫ってるのよ!?」


凛「知ってるよ」

凛「シンデレラプロジェクトの担当、外されそうだって」


莉嘉「だったら、ここでモタモタしてる場合じゃないよ~!」

アーニャ「……リン、何を考えていますか?」


凛「仕事だったらさ、仕方ないと思う」

凛「別に、プロジェクトを外したら、一緒の時間を増やす」

凛「――なんて、そんな事微塵も言われてないから」


未央「むうう……! なんて強大な小宇宙……!」

美波「一見サバサバしてる子に限って独占欲が強いって言うものね……!」


凛「そんなんじゃないから、違うから」

凛「でも……此処から先へは、行かせない」


未央・美波・アーニャ・莉嘉「……!」

未央「……皆! ここは、私に任せて先へ!」

未央「モタモタしてる時間は、無いんだから!」

美波・アーニャ・莉嘉「……!」コクリ


凛「行かせない、って言ったよ」スッ…


未央「しぶりんの小宇宙が、より大きく……!?」

美波「でも、両腕を組んでるわ!」

莉嘉「今がチャンスだね☆」

アーニャ「リン、通してもらいます!」

未央「――待って皆! あれは――」


凛「グレートふーん!」

ギロオオッ!


未央・美波・アーニャ・莉嘉「うわああっ!?」

美波「な……なんて怖い目付きなの……!?」

アーニャ「ダー……人間のものとは思えない、です……!」

莉嘉「やめて! あんまりこっち見ないでー!」


凛「その反応は流石にショックだから、やめて!」

ギロオオッ!


美波・アーニャ・莉嘉「うわああっ!?」

未央「ぐううっ……! これじゃ、近づくことすら出来やしない……!」

美波「せめて……一瞬だけでも隙が作れれば……!」

アーニャ「何か……アー、方法は、ないでしょうか?」

莉嘉「マジで怖いって! 写真撮って、Pくんに送っちゃお!」


凛「待って! そういうのズルくない!?」


美波・アーニャ・莉嘉「! チャンス!」

凛「くっ……!」


未央「しぶりん! ここは通してもらうよ!」

未央「はあああっ……!」ユラアアッ


凛「何……!? 未央の元気な小宇宙が高まって……!?」


未央「小宇宙を燃やせ友情! パッションは!」

未央「ミツボシ☆☆★! 流星(りゅーせー!)拳!」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ドドドッ!


凛「くうううっ!?」


未央「……私の勝ちだね、しぶりん! 通してもらうよ!」

未央「でないと――このブラジャーは返さないから!」


凛「……うん、私の負けみたいだね」

凛「だから、その……か、返して?」

凛「それに、プロデューサーにはこの事は――」


未央「しっかり報告するから!」

ポイッ!


凛「あっ、ちょっと! 待って――」

美波・アーニャ・莉嘉「……!」

ダダダダッ!


早苗「――待ちなさい!」

ピピーッ!


美波「!? どうして、貴女が!?」

アーニャ「お願い、です! そこを通してください!」

莉嘉「時間が無いの! お願い!」


早苗「廊下は走らない! 階段だったら、尚更よ!」

早苗「言うこと聞かないとタイホよ、タイホ!」


美波「……二人共、ここは私に任せて」

アーニャ「美波!?」

莉嘉「……行こう! 捕まったら、ガチのお説教が始まっちゃう!」


早苗「……いや、歩いて上れってだけなんだけど」

早苗「そもそも、この私の警棒から逃げられると思ってるの?」


美波「ええ……貴女の相手は、私です」

スルスルッ…


早苗「!?」

ピピーッ!

早苗「ストップストップ! どうして服を脱ぎだすのよ!?」


美波「……衣服を脱ぎ捨て、小宇宙を最大限まで高めるためです」

美波「そうでなきゃ、勝てそうにありませんから」

スルスルッ…


早苗「むうう……!?」

早苗「……いやいや! 普通にタイホよそれ!?」


美波「フ……覚悟など、とうの昔に決めています」


早苗「……良いわ。そっちがその気なら」

スッ…

早苗「倒してでも、服を着させてあげるわ!」

早苗「……!」

カツッ

美波「……!」

ぺたっ


早苗「……ねえ、裸足の足音で緊張感が――」

美波「――隙ありっ!」


美波「んんっ、はぁっ、あっああぁん!」


早苗「くううっ!? なんて、いやらしい小宇宙なの!?」


美波「露出! 昇天波!」

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたっ!


早苗「あっ!? ちょっと!? その格好でどこへ行くつもり!?」

早苗「止まりなさい! ちょっ、コラ! 待ちなさい!」

ピピーッ!


美波「皆……後は頼んだわよ……!」

ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたっ!

  ・  ・  ・

アーニャ・莉嘉「……!」

ダダダダッ!


奏「――はい、そこでストップ」


アーニャ「……カナデ?」

莉嘉「……ここはアタシに任せて」

アーニャ「莉嘉?」

莉嘉「アタシ一人辿り着いても、何言ったら良いかわかんないし!」

アーニャ「アー、それは私も同じ、ですね?」

アーニャ・莉嘉「むうう……!?」


奏「そうそう、そうやって大人しくしてて」

奏「ふふ……そうすれば、私はご褒美に彼が貰えるかもしれないから」


アーニャ「……ここは、任せます」

莉嘉「オッケー☆ すぐ追いつくから!」


奏「……ふぅ、そう簡単にはいかないみたいね」

奏「ねぇ、大人しく言うことを聞いてくれない?」

奏「そうでないと……お仕置き、する事になっちゃうわ」


莉嘉「……くうっ!? なんて色っぽい小宇宙なの……!?」

莉嘉「だけど……アタシだってカリスマJC!」

莉嘉「シンデレラプロジェクトの、アイドルなんだから!」


奏「……へえ、やるつもりなのね」


莉嘉「トーゼン☆」

莉嘉「カッコイイ・シール!」

ペタッ!


奏「……」


莉嘉「カッコイイ・シールは、アタシが集めたカッコイイシールだよ!」

莉嘉「誰もそのカッコよさからは逃げられない☆」


奏「……」

ペリッ


莉嘉「そんなっ……!? カッコイイ・シールが通じないなんて!?」

奏「……今度はこっちの番ね」

莉嘉「ううっ……!? 色っぽい……!」

奏「背伸びをしたいお年頃なのね……」

莉嘉「うああ……!?///」

奏「だけど、オイタする子には……」

莉嘉「……!?///」


奏「キスでお仕置きしなきゃいけないみたいね」


???「――はーい、そこまでだよ★」


奏「っ……何? この、小悪魔的な小宇宙は……!?」


美嘉「よく頑張ったね、莉嘉」


莉嘉「お姉ちゃん!」

奏「美嘉……?」

美嘉「奏、よくも妹を可愛がってくれたね」

奏「……ふふ、だったらどうするつもり?」

美嘉「今度はアタシが相手だよ★」

奏「へえ? 面白い事を言うわね、美嘉」


莉嘉「ああっ!? また、奏さんが色っぽい仕草を!」

莉嘉「お姉ちゃん! 逃げて!」


美嘉「……安心しなって、莉嘉」

奏「あら? 貴女も、こういう事に耐性が出来たのかしら?」

美嘉「知らなかったの? シンデレラプロジェクトには、あっ、近いって!///」

奏「ふふ、私もちょっとドキドキしてきたわ」

美嘉「同じ技は二度、ちょっ/// タンマ!///」


莉嘉「お姉ちゃん、シンデレラプロジェクトじゃないし!」

莉嘉「だから逃げてって言ったのに!」

奏「そんな風じゃ、カリスマJKもかたなしね」

美嘉「か、カリスマは炎の中から、や、やめっ!///」

奏「それって、どんな炎なの? 教えて欲しいわ」

美嘉「顔あっつい!/// 何度でも蘇るん、マジタンマ!///」

奏「美嘉って、本当可愛いわね」

美嘉「ほっ、ほっ――」

美嘉「抱擁テンション!///」


莉嘉「お姉ちゃ~~~ん!」


   ・  ・  ・


アーニャ「!」

アーニャ「今のは……美嘉と莉嘉の声ですね?」

アーニャ「……」

アーニャ「急ぎましょう……時間がない、です」

  ・  ・  ・

アーニャ「……ここが、プロデューサーの居る部屋、ですね」

アーニャ「……」

コンコン

アーニャ「シンデレラプロジェクトの、アナスタシア、です」


『――入りたまえ』


アーニャ「……お邪魔します? アー、失礼、します」

ガチャッ!


武内P「アナスタシアさん? あの、何故、ここへ?」

アーニャ「プロデューサー! 辞めないで、ください!」

武内P「っ!?」

専務「……ふむ」

武内P「あの……辞める、とは?」

アーニャ「シンデレラプロジェクトから、外れると聞きました!」


専務「……凍気?」


武内P「いえ、それは……」

アーニャ「お願い、です! 私には、プロデューサーが必要!」


専務「くっ……!? 体が、凍りついていく……!?」


武内P「待ってください! あの、誤解をされています!」

アーニャ「お願い、です!」


専務「うおおおっ!?」

武内P「アナスタシアさん!」

アーニャ「私は……アーニャは……!」

武内P「私は、シンデレラプロジェクトを離れる気はありません」

アーニャ「……本当、ですか?」

武内P「はい」

アーニャ「でも、アー、そういう話が……」

武内P「二期生に集中するため、一時的に離れる、という話ですね」

アーニャ「……シトー?」

武内P「ですが、スケジュールの調整等で都合がつきそうだと……はい」

アーニャ「ハラショー! プロデューサーは、ずっと、プロデューサーですね?」

武内P「はい、その通りです」

  ・  ・  ・

ちひろ「ねっ? 落ち着いて、って言ったでしょう?」

未央・美波・アーニャ・莉嘉「……はい」

未央「でも良かった、誤解で!」

美波「ええ、そうね! 失ったものはあるけど!」

アーニャ「アー、迷惑をかけてしまいました」

莉嘉「大丈夫だよ☆ きっと、Pくんが何とかしてくれるって!☆」


未央・美波・アーニャ・莉嘉「私達、シンデレラプロジェクトの、アイドルだから!」ニコッ


武内P「皆さん……良い、笑顔です」


武内P「私と千川さんで謝罪して回ります」

武内P「なので、絶対に来ないでください」



おわり

リューナイト書きます


 剣突き立つ大地、アースティア……。


 この物語は、悪しき邪竜族の侵攻を跳ね除け、
世界に平和を取り戻した――


 ――勇者たちの物語である!


http://www.nicovideo.jp/watch/sm26034942




 パッフィーがアイドルに!? 謎の男は、プロデューサー!

アデュー「……ふわ~あ!」

パッフィー「まあ、大きなアクビ!」

アデュー「っとと! 見られちまってたか!」

イズミ「アデュー、少し気を抜きすぎではないか?」

アデュー「だってさ、こう同じ景色が続いたら飽きちまうよ」

イズミ「む……確かに、それはそうだが」

アデュー「だろ?」


サルトビ「フン! 世界を救ったからって腑抜けすぎだぞ、この音速馬鹿が!」

アデュー「なんだと~!?」

アデュー「それを言うなら、お前だってこの前居眠りしてたじゃないか、サルトビ!」

サルトビ「あぁん!? あれは目をつぶってただけだ、お前と一緒にするな!」

アデュー「俺は居眠りはしてない!」

アデュー「――騎士道大原則ひと~つ! 騎士は、居眠りしてはならない!」

サルトビ「はっは! だったらアクビは良いってのか?」

アデュー「ああもう! 文句があるなら、勝負するか、サルトビ!」

サルトビ「面白い! お前の間抜け面にも飽きてた所だ!」


パッフィー「もう、二人共! ケンカはやめなさい!」

ハグハグ「ほっとけハグ」

イズミ「……やれやれ、少しは成長したと思ったのだが」

アデュー・サルトビ「んぐぎぎぎぎ!」

イズミ「アデュー、サルトビ! そこまでにしておけ!」

サルトビ「……フン! 勝負はお預けだ、命拾いしたな」

アデュー「それはこっちの台詞だ!」

イズミ「……全く、お前達は変わらんな」


パッフィー「ふふっ、だけど……私、ちょっとそれが嬉しいです」


アデュー・サルトビ・イズミ「嬉しい?」

ハグハグ「そりゃどういう意味ハグ」


パッフィー「また、こうして四人で旅をする事が出来て、です」

パッフィー「……勿論、目的はありますけれど」

パッフィー「世界に平和を取り戻したのだという実感が沸いてきます」


アデュー「パッフィー……ああ! 俺もそう思うぜ!」

サルトビ「ちっ……この馬鹿と同じことを考えちまうとは」

アデュー「なんだと!?」

サルトビ「おお、やるか!?」


パッフィー「二人がケンカしなければ、もっと良いんですけどね!」


アデュー・サルトビ「……うぐ」


イズミ「はっはっは! 二人共、これは一本取られたな!」


アデュー・サルトビ「……うるせー!」

イズミ「そんな事をしている内に……見てみろ!」


アデュー「おおっ! あれが、ミシロの街か!」

サルトビ「ほー? 思ってたより、でかい街じゃないか」

パッフィー「歌と踊りの街、ミシロ……」


パッフィー「……あそこで、邪竜族を見たという噂が流れています」

パッフィー「はやく、何とかしなければ……!」キッ


アデュー「おいおい、パッフィー! そんな怖い顔するなって!」

パッフィー「アデュー……」

アデュー「大丈夫さ! 俺に、パッフィー、そしてイズミ!」

アデュー「……まあ、ついでにサルトビも居るんだから!」


サルトビ「あぁん!?」


アデュー「ベー、だ!」

アデュー「だからさ、パッフィーは笑ってれば良いんだって!」

アデュー「その方がさ、その……可愛いと……俺は思う///」

パッフィー「アデュー……///」


サルトビ「……ケッ! 見せつけてくれるぜ!」


パッフィー「さ、サルトビ!/// からかわないでください!///」

アデュー「俺はそんなつもりじゃ……!? 思ったことを口にしただけで!」

パッフィー「もっ、もう! アデュー!?///」


サルトビ「……ケッ! ケーッ!」

イズミ「はっはっは!」

  ・  ・  ・

ガヤガヤ……!


アデュー「うっひゃ~っ! 凄い人だなぁ!」

イズミ「ミシロの街は、先程パッフィー様が仰った通り歌と踊りの街」

イズミ「それを見ることを目的とした旅人が多いと聞いている」

サルトビ「成る程、それで人の流れが増えて、発展してきた、って訳か」

イズミ「うむ。近くに大きな河もあるし、街が大きくなる条件としては申し分無い」


アデュー「なんだか良くわからないけど、まずはメシにしようぜ!」

アデュー「騎士道大原則、ひと~つ! 腹が減っては、戦は出来ぬだ!」

イズミ「そうだな……それでは、アデューは店を選んでおいてくれ」

イズミ「私は、宿をとっておくとしよう」

サルトビ「俺は、この街についてちょいと調べておく事にするぜ」

アデュー「よし! それじゃ、そうと決まれば!」


アデュー「パッフィー! 何か、食べたいものは――」


アデュー・サルトビ・イズミ「……」


アデュー・サルトビ・イズミ「いない!?」



パッフィー「離して! 離してください!」



アデュー「この声! パッフィーの声だ!」

サルトビ「チッ! ったく、世話のやける姫さんだぜ!」

イズミ「パッフィー様! このイズミ、今すぐ参ります!」

ゴロツキA「へっへっへ! 良いじゃねえか!」

ゴロツキB「俺たちと遊んでくれよ、なぁ?」

パッフィー「離してください!」


パッフィー(もう! ちょっとはぐれただけなのに!)

パッフィー(私って、どうしてこう絡まれやすいのかしら!)

パッフィー(こんな人混みじゃ魔法は使えないし……!)


ゴロツキA・B「ひへへへへ!」

パッフィー「っ……!」


???「――待ってください」


パッフィー「!」

ゴロツキA・B「あぁん? 今取り込み中――」


武内P「嫌がっているように、見えるのですが」


ゴロツキA・B「ひえっ!?」

ゴロツキA「な、なんだこの威圧感……只者じゃねえ!」

ゴロツキB「俺にはわかる……! 何人か殺ってる目だ!」


武内P「……離してあげては、いただけませんか?」


ゴロツキA・B「ひっ、ひええっ!? お助け~~~っ!」


武内P「……」

パッフィー「あ、あの……助けていただいて、ありがとうございました」


武内P「ああ、いえ……お気になさらず」

武内P「――っ!?」


パッフィー「あの……どうか、されましたか?」


武内P「突然で、申し訳ありません」

武内P「私……こういう者です」

スッ…


パッフィー「あ、はい……」

パッフィー「……プロデューサー?」


武内P「お名前を教えていただいても、宜しいでしょうか?」


パッフィー「はぁ……パッフィー、です」


武内P「パッフィーさん――アイドルに、興味はありませんか?」


パッフィー「へっ?」


武内P「貴女は、楽しいと思える事がありますか?」

武内P「見たことのない世界を見てみたいと、思いませんか?」


パッフィー「あっ、あの……!?」


アデュー「お~~い、パッフィー~~っ!」

サルトビ「おい、見ろ! 相当ヤバそうな奴に絡まれてやがる!」

イズミ「いかん! 今すぐお助けせねば!」

アデュー・サルトビ・イズミ「うおおお~~~っ!」


パッフィー「まっ、待って皆! この方は違うんです~っ!」

  ・  ・  ・

アデュー・サルトビ「すいませんでしたー!」


武内P「ああ、いえ……いつもの事ですので」


イズミ「しかし、パッフィー様を助けて頂いた方に無礼を……」

パッフィー「そうよ! 本当、はやとちりしすぎです!」

アデュー・サルトビ・イズミ「はい……」


武内P「いえ、私もただ助けようと思っただけではないので……」


アデュー「それって、さっき言ってたアイドル、ってのの話か?」

サルトビ「歌と踊りで皆を笑顔にねぇ? 俺にはよくわからん」

イズミ「しかし……プロデューサー……どこかで聞いた事が……」ブツブツ

パッフィー「それでも、改めてお礼をさせてください」

パッフィー「お礼と言っては何ですが、ここのお代は私達が持ちますので」


武内P「それこそ、気になさらないでください」

武内P「……ここのハンバーグは絶品ですから」

武内P「純粋に食事を楽しんでほしいと、そう、思います」


サルトビ「ほー! アンタ、顔に似合わず謙虚な奴じゃないか!」

アデュー「こら、サルトビ! 怖い顔でも謙虚な人はいるぞ、なあ、イズミ!」

イズミ「待て、アデュー! 私の顔は、怖い顔に含まれているのか!?」


武内P「……」


パッフィー「あの……重ね重ね、すみません」


武内P「いえ……慣れて、いますから」

武内P「それで、先程の話の続きですが……」

武内P「パッフィーさん、アイドルに、興味はありませんか?」


パッフィー「……すみません。今、旅の途中なんです」

パッフィー「この旅が終わるまで、一つの街に留まるわけには……」


武内P「……そう、ですか」

武内P「では、旅が終わってからでは、どうでしょうか?」


パッフィー「旅が終わったら、ですか?」

アデュー「旅が終わったらかぁ……深く考えた事無かったなぁ」

パッフィー「……」ジイッ

アデュー「ん? どうしたパッフィー? 俺の顔に何か付いてるか?」

パッフィー「……ふんだ! 知りません!」プイッ

アデュー「おっ、おい!? なんか怒ってないか!?」

パッフィー「怒ってなんかいません!」

ハグハグ「お前マジ鈍いハグ」

アデュー「なんだとぅハグハグ!?」

パッフィー「ハグハグの言う通りです。ねー、ハグハグ」

ハグハグ「ハグハグ!」

アデュー「そっ、そんな~~!?」

パッフィー「……ふふふっ」ニコニコ


武内P「……良い、笑顔です」

武内P「ですが……アイドルは、難しそうですね」

武内P「申し訳ありません、パッフィーさん」

武内P「貴女は、アイドルに向いていないようです」


パッフィー「えっ?」


武内P「最初に見た時は、トップアイドルになれる資質がると思ったのですが……」

武内P「貴女の笑顔を見て、それが間違いだったと気付きました」

武内P「パッフィーさんは、既に見つけていらっしゃるようですね」

武内P「貴女の、最高の笑顔を向ける相手を」


パッフィー「それは……///」

アデュー「? 何を言ってるんだよ、そんな相手がどこに――」

ハグハグ「ハグーッ!」

ガブッ!

アデュー「いって~~~っ!? 何するんだよ、ハグハグ!」

ハグハグ「いい加減にしろハグ!」

サルトビ「しかしアンタ、この短い時間でそれを見抜くとはな」


武内P「はい。それが、プロデューサーですから」

武内P「それに、その……はい、とてもわかりやすいかと」


サルトビ「はっはっは! 確かにその通りだ!」

サルトビ「わかってないのは、この音速馬鹿だけだからな!」

イズミ「プロデューサー……笑顔……」ブツブツ

アデュー「なんだいなんだい、俺だけわかってないのか――」



『我々はー! この不当な扱いに抗議するにゃー!』

『『『にゃー!』』』



アデュー「!? なんだ、この声は!?」


武内P「!? この声は……!」

  ・  ・  ・

ドゥームM『来る日も来る日もレッスンレッスン!』

ドゥームJ『そうだそうだー!☆』

ドゥームH『働きたくなーい』

ドゥームM『レッスンをするために、アイドルになったんじゃないにゃ!』

ドゥームJ『アタシ、デビューしたーい!☆』

ドゥームH『そうでもなーい』

ドゥームM・J・H『にゃー!!』



アデュー「――ドゥームが三体も!?」

サルトビ「へっ! 向こうから来てくれるとは、手間が省けたぜ!」

武内P「待ってください、皆さん!」

イズミ「ここは危険です! 離れていてください!」

武内P「あのっ、違……!」

パッフィー「ここは私達に任せて、プロデューサーさんは逃げてください!」

武内P「彼女達は……!」

パッフィー「早く!」


ドゥームM・J・H『……』


アデュー「なんだ!? 急に動きが止まったぞ!」

サルトビ「アイツらの視線の先……パッフィーだ!」

パッフィー「えっ?」


ドゥームM・J『にゃ~~~っ!!?』

ドゥームH『にゃー』

ドゥームM『どういう事にゃPチャン! 何、その女!』

ドゥームJ『ひどいよPクン! アタシ達を放っておいて!』

ドゥームH『ふへへ、これで働かなくて済むかな~』

ドゥームM『皆の前で、きっちり説明してもらうよ!』

ドゥームM・J『にゃ~~~っ!!』

ドゥームH『にゃー』


アデュー「まずい! アイツら、こんな街中で暴れるつもりだ!」

アデュー「――皆! リューを呼ぶぞ!」

サルトビ・イズミ「おうっ!」

パッフィー「はいっ!」


武内P「リュー!?」

武内P「まさか、彼らはリュー使いなのか……!?」


https://www.youtube.com/watch?v=W5En3BcFtXw



アデュー「リューナイト・ゼファァァッ!!」


サルトビ「リューニンジャ・爆裂丸ッ!!」


イズミ「リュープリースト・バウルス!!」


パッフィー「リューメイジ・マジドーラ!!」



ドゥームM・J『リュー……!? どうしてこんな所に!』

ドゥームH『うわー……こんな面倒な事になるなら、寝てれば良かったよ』

アデュー『――さあ! お前達の相手はこっちだ!』

サルトビ『4対3だが、悪く思うなよ!』

イズミ『二人共、くれぐれも油断はするなよ!』

アデュー・サルトビ『わかってらい!』


ドゥームJ『や、ヤバいよ! アイツら有名なリューじゃん!』

ドゥームM『どういう事にゃPチャン!? 騙したの!?』

ドゥームH『……まあ、そんなとこかな』


武内P「待ってください! 話を……話をさせてください!」


パッフィー『早く逃げて、プロデューサーさん!』

アデュー『ここは俺たちに任せとけ! コテンパンにしてやるぜ!』

サルトビ『最近は戦いが無くて腕が鈍っちまう所だったからな』

イズミ『大地よ! この者たちに守護の盾を!』


ドゥームM『……やっぱり、騙したんだね』

ドゥームJ『……ひどいよPクン……アタシ達、頑張ってたのに……!』

ドゥームH『もうさ、めんどくさいから逃げようよ』


アデュー『なんだアイツら……? 戦わずに逃げる気か?』

サルトビ『へっ! そう簡単に逃がすかよ!』


武内P「っ……!」

ダダダダッ!


イズミ『!? そちらに行ってはいけません!』

パッフィー『止まって下さい! そっちには、ドゥームが!』



武内P「――私を信じて下さい!」



一同『!?』

ドゥームM『……信じる……?』

ドゥームJ『アタシ、Pクンが何考えてるかわかんないよ!』

ドゥームH『ふわぁ~あ、眠くなってきたし、一回連れて帰ろうよ』

ドゥームM『……ちゃんと話を聞かせて貰うからね、Pチャン』

ガシッ

武内P「はい。誤解のないように、しっかりと」


アデュー『!? お前達! その人を離せ!』

サルトビ『ちいっ! 今攻撃したら、当たっちまう!』

イズミ『くっ……! 自ら捕まりに行くなど、何故……!?』

パッフィー『プロデューサーさん!』



武内P「大丈夫です」



パッフィー『えっ?』


ドゥームM『ここは一旦引き上げるにゃ!』

ドゥームJ『Pクンは、アタシ達のPクンなんだから!』

ドゥームH『追ってこないでよね、面倒だから』

――ゴオオッ!



アデュー『あっ、待て!』

イズミ『迂闊に動いてはダメだ! 奴らの手には――』

サルトビ『……人質みたいなもんだな、くそっ!』

パッフィー『そんな……何も出来なかった……!』


アデュー『くっそおおおおおっ!!』

うん、星矢ギャグ捨てて容量開けた甲斐ありましたね
CMタイミングなので寝ます
おやすみなさい

星矢のギャグは、脳ミソの余裕がなくて手が動かないと思ったので犠牲になって貰いました
シリアスがサクサク書けたほうが楽しいかなぁ、と
単品も振りに合わせて書きたいし、手が足りねえ


続けます

  ・  ・  ・

アデュー「どうしてだよ! なんで助けに行っちゃいけないんだ!」

イズミ「落ち着けアデュー! 冷静になるのだ!」

アデュー「だけどっ!」


イズミ「――奴らは言っていた、連れて帰る、と」

イズミ「恐らく、彼は奴らのアジトに連れて行かれたのだろう」

イズミ「立て篭もられても厄介だし、何より人質を取られている状態だ」


サルトビ「イズミの言う通りだぜ、アデュー」

サルトビ「それに、アイツら以外にも邪竜族が居るかも知れねえ」

サルトビ「あの時はこっちが有利だったが、次もそうとは限らないからな」


アデュー「それは……そうかもしれないけど、でもっ!」

アデュー「俺は騎士だ! 騎士は、弱者を助けなければならないんだ!」


サルトビ「だから! そのために機会を待てって言ってんだろうが!」


パッフィー「……プロデューサーさん、あの邪竜族達と知り合いのようでした」

パッフィー「だから……すぐに危険は無いと思うのです」

パッフィー「今はこらえてください、アデュー!」


アデュー「ぱ……パッフィー? どうしちゃったんだよ!?」

アデュー「俺は、パッフィーなら、すぐにでも助けに行く、って言ってくれると思ってたんだぜ!?」


パッフィー「私だって!」


アデュー「っ!?」


パッフィー「私だって、本当はそう言いたい……!」

パッフィー「だけど、そのために貴方達を危険に晒すような真似は出来ません……!」


アデュー「……ごめん、俺が悪かった」

イズミ「ミシロの街に来ていない皆にも、連絡を取った」

イズミ「到着までどれだけかかるかはわからないが……」

サルトビ「俺も、出来るだけ情報を集めておく」

サルトビ「逃げた方角はわかってるんだ」

サルトビ「……こういう時こそ、シノビの出番ってやつよ」


アデュー「イズミ、サルトビ……」

アデュー「……悪かった、頭に血が上っちまってたみたいだ」


サルトビ「はんっ! お前のそういうのには慣れっこなんだよ!」

サルトビ「だが、まあ……嫌いじゃないぜ」

アデュー「な、なんだよサルトビ!? 気持ち悪いな!」

サルトビ「てっ、テメエ! 人がせっかくフォローしてやってるのに、気持ち悪いだぁ!?」


ハグハグ「また始まったハグ」


パッフィー「だけど……心配です」

アデュー「ああ……あの人は、大丈夫だー! なんて言ってたけど……」

パッフィー「プロデューサーさん……」


イズミ「プロデューサー……ううむ、やはりどこかで聞いた気が……」ブツブツ

  ・  ・  ・

深夜


サルトビ「……」

アデュー「……おーい、サルトビ」ボソッ

サルトビ「……」

アデュー「バーカ、あーほ、間抜けー」ボソッ

サルトビ「……」

アデュー「……よし、寝てるみたいだな」ボソッ


アデュー(……すまない、皆)

アデュー(皆の言うことが正しいって、頭ではわかっちゃいるんだ)

アデュー(だけど、ここで動かなきゃ……俺は、騎士で居られなくなっちまう)


アデュー「……」

コソコソッ


サルトビ「――おい、アホで間抜けな音速馬鹿」


アデュー「さ、サルトビ……!? お前、起きてたのか……!?」

サルトビ「ただでさえ派手で、その上うるさい騎士様の出陣だ」

サルトビ「俺がシノビじゃなくても、起きるに決まってるだろうが」


アデュー「サルトビ……俺を行かせてくれ」


サルトビ「どこへだ?」

アデュー「決まってるだろう、プロデューサーさんの所だ」

サルトビ「ほほう! そりゃあ、一体どこなんだ?」

アデュー「そ、それは……あっちの方向に飛んでいったから、あっちだ!」

サルトビ「……やれやれ、お前はどうしようもない馬鹿だな」


サルトビ「――道案内に、シノビを雇うか?」

サルトビ「報酬は、そうだな……今日の晩飯は、お前の奢りってのはどうだ」


アデュー「サルトビ……お前……!」

サルトビ「……ふん! 長いこと一緒に旅をしたせいか、お前の馬鹿がうつっちまった!」

  ・  ・  ・

岩山


アデュー「お、おい……サルトビ……!?」

サルトビ「何だ」

アデュー「ほ、本当にこんな所に奴らのアジトがあるのか……!?」

コツンッ

ヒュ――~~~ッ…………カツンッ

アデュー「……!?」

サルトビ「地形からいって間違いないな」

サルトビ「奴らはドゥームを持ってるんだ」

サルトビ「空を飛んじまえば、入り口はどうとでもなる」

アデュー「だ、だったら俺たちもリューで!」

サルトビ「何寝ぼけたこと言ってやがる!」

サルトビ「俺たちは、奴らに見つからないようにしなきゃいけないんだぞ!」

アデュー「そ……そうだった」

サルトビ「……はぁ、俺一人で来た方がマシだったかもな」

アデュー「なんだと――」

サルトビ「しっ!」

アデュー「!」



ドゥームC『――!』

ギュウウ――ン!



アデュー「ドゥーム……!」

サルトビ「へへっ、入り口の正確な場所を探し回る手間が省けたな」

アデュー「……待ってろよ、プロデューサーさん……!」

アデュー「すぐ、助けてやるからな……!」

  ・  ・  ・

アデュー・サルトビ「……」コソコソッ!



武内P「――ですから! それは、誤解なのです!」



アデュー・サルトビ「!」


「だけど、リュー使いと一緒に居たらしいじゃん!」

「ひどいですプロデューサーさん! 私達、頑張ってきたのに!」


武内P「それは、本当に偶然だったのです!」


「ふーん、どうだか。口では何とでも言えるよね」

「プロデューサーさん、本当の事を言ってください!」

「私達を……見捨てるんですか?」


武内P「そんな事は、絶対に有り得ません!」


「だけど、それじゃあ……」

「もうさ、面倒だから皆で逃げようよ~」


武内P「待ってください! お願いです、話を!」


「悪いけど、もうPチャンを信じられないにゃ!」

「Pクンが、先にアタシ達を裏切ったんだからね!」

「ねえねえ、これからどうなっちゃうの……?」


武内P「貴女達は、私の大切なアイドルです!」


「もはや言葉は不要! 魂の絆は、既に断たれた!」


アデュー・サルトビ「!?」


アデュー「まさか……あの人は、奴らの仲間だったのか!?」ボソッ

サルトビ「――うぐっ!?」

……ドサッ!

アデュー「サルトビ!? おい、しっかりしろ! サルトビ!」


「盗み聞きとは、ロックじゃないなー」


アデュー「邪竜族!? いつの間に――」


「にょっわー☆ すこぉしだけ、寝てて貰うにぃ☆」


アデュー「ぐあっ!?」

……ドサッ!

アデュー「ぐ……くそ……!」


「ハラショー! これで、アー、本当の事がわかりますね?」


アデュー「……!」

アデュー(こんな所で……!)

アデュー(逃げるんだ……パッフィー、イズミ……!)


  ・  ・  ・


イズミ「――駄目です! やはり、どこにも居ません!」

パッフィー「そんなっ!?」

イズミ「アデューだけでなく、まさかサルトビまで……!」

パッフィー「こうしてはいられません! すぐに助けに行かないと!」

イズミ「お待ち下さい、パッフィー様! 危険すぎます!」

パッフィー「でも! 行かないと二人が……アデューが!」

イズミ「っ!」

イズミ「……お許しください!」

ドスッ!

パッフィー「うっ!?」

イズミ「……」

ガシッ

パッフィー「……」


イズミ「何をしているのだ、アデュー、サルトビ……!」

イズミ「だが……どうか、無事でいてくれよ……!」

  ・  ・  ・

アデュー「ぐが~~っ! すぴ~~っ!」

サルトビ「おい、起きろ!」

アデュー「う~ん、もう食べられないって~」

サルトビ「起きろ、この馬鹿!」

ゲシッ!

アデュー「んがっ!?……何するんだ、サルトビ!」

サルトビ「しっ! 静かにしろ!」

アデュー「静かにって……ここは!? 俺たちはどうなったんだ!?」

サルトビ「静かにしろっつってんだろ!」

アデュー「お……おう」

アデュー「ここは……牢屋? 俺たち、捕まっちまったのか」

アデュー「体も縛られてるし……くそっ、これさえなけりゃ――」


サルトビ「――これさえなけりゃ、何だって?」

…パラパラッ


アデュー「サルトビ、お前……ただ捕まったわけじゃなかったんだな!」

サルトビ「だから、静かにしろってーの!」

サルトビ「……ふん、この俺があんな簡単にやられてたまるかよ」

サルトビ「だが、囲まれてる上に状況がわからなかったからな」

サルトビ「一芝居うった、ってぇわけよ」

アデュー「でかした! さあ、俺のこいつも何とかしてくれ!」

サルトビ「慌てるな。今すぐ――待て、そいつは後だ」


ガチャッ!


武内P「……目が、覚めたようですね」


アデュー「! アンタは!」


武内P「……」

アデュー「おい! アンタ、一体どういうつもりだ!」

アデュー「アイツらと……グルだったのか!?」


武内P「はい、その通りです」


サルトビ「へっ! 大丈夫ってのは、そういう事かよ!」

アデュー「人間なのに邪竜族と仲間だなんて……!」


武内P「待ってください、それは誤解です」

武内P「私は、あくまでも彼女達のプロデューサー」

武内P「邪竜族だから、という訳では、決してありません」


アデュー「だったら、答えてくれ!」

アデュー「アンタは、どうしてアイツらと一緒に居るんだ!?」

サルトビ「俺も教えてもらいたいもんだね! どうなんだ! えぇ!?」


武内P「笑顔です」


アデュー・サルトビ「――へっ?」

アデュー・サルトビ「笑顔?」


武内P「はい、笑顔です」

武内P「私は、彼女達の笑顔が見たいと、そう、思いました」


アデュー「そ、それだけなのか……?」


武内P「そう、ですね……他にも理由はありますが」

武内P「大きな理由は、笑顔です」


サルトビ「待て待て! 俺は納得しないぞ、そんな理由じゃあ!」


武内P「本当にそれだけなのですが……」


アデュー・サルトビ「……!?」


武内P「スカウトには、はい……苦労しました」

アデュー・サルトビ「……」


武内P「信じて、いただけますか?」


アデュー・サルトビ「――あっはっはっは!」


武内P「っ!? あ、あの……!?」


アデュー「笑顔……! 理由が、笑顔だけって……!」

サルトビ「はっは! こいつぁ傑作だ! は、腹がよじれちまう!」


武内P「……」


アデュー・サルトビ「……――信じるよ」


武内P「! 本当、ですか?」


アデュー「ああ、勿論さ! 伊達に旅をして来たわけじゃないんだぜ!」

サルトビ「この馬鹿の言う通りだ! アンタみたいに変わったのは珍しいがな!」

アデュー「おい、サルトビ! 馬鹿は余計だ!」

サルトビ「馬鹿に馬鹿と言って何が悪い!」

アデュー「なんだと~!?」

サルトビ「おぉ、やるか!? 縛られたままの状態で!」

アデュー「そうだった! おい、卑怯だぞサルトビ!」


武内P「……とても、良い旅だったのでしょうね」


アデュー・サルトビ「ああ!」ニイッ


武内P「良い、笑顔です」

武内P「覆面の上からでも……はい、わかるほどに」

ゲームしてきます

  ・  ・  ・

邪竜兵『――ようやく連絡が取れたか』

邪竜兵『お前達も、我々の軍勢に加わってもらう』


「……」


邪竜兵『どうした? 何を躊躇う?』

邪竜兵『迷うことなど無いだろう!』

邪竜兵『我々、邪竜族に敗北は無い!』


「……」


邪竜兵『ミシロの街を壊滅させ、反撃の狼煙を上げるのだ!』


「!? ミシロの街を……!?」


邪竜兵『そうとも!』

邪竜兵『歌と踊りなど、くだらんことにうつつを抜かす人間共!』

邪竜兵『まずは、奴らを見せしめに葬り去るのだ!』


「……」


邪竜兵『我々は、今より進軍を開始する』

邪竜兵『……遅れるなよ』

プツッ!


「……」


「……ねえ、どうするの?」

「私に聞かれても……わかんないよ」


「……」



武内P「――皆さんは、レッスンをお願いします」



「!?」

「……今の、聞いてたの?」


武内P「はい。なので、私はミシロの街に向かいます」


「何言ってるの!? あの街は、今から攻撃されるんだよ!?」


武内P「いえ、それはさせません」

武内P「彼らも……リュー使い達も、あの街を守るために戦うそうです」


「……やっぱり、Pクンも人間側なんだね」

「同じ人間だから、戦うんですか!? 命をかけてまで!」


武内P「それは――違います」


「なら、なんで!?」


武内P「あの街は、アイドルがデビューするに相応しい街だからです」


「!?」


武内P「歌と踊りの街、ミシロ」

武内P「貴女達、シンデレラプロジェクトのメンバーの、デビューに最適です」

武内P「……なので、私は行かなくてはなりません」


「まだそんな事言ってるんですか!?」

「Pちゃんはぁ、どうしてそこまですゆの?」



武内P「笑顔です」



「笑顔……」


武内P「私は、貴女達の笑顔と……」

武内P「……そんな貴女達のファンになるであろう人々を守ろうと、そう、思います」

武内P「申し訳ありません。あまり時間が無いので、これで」


「……」

  ・  ・  ・

パッフィー『ホノオン!』

ゴワアッ!

邪竜兵「ぐああああっ!」


イズミ『ぬうううん!』

ゴガァンッ!

邪竜兵「ぎゃあああっ!」


パッフィー『はぁ……! はぁ……!』

イズミ『大丈夫ですか、パッフィー様!』

パッフィー『私はまだ平気です! だけど、数が多くて……!』

イズミ『しかし、奴らは恐らく先遣隊……!』

イズミ『邪竜族を見たという情報は、恐らく奴らの事だったのでしょう……!』


邪竜兵「GYAAAAAOOOOOO!!」


パッフィー『くっ……!』

パッフィー(アデュー……今、貴方はどうしているの?)

パッフィー(貴方が居ないだけで、こんなにも心細いなんて……)

パッフィー「……ううん、こんな時こそ、しっかりしなきゃ!」

パッフィー「私達が、街を守らなきゃ――」


邪竜兵「死ねえええっ! リュー使い!」


パッフィー『!?』


イズミ『パッフィー様――ッ!』


――ザシュウッ!


パッフィー『……!』


邪竜兵「……ぐあっ!?」

…ドサアッ!


アデュー『――怪我はないか、パッフィー!』


パッフィー『アデュー!』

パッフィー「もう……! 心配、したんだから……!」グスッ

アデュー『ぱ、パッフィー!? 泣いてるのか!?』

パッフィー「アデューの馬鹿! もう知りません!」グスッ

アデュー『な、泣かないでくれよ……!』

パッフィー「……だったら、約束してください」グスッ

アデュー『約束?』


パッフィー「もう……勝手にどこかへ行かない、って」


アデュー「パッフィー……」


アデュー「……ああ、約束するよ。この剣に誓う」


パッフィー「アデュー……」


サルトビ『イチャつくのは良いがなお二人さん!』

サルトビ『敵はどんどん来てるんだ! サボってねえで働け!』


アデュー・パッフィー『さっ、サルトビ! これは!///』


イズミ『しかし……サルトビの言う通りだ』

イズミ『二人が来て四人になったとは言え、敵の数はあまりに多い』


武内P「――いえ、四人ではありません」


パッフィー『プロデューサーさん! 無事だったんですね!』

イズミ『しかし……邪竜族を相手に、生身では……』

アデュー『――そう思うだろ?』

サルトビ『ここまで来る途中で聞いて驚いたぜ』

イズミ『二人共、何を言っている?』


武内P「……」

スッ……


パッフィー『あれは、名刺……?』

イズミ『――いえ、違います! あれは――』


パッフィー・イズミ『ミストロット!?』

https://www.youtube.com/watch?v=rekIDikE3Uw


武内P「リュープロデューサー・ぴにゃこら太!」オジギー

スッ…


ぴにゃこら太『』

ぴにゃこら太『――』

ぴにゃこら太『――ぴにゃぴっぴ!』


武内P「ふっ!」

トンッ、トンッ、ビョワアッ――!


武内P「――笑顔です」


ぴにゃこら太『ぴにゃぴっぴ!』



イズミ『! ようやく思い出しました!!』

アデュー・サルトビ・パッフィー『い、イズミ!?』

アデュー『イズミ、あのリューを知ってるのか?』


イズミ『あれは、伝説のリュープロデューサー!』

イズミ『かつて、邪竜族との戦いにおいて、リュー使い達の指揮を担当!』

イズミ『リュープロデューサーの下で戦ったリュー達は、多大な戦果を上げたと聞いています!』


サルトビ『おいおい!? そんなすげえリューだったのか!?』


イズミ『乗り手の力に、能力は大きく左右されると言いますが……』

イズミ『それが存分に発揮された時、指揮する軍は無敵だと伝説に……!』

イズミ『まさか、このような場所でリュープロデューサーが見られるとは!』


アデュー『なるほど、こいつは頼もしいや!』

アデュー『プロデューサー! 指揮は任せても良いんだな!?』


武内P『はい。可能な限り、皆さんの力を引き出そうと思います』


アデュー『……よおおおおし!』

アデュー『反撃開始だ!』

リュー達『おうっ!』

  ・  ・  ・

アデュー『でりゃああああ!』

ザシュウッ!

邪竜兵「ぎゃああああっ!」


アデュー『はぁ……はぁ……!』


邪竜兵「GYAAAAAOOOOOOOO!!」


サルトビ『ちいっ! 次から次へと沸いてきやがって!』

イズミ『プロデューサー殿の指示で持ちこたえてはいるが……!』

パッフィー『このままじゃ、もう保たない……!』

アデュー『こうなったら、クラスチェンジして一気に――!』

武内P『待ってください! まだ、後方に部隊が控えています!』

武内P『眼の前の敵を倒したとしても、消耗しすぎてしまいます!』

アデュー『ぐうっ……! だけど……!』


邪竜兵「GYAAAAAOOOOOOO!!」


武内P『……皆さんは、出来るだけ離れてください』

アデュー『プロデューサー? 何か、考えがあるのか?』

武内P『街を覆う、可能な限り強固な結界を貼ることは出来ますか?』

イズミ『それは可能ですが……まさかっ!?』

武内P『はい』

…カパッ


武内P『ぴにゃこら太の心臓部を暴走させ――』


武内P『彼らに、辞表を叩きつけるのが最善だと、そう、考えます』


パッフィー『いけません! そんな事をしては、プロデューサーさんが!』

サルトビ『……それで、どの位の数が減らせる?』

アデュー『サルトビ!? お前、何を言ってるんだ!?』

武内P『およそ七割……そうすれば、皆さんがクラスチェンジすれば――』


アデュー『そんなの駄目だ! それは、俺が騎士として許さない!』

武内P「ですが、他に方法が……」


アデュー「アンタには、まだやるべき事があるんじゃないのか!?」


武内P「っ!? ですが……」


アデュー「プロデューサー! この俺と、ゼファーを舐めて貰っちゃ困るぜ!」

アデュー「そうだろう!? ゼファー!」

ゼファー『オオオッ!』


アデュー「騎士道大原則、一つ!」


アデュー『騎士は、どんな時にも決して諦めてはならない!』

ゼファー『オオオオオッ!!』



イズミ『おお……! アデューの想いに、ゼファーが応えている!』

サルトビ『……ちっ! 俺としたことが弱気になっちまったか』

サルトビ『おい、プロデューサー! さっきの質問は忘れろ!』

パッフィー『必ず、チャンスは訪れます! それまで、頑張りましょう!』

武内P『皆さん……』


アデュー『――さあ、プロデューサー! 俺たちに教えてくれ!』

アデュー『明日への道を切り開くための指示を!』


武内P『……申し訳ありません、先程の私の発言は、忘れてください』


武内P『そして……それとは違う理由で、貴方達に指示は出せなくなります』


アデュー・サルトビ・パッフィー・イズミ『えっ?』



ドゥームA~N『プロデューサー!!』



武内P「私は彼女達に――……」


武内P「私の担当する、シンデレラプロジェクトのメンバーに指示を出さなければなりません」

ドゥームA『へっへっへ! レッスン、サボって来ちゃった!』

ドゥームB『だからその……その分まで、頑張ります♪』

ドゥームC『リュー使いと共闘ね……ふーん、まあ、悪くないかな』

ドゥームD『皆、ちゃんとプロデューサーさんの指示に従うのよ?』

ドゥームE『ダー! プロデューサーの命令は、絶対、です!』

ドゥームF『我が友よ! 我らの魂は、再び繋がった!』

ドゥームG『えへへ……皆で、初LIVEですね』

ドゥームH『えー、そう考えると、なんだかやる気がなくなってきたよ』

ドゥームI『終わったら、皆でケーキ食べよう♪ お祝いに!』

ドゥームJ『Pクン! アタシのカッコイイ所、見ててよね☆』

ドゥームK『みんなで話したんだゆ! Pちゃんを信じようにぃって!』

ドゥームL『あのねあのね! い~っぱい褒めてくれると嬉しいな!』

ドゥームM『アイドルになるって決めたにゃ! だから、自分を曲げないよ!』

ドゥームN『最っ高にロックな場面ですね、プロデューサー!』


武内P『皆さん……14人、全員揃っているようですね』


ドゥーム達『はいっ!』


武内P『それでは……これより、シンデレラプロジェクト、再始動します』


ドゥーム達『はいっ!』


武内P『笑顔で……頑張って下さい』


ドゥームD『シンデレラプロジェクト! ファイトォォォ……』

ドゥーム達『おーっ!!』

キラキラキラキラッ…


イズミ『あの光は……アレこそまさに、アイドルの光!』

イズミ『リュープロデューサーと、その乗り手!』

イズミ『そして、担当するアイドル達が生み出すという無限の力……!』


武内P『これが、笑顔の力』

武内P『パワーオブスマイルです』

  ・  ・  ・

邪竜兵「なんだ……!? 我が軍が急激に押し戻されているだと!?」

邪竜兵「馬鹿な……あり得ん……!」


「大変だ! 後方に控えていた部隊が襲撃されている!」

「たった4体のリューだというのに……物凄い強さだ!」


邪竜兵「そんな……!? このままでは全滅だ!」

邪竜兵「……一旦退いて、体勢を整えるしか――」


「ぐわああああっ!」

「馬鹿なっ!? 何故、ここに……ぎゃああっ!」


邪竜兵「!?」


アデュー『――お前が、この軍の指揮をとっている奴だな』


邪竜兵「リューナイト……!」


アデュー『見た所、普通の奴みたいだが……そうじゃないんだろうな』

アデュー『指揮一つで、発揮される力が大きく変わる……』

アデュー『そいつをこの目で見てきたばっかりだからな』


邪竜兵「くっ……!」


アデュー『――なあ、もう辞めようぜ、こんな戦いは』


邪竜兵「何……!?」


アデュー『お前だってわかってるんだろう!』

アデュー『もう勝負はついた! 戦う必要なんて無いじゃないか!』

アデュー『俺たちは互いに多くの血を流してきた……』


邪竜兵「……」


アデュー『だけど……理解り合えないなんて、悲しすぎるだろ!?』


邪竜兵「……はっはっはっは!」

邪竜兵「甘い! 甘いな、リュー使いは!」

邪竜兵「邪竜族と人間が分かり合う……確かに、そんな道もあるのだろう」

邪竜兵「だが! 敗れた上に、指揮官たる俺が生き永らえる訳にはいかん!」

邪竜兵「そんな屈辱、邪竜族としての誇りが許さんわ!」


アデュー『お前……!』


邪竜兵「全力で来い、リュー使い!」

邪竜兵「この軍を指揮する総大将の首を取ってみせろ!」


アデュー『……わかった』

アデュー『騎士として……その決闘、受ける!』


https://www.youtube.com/watch?v=cwr7QRU8yAw


アデュー「リューパラディン!」

アデュー『ロードゼファァァッ!!』


邪竜兵「おお……! 嬉しいぞ、パラディンよ……!」

邪竜兵「この俺如きに、その姿を見せるとは……!」


アデュー「如き、なんかじゃないさ」

アデュー『俺はアデュー……アデュー・ウォルサムだ』


邪竜兵「悪いが、元々下級兵士の俺に名前など無い」

邪竜兵「ただの名も無き邪竜族の兵士よ!」

邪竜兵「GYAAAAAAAOOOOOOO!!」


アデュー『……ああ、名前なんてどうでも良いさ』

アデュー『お前が、誇り高い奴だって事だけが分かれば良い!」

アデュー「その誇りには、俺も全力の技で応えよう!」

アデュー「いくぞおおおおおっ!」


邪竜兵「うおおおおおっ!」


アデュー『メテオザッパアアアァァァッ!!』


  ・  ・  ・


アデュー「……」

アデュー「お前の事は忘れないぜ……忘れるもんか、絶対に」

  ・  ・  ・

武内P「――本当に、もう行ってしまわれるのですか?」


アデュー「ああ! 元々、‘危険な’邪竜族が居るって噂を聞いてきたんだ!」

パッフィー「アデューの言う通りです。だから、もう旅立たなくてはなりません」


武内P「一週間後には、彼女達のLIVEがあります」

武内P「せめて、それを見ていっては頂けませんか?」


アデュー「ドゥームでのLIVE、ねぇ」

パッフィー「ちょっぴり気になりますけど……」


武内P「……申し訳ありません」

武内P「旅立ちの、邪魔をしてしまいました」


アデュー「よしてくれって! それに、そのLIVEってのは一回きりじゃないんだろ?」


武内P「それは……はい」


アデュー「だったら、また見に来るさ! なっ、パッフィー!」

パッフィー「はい! きっと、またこの街に来ますわ」

アデュー「あ~あ、だけどパッフィーの歌と踊りも見てみたかったな~」

パッフィー「あっ、アデュー!?」

アデュー「あははっ! ほうら、早く行かないと、二人に置いてかれちまう!」

パッフィー「うふふっ! もう、アデューったら!」


武内P「……良い、笑顔です」


アデュー「それじゃあな、プロデューサー!」

アデュー「アンタのアイドル達にも、よろしく言っといてくれよ!」

パッフィー「お元気で! また、いつか!」


武内P「はい……また、いつか――!」


http://www.nicovideo.jp/watch/sm7380512



おわり

これは大分頭軽くなった感じがします
寝ます
おやすみなさい

書きます



神楽「笑顔? 私の笑顔はタダじゃないアル」

神楽「私の笑顔が見たければ、100万円持ってくるネ」


武内P「……100万円、ですか」


神楽「100万円が無理なら、100万ドル持って来いアル」

神楽「夜景はいらねえ、取っときなボウヤ」


武内P「……」


神楽「ほら、金が払えないならとっととどっか行くアル」

神楽「そもそも、お前みたいな見た目の奴、どう見ても信用出来ないネ」

神楽「人は見た目じゃないって言うけど、見た目を大事しない奴も駄目アルよ」

神楽「だから銀ちゃんも新八もモテないアル」


武内P「あのっ! せめて、名刺だけでも!」


神楽「……まあ、それ位なら受け取ってやるアルか」

神楽「神楽ちゃんは心が広いから、堅気以外にも優しくするネ」

神楽「感謝しろよ、でっかいオッサン」


武内P「……はい、ありがとう、ございます」


神楽「……」

神楽「は~~っ! ビビった! めっちゃビビったアル!」

神楽「何、あの顔! 絶対凄腕の暗殺者とか何かネ!」

神楽「名刺とか言ってたけど、きっとコレで相手を切り刻むに違いないアル!」


『346プロダクション プロデューサー』


神楽「……おー、こわこわ!」

ポイッ!

https://www.youtube.com/watch?v=h6F_yjlAOE8


「いやー、とうとう始まっちゃいましたね、銀魂クロス!」


「それより誰アルか、上に貼ってある動画のメス共は」

「おい! メスとか言うな! それにいきなりメタすぎんだろうが!」

「しょうがねえだろ新八。それに、お前だってクロスとか言ってるじゃねえか」

「そうネ。大体、書いてる奴があんまり覚えてないのに無謀すぎるアル」

「オィィィィィ!? いくらなんでも、それは言っちゃ駄目すぎるだろうが!」

「ほら、出た。出ましたよ、おいー、っての」

「いや、っていうかアンタら何なんですか、開幕から突っかかりすぎでしょ!」

「ば、バッカお前……それはホラ、アレだよ、アレ」

「そ、そうネ……アレがホレして、ソレアル」

「いや、全然わかんねーし」


「……もう、二人共! 真面目にやってくださいよ!」

「こういうノリで書くのだってね、本当に辛いんですからね!?」

「辛いけど頑張ってる人が居るんですよ! 必死なんですよ!」

「だけど楽屋裏的なノリがないとそれっぽくないんですよ、わかってくださいよ!」


「はーい、それじゃあ一旦コマーシャルいきまーす」

「続きはその後で! 楽しんで見るアルよ!」

「聞けよォォォォォ!!」



  どうせ枕営業されるなら、枕は柔らかい方が良い

 

銀時「……」

たぷたぷ


新八「ちょっと銀さん、ゲームばっかりしてないで掃除位手伝ってくださいよ」

新八「仕事が無いのは仕方ないですけど、出来る事はあるじゃないですか」


銀時「……うるせーなー、お前は俺のオカンかっての」

たぷたぷ

銀時「あークソッ、お前が話しかけるからミスっちまったじゃねえか」


新八「そういえば銀さん、最近ずっとそのゲームしてますね」

新八「そんなに面白いんですか? その音ゲー」


銀時「面白いか面白くないかじゃねえんだよ、新八」

銀時「男ってのはな、いつまでも少年の心を持ち続けてるもんなんだよ」

銀時「そんな少年の心に潤いを与えてくれる、それがゲームだ」

銀時「のどが渇いたら水を飲むだろ。その水と一緒なんだよ、ゲームってのは」


新八「なんだかえらく壮大に言ってますけど、ハマってるって事ですよね」

新八「……まさかとは思いますが、課金なんてしてないでしょうね!?」


銀時「そんな金がどこにあるってんだ」


新八「そうですよね」


銀時「俺がしてるのなんて、せいぜい課金したつもり課金だ」

銀時「そんなもん、課金した内に入らねーよ」


新八「思いっきり課金してるじゃねえか、この糞テンパ頭!!」

新八「内側も内側、ストライクど真ん中だよ! ホームラン間違い無しだわそんなん!!」


銀時「ヨーソロー!」


新八「……」

新八「バンドリじゃねえかァァァァァ!!?」

ガララッ!


