【安価コンマ】箱庭系萌えソシャゲの世界へ異世界転移【オリジナル】 (1000)


ある所に、一人の青年がおりました。

彼がこれまでどのようにして生きて来たかは置いておきましょう。

重要なのはただ一つ。

彼が不幸にも命を落とし、魂が輪廻の輪へと流れ行こうとしたその時に、とある神様の気まぐれで拾い上げられたという事です。


神様は言いました。


「おめでとう、100億分の1の抽選に当選した幸運なる魂よ。
 君の願いを一つ叶えてあげようじゃないか。
 蘇生だろうと転生だろうと、全ては君の思うがままだ」


青年は驚き、しばし悩んだ末に答えました。

きっぱりはっきり、びしりと胸を張って答えました。









「――萌え豚媚び媚び系いちゃらぶほのエロハーレム独占箱庭ソシャゲ『きす☆ゆあふぁーむ』の世界に主人公として異世界転移させてください!」

「うむ、よかろ…………今なんて?」


なお、公式名称でありました。



※ そんなスレ


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509527798


安価とコンマを用いて農業系箱庭ハーレムっぽい何かを運営していくスレです。

ガチャを回して、生活環境を整えて、農作物を育てて、農作物擬人化娘やその他のNPCと関係を築いていく感じです。

ゲームオーバーはありません。

エンディングは誰かにエンゲージリングを渡したら、というアレ方式。



長々説明するよりプレイした方が分かりやすいと思われますので、チュートリアル形式で進めていきます。



とりあえず立てておいて、20時から開始予定。

キャラテンプレとかある感じなら早めにほしい

レアリティとかあるのか?
だとしたら面白そう

>>3
一般的なキャラメイク的な物はありません。
主人公の人格部分は選択肢を選んで決定していく形になります。

>>4
ノーマル / レア / Sレア / SSレア
ぐらいで用意してあります。
基本的にはコンマ決定ですがソシャゲ定番の「Sレア以上確定チケット」とかもあります。
ちなみにノーマルにも最後まで役割があるタイプです。


青年と神様の間にあった溝を埋め、好みを語り合い、同志として固く握手を交わすまでに至った一時の話は省略いたしましょう。

異世界転移の要望は快く受け入れられ、青年は新たな肉体を得て、地上に降り立ちました。

なお、青年が元居た世界に存在した創作物は全てどこか遠くの異世界を覗き見た物であると神様は保証しました。
青年のために新しく世界が生まれたなどという事は無いそうです。
良くある設定である事ですね?


その世界の名はファーミア。
かつて女神の下に繁栄を謳歌し、しかし今は滅びに瀕した大地でした。

今より百年の昔、この地に魔王が生まれました。
魔王は世の全てを憎み、嘲り、暴虐の限りを尽くしました。
魔王は大地を砕き、空を割り、海を燃やし、森を呑み込み、人々の命を奪いました。
やがて立ち上がった勇者達に打ち倒されるまでに、余りに多くの絶望と悲哀が世界には振り撒かれました。

……そして、死した後も魔王は呪いを残したのです。

魔王の死体は大地を穢しました。
ゆっくり、ゆっくり、と広まった毒に人々が気付いた時には手遅れでした。

水は澱み、土は渇き、草は枯れ、それらを止める術を見つける事は誰にも出来ませんでした。
作物など育つはずもありません。
あらゆる生命は糧を失い、餓えに苦しんだ末の死を待つのみとなったのです。


しかし、心優しき女神が世界を見捨てる事はありませんでした。

嘆くための涙さえ尽きた民へと、女神の救いが与えられたのです。
女神の干渉を阻んでいた魔王の力が少しずつ消え、ようやく手を伸ばせるようになったのです。

女神の祈りは世界を癒し、弱りきって姿を消していた大地の精霊達を蘇らせました。
ほんの僅かずつ世界は力を取り戻し、作物が育つようになったのです。
ですが、それだけでは足りません。
世に生きる命の数に比べて、芽吹く恵みはまだまだ少ないのです。

呪いの残滓のためにこれ以上手出しのできない女神は考えました。
私が何も出来ないならば、小さき命達に力を与えよう、と。


こうして生まれた『御使い』達は、みな幾つかの力を与えられました。

作物の精霊と語らう力。
土地の霊脈を清める力。
生命の育ちを早める力。

御使い達は世に散らばり、これらの力を用いて人々の救済を始めました。



女神の慈悲と、御使いの尽力により、ファーミアは嘆きの時代を終え、再び安寧を手にしようとしているのです――。


(というのが、ゲームのバックストーリーだっけ。
 いや、びっくりした。
 目覚めたらいきなり領主一族と使用人総出で跪いてんだもんな)


「あなた」は土地の力が集まるポイント『霊脈』に建てた家の中で、ぼんやりと思案しました。

三日前、新たな肉体を得、御使いとして降り立ってからずっと困惑続きだったのです。
一人になれた今、胸の一番奥からようやく息を吐けた気分でした。


(ゲームじゃもっと軽くて楽しいオープニングだったけど、そりゃそうか。
 生きるか死ぬかなんだから必死にもなるよ。
 ……ゲームとは違うって最初に実感できたのはむしろ良かったかも知れないな)


がらんとした家の中、ど真ん中に置かれたテーブルにもたれ掛かりながら椅子に座るあなたは、気を引き締めなおしました。

十分にやりこみ、慣れ親しんだゲームの世界とはいえ、ゲームはゲームです。
現実とはもちろん違うのですから、知識をそのまま利用する事は難しいかも知れません。
何もかもを手探りに進めなければならないかもしれない可能性にあなたは思い至ったのです。


それでも、あなたがためらう事はありません。

あなたが神様に頼み込んでこの世界に送ってもらったのには明確な理由があるのです。

それは――。



『選択肢』


◆ 飢餓に苦しむ人々を救うためだ (使命に燃える青年ルート)

◆ 可愛い女の子達を愛でるためだ (女体に萌える性年ルート)

◆ 延々畑仕事をして生きるためだ (オラ農村さ行くだルート)

◆ その他 (自由記述)


>>下1


――延々畑仕事をして生きるためです。



(……思えば、余りに忙しない人生だった。
 心から安らげた事なんて何回あったかな)


あなたは自身の過去を思い出し、深々と溜息を吐きました。

浮かび上がる思い出の数々は苦労ばかりです。
苦しい家計の負担を減らすために、若い時分からバイトバイトの仕事生活。
どう考えても違法でしかない、はした金で児童を雇う人々に散々こき使われた事もありました。

大学どころか高校にも勿論行けず、世の中の理不尽を煮詰めたようなブラックな会社へ一直線。
成績を上げようが下げようが罵倒ばかりの上司に頭をぺこぺこ下げる日々。
日々の唯一の癒しは、ほんの僅かな隙間の時間に無課金で手を出したソーシャルゲームだけ。

そんな生活は長く続きませんでした。
ただでさえヘトヘトに疲れ果てていた所に、両親が交通事故で他界するという不幸により、あなたの何かがプツンと千切れたのです。
自殺をする気力が残っていたとは思えないので、きっとどこか悪い所の血管でも切れたのでしょう。
そうして、あなたは神の御許へ運ばれたのです。


(何でも叶えてやる、って言われて思いついたのはこの世界だけだった。
 俺の唯一の癒し。
 ここならきっとやっていける。

 ほのぼの農村フリーライフ……これこそが俺の第二の人生だ)


誰も居ない家の中で、あなたは頬を叩いて気合を入れました。


「よし、となったら早速始めよう。
 まずは精霊召喚だな」


というわけで、あなたは部屋の隅の階段を下りて地下に向かいました。

地下に一つだけある部屋は、床が剥き出しの土となっていました。
その中央に女神様のシンボルマークが不思議な光で描かれています。

御使いの使命は人々のためにせっせと農作物を作る事。
そのためには作物の精霊に手伝ってもらわなくてはいけません。
ここはその精霊を召喚するための部屋なのです。


「えぇと……確かこう、だったよな」


あなたは召喚陣の前に立ち、ポケットから一つの種を取り出しました。

見るからに不思議な種です。
白く淡い光を纏い、この世の物とは思えない雰囲気を放っていました。

それもそのはず。
これはその名も「輝く種」
ファーミアに降り立つ時に授けられた、女神様の力が篭った秘宝なのです。





■ 輝く種

召喚陣に投げ入れると精霊の召喚を行える不思議な種。
入手経路は「妖精のお店での購入」「精霊の好感度上昇報酬」「運による入手」の三つ。

フレンドガチャチケット。


召喚陣……あなた流に言えば「ガチャ」から出てくる精霊は本来ランダムです。
ですので何が出るかと胸を高鳴らせるのが普通なのですが、今のあなたは少し違いました。


「最初の一回はゲームと同じ、だったな。
 女神様も始めに誰を供にするか選びなさいって言ってたし。
 あの三人の選択になる、はず……」


要するに、最初のパートナー選びという奴です。
ソシャゲには良くあるアレである事ですね?

種が投げ入れられると同時に、召喚陣が強い光を放ちます。
色は「普遍」を示す銅褐色。
光はやがて三つに分かれ、その中に目を閉じて宙に浮く三人の少女を映し出しました。

あなたはそれに、グッと拳を握ります。
思った通りでした。
まず最初に絶対に必要となる要素において最良の能力を持つ、大変に慣れ親しんだ面々だったのです。


光の中の少女を見比べて、あなたは考え込みました。

能力面で彼女達三人に差はありません。
あなたの好みで選んで良いでしょう。


熟考の末、あなたがその手を伸ばしたのは……。


『選択肢』


■ 米の精霊 『稲』

和服を纏った大和撫子。
黒髪ぱっつん姫ロングのぺったんこ。
主を立てて、三歩後ろを控えめに歩くタイプ



■ 麦の精霊 『コムギ』

質素なワンピース姿の幼馴染風。
亜麻色セミロングの並スタイル色白田舎娘。
人のお世話が好きで、親しみやすいタイプ。



■ トウモロコシの精霊 『ロコ』

露出の激しい南米系。
金の長髪をポニテに纏める豊満褐色快活娘。
情熱あふれ、ちょっと暑苦しい位に距離が近いタイプ。



>>下1


あなたはトウモロコシの精霊『ロコ』に手を伸ばしました。


すると突然、ポンッと光が弾けます。
辺り一面がが召喚陣の色であった銅褐色に染まり、あなたは思わず手で目を隠しました。
なお、どこからか「パッション!」という声が聞こえた気もしますがきっとどうでも良い事です。
キュートとクールは選ばれなかったので、勿論声は上がりません。


(な、なんだ!?
 もしかして何か失敗したのか!?)


あなたは内心冷や冷やです。

もしこれで失敗してしまったならば領主の館に戻って頭を下げるしかないでしょう。
新しい「輝く種」を手に入れるまで、申し訳なさで心を一杯にしてお世話になるしかないのです。


が、どうやらそれはあなたの杞憂のようでした。


「Obrigado !!」


それは真夏の青空のようでした。
どこまでも明るく元気、世界のどこにだって希望が満ちていると信じきっている、子供のような声でした。

その声に、あなたは「あぁ」と声を漏らします。

何故なら、よくよく聞き慣れた声色だったのです。
あの辛い生活の中、あなたをいつだって助けてくれた声を、まさか聞き間違えるはずもありません。


銅褐色の光を切り裂いて、一人の少女が飛び出します。

オフショルダーの真っ白いシャツを胸の下で縛り、艶やかな褐色の肌を惜しげもなく晒す姿。
彼女が生み出す恵みそのものの、きらきら輝く黄金のポニーテール。
そして何より、満面に浮かべたひまわりみたいな笑顔を、あなたは良く知っています。


「エヘヘェー♪」


勢いのまま少女はあなたに飛び掛り、地面に押し倒しました。
あなたがそれに抵抗する事はありません。
この少女ならばきっとそうするだろうと、何となく分かっていたからです。


「ワタシを選んでくれて、ありがと!
 トウモロコシの精霊の「ロコ」だよ!
 よろしくね!

 一緒に頑張って、皆に美味しいご飯届けよーね!」


ただ想定外だったのはここからでした。


「うん、これからよろし……ぅわっ」

「んー♪ んふふー♪」


ロコはまるで大きな犬のようでした。

選ばれたのがそんなに嬉しいのでしょうか。
あなたの腰に抱きついたまま、胸に頬を擦り付けてご機嫌の様子です。
パタパタと地面を叩く、ショートパンツから伸びたしなやかな両足は尻尾にさえ見えるかも知れません。


ですがこれはいけません。

あなたは大変に慌てました。
ロコが持つ、シャツを力強く押し上げる豊かな二つの膨らみがいけない所に直撃しているのです。
女性に慣れた、あるいは女性を愛でるためにこの世界に来た者ならば話は違ったでしょう。
しかし、日々の生活に追われて女っ気の無かったあなたには余りに刺激が強すぎました。


「ろ、ロコ……ちょ、ちょっと一回離れてもらっていいかな?」

「えー、なんでー?
 ……あっ、んふふ、そっかー。
 もー、ダンナサマはスケベだねー♪」


ロコは色々察した様子で何とか離れてくれました。
が、あなたのナイーブな心は若干傷ついた気がします。


それでもあなたの受難(?)はまだまだ続きます。

召喚を終え、用が済んだ地下室を出るために階段を上る間、ロコはずっとあなたの腕に絡み付いていました。
勿論、そんな体勢では柔らかいクッションから逃れる事は出来ません。
あなたの顔はずっと真っ赤でした。


「ダンナサマとは仲良くしたいから、がんばるよ!」


というのがロコの言い分です。

どうやらロコの親愛表現に慣れるまで、あなたの心臓が休まる事は無さそうでした。


ともあれ、精霊召喚に成功したからには、次は作物の植え付けです。

ロコとあなたが協力すれば、トウモロコシの種を作り出す事が出来ます。
精霊の力と御使いの力。
この二つに満たされた種は魔王の呪いに負ける事なく、スクスクと育ってくれるのです。
具体的には、一日一回の収穫が出来るくらいに。

そうして一階に上がり、外に出たあなた達でしたが、そこでロコが首を傾げます。


「アレ?
 ……畑、ないよ?」


こてん、と可愛らしく傾いた頭があなたの肩に触れ、間近からの上目遣いが顔を貫きます。
至近すぎる距離で見てしまったあどけなくも美しい顔に、あなたの心臓はドキリと高鳴ります。

……この後、行わなければならない事を考えれば余計に、でした。

それでもあなたは何とか正気を取り戻し、答えます。


「あ、あぁ。
 畑は、これから作ってもらうんだ」


頭の上に「?」を浮かべるロコをよそに、あなたはポケットから取り出した物を地面に落としました。
それは誰が見ても一目で分かる、この国で流通している金貨です。

すると、その途端。


「わー!」

「わー!」

「わー!」

「「「おかね! きんぴか! まーんまる!」」」


ポコポコと土を割って小人達が現れました。
パジャマみたいな緑色の服に、同じ色の三角帽子、まるで絵本から飛び出してきたようです。
大人の手のひら程の大きさがあるかないかという彼らは、この霊脈に暮らす妖精達です。
土地の精霊という理解でも構いません。

彼らは光り物、特に金色でまん丸の金貨が大好きです。
普段は地面の下でのんびりしていても、御使いが金貨を撒いたとなれば黙ってはいられません。


「よーしよし、良く来たなーお前ら。
 ちょっと手伝ってほしい事があるんだけど聞いてくれるか?」

「えー? うーん、どーする?」

「んー、まぁ、みつかいさまのたのみだしね?」

「めんどくさくないことなら……」

「報酬はこの袋に入った金貨な」

「「「なんでもやります!!」」」


そんな具合です。


金貨に目がくらんだ妖精達は猛烈にやる気を燃やして走り出しました。

不思議な力でどこからか取り出したクワを手に、物凄い勢いで土を耕していきます。
パートナーの精霊は勿論、ゲーム画面で見た事があるはずのあなたも思わずびっくり。
ぽかんと開いた口を閉じる前に、あっという間に立派な畑が一つ出来上がってしまいました。


「ふひー、ふひー」

「がんばった、ぼくらとってもがんばったのでー」

「おかねくださいっ!」



■ 妖精達

金貨を支払う事で大工仕事や土壌改良を行ってくれる小人。
あちこちで集めたちょっとしたアイテムを売るお店もやっている。
便宜上「彼ら」と表記されるが、正確には性別は存在しない。

彼らの親玉、赤い服と赤い帽子の個体は課金ガチャを回すためのアイテムを取り扱っている。
鬼、悪魔、妖精!


畑を作り上げた妖精達は、金貨が詰まった小さな袋を抱きかかえて踊りまわっています。

それが可愛らしく映ったのでしょう。
あなたの手を握ったまましゃがみこんだロコが「うりうり」と妖精をくすぐっています。
妖精もまんざらではないのか、くすぐられるままに笑い転げました。


……そんなロコへと、あなたは声をかけました。


「ん、んっ……。
 それで、次は種を作らないといけないんだけど……」


それを聞いたロコはピタリと動きを止めました。
そして、もじもじと体を揺すり、ちらりとあなたを見上げます。
褐色の肌のために分かりにくいですが、赤面しているようです。


「そ、そーだよね、やらなきゃね。
 みんなのためだもん、ね」


これまでのロコとは打って変わって、か細い声でした。
それもそうです。
種を生み出すために行わねばならない事は、うら若き乙女にとってはとても荷の重い事でしょう。

それでも、何度か深呼吸したロコは勢い良く立ち上がり、あなたに向き直りました。


「ワタシ、これでも初めてだからね?

 ……優しくお願いね? ダンナサマ」



そして、少し顎を上げ、瞳を閉じました。

明らかなキス待ち顔です。


これこそが「きす☆ゆあふぁーむ」の名の由来。
萌え豚媚び媚び系のジャンル表記を真実とする根幹部。
数多のプレイヤーに「タイトル通りとは恐れ入った」「ソシャゲ史上有数の気持ち悪さ」「運営は童貞」と言わしめたこの世界の法則。


「キスによる種(あるいは苗や球根)の生成」です。


……設定的には、御使いの持つ聖なる力を吐息と体液を通して精霊に送り込む、とかなんとか言うアレです。

ゲームである内はまだ良かったのですが、現実として見てしまえばもうとんでもない話です。
出会ったばかりの、どう見てもティーンにしか見えない少女に「世界のためだから」とキスを迫る。

どう言い繕っても犯罪級でした。


しかし、やらねばなりません。

あなたには無から有を作り出す力なんて有りません。
精霊とキスをして作物を作らなければ、明日食べる物も無いのです。


「…………っ」


ごくり、とあなたは唾を飲み込みます。

あなたは、過去に思いを馳せました。
何の希望も見出せないあの暗い日々の中、今日と同じように初めの一人に選んだロコに、どれだけ助けられてきたでしょう。
例えゲームの中の少女であったとして、恋に似た感情を抱いてもおかしくありません。
いつだって優しく、明るく受け入れてくれる彼女をずっと慕ってきました。

いつしか、ぎゅっと目を瞑り羞恥に耐えるロコの顔だけがあなたの世界の全てになりました。

彼女を抱き締め、口付ける権利と義務があなたにはあります。
それに足る情愛も、既にあなたは持ち合わせています。


それでも、剥き出しの肩に手をかけたは良い物の、そこから先に進む事がどうしても出来ません。


頭の中は「本当に良いのだろうか」という言葉で一杯です。
目の前でその時を待っているロコは微かに震えていて、湧き上がる罪悪感は留まる所を知りません。

ロコへの感謝はそれこそ山のように積み上がっています。
このキスは、恩を仇で返す事になるのではないだろうかと、あなたは己を責めました。


(……こんなに綺麗な子を、俺なんかが汚してしまう事は、本当に正しいのか?)


「もう、しょうがないなぁ」


そんな状況を覆したのは、小さな呟きでした。

ロコはあなたの手に手を重ね、そっとほどきました。
そして次の瞬間。


(……えっ?)


あなたの唇に、柔らかい物が重ねられました。
視界は少女の褐色で埋まり、首にはたおやかな腕が絡められて。
ぎゅっと力いっぱい押し付けられた体からは仄かな甘い香りが漂って、あなたの心を溶かしていきました。

何が起こっているのか分からない。
そんなあなたを置いてきぼりに、そのまま長い時間が流れました。


「ん……ぷぁっ。
 ……えへへ、やっちゃった」


唇を重ねるだけの拙いキスを終え、ロコがあなたから離れます。

頬どころか耳まで染めたロコは、恐らく照れ隠しでしょう。
可憐にはにかみ、ペロリと舌を出しました。


「どう、して……嫌じゃなかったのか?」


思わず、あなたは尋ねます。
それに対し、ロコは腕を腰の後ろに組み、爪先で地面を掘りながら、答えました。


「……えっと、ね。
 ダンナサマの気持ち、なんとなく伝わってきたよ?

 本当にいいのかな、ロコは嫌がってないかな……嫌がらせたくないな、って。

 そういう優しい人が相手なら、良いかな、って。
 そう思ったの!」


あなたは思わず言葉を失いました。

受け入れられる。
認めてくれる。
それがどれだけ温かい事であったかを、あなたは随分と久しぶりに思い出しました。

こみ上げる物を飲み下し、あなたはロコに伝えます。
伝える言葉が震えていては、勿論いけませんので。


「そう、か。
 ありがとう、ロコ」


微笑むあなたに、ロコはにっこり笑みを返しました。
あなたの見慣れた、真夏の笑顔です。


「それ、こっちのセリフだよ?

 改めて、ワタシを選んでくれてありがとね、ダンナサマ!」



笑い合うあなた達へと、空から種が降り注ぎます。
きらきらと黄金に輝くトウモロコシの種は、まるで二人の門出を祝福するようでした。



■ 作物の種

毎日、畑の数だけ自動生産される種。
精霊一人一人異なる種を作る事が出来る。
種はあなたと精霊達が畑に撒き、次の日に収穫されます。


■ 4月 1週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆
『健康』 ☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作物状況

『畑①』 トウモロコシLv1  生活+1


◆ 精霊リスト

『ロコ』 ノーマル トウモロコシの精霊 好感度10


◆ 倉庫

『500金貨』
『輝く種 x1』





さて翌日。
あなたは領主の館で受け取ってきた資料を前に、むむむと唸っていました。

あなたが女神様に任された土地は、ゲーム内、その初期の状況とそっくりでした。
すなわち、ズタボロ、餓え餓え、大ピンチです。

領主の館が民に襲われていないのは、貴族であろうと食料など持っていないと分かっているからでしょう。
ゲーム内ではサブヒロイン的立ち位置に居た領主の一人娘だって、ガリガリにやつれきってそれはもう大変な有様でしたから。
あなたに与えられた初期資金、500枚の金貨も貴族にとってははした金のはずですが限界ギリギリだったようです。


「……うわぁ、これ、ひっどいね……」


あなたの背にぺったりと張り付くロコの声も、思わず暗くなろうというものです。

今や領民は何とかかんとか命を繋ぐだけで精一杯。
嗜好品? 文化的な生活?
何でしょうかそれ。
もしや異星の言葉なのでは?


「うん、とにかく今必要なのは主食だな。
 何はともあれ、急いで腹を満たしてやらなきゃ」

「ん、ワタシの出番だね!」


あなたの顔の横から腕を伸ばし、ロコが親指を立てます。

まさしく彼女の言うとおりです。
世界三大穀物、米、麦、トウモロコシ。
その一角を担うロコこそが領地における救世主なのです。

レアリティがノーマルだからと侮るつもりは、あなたには勿論ありません。
ゲームがどれだけ終盤に進もうとも、絶対に必要とされる「主食」はノーマルが大半を占めていたのですから。


今、最初の畑ではトウモロコシが伸び伸びと育っています。
この畑はしばらくこのまま、主食の提供に使った方が良いでしょう。



■ 領地状況

領民達の生活状況です。

『生活』 低い程、あらゆるマイナスイベントが発生しやすくなる。
『健康』 低い程、病気が発生しやすくなる。病気発生中は、精霊やNPCの好感度が上がりにくくなる。
『嗜好』 低くとも影響は無いが、高いとプラスイベントが発生しやすくなる。
『文化』 低くとも影響は無いが、高いと精霊やNPCの好感度が上がりやすくなる。

領地状況は、それぞれにプラス効果を持つ作物を作り続けていると時間経過と共に改善されていきます。


他には、とあなたは倉庫に入っている物をチラリと見ました。

「輝く種」
これはロコの召喚に使った物とはまた別です。
ロコと初めてのキスを交わした時、トウモロコシの種に混じって振ってきたのです。

あなたはこれを見つけた時、呆れれば良いのか喜べば良いのか分からない気持ちになりました。

「きす☆ゆあふぁーむ」ではチュートリアルの最中に、これを追加で1個貰えるのです。
というか、全く同じタイミングで貰えるのです。


(まさかリセマラ用の種が貰えるなんて)


あなたはふっと気が遠くなりました。
この種でSSレアを引こうと50周程粘り、結局Sレアで妥協した記憶を思い出してしまったためです。

ロコの「ダイジョーブ?」との声に癒されて、何とか渋い顔は引っ込められましたが。


※ 記載漏れがあったため修正



■ 4月 1週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆
『健康』 ☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作物状況(1/1) 拡張費用『300金貨』

『畑①』 トウモロコシLv1 生活+1 20金貨/週


◆ 精霊リスト(1/3) 拡張費用『300金貨』

『ロコ』 ノーマル トウモロコシの精霊 好感度10


◆ 倉庫

『500金貨』
『輝く種 x1』


ともあれ、領民達の腹を満たすためにも、精霊は早めに増やしたい所です。
そのためにガチャチケット……輝く種はいくらあっても構いません。
ここは歓迎しておくべきでしょう。


ただし、召喚には幾らか制限があります。
これはゲームと現実の違いから来るものでした。

あなたが住む家は、そう大きくはありません。

今のままでは、ロコとあなたの他に「二人」が限度という所でしょう。
それを超えて召喚を行うならば、妖精に頼んで家を拡張しなければならないのです。


また、今ある畑はトウモロコシに占有されています。
新しい作物を作るならば、当然ながら新しい畑が必要です。

こちらもまた、妖精の仕事になってしまいます。
あなたはやれやれと苦笑を浮かべました。


(金貨、稼がないとなぁ)



■ 精霊リスト

今契約している精霊の一覧です。
現在は三人までしか契約できず、拡張するには所定の費用がかかります。
ある一定以上に家を拡張すると……?


■ 作物状況

今作っている作物の情報です。
トウモロコシの場合、毎週『生活』を1点回復し、20金貨を獲得します。


金貨を稼ぐには作物を売るしかありません。
となれば今週は畑を広げ、来週にガチャを回……いいえ、精霊を召喚するのが良さそうです。

そうと決まればと、あなたは立ち上がりかけました。


と、そのとき。
あなたの視界に一つのオブジェが飛び込みました。

慈愛の微笑みを浮かべ、全てを受け入れるように両手を広げる小さな女神像です。


「あー……そういえばまだログインボーナス貰ってなかったな」

「ログイ……うん? なにそれ?」

「あ、いや、こっちの話」


ゲーム時代ではこの女神像が毎日何かしらのプレゼントをくれました。
大概はその内余り気味となる金貨や、課金アイテムの超劣化版である収穫量微上昇アイテムだったりです。
月に一度、月末に貰えるレア以上確定チケット以外は随分影の薄いシステムでした。

それとは似て非なる物なのですが、なにぶんそっくりなのであなたがログインボーナスと呼んでしまっても仕方ありません。


それでこの女神像ですが、その週の運勢によって何かしらの出来事を起こしてくれるそうです。
物が貰えたり、良い事があったり、時にはガッカリする事もあるようです。

割合的には良い事の方が多いようなので、女神像には毎週祈っておこうかとあなたは考えました。


あなたはロコを誘い、女神像の前で跪きました。

女神によって蘇った精霊であるロコが断るはずもありません。
あなた達は一緒に並び、手を祈りの形に組みました。


「女神様、今日もいっぱい頑張りますから、どうか見守っててください!」


家の中に、ロコの元気一杯の祈りが響きます。

それに応えるように、女神像は神秘的な光を放ちました――。



>>下1 コンマ判定 高い程GOOD(00は100扱い)


女神像「今週の運勢は72……72です……」

??「……くっ」





空に放たれた光はやがて明確な形を取り、あなたの前へと落ちました。
チャリンチャリンと音を立てる黄金色のそれは、間違いなく金貨です。

今最も欲しい物を得られた事に、あなたは決して小さくない幸先の良さを感じました。



◆ 『50金貨』を獲得しました。



■ ログインボーナス

正確にはログインボーナスではありません。
毎週の初めにコンマ判定を行い、結果次第で何かが起こります。
基本的にはプラスの出来事ですが、出目が低いと悪い事が起こる場合もあります。


お祈りも終え、ようやくあなたは今日の仕事を始める事としました。
未だやれる事は少ないですが、少しずつでも進んでいく事が肝要です。

念願の安定したゆったりスローライフのためにも。
あなたを受け入れてくれたロコのためにも。
まずは一歩を踏み出すとしましょう。



■ 今週の行動選択


◆ 精霊との交流

精霊と交流を深め、好感度を高めます。
好感度が高まった精霊が生み出す種はLvが上がり、能力と価値を高めます。


◆ 精霊召喚

新たな精霊を召喚し、契約を結びます。
召喚には「輝く種」「????」「????」を消費します。
召喚される精霊はコンマ判定によってランダムに選ばれます。


◆ 作物変更

植え付けする作物を変更します。
現在はロコしか居ないため、選択できません。


◆ 施設拡張

家や畑を拡張します。
必要な金貨を保有していない場合、無効となります。


◆ 未解放

ゲームを進める内に解放されます。


◆ 未解放

ゲームを進める内に解放されます。


>>下1  選択してください(交流や拡張など対象を必要とする場合、同時に対象を指定して構いません)


立ち上がったあなたは……畑に出ると思いきや、方向を変えて台所へと向かいました。

それをキョトンとした瞳でロコが見つめます。


「アレ?
 畑、広げないの?」

「うん、そうしようかと思ってたんだけど、ロコと話もしたいかなって。
 これから一緒に暮らすんだし、色々取り決めも作らなきゃ。
 お茶でも淹れてくるよ」

「んー……うん、わかった!
 お茶、ワタシも手伝うよ!」


結局、あなた達二人は腕を組んで台所に入りました。

こんなちょっとしたお手伝いでも、ロコはとっても楽しそうです。
ニコニコ顔のロコに、あなたも釣られて笑みが零れました。


トウモロコシのヒゲを炒って作ったお茶を飲みながら、あなた達の話はしばらく続きました。

お互いの部屋をどこにするか。
あなたとロコが嫌な思いをしないためのルール作り。
料理、掃除、洗濯の分担。
話すべき事はいっぱいありました。

中でもあなたがちょっと困ってしまったのが……これは昨晩も経験済みなのですが、部屋の事です。
人懐っこいロコは一人が寂しいのか、あなたと一緒の部屋が良いと頑張ったのです。

そんなの、とてもではないですがあなたが耐えられません。
スタイル抜群、愛らしい顔立ち、そして開けっ広げに好意を伝えてくるロコと一緒の部屋で一晩過ごすなど酷い拷問でしょう。
艶かしい褐色の肌を惜しげもなく晒し、無防備に寝息を立てるとなれば尚更です。
あなたは一睡もできないに違いありません。


必死の説得の末、あなたは部屋を別にする権利を勝ち取りました。
ロコは若干拗ねた顔で唇を尖らせましたが、これは致し方ない事です。


一通り相談を終え、あなた達の間に僅かな沈黙が下りました。

とはいえ、それは本当に僅かの間です。
具体的にはロコが、淹れなおしたばかりで熱いヒゲ茶にフーフーと息を吹きかけるのを終えるまで。
十分にお茶が冷めて一口飲む事に成功したなら、きっとロコはあなたに話題を振るはずです。


その前に、もしあなたがロコに聞きたい事があれば口を開くべきでしょう。



>>下1 何か話題があればどうぞ (何も無ければ、沈黙を選べばロコが話しかけてきます)


「その内、服でも買いに行こうか」


あなたはロコから少し目を逸らしながら言いました。

ロコの格好は余りに扇情的です。
肩もお腹も脚も、まるで隠そうという気がありません。
どこもかしこも危険ですが、特に恐ろしいのは胸元です。

オフショルダーのふわふわと浮きがちな襟から、時折凶悪なサイズの膨らみと深い谷間が顔を出すのです。
ロコと来たらその格好であなたの腕に抱きつくものですから、それはもう見放題となってしまうのです。
目のやり場に困るなんてレベルではありません。

女慣れしていれば好きなだけ楽しめたものを……!

昨晩のベッドの中でそう悶々とした事を、あなたは勿論覚えています。
二次元のゲームでは当たり前の格好は、現実に持ち出してしまえばこれはもう犯罪的としか言えません。


「うん! 一緒にいこー!
 いろんな服が買えるように、頑張らないとね!」


その言葉にあなたは思わずハッとしました。

今現在、ボロボロの領内ではろくに生産活動は行われていません。
みんながみんな食うや食わず。
ろくに実を付けない作物の世話を、誰もが倒れかけながら必死になってやっているのです。

領内でまともな服など簡単に買えるはずがなく、余裕のある土地から取り寄せるには大変に費用がかかります。
ロコに新しい服を与えるには当分時間がかかってしまうでしょう。


「そうだな、頑張らないとな……」

「ダイジョーブだよ!
 ダンナサマは女神様が選んだ、優しい人だもん。
 ひもじいのなんて、すぐにどっか行っちゃうよ!」


対面に座るロコはそんな未来を全く疑っていないようでした。
あなたと二人で力を合わせればきっとどうにかなる。
そう強く強く信じています。


「ところでー……」


あなたが内心の決意を新たにしていると、ロコが口を開きます。
それはあなたにとって、もしかしなくともちょっとした爆弾でした。


「ダンナサマは、ワタシがどんな服着てると嬉しい?」


ロコは姿勢を前傾に、胸元を見せ付けるようにすると、テーブルに両手で頬杖をつきました。
ん? ん? と、どこか挑発するようにあなたを下から覗き込んでいます。

思わずあなたは咳き込みました。
まずい。
この話題はとてもまずい。
そう思ってもロコが止まる事はありません。


「ね、ダンナサマ。
 折角服買うんなら、ダンナサマが好きになってくれる服がいいな。

 ……ねぇねぇ、どんなのがいいの?」


クスクスと笑うロコは徐々に妖艶さのような物を纏い始めました。
沈黙を通すのは、余り宜しくなさそうです。

どう答えれば良いのか、あなたは必死に考えました。


『選択肢』


◆ 今と似たような服が良い

◆ もっと肌を隠した方が良い

◆ ロコの好みで選ぶと良い

◆ その他(自由記述)



>>下1


「あー、えっと……もっと肌を隠した方が、良いんじゃないかな。
 脚とか、お腹とか……その、胸とか」


しどろもどろと、目を逸らしながらあなたは答えます。

今のロコを直視するのは大変よろしくありません。
性的な意味で。



あなたの答えを聞いたロコは、猫のようにニヤリと笑いました。


「そっかー、そうなんだー。
 ……ねぇダンナサマ、それってどうして?」


うぐっ、とあなたは言葉に詰まります。
それは中々に答えにくい問いでした。
少なくとも、あなたにはハードルが高すぎます。

……ただし勿論、だからといってロコが手加減してくれるなんてありえません。


ガタガタと椅子を引き摺って、テーブルの対面からあなたの横へ、ロコは迅速に攻め入ります。

これこそまさに必勝の陣形。
真横からの上目遣いです。
慌てて明後日の方向へ視線をやったあなたですが、残念ながらロコに引き戻されました。
目に飛び込むのは、あなたの体に接触して柔らかく形を変えた胸部です。
心拍数がとんでもない数値をたたき出すのを、あなたは実感しました。


「ね、ダンナサマ。
 ワタシ、教えてほしいなー」


ニコニコと、ロコはあなたに迫ります。


それでも答えられずにいるあなたに、ロコは問いの形を変えました。
出来るだけあなたが答えやすいように、YESとNOで分けられるようにです。


「それって、目のやり場に困るから?」


あなたが答えるまでこうしてる。
そう言わんばかりのロコの様子に、あなたはついに観念しました。

おずおずと、躊躇いながらもあなたは頷きました。


「それって、ワタシにいきなりエッチな事しちゃわないように?」


あなたは頷きました。


「それって、ワタシを大事にしたいから?」


あなたは頷きました。





「…………。
 んふ、えへへー♪」


ロコは最初の時のようにあなたに飛びつきました。

それはもう大層な喜びようです。
体を押し付け、擦り付ける様はどこかマーキングじみています。


「んー、ちゅっ♪」


終いには、目を白黒させるあなたの唇を奪いにかかる始末です。
光り輝くトウモロコシの種が床に降り注ぎ、どこか間抜けにパラパラと音を立てました。


もう全身真っ赤でいっぱいいっぱいのあなたから離れ、ロコが立ち上がりました。
その表情は幸せそうに緩みに緩み、今にもとろけてしまいそうです。


「もー、ダンナサマがそう言うなら仕方ないなー。
 これからはもうちょっと隠すし、新しい服は普通のにしよーね!」


ロコはそう言うと、胸の下で結んでいたシャツをほどきます。
すると当然、シャツは重力に従ってはらりと広がり、ロコのお腹を隠しました。

その後、散らばった種を拾い集めたロコがあなたを急かします。


「そろそろお昼だし、畑のトウモロコシもきっといい具合だよ!
 早くみんなに届けてあげよ!」


そうして、先に畑へと駆けていきました。


あなたはと言えば、今立ち上がるには少々まずい事になっていました。

ロコの抱擁と情熱的なキス。
それだけでも恐るべき打撃力だった所に、とんでもない追撃を食らっていたのです。



シャツを解き、お腹が隠れたのは問題ありません。
問題は、シャツの丈が思いの外長かった事にあります。

ロコが履くショートパンツ、それを綺麗に隠し切ってしまう程に。


(…………「はいてない」ようにしか見えないんだが、あれ)


男の憧れ。
そう言って良い「裸ワイシャツ」に通じるエロスが、そこにはありました。





結局、あなたが行動可能になるには、そこそこの時間を要する事となったのでした。

初週の行動が終わったところで切ります。
こんな感じで進めていくアレ。
よろしければ今後もお付き合いください。

それではまた。


■ 忘れてた好感度上昇判定


パーフェクトコミュニケーション!

最低保証好感度 +7


>>下1 コンマ下一桁が更に加算


■ ロコ好感度上昇

10 + (7+3) = 20


◆ 作物レベル上昇

トウモロコシLv2 『生活』+1 25金貨/週



今度こそ終わり。


■ ソーシャルゲーム時代の評価


『トウモロコシの精霊 ロコ』


終身名誉御使いLOVE勢筆頭。
運営公式ツイッターのアイコン担当。
三大「きす☆ゆあふぁーむ」新参ホイホイの一角。

ゲームのチュートリアルで選べば必ず手に入る。
常にプレイヤーへの好意を全面に出してくる。
可愛らしさと健康なエロスの両立に成功した絵柄。
これらの好材料に加え様々なメディアへの露出、ゲーム内各種イベントでの出番までも多く、安定した高い人気を誇る。

高人気の反面、掲示板では様々な風評被害に晒されている。

特に広く好まれているのは「国籍詐称疑惑」
南米系と喧伝されているにも関わらず、それらしい言語を使うのは召喚時の一回のみ。
更にサービス開始当初は台詞も完全に流暢な日本語であったため、この話が持ち上がった。
「実は日本人」「群馬県の秘境ミナミゴメ村出身」「日焼けサロンに行ったらロコちゃんとバッタリ会った」など散々に言われている。

これを受けてか、後に「一人称や台詞の一部をわざわざ片言に収録しなおす」というアップデートが行われた。
なお、プレイヤー達からは「予算の使い所を間違えてる」などと総突っ込みを受け、むしろネタとして磐石になった模様。

今日も夜8時からやるらしいです

こんばんは、やっていきます


■ 4月 2週目


あなたは少々痛みを発しはじめた腰を伸ばし、ぐぐぐと背伸びをしました。

足元のカゴにはいっぱいのトウモロコシ。
どれも金色の粒をずらりと実らせた立派なものです。
そのまま茹でて食べても美味しそうだなぁ、なんて考えるあなたの口元は自然と緩やかな笑みを作っていました。


(あぁ、農業は良い物だな……。
 なんだろうか、しっかり働いてるって感じがする。
 汗を流してるのは日本に居た時と同じなのに、ぜんぜん違う)


もしかしたらそれはあなたにとって初めて明確に感じた労働の喜びでした。

働けど働けど、誰のためになっているかも分からず、与えられる給料にも変わりは無い。
そんな日々と比べれば当然、やりがいが違います。
あなたがここで垂らした汗水の量が、そのまま誰かが命を繋ぐ糧となるのです。
トウモロコシをもぎとる手にも力が入ろうというものでした。


(……ただ、これを農業と呼んでしまうと本業の人達に怒られそうだな)


ですがあなたは苦笑し、目の前の光景を少しばかり呆れながら眺めます。

実ったトウモロコシをもぎ取られた茎が途端にしおれ、バラバラとほぐれて土に還っていきます。
本来であれば人の手でやらねばならない「緑肥として大地に戻す」という作業が不思議な力で自動的に行われているのです。
それどころか妖精、精霊、そして御使いの力で活性化した霊脈の上では土の栄養が適当でも大体どうにかなってしまいます。

また、そもそもとしてロコとあなたが作った種は僅か一日で芽吹き、実を付けます。
最も大変なしっかり成長させるためのお世話が丸ごと抜け落ちているのですから、普通の農家さんなどは確かに憤慨しそうなものです。


さて、そんなあなたを呼ぶ声があります。
この家に暮らしているのは二人だけですから、勿論それはロコでした。


「ダンナサマー!
 お昼ごはん、焼けたよー!」


畑の外から、ロコがあなたに手を振ります。
片腕を大きく上げて、肩からブンブンと勢い良く動かして。
底抜けの元気の良さを見せ付けられたあなたは、疲れもどこかに吹き飛ぶ気分でした。

ロコが空いた方の手で抱えるバスケットには、白くて薄いパンのような物が入っているのが遠目にも見えました。
粉挽き所で挽いてもらったトウモロコシの粉で作ったトルティーヤです。
あなた達にとっても、領民にとっても、少なくとも当分の間はこれが主食となるのでしょう。
勿論、この土地においてずっとずっと、孫の孫の孫のそのまた孫の代まで愛される食べ物にもなれるかも知れませんね。


ちょうどキリの良い所だったあなたはロコに手を振り返して、昼食のために一緒に家に戻りました。

その途中。
「お疲れ様のキス」と称したロコの不意打ちにドギマギさせられながらです。


■ ロコ好感度上昇

20 + 1 = 21



■ 好感度自動上昇

育てている作物の精霊は、毎日のキスを通して自動的に好感度を獲得します。
最初はほんの少しずつの上昇ですが、領地や自宅の状況によって少しずつ上昇量が増えていきます。


二人で楽しく昼食を平らげたあなた達は、女神像に食後の祈りを捧げました。
今日もまた恵みを下さりありがとうございました。

すると、慈愛の微笑を湛えた女神像が、ぱぁ、と光り輝きます。

どうやら「今週の運勢」の更新時間だったようですね。
はてさて何が起こるのかと、あなたとロコは楽しみに顔を見合わせました。



>>下1 コンマ判定 高いほどグッド


女神像の光はしかし、すぐに消えてしまいました。

これはどうした事でしょうか。
あなたとロコは首を傾げます。

と、その時でした。
ロコがあっと声を上げて窓の外を示します。


なんと、空にかかっていた雲を割って、神秘的な光が畑一面に降り注いでいるのです。

眩い程の陽光に照らされたトウモロコシは、見て分かる程の速さでぐぃんぐぃんと育ち始めました。


しばしポカンと口を開けていたあなた達は、正気に戻るや否や慌てて畑へ走りました。
見ている場合ではありません。
女神様の祝福を受けたトウモロコシが畑から溢れ出す前に収穫してあげなければならないのです。

どうやら今日は食休みもままなりません。
でもそれは、きっと嬉しい悲鳴というものでした。



◆ 今週の作物の効果が『2倍』になります。


■ 4月 2週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆
『健康』 ☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作物状況(1/1) 拡張費用『300金貨』

『畑①』 トウモロコシLv2 生活+2 50金貨/週

※ ログインボーナス効果適用中


◆ 精霊リスト(1/3) 拡張費用『300金貨』

『ロコ』 ノーマル トウモロコシの精霊 好感度21


◆ 倉庫

『575金貨』
『輝く種 x1』


あなたは今週の仕事について考えました。

一見、領地状況は先週と変わっていないように見えますが、決して変化が無い訳ではありません。
あなたはこの一週間、毎日たくさんのトウモロコシを領主の使いに渡してきました。
それらは配給の形で適切に分配され、ほんの僅かずつですが領民の血肉となっているはずです。

このまましばらくの時を置けば、目に見える変化も起こるでしょう。
勿論、畑を増やしたり精霊を増やしたりして、それを早めるのも有効な手です。


そういえば、と思案の中であなたは思い出します。

『毎月の月末に、あなたの要望を聞くため、普段とは違う特別な使いがやってきます』

今月末にも当然やってくる予定です。
その時までに分かりやすい成果が出ていれば、もしかしたら何か良い事があるかも知れませんね。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 作付変更 (選択不可)

◆ 施設拡張


>>下1


■ 施設拡張

◆ 畑 (1/1) 拡張費用 『300金貨』

◆ 家 (1/3) 拡張費用 『300金貨』

所持金 『575金貨』


>>下1 どちらを拡張しますか?