神楽「おーい、可愛い神楽ちゃんが帰ってきたぞアホ共」

神楽「メシ、メシ、メシで出迎えるネ」


新八「あっ、神楽ちゃん良い所に!」

新八「聞いてよ神楽ちゃん、銀さんったら、ゲームに課金してたんだよ!?」

新八「僕たちの給料だって、まともに払ってないのに!」


神楽「はぁ!? 今の話しは本当アルか、銀ちゃん!」


銀時「うるせーなー」

銀時「課金の話はやめろよ、引けなかった記憶が蘇ってくるだろうが」


神楽「課金するなら、私に課金しろヨ!」

神楽「それで、美味しいご飯と可愛い服を用意するアル!」

新八「いや、神楽ちゃん……それ僕の事忘れてない?」

神楽「新八は、眼鏡のレンズを薄く、軽くするアル」

神楽「良かったな、新八。新しい自分になれるネ」

新八「新しい自分というか、新しい眼鏡になるだけだよねソレ」

神楽「それにしても、何てゲームに課金したアルか?」


銀時「FGOってやつだ。名前くらい聞いたことんあんだろ」


新八「掛け持ちしてんじゃねえよ! なんだアンタ!? いくら課金してんだ!」


神楽「……やれやれ、外に出ては暗殺者に会い、家には穀潰しが居る」

神楽「渡る世間は鬼ばかりとはこの事アルな」


新八「えっ? 暗殺者?」

銀時「おいおい、なんてモンに出会ってんだ」

銀時「お前それアレだよ? ふらっとガチャ引いたら狙ってないSSRが出たようなもんだよ?」

新八「……あの、銀さん。話が進まないから、そこから離れて下さい」


神楽「346プロダクションの、プロデューサーとか名刺に書いてあったアル」


新八「……えっ? 346プロダクション?」

銀時「知ってるのか、新八」

神楽「さすがキモいアイドルオタクアルな」

新八「キモいは余計だわ」


新八「346プロダクションは、この江戸でも一番のアイドル事務所ですね」

新八「所属するアイドルは100人を超えてます」

新八「勿論、その全員がお通ちゃんには遠く及ばないんですけど」


銀時「そろそろやめとけ、怒られるから」

神楽「そうネ! やっぱり765が一番アル!」

銀時「お前もやめろ、神楽。良いじゃねえか、どれが315だって」

銀時「皆違って、皆良い。良いんだよ、そんなもんなんだよ」


新八「……ゴホン!」

新八「とにかく、多分その人は暗殺者じゃないよ、神楽ちゃん」

新八「きっと、346プロダクションでも有名なプロデューサーさんだと思うよ」

新八「僕らが集めた情報によれば、何人か人を殺した事がありそうな大男だって話だからね」


銀時「おーい、何の情報を集めてんだお前らはー」


トントンッ!


『――すみません。神楽さんは、いらっしゃいますか?』


新八「!? なんだ!? この、地の底から響くような声は!?」

神楽「この声、さっきの奴アル! 私の事を追ってきたネ!」

銀時「……おい、プロデューサーってのは尾行までするのか?」

新八「もしかしたら……本当に、暗殺者だったりして……」

銀時・新八・神楽「……」ゴクリ



『長谷川さんという、お知り合いに聞いて来たのですが……』



銀時・新八・神楽「……」



『お酒を奢らされたので、本当かはわかりませんが……』



銀時・新八・神楽「マダオのヤロオオオオオ! 売りやがったなァァァァァ!」

『いらっしゃるなら、お話を……』


新八「ど、どうするんですか銀さん!?」

銀時「居留守に決まってんだろ」

神楽「いつもの手アルな」


『お土産に、クレープを持ってきました』


新八「お土産って、そんなので釣られる訳ないじゃないか」

銀時「待て、案外良い奴かも知れないぞ」

神楽「クレープなんて嘘に決まってるアル!」


『イチゴと、ティラミスと……』


銀時「しつけー野郎だな、俺がちょっくら追い払ってくるわ」

新八「どんだけ警戒心を解かれてるんだよ!」

神楽「イチゴって聞いてた時点で緊張感が吹っ飛んでたネ!」

銀時「そんな事あるはずねーだろ」

新八「銀さん……」神楽「銀ちゃん……」


銀時「良いか新八、お前はイチゴクレープに合ういちご牛乳を用意しろ」

新八「はい、わかりました!」


銀時「そして神楽、お前はティラミスの方に合うコーヒー牛乳を頼む」

神楽「わかったネ!」


銀時「俺は、奴をここにおびき寄せて、もてなす準備をする!」

銀時「あまり待たせると帰っちまうかも知れねえ! 急げよ、お前ら!」


新八・神楽「完全に信じ切ってるじゃねえかァァァァァ!」



武内P「……――あの、失礼します」



銀時・新八・神楽「っ!?」


長谷川「いよーう! さっさとクレープ食べようぜー! ヒック!」


銀時・新八・神楽「……」

銀時・新八・神楽(お前も来とったんかァァァァイ!)

シーンの区切りなので寝ます
おやすみなさい

  ・  ・  ・

銀時「やっぱりね、スマブラはアイテム有りが一番だなと思うわけ」

武内P「待ってください! 今、攻撃されては!」

長谷川「はっはー! ホームランだぜー!」

神楽「お前がなァァァ! 背中がガラ空きだぜェェェ!」


新八「……あの、皆さん」


長谷川「ルイージィィィ! 俺のルイージがァァァ!!」

武内P「反撃しようと、そう、思います」

銀時「バット投げ!? いや、それは違うでしょ!」

銀時「投げるのはボールゥ! バットは投げ――キャァァッチ!」

神楽「ドンキィィィ! お前のフルパワーパンチを見せてやるアル!」


新八「……ねえ、ちょっと」


銀時「道具も使えないゴリラがいきがってんじゃねえぞコラァァァ!」

神楽「死ねやコラァァァ! 宇宙の彼方へぶっ飛びなァァァ!」

武内P「これは、二人まとめてスマッシュするチャンスですね」

長谷川「もー、早く終わってくれよ―! これだからストック制は嫌なんだよー!」


新八「聞けよオイィィィ!! お前らアレか、仲良しか!?」

新八「何でメッチャ盛り上がりながらスマブラやってんだ!!」

新八「>>115の引きからソレはどう考えてもオカシイだろ!!」


銀時「うるせーなー、スマブラは面白いから仕方ねえだろ」

神楽「ほら、お前も混ぜてやるから怒るなヨ、新八」

長谷川「えぇ!? 俺が代わるの!? そんなの決めてなかったじゃんか!」


新八「いや、アンタらはともかくですね」


武内P「…………どうぞ」

スッ


新八「なんでお前までガッツリ馴染んでんだ!!」

新八「しかも、もの凄く嫌そうにコントローラー差し出してくるし!!」

新八「そんなの受け取りにくいにも程があるわ!! そもそも代わらねえ!!」

銀時「へいへい、うるせえカーチャンだな」

新八「誰がカーチャンですか。お前みたいな息子いらんわ」

銀時「それで? 何の話だっけ?」

新八「あの人が尋ねてきた理由ですよ、その位覚えててくださいよ」


武内P「……」


銀時「ああ、そうか……アレね」

新八「全く、やっと思い出したんですか」


銀時「武内君のモノマネがめっちゃ似てるって話だっけ?」


新八「お前マジふざけんなよ!?」

新八「どんだけ苦労して、名前を出さずにやってきたと思ってんだ!!」

新八「それが一瞬でパーだよ!! この糞テンパーがァァァ!!」


銀時「しょうがねえだろ、なあ、武内君」

武内P「杉田さん……あの、もう、それ以上は」


新八「お前も中の人の方で呼んでんじゃねェェェ!!」

新八「本当、いい加減にしろよ!! 話が全く進まねえじゃねえか!!」

新八「話が進んでないのに、どんどん大切なものが崩れていってるよ!!」


銀時「新八、形あるものはいつか壊れるもんだ」

銀時「なあに、そんときゃまた新しく作り直せば良いだけだろ」

長谷川「だけど、一度壊れたらもう二度と元に戻らないんだ」

長谷川「失ったものを取り戻すのに、さらに何かを失わなきゃいけないんだ」

新八「……あの、長谷川さんの話が重すぎるんですけど」


神楽「おいお前、何しにここに来たアルか」


武内P「神楽さん……アイドルに、興味はありませんか?」


神楽「無いアル」


武内P「……そうですか、残念です」



おわり

新八「オイィィィィィ!! お前ら本当……本当そういうのやめろって!!」

新八「信じちゃう人が居るかも知れないでしょうが!!」

新八「このままじゃ、ただ怪我して終わりになっちゃうでしょうが!!」


銀時「新八、これを見てる奴は、あんなのに騙されねえよ」

銀時「ただちょっと、書くのがもの凄く面倒な気持ちが出ちゃっただけなんだよ」

銀時「わかるだろ? このみ~っちり会話だけで埋まったレスを見れば」

銀時「想像以上だよ、いやホント驚いたわ」


新八「いや、僕だってそう思いましたけどね」

新八「それにしたって、あの流れはねーよ」

新八「そして一向に話が進んでねえよ、どうしてくれんだよ」


武内P「アイドルになれば……見たことの無い世界が、見られます」

神楽「見たことのない世界? 何かやばいクスリでもきめてるアルか」


銀時「ほら見ろ、いい感じに方向修正してくれてるだろ」

銀時「俺ぁ、ああいう誠実で真っ直ぐな後輩を持てて幸せだね、うんうん」

新八「その修正された方向を凄い所に持ってってますよ、神楽ちゃん」


武内P「笑顔です」

神楽「笑顔?」

武内P「貴女の輝くような笑顔で、ファンの方と一緒に階段をのぼっていきましょう」

神楽「クスリをやった後に階段を使うのは危ないネ。エレベーターを使うべきアル」


新八「駄目です! ポエミーなトークが全てフリに感じます!」

銀時「……ったく、しゃあねえな」

新八「銀さん?」


銀時「なあ、ぶっちゃけどれ位儲かる? コイツがアイドルになったら」

神楽「確かに、それは気になるアル」

神楽「ふふっ、この神楽ちゃんを値踏みするなんて、いけない人ネ」


新八「アンタら最低だ!!」


武内P「そう……ですね」

武内P「恐らく……この位になるかと」


銀時・新八・神楽「……………………マジで?」

  ・  ・  ・
346プロダクション、前


銀時「オウケェェイ、クゥァグゥラァ!」ビシィッ!

神楽「フゥゥゥゥ! いつでもオウケェェイ!」ビシィッ!


新八「いやあの、キメてる所悪いんですけど、伝わらないですから」

新八「もっとこう、わかりやすい感じでお願いしますよ」

新八「僕だってあんまりメタな事言いたくないんですからね、本当に」


銀時「良いんだよ、こういうのはノリで」

銀時「それに、お前だって気合入った格好してるじゃねえか、新八っつぁんよ」

神楽「そうアル。いくらアイドルの巣だからって気合入れすぎネ」

神楽「私はてっきり、いつものキモい追っかけ姿で来ると思ってたヨ」


新八「だ、だって仕方ないじゃないですか」

新八「僕だって、ある程度のTPOはわきまえますよ」

新八「これから見学しに行こうって場所に、戦闘服は着ていけませんよ」

新八「もしかしたら、本当に神楽ちゃんがアイドルとしてお世話になるかも知れないんですから」


銀時・神楽「良い、眼鏡です」


新八「お前らふざけんなよ! 眼鏡が違ういつもの新八くんになったじゃねえか!」

新八「ああもう駄目だよ! せっかく姉上に袴まで出してもらったのに!!」


銀時「いつもの格好が一番、って事だよ」

銀時「ただでさえゴチャゴチャしてるのに、普段と違う格好なんかしてられっか」

神楽「そうアル」

神楽「大体、お前の格好なんて誰も興味ねえよ、童貞眼鏡」

新八「童貞は今関係ねえだろうが!! い、いや、童貞じゃねえし!?」


武内P「あの……そろそろ、中に入っても良いでしょうか?」


銀時「おっと、待たせちまって悪いな武内君」

新八「何普通に呼んでんですかアンタ、やめてくださいって何度言えば良いんですか」

神楽「そんな細かいことはどうでも良いネ」


神楽「さっさと、私に相応しい事務所か見学するアル!」

  ・  ・  ・

武内P「ここが、エントランスホールです」


銀時「ほー、こりゃまた大したもんだ」

神楽「あの絵パクって売ったら、それだけでゴハンいっぱい食べられそうアル」

新八「ちょっと神楽ちゃんやめて! 見られてるから! めっちゃ見られてるから!!」


楓「――おはようございます」


銀時・新八・神楽「!?」

武内P「おはよう、ございます」

銀時・新八・神楽「お……おはようございまーす」


楓「ふふっ」ニコリ


銀時・新八・神楽「……」


銀時「……おい、新八」

新八「……なんですか、銀さん」

銀時「一つ聞くが、あの語尾にウンコとかタマキンとかつける女が本当にトップなのか?」

銀時「お前が信じてるのは、どこか別の世界の話じゃねえのか?」

銀時「やべえよ、なんだよあのオーラ。あれこそ俺の知ってるアイドルだよ」

新八「言いたいことはわかりますけど、ソレ以上言ったら戦争になりますよ」


神楽「うるさいうるさい! アンタ達、何見惚れてんのよ!」


銀時「ほら、神楽だってアイドル通り越してルイズっちゃってるもの」

銀時「良かったよ、定春が居なくて。絶対、この馬鹿犬ぅ、って言っちゃう感じだもの」

新八「あれ? そういえば長谷川さんはどうしたんですか?」

銀時「どうしてもついて来るって聞かなくてな、定春の背中に乗って貰ったんだが」


  ・  ・  ・

定春「わんっ」

ドドドドドッ!

長谷川「ちょっとぉ!? どこに向かってるの!? ねぇ!?」

長谷川「もしかして俺の出番終わり!?」


  ・  ・  ・


銀時「さすがに疫病神を引き連れくるのは申し訳ないからな」

武内P「それでは、神楽さんはプロジェクトルームの方へ」

神楽「私だけアルか? 銀ちゃん達は?」

武内P「申し訳ありません。さすがに、部外者の方をそこまでは……」


銀時「あー、良いって良いって、俺たちの事は気にすんな」

銀時「正直な所、中に入る必要も無かったんだから」

銀時「ただ、本当に神楽を任せても大丈夫か確認しに来ただけだ」


神楽「銀ちゃん……! そこまで私の事を……!」


銀時「というわけで、だ」

銀時「契約金は俺の口座に振り込んでおいてくれよな、武内くん」

銀時「手渡しでも良いんだが、大金を持つと気が大きくなっちまっていけねえ」


神楽「契約金!? 待つアル銀ちゃん!」


新八「そうですよ銀さん! 神楽ちゃんはアイドルになると決めた訳じゃないんですよ!?」


神楽「そんな話聞いてないアル! 一人占めしようったってそうはいかないネ!」

銀時「あのな神楽、お前は元々万屋の従業員だろうが」

銀時「だから、これは移籍金みたいなもんだろ?」

神楽「遺跡金? 何言ってるアルか! 何一つ発掘されてなんか無いアル!」

銀時「発掘されたのはお前だよ神楽、アイドルの原石というお前が発掘されたんだよ」


新八「アイドルになる気満々じゃねえか!!」

新八「銀さんも神楽ちゃんもそれで良いの!?」

新八「神楽ちゃんがアイドルになったら、三人バラバラになっちゃうんだよ!?」


銀時・神楽「新八……」


銀時「……そうだな、お前の言う通りだ」

新八「銀さん……わかってくれたんですね」


銀時「神楽はアイドルとして頑張る」

銀時「俺は契約金で遊んで暮らす」

銀時「新八はなんかその、眼鏡を頑張る」


新八「何一つ理解してねえじゃねえか!! なんだ、眼鏡を頑張るって!!」

  ・  ・  ・

新八「……良かったんですか、本当に行かせちゃって」

銀時「良いに決まってんだろ。アイドルだぞ、アイドル」

銀時「お金がガッポガッポ、笑顔でウッハウッハだぞ」

銀時「おー、こんな待合所のソファーまでフカフカたぁ、儲かってるねぇ」


新八「……見損ないましたよ、銀さん」

新八「お金で神楽ちゃんを売るなんて、それが侍のする事ですか」

新八「僕たち万屋の絆なんて、札束で叩かれたら吹き飛ぶもんだったんですね」


銀時「良いねぇ、札束で叩かれたいもんだねぇ」

銀時「そんな夢見たいな話が転がってたら、一も二もなく飛びつくってもんだ」

銀時「そりゃあもう、ダイブしちゃうね。ルパンダイブで」


新八「えっ? ちょっと待ってください」

新八「凄い額の契約金を貰ったんじゃないんですか?」


銀時「そんなもん貰ってねえよ」


新八「それじゃあ、これから貰うとか?」


銀時「うるせーなー。貰う予定もねえよ、そんなもん」

銀時「そんな金貰うんだったら、とっくに有り金全部パチンコに突っ込んでるっつーの」


新八「それじゃあ、さっきの話は……!?」


銀時「嘘に決まってんだろ。なんだお前、信じちゃってたわけ?」

銀時「プロ野球じゃあるめえし、移籍金なんてあるはずねえだろ」

銀時「万屋から芸能プロダクションに移るのにそんなもんが発生してたら、」

銀時「イチローだってビックリして100歳は若がえっちまうよ。現役生活超延期だよ」


新八「イチローが100歳若返ったら、まず人生が現役じゃねえよ、デビュー前だよ」

新八「というか、どうしてあんな嘘ついたんですか!」


銀時「ああでも言わないと、真面目に見学しねえだろうが、あのクソガキは」

銀時「頼れる男に、任せられるかもしれねんだ」

銀時「……こんな、チャランポランな男とは違ってよ」


新八「銀さん……」

https://www.youtube.com/watch?v=DmRPlnJgyBE


休憩

駄目だ
眠いので寝ます
おやすみなさい

https://www.youtube.com/watch?v=DmRPlnJgyBE

  ・  ・  ・

武内P「ここが、プロジェクトルームになります」

神楽「何ネ、たまり場が地下に有るとはどういう事アルか」

神楽「これが噂の地下アイドルって奴アルか」

神楽「夢を諦めきれない夢敗れた者たちの集いアルか」


武内P「いえ、違います」

武内P「そして、地下アイドルもそういうものでは……」


神楽「似たようなもんアル」

神楽「はぁ……これじゃあメンバーにも期待出来そうにないネ」

神楽「やっぱり765が一番アルな」


武内P「……私は、そうは思いません」


神楽「何だとコラァァァ!! 伊織ちゃん馬鹿にするとただじゃおかねえぞ!!」


武内P「待ってください! 決して、そういう意味では!」


神楽「だったら何アルか!」


武内P「……確かに、765プロのアイドルの方達は素晴らしいと思います」

武内P「とても個性的で、一人一人が輝きを放っています」

武内P「しかし、シンデレラプロジェクトの彼女達も負けてはないと、そう、考えます」

神楽「……」

武内P「そして、彼女達に――貴女、神楽さんが加われば……」

神楽「……私が加われば?」

武内P「トップアイドルも、決して夢ではないでしょう」

神楽「……」


神楽「そこまで言われちゃしょうがないアル!」

神楽「どれ、死んでるプロジェクトの奴らの顔、拝ませて貰うアル、南無~」


武内P「あの、生きています」

武内P「……それでは、どうぞ」


ガチャッ!

  ・  ・  ・

銀時「……お、あったあった自販機」

銀時「さすがに大手事務所だ、品揃えも充実してやがる」

銀時「だけどこれじゃあ俺を満足させられねえな」

銀時「いちご牛乳は、せめて三種類は置いてくれないと」


マストレ「そこの貴方、ここで一体何を?」


銀時「あぁ? 見てわかんねえのか」

銀時「どう見たって、自販機で買い物をしようとしてるだけだろうが」

銀時「それとも何か? 自販機の下の小銭でも探そうとしてるように見える?」

銀時「……いや、待てよ。こんな大手だったら、小銭じゃなくて大銭が落ちてるかも」


マストレ「そんな事は聞いていない」

マストレ「見たことの無い顔だが、誰の許可を得てここに入った」


銀時「ゴチャゴチャうるせーなー、武内くんだよ、武内くん」

銀時「そんな事よりアンタ、何か長いもの持ってない?」

銀時「何かあんだろう、何故か竹で出来てる30センチ定規とかさ」


マストレ「彼の?」

マストレ「……なるほど。もしや、キミが彼の言っていた人物か」


銀時「ウオォォォォォ!? 500円玉が落ちてるじゃねえか!!」

銀時「ああクソッ! 手が届かねえ!!」

銀時「いや、違うからね!! あれ、実は俺が落とした500円玉だから!!」

銀時「決して、ラッキー☆ と思って必死こいて取ろうとしてる訳じゃないからね!!」

銀時「いやー、参ったなー。アレがないと、お母さんのお使いが出来なくなっちゃうよー」


マストレ「そんな事よりも、ついて来なさい」

マストレ「あまり、仲間を待たせるものでは無いぞ」


銀時「良いんだよ、新八なんていつまでも待たせてたって」

銀時「待つことも人生の醍醐味、歩いてばっかりじゃ疲れちまわあ」


マストレ「つべこべ言ってないで、来い」

銀時「あっ、ちょっと! 引っ張るんじゃねえよ! オイ、コラ!」

銀時「せめて500円玉取るまで待ってェェェェェ!!」

  ・  ・  ・

武内P「彼女達が、シンデレラプロジェクトのメンバーです」


莉嘉「ヤッホー☆ アタシ、城ヶ崎莉嘉だよ! よろしくね☆」

みりあ「赤城みりあです! ねえねえ、貴女のお名前は?」


神楽「神楽アル。自分から名乗るとは、教育が行き届いてるアルな」


莉嘉「これも、カリスマJCアイドルとしてトーゼンだからね☆」

みりあ「これからよろしくね、神楽ちゃん! 仲良くしてくれると嬉しいなぁ」


神楽「アイドル界は戦場、馴れ合いはしないアル」

神楽「……だけど、私はまだアイドルじゃないネ」

神楽「だったら、仲良くしても問題無いアルな!」

神楽「ねえねえ、何して遊ぶ? オススメは缶蹴りネ!」


未央「あっはは! 面白い事言う子だね、神楽ちゃんって!」

未央「おっと、自己紹介がまだだった! 私、本田未央!」

卯月「島村卯月ですっ♪ うわー、とっても可愛いですね!」

卯月「肌も白くて、とっても綺麗だし、羨ましいなぁ」

卯月「これから、一緒に頑張りましょうね♪」

凛「渋谷凛、よろしく」

凛「ふーん、アンタが新しいメンバー候補? 悪くないかな」


神楽「偉そうにするんじゃないアル、このネバネバ」


凛「ちょっと!! 今ので私のポジションが決まっちゃったんだけど!!」

凛「っていうか、ネバネバってどういう意味!? 説明して!!」


神楽「ほほう、これは中々のツッコミアルな」

神楽「これからよろしくな、リンパチ」


凛「リンはともかく、パチはどこから来たの!?」

凛「明らかに変なの付けられたんだけど!」

凛「何ていうか、こう、しんどいポジションを与えられたんだけど!!」


■■「ふふっ、とっても元気な子ね♪ よろしくね、神楽ちゃん」

■■「私は、プロジェクトのリーダーを任されてる、■■■■」


神楽「……」

神楽(なんかヤベエの来たァァァァァ!!)

■■「今日は、メンバーが全員揃ってないんだけど……」

■■「その内、全員と顔を合わせられると思うわ♪」


神楽「その内も何も、まずお前と顔が合わないアル!」

神楽「何アルか、そのオーラみたいな奴は!?」

神楽「でっかい真っ黒クロスケみたいになってるアル!!」


武内P「彼女は、■■■■さんです」

武内P「良い子も安心して見られるよう、黒ベタ処理させていただきました」


神楽「黒く塗りつぶす処理をしなきゃいけないって何!?」

神楽「こんなんじゃ、輝きもクソも無いアル!」

神楽「全てを飲み込む闇がそこにあるネ! 光を一切通さないアル!」


■■「[ピーーーーーーーーーーーーーーーーー!!]」


神楽「ちょっとォォォォォ!? マジで何言ってるアルか!?」

神楽「銀魂とクロスしてるのに許されない発言って何アルか!?」

神楽「気になって仕方ないネ! 聞かせろヨ! 何を言ったか聞かせろヨ!」


武内P「……申し訳、ありません」

武内P「しかし、闇が深いという事は、その分光も強いという事」

武内P「その光と闇が合わされば、トップアイドルも夢ではありません」


神楽「芸能界の闇どころじゃないアル……本当の闇がそこに居るアル」

神楽「もしかして私、とんでもない所に来てしまったアルか?」

神楽「銀ちゃん、新八……私、自信が無くなってきたネ……」


かな子「はじめまして、神楽ちゃん♪」

かな子「私、三村かな子。お近づきの印に、クッキーはどうかな?」

かな子「お菓子を作るのも食べるのも好きで、よく持ってくるんだ~」


神楽「……騒いだらお腹が空いたから、貰うアル」

神楽「これ食べたら、私も闇に飲まれたりしない? 放送禁止にならない?」


かな子「美味しいから大丈夫だよ~」


神楽「……」

サクッ!

  ・  ・  ・

銀時「……」

銀時「いやね? 確かに、俺は武内くんに連れられて来たよ?」

銀時「だけどさ、明らかにこの感じ違うもの」

銀時「なんか、おかしなレールに乗せられちゃってるもの」

銀時「乗るんだったら、お菓子なレールにしてくれよ」

銀時「そんなレールだったら、喜んでシュッポシュッポするからよー」


土方「おい、さっきからゴチャゴチャうるせえぞ」


銀時「つーか何でお前がココにいんだよ!!」

銀時「ふざけんじゃねえぞ!! これ以上キャラ増やしてどうすんだ!!」

銀時「この先の展開も何も決まってないっつーのによォォォォォ!!」


土方「俺だって芸能事務所に来たくなんてなかったっつの!!」

土方「松平のオッサンが――」


  ・  ・  ・


片栗虎『おいトシィ、お前今日暇か? そうか、暇かぁ』

片栗虎『お巡りさんが暇ってのは良い事だが、働かねえってのはいけねぇなぁ』

片栗虎『働かざるもの、食うべからず』

片栗虎『楽しまないもの、キャバクラへ行くべからずぅ』

片栗虎『ってなわけでぇ、346プロダクションへ今すぐ行けバカ野郎』

片栗虎『理由を説明してる時間はねぇ、とっとと行け』

片栗虎『もし行かないなんてほんのちょっぴりでも思ってもみろ、トシィ』

バキュウウンッ!

片栗虎『おじさんのンムァグナムが何をするかわからねぇ』


  ・  ・  ・


土方「――って言うんだからよ!」

銀時「……ちっ! だったらもう用は済んだだろ、とっとと帰れ」

土方「そういう訳に行くか。蜻蛉返りしたって知れたら、松平のおっさんに殺されちまう」

銀時「そいつは良いね、そうなりゃちったぁ清々すらぁ」

土方「んだとこの野郎!……違えよ、殺されるのは俺じゃねえ」

銀時「あん?」


  ・  ・  ・


近藤「やめてェェェェェ!! お願いだから撃たないでェェェェェ!!」


  ・  ・  ・


土方「近藤さんだ」

銀時「……ああ」

銀時「しっかし、どうしてこうなるかねぇ」

銀時「仲間が待ってるっつーからこの部屋に来たのによぉ」

銀時「新八はどこ行ったんだよ、ったく」


土方「俺だって知らねえよ」

土方「言われるままにここに来て、この部屋に通されたんだ」

土方「全員集まるまで待て、って言われてな」


銀時「おいおい、勘弁してくれよ」

銀時「これ以上人数が増えたらどうしようもなくなっちまう」

銀時「ただでさえ話が進まないから困ってるってのに」


土方「俺に言うんじゃねえよ」

土方「! おい、扉の向こうに気配がするぞ」

土方「……この気配、只者じゃねえな」


銀時「今更誰が現れたって驚きゃしねえよ」

銀時「そもそも、なんで仲間が待ってるなんて話だったのにお前が居んだ」

銀時「お前と仲間扱いされるなんてヘドが出らぁ」


土方「そりゃこっちの台詞だ!」

土方「大体、なんでお前までここに居んだよ!」

土方「日陰者のお前らが芸能事務所に何の用があるっつーんだ、えぇ!」


銀時「んだとコラ! 男ってのは、ちょっぴり陰がある方がモテんだよ!」

銀時「やだ、あの人ミステリアスぅ、ってな!」

銀時「そんなこともわかんねーのか、このV字ハゲが!」


土方「V字だけどハゲちゃいねーよ! どこのサイヤ人の王子の話だ!!」

土方「大体、お前の陰なんて精々その陰毛みたいな頭くらいなもんだろうが!」


銀時「あー、言ったね! 言っちゃったね!」

銀時「お前は全国の天然パーマ集団全員を敵に回したね、今この瞬間んん!!」



マストレ「――おい、騒ぐのをやめろ!」

マストレ「本当に話が進まない!」


銀時・土方「……チッ!」

  ・  ・  ・

神楽「かな子ちゃん、おかわりアル!」


かな子「うふふ、まだまだ沢山あるから、遠慮しないでね♪」


神楽「遠慮なんて言葉、私の辞書には書いてないネ!」

神楽「もしもあったとしたら、ページごと破り捨ててやるアル!」


凛「いや、ページごと破ったら他の言葉も巻き添えで消えちゃうでしょ」


神楽「黙れネバネバァァァァァ!」

神楽「お前もショコラ・ティアラにしてやろうかァァァァァ!!」


凛「私の扱いひどくない!? 何かした!?」

未央「大丈夫だよ、しぶりん!! ファイト!」

卯月「はいっ♪ 凛ちゃんは大丈夫ですっ、ブイっ♪」

凛「いや、全然大丈夫な感じじゃないから、ファイトもブイも何も無いから」


莉嘉「神楽ちゃーん! 食べてばっかりいないで遊ぼうよー!」

みりあ「うんうん! 遊ぼう遊ぼうー!」

神楽「そうアルな。お菓子は銀ちゃん達に見つかる前に食べきれば良いだけアル」

莉嘉「何して遊ぶ? アタシ、カブトムシ捕まえるの得意だよ!☆」

神楽「私もカブトムシには縁があるアル。詳しくはググれよ、良い子の皆」

みりあ「はいはーい! あのねあのね、一緒に歌ったりしたいなー!」

神楽「それも良いアルな! 何歌う? 天城越え? 津軽海峡・冬景色?」

莉嘉・みりあ「ええっ!? 選択肢は演歌だけ!?」

神楽・莉嘉・みりあ「……」

神楽・莉嘉・みりあ「あははははっ!」ニコニコ


武内P「……良い、笑顔です」


神楽(最初はアイドルなんかめんどくさいと思ってたけど、悪くないかも知れないネ)

神楽(皆良い子だし、とっても楽しいアル!)

神楽(もしかしたら、ここは天国かも知れないアルな!)

  ・  ・  ・

マストレ「――どうやら、キミ達は知り合いらしいな」

マストレ「だったら、話は早い」


銀時「待てよねーちゃん、こっちは状況がサッパリわからねえんだ」

土方「ちゃんと説明してくれ。何で俺たちはここに集められた」


マストレ「知らなかったのか?」

マストレ「キミ達二人と、これから紹介する人物の三人でユニットを組んで貰う」

マストレ「それが――死んでる目プロジェクトだ」


銀時・土方「はぁ!?」

土方「ちょっと待てコラ! 目が死んでるのはコイツだけだ!」

銀時「それよりも、ユニットを組むってのはどういうこった!」

銀時「小隊システムも悪くねえが、俺は単機で出撃出来る方が好みだコラァ!」

土方「何の話をしてんだオメーは! 誰がスパロボの話をしろっつーたよ!」

土方「俺は、出撃機会の無い奴らも出番があるから、悪くないと思う」


マストレ「キミ達は、346プロダクションの男性アイドル部門の先駆けになってもらう」

マストレ「いわば一番槍、ぶっちゃけ捨て石だ」


銀時・土方「とんでもねえ事ぶっちゃけやがったァァァァァ!!」

銀時「ふざけんなよ! 人様を捨て石よばわりたぁどういう了見だ!」

銀時「石は石でも、コイツはともかく、俺は河原で拾ったピカピカの石だっつの!」

土方「そりゃガラスが削れて出来たやつだろうが、石でも何でもねえ」

銀時「……え? そうなの? 何か秘めたパワーを持った特別な石じゃないの、アレ」


マストレ「その特別な石になれるかは、キミ達次第だ」

マストレ「――入りなさい、3人目の……路傍の石コロか、原石かわからぬ男よ」


銀時「……ったく、三人でユニットだぁ? 冗談じゃねえ」

土方「だが、このオーラ……どっかで覚えが……」



茂茂「これから、よろしく頼む。気軽に将ちゃんと呼んで欲しい」



銀時・土方「……」

銀時・土方(……しょ……しょ)

銀時・土方(将軍かよォォォォォォォォォォォォ!!)

茂茂「余は、アイドルというものにあまり詳しくない」

茂茂「故に、トップアイドルというものになれるかはわからん」


銀時(アイドルも何も、アンタこの国のトップゥゥゥゥゥ!)

土方(なんでアイドルでトップ目指してるのこの人ォォォォォ!)


茂茂「だが、余をスカウトした大柄な彼は言っていた」

茂茂「笑顔の力、パワーオブスマイルを信じろと」

茂茂「その言葉を聞いた時、余は悟ったのだ」

茂茂「アイドルとして皆を笑顔にするのが、余の務めだと」


銀時(武内クゥゥゥゥゥン!? なんて人スカウトしてんの!?)

銀時(っていうか、スカウトする能力半端じゃねェェェェェ!!)

土方(変なもん悟ってんじゃねえよォォォォォ!)

土方(アイドルじゃなく、将軍として笑顔にすれば良いだろうがァァァァァ!!)


茂茂「……不思議なものだ」

茂茂「今まで見ていなかった道が、こんなにも眩いものだったとは」

茂茂「この道こそが、余が歩むべき道だったのも知れないとすら思える」


銀時・土方(それ、思いっきり脇道ィィィィィ!!)


茂茂「至らない所はあるだろうが、共に乗り越えて行こうではないか」

茂茂「して、そなたらの事はなんと呼べば良いのだ?」


銀時・土方「!?」

銀時・土方「……」

銀時「……ぎ、銀ちゃんで。よろしくな、将ちゃん!」

土方「!?」


茂茂「銀ちゃんか……どこかで見た顔、聞いた声だが」

茂茂「いや、よそう。新しい自分達に、過去は無用」


土方「バカ野郎! お前、まさかこのままいくつもりか!?」ボソボソ

銀時「しょうがねえだろうが! だってやる気になっちゃってるんだもの!」ボソボソ

銀時「嫌なんて言ってみろ! アイドルどころか、打ち首で死んドルになるだろうが!」ボソボソ

土方「うまくねーよ! 俺は嫌だぞ!! アイドルなんて!!」ボソボソ


茂茂「そちらの、黒髪の御仁はなんと申す?」


土方「……」

土方「……と、トシちゃんです」

茂茂「トシちゃんか、よろしく頼む」


銀時「おいコラテメエ!! 将軍を諌めるのは、家臣の務めだろうが!」ボソボソ

銀時「とっととあのバカ将軍に考え直せって言って来いやコラァ!」ボソボソ

土方「んな事出来る訳ねえだろこのバカ! こんな事で死にたくねえ!」ボソボソ

土方「主君が進む道を応援するのも大切だと思うな、うん、そうだよ俺は悪くねえ」ボソボソ


マストレ「――よし、これから三人で頑張れよ!」


銀時「おねえさァァァん!? ちょっとお話宜しいですかァ!?」

マストレ「……何だ?」

銀時「何だじゃねえぞ!」

銀時「ナンダカンダ叫んだってやりたい事やるべ~きです♪ とは言うけどな!?」

銀時「それにしたって、もうちょっとこう、ああもう! わかれよ! 300円あげるからァァァァ!!」


土方「!……おい、この人を責めるのはよせ」


銀時「だったら、誰が責任取るっつーんだよ、あぁ!?」


土方「この人も、俺たちと同じ被害者だ」

土方「俺たちよりも先に、とっくに諦めちまってるんだよ」

土方「……よく見てみろ、この目を」


マストレ「頑張れば、きっと良い事があるはずだ!」ドヨーン

マストレ「頑張って、頑張って、頑張って……頑張って?」ドヨーン


銀時・土方「……」


銀時(目が死んでるのはコイツかよォォォォォ!!)


土方「それに、責めてる時間は残されてねえ」

銀時「……おい、それってまさか」

土方「……ああ、もう尺が残ってねえんだ。諦めろ」


https://www.youtube.com/watch?v=ni6ul9_4wIE


銀時「ふっざけんじゃねえぞ! お前、ここで諦めたら――」

銀時「あっ、やめて! ED流すんじゃねえ! 止めろ! 止めて!?」

銀時「この調子で前後編になるとか――」


  ・  ・  ・


新八「どんだけェェェェェェ!?」


つづく!

休憩


 侍の国。


 僕らの国がそう呼ばれたのは、今は昔の話。
 20年前、突如宇宙から現れた天人(あまんと)の台頭と、
廃刀令により、侍は衰退の一途を辿っていた。


 そんな時代に、プロデューサー魂を持った男が一人!


 その名は――……いや、これ言っちゃって良いんですか?


 良いに決まってんだろうが。
 それとも何か? お前は名前の言えないあの人とクロスしてるつもりか?
 エクスペクト・パトーローナムするつもりか、ああ?


 いや、そんなつもりは無いですけど!


 と、とにかく、ひょんな事から銀さんの営む万屋で働く事になった、僕、志村新八と、神楽ちゃん!


 その神楽ちゃんが、アイドルにスカウトされた事から始まったこの物語。
 そして、妙な事に巻き込まれた銀さん達が――


 ああもう、長い長い! そんな事言わなくても良いんだよ、わかってるから!
 なんならこの1レスも要らないんだよ、進まないんだよ、マジで!


 ちょっとォォォォォ! せめてここで位は出番下さいよォォォォォ!



 良い、ツッコミです。



https://www.youtube.com/watch?v=n5TG3Fxzft0

マストレ「1! 2! 3! 4!」


銀時「……」ダラダラ

土方「おい、ダラダラすんじゃねえ! 真面目にやれ!」

茂々「っ! っ! っ! っ!」カク、カク、カク、カク


マストレ「5! 6! 7! 8!」


銀時「こんなんテキトーで良いんだよ、テキトーで」ダラダラ

銀時「話し合って決めただろうが」

銀時「やっぱりデビューは無理だから諦めようって流れにするってよ」

土方「それはそうだが、見ててイライラすんだよ」

土方「稽古ってのは、もっとビシッとやらないと意味がねえ」

土方「フリだとしても、もうちょっとマシな動きは出来ねえのか」

茂茂「っ! っ! っ! っ!」カク、カク、カク、カク


マストレ「――はい、ストップ!」


銀時・土方・茂茂「……」


マストレ「坂田! お前はもっと真剣にやれ!」

マストレ「そんな調子では、デビューは無理だぞ!」

銀時「うーい、とぅいまてんでしたー」


マストレ「土方! お前は人の事を気にしてる場合か!」

マストレ「もっと集中しろ! でないとデビューさせられん!」

土方「……わかっちゃいるが、腹立つなコレ」


マストレ「このハゲ! センスの欠片も見当たらんな!」

マストレ「やる気だけは一丁前にあるようだが、見ていて不愉快極まりない!」

マストレ「とっとと荷物まとめてお家へ帰るんだな! このクソが!」

マストレ「ん? クソ? おい、なんで頭にクソを乗せてるんだ! ぶっとばすぞ!」

茂々「……」ツーッ


銀時・土方(言いすぎだろあの女ァァァァァ!?)

銀時(泣いちゃってるもの将軍! 悲しさが溢れ出しちゃってるもの!)

土方(そりゃ確かに辞めさせるとは言ったが、パワハラってか迫害だろアレ!)

銀時「しょ、将ちゃん! とりあえず汗拭けよ、なっ!?」

土方「ほら、タオルだ! こいつを使ってくれ、将ちゃん!」

茂茂「すまない……汗が、止まらなくてな」ボロボロッ


マストレ「汗が止まらないとか、うわ、キッモ!」

マストレ「そんなキモい奴にアイドルなんて無理無理無理無理!」

マストレ「汗水たらす所か、鼻水までたらしているじゃないか!」

マストレ「何をどれだけたらせば気が済むんだ、このクソッタレ!」

マストレ「その様子じゃ、お前のパンツは真っ茶色だな、あー、バッチイバッチイ!」


茂茂「……おうっ……うっく!」ボロボロッ

茂茂「しょ、将軍家は代々……ぱ、パッツリゴム、もっさりブリーフ派だ」ボロボロッ


銀時・土方「オイィィィィィ!! ちょっと待てェェェェェ!!」

銀時「いくらなんでも言いすぎだろうが! 何様のつもりだコノヤロー!」

土方「てめえの立場をわきまえろコラァ! 誰に物を申してんだ!!」


茂茂「いや……良いのだ、二人共」

茂茂「トレーナー殿はアイドル達を見てきたプロ中のプロ」

茂茂「そのトレーナー殿からすれば、路傍の石どころか犬の糞の様なものなのだろう」


銀時「そんな事はないぜ、将ちゃん!」

銀時「確かに踊りは引くくらい下手だが、頑張ってるじゃねえか!」

土方「ああ、その通りだぜ、将ちゃん!」

土方「踊ってるかすらわからない程下手だが、頑張ってたと俺ぁ思う!」


茂茂「……ありがとう」

茂茂「フッ……銀ちゃんとトシちゃんが居れば、アイドルになるのも夢では無いな」

茂茂「ともに道を歩む仲間が居るのが、こんなにも頼もしいものとは思わなんだ」


銀時・土方(しまったァァァァァ! 可哀想すぎてやっちまったァァァァァ!)

茂茂「……トレーナー殿」


マストレ「何だ、私に何か言いたいことでもあるのか?」


銀時(スンマセン! ほんっとスンマセン!)

銀時(せっかく頑張ってたのに、台無しにしちゃってマジスンマセン!)

土方(くっそ! こんな時に俺のフォロー癖が裏目に出るとは!)

土方(あとはアンタが頼みだ、マスタートレーナーさん!)

銀時・土方(さっきみたいに、キツイのぶちかましてやってください!)


茂茂「確かに、今の余は、今だ道端に捨て置かれた犬の糞かも知れぬ」

茂茂「しかし、この二人と、そして、貴女の力があれば……」

茂茂「犬の糞は、土に溶け――」


土方「……!」


茂茂「鈍くだが、しっかりと銀色に輝く光に照らされ――」


銀時「……!」


茂茂「やがて、小さくだが、力強い花を咲かせるだろう」


マストレ「……!」


茂茂「だが、余一人ではそれは叶わぬ」

茂茂「お前たちの力が必要だ」

茂茂「――力を……貸してはくれないだろうか?」


銀時・土方・マストレ「ははーっ!」ドゲザー


茂茂「よい、面を上げよ。下を向いていては、ファンの方に笑顔を見せる事は出来ん」


銀時「……なあ、これ地味にヤバくねえか」

土方「……ああ、着いて行きたい気持ちが抑えられねえ」

マストレ「見ろ……私なんか、もう絵柄が銀魂になっている」

銀時・土方「いや、知らねえし」


茂茂「さあ、レッスンの続きをしよう。アイドルへの道は、険しいのだから」


銀時・土方・マストレ「……はーい」ドヨーン

シティーハンター新作公開ですってよ

寝落ちてました

>>149
ネットニュースで確認しました
書いたのは偶然でしたが、そういうタイミングだったんですかなぁ

  ・  ・  ・

蘭子「煩わしい太陽ね」

神楽「もしかして、お前も夜兎アルか? その肌の白さと傘!」

蘭子「そ、そうではないわ。新たな盟友の可能性を持つ者よ」

神楽「やっべー、何言ってるか全然わかんないアル。おっぱい揉んでいい?」

神楽「同い年なのに、その成長っぷりはズルいネ!」

蘭子「そ、それは……も、もう少し仲良くなってからで」

神楽「約束アル! 揉んで揉んで、揉みしだいてやるから覚悟しとくアル!」


みく「ねえねえ、神楽チャンはネコミミとか興味無いかにゃ?」

神楽「ごめんね、私ネコミミはちょっと拒否反応が出ちゃうアル」

神楽「具体的には、いい年したババアがネコミミでスナックで働いてたり」

神楽「そういうのを見てきたから、見てるだけで加齢臭を感じるアル」

みく「もしかして、みくからも感じるってこと!?」

神楽「ぶっちゃけプンプンアル。ネコミミ以外の方向性も考えとくべきネ」


きらり「うぇへへ! 神楽ちゃんは、可愛いにぃ☆」

ぎゅっ!

神楽「わ、ちょ、ちょっと! 離すアル!」

神楽「何アルか!? この圧倒的なパワー! ふんぐぎぎぎぎ!」

きらり「うきゃー☆ こらこらぁ、暴れたらメッだゆ☆」

きらり「これから、一緒にハピハピしようにぃ☆ きらりんパワー☆」

神楽「び、微動だにしないとは何アルか!? これが、笑顔の力!?」


李衣菜「……なんか、もうすっかり馴染んでるね」

智絵里「ふふっ、皆もとっても楽しそう」

アーニャ「ハラショー! 新しい仲間、とっても素敵、です!」

杏「ふわぁ~あ。これで、杏の仕事が減ると助かるよ~」

CPアイドル達「あはははっ!」


神楽「こ、コラー! 笑ってないで助けるアル!」

きらり「うぇへへ! 神楽ちゃ~ん、逃さないゆ!」


■■「ファイトよ、神楽ちゃん♪」

凛「悪くないんじゃない、そういうのもさ」


神楽「おいコラァァァァ! ぶっとばすぞネバネバァァァァァ!」


凛「だから私への態度だけ、なんでそんなカンジィィィィィ!?」

■■「……でも、神楽ちゃんが来てくれて良かったわ」

卯月「はいっ! 久々に、皆が明るくなった気がします!……あっ」

CPアイドル達「……」


神楽「? どうしたアルか? 卯月ちゃんが空気読めない事言ったアルか?」

神楽「普通っぽく見える子に限って、急に変なこと言ったりするアルからな」

神楽「そういう時は美味しいものでも食べれば良いネ!」

神楽「Jリーグカレーを食べたら、個性的なサッカー選手にもなれるアル!」


未央「いやー、なんか最近プロデューサーが元気なくてさ」

アーニャ「ダー……とても心配ですね?」

智絵里「皆、それが気になってて……えへへ」


神楽「何アルか、アイツめ!」

神楽「アイドルを笑顔にするのが仕事なのに、心配させてどうするアル!」

神楽「そんなんじゃ駄目ネ! 私がガツンと言ってやるヨ!」

神楽「安心してヨ、皆ー! 私、怖い顔相手でもビビったりしないアル!」


李衣菜「べ、別に顔が怖いから言えないんじゃなくてさ」

莉嘉「心配で、Pクンにも聞いたりしたんだよ? でも……」

みりあ「……うん、大丈夫です、ってそれしか言ってくれなくて」

杏「そういう風に言われたらさ、何も言えなくなっちゃうよねぇ」


神楽「あっ、それ私知ってるアル」


CPアイドル達「えっ?」


神楽「ウチの銀ちゃんも、たまにそういう事言ったりするアル」

神楽「そういう時は、大体自分一人で格好つけて何かしようとしてる時ネ」

神楽「男って、本当バカな生き物アルからな」

神楽「女には心配かけさせたくないって、そういう無駄な努力をするアル」

神楽「こっちはとっくに勘付いてるって言うのに。だから意味ないのにネ」


CPアイドル達「……」


神楽「姉御が言ってたアル。そういう時は、気付かないフリをしてやるもんだ、って」

神楽「それが、いい女の条件だ、って。だから、気にしないのが正解アル」


CPアイドル達「……」

■■「気にしないフリ、かぁ」

未央「だったらさ、皆でお芝居するしかないね!」

卯月「未央ちゃん、舞台の仕事もやってるから得意ですもんね♪」


未央「――そう! 私達は、彼を信じて待ち続けるの!」ビシッ!

未央「そして、笑顔で出迎えてあげるんだわ!」ビシッ!


CPアイドル達「あはははっ!」


神楽「その意気アル! アイツ、見るからに笑顔が下手そうアルからな」

神楽「その分、こっちが笑ってやるネ。笑顔にしてやるネ」

神楽「あの顔で笑ったらえらい事になりそうだけど、許してやるアル」

神楽「こっちは数で対抗するアル! 皆、負けたら承知しないアル!」


きらり「うぇへへ! 神楽ちゃんはぁ、と~っても優しいにぃ☆」

ぎゅううっ!

神楽「ぐええ!? つ、強く抱きしめすぎアル!」


凛「もっと強く抱きしめて良いよ」ニヤァ


神楽「おいコラァァァァァ! 今の顔、忘れないからなァァァァァ!」

神楽「ぐえええええっ!?」


  ・  ・  ・


銀時「――なあ、今なんかカエルが潰れたような声が聞こえなかったか?」

銀時「メメタァ、って感じじゃなく、もっとこう、命がやばい的な声が」

土方「気のせいだろ。そんなことより、これからどうすんだ」


武内P「……申し訳ありません。全て、私の責任です」

武内P「かくなる上は、辞表を提出して――」


銀時「そんな事したって何の意味もねえよ」

土方「コイツの言う通りだ。そんなもんで、あの御方は止まらねえ」


マストレ「はいっ、そこでターン!」

茂茂「――ふっ!」

ぎゅわああっ!

マストレ「ナイスブレイクダンス! 物凄い上達ぶりだぞ!」


銀時・土方・武内P「……」

  ・  ・  ・
屋上


銀時「はああああ! つっかれた!」

銀時「いつまで続けなきゃいけねえんだ、この芝居はよぉ!」

銀時「俺だって若くないんだから。踊るのは織○裕二だけで十分だから」

土方「○田裕二だってそんなに若くねえよ、頑張ってるけれども」

土方「いつまでかなんて、俺が知るか。将軍様が飽きるまでだよ」


武内P「飽きる可能性は……とても低いと思います」

武内P「将ちゃんさんの輝きは、とても素晴らしいものでしたから」


銀時・土方「……ああ、そう」


新八「それにしても、346プロダクションも男性アイドル部門を立ち上げるんですね」

銀時「なんだ、居たのか新八。俺はてっきり、ベソかいて帰ったと思ってたぞ」

新八「途中からずっといましたよ。それに、帰るにしてもベソなんかかかねーわ」


武内P「……男性アイドル部門は、はい」

武内P「役人の方からの指示で、どうしても設立しろ、と……」


土方「おい、ちょっと待て。どうして役人がそんな事まで口出ししてくるんだ」

土方「それに、なんでアンタらはそれに素直に従わなきゃならない」


武内P「それは……申し訳ありません、部外者の方には」


銀時「なんでぇ、だったら、俺たちに喋っても問題ねえな」

銀時「今の俺は――アイドル、銀ちゃんだからな! フゥー!」

土方「……ったく、厄介な話になりそうだが、気になっちまったもんは仕方ねえ」

土方「アイドル、トシちゃんです! ワァーオ!」

新八「僕も気になっちゃいました。良いですよね、一人くらい部外者がいたって」


武内P「坂田さん……土方さん……眼鏡」


新八「アンタ、部外者だからってマジで容赦ねえな」

新八「なんだ眼鏡って。せめて‘さん’位付けて下さいよ、お願いしますよ」

銀時「オラ、うっせーぞ眼鏡」

土方「そうだぞ眼鏡、話が進まねぇ」

新八「いや、アンタらは普段名前で呼んでるじゃないですか!」

新八「なんだ急に眼鏡呼ばわりして! しまいにゃコンタクトにすんぞコラァァァァァ!」

武内P「そうですね……」

武内P「当事者になった皆さんには、お話しておこうと思います」


武内P「元々、346プロダクションは男性アイドル方向には手を出さないつもりでした」

武内P「男性アイドルを専門とする、315プロさんも力を付けていますし」

武内P「今から参入するには、かなり厳しい問題が山積みになっています」

武内P「バンナム的にも、稼ぎになりませんし」


新八「いや、そりゃそうだけども。バンナムとか言ったら駄目でしょうが」


武内P「……しかし、どうしても男性アイドル部門を設立しろとの、圧力が」

武内P「そうしなければ、芸能界に働きかけ、ウチに仕事を回さないようにする、と」


新八「そんなっ!? そんなの、許されませんよ!」

新八「アイドル人たちが頑張ってるのに、それを横から邪魔するなんて!」


武内P「……しかし、従うしかありませんでした」

武内P「なので、他の事務所に所属していない方をスカウトしていたのです」


新八「全く、なんて役人だ! そんな無茶苦茶を言うだなんて!」

新八「一体、どこの誰なんですか!? そのバカ役人は!」


武内P「悪田遺憾、という――」



「アァァァァァ!! 痛い痛いィィィィィ!」



武内P・新八「!?」


銀時「なんだか盗み聞きしてたから、とりあえず捕まえておいたぞ」

土方「コイツからは悪人の匂いが嫌って程するからな、少々強引な形にした」

銀時「トドメだ――ッ!」

銀時・土方「ケンタウロス殺法ッ!」

銀時・土方「昇技! トライアングル・ドリーマ――ッ!」


悪田「ウギャアアア――ッ!?」


武内P「――……そこの、バカ役人です」

誤)>新八「アイドル人たちが頑張ってるのに、それを横から邪魔するなんて!」

正)>新八「アイドルの人達が頑張ってるのに、それを横から邪魔するなんて!」

  ・  ・  ・

悪田「全く、何て奴らだ!」

悪田「お前たちがアイドル候補だぁ? フン、笑わせるな!」


銀時「こっちだって好きで候補になった訳じゃねえよ」

銀時「武内くんが困ってたから、先輩として付き合っただけだっつの」

土方「俺だって、松平のおっさんに言われてなきゃここに居ねえ」

土方「チッ、こんな事になるなら総悟に押し付けておくんだったぜ」


悪田「そんな軽い気持ちで、アイドルが務まるか!」

悪田「……プロデューサーくん? これはどういう事かね?」


武内P「……申し訳、ありません」

新八「プロデューサーさんが謝る事ないですよ!」

新八「元々、無茶を言ってるのはこの人の方なんですから!」


悪田「黙れ! 部外眼鏡はすっこんでいろ!」


新八「お前も眼鏡扱いか! ってか、部外眼鏡って何!?」


悪田「ふふふ……やはり、男性アイドル部門の設立は無理なようだねぇ」

悪田「これからの参入では、346プロダクションも損失を生むだけだ」


武内P「……」


悪田「そこで、キミに一つ提案を持ってきた!」

悪田「それを受け入れれば、今後346プロダクションには手を出さないと約束しよう!」


武内P「! 本当、ですか?」

銀時「真面目に聞くなよ武内くん。どうせロクでもない事に決まってんだ」

土方「こういう時の提案ってのは、クソみたいなもんだって相場で決まってるからな」

新八「だけど、こんな状況でする提案って……」


悪田「キミが、私の元へ来れば良い。この意味がわかるかね?」


武内P「! それは……!」


新八「……」

新八「えっ? ちょっと待ってください、えっ?」

新八「ええええええええっ!?」

銀時「……あの野郎、武内くんの超絶トゥエクニィックを知ってやがったのか」


土方「待てコラ! なんだその超絶トゥエクニィックってのは!?」


銀時「彼にかかれば、どんな屈強な男でも形無しってこった」

銀時「俺もやりあった時は驚いたぜ。あの超絶トゥエクニィックには」


新八「あの、そのトゥエクニィックってのやめませんか、イラッとするんで」

新八「っていうか、そもそもやりあったって!?」


銀時「危うく俺も天国への階段を登りそうになったがな」

銀時「紙一重の差で、なんとかなった。本当に、紙一重だった」


新八「ちょっとォォォォォ!? 何言ってんですか銀さん!?」

新八「いくらそっち方面に人気があるからって、自分でそっちに行っちゃ駄目ですよ!」

土方「そうだぞ、このテンパ頭! そっちに行くな、考え直せ!」

土方「っていうか、お前がそっちに行ったら俺まで巻き込まれんだよ! ふざけんな!」


銀時「しょうがねえだろ、事実なんだから」

銀時「結局そのあとなんやかんやあって、スマブラをきっかけに仲良くなったんだ」

銀時「いやー、本当に、ゲームって素晴らしいものですね」

銀時「さよなら、さよなら、さよなら」

新八・土方「じゃねえだろォォォォォ!!」



悪田「さて、バカ共は放っておいて……どうするね?」


武内P「……本当に、346プロダクションには手を出さないのでしょうか?」


悪田「私は約束を守る。卑怯な手は使うがね」


武内P「……わかりました。その話、お受けします」


悪田「ぐふふふふっ! キミならそう言うと思ったよ!」

悪田「私のために存分にふるって貰うよ、キミの超絶トゥエクニィックを!」


武内P「……」


銀時・土方・新八「……」

ゲームしてきます

  ・  ・  ・

ガチャッ!