よし、とあなたは思い立ちました。

何はともあれ今必要なのは作物を育てる畑です。
あればあるだけ良いのです。
早い内に広げておくのが良いでしょう。





「ほーら、おいでおいでー!」


畑の開墾予定地に快活な声が響きます。
前回見た、金貨に釣られて妖精達が湧き出してくる光景をロコは気に入ってしまったようです。
今度は自分が呼んでみたいと、金貨を撒く役を買って出ました。

が。


「…………来ないねー」


残念ながら妖精達は現れませんでした。
土の下で何かがもぞもぞしてはいるのですが、困ったようにうろうろしているだけ。

これではどうしようもありません。
仕方ありませんので、あなたが代わって金貨をばら撒きます。
ちゃりんちゃりん。
綺麗な金色のコインが綺麗に澄んだ音を立て。


「あはー! こいーん!」


今度はぽこんと土が割れました。
どうやら妖精達は、御使い様の金貨でなければ出てきてくれないようですね?


「や、こんにちは。
 来てくれてありがとう。
 今回も畑を一つお願いしたいんだけど、いいかな?」


あなたはしゃがみこみ、出来るだけ目線を近付けて妖精達にお願いしました。
勿論、彼らに渡す報酬はしっかり用意してあります。
金貨三百枚は彼らの小さな体からしてみれば、お宝の山も同然です。

そうそう、彼らが受け取った金貨はその内人間の所に戻ってきます。
糸くず、ぼろきれ、使い古しの革の端っこ。
そういう何に使うか分からない物を持ち去る代わりに、彼らは金貨を御代として置いていくのです。

もしあなたが部屋の隅に金貨を見つける事があったなら、それはきっと彼らの仕業でしょう。


話を今に戻しましょう。

あなたの要望を聞いた妖精は、ちょっと難しい顔をしました。
やってあげたいけど難しい。
そんな表情です。


「うーん、やるにはやりますがー」

「まえみたいに、ぱぱーっ、とはできません」

「れいみゃくからですね、みずをひくみちをとおしませんとー」


彼らの話によれば、土地の表層にあった力は一つ目の畑に殆ど注ぎ込んでしまったらしいのです。
同じだけの力を持つ畑を作るには、地面の下の深い深い場所にある霊脈から「川」を通さなければならないようでした。

これは妖精にとっても簡単な仕事ではありません。
地面の下に道を作るだけで彼らは疲れ果てて、とても土を掘り返して耕すまでは出来ません。
ならばと、あなたは自分も汗を流そうと決意しました。


「じゃあ、こっちで地面の上を整えて、そっちで霊脈から川を引く。
 そういう分担ならどうかな?」

「あー、それならいけそうです」

「たぶん、いつかかむいかぐらい?」


そういう話になりました。





余談ですが、この話の間中、いじけたロコはあなたの後ろで妖精の一人をくすぐり回していました。
話の最中に悲鳴じみた笑い声が響いていたのですが、まぁ気にしなくとも良いでしょう。
案外頑丈なつくりの妖精は、終わった後もケロリとしていましたし。


■ 4月 3週目


すっかり酷い筋肉痛で嫌になるほど熱くなった体を風に冷やしながら、あなたはすやすやと昼寝をしていました。

正直な話、畑作りを舐めていたとしか言えません。
最初の一日、土と真剣に格闘しただけであなたはそう思い知りました。
農家の皆さんごめんなさい。
どこへともなく頭を下げて、そう懺悔までした程です。

とてもではありませんが、ロコと二人で作業を進めていては妖精達のペースに間に合わない。
困ったあなたは、トウモロコシを受け取りにきた領主の使いに頼み込み、大勢の兵士を派遣してもらいました。

『御使い様の聖域にこれほど多くの人間を踏み入らせるなどとんでもない』

そう繰り返し、不敬を恐れる彼らを必死に説得したのは中々骨の折れる事でした。


その甲斐あって、何とか畑は完成しました。
一つ目の物と遜色ない、しっかりとした畑です。

……この際、随分とやせ細っていた体ですらあなたよりも精力的に動けていた兵士の事は、一旦忘れておきましょう。

あなたは現代人なのです。
本当の意味でこの世界の生活に順応するには、まだまだ時間がかかるのです。


「んふふ……よーく寝てるぅ。

 …………んっ♪」


それまでを支えてくれるパートナーには、幸い恵まれすぎる程に恵まれています。



■ ロコ好感度上昇

21 + 1 = 22


寝ているあなたに悪戯をしたロコは、小さなカゴを手に家に戻りました。
カゴの中身?
それは勿論、たった今生まれたばかりのトウモロコシの種達です。

家に入ったロコは、真っ先に女神像の前で手を合わせました。

召喚されて以来、ロコの心は幸せでいっぱいです。
領地の人々のためにトウモロコシを生める事も、優しい御使いと出会えた事も、全てが素晴らしい幸運だと感謝していました。

その想いを篭めて、女神様へと祈りを届けます。



>>下1 コンマ判定


祈りを終えても、女神像が光る事はありませんでした。
ロコの記憶が正しければ、そろそろ運勢の更新時期だったはずだったのですが。

覚え違いかな? と首を傾げて、ロコはその場を去りました。



■ マイナスイベント発生未遂

※ 未だ解放されていない箇所でのイベントのため、何も起こりませんでした。


■ 4月 3週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆
『健康』 ☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作物状況(1/2) 拡張費用 『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv2 生活+1 25金貨/週
『畑②』 ――


◆ 精霊リスト(1/3) 拡張費用 『300金貨』

『ロコ』 ノーマル トウモロコシの精霊 好感度22


◆ 倉庫

『325金貨』
『輝く種 x1』


今週やるべき事はほとんどたった一つです。

あなたは「輝く種」を手に、そう考えました。


畑がふたつ、精霊はひとり。
これでは畑が無駄になってしまいます。

精霊一人が生み出せる種は畑一枚分が限度なのです。

折角作った畑を生かすためには、今日は精霊召喚に挑むのが良いでしょう。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 作付変更 (選択不可)

◆ 施設拡張



>>下1


「よし、もう一人仲間を増やそうか」


あなたがそう言うと、ロコは両手を挙げて喜びました。
どうやらロコは家が賑やかになるのが随分と楽しみなようです。

そんなロコへ、あなたは一つ質問をしてみる事としました。


「ロコ、新しい仲間はどんな子だと嬉しい?」

「え? うーん、えっとね……。
 うん!
 ダンナサマを大好きになってくれる子!」


ワタシみたいに!

そう答えてあなたの腕に抱きつくロコにも、あなたは少しずつ慣れてきていました。
ですので、こう切り返すだけの余裕もあります。


「そっか。
 じゃあ俺は、ロコを大好きになってくれる子だといいな」


締まらないことにあなたの顔は赤く染まっていましたが、それは切り返されたロコも同じでしたのでノーカンです。

そんな風に、あなた達は地下へと降りていきました。


地下室の中央、精霊を呼ぶための召喚陣の前で、あなたは種を手に目を瞑ります。

領地の状況を見るに、今来てくれると嬉しいのはまず生活の根幹を担う作物でしょう。
それらが集まるのは低レアリティの「ノーマル」と「レア」の二つです。
出来る限りそちらが呼びかけに応えてくれと、あなたは祈ります。

まさか「ガチャ」を前にして低レアリティに来て欲しいと願う事になるなんてと、少々おかしくなりました。



祈りの時間を終え、あなたは召喚陣の上へと手を伸ばします。

握った拳を開き、種が落ち、そして発せられた光は――。



01~50 ノーマル
51~85 レア
86~00 Sレア
ぞろ目 SSレア

>>下1 コンマ判定


カァン!

と甲高い音が、一つ、響きました。


二つ目の音が聞こえず、演出の「発展」が発生しない事を確認して、あなたは思わず両手を握り締めました。
召喚陣から溢れる光の色は「銀」一色に染まっています。

無課金勢だったあなたにも実に馴染み深い低レアリティ「レア」の精霊があなたの呼び声に応えてくれたようです。

現状において一番の「当たり」枠と考えて良いでしょう。
何せ、レアの作物は殆ど全てが『健康』改善能力を持っているのですから。



後はその内、一体誰が現れるのか。
あなたは瞳孔を焼く光に負けず、必死に目を凝らしました。





01~10 カボチャ
11~20 トマト
21~30 ニンジン
31~40 春菊
41~50 モロヘイヤ
51~60 小松菜
61~70 パプリカ
71~80 ナス
81~90 ほうれん草
91~00 ダイコン


>>下1 コンマ判定

(話に関係なくて本当に申し訳ないのですが、バターで炒められてしんなりしたホウレンソウって野菜の中で一番セクシーだと思う)


光の中から現れたのは、一人の「女性」でした。

あなたと、その背に隠れるようにしていたロコは、思わず息を呑みました。
淑やかに、しかし鮮やかに、ただ一歩踏み出しただけで心を捉える美を目の当たりにしてしまったためです。


「――お初にお目にかかります」


耳朶の奥を撫でるような囁き声を聞き、あなたはどうにも空想してしまいました。
これほど美しい人の声ならば、特別な力を持っているのではなかろうかと。
事実、その一言だけであなたの肌に一瞬の痺れが走ったほどです。


細く折れそうな、それでいて女性的な柔らかさを残す脚がゆるりと折られます。
同時にたおやかな指が、装飾の少ない緑のアフタヌーンドレスのスカートをつまみ、持ち上げました。

肩から零れ落ちる長い黒髪の一房。
その艶やかな動きすら思うままであると錯覚するような、完璧な貴婦人の礼でした。


「此度、あなた様の召喚に応じました、ホウレンソウの精霊にございます。

 どうぞスピナと、そうお呼びください」


あなたは全く落ち着けない気分でした。

勿論、あなたはスピナと名乗った彼女を良く知っています。
ネット上における通称を「レアリティ詐欺の緑の方」
無課金のために高レア運用が難しかったあなたも大層お世話になった記憶がありました。

しかし能力については今はどうでも良い事です。
問題はスピナの美しさと清廉さでした。
土が剥き出しでろくな装飾もなく、ただ召喚陣があるだけの地下室が、今やどこぞのお屋敷の一室とすら感じます。
それだけの雰囲気を彼女は発していました。

こっそりと確認してみたロコもまた、完全に呑まれてしまっています。
あなたの腰の後ろを掴み、どう対応すれば良いのかとあなたとスピナの間で視線をさ迷わせている所でした。


そんな風に余所見をしていたのが悪かったのでしょう。
あなたが気付いた時、スピナはもう行動を終えた後でした。


「では、主様。
 失礼いたします」


絹の擦れるような囁きと共に、あなたは柔らかい感触を感じました。
いつの間にか距離を詰めていたスピナがあなたの頬に掌を添え、僅かに背伸びをして口付けたのです。


「あっ」


と、ロコが声を上げる暇もあるかないかの早業でした。


本当に触れるだけ、ほんの一瞬のキス。
それを終えてスピナはしずしずと離れ、ゆるりと上げた掌の中に種を受け止めました。

やはりその動作も完璧です。
一粒も零す事なく、どこに落ちるかが分かっていたように優雅な様でした。


「え、えー……。
 あ、あの! 最初のキスだよね!?
 心の準備とか、そういうのは!?」


ロコが慌てて声を上げます。

ロコの場合、初めての口付けは少しだけとはいえ心の一部を通わせてからのものでした。
同じ女性側からのキスですが、その実態は随分と異なります。
彼女の混乱はいたし方のないものでしょう。

それに対するスピナの返答は、こういうものです。


「……?
 えぇと、これがお役目なのでは?」


何もわかっちゃいやしません。


「主様、私の最初の種が生まれました。
 どうか共に、地に植えてはいただけないでしょうか?」


微笑を湛えて、スピナは言います。
どこか蠱惑的な、男の本能を羽根でくすぐるような囁き声で。
しかし彼女自身に、あなたを色に誘うようなつもりは決してありません。

あなたは知っています。
知っているので、必死に自分に言い聞かせました。

落ち着こう。
思い出そう。
現実化したせいで、その美しさのせいで分かりにくくなっているだけで、本質はそうではないのだと。

彼女の行動には全て「ぽややん」という効果音をつけるべきなのだと……!


「主様……主様?
 あの、私何かおかしなことをしてしまいましたでしょうか……」


頬に手を当て、スピナがふわりと首を傾げる。

マイペースな天然さん。
それこそが彼女のパーソナリティーなのだと。


■ 作物状況 自動変更

畑に空きがあるため、自動的に種が植えられました。



■ 4月 3週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆
『健康』 ☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作物状況(2/2) 拡張費用『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv2 生活+1 25金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv1 健康+2 25金貨/週


◆ 精霊リスト(2/3) 拡張費用『300金貨』

『ロコ』 ノーマル トウモロコシの精霊 好感度22
『スピナ』 レア ホウレンソウの精霊 好感度10


◆ 倉庫

『325金貨』


「そう、ロコさんと言うんですね。
 こちらこそ、よろしくお願いいたします。
 世の人々のため、微力ながら私も共に尽力させて頂きます」


「う、うん、ゃ、はい……」


新しい仲間が出来たなら、何はともあれ交流だ。
そう意気込んでみたは良いものの、早速既にロコはたじたじでした。
カップを持ち上げ、ヒゲ茶を一口飲む。
その動作にさえ自分達とは絶望的に隔絶した気品があるように思えてしまうのです。

一歩スピナ側に歩み寄ろうと、せめて動作を真似ようとしたロコですが、すぐに無理を悟りました。
同じように持ち上げてみたはずのカップはどうしてもフラフラ揺れてしまいます。
仕方なく、ロコはいつも通りに両手で持って口に運びました。


なお、あなたは一階に移動しお茶を淹れるまでの間で大体持ち直しました。
何とか実装に成功したぽややんフィルターのお陰です。

ただ様々な動作に気品と美が伴っているだけの普通の女性なのだと、あなたは理解しています。


気圧されるロコは珍しく、どう話しかけて良いか分からないようでした。
家の中には沈黙が重苦しく流れます。


と思いきや、スピナが唐突に切り出しました。


「外……」

「え、あ、外出たいの?」

「いえ……良い、天気ですねぇ」

「……あ、うん。
 よく晴れてる……ますね?」


そこでスピナは満足そうに笑みを浮かべて、ヒゲ茶が入ったカップをしげしげと眺め始めました。

フィルターを通したあなたには大体分かります。
スピナは何も考えちゃいないのです。
ただ本当に良い天気だと思っただけで、その次はカップの柄が気になってみただけでしょう。


ですが、それが分からないロコは助けを求めるようにあなたに視線を投げました。
あと一押しすれば涙目になりそうな具合です。

初めて見る弱った姿にあなたは新鮮な気分になりましたが、ここはしっかり助け舟を出さねばなりません。


「とりあえず、スピナが暮らすに当たって部屋とか色々決めよう。
 家の中を案内するよ。
 まだあんまり広くないけどね」


「あら、主様手ずからだなんて恐れ多い事ですが……ありがとうございます」


あなたが提案し手を差し出すと、スピナは誘われるままに手を取り、立ち上がりました。
そのまま手を引いて誘導し、空き部屋へ繋がる廊下へ向かいます。

ロコと過ごした時間が功を奏した形です。
この世界に降り立ってすぐ、女性に何の免疫も無い頃ではこうはいかなかったでしょう。
言葉も噛み噛みで、細く白い手に触れた瞬間にドキリと動きを止めていたかも知れません。


一人出遅れたロコを、あなたは手招きます。

ぼうっとしていたロコですが、何とかそれに反応してあなた達に駆け寄ります。
そこへ、あなたは耳元にこっそりアドバイスを投げました。


『選択肢』


◆ 無理しないで、見ているといい

◆ いつも通りのロコで大丈夫

◆ フィルターだ、フィルターを貼るのだ

◆ その他 (自由記述)


>>下1


「いつも通りのロコで大丈夫」


あなたはロコの耳元で囁くと、顔を離してにっこりと笑いました。

そう言われたロコの方はというと、きょとんとした顔でした。
本当にそれでいいの? と書いてあるようです。
勿論だと伝えるように、あなたは一度頷きました。


「まぁ……なんて素敵」


ちなみに、あなたは然程さりげなく振舞う事が出来なかったようです。
あなた達のやり取りに気付いたスピナが呟き、熱のある吐息を漏らしていました。

やり取りのどこを差して素敵と称したのかは、さてスピナにしか分かりません。
声は流石に聞こえなかったとは思いますが。


あなたに手を引かれるスピナの後ろを、黙ってロコがついて歩く。
二つの空き部屋を紹介する間、それが変わる事はありませんでした。
もう聞き慣れた明るい声で呼びかける事も、見慣れた腕への飛びつきも、今回ばかりは見られません。

結局ロコが行動を起こさないまま、スピナが部屋を選ぶ段になりました。
日当たりの良い角部屋か、ロコの部屋と隣接する中央の部屋か。

普通に考えれば、前者でしょう。
隣の部屋では何かと気を使う事もあるのですから。
スピナの性格であっても、日当たりの点でそうなりそうです。


「えぇ、それでは私は……こちらの」


どうやら実際、そのように決まるようでした。
あなたから離されたスピナの繊手が、控え目に角部屋を指し示そうとします。


その時、ようやくロコが動きます。
意を決したように顔を上げて、スピナの左腕に抱きつきました。


「ね、ね、スピナ!
 ココ、ワタシの部屋なの!
 こっちも見てから決めない?
 スピナが気に入ったら、交換してもいいよ!」


あなたはほっと息を吐きました。
もう全部大丈夫だと、きっと間違いの無い確信があったのです。

突然左腕が引かれたスピナは、きゃっ、と声を上げてふらつきました。
もし、スピナが美しくあろうとして美しく振舞っている女性なら、不快に思ったかも知れません。
ですが、この場にそんな者は居ないのです。


「そんな、私が部屋に入ってよろしいのですか?
 まだ殆ど初対面ですのに……」


ほらこの通り。
スピナは少しも悪く感じていません。
それどころか頬を緩めて、距離を狭めてきたロコを喜ばしく思っている様子です。

ここで、ロコは本当にいつも通りになりました。


「もっちろん!
 ワタシとスピナは、これから一緒に暮らす家族になるんだからね!」


弱っていた気分を吹き飛ばす真夏みたいな笑顔で、自分の部屋へご招待です。


大変残念な事に、あなたには入室の権利は与えられませんでした。

乙女の部屋に入るなら、それ相応の手続きが必要。
この意見はスピナもロコも同意のようで、あなたは一人廊下で待たされています。

部屋の中からは、時折ロコの明るい声が漏れ聞こえてきます。
妖精謹製の住宅はそれなりの防音が働いているのか詳細までは分かりません。
ですがあなたは何の心配もしていません。

そして、その考えの正しさはすぐに証明されました。


「ダンナサマ! ダンナサマ!
 どうしよう!
 ワタシ、オネエサマになっちゃった!」


バタンと扉を開いて、飛び出したロコが叫びます。

言っている言葉は意味不明。
ただ、嬉しさと恥ずかしさが混ざっているのだろう事は聞き取れる声色でした。

それはまたどうしてそうなった、とあなたが聞けば、答えるのはロコに続いて出てきたスピナです。


「決まっています、主様。
 先達の方を妹扱いなんて出来ませんもの。
 私が妹になるのが当然です」


そういう事を聞いた訳ではないと指摘するのは野暮でしょう。

彼女はそういう人なのだと、そのままを受け止めるのがスピナと付き合うコツに違いありません。


お姉様。

そう呼ばれて嬉し恥ずかしさに悶えるロコ。
口元を隠しながら、くすくすと笑って呼びかけるスピナ。
二人はどこかじゃれあっている犬のようでありました。

今回の召喚は、どうやら大成功に終わったようです。
この二人が今後仲たがいする光景を、あなたは思い描く事が出来ないのですから。

(やっぱ三人以上になると物凄い書きにくいけどそれを克服するためにハーレム設定にしたんだ感)

今日は終わります
ありがとうございました


■ ソーシャルゲーム時代の評価


『ホウレンソウの精霊 スピナ』


ライトでポップなアニメ塗りの「きす☆ゆあ」世界に舞い降りた、水彩厚塗り絵柄の異端児。
立ち絵のポーズも一人だけやたら優雅。
他の精霊と一緒に画面に映ると違和感がとんでもない。
元の絵柄に似せておくだけでシュールさをかもし出せるため、公式四コマでたびたび出てくる。

原因はイラストレーターへの発注ミス。
想定と全く違う絵が出来上がってしまったものの、リテイクの時間が取れなかったためヤケクソでそのまま採用された。

シナリオ担当もこのキャラをどう扱って良いのか分からなかったのか、実装当初は無個性な無口さんだった。
天然マイペース属性が開拓されたのはプレイヤーサイドによって。
界隈で評価の高い二次創作者がPi○ivに投稿したシュールギャグ1P漫画から火がつき、逆輸入の形で公式設定化した。

個性獲得後はキャラの扱いやすさから公式、二次創作ともに一定の出番を与えられ、それなり以上の人気を得ている。
「○○歳児」「○○さんが楽しそうで何よりです」枠。
何が起こっても大体無敵。


この無敵さに目をつけた某精霊は、自身が主役の毎年恒例悪戯イベントの3回目にてスピナを副官に起用。
予定以上の大規模な悪戯には成功したものの、スピナの天然ムーブに引っ掻き回されしっちゃかめっちゃかにされた挙句、
「知 っ て た」 「い つ も の」 「そ ら そ う よ」 「何度も出てきて恥ずかしくないんですか?」
というプレイヤー達の絶賛を浴びる羽目になった。

このイベントの際に実装された「[仮装・森の悪い魔女]スピナ」は、大胆に背中が開いた上に横乳衣装。
通称を「股間に悪い魔女」と名付けられた。
スキン販売方式だったため、財布にはさほど悪くない。

今日も夜8時からやりたいのですが、ちょっと残業がどうなるか不明
遅れるかも知れません

ちょっと遅れます、8時半くらいから


■ 4月 4週目


スピナとロコはすぐに仲良しになりました。
部屋は隣同士に変更し、寝る前には遅くまでお話をしています。
纏う雰囲気は大分違う二人ですが、隔てる垣根はもう無いようです。


「あ、おはようダンナサマ!
 ちょうど焼きあがったとこだよー!」

「おはようございます、主様。
 私の方も出来上がりました」

「おはよう。
 ……やっぱいいなぁ、朝の香りで起こされるのって。
 幸せってこういう事だと思う」


料理当番だって一緒にこなします。

トルティーヤを焼くのはロコ。
スピナはその横でホウレンソウで何か一品仕上げてくれます。
塩茹で、塩スープ、塩炒め、足りない物ばかりの現状では味に大きな変化はありませんが、彩りが一つ増えただけでも大違いです。

本当の姉妹のような仲睦まじさに、寝起きのあなたも思わずほっこりしました。


ただ、ちょっと困った事もありました。

ロコは自分の魅力を理解して抱きついてくるのですが、これには何とかあなたは慣れました。
毎日のキスの際に、ロコの腰や背中をそっと抱き寄せられるようにもなっています。

ところが、スピナはロコとは違ったやり方であなたの理性に攻撃を仕掛けるのです。

そう、スピナは余りにも、無自覚かつ無防備だったのです。


お待たせしました、とスピナがあなたの前に温かなスープを置きました。
テーブルに置くのですから、当然前かがみになります。
するとどうなるかと言えば……。


(っ!
 へそ! へそまで見えた!)