ちひろ「――皆、大変よっ!」


CPアイドル達「えっ?」

神楽「何アルか? もしかして、ガチャの本当の排出率がバレたあるか?」


ちひろ「ううん、そっちは大丈夫。バレたらもっと大変だもの」

ちひろ「それより大変じゃないけど、大変大変なの!」


■■「変態だなんて、もう! ■■、そろそろ怒っちゃいますよ!」

アーニャ「ニェート、いけません■■。話が、アー、進みませんね?」

■■「……そうね、もうすぐAパートも終わるし、■■っと■■ましょ!」

未央「そんなに慌てるなんて珍しいね、何があったの?」


ちひろ「プロデューサーさんが、辞表を提出して消えちゃったのよ!」


CPアイドル達「ええっ!? どうして!?」

ちひろ「それが、理由は一切話してくれなくて……!」

CPアイドル達「そんな……!」

卯月「連絡はとれないんですか!?」

ちひろ「まるで繋がらないの……もう、どうしたら良いか……」

CPアイドル達「そんな……」


銀時「――なんでぇなんでぇ、ドアが開きっぱなしじゃねえか」

銀時「開けたら閉める、こんなの当たり前だよ」

銀時「お母さんに言われてたでしょ、全くもうやんなっちゃうわ、って」


神楽「銀ちゃん! これは、一体どういうことアルか!」

銀時「俺に言うんじゃねえよ。武内くんが決めた事だろ」

銀時「男が黙って行ったんだ、その心意気を汲んでやろうじゃねえか」

銀時「わかったらホラ、帰るぞ神楽」

神楽「こんな状況で帰れる訳ないアル! 見損なうなよ、テンパ頭!」


銀時「……こっからは、‘俺たちとこの子達は無関係’」


銀時「これだけ言えば、十分だろ」ニヤァッ

https://www.youtube.com/watch?v=mymQAtZAXbM

  ・  ・  ・
屋敷 一室


武内P「……」


悪田「いやいや、よく来てくれたねぇ! 歓迎するよ!」

悪田「キミはプロデュースなどしていて良い人間ではない!」

悪田「超絶トゥエクニィックをふるってこそだ! ぐふふふふっ!」


武内P「……そうすれば、346プロダクションには――」

武内P「――彼女達には、手を出さないと約束してくれるのでしたら」

武内P「私は……また、この手を汚す事も厭いません」


悪田「ぐふふふふっ! いい心がけじゃあないか!」

悪田「それでは早速――」



「大変だーっ! 侵入者! 侵入者だーっ!!」



悪田「何っ!? この屋敷には、無数の兵が居るのだぞ!?」

悪田「それなのに……一体、何者だ!?」


バァンンッ!


悪田「だ、誰だっ!?」

武内P「あ、貴方……いや、貴方達はっ!?」



銀時・新八・神楽「ちぃーっす、お届け物にあがりましたー」

銀時・新八・神楽「はい、スマイル三丁!」ニヤァッ



武内P「そんな……一体、どうしてここに!?」

武内P「これ以上迷惑をかける訳にはいかないと、私は……!」


神楽「何言ってるアルか! お前は私をスカウトしたアル!」

神楽「それなのに途中で放り出すなんて、その方がよっぽど迷惑ネ!」

新八「そうですよ、プロデューサーさん。もう、後戻りは出来ませんからね」

新八「シンデレラプロジェクトとお通ちゃんの合同LIVEとか面白そうじゃないですか?」


武内P「……!」

銀時「武内くん、キミは相っ変わらずどこか抜けてるねぇ!」

銀時「狙ってやってるとしたらあざといよ、あざとすぎるよ」

銀時「今時ドジっ子なんて流行ると思う? いや、逆にアリか?」

銀時「そこんトコ、プロデューサーとしてどう思う?」


武内P「……坂田さん。巻き込んでしまって、申し訳ありませんでした」

武内P「ですが……もう、十分です。彼女達に、夢を見させて貰いましたから」

武内P「だから……私は、もう……!」


銀時「はっ! それが十分だって満足してる奴のツラかよ!」

銀時「不器用だけど、真面目で、誠実」

銀時「そんな男が、そんなシケたツラで――」


武内P「……!」


銀時「――まだまだ足りない、もっと夢を見たいって目をしてたらよ」

銀時「先輩としちゃあ、その夢の手伝いをしてやらなきゃいかんと思うわけ」

銀時「本当は見てえんだろ?」

銀時「シンデレラプロジェクトと、夢の続き、終わらない物語ってやつをよ」


武内P「ですが……私が戻っては、彼女達に迷惑をかけてしまいます」

武内P「彼女達の歩く足を引っ張る事になってしまいます……!」


銀時「何バカな事言ってんだ。そんなの、十分わかってるぜ、あの子らは」


武内P「……えっ?」


銀時「だから――」

神楽「そう! だから――」

新八「だからこそ、僕達は――」


  ・  ・  ・


銀時『武内くんを連れ戻して来いだぁ? 何言ってんだ、お前ら!』

銀時『人がせっかくいい感じに無関係だって言ってやってんのによ!』


CPアイドル達『お願いします!』


銀時『……やれやれ、どうしようもねえな。本っ当、どうしようもねえ!』


  ・  ・  ・


銀時・新八・神楽「そんなバカなプロデューサーとアイドルのために!」

銀時・新八・神楽「万屋は、ここに居るッ!!」

銀時「バカなプロデューサーを持つと、アイドルもバカになっちまうのかねぇ」

銀時「その点、ウチは違うよ。だって、コイツら元々バカだもん」

新八「何言ってんですか、バカの大元締めのくせに」

神楽「バカ二人が何か言ってるネ。これだから私が苦労するアル」


武内P「皆さん……私は……!」


悪田「ええい! 何を言ってる!」

悪田「者共! とっととコイツらをつまみ出せ!」

悪田「抵抗するようなら、殺しても構わんッ!」


雑兵達「……!」

ザザザザザザザザッ……!


銀時「おーおー、本性を表しやがったな」

新八「ぎ、銀さん!? ちょっと、物凄い数が居るんですけど!?」

神楽「関係無いアル! ビビってんじゃねーぞ、新八ィ!」


武内P「私は……彼女達の所に、戻っても良いのでしょうか」


銀時「それは俺たちが決める事じゃねえ」

銀時「テメエ自身の――」

とんとんっ

銀時「――‘ここ’に聞いてみりゃ良い」

銀時「まっ、もうとっくに答えは出てんだろうけどな」


武内P「……坂田さん」


悪田「何をグズグズしている! かかれ! かかれえええっ!!」

雑兵達「うおおおおっ!」

ザザザザザザザザッ!


新八「来ますよ銀さん! って銀さん!? あの、ちょっと!?」

神楽「何してるアルか銀ちゃん!?」

銀時「焦るなって。今から、わかっちゃいるが答え合わせの時間だからよ」

新八・神楽「――えっ?」



武内P「……」ニヤアァッ



一同「!?」

雑兵A「な……なんて不気味な笑顔――」

スコンッ!

雑兵A「――何か、頭に刺さって……名刺……?」

…ドサッ!


武内P「……」ニヤアアッ


雑兵達「な、何が……!?」

ザワザワッ!


銀時「おー! 相変わらず凄いね、武内くんの超絶トゥエクニィックは!」

新八「えっ、ちょっ、待ってください! 今の、プロデューサーさんが!?」

神楽「説明するアル、銀ちゃん! 何ネ、アイツ、一体何者アルか!?」

銀時「えっ? お前達、最初に言ってたじゃん? もう忘れたの?」

新八・神楽「えっ?」


武内P「……」ニヤアアッ

ヒュンッ――

――カカカカカッ!

雑兵B~F「……ぐあっ!?」

…ドサッ!


銀時「武内くん、超絶トゥエクニィックを持った凄腕の暗殺者だ、って」

銀時「今は元が付くけど、その腕は衰えてねえみたいだな」


新八・神楽「はァァァァァ!?」


銀時「最初は俺を暗殺しに来たんだけどな、紙一重の差で返り討ちにしたわけ」

銀時「んで、低くて渋い良い声をしてたからスカウトしたんだよ」

銀時「それが成功して、なんやかんやあってゲームして仲良くなって」

銀時「俺たちと一緒に戦う後輩になったって、そんなつまんねえ昔話よ」


新八「中の人ネタじゃなくて伏線だったのォォォォォ!?」

神楽「なんやかんやって何アルか!? そこ詳しく教えろヨ!」

銀時「お前ら、そんな悠長に話してる時間はねえぞ」

新八「後で、絶対詳しく説明して貰いますからね!?」

神楽「そうアル! 銀ちゃん、絶対だヨ!」

銀時「……ったく、めんどくせーなー!」


銀時「ほれほれ! 武内くんに遅れず、こっちも暴れるぞオラァァァ!」

新八・神楽「オオォォォォッ!」

  ・  ・  ・

銀時「――さて、後はテメーだけだな」

スッ…


悪田「ひっ!? こ、この私にこんな事をして、ただで済むと思ってるのか!?」

悪田「お前たちなんぞ、私の権力で簡単に潰してやる!」


武内P「……」ニヤアアッ


悪田「アァァァァッッ!? イヤァァァァァッ!?」

ジョワアアアッ…!


神楽「うわっ!? コイツ、ビビってもらしやがったアル!」

新八「いやでも、あの笑顔を向けられたら誰だってそうなると思うよ」

銀時「武内くん、ちょっと一回笑顔やめようか?」


武内P「えっ? 何故ですか、坂田さん?」ニヤアアッ


銀時「うん、だからね、その顔でこっち見るのやめて? 怖いから」

ジワァ…

新八「ちょっとォォォォォ!? アンタ、何やってんですかァァァァァ!?」

銀時「ば、バッカお前、これはちげーよ。これはそういうアレじゃなくて」

銀時「ジュース……そう、ジュース零しちゃっただけだから!」

銀時「あー、やっべ! 帰ったらお母さんに怒られちゃう! 参ったなー!」


神楽「おい、お前」

ジャキッ!


悪田「ひいいいっ!?」


神楽「ここでお前のドタマをぶっ飛ばしたら、権力も何も関係ないアル」

神楽「二度と悪さが出来ないよう、私が遠い世界へ送ってやるネ」


武内P「待ってください、神楽さん」ニヤアアッ


神楽「何でアルか? どうして止めオェェェェェッ!」

オロロロロロッ!


新八「神楽ちゃん!? ちょっと神楽ちゃん、どうしたの!?」

神楽「し……心配無いアル。恐怖でゲロがオェェェェッ!」

オロロロロロッ!

武内P「……神楽さん、貴女が手を汚す必要はありません」

武内P「ここは……私が」

スッ…


悪田「ひいいいっ!?」


銀時「やめとけやめとけ、そんな事する必要はねえよ」

銀時「それに、手を汚しちまったら困るだろうが」

銀時「それとも何か? 汚れた手で、あの子達の手を引いて歩くのか?」


武内P「しかし……他に、方法が」


新八「もう! 忘れたの神楽ちゃん! テンション上がりすぎだよ!」

神楽「あっ、思い出したアル!」

神楽「コイツがムカつく顔してたから、すっかり忘れてたネ!」

銀時「しっかりしてくれよ。バカの上に物覚えが悪いなんて救えねえにも程があらぁ」

新八・神楽「お前が言うなよ!」


武内P「何を言って――」



『御用改めであるッ!!』

『この屋敷は完全に包囲した! わかったらとっととお縄につきやがれ!』

『副長、面倒なんで、一発ぶっ放しても良いですかね?』

『駄目に決まってんだろうが!』

『……ってオイ、何で俺に向けてぶっ放そうとしてんだ!?』

『そんなの決まってまさぁ。コレがないと締まりやせんぜ、副長』

『やめろォォォォォ! せめて名前が表記される形で――』

ドオオォォォォンッ!!



武内P「……!」


銀時「……はー、何をやってんだ、あのバカ共は」

銀時「全く、バカしかいやがらねえのか、この話にはよ」

銀時「あ、勿論俺は除くけどね」

悪田「そんな……!? 何故、真選組が……!?」



茂茂「――悪田、お前の悪行は全てわかっている」


茂茂「かねてより、お前の黒い噂が耳に入ってきていてな」


茂茂「片栗虎に調べて貰っていたのだが……噂は本当だったようだ」


茂茂「……観念しろ。もう、お前が非道を行うのは見過ごせん」




悪田「……しょ……しょ」

悪田「将軍かよォォォォォォ!!?」


武内P「そ、それでは……?」


銀時「そ、それではぁ? じゃねえぞ、プロデューサー!」

銀時「こんな所で油を売ってる暇があったら、営業の一つでもして来いってんだ!」

新八「そうですよ! 皆、貴方の事を待ってるんですから!」

新八「後のことは、僕たちに任せて下さい!」


武内P「皆さん……!」


神楽「あ、悪いケド、私はアイドルはやめとくアル」

神楽「シンデレラプロジェクトの皆と遊ぶのは楽しいけど……」

神楽「――やっぱり、私は万屋の方が合ってるアル!」


武内P「神楽さん……」


神楽「だけど……また、遊びに行っても良い?」


武内P「……ええ、勿論です」


神楽「本当!? やったアル! 友達が沢山増えたネ!」ニコニコッ


武内P「スカウトが失敗したのは残念ですが……」

武内P「……良い、笑顔です」ニコリ


銀時「……へっ、なんでぇ」


銀時「お前も、良い笑顔が出来るようになったじゃねえか」

  ・  ・  ・

https://www.youtube.com/watch?v=KpM6xNAgRoI


  ・  ・  ・


銀時「……」

たぷたぷ


新八「ちょっと銀さん、ゲームばっかりしてないで掃除位手伝ってくださいよ」

新八「仕事は無いのは仕方ないですけど、出来る事はあるじゃないですか」


銀時「……うるせーなー、お前は俺のオカンかっての」

たぷたぷ

銀時「あークソッ、お前が話しかけるからミスっちまったじゃねえか」


新八「全く、よく飽きもせずずっとゲーム出来ますよね」

新八「僕なんだか逆に関心してきちゃいましたよ」


銀時「ゲームに飽きる? バカ言ってんじゃねえぞ、新八」

銀時「男ってのはな、いつまでも少年の心を持ち続けてるもんなんだよ」

銀時「少年がゲームをやるのなんて当たり前の事だよ?」

銀時「少年が、少年ジャンプを読む位当たり前の事なんだよ」

銀時「当たり前の事を当たり前にする。これで大抵の事は上手くいくんだよ」


新八「あの、だったら掃除も当たり前の事だと思うんですけど」


銀時「掃除をしないのも、また少年にとっても当たり前だぞ、新八くん」

新八「ただの駄目なクソガキじゃねーか!」

新八「全国の少年を巻き込むんじゃねえよ! この駄目人間が!」


銀時「はー、ったくゴチャゴチャうるせえなぁ」

銀時「そういや、神楽の奴はどこ行った」


新八「誤魔化さないでくださいよ!」

新八「神楽ちゃんなら、また‘あそこ’に遊びに行ってます」


銀時「アイツも飽きないねぇ、本当」

銀時「……うし、こういう時にする事は決まってんだ!」


新八「……何するつもりですか?」


銀時「決まってんだろ!」

銀時「ガシャを回すんだよ! ガシャを!」


銀時「来いよォォォォォ! SSRゥゥゥゥゥ!!」



  俺の出来る枕営業は、かっちかちに硬い腕枕だけだ


 

おわり

くっそ面倒だったのでもう二度と銀魂書きたくないですね!
寝ます
おやすみなさい


「……」


 辛い物を食べた翌日のトイレは、辛い……からい、つらい。
 唐辛子の成分が、去り際に出口を痛めつけて行く。
 彼女は、今、まさにそれに苦しんでいるのだろう。


「ヒリヒリする」


 ――無。


 感情表現が豊かで、コロコロと表情の変わる彼女は、とても魅力的なアイドルだ。


「おしり、ヒリヒリする」


 ――だが、無。


 感情、表情……そして、未来すら、何一つ感じられない。
 全てを飲み込む闇とはまた違う、只々、虚ろなだけのモノ。
 カプサイシンがもたらした結果を報告するだけの、ただそれだけのモノ。
 アイドルとは、いや、今の彼女を人と呼んでもいいのかすら怪しい。


「ヒリヒリする」


 動かない、動こうとしない。
 彼女は、これからどうしたいのか。
 それがわからなくて、はい、イライラします。


「聞いて」


 頭を抱えようと思った次の瞬間、彼女は今まで口にしていなかった言葉を紡ぎ出した。


「ここだけの話」


 当然、ここだけの話にするつもりです。
 アイドルの方が寝グソをしたなど……到底、他の人間に知られてはなりませんから。
 貴女は、何を私に伝えようというのですか?


「夢のような続きを~♪」


 歌っている場合ではないです!
 そう、叫びたかったが、しなかった。
 この異臭のする空間で、大口を開けたくはなかったからだ。

>アイドルの方が寝グソをしたなど……到底、他の人間に知られてはなりませんから。

>アイドルの方が寝グソをしたなど……絶対、他の人間に知られてはなりませんから。


「っ……」


 幸い、このホテルは346グループの系列のホテルだ。
 彼女が寝グソをしてしまったという情報が漏れる可能性は、低い。
 いや、漏れてはしまっているが。
 なので、今解決すべき問題は、今の彼女の状態だ。


「ヒリヒリする」


 感情の無い瞳で見上げる天井には、何が見えているのか。
 私が彼女に見て欲しいのは、現実。
 ただ、その一点だけ。
 ……嗚呼、それだけなのに、何故彼女は――


「おしり、ヒリヒリする」


 その目をこちらに向けてきたのか。
 泣くでも、喚くでもなく、淡々と吐き出されていく、おしりがヒリヒリするという事実。
 ……これは、もう、私一人の手には負えないのではないか?
 ホテルの入り口の待合所で待っている、二人を呼んだ方が良いのではないか?


「……」


 いいや、それは駄目だ。
 こんな事が知られてしまっては、彼女のお腹だけでなく、心が壊れてしまう。


「ヒリヒリする」


 既に、彼女の心は半ば壊れてしまっている。
 それに飲み込まれる事無く、速やかに事態の解決を図らなければならない。
 そのためには、上着は邪魔だ。
 シャツも、ネクタイも必要ない。


「……」


 脱いだそれらをクローゼットのハンガーにかける。
 準備は……整った。


「ヒリヒリする」


 浴室の扉を開け、中からバスタオルを持ち出す。
 未使用のそれは、真っ白で、汚れ一つ無い。
 彼には、犠牲になってもらいます。
 床にしかれたカーペットが汚れるよりは、遥かにマシですから。


「下を……脱いで頂けますか」


 汚れたパジャマを着たまま浴室に移動は出来ない。
 そんな事をしては、パジャマから悲しみが滴り落ちてしまう。
 それを避けるために、服を脱いで欲しいと言った。
 アイドルである彼女に対し言う言葉ではないが、そうも言っていられる状況ではない。



「えっち」



 ……えっ?


「あの……今、何と?」


 何かの聞き間違いだろう。
 そんな事を言っていられる状況では――



「えっち」



 ――何ということだ。
 彼女には、まだ現実が見えていないのか。
 まだ逃げ続けようというのか、この状況から。


「……わかりました。それでは、失礼します」


 でしたら、私もここで失礼させていただきます。


「……ヒリヒリする」


 クローゼットへと向かう。
 扉を開け、中から上着とシャツを取り出した。


「ヒリヒリする。おしり、ヒリヒリする」


 シャツを着て、ネクタイを締める。
 その間にも、絶え間なく投げつけられる、声。
 私は、それを一切意に介す事なく、上着を羽織った。


「ヒリヒリ、ヒリヒリ!」


 部屋の出口に居る私に届かせるため、彼女の声が大きくなった。
 だが、彼女のヒリヒリするという報告は耳に入っても、心には届かない。
 また「えっち」と言われたら、正直、怒りを抑える自信がありません。
 ドアノブに、手をかけた。



「……――助けて」



 小さい、小さいつぶやき。
 だが、そのつぶやきは、確かに私に届いた。
 私は、プロデューサーだ。
 担当でないとは言え、助けを求めるアイドルの声を無視出来ない。


「はい、わかりました」


 踵を返し、再びクローゼットへ向かい、上着とシャツをかけた。
 そして、彼女へ歩み寄り、


「少し、強引な手段を取らせていただきます」


 と、声をかけた。


「……」


 彼女は、その言葉を聞き、無言で頷いた。
 そして、両の手で顔を隠した。
 あくまでも自分では脱がないと、そう、受け取りました。


「……」


 私は、そんな彼女に――脇に落ちていた、掛け布団をかけた。


「えっ?」


 その突然の柔らかな感触に、戸惑いの声があがった。
 しかし、そんな声に反応するのは、もうやめにします。


「……」


 そのまま掛け布団で、彼女の体をグルグルと簀巻きにしていく。


「はっ? えっ? う――わっ!?」
「……」


 掛け布団で簀巻きになった彼女を抱え、浴室へと向かう。
 お姫様抱っこ……と、言うよりも、大物だぜ、という感じですね。
 浴室の前に辿り着き、簀巻きを縦に降ろし、彼女を浴室内に立たせる。
 これで、第一段階は終了だ。


「先に、シャワーを浴びて下さい」


 そう言って、浴室のドアを閉めた。
 はじめから、こうしておけば良かった。
 やはり、最終的に頼れるのは、己の力だという事が証明された。


「……あはは、なんか今の言い方、やらしい感じがするな」


 状況が先に進み未来が見えた事で、彼女は少しだが、普段の調子を取り戻したようだ。
 これなら、もう問題は無いだろう。
 ひりつくような痛みに耐える必要は、もう無い。
 ポケットから携帯電話を取り出し、電話をかける――出た。


「もしもし」


 後は、二人に任せよう。
 そして、事が済んだら、ハッキリと言おう。
 辛い仕事は、もうゴメンだ、と。



おわり

気付いたらウンコたまってました
寝ます
おやすみなさい

歌詞違うのはわざと?

>>208
一回間違って覚えると、無意識だとそっちが出ちゃうアレ的なそれです


×らんま


武内P「アイドルに、興味はありませんか?」あかね「はいっ?」

あかね「アイドルって……あたしがですか!?」


武内P「はい、貴女です」


あかね「きゅ、急にそんな事言われても~」デレデレ

乱馬「おい、あかね。気をつけろ、コイツなにかたくらんでやがるぞ」

あかね「はっ? 何でそんな事がわかるのよ」


武内P「……」


乱馬「あの顔に加えて、あかねをアイドルにするってのが怪しい」

ぶぎゅる!

あかね「顔はともかく、あたしがスカウトされちゃおかしいっての!?」


武内P「……」

乱馬「いってーな! 何すんだ、この暴力女!」

あかね「ふん! 自業自得じゃない!」


武内P「あの……少し、お時間をいただいても宜しいでしょうか?」


あかね「あっ、すみません!」

乱馬「やめとけって、どうせサギか何かに決まってんだろ」

あかね「……」むー

あかね「良いですよ! そこの喫茶店で、お話聞かせて下さい!」



武内P「はい。ありがとう、ございます」



乱馬「おい、あかね!?」

乱馬「……ちっ! ったく、しょーがねーなー!」

  ・  ・  ・

乱馬・あかね「ほ……本物のプロデューサー……!?」


武内P「シンデレラプロジェクトの、二期生を集めているのです」

武内P「なので、貴女には是非、そのメンバーに加わって頂きたいと……」


あかね「シンデレラプロジェクト……って、‘あの’!?」

乱馬「はー! アンタ、その見た目でかなり優秀なんだな」

あかね「ちょっと乱馬!? いい加減失礼でしょ!」

乱馬「へいへい」


武内P「あの……お名前を聞いても?」


あかね「あかね……天道あかねです」


武内P「申し訳ありません。この話はなかったことに……」


乱馬・あかね「はっ!?」

あかね「あのっ!? どうして名前を聞いただけで!?」

乱馬「ホラ見ろ、からかわれたんだよ」

あかね「乱馬は黙ってて!」


武内P「待ってください! 決して、からかったわけでは!」


あかね「だったら、どうして!」


武内P「……既に、346プロダクションには、日野茜さんが在籍しています」

武内P「なので……」すちゃっ


乱馬・あかね「……マイク?」


武内P『あかね、という名前の方が二人になってしまうのでーす!』『でーす!』『でーす!』


乱馬・あかね「……はあ」きーん

武内P「……申し訳ありません、天道さん」


あかね「い、いえ……」

乱馬「残念だったなー、あかね! アイドルになれなくて――」


ウェイトレス「ああっ! つまずいて水をこぼしてしまったわー!」


らんま「ぶわっ! 冷てっ!?」

あかね「ちょっと、大丈夫?」

らんま「……まー、いつもの事っちゃいつもの事だからな」


武内P「アイドルに、今日にはありませんか?」


らんま・あかね「……」

らんま・あかね「は?」


https://www.youtube.com/watch?v=8GTRFbeJpms

誤)武内P「アイドルに、今日にはありませんか?」

正)武内P「アイドルに、興味はありませんか?」



  スカウトマンは無口なプロデューサー!

 

あかね「いや、ちょっと待ってください!」

あかね「さっきまで、男の姿を見てたでしょ!?」

らんま「それなのにスカウトって、アンタなぁ……」


武内P「笑顔です」


らんま・あかね「は?」


武内P「貴女の笑顔が見たいと、そう、思いました」


あかね「……」

らんま「だーめだ。まるで聞いちゃいねえ」


武内P「お名前を伺っても、よろしいでしょうか?」


あかね「……なんか、あたしの時より聞き方が丁寧な気がするんだけど」

らんま「しゃーねーなー!」

らんま「無差別格闘早乙女流、早乙女乱馬だ!」

らんま「だけどな、おれはアイドルになんかならねーからな!」


武内P「待ってください! せめて、名刺だけでも!」

武内P「無差別格闘早乙女流さん!」


らんま「そりゃ、おれ流派の名前だ!」

らんま「乱馬だよ! 早乙女乱馬!」


武内P「申し訳ありません、早乙女さん」

武内P「ですが……考えてみてください」

武内P「貴女ならば、きっと、トップアイドルになれると、私は思います」


らんま「そ、そーか?」

らんま「いやー、確かに? 女のおれは可愛いし巨乳だけども?」

あかね「……」

武内P「お願いします」

武内P「ルックス、スタイル、共に申し分ありません」

武内P「それに、流派という事は……体を動かすのも?」


らんま「そりゃまー、得意だけどよ」


武内P「! 本当ですか!?」


らんま「お、おう」


武内P「歌は……歌の方は、いかかですか!?」


らんま「まあ、結構自信があるな!」


武内P「……」すちゃっ

武内P『お願いします! どうか、アイドルになってください!』『さーい!』『さーい!』


らんま「うるせーからそれやめろ!」きーん

武内P「早乙女さん、お願いします!」

武内P「どうか、シンデレラプロジェクトの二期生に!」


あかね「……」

ばしゃっ!

乱馬「あいちちちちち!」

乱馬「おい、あかね! いきなり何すんだ!?」

あかね「でも、乱馬はお湯をかぶると男になっちゃうんですよ?」

あかね「それでも良いんですか?」


武内P「あの……」

武内P「お湯をかぶる、という状況は滅多にないのでは?」


乱馬・あかね「……」

乱馬・あかね「た、確かに普通はそうだ……!?」

武内P「お願いします、早乙女さん!」


乱馬「あのなあ、だからおれは――」

あかね「……良いんじゃない? アイドルにでも何でもなっちゃえば」

乱馬「はあ!? どうしてそうなる!」

あかね「何よ、さっきはちょっとノリ気だった癖に」

あかね「女の姿を褒められたからって、デレデレしちゃって」

乱馬「デレデレなんてしてねえ!」


武内P『お願いします、早乙女さーん!!』


乱馬・あかね「……!」きーん

  ・  ・  ・

早雲「……なるほどねぇ、そんな事が」

なびき「良いんじゃない、アイドル。なっちゃえば」


乱馬「他人事だと思って、テキトー言うな!」


なびき「どうせ暇なんだしさ、お金も稼げるし良いじゃないの」

玄馬「乱馬! お前は何を考えている!」

乱馬「アイドルになんか、なるつもりねーっての!」


玄馬「プロデュースは任せろ! 儲けは七対三でどうだ!」


乱馬「ややこしくなるから黙ってろ!」

ばしゃっ!

パンダ『何をする!』


武内P「早速、お話をさせていただいてもよろしいでしょうか?」


あかね「……全然動じないんですね」

乱馬・パンダ「……!」

わちゃわちゃ


武内P「ご家族の方からも、早乙女さんを説得していただきたいのです」


早雲「う~ん、しかしねぇ」

なびき「父親だったら、そこに居るわよ」


武内P「そこ、ですか?」


パンダ『どうも! 父です』


武内P「……」

武内P「聞けば、早乙女さんは、天道さん宅に居候中の身、だと」

武内P「なので、天道さん達からも、是非説得していただきたいのです」


パンダ『おーい、もしもーし』


あかね「……全っ然目もくれない」

武内P「お願いします、どうか」


早雲「……お話はわかりました」

早雲「ですが、乱馬くんは修行中の身」

早雲「アイドルと、修行は両立出来ますかな?」ぎろり


武内P「スケジュールを調整し、支障の無いようにします」

武内P「勿論、学業の方もおろそかにならないように」


早雲「……なんて言えば良いと思う?」

あかね「お父さん!?」

早雲「だって、しっかりしてそうなんだもん……!」

あかね「頑張ってお父さん! 説得されちゃ駄目!」

早雲「う、うむ……ゴホン!」


早雲「そのお話、信じても?」ぎろり


武内P「はい。私を信じて下さい」ぎろり


早雲「……」

早雲「……ううっ、怖いよう、顔怖いよう」しくしく

あかね「お……お父さん……!」

乱馬「あのなあ! おれはアイドルになんかならねーぞ!」

乱馬「いくら周りがなんて言ったってだな――」

パンダ『隙あり!』

ベシッ!


ジャボーンッ!

らんま「……こんに゙ゃろ゙う! 汚え゙ぞ!」


武内P「では……どうすれば、アイドルになっていただけますか?」


らんま「あん? どうすれば?」


武内P「はい、私は貴女を諦める気はありません」

武内P「なんとしてでも、シンデレラプロジェクトの二期生に加わって頂きたいのです」


一同「なんて熱意……!」じ~ん

らんま「おいお前ら! ちょっとほだされてんじゃねーぞ!」

らんま「なんとしてでも、ねぇ」


武内P「はい。何としてでも、です」


らんま「おもしれえ! だったら、おれと勝負しな!」

らんま「おれに勝ったら、アイドルでも何でもやってやらあ!」

らんま「よっ――」

とんっ

らんま「――っと」

すたっ


あかね「ちょっと乱馬!? 何言ってるのよ!」

らんま「しょーがねーだろ。こうでも言わなきゃ引き下がらなさそうなんだから」

なびき「野蛮ねー」

らんま「うるせー!」

らんま「さあて、どうするんだ、プロデューサーさんよ!」


武内P「わかりました」

武内P「貴女にアイドルになっていただくためでしたら、その勝負お受けします」


一同「……はっ!?」

  ・  ・  ・

らんま「良いか? 手加減なんてしねーからな」ばきっ


武内P「はい、わかりました」


あかね「ちょっとお父さん! 二人を止めてよ!」

あかね「乱馬はともかく、プロデューサーさんが怪我しちゃう!」

早雲「いや……それは出来ない」

あかね「どうして?」

早雲「……不甲斐ない父を許してくれ」

あかね「そんな……どうしても、止められないの?」

早雲「だって、本当に顔が怖いんだもん」しくしく

なびき「本当に不甲斐ないわねー」

あかね「お、お父さん……!」


玄馬「それでは、無制限一本勝負!」

玄馬「はじめっ!」

らんま「すぐにカタをつけてやらー!」

だっ!


武内P「……」

ゴゴゴゴゴッ!


らんま「っ!?」

ぴたっ!


なびき「ありゃ? どうして乱馬くんは止まったの?」

あかね「うん……すぐに勝負がつくと思ったのに」

早雲「いや……よく見てみるんだ」


らんま「くっ……!」

ぽたっ…ぽたっ…


あかね「何? どうして、乱馬はあんなに汗をかいてるの?」

早雲「彼の放つ‘気’……‘やる気’に当てられているのだ」

あかね「‘やる気’!?」

玄馬「それも、かなりの熱をもった‘気’だ……!」

あかね「まさか……それが向けられて、あんなに汗を!?」


らんま「……へっ! これは予想外だったぜ……!」

ぽたっ…ぽたっ…

らんま「迂闊に近づくと、何かしてきそうだ……!」

らんま「気が途切れる、一瞬で倒すしかねえ……!」

ぽたっ…ぽたっ…


玄馬「乱馬め、持久戦にするつもりだな」

早雲「しかし、あの汗……どこまで体力が持つか」

あかね「体力と気力の勝負、ってことね……!」

なびき「長くなりそうだから、部屋に戻ってるわね」


武内P「……」


らんま「! 気が消えた!……いや、違う!」

らんま「……罠にハメようったってそうはいかねえぞ!」

ぽたっ…ぽたっ…


武内P「あ、いえ……汗をかいてらっしゃるので、ハンカチを……」

スッ…

らんま「へっ? あ、あんがと。なんだかわりーな」

武内P「いえ、お気になさらず」



早雲「……これは長くなりそうだねぇ」

  ・  ・  ・
一時間後


らんま「……くそっ、一切表情が変わらねえとは……!」

ぽたっ…ぽたっ…!


武内P「……」

ゴゴゴゴゴッ!


らんま「……だが、隙を見せるわけにはいかねえ……!」

ぽたっ…ぽたっ…!


武内P「……」

ゴゴゴゴゴッ!


あかね「乱馬ー、お風呂空いたから入っちゃって―」


らんま「……!」だああーっ!

らんま「おめーなー! こっちは真剣にやってるっつーのに――」

らんま「――しまった! 隙が――!?」


武内P「……」

ゴゴゴゴゴッ!


らんま「……ん? なんで絶交のチャンスに何もしてこねえんだ?」

ぽたっ…ぽたっ…!

誤)>らんま「……ん? なんで絶交のチャンスに何もしてこねえんだ?」

正)>らんま「……ん? なんで絶好のチャンスに何もしてこねえんだ?」

武内P「私は、プロデューサーですから」

武内P「アイドルになっていただこうと言う方に、手は出せません」

ゴゴゴゴゴッ!


らんま「……ほー、なめられたもんだな」

ぽたっ…ぽたっ…


武内P「……それに」

ゴゴゴゴゴッ!


らんま・あかね「?」


武内P「勝負とは……一体、何の勝負なのでしょうか?」

武内P「時間の制限は無いとわかっているのですが……」


らんま「あんた、何の勝負かわからずやってたのか!?」

あかね「……あんたの一人相撲だったみたいね」

らんま「……」

らんま「は……ははははは」

らんま「はははは……はぁ」


武内P「……あまり、よくない笑顔です」


らんま「……わりーけど、こっちゃ無駄に疲れたんだ」

あかね「とりあえず、お風呂入ってきちゃったら?」

らんま「そうさせてもらうわ」


武内P「待ってください! アイドルには――」


ガラッ!


かすみ「失礼します」

かすみ「お客様は、夕食はどうなさる予定ですか?」

かすみ「お決まりでないのでしたら、一緒にいかがですか」


あかね「ほら、晩ごはんの前に、ちゃっちゃと行ってきなさいよ」

らんま「うるせーなー! そうしようと思ってた所だよ!」

らんま「おい! 話はその後で――」


武内P「っ……!」りんごーん! りんごーん!


武内P「アイドルに、興味はありませんか?」


かすみ「はい?」


らんま・あかね「……」

  ・  ・  ・

かすみ「おかわりはありますから、どんどん食べてくださいね」ニコリ

武内P「良い、笑顔です。いただきます」


あかね「なんか、かすみおねーちゃんにビビッときたみたい」

なびき「それで、乱馬くんへの興味が失せちゃったのね」

早雲「いかんぞー! 絶対に許さんからなー!」

なびき「背中に隠れながら言わないでくれる?」

早雲「だ……だって怖いんだもん」


らんま「どうでも良いけど……完全に負けた気分だ」


パンダ『やーいやーい』



おわり

書きます


武内P「つねって欲しい、ですか」

美波「はい、思いっきりお願いします!」

アーニャ「プロデューサー、お願い、です!」

武内P「……もう一度だけ聞きます」

武内P「どこを……つねって欲しい、と?」

美波「乳首です!」

アーニャ「美波は、もう限界、です!」

武内P「……」

武内P「あの……」

美波「お願いします!」

アーニャ「プロデューサー!」

武内P「……何故?」

美波「限界だからです! プロデューサーさん!」

アーニャ「美波……! とっても、かわいそう……!」

武内P「……」

武内P「……」

つねっ

武内P「痛い……夢では、ありませんね」

美波「ひどいです! どうして自分の頬をつねるんですか!?」

アーニャ「ニェート! つねるのは、美波の、アー、乳首です!」

武内P「……お二人とも、そこに正座してください」

美波「正座したら、つねってくれるんですか!?」

アーニャ「ハラショー! やりましたね、美波!」

武内P「違います」

武内P「つねりませんよ」

美波「そんな……騙したんですか!?」

武内P「騙していません」

アーニャ「プロデューサー……ひどい、です……!」

武内P「ひどくありません」

美波「どうして、乳首をつねってくれないんですか!?」

アーニャ「ダー! アー、理由を、教えてください!」

武内P「言わなくては、いけませんか?」

武内P「新田さん、貴女はアイドルです」

美波「はい! プロデューサーさんが担当する、アイドルです!」

アーニャ「だから、アー、乳首をつねらなくては、いけませんね?」

武内P「待ってください」

美波「お願いします……プロデューサーさんしか……!」

アーニャ「美波! もうすこしだけ、頑張って下さい!」

武内P「いえ、つねりませんので」

武内P「あの、何故私が?」

美波「だって、私の担当プロデューサーさんですから!」

アーニャ「ダー! 他に、任せられる人が、いない、です!」

武内P「ご自分でつねられては、いかがですか」

美波「そんなっ……!? どうしても、駄目なんですか……!?」

アーニャ「プロデューサー! お願い、です!」

武内P「……」

武内P「私は、プロデューサーです」

美波「だから、こうして頼んでるんですっ!」

武内P「意味がわかりません」

アーニャ「ニェート……信じられない、です……!」

武内P「私も、これが現実だと信じたくありません」

美波「直接じゃなくても良いんです!」

アーニャ「服の上からでも! お願い、です!」

武内P「……」

武内P「どうしても、ですか」

美波「うっ、えっく……! どうしても、です……!」ポロポロッ

武内P「泣かないでください」

アーニャ「美波……とっても、かわいそう、です……!」ポロポロッ

武内P「泣きたいのはこっちです」

美波「お願いします……乳首をつねってください……!」ポロポロッ

アーニャ「どうか……美波の、アー、乳首を……!」ポロポロッ

武内P「……」

武内P「わかりました、マジックハンドを取ってきます」

  ・  ・  ・

武内P「お待たせしました」

カションッ、カションッ


アーニャ「ニェーット! せめて、手の形の、マジックハンドで!」

美波「良いのよアーニャちゃん! 贅沢は言ってられないもの!」

アーニャ「美波……!」

美波「乳首をつねって貰えるんだもの。それに、変わりは無い……でしょ?」

アーニャ「美波……! やっぱり、美波は凄い、です!」


武内P「……」

カションッ、カションッ

武内P「では、つねります」

カションッ、カションッ


美波「はいっ! 美波、いきます!」

アーニャ「美波! 頑張って、ください!」

美波「ふふっ、ありがとアーニャちゃん♪」

美波「……ああ、でも、やっと乳首をつねって貰えるのね!」

美波「服の上からでも、それでも楽しめ――」


武内P「……」

ぎゅっ!


美波「――っ!? 痛っ……いたたたた!?」


アーニャ「美波が……乳首をつねられて痛がる……!?」

武内P「……」

ぎゅっ!

美波「いたたたた! あいたたたた!」ジタバタ!


アーニャ「どうして……痛がっていますか?」

アーニャ「アー、マジックハンドでも、美波は、シシャースチエ……幸福、です!」

アーニャ「なのに、あの痛がりようは……!?」

アーニャ「! まさか、アー、針がついていますね!?」


武内P「違います」

ぎゅっ!

美波「あいっ、あ、痛い痛い! いたたたっ!」ジタバタ!

武内P「これは、普通のマジックハンドです」

ぎゅっ!

美波「あーっ! 取れる取れる! 痛いったたた!」ジタバタ!


アーニャ「わからない、です……!」

アーニャ「美波が、アー、乳首をつねられて痛がる……!?」

アーニャ「有り得ない、です!」

アーニャ「イズヴィニーチェ……教えてください!」

アーニャ「どうして、美波は痛がっていますか!?」


武内P「私が、別の方の事を考えているからです」

ぎゅっ!

美波「あーっ! あーっ、痛っい! 痛ぁい!」ジタバタ!

武内P「その想いが、彼女を苦しめています」

ぎゅっ!

美波「痛いってばもー! あああっ、いたたたた!」ジタバタ!


アーニャ「ニェート! 美波は、可愛い!」

アーニャ「他の女の事を考えてても、アー、大丈夫、です!」

アーニャ「美波なら、逆に、アー、楽しくなります!」


武内P「私が思い浮かべているのは、女性ではありません」

ぎゅっ!

美波「んいいいっ!? ヤバっ、痛いってぇ!」ジタバタ!


アーニャ「誰、ですか!?」


武内P「出川哲朗さんです」

ぎゅっ!

美波「ヤバいよヤバいよ! あーっ、痛い!」ジタバタ!


アーニャ「……!」

武内P「新田さん、もうこりましたか?」

ぎゅっ!

美波「痛いっ! あっあっ! 乳首こりこり!」ジタバタ!

武内P「……」

ぎゅううっ!

美波「ひぁぅ痛あああっ!? ちぇーん! 助けてちぇーん!」ジタバタ!


アーニャ「ニェート! アーニャです、美波!」

アーニャ「ちぇんは、違いますね!?」

アーニャ「――今、助けます!」


武内P「……」

ぎゅっ!

アーニャ「ニェェェ――ット!? あーっ! あーっ!?」ジタバタ

武内P「アナスタシアさんは、上島竜兵さんを想ってつねります」

ぎゅううっ!


美波「ヤバいよヤバいよ! もぉぉぉお!」ジタバタ!

アーニャ「ニェート! 痛すぎるっしょ!? 聞いてないっしょ!」ジタバタ!

  ・  ・  ・

武内P「お疲れ様でした」


美波「はーっ……! はあぁ……痛かった……!」

アーニャ「あんな目にあうなら、アー、見捨てるべきでした!」

美波「アーニャちゃん?」

アーニャ「シトー?」

美波「なんだか、ちょっと悲しい言葉が聞こえた気がするの」

アーニャ「気のせい、です。大丈夫、美波は、可愛い!」


武内P「……」

武内P「満足、していただけましたか」

美波「ひどいです、プロデューサーさん!」

アーニャ「ダー! つらかっただけ、です!」

武内P「……」


武内P「……」

カションッ、カションッ


美波「美波、とっても満足しちゃいました♪」

アーニャ「スパシーバ♪ もう、大丈夫、です!」


武内P「その言葉が聞けて、はい、安心しました」

武内P「今後は、こういった事の無いよう、お願いします」

美波・アーニャ「はいっ!」

武内P「良い、返事です」

美波「でも……乳首が腫れてないかしら」

アーニャ「腫れたら、アー、困りますね?」

美波「そうだわ! プロデューサーさんに舐めてもらえば良いのよ!」

アーニャ「ハラショー! それは、いい考え、です!」

武内P「良いのは返事だけ、ですね」

武内P「舐めて欲しい、ですか」

美波「はい、ねぶるようにお願いします!」

アーニャ「プロデューサー、お願い、です!」

武内P「乳首を舐めたら、私の首が飛びます」

美波「乳首が飛ぶ!? そんな事、出来るんですか!?」

アーニャ「ニェート、いけません! それは、困りますね?」

武内P「話をきちんと聞いて下さい」

美波「でも……乳首が無くなったら困っちゃうわね」

アーニャ「ダー……美波の言う通り、です」

武内P「……不思議なブレーキがかかりましたね」

美波「飛んでいっても、捕まえれば……?」

アーニャ「ハラショー! それです、美波!」

武内P「どれです」

美波「アーニャちゃん!」

アーニャ「美波!」

パンッ!

美波・アーニャ「ハーア~ア~♪」スイスイッ

武内P「『Memories』を始めないで下さい」

武内P「お二人とも、乳首は、舐めません」

美波・アーニャ「……えっ?」スイスイッ

武内P「踊るのをやめてください」

美波「そんな……美波、乳首が飛んでも頑張ります!」

アーニャ「ダー! だから、舐めて欲しい、です!」

武内P「無駄な覚悟を決めないで下さい」

武内P「……」

武内P「では、どちらか一人だけ、選んで下さい」

美波・アーニャ「!?」

美波「そんなっ!? 一人だけなんですか!?」

アーニャ「プロデューサーは、とても意地悪、ですね!?」

武内P「なんとでも言って下さい」

美波「そんな……自分ひとりだけなんて!」

アーニャ「美波……どうぞ、舐めて貰ってください!」

美波「ううん……アーニャちゃんこそ!」

美波・アーニャ「……」

美波・アーニャ「私の事は良いから、プロデューサー!」

武内P「……安心しました」

武内P「譲り合う心、お二人が、それを忘れていない事に」

美波・アーニャ「プロデューサー……」

美波「……ふふっ、一本取られちゃたわね」

アーニャ「ダー! でも、アー、悪い気持ちではない、です!」

美波・アーニャ「……」

美波・アーニャ「ふふふっ♪」ニコニコッ

武内P「良い、笑顔です」

武内P「それでは、今度は私からお願いがあります」

美波・アーニャ「はいっ!」



武内P「舐めた事を言わないで貰えますか?」



おわり

寝ます
おやすみなさい


「今日は、クローネのレッスンになりますね」


 プロデューサーが、今日の予定を確認してきました。
 私は、シンデレラプロジェクトと、プロジェクトクローネ、
どちらにも、アー、入っています。
 だから、皆よりも、少し忙しい、です。
 仕事も、レッスンも、とってもいっぱいあります。


「ダー。頑張ります」


 だけど、これは私が、望んだからですね?
 新しい事に、挑戦したい……私が、そう言ったからです。
 毎日が忙しいけど、毎日が楽しい、です。
 でも、一つだけ、アー、不満、不安?……そう、不安があります。


「プロデューサーは、今日はどうしますか?」


 プロデューサーは、とっても忙しい。
 今までのように、シンデレラプロジェクトの事も、見ます。
 それに、アー、今度から二期生の事も見ますね?
 だから、もっともっと、忙しくなってしまうと思います。


「そうですね、今日は――」


 プロデューサーは、私を……アーニャを見てくれていますか?
 私は、プロデューサーのアイドル、です。
 プロデューサーの言うことには、絶対、従います。
 だけど、もっと見て欲しいと思うのは……ワガママ、ですか?



「――アナスタシアさんのレッスンを見学しようと、思っていました」



 とても……とっても、ビックリしました!
 プロデューサーが、私のレッスンを見てくれるのは、久しぶり!


「ハラショー! 今日は、一緒ですね?」
「はい、一緒です」


 今日は、良い一日になりそう、です!
 プロデューサーに飛びつきたい気持ちは、ガマンガマン。

  ・  ・  ・

「~♪」


 今日は、ダンスレッスン!
 アイドルになったばかりの時より、とっても上手く出来るようになりました。
 プロデューサーが、アー、最後に見た時よりも、ずっと上手く!
 ふふっ! さっきのお返し、です!


「~♪」


 プロデューサーは、嬉しいで、驚かせてくれました。
 だから、私が上手く出来るようになってる所を見せて、驚かせます。
 プロデューサーは、きっと、喜んでくれるはず、です!
 嬉しいに、嬉しいでお返しするのは、とっても良い事!


「~♪」


 いつもより、上手にダンスが出来るように、体をほぐします。
 アー、はしゃいで怪我をしたら、心配、させてしまいます。
 それは、いけません。
 プロデューサーに、アー、迷惑をかけます。


「あら、今日はなんだかご機嫌ね」


 私が、アー、鼻歌を歌っているのを聞いて、そう、思ったのでしょう。
 だけど、それは本当の事。
 今日の私は、とってもご機嫌、です!
 嬉しい気持ちが、歌になってしまうくらい!


「ダー。今日は、プロデューサーが、見に来てくれます♪」


 だから、今日のアーニャは、とっても頑張ります!
 プロデューサーに見てもらうのですから、とても!
 失敗は出来ない、です。
 失敗したら、プロデューサーをガッカリさせてしまいますね?


「あら、あのチャーミングな彼が?」


 プロデューサーをガッカリさせたくない、です。
 ガッカリは、悲しいですね?
 悲しい思いは、アー、絶対に、いけません。
 私は、プロデューサーに、喜んで欲しいです。


「ダー! だから、今日は、とっても頑張ります!」


 私を見ていると、嬉しいと、思って欲しいです。
 嬉しいがいっぱいだと、笑顔になれますね?
 笑顔は、とっても素敵――パワーオブスマイル!
 プロデューサーも、笑顔で、元気になって欲しい、です!


「~♪」


 ……それに……もしかしたら、ですが。
 もっと、アーニャを見たいと、思ってくれるかもしれない、です。
 見ると嬉しくなると、もっと、見たくなるかもしれない、です。
 だから、頑張ります。
 アーニャは、もっと、プロデューサーに見て欲しい。



「――失礼します」



 ドアが開いて、低い声が、聞こえました。
 この声は、プロデューサー、です!
 プロデューサーの方へ行きたいけど、ガマンですね?
 まだ、アー、準備運動の途中ですから。


「まあ、私のレッスンを見に来てくれたのかしら?」


 ニェート! 違い、ます!
 プロデューサーは、アーニャを見に来ました!


「いえ……今日は、アナスタシアさんのレッスンを見に……」


 プロデューサーと、目が、合いました。
 ムッとした顔……見られて、しまいましたか?


「つれないのね。でも、そこも魅力の一つかしら」
「……」


 プロデューサーが、右手を、アー、首筋にやって、困っています。
 皆が、言っていました。
 プロデューサーは、からかわれると、ああやって困る、って。
 困らせるのは、駄目、ですね?


「自分では、よく、わかりません……」


 もう、大丈夫です。
 すぐにでも、踊れます。
 だけど、その前に――


「――スパシーバ。ありがとうございます、来てくれて」


 ――こう、言いたかった、です。
 忙しいのに、私のレッスンを見に来てくれて、嬉しい、って!
 だから、私の練習の、アー、結果? 成果……成果を見てください、って!


「今日は、とっても、頑張ります!」
「……アナスタシアさん」


 私の言葉を聞いて、プロデューサーは、困った顔をやめました。
 右手もおろして、とっても綺麗な、アー、姿勢で、こちらを見ています。
 私の――アーニャのプロデューサー。
 だから、今日は、アーニャを見ていてください。


「はい、頑張ってください」
「ダー!……はいっ!」


 プロデューサー、見ててください。
 アーニャは、とっても、頑張ります。


「……なんだか妬けちゃうわね」


 それは、アー、当たり前ですね?
 プロデューサーは、アーニャのプロデューサー、です。

  ・  ・  ・

「……」


 ザアザアと、シャワーから出るお湯が、音を立てています。
 ちょっと、アー、勢いが強いので、当たると痛い、です。
 もう、レッスンの時の汗は、流し終わりました。
 だけど、どんどん、出てくるものが、あります。


「……・ふ……ひっく……!」


 喉の奥からも、声が漏れてしまい、ます。
 だけど、これを他の人には、聞かせられませんね?
 もしも、聞かれたら、その人に心配させてしまいます。
 シャワーの勢いを強くして、聞こえないようにしないと、駄目です。


「……う……ふぅっ……!」


 プロデューサーは、アーニャのダンス、見ませんでした。
 急に、他の所で、問題が起こってしまったらしい、です。
 何が起こったかは、わかりません。
 ……何も、知りたくない、です。


「……っく……ぐすっ……!」


 知ったら、アーニャは、悪い子になってしまいます。


 ――どうして、今日? 誰が? 何を?


 ――……どうして、プロデューサーが行かなくては?


 ――プロデューサーは、アーニャを見てくれるはずだったのに!


 ……と、嫌な気持ちになってしまうから、です。
 悪い子になったら、プロデューサーに、嫌われてしまいます。
 それは、絶対に、嫌です。


「……ふぐっ……うっ、うぅ……!」


 誰にも、知られては、いけません。
 アーニャは良い子だと、プロデューサーに思って欲しいから。

迷うのでゲームしてきます

  ・  ・  ・

「……」


 まだ、寝るには早い時間、です。
 だけど、今日が早く終わって欲しいと、思いました。
 横になって、目をつぶれば……明日になりますね?
 明日は、良い一日になって欲しい、です。


「……」


 目をつぶったら、涙の雫が、流れてしまいました。
 だけど、もう、声を上げては泣きません。
 泣いていては、眠れない、です。
 眠れないと明日が来ない……今日が終わらないのは、困ります。



「ひとりにしないで……」



 絶対に言えない、想い。


「シトー……?」


 その声に、返事をするように、アー、携帯電話が光っています。
 こんな時間に、珍しい、ですね?
 誰、ですか?


「……っ!」


 枕に、顔を押し付けて、涙も、押し付けました!
 アー、アー、と声を出して……大丈夫、です!


「――はい、大丈夫、です! まだ、起きているつもりでした!」


 ……嘘をついてしまいました。
 アーニャは、悪い子ですか?


「ニェート、気にしないでください」


 ダンスを見て貰えなかったのは、残念、でした。
 だけど、こうやって、電話をしてくれましたね?
 それだけでも、アーニャは嬉しい、です。
 それに、次にダンスを見てもらう時は、もっと、もっと上手くなってますから!


「……空を?」


 ベッドから出て、言われた通り、窓の方へ。
 そして、カーテンと窓を開け、空を見ました。
 そこには――


「……ハラショー」


 ――とても綺麗な、星が輝く、夜空が広がっていました。


 見える数は、とても少ない、です。
 光も、あまり、アー、届いては来ない、です。
 なのに、今日という夜の星空は、とても輝いて見えます。


「そうですか……一緒に、見ているのですね?」


 電話の向こうでも、同じ星空を見上げているよう、です。


「だから……プリクラースナ――綺麗」


 一緒に見上げる星空が綺麗なのは、当たり前、です。
 こんなに綺麗なズヴィズダーなら、お願いしても……良い、ですね?



「パジャールスタ……もう少しだけ、一緒に見たい、です」



 今日が……今が、もっと続いて欲しい、とは言わない、です。
 ほんの少し、ちょっぴりだけで、アーニャは構いません。
 お願い、聞いてくれますか?


「……――スパシーバ!」


 今日は、良い一日になりました!
 アーニャの予感は、当たっていましたね?



おわり

寝ます
おやすみなさい

書きます


武内P「佐久間さんに、恨まれている?」

武内P「あの……一体、何があったのですか?」

凛「ねえ、どうしてこっちを見るわけ?」

武内P「あ、いえ……特に、深い意味は」

凛「ふーん。なら、良いけど」

みく「とにかく、すっごく怒ってるにゃ!」

李衣菜「プロデューサー、何をしたんですか!?」

武内P「……」


武内P「私が、ですか!?」

武内P「……今のは冗談、です……よね?」

みく「Pチャン、みくは冗談でこんな事言わないよ」

李衣菜「私だってそうです」

武内P「……どうやら、本当のようですね」

凛「でも、まゆがそんなに怒るなんて珍しいね」

武内P「……」

凛「思い出して。まゆに、何したの?」

武内P「……」

武内P「直接何かした、という事はありません」

みく「……言い切ったにゃ」

李衣菜「本当ですか?」

武内P「はい。顔も、最近では合わせていません」

凛「……本当みたいだね」

武内P「可能性があるとすれば……彼女のプロデューサーと――」


凛・みく・李衣菜「それ」


武内P「……」

武内P「待ってください! まだ、そうと決まったわけでは!」

武内P「何か、勘違いをされている可能性もあります!」

凛「ねえ、まゆのプロデューサーに何したの?」

みく「変な事でも吹き込んだりしたにゃ?」

李衣菜「手を出すべきじゃないー、って説教したとか?」

武内P「皆さん……私を信じてくれませんか?」


凛・みく・李衣菜「何したの?」


武内P「……」

武内P「……その、先日飲みに、はい、行きました」

凛「二人で?」

武内P「そう、ですね」

みく「……李衣菜ちゃんはどう思う?」

李衣菜「……うーん、まだなんとも」

凛「ふーん、二人で……ね」

武内P「渋谷さん? あの、どうして睨むのですか?」

凛「別に。私、こういう顔なだけだから」

武内P「……」

武内P「三日前……でしょうか」

武内P「仕事終わりが重なり……久しぶりに飲みに行こう、と」

凛「へぇ、仲、良いんだ」

武内P「同期、ですから」

みく「……まゆチャンは、それだけじゃ怒らないにゃ」

李衣菜「……うん、相手が異性ならともかくね」

凛「……ふーん、二人で飲みに、ね」

武内P「……」

武内P「そこで……」

凛「待って。どういう所に飲みに行ったの?」

武内P「場所、ですか? 普通の居酒屋ですが……」

凛「居酒屋? 実は、楓さんとか居たんじゃないの?」

武内P「いえ、本当に二人だけでした」

凛「……まあ、信じるよ」


みく「待つにゃ! なんか、違う所のスイッチ入ってるにゃ!」

李衣菜「どうするのみくちゃん!? 私、怖いんだけど!」

凛「それで? どれ位飲んだの」

武内P「軽く、ですね。翌日も仕事でしたから」

凛「軽くじゃわからない。ちゃんと説明して」

武内P「お互い、ビール三杯程度なので、本当に軽くです……」

凛「ねえ、ビール三杯ってどうなの? 軽いの?」

みく「さ、さぁ? 軽いんじゃない……かにゃ~?」

李衣菜「わ、私達に聞かれても……」

凛「……まあ、軽くなら良いよ。うん、問題ないかな」

武内P「……はあ、そうですか」

武内P「それで、軽く話して……」

凛「また? 軽くじゃわからないから」

武内P「その、お互いの、仕事の話――」

凛「聞いた!? 二人共、今の聞いたよね!?」

みく「ひいっ!? 聞いてた! 聞いてました!」

ぎゅうう!

李衣菜「み、みくちゃん! 手が痛いって!」

みく「李衣菜ちゃんは、みくがどうなっても良いの!?」

李衣菜「……ごめん、私も手を握ってて欲しいかも」

凛「ふーん? 仕事の話? ふーん……?」

武内P「……はい、仕事の話です」

凛「仕事の話だったら、担当のアイドルの事だよね?」

武内P「はい……そう、ですね」

凛「そこで、まゆの話が出たんだ」

武内P「ええ、彼は佐久間さんの話題を……はい」

凛「プロデューサーは?」

武内P「えっ?」

凛「プロデューサーは、誰の話をしたの?」

武内P「私が話題にした方、ですか……」

みく・李衣菜「……!」ビクビク

武内P「私が話題にしたのは――」

凛「……」

武内P「し」

凛「!」

武内P「ま」

凛「ふうううぅぅぅん!」

武内P「っ!? ど、どうかされましたか!?」

凛「その話題はもう良いから。まゆの、どんな話だったの」

みく「な、何にゃ!? 今の超反応は!?」

李衣菜「百人一首ガチ勢みたいな速度だったよ!?」

武内P「どんな……ですか」

凛「やっぱり、可愛いって褒めたりした?」

武内P「そう、ですね」

武内P「佐久間さんは、とても素晴らしいアイドルだ、と」

武内P「担当である彼も、そして、私もそう思います」

凛「…………ふーん」

凛「聞いた?」

みく「李衣菜ちゃあああん! 返事お願いいいいい!」

李衣菜「みくちゃんズルっ!? き、聞いてた……よ?」

凛「……」

みく・李衣菜「……!」ビクビク

凛「担当するアイドルの話をしてさ」

凛「私の話はしなかったのに……あ、私達」

凛「それなのに、担当じゃないまゆだけを褒めるって……どう思う?」

みく「な、なんか巻き込まれた感が凄いにゃ!」

李衣菜「付け足す感じで、‘私達’って言ったもんね……」

武内P「待ってください!」

武内P「皆さんも、とても素晴らしいアイドルです!」

凛「……」

武内P「私には、とても輝いて見えます」

凛「…………そう? 本当にそう思う?」


みく・李衣菜「ちょろりん!」

武内P「なので、決して他意があったわけではありません」

凛「……まあ、それなら良いかな」

武内P「それに、可愛いからこそ、困ることもあるそうで……」

みく「それ! やっと核心に迫ってきた感じがするにゃ!」

李衣菜「早くそっちの路線に行きましょう! そうしましょう!」


凛「二人共、急にどうしたの」

凛「そんなに慌てたら、輝きが零れちゃうんじゃない?」


みく「……っかー! ご機嫌はご機嫌で、イラッとするにゃ!?」

李衣菜「みくちゃん落ち着いて! せっかく安定してるから!」

武内P「佐久間さんが、距離感が近すぎる、と……」

凛「それは、ちょっとアイドルとしての自覚に欠けるかな」

武内P「そう、ですね」

凛「スキャンダルとか、大変だと思う」

みく「……凛チャン、鏡必要?」

凛「どうして? 何か、顔についてる?」

李衣菜「……まゆ……が、ついてるかな」

凛「普通はついてるでしょ」

みく・李衣菜「……」

凛「?」

武内P「なんでも、紅い糸で結ばれていると、言われるとか……」

みく「あっ、それみくも聞いたことあるにゃ!」

李衣菜「まゆちゃん、たまに言ってるよね」

武内P「……やはり、本人達以外にも耳にしている方が居たのですね」

凛「それで、プロデューサーは?」

武内P「はい?」

凛「プロデューサーの紅い糸は、どうなってるの?」

武内P「私……ですか?」

みく「急にエンジンかけないで凛チャン!」

李衣菜「フルスロットルは、こっちの心臓に悪いから!」

凛「プロデューサーの小指は、どうなってるの?」

武内P「いえ、私は……」

凛「答えて。もう、誰かと運命の糸で結ばれてるの?」

武内P「……誰とも、結ばれてはいません」

凛「どういう事!? アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」

武内P「はい」


武内P「私の手は……糸で結ばれている暇は無いからです」

武内P「何故ならば、私の手は、貴女達の手を引くためにあります」

武内P「そのために、糸が邪魔になってはいけませんから」


凛「……あ、はい、そ、そうだね……うん///」

みく「ぴ、Pチャン……急にそんな事言わないでよ///」

李衣菜「ろ、ロックすぎますよ、プロデューサー……///」

武内P「そういえば……同じ事を彼にも言いました」

凛「それで? どんな反応だったの?」

武内P「もしも、結ばれている場合はどうするんだ、と聞かれ……」

みく「うん、もう紅い糸で結ばれちゃってたら?」

武内P「無理矢理にでも、断ち切ってみせる、と……」

李衣菜「紅い糸を断ち切るって……そんな無茶な」

武内P「……チョップで、この様な感じで――」


武内P「プロデュゥゥゥ――ス!!」

断!!


……――ぶわあっ!

凛・みく・李衣菜「……うわぁ、風圧が遅れてきた」バサバサッ


武内P「……――断ち切ります」

凛・みく・李衣菜「……」

凛「……もしかして、今の感じで?」

武内P「そう、ですね……頼まれたので、やりました」

みく「紅い糸……断ち切っちゃったにゃ?」

武内P「断ち切ると言っても、手応えがあるものでは……」

李衣菜「そりゃ、そうですよ!」

武内P「まあ、酒の席の……おふざけ、ですね」

凛「ふざけないでよ!」

武内P「えっ?」

みく「他人の運命の糸を勝手に断ち切るなんて、ひどいにゃPチャン!」

李衣菜「プロデューサー! 私も、やりすぎだと思います!」

武内P「……」

武内P「えっ!?」

  ・  ・  ・

ちひろ「……それで、三人共怒ってたんですね」

武内P「……はい」

武内P「……運命の紅い糸を結び直すまで、許さない、と」

武内P「私は……どうすれば良いのでしょうか、本当に」

ちひろ「うーん……放っておけば良いと思いますよ?」

武内P「えっ?」

ちひろ「縁があれば、神様がちゃんと結んでくれますから♪」

武内P「そう……ですね」

ちひろ「私から、三人にはうまく言っておきますね」

ちひろ「あっ、まゆちゃんにも伝えておかなきゃ」

ちひろ「切れた糸なら、また時間をかけてでも結び直せばいいのよ―、って」

武内P「……ありがとうございます。この御礼は、必ず」

ちひろ「あっ、それじゃあ……今晩、二人で飲みに行きませんか?」

武内P「……それは、構いませんが」

ちひろ「案外、運命の相手っていうのは近くに居たりするものですよ♪」

ちひろ「ふふっ!」ニコリ

武内P「………良い、笑顔です」

武内P「ですが、念の為――」


武内P「プロデュゥゥゥ――ス!!」

断!!


……――ぶわあっ!

ちひろ「……」バサバサッ



武内P「これで安心ですね、千川さん」



おわり

書きます


武内P「酔っていません」

ちひろ「本当に酔ってないんですか?」

武内P「はい、酔っていません」

早苗「……第一回! クイズ、シンデレラプロジェクトー!」

瑞樹「第一問! クローネにも所属している、クールなあの子」

楓「クローネでは、トライアドプリムスに所属していまーす♪」

菜々「さて! その子の名前は、一体何でしょう!?」


武内P「しぶりんです」


一同「めっちゃ酔ってる!!」

ちひろ「珍しいですね、そんなに酔うなんて……」

武内P「いえ、酔っていませんが」

早苗「……そんなキミに質問です!」

瑞樹「バーバン!」

楓「付き合うなら、何歳くらいの相手が良いですか?」

菜々「さて! お答え……いやいや、えっ!? いきなり!?」


武内P「26歳です」


一同「……」

ちひろ「もう……あ、これ美味しいですよ♪」

武内P「はい、ありがとうございます」

瑞樹「パンチにする? キックにする?」

早苗「それともぉ……締・め・る?」

菜々「ナナは……あうあう、いや、セーフ? あう、せー……!?」

楓「はーい♪ どうして26歳なんですか?」


武内P「一般的には、27歳から需要が一気に減ります」


一同「……」

ちひろ「ちょ、ちょっと飲み過ぎじゃないですか?」

武内P「いえ、そんな事はありません」

早苗「ここから東京湾ってどれくらいかかるっけ?」

瑞樹「飛ばせば一時間あれば着くと思うわ」

菜々「ナナは17歳だからセーフ……あ、お、が……?」

楓「それじゃあ、27歳以上は対象外なんですか?」


武内P「いえ、そんな事はありません」


一同「……!?」

ちひろ「……もうちょっと飲んで、口の滑りを良くしましょうか」

武内P「ありがとうございます。いただきます」

早苗「さっきのはどういう事? 情報は詳細に!」

瑞樹「そうよ! どういう事か説明してもらうわ!」

菜々「セーフ! あいや、元々セーフだけど……ダブルセーフ!」

楓「26歳と、27歳で何か違いが?」


武内P「結婚を意識するか、しないかです」


一同「……」

ちひろ「……ささ、どんどん飲んでください」

武内P「はい、お言葉に甘えさせていただきます」

早苗「26歳までは……まだ、結婚を意識しない?」

瑞樹「そして、27歳以上だと……結婚を意識する?」

菜々「だけど、ナナは17歳だから……あれ?」

楓「さっきの、需要という言葉……重要な気がします」


武内P「待ってください」

武内P「PCに、データがあります」


一同「!?」

ちひろ「そ、そんなデータがあるんですか!?」

武内P「プロデュースする上で、重要なデータです」

早苗「待って! あたし、なんかそれ見たくない!」

瑞樹「数字で見せないで欲しいわ! もっとふわっとで良いの!」

菜々「17歳のデータは!? あれ? 必要ありますかね?」

楓「つまり、26歳と言ったのは?」


武内P「まだ結婚をする気が無いからです」


一同「……」

ガラッ

心「はぁとが遅れて登場だぞ☆ 喜べ☆」


一同「……26歳」

心「えっ? どうした?☆ なんか目が怖いんだけど?」

ちひろ「……そういう事ですか?」

早苗「観念しなさい! ネタはあがってるのよ!」

瑞樹「はっきりしてもらうわ」

菜々「どうなんですか!?」

楓「答えてください」


武内P「いえ、佐藤さんは無いです」


一同「……」

心「はっ? いきなり‘無い’ってなんだ?☆ おい、答えろ?」

  ・  ・  ・

武内P「いえ、酔っていません」

ちひろ「なので、今は何を聞いても正直に答えるんです」

武内P「酔っては、いません」

早苗「……第一回! クイズ、スウィーティー!」

瑞樹「とっても可愛いあのジェスチャーに関して!」

菜々「さて、あれは何を表現しているでしょうか!」

楓「どうぞー♪」

心「おい、急だぞ☆……まあ、良いけどな」

心「スウィーティー」♡→♡


武内P「心臓を移動させて、即死を避けています」

武内P「良い、回避です」


心「ちっげえわ!!」

一同「あっはっはっは!!」ケラケラ

ちひろ「ちなみに、一般男性も同じ結果なんですか?」

早苗「そうよ! 27歳から需要が減るだなんて!」

瑞樹「信用出来ないわ……ええ、信じないわ」

菜々「ナナは17歳だから関係ないですね! キャハッ!」

心「ウサミン先輩さすがっす☆……さすがっすねー」

楓「あの言い方だと、26歳までの相手は結婚は意識しないんですか?」


武内P「26歳までなら、放流してもギリセーフ」

武内P「それ以降は、年齢を重ねる毎に、はい」

武内P「……詳細なデータが、PCにありますので――」


一同「やめて!」

ちひろ「……想像以上にきつかったですね」

早苗「あたしなんて、もっときついわよ!」

瑞樹「実際にデータがあるって言われると……へこむわ」

菜々「もうすぐこっち側ですね! ピピピピー♪」

心「ウサミン先輩変な電波とばさないで☆ マジでやめて!?」

楓「私達の中で、付き合うとしたら?」

一同「それいく!?」


武内P「全員、無しですね」


一同「あぁん!?」

ちひろ「全員無し!? 意味がわからないです!」

早苗「セメント、確か近くに工事現場あったわよね」

瑞樹「ドラム缶は、向こうで調達すれば良いと思うわ」

菜々「JKのナナは法的に無理ですもんね! キャハッ!」

心「ジョッキでガブガブいってるぞ☆……えっ、どんだけ飲んだの?」

楓「今の‘無し’、お受け出来ません」


武内P「皆さん、何か追加で頼まれますか?」


一同「もち♪」

一同「……聞けよ!」

ちひろ「大丈夫ですか? 明日から、スタドリ要らないんですか?」

早苗「首だけ出しましょ、首だけ」

瑞樹「当然だわ。でないと、後悔させられないもの」

菜々「……っあー! 妙に沁みますねぇ!……ゲフゥ!」

心「パイセーン!? 完全にオッサンだぞ☆……ゴフゥ!」

楓「うふふっ♪ ビールを浴びーる程飲むから、ふふっ!」


武内P「こういう所、ですね」


一同「……」

一同「ああ、なるほど」ポンッ!

ちひろ「……もう! 今日は許しませんからね!」

早苗「理由はわかったわ! でも、釈放するかは別よ!」

瑞樹「手が止まってるわ。さあ、飲んで飲んで!」

菜々「ちょっとイイトコ見てみたい♪ それイッキ♪ イッキ♪」

心「若い子は真似しちゃ駄目だぞ☆ イッキ☆ イッキ☆」

楓「勢い良く、一気に、意気込みを述べて、行きましょう♪……っふふふぅっ!」


武内P「では……」

武内P「――もう、呼ばないで欲しいです」


一同「イエーイ!」

ちひろ「……さて!」

早苗「第一回! クイズ、三番目は誰だ!」

瑞樹「六人中の、三番目だから角が立たないわ」

菜々「真ん中より、ちょっと上なのがポイントですね!」

心「ハッキリ答えを聞きたくない☆ そんな時にオススメだぞ☆」

楓「この中で、三番目に結婚したいのは誰ですか?」


武内P「片桐さんです」


早苗「――っしゃあああああ!」

早苗「なんぼのもんじゃあああでも三番かああああ!」

一同「……と、こうなります」

ちひろ「どうして、早苗さんが三番なんですか?」

武内P「消去法です」

早苗「ちょっと!? それ、どういう意味!?」

瑞樹「あっはっは! 正直だわ!」

菜々「困りますよ~! 一番がナナだなんて、そんなぁ!」

心「誰もそんな事言ってないぞ☆ はぁとは何番だ?☆ 言え?」

楓「と、結局は全部の順位が気になっちゃいまーす♪」


武内P「デザートは、皆さん頼みますか?」


一同「次も行くし、まだで!」

一同「……」

一同「言えよ!」

ちひろ「プロデューサーさん、次も勿論行きますよね?」

武内P「行きません」

早苗「強制連行よ! 逆らったらタイホ!」

瑞樹「今日は、とことん語ってもらうわ!」

菜々「酔ってないなら、当然行きますよね?」

心「まだまだこれからだぞ☆ 行くぞ☆」

楓「一緒に、飲みに行きたいんです……笑顔で!」


武内P「待ってください!」

武内P「せめて、アイスだけでも!」


一同「……いや、次で頼めば?」

ちひろ「プロデューサーさんが酔うなんて珍しいんですから!」

武内P「酔っていません」

早苗「この機会に、たっぷり情報を吐いて貰うからね!」

瑞樹「今日は逃さないわよ? 徹底的に本音で語って貰うわ」

菜々「はいはーい! ナナ、結構限界かなって思ってまーす!」

心「ウサミン先輩!? 諦めないで☆ お願い!?」

楓「ふふっ、酔っても記憶が残るタイプだから、気後れしてるんですか? うふふっ」


武内P「いえ、酔っていません」

武内P「それに、私は酔ったら記憶が飛ぶタイプです」


一同「……」

一同「……へえ」ニヤァ

  ・  ・  ・

武内P「……はぁ」


部長「どうした? キミがため息をつくとは珍しい」


武内P「……部長」

部長「何か、悩みでもあるのかね?」

武内P「いえ、それが……」

部長「良ければ、話してみなさい」

武内P「……」

部長「何か、解決の糸口が見つかるかも知れない」

武内P「……」

武内P「わかり、ました」

  ・  ・  ・

部長「……一夜明けたら、皆の態度が変わっていた、と」

武内P「その……非常に好意的な方も居れば……」

部長「鬼の様な形相で睨んでくる子も居る、と」

武内P「……はい」

部長「酔って、迂闊な事を口走ってしまったようだねぇ」

武内P「……だと、思います」

部長「それは……やってしまったねぇ」

武内P「……」

部長「しかし、酒の席での話だ」

武内P「ですが……」

部長「彼女達も、いつか許してくれるさ」

武内P「……しかし」

部長「よし! 飲みに行こうじゃないか!」

武内P「……えっ? あの、待ってください!」

部長「気にしすぎて、身動きが取れなくなる事の方が問題だ」

武内P「そう……でしょうか」

部長「ああ、そうだとも!」

部長「それに、私も久々にキミと飲みたいと思っていたんだ」

部長「付き合ってくれるね?」

武内P「部長……」

武内P「……はい、お供させていただきます」

  ・  ・  ・

武内P「……部長、説明していただいても、よろしいでしょうか?」

部長「……私も、つい先日キミと似た失敗をしてしまってねぇ」

武内P「……そう、ですか」

部長「キミは、その時の愚痴を聞くために飲みすぎてしまったと、そう、思うよ」

武内P「……」

部長「見たまえ、女性陣が私達に注目しているよ」

武内P「……はい、わかります」

部長「怖いねぇ……こんなに怖い酒の席は久しぶりだ」

武内P「私は……此処に私を連れてきた部長が怖いです」

部長「すまないね、酔って忘れてくれるかい?」


「カンパーイ!」


武内P「酔えるとは、思いません」



おわり

明日は星矢クロス書きます
寝ます
おやすみなさい

駄目だ、書きます

アーニャ「……はぁ……はぁ……!」


白装束A「……」


アーニャ「まだ……追ってくる……!」


白装束B「……」


アーニャ「っ!? こっちにも!?」

アーニャ「っ……!」


小さい男「ひっひっひっ! 逃げても無駄だぁ!」

小さい男「大人しく我らと来るんだな~~~っ!」


アーニャ「ニェート! それは、出来ません!」

アーニャ「貴方達は、どうして私を追いかけるのですか!?」


小さい男「どうしてだぁ?」

白装束達「……」


アーニャ「っ……囲まれ……!?」


小さい男「それは、お前の体に用があるからよ!」

小さい男「ひ~~っひっひっひっ!」


アーニャ「……!」

アーニャ「貴方達は……私のファンではない、ですね?」


小さい男「あぁん? ファン? お前の?」

小さい男「……ひゃ~~っはははぁ!」

小さい男「この期に及んで、ま~だそんな事を言ってるのか!」

白装束達「……」


アーニャ「……!」


小さい男「必要なのは、お前の体だけよぉ!」

小さい男「それ以外には、お前なんぞに何の興味もないわーっ!」

白装束達「……」


アーニャ「貴方達は……一体……?」


小さい男「さあ、こっちへ来い」

小さい男「ひ~~っひっひっひっ!」

白装束達「……」


アーニャ「っ――!?」


小さい男「ん? なんだ? 急に寒気が……ぶええっくしょん!」

小さい男「げええーっ!? か、体が凍りついていく……!?」

白装束達「……!?」

ピキピキピキッ…!


アーニャ「シトー……? 一体、何が……?」

??「――女一人を大勢で取り囲むのは、さすがに見過ごせん」


小さい男「だ、誰だあっ!? 姿を見せろっ!」

白装束達「……!」


??「――良いだろう」

トンッ!……スタッ!


アーニャ「貴方は……一体……?」


??「下がっていろ」

??「……――氷漬けになりたくなければ」


小さい男「こ、この闘気……!」

小さい男「「いや――凍気!?」

小さい男「きっ、貴様ーっ! 何者だーっ!?」

白装束達「……」



氷河「……白鳥座」


氷河「キグナス――氷河!」


アーニャ「……ヒョーガ……?」

小さい男「きっ、き、ききっ、キグナスだとお~~~っ!?」

小さい男「貴様、女神……アテナの聖闘士か!?」

白装束達「……!」


氷河「黙れ」

氷河「お前如きが、軽々しくアテナの名を口にするな」


小さい男「聖闘士が、どうして我らの邪魔をする!」

白装束達「……!」


氷河「言ったはずだ」

氷河「女一人を大勢で取り囲むのは見過ごせんとな」

氷河「……それに、お前たちこそ何者だ?」

氷河「お前たちからは、微かだが邪悪な小宇宙を感じる」


小さい男「……!」

白装束達「……!」


氷河「逃げられると思うな」


パキィィン……!

小さい男「か、体が……凍りつく……!?」

白装束達「……!?」


氷河「カリツォー」

氷河「お前たち如きでは、その氷のリングから逃れる術はない」

氷河「さあ、話してもらうぞ」

氷河「……お前たちは、一体何者だ」


小さい男「……ぐ……ぐううっ! ふっ、ふ……」

小さい男「ふざけるなああっ!」

小さい男「もう二度と……氷漬けになってたまるかああっ!」

白装束達「……!」


氷河「……何?」


小さい男「我らは……必ずその女の体を手に入れる……!」

白装束達「……!」

ボワアアッ…


氷河「消えていくだと……!?」

氷河「お前たちは、一体……!?」


影「その女の体を手に入れ、必ずや……!」

…フッ


氷河「ちっ!……逃げられたか」

アーニャ「あの……」


氷河「怪我は無いか」


アーニャ「ダー! 貴方のおかげ、です」

アーニャ「お礼を言わせてください」

アーニャ「スパシーバ、ありがとう、ございます」


氷河「礼を言われる程の事はしていないさ」

氷河「男ならば、ああして当然」

氷河「……しかし、キミの言葉……ロシア人か?」


アーニャ「ハーフ、です」

アーニャ「アナスタシア――アーニャと、呼んでください」


氷河「ああ、そうさせてもらう」

氷河「俺の母もロシア人で――ハーフだ」


アーニャ「ハラショー! 一緒、ですね?」ニコッ


氷河「……」


アーニャ「シトー? どうか、しましたか?」


氷河「……いや、気にしないでくれ」

氷河「アーニャの笑顔が……少しだけ、マーマに似ていると思っただけだ」


https://www.youtube.com/watch?v=KeEzMaQiu78

寝ます
おやすみなさい

  ・  ・  ・

美波「アーニャちゃん! 今までどこに行ってたの!?」

アーニャ「美波!」

アーニャ「イズヴィニーチェ……すみません、仕事中だったのに」

美波「急に居なくなっちゃうんだもの……とっても心配したわ」

アーニャ「プラスチーチェ……ごめんなさい」

美波「もう……それじゃあ、約束してね」


美波「今度から、どこかへ行く時は、ちゃんと言ってからにして」

美波「じゃないと、怒っちゃうんだから!」

美波「……約束出来る?」


アーニャ「美波……」

アーニャ「ダー! アビシシニャーニエ、約束、します!」

アーニャ「美波に怒られるのは、ふふっ、怖い、です!」


美波「アーニャちゃんったら!……ふふっ!」

アーニャ「ふふふっ!」

美波「それで、アーニャちゃん……あの人は?」



氷河「……」



アーニャ「彼は、ヒョーガ、です」

アーニャ「ロシアから来てくれた、私の――」

  ・  ・  ・
少し前


氷河『――アーニャは、奴らに狙われているようだな』

氷河『何か、心当たりは無いのか?』


アーニャ『ニェート……わからない、です』

アーニャ『ファンの人たちでは、無い、と言っていました』


氷河『ファン?』


アーニャ『ダー! 私、アーニャはアイドル、です!』


氷河『……なるほど』

氷河『奴らからアーニャを守り切るのは、簡単ではなさそうだ』


アーニャ『守る?』


氷河『無論』

氷河『地上の愛と平和を守るのが、俺たち聖闘士に課せられた使命』

氷河『その中には、アーニャのような罪のない人々も含まれている』

氷河『それに、奴らから感じた邪悪な小宇宙……見過ごすわけにはいかない』


アーニャ『! だったら、いい考えが、あります!』


氷河『……何?』


  ・  ・  ・


アーニャ「――私の、アー、イトコです!」

美波「イトコ……?」


氷河「氷河だ」

氷河「ロシアから、アーニャに会いに来た」


アーニャ「ヒョーガが来ていると聞いて、アー、慌ててしまいました」

アーニャ「イトコに会うのは、アイドルでも大丈夫ですね?」


美波「それだったら、言ってくれれば良かったのに」

美波「はじめまして、新田美波です」

美波「美波、って呼んでくださいね♪」


氷河「ああ、俺も氷河で良い」

氷河「しかし、アーニャは――」


氷河「――迷惑をかけたくない――」


氷河「――と、言っていたのに、早速迷惑をかけてしまったようだな」


アーニャ「ヒョーガ! からかわないでください!」

美波「ふふっ、仲が良いのね?」


氷河「……さあな」

氷河「そんなことより、ゆっくり話している時間はあるのか?」


美波「そうだわ、早く戻らないと! 行きましょ、アーニャちゃん!」

アーニャ「ダー! わかりました、美波!」

アーニャ「ヒョーガ! また、あとで!」ニコッ


氷河「……ああ」

  ・  ・  ・

氷河「……今のアイドルというのは、変わったこともするんだな」


アーニャ「ダー! テレビの、アー、収録も楽しい、です!」

美波「最近では、バラエティ番組のお仕事も増えてきたわよね」

アーニャ「どんどん、新しい事、増えていきます」

アーニャ「とっても大変、です」

アーニャ「だけど、アー、挑戦するのは、楽しいことですね?」

美波「ええ! これからも、頑張りましょ♪」ニコッ

アーニャ「ダー! 一緒に頑張りましょう、美波♪」ニコッ


氷河「フッ……良い笑顔じゃないか」


アーニャ・美波「……」

アーニャ・美波「ふふふふっ!」ニコニコッ


氷河「……何だ? 何がおかしい?」


アーニャ「ヒョーガ、プロデューサーと同じ事、言いました」

美波「それが、なんだかおかしくって。気を悪くしないでくださいね」


氷河「そういう事なら構わないさ」

氷河「さて……俺は、行くとしよう」

氷河「俺が周りをうろついていては、いけないからな」


アーニャ「……ヒョーガ、お願い、します」


氷河「任せろ」


美波「……?」

  ・  ・  ・



氷河「……」


氷河(あれから三日……奴らは、一向に姿を現さない)

氷河(俺を恐れて出てこない?)

氷河(いや……違うな)

氷河(奴らから感じた、邪悪で……怨念のような小宇宙)

氷河(あんな小宇宙の持ち主達が、簡単に諦めるはずがない)


氷河「……」


氷河「! この小宇宙……来たか……!」


氷河(だが……なんだ、この懐かしさは?)

氷河(あんな奴らから、懐かしさを感じるのは妙だ)

氷河(それに、この感じは……)


氷河「……いや、そんな筈がない」


氷河「――そんな事があってたまるか……!」

  ・  ・  ・
女子寮 周辺


小さい男「ひっひっひ! 今度は逃さんぞ~~~っ!」

白装束達「……」


  ・  ・  ・


輝子「ふ、フヒ……完全に、囲まれてるな」

輝子「パック詰めされた……き、キノコ状態だ」

幸子「そんな事言ってる場合じゃありませんよ!」

幸子「いくらボクがカワイイからって、マナーがなさすぎですよあれは!」

小梅「ち、違うと思う……よ?」


小梅「だって、あの人達は……もう、生きてない、から」


輝子・幸子「……へっ?」


蘭子「あっ、あああっ、安心するが良い我が友よ!」ガクブル

蘭子「我が闇の魔力の前では、ではでは……うう~っ!」ガクブル

ぎゅううっ!

アーニャ「蘭子、大丈夫です」

蘭子「えっ?」

アーニャ「私達は、ズヴィズダーが――」


アーニャ「――白鳥が、守ってくれて、います」

  ・  ・  ・

小さい男「体を寄越せ……!」

小さい男「我らに、体を……!」

白装束達「……!」


氷河「――止まれ」


小さい男「……現れたな、キグナス!」

白装束達「……!」


氷河「彼女には――アーニャには指一本触れさせん」


氷河「そして――」

ヒョオオオオ……


氷河「――もう、逃さん!」



小さい男「邪魔をするなあ~~~っ!」

小さい男「我らには、もう時間が無いのだ~~~っ!」

白装束達「……!」


氷河「言ったはずだ。止まれ、と」


小さい男「そんな言葉に誰が従えるかぁ!」

小さい男「そこをどけ! キグナスーっ!」

白装束達「……!」


氷河「いいや、止まって貰うぞ」

氷河「このキグナスの――ダイヤモンドダストの凍気によってな!」

ヒョオオオオ……!


小さい男「な、なんだ……!? 急激に奴の小宇宙が高まっていく……!?」

白装束達「……!?」

氷河「おおおおおぉっ……!」

ヒョオオオオ……!


小さい男「あと少し……! もう少しの所でええっ!」

白装束達「……!」


氷河「受けろ! 邪悪な小宇宙を持つ者達よ!」

氷河「そして、あるべき所へ帰るが良い!」



氷河「ダイヤモンドダスト――ッ!!」



小さい男「こ、凍りついていく……逃げられ……」

小さい男「ひ、ひっひっひっ――」

小さい男「ひっ」

パキィィィンッ!


氷河「完全に凍りついてしまえば、影となって逃げる事も出来まい」

氷河「その悪しき小宇宙――魂を砕かせてもらう!」



「――待ちなさい」



氷河「う!?」

氷河「こ、この声……この懐かしさ……!?」



??「――そんな事をしてはいけませんよ」



氷河「あ……ああっ……!?」

氷河「その顔……間違えるはずがない! 間違えようものか!」

氷河「何故……どうして、ここに……!?」



ナターシャ「――氷河」



氷河「マーマ!」

  ・  ・  ・

幸子「な、なんだか様子がおかしいですよ!?」

輝子「こ、氷が急に出るのも、お、おかしいけどな、フヒ」

小梅「あの人……あれは、な、何? あの子も、怯えてる……!」

蘭子「うーっ、うう~~っ!」ガクブル

ぎゅうっ!

アーニャ「……ヒョーガ……!」


  ・  ・  ・


ナターシャ「そこを通して、氷河」

ナターシャ「私達が完全に蘇るためには、あの子の体が必要なの」

ナターシャ「だから、ね?」

ナターシャ「――お願いよ」ニコッ



氷河「や、やめろおお~~~っ!」

氷河「マーマの顔で……俺に……俺にそんな笑顔を向けるああ~~~っ!」

ヒョオオオオ……



ナターシャ「どうして、そんなひどい事を言うの?」

ナターシャ「私の可愛い氷河」

ナターシャ「さあ、あの子の体を私達にちょうだい?」ニコッ



氷河「やめろ……! やめてくれ……!」

氷河「その顔を……声を……笑顔を俺に向けないでくれ……!」

氷河「俺の命ならいくらでもくれてやる! だから……!」

氷河「マーマの体を弄ぶのはやめてくれええっ!」



ナターシャ「……もう、聞き分けのない子ね」


ナターシャ「イネビテブル・ドラウン!!」



氷河「うおおっ!? 小宇宙が、押し寄せて……!」

氷河「お、溺れる……! 飲み込まれる……!」

氷河(こ、この小宇宙……!)

氷河(なんという、悲しみと絶望に包まれた小宇宙だ……!)

氷河(俺が感じているのは、この小宇宙の――魂の嘆き……!)

氷河「い、いかん……飲まれる……!」



ナターシャ「氷河、貴方もこっちへいらっしゃい」



氷河「うおおおっ!?」

氷河(幻影などではない……! あの体は、確かにマーマのもの!)

氷河(そうか……体に、脳に残る記憶を使っているのか)

氷河(……ならば、奴の言葉は……マーマの言葉でもある……?)


氷河「ごほぁっ!」

氷河(駄目だ……もう、考えられない……)

氷河(体に、力が入らん……)



ナターシャ「ふふっ♪」ニコッ



氷河「……ああ、マーマ……」



アーニャ「ニェート! いけません、ヒョーガ!」



ナターシャ「あら! わざわざ出てきてくれたの?」

ピタッ


氷河「ぐふうっ!?」

…ドシャリッ!


アーニャ「……目的は、私、ですね?」

アーニャ「私が、一緒に行けば、皆には……何もしないでくれますか?」


ナターシャ「ええ、もちろんよ!」


氷河「っ!? よ、よせ……アーニャ……!」

アーニャ「イズヴィニーチェ、すみません、お願いがあります」


氷河「待て……! 行ってはならない……!」


アーニャ「私は、もう、戻って来られない、です」

アーニャ「だから、皆にとっても、アー、 迷惑をかけます」

アーニャ「……でも、他に方法が無い、です」


氷河「ぐ……く、お……!」


アーニャ「アイドル、続けるのは出来ませんね?」

アーニャ「とっても……悲しい」

アーニャ「だけど、美波との約束を破るのは、もっと悲しいです」

アーニャ「アビシシニャーニエ、約束、破りたくない、です」


氷河「……!」


アーニャ「パジャールスタ、だから、美波に伝えてください、お願いします」


アーニャ「スパシーバ……ありがとう、と」ニコッ


氷河「あ……アーニャ……君は……!」



アーニャ「……イズヴィニーチェ、お待たせ、しました」

ナターシャ「うふふっ♪ 貴女、とっても良い子ね」

アーニャ「ニェート、アーニャは、良い子ではない、です」

ナターシャ「あら、そうなの?」

アーニャ「ダー。皆に、アー、迷惑をかけてしまいました」

ナターシャ「そんなことは良いのよ……もう、気にしないでも」

アーニャ「……」



氷河「待て……行くな……!」

氷河「……ぐうっ!?」

ガクッ!

夕方だけど昼寝します

  ・  ・  ・

氷河「……――はっ!?」

氷河「ここは……どこだ……!?」


美波「ここは事務所内の医務室です」


氷河「……美波?」

氷河「っ! すまない……! アーニャが連れ去られてしまった!」


美波「そう……みたいですね」

美波「寮住まいの子たちに聞きました」


氷河「……美波、君はどうしてそんなに冷静でいられる」

氷河「アーニャが居なくなったというのに、何故……!?」



美波「だって、約束しましたから」

美波「どこかへ行く時は、ちゃんと言ってからにして、って」

美波「約束したから……そう、約束……う、ううっ……!」ポロポロッ



氷河「……すまない」

氷河「俺が……クールでいられなかったばかりに」


美波「うっ……ぐすっ、い、いえ……ごめんなさい、泣いちゃったりして」

美波「……アーニャちゃんは、何か言っていましたか?」



氷河「……」

氷河「――いや、‘何も言っていなかった’」


…ガチャッ


美波「氷河……? そんな体で、どこへ……!?」



氷河「俺は、アーニャに‘任せろ’と……そう言った」


氷河「約束は破るなと……マーマにきつく言われていたからな」

  ・  ・  ・
甲板上


ナターシャ「ふふふっ……今日は星がとても綺麗ね」


アーニャ「……」


ナターシャ「私が――私達が事故で死んだ夜も、こんな夜だった」

ナターシャ「だから、蘇る夜には、相応しいと思わない?」


アーニャ「……貴女は、間違って、います」


ナターシャ「あら、どうして?」


アーニャ「人の命は、一生に……一つきり、です」

アーニャ「だから、皆、頑張って生きています」

アーニャ「だから、とても輝いて……綺麗」


ナターシャ「……」


アーニャ「事故で、アー、亡くなったのですね?」

アーニャ「それは、とても悲しいこと、です」

アーニャ「……だけど、安らかに……眠って欲しい」

アーニャ「そうする事は、出来ませんか?」


ナターシャ「そんな必要ないじゃない?」

ナターシャ「だって、私達は、貴女の体を使って甦れるんですもの!」


アーニャ「……ニェート……とても、アー、残念、です」

アーニャ「けれど、私が死んでしまっては、それは無理、ですね?」


ナターシャ「えっ?」

ナターシャ「そうね……私達は、貴女の体でなければ復活出来ない」

ナターシャ「それは、貴女の体が……」

ナターシャ「貴女の魂が――小宇宙が、最も適しているから」

ナターシャ「他の人じゃあ、私達の魂を受け止められないわ」


アーニャ「ハラショー、それを聞いて、安心しました!」

アーニャ「……っ!」

アーニャ「……えっ? どうして……!?」


ナターシャ「うふふっ! 舌を噛んで死のうとしても、無駄よ?」

ナターシャ「もう、貴女の体の乗っ取りは始まっているの」

ナターシャ「手足の感覚が、もうなくなってきてるでしょう?」


アーニャ「……っ!……っ!」


ナターシャ「夜が明ける頃には、貴女の体は私達のもの」

ナターシャ「それに、舌を傷つけるのはやめてちょうだいね」

ナターシャ「貴女の歌、とっても素敵だもの……ふふっ!」



「――それは、是非聞いてみたいものだ」



アーニャ「っ! この声は……!?」


ナターシャ「ああ、やっぱり来てくれたのね!」

ナターシャ「マーマの新しい誕生会に! そうでしょう?」ニコッ



氷河「その口を閉じろ」




アーニャ「ヒョーガ!」


氷河「……遅くなってすまなかった、アーニャ」

ナターシャ「まあ、どうしてそんなひどい事を言うの?」

ナターシャ「それに……その格好は何?」


氷河「聖衣を纏った俺は、女神――アテナの聖闘士として此処に居る」

氷河「貴様の好きにはさせんぞ、亡霊」


ナターシャ「ひどいわ、氷河!」

ナターシャ「貴方は、私に――マーマにその拳を向けるつもりなの!?」

ナターシャ「もう少しで……生き返る事が出来るのに!」

ナターシャ「この女の体があれば――」


アーニャ「ヒョーガ!」


氷河「……その口を閉じろと、そう言ったはずだ」

ヒョオオオオ……!


ナターシャ「凍気……!?」

ナターシャ「そう……本気、なのね?」


氷河「お前は、確かにマーマの体……それは本当だろう」

氷河「――だがっ!」

氷河「俺の愛した母は、他を犠牲にしてまで己の欲望を満たす者ではないっ!」

氷河「むしろその逆!」

氷河「自らを犠牲に他を助ける――」


アーニャ「……!」


氷河「――アーニャのような、美しい魂を持った人だった!」

氷河「それを貶めるような真似は、たとえ神々が許したとしても――」


氷河「――この、キグナス氷河が許さんっ!」

ヒョオオオオ……!


ナターシャ「むうう……!? この気迫、そして闘気……!」

ナターシャ「おのれぇ……! あと一歩の所で邪魔をおお~~っ!」


氷河「黙れ」

氷河「その声で……ゲスな事を言うのは、許さん」

ナターシャ「……ひっひっひ!」

ナターシャ「どうやら、お前も我らの仲間に入りたいらしいな……!」


氷河「……その口調」

氷河「あの時の小男や、白装束達の姿が見えないとは思っていたが……」


ナターシャ「もう、まともに動く体が‘これ’だけになってしまったからな……!」

ナターシャ「既に、我らの魂――小宇宙は一つとなっている!」

ナターシャ「貴様にもわかるだろう、この強大さが! 怨念が!」

ナターシャ「お前如きでは、太刀打ち出来ぬわーっ!」

ナターシャ「ひ~っひっひっひ!」



氷河「ほう……ならば、やってみるが良い」



ナターシャ「抜かせええ~~~っ!」

ナターシャ「嘆きの波に飲まれろ、キグナス!」

ナターシャ「イネビテブル・ドラウン!!」


氷河「……」


ナターシャ「ひ~っひひひっ! そのまま溺れ死ね!」

ナターシャ「そして、お前も我らの一部となるのだ~~~っ!」



氷河「――むん!」

パキィィィン!


ナターシャ「なあっ……!? 波が、凍っただと……!?」


氷河「聖闘士に、同じ技は二度は通じん」

氷河「そもそも……」

氷河「クールになった俺の前では、この程度は水たまりの水面が揺れる程度よ」

ヒョオオオオ……!


ナターシャ「むうう……!? こ、これほどまでとは……!?」

氷河「覚悟は良いか、亡霊」

ヒョオオオオ……!


ナターシャ「ひいっ!?」

ナターシャ「……ま、待って氷河!」

ナターシャ「私に……マーマに生き返ってほしくないの!?」

ナターシャ「あの体があれば、また一緒に暮らせるのよ!?」


氷河「くどい!」

氷河「マーマの体を使い、俺をたぶらかそうとするな!」

ヒョオオオオ……!


ナターシャ「来るな……来るなああ~~~っ!」


氷河「……マーマの体から出ていって貰うぞ」

氷河「はあああああっ……!」

ヒュゥオオオオオオッ……!


ナターシャ「やめろおおお~~~っ!」


氷河「マーマ……魂無き体とは言え、貴女にこの拳を向ける事を許してください」



氷河「KHOLODNYI SMERCH!!」

ドゴオオオオオ!!



ナターシャ「……ぐうううっ!?」

ナターシャ「か、体が崩れていく……!」

ナターシャ「そんな……こんな所で……!」


氷河「……終わりだ」

ナターシャ「ま、まだ終われるかぁ……!」

ナターシャ「その体……体さえあればぁっ……!」


氷河「まだ動けるか」


ナターシャ「体を寄越せええ~~っ!」


アーニャ「っ……!」


ナターシャ「――っ!?」

ナターシャ「何故だ!? お前は、生き返りたくはないのか!?」


氷河「……何だ? 奴の様子が――」



ナターシャ「――氷河、このまま……私を楽にして」



氷河「な、あっ……!?」

氷河「マーマ……本当の、マーマなのか……!?」


ナターシャ「貴方の魂を感じて、ようやく声を出す事が出来たわ」

ナターシャ「さあ、今のうちに、早く」

ナターシャ「余計な事を言うなああ~~~っ!」

ナターシャ「ひ~っひっひっひ! キグナス! お前に母が討てるものかぁ!」


氷河「お、俺は……一体、どうしたら……!?」


ナターシャ「――ねえ、貴女にお願いがあるの」


アーニャ「……私、に?」


ナターシャ「最期に……歌を歌って貰える?」

ナターシャ「貴女の歌が素敵だと思ってるのは……私達、皆そうだから」


アーニャ「……ダー。わかり、ました」

https://www.youtube.com/watch?v=NXjVQtYNsUI

ナターシャ「……氷河」


氷河「う、ああ……! ま、マーマ……!」

氷河「本当に……マーマなんだね……!」

氷河「会いたかった、ずっと……ずっと会いたかった……!」


ナターシャ「こうやって、大きくなった貴方の姿が見えて嬉しいわ……」

ナターシャ「本当に……本当に、大きくなって」ツーッ…


氷河「俺も……! 僕も……!」

氷河「僕も、今の姿を見て貰えて……嬉しいよ……!」ポロポロッ


ナターシャ「こら、男の子が泣いてちゃ駄目でしょう?」

ナターシャ「さあ……お願い、氷河」


氷河「うん……うん……!」

氷河「マーマにお願いされたら……断れないさ」ポロポロッ

―パァアアアッ!


ナターシャ「……綺麗」


氷河「……神聖衣」

氷河「小宇宙が最大限に高まった時の……このキグナスの聖衣の真の姿」

氷河「地上の平和と……生きとし生ける全ての生命を守る、聖闘士の姿だよ」

氷河「そして、これが……!」

ヒュゥオオオオオオッ……!


氷河「全てを凍りつかせる、絶対零度の凍気!」


氷河「我が師、カミュより受け継いだ……キグナス最大の拳!」



ナターシャ「――スパシーバ……ありがとう」ニコッ



氷河「オーロラエクスキューション!!」



氷河「……マーマ……今度こそ、安らかに――」ツーッ

  ・  ・  ・

アーニャ「ヒョーガ!」


氷河「どうしたアーニャ」

氷河「もうすぐ、LIVEが始まる時間だろう」


アーニャ「見ていっては、貰えませんか?」


氷河「すまないが、俺には聖闘士としての使命がある」

氷河「……それに、君の歌はもう聞かせてもらったからな」


アーニャ「そう……ですか」

アーニャ「スパシーバ、ありがとう、氷河」


氷河「急に改まってどうした」

氷河「……だが、俺からも言わせてくれ」

氷河「あの時、マーマのために歌ってくれた事、感謝する」

氷河「スパシーバ、ありがとう、アーニャ」


アーニャ「また……会えますか?」


氷河「さあな、俺にもわからん」

氷河「いつ、どこで倒れるともわからん身だからな」


アーニャ「アビシシニャーニエ、約束、です!」


氷河「約束か……なら、破るわけにはいかないな」


氷河「男ならば、約束は破るものではない、と」


氷河「……俺は、愛する人、尊敬する人達に教わったのだから――」


https://www.youtube.com/watch?v=80Y-jf8M8Ic



おわり

アナスタシアさんは車田絵と超相性良さそうですよね!
寝ます
おやすみなさい

なんかそのへんはテキトーですね!


ギスギスしたの書きます


「……」


 恋する乙女は無敵、って言うよな?
 いや、あたしの話じゃないからな!?
 そこんとこ、勘違いしないでくれよ!


「……」


 無敵、って言うことは、とにかく物凄いパワーが出てると思うんだよ。
 大した事無い相手だったら、ぶつかっただけで倒せちゃうくらい。
 あー……今のは、ちょっとアレだった、ゴメン。
 今の例え、アイドルっていうか、スターだった。


「……」


 と、とにかくさ! 凄いんだよ、もう!
 ちょっと見ただけで、今までと全然違うんだ!
 輝いてるって言うか……そう、キラキラ!
 目から体から、とにかくもう、すっごくキラキラしてる!


「……」


 あたしは、友達の一人が、その恋する乙女になった瞬間を目的した。


 遠ざかっていく、黒いスーツの、背の高いプロデューサー。


 そのプロデューサーに抱えられているのが、恋する乙女、ってわけ。


 お姫様抱っこだぞ! お姫様抱っこ!
 いやー! いつもはからかわれてばっかりだけど、
今度はあたしがからかう番が回ってきたかー!?


「なあ?」


 ニヤニヤ笑いながら、一緒に居たもう一人の友達を見た。
 ……おいおい、どうしたんだよ、そんな顔して。
 あの人に任せておけば、ちょっとふらついた位なら安心だろ?

  ・  ・  ・

「いやー、あの時の、あの顔!」


 今日は仕事は無かったけど、レッスンはあった。
 最近のレッスンはハードになってきたから、もうクタクタだよ!
 でもま、やりがいがあるから、それも悪くないなって思ってるんだよな。
 っとと、そんな事より、今はこの前の話だった!


「青かった顔が、急に赤くなったからビックリしたぞ!」


 神妙な振りをしてみるけど……やっぱり無理!
 普段のお返しをしなきゃと思うと、どうしても笑っちゃうぜ、へっへっへ!
 ……って、おい、なんでそんなに平然とポテトをつまんでるんだよ。
 それじゃ、からかっても楽しくないだろー!?


「そんなにアタシの心配してくれたんだ?」
「いや、だからそうじゃなくてな!?」
「優しい友達を持って、アタシは幸せ者だねぇ」
「……んぐぐ!?」


 っだー! 駄目だ!
 普段からかわれてるからって、からかい方なんかわかんねーよー!
 おい! お前も何か言ってくれよ!
 何で何も言ってくれないんだよ―!
 もしかして、あたししかからかっちゃいけないルールでもあるのか!? そうなのか!?



「――まあ、プロデューサーは、あれが仕事だから」



 ……――ん?


 なんか、今の……ちょっと、おかしくないか?
 いつもとはちょっと違うって言うか……あー、なんだ!?
 なんだかわからないけど、とにかく、ちょっとおかしい!



「――うん。でも、働いてる男の人って、格好いいよね」



 ……あ、わかった。
 いや、でも……なんでだ?
 ちょっと目を合わせず話してる位で、どうしてこんなにおかしいと思うんだ?


「そうかな? だったら、働いてる男の人だったら、全員格好良く見える?」


 おい、お前ら……なんで、さっきから目を合わせないんだ?


「どうだろうね。でもさ、やっぱり頼りがいが有ると良いよねー」


 なんだよ……やめろよ、この感じ。


「だったら、‘私の’プロデューサーは失格かな」


 割って入……れない。


「そう? 頼れると思うな、‘シンデレラプロジェクトの’プロデューサー」


 今のあたしには、二人の間に割って入るだけのパワーが無い。


「案外抜けてる所もあるよ……知らないだろうけど」


 もしも、割って入ったら――


「ふふっ! そういうギャップもあるんだ……良いよね、かわいいじゃん」


 ――簡単に、消し飛んじゃう。


 でも、駄目だ、このままじゃ。
 このまま放っておいたら、絶対に良くないことになる。
 なんとか、二人を止めなくちゃいけない。


「い、いやー! あたしの魅力も、そういうギャップかなー!」


 ……って、この入り方は我ながら雑すぎるうう!


「……そうだね、案外乙女な所もたくさんあるし」
「……可愛い服とか着て、照れてるのもねー」


 良かった。


「お、お前らなぁ!?」


 なんとか、なった。

  ・  ・  ・

「……はぁ」


 休憩スペースで、一人、ため息を吐き出す。
 二人の様子は、なんだかずっとおかしい。
 一緒にいると楽しいは楽しいんだけど……さ。
 時々、んー、緊張感? みたいなのが走るんだよ。


「……なーんでかなぁ」


 まあ、あたしだって、これでも花も恥じらう乙女だからな。
 理由なんて、とっくにわかってるんだよ。
 でもなぁ……どう考えても、その……可能性なんてないだろ!?
 それなのに、なんで、あんな感じになっちまうんだよ。


「……ばーか」


 とっとと諦めるか、玉砕しちまえってんだ。
 ……とは、思えないんだよな。
 だって、二人共、大切な友達だから。
 だからさ、出来れば……実って欲しい、なんて思っちゃうんだよ。


「……はぁ」


 多分だけど、あいつらのどっちもそう思ってるんだよな。
 だけど、自分は諦めたくないんだ。
 それで、相手に諦めて貰おうとしてる。
 相手よりも自分が先へ……少しでも、相手の足を止めて。


「……なーんでかなぁ」


 ほんと……ユニット内で、真剣勝負なんてするなよなぁ!
 やるんだったら、とっとと決着をつけてくれよ!
 そりゃ、お前らは当事者だから良いだろうけどさ?
 それを間近で見てるあたしの身にもなってみろっての!



「……ばーか!」
「っ!? す、すみません……?」



 頭の中がグチャグチャしてて、気づかなかった!
 っていうか、違う!
 今のは、プロデューサーさんに言ったわけじゃ……あれ?
 この人にも、文句言っても良いんじゃないか、あたしは!?

  ・  ・  ・

「……正直に、ですか?」


 ……まあ、文句なんて言えないんだけどさ。
 二人の気持ちをあたしが言うのは、駄目だろ?
 だけど、この人の考えも、ちょっと気になるんだよ。
 あの二人の事をどう思ってるか、って。


「うん。正直に」
「そう、ですね……」


 缶コーヒーを片手に、ちょっとリラックス……してた、のかな?
 まあ、なんだか、落ち着く空気を出してたプロデューサーさんの空気が、変わった。
 目付きも鋭く、あいや、元々鋭いんだけど……ああもう、わかるだろ!?
 すっごく、真剣な顔になったんだよ。
 だから、質問したのを一瞬後悔したけど――


「お二人は――とても、素晴らしいアイドルだと思います」


 ――ほんと、後悔なんて一瞬だった。


「歌唱力、ルックス共に非常に水準が高く、ダンスの上達ぶりも素晴らしいです」


 二人はアイドルで、この人は、プロデューサーなんだ。
 プロデューサーさんは、あくまでも二人をアイドルとしてしか見ていない。
 ……だけどさ、あたしは思うんだよ。


「それに、近頃は、彼女たちの輝きが増しているように見えます」


 アイドルとしてでもさ、こんなに真剣に見てくれるって、良いな、って。
 真面目で、誠実で、不器用で……まあ、鈍感で。
 そんな人に見ていて欲しいと思うのは、当たり前なんじゃないか、って。


「何か、きっかけがあったのだろうと、そう、思います」


 ……訂正。
 アンタ、超鈍感だな!



「なので――今、心配なのは、貴女です」



 ……へ? あたし……?


「最近の貴女は、何か、悩みを抱えている様子なので」


 ちょっ、ちょ、ちょっと待ってくれ!
 あんた、あたしの事も見てたのか!?
 た、担当でも無いのに!?
 うわ……ちょっと、はぁ!?


「え、えっと……どうして、そう思ったんだ?」


 落ち着け! とにかく落ち着け、あたし!
 この人は、別にあたしの事だけを見てたわけじゃないぞ!
 仕事だから! アイドルを見るのは!
 プロデューサーだったら、当然の事だっての!



「笑顔です」



 ……――あ。


「笑顔が、少し、曇っているように見えましたので」


 ――これ、


「私は、貴女の笑顔にかかった雲を払う手伝いをしたいと、そう、思っています」


 ――やばい――!


「私に、何か出来る事はありませんか?」


 ……いや、もう、無い……というか、無くなった。


「……――ううん、大丈夫!」


 そっかぁ、二人共、こんな感じだったんだな。
 これは無敵だ、負ける気がしない。
 でも、相手も無敵だから……ははっ、どうやって勝つんだこれ!


「ありがとなっ! おかげで、楽になった!」
「いえ……私は、まだ、何も……」


 いいや、そんな事ないって!


「プロデューサーさんには、パワーを貰った!」


『好き、大好き』


 この人、どうしてたまに意地悪になるのかしら!
 恥ずかしいから、やめて欲しいってわかってるくせに!


「ちょっ……と!」


 背中から手を伸ばしても、この人が手を伸ばすと、届かない。
 左手を前に出して、画面をこちらに向けている。
 まるで、二人で見よう、って感じね!


『貴方と居ると、私はとっても幸せ』


 もう……もう!


『一緒に居るだけで、世界がキラキラして見えるの』


 ……もう。


『貴方は、どう?』


 後ろから、彼の首筋に額をこすりつける。
 ここまで自分をさらけ出した姿を自分で見るのは、ちょっとした拷問よ?
 もしかして、昨日飲みすぎたから、お仕置きも兼ねてるのかしら。
 ひどいわ、私を弄ぶなんて!