あなたはバッと顔を背けます。
見てはいけない物を見てしまったからです。

スピナが元々着ていた服はドレスでした。
当然ですが日常生活や畑仕事に向いた服ではありません。
そこで普段のスピナはロコから借りたオフショルダーのシャツを着ているのです。
前かがみになれば、そりゃあ見えるに決まっています。


ロコの場合、豊かな果実と谷間が見えるだけで済むこのシャツですが、スピナはそうはいきません。
彼女はとってもスレンダーな体型であり、どちらかといえばお山の大きさは控え目です。
空間を遮る物はなんにもありません。
あなたは本当にスピナのへそまで見えてしまいました。


「……どうかなさいましたか?」


突然顔の向きをぐるんと変えたあなたを、当然スピナはいぶかります。

はて、急にどうしたのでしょうか。
もしかして何か具合でも?


「主様。
 主様?」


既に吐息がかかる距離で、スピナはそろそろと呼びかけます。
大丈夫、大丈夫と伝えても既にそれが不審です。
スピナは、む、と眉を曲げて、なおさらあなたを心配してしまいました。

情を求めて男にすがるような囁き声。
見せ付けて誘っているとしか思えない服の中の白い素肌。
あなたの胸に触れている指の力加減と、腿へ流れ落ちている長い黒髪がくすぐる感触など、褥の中で続きをねだる娼婦のそれと一体何が違うと言うのでしょう。

これをごくごく平然と、何も分かっていないという顔でするのですから、あなたは全くたまりません。


「主様……失礼いたします」


更にスピナは続く一矢さえ持っています。


スピナとの最初のキスと同じ、あっという間の早業でした。

あなたは抵抗する間もありません。
いえ、正確には抵抗できるだけの理性は消えていました。

あなたの唇は一瞬で奪われ、それどころかその先へと進みます。

ぬらりとした物が、あなたの口内へと半ば無理矢理に割り入ります。
酷く熱い、触れただけでとろけてしまうと感じるようなスピナの舌です。
舌先に触れ、絡まりあい、あなた達の唾液は境界を失いました。
ぴちゃぴちゃ、くちゅくちゅ。
体の中に直接響く水音は、もう何もかもを溶かしていくようでした。


「ん、ふ……ぅ、ん」


加え、吐息までもが交換されます。
肺腑すらスピナに蹂躙されている。
そう自覚したあなたの理性はついに限界を迎えました。

ここまで誘われているのだから良いのではないか。
この淫らな女を獣欲のままに抱き締めても、許されるのではないか。

あなたの頭はそれでいっぱいになりました。


が。


「んっ……。
 ……いつもどおり、ですね。
 では、何がいけないのでしょうか……」


追おうとした瞬間に、スピナはするりと離れていきました。
舌に乗せたあなたの味を確かめ、パラパラと掌に落ちた種を検分し、首をかしげています。
そこにあなたが錯覚した淫らな誘いの気配は、誰がどう見たってひとかけらもありません。

……スピナはどうやら、キスの味と生まれた種の様子であなたの状態が分かると信じているようでした。

中空を抱き締めるような間抜けな姿勢になったあなたは、理性を取り戻しテーブルに突っ伏します。
その耳元どころか首元まで、一目見て分かるぐらいに真っ赤でした。


その後、一部始終を見ていたロコに取り成されなければ、あなたは再起不能だったかも知れません。

なお、ロコはずっと真っ赤な顔を両手で覆っていましたが、目を隠すはずの指はしっかりきっかり開いていた事をお伝えしておくべきでしょう。
その日のお昼、いつもの触れるだけのキスの最中にあなたの唇に舌が触れ、同時に悲鳴を上げてロコが逃げ出した事も、勿論併せて。





■ 好感度自動上昇

『ロコ』

22 + 1 = 23

『スピナ』

10 + 1 = 11


■ 4月 4週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆
『健康』 ☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作物状況(2/2) 拡張費用『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv2 生活+1 25金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv1 健康+2 25金貨/週


◆ 精霊リスト(2/3) 拡張費用『300金貨』

『ロコ』 ノーマル トウモロコシの精霊 好感度23
『スピナ』 レア ホウレンソウの精霊 好感度11


◆ 倉庫

『375金貨』

書いた分だけ置いといて急いで夕飯貪るスタイル
安価は予定通り8時半からです


■ ログインボーナス


朝から教育に悪すぎるスピナの猛攻でフラフラに。
今日一日どう過ごすのだったかさえ抜け落ちたあなたですが、日々の祈りを欠かす事はありません。

気が休まる暇も無い今の生活ですが、これ以上無いぐらいに恵まれているという自覚はあります。
美少女と美女、二人に挟まれて暮らすなんて世の男が聞けば嫉妬で頭がねじ切れるでしょう。
これで「やれやれ」なんて言おうものなら金槌で頭を割られても文句なんて言えません。

送ってくれた神様、迎えてくれた女神様。
本当に、本当にありがとうございます。

あなたは手を合わせて女神像へと感謝を捧げました。



>>下1 コンマ判定


女神像

「今週の運勢は06……06です……。
 その感謝、ちょこっと煩悩で汚れていますよ……ますよ……すよ……」





と、その時。
家の裏手から「どんがらがっしゃーん!」と大きな音が聞こえました。

すわなにごとか。
あなたは祈りを中断し、慌ててそちらに向かいます。



>>下1 コンマ判定 偶数ならロコ 奇数ならスピナ


あなたが家の裏手に回ると、なんとロコが箒を手に何かを追い掛け回していました。

茶色い縞々模様の、背中が人の腰くらいまである四本足のでかいやつ。
あなたは懐かしさと呆れを覚え、一瞬くらりとしました。
まさか現実にも存在するとは。

ゲームの時には散々お邪魔をしてくれた御使い様の天敵です。
名前をウリボー!
牙は無いけど食欲はある、畑を荒らす厄介者です!

ぷきー! ぷきゅー!

可愛らしい鳴き声を上げて、ウリボーはどたどた走っています。
その後ろを「コラー!」とロコが続きます。
ウリボーが咥えているのはトウモロコシ。
勝手に盗み食われては、そりゃあロコも怒るわけです。


「あ、ダンナサマ!
 そっちそっち!
 逃げ道ふさいでー!!」


目ざとくあなたを見つけたロコは、勿論加勢を願い出ました。

あなたは慌てて、そこらにあった棒切れを拾い上げました。
トウモロコシは領民達の大事な大事な食料なのです。
どこで何を食べているのか、未だに丸々肥えたウリボーに分けてやるわけにはいきません。

あなた達二人は果敢に立ち向かうのでした。


その後しばらく頑張って、ウリボーの撃退には成功しました。

走り回ったあなた達はヘトヘトながらもハイタッチを交わし、互いの健闘を称えます。



■ 好感度上昇

『ロコ』

23 + 2 = 25



……が、そこで笑い合って、いざ家に戻ろうと振り向いた時に気付きました。

家の倉庫。
その一角の壁に大穴が空いているのです。

恐らくあの「どんがらがっしゃーん」の時でしょう。
逃げ回るウリボーの体当たりによる物に違いありません。


あなた達は思わずぐったりと、その場に崩れ落ちました。



■ 倉庫の修理

『金貨』

375 → 350


朝から本当に疲れる事が続きましたが、それでもあなたは休めません。
やる事はそれこそたくさんあるのです。
今週は何に取り組むか、あなたはしっかり考えました。


月末、つまりは今週が終われば領主からの特別な使いがやってきますが、これは気にしなくて良いでしょう。
何かを用意する必要はありません。
そもそも、歓迎の準備をしようにも今は揃えられる物など無いのですし。




『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 施設拡張


>>下1


■ 精霊との交流


『選択肢』

◆ ロコ

◆ スピナ


>>下1


――その週、あなたは一つの事に気付きました。

見られています。
すごく見られています。
むやみやたらと見られています。
ざくざく突き刺さるほど見られています。

誰にって?

にこにこ笑う、スピナにです。

畑仕事の間も、食事の時も、居間でうとうとしている時も。
スピナは嬉しそうにあなたを見つめていました。
井戸の横で体を洗っている時に、気付けば後ろから見られていたのには思わず悲鳴を上げました。





「…………」


勿論、今この時にもです。
今回は相当ダイレクトでした。

なにせ、椅子を真横にくっつけて、淑女らしいしとやかな座り方からあなたを見上げているのです。

流石に顔を背ける事も出来ず、あなたとスピナは見詰め合っておりました。


気まずいなどというものではありません。

あなたは全く、どうして良いのか分かりませんでした。
視線と笑顔が何を伝えたいのか読み取る事ができません。
スピナの思考は一種独特な物です。
生半な予想が通じる相手ではないのです。

やむなく、あなたは意を決しました。
見詰め合っているだけではどうにもならない。
ここはきちんと聞いてみるべきだと。

その瞬間。


「あっ」


と、スピナが声を上げました。
そして続けて。


「うふふ。
 はい、どうぞ」


と酷く嬉しそうに微笑みかけます。
今のほんの一瞬で、スピナの機嫌は上限にさえ届いたようです。

……何が何だか分かりません。


あなたはますます混乱しました。

今の「あっ」は何だったのか。
なんで機嫌がよくなったのか。
その「どうぞ」は一体何の「どうぞ」なのか。

くじかれかけた決意をもう一度抱えて、あなたは口を開きます。


「スピナ、今のどうぞって、えぇと、どういう意味?」

「?
 それの事です」


話が通じません。


それでもあなたはめげません。
スピナの真意を聞き出すべく、がんばって話を続けます。


「うん、そうだね……。
 ところで、それってどれの事かな?」

「まぁ、主様ったら。
 言葉遊びですか?」

「うん、そういうわけじゃないんだ、ごめん」


……がんばって話を続けます。


それから少なくない時間を、あなたはスピナに費やしました。

スピナの言葉を理解できなかったと理解させるのにしばらく。
引き出せた解説を読み解くためにもうちょっと。
それだけかけて分かった事を並べてみましょう。


「はぁ、そうですね……。
 主様を見ていましたら、なにやら私に聞きたいのだな、と分かりまして」

「うん」

「分かった事が嬉しく思えて、思わず声が」

「うん」

「あ、そうでした。
 はいどうぞ主様、私の事でしたらなんなりとお聞きください」

「うん……そっか」


そういう事らしいです。

視線と笑顔の意味は未解決ですが、とりあえず現状だけは読み解けました。
代償になんだか疲れた気はしますが。


スピナは対照的に、相変わらずご機嫌です。

あなたが理解に努めようとする姿が、さて面白かったのか嬉しかったのか。
隣接していた距離は更に縮まり、スピナの細い肩はもたれかかるようにあなたに触れています。

笑顔満面の今ならば、まぁ確かに大体答えてくれそうには思えます。



>>下1 何か話題があればどうぞ (何も無ければ、沈黙を選べば問題なく進行します)


「スピナって何か趣味はある?」


あなたの口から出たのはそんな問いでした。

視線の意味は気になりますが、聞き出すのは難しいでしょう。
きっと長く時間を取られますし、気疲れもするに違いありません。
となればこっちが慣れてしまうというのも一つの手です。
そもそもとして、スピナが楽しそうにしているのですから悪い事とも思えません。

だったらまだしも話の通じそうな趣味の話題は良い選択ではないでしょうか。


「趣味、趣味ですか。
 そうですね……お姉様と主様です。
 とても、とても良いものです」


片手を頬に当て、熱い吐息をほぅ、と吐くスピナです。
うっとりとした表情はまさに恋する乙女のそれ。
ただでさえ美しく妖艶なスピナが瑞々しさまで纏いました。
間近で直視したあなたはサイコロを転がして正気でいられるかどうかを確かめる必要に迫られかねません。


そこまで告げて満足した様子のスピナでしたが、はたと気付いた様子です。

もしかして、もしかしたら?
恐る恐るあなたの顔を、スピナは覗き込みます。


「あの、主様。
 もしかして今の話も余り……?」


通じていないのか、という事でしょう。
あなたは申し訳なく思いながらも頷きました。

スピナもここまでのやり取りで学習していたのでしょう。
あなたと自身のズレに、自力で思い当たる事が出来たようです。


「そうでしたか……申し訳ありません。
 初めからご説明した方が?」


あなたは勿論肯定しました。

趣味があなたとロコとはどういう事か。
どの辺りが溜息を吐くほど良いのか。
気にならないとは言えませんので。


そこからは、聞いてみればなるほどと納得できなくもない話でした。

事はスピナ召喚の日、家の中の案内を始める時にまで遡ります。

スピナの纏う空気に臆し縮こまったロコを、あなたは手招きました。
駆け寄るロコ。
助言するあなた。
スピナが反応したのはその次の段です。


ロコは表情で「いいの?」と聞き、あなたは無言で頷きました。


「言葉無く、ただ見つめるだけで意を伝え合う。
 これほど素敵な関係があるでしょうか?」


いいえありません。
反語。

と、つまりそういう事らしいです。
アイコンタクトの練習と実践。
それが今のスピナの趣味という事でした。

ここ数日の謎の視線の正体までもが図らずも理解できました。
要するに、あなたが何を求めているかを読み取ろうとしていたようです。
ひとたび始めてみればそれが楽しくて楽しくて止め時を見失ったと犯人は自供しています。

……もうちょっとやりようがあるだろうとは、頭を抱えるあなたも思いました。


「ですがそのお陰で、幾分上達いたしました。

 いかがでしょう?
 主様が求めていただければ、今ならば読み取れると思います」


自信満々。
心持ち鼻息も荒く、スピナはあなたの顔を見つめます。



>>下1 スピナにやって欲しい事を指定できます (読み取れない場合もあります)


『締め切り』


(……そんな自信満々に言われても)


それがあなたの正直な感想でした。
当然、表情に何らかの願望が出る事もありません。

ですがどうやら、スピナにとっては違ったようです。


「――なるほど。

 分かりました、お任せください」


すっと表情を引き締めたスピナは立ち上がります。
その動きはあくまで優美。
彼女の柔らかな香りだけを残して、スピナはあなたから離れました。


そしてしばらくの後。


コトン、と。
あなたの前に一つのカップが置かれました。

中身は定番のヒゲ茶。
あっつあつで湯気もたっています。


「主様はお茶を飲みたいものと、そう読み取りました――」


あなたは困惑しながらも、それを口に運びました。

当然ですが、残念ながらあなたが望んだわけではありません。
お茶の味もロコが淹れるのと比べれば若干劣ります。


ちら、とあなたはスピナを窺いました。

彼女は頬を緩め、幸せそうにあなたを見つめています。


『選択肢』


◆ 良く分かったね

◆ ちょっと修行が足りない

◆ 読み取ろうとして読み取るものじゃない

◆ その他 (自由記述)


>>下1


「うーん、これはちょっと違うかな。
 スピナ。
 こういうのは、読み取ろうとして読み取るものじゃないよ」


言いにくい事ですが、ここは言っておいた方が良いでしょう。
あなたは苦笑してスピナを諭す事にしました。

アイコンタクトのような物は、長い時間を共にして自然と身に付けるものです。
無理にやろうやろうと頑張るようなものではありません。


その言葉に、スピナははっとしました。

指先で口元を抑え、驚いたような表情です。
己の間違いに気付いたのでしょうか。
ともあれ、あなたは続けます。


「スピナが見たのだって、本当は偶然なんだ。
 あの時のロコが凄くわかりやすかったからね。
 いつもいつもあんな風には出来ない。

 もうちょっとゆっくりでもいいんじゃないかな」


「生きるのは、きっとゆっくりの方が楽しいよ」

「――」


それはあなたの心からの本心でした。

あなた達はこれからきっと長く共に暮らします。
ごく当たり前の話として、目を見るだけで会話する、なんて事もいつか出来るようになるでしょう。

それなら今すぐ先取りする必要なんてありません。
互いをまだ完全に理解していない今だからこそ楽しめる。
そんな出来事だってどこかに転がっているかも知れないのです。





「――はい、主様」


しずしずと、スピナはたおやかに微笑んで腰を折りました。
言葉少なに。
それでも、多くの言葉を発してくれた先程までよりも、ずっと心の伝わる動作でした。

新しい生活に、きっと彼女の心はふわふわと浮ついていたのでしょう。
喜びと楽しさでちょっと頭の中が綿菓子に置き換わってしまうぐらいに。


ようやく地に足を付けたスピナの本当の顔。
それを、あなたは初めて垣間見た気がしたのでした。


■ スピナ好感度上昇判定


パーフェクトコミュニケーション!

最低保証好感度 +7


>>下1 コンマ下一桁が更に加算


■ スピナ好感度上昇

11 + (7+9) = 27


◆ 作物レベル上昇

ホウレンソウLv2 『健康』+2 30金貨/週


■ 4月 月末


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆
『健康』 ☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作物状況(2/2) 拡張費用『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv2 生活+1 25金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv1 健康+2 30金貨/週


◆ 精霊リスト(2/3) 拡張費用『300金貨』

『ロコ』 ノーマル トウモロコシの精霊 好感度25
『スピナ』 レア ホウレンソウの精霊 好感度27


◆ 倉庫

『405金貨』


あなたは状況を整理した紙の前で一息つきました。

領民の状態は少なくとも最悪からは脱したようです。
毎日満腹……などとは勿論まだまだいきませんが、餓死寸前の者はもう居ません。
使いの者に話を聞く限り配給は上手く機能しているとの事でした。
健康状態も、スピナの助力があるのですから回復の見込みは十分あります。

とはいえ、長いのはここからです。
彼らに人並みの、希望が持てる生活を送ってもらうにはまだ足りません。


あなたはぼんやり、日本に居た頃の事を思い出しました。
正確には、この世界を模したゲームについてです。

あの機能が使えれば。
あの課金アイテムが購入できれば。
そう考えるも、所詮は妄想に過ぎません。

あなたは頭を振って、金貨一枚にもならない思考を打ち捨てました。


もうすぐ『特別な使い』も来るのです。
御使いを名乗る以上、おかしな姿は見せられません。


そうして現れたのは、立派な衣服を身に纏った品の良い少女でした。
あなたも既にあった事のある、領主の一人娘です。

名前は「エラ」
この辺りでは「美しき精霊」という意味を持つと聞いています。
ですが……本来称えられるべき美貌は、いまやくすんでいました。

こけた頬。
落ち窪んだ眼。
服で覆われていない部位は骨が浮き、女性らしい柔らかさはその体から失われています。
化粧で隠そうとはしているようですが、全てを誤魔化せる訳ではありません。


余りにむごい話でした。

その姿を本物の精霊の前に晒し、己の名を名乗る。
それだけの行為が年頃の少女の心をどれだけ傷付けるかなど、およそ計り知れるものでは無いのです。
領主本人が心労に倒れてさえ居なければ、きっとここに踏み入ろうとは思えなかった事でしょう。

あなた達の前に跪いたエラは、恥じ入るように俯き、顔を上げる事が出来ませんでした。
ロコとスピナの二人に席を外すようあなたが言わなければ、二度と立ち上がる事も無かったかも知れません。


あなたの気遣いとエラの傷心。
それらに決して触れようとする事なく、エラがまず口を開きます。


「……まずは、領主である父と、そして領民に成り代わりまして御礼申し上げます。
 御使い様と精霊様の慈悲により、我が領はいまや救われつつあります――」


長く長く、祈りの聖句のように感謝が続き、あなたがそれを受け入れる事から話は始まりました。

どうして良いか分からない心地でした。
あなた自身、正直な話自分をたいした人間だとは思えていないのです。
本当の意味でずっと頑張ってきたであろうエラを前にすれば尚更です。

女神様から借り受けた力で畑を耕している。
それだけで威張り散らせるような人間ならば、そもそもこの世界へ送ってくれと神様に頼むような死に方はしませんでした。

だからといって謙るわけにもいかないのが難しい所です。
これまで人々に接してきた限り、彼らの信仰心は相当強固です。
あなたがみだりに頭を下げ、己を卑下すれば、彼らは恐慌に陥りかねません。

どれだけ納得いかなくともふんぞり返っているしかないのです。


そんな風に、決して表には出さずに思い悩んでいる内にも話は進んでいきます。

部屋の隅に控えていた使用人は、装飾がなされた薄い箱をテーブルの上に置きました。
エラがそこから一枚の羊皮紙を取り出し、あなたへ差し出します。
受け取り目を通してみると、書かれているのは様々な作物や食品の名前です。

じゃがいも。
玉ねぎ。
なす。
レモン。
チーズにバター、砂糖の名までありました。

もしやこれらを作れという事だろうか。
戦々恐々として顔を上げたあなたでしたが、どうやら違ったようでした。


「こちらは目録となります。
 他家の領地を三つ挟んだ南方に御降臨された御使い様より、贈り物と文が届いております。
 荷は外に、文はこちらです」


エラはそうして、今度はしっかりと封がされた手紙を取り出しました。

表にはこう一文があります。

『先達より後進へ、今後の友好を願って』



あなたはそれで理解しました。
心の中は歓喜でいっぱいです。

あの機能があったらと夢想していた、まさにそのものでした。

『フレンド領地』と『フレンド申請』です。


御使いはあなた一人ではありません。

そして、御使いは自身の領地で何もかもを完結させなければならない訳でもありません。
というか不可能です。
ゲームだった過去においても、現実となった今においても。

何か危急の事態に見舞われた時、あなた一人で完璧に対応できるとは限りません。
同じだけの力を持つ誰かに手助けしてもらえる可能性を確保しておく意義は大変に大きく、また重いのです。


また、将来的にも他者の手は必要です。

ただ生活する。
ただ健康を維持する。
それだけならば何とかなるかも知れません。

ですが、人はそれだけで生きるものではありません。
いずれそれ以上が求められる日がやってきます。

それらが必要となった時には、他の御使いとの交易を行うべきでしょう。
全てをあなたが用意しなくとも良いのです。


そのために御使い同士で友誼を結び関係を作っておくのがどれ程重要かは推して知るべしといった所です。


そして早速、その恩恵があなたに振り分けられるようです。

読み進めた手紙にはこうありました。



降臨から一月。
この短期間で二人の精霊と契約し領民の生活を支える土台を作った。
そんなあなたは有望な後進であり、友誼を結ぶに否やは無い。
ついてはまず支援を送り、こちらの誠意を示したい。



あなたが受け取った荷は相当な量のようです。
三人では食べきるには当分かかるでしょう。
その間の生活水準は当たり前に向上し、あなた達の心の余裕は大きく増すに違いありません。

また、品目は減るようですが領民達にも支援は行き渡っているようです。
最高の贈り物と言って良いでしょう。
最も辛い時期を脱するために、あなたが一番求めていた展開でした。



■ スタートダッシュボーナス


◆ 毎週の好感度自動上昇量 +1 (1ヶ月)

◆ 領地状況改善量 +1 (1ヶ月)



■ 機能解放


◆ 文通

南の領地と手紙を交わして友好を深めます。
他の御使いとの友好度はイベントの発生に関わる他、
『嗜好』『文化』の成長に大きく影響します。


喜びをあなたが噛み締め終えたのを見計らい、エラが最後の話を切り出しました。

あなたは、言うまでもありませんがこの領地の希望です。
もしあなたが領地救済をやめると言えば。
あるいはもっと条件の良い領地に移ると言えば。
領民達は再び絶望の只中へ落とされる事となるのです。

ですのであなた達が可能な限り快適に、ここで暮らしていこうと思えるように、領主は協力を欠かしません。
あなたが望めばあらゆる優遇が与えられるでしょう。

が。


「……ですが、大変に申し上げにくく、そして恥ずべき事ではありますが。
 我が領は未だ危地にあり、御使い様の御要望を全て完璧にとは、保証できかねるのです」


残念ながらそういう事です。

金貨を望めば、勿論捧げられるでしょう。
蔵を開けろと命じれば、彼らは己の食を切り詰めて領民達に施します。

ただし、その効果はあなたが積み上げた物に比例します。
今はまだ多くは望めないでしょう。


■ 領主への要望


>>下1 何かを要求しますか? (要求する場合は内容を指定して下さい、デメリットはありません)


あなたは今は何も要求しない事としました。

彼らはまだ立ち上がりきれてもいないのです。
そんな者に肩を貸せとは言えません。
何かをしてもらうならば、歩き出せてからで良いのです。


あなたの言葉を聞いたエラは、嘘の気配が無い事を理解して安堵の息を吐きました。

そして深々と頭を下げ、再びの感謝を示します。


それで、今回の会談は終わりました。
エラはあなたの家を辞し、側付き達と馬車へ戻っていきます。

……それを見るあなたは僅かに思案しました。

本当にこれだけで良いのでしょうか。
喉に小骨が刺さったような気分です。
何かやり残した事があるように思えて、どうにも仕方ありません。

今日の話を一から思い返します。
どこに見落としがあったのか、間違えのないように全てを振り返ります。


あなたが気付けたのは、エラが馬車に乗り込もうとする、まさにその直前でした。


慌てて、あなたは走ります。

どうしてもどうしても、今聞いておかなければ後悔すると思ったのです。


あなたはエラの前に立つと切り出しました。
やっぱり要求したい事を思い出したと。

エラの顔はたちまち強張ります。
彼女の家には僅かの余裕もありません。
一人でも多くの命を生かすため、費やせる物は全てを費やしてきたのです。

それを、固い信仰によって飲み下しました。

御使いの言葉に逆らうなど、余りに不敬極まります。
死ねと言われればエラはこの場で死ぬでしょう。
女神様の慈悲なくして生きられる民は居ないのですから、当たり前の事だと彼女は覚悟を抱いています。


ですがそんなのは杞憂です。

ただ、後で反省して落ち込む事はありません。
御使い様を疑ったとして、今の体で二食三食抜く程度はやりかねないのがこの頭の固い少女の欠点でした。


あなたは言葉を待つエラに、質問を投げました。


「畑の他に、君達のために出来る事はないかな。
 もう少し何かをしたいんだ」


息を呑むエラ達に、更にあなたは続けます。


「何だっていいんだ。

 ……実を言うと、どうせ生きるならゆっくりのんびり、羽を伸ばして生活したくて。
 そう思って神様にこの力を貰って、ここに送ってもらったんだ。

 でもその足元に苦しんでる人達が居るんじゃ、くつろごうにもくつろげない。
 君達が救われてくれないとこっちも困る。

 自分勝手な理由で悪いけどさ、君達には早く助かって欲しいんだ」


へたくそな演技でした。

こんな言い方本当はしたくないのが丸分かりです。
露悪的にするにも、もう幾らかやりようだってあるでしょう。
ですが、信仰に隔てられたあなたとエラとの間では、あなたはこうするしか無かったのです。

でもだからこそ、エラはあなたの気持ちを受け取る事ができたようでした。


エラと、そして全ての側付きは、むき出しの地面に跪きました。
明け方に降った雨がまだ僅かに残るそこは酷く汚れています。
服も脚も、瞬く間に泥に塗れてしまいますがエラに躊躇する理由は僅かも残っていませんでした。


「恐れながら申し上げます。

 ――御座いません」


エラは言います。

民の命を救うのは糧。
あなたが励むべきは日々の役目、作物の生産です。
それ以外に使う時間は今は惜しむべきだと。


ですが、と涙混じりの声が続きます。

額までが泥に塗れかねない程に、小さく小さく体を折って。


「御身のその慈悲こそが、きっと民の心を救うでしょう――」


今度こそ、領主の使いは去りました。
御使い様の聖域に、あなたはぽつりと残されます。


あなたは拳をひとつ握りました。

突拍子の無い現実に、少しずつですが心が追いついてきた。
そんな気がしたのかも知れません。


■ 機能解放


◆ メインクエスト / サブクエスト / キャラクタークエスト

領地状況、好感度、友好度、その他の条件を満たした上で特定の行動を起こすと、イベントが発生します。
イベントの発生条件は常に公開されます。



■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『救いの日』

『生活』と『健康』の合計が☆☆☆☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で月末を迎える。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

「スピナ」の好感度が40以上。
「三人がけソファセット」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。

終わり!
おやすみなさい


別に隠しておくような情報でもないので明かしますが、独占ハーレムを確固たるものにすべく、色々設定を固めてあります。


その一つで、精霊も同種で色んな子が居ます。
あなたの所にはソシャゲ時代と同じ面々が来ているだけで、他の領地ではそうではないのです。

同じトウモロコシの精霊でも、よその領地の御使いのとこでは「トモちゃん」とかが活躍しています。
そしてロコとトモちゃんは全く別の個体です。
あなたとエラが同じ人間だというのと同じレベルの繋がりしかありません。


ご安心ください。
ロコもスピナも「あなた」だけの精霊です。
本人だろうが分身だろうが、他の男と関係する事は絶対にありません。

キス? ハグ?
馬鹿を言ってはいけません。
握手だってしませんよ。

精霊は仕える御使いのものです。
これは女神様を信仰する人ならば当たり前にして絶対の決まり事です。
もし、事故で精霊の肌に手が触れてしまい、しかも異性であったなら、過激な信仰者なら不敬として手を切り落としかねません。
そのぐらいの絶対です。


また、ついでですがロコとスピナ、それからこれから来る他の精霊達も、肉体を得るのは初めての経験です。
霊体のような形でふわふわ漂っていた子は居ますが、他人と触れあうのは皆生まれて初めてです。

過去に異性と付き合った事は勿論無いですし、キスも抱擁もその先も完全な未経験です。
そして、それらを経験する事があるとすれば、相手はあなたしかありえません。
絶対です。
100%です。
NTRとか発生させるくらいならこのスレやめます。


それと、南の御使い「ユーリ」ですが大丈夫です。
プレイを進めて本人と接触する事があれば、大体の人は一目で「あっ(察し)」となると思います。
すごい分かりやすく「こいつは大丈夫」なキャラにしてありますので。
ご安心ください。


ただ、ソシャゲ時代の事なら私は謝るしかできません。
流石にソシャゲで全プレイヤーに別キャラクターを分配するのは現実的に無理です。
申し訳ありません。



では、仕事仕事……。

来年年明けに動き出す「温泉むすめ~
ゆのはなコレクション」もこのような
内容だったりなんかして(^^)


■ ソーシャルゲーム版の評価


『領主の一人娘 エラ』


デイリークエスト&ウィークリークエスト担当。
いわゆる任務娘枠。
また、チュートリアルでの操作説明も担う。

惚れない、デレない、揺らがない。
三拍子揃った鋼の少女。
夏には水着、冬にはもこもこ、新年には着物、パーティーイベントでは鮮やかなドレス。
立ち絵差分はやたらと恵まれているが、表情差分がやたらと少ない。

「御使い様の御要望は全てに優先します」に代表される様々な言動から、「お嬢様というより秩序・善の女聖騎士」ともっぱらの評判。
くっころとか言ってる暇があったら即決で自分の舌を噛み切って自軍の不利益となる可能性を消すタイプ。

溢れ出すぎている忠誠心のために一部で熱狂的な人気を誇る。
特に薄い本方面で。
大体鬼畜な御使い様に酷い目に合わされている。


精霊ではないものの、使用可能キャラクターとしての実装を望む声は根強い。
解析班によりテキストのみだが初期から「SR エラ」の存在が確認されている事も大きい。

ただし残念ながらサービス開始当初から三年以上の放置を食らっており、実装されそうでされない系のネタ扱いされてしまっている。

今日も夜8時からやりたい。
……のに残業確定済み。
遅れるかも知れません。

(だめでした)

9時からやります、ごめん


■ 5月 1週目


「「「今日の恵みに感謝します」」」


あなた達三人は夜の食卓に弾んだ声を響かせます。

南方の御使い「ユーリ」氏から届いた食材のお陰で、今日はこの生活始まって以来初めてのご馳走です。
毎日こんな調子では食べられませんが、初日くらいはと、あなた達は贅沢に頂く事にしました。


女神様への祈りを終えた瞬間、待ちきれないとばかりに真っ先にフォークを伸ばしたのは元気印のロコでした。

狙い澄ましたフォークが突き刺さったのはじゃがいも。
ほっくほくにふかされた芋の美味しさは間違いなく保証されていますが、なんとそれだけではありません。
ロコが腕を引くと、芋を追って黄色がかった白い糸が伸びました。

たっぷりのチーズ! たっぷりのチーズです、これはまずい!
食卓における七不思議の一つに数えるべきです。
とろぉりとろけたチーズは何故こうも人の胃に訴えかけるのか、世の学者達による一刻も早い究明が待たれます。


「んぅぅ~~~~~っっっ!!」


それをパクリと頬張ったロコはもうたまりません。

芋と塩の相性は語るまでもありませんが、やや塩気が強いタイプのこのチーズも同様の効果を発揮しています。
更に噛めば噛むほどあふれ出す旨みとコクが味覚をこれでもかこれでもかと蹂躙するのです。
そこを、これこれとたしなめるのは無限の包容力で受け止める芋。
母なる大地、いいえ、母なる芋によって抱き締められた「味」は暴力性を失い、ほっと息を吐きたくなるような優しさへと変わっていきました。


ロコが勢い良く二つ目の芋に手を伸ばす横で、さらりと欲しい物を引き寄せたのはスピナです。

マナーに従って皿に取ったのはつやつやとした紫色でした。
ナスです。
ナスの塩漬けです。
それはもう、つやっつやにならない訳がありません。

皿に並んだナスを、スピナはまずうっとりと眺めました。
ロウソクの火に照らされるナスの皮の独特の照り返しは彼女の琴線に触れる物であったようです。
そうしてしばらく見目を楽しんだ後、おもむろにかじり付きました。


「…………♪」


言葉はありませんでした。
しかし、ぽわわんと擬音の出そうな表情が美味を物語っています。

ナスという野菜は派手さとは縁遠い物です。
ですがだからといって主張が弱いかというとそんな事はあり得ません。

きゅっきゅっとした歯ざわりは他では味わえない個性です。
一口一口噛み締める。
それだけで口の中が楽しいリズムが刻まれるようでした。
実際、この時スピナの頭の中では自身とナスを楽器にしたアンサンブルが確かに生み出されていたのです。
補佐するのはしっかりと吸われた塩分です。
じわりじわり、スピナ達が一つ音を奏でる度に溢れる滋味は畑仕事で溜まった疲労を溶かしていくようでした。


「…………っはぁ……」


色を含んだ溜息を一つ。
細い体を喜びに震わせながら、スピナの視線は次に定められました。

ナスが並ぶ皿の横には、瓶詰めにされた玉ネギのレモン漬け。
強い酸味に彩られたしゃきしゃきの食感は、見ているだけでも十二分に想像されます。
スピナは、今しがたナスと一緒に飲み込んだばかりの唾液が再びあふれ出すのを感じました。


勿論、あなただって手を伸ばします。

あなたが選んだのは、当然これだろうという品でした。
コーンとホウレンソウのソテー。
つまりはロコとスピナです。

あなたは箸を片手に、こんもりとソテーを取り分けた小皿を持ち上げます。
すると、匂い立つ香ばしさが嗅覚を直撃しました。
……バターです。
一掴みほどもあるバターの塊をとろっとろに溶かして、二人の衣装としたのです。

まるで二人の、理性に対する猛攻そのものでした。
耐えられる理由はこの地上に存在しません。
ただでさえ魅力的、あらゆる男を一息で射落とせる二人が、今晩は香水を振り掛けた夜着をまとっているのです。
一瞬で食欲に全てを支配されたあなたは、がっつくようにかきこみました。


「……っ!!」


びりびりびり。
あなたの頬の内側は攣ったように痛みました。
転移前から数えて一月ぶりの強烈な味に、驚きおののいているのです。

しかしあなたはそれを無視し、口の中の幸福を楽しみました。
ホウレンソウのしゃくしゃくの食感、緑の味の中を泳ぎまわって黄金の粒を一つ一つ噛み潰す。
ぱつんっ、とコーンが弾けると同時に飛び出す甘みを味わうのは、どこか宝探しにも似た楽しさです。

我知らずあなたの頬はでれでれに緩みました。


あなた達の豪勢な夕食は、そうして楽しく進みました。

これ美味しいよ! と自分のフォークに刺した芋をあなたに差し出すロコ。
気が付けばいつの間にか手元の皿に盛られているレモン漬けに首を傾げれば、ふふふと微笑むスピナ。
二人に翻弄されつつ味覚を喜ばせるあなたはまさしく地上一の幸せ者です。


さて、そんな時間も永遠には続きません。
食卓の皿は徐々に空いていき、やがて最後の一掬いまで綺麗に平らげられてしまいました。

あなた達は十分に満足しながらも、僅かな残念さも感じます。
もう少しだけ楽しんでいたかったというのは三人全員の共通意見でした。


「……では、片付けは私が。
 主様とお姉様は、先にお休みください」


そんな空気をふっと途切れさせるようにスピナ。
綺麗な姿勢で立ち上がった彼女は、男の顎をくすぐるような指使いで皿を集めます。

あなたとロコは、しかしそれを手伝いました。
確かに当番の順で言えば今日はスピナが皿を洗う事となっています。
ですがそれを言うならばそもそも当番を無視して三人で作った料理だったのです。

最後も同じく三人で。
そう主張する二人にスピナが逆らう事は、勿論ありませんでした。


■ ログインボーナス


全てを終えて、後は眠るだけ。

ロコとあなたは同時にあくびをし、スピナが羨ましそうに後追いにあくびの真似をする。
おかしな光景に相好を崩したあなた達は、就寝前の祈りを捧げてそれぞれの部屋に戻ります。


そんな微笑ましい家族の肖像を、女神像は微笑を湛えて見送っていました。



>>下1 コンマ判定


女神像

「今日の運勢は……おっと44! ゾロ目ではないですか!」





誰も居なくなった部屋の中。
女神像が淡い光を放ちます。

光はふわりと宙を踊り、蛍のように飛び交って、やがてぽとりと落ちました。
今は夜。
誰も見つける者の居ない寂しさに、それは何だか不満そうにも見えました。





明けて翌日。

夜も早ければ朝も早い。
健康優良児のロコは今日も誰より早く起き出しました。

部屋でぼんやりしていても仕方ない。
だけれど居間に出ても誰も居なくてつまらない。
本当はあなたを起こしにいきたいけれど、まだもう少し早すぎる。
そんな心持ちの、ちょっと微妙なロコだけの時間帯です。

ですが今日ばかりは、ちょっと事情が違う事になるようでした。

足先に何かを蹴り飛ばした感触に、ロコは不思議に思います。
昨日の晩は確かにしっかり片付けました。
ゴミの一つも残した覚えはありません。

はて、それでは一体何が?

ロコは床の上を隈なく探し――。


「ダンナサマー!!
 起きて起きてー!!」


すぱぁん!
そんな音が聞こえる程の鋭さで温かいシーツは剥ぎ取られました。
寝るために薄着となったあなたに朝の冷え込みが直接襲い掛かります。

眠りから強制的に覚醒させられたあなたは状況の理不尽さに混乱……する暇だってありません。


シーツの代わりに、あなたを包み込むものが飛び掛ってきたのです。
褐色の、すべすべとした人の肌。
快活な笑い声を上げるロコに他なりません。

余りに体に悪い衝撃でした。
心臓がドゴンと音を立て、一瞬で残った眠気が消し飛びます。
あなたに絡みつく手足、胸に押し付けられるたわわ、ぺっとりとくっついた頬。
ロコだけでなくあなたも薄着の今、伝わる感触は普段の比ではありませんでした。
ただでさえ朝のために大変なアレが更にぐんぐんアレになった事に、ハイテンションのロコが気付かなかったのは全く幸運でしょう。


「ちょ、ロ、ロコ!
 何が……というかちょっと離れて!」

「えー、どうしようかなー。
 ……やっぱりだめー!」


ロコは焦るあなたに頓着せず、さらにぎゅうぎゅう押し付けます。
んふふえへへ。
嬉しそうな声は留まる所を知りません。


全身をあなたに擦りつけ続けるロコはまさに生きる危険物でした。
このままでは確実にどうにかなってしまうでしょう。


(というかもう本当に危ない。
 具体的には、暴発まで後十秒……!)


本格的に慌てたあなたは、対ロコにおける最終手段を取る事としました。
すなわち、反撃です。


幸いにして自由だった両腕を、まずはロコの背と後頭部に回します。
必要なのは勢いです。
羞恥とためらいを今ばかりはと追いやって、あなたはロコを力いっぱい抱き締めました。

そしてそのまま。


「えっ。
 ……ん、ふ、ぅうぅぅぅ……んー!!??!?」


スピナ仕込みの濃厚な奴をお見舞いしました。

スピナは平気な顔でするこれは、ロコには刺激が強すぎるのです。
最近は対抗するようにあなたと練習を重ねていますが、まだまださっぱり免疫不足。
今朝もまた、ロコの敗北と相成りました。


残り一秒で耐え切ったあなた。
オーバーヒートで煙を上げるロコ。

二人は抱き合ったまま、動きを止めました。


「それで、何があったの?」


ロコはぷるぷる震えながら、顔を隠すように両手を出します。
開かれた掌からこぼれたのは、淡く光る一粒の種。


「えっと、それは……?」

「…………ぉちてた…………」

「あ、うん……あー、見つけてくれて、ありがとう?」

「…………うぅ、ぉちてたぁ…………」


ロコはもう駄目なようです。

無くさないよう種をしっかり拾い上げてから、あなたはだめにしてしまったロコの介抱にあたるのでした。





■ アイテム獲得

『輝く種 x1』


■ 5月 1週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆
『健康』 ☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作物状況(2/2) 拡張費用『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv2 生活+1 25金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv2 健康+2 30金貨/週


◆ 精霊リスト(2/3) 拡張費用『300金貨』

『ロコ』 ノーマル トウモロコシの精霊 好感度25
『スピナ』 レア ホウレンソウの精霊 好感度27


◆ 倉庫

『405金貨』
『輝く種 x1』


あなたは新しい種を手に、考えました。

ロコと二人で居た時よりも、スピナを合わせて三人になってからの方が農作業に取られる時間は増えました。
ごく簡単な算数の計算です。
畑は二枚になったのに、人手は一人しか増えていないのです。

この問題は新しい召喚によって解決できるでしょう。
畑からあぶれる精霊が出ても、決して無駄にはなりません。



■ 作付されていない精霊の扱い

手の空いている精霊は、農作業を積極的に手伝います。
人数に応じて作物の獲得金貨量にプラス補正が与えられます。
また、人数が増えすぎる事によるデメリットはありません。


ですが勿論、急いで召喚をしなくてはならない決まりもありません。
美味しい食材を提供してくれた南方の御使いとの友好や、ロコやスピナとの仲を深めるのも良い事です。

あなたの急務は作物作りしかなく、それは他の何とも平行して行えるのです。
今週何をするかは、当然自由に決めてしまって構わないでしょう。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 施設拡張

◆ 文通



>>下1


あなたは地下室に向かう事としました。

折角の幸運です。
女神様に祝福されているような気がする今ならば、何だかすばらしい結果になるように思えてなりません。
種を握る手にも力が入ります。
SR……いいえ、それとも未だ引き寄せた事の無い堂々たる最高レアリティSSRだって夢ではないかも知れないのです!


意気揚々と、あなたはロコとスピナを呼び寄せました。
そうして二人を伴い、あなたは階段を颯爽と降りていきます。


召喚陣を前に、あなたは二人へと振り返りジャンケンを繰り返しました。
勝ち、勝ち、負け、あいこ、勝ち、あいこ……。
何度も何度も、何度も何度も。

怪訝そうな二人に頭を下げ、これは必要な事だからと説得します。

勝ち、負け、負け、負け、あいこ……そして、勝ち、勝ち、勝ち!


ここだ!
叫んだあなたは召喚陣の上へと手を伸ばします。

数多あるガチャ作法の一つ、その応用。
名付けてジャンケン教!
自身の運が最大化した瞬間を見極め、最良の結果を引き寄せるための儀式なのです!


握った拳が開かれ、種が落ち、そして発せられた光は――。



01~50 ノーマル
51~85 レア
86~00 Sレア
ぞろ目 SSレア

>>下1 コンマ判定


カァン!