『もう嫌! 見てられないわ! 無理! 無理だわ!』
『返事は直接聞いて! もう帰る! 死にたくなるもの!』


『『帰る! 次の飲み、覚えておきなさい!』』


 ……すみません。
 私ったら、自分のことばっかり、考えちゃってました。
 今も、彼の右手が私の寝癖をいじってて、私はお返しに彼の寝癖をいじってて……。
 ふふっ、楽しくなってきちゃった!


「うふふっ、それじゃあ……聞かせて貰える?」


 ベッドに膝立ちになって、座る彼に覆いかぶさる。
 こうすれば、言葉に出す他、無いでしょう?
 昨日の夜は、チュウで、注意を逸らされちゃったから。


 思わぬ反撃で照れているのか、彼の耳は赤く染まっていた。
 それが可愛くて、愛おしくて、私は彼の耳を人差し指で弄び、言葉を待った。




おわり

地続きだったので、次は台本で
寝ます
おやすみなさい

書きます


武内P「! すみません、クシャミが……」

武内P「ヘプチッ!」

奏「……」

文香「……」

ありす「……」

武内P「……失礼しました。では、打ち合わせの続きを」

奏「待って、ちょっとストップ」

武内P「はい?」

奏「ねえ、今の可愛らしいのは、何?」

武内P「クシャミ、ですが……可愛らしい、ですか?」

奏「本当に? わざとじゃなく?」

武内P「はい。申し訳、ありません」


文香「まだ、少し冷えますからね……」

そっ…


武内P「あの、鷺沢さん? どうして肩がけを私に……?」

奏「落ち着いて文香、母性本能が全開になってるわ」

文香「風邪を引いては……いけませんから」

武内P「いえ、ですがこれでは、鷺沢さんが……」

文香「お母さんは……大丈夫ですよ」

奏「文香、聞いて」

文香「はい……? 何でしょうか?」

奏「彼は、貴方の子供じゃないの」

文香「……確かに、そうかもしれません」

奏「わかってくれて良かったわ」


文香「ですが……母が子を想う気持ちに、偽りなどあるでしょうか?」


奏「何にもわかってなかったわね」

武内P「……これは、お返しします」

文香「えっ? そんな……どうして?」

奏「どうしても何も、彼は貴女よりも大人でしょう」

文香「余計なお世話、でしたか?」

武内P「いえ、お心遣いは、とても嬉しいと思います」

文香「だったら……!」


武内P「ですが、そのせいで貴女が風邪を引いては、いけませんから」


文香「……!」

文香「ああ……なんて立派に育ったの……!」


奏「出会った時から育ちきってたでしょう」

武内P「それでは、打ち合わせの続きに戻りましょう」

奏「貴方、意外と動じないのね」

武内P「私は、プロデューサーですから」

文香「終わったら、暖炉の前で本を読んであげますね」

奏「暖炉なんか無いわよ、文香」

武内P「それでは……すみません、また――」


武内P「ヘプチュンッ!」


ありす「仕方ありませんね。私が、隣でくっついて暖めてあげます」


奏「……今度は、ありすちゃんが、お母さんなの?」

ありす「ありすちゃんじゃありません」

ありす「お姉ちゃんです」

奏「……ああ、そう」

ありす「本当に、世話が焼ける人ですね」

武内P「いけません、橘さん」

ありす「お姉ちゃん、です」

文香「ありすちゃん、とっても優しく育って……」

奏「そのメンバーで、どうして彼が一番年下の設定なのよ」


武内P「私はプロデューサーで、橘さんは、アイドルです」


ありす「だけど、私はお姉ちゃんです!」


武内P「仕事と、プライベートは分けなくてはいけません」


ありす「なるほど……弟の癖に、やりますね」

奏「落ち着いて、弟じゃないわ」

武内P「度々、話が中断してしまって、申し訳ありません」

文香「良いのですよ、とても頑張っているのは、わかりますから」

ありす「お姉ちゃんは、そんな小さい事は気にしないです」

奏「……早く、打ち合わせを終わらせましょう」

武内P「そうですね。あまり、時間を取らせる訳にはいきませんから」

奏「そうじゃなくて、これ以上は――」


武内P「ヘプチッ!」


奏「――いけないと思うのよ」

武内P「すみません……これ以上はいけない、とは?」

奏「クシャミばっかりして、しょうがないわね」

奏「ほら、お鼻チーンしてあげるから、顔をコッチに向けて」

武内P「いえ、速水さん……それは、遠慮しておきます」

奏「ふふっ、もしかして、恥ずかしがってるの?」

奏「そういうチャーミングな所、変わらないわね」

武内P「いえ、アイドルと、プロデューサーですので」

文香「でしたら……私が、鼻をかんであげましょう」

ありす「もう! 本当に、お姉ちゃんっ子なんですから!」


武内P「いえ、鼻は自分でかみます」


奏・文香・ありす「……反抗期……!?」


武内P「違います」

文香「お母さんの事が、嫌いになりましたか……?」オロオロ

武内P「いえ、母との関係は良好です」

ありす「お姉ちゃんに、あ、甘えても良いんですよ?」オロオロ

武内P「申し訳ありません、遠慮しておきます」

奏「と、歳の離れたお姉ちゃんなら、良いと思わない?」オロオロ

武内P「むしろ、橘さんよりも年齢は近付いています」


武内P「私は、子供ではありませんから」

武内P「鼻は、自分でかもうと、そう、思います」


奏・文香・ありす「……成長期……!」


武内P「違います」

文香「いつのまにか、本のページは……進んでいたのですね」

武内P「私の人生の序章は、見せていないと思います」

ありす「なんだか、追い越された気分で、ちょっと悔しいです」

武内P「前を行っていると思われていたのは、ショックです」

奏「ふふっ、貴方ももう子供じゃない、大人の男性って事かしら?」

武内P「未成年の方に、言われる台詞だとは思えません」


武内P「貴女達は、アイドルであり、私はプロデューサーです」

武内P「それ以前に、私のような成人男性の鼻をかもうとするのは、いけません」


奏・文香・ありす「……思春期……?」


武内P「違います」

文香「す、すみません……お母さん、気が付かなくて///」アセアセ

武内P「鷺沢さん、それは、気のせいです」

ありす「おっ、お姉ちゃんが、責任をもって色々教えてあげます///」ワタワタ

武内P「橘さん、責任を取るのは、私になってしまいます」

奏「あら、鼻をかむのじゃ満足出来ないなら、キスの方をお望みかしら?」ニコリ

武内P「速水さん、いい笑顔ですが、微塵も望んでいません」


武内P「皆さん、仕事をしましょう」

武内P「アイドルとして……すみません、少し」

武内P「ケホン、ケホンッ!……ウー」

武内P「……失礼しました。アイドルとして、輝くための――」


奏・文香・ありす「救急車! 110番!」


武内P「違います」

文香「救急車を呼ぶには……書には、タウンページ……!」パラパラッ

武内P「鷺沢さん、そのまま慌てていてください」

ありす「クシャミとセキが出る症状を検索します!」カタカタ…ッターン!

武内P「橘さん、ただ部屋が乾燥しているだけです」

奏「ど、どうしたら良いのかしら……!? キス? キス!?」オロオロ

武内P「速水さん、それは新たな問題が生まれるだけです」


ガチャッ!


凛「おはよう。ごめん、前の仕事が長引いて」

アーニャ「ドーブラエウートラ、おはよう、ございます」


文香・ありす・奏「良い所に! 助けて、二人共!」


凛・アーニャ「は?」


武内P「お願いします、助けてください」

  ・  ・  ・

凛「ふーん。それで、三人はあんなに慌ててたんだ」

アーニャ「ふふっ! 三人共、とっても可愛い、です♪」

文香「クシャミを聞いた時から、自分が抑えられなく……」

ありす「あんなに可愛いの、ギャップで卑怯だと思います!」

奏「二人共、とっても慌ててたものね。ふふっ、チャーミングだったわよ」

凛「一番慌ててた人が言う台詞じゃないと思うけど」

アーニャ「シトー? 前は、リンが一番慌てていましたね?」

凛「……そういうの、言わなくていいから」


武内P「ありがとうございます。おかげで、打ち合わせが終わりました」


凛「うん」

アーニャ「ダー♪」

奏・文香・ありす「……」

  ・  ・  ・

文香「二人共……随分と、慣れているのですね」

凛「そうだね。みんなよりも、付き合いは長いから」

ありす「私達も、慣れれば平気になるんでしょうか……」

アーニャ「ダー♪ アリス達なら、きっとすぐに慣れます」

奏「そういうものなの? よく、わからないんだけど……」


武内P「紅茶が、すっかり冷めてしまいましたね」


凛「舌を火傷するより、良いんじゃない」

凛「それより、ちゃんとカフェインは控えてる?」

凛「子供じゃないとはわかってるけど、夜、眠れなくなるでしょ」


アーニャ「クシャミと、セキをしていたそうですね?」

アーニャ「寝る前に、あったかいミルクを飲んで、ちゃんと、寝ましょう」

アーニャ「スタラーニエ、努力も良いですが、休むのも大事、です」


奏・文香・ありす「……慣れ?」

文香「あの……慣れるとは、こういう事なのでしょうか?」

武内P「いえ、違います」

凛「とりあえず、飲み物を飲んだから背中ポンポンしようか」

ありす「私達よりも、ひどい事になってませんか!?」

武内P「はい、その通りです」

奏「乳幼児扱い? これは、さすがに見てられないわね……」

アーニャ「ダー。ゲップをしないで寝たら、大変、です」

武内P「皆さんは、諦めないでください」

武内P「慣れというのは、諦める事によって起こるものでは――」


武内P「ケプッ!」


武内P「――いけませんから」


凛・アーニャ・文香・奏・ありす「は~い、上手に出来ましたね~♪」ニコリ


武内P「良い、笑顔です」

武内P「私は、諦めました」



おわり

まんこ「左手薬指の指輪何?」

武内「心に決めた女の子おるから魔除けやで」

まんこ「私等魔物か!」

の流れは中々草

書きます


武内P「魔除けとしての意味合いもあります」

ちひろ「魔除け、ですか?」

武内P「はい」

武内P「……心に決めた女の子が居る、という意味もありますが」

武内P「私は、プロデューサーである、と」

武内P「そういった意味合いが込められています」

ちひろ「でも、魔除けって……」

武内P「……少し、過激な表現だったでしょうか」


ちひろ「意味、あるんですか?」


武内P「……」

武内P「はい?」

武内P「意味があるか、とは?」

ちひろ「多分ですけど、その指輪を見て……」

武内P「私は、そういった対象ではない、と知って貰うためですね」

ちひろ「プロデューサーさん、悪いことは言いません」

武内P「? 何、でしょうか?」


ちひろ「ランダムエンカウントの魔物には、装備品の類は効果があります」

ちひろ「けれど、シンボルエンカウントの魔物には、効果がありません」

ちひろ「……いえ、むしろ、逆効果ですよ」


武内P「そう、でしょうか……?」

ガチャッ!


未央「おっはよー!」

卯月「プロデューサーさん、ちひろさん、おはようございます♪」

凛「おはようございます」


ちひろ「! いけない、今すぐに外してください!」

武内P「えっ? いえ、あの」

ちひろ「早く隠して! 見つかったら――」

武内P「あの、何故――」

――キランッ!


未央・卯月・凛「指輪?」


ちひろ「……くうっ! 遅かった!」

武内P「えっ?……えっ?」

武内P「あの、皆さん……この指輪は――」


未央「――嬉しい、プロデューサー!」

卯月「――きっ、気が早いですよ、プロデューサーさん!」

凛「――ふーん。そういうデザイン、悪くないかな」


武内P「!?」

ちひろ「これが、シンボルエンカウントです」

武内P「み、皆さん! 私は、心に決めた方が――」


未央「ちょっ、ちょっと! 二人が居るのに、まずいって!」

卯月「あと1年で、18歳になりますから! それまで、我慢しますっ!」

凛「私、ウェディングドレスのデザインは、もう決めてあるから」


ちひろ「ねっ? こうなるんですよ」

武内P「……!?」

  ・  ・  ・

武内P「まさか……こんな事になるとは」

ちひろ「プロデューサーさん、諦めて指輪外しましょう?」

武内P「……いえ、それは出来ません」

ちひろ「どうしてですか?」


武内P「今、これを外すことは、自分を偽る事になってしまうからです」

武内P「自分を偽って、彼女達と接するのは、詐欺のようなもの」

武内P「私は、彼女たちに対しては、常に誠実で、正直でいたいのです」


ちひろ「プロデューサーさん……」

武内P「わかって、いただけましたか?」


ちひろ「あの……口で言えば、早いのでは?」


武内P「それはそれ、これはこれです」

ガチャッ!


美波「おはようございます、プロデューサーさん、ちひろさん」

アーニャ「ドーブラエ ウートラ、おはよう、ございます」

蘭子「煩わしい太陽ね」


ちひろ「はい、おはようございます」

武内P「おはようございます、新田さん、アナスタシアさん、神崎さん」

――キランッ!


美波・アーニャ・蘭子「指輪?」


ちひろ「……さっきの言葉、後悔しないでくださいね」

武内P「はい、勿論です」

武内P「この指輪は、心に決めた女――」


新田「――体が決めちゃった男が居るってことですか!?」

アーニャ「――私とペアになる、パダーラク、アー、贈り物の指輪ですね?」

蘭子「――心? 否! 私と我が友は、心よりも深い、魂で結ばれている!」


武内P「千川さん、助けてください」

ちひろ「ご自分で何とかなさってください」

武内P「……皆さん! この指輪は――」


美波「良いんです! そうしたら、三人でしましょう!」

アーニャ「スパシーバ! 嬉しい、です! ずっと、一緒、です!」

蘭子「ニーベルンゲンの指輪……ククク、戦乙女たる我にこそ相応しい!」


武内P「……何でも、ありません」

ちひろ「……」

武内P「お願いします。そんな目で見ないでください、千川さん」

  ・  ・  ・

武内P「……皆さん、良い、笑顔でした」

ちひろ「どうするんですか?」

武内P「……きっと、誤解だとわかってくれるはずです」

ちひろ「だと、良いですね」


武内P「私は、彼女たちのプロデューサーです」

武内P「隣に立って歩くのではなく、導いていきたい」

武内P「その証明が、この指輪なのです」


ちひろ「プロデューサーさん……」

武内P「わかって、いただけましたか?」


ちひろ「私じゃなく、本人たちに言っては?」


武内P「善処します」

ガチャッ!


智絵里「お、おはようございます……」

かな子「おはようございまーす。お菓子、買ってきたんですよ♪」

杏「ふわ~あ……ねえ、今日の仕事は無しにしない?」


ちひろ「はい、おはようございます」

武内P「おはようございます、緒方さん、三村さん、双葉さん」

――キランッ!


智絵里・かな子・杏「指輪?」


ちひろ「プロデューサーさん、しっかり説明お願いしますね」

武内P「はい。彼女たちは、常識的なので、きっと」

武内P「皆さん、私は、心に決めた方がいます」


智絵里「――おっ、おめでとうございます! えへへ、良かったですね♪」

かな子「――うわぁ、素敵ですね! どんな人なんだろう~?」

杏「おー、おめでとー。とりあえずさ、お祝いに今日はお休みにしようよ」


武内P「見てください、千川さん!」

ちひろ「見てますよ」

武内P「皆さん! この指輪は――」


智絵里「でも、わたしは見捨てませんよね? ねっ? 見捨てないですよね?」

かな子「甘いかなぁ、それとも、しょっぱいかなぁ? 美味しいと良いなぁ!」

杏「それでさ、杏は部屋でひっそりと死ぬよ。ま、しょうがないよね」


武内P「ちょっとしたファッションです」

ちひろ「プロデューサーさん?」

武内P「無理です。これは、無理です」

  ・  ・  ・

武内P「……違います」

ちひろ「ちょっとしたファッション、ですか?」

武内P「ふぁ、ファッション性! それもある、という意味です!」

ちひろ「ふうん?」


武内P「彼女たちの、強い想い」

武内P「それが感じられて、嬉しい気持ちがないと言えば嘘になります」

武内P「ですが、私はプロデューサー」

武内P「彼女たちは、私が担当するアイドルなのです」


ちひろ「プロデューサーさん……」

武内P「わかって、いただけましたか?」


ちひろ「あの子達へのフォロー、どうするつもりですか?」


武内P「……企画、検討中です」

ガチャッ!


きらり「にゃっほーい! おっすおっす☆」

莉嘉「Pクン、ちひろさん、オッハヨー!☆」

みりあ「プロデューサー、ちひろさん、おはようございます!」


ちひろ「はい、おはようございます」

武内P「おはようございます、諸星さん、城ヶ崎さん、赤城さん」

――キランッ!


きらり・莉嘉・みりあ「指輪?」


ちひろ「まだ、続けるんですか?」

武内P「はい、これは必要な事ですから」

武内P「皆さん、私は心に決めた女の子がいます」


きらり「――えっ? そ、そうだよにぃ、Pちゃん、とぉってもステキだもん!」ジワァ…

莉嘉「――心に決めたって……あ、アタシまだJCだよ、Pクン!?///」

みりあ「――ねえねえ、それは本当に、プロデューサーに良い事なのかな?」


武内P「なんとなく、わかっていました」

ちひろ「頑張ってください」

武内P「……皆さん! この指輪は――」


きらり「Pちゃんがハピハピでぇ、きらりも、は、ハピ……うぇっ、ハピ、だゆ!」ポロポロッ…

莉嘉「良い事思いついちゃった!☆ お姉ちゃんと、偽装結婚するの!☆」

みりあ「あのねあのね、心が決めた事が、正しいとは限らないんだよ?」


武内P「おや? この指輪、いつの間に指についていたのでしょうか……?」

ちひろ「プロデューサーさん?」

武内P「待ってください。これは、仕方ないと思いませんか?」

  ・  ・  ・

武内P「何とでも、仰ってください」

ちひろ「プロデューサーさんが、自分でつけた指輪ですよね?」

武内P「もっと、こう……自然な感じで諦めてくれると、そう、思ったのですが」

ちひろ「女の子って、時に凄いパワーを出すんですよ」


武内P「私も、驚いています」

武内P「普段接してきただけでは見ることの無かった、彼女たちの素顔」

武内P「そういった部分も含めて、今後のプロデュース方針を決めようと思います」

武内P「良い、経験になりました」


ちひろ「プロデューサーさん……」

武内P「わかって、いただけましたか?」


ちひろ「指輪の話、どうするんですか?」


武内P「……待ってください、考えます」

ガチャッ!


みく「おはようございまーす」

李衣菜「おはようございます」


ちひろ「はい、おはようございます」

武内P「おはようございます、前川さん、多田さん」

――キランッ!


みく・李衣菜「小銭?」


ちひろ「この子達相手に、する必要ありますか?」

武内P「無いと思いますが、一応」

武内P「お二人とも、私は、心に決めている事があります」


みく「――待ってPチャン! みく、その先の台詞を当ててみせるにゃ!」

李衣菜「――おもしろいね、みくちゃん! どっちが当てるか、勝負しよう!」


武内P「とても、安心します」

ちひろ「プロデューサーさん? 趣旨が違いますよね?」

武内P「……すみません、もう少しだけ、彼女たちを見させてください」


みく・李衣菜「ズバリ! アイスを買ってきて欲しい!」

みく「味は、バニラにゃ!」

李衣菜「味は、チョコですね!」

みく・李衣菜「はあっ!?」

みく「何言ってるにゃ李衣菜ちゃん! Pチャンは、ぜ~ったいバニラ!」

李衣菜「わかってないなぁ! ロックなチョコ味が好きだね、絶対!」

みく・李衣菜「う~っ……解散!」


武内P「二千円お渡ししますので、好きなだけ買ってきてください」

ちひろ「癒やされてどうするんですか」

  ・  ・  ・

武内P「バニラとチョコ、どちらも良さがありますね」

ちひろ「私も買ってもらっちゃって、ありがとうございました」

武内P「いえ、千川さんには、いつもお世話になっていますから」

ちひろ「それで、指輪の話はどうするんですか?」


武内P「彼女たちは、素晴らしいアイドルです」

武内P「私は、彼女たちの、輝くような笑顔を見ていたい」

武内P「ですが、この指輪を見ていれば、意識してくれると思います」

武内P「そのためならば……鬼になる必要が、あるのかもしれません」


ちひろ「プロデューサーさん……」

武内P「わかって、いただけましたか?」


ちひろ「その黒い革手袋はなんですか? 鬼の手ですか?」


武内P「……私は、人の心こそが、一番の武器だと思います」

ちひろ「……まあ、最初からこうなるだろうとは思ってました」

武内P「千川さん?」

ちひろ「指輪、外したほうが良いんじゃないですか?」

武内P「それは……出来ません」

ちひろ「どうして?」


武内P「私の心は、もう既に決まっているからです」

武内P「この指輪を外すことは、それを覆すことになります」

武内P「それだけは、したくありませんから」

武内P「……すみません、ワガママを言ってしまって」


ちひろ「プロデューサーさん……」

武内P「わかって、いただけましたか?」


ちひろ「……まあ、そういう事なら、仕方ないですね」


武内P「はい。ありがとう、ございます」

  ・  ・  ・

ちひろ「プロデューサーさん、どうするんですか?」

武内P「……私にも、わかりません」

ちひろ「でも、どうにかしないと、いけませんよね」

武内P「……」


ちひろ「皆、同じデザインの指輪、付け出しましたね」


武内P「彼女たちアイドルは、時に私達の思惑も超える」

武内P「……それを痛感しました」

ちひろ「あのデザインの指輪、他のアイドルの間でも流行ったみたいですよ」

武内P「……そう、ですか」


ちひろ「ほら、私もつけてるんですけど、似合いますか?」

――キランッ!


武内P「……新しい魔除けが、必要ですね」


ちひろ「はい、よろしくお願いします」



おわり

Jackの流れ、マフィア梶田の好感度が爆上がりしました
寝ます
おやすみなさい

美味しいから大丈夫だよ、でうんこ食わせるかな子さんを思い浮かべずにはいられない


「……」


 本当はわかってる、わかってるんです。
 きらりが、他の皆に比べて、きゃわゆくないなんて。
 変わってるって言われるけど、心ではどう思ってるかなんて。


 ――大きい……のに。


 ――大きい……癖に。


「……」


 ……きらりだってね、自分でもそう思う時があるんだゆ?
 でもねぇ、Pちゃんは違ったの! びっくり!
 きらりの事、いっかいもそーゆー風に思った事が無いでしょ? でしょ?
 それって、きらり的には、と~ってもオドロキ☆ ドキドキ☆


「……」


 それがね、きらりにとって、どれだけハピハピで、うれすぃーか、わかるかなぁ?
 Pちゃんは、男の人だから、わからないかもしれないにぃ。
 Pちゃんも、きらりよりおっきぃから、ちょっとだけわかるかなぁ?


「……」


 本当は、うれすぃー気持ち、ぜーんぶ知ってほしいにぃ。
 このまま後ろから、ぎゅーってしたいんだゆ!
 それでそれでぇ、どれだけだーい好きか言っちゃうの!
 それでね、このキュンキュンをね、チューって、ちゅーにゅー! チュッ☆


 ……でも、しないゆ。


 そんな事したら、きっとPちゃんはきらりから離れてっちゃうにぃ。
 プロデューサーと、アイドルだからぁ、えちぃのはメッ! って!


 ……そんなの、イヤ……イヤ、イヤ、イヤ――


「――はいっ! きらりんパワー、チャージ完了だゆ!」


 ごめんにぃ、せっかくスヤスヤーしてたのに起こしちゃう。
 でもね、そうじゃないと、


「っ! す……すみません、少し、寝ていました」


 にょわぁ……きらり、何するかわかんなかったの。


「うぇへへ! きらりんマッサージで、ハピハピしたぁ~?」


 あぶあぶ! もうちょ~っとだけでもああしてたら、大変だったにぃ!
 きらりんキュンキュン乙女パワー! が、はじけちゃう所だったゆ!


「ありがとうございます。かなり、疲れが取れました」
「にょわー☆ Pちゃんがハピハピで、きらりもうれすぃー☆」


 うっきゃー、Pちゃん、とぉ~っても喜んでくれたにぃ! いぇーい!
 お疲れモード、しゅーりょー! りらくす、りらーっくす☆
 ……でも、そうしたら、Pちゃんはまた頑張っちゃうんだよにぃ。


「諸星さん? どうか、されましたか?」


 あっ、いっけなぁい!
 Pちゃんに、心配してゆ、ってバレちゃダメダメ!
 バレちゃったら、Pちゃんは、心配させないようにぃ~、って、隠します! ドロン!
 そんなの、も~っと疲れるようになるすぃー……かなすぃーにぃ。


「なんでもないにぃ! それよりぃ、もうお昼の時間だゆ!」
「……もう、そんな時間でしたか」


 がんばり屋さんでも、ゴハンはちゃ~んと食べなさい!
 そうじゃないとぉ、お腹ペコペコで、バタンキューしちゃうにぃ!
 そうなったら、Pちゃん、プロデュース出来ちゃくなっちゃうゆ!
 うぇへへ! だから、大人しくランチターイムっ☆


「まだ……カフェの席は空いていると思います」


 うんうん! きらりもそう思うゆ!
 だけど、急がないとペコペコさん達大集合! Pちゃんピーンチッ!
 ふふふー! こんな事もあろうかと!
 きらりんマッサージで、疲れはピューッ! 飛んでってるにぃ☆



「よろしければ、諸星さんも一緒にいかがですか?」



 きらりはどうしようかな~? 何を食べようか迷っちゃうにぃ。
 お外にお散歩に行くのも、気持ちいいだろうしぃ。
 にょわー……ハピハピなのは、何だろ? どれだろ?

 
 ――って……


「……ふぇ?」




おわり

>>542良いよなぁ、エログロ変態馬鹿の4つをいっぺんに出来る
全年齢の板じゃなかったら絶対書いてたと思います
寝ます
おやすみなさい

書きます


武内P「苦手なタイプ、ですか」

未央「プロデューサーにもあるのかなぁ、って思ってさ」

武内P「あまり、考えたことはありませんでした」

未央「じゃあさ、強いて言うなら?」

武内P「強いて言うなら……そうですね」


武内P「あまり、グイグイ来られるのは、どうも苦手です」


未央「あー」


莉嘉・みりあ「……」

未央「それ、見ててわかるよ?」

武内P「そう、ですか?」

未央「うんうん、ドギマギしてるなー、って思って見てる」

武内P「……情けない話だとは、思うのですが」

未央「ま、まあ、良いんじゃない?」


未央「誰にだって、苦手なタイプの一つや二つあるって!」


莉嘉・みりあ「……」

  ・  ・  ・

莉嘉「……そっか、Pくんグイグイ来られるの苦手なんだ」

みりあ「……うん、そうみたいだね」

莉嘉「苦手、ってことはさ?」

みりあ「うん、苦手ってことは――」


莉嘉・みりあ「弱点だ!」


莉嘉「弱点ってことは、効果バツグンってコトだよね!☆」

みりあ「それに、ええっと……ドキドキしてるって、未央ちゃんも言ってた!」

莉嘉「そっかー! Pくん、アタシ達に弱いんだぁ☆」

みりあ「ねえねえ、困ってたんじゃなくて、ドキドキしてたのかな?」

莉嘉「ヤバーイ☆ アタシ達の魅力に、Pくんダウン寸前だった!?」

みりあ「わーっ! だとしたら……えへへ、照れちゃうね!」

莉嘉「よーっし! これからはさ?」

みりあ「もっと、もーっと――」


莉嘉・みりあ「グイグイ行こー! おーっ!」


美嘉「……って、アンタ達何の話してるの?」

莉嘉「あっ、お姉ちゃん!」

みりあ「美嘉ちゃん!」

美嘉「ヤッホー★ なんだか、随分盛り上がってたじゃん」

美嘉「グイグイ行くとか何とか、一体どうしたの?」


莉嘉「アタシ達、Pくんの弱点を見つけたの!」

みりあ「うんっ! 弱点をついたらね、ドキドキしちゃうんだよ!」


美嘉「オッケー★ メモの用意は出来たから、聞かせて貰える?」

  ・  ・  ・

美嘉「グイグイ、ねぇ」

美嘉「……そんなので、ホントに効果あるの?」

莉嘉「えーっ! あるよー! ホントなんだって!」

みりあ「あるある! だって、プロデューサー自分で言ってたもん!」

美嘉「ふーん? あ、ちょっとタイム……自分で言ってた、と」

美嘉「それで、二人はアイツにこれからグイグイ行こー、って話してたんだ」

莉嘉・みりあ「うんっ!」

美嘉「……」

美嘉「……ねえ、二人共」

莉嘉・みりあ「何?」

美嘉「――アイツをドキドキさせました★」

莉嘉・みりあ「うん」

美嘉「――アイツがダウンしました★」

莉嘉・みりあ「うん」

美嘉「――それから?」


莉嘉・みりあ「ゲットだぜ!」


美嘉「はーい、ストップ!」

莉嘉・みりあ「えーっ!? なんで!?」

美嘉「ねえ、弱点をつくのって、ズルいと思わない?」

莉嘉「えっ? こういうのって、戦いだよね?」

みりあ「うんうん、勝つためには、時にズルも必要だよね?」

美嘉「おっと、手に負えない感じが出たぞ~★」

美嘉「……でもね? アイツは苦手だ、って言ってたんでしょ?」

莉嘉「えっ? だけど、早いもの勝ちだからしょうがなくない?」

みりあ「うんうん、むしろ、チャンスを逃がす方がマヌケだよ?」

美嘉「おっと、そうきたかー★」

美嘉「うーん、何て言えば良いのかなぁ」


美嘉(――考えろ! 考えるんだ、アタシ!)

美嘉(このままじゃ、アイツが二人に先にゲットされちゃう!)

美嘉(DOKIDOKIして、Romanticが始まっちゃう!)

美嘉(二人を止めつつ、アタシが……ぐ、グイグイ行くには!?)

美嘉(そもそも、グイグイって何!? どうすれば良いの!?)


美嘉「……!?」

莉嘉「お姉ちゃん? どうしたの?」

みりあ「美嘉ちゃん、なんだか難しい顔してる」

美嘉「……」


美嘉「カリスマJK、城ヶ崎美嘉のー!」

美嘉「TOKIMEKI★クエスチョンのコーナー!★」

美嘉「イエーイッ!★」


莉嘉・みりあ「い、いえーい」

美嘉「はーい、最初の質問をするよー★」


美嘉「ズバリ! 二人は、どんな風にグイグイ行くのかなー?」


莉嘉・みりあ「えっ、ええと……」

莉嘉「後ろからコッソリ近づいてぇ、ギューって抱きついちゃう☆」

みりあ「あっ、内緒話をするフリして、ほっぺにチュッてしちゃうの!」


美嘉「そんなの出来ない! 無理! 死んじゃう!」


莉嘉・みりあ「えっ?」

美嘉「そんなの死ぬよ!? 良いの!?」

莉嘉「ええっ!? 弱点を突きすぎると、死んじゃうの!?」

みりあ「えーっ!? そんなのイヤだよ! やだやだ!」


美嘉「……次の質問! イエーイッ!★」

莉嘉・みりあ「イエーイッ!」

美嘉「ズバリ! グイグイじゃなく、クイクイ、ぐらいだったら!?」


莉嘉・みりあ「く、くいくい……?」

莉嘉「ええと……あっ、そうだ! 小指に小指を絡ませちゃう☆」

みりあ「えっとえっと……頭撫でてーって、おねだりとか!」


美嘉「はああっ、あっ、あっ、死にます! 死にます!」


莉嘉・みりあ「ええっ!?」

美嘉「なんて……なんて、ヤバ、チョーヤバいって……!」

莉嘉「今のでも駄目なの!? 大丈夫だと思うよ!?」

みりあ「うんうん! そこまで弱いはずないよー!」


美嘉「……二人もさ、もう少し大きくなればわかるかな」

美嘉「ちょっとした事だと思ってても、実は凄い事だったりするんだ」

美嘉「えっ? こんな事で?」

美嘉「……って言うのが、案外ヤバかったりするんだって」


莉嘉「……そっかぁ。お姉ちゃんに、聞いて貰ってよかった!」

みりあ「うん! 美嘉ちゃんありがとー!」

美嘉「それじゃあ……これまでのコトを踏まえて!」

美嘉「ナイスなTOKIMEKIアンサー、お願いシンデレラ★」

美嘉「イエーイッ!★」

莉嘉・みりあ「イエーイッ!」


美嘉「ズバリ! クイッ……そう、クイッ、ぐらいだったら!?」


莉嘉「はーい! いつもアリガトって、サプライズでプレゼント!☆」

みりあ「それでねそれでね! 笑顔をいーっぱい見せちゃうの!」


美嘉「……う、む……お……おっ、お」

美嘉「んっ……せ、せっ、正解! ギリ! ギリ正解!」


莉嘉・みりあ「やったーっ!」

  ・  ・  ・

美嘉「……ごめんね、二人共」

美嘉「でも……莉嘉もみりあちゃんも言ってたもんね」


美嘉(今、二人はレッスンの真っ最中)

美嘉(事務所には、アイツしか居ないのは確認済みっ★)

美嘉(あ、アタシは、カリスマJK、城ヶ崎美嘉なんだから!)

美嘉(ちょっとプレゼントして、ニコッって笑うだけなら……)


美嘉「よ、ヨユーっしょ!★」

美嘉「……すぅ……はぁ……!」

美嘉「――よし!」

美嘉「……いや、もうちょっとだけ呼吸を整えよう」

  ・  ・  ・

美嘉「……!」

コンコンッ


『はい、どうぞ』


美嘉「し、失礼しまーす」

ガチャッ


武内P「城ヶ崎さん? おはよう、ございます」


美嘉「おっ、おはよっ★」

美嘉(プレゼント、ニコッ★ プレゼント、ニコッ★)

美嘉(はああああ! 意識すると、マジでキンチョーするんだケド!)

美嘉「今日は、さ……ちょっとプレゼントがあって」

武内P「プレゼント、ですか? その、私に?」

美嘉「う、うん……」

武内P「あの、ですが……何も、持っていないようですが」

美嘉「……」


美嘉「!?」


武内P「………城ヶ崎さん?」

美嘉「あ、いや……プレゼント、プレゼントは、ほら……!?」


美嘉(ほわあああ!? 何も持ってきてないし!)

美嘉(何!? 何がある!? 男の人が、喜びそうなもの!)

美嘉(今、アタシが持ってて、すぐに渡せるもの! 何か! 何か――!)


美嘉「! パンツ!」


武内P「……」

武内P「えっ?」

武内P「じょ、城ヶ崎さん!?」

美嘉「ヤバくない? マジで名案じゃない?★」

武内P「ヤバくはありますが、名案とは!?」

美嘉「上を脱いだら、胸が見えちゃうでしょ?」

武内P「そ、そうですね」

美嘉「スカートを脱いだら、お尻が見えるっしょ?」

武内P「は、はい……その通りだと、思います」


美嘉「でもさ、パンツをあげても、どっちも見えなくない!?」

美嘉「それに、男の人って、JKのパンツ欲しがったりするらしいじゃん!?」

美嘉「どう!? だからパンツをプレゼント★ チョーカリスマっしょ★」


武内P「何ですか!? カリスマとは、何ですか!?」

美嘉「へへ★ 遠慮しなくて良いってば!」

武内P「遠慮ではなく!」

美嘉「あっ、もしかして照れてる? カワイイトコあんじゃん★」

武内P「照れているのでもなく!」

美嘉「またまたー★ 今日のパンツ、お気になんだから感謝してよ?」

武内P「何に感謝しろと!?」

美嘉「あっ、そうだね……今日のこれは、いつもの感謝の気持ち★」

武内P「お願いします! それは、パンツに込めないでください!」

美嘉「よいしょ、っと」

スルッ

美嘉「――はいっ★ プレゼントだよっ★」

美嘉「いつも、あっ……ありがとね★ これ、アタシの気持ち★」ニコッ


武内P「……!」


美嘉「……ねえ、ちょっと」

美嘉「なんで、顔を手で覆ってるワケ?」


武内P「いけません……! 城ヶ崎さん、いけません、それは!」


美嘉「そんなの聞いてないってば!」

美嘉「何!? アンタ、この程度の強引でも駄目なの!?」


武内P「この程度!? あまりにも強引すぎます!」

美嘉「はぁ!? 全っ然、強引じゃないから!」

美嘉「だ、抱きつくとか……ちゅ、ちゅ、チュッってするとか!」

美嘉「こ、小指と小指をかっ、かっ、絡ませたり、なななっ、撫でてって言ったり!」

美嘉「それと比べたら、全然グイグイしてないよ!?」

武内P「してますよ!?」

美嘉「……ははーん? もしかして、恥ずかしがってる?★」

武内P「ではなく!」

美嘉「えへへっ★ だったら、アタシに任せなって★」

そっ…

武内P「!? あの!? 何を!? 何を私に被せたんですか!?」

美嘉「パンツだよー★」ニコッ

武内P「なんて事を!?」

ガチャッ!


莉嘉・みりあ「おは……あーっ!?」


美嘉「……あっちゃー、見つかっちゃったかぁ」

武内P「そ、その声は……こ、これは違います! 誤解です!」


莉嘉「お姉ちゃん、抜け駆けなんてズルい!」

みりあ「美嘉ちゃん、パンツを被せるのはセーフなの?」


美嘉「セーフだよ★」

武内P「アウトですよ!?」

莉嘉「だったら、アタシもPくんにパンツ被せるー!☆」

みりあ「はいはーい! みりあも! みりあも被せるー!」

美嘉「ま……今回は、しょうがないか★ オッケー、二人共被せちゃいな★」

武内P「待ってください! あまりにも強引すぎます!」

美嘉「照れない照れない★ 動いたら、被せられないでしょ?」

グイグイッ!

武内P「服を! 服をグイグイ引っ張らないでください!」


莉嘉・みりあ「! 弱点だ!」


武内P「弱点!?」


美嘉・莉嘉・みりあ「グイグイ来られるのが♪」ニコッ


武内P「それは、確かに苦手ですし……残念ですが、良い、笑顔です」

武内P「ですが、お願いです! 来ないでください! 来ないでくださ――いっ!」



おわり

明日はキュートのみのを一本は書きます
寝ます
おやすみなさい

書きます


武内P「勉強会、ですか」

菜々「はい」

武内P「……はぁ」

菜々「勉強会に、誘われたんです」

武内P「そう、ですか」

菜々「JK達の集まりに、呼ばれてしまったのです」

武内P「……頑張って、ください」

菜々「助けてください!」

武内P「……」

武内P「助けると、言われましても……」

菜々「ナナ、もう高校時代の事なんて覚えてないです!」

武内P「安部さん、落ち着いてください!」

菜々「卯月ちゃんや、美穂ちゃんまでいるんです!」

武内P「安部さん、声が! 声が大きいです!」

菜々「リアル17歳に囲まれるんですよ!?」

武内P「安部さん、リアルという言葉はいけません! 安部さん!」

菜々「な、ナナはラブリー17歳ですけどね? キャハッ!」

武内P「は、はい」

菜々「でも……それでも、やっぱりキツいですって!」

武内P「今からでも、断れば良いのでは……?」

菜々「それが出来るなら、とっくにしてます!」

武内P「断れない理由でも?」

菜々「もの凄くションボリされちゃうんですよ!」

武内P「……なるほど」

菜々「今までも、何かと理由をつけて断ってきたんです」

武内P「しかし、今回は?」

菜々「先に、予定の日は暇か確認されて……」

武内P「何と、答えたのですか?」

菜々「バリバリ暇してます、ウサミン星もお昼寝するくらい! キャハッ! って」

武内P「それ、は……」

菜々「もう、逃げられないと思いませんか?」

武内P「……はい」

菜々「逃げられないなら、立ち向かうしか無いですよね?」

武内P「そう、ですね……」

菜々「お願いします、助けてください」

武内P「わかり、ました。私に出来ることでしたら、お手伝いします」

菜々「ホントですか!? ありがとうございます! ありがとうございます!」

武内P「……ちなみに、勉強会は、いつ行われるのですか?」

菜々「明日で~す☆」

武内P「待ってください! あまりにも準備期間が無さ過ぎます!」

菜々「テヘッ♪」

武内P「……!?」

菜々「さあ、指示をください、プロデューサーさん!」

武内P「明日までに、高校二年生程度の学力を取り戻すのは……」ブツブツ

菜々「さあさあ! ナイスな指示をお願いしますよ!」

武内P「島村さんや、小日向さんの範囲は……」ブツブツ

菜々「さあさあさあ! ナナは、何をしますか!?」

武内P「……いや……しかし……」ブツブツ

菜々「さあ! さあさあさあさあ!」

武内P「……」


武内P「頑張って、ください」


菜々「はいっ! ナナ、頑張りますよ!」

菜々「……」

菜々「それだけ!?」

菜々「もっと、具体的な指示は無いんですか!?」

武内P「具体的に、ですか」

菜々「そうですよ! 頑張れだけじゃ、ただの応援ですよ!」

武内P「わかりました。では、具体的な指示を」

菜々「! あるんですね!? 具体的な指示が!」

武内P「はい」

菜々「良かったー! さあ、ぴぴぴぴーっと具体的な指示を!」


武内P「笑顔です」


菜々「はいっ! ナナ、キュートな笑顔をします! キャハッ!」

菜々「……」

菜々「それだけ!?」

菜々「勉強会で、頑張って、笑顔ですか!?」

武内P「はい、その通りです」

菜々「んんんん!?……んんんんんんっ!?」


武内P「笑顔で、楽しんできてください」


菜々「はいっ!」ニコッ

武内P「良い、笑顔です」

菜々「よーっし! 明日の勉強会は、笑顔で頑張りますよー!」

武内P「……それでは、私はこれで」


菜々「何一つ解決してないですよ!」


武内P「……はい」

菜々「もっとこう、無いんですか!?」

武内P「そう、言われましても……」

菜々「小型カメラとマイクで、勉強会中も指示を出すとか!」

菜々「あっ、これ良くないですか!?」

菜々「プロデューサーさんから電波を受信! ぴぴぴぴー!」

武内P「あの、そこまで大掛かりなものは……」

菜々「う~っ! だったら、ナナはどうすれば良いんですか!?」

菜々「このままじゃ、おバカキャラも追加される事になっちゃいますよ!?」

武内P「……笑顔です」

菜々「笑えないですよ!」

菜々「さすがにこの歳で、リアルJKにおバカ扱いされるのは……」

菜々「うひいい!? 想像しただけでキツいです!」

武内P「……」


武内P「安部さんは、とても個性的で、素晴らしいアイドルです」

武内P「他の方には無い、輝くものをもっていると、そう、考えます」

武内P「足りないものを強いて挙げるとすれば、それは自信です」

武内P「大丈夫です。安部さんは、立派にアイドルを出来ています」


菜々「プロデューサーさん……」


武内P「自信を持ってください」


菜々「今、その話は関係ないですよね?」


武内P「……はい」

ガチャッ!


卯月「おはようございますっ♪」

みく「おはようございま――って、ナナチャン?」


武内P「島村さん、前川さん、おはようございます」

菜々「おっ、おはようございまーす! キャハッ!」

武内P「……とにかく、今は勉強会の話題は避けましょう」ボソボソ

菜々「……は、はい……ナナもそれが良いと思います」ボソボソ


卯月「あっ、ナナちゃん! 明日の勉強会の事なんですけど」

みく「えっ? 卯月チャンとナナチャン、勉強会するの?」


武内P「……駄目、でしたね」ボソボソ

菜々「……そう、ですね」ボソボソ

卯月「はいっ♪ せっかくだから、17歳で集まろう、ってなって」

みく「えーっ! 何それ、すっごく面白そうにゃ!」


菜々「は、ははは……そうですね! た、楽しみだなぁ~!」

武内P「安部さん、笑顔です。安部さん」


卯月「最初は、私と美穂ちゃんと、ナナちゃんの三人の予定だったんですけど」

みく「ふむふむ、高校二年生で集まる予定だったんだね!」


菜々「そっそそそ、そうですね! 高校二年生、JK2! トゥーンヌ!」

武内P「安部さん、映画CMのような発音は、控えましょう」



卯月「なので、かな子ちゃんも誘って、四人でお勉強しちゃいます♪」


菜々「キャファック! 大盛り上がり、間違い無しですね!」

武内P「安部さん! 難易度が上がって本音が漏れています、安部さん!」

みく「良いなぁ~! どこでやる予定なの?」

卯月「私の家でやる予定だよ。えへへ、ギュウギュウになっちゃうかも」

みく「あっ、だったらここを使わせて貰うのは?」

卯月「へっ? ここを?」

みく「うんっ! だったら、もっといっぱい人が増えても大丈夫にゃ!」

卯月「みくちゃん、ナイスアイディアです!」

みく「にゅふふ! これで、ナナチャンに勉強教わったり出来るにゃ!」


菜々「そ、そうですね!」

菜々「……!……!?」チラッ、チラッチラッ

武内P「あの、何度こちらを見られても……はい」

みく「ナナチャン、学校の成績とか実は良さそうだもん!」

卯月「はいっ♪ それに、しっかりしてるし」

みく「アイドルだけじゃなく、カフェのバイトも頑張ってるし!」

卯月「そういう人って、お勉強も頑張ってたりしますもんね!」

みく「あっ、もしかして卯月チャンも……ナナチャンに教えてもらうつもりだったにゃ?」

卯月「えへへ、バレちゃいました?」

みく「ふふふっ! みくは、何でもお見通しにゃ!」


菜々「……!……!?……!!?」チラチラチラチラッ

ポタポタッ…!

武内P「安部さん、汗を拭いてください」

みく「でも、李衣菜ちゃんが意外と成績良いのは驚いたよ」

卯月「えっ、そうなんですか!?」

みく「李衣菜ちゃん、ロックロック言う割に勉強はちゃんとしてるの」

卯月「でも、それって良い事です、よね?」

みく「教えるのも上手いんだけど……なんか、釈然としないにゃ!」

卯月「あ、あはははは……」

みく「だから、ナナチャンにはすっごく期待してるよ!」


菜々「はいっ! ナナにお任せください! キャハッ!」

菜々「きゃ……はぁあぁ……!」ガクガクガクガク!

武内P「安部さん、笑うのは顔で! 膝を笑わせてはいけません、安部さん!」

卯月「というわけで……明日、ここで勉強会しても良いですか?」

みく「Pチャンお願いっ! ほら、ナナちゃんも一緒にお願いしよっ!」

みく「えへへっ! そしたら、みくもナナちゃんに勉強を教えてもらえるにゃ!」

菜々「そ、そうですね……ここで、皆で――」

菜々「!」


菜々「ピピッ! ウサミン星から電波を受信!」


卯月・みく「?」

武内P「あ、安部さん……?」


菜々「ここで勉強会をすれば……プロデューサーさんに教えてもらえますね!」


武内P「……」

武内P「!?」

卯月「プロデューサーさんに……」

みく「Pチャンに……」


武内P「ま、待ってください! あの、私は仕事が!」


菜々「ナナぁ~、教えるのも良いんですけどぉ~」

菜々「やっぱり、教わる方がウサミン的にアリかなぁ、って~」

菜々「落ちた消しゴム……それを拾おうと、重なった二人の手……」

菜々「キャハッ! これぞ青春ですよね!」


武内P「それに、高校時代の事は、あまり覚えて――」


卯月・みく「ミンミンミン……ミンミンミン……ウーサミン」


武内P「あの……何故、コールが始まったのですか!?」

卯月・みく「ミンミンミン、ミンミンミン、ウーサミン」

菜々「ヘイヘーイ! もっと元気よく!」

卯月・みく「ミンミンミン! ミンミンミン! ウーサミン!」

菜々「キャハッ! のってきましたねー!」

卯月・みく「ミンミンミン♪ ミンミンミン♪ ウーサミン♪」

菜々「からのっ! いち! に! ナナー!」


武内P「待ってください! 盛り上がらないでください!」


菜々・卯月・みく「ハートウェーブ! ピリピリーンッ!」
.♡

武内P「」

.♡


武内P「――わかりました。その話、お受けします」

  ・  ・  ・

菜々「ありがとうございます! この前は、助かりました!」

武内P「はい。そうですね」

菜々「かな子ちゃんの作ってきたお菓子、美味しかったですね!」

武内P「はい。そうですね」

菜々「キャハッ! ナナ、17歳だからちょっと食べすぎても平気ですっ☆」

武内P「いいえ。違います」

武内P「安部さん」


武内P「消しゴムを投げつけられまくった私に、言うことはありませんか?」


菜々「……すみませんでした」

武内P「はい。そうですね」

菜々「それで、ですね?」

武内P「はい、何でしょうか」

菜々「また、助けて欲しいんですけど」

武内P「お断りします」

菜々「ま、待ってくださいよ! まだ何も言ってないです!」

武内P「先日の勉強会で、学びました」

武内P「関わったら、ろくな事にならない、と」


菜々「今度は、お泊まり会なんです! キャハッ!」


武内P「安部さん、少しは学んでください」



おわり

手とり足とり腰とりねっとりと教えるモザイク生物扱いされるJDアイドルがいるってマ?

>>608
書きます


武内P「リーダーとして、ですか」

美波「はいっ! 教えてください、プロデューサーさん!」

武内P「いえ、しかし……」

アーニャ「パジャールスタ、私達は知る必要が、あります!」

武内P「ですが……」

美波「プロデューサーさんの、性感帯はどこですか!?」

アーニャ「プロデューサー! 答えて、ください!」

武内P「……嫌です」

美波「そんなっ!? どうしてですか!?」

武内P「どうしても何も……」

アーニャ「私達は、アー、信頼がとても大事ですね?」

武内P「そう、ですね」

美波「だったらっ! 性感帯を教えてください!」

アーニャ「プロデューサー! お願い、です!」

武内P「……お断りします」

美波「リーダーとして、知っておかないと困るんです!」

武内P「私は、今まさに困っています」

アーニャ「シトー? 何か、悩みでもありますか?」

武内P「はい、この状況が悩みの種です」

美波「え、ええっ!? 悩ましくて種が出ちゃう!?///」

アーニャ「アー、プロデューサーも、やっぱり男の人、ですね?///」

武内P「違います。頬を赤く染めないでください」

美波「そ、そうですよね! 照れてる場合じゃないです!」

アーニャ「美波、頑張りましょう! 私も、頑張ります!」

美波「ええ! アーニャちゃん、頼りにしてるわ!」

アーニャ「ダー! 一緒なら、何だって出来ます!」

美波「プロデューサーさん! 感じる所はどこですか!?」

アーニャ「美波は、可愛い! 可愛い子には、教えてくなりますね?」

武内P「……いえ、言いませんよ?」

美波「どうしよう……プロデューサーさん、思ったより頑固ね」

武内P「そういう問題ではなく」

アーニャ「! 変わった場所が、アー、性感帯かもしれない、です!」

武内P「そういう問題でもなく」

美波「! それだわ、アーニャちゃん!」

武内P「違います」

アーニャ「ハラショー! アー、一歩前進、ですね?」

武内P「微塵も進んでいませんよ?」

美波「変わった所……どこかしら」

武内P「新田さん、まずは落ち着いてください」

アーニャ「私は首筋……普通ですね?」

武内P「……聞かなかった事にします」

美波「私は全身だから……変わった所って、わからないわ」

アーニャ「ニェート……プロデューサー、どこが感じるのでしょうか」

武内P「お願いします、深刻な空気を出さないでください」

美波「やっぱり、悩んでても答えは出ないわ!」

アーニャ「ダー! その通り、です!」

美波「このままじゃ、皆との約束が果たせない!」

武内P「待ってください! 約束!?」

アーニャ「アビシシャーニエ、約束……皆にも、教えると!」

武内P「そうですか、皆に……皆に!?」

美波「はいっ! だから、絶対に教えてもらいます!」

アーニャ「約束を破るのは、いけないこと、ですね?」

武内P「……!?」

  ・  ・  ・

美波「さあ、性感帯を教えてください!」

アーニャ「プロデューサー、お願い、です!」

文香「教えて頂けるまで……何も、手が付きそうにありません」

凛「早く教えてよ。アンタ、私のプロデューサーでしょ?」


武内P「増えた!?」


蘭子「我が友よ! 汝の弱き所も、私は受け入れよう!」

奏「ふふっ、どこが貴方の敏感な所なのか、私も興味があるわ」

李衣菜「弱点をさらけ出すのも、ロックですよ!」


武内P「増えすぎでは!?」

美波「皆、気になってるんです! ねっ、皆!」

蘭子「結ばれた魂の絆、綻びやすい箇所を知るも運命!」

凛「気になるというか、知っておかなきゃ気がすまない」

文香「どの書を見ても……個人差がある、とあったので……」

奏「皆、チャーミングな貴方のウィークポイントが知りたいのよ」

李衣菜「プロデューサー! 意地を張るのは、ロックじゃないですよ!」

アーニャ「プロデューサー! どこが、感じますか?」


武内P「……!?」

武内P「……皆さんの要求は、わかりました」


アイドル達「!」


武内P「……ですが、その前に、聞いていただきたい事があります」

武内P「私は、プロデューサー」

武内P「そして、貴女達はアイd」


美波「! いけない! 皆、耳を塞いで!」

美波「良いことを言って、有耶無耶にするつもりよ!」

アイドル達「!」


武内P「……!?」

アーニャ「スパシーバ! 危ない所でしたね?」

奏「ええ……さすが、シンデレラプロジェクトのリーダーね」

文香「美波さんは……とても頼りになり、憧れます」

李衣菜「うんうん! 危うく性感帯を聞くのを諦める所だった!」

凛「そうだね。やっぱり、美波がリーダーで良かったよ」

美波「も、もう! そんなに褒めても、何も出ないわよ!」

蘭子「我らには、女神の守護がある! 観念するが良い!」


武内P「……!」

武内P「正直に言うしか……無いようですね」


アイドル達「ッシャオラァ!」


武内P「あの、その喜び方は、いけません」

武内P「皆さんの情熱には……負けました」


アイドル達「さあ、どこが感じるんですか!?」ワクワク


武内P「――特に、新田さん」

武内P「貴女の、皆さんを導くリーダーとしての力には、感服しました」


美波「そ、そんな……///」

武内P「謙遜することは、ありません」

武内P「……私は、思ったことをそのまま述べているだけですから」

美波「ぷ、プロデューサーさん……///」

武内P「貴女をリーダーに選んで、良かった」

武内P「今日ほど、それを実感した日はありません」

美波「も、もう……ヤダ……///」


アーニャ「! ニェート! 美波、気をしっかり持ってください!」

文香「あの……一体、何が起こっているのでしょうか?」

アーニャ「プロデューサーは、アー、反撃しています!」

アーニャ「美波の、心の感じる部分を、刺激しています!」

アイドル達「!?」

武内P「思えば、いつも貴女には助けてもらっていますね」

美波「そ、そんな……リーダーとして、当然ですから///」ビクンッ

武内P「この場を借りて、お礼を言わせてください」

武内P「大切なプロジェクトの、素晴らしいリーダーの、貴女に」

美波「も……もう、駄目ぇ……!///」ビクビクンッ


武内P「いつも素敵な笑顔の貴女を担当している私は、幸運なプロデューサーです」

武内P「――ありがとう、ございます」


美波「私は……わた、わ――美波、イキますっ ♡ 」ビクーンッ!

美波「……ふぅ」

…ドサッ!


アイドル達「そんな……!?」

武内P「……健全な精神は、健全な肉体に宿る」

武内P「即ち、全身性感帯で感じやすいのならば、心もまた同様」

武内P「……新田さん、貴女がリーダーで、良かったと思います」


美波「…… ♡ 」


武内P「リーダーを失った集団は、脆いものですから」


アイドル達「……!?」

李衣菜「ま、まだです、プロデューサー!」

アーニャ「ニェート! アー、迂闊に動いては、いけません!」

李衣菜「プロデューサー! ロックな私には、そんなのk」


武内P「多田さんは、家庭的で女の子らしい所も、また魅力だと思います」


李衣菜「あひぃっ♡ 」ビクーンッ!

アイドル達「……!」

凛「まずい……このままじゃ、全滅する!」

蘭子「戦乙女が戦場に戻るまで、我らを導ける存在!」

アーニャ「私達は、まだ、アー、それには若いですね?」

文香「わ、私は……そういったタイプではないので……」

奏「わ、私がリーダー代理?」


奏「確かに、クローネでもリーダー的にはなってるけれど……」


武内P「――はい。速水さんは、リーダーの資質が十分にあると思います」

武内P「年齢にそぐわない落ち着きは、頼りがいがあるように見えます」


奏「……そうね。私しか居ないなら、任されようかしら」

アイドル達「リーダー!」


美波・李衣菜「…… ♡ 」

武内P「……ですが、速水さんはまだ17歳です」

奏「あら? ふふっ、心配してくれるのかしら?」


武内P「――はい、失礼な話だとは思いますが……心配、しています」

武内P「他の方には言えない悩みがあるのではないか」

武内P「自分だけで、抱え込んでいる問題が無いだろうか」

武内P「……私は、それが心配です」


奏「……」ピクンッ


武内P「私は、貴女の担当では、ありません」

武内P「ですが、貴女は、とても素晴らしいアイドルだと、そう、思っています」

武内P「そんな貴女がより輝けるのならば、何か、手伝いたい」

武内P「……そう、常々思っています」


奏「……///」ピクピクンッ

武内P「速水さん、私にできることはありませんか?」

奏「そ、そうね……あるには、あるわ」

武内P「! 本当ですか!? 教えてください、それが何なのか!」

奏「私はね、頑張ったご褒美が欲しいの」

武内P「ご褒美、ですか?」

奏「ええ」


奏「ご褒美の、キスが貰えると嬉しいわ」ンー


凛「アーニャ、しっかりそっちの手を抑えてて」

アーニャ「ダー、リンは、そちらをお願い、です」

奏「んっん~ ♡ 」チュパチュパ

  ・  ・  ・

美波「……ん」

美波「!」

美波「アーニャちゃん、皆!」

美波「性感帯はどこ!?」


奏・文香・蘭子・李衣菜「…… ♡ 」


美波「そんな……!? まさか、全滅!?」


武内P「おはようございます、新田さん」

凛「おはよ、案外すぐ目が覚めたね」

アーニャ「ダー。美波の寝顔は、可愛いかった、です!」


美波「凛ちゃん……アーニャちゃん……!?」

美波「そんな!? 二人共、どうして!?」


凛「感じる所とかさ、無理に聞き出すのは良くないな、って」

凛「……別に、今度一緒にハナコの散歩に行ってくれるのは関係ないよ」


アーニャ「リンの言う通り、です! 美波、いけませんよ?」

アーニャ「……別に、今度一緒に星を見に行ってくれるのは、関係ない、です」


美波「恥ずかしがってるのに、無理矢理聞くのが良いんじゃない!」

美波「お願い、二人共! 正気に戻って!」


武内P「……新田さん、もう、やめましょう」


美波「プロデューサーさん……!」

凛「感じる所なんてさ、探せば良いじゃない」

美波「凛ちゃん……」


武内P「……待ってください」


アーニャ「美波。美波が一緒なら、きっと、見つけられます」

美波「アーニャちゃん……!」


武内P「待ってください」


凛「プロデューサーは、ジッとしてて良いから」

アーニャ「ダー♪ 私達が、自分で、探します!」

ガシッ!

武内P「待ってください! は、離してください!」

武内P「良い流れだったではないですか! なのに、何故!?」

武内P「こ、このままでは……に、逃げ――」


蘭子「――られはしない! この呪縛からは!」

李衣菜「捕まえましたよ! これもまた、ロックですね!」

ガシッ!


武内P「!? りょ、両脚が……!」


奏「ふふっ、胴体も動かせないわよ」

ガシッ!


武内P「……!?」


文香「書によれば……男の方でも、色々と感じる部位があるそうです」

ペラッ…


美波「皆……!」

アイドル達「リーダー!」


美波「皆……こんな私をまだ、リーダーと呼んでくれるのね」ウルッ

美波「ううん、駄目よ美波! 泣いてる暇なんか無いわ!」

美波「リーダーとして、皆の想いに応えなくっちゃ!」


アイドル達「さあ、リーダー!」


武内P「……!」


美波「……でも、ちょっとだけ時間をちょうだい」

美波「その……いざ、自分から触ろうとすると、ね?」

美波「私でも、緊張すると言うか、照れるというか……」


アイドル達「リーダー!?」

美波「ち、違うのよ? 嫌なんじゃなくてね?」

美波「エッチな目的で男の人に触るのって……ね?」

美波「しかも、ほら、無理矢理って……わかるでしょ?」

アイドル達「……」

すっ…


武内P「……離れていく」


美波「……皆も、私の気持ちがわかってくれたみたいね」

アイドル達「……うん」

武内P「皆さんが、冷静になってくれて良かったです」

アイドル達「……」

美波「でも……私達は、諦めませんから」

美波「きっと、プロデューサーさんの性感帯を聞き出してみせます!」

美波「そうよね、皆っ!」

アイドル達「おーっ!」

武内P「……とても、素晴らしい団結力だと、そう、思います」

アイドル達「はいっ!」ニコッ

武内P「良い、笑顔です」

武内P「性感帯を教える事は、絶対にありませんが……」


武内P「新田さんがリーダーで、本当に良かったです」



おわり

可愛く書こうと思いましたがこれが限界でした
寝ます
おやすみなさい


「昼食は、外に食べに行こうと思っています」


 何の気無しに聞いたみたら、思ってもない答えが返ってきた。
 私、てっきりプロデューサーはゴハンとかは簡単に済ませるタイプだと思ってたよ。
 外に食べに行く、って事は、よっぽど食べたいものがあるのかな?
 自分の欲望の赴くまま……おおっ、これってロックじゃない!?


「あっ、良かったら、なんですけど」


 今、他の皆は仕事やレッスンで誰も居ない。
 みくちゃんは、うくく、嫌々お魚関係のお仕事に行ってるんだよね!
 なつきちも、確か何かの収録もある、って言ってた気がする。
 だから、今日のお昼はどうしようか迷ってたんですよ。


「私も、一緒に行って良いですか?」


 あんまり、プロデューサーと話したことって無かったですもんね。
 なんと言うか、ビジネスライクな関係? みたいな?
 だけど、もう少しコミュニケーションが取れたらなぁ、とは思ってたんです。
 あ、決して、みくちゃんの居ない隙に、ロックのお仕事を増やしてください、
ってお願いするつもりはないですからね!……多分。


「そう、ですね……はい、では、一緒に行きましょうか」


 おおっ!?
 私、てっきり、プロデューサーとアイドルがー、って言われると思ってましたよ!?
 だから、駄目で元々のつもりで言ってみたんですけど……。
 うーん、これは素直に喜んでいいのかどうか迷うなぁ。


「少しだけ歩くことになりますが、大丈夫でしょうか?」


 プロデューサーは、外に出かける準備をしながら、言った。
 へー、外に行くって、すぐ近場で済ませるんじゃないんだ。
 もしかして、そこに行くのが楽しみで、仕事をちょっと忘れてるんですか?
 あのー、私、ボーイッシュだとはちょくちょく言われますが、アイドルなんですけど!


「はい! 今日はスニーカーなので、大丈夫です!」


 なーんてね!
 このプロデューサーが、そこまで楽しみにするなんて、気になる!
 仕事を忘れても求める……これは、真のロックだよ!


「何を食べに行くつもりだったんですか?」


 教えてください、プロデューサーが求める、ロックな食べ物を!


「ハンバーグです」

  ・  ・  ・

「そこの、路地を入った所になります」


 ビル街を少し離れた所にある、小さなお店が立ち並ぶ商店街。
 事務所の近くに、こんな所があるなんて知らなかった。
 歩いて十分程度だけど、こっちに来る事なんて無かったからなー。
 うっわ、お肉屋さん!? 初めて見た!


「その店には、よく行くんですか?」


 道中気になっていたけど、言えなかった台詞。
 やっぱり、まだちょっと距離感があるから、世間話って振りにくい。
 だけど、お肉屋さんを見て驚いた勢いを活かして、聞いてみる。
 だ、だってしょうがないじゃん!
 年の離れた男の人と、どんな話すれば良いかなんてわからないもん!


「そう、ですね……週に一回は」


 週一!? 結構な頻度ですよね、それ!?
 ……あっ、でも、そっか。
 プロデューサーって、私と違って、確か実家暮らしじゃないんだもんね。
 だったら、週に一回外食をするのって、普通なのかな?


「そんなに、そこのハンバーグって美味しいんですか?」


 角を曲がりながら、ちょっとだけ小走り。
 あの、プロデューサー?
 気付いてないかも知れないですけど、ちょっと歩くの速くなってますよ?
 どれだけ楽しみなんですか、ハンバーグが!


「絶品です」


 初めて見る、プロデューサーの顔。
 笑顔ともちょっと違う、ワクワクした感じ。
 まるで、宝物を見せびらかす前の男の子みたいな、そんな顔。
 プロデューサーのこんな顔を見る日が来るなんて、想像もしてなかった。


「――ここです」


 えっと、洋食亭……英語? 違う?
 なんて読むんだろ?
 あの、プロデューサーさん――って!


 カランカランッ。


 と、木製のドアを開けて、プロデューサーさんはもう中に入ろうとしていた。
 慌ててその背を追うのに必死で、店名は、聞けずに終わった。


「今日は、二名です」


 外観からはわかっていたけど、お世辞にも広いと言えない店内。
 入り口のドアと同色の木目調の壁に、少しだけ濃い色の床。
 その壁には、真鍮製のインテリアや、もしかして……鳩時計? など、
ずっと見ていても飽きない程の、遊び心で埋め尽くされていた。
 ……ドア一枚をくぐっただけで、まるで、別の世界に放り込まれたみたい。


「多田さん?」


 キョロキョロと店内を見回す私に、低い声がかけられた。
 う、うわああ、いきなりやらかしちゃったよ、恥ずかしい!
 プロデューサー、なんか、笑ってません!?
 私が、こういうオシャレな感じな所に居たら、やっぱり変ですか!?


「……私も、初めてこの店に来た時、同じ反応をしました」


 笑顔。
 滅多に見ることのない、プロデューサーの、自然な笑顔。
 だけど、今はその笑顔が、このお店の雰囲気に、妙に似合っている気がする。
 ロックと言うには、レトロすぎるけど……うん、素敵な所だと思います。


「今日は、私達だけのようなので、奥の席にしましょうか」


 そう言うと、プロデューサーは店の奥に歩を進めた。
 革靴が木製の床を踏みしめる時の、コツンという音がとっても低くて、笑いそうになる。
 今の足音、なんとなくプロデューサーっぽいな、って。
 っとと、いけないいけない!
 またボーッとする所だった!


「どうぞ」


 店の奥にある、小さな木製のテーブル。
 テーブルの一辺は壁にくっついていて、その真上には、
最初に目に入った真鍮製のインテリアが掛けられていた。
 二人用だろうそのテーブルには、椅子が向かい合って、ちょこんと鎮座していた。
 この椅子……プロデューサーには、小さくありません?


「ありがとうございます」


 ……なんて、そんなの言うのは、ロックじゃないよね!
 引いてくれていた椅子の前に立つと、
私の膝の動きに合わせて、とても自然に椅子が前に出された。
 お尻に当たるクッションの部分が、ポフリと小さな音を立てる。


「……さて、今日はどのハンバーグにしようか」


 自分の席についたプロデューサーは、メニューとにらめっこを開始した。
 やっぱり、椅子はちょっと小さかったみたいだ。

  ・  ・  ・

「お待たせしました、ハンバーグです」


 厨房から出てきた、真っ白いコックの服を来た、おじいちゃん。
 眼鏡の奥から覗くその目は、とっても優しい雰囲気がする。
 髪の毛は真っ白だけど、綺麗に切りそろえられていて、清潔感がある。
 コックさんを絵に描いたような、そんな見た目。


「……」


 テーブルの上に置かれた、ハンバーグ。
 白い、大きなお皿の真ん中で存在感を放つそれには、
色を見ただけでもわかる、濃厚なデミグラスソースがかかっている。
 付け合せは、ニンジンのバターソテー、ポテトフライ、そして、クレソンが少し。
 誰もが想像する、ハンバーグの中のハンバーグ。


「どうぞ、冷めない内に」


 プロデューサーが注文したのは、煮込みハンバーグだった。
 煮込むのに少し時間がかかるって言ってたから、まだかかるのかな。
 私は、とりあえず、プロデューサーがオススメだって言うからこれにしたんだけど。
 でも、どうぞ、って言われても、先に食べるのって気が引けますよ。


「あっ、私、待ちますよ?」


 目上の人を差し置いて、先に食べ物に手を付けはしませんって。
 親しき仲にも礼儀あり、ロックの中にも流儀あり、ですから!
 確かに、そんな待ちきれないって顔の人の前で先に食べるのはロックかもですけど。


「いけません」


 は、はい?
 あの、私って、そんなに食べ物にガツガツ行くように見えます?


「お願いします。どうか、冷めない内に」
「お、お願いします、って……」


 そこまで言うなら、食べますけど。
 ナイフとフォークを手に取り、


「それじゃあ、すみません。お先に――」


 言われるがままに、


「――いただきます」


 ハンバーグに、ナイフを入れた。

  ・  ・  ・

 カランカランッ。


 プロデューサーが、ドアを開けた。
 このドアをくぐれば、このお店とも、しばしのお別れになる。
 それがちょっとだけ名残惜しくて、私は、後ろを振り向いた。
 あの真鍮製のインテリア、私の部屋にも飾りたいな。


「ありがとうございます」


 ドアを開けてくれているプロデューサーにお礼を言いながら、外に出る。
 本当に、お店の中と外で全然雰囲気が違うなぁ。
 ネコチャンモードのみくちゃんより、オンオフがきっちりしてるかも。
 タシッ、と、スニーカーでアスファルトを踏みしめる。


「……」


 後ろで、パタンッ、とドアが閉まる音が聞こえた。
 もう、私とプロデューサーは、お店の外に完全に出たんだよね。
 ……だから、もう、良いですよね?
 止めようったって、そうはいきませんよ!


「プロデューサー!」


 振り向いて、声を出す。
 こんなに大きな声を出すつもりじゃなかったんだけどなぁ!


「は、はい? なんで、しょうか?」


 何でしょうか? 何でしょうかじゃないですよ!
 言うことなんて、決まってるじゃないですか!



「すっ~~…………っごくっ! 美味しかったです!」



 あれなら、プロデューサーの様子がいつもと違ったのもわかりますよ!
 口に入れて、舌に乗せた時の、滴る肉汁の甘みとジューシーさ!
 そこに絶妙に絡むデミグラスソースは、それに負ける事無く、より旨味を引き立ててました!
 それでそれで! あのソースを付け合わせのパンに付けて食べるのも、くう~っ!


「喜んでもらえたようで、何よりです」


 喜ぶに決まってますって!
 この喜びをどう表現すれば良いんだろう!
 こう!? それとも、もっと激しい感じですかね!?


「あ、あの……エアギターは、ここでは……!」


「っとと、す、すみません……!」


 溢れ出す衝動を抑えられなくて……あれ? 凄くロックだった?
 ああでも、さすがにこんな往来でエアギターはまずいよね。
 アイドルだから目立つのには慣れてるけど、悪目立ちは良くない。


「多田さん、一つだけ、お願いがあるのですが」


 私が落ち着くのを見計らって、プロデューサーが言った。


「このお店の事は、出来る事ならば……その、他の方には、内密に」


 驚いた。
 プロデューサーなら、こんな美味しいハンバーグのお店、皆に教えるかと。
 ラッキーな私が、その、第一号に選ばれたんだとばっかり思ってた。
 あっ、もしかして。


「プロジェクトメンバー以外に、って意味ですか?」


 きっと、そうですよね!
 こんな美味しいハンバーグが食べられるお店、秘密にしたい気持ちわかるなぁ。


「いいえ。このお店は、多田さんにしか教えていません」


 えっ? えっ? 私だけ?
 あの、えっと、それって……どういう意味ですか?


「……その日仕入れたお肉が終わったら、その日のハンバーグは、終わりなので」


 ……あー、そういう意味ですか。
 なんか、ちょっと残念かなぁ、その理由は。


 ……って、なんで残念なんだろ?


 んー、まあいいか!
 プロデューサーに教えてもらったんだし、内緒にして欲しいなら、そうしますよ!
 私、口は堅い方ですから! お口にチャック! いや、お口をロック!



「へへへ、それじゃあ、その代わりに……また、連れてきてもらえます?」



 プロデューサーは、右手を首筋にやりながら、はい、と言ってくれた。


 この約束をした時を思い出して、その夜、私はベッドの上でのたうち回った。
 プロデューサーは、いい笑顔です、と言っていたが、どう思ったのだろう。


「うああ……!」


 今日は、私とプロデューサーだけの、秘密が出来た。
 そして、私にもよくわからない……けれど、
プロデューサーには絶対言えない秘密も出来た。



おわり

七海「ソイヤッ!」美波「チンポソイヤッ!」
七海「ソイヤッ!」美波「チンポソイヤッ!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1523106969/)

しばらくチンポは大丈夫です
休憩したら書きます

書きます


武内P「体臭が気になる、ですか」

凛「うん、ハナコ――犬を飼ってると、気になってさ」

アーニャ「ダー。ハーフなので、どうしても気になります」

武内P「お二人とも、ですか」

凛「だから、お願いなんだけど」

アーニャ「イズヴィニーチェ、迷惑、だと思いますが」


凛「匂い、嗅がせてくれない?」

アーニャ「パジャールスタ、お願い、します」


武内P「意味がわかりません」

凛「意味がわからないって……なんで?」

アーニャ「匂いを嗅がせては、くれないのですか?」

武内P「待ってください」

武内P「あの……どうして、私の匂いを嗅ぐ必要が?」

凛「さっきも言ったでしょ。犬を飼ってるから」

アーニャ「私が、ロシアのハーフだから、です」

武内P「……」

武内P「あの、説明に、なっていないと思うのですが」

凛「そんな事ない。これ以上ない理由だと思うけど」

アーニャ「ダー。リンの言う通り、です」

武内P「あの……お二人の理由は、ですね」

武内P「自分の体臭が気になる理由だと、そう、思うのですが」


凛・アーニャ「……」


武内P「あの……渋谷さん? アナスタシアさん?」


凛「……ふーん、プロデューサー、私の匂いが気になるんだ」

アーニャ「……アー、プロデューサーなら、良いですよ?」


武内P「……」

武内P「!?」

武内P「待ってください! 何故、そういう流れに!?」


凛「考えてみたらさ、不公平かと思って」

アーニャ「ダー。私達だけ、匂いを嗅ぐのは、ずるい、です!」

凛「うん。お願いしたのは私達だから、先に嗅いで良いよ」

アーニャ「ハラショー! アー、譲り合い、ですね?」


武内P「……何故、私の匂いを嗅ぐことは決定しているのでしょうか?」


凛・アーニャ「えっ!?」


武内P「……驚かれるような事を言ったつもりは無いのですが」

凛「待って……ちょっと待って?」

アーニャ「プロデューサー……私、何か、してしまいましたか?」

凛「ふーん。そういう事、言うんだ」

アーニャ「イズヴィニーチェ、すみません、謝ります」

凛「正直、匂いを嗅がせないって、意味がわからない」

アーニャ「悪い所は直しますから、どうか……お願い、します」


凛「アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」


アーニャ「私を……アーニャを嫌わないで、ください!」


武内P「お、お二人とも! 落ち着いてください!」

武内P「ますます意味がわからなくなってきましたから!」

凛「誤魔化さないで。私、冷静だから」

武内P「だとしたら……非常に、残念です」

アーニャ「アーニャは、プロデューサーの言うことは、何でも聞きます」

武内P「……では、アナスタシアさんは一旦、退室を」

アーニャ「!?」

武内P「アナスタシアさん?」


アーニャ「……ダー、わかり、ました」ウルウル


武内P「!?」

武内P「あ、アナスタシアさん……!?」

アーニャ「プロデューサーは、私が嫌い、ですか?」ウルウル

武内P「!? 決して、そんな事はありません!」

アーニャ「……ニェート、大丈夫、です」ウルウル

武内P「……!」


武内P「アナスタシアさんは、私の大切なアイドルの一人です」

武内P「申し訳ありません。退室とは、軽率な発言でした」

武内P「アナスタシアさんがこの場に居ても、何の問題もありません」


アーニャ「……本当、ですか? 迷惑では、ないですか?」

武内P「はい。私は、貴女を迷惑だと思ったことは一度もありません」

アーニャ「……スパシーバ!」ニコッ!

武内P「良い、笑顔です」


凛「……」

凛「……ふーん、アーニャには随分優しいんだね」

武内P「あ、いえ、今のは……」

アーニャ「ダー♪ プロデューサーは、とっても優しい♪」

アーニャ「プロデューサーが、私のプロデューサーで、幸せ、です!」

武内P「……」

凛「……」


凛「……だったら、勝手にすれば?」


武内P「……渋谷さん?」

凛「プロデューサー、アーニャみたいに素直な子の方が良いんだよね」

武内P「いえ、その様な事は……」

アーニャ「……プロデューサー?」ウルッ

武内P「……ある、事は、あります」

凛「……」


凛「良いよ。ごめんね、邪魔しちゃってたみたいで」

凛「私が出ていけば、それで済むんでしょ」


武内P「……」


凛「……」

凛「……私が出ていけば、それで済むんでしょ!」


武内P「……」

武内P「……渋谷さん?」

武内P「あの……」


凛「私が出ていけば、それで済むんでしょ!?」チラッチラッ


武内P「……」


凛「わっ、私が出ていけば! それで済むんでしょ!?」チラチラチラッ


武内P「……」


凛「ふうううぅぅぅん!?」ジタバタ!

凛「私が! 出ていけば!……出ていくんだよ!? 良いの!?」

凛「ねえ! それで済むの!? どうなの!?」


武内P「……渋谷さんも、ここに居てください」


凛「ふーん。まあ、悪くないかな」


武内P「……」

  ・  ・  ・

凛・アーニャ「最初はグー! ジャンケンポン!」


武内P「……」


アーニャ「ハラッ……ショオオオ――ッ!」

凛「あっち向いてホイ!」

アーニャ「プロデューサー! 私が、先です!」

凛「向かなかったから、不戦勝で私が先だね」

アーニャ「匂い、嗅がせてもらいますね?」

凛「匂い、嗅がせてもらうから」


武内P「……どちらが先、ですか?」


凛・アーニャ「私」

凛・アーニャ「!?」


武内P「……」

武内P「お二人とも、一旦落ち着かれてはいかがでしょうか」

武内P「先程から、そうやって順番を決められずにいます」


アーニャ「リン? リン、リン、リン、リン?」

凛「何? 勝負はもうついたはずだけど?」

アーニャ「シトー? リンは、何を言ってるのですか?」

凛「アーニャこそ、いい加減往生際が悪いよ」


凛・アーニャ「……!」


武内P「ケンカをする方は、出ていっていただきます」


凛「何言ってるの。私達、もの凄く仲良しだけど?」

アーニャ「ダー! 私とリンは、ズッ友、です!」


武内P「……このやり取りは、もう五度目になります」

武内P「その……順番は、そこまで重要なのでしょうか?」

凛「そんなの、言わなくてもわかるでしょ」

武内P「……すみません、わかりません」

アーニャ「後から嗅ぐと、前に嗅いだメスの匂いが、残っていますね?」

武内P「……アナスタシアさん? あの、今……」

凛「変な匂いが混じってたら、気分が悪くなるかも」

アーニャ「ダー。リン、気が合いますね?」


凛・アーニャ「……!」


武内P「ケンカをする方は、出ていっていただきます」


凛「アーニャっていい匂いがするよね。涼やかな感じの」

アーニャ「リンは、とっても良い匂い! 花の匂い、です!」


武内P「……六度目ですね」

武内P「同時に、では駄目なのでしょうか?」

凛「プロデューサーの、首の傾ける方によるかな」

武内P「待ってください……首?」

アーニャ「ダー。私の方なら、アー、同時でも良い、です」

武内P「……」


武内P「首筋の匂いを嗅ぐつもりだったのですか!?」


凛・アーニャ「えっ?」

武内P「……」

武内P「……お願いします、キョトンとしないでください」

武内P「私は、てっきり……手だと思っていました」

凛「何言ってるの。手で良い訳無いでしょ」

アーニャ「ダー。リンの言う通り、です」

凛「だよね? 匂いを嗅ぐと言ったら、首筋だよね」

アーニャ「ハラショー。やっぱり、リンはわかっています」


凛・アーニャ「プロデューサー」

凛「匂いを嗅ぐのは、首筋だから」

アーニャ「これは、譲れない、です!」


武内P「……それは、さすがに許容出来ません」

武内P「この話は、無かったことn」


凛「手の匂いね、悪くないかな」

アーニャ「プロデューサーの手の匂い、気になって仕方ない、です」


武内P「……」

凛「でも、やっぱりプロデューサーは凄いね」

アーニャ「ダー! 手なら、二人一緒でも平気、ですね?」


武内P「……それでは、手で」


凛「待って。どっちが、どっちの手の匂いを嗅ぐか決めるから」

アーニャ「プロデューサー、少しだけ、待っていてください」


武内P「……」


凛「それじゃあ私は、右手にしようかな」

アーニャ「私は、右手で良い、です」


凛・アーニャ「!」


武内P「……」

凛「右手で良い? アーニャ、我慢しなくても、左手で良いよ」

アーニャ「ニェート。リンが、左手の匂いを嗅ぐべき、です」

凛「遠慮しないで良いってば」

アーニャ「私は、右手で、アー、十分です」


武内P「……」


凛「……また、右手で首筋を触ったね」

アーニャ「……ダー、匂いが染み付いていますね?」

凛・アーニャ「……」


凛・アーニャ「ジャーンケーン!」


武内P「……」

武内P「お二人とも、少し、話を聞いて頂けますか?」


アーニャ「シトー? 何、ですか?」

凛「!……はい、パー! 勝ち!」

アーニャ「!? リン、ズルい、です!」

凛「ズルくないから。気を抜くほうが悪いと思う」

アーニャ「プロデューサーが、話を聞いて欲しいと、言ってました!」

凛「言ってたね。でも、私は話を聞きながら手を動かしてたから」


武内P「……」


アーニャ「ズル! リンは、ズルをする悪い子、です!」

凛「ふーん。別に、それでも良いよ? 私の勝ちだけど」

アーニャ「ニェート! 悪い子は、ここから出ていくべき、です!」

凛「何それ!? 負けたほうが、出ていくべきじゃない!?」

凛・アーニャ「……!」


武内P「……」

武内P「……」


凛・アーニャ「プロデューサー!」

凛「アーニャと、アナスタシア、どっちが出ていくべき!?」

アーニャ「リンと、シブヤ、どちらが出ていくべき、ですか!?」

凛・アーニャ「!?」

凛「負けたのは、アーニャでしょ!?」

アーニャ「リンは、とっても悪い子、です!」


凛・アーニャ「出てって!」


武内P「……わかりました」


凛・アーニャ「……プロデューサー?」

武内P「お二人の仰りたいことは、十分理解しました」

武内P「渋谷さんは、負けた方が出ていくべきだ、と」

凛「そう!」

武内P「アナスタシアさんは、悪い方が出ていくべきだ、と」

アーニャ「ダー!」

武内P「お二人の主張を合わせると……」

凛・アーニャ「……」


武内P「貴女達の、強い想いに負け」

カツカツカツカツ…

武内P「ケンカを止めるのを諦めた、悪い大人」

…ガチャッ!

武内P「私が、この部屋から出ていきます」


凛・アーニャ「!? せめて、匂いだけでも!」


武内P「面倒臭いので、お断りします」

…バタンッ!



おわり

渋谷さんは今後、
・ふーん
・逃げないでよ
・悪くないかな
禁止です

書きます


武内P「>>683……?」

凛「何それ?」

未央「ニュージェネのリーダーとして、思ったわけですよ!」

未央「……しぶりんの喋り、なんか怖くない?」

未央「ってね!」

凛「……ふーん。そういう風に思ってたんだ」

未央「それ! それだよ、しぶりん!」

未央「その、ふーん、っての!」

武内P・凛「……」

未央「他にも、悪くないかな、ってさ」

未央「……なんか感じ悪くない?」

凛「そう、かな」

武内P「私は、そうは思いませんが……」

凛「プロデューサー……」


未央「逃げないでよ!」


武内P「っ!?」ビクーンッ!

未央「……ほら、ね?」

凛「……」

未央「大の大人のプロデューサーが、こんなだよ?」

凛「……」

武内P「……すみません、あの、驚いてしまいました」

凛「……良いけど」

武内P「……」


未央「まあまあ、急に口調を変えろってわけじゃなくてさ」

未央「ふーん、と、悪くないかな、はしばらく禁止ってことで!」


凛「……まあ、それくらいなら、やっても良いよ」


未央「逃げないでよ!」


武内P「っ!?」ビクーンッ!

未央「……も、追加しておこっか」

凛「……わかった」

武内P「……それでは、そろそろ」

未央「オッケー! 頑張ろうね、しぶりん!」

凛「……まあ、やるだけやってみるよ」


武内P「本田さんは、今日はお芝居の稽古になります」

未央「はーい! 行ってまいりまーす!」


武内P「渋谷さんは、クローネでのレッスンになりますね」

凛「ふ――」


未央「しぶりんっ!」


凛「っ……!」

武内P「……」


凛「……うん、わかった」


武内P「っ!」


未央・凛「……プロデューサー?」

未央「えっ、なんで息を呑んだの?」

凛「ちょっと、禁止された言葉は言ってないでしょ?」

武内P「あ、いえ……その、ですね……」


武内P「渋谷さんが、あまりにも素直な返事をされたので、その……」

武内P「……」

武内P「嗚呼、プロデュースをしてきて良かった、と、そう思いました」


未央・凛「そんなに!?」


武内P「はい。私も、このような感覚に陥るとは、思ってもみませんでした」

武内P「何と、言えば良いのでしょうか……」

武内P「渋谷さんが、私の担当アイドルで、幸せだ……と」


未央・凛「……」

未央「しぶりん、今のプロデューサーの言葉を聞いて、どう思った?」

凛「……まあ、わる」

未央「しぶりん?」

凛「っ……!」


凛「わ、私も……嬉しい、です」


武内P「っ!?」


未央「あっはっは! なんで敬語なの!」

凛「い、良いでしょ別に!」

未央「しぶりんも嬉しいってさ、プロデュ――」


武内P「……!」…ツーッ


未央「さあああああ!?」

凛「なんで!? どうして泣いてるの!?」

武内P「っ!? す、すみません……こっ、これは……!?」ポロポロッ

武内P「わ、わかりません……何故か……うっく!」ポロポロッ

武内P「なみ、涙っ、が……! 申し訳、ありません、申し訳……!」ポロポロッ


凛「みっ、未央! どうしよう!?」

凛「……未央? えっ? どこに……」

凛「……」


凛「逃げないでよ!」


武内P「っ!?」ビクーンッ!

凛「あっ、いっ、今のは違うから!」

凛「えっと、その……」


凛「逃げられたよ!」


凛「……なんか違う!」

武内P「……」

凛「どうして逃げないで欲しいかって……その、だから……!」オロオロ

武内P「……」フキフキ


凛「困った時には、ちゃんと傍に居て欲しいからで……!」オロオロ

武内P「……っ!」チーンッ!


凛「それは、どうしてかって……」オロオロ

武内P「……」


凛「!」

凛「ちゃんと見ててよね!」


武内P「はい。目を離さないと、約束します」


凛「っ!? あ、い、今のは……」

凛「……」

凛「……うん、ありがとう///」

  ・  ・  ・

加蓮「なんだかさ、最近機嫌良くない?」

凛「えっ、そうかな?」

奈緒「あたしもそう思ってた!」

凛「二人共、そう思ってたんだ」

加蓮「何~? もしかして、シンデレラプロジェクトの~」

奈緒「プロデューサーと、仲が進展でもしたか~?」


凛「うん、それはしたよ」


加蓮「そんなんじゃない、って、今日は誤魔化され――……へっ?」

奈緒「まっ、待て待て待て! 凛、熱でもあるのか!?」


凛「熱なんて無いから」

凛「でも……心配してくれて、ありがと」


加蓮・奈緒「……!?」

凛「進展と言うか、前よりも砕けた感じになったかな」

凛「ちょっとだけ素直に話すようにしたら、自然と、ね」


加蓮・奈緒「ふ……ふーん」


凛「あ、それ、やめた方が良いよ?」

凛「知らない人が見たら、怖く見えるから」


加蓮「いやいやいや! ふーん、って、凛の口癖でしょ!?」

奈緒「一体、どうしたんだよ!? らしくないぞ!?」


凛「でも、こうして素直にしてた方が良いかな」

凛「プロデューサーとも、仲良く出来るし」


加蓮・奈緒「……!?」

凛「……でもさ、聞いてよ」

凛「プロデューサー、ずっと見ててくれるって約束したのにさ」


加蓮「う……うん」


凛「スケジュール的に、どうしても見られない時間が出る、って」

凛「まあ、申し訳ありません、って、謝ってくれたんだけどね」


奈緒「に、逃げないでよ、って言ったのか?」


凛「言うわけないでしょ、驚かせちゃうから」


凛「ただ……ちょっぴり寂しい、って言っただけ」


加蓮「ぐううっ!? 胸が! 胸がキュンキュンする!」

奈緒「熱い! 顔があっつい! やめろって急にそんなのぉ!」

加蓮「寂しいって……寂しいって、言ったの!?」

奈緒「凛が!? プロデューサーに!?」

凛「うん、言ったよ」


凛「だけど、やっぱり私って素直にはなりきれないな、って」


凛「だって……本当は、すっごく寂しいから」


奈緒「うわあああっ!? お前っ!? 凛、お前なあっ!?」

奈緒「そんなの……お前、そんなの! なあ、加蓮!?」

奈緒「……加蓮?」


加蓮「」


奈緒「お……おい、加蓮?」

奈緒「加蓮っ、しっかりしろ! おいってば!」

奈緒「加蓮……かれえええええん!!」

  ・  ・  ・

武内P「……」

カタカタッ


凛「~♪」


ガチャッ!


未央「……しぶりん、ちょっと良いかな」


凛「未央? 何? どうしたの?」

未央「プロデューサー……は、気付いてないみたいだね」

凛「うん。ヘッドホンして、集中してるから」

未央「……ちなみに聞くけど、しぶりんは何してたの?」


凛「プロデューサーを見てただけだよ」

凛「頑張ってるプロデューサー、格好良いよね」


未央「……」

凛「私、見守られてるのも、安心するけどさ」

凛「こうやって……」


武内P「……」

カタカタッ


凛「……私達のために頑張ってるプロデューサーを見るの、好きだな」

凛「何って言ったら良いんだろ」

凛「蒼い風が、駆け抜けるような、そんな気分になれるから」


未央「っ……しぶりん!」

未央「お願いがあるんだけど、聞いてもらえる!?」


凛「どうしたの? そんなに真剣な顔して」

凛「大事な友達の頼みだもん、ちゃんと聞くよ」


未央「ぐううっ……あ、ありがと、しぶりん……!」

未央「……禁止ワード、作ったじゃん?」

凛「あっ、そうだ。その事で、話があるんだった」

未央「へっ? な、何?」


凛「未央には、すっごく感謝してる」

凛「おかげで、プロデューサーと仲良くなれたから」

凛「やっぱりさ、素直になるって、大事だね」

凛「世界が、輝いて見える」キラキラッ


未央「ひいい!? しぶりんが、輝いて見えるよ!」

未央「で、でもさ! もうそろそろ、禁止ワード、解禁で!」

未央「ふーん、悪くないかな、逃げないでよ、言ってオッケー!」


凛「……そう?」

凛「でも、もう言わないと思うな」

凛「そういう言葉を使って、プロデューサーに嫌われたくないし、ね」キラキラッ


未央「……!?」

未央「ごめん! 言い方が悪かった!」

凛「? 何が?」

未央「前の……ちょっと感じ悪いしぶりんに戻って!」

凛「……えっ、どうして?」

未央「どうしてって、そりゃ――」


凛「どうして、そんなひどい事言うの……?」ウルウルッ


未央「――んぐうういいい!? 無理! 無理だよ、これ!」

未央「私にはもう、しぶりんを止められないよ!」

未央「誰か……誰か、助けてえええっ!」


ガチャッ!


楓「ええっと……助けて?」


未央「! 楓さん!」


武内P「……高垣さん?」


凛「……」

凛「なんで、すぐ気付くの?」

楓「助けてって聞こえたけど、どうしたの?」

未央「そ、それは……ええっと……」


武内P「あの……高垣さん、どうしてここへ……?」

楓「あっ、おはようございます」

武内P「おはよう、ございます」

楓「先日の飲み会の時にお借りしたハンカチを返しに来ました」

武内P「すみません、わざわざ……」

楓「ふふっ、縫い目のしっかりした、お借りしたハンカチを……うふふっ」

武内P「……」


凛「飲み会? ねえ、今、飲み会って言ったよね?」

未央「へっ? あ、うん」

凛「プロデューサーと、アイドルが飲み会?」

凛「その状況は何なの? 説明して!」

未央「わ、私に聞かれましても……!?」

凛「全然意味がわからない。どうして?」

凛「は? 何?……は?……あ?」

未央「す、すみません……! なんか、すみません……!」


楓「すみません、お仕事の邪魔をしてしまって」

武内P「いえ、そんな事は」

楓「ふふっ、このお詫びに、また飲みに行きましょう♪」

武内P「……お猪口で、ちょこっとだけですよ」

楓「!」

バシバシ!

武内P「……すみません。高垣さんの、好きなだけ」

楓「はーいっ♪」ニコッ

武内P「……良い、笑顔です」


未央「……あの、しぶりん?」

凛「……」

未央「……」

  ・  ・  ・

武内P「……本当に、どうしようもない人だ」フッ

武内P「さて、仕事に戻――」


凛「待って」


武内P「? 渋谷さん?」

武内P「どうか、されましたか?」


凛「ふーん……ねえ、本当にわからない?」


武内P「はい。皆目、見当がつきません」

武内P「……」

武内P「えっ? あの、今……」


凛「ふざけないで! アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」


武内P「っ!?」ビクーンッ!


凛「納得できない! わかる様に、ちゃんと説明して!」


武内P「っ……!?」

武内P「あの……何故、そんなに機嫌が悪く……!?」

凛「……は?」

武内P「っ……!? き、気分を害されているように、見えm」

凛「機嫌? 気分?」


凛「ふん、悪いよ」


武内P「す、素直ですが……あの、すみません……!」

武内P「い、以前よりも、その……!」


凛「素直でしょ」


武内P「……!?」

武内P「だ……誰か、助け――」


凛「逃がさないよ」



おわり

新ジャンルは定番ですが誤殺が好きでした
寝ます
おやすみなさい


「……」


 カタカタと、キーボードを叩く音だけが部屋に流れている。
 時々、その音が止まるのは、何か考え事をしてるのかな。
 その目はとても真剣で、プロデューサーが、
本気で私達の事を考えてくれているんだな、ってわかる。


「……」


 ソファーに深く座り直しすと、ポフリ、と音がした。
 でも、プロデューサーは、それに構うことなく、画面に集中してる。
 それが……なんとなくだけど、面白くない。
 だから私は、コホン、と咳払いをする。


「渋谷さん?」


 本当に、小さな咳払いだったのに、プロデューサーはそれにすぐ気付いた。
 それは、私がアイドルだからで、体調に気をつけてくれているから。
 プロデューサーの、そんな仕事熱心な姿勢。
 私は、それを確かめるように、時々こうしてテストのような事をする。


「うん、大丈夫」


 今の反応は、まあ、悪くないかな。
 だけど、心配をさせないように、鞄からペットボトルを取り出し、水を一口だけ飲む。
 その間もプロデューサーはこっちを見てるんだけど、妙に気恥ずかしい。
 プロデューサーは見なくていいから。


「喉に何か違和感があるようでしたら、すぐ仰ってください」


 蓋を閉めていると、そんな声がかけられた。
 思った以上に心配させちゃったみたいで、悪いことしたかな。
 あまり、気を遣われすぎるのも息苦しく感じるかもしれない。
 この人、真面目だけど、不器用なんだよね。


「心配しすぎ」


 だから、歳上なのに、放っておけない感じがするのかも。


「……」


 再開される、カタカタという音。
 今日は、ニュージェネ三人での仕事が入っている。
 だから、二人が来るまで、プロデューサーと二人きり。


「……」


 ちひろさんが今日休みなのは、聞いていた。
 それで、プロデューサーが早く来て、ここで事務作業をしている事も。
 事務所で一人で作業をするプロデューサー。
 昨日の夜、それを想像したら、自分のことじゃないのになんだか悲しい気持ちになった。


「……」


 せっかく、未央と卯月と一緒するのにさ。
 そういう、悲しい気持ちを抱えたままじゃ、上手く笑えないかも。
 そう思ったから、私は、予定の時間よりも早く事務所に来た。
 別に、それ以外の意図は無いから。


「……」


 だけど、やっぱり早く来て良かったと思う。
 昨日の夜の悲しい感じは、綺麗サッパリ無くなったから。
 プロデューサーもさ、一人で作業してるよりは良いよね、多分。
 つまり、お互いにとってメリットがあるんだし、来て正解だったね。


「……」


 ふふっ、でも、私がドアを開けた時のプロデューサー、凄く驚いてたな。
 普段は見られない顔を見られたから、その点では私の方が得したかな?
 その点、私は……うん、クールに振る舞えてたよね。
 年下の女の子に気を遣われた、なんて、思わせたくないし。


「……」


 携帯の画面を操作するフリをしながら、プロデューサーの方を見る。
 プロデューサー、今、どんな仕事をしてるんだろ。
 ちょっと気になるけど、邪魔しちゃ悪いよね。
 案外、私に関する事してたりして。


「……ふふっ」


 なんてね。


「……」


 二人が来るまで、あと十五分、って所かな。
 そうすれば、この時間も終わり。
 何にだって、終わりは来る。
 ……この言い方じゃ、未央と卯月が終わりを運んでくるみたいになっちゃうか。


「……」


 だけど、十五分って、結構長いよね。
 その時間、ほとんど何の会話もしないって、勿体無いと思う。
 プロデューサーは、あんまり自分から話しかけるタイプじゃない。
 だから、こっちが話しかけないと、会話が始まらない。


「……」


 プロデューサーって、アイドルとコミュニケーションを取るべきじゃないかな。
 そうじゃないと、困ることって、色々あるでしょ。
 っていうか、それで前に失敗したんだからさ。
 だから、そっちから話しかけて、会話を始めないと。


「……」


 じいっ、とプロデューサーの横顔を見つめる。
 いつの間にか、キーボードを叩く音は、止まっていた。
 もしかして、作業の方が一段落したのかも。
 それを聞いてみる位なら……まあ、サービスしてあげるよ。


「作業、全部終わったの?」


 何気ない風に、聞いてみる。


「……いえ、まだですね」


 ……ふーん。


「ですが、キリが良いので、一旦ここで終わろうかと」


 まあ、悪くないかな。


「……」


 作業が終わったなら、やる事は限られてるよね。
 今、この部屋には二人しかいないんだよ?
 だから、正解なんて一つしかない。
 テストするまでもないかな、こんなの。


「お二人が来られるまで、まだ、時間がありますね」


 プロデューサーが、時間を確認しながら言った。
 うん、そんなに時間は無いけど、コミュニケーションを取るには十分。
 どんな話題を振ってくるかな。
 今日の仕事の話は、二人が来てからするだろうから……ちょっと楽しみ。


「少し、待っていてください」


 カタリと、椅子のキャスターが音を立てた。



「飲み物を買ってきます」



 えっ? なんで?


「えっ? なんで?」


 疑問が、そのまま口から飛び出した。
 せっかくの話すチャンスなのに……どうして?
 あのさ、私、プロデューサーの手が空くの、待ってたんだけど。
 それなのに、どこかへ行っちゃうって……有り得なくない?


「先程、咳をされていたので……喉に良いものをと、そう、考えました」


 そういう事を聞いてるんじゃないんだけど。
 それに、さっきの咳は違うから……とは、言えない。


 プロデューサーは、私の事を想ってくれている。


 けれど、私の思っている事をわかってはくれない。


「……」


 悪くないけど、悪い。


「すぐ、戻りますので」


 すぐ、って言っても、帰って来る頃には、二人が来ちゃうかも。
 そうしたら、二人っきりで話すタイミング、無いよ。
 それでも良いの?
 私、プロデューサーが話題に困った時のために、
何を話そうか、一応だけど流れを考えてきてたんだけど。


「……」


 最近、あんまり二人で話すタイミング無かったね、って。
 そうしたら、渋谷さんは頑張っていますから、って。
 それで、毎日が楽しいから辛くは無いよ、って。


 いい笑顔です、って。


 ちゃんと見ててよね、って。


「……!」


 それだけで、良いのに。


 なのに、どうしてアンタって、いつも――


「あの……渋谷さん?」



 ――ホント、わかってない!



「申し訳ありません、その、スーツを掴まれると……」


 プロデューサーが、右手を首筋にやって困った顔をした。
 何なの?
 そんなに、急いでこの部屋から出て行きたいわけ?
 だったら良いよ、こっちにだって、考えがあるんだから。


「私も一緒に行く」


 置いて行くだなんて、承知しないんだから。


「そう……ですか」
「うん、そう」


 ソファーから立ち上がり、言う。
 何を言われても、着いて行く。
 それに、プロデューサー、どんな飲み物を買ってくる気だったの。
 私が好きじゃないのを買ってきちゃったら、何の意味も無いでしょ。


「変な飲み物を買って来られても、困るから」


 そうだよ。
 行く前に、何が飲みたいかって聞くべきじゃない?
 基本的なコミュニケーションすら出来ないって、どうなの。
 私だから、まあ、許してあげるけど。
 普通の女の子に対してもそんなんだから、彼女とか居ないんじゃないの?


「ホットレモネードを……買って来るつもりだったのですが」


 ……。


「……早く行こう。二人共、来ちゃうし」


 欲しい飲み物がわかったからって、彼女が居るとは限らない、よね。
 大事なのは、結果もそうだけど、過程もだから。
 そういう所が、プロデューサーは駄目だと思う。
 だから、私みたいな年下の女子にも、放っておけないなんて思われちゃうんだよ。


「そうですね……では、行きましょうか」
「うん」


 だけど、まあ、今回の結果自体は……悪くないかな。
 一緒に行けば、話す時間は十分取れるしね。
 うん、考えてみれば、一緒に買い出しに行くって……良いんじゃない?
 私のために、飲み物を買いに行こうとしてくれたんだから。


「……」


 だけど、プロデューサーは、歩きだしも、話しだしもしない。
 このままモタモタしてたら、二人が来ちゃうのに。
 二人っきりの時間が、終わっちゃうのに。


「あの……渋谷さん」


 ねえ、何考えてるの?
 わかるように、ちゃんと説明して!



「スーツから……手を離してくれますか?」



 …………うん、わかった。




おわり

やっぱりブチキレてる方が似合いますね
3連休なので、ゴリゴリ書こうと思います
寝ます
おやすみなさい

書きます


アーニャ「プロデューサーは、可愛い、です♪」

奏「可愛い? 誰が?」

アーニャ「プロデューサー、です」

奏「可愛い、ねぇ。そうは見えないけど」

アーニャ「ニェート。可愛いのは、アー、性格です」

奏「あら、ああ見えて、チャーミングなのね」

アーニャ「ダー♪ プロデューサーは、チャーミング!」


凛「……」

アーニャ「見た目も、アー、愛嬌、があります」

奏「それは……ちょっと、贔屓目がすぎるんじゃない?」

アーニャ「黒い、ぴにゃこら太がいますね?」

奏「ええ、居るわね。それが?」

アーニャ「プロデューサーと、似ています」

奏「……」

奏「ぷふっ! た、確かに、言われてみればそっくりだわ」


凛「……」

アーニャ「プロデューサーは、とても優しい」

アーニャ「プロデューサーは、いつも、見守っててくれます」

アーニャ「……だから、怖いと思われるのは、悲しい、です」

アーニャ「プロデューサー、良い所がいっぱいあります」

アーニャ「私は、それをもっと皆に、知ってほしい、です!」

奏「……なるほど、だから急に彼の話をしだしたのね」

アーニャ「ダー!」


凛「……」

奏「そういう事なら、もっと聞かせて貰おうかしら」

アーニャ「ハラショー! アー、興味をもってくれましたか?」

奏「ええ、とっても」

奏「アイドルにそんなに慕われるなんて、どんな人なのか、ってね」

アーニャ「私は、プロデューサーが、大好きです♪」

奏「あら……それは、ますます興味が湧いてきたわ」


凛「……」

  ・  ・  ・

アーニャ「それから、プロデューサーは――」

奏「アーニャ。そろそろ、レッスンの時間じゃない?」

アーニャ「アー……そう、でした」

奏「夢中で語って、時間を忘れちゃってたのね」

アーニャ「だけど、まだまだ、話足りない、です!」

奏「ふふっ、終わったらちゃんと聞かせてもらうから」

奏「だから、安心してレッスンに行ってきなさい」

アーニャ「スパシーバ! カナデ!」

アーニャ「アビシシャーニエ、約束、ですよ?」


凛「……」

奏「アーニャがあそこまで必死になるだなんて、ね」

奏「シンデレラプロジェクトのプロデューサー、か」

奏「……実際に、会ってみたくなったわね」


凛「そんなに、良いものじゃないよ」


奏「あら、凛」

凛「アーニャ、良い子だからさ」

凛「悪い所は言わずに、良い所を言ってただけだから」

奏「……ふうん?」

凛「まずさ、ちょっとだらしないよね」

奏「そうなの? そういう風には見えないけど」

凛「ああ見えて、結構弱気になったりもするんだよ」

奏「あら、そういうのってギャップがあって可愛いじゃない」

凛「うん、私もそう思う」

奏「……」

凛「じゃなくて、もっと頼り甲斐があって欲しいと思うよ、実際」

奏「……」


文香「……」

凛「次にさ、何考えてるか、わかりにくい」

奏「ポーカーフェイスだから、って事かしら」

凛「そう。それに、あんまり考えてることを言ってくれないし」

奏「そういう人の普段とは違う言動って、印象に残るのよね」

凛「残る残る。印象というか、心に残るね」

奏「……」

凛「じゃなくて、もっと意思表示をして欲しいかな」

奏「……」


文香「……」

凛「それに、体が大きすぎて、威圧感がある」

奏「でも、小さすぎるよりも良いと思わない?」

凛「あれは大きすぎ。体を鍛えてるのか、筋肉まで凄いし」

奏「それは、ちょっと嫌かも」

凛「所がさ、袖をまくった時の、腕の血管を見たらもうね、もう!」

奏「……」

凛「じゃなくて、もう少し普通の人が良かったよ」

奏「……」


文香「……」

凛「とにかく、そんなに良いものじゃないから」

凛「奏が興味を持つような人じゃないと思うよ、本当に」

奏「凛にとっては、あまり好ましくない人なのね、彼って」

凛「まあ、悪くないかな」

奏「……とりあえず、私はレッスンに行くわね」

凛「行ってらっしゃい」

凛「本当に、プロデューサーは、大したことないから」

奏「……はいはい、そういう事にしておくわ」


文香「……」

凛「……本当に、わかったのかな」

凛「まあ、誰が誰に興味を持とうと、関係ないけど」

凛「でも、変に期待させるのも、悪いしね」


文香「……あの、少しお話を……よろしいでしょうか」


凛「文香? どうしたの、急に」

文香「先程、二人の会話が……耳に入っていたものですから」

凛「聞こえてたの? そんなに大きな声で話してた?」

文香「はい……その、とても」

文香「凛さんのプロデューサーさんは……怖い方、なのでしょうか」

凛「えっ? どうしてそう思ったの?」

文香「す、すみません……その……」

凛「良いよ、ゆっくりで大丈夫だから」

文香「……遠くから拝見して、その、見た目が……」

凛「確かに。でも、あんなの、ただの見掛け倒しだよ」

文香「そう、なのですか?」

凛「うん。それで誤解されもするけど、ね」

文香「……」


ありす「……」

文香「誤解、ですか?」

凛「あの見た目でしょ? 何度も、警察に職務質問されてるの」

文香「!?……あの、やはり、何かあるのでは」

凛「考え過ぎ。本当に、ただの誤解なんだよね」

凛「私をスカウトする時もさ、警察に不審者扱いされててさ」

文香「それ、は……」

凛「結局、私が助けたんだよ。ね、情けないでしょ」

文香「……ふふっ、それは……確かに、怖いとはかけ離れていますね」


ありす「……」

文香「ですが……寡黙な方、なのでしょう?」

凛「そうだね、あんまりお喋りするタイプじゃないかな」

文香「私もそうなので……会話は、難しそうですね」

凛「だったら、話さなければ良いと思う」

文香「えっ?」

凛「お互い話すのが苦手なら、無理に話さなければ良いんだよ」

凛「むしろ、どっちも話すのが苦手なら、静かな方が気楽じゃない?」

文香「それは……確かに、そうかもしれません」


ありす「……」

凛「まあ、プロデューサーは、怖くはないよ」

凛「なんだかんだで、ちゃんと見ててくれるしね」

文香「そう……なのですね」

凛「っと、私もそろそろ行かないと」

文香「ありがとうございます、凛さん」

凛「凛で良いよ。そもそも、私の方が年下なんだし」

文香「それでは、その……凛ちゃん、で」

凛「ちゃん付け、か……まあ、悪くないかな」

凛「それと、こっちこそありがと、文香」

凛「話してて、なんだか妙に楽しかった」

文香「そう思って頂けると……はい、嬉しい、です」


ありす「……」

文香「怖い方ではない……のですね」

文香「見た目は恐ろしいけれど、優しい心を持った人、なのでしょうか」

文香「話すきっかけもありませんし、私には、関係の無い人、ですが……」


ありす「そうです! 関係ありません!」


文香「は、はい……?」

ありす「皆さんのお話、聞かせて貰ってました!」

文香「ごめんなさい……声が、大きかったですか?」

ありす「あ、謝らないでください! ただ、ちょっと聞こえただけです!」

ありす「私は、あの人と関わっちゃいけないと思います!」

文香「ええと……それは、どうして?」

ありす「もう大人の、それも、男の人がですよ?」

ありす「可愛いって言われてるなんて、おかしいです!」

文香「おかしい、でしょうか?」

ありす「はい!」

ありす「大人っていうのは、格好良くて、頼り甲斐がないと!」

文香「そう……かも、しれません」

文香「格好良くて、頼り甲斐がある大人……」

ありす「その点、美城常務は憧れます」

ありす「私達を選んでくれましたし、仕事も出来る感じで……」

ありす「ああいう大人の女性になりたいと思います」

文香「……私には、それは難しそうですね」

文香「あの人のように、牽引していくのは……出来そうにありません」

ありす「あっ、べっ、別に、それが悪いって言ってるんじゃなくて……!」

文香「けれど……」

ありす「えーと、えーと……!」

ありす「そ、そう! 向き不向き! 人には、それがありますから!」

ありす「静かでも、優しくて、穏やかで、えっと、そういうのも……」

文香「……」

ありす「す、ステキだと……思います」

文香「ふふっ……ありがとう」

ありす「でも、男の人は頼り甲斐がないと! ですよね?」

文香「そう、ですね……頼もしい方は、素敵……だと思います」

ありす「可愛いだけじゃ、駄目駄目です」

文香「ええ……可愛いだけじゃないと、より、輝いて見えますから」ジッ

ありす「えっ? えっ? えっと、あの……」

文香「……ふふっ」ジッ

ありす「あ、うぅ……」


ガチャッ!


アーニャ「戻り、ました!」

アーニャ「? フミカと、アリス……何の話をしてたのですか?」


ありす「えっ!? それは、ええと……!」

ありす「!」

ありす「シンデレラプロジェクトのプロデューサーが、可愛いって話です!」


アーニャ「ハラショー!」


アーニャ「プロデューサーは、可愛い、です♪」



おわり

文あり尊い

かな子と杏とみくは綺麗な話書いてもらったことあったっけ?
ドスケベ変態さんはもう諦めてるから除外してるけど

>>764
三村さんはバレンタインの時にメインで書いた記憶が
前川さんは覚えてないので書きます
双葉さんも驚くほど書いてないと思ったので書きます


一週間前に何を書いたか思い出せないです
いい感じに日常化しましたね!


「魚嫌いを克服したい、と」


 事務所のデスクの前で、Pチャンが難しそうな顔をしてるにゃ。
 あのね、みくだって、好きでお魚が嫌いなんじゃないよ。
 好きで嫌い? 好き嫌い! 好き嫌いは、悪いと思ってるの!
 だけど、無理なものは無理にゃ!


「っていうか、もう限界にゃ!」


 なのに、みくに入ってくるお仕事って、お魚関連の仕事がすっごく多いの!
 どういうことにゃ!?
 ……いや、まあ、理由はわかってるんだけどね。
 みくが、ネコキャラを通してるからなんだけど。


「お魚を嫌いなままだと、死んじゃうもん!」


 みくがアイドルじゃなかったら、お魚が嫌いなままでも良いと思うにゃ。
 だけど、みくはアイドルなんだから、そうも言ってられないでしょ?
 仕方なく……そう、本当に仕方なく、魚嫌いを克服しようと思うの。
 そうじゃなきゃ、今のアイドル生活が辛すぎるにゃ!