……。
…………。
………………。

そこで、音は止まりました。
召喚陣の光は銀。
まごうことなきただのレアです。


しかし、あなたが落ち込む事はありませんでした。

何となく分かっていたのです。
来るかも知れない、そう思った段階であらゆるガーチャーは負けている。
物欲センサーとはそういうものです。

それにそもそも、現実となった今ではレアリティなどただのあなたの拘りでしかありません。
最も重要なのは召喚される精霊の人格です。
高レアだから素晴らしい人、低レアだから普通の人、そんなくくりなどどこの世にも存在しません。

……そうはいっても、つい高レアリティを期待するのは元プレイヤーとしてのどうしようもないサガなのですが。


気を切り替えたあなたは、光の中を見つめます。
さて、今回現れるのは一体誰か。

(できれば、良く知ってる子が来てくれると嬉しいけど……)

そう思っても、結局全ては運なのです。



01~10 カボチャ
11~20 トマト
21~30 ニンジン
31~40 サクランボ
41~50 イチゴ
51~60 ワサビ
61~70 パプリカ
71~80 ナス
81~90 柚子
91~00 ダイコン



>>下1 コンマ判定


「あら?」


ふと、光を見つめていたスピナが声を上げます。
どうかしたかと視線をやれば、不思議そうな表情の彼女は耳を澄ませているようです。
何かが聞こえる、そういう事でしょうか。

あなたも興味を引かれ、神経を耳に集中させてみます。
すると。


しゃん。


小さな音が聞こえました。
音の出所は光の中。
小さいけれど確かに何度も、しゃんしゃんしゃんと続きます。
鈴の音だと、あなたは思い至ります。





――全身から、一瞬で血の気が引きました。

最低最悪。
最も引いてはならない相手を引き当てた。
その確信があなたの心臓を鷲掴みにしたのです。


「あら、わたしを呼んだのね?」

しゃん。

「そう、わたしを呼んだのね?」

しゃん。

「気になるわ、一体どんな人かしら?」

しゃん、しゃん。

「だいじょうぶ、きっととってもすてきな人よ?」

しゃんしゃんしゃん。

「「あぁ、はやく光がはれないかしら!」」



声まで聞こえるようになってはもう間違えようもありません。

舌ったらずな甘い声。
意識を寄せる鈴の音。
ぴったり重なる二人となれば、最早一組しかありえません。


「「はじめまして、おにいさま」」


ついに光が晴れ、彼女達が姿を現しました。

赤が基調のゴシックロリィタ。
襟元を飾る、さくらんぼを模した鈴飾り。
眠たげな瞳の奥にはしかし、好奇の光をたっぷり宿して。

可愛らしさにロコとスピナは声を上げました。
しかし、あなたはそれどころではありません!


「わたしは、さくら」

「わたしは、ちえり」

「「すえながく、命おわるまでいっしょにいさせてくれるかしら?」」



だって彼女達は、あなたの半分少々の背丈しかないのです……!


ロリサンドイッチ。
催眠音声ロリコンビ。
だぶるぷにあな。

数々の気持ち悪い通称を送られ続ける、あらゆるロリコン御使いが血眼になって探し求めた精霊。
それこそがこの二人。


あなたは目の前が真っ白になるのを感じました。

おまわりさんこいつです。
そんな言葉が頭の中をぐるぐる回ります。


「ねぇ、おにいさま、さっそくだけど」

「えぇ、おにいさま、いきなりだけど」

「「キスがとどかないから、しゃがんでくれる?」」


(事案発生……!!)


無邪気に言い放つ双子姉妹に、あなたがクラリと眩暈を起こしたのは、まぁ無理からぬ事でしょう。

フラグになるよう書きはしたけど、本当にあなたの性格的に一番キツイとこ引いてて草生える。
続きは明日に回します。

あと、ガチャ仕様ですがジャンルや性格で被りを起こす所は被り具合の大きい順に入れ替わります。
ご了承ください。


■ ソーシャルゲーム版の評価


『サクランボの精霊 さくら&ちえり』


ロリサンドイッチ。
催眠音声ロリコンビ。
だぶるぷにあな。

数々の気持ち悪い通称を送られ続ける、ロリコン御使い垂涎の双子精霊。
全精霊の中でも一、二を争う犯罪臭を放つ。
「さくらんぼ農家にだけはコラボを持ちかけるな、いいな、絶対にだぞ」と恐れられている。

「きす☆ゆあ」においては唯一の二人一組のキャラ。
百合派からは他の二人組実装を要求する際の旗印にされる事も。
このせいで百合百合姉妹と勘違いするプレイヤーも多いが、実際のゲーム本編での描写では恋愛感情は御使いに向いており、姉妹仲に妖しい部分は一切無い。


圧倒的犯罪臭。
百合派の担ぎ上げ。
これらが原因でマイナスの印象操作に利用されたり、アンチの槍玉にされるケースが多発しているという問題に晒されている。

一部の「きす☆ゆあ」スレでは殆どNGワード化しつつある。
サクランボの話題を出した新参と、過剰反応する自治、便乗する愉快犯による荒れは最早定番。


なお、本人達の専用キャラスレだけは平和そのもの。
書き込み内容が気持ち悪い方向に振り切れすぎていて余所者が踏み入れないため。
もし外部の人間が書き込んでも大抵は相手にされず、相手にされたとしても興奮剤として利用されるのみ。

「さくちえに頼み込んで×××××譲ってもらって××××××にして×××。
 ×××っ×××って×××みたら×××××××××美味しい。
 次の日の×××は桜色だった、二人と一つになれた気がして最高に嬉しかった」

×××の内容は想像にお任せするが、常人ならば盛大に吐き気をもよおす理解不能の性癖暴露を前にしては、最早逃げ帰るしかないのだ。

明日は仕事休みなので、人が居ればちょっと早めに夜7時くらいからやるかも。
今度こそおやすみなさい。


■ ソーシャルゲーム版の評価


『南方の御使い ユーリ』


登場しない。
ので、ここではフレンド機能について解説を行う。



『フレンド領地』


「きす☆ゆあ」では領地が回復した後、町作りを行えるようになる。
自宅の改造と同じく箱庭要素で、いわゆるシムシティ的な機能。

町に存在する施設を精霊と一緒に訪れる事も勿論可能。
中には一枚絵を用いたイベントが発生する場合もあり、町の発展とデートは目玉機能の一つとなっている。

ただし無条件に施設の設置を行えるわけではなく、様々な条件を満たす必要がある。
例えば「酒蔵」を作りたければその原料と成り得る作物、例えば「米」や「ブドウ」を育てていなければならないし、
「ラーメン屋台」を営業させたければ「小麦」の生産を最低条件に「料理研究」を重ねていく必要がある。
「プール」ならば「土地の浄化」を繰り返して水の安全性を最大まで高めなければならない。

これら全てを自分一人でまかなうのは現実的ではなく、単独では町の機能は大きく制限される事となる。

そこで「フレンド領地」の出番。
フレンド関係を結んだ領地からは文化や作物の一部が流入するという設定で、自領が条件を満たしていなくとも施設設置が可能になる。

ゲームプレイ人口が増加した今では自由に発展させた自領の情報を募集スレに載せフレンド申請を待つ(あるいはその逆)というのが主流になっているが、
黎明期にはあらかじめ複数人で話し合い、互いの役割分担を決めて領地を成長させていくという形が流行っていた。
古参御使いはこの時期こそが一番楽しかったとちょくちょく懐古し、新規組にうざがられたりしている。

やれそうなので7時からやります


あなた達は上階に戻り、テーブルを囲んでいました。
そこに明るい話題はありません。


「「…………」」


さくらとちえり、同じ顔の二人はあなたをじっとり睨みます。
愛らしいぷにぷにほっぺも膨れています。
小さなおててはスカートをぎゅっと握って、椅子が高くて床まで届かない脚は不機嫌そうにゆらゆらと。

それもそのはず。
折角呼ばれて出てきたのに、お役目を果たさせてもらえないのです。


「なんでだめなの? どうしてかしら?」

「おちこぼれなの? いらない子なの?」


ぴったり並んで座った双子はぷりぷりと怒っていました。
言葉だけを見れば不安げですが、声に含まれたものは違います。

とっても偉くて選り好みが大の得意な御使い様は、こんなちんちくりんとは愛を交わしてくださらないのね?

そうあなたを責める色しかありません。


うぐっ、と詰まるあなたです。

あなたからすればどうしようも無い事です。
幼女とのキスなど、言い訳がまるで通用しない豚箱にぶち込まれてしかるべき立派な犯罪そのものなのですから。
あなたは顔を上げて、さくらとちえりに目をやります。

装飾過多な赤いゴスロリに包まれた体にはまるで起伏なんてありません。
大きなリボンで飾られた薄桃色のボブカットは幼女特有の柔らかさが見て取れます。

どこから見ても小学生です。
それも、どう間違えても中学生の可能性を疑われない程度の学年の。
昨今の時勢を考えればこうして見ているだけでも場所によっては通報されかねません。

そんな二人にキスをする?
無いです。
ありえません。
そこまで良心を捨てた覚えは有りませんし、幼な子に欲情する性倒錯者でも勿論ありません。


しかし、あなたに味方は居ないのです。


「さくらちゃんと、ちえりちゃんは、ほら……小さいから。
 キスとかそういうのはまだ早いと思うんだ。
 せめてもっとこう、ちゃんとしたキスの意味が分かる年まで待った方がいいんじゃないかな」


と、あなたが当たり前の事を言ってみても。


「小さくても精霊だよ?
 キスの意味はちゃんと女神様に教えてもらってるよね」

「仰っている意味が良く……。
 私達精霊は年も取りませんし」


さくらとちえりを慰めるように寄り添ったロコとスピナが不思議そうに首を傾げます。

分かってもらえない。
文化が違う。
絶望感に、あなたは呻りました。


(どうしてこんな事に……!)


あなたは頭を抱えますが、視点を精霊側に変えれば当たり前の事です。

精霊は皆、人々を救うようにと女神様にお願いされてやってきます。
大なり小なり与えられた御役目を頑張ろうとやる気になって現世に現れるのです。

それなのに肝心要の御使い様に「君は駄目」などと言われたらどうなるか。
あなたをじっとりと見つめるさくらとちえりの視線がその答えでした。


また、この世界にはあなたの常識にあった法律がありません。
未成年の異性との――相手の意思を無視した場合は当然別として――接触は特段禁止されておりません。
特に貴族の間では一桁の年齢で嫁入りするケースだって多くはありませんが存在します。

そもそも、御使い様を法律で縛る事は許されません。
仮にもし青少年保護育成条例がこの世界にあったとしても、御使い様はそんなの無視してやりたい放題できるのです。
念のため付記しておくと、女神様は「良い人」しか御使い様に選ばないので、問題はぜんぜん起こっていないようです。


つまり、今のあなたはごく個人的な好みの問題で大事なお仕事をやりたくないと駄々をこねているようにしか、彼女達には見えないのです。


そうこうしている間に、事態はいよいよ深刻になろうとしています。

すん、と小さな音が聞こえました。
双子の片割れ、ちえりの方が段々涙目になってきています。

あなたを責めるために皮肉で口にした「おちこぼれ」「いらない子」の言葉。
もしかしたらそれは本当なのではないかと考え始めてしまったようです。


「……わたしじゃだめなの? なんで、いけないの?」


言葉にする度に、ちえりの悲しさはどんどん膨れ上がります。


「ちえりちゃん!
 そんな事ないよ、きっと大丈夫だよ!」


ロコが叫んでちえりを抱き締めました。
少しでも安心できるようにとぎゅうぎゅうに。
ちえりもまた、すがるように力いっぱいロコのシャツを掴みます。
その隣では釣られて俯き始めたさくらの手を、しゃがみこんだスピナが優しく握っていました。


……完全無欠に、あなただけが悪者でした。

部屋の空気はいよいよ悲愴な物に変わりつつあります。
二人の泣き声が聞こえ出すまで、そう時間は無いでしょう。

あなたは冷や汗をだらだら流して、どうすればいいか必死に考えました。


『選択肢』


◆ 諦めて二人のキスを受け入れる

◆ 一から事情を説明する

◆ ロリコン性犯罪者になる覚悟を決める

◆ その他 (自由記述)



>>下1


あなたは自分と精霊達の常識の齟齬を埋めなければならないと決意しました。

どうか話を聞いて欲しい。
そう真摯に頭を下げて、話し始めます。

あなたが以前違う世界で暮らしていた事。
そこでは小さな女の子にキスをすると、偉い人達に怒られてしまう事。
この世界では怒られないとしても、実際にやるには物凄いためらいがあるという事。
そして勿論、さくらとちえりには何の落ち度も無い事。

ゆっくりゆっくり、出来るだけわかりやすい言葉を選んで話し聞かせます。


「……でもそんなの、信じられないわ」

「べつの世界なんて、見たことないもの」


しかし、二人は納得してくれません。
話を聞いている間に少しは落ち着いてくれたようですが、瞳には疑いが宿っています。


二人の言う事ももっともです。
あなた自身、自分の身で経験していなければ異世界転移なんて信じなかったでしょう。

あなたは大変に困ってしまいました。
諦めてキスを受け入れて済むならまだ良いのですが、こうこじれてはどうしようもありません。
椅子の前に膝立ちになり視線を合わせたまま、あなたは必死に納得してもらう方法を探ります。

――と、そこで口を挟む者がありました。


「ね、さくらちゃん、ちえりちゃん。
 ダンナサマの言ってる事、本当だよ?」


二人の肩を抱き、頬を寄せてロコが言います。
猜疑の視線は今度はロコにも向けられました。
もしかしてこのお姉さんは騙されているのだろうか?
そういう表情です。

それでもロコは負けません。


「大丈夫、こうすればすぐに分かるよ!」


とんっ。

ロコが二人の背中を押します。
小さな悲鳴を上げて投げ出された二人は、自然と目の前に居たあなたに抱きとめられました。


何とか受け止めたあなたは焦っていました。
全く予想もしていなかったので、抱きとめられたのはたまたまです。

腕の中の二人も同じようでした。
びっくりした様子のまま、何が起こったのかという顔をしています。
これはいけないと、あなたは二人に大丈夫だよと声をかけて優しく背を撫でました。

そしてロコに、いきなり危ないじゃないかと抗議します。
あなたが失敗していれば転んで怪我をしていたかも知れないのですから、ロコも素直に謝りました。


「……あの、おにいさま?」


と、幼い声がかかりました。
腕の中の二人のどちらが発したのかは分かりませんが、困った様子であなたを見上げています。

そうでした、今はそれよりも二人に説明しなければ。
あなたは思い出し、そのまま話を続けます。


「本当に、ごめん。
 二人は何も悪くないんだ。
 変なこだわりをずっと引きずってる俺が全部悪い。

 君達を嫌ってるなんて事は、何があっても絶対に無い。
 命を賭けたって良い」


二人に目を合わせ、力強く背中を支えて、語りかけます。


「ただ、心の準備ができてないだけなんだ。
 本当に申し訳ないと思ってる。

 あと少しの間だけ、時間をもらえないかな?」


どうか心が届いてくれと、あなたは祈ります。


「……ほんとうに、わたしたちの事キライじゃない?」

「ありえない、絶対にそんな事思わないよ」

「……ちゃんとまってたら、いつかキスしてくれる?」

「う、うん……そうだね、約束する。
 遠くない内に、君達とキスして種を作ろう」


二つの質問を終えて、双子は顔を見合わせます。
言葉はなく、視線だけで会話をしているようでした。

そうしてほんの少しの時間のあと。


「「……だったら、信じてあげてもいいわ」」


やや不満を残した顔ですが、二人は納得してくれました。


残っていた涙を拭い、双子はあなたから離れます。

あなたはほっと安堵しました。
説得には成功し、幾らかの時間を得る事が出来ました。
これで後はあなたが気持ちを、というか常識を切り替え、役目を全うすれば良いだけです。

ただ、同時に何が功を奏したのかとあなたは首を捻ります。
言葉にした内容は、最初と殆ど変わっていなかったのです。

その答えは、すぐ目の前からもたらされました。


「お姉ちゃんの言った通りでしょ?」

「えぇ、おねえさんの言うとおりだわ」

「そう、おねえさんの言うとおりだった」


楽しそうに笑いながら、ロコは双子の真似をします。
最後の言葉は、三つの声がぴったり重なったものでした。


「「「あんなに優しい腕の人が、嘘なんかつくわけがない」」」


……途端に、あなたは気恥ずかしくなりました。
思わず自分の腕を眺めて、それからドカッと床にあぐらをかきます。

流石はお姉様。
そんな風にのん気に呟くスピナの声を背景に。
照れ隠しに頭を掻くあなたを皆は微笑ましく見ていたのでした。


■ 5月 2週目


今日もまた、トウモロコシは高く背を伸ばしています。
すくすくすくすく。
たっぷりのお日様と霊脈の力が注がれた作物の生命力はちょっとびっくりするほどです。

畑の真ん中に入ってしまうと、もうどちらがどちらか分かりません。
少しずつトウモロコシを収穫して道を作るしかなくなってしまいます。

そんな森の中を、楽しそうな笑い声が駆け抜けていきます。


「あはははは!
 ほーら捕まえちゃうぞー!!」

「とってもこわいわ、どうしましょう!」

「とってもこわいね、こっちににげよ!」

「「おにさんこちら、手のなる方に!」」

「あーはー! 待ぁてぇー!!」


ロコと、彼女から逃げるさくらとちえりです。
元気いっぱいの三人にとって、ここは最高の遊び場です。

長い茎をかきわけかきわけ、楽しい鬼ごっこの時間のようです。


あなたはそれを微笑ましく見送ります。

走り回る三人は、遊びながらもお仕事を怠ってはおりません。
手当たり次第、気付いたものをもぎ取っては背負ったカゴに放り込んでいます。
効率の良い作業とは言えませんが、別に諌めるほどでも無いでしょう。
あなた達の作業にはまだ余裕があり、時間に追われているわけでは無いのです。


「もうすっかり仲良しですね」


近くで作業をしていたスピナがいつの間にか隣に立っていました。
あなたと同じように目を細めて、三人が走っていった方向を見やっています。


「うん、ロコが子供好きで良かった。
 俺だとあそこまで上手くやるのは難しそうだから」

「私も子供の気持ちを察するのは、どうにも苦手です……」


そんな話をしている間に、どうやら三人はクライマックスです。


「捕まえたァー!!
 えへへー! ちえりちゃんゲットー!!」

「きゃぁっ!
 あぁ、わたしはもうだめよ。
 さくらはせめて何とかにげて!」

「そんな、ちえりをみすてて行けないわ!」


台詞は悲壮ですが、声色は楽しそうに弾んでいます。

今度は人質ごっこに派生したのでしょう。
ちえりと抱えてぐへぐへと笑うロコへと、トウモロコシの杖を構えたさくらが説得を試みるつもりのようです。


「…………」


と、スピナの目がなにやら輝いていました。
するりとあなたの懐で入り込み、情熱的にあなたの首へと腕を絡めます。

あなたの背筋はぞくりと震えます。
スピナの瞳は潤み、頬は赤く、恋する乙女のような有様でした。
普段の泰然とした様子とはまるで違います。

更に。


「 "……あなた、この世の何よりも愛しています" 」


心臓が止まるかと思いました。
明確に、これ以上無い愛の告白です。

それと同時に、あなたの唇はスピナによって貪られました。


呆然としながらも、あなたはスピナに応えます。
これだけハッキリと想いを伝えられて、何もせずにいられる程あなたは情に薄くありません。
細く、しかし柔らかい腰と背を抱き寄せ、差し込まれる舌を絡め合いました。


熱く、甘い。
それがあなたが初めて能動的にスピナに応えた感想でした。
一秒毎に体温は高まり、触れている箇所は今にも燃えてしまいそうです。

しかし、離れたいとは微塵も思えません。
蜜のようと思える唾液は、麻薬のようですらありました。
混ざり合って口の端からこぼれる滴がもったいないと感じます。


そんな時間がどれ程経ったでしょうか。


「…………ぁ」


あなた達の唇はようやく離れました。
つぅ、とその間を結んだ橋が伸び、すぐに切れ、スピナが残念そうに声を上げました。


「…………」

「…………」


あなたは何を言えば良いか分からず、スピナと見詰め合います。


しかし、ずっとそうしている訳には行きません。

あなたは意を決して口を開きます。


「……ありがとう、スピナ」


そうして、あなたはスピナの告白を受け入れました。
あなた自身、スピナに対して恋愛感情と呼べるだけの重さの気持ちがあるかは自信が持てません。
ですが、自分を選んでくれるならば受け入れて幸せにしようと思う事は出来ました。

が。


「?」


スピナの方は良く分かっていない様子です。

あっ、とあなたは察しました。
これはまた、いつも通りに何かがズレた結果なのだと。


苦労して聞き出せば、やはりそうでした。
遊ぶ三人を見ている内に、スピナはこう考えたようです。

ごっこ遊びはとっても楽しそう。
私も主様と何かやってみたい。
そういえば子供達を並んで見守る今は夫婦のようではないでしょうか。
新婚夫婦ごっこ……そういうのもありなのでは?

そうして、思いつきに演技力が乗せられた結果がアレでした。


「思いの外、良いものでした……。
 主様、また今度お付き合いいただいてもよろしいでしょうか?」


出来れば頻度は控え目に。
そう苦笑するほか無いあなたです。


どうやらロコ達の方も一段落つきました。
説得に失敗し、まとめて捕まったさくらとちえりは、ぐるんぐるんと振り回されます。
きゃあきゃあと楽しそうな悲鳴と共に、今日も一日は楽しく過ぎていくようです。



■ 好感度自動上昇

『ロコ』

25 + 1 + 1 = 27

『スピナ』

27 + 1 + 1 = 29


■ ログインボーナス


収穫を終えて戻ったあなたは、女神像の前で跪きました。
心の中で懺悔します。

己ただ一人だけの常識に囚われて精霊に涙を流させてしまったのです。
精霊の母とも呼べる女神様に頭を下げるのは、当然の事でありました。



>>下1 コンマ判定


あなたの前に、ふわりと何かが舞い降りました。
手にとってみれば、どうやら一枚の羽のようです。

おや、とあなたは懐かしく思いました。
ゲームの時にはデイリークエスト報酬で何度も見た物です。
「女神の羽根」
女神様の背に生えていると言われる羽根の内の一枚とされています。

これには女神様の力が篭っています。
精霊達の誰かにプレゼントすれば、きっと喜んでくれるに違いありません。


きっと、女神様は赦してくれたという事でしょう。

あなたはもう一度、女神像へと深く頭を下げました。



■ 女神の羽根

「好感度+1」の効果を持つアイテム。
次回交流した精霊に自動的に渡される。
複数所持している場合は1個ずつ消費される。


■ アイテム獲得

「女神の羽根 x1」


■ 5月 2週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆
『健康』 ☆☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作付状況(2/2) 拡張費用『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv2 生活+1 30金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv2 健康+2 35金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1 嗜好+2 20金貨/週


◆ 精霊リスト(3/3) 拡張費用『300金貨』

『ロコ』        ノーマル トウモロコシの精霊   好感度27
『スピナ』      レア    ホウレンソウの精霊  好感度29
『さくら&ちえり』  レア   サクランボの精霊    好感度10


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度10


◆ 倉庫

『470金貨』

『女神の羽根 x1』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『救いの日』

『生活』と『健康』の合計が☆☆☆☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で月末を迎える。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

「スピナ」の好感度が40以上。
「三人がけソファセット」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


あなたはサクランボの事を考えました。

サクランボは小さく、カロリーも低く、現状では余り役に立ちません。
甘味による幸福よりも、お腹を膨らませる充足こそが望まれているのです。
さくらやちえりに種を作ってもらうのは当分先になるでしょう。
あなたの心にとっては、幸いな事ではあります。


ほっと息を吐いたあなたは考えました。
さて、今週は何をするのが良いのでしょうか。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚 (選択不可)

◆ 作付変更

◆ 施設拡張

◆ 文通



>>下1


あなたは南方の御使いユーリへと手紙をしたためる事にしました。

フレンド、他の御使いと友好を深める事は自領を強く支える礎となります。
早めにやっておくに越した事は無いでしょう。
また、当たり前の礼儀として贈り物のお礼はしっかりしなくてはなりません。


エラから渡されていた便箋を前にして……ハッとあなたは気付きました。

こういった物は形式が重要なのです。
最新の注意を払って文章を作っていく必要があるのですが、あなたが持つのは現代日本の常識です。
この異世界ファーミアでもそれがそのまま通じるとは限りません。


むむむ、とあなたは唸りました。

これは困りました。
解決するために、何とか手段を講じる必要があるでしょう。





『選択肢』


◆ 開き直っていっそフランクな手紙を書く

◆ 誰か分かりそうな者に相談する

◆ ユーリからの手紙を読み返してみる

◆ その他 (自由記述)


>>下1


そういえば手本となる物があるじゃないか。
あなたはそう思い出し、ユーリからの手紙を引っ張り出しました。

これが届いてからそう時間は経っていません。
時候の挨拶はそのまま使える可能性は高いですし、本題に入る前の前置きも参考になるでしょう。

受け取った手紙を横に置き、あなたは筆を進めました。





それからしばらく後、あなたの元へ新しく手紙が届きました。

ユーリからの返信です。
さて、自分の送った手紙は正しく、失礼無く書けていたのか。
あなたは少し緊張しながら封筒を開きました。


……開いてすぐに、あなたは失敗を悟りました。
手紙はこう始まっていたのです。


『僕は怒っていないし、失礼だとも感じていない。
 そして、余り深く気にしてひきずるような事でもない。
 これは間違いなく僕の本心であり、君にはこれを前提として以下の文章を読んで貰いたい。

 まずは老婆心ながら君に忠告したい。
 あの時候の挨拶はほんの短い期間にしか使えない物なんだ。
 君が筆を執っただろう時期とはもうズレてしまっているよ。
 それに、あの頭語と結語は目上の人間から目下の人間へ送る場合にだけ使って良い事になっている。

 もし僕以外の御使いに手紙を送ろうと思っているのなら、一旦誰かに教えを受けた方が良い。
 もう送ってしまったのなら出来るだけ早い内に弁解するか、まだ届く前なら早急に取り戻すべきだ』


これはどうやらやってしまいました。
あなたは頭を抱えます。


『君はどうやら文章作法には余り通じていないようだね。
 知らなかったとはいえ、君の勘違いの原因となってしまった事は謝罪したい。

 これからは僕達の間では堅苦しい形式にとらわれず、こんな風に普通の言葉でやり取りをしようか。
 その方が誤解も生まれないし、互いに距離を近く感じられると思うんだ。

 繰り返しになるけれど、本当に気にしなくて良い事だよ。
 僕は君以外の御使いとも交流があるけれど、大体皆最後にはこんな感じになるんだ。
 君との場合はそれがちょっと早かっただけという事でどうだろう』


完全に気を使われてしまっています。

相手が本当に怒っていなさそうな点だけが救いでした。


フランクな言葉遣いで書かれた手紙を、あなたは読み進めます。
大体は当たり障りの無い内容でした。

贈り物の礼をユーリは鷹揚に受け入れてくれました。
また、将来領地が回復し安定したならば是非訪問したいと綴られています。
どこにも友好的な言葉が並び、あなたとユーリの間に僅かですが友誼が結ばれた事が確認できました。

そうして最後に、あなたをほっとさせる部分がありました。



『最後に、君の失敗は悪い物じゃなかったと思う。

 文章に慣れていない君が、それでも懸命に頭をひねって礼儀を払おうとしてくれた。
 僕はそこをこそ評価したいと思っている。
 結果的に間違ったものだとしても、君の姿勢と心は伝わってきたよ。

 君とは今後も仲良くしていきたい。
 僕にそう思わせるには、今回の手紙は十分な物だったと、決して忘れないで欲しい。

 どうかこれからよろしく。
 共に長く、平穏に発展していける事を願っているよ』


あなたは手紙を折り畳み、大事に机にしまいました。

ユーリの人柄は十分に知れました。
他者を許し、助言を与え、失敗をただ失敗と片付けずに何かを読み取る。
女神様に選ばれている時点で当たり前なのですが、十分な人格者と言って良いでしょう。
聞けば、あなたが降臨する前にこの領地が全滅していなかったのも、ユーリの助力があったためとの事でした。

友人となるのに全く抵抗はありません。
むしろ頭を下げたいくらいだと、あなたは頷きました。





……そうして最後に、あなたはふと思います。
御使いという事は精霊のパートナーという事です。
であれば男であるはずなのに、それにしては可愛らしい丸文字だったな、と。

そんな考えをあなたは頭を振って追い払いました。
字の癖など誰にもあるものです。
それを笑うような事など、決してして良いものではありません。


あなたは反省し、椅子から立ち上がりました。

今日の農作業はまだ残っています。
畑に出ている四人と合流し、今日も仕事に励むとしましょう。


■ ユーリ友好度上昇


グッドコミュニケーション!

最低保証友好度 +4


>>下1 コンマ下一桁が更に加算


■ ユーリ友好度上昇

10 + (4+7) = 21


■ 5月 3週目


「まだかしら? まだかしら?」

「すぐよ、きっとすぐよ」

「あぁ! 見てさくら! もしかして今触れたのかしら!」

「えぇ! 見たわ見たわ! たしかに今触れたみたいよ!」

「「とってもすてき! あれがお役目のキスなのね!」」


……あなたは酷く落ち着かない心地でした。

あなたとロコ。
身を寄せ合う二人の周りをお子様達がパタパタクルクル駆けています。

キスには十分慣れました。
濃厚に舌まで絡めるならともかく、唇を重ねるだけならいちいち騒ぎはもうしません。
しかし、囃し立てられながらとなると中々辛いものがありました。


「えへへー、ぶい!」

「「ぶい!」」


しかしロコは全然平気な顔です。
むしろ普段よりも余裕ありげな感じです。
得意げにピースサインを出し合う姿はもうとんでもなくご機嫌でした。

ロコの恥じらいのラインが分かりません。
ディープは駄目なのに人に見られながらは大丈夫。
一体どうなっているのかと問いただしたい気分です。


「もっと見たいわ!」

「べんきょうするの!」

「「もういっかい! こんどはもっと長いのがいい!」」

「えー、しょうがないなー」


しょうがない、とか言いつつロコはやたらと楽しそうです。
たっぷり実ったたわわな果実をあなたに押し付け、至近距離から上目遣いです。


「ほらダンナサマ、お勉強だから仕方ない仕方ない。
 んー♪」


きゃー♪ との黄色い声を背景に、いつかのようなキス待ち顔です。

もうトウモロコシの種は生まれたのですが、あなたは観念して顔を近づけました。
お役目の関係無いキスは、幼い要望通りに少しばかり長く交わされました。



■ 好感度自動上昇

『ロコ』

27 + 1 + 1 = 29

『スピナ』

29 + 1 + 1 = 31


◆ 作物レベル上昇

ホウレンソウLv3 『健康』+3 30金貨/週


■ ログインボーナス


お勉強を終えた二人を連れて、あなた達は食卓につきました。
料理当番だったスピナが用意したあっさりめの食事を前に、女神様に祈ります。

今日も生きる糧を与えて下さりました事に、感謝いたします。

皆の声が綺麗に揃いました。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は78……78です……。
 良き祈りです。
 これからも仲良く過ごすのですよ……すよ……よ……」





と、あなた達の手元に光るものが、料理のお皿には入らないようにチャリンチャリンと降り注ぎました。
これはなんと金貨です。
女神様が送って下さったのでしょう。


「「おかあさまのおこづかいだわ!」」


歓声を上げてさくらとちえりが喜びます。
自分の前に落ちた金貨を手に、何に使おうと相談しています。

可愛らしい光景に、あなたの頬は緩みました。
ロコとスピナも見ればおんなじ表情です。

朝から良い笑顔を見れたこの日の幸運に、あなたはもう一度女神様に感謝を告げるのでした。



■ アイテム獲得

『50金貨』


■ 5月 3週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆
『健康』 ☆☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作付状況(2/2) 拡張費用『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv2 生活+1 30金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv3 健康+3 35金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1 嗜好+2 20金貨/週


◆ 精霊リスト(3/3) 拡張費用『300金貨』

『ロコ』        ノーマル トウモロコシの精霊   好感度29
『スピナ』      レア    ホウレンソウの精霊  好感度31
『さくら&ちえり』  レア   サクランボの精霊    好感度10


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度21


◆ 倉庫

『585金貨』

『女神の羽根 x1』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『救いの日』

『生活』と『健康』の合計が☆☆☆☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で月末を迎える。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

「スピナ」の好感度が40以上。
「三人がけソファセット」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


朝食を終えたあなたは、窓際でぐぐっと伸びをしました。

今日も良い天気です。
雲はいくらかありますが、それがかえって丁度良い休憩時間を作ってくれる事を、あなたはもう良く知っています。

領地の回復は順調です。
最近ではスピナが何だかやる気で、ホウレンソウも栄養たっぷりな気がします。
この分では、エラから良い報告を聞ける時も近いでしょう。


どうやら今週も、良い日が続きそうでした。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚 (選択不可)

◆ 作付変更

◆ 施設拡張

◆ 文通


>>下1


■ 施設拡張

所持金と費用の関係から、自動的に家が選択されます。


「まぁ、なんて可愛らしい……」


スピナはそう言って、妖精を掌に掬い上げました。


「ようせいさん、ようせいさんだわ!」

「とってもふしぎ! 土の下にすんでるの?」

「「きになるわ、土の下ってどんなところなのかしら!」」


さくらとちえりは地面から出てきた所を質問攻めに。


「久しぶりー!
 ……今回も無視してくれちゃって、このー!」


ロコはやっぱり妖精さんをくすぐり回して抗議です。


これには妖精達も参りました。
以前来た時の倍以上の人数です。
振り回されては楽しそうな悲鳴を上げて、転げまわってしまっています。


あなたは家を広げようと考えました。

一気に家族が二人も増えたのです。
それもまだまだ幼い元気盛り。
畑に出ている昼間は良いとしても、少々手狭になってきた所でした。


「という訳で、これで一つお願いできるかな?」

「おかね!」

「うひー! やるやるやりますともー!」

「きんぴかのためならえんやこらー!」


金貨の山を見せれば彼らはすっかりやる気です。
あっという間に増援を呼び、何十人にもなった群れは金槌を手に走り出しました。


彼らの手際はそれはもう見事なものでした。
たちまちのうちに壁は崩され、そこから新しい廊下が伸び、肉付けするように部屋が生まれます。

また、妖精の一組は今の真上によじ登り、塔のような物を作り始めています。
ぐんぐん育ったそれはやがて先細り、先端に風見鶏が取り付けられました。
風見鶏の少し下にはぐるりと周囲を見渡せる窓のような物があります。
見張り台か、展望塔か。
果たして家と畑の他には緩やかな丘しかない御使い様の聖域に必要かどうかはさておいて、とりあえず見晴らしは良さそうです。

更に、井戸の近くには四角い何かが形作られています。
これはまさか。
そう思って観察したあなたはそれが湯船であると気付く事が出来ました。

大変喜ばしい事です。
余り広くないので一人ずつしか使えませんが、井戸水で体を洗う日々は今日で終わりになるでしょう。
湯を沸かすなら、熱した石を放り込めばそれで問題ありません。



そうして太陽が大して動きもしない内に、我が家の拡張は終わりました。

見事な出来映え。
ロコもスピナもさくらもちえりも、そして勿論あなただって妖精達に一心不乱の賞賛を送ります。
妖精達は誇らしそうに胸を張ってくれました。


「でもでも、このていどじゃあないんだなー」

「もうちょっとだけ、はたらきたりないこのかんじー」

「あとひとつぐらいなら、なにかやってあげてもいいですぞ?」


調子に乗った妖精達はそう言います。
何だって良いという彼らに、精霊の皆はそれぞれ意見を言いました。


「じゃあおっきなベッドが欲しい!
 んふふー♪
 ダンナサマと一緒でもゆったり寝れるぐらいのね!」


ロコはそう言って、あなたの腕に抱きつきました。
いつものようにお山が歪み、襟元から溢れた分を覗かせます。


「では、私は大きなソファを。
 横に並んで皆一緒に座るのは、とても温かいと思うのです」


ロコとは逆の腕に、控え目に指先で触れるのはスピナです。
くすぐるようなその感触と耳元での囁き声に、あなたの肌は震えました。


「わたしは、ほんだな!」

「わたしは、ごほん!」

「「いっぱいいっぱい、たのしいおはなしが聞きたいの!」」


あなたの服のお腹辺りを掴んで、さくらとちえりは見上げます。
幼い顔はきらきらと、たっぷりの期待で溢れています。


全部は駄目よ。
妖精さんは釘を刺します。

精霊達に囲まれて、あなたはむむむと考えました。
どれか一つ。
誰かの意見を選ばなければいけません。



■ 家の拡張ボーナス

『家具』を1個獲得できます。
ここで選択しなかった家具も、ゲームが進行すると自由に購入できるようになります。

また、意見を選ばれた精霊の好感度が「+5」されます。
選ばれなかった精霊にデメリットはありません。


『選択肢』


◆ 快適ダブルベッド

◆ 三人がけソファセット

◆ 大容量本棚(童話・小説・詩集付き)

◆ その他 (自由記述 あなたの意見)


>>下1


あなたは熟考の末、ソファセットを選びました。

その選択に、スピナは頬を綻ばせ、あなたに感謝を伝えます。
むくれたのはロコと双子。
えー、と抗議の声を上げています。

ですが、これを選んだのはしっかりとした理由があるのです。

農作業の休憩でお茶を飲みに戻った時、双子は常に誰かの膝に座るのです。
誰かにくっついていたいようなのですが、普通のテーブルと椅子ではそうするしかありません。
そうすると勿論、座られた方はちょっとばかり辛いのです。
カップを口元に運ぶ時も、頭にこぼしてしまわないかと冷や冷やです。

その点、ソファならば問題解決です。
膝の上ではなく横になりますが、こちらは誰かを双子で挟むという座り方だって出来るのです。
そう伝えると、双子の顔は再び輝きました。
きっと楽しいひと時になると確信してくれたのでしょう。

ロコの方もそれならば仕方ないかと矛を収めました。
彼女は子供好きなのか、何かと双子を気遣っています。
それならば納得してくれると、あなたは分かっていました。


妖精達は再び走り出し、あっという間に新たな家具をでっちあげました。



■ アイテム獲得

『三人がけソファセット』

やわらか素材のゆったりソファ。
将来まだまだ家族が増えても良いように、ローテーブルを四角く囲む四つセット。
最大12人がのんびりくつろげる憩いの談話スペース。


新しい家で、あなた達は早速お茶会を楽しみました。
ただし、やっぱりちょっと辛い姿勢で。

あなたが真ん中、左右にさくらとちえり、更にその外側をロコとスピナが固めます。
三人がけの五人使用。
内二人が子供といっても、限界ギリギリぎゅうぎゅうです。

ですがそれがかえって楽しいのでしょう。
あなた達は皆が皆、狭い狭いと文句をこぼし、しかしそれでも笑って過ごすのでした。

キリ良く終わり!
今日はスムーズに書けた気がする。
というかさくちえめっちゃ書きやすい。
やっぱ子供は潤滑剤ですわ。

おやすみなさい。

一番重要なとこ書き忘れてたのに気付いて飛び起きた。
追加で1レス出してから寝ます。


その翌日。
起きてふわぁと伸びをするあなたは窓辺の影に気が付いて、意外そうにしながらも挨拶をしました。

なんと珍しい事でしょう。
そこには妖精が三人、呼んだ訳でもないのに立っていたのです。
珍しいというか、初めての事でした。
あなたは勿論、何かあったのかと聞いてみます。


「んー、きのうのおしごとちゅうにですなー」

「ちょっとへんなの、みつけたしだい」

「このいえのしたに、なんかへんなのあるもようー」


はて変な物。
一体何でしょうか。
埋蔵金ならば嬉しいのですが、不発弾のような類であれば是非ご遠慮したい所です。


「や、わるいものではなさそうです」

「むしろよいもの?」

「ほりだすのはめんどうだけど、おかねしだいでかんがえなくも」


妖精達が言うには良い物であるようです。
そういえばそもそも、霊脈の近くにそうそう悪い物があるとも思えません。
あるならもっと周りがおかしくなっているはずです。

そういう事ならと、あなたは彼らに頼む事にしました。
家を拡張する時についでに掘ってもらうと良いでしょう。


ただ、どうやらなかなか深い所にあるようでした。
そう簡単に出てくるかはちょっとどうだか分かりません。
少なくとも一回目で掘り当てられるかは、運次第になるでしょう。

こんどこそ終わりー


■ ソーシャルゲーム版の評価


『妖精さん』


家の改造、畑の拡張、家具の作成を担う。
また、畑で取れた作物を台車に乗せて町へ運ぶ他、精霊図鑑の画面では背景の図書室で司書のような仕事をしているのが見て取れる。

割とどこかで見たような姿のため、パクリ疑惑が持ち上がった事は一度や二度ではない。
人類は衰退しましたが精霊と御使いのお陰で持ち直しています。
お願いした事以外には殆ど手を出さないので、妖精らしい厄介さは存在しない。


通常の個体は中々可愛らしい見た目と声で好評なのだが、親玉の赤いのは別。
課金アイテム販売および課金ガチャ担当であるためである。

見た目も若干禍々しくなっており、帽子と服には謎の文様が、顔の上半分には謎の影がかかっている。
また、図体も大きく、軽く二階建ての家程ある模様。
エコーがかかった声で「捧げよ……捧げよ……」と誘うなど、言動もいちいちアレ。

「腐れレッドキャップ」「きす☆ゆあ唯一のヘイト発生源」「こいつ魔王じゃね?」など御使いの恨み辛みを一身に集めている。

赤妖精は二次創作では扱いが完全に二極化している。
御使い率いる精霊一同にボコボコにされるか、完全に無敵キャラと化して財布を搾り取るかである。
割合としては圧倒的に後者が多い辺り御使い達の飼い慣らされぶりが分かる、というのが御使いの定番自虐ネタの一つ。

今日はお仕事順調です
多分早めの7時からやれそう


■ 5月 4週目


「ねこのおててね、わかったわ!」

「ねこのおててね、かわいいわ!」


さくらとちえり。
未だお役目を果たせていない二人ですが、皆のお手伝いで十分充実しているようです。
今日はスピナとあなたに挟まれて料理の練習と相成りました。
背が足りないために踏み台に乗り、包丁片手にまな板に向かい合っています。


「急がず焦らず、ゆっくりでいいですからね。
 ……そう、上手ですよ」


とん、とん、とん。
まだまだ不慣れなさくらが、少しずつ少しずつ野菜を刻んでいきます。
ちえりは横で、ハラハラと見守りながら応援です。

どうにも形が不揃いで手つきもおぼつきませんが、今はそれで良いのです。
まずはやってみる事が大事なのですから。


「……ぜんぶ切れた!」


ホウレンソウを切り終えたさくらが快哉を叫びます。
よく出来ましたとあなたが薄桃色の頭を撫でれば誇らしそうにはにかみました。


そこで唐突にスピナがぽんと手を叩きました。
いかにも何か思いついたという風に。


「"よく出来たわね、さくら。
  じゃあ次は、ちえりがやってみましょうか?"」


あぁ、とあなたは納得しました。
いつものアレです。
今度はお母さんごっこでしょう。
親子ごっとと言った方が正確でしょうか。

あなたの場合は困惑が先に立ったものですがどうやら理解力はさくらとちえりの方が上のようです。
御遊戯会のような声色で、スピナに返します。


「"えへへ、すごいでしょおかあさん!"」

「"見てて、わたしもすごいのよおかあさん!"」


二人が乗ってくれた事に勿論スピナは大喜びです。
場所を交代したちえりの手を取り、こうするんですよ、と優しく手本を見せました。


その後も料理のお勉強は順調に続き、今はふかしたジャガイモを潰す双子です。
たっぷりのマッシュポテトは食卓の中央で存在感を主張する事でしょう。

さて、それを見守り微笑むあなたですが、すすすと刺客が忍び寄ります。


「"……あなた、そろそろあの子達の妹が欲しくないですか?"」


おおっと今度は仲良し若夫婦ごっこになったようです。
完全に褥に誘う淫らさで、あなたにしなだれかかります。
勿論、そこから唇が重なるまでは三秒もかかりませんでした。

反射的にいつも通り、あなたとスピナは激しい繋がりを交わします。
もうすっかり慣れたものです。
スピナに抱きつかれたならば、最早あなたの体は殆ど自動的に動きます。
互いの全身をすり合わせて脚まで絡め、直接的な部分に触れはしませんがあなたの手の動きは愛撫と全く変わりません。
こうして熱烈な夫婦の愛を演じるのがスピナが一番喜ぶと知っているのです。


……が、そこであなたは気付きました。
すぐ近くに居る双子が濃厚なキスシーンを見つめているのです。

ぽかんと大きくお口を開けて、びっくりおめめでじっくりばっちり。
信じられないとばかりに二人で顔を見合わせて、自分の舌を指差してはあなたとスピナを見比べます。
なんという事でしょう。
余りに教育に悪すぎます!