「Pチャンは、みくが死んじゃっても良いの!?」


 ネコチャンは、いつも気まぐれでにゃあにゃあ鳴いてるものにゃ。
 それなのに、うえーお魚まずいー、って頑張ってるなんて、絶対駄目!
 ネコチャンになりきるには、まずはお魚嫌いを克服!
 ふっふーん! これが、プロ意識ってもんにゃ!


「それは……本当に、困りますね」


 まあ……あとは、ちょっぴりだけど、お魚を食べ続けるのが辛いってのもあるにゃ。
 あの生臭さがもう……もう!
 鼻を近づけるだけでも嫌なのに、それを口の中に入れるんだよ!?
 みくにとっては、口の中に爆弾を放り込まれるようなもの、イコール死!


「だからPチャン、協力して!」


 今まではなんとか耐えてきたけど、来週のスケジュールを見て絶望したにゃ。
 来週は、お料理番組の収録が、二つもあって、どっちもお魚関係なの!
 みくがネコチャンですっごくキュートだからって、これはなくない!?
 いや……頑張るって……頑張るって言ったのは、みくだけどね……!?


「してくれないなら、ストライキにゃー!」


 なんて、本当はストライキするつもりなんてないけど。
 こう言ったら、優しいPチャンは絶対協力してくれるにゃ!
 にゅっふふふ!

  ・  ・  ・

「Pチャン、今までありがとにゃ」


 ここ数日、Pチャンは仕事が終わったら、ずっとみくに付き合ってくれたにゃ。
 晩ごはんに、美味しいって評判のお店に連れてってくれたんだよ。
 お魚嫌いを克服するには、新鮮なものが一番って聞いたにゃ。
 だから、一人じゃ入りにくいようなお店に、一緒に行ってくれたの。


「ま、前川さん! 諦めないでください!」


 でもね、結果は散々だったにゃ。
 みくは悟ったよ。


 新鮮でも、魚は魚。


 ……ってことに。
 新鮮でも生臭いものは生臭いし、むしろ噛んだ時の食感がやばかったにゃ。
 それでね、みくは考えたにゃ。


 あれ? 嫌いなお魚をなんでこんなに食べてるんだろう?


 あれ? 好きな物よりも嫌いな物を食べ続ける人生って?


 あれ? 人生って、生きてるってなんだろう?


「ありがとね、Pチャン。でも、もう時間が無いの」


 お料理番組の収録は、明日に迫ってる。
 後一日でお魚嫌いを克服するなんて、どうやったって無理にゃ。
 っていうか、明日いっぱい食べなきゃいけないんだから、今日は許してください。
 明日、お魚にまみれて死ぬのはわかってるけど、せめて、一日だけでも長生きしたいの。


「次に生まれ変わったら、草食動物になりたいにゃ」


 それだったら、草だけ食べてれば平気だもんね。
 みくだって、本当はネコチャンに生まれ変わりたい。
 でも、ネコチャンに生まれて、まだお魚嫌いが治ってなかったら?
 ……うえっぷ、想像しただけでやっべーにゃ、これ!


「ウサギさんはナナちゃんが居るから、何が良いかな……」


 事務所の窓から外を見ると、綺麗なお星様がピカピカ光ってたにゃ。
 星に願いを。
 願わくば、この世から全てのお魚が消えてなくなりますように。


「……」


 Pチャンが、右手を首筋にやって困ってる。
 でもねPチャン、みくは頭を抱えて困ったりしないよ。
 つけたネコミミが、ずれちゃうかもしれないからね。

  ・  ・  ・

「……」


 前を歩くPチャンの背中を追いかけながら、夜の街を歩く。
 繁華街から離れていってるけど、どこに向かってるの?
 な、なんか……ピンク色の看板が目立ってるような気がするにゃ!
 あ、ただのスイーツショップとか、ファンシーな雑貨店の看板だった。


「ね、ねえPチャン? どこに向かってるの?」


 だけど、目的地を教えてくれないのは、どうなの!
 ちょっとだけ付き合って欲しいって言ってたけど……。
 もしかして、正攻法じゃ駄目だから、催眠術とか?
 それとも、他に何か、方法が……?


「私が、稀に利用する所です」


 Pチャンが、稀に利用する所?
 いやいや、そんなの言われたって、みくにはわからないにゃ。
 それに、そこにみくを連れて行くって、どういうこと?
 お魚嫌いを克服出来そうな所に、Pチャンがたまに行ってるってこと?


「私は、前川さんの笑顔を失いたくないと、そう、思っています」


 Pチャンが振り向いて、言った。
 その顔があまりにも真剣で、ちょ、ちょっとドキッとしたにゃ。
 だ、だってしょうがないでしょー!?
 みくだって、アイドルだけど、普通の女の子なんだもん!


「う……うん」


 急に、こんなに真剣な顔で、こんな言葉を言われたら、ドキッと位するよ!
 そりゃ、Pチャンに、そういう意図が無いなんてわかってるよ?
 だけど、それでもこんな状況、誰だってドキッとするにゃ!
 ネコにマタタビ、女の子に歳上の男の人、って感じで!


「今、向かっている場所は……そのために、役に立つかと」


 そう、思いました……って、言ったPチャンは、また、歩き出した。
 距離が離れないように、華麗にネコチャンステップで、すぐ後ろに追いつく。
 とっても大きな背中で、みくなんか、すっぽり収まっちゃいそう。
 ネコチャンみたいに、簡単に抱っこされちゃいそう……って、アイドルだからそれは駄目!


「もうすぐ、着きます」


 そう言われて、慌ててPチャンから目線を外し、前を見た。
 目に飛び込んできたのは、紫色の看板。


「んなぁっ……!?」


 どっ、どどど、どういうことにゃPチャン!?
 あの紫色の看板って、ちょっ、ちょっとPチャン、何をする気にゃ!?
 みくを失いたくないって……てっ、手に入れるってこと!?
 にゃ、にゃああ……!?


 みくは……みくは、一体どうなっちゃうのおおおおお!?

  ・  ・  ・

「……」


 どうもならなかったにゃ。


「今日、この時間に、やっていて良かったです」


 小さな丸い椅子に、窮屈そうに腰掛けながら、Pチャンが言った。
 本当はお酒を飲みたいんだろうけど、みくと一緒だからお茶を飲んでる。
 お茶を飲みながら、目の前のお皿に載せられたオデンをパクついてるにゃ。
 トロットロに煮込まれた牛串に、カラシをつけて口に運ぶPチャンは、とっても幸せそう。


「っ……」


 カラシをつけすぎたのか、Pチャンの動きがちょっと止まった。
 しっかりそうに見えて、あわてん坊さんだね!
 その点みくは、辛くないようにちょびっとだけカラシをつけるの!
 ……んー! コンニャクも、染みてて絶品にゃ!


「ほふっ、ほふっ!」


 あっつあつのコンニャクだから、口の中に入れてもすっごく熱い!
 十分にフーフーしたと思ったんだけど、あっちちち!
 でもでも、こうやって猫舌なのって、ネコチャンアイドルとしてプラスにゃ!
 ……大好物のハンバーグの時は、残念だけど。


「……ふぅ」


 お茶を一口飲んで、やっと落ち着いた。
 うん、関東風のお出汁のオデンも、中々やるにゃ!


 Pチャンに連れられて来たのは、とっても小さな屋台。
 赤い提灯がついてる、漫画やアニメでしか見たことのないようなお店。
 みくとPチャンは、その屋台の椅子につき、オデンをつついてる。
 なんでも、この屋台が来てるかは誰にもわからないらしく、
運良くやってる時にだけ、Pチャンはここでゴハンを食べてるらしい。


「……」


 全く! それならそうと、早く言ってくれれば良いのに!
 思わせぶりな言葉を言って、勘違いするでしょー!?


 あ、紫色の看板は、ネイルサロンでしたにゃ。


 ……で、でもでも、みくは悪くないもん!
 それもこれも、Pチャンが全部悪いにゃ!
 仕返しの、目からネコチャンビーム!


「やはり、ここのオデンは絶品ですね」


 くううううっ!? 微塵も効いてないにゃ!


「……オデンが美味しいのはわかったけど」


 お魚嫌いを克服するためなのに、どうしてここに来たの?
 これじゃあ、ただのデー……にゃああ、無し! 今の無しにゃ!
 最近お魚ばっかり食べてたから、調子が狂いっぱなし!
 みくは、これでも真面目なアイドルなんだからねっ!


「はい。もう少しだけ、待ってください」


 もう少しって……あっ、なんだか、香ばしい匂いがする。
 七輪で、何かを炙ってるのかな。
 クンクン……この匂い、お魚?
 だけど、それにしては、妙に甘い匂いで……。


「――来ましたね」


 みくの目の前に、何かの切れっ端が置かれたにゃ。
 黒く焦げてる所もあるけど、これをさっきまで炙ってたの?
 乳白色で、何だろうこれ……えっ、何?
 多分お魚なんだろうけど、みく、こんなの見たこと無いにゃ。


「Pチャン……これ、何?」


 多分、これが、Pチャンがお魚克服のために用意してくれた最終兵器だよね。
 だけど、ちょっと得体が知れ無さ過ぎて、い、いきなりは口に入れられないよ。
 なんか、まだジュウジュウ言ってるし……。
 ちょっと冷めるまで、説明を求む! にゃ!


「エイヒレです」


 エイヒレ? 何それ? お肉の、ヒレ肉の親戚?
 牛さんや豚ちゃんに、こんな真っ白いお肉があったの?


「私の魚嫌いの友人の好物が、何故かエイヒレでして」
「ええっ!? Pチャン、友達いたの!? 嘘でしょ!?」
「……前川さんの、克服のきっかけになるかもしれない、と」


 いやいやいや、その話はちょっと置いておいて!
 Pチャンに友達が居たっていう方が、みくには衝撃だよ!
 てっきり、Pチャンは仕事人間で全然友達居ないと思ってたにゃ!
 でも……そっか、Pチャンにも、友達居たんだね!


「Pチャン……みく、嬉しいよ!」
「…………良い、笑顔です」


 あれ? なんか、Pチャン複雑そうな顔してない?


「どうぞ、冷めない内に」
「どうぞ……って言われても」


 これ、どうやって食べれば良いにゃ?
 お箸で……あ、これは固くてお箸じゃどうにも出来ない。
 お皿の横に、七味唐辛子? がかかった、マヨネーズがあるけど……。
 これに付けて食べる、んだよね?


「こう、手で直接割いて、小さくすると食べやすいです」


 あっ、直接手で触っても良いやつなんだ。
 それならそうと早く言って――


「――あつっ!?」


 熱い!


「っ、だ、大丈夫ですか、前川さん」
「う、うん……あー、ビックリした」


 考えてみれば、さっきまで火炙りにされてたんだから、熱いに決まってたにゃ。
 だけど、せっかくPチャンが、みくのために考えてくれたお肉だし……。
 冷めない内にってことは、熱い内が美味しいんでしょ?
 でも、みくにはそれは難しいと思うの。
 だから、


「Pチャ~ン♪」


 甘えん坊なネコチャンだよ!
 ほ~ら、やってあげたくなっちゃうでしょー!


「……はぁ、私で良ければ」


 にゃっは♪ おねだり成功にゃ!
 だけど、Pチャン凄いにゃ!
 みく、熱くて触るのも大変だったのに、平気な顔でちっちゃく割いてくんだもん!
 あっ、食べやすそうな大きさになったね!


「あ~ん♪」


 さあ、Pチャン! エイヒレ肉、実食にゃ!
 お肉だからあんまり意味無いと思うんだけど……Pチャンが言うんだから、
何かきっと、お肉以上のものが待ってるに違いない!
 勝負にゃ!……って、


「……まだー?」


 口を開けっ放しにしてるのって、疲れるんだけど!
 冷めちゃうでしょ、早くしてにゃ!


「あ~んっ!」

  ・  ・  ・

「……みくちゃん、大丈夫?」


 収録が終わって、控室。
 李衣菜ちゃんが、心配そうに声をかけてくれてるにゃ。
 でも、ごめん、李衣菜ちゃん。


「みくはもう駄目にゃ……みくの分まで、ネコミミに生きてね」


 結局、みくのお魚嫌いは直らなかったにゃ。
 そもそも、お肉を食べて、お魚が好きになるはずないもん!
 エイヒレ肉は美味しかったけど、マジでそれだけだったにゃ!
 っかー! Pチャンに、文句言わなきゃ気がすまない!


「……みくちゃんの分までネコミミって、一体耳がいくつになるのさ」


 李衣菜ちゃんがため息混じりに言った。
 ネコミミは可愛いんだから、いくつあっても困らないにゃ。
 ……とりあえず、今日もお魚じゃなくて、お肉!
 なんだかんだで、一昨日までお魚尽くしだったんだから!


「晩ごはんは今日もお肉! 美味しいハンバーグ! 決定にゃ!」


 外食続きだったから、食生活も正さないと!


「あっ、それなら――……な、なんでもない」


 ん? 李衣菜ちゃん、今、何を言いかけたにゃ?
 もしかして、美味しいハンバーグのお店でも知ってるの?


「そ、それよりさ! 今日も、って事は、昨日もお肉だったの?」


 んんー? なんか、誤魔化したでしょー?
 みくには、そんなのお見通しだよ!
 その質問に答えたら、じっくり追求させてもらうにゃ!


「うん、昨日はオデンと、エイヒレ肉だったにゃ」


 あれなら、ハンバーグと一緒でも良いかな。
 お肉&お肉! お肉フェスティバルの、開幕にゃ!
 でも……エイヒレ肉って、スーパーに売ってるのかな。


「……エイヒレ肉って、エイヒレのこと?」
「そうだよ。白くて……ヒレ肉が、エイッって頑張ってるようなの!」


 李衣菜ちゃんも知らなかったんだね。
 これで、また一つ、美味しいお肉が知れたんだから、みくに感謝しても良いよ!


「エイヒレって……思いっきりお魚だよ?」


 ……。


「えっ?」



おわり

猫ってササミとかめっちゃ好きですよね

メモ:杏、奈緒、加蓮の綺麗なの

寝ます
おやすみなさい


「ふわぁ~あ」


 寝て、起きて、寝る。
 その繰り返しだけで毎日が送れれば、最高にハッピー。
 だけどさ、起きてる時に何をするか、って話だよね。
 お菓子を食べたり、ゲームしたり、ネットしたり。
 それに加えて、杏ってば今ではお仕事までしてるんだよ。


「おやすみなさ~い」


 その分、寝る時間が増えるのはしょうがないよね。
 それに、今は仕事が終わって車で帰る途中だし。
 こうやって時間を有効に使うのがポイントかな。


「はい、おやすみなさい」


 助手席に座りながら、そう言ってきたプロデューサーの方を見る。
 その背は高くて、座高も杏より大分高い。
 そんなにでっかく育ったなんて、小さい頃はよっぽど寝て過ごしてたんだねぇ。
 それとも、美味しいものをいっぱい食べてたとか? なんてね。


「……」


 流れてく景色、差し込んでくるライト。
 まばらに照らされたプロデューサーの横顔には、ちょっと疲れが見える。
 全く、休むのが下手だからそうやって疲れが残っちゃうんだよ。
 杏みたいに、ちゃ~んとメリハリをつけなきゃ。


「……」


 プロデューサーには、倒れられたら困るんだよね。
 印税生活のために、効率よく、極力働かずに働く必要があるんだから。
 そういう事を考えて、しっかり杏をプロデュースしてもらわないと。
 今更他のプロデューサーに変わって、馬車馬の様に働かされるなんてゴメンだし。


「……」


 だからまあ、杏に出来るだけのフォローはしてあげるよ。
 本当なら、それに関してもお給料を要求しても良いんだけどね、へへ。
 でもまあ、その分働かせないでくれてると思えば、それでトントンかな。
 あれ? そう考えると、なんか杏って損してない?


「……」


 ほんと、そんな役回りだよ、とほほ。


「……」


 ま、そんな役回りって言っちゃえば、プロデューサーが一番か。
 個性的なアイドルを集めるのは良いんだけど、それって大変だよね。
 皆が皆、色々違って、バラバラ。
 そんなバラバラな皆を一人一人見るなんて、杏だったらゴメンだよ。


「……」


 お、そう考えると、杏ってばもの凄く優秀じゃないかな。
 だってさ、寝てる間は見てなくて良いんだもん。
 寝顔が見たいって言うなら止めないけど、乙女の寝顔はタダじゃないよ。
 杏の寝顔だったら、いくらぐらいが相場かな?


「……」


 プロデューサーの寝顔だったら、いくらぐらいかなぁ。
 案外、プロジェクトのメンバーとかはそこそこ出したりして。
 おおっ、これは、ビジネスチャンスってやつかな。
 寝てるプロデューサーの顔を写真に撮って……あ、めんどくさいから却下。


「……」


 楽して稼げるかと思ったけど、プロデューサーの寝顔を撮るのが大変だもん。
 うたた寝でもしてるのすら見たことないんだからね。
 あ、それなら、合宿の時に部屋に忍び込むってのはどうだろ。
 ……あー、プロデューサーが寝る頃には、杏は寝てるね、絶対。


「……」


 それに、寝てる男の人の部屋に忍び込むのは、さすがにねー。
 何にも起きないだろうけど、世間体ってものがあるからさ。
 もしもスキャンダルにでもなったりしたら、印税生活は夢のまた夢。
 他の皆にも迷惑がかかっちゃうし、やっぱり無しだね、無し。


「……」


 だけど、そういうスキャンダルが出た時は、どういう記事になるんだろ。
 『プロデューサーとアイドルの禁断の愛!』とか『ただれた夜のプロデュース!』とか?
 やー、でも、『変態ロリコンプロデューサー!』って可能性が高いかな。
 杏は十七歳だけど、この見た目だからねー。


「……」


 そういう記事のネタを週刊誌に売ったら、いくらになるかな。
 メリットとデメリット、生涯年収とか諸々考えると……んー、やっぱり駄目だね。
 プロデューサーを巻き込んだら、その後、プロデューサーも養う必要があるからなぁ。
 杏ともう一人が暮らしてけれるだけの金額なんて、到底出そうにないもん。


「……」


 この人、プロデューサー以外出来そうにないからなぁ。


「……」


 やろうと思えば出来るんだろうけどさ、駄目だよね。
 プロデューサー以外の仕事をしてるの、全然想像できないよ。
 もしやったとしても、なーんかしっくりこないかな。
 働く意欲に溢れる杏、ってくらいしっくりこない。


「……」


 はー、大人しく、普通に働くしかないかー。
 そもそも、杏じゃあスキャンダルにならない可能性すらあるしね。
 プロデューサー相手にスキャンダルになりそうなのは、
プロジェクト内だと、んー、やっぱりきらりかなぁ。


「……」


 どっちも背が高くて、並んでてお似合いだもんね。
 きらりが思いっきり迫ったら、プロデューサーも落とせるんじゃない?
 いけません諸星さん、良いではないかだにぃ、ってさ、へっへっへ!
 ……なーんて、何考えてんだろ。


「……」


 でも、そうだなぁ、杏がきらりみたいに背が高くて、スタイルも良かったら。
 そうしたら、プロデューサーを襲っちゃうのも悪い選択肢じゃないかな。
 その前に、責任問題にならないように、アイドルを引退したりして。
 あー、でも、アイドルを引退するのも、色々と準備が必要だなぁ。


「……」


 まず、智絵里ちゃんとかな子ちゃんが、杏離れが出来てないからなー。
 二人にも、もうちょっとしっかりして貰う必要があるね、間違いなく。
 それに、きらりとやってるコーナーもあるし、そこも考える必要があるね。
 うーん、杏がアイドルを引退するのって、思った以上に面倒臭いなぁ。


「……」


 んま、お仕事をするの、楽しくないわけじゃないんだよね。
 ただちょっと、疲れるし面倒臭いだけで、悪くはないんだよ。
 はー、誰か、杏の代わりに外で働いて、お金だけくれないかな。
 その分、お家で寝たりダラダラするのは杏に任せてくれても良いからさー。


「……」


 そういうお仕事も、無くはないんだよね。
 でもなー、そのお仕事って、基本的に休み無しって言う激務なんだよね。
 そんなの、杏からしたら、地獄だよ、じ・ご・く!
 杏からやるー、なんて、とてもじゃないけど言う気にはなれないね。


「……」


 でも、プロデューサーがやれって言うなら、やっても良いかな。


「……」


 なーんて、プロデューサーが言うわけないよね。
 でも、言ったとして、杏がそれにオッケーしたとしたら、どうなるだろ。
 プロデューサーの事だから、業務内容を分担してくれそう。
 割合的には、七対三くらいで……あ、勿論杏が三ね。


「……」


 ま、言うわけないから、勝手に想像出来ちゃうんだけどね。
 想像するのはタダ! ドヤ!
 タダより安いものはないっていうけど、タダだから易いとは限らない。
 タダのただの想像でも、只々想像するだけでも、難しい。


「……」


 ――杏が、きらりみたいだったらなぁ。


「……」


 きらりは、杏の事を可愛いって褒めてくれるよね。
 悪い気はしないよ、っていうか、うん、恥ずかしいけど、嬉しいよ。
 でもさ、それじゃあ、駄目な事もあるんだよね。
 杏じゃあ手の届かない所にも、きらりは手が届くんだよ。


「……」


 例えばさ、今の状況なんか、すっごくわかりやすいよね。
 ほら、ちょっと座席を後ろに倒した位で、杏の手は全然届かない。
 どれだけ手を伸ばしてみても、無理なものは、無理なんだよ。
 横に並べば、なんとか手が届くかも知れないけどさ。


「……」


 それって、すっごく大変だよね。


 ――30センチ。


 杏には、30センチ足りない。
 どれだけ頑張っても届かないなら、頑張る理由ってなくなくなくない?
 だから、杏は手を伸ばさな――


「双葉さん?」


 ――あ。


 気がついたら、車は、目的地に到着していた。
 んー、


「起き上がるの面倒だから、よろしくお願いしま~す」


 こう言えば、差し出した手の理由、誤魔化せるよね。

  ・  ・  ・

「ふわぁ~あ」


 杏にはさ、足りないものがそれこそいっぱいある。
 それこそ、一々挙げてくのが面倒な位に、たくさん。
 そんなのを一つ一つ数えるなんて、時間の無駄で寝ちゃうよね。
 それよりさ、出来ることを無理せずやる方が、効率が良いと思うんだよ。


「あの……すぐなので、起きていてくださいね」


 例えば、今。
 眠いからって言って、事務所に着くまで、杏はおんぶして貰ってる。
 こんなの、他の十七歳には出来ない事だよね。
 勿論、何かトラブルがあったら別だけど、杏はこういうのを日常的に出来る。


「ふわぁ~い」


 その点では、もの凄くお得だよね、これって。
 おんぶして貰って、くっつけて、甘えられて、しかも、歩かなくて済む!
 一石何鳥?
 あーでも、石を投げるのは面倒だから、養鶏とかの方が効率良さそう。


「……」


 すれ違う人がこっちを見てるけど、すぐ、いつもの光景だと気にもとめない。
 他の皆だったら、きっとギョッとすると思うんだよねー。
 だから、こういう、杏にしか出来ない、許されるようなのって、重要じゃない?
 へっへっへ、杏は、杏の事をよーくわかってるのです!


「……んー」


 眠いフリをしながら、プロデューサーの右の首筋に、顔をうずめる。
 一瞬くすぐったそうにしたけど、抗議の声は無い。
 プロデューサーは、今は仕事中だから無理に起こすのは悪い、と思ってるんだろうね。
 ふっふっふ、杏は、プロデューサーの事は大体わかるのです!


「……あ~眠い」


 寝て、起きて、寝る。
 その繰り返しだけで毎日が送れれば、最高にハッピー。
 だけどさ、起きてる時に何をするか、って話だよね。


「……ん」


 起きてる時に、無理のないように、出来る範囲で、効率良く。
 手が届かないならさ、向こうから、届く範囲まで来て貰えば良いだけだよね。


 杏だって、両手は届くし、首筋に口づけだって出来る。


 その後、やる事は決まってる。
 杏的には、ちょっと頑張りすぎちゃったからね~。


「おやすみなさ~い」


 その分、寝る時間が増えるのはしょうがないよね。



おわり

書きます


武内P「猫は、可愛いと思います」

武内P「……そう、発言した翌日」

CPアイドル達「……」

武内P「まさか、全員ネコミミをつけて来るとは思いませんでした」

CPアイドル達「にゃい!」

武内P「前川さん以外は、外して頂けますか?」

CPアイドル達「にゃー!」

武内P「……」

武内P「あの、せめて人語だけでも」

武内P「このままでは、ネコミミプロジェクトです」

CPアイドル達「にゃい!」

武内P「貴女達は、それでも良いのですか?」

CPアイドル達「にゃい!」

武内P「前川さんは、現状、どう思っていますか?」

みく「にゃんにゃがにゃん!」

武内P「……」

武内P「もう一度言います、人語でお願いします」

武内P「本田さん」

未央「にゃい!」

武内P「とても、よく似合っていますね」

未央「あ、やっぱり?……にゃ!」

武内P「はい。元気な所と、髪質がネコミミに非常にマッチしています」

未央「やー! 私って、結構なんでも似合うんだよねー!……にゃ!」

武内P「取って付けた語尾が、非常に気になります」

武内P「島村さん」

卯月「にゃいっ!」

武内P「とても、よく似合っていますね」

卯月「ありがとうございます! えへへっ、褒められちゃいました♪」

武内P「語尾は、つけないのですか?」

卯月「あっ、そうでした!」

卯月「島村卯月、語尾をつけるのも頑張ります♪」

武内P「語尾は、諦めましょうか」

武内P「新田さん」

美波「にゃい!」

凛「待って。ねえ、流れおかしくない?」

武内P「アナスタシアさん」

アーニャ「にゃん♪」

凛「ちょっと。飛んでるから」

武内P「お二人とも、とても良く似合っていますね」

美波・アーニャ「にゃいっ♪」

凛「未央、卯月ときたら……わかるでしょ?」

武内P「神崎さん」

蘭子「ニャオン♪」

凛「ニュージェネって、三人グループなんだけど」

武内P「ネコミミの形の、黒いヘッドドレスですか」

蘭子「ふっふっふ! 我は、魔獣の姿をも操る!」

凛「ちゃんと見てよ! ねえってば!」

武内P「神崎さんの新しい魅力……いえ、魔力の形、素晴らしいと思います」

凛「ふうううぅぅぅん!」ジタバタ

武内P「……」

武内P「……渋谷さん」

凛「私は犬派だから、犬耳にしてみたんだ」

武内P「……とても、よく似合っていますね」

凛「うん、ついでだから、尻尾もつけてみた」

武内P「……とても、よく似合っていますね」

凛「プロデューサー、犬も好きでしょ?」

武内P「次に行きます」

凛「だから、ちょっとこの紐、持って欲しいんだけど」

武内P「緒方さん」

智絵里「に、にゃあ///」

凛「プロデューサー、聞いてる?」

武内P「少し、照れがあるようですが」

智絵里「や、やっぱり……恥ずかしくて、にゃあ///」

凛「照れてないよ。ただ、ちょっと紐を持って欲しいだけ」

武内P「とても、似合っています。恥ずかしがる必要は、無いかと」

凛「似合ってるって、さっきも聞いたから」

武内P「三村さん」

かな子「にゃい!」

凛「……もしかして、犬はそんなに好きじゃなかった?」

武内P「それは、ネコミミではなく、ショートケーキですね」

かな子「美味しいから大丈夫です」

凛「良い子にするから大丈夫だよ」

武内P「どちらも大丈夫ではありませんね」

武内P「双葉さん」

杏「丸くなるための炬燵が欲しいよにゃ~」

凛「ねえ、早く紐を持って欲しいんだけど」

武内P「そういった面でも、双葉さんは似合っていますね」

杏「ネコの杏は働かないにゃ~」

凛「なんで紐を持ってくれないの。納得できない」

武内P「……それは、困りますね」

武内P「……渋谷さん」

凛「! はい、紐!」

武内P「私がその紐を持つ事に、何の意味が?」

凛「そうしたら、私がハナコを連れて一緒に散歩に行けるでしょ」

武内P「わかりました、ご自宅に連絡します」

凛「は? 何で?」

武内P「……もしもし」

凛「えっ? はっ?」

  ・  ・  ・

武内P「渋谷さんは、電話でご両親からお説教を受けています」

CPアイドル達「……!?」

武内P「今後、あのような事をされたら、ああします」

CPアイドル達「……!」

武内P「それでは、次に行きます」

CPアイドル達「……!」

武内P「諸星さん」

きらり「……」

武内P「諸星さんのネコミミは、リボンで形作っているのですね」

きらり「そ、そうだゆ」

武内P「とても、よく似合っています」

きらり「うぇへへ、ちょっぴりはずかすぃーにぃ☆」

武内P「良い、笑顔です」

武内P「赤城さん」

みりあ「はいっ! あっ、違った……にゃあ!」

武内P「とても、よく似合っています」

みりあ「あのねあのね、ネコさんプリントのもあるんだよ!」

武内P「……そう、ですか」

みりあ「えへへ、それはどこでしょー?」

武内P「……考える時間をください」

CPアイドル達「……逃げた」ヒソヒソ

武内P「逃げて良いのなら、とっくに退室しています」

武内P「城ヶ崎さん」

莉嘉「がおー☆ アタシは、ネコじゃなくてライオンだよ!」

武内P「とても、よく似合っていると思います」

武内P「そして……城ヶ崎さん」

美嘉「っ!?」ビクッ!

武内P「……カリスマJKアイドル、城ヶ崎美嘉さん」

美嘉「な……何か用?」

武内P「その言葉、そっくりそのままお返しします」

武内P「何故、ここに?」

美嘉「あ……アンタが、猫は可愛いって言ったって聞いて、その」

武内P「しかし、みた所ネコミミはつけていないようですが」

美嘉「そ、そう★ 間に合わなくってさ、はは!」

莉嘉「あれ? お姉ちゃん、今日はヒョウ柄――」

美嘉「ひょおおおおう!?」

武内P「……申し訳、ありません」

美嘉「なんで謝るの!?」

武内P「多田さん」

李衣菜「にゃい!」

美嘉「あ、アタシがヒョウ柄着けちゃおかしい!?」

武内P「その……随分と、気合が入っていますね」

李衣菜「なつきちが、猫耳と言えばキャットウーマンだ、って!」

美嘉「べ、別に!? ヒョウ柄ぐらい、ギャル的には普通だし!?」

武内P「……そう、ですか」

李衣菜「似合ってると思いませんか、プロデューサー!」

美嘉「それにほら、アタシって、こういうの似合うと思うし!?」

武内P「……すみません、わかりません」

武内P「前川さん」

みく「にゃー! にゃんにゃん!」

武内P「機嫌が良い所、申し訳ないのですが」

みく「にゃん?」

武内P「皆さんがネコキャラになって、良いのですか?」

みく「にゃんにゃがにゃんにゃん!」

武内P「前川さんは、何故、ネコキャラで行こうと思ったのでしょうか」

みく「……?」

武内P「それを……思い出してください」

みく「……」

みく「!?」

  ・  ・  ・

武内P「そして、前川さんの涙ながらの説得により……」

ちひろ「今回の、ネコミミ騒動は収まったわけですね」

武内P「そうですね。ですが、今後に活かせるものもありました」

ちひろ「あ、ネコミミをつけてのLIVEとかですか?」

武内P「渋谷さんは、親御さんに連絡が効く、という事が知れました」

ちひろ「……あー」

武内P「確かに、猫は可愛いと思います」

武内P「ですが――」


武内P「猫可愛がりは、しません」



おわり

1乙 相変わらずオチが秀逸 この調子で、甘えに来る楓さんで行ってほしい それを目にしたとき、しぶりんは如何に!

>>812
書きます


武内P「休みを取ろうと思います」

凛「エイプリルフール、もう過ぎたよ」

武内P「いえ、本当の話です」

アーニャ「プロデューサー? アー、嘘は良くない、です」

武内P「あの、本当の話です」

凛「あのさ、そんなのに騙されると思ってるの?」

アーニャ「ダー。リンの言う通り、です」

武内P「……」

武内P「あの……本当に、本当の話なのですが」

武内P「私を信じてください」

武内P「本当に、休みを取ろうと思っているのです」

凛「ねえ、どうしてそんな嘘つくの」

アーニャ「何か、問題でもありましたか?」

武内P「休みの申請をしろと、言われまして」

凛・アーニャ「誰に」


武内P「……社長です」


凛・アーニャ「部長じゃなく!?」

武内P「……はい、社長に」

凛・アーニャ「……!?」

凛「どうして、そんなに大事になってるの!?」

武内P「社長と、専務が話す機会があったらしく……」

アーニャ「それが、プロデューサーに、何の関係が?」

武内P「何でも、私の話題が出たそうで……」

凛「まあ、大きなプロジェクトを持ってるしね」

武内P「そして、働き者だ、という評価だったらしいのですが……」

アーニャ「ダー! プロデューサーは、頑張っています!」


武内P「いつ、休んでいるんだろう、という話になり……」


凛・アーニャ「……いつ、休んでる?」

武内P「……」

凛・アーニャ「いつ、休んでる!?」


武内P「……」


凛・アーニャ「……!?」

凛「ちょっと待って。そういえば、いつも居るよね!?」

武内P「……」

アーニャ「お休みの日は、いつ、ですか!?」

武内P「……週休、二日です」

凛「答えになってない! ちゃんと説明して!」

凛「ねえ、最後に、事務所に来なかった日って、いつ!?」

武内P「……笑顔です」

アーニャ「ニェート! 答えになってない、です!」


武内P「なので、社長命令で、休みを取ります」


凛「そうして! 休まないと、承知しないから!」

アーニャ「ハラショー! 社長の命令は、絶対、です!」

武内P「社長命令では、一週間は休めとの事でした」

凛「一週間……長すぎても、確かに困るかも」

アーニャ「ダー……プロデューサーが居ないと、大変、です」

武内P「はい」


武内P「なので、頭を下げて、三日に短縮して貰いました」


凛「なんで縮めたの!? 半分以下でしょ、それじゃ!」

アーニャ「ニェート! 言われた通り、一週間休んでください!」


武内P「最初は、半日にして欲しいと、そう、言ったのですが……」

武内P「交渉の結果、三日休む、という形になりました」


凛・アーニャ「……!?」

武内P「ですが、困っている事も、あります」

凛「困る? 何が?」

アーニャ「お休みは、良い事、です」

武内P「……わからないのです」

凛・アーニャ「?」


武内P「私は、休みを取って、何をすれば良いのでしょうか?」


アーニャ「シトー? 三日ありますから、色々、出来ます」

凛「前に休みだった時は、どうしたの?」


武内P「初めての経験なので、何も、思い浮かばなくて」


凛・アーニャ「……初めて」

武内P「……」

武内P「……笑顔です」

凛・アーニャ「……!?」

凛「た、たまった家事とか!」

武内P「……ためていません」

アーニャ「どこかへ、お出かけ、です!」

武内P「……どこへ、でしょうか」

凛・アーニャ「……!?」

武内P「……」


武内P「やはり、私に休みは必要ないようですね」

武内P「社長に、休みを取らなくて良いよう、直訴してきます」


凛「待って!」アーニャ「ニェート!」

凛「考えるから、ちょっと待って! そこを動かないでよね!」

アーニャ「パジャールスタ、お願いします! スタラーニエ、アー! 努力、します!」

武内P「いえ、ですが……」


凛・アーニャ「プロデューサー!」


武内P「……わかり、ました」

  ・  ・  ・

武内P「……それでは、社長に直訴してきます」

凛「諦めないでよ! アンタ、私のプロデューサーでしょ!?」

武内P「はい、その通りです」


武内P「渋谷さん。アイドルである、貴女の素晴らしい笑顔」

武内P「私は、どんな休日よりも、それを見ていたいと思います」

武内P「それを見なければ、心が休まりませんから」


凛「……プロデューサー」

凛「ふーん。まあ、悪くないかな」

アーニャ「ニェート! リン、いけません!」

武内P「……それでは、社長に直訴してきます」

アーニャ「プロデューサー! 休まないと、駄目、です!」

武内P「はい、その通りです」


武内P「アナスタシアさん。私なりに、考えてみました」

武内P「休日とは、一体、何のためにあるのか、と」

武内P「疲れを癒やすためならば……私は、貴女の笑顔を見ていたいです」


アーニャ「……プロデューサー」

アーニャ「スパシーバ♪」ニコッ

凛「本当、プロデューサーってそればっかりだよね」ニコッ

武内P「そう……かもしれません」


凛・アーニャ「ふふっ♪」ニコッ


武内P「良い、笑顔です」

武内P「……それでは、社長に直訴してきます」

凛「うん、頑張ってね」

アーニャ「応援、しています」

武内P「やはり、お二人と話してみて、良かったです」

武内P「渋谷さん、アナスタシアさん、お二人のおかげで、自信が持てました」


武内P「やはり……私には、休みなど必要ないという事が!」


ガチャッ!


楓「――その話、お受けできません」


武内P「っ!?」

凛「楓さん? どうして、ここに……?」

アーニャ「! 何か、本を持っていますね?」


楓「働いただけ、休まるる分があると思います……ふふっ!」


武内P・凛・アーニャ「……『るるぶ』!?」

武内P「待ってください! あの、何故『るるぶ』を!?」

凛「うわ……付箋がビッシリ」

楓「ええ。どこに行こうか、迷っちゃって」

アーニャ「アー、温泉は外せないのですね?」

楓「温泉に入って、美味しいお酒を飲んで……ふふっ、楽しみだわ」

武内P「待ってください! 高垣さん、その話を何故ここで!?」

楓「にゃー」

武内P「何の答えにもなっていません、高垣さん!」

楓「私、気付いたらお休みを全然取ってなくて」

楓「だから、そろそろお休みを取ろうと思ってたんです」


武内P「あの、こちらを見て、お話を!」

楓「にゃー」チラッ

武内P「ですから! 何の答えにもなっていません!」


楓「凛ちゃんも、アーニャちゃんも、お仕事頑張ってるものね」

楓「二つのプロジェクトを掛け持ちだもの……お休み、取った方が良いと思うの」

楓「ふふっ、三日ほど、他の子には、見っからないように、うふふっ」


凛・アーニャ「……」

凛「楓さん、私にも、るるぶ見せて」

アーニャ「ハラショー! ここの温泉は、とっても広い、です!」


武内P「……!?」

武内P「み、皆さん! とにかく、お話を!」


楓「ここは、施設が大きくて、エステがあるみたい」

凛「エステ? そういうの、行ったことないな」

アーニャ「私も、です。だけど、アー、気になってはいました」

楓「瑞樹さんが言うには、ここのエステは、かなり良さそう」

凛「だったら……挑戦してみようかな」

アーニャ「ハラショー! 新しい事に挑戦は、良い事、です!」


楓「――ですって」


武内P「お話の結果だけを聞きたいのではなく!」

武内P「アイドルとプロデューサーが一緒に旅行は、問題が!」


楓「親御さんの許可は、取れそうかしら?」

凛「大丈夫。二人が一緒なら、問題ないと思う」

アーニャ「ダー。パーパとマーマへの、アー、お土産が困ります」

楓「車を出してくれるでしょうから、イクラをいくらでも♪」

凛「イクラ限定? それに、北海道の人にイクラを送るって……」

アーニャ「でも、それだったら、とっても頼もしい、です♪」


楓「――ですって」


武内P「発言の最後の方しか頭に入っていないじゃないですか!」

おフロロ

凛「というわけでさ、休み、合わせるよ」

武内P「待ってください、渋谷さん!」

アーニャ「ふふっ♪ 温泉、楽しみ、です♪」

武内P「待ってください、アナスタシアさん!」

武内P「高垣さん、お話、よろしいですか!?」

楓「にゃーん」フイッ

武内P「何故!? あの、どうして目すら合わせてくれないのでしょうか!?」

楓「……」


楓「――」ヒソヒソ

凛・アーニャ「……あー」

凛・アーニャ「駄目って言われるからだ、って」


武内P「……!?」

武内P「わかってらっしゃるのに……どうして……!」

凛「でもさ、休みの予定が決まって、良かったんじゃない?」

武内P「……あの、決まっていません」

アーニャ「プロデューサー、温泉、アビシシャーニエ、約束、ですよ?」

武内P「……あの、していません」


楓「私、思ったんです」

楓「アイドルが……女の子だけで旅行というのも、問題があるって」

楓「だから、貴方が一緒に来てくれたら、心強いな、って」


武内P「それ……は」


楓「ちょっとお酒を飲みすぎても、何とかしてくれそうだな、って」


武内P「……あの、それはちょっと」


楓「……」


武内P「……すみません、続きをどうぞ」

楓「貴方は、旅行先での私達が、心配では無いんですか?」

凛「プロデューサー、どうなの?」

アーニャ「アーニャは、プロデューサーを信じています」


武内P「ですが……!」


楓「貴方にやましい思いが無ければ、問題無いはずです」

楓「それとも、えっちな事を考えたんですか?」

凛「プロデューサー、どうなの?」

アーニャ「アーニャは、プロデューサーを信じています」


武内P「! そんな事は、決して!」

武内P「誓って! 貴女達にそんな想いを抱いた事は、一度もありません!」


楓・凛・アーニャ「……」ムスッ


武内P「待ってください!」

武内P「あの……何と言えば良かったんですか!?」

凛「今のってさ、本当だとしても言っちゃいけないと思う」

武内P「待ってください」

アーニャ「ヴァスパミナーニエ、アー、旅の思い出が必要、です」

武内P「待ってください!」

楓「問題発言に、大きいも小さいもありません」

武内P「お願いですから、待ってください!」


楓「一緒に、温泉に行きたいんです」

楓「一緒に――」


楓・凛・アーニャ「――笑顔で!」


武内P「…………わかり、ました」


楓・凛・アーニャ「ふふっ♪」ニコッ


武内P「…………良い、笑顔です」

  ・  ・  ・

ちひろ「なるほど、最初は、四人で旅行する予定だったんですね」

武内P「はい」

ちひろ「それが、情報がどこかから漏れて……」

武内P「346プロダクションのほとんどが参加する、集団旅行になりました」


ちひろ「……残念でしたね、せっかくのお休みだったのに」

ちひろ「人が珍しいことをすると、変わったものが降る、って言いますけど……」

ちひろ「プロデューサーさんが休むと、仕事が降って湧くんですね」


武内P「ですが、おかげで助かりました」

武内P「さすがに大勢居れば、問題にはならないでしょうし」

武内P「それに、四人のままでしたら、休まる暇が無さそうだったので」


武内P「今回の件は、社長に報告しておきました」

武内P「そして、思ったことをそのまま伝えました」


ちひろ「……何て、ですか?」


武内P「私は、休むわけにはいきません」

武内P「仕事を取らないでください」



おわり

んじゃあ、テキトーにまゆPにCVつけます


武内P「乾杯の挨拶、ですか」

まゆP「そりゃそうだろ、挨拶って大事だよ」

まゆP「言ってしまえば、そこから初めますよ―、って合図だもの」

まゆP「合図も無しに何か始めようって、そんな事ないよ?」

まゆP「ストⅡやってて、いきなりリュウが波動拳撃ってきたらどうするよ、ええ?」


武内P「ソニックブームで、対抗します」


まゆP「お前も溜めとるんかーい!」

まゆP「ったく、ホンットお前ってこういう音頭取るの苦手な!」

まゆP「どうせアレだろ?」

まゆP「笑顔です、頑張ってください」ボソボソ

まゆP「ぐらいしか言ってねえんだろ? あっ、見える! 目に浮かぶゥゥゥ!」


武内P「お疲れ様です。乾杯」


まゆP「ちょっとォォォォォ! 完全スルーはやめてくんない!?」

まゆP「しゃあねえなぁ、もう! ホイ、カンパーイ!」

まゆP「……っかー! 一杯目のビールって、なんでこう美味いのかねぇ」

まゆP「いや、二杯目は二杯目の、三杯目には三杯目の良さがあるんだけどね」

まゆP「疲れた体に染み渡るっつーか、体から疲れが出ていくっつーか」

まゆP「なあ、俺の言ってる事、わかるだろ?」


武内P「染み渡るはわかりますが……」

武内P「疲れが出ていく、というのは……」


まゆP「そんなもん決まってんだろ」

まゆP「ビールを飲むと、大事なPから疲れと一緒に出てくんだよ」

まゆP「俺なんか凄いよ? ジョビジョバ―出るもん、ジョビジョバ―って!」


武内P「……それは、わかります」


まゆP「だろ!? だからね、飲むってのは、仕事の一部なわけ」

まゆP「でないと、疲れが溜まりに溜まってパンクしちまぁ」

まゆP「お前だってさ、疲れ、溜まってんだろ?」


武内P「いえ、そんな事は――」


まゆP「あー、ストップストップ! そういうの良いから!」

まゆP「お前がさ、プロデューサー業を楽しんでるのは知ってるよ?」

まゆP「だけどさ、あるじゃん? どうしても不満とか出てくるじゃん?」

まゆP「って言うか出ろやァァァァァ!」


武内P「不満……」


まゆP「ほら、あるだろ! そりゃそうだろ、14人も担当してるんだから!」

まゆP「俺なんて、一人だけでギリッギリ、胃がキリっきりしてるんだもの!」


武内P「たこわさは、もう少しワサビが効いていて欲しいですね」


まゆP「そっちの不満は聞いてねえっつーの!」

武内P「逆にお聞きしますが……」

武内P「佐久間さんに、何か、不満があるのですか?」


まゆP「あん? そんなもん、あるに決まってんだろ」

まゆP「不満っていうか、不安っていうか、今、そこにある恐怖っていうか」


武内P「恐怖、ですか?」


まゆP「恐怖だよ、恐怖」

まゆP「お前だって知ってんだろ? アイツが、俺を慕ってるって事を」

まゆP「知っててトボけてるんなら、お母さん許しませんからね!」

まゆP「アンタをそんなに人の気持ちがわからない子に育てた覚えはありません!」


武内P「二杯目も、ビールで良いですか?」


まゆP「バッキャロウ! ピッチャー直飲みしてやらぁ!」

まゆP「確かにね、嫌われるよりは、好かれてた方が良いよ」

まゆP「だけどさ、プロデューサーとアイドルだもの」

まゆP「いい歳した野郎と、十六歳のジェェェイケー、だもの」

まゆP「会社的にも、社会的にも完全アウト!」


武内P「セーフ」


まゆP「ヨヨイのヨイ! よーし、次が本番な! 今のは練習!」

まゆP「……じゃねえから!」

まゆP「お前、他人事だと思ってテキトーな事言ってんじゃねえぞ!」

まゆP「それとも何か!? お前、本気でセーフだと思ってんのか?」


武内P「貴方の事は、忘れません」


まゆP「えっ、何? 俺、死ぬの?」

まゆP「いやいやいやいや、何もしてないからね!? させてないからね!?」

武内P「本当、ですか?」

武内P「……この時期なのに、このブリ、脂が乗っていますね」


まゆP「ああ、当然だろう……お、確かにこりゃ美味いな」

まゆP「そのために、俺がアイツ一人を担当してるの、わかってんだろ」


武内P「二人三脚で、とても、素晴らしいと思います」


まゆP「ちっげーから! 見てないと、何するかわかんねーんだもん!」

まゆP「ちょっとでも隙を見せたらヤバイ気がするんだよ、アイツ!」

まゆP「あ、カツオはちょっと血生臭いな、好きだけど」

まゆP「でなかったら、もっと担当してるわ!」

まゆP「お前ん所だと、あの子! かな子! かな子くれよ、かな子をよぉ!」


武内P「あげません」


まゆP「チクショウ! こ、この涙は違うからね!」

まゆP「ワサビがツンときただけなんだから! 勘違いしないでよね!」

まゆP「かな子は良いよなぁ、かな子」

まゆP「かな子が俺の担当だったらあれだよ、もう、大変だからね」

まゆP「毎日がショコラ・ティアラ、エブリデイショコラ・ティアラだから」

まゆP「俺のショコラもティアラしちゃってるからね、マジで」


武内P「三村さんは、渡しません」


まゆP「あらヤダ、何~? 独占欲ってやとぅ~?」

まゆP「なんでぇなんでぇ、お前さん、案外プロジェクトメンバー気に入ってんじゃないの」

まゆP「俺ぁまたてっきり、コミュニケーション不足で問題多発!」

まゆP「あたしぃ、アイドル辞めるぅ! なんて事にまでなってるかと思ってたぜ」


武内P「……乾杯、しましょう」


まゆP「……」

まゆP「え、マジで?」

  ・  ・  ・

まゆP「っはー、今じゃ元気印で、うるっせー感じのちゃんみおが、ねぇ」


武内P「……あの時は、本当に焦りました」


まゆP「まあでも、しょうがねえって、そういうのは」

まゆP「ホラホラ、飲めって」


武内P「ですが……」


まゆP「あのな、確かにお前にも悪い所があった」

まゆP「そんで、お前だけじゃなく、ちゃんにおにも悪い所があった」

まゆP「だけど、結果的にあの子は戻ってきて、今、輝いてる」

まゆP「それで良いじゃねえか。俺たちは別に、神様なんかじゃあねえんだ」

まゆP「お前も頑張った! ちゃんみおも頑張った! 結果、良かった!」

まゆP「良かったなら良いじゃねえか。そんなもんだよ、そんなもんなんだよ」


武内P「……デザートは、奢るます」


まゆP「ここは奢る位言えねえのか、ったく」

まゆP「シケるのは、その犯罪者見てえなツラだけにしとけってんだ」

武内P「あの時は……渋谷さんにも、怒られてしまいました」


まゆP「あっ、しぶりん! クローネにも参加してる、あの子だろ?」

まゆP「えっ、何? お前、あんな歳下の子に怒られたの?」

まゆP「ヤダヤダ、恥ずい~! プロデューサー、恥ずい~!」

まゆP「面白そうなネタ持ってんじゃねえの。どんな風に怒られたんだよ?」


武内P「……こう、思い切り睨まれて、怒鳴られました」


まゆP「ふえっ? 睨んで、怒鳴る?」

まゆP「えっ、ちょっと待って。あの子、そんな怒り方するの?」

まゆP「っていうか、お前を睨んで怒鳴るって、どんなメンタルだよ」

まゆP「心臓に毛が生えてるだろ、確実に。もう、モッサァ! って位」


武内P「二度と、彼女を怒らせたくないと、そう、思いました」

武内P「……怖いので」


まゆP「ああいう、一見サバサバしてるタイプってそうだよなぁ」

まゆP「あの子、絶対彼氏とか出来たら束縛するタイプだぜ」

まゆP「もうグルッグル! 魔法陣グルグルって位束縛するね、ありゃ」

まゆP「ニュージェネレーションズ、結構色々あったんだなぁ」

まゆP「あの子はどうなのよ、モジャモジャちゃん」


武内P「島村さん、ですか?」


まゆP「あー、そうそう! 島村ズッキーニちゃん!」


武内P「島村、卯月さんです」


まゆP「ズッキーニちゃんなんか、見たまんま良い子そうじゃない」

まゆP「ちょっとキャラが薄いかなと思ってたけどさ、ほら、あのLIVE」

まゆP「ステージ衣装も着ずに、学校の制服だったけどさ」

まゆP「あれは本っ当に良かった! 俺、あの学校の制服欲しくなったもの!」


武内P「やめてください」

武内P「まだ、ビールで良いですか?」


まゆP「んー、まだビールで良いな」

まゆP「最近暑くなってきたし、お前の不幸話を聞いてると酒がおいちいの~!」

まゆP「っかー! しみるしみるぅ! しみてくるぅ!」

まゆP「っていうか、お前がそんなんだと、リーダーの子とか大変だろ」

まゆP「ほら、あの子。セックスが服着て歩いてるっていうか、アレ」

まゆP「ウォーキング着衣セックス! って感じの、妙なエロさがある子」


武内P「チーズもち、美味しいですね」


まゆP「あっ、テメ、この野郎! 全部一人で食うんじゃねえよ!」

まゆP「っていうか、俺が頼んだやつばっか食ってんじゃねえか!」

まゆP「やめ、やめて!? わかった、俺が悪かったから!」

まゆP「美波ちゃん! 新田美波ちゃーん!」


武内P「……彼女には、随分と助けられました」

武内P「心残りは……ラブライカで初めて立つ、大きなステージ」

武内P「その舞台に、彼女を送り出せなかったことです」


まゆP「ああ、そりゃ、完全にお前が悪いな」

まゆP「アイドルっつっても、まだまだペーペーの新人だったんだろ」

まゆP「その限界をこっちで見てやらなくて、なんのためのプロデューサーだっつの」


武内P「……返す言葉もありません」


まゆP「チッ、ほとんど残ってねえじゃねえか。頼み直しだ、頼み直し!」

武内P「……あの時見せた、彼女の涙」

武内P「それが……はい、忘れられません」


まゆP「別に、無理に忘れる必要なんかねえさ」

まゆP「でけえ図体してんだ、そんな涙なんか、ひょいと乗り越えちまえば良い」

まゆP「あの子も立ち止まってるなら、お前さんが抱えてやれば良い」

まゆP「だけど、あの子はもう乗り越えてんだろ? なら、そこで話はしまいだよ」

まゆP「ま、忘れないってのも、大事だぜ。今後のためにな」


武内P「そう、ですね」

武内P「今では、アナスタシアさんと一緒に、とても、いい笑顔を見せてくれます」


まゆP「あの子ね! めっちゃ髪綺麗な、クローネにも居るあの子な!」

まゆP「ロシアとのハーフだろ? 言葉はまぁ、なんとかするとしてだな」

まゆP「……体臭とか、産毛ザラザラとか、どうなの? 実際」

まゆP「いや、やらしい意味じゃなくてね? 全国の男子、皆気になってると思うわけよ」


武内P「チーズもち、美味しいですね」


まゆP「ちょっとォォォォォ!?」

武内P「しかし、嬉しい誤算もありました」

武内P「アナスタシアさんと、神崎さんの交流が深まったことです」


まゆP「……クソがっ! また頼み直しじゃねーか!」

まゆP「あー、神崎さんって、あの子だろ? 黒くて白い子」

まゆP「この間、お前とあの子が話してるの見たんだけどさ」

まゆP「キミたち、一体何語で話してたわけ? 全然わかんなかったんだけど」


武内P「神崎さん特有の言い回し、ですね」

武内P「……私も、最初はコミュニケーションを取るのに苦労しました」


まゆP「えっ、何? お前、あの子が言ってる事、理解出来てるの?」

まゆP「それじゃあ、闇に飲まれよ、ってどういう意味だよ」

まゆP「俺ぁてっきり……この世には、目には見えない闇の住人たちがいる」

まゆP「奴らは時として牙を向き、君達を襲ってくる」

まゆP「彼は、そんな奴らから君達を守るため、地獄の底からやってきた、正義の使者」

まゆP「……なのかもしれない」


武内P・まゆP「ぬ~べ~」


武内P・まゆP「……」


武内P・まゆP「はっはっは!」

まゆP「……はー! お前、その顔でぬ~べ~は駄目だろ!」

まゆP「どっちかって言うと、お前退治される側だもの、妖怪側だもの」

まゆP「鬼の手って言うか、鬼。プロデュース鬼」

まゆP「その人相の悪さで、怖がられたりもしたんじゃねえの?」


武内P「……」


まゆP「はっはっはー! 何度もチーズもちいかれてたまっかよ!」

まゆP「オラ、どうなんだよ! んんんんん!?」


武内P「……緒方さんには、本当に怖がられていました」


まゆP「あー、わかる。あの子、気弱な感じがすげえもんな」

まゆP「よし、逆に考えよう。怖がられるだけで、良かったと」

まゆP「お前の顔にビビって心臓が止まらなくて良かったと、そう考えるんだ」


武内P「ですが……最近では、見捨てないでください、と」

武内P「……たまに、言われるようになって、ですね」


まゆP「……馬鹿野郎、急にそんな事言うんじゃねえよ」

まゆP「ちょっと、ホント、キュートタイプのそういう話はやめて」

まゆP「何ていうか、心臓に悪いから。心臓がキューっとしちゃうから」

まゆP「流れ変えよう、流れ! 俺、ビールじゃなくてウーロンハイね!」

まゆP「ほら、わかってんだろ! かな子だよ、かな子!」

まゆP「かな子の話題すっぞ、かな子くれよ!」


武内P「あげません」

武内P「私は、今日はビールにします」


まゆP「それでよ、かな子に関して、悪い噂を聞いたんだよ」

まゆP「今日は、それを確かめるまで帰さねえからな」

まゆP「朝までコースってったら、お前、そりゃ大変だよ?」

まゆP「あらぬ噂が立つよ? 良いのか? 死人が出るよ?」


武内P「……死人?」


まゆP「俺が焦ったまゆに色々されて、社会的に死ぬってことだよ」

まゆP「って、そんな事ぁどうでも良いんだよ! いや、良くね―けど!」

まゆP「お前、かな子のカロリー制限して、ダイエットさせてるってマジか!? 殺すぞ!」

武内P「あの……何か、問題でも?」


まゆP「問題だらけだよ! 受験生も投げ出すレベルの問題集だよ!」

まゆP「良いか? 俺は、ウチのアイドル達って、痩せすぎだと思ってんだ」

まゆP「そこにドン! かな子ドン! わかる!? わかれよ!」

まゆP「わかんねえんだったら、ここにかな子呼べ、ちょっぱやで」

まゆP「そしたらお前、お前、かな子がここに居たらそんなの……へへっ」


武内P「ゴミのような、笑顔です」


まゆP「確かに、今の俺の笑顔がゴミだったかもしれない」

まゆP「だけどホラ、今、エコって流行ってるから」

まゆP「さっきの俺のゴミの笑顔でも、きっと、何かになるってもんさ」

まゆP「そう、欲望のおもむくままに、エゴだよそれは!」


武内P「……三村さんは、痩せてはいません」

武内P「その、制限をしても……美味しいから大丈夫と、食べてしまうので」


まゆP「な……なら、まあ、良いんだけどよ。良いんだけど……」

まゆP「もおおおォォォォォ! くれよォォォォォ! かな子ォォォォォ!」


武内P「あげません」

武内P「緒方さん、三村さん、そして、双葉さん」

武内P「彼女たちは、大事なキャンディアイランドのメンバーです」


まゆP「……お前って、結構独占欲強めだよな」

まゆP「双葉って、あの合法ロリの子だろ。いや、十七歳だから非合法だけども」

まゆP「あの子を最初に見た時、俺ぁ思ったね」

まゆP「あの野郎、一つ上のステージに行きやがった、って」


武内P「双葉さんにも、本当に助けられています」


まゆP「はい、スルーいただきましたー!」

まゆP「いやま、話には聞いてたんだけどな」

まゆP「普段やる気ねえ癖しやがって、やる時ぁやる子だ、ってよ」

まゆP「で、どうなの実際?」


武内P「そうですね……概ね、その通りです」


まゆP「お前はロリコン、と」


武内P「違います」

武内P「私には、そういった特殊な嗜好はありません」


まゆP「はいはい、わーったわーった。ちょっとからかっただけだよ」

まゆP「本当にそうだとしたら、もっとロリでポップなメンバー揃えてるだろうしな」

まゆP「ロリコンだったら、神スイングの子も、メンバーに入れてねえだろ」


武内P「完全に別人です」

武内P「諸星きらりさんです」


まゆP「そうそう、ぼっしぃ、な」


武内P「待ってください! その呼び方は、あまりにも!」


まゆP「はーい、良い子の皆ー。絶対にググっちゃ駄目だぞー」

まゆP「ググったらハピハピしちゃうからね」

まゆP「にょわー、というか、にゅわーって生えちゃうからね」


武内P「諸星さんは、とても、素晴らしいアイドルです」

武内P「身長が高い事を気にしておられるようですが、そこも、魅力だと思います」


まゆP「そうだな! でっかい事は、良い事だ!」


武内P「やめましょう。この流れは、本当にいけません」

まゆP「まあ、でもな。お前へのロリコン疑惑って、マジであるぞ」


武内P「……えっ!?」


まゆP「ほら、とときら学園」

まゆP「あの放送をみた時さ、ぶっちゃけ色々考えたもん」

まゆP「お前の連絡先を消すか、インタビューの時どう答えようか」

まゆP「考えたのが、いつかやると思ってましたが、顔が怖くて何も言えませんでした、な」


武内P「あれは……番組のディレクターが!」


まゆP「ディレクターも、プロデューサーに言われてやったんだと思います」

まゆP「きっと、顔が怖くて何も言えなかったんだと思います」

まゆP「カリスマJCのスモック姿ハァハァ、って言ってましたー!」


武内P「……城ヶ崎さんにも、最初は精神的な負担をかけてしまいました」


まゆ「……あー、なんかスイッチ入っちゃった?」

武内P「彼女――城ヶ崎莉嘉さんは、姉の城ヶ崎美嘉さんへの憧れが強いので」


まゆP「あー、姉ちゃんがすげえアイドルだと、そりゃ憧れるわな」

まゆP「でもまぁ、姉妹での曲とかも出してるしよ」

まゆP「結果的には、とときら学園もいい仕事だったんじゃねえの」


武内P「そう、ですね」

武内P「他のメンバーとの交流の中で、彼女も、答えを出してくれました」

武内P「凸レーションの方達には、教わる事も多いです」


まゆP「っと、それはちょっと置いておいてだな」

まゆP「お前、城ヶ崎美嘉と、どんな関係なの?」


武内P「担当しているアイドルの、姉の、アイドルの方ですね」


まゆP「いやいやいやいや! なんか、微妙に親しげじゃん!?」

まゆP「俺としてはさ、そういうの気になるっつーか!」

まゆP「ぶっちゃけどうなのよ! ギャルだよ、ギャル!」

まゆP「ここだけの話さ、カリとかスマっちゃったりしてんじゃないの!?」


武内P「ご飯物でも、頼みましょうか」


まゆP「あ、レタスチャーハンにしようぜ」

まゆP「ベジタブルが足りてねえのよ、ベジタボゥーが」

まゆP「ってオイィィィ! 誤魔化せると思ってんのか、ああん!?」

まゆP「どうなんだよ、ええ!? プロデューサーさんよぉ!?」

まゆP「アイドルにぃ、グイグイこられたらぁ、どうしたら良いんですかねぇ!?」


武内P「彼女は……そうですね」

武内P「赤城さんとも、親しくしていただいています」


まゆP「その時、プロデューサーに電流走る」

まゆP「ざわ・・・ざわ・・・」

まゆP「スルーっ・・・! 圧倒的スルーっ・・・!」

まゆP「こんなに悩んでるのにっ・・・!! スルーしやがるっ・・・!!」

まゆP「俺、テンパイ」


武内P「言うと、思っていました」

武内P「彼女の明るさには、救われますよ」


まゆP「バカ野郎、お前。俺の甘えっぷりは凄いよ、カレーの王子様甘口くらい」

まゆP「明るさで救われたはずなのに、暗い所にぶちこまれちゃうから」

まゆP「金曜日のカレーの日に、甘口でお願いします、って言って馬鹿にされちゃうから」

武内P「……監獄、ですか」

武内P「ん、このレタスチャーハン、中々」


まゆP「お、マジだ。なんでぇ、飲み屋のチャーハンも悪くねえじゃねえか」

まゆP「まあ、俺くらいのプロデューサーになれば監獄でも余裕だけどね」

まゆP「あんまりにも余裕で、ギターかき鳴らしちゃうから」

まゆP「エビバーデレッツロック! エビバーデレッツロック!」


武内P「監獄ロック、ですか」


まゆP「ちょっと、時代を先取りしすぎたかな?」


武内P「……マーティ?」


まゆP「ドク! 1985年に帰らなきゃ!」


武内P「……担当している方たちに、通じますかね」


まゆP「バック・トゥ・ザ・フューチャーはわかるだろ」

まゆP「……えっ? ちょっと待って、わからないの!?」

まゆP「ニュージェネレーションギャップ感じちゃうの!? これで!?」

武内P「……ロックは、良いですよね」


まゆP「待って! ねえ、待って! 今の駄目!?」


武内P「ただ……多田さんと、木村さんの、ロックに関しての会話」

武内P「あれは……もう、本当に」


まゆP「……あー、その話聞いたことあるわ」

まゆP「俺、その場に居て手元にリモコンがあったらチャンネル変えてるもの」

まゆP「もしも、あれが自分だったらと思うと……あ、死にたい」

まゆP「他人事なのに、なんかこう、なんか……あ、だめ、死にたい」


武内P「ですが、木村さんとの交流は、多田さんにとっていい経験になると思います」


まゆP「うん、ちょっと待って。今、メンタル復帰させるから。イメトレで」

まゆP「ええっ!? かな子、どうして俺の家に!?」


武内P「無駄なトレーニングは、やめましょう」


まゆP「早く逃げるんだ! まゆに気づかれたらやばい!」


武内P「何のトレーニングですか?」

まゆP「……ふぅ、良かった」

まゆP「まゆに気づかれて、監禁される俺は居ないんだ」

まゆP「危うくイメトレでこれからの人生に絶望する所だったぜ」


武内P「イメージで、ですか」


まゆP「そうは言うけど、イメージの力って凄いぜ」

まゆP「ほら、程よく酔いが回ってきたから、見えるだろ?」

まゆP「この俺の隣に座る、アイドルの姿が――」


ボワァァ…


武内P「! さく」


まゆP「ストォォォップ! 答えは言わないで! 300円あげるからァァァ!」

まゆP「見えるから、隣は見ないようにしてるのォォォ!」

まゆP「同席してないのに、エア同席してるのォォォォォ!!」


武内P「……頑張って、ください」

武内P「そ、そうですね! イメージは、大切ですね!」

武内P「前川さんも、ネコキャラと、イメージを大切にされていますし!」


…フッ


武内P「……消えた」


まゆP「いや、居る。居るっていうか、俺、何かされてる」

まゆP「待って待って、ちょっと待って?」

まゆP「なんか、右手の小指が微塵も動かせないんだけど」

まゆP「糸でグルグル巻にされて、チクワみたいになってる気がするんだけど」

まゆP「どうしたら良いと思う? ねえ、ちょっと」


武内P「前川さんがカフェを選挙した時は、焦りました……」

武内P「ですが、よくよく考えてみれば、ウチのプロダクションでは、大した事ではないですね」


まゆP「オイ、何で横向いて喋ってるんだよ、なあオイ」

まゆP「目を見て話そうぜ。照れんなよ、シャイボーイかよ」

まゆP「俺はホラ、アレだから。寝違えて、横向けないだけだから」

>武内P「前川さんがカフェを選挙した時は、焦りました……」

>武内P「前川さんがカフェを占拠した時は、焦りました……」

武内P「それでは、そろそろお開きにしましょうか」


まゆP「そうしたいのは山々なんだが、もう右手の指の自由が無いんだ」

まゆP「他の指は巻き込まれないようにって抵抗したら、ホラ、見ろよ」


武内P「親指と小指だけ立てる……アロハ、ですか」


まゆP「アロハって、色んな意味があるって知ってるか?」

まゆP「知られてるのは、こんにちはー、だけだったりするんだけどな」

まゆP「例えば、ありがとう。こんな俺を助けてくれて、マジアロハ」


武内P「割り勘のお金は、ここに置いておきます」

武内P「お先に失礼します、アロハ」


まゆP「待ってェェェェェ!! 置いてかないでェェェェェ!」

まゆP「さようならの意味もあるけれども! ちょっ、えっ、ホントに行っちゃうの!?」

まゆP「俺たち親友じゃん! 仲良しじゃん! ねっ、ねっ!?」


武内P「アロハには……アイラブユー、の意味もあるそうですよ」


まゆP「いらねえ情報を与えるんじゃねえェェェェェ!!」

  ・  ・  ・

まゆP「……クソッ! なんて薄情な野郎だ、ったくよぉ!」

まゆP「走ったら追いつくか? なんかもう右手が動かねえけど」

まゆP「っていうか、結局デザートを奢ってねえじゃねえか!」

まゆP「あの野郎、今度あったらパフェをしこたま奢らせてやる!」


武内P「――しこたまは、勘弁してください」


まゆP「……ほー、戻ってくるたぁ、いい度胸じゃねえか」

まゆP「はーっはっは! 誰が勘弁してやるかよ! 馬鹿がぁ!」

まゆP「これから二軒目で、さらにその後――」


まゆP「――……って、オイ、なんか、後ろに見覚えがある方達がいらっしゃるんだけど?」


武内P「店を出た所を……見つかってしまいました」


まゆP「あー、でも、俺の勘違いかな、うん、そうに違いない」

まゆP「だってさ、こんな所にアイドルが居るわけないもの。有り得ないもの」

まゆP「ただの居酒屋だよ? 無い無い……それじゃ! そういう事で!」


ガシッ!


武内P「アロハには、ようこそ、という意味もあります」

まゆP「……挨拶、苦手じゃなかったっけか?」

武内P「笑顔です」

まゆP「……へっ」


まゆP「もうイヤアアアァァァァァ!!」



おわり

ネット回線の調子が悪いので今日は寝ます
おやすみなさい

やっと回線繋がりました
書きます


「お昼……それだけなんですか?」


 プロデューサーさんのデスクの上を見ながら言う。
 半分ほど食べたあとがある惣菜パンに、缶コーヒー。
 それに、栄養補給のゼリー飲料……でも、開けてすらいない。
 プロデューサーさん、体が大きいんだから全然足りないと思うんですけど……。


「そう、ですね。基本的に、昼はこの程度で済ませています」


 その言葉を聞いて、驚いちゃいました。
 プロデューサーさんが、いつも私達のために頑張ってるって、知ってます。
 それなのに、私、全然知りませんでした。
 あうう……だけど、どうしたら良いんだろう。


「……島村さん?」



 ――そうだっ!



「プロデューサーさん! 私、お弁当、作ってきます!」


 プロデューサーさんには、いつもお世話になってますし!
 こういう事でなら、私も、プロデューサーさんの助けになれると思うんです!
 ちょ、ちょっと自分一人で作るのは自信がないですけど……。
 でも、大丈夫です!


「し、島村さん?」


 プロデューサーさんが右手を首筋にやって、困ってる。
 もしかして、私の料理の腕に、不安があるんでしょうか……。
 でも、安心してください!
 ちゃ~んと、ママに相談して、手伝ってもらいますから!


「お願いしますっ、やらせてください!」


 両手で握りこぶしを作り、やる気をアピール。
 私、他の皆みたいに、プロジェクトのために何かって、思いつきません。
 思いつくのは普通のことばかり。
 全部、プロデューサーさんなら絶対に思いついてるだろうな、っていうのばっかりで。


「……いえ、ですが」


 ……だから、じゃないんですけど。


 プロジェクトのために、何かを考える事は私には難しいけれど。
 プロジェクトのために、頑張ってるプロデューサーさんのために、何かしたいな、って。


「……!」


 ……そう、思ったんです。 

  ・  ・  ・

「う~ん、このお弁当箱だと、小さいかなぁ」


 私にとっては十分大きいけど、プロデューサーさん用だと、小さい気がする。
 もう少し大きい方やつにしよう、っと。
 あっ、このピンクのお弁当箱可愛いー!
 ……って、いけないいけない、ちゃんと選ばないと!


「あっ、この大きくて黒いの、プロデューサーさんみたい」


 デザインはとってもシンプルで、飾り気のない黒くて大きいお弁当箱。
 だけど、ちゃんと仕切りもしっかりあって、蓋にお箸を入れる所もある。
 蓋に入れる用のお箸は、普通のお箸に比べると、やっぱり短い。
 だけど、この短いお箸でちょこちょことお弁当を食べるプロデューサーさんを想像すると、
それが、とっても可愛い光景なんじゃないかと、思う。


「よし、このお弁当箱にしようっと!」


 あの後、遠慮するプロデューサーさんを必死に説得して、約束しちゃいました。
 明日は、私がお弁当を作ってきますー、って!
 申し訳なさそうな顔をしてたけど、気にしなくてもいいのに。


「あと、お弁当包みも選ばないと……」


 頑張ります、って言いましたよね。
 でも、お弁当を作るぞー、って気持ちは、頑張るとはまるでかけ離れてます。
 だって……えへへ、


 ――誰かのために、何かをしたい気持ちは、努力とは違いますから。


 あっ、も、勿論、頑張りますっていう言葉に、嘘なんか無いですよ!
 私が頑張るのは、美味しく作るぞー、とか、そっちの意味で言ったんです!


「あっ、このピンクの包み、可愛いー!」


 許可を貰った後、急いでママに連絡したら、あはは……ちょっと叱られちゃった。
 その場の思いつきで、明日すぐにお弁当を作るだなんて困る、って。
 中身に関してはどうにかなるとしても、お弁当箱が無い、って。
 だけど、どうしてちょっと機嫌良さそうだったんだろう、ママ。


「サイズが小さいのと大きいのがある……」


 大きいのは、さっき選んだのお弁当箱に丁度良い。
 小さいのは、私が普段使ってるお弁当箱に……うん、丁度良いかも。
 これにしちゃおうかなぁ、でも、ピンクのお弁当包み……うーん。
 男の人って、こういうの気にするかな?
 でも、これ、可愛いなぁ。


「……えへへ、すみませんっ!」


 この場にいないプロデューサーさんに、小声で謝った。
 ピンクの包みでも、プロデューサーさんなら許してくれますよね?

  ・  ・  ・

「ええっと……ひき肉ひき肉」


 お弁当箱とお弁当包みは買ったから、あとはママに頼まれたおつかい。
 プロデューサーさんの好きな物は、ハンバーグ。
 それをママに伝えたら、ひき肉を買ってきなさい、って言われたんです。
 きっと、ちっちゃいミニハンバーグを作るんだと思います!


「ど、どれだろう」


 牛ひき肉、豚ひき肉、鳥ひき肉、合い挽き肉。
 いつもうちで出るハンバーグは……合い挽き肉?
 えうう、いつも美味しいーって思ってるだけで、全然気にしたことありませんでした!
 それに、よく考えてみれば本当にミニハンバーグを作るかも、確かじゃないです!


「……」


 買い物かごに、全部の種類のひき肉を入れちゃいます。
 どの位使うかもわからないから、大、って書いてあるのを全部。
 ほ、ほら! もし違っても、そぼろにすれば日持ちしますし!
 ママに電話して、どれを買えば良いか聞けば良いんだろうけど……。


 ――それは、妙に、照れくさい。


「よしっ!」


 これだけあれば、何を作るにも困らないです!
 あとは、買って帰るだけで……。
 あっ、でもでも、せっかく大きなお弁当箱なんだから、色々入れたいなぁ。
 卵焼き……卵は、卵はお家にあったと思います、多分。


「……」


 でも、もし切らしちゃってたら、どうしよう。
 プロデューサーさん、甘い物って結構好きでしたよね。
 だから、あま~い卵焼きがお弁当に入ってたら、喜ぶと思うんです。
 無くても、きっと喜んでくれるとは思うんですけど、でも……。


「……四つ入りのなら、良いかな」


 それなら、買って帰ってもママも困らないだろうし!
 それに、もし使わなかったとしても、朝ごはんに使うでしょうから!
 四つ入りなら、いっぱい入ってるのと同じ値段で、良いのが買えちゃいます。
 よーし、美味しそうな卵選び、頑張りますっ!


「あ、ウィンナー」


 卵売り場へ向かう途中、ウィンナーが目に入った。
 ……タコさんウィンナーって、喜ぶかな。
 それに、ベーコン……アスパラのベーコン巻きも、お弁当の定番ですよね。
 生ハム……生ハムをお弁当に? さ、さすがに無しかな? いや、でも……。


「……」 


 お小遣い、足りるかなぁ。

  ・  ・  ・

「はいっ、プロデューサーさん♪」


 ピンク色の、大きな包みをプロデューサーさんに差し出す。
 差し出されたそれを見て、ちょっと驚いた顔をされた。
 どっ、どうして驚いたんでしょうか?
 も、もしかして、お弁当箱、大きすぎましたか!?
 それとも、やっぱりピンクの包みが駄目でしたか!?


「……ありがとう、ございます」


 プロデューサーさんが、両手を差し出し、包みを受け取る。
 その時に指先同士が触れ合って、ちょっぴりドキッとしちゃいました。
 デスクの、キーボードの横の置かれるお弁当。
 私は、それと、プロデューサーさんを交互に見つめる。


「……」


 そんな私の様子に気付いたのか、プロデューサーさんがこちらを見てくる。
 早く、包みを開けてみてくれないかなぁ。
 あのですね、プロデューサーさん。
 そのお弁当――


 ――物凄い、自信作なんです!


 自分でも、どうしてこんなに上手くいったのが、わからないくらい!
 ママに手伝って貰うから、そんなに失敗はしないだろうと思ってたんです。
 だけど、それどころか、本当に美味しく出来たんですよ、それ!


「……」


 朝だけじゃ、絶対時間が足りないなって思って、昨日の夕方から準備をしたんです。
 ほら、煮物って、染み込んでる方が美味しいじゃないですか。
 だから、帰ってすぐにママと一緒に作って、一晩寝かせたんですよ。
 やっぱり、野菜を食べないと、栄養が偏っちゃいますし、煮物って大事です。


「……」


 彩りも大事だなって、ブロッコリーに、プチトマトも!
 卵焼きも、お砂糖で味にムラが出ないように、なんと、ガムシロップを使ったんです!
 そうするとですね、そこまでかき混ぜなくても味が混ざるし、ふんわり焼けるんです!
 最初の一個目は失敗しちゃいましたけど、それは、パパが朝ごはんにしましたから!


「……」


 何と言っても、メインは、大好物のハンバーグですっ!
 昨日の夜に下準備して、早起きして焼くだけにしておいたんです!
 プロデューサーさんの好物ですし、ママの得意料理でもあるんですよ!
 えへへっ、私も、ハンバーグ大好きですっ!
 ちょっと焦げちゃったのもあったんですけど、それは、パパが朝ごはんにしましたから!


「……」


 本当に、本当に自信作なんです!


「……島村さん?」


 プロデューサーさんが、口を開いた。
 だ、だって、気になるんですもん。
 その自信作を食べて、プロデューサーさんがどんな反応するのかなー、って。
 タコさんウィンナーだって、綺麗に足がクルンってなってますよ。


「あの、食べないんですか?」


 早く、包みを開けて欲しい。
 お弁当箱の上に、シャケのふりかけもあるんですよ。
 シャケのふりかけって、すっごく美味しいですよね!


「いえ、いただきます。いただきますが……その……」


 プロデューサーさんが、右手を首筋にやって困ってる。
 も、もしかして、私、何か失敗しちゃいましたか!?
 やっぱり、ピンクのお弁当包みは、嫌でした!?
 それとも……あうう、お弁当箱、それじゃ小さかったですか、逆に大きすぎました!?


「……まだ、お昼には早いので」


 チラリと、卓上時計に目をやりながら、言われた。
 あんまりにも楽しみすぎて、時間を忘れてしまっていた……その、色々。
 急がないと、レッスンに遅れちゃうし、お昼ゴハンには、早すぎる時間。
 慌ててその場から離れた……理由は……その、色々。


「れっ、レッスンに行ってきますっ!」


 顔が熱い。
 えうう……きっと、タコさんウィンナーよりも、真っ赤な顔になっちゃってます。
 振り返って、プロデューサーさんの顔を見るのが、とっても恥ずかしいです。
 だから、こ、このまま行っちゃおう、そうしよう!


「島村さん、頑張ってください」


 そんな私の背中に、いつものように、低い声がかけられる。
 その声を聞いて、なんとなく、プロデューサーさんは、待っててくれるとわかった。
 私がレッスンを終えて戻ってくる、お昼の時間。
 その時まで、包みを開けずに、プロデューサーさんは、待っててくれる、って。


「――はいっ!」


 レッスンの後の楽しみが、出来ちゃいました。
 だから、その楽しみを作ってくれたプロデューサーさんに、お礼をしないと。
 だけど、急がなきゃいけないから、あんまり話してる時間はないですよね。
 それに……恥ずかしいですから。


「島村卯月、頑張りますっ♪」


 だから、笑顔で――私の一番自信があるもので、その声に応えた。


 プロデューサーさんがお弁当を食べた時の反応は、ちょっぴり不安だけど、大丈夫。
 だって、そのお弁当、本当に自信ありますから!


 作ってる時の私を見て、ママもニコニコ笑ってましたもん!
 ……でも、パパが妙に寂しそうだったのは、一体何だったんでしょうか?



おわり

書きます


武内P「何故、いつも来られるのですか?」

美嘉「へっ?」

武内P「……」

美嘉「何故? いや、何故って、それは……」

武内P「……」

美嘉「何故って……どうして、って意味だよね?」

武内P「はい」

美嘉「オッケー★ わかったわかった」

美嘉「どうして?」

武内P「……」


武内P「えっ?」

武内P「あの……城ヶ崎さん?」

美嘉「あー、わかるわかる。アタシだってわかるよ?」

武内P「……」

美嘉「でもさ、ホラ、ね? あるじゃん? 流れっていうの?」

武内P「……」

美嘉「急だったからさ、アタシだって驚くじゃん?」

美嘉「驚いたら、聞くじゃん? わかるっしょ?」

美嘉「どうして?」

武内P「……」


武内P「いえ、あの」

武内P「少し、気になったものですから」

美嘉「あー、そういう感じかー、なるほどねー」

美嘉「あるよね、そういう時って」

武内P「……」

美嘉「当たり前のコトがさ、妙に気になる時って」

美嘉「アタシもチョーわかる★ あるもん、そういうコト」

美嘉「あるよねー、あるある」

武内P「……」


武内P「あの……ですから」

武内P「城ヶ崎さん?」

美嘉「えっ、何? どうしたの?」

美嘉「何か質問でもあるの? 珍しいじゃん」

美嘉「オッケー★ カリスマJKアイドル、城ヶ崎美嘉が何でも答えるよ★」

武内P「はあ……ありがとう、ございます」

美嘉「良いって良いって★ それで、何ー?」

武内P「何故、いつも来られるのですか?」

美嘉「えっ? それ、さっき話したじゃん」

武内P「……」


武内P「待ってください! いえ、確かに話しはしましたが!」

美嘉「だよねー。もう、シッカリしてよ」

美嘉「そんなんじゃ、色々と困るっしょ」

美嘉「まあ、それだけアタシのコトを気にしてたって意味だよね」

美嘉「そういうコトならまー、悪い気はしないかな★」

武内P「はい。ですから、あの……」

美嘉「でもさ? アタシはアイドルで、アンタはプロデューサーっしょ?」

美嘉「あんまりさ、意識するのって良くないと思う」

美嘉「あ、あくまでも、一般的にだけど! 一般的な話ね!」

武内P「……」


武内P「……はあ」

美嘉「で、でもまぁ……ほら、アタシだってJKなワケだし?」

美嘉「そういうのに興味が無いって言ったらウソになるケド……」

美嘉「ってもー! アンタ、何言わせんの!」

バシッ!

武内P「痛っ」

美嘉「ホント、ちゃんと立場とか考えなよー?」

美嘉「シンデレラプロジェクトとか、思春期真っ盛りだらけじゃん?」

美嘉「アンタがしっかりしないとダメなんだからね★」

武内P「……」


武内P「はい、それは……わかっています」

武内P「ですから、そのですね」

美嘉「あっ、何か、気になるコトでもあったりする?」

美嘉「はー、しょうがないなー」

美嘉「良いよ、アタシで良ければ聞いてあげるからさ★」

武内P「聞いて欲しいというか……聞かせて欲しいのですが」

美嘉「聞かせて欲しい?」

美嘉「何々? なんか、皆に言いにくいコトでもあるの?」

美嘉「それをアタシが、皆に言って聞かせて欲しい、ってコト?」

武内P「……」


武内P「違います」

美嘉「えー、じゃあなんだろ?」

美嘉「わっかんないなぁ、聞かせて欲しい……んー?」

武内P「……それでは、率直に」

美嘉「あー、待って、ストップ」

美嘉「アタシさ、アイドルなワケじゃん? ね? わかる?」

美嘉「だからさ、自分で答えを見つけなきゃ、って思うんだ★」

美嘉「こういうのって、アタシ的には重要なんだよね」

武内P「……」


武内P「……はあ」

美嘉「ところでさ、この前チョーオシャレなカフェ見つけたんだ★」

武内P「!? 待ってください!」

美嘉「えっ、何!? 急に大きな声だして、どうしたの?」

美嘉「あっ、わかった★」

武内P「……わかって、いただけましたか」

美嘉「アンタ、そのカフェのコト気になるんでしょー?」

美嘉「しょーがないなぁ。昼にでも、一緒する?」

武内P「……わかって、いただけていませんね」

美嘉「今からは無理っしょ。だって、アンタまだ仕事中だし」

武内P「……」


武内P「はい。仕事中です」

武内P「なので、ですね……」

美嘉「まー、アタシから見ても、アンタって頑張ってると思うよ」

美嘉「この前のフェスも、チョー盛り上がってたし★」

武内P「……はい、ありがとう、ございます」

美嘉「だからさ、頑張った自分へのご褒美に、カフェに行く★」

美嘉「そういう息抜きって、大事だと思うワケ。わかる?」

美嘉「昼休みまで頑張る、そして、昼休みになったらカフェに」

美嘉「オッケー?★」

武内P「……」


武内P「ストップ! あの、話が違ってきています!」

美嘉「えっ? 違う話をするってコト? まあ、イイケドさ」

美嘉「ねね、今日のアタシ、いい匂いしない?」

美嘉「川島さんに教えて貰ったやつなんだケドさ、どう?」

美嘉「ちょっと大人な、アダルトなカンジでさ、アタシ的にはアリかなって」

武内P「……良い、匂いです」

美嘉「あっ、やっぱり?★ だよねー! そう言うと思った★」

美嘉「でも、今の言い方ってなーんかやらしくない?」

美嘉「やらしいって言うか、なーんかエロい!」

美嘉「エロいのはダメでしょ。アタシだって、その、困るし?」

武内P「……」


武内P「……すみません」

美嘉「もー、シッカリしてって言ったばっかじゃん」

美嘉「だけどまー、アタシが魅力的すぎるのも悪かったかな★」

美嘉「へへへ、アンタを魅了する程の魅力とか、ヤバいよねぇ」

美嘉「これなら、誰だってメロメロにしちゃうんじゃない? マジで★」

武内P「……そう、ですね」

美嘉「それじゃあ、魅了されたアンタに命令しちゃおうかな★」

美嘉「昼休みになったら、アタシとカフェに行くこと!」

美嘉「それまではさ、我慢して仕事頑張りなー」

武内P「……」


武内P「何故、いつも来られるのですか?」

美嘉「もー、何? そんなに気になるワケ?」

美嘉「アンタってさ、意外とそういう細かい所を気にするよね」

美嘉「マメっていうか、何ていうか……まっ、悪くはないと思うケド」

武内P「何故、いつも来られるのですか?」

美嘉「はいはーい、その話はもうしたっしょ? だから終わり」

美嘉「あんまりしつこいとさ、アタシも怒るよー? マジで、ホントマジで」

美嘉「アンタも、アタシを困らせたくないよね? ね?」

武内P「何故、いつも来らr」


美嘉「みりあちゃ――ん! みりあちゃああ――んっ!」


武内P「!?」

武内P「城ヶ崎さん!? あの、城ヶ崎さん!?」


美嘉「あああみりあちゃああ――んっ! みりあちゃ――んっ!」

美嘉「辛い辛い辛――いっ! お姉ちゃん辛いよ――っ!」

美嘉「みりあちゃ――ん! みりあちゃああ――んっ!」


ガチャッ!


みりあ「美嘉ちゃん!」


美嘉「早く! 早――くっ! 辛い辛いなの――っ!」

美嘉「みりあちゃ――ん! みりあちゃああ――んっ!」


武内P「一体、城ヶ崎さんに何が……!?」

みりあ「大丈夫、美嘉ちゃん!」


美嘉「ダメ――っ! アタシもうダメ――っ!」

美嘉「早く早く! お願いみりあちゃああ――んっ!」


武内P「あの取り乱し方は、一体……!?」


莉嘉「Pくん! お姉ちゃんに、何したの!?」


武内P「じょ、城ヶ崎さん……こ、これは……!」

武内P「何故、いつも来られるのかと聞いたら、あの様に取り乱して……」


莉嘉「そんなの、Pくんが気になってるからに決まってるじゃん!」


武内P「っ!?」


みりあ「そうだよね、美嘉ちゃん!」


美嘉「いひいい――っ!? 辛い辛――いっ!」

美嘉「だから早く! 早くみりあちゃああ――んっ!」

武内P「彼女が、私を……? いえ、そんなはずは!」

莉嘉「あるから、お姉ちゃんが辛い思いをしたんだよ!」

莉嘉「Pくん、デリカシーなさすぎ!」

武内P「す……すみません」


みりあ「謝ってくれてるよ、美嘉ちゃん!」


美嘉「それは聞こえてるから――っ! 辛いよ――っ!」

美嘉「お姉ちゃん辛いよ――! みりあちゃ――んっ!」


武内P「しかし、あの様子は……?」

莉嘉「お姉ちゃん、頑張ってPくんをカフェに誘おうとしてたでしょ」

莉嘉「それなのに、何故ここに来るかなんて聞かれてさ……」

莉嘉「辛さが、限界を突破しちゃったんだよ!」


みりあ「だよね、美嘉ちゃん!」


美嘉「もうやめてええ――っ! どんどん辛くなるうう――っ!」

美嘉「解説とかほんとマジきっついから――っ! みりあちゃああ――んっ!」

莉嘉「辛い時って、誰かに甘えたくなっちゃうでしょ」

莉嘉「お姉ちゃんにとって、それがみりあちゃんなの」

莉嘉「ぎゅっとされると、落ち着くみたいなの」

武内P「……私が、彼女をそこまで追い詰めてしまったのですね」


みりあ「ねえねえ、そうなの美嘉ちゃん?」


美嘉「だ、だから早くぎゅっと! みりあちゃん……みりあちゃん!?」

美嘉「お姉ちゃん辛い辛い――っ! 早く、早――くっ!」


武内P「あの……何故、ぎゅっとしてあげないのですか?」


みりあ「あのね、みりあ思ったの」

みりあ「甘やかしてばっかりじゃ、良くないって」

みりあ「特に厳しくすることが、自立を促すって」

みりあ「今はね、美嘉ちゃんを甘やかすんじゃなくて、見守る時だと思ったの」


美嘉「うぐうう――っ!?」


莉嘉「お姉ちゃん! アイドルが、グウの音を出しちゃダメだよ!」

武内P「……」

莉嘉「お姉ちゃん、頑張って!」

みりあ「ファイト、美嘉ちゃん!」


美嘉「みりあちゃん……! 莉嘉、みりあちゃん……!」


武内P「……赤城さんの名前は二回言うのですね」

莉嘉「お姉ちゃんは、カリスマなんだから! 負けちゃダメだよ!」

みりあ「ちゃんと見守ってるよ、美嘉ちゃん! がんばれー!」


美嘉「……オッケー★」

美嘉「アタシは、カリスマJKアイドル、城ヶ崎美嘉だもんね★」シャキーン!


莉嘉「イエーイ☆ お姉ちゃんが、自分で立ち直った!」

みりあ「やったね莉嘉ちゃん!」

パンッ!


武内P「……」

  ・  ・  ・

美嘉「ゴメンゴメン★ ちょっと取り乱しちゃって★」

武内P「……いえ、一人で立ち直れたようで、本当に良かったです」

美嘉「これも、あの二人のおかげ……ホント、感謝してもしきれないよ」

武内P「城ヶ崎さん……」

美嘉「でもまあ、一緒にカフェに行く約束も取り付けたし、結果オーライでしょ★」

美嘉「楽しみにしててよねー★ ほんと、イイカンジなんだから★」ニコッ

武内P「……良い、笑顔です」

美嘉「へへへっ」ニコニコ

武内P「それで、あの……」

美嘉「んー? 何ー? あっ、カフェの場所? すぐ近くだよー★」


武内P「気になってる……というのは、その」


美嘉「……」


美嘉「みりあちゃ――ん! みりあちゃああ――んっ!」



おわり

書きます


武内P「隠れて、お菓子を食べましたね?」

かな子「ええっ!? 食べてませんよ!」ホワ~ン

武内P「三村さん」

かな子「ねっ? 私、お菓子食べてないよね?」ホワ~ン

智絵里「あぁ、かな子ちゃん凄く良い匂いがする……!」クンカクンカ

杏「飴も良いけど、クリームの匂いがたまらないよねぇ……!」クンカクンカ


かな子「ケーキだから大丈夫です」


武内P「もっと駄目ですよ!?」

かな子「ええっ!? 駄目なんですか!?」ホワ~ン

武内P「わかってください、三村さん!」

かな子「ねっ? ケーキなら、良いよね?」ホワ~ン

智絵里「うん、良い……凄く良い匂いだよ、かな子ちゃん……!」クンカクンカ

杏「悪い事なんて無いよ……大丈夫大丈夫……!」クンカクンカ


かな子「ほら、二人もこう言ってます!」ホワ~ン


武内P「明らかに様子がおかしいじゃないですか!」

かな子「ええっ!? 様子がおかしい!?」ホワ~ン

武内P「おかしいです! とても!」

かな子「ねっ? 最近は、こんな感じだよね?」ホワ~ン

智絵里「ねえ、そろそろペロペロして良い? 良いかな?」クンカクンカ

杏「やっぱりさ、舐めるならかな子ちゃんだよね~」クンカクンカ


かな子「ほら! いつも通りです!」ホワ~ン


武内P「待ってください! いつも通り!?」

かな子「ええっ!? 驚く所ですか!?」ホワ~ン

武内P「驚きますよ!?」

かな子「ねっ? 別に、おかしくないよね?」ホワ~ン

智絵里「お菓子? 舐め、えっ、お菓子? ケーキ?」クンカクンカ

杏「かな子ちゃんのお菓子、おか、お、美味しい?」クンカクンカ


かな子「美味しいから大丈夫です」ホワ~ン


武内P「いけません! ちょっ、あの、いけません!」

  ・  ・  ・

武内P「……これで、落ち着いて話が出来ますね」

かな子「あの……二人は、どうしたんですか?」

武内P「……今は、別室で拘束させて貰っています」

武内P「そうでもしないと、暴れて手がつけられないので」

かな子「そんな……二人共……!」

武内P「三村さん、貴女にお聞きしたいことがあります」


武内P「一体、いつからあのような感じになっていたのですか?」


かな子「それは……」

スッ…

武内P「鞄の中のお菓子は没収させていただきます」

かな子「……私も、ハッキリとは覚えていません」

武内P「そんなに、前からなのですか!?」

かな子「だけど、一つだけハッキリ覚えてます!」

武内P「! それは、一体?」


かな子「ザッハ・トルテには、甘くない生クリームが合う、って!」


武内P「……あの、だから、何でしょうか?」

かな子「凄く、すっごく美味しいんです!」

武内P「なるほど……」


武内P「あの、だから!?」

武内P「……いつからかは、また後ほどにしましょう」

かな子「えっと、それじゃあ、マフィンを食べても?」

武内P「よくありません」

かな子「ええっ!? すっごく美味しいのに!?」

武内P「三村さん、まずは、話を」

かな子「話が終わったら、パウンドケーキを食べても?」

武内P「よくありません」

かな子「ええっ!? すっごく美味しいのに!?」

武内P「三村さん! まずは! 話を!」

武内P「何故……こんな事になってしまったのか……!」

かな子「プロデューサーさん……すみません」

武内P「ちなみに、今日、隠れて何を食べたのですか?」

かな子「バタークリームのケーキを……」

武内P「それは……また、随分と……!」

かな子「ホールで……コッソリと」

武内P「ホールで!? コッソリという量ではないですよ!?」


かな子「えへへっ♪ 美味しいから、大丈夫でした♪」ニコッ


武内P「良い、笑顔です」

武内P「……いえ、全然大丈夫ではないですよ!?」

武内P「まさか……最近は、そうやって隠れて?」

かな子「……えへへっ」

武内P「……」

かな子「で、でもっ! 太ってはないんですよ!」

武内P「それは……はい、確かに、その通りだと思います」

武内P「しかし……何故……?」

かな子「きっと、美味しいから、大丈夫になったんですよ!」

武内P「……」

武内P「……三村さん、試しに何かを食べてみましょう」

かな子「ええっ!? バニラアイスが乗った、ハニートーストを!?」

武内P「そこまでガッツリとではなく」

かな子「一斤じゃなく、半分ってことですか?」

武内P「そういう話ではなく」

かな子「……まさか、二斤?」

武内P「冷蔵庫に入っている、千川さんのショートケーキで試しましょう」

かな子「か、勝手に食べちゃうんですか?」

かな子「それは悪いので、ハニートーストにしませんか?」

武内P「しません」

  ・  ・  ・

武内P「どうぞ、食べてみてください」

かな子「それじゃあ……いただきま~す♪」

武内P「……」

かな子「あ~んっ♪」

ぱくっ!

武内P「まさか、一口で平らげるとは思いませんでした」

かな子「美味しいから大丈夫ですよー♪」

武内P「……何も、変化はありませんね」

かな子「あー、ショートケーキ美味しい~♪」

武内P「……」

かな子「こんなに美味しいなんて、幸せだな~♪」

武内P「……」

かな子「この幸せをわけてあげたいな~♪」…ホワッ

武内P「! 甘い、匂いが……!」

かな子「プロデューサーさんに、わけてあげたいな~♪」ホワ~ン

武内P「なんて……良い匂いなんだ……!?」

かな子「美味しいですよ~プロデューサーさ~ん♪」ホワ~ン

武内P「こ、このままでは……鼻をつまんで――」

武内P「――っ!? 何故、鼻をつまんでも甘い匂いが!?」


かな子「プロデューサーさ~ん甘いですよ~美味しいですよ~♪」ホワ~ン


武内P「っ……!?」

武内P「あ、あぁ……! この匂いをもっと近くで……!」

フラフラ…

武内P「っ!? わ、私は、今、何を!?」


かな子「甘いですよ~美味しいですよ~♪」ホワ~ン

かな子「もっと近くに来れば、もっと美味しいですよ~♪」ホワ~ン


武内P「これは……三村さんの、想い……!」

武内P「甘い物が美味しいという想いと――」

武内P「――それを分かち合いたいという、優しさ……!」

武内P「そんな想いが、溢れ出しているのか……!?」


かな子「プロデューサーさ~ん美味しいですよ~♪」ホワ~ン

かな子「美味しいから大丈夫ですよ~♪」


武内P「だから、食べても太らな……ああ、なんて良い匂いなんだろう」

武内P「アイドルと、プロデューサーだが……」


武内P「美味しいから、大丈夫だろう……」

フラフラッ…

かな子「美味しいから大丈夫ですよ~♪」ホワ~ン


武内P「大丈夫……大丈夫、美味しいから大丈夫……」

武内P「甘い匂い……味は? 舐めたら、甘いのだろうか……?」

フラフラっ…


かな子「甘いですよ~美味しいですよ~♪」ホワ~ン


武内P「そうか……甘いのか、美味しいのか……」

武内P「食には、関心があります……」

フラフラっ…


ガチャッ!


凛「ちょっと! 智絵里と杏が縛られてたんだけど!?」

凛「あの状況は何なの!? わかるように説明して!」


武内P「――っ!」

武内P「……渋谷さん?」

かな子「美味しいから大丈夫だよ~♪」ホワ~ン


武内P「……はい……美味しいから、大丈夫かと……」


凛「そんな訳ないでしょ。有り得ない、何なの?」

凛「ねえ、アンタ、私のプロデューサーでしょ?」

凛「だったら、どうしてあんな事したか説明してよ」

凛「出来ないなんて言わせないから。ほら、早く」


武内P「……あ、あれには理由が……」

かな子「甘くて美味しいから大丈夫ですよ~♪」ホワ~ン

武内P「……そ、そうですね、美味しいから――」


凛「逃げないでよ! 早く説明してよ!」

凛「アンタ、ああいう事するのが趣味だったの!? ねえ!」ワクワク

凛「どうして、そういう事はもっと早く言ってくれないの!?」ワクワク

凛「プロデューサー! どうなの!?」ワクワク


武内P「……」

  ・  ・  ・

ちひろ「……それで、私のケーキがなくなってたんですね」

武内P「……申し訳、ありません」

ちひろ「許しません」

武内P「……」

ちひろ「お昼休みに、カフェでケーキセットを所望します」

武内P「……ええ、喜んで」

ちひろ「ちょっと、甘いお仕置きですかね? なんて」

武内P「……」

ちひろ「でも、早めに発見出来て良かったですね」

武内P「はい。解決方法も、見つかりましたし」

ちひろ「えっ? どんな解決方法なんですか?」


武内P「三村さんに、甘い物を食べさせない、というのは難しいです」

武内P「なので、一緒に醤油煎餅を食べていただくことで――」

武内P「――甘い匂いではなく、ぽたぽた焼きの匂いになる事がわかりました」


ちひろ「……はあ」


武内P「人は、おばあちゃんの前では、甘えが出ます」

武内P「その甘さこそが、甘い匂いへの対抗手段になるとわかりました」


ちひろ「何言ってるんですか?」


武内P「……私にも、よくわかりません」

武内P「ですが……これ意外、方法が見つからなかったもので」

ちひろ「それは……大変ですね」

ちひろ「だけど、アイドルの声で正気に戻るなんて……」

ちひろ「プロデューサーの鑑、ですね?」

武内P「……」

ちひろ「甘くて優しい想いを吹き飛ばしてくれたんですものね」

武内P「……ええ、それはもう――」


ちひろ「うふふっ、蒼い風が――」


武内P「苦々しい想いが――」


武内P「――駆け抜けるように」


ちひろ「――駆け……抜け……ん、んんっ、んっ」


武内P・ちひろ「……」


ちひろ「……色々、そんなに甘くは無いって事ですね」



おわり

こんなくだらないもん最後まで読んでくれてありがとう


寒さが収まるまで書こうと思ったら、スギの花粉症になり
スギ花粉が収まったら、もうすぐ半年が見えてきました

何になるかわかりませんが、このまま続けたら、何かになりそうですよね
何が起こるか俺にもわかりません、わからないから面白いですね!

書いたの覚えてないので、ネタ振り、ツッコミ、ありがたいです


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武内P「あだ名を考えてきました」
武内P「あだ名を考えてきました」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510055875/)


「私がリーダー?」


 専務の執務室に呼び出されて、何事かと思えば。
 曖昧だった私達、プロジェクトクローネの関係性をハッキリさせるつもりなのね。
 成る程、そういう事なら、呼び出しも納得。
 でもね、呼び出しについて納得はしたけれど、わからない事が一つあるの。


「はい。速水さんが、適任だと思います」


 それは、貴方。
 朝一でチャーミングな貴方に会えるのは悪くないけれど。
 けれど、それでも、私としては合点がいかないの。
 だって、貴方は、シンデレラプロジェクトのプロデューサーでしょう?


「彼の言う通りだ。私も、君以外にリーダーを任せるつもりは無い」


 専務は、自分のデスクに座ったまま、彼の言葉の補強をする。
 ソファーに座る彼と、専務を交互に見てみるけれど、
今の言葉に、嘘偽りは無いみたい。
 まあ、もっとも、二人共嘘という言葉からは程遠い人達だけれどね。


「お話はわかりました。けれど……」


 と、彼に視線を少しだけ向け、また、専務に向き直る。
 どうして、彼がここに居るのかの説明が欲しい。
 そう、直接聞いてみても良いんだれど、私は、これでも女子高生なの。
 歳上の男性相手に、その場に居る理由を問いただす程図々しくはないつもりよ。
 それが、チャーミングな人だったらなおさら、ね。


「彼が居る理由が、気になるかね」


 そんな私の心情をわかっていながら、専務はあえて聞いてくる。
 これがアメリカ式っていうやつなのかしら。
 だとしたら、私としては、もう少しお手柔らかにお願いしたい所だわ。
 だって、思いの全てを相手に伝えてしまうなんて、情緒に欠けるじゃない。


「はい」


 だけど、これはお仕事。
 私はあくまでも、この事務所に所属するアイドルの一人で、
専務は、そのアイドル部門の統括重役。
 プロジェクトクローネを立ち上げた人でもあり、私にとってはボスに当たる存在。
 彼女が望むなら、可能な限り、それに応える必要があるものね。


「それは、君をリーダーにと強く推薦したのが、彼だからだ」


 この人が? 私を? 担当していないプロジェクトなのに?
 頭の中に、次々と疑問が浮かび上がってくる。
 その疑問を視線に乗せて、彼の方を見る。
 相変わらずのポーカーフェイスで……案外、食わせ者なのかしら?


「……」


 じい、と彼を見つめる。
 この人、何を考えてるのか、本当にわかりにくいわね。
 アーニャや凛からは慕われてるようだし、私も……そうね、悪い人では無いと思うわ。
 だけど、それとこれとは、話が別。


「私は、君のそういう所を高く評価している」


 専務は、満足そうに言った。
 そうね、他の子だったら、最初に疑問を浮かべはしないんじゃないかしら。
 誰かに認められるのって、ただ、それだけで嬉しいから。
 けれど、私は、褒められて認められて、ただ喜んでるだけじゃ、満足しないの。


「ありがとうございます」


 でもね、そういう部分を褒められるのも、それはそれで複雑。
 だって、疑り深くて素敵だって言われて喜ぶのも、おかしな話じゃない。
 ああ、でも、貴女の評価は、素敵さ、綺麗さだけじゃないですものね。
 だから、今の言葉は素直に褒め言葉として受け取っておくのが正解かしら。


「君の、その強さ。それこそが、私が君を推薦する理由だ」


 強さ……強さ、ねぇ。
 確かに、弱いよりは強い方が何かと対応しやすくはあるわよね。
 そういった意味じゃ、ええ、確かに、クローネのリーダーは、私って事になるわ。
 誰も彼も個性的だけれど、見ていてとても危なっかしいか、
集団にとらわれない程、強すぎるか……だもの。


「その話、お受けします」


 私としては、あまり、リーダーって柄じゃないと思うんだけど。
 けれど、メンバーの適正を考えると、私以外に適当な人間が居ないわね。
 今までは、美波に話を聞いて、なんとなくだけれど、まとめ役をしていた。
 必要だと思ったからしていただけで、まさか、実際にそうなるなんてね。


「ですが、その前に一つだけ質問が」


 そう言って、彼に向き直る。
 座ったまま、まっすぐに背筋を伸ばし、真っ直ぐにこちらを見ている彼。
 私が気になっているのは、貴方が、私を強く推薦した理由。
 今更になってリーダーをちゃんと決めようっていうのも、貴方の意見なんでしょ?


「私をリーダーに推薦した……理由を聞いても?」


 頬にかかった髪をツイとかきあげ、問う。
 別に、怒ってるとか、そういったネガティブな感情は無いわよ。
 ただ、単純に知りたいだけ。
 知的好奇心、とでも言えば良いかしらね。



「笑顔です」



 ……は?


「以前、LIVE終了後に、クローネの控室にお邪魔させていただいた時です」


 ええ、あの時の事はハッキリと覚えてるわ。
 あの時は、文香が体調を崩したり、トラブルもあったわね。
 けれど、貴方のおかげで、何とか成功を収める事が出来たのよね。
 そして、終了後の控室で、初めて貴方と会ったんですもの。


「その時の、貴女の、他のメンバーの方を見る時の笑顔」


 何? 貴方、そんな所を見てたわけ?
 笑顔を褒められて悪い気はしないけれど、でも、それが何?
 笑顔だけじゃあ、納得出来ないわ。
 それが、リーダーの資質に関する、本来、関係の無い貴方が口出しをする程の、
そんな大きな理由になるとは到底思えない。



「――あの、優しい笑顔」



 ……優しい笑顔?


 ……私が?


「貴女の、その優しさ。それこそが、私が貴女を推薦する理由です」


 今まであまりされた事のない、評価。
 大人っぽい、それに、色っぽい、クール。
 そう言われる事は今までに何度もあったけれど、優しいは、本当に珍しい。
 そんな珍しい事が、理由になるだなんて……そんなことって、ある?


「聞いての通り。私と彼の、君を推薦する理由はまるで違う」


 専務が、彼の言葉を引き継いで言う。


「――だが、平行線では、無い」


 君ならば、その意味がわかると思う、と、専務は締めくくった。
 これ以上話すことはないと、そう思っているのだろう。
 事実、私は、この人達の言っている意味がわかる。


 強さと優しさは、両立出来ないものじゃないから。
 むしろ、その二つが揃ってこそ、それぞれが、より輝くから。


「……」


 だけど、もう一つ、わからない事があるの。
 貴方が、どうしてそれを専務に具申しようと思ったのかが。

  ・  ・  ・

「確かに、私はプロジェクトクローネとは、直接的な関係はありません」


 今日は、プロジェクトルームには、クローネのメンバーが全員集まっている。
 彼は、多忙な専務に変わって、私がリーダーを正式に務めると発表するらしい。
 そのため、今はその道中を一緒にしている。
 疑問を晴らす良い機会だと思ったけれど、よくよく考えてみれば、
どうして貴方がそこまで関わってくるのか、っていう謎がまた一つ増えちゃったわ。


「ですが私は、部署の垣根を超える事も、時として必要だと知りました」


 彼が言っているのは、きっと、専務が来てからの一連の流れ。
 346プロダクションのアイドル達に、多かれ少なかれ、影響を及ぼした、それ。
 それは、アイドルだけでなく、彼にも、影響を与えていたのね。
 真面目さの中に、ワイルドな一面が生まれた、って所かしら。


「それに、プロジェクトクローネには、渋谷さんも、アナスタシアさんも参加されています」


 二つのプロジェクトを掛け持ちする、エースの二人。
 あの子達は彼の影響か、とてもシンプルに、強い。
 クローネの他のメンバーが負けてるってわけじゃないわよ?
 ただ、エースじゃなくて、ジョーカーが多すぎるの。


「彼女達がより輝くために必要だと、そう、考えた結果の行動です」


 ふうん? あの子達のために……ね。
 でも、それってなんだか面白くないわ。
 だって、他の子のために、私に面倒事を任せよう、って言う事でしょう?
 頼られるのは嫌いじゃないけれど、使われるのは、あまり気分が良いものじゃないわね。


「そういう事なら、ご褒美を貰っても良いのかな?」


 彼の進路を塞ぐように、小走りで前へ回り込む。
 ゆっくりと、後ろ歩きをしながら、覗き込むように見る。
 速度を落として、足を止め……足を止めさせる。


「だって、貴方のせいで、これから大変になりそうなんだもの」


 口の端を釣り上げ、魅了するように笑う。
 そんな私の表情を見て、彼は、右手を首筋にやって困っている。
 こういう反応をするから、可愛らしくて、チャーミングなのかしら。


「キスしてくれたら、許してあげる」


 そう言うと、彼は、


「……リーダーを務めれば、そういった発言も減ってくれるかと、思いまして」


 少し顔を赤くしながら、そう言った。


「ふふっ! それは、どうかしらね?」


 何だ、私の事も考えてくれてたのね。
 だけど、そうそう貴方の思い通りに事が進んでたまるものですか。


 プロジェクトクローネのリーダー、アイドル、速水奏を甘く見ないでちょうだい。

  ・  ・  ・

「……」


 いつもは、プロジェクトルームで思い思いに過ごしてる皆。
 それが今、全員が整列して、真面目な顔をしてる。
 すごく不思議なその光景をこれから何度か見ることになるのだろう。
 駄目ね、早く慣れないと。


「……ふふっ!」


 でないと、笑っちゃうもの。
 本当に、早く慣れて欲しいわ。
 だって貴女達、そんな真面目な顔をして、大人しく待つ質じゃないでしょうに。
 ああでも、フレちゃんはそろそろ限界みたいね。


「――なので、これからは速水さんをリーダーとして、活動していただく形になります」


 隣に立つ彼の、説明が終わった。
 いけないいけない、皆の様子がおかしくって、あまり、耳に入ってなかったわ。
 まあ、別に、構わないわよね。
 もしも本当に必要な事を言ってたなら、この人と、また話す機会が増えるだけだし。


「それでは、速水さん。お願いします」


 彼が、私に視線を向ける。
 どこまでも真っ直ぐで、誠実な、その視線。
 その視線を絡め取って、迷わせるのって、どれだけ大変かしら。
 ……ああ、駄目ね、凛とアーニャに睨まれちゃってる。


「ええ」


 ふふっ、これから、大変だけど、色々と楽しくなりそうね。
 だって、貴方が私に教えたのよ?


 ――垣根を超える。


 って。
 その垣根が何で出来ていようと、何であろうと、関係無いの。
 貴方の心の垣根は、とっても高そうだけれど、ね。
 それを越えたら、ご褒美を貰えるかしら。
 この場合、貰えると言うよりも、勝ち取るって言った方が正しいかも。


 でも、今はお庭の中で――


「クローネの皆さんに挨拶を」


 ――リーダーとして、良い子にしてるわ。



おわり

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