あなたは慌ててスピナを引き剥がしました。


「あら?」


肩を掴まれたスピナは、なんでかしらといった風情。
しかし、そこからの回復はあっという間でした。
壁に体を押し付けられる形となったのを利用して、新しいシーンに移ったようです。


「"あぁ、あなた……こんな昼間から……。
  あの子達も見ていますのに……"」


ぽっ、と頬を染めて瞳を潤ませました。
一体どこからそんな知識を仕入れてくるのか。
半ば呆れるあなたは、同時に諦めてもいました。

さくらとちえりがこんな場面を見てどうするか、もう大体分かっているものですから。


結局あなたがもう一度演技派スピナの即興劇に巻き込まれるのは、この後すぐの事でした。



■ 好感度自動上昇

『ロコ』

29 + 1 + 1 = 31

『スピナ』

36 + 1 + 1 = 38


◆ 作物レベル上昇

トウモロコシLv3 『生活』+2 30金貨/週


■ ログインボーナス


うぅん、とあなたは唸ります。

正直な話をすれば、この生活が嬉しくないわけがありません。

時間に追われてあくせくする必要は無し。
毎日自然と目が覚めるまで寝ていられ。
泥のような疲労が体に溜まったりもせず。
そして何よりロコやスピナのような美しく魅力的な異性と何はばかる事なくイチャイチャできるのです。
不満など一欠けらも出ようがありません。


(……ただちょっと、身が持たないなぁ)


ちょっと情けない前かがみの姿勢です。
故あって、今はこの体勢を維持しなければならないのです。

それでも日々の感謝はかかさず、あなたは女神に祈りを捧げました。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は97……97です……。
 ほほう、身が持たない、と。
 ならばその身、更に持たなくしてあげましょう……しょう……ょう……」





あなたは女神への祈りを終え、立ち上がりました。

朝食も出来上がった事です。
起きてはいるようですがまだ部屋から出てきていないロコを呼びにいかねばなりません。

あなたは居間から廊下へと向かいました。



『選択肢』


◆ ロコ

◆ スピナ

◆ さくら&ちえり


>>下1


あなたがロコの部屋に辿り着くと、ほんの少し扉が開いていました。
どうやら閉め忘れてしまったようです。

仕方ないなぁ、などと思いながらあなたは扉に手をかけ、開きながらロコを呼びました。


「ロコ、朝ごはんでき――」

「――えっ?」


ぴた、と空気が静止しました。
あなたとロコは見詰め合ったまま、時間がじわじわと流れます。


……恐らく、ロコはちょうど着替えていた所だったのでしょう。
普段はポニーテールに纏められている長い金の髪が今はほどかれ、肢体に流れています。
そのお陰で肝心な部分だけは何とか隠れていましたが……。

たっぷりとしたボリュームの山と谷。
その下の、肉感的なのに同時にすらりとくびれているという反則じみた胴と腰。
それらが衣服に一切隠される事なく、あなたの視線に晒されていました。
蠱惑的な褐色が強く強く、網膜へと鮮烈に焼きつきます。


光景に対する理解が追いついた瞬間、あなたの体は一瞬にして熱を帯びました。
自分でもびっくりする程の速度で体が動き、謝罪と共に扉を閉めて飛び出します。


……あなたが正気に戻った時、既に朝食は終わった後でした。
何がどうなったのか、さっぱり記憶にありません。

幸いだったのは、ロコが全く怒っていなかった事でしょう。


「見たかったなら言えば良かったのに。
 ダンナサマのスケベー♪」


そんな風にからかわれるだけで許してくれたのですから。



■ ラッキースケベ

『ロコ』

31 + 2 = 33


■ 5月 4週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆
『健康』 ☆☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作付状況(2/2) 拡張費用 『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv3 生活+2 30金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv3 健康+3 35金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1 嗜好+2 20金貨/週


◆ 精霊リスト(3/5) 拡張費用 『700金貨』

『ロコ』        ノーマル トウモロコシの精霊   好感度33
『スピナ』      レア    ホウレンソウの精霊  好感度38
『さくら&ちえり』  レア   サクランボの精霊    好感度10


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度21


◆ 倉庫

『350金貨』

『女神の羽根 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『救いの日』

『生活』と『健康』の合計が☆☆☆☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で月末を迎える。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

「スピナ」の好感度が40以上。
「三人がけソファセット」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


心頭滅却、心頭滅却。
頭の中でそう繰り返しますが、唱えるだけで滅却できるなら誰も苦労しません。
朝の光景は全然消えず、目を閉じればロコの姿が現れます。
どころか、シーツの上に横たわる姿まで浮かんでくるのですから重症です。

これはいかんと、あなたは頬を叩きました。
じっとしているから思い出してしまうのです。
何か仕事でもして気を紛らわせるのが良いでしょう。

ゆっくりしていきなよ。
そんな風に誘うかのようなソファを振り切り、あなたは立ち上がりました。

さぁ、今週も仕事のお時間です。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚 (選択不可)

◆ 作付変更

◆ 施設拡張 (資金不足)

◆ 文通



>>下1


■ 精霊との交流


『選択肢』


◆ ロコ

◆ スピナ

◆ さくら&ちえり


>>下1


畑仕事が一段落ついた後、あなたはスピナを探しました。
交流を深めるためです。

あなたが精霊と仲良くいちゃつく程、作物はどんどん質を良くするのです。
ですのでこれは勿論サボりでも何でもありません。
御使い様の大事な大事なお役目なのです。

……そう理論で武装して罪悪感をごまかしごまかし。

実際全部本当の事なので後ろめたさを感じる必要など少しも無いのですが。
とは言っても余りに美味しい役得すぎて素直に喜びだけを感じるのも難しいのでしょう。


あなたは家の中を歩き回ります。
台所。
食卓。
談話スペース。
廊下。
部屋……は朝の事を考えて慎重にノックだけ。

しかし、どこにも姿は見えません。


となればこれはあそこでしょうか。
あなたは居間に戻り、新しく作りつけられた螺旋階段を見上げました。


果たして、スピナはそこに居ました。

細長く伸びた塔の先の展望台。
風見鶏の真下のスペースでのんびりしていたようです。

あなたがそこに踏み入ると、バサバサと羽音が聞こえました。
何かと見れば掌にすっぽり収まるくらいの小鳥です。
慌てたように三羽、連れ立って逃げていきました。


「あら、主様。
 どうなさいました?」

「スピナを探してたんだ。
 邪魔しちゃったかな?」


彼女の手には細かくしたコーンの粒がありました。
いつの間にか餌付けをしていたようです。

あなたはふと、元の世界での事を思い出しました。
近所の公園で鳩に餌付けをしていた男性が、管理人らしき人物に叱られて追い払われる光景をです。
可愛らしい鳥とて無害とはいきません。
糞害に悩む自治体の話は時折テレビでも見た話でした。

それを考えれば咎めるべきなのかも知れませんが、まぁその位は別に良いだろう、とあなたは考えました。
娯楽らしい娯楽に乏しい日々なのです。
こういった楽しみを奪うのが良い事とは思えません。
もし糞で展望台が汚れるなら、定期的にスピナと一緒に掃除をすれば良いだけです。


折角楽園に居るのに、わざわざ思い出す事でもありませんでした。
あなたは意識的に記憶を追い払い、現実へと戻ります。


「いえ、ちょうど皆食べ終わった所でしたから」


スピナは柔らかく笑み、残った粒を窓辺にそっと置きました。
こうしておけば、誰も居なくなれば食べ損ねた小鳥が居ても大丈夫でしょう。
あなた達が去った後に様子を窺いながらつまみに来るはずです。

折角なので、あなたはここでスピナと時間を過ごす事にしました。

立ち話も何だからと壁際に座り込み、隣には自分の上着を敷きます。
あなたが手招けば、スピナはためらわずにそこに座りました。

そして、まぁ、と声を上げます。


「驚きました。
 ここには、こんな楽しみ方もあったんですね……」


スピナは周りを見渡して目を輝かせます。
この展望台は胸の高さの窓が四方にある以外は何も無い部屋になっています。

体勢を低く、こうして座り込んでしまえば空以外には何も移らず、どこか世界と隔絶したような雰囲気を味わえるのです。
もっと分かりやすく噛み砕けば、家の中に突如生まれた「秘密基地」のようなものでした。

こういった空間を見つけ楽しむのは、男の子の専売特許です。


興味を目いっぱいに宿し、あちこちに視線をやるスピナの横顔をあなたは見つめます。

相変わらず、整いすぎる程に整っています。
歴史に名を残すに足る一流を超えた芸術家がその生涯を費やして作り上げた絵画や彫刻。
そういった物に通じる、ただあるだけで背筋を震わせる美の化身。

そんな彼女と毎日、濃密な愛を交し合っている事を思ってしまえば途端に正気が揺らぎます。
微笑を形作っている、完璧な黄金比を描く唇を貪り……それどころかその奥に幾度と無く触れているなど現実とは思えません。


「……主様?」


あなたの視線に気付いたのか、スピナは不思議そうな声を上げました。
これはいけません。
見惚れているだけでは何のために来たのか分かりません。


さて、スピナとどうして時間を過ごそうか。

なんでもないよと答えて一旦間を置いたあなたは、頭をぐるぐる働かせました。


>>下1 何か話題や行動をどうぞ (何も無ければ、沈黙を選べば問題なく進行します)


あなたが考えている間に事態は進行していました。

なにやらスピナがおかしな行動を取りました。
突然体を横たえ、床から部屋を見上げています。


「急にどうしたの、スピナ」

「はい、座っただけで世界が変わったものですから。
 これはもしかして寝てみればもっと変わるのではないかと。
 ……ふふ、正解でした」


一番低い位置からあなたを見上げ、スピナはくすくすと笑います。

どうやら秘密基地への適性はスピナも中々のようでした。
あなたには出せなかったアイデアです。
ここは一つ真似し、教えを請うのも良いでしょう。


あなたも同じように寝転がり、遠くなった天井を楽しみました。

なるほど、これは確かに新しい異界です。
然程高くないはずの天井は遠く遠く、世界に二人だけで取り残されたような心地でした。
投げ出されたあなたの手をそっと握ったスピナの体温以外は、どこか夜に見る夢にも似ています。


そのまましばし。

あなた達は二人きりの時を楽しみました。
時に指先をくすぐりあい、時に体を寄せ合って存在を確かめ合い。
そして時に、特別な理由も無く唇を重ねてくるスピナを、特別な理由も無く受け入れて。

酷く気だるく、同時に溶けるような心地よい時間でした。
互いに何も言わず、ただ甘い幸せを享受するだけ。
楽園とはもしかすれば、こういった世界を指すのかも知れません。


そんな時間の果てを告げたのは眠気でした。

あなたの口が自然と開き、ふわぁ、と声が漏れます。
あくびでした。
同時にまぶたが急に重くなり、思考はふわふわとまとまりを欠いていきます。

それを見たスピナの行動は迅速でした。
体を起こして壁に寄りかかって座り、自身のふとももを示します。


「主様、どうぞ」

「ん……ありがとう、スピナ」


深い思考能力は、既にあなたからは失われていました。
言われるまま、そして心が求めるまま、何の抵抗も無くスピナの脚を枕としました。


安心を誘う柔らかさに抱かれて、あなたの意識はゆっくりと落ちていきます。

ふわふわ、ふわふわ。
このまま永遠に過ごしているのも良い。
そうとさえ感じるまどろみに、あなたは漂います。


「主様……なにか、他にしてほしい事はございませんか?」


だからでしょう。
耳をくすぐった囁き声に、なんの恥ずかしさも覚えずに返答してしまったのは。


『選択肢』


◆ 子守唄を歌いながら、頭を撫でて欲しい

◆ 起きるまでここに居て欲しい

◆ このまま永遠を過ごそう

◆ その他 (自由記述)


>>下1


「起きるまで、ここに居て欲しい……」


その言葉を最後に、あなたは眠りに落ちました。
異界の安息に全身を包まれて、夢の内へと旅立ちます。


「えぇ、主様。
 私はずっとおそばにおります」


スピナはあなたの眠りを妨げないよう、自分にしか聞こえない声で返します。

元より彼女はそのつもりでした。
この一時の世界を愛したのはあなただけではありません。
スピナもまた、曖昧な楽園を離れたくはなかったのです。


何かして欲しい事は無いかと、スピナは聞きました。

その答えは、何だって良かったのです。
望まれたなら、スピナは我が子のようにあなたを包んだでしょう。
永遠を求められたなら、同じ気持ちだったと幸福を覚えたでしょう。

例え沈黙が返されたとしても、スピナはそれだって楽しんだに違いありません。


静かな時間は、あなたのみならずスピナの意識さえも霞ませ始めたようです。
あなたを膝に乗せ、緩く指同士を絡ませたまま、スピナは船をこぎ始めました。

ゆらり、ゆらりと。
何者にも侵せない二人だけの安寧は、そうして過ぎていったのです。


■ スピナ好感度上昇判定


パーフェクトコミュニケーション!

最低保証好感度 +7


>>下1 コンマ下一桁が更に加算


■ スピナ好感度上昇

38 + (7+1) = 46


◆ 作物レベル上昇

ホウレンソウLv4 『健康』+3 40金貨/週



■ 条件達成通知

キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

上記クエストの発生条件を達成しました。
「スピナとの交流」を行うと、イベントが自動発生します。


■ 5月 月末


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆
『健康』 ☆☆☆
『嗜好』 -
『文化』 -


◆ 作付状況(2/2) 拡張費用 『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv3 生活+2 30金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv4 健康+3 40金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1 嗜好+2 20金貨/週


◆ 精霊リスト(3/5) 拡張費用 『700金貨』

『ロコ』        ノーマル トウモロコシの精霊   好感度33
『スピナ』      レア    ホウレンソウの精霊  好感度46
『さくら&ちえり』  レア   サクランボの精霊    好感度10


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度21


◆ 倉庫

『420金貨』

『女神の羽根 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』


■ 条件達成通知

メインクエスト 『救いの日』

上記クエストの発生条件を達成しました。
イベントが自動的に発生します。

今日中に終わらせられるかな……
ちょっと一旦中断して力を溜めます

おっしゃやる
再開します


あなたはエラの報告を聞き、明確な安堵を覚えました。

領民達は十全に歩くだけの力を得たというのです。
半病人……いいえ、まさに病人であった彼らはこの二月で回復を遂げました。
今や餓死の恐怖に怯える者は居ません。

だからこそ、とエラは言いました。


「故に今この時に、民に希望をお与え頂きたいのです」


力はようやく取り戻した。
ならば後は心です。

今、彼らに明確な希望の火を見せる事が出来たならば。
種火はたちまちに大きなかがり火となって領地を照らすでしょう。

身を低くして跪き、何も出来ない己を責めながら、エラはあなたへと懇願しました。

どうか、どうか。
ただ祈るしか術の無い彼らを救って欲しいと。


「不敬を承知でお願い申し上げます。
 今こそ、土地を侵す呪いの浄化を――」


それが今、あなたが地下の召喚陣を前にする理由でした。


死した魔王が残した呪いは、地上の全てを侵しました。
水は澱み、土は渇き、草は枯れ、それらを止める術を見つける事は誰にも出来ませんでした。
作物など育つはずもありません。
あらゆる生命は糧を失い、餓えに苦しんだ末の死を待つのみとなったのです。

女神の手により大地が癒され、精霊が蘇った今も、呪いが消えた訳ではありません。
弱く、薄くはなっているでしょう。
それでも今なお御使いと精霊、そして霊脈の力が無ければろくに作物が育ちはしないのです。


それを覆すための手が、御使いに与えられた「浄化」の力です。

あらゆる悪意をかき消し、災いを退け、怨嗟を慰撫する。
ただ傍らにある、それだけであらゆる命を癒す権能こそがあなたの持つ最大の異能です。

この土地に暮らして二月。
力は十分に大地に染みました。
深き地の底を巡る霊脈を通して領地中の呪いを集め、あなたを通して清めるために、十分な程に。


「はぁ……はぁ……」


あなたの呼吸は乱れました。
大丈夫なはずだと、何度言い聞かせても収まりません。

過去、読んだ覚えのあるシナリオを思い返します。
あなたではない御使い、ゲームの主人公だった誰かはこの呪いを容易く打ち破りました。
さしたる苦労も無くです。
女神の力を右手に集めただかざす、それだけで全てが終わっていました。

"なんだ、随分あっけない"

そんな感想を抱いた事を覚えています。
大層な設定を作っておいて結局そんなにあっさり終わらせてしまうのかとガッカリさえしました。

それを、今のあなたは酷く羨みました。

あっけなく済むならそれに越した事はないのです。
苦労が無い事の何がいけないというのでしょう。


ゲームでは簡単でした。
では現実も同じなのか。
とても信じる事が出来ません。

女神の介入すら阻み、世界のあらゆる土地を腐らせた呪い。
そんな物に立ち向かって、果たして本当に無事で済むものなのか。

……救済と引き換えにあなたは死ぬ、そう言われた方がよほど納得できたでしょう。


どうしても足が竦みます。
確かに持っているはずの力を信じきる事が出来ません。
召喚陣を前に、あなたはただ恐怖と戦っていました。


「――ダンナサマ」


しかし……あなたは一人ではありません。

その背を強く支える者がありました。
四つの手があなたの怯えを僅かずつ解きほぐします。


「ダイジョーブ、やれるよ!
 ダンナサマに受け入れられないものなんて、きっとどこにも無いもの!」

ロコはあなたの腕を抱き、情熱をもって語り掛けました。
ここではない世界、あなたしか知りえず体験していない過去で、あなたは彼女に何度も救われました。
それと同じ、いえ、それ以上に輝かしい真夏の笑顔で、無垢にあなたを信じています。


「その通りです、主様。
 それに、私達もお助けしますから」

スピナはあなたの隣に立ち、ふわりと微笑みました。
狭く、二人しか居なかった異界で見せたのと同種の笑みでした。
あの時のように、きっと彼女はあなたを包み込むでしょう。


「それに、やくそくがまだだもの」

「そうね、やくそくがあるものね」

「「わたしたちとキスをするまで、死なせてなんかあげないわ」」

さくらとちえり、小さな双子はからかうように口にします。
お役目を果たす前に死なれては困る、だから仕方ないから助けてあげる。
そんな風に言いながらも、幼い二つの手は優しくあなたの両手に添えられました。


それでようやく、あなたは覚悟を決めました。
女の子にここまで言われて怯んでいては、男なんて名乗っていられません。


「……ありがとう」


静かに一言告げて、それで準備が整います。

女神様に与えられた、体内に満ちる力に意識を向けます。
全ては万全。
既に扱いに慣れているそれは、今やあなたの意のままです。

元より、精神以外の全ては満たされていたのです。
それを補ってもらえたならば、最早止まっている理由はありません。


かちり。
あなたにしか聞こえない音を立てて、召喚陣はその文様を解きました。

光の線は組み変わり、その機能を変容させます。
清らかなる精霊を呼び寄せる扉から。
澱み歪んだ呪いを寄せ集める漏斗へと。


そうして、あなたの前に呪いが姿を現しました。


あぁ、やっぱり。
あなたが抱いた感想は、そんなものでした。
やっぱり容易く立ち向かえるものではない、と。

それは憎悪の奔流でした。
黒く、暗く、あらゆる生を否定する怨嗟でした。
この世に、これより大きな感情は無いと、あなたはたちまち確信します。

呪い。
あなたはこう聞いて魔術のような物を想像していました。
呪文を唱え、儀式を行い、世界の法則に何か良くない物を刻んでいったのだろうと。


まるで見当違いでした。

これはただの、何の変哲も無い、ただの感情です。
あなたが日々楽しいと、嬉しいと、そう感じるのと同じ物です。

異常なのはその質量。
ただ思うだけで地上の全てを殺すに足る、あらゆる命に「死ね」と命じる願いでした。



それがあなたを飲み込むまでに、一瞬すらも必要ありませんでした。


闇の中、あなたは余りに大きい、偉大なる何者かの声を聞きました。


"醜い"


それは嘆きに似ていました。


"余りにも、醜い"

"何故、お前達はそれほどまでに醜く在れる"

"――何故、それほどまでに醜いままで、この大地に在れるのだ"


何故、何故、何故。
どうしてお前達は生きている。

誰かはそう問い続けます。
ずっとずっと、答えがもたらされるまで、戦い続けるとばかりに。


(……あぁ)


あなたはそこで、思い違いに気付きました。

立ち向かう?
何を考えていたのでしょう。
そんな段階はもう終わっているのです。


魔王は既に、とっくの昔に死んでいます。

彼の問いに答えても、それに何の意味があるのでしょう。
その役目はあなたのものではありません。
きっとずっと昔、魔王と対峙した勇敢なる誰かの役割でした。


あなたがすべき事は、全く別の事だったのです。


あなたは、闇の中へと手を差し伸べます。


きっと彼はとてもとても頑張ったのです。
どうしても納得がいかない何かがあって、どうしても許せない誰かが居て。
己の存在全てを賭けてでも成し遂げたい願いがあって。
それでも志半ばで倒れ、しかし終わりに至ってなお、納得を得られずに今も戦い続けている。

彼は間違いなく悪だったでしょう。
多くの命を奪い去ったのは紛れも無い事実です。
今こうしている間にも、罪無き誰かを苦しめていることでしょう。

ですがだからといって、これだけの質量を持つ想いを、ただ掃き捨てる事が正しいとは思えませんでした。



だから、あなたは呪いへと、静かに語りかけました。


(もう、いいんじゃないかな)


中空に、腕を。
視界全てを塗り潰す闇を抱きとめるように。


(あなたは良く戦った。
 誰にも真似できないほど頑張ったんだ。
 きっともう、休んだっていいんじゃないかな)


ロコを、スピナを、さくらを、ちえりを。
いつものように受け入れるのと同じ、当たり前の動作で。


(一緒に休もう。
 自慢じゃないけど、幸いここは楽園なんだ。

 あなたとは感性が違うかも知れないけれど、きっと綺麗だと思える物も見つかるよ)



地を腐らせ、人を殺し、天を焦がす。

そんな馬鹿げた規模の呪いを――あなたはその身に受け入れました。


同刻。

領地に存在する、とある町にて。



一人の女性がふらふらと、木板で塞がれた井戸へと歩み寄りました。
その手には大きな桶。
生活に欠かせない水を汲むために歩いてやってきたのです。

彼女自身、ここでは目的にそぐわない事を知っています。
井戸は随分前から枯れていました。

この井戸だけではありません。
町中のあらゆる井戸はもう使い物になりません。
遠くを流れる川まで、重い体を引き摺って行かなければならないのです。


彼女の心に希望はありませんでした。
確かに最近では食べる物は与えられます。
降臨してくださった御使い様のお陰で、生きるには十分な糧は得られます。

ですが、そんな生活のどこに生きる意味があるのでしょう。
死んでいないだけの生は、もはや絶望とどれほど違うというのでしょう。


……それでも、死を選ぶ事さえ出来ない彼女は未練たらしく井戸に立ち寄るのです。

彼女は死へと歩む日々の中、過去の記憶にすがっていました。
かつて、この井戸が枯れていなかった頃、町にはまだ活気が残っていました。
不吉な呪いの噂がはびこる中、支えあって生きていこうと励ましの言葉を良く耳にしたものです。


だから彼女は、今日も井戸に立ち寄ります。
もしこの井戸に水が戻っていたら、まだマシだった頃に戻れるように思えて。

爪先ほどのそんな希望はいつものように裏切られると知っているのに。


小石を拾い、木板をずらして、落とす。

酷く手馴れた作業です。
彼女はもう、これがどれ程の時間で渇いた音を返すかを知り尽くしていました。
ですので自虐の笑みを浮かべて、それを待ちます。

三。

二。

一。


そうして、彼女は奇跡を最初に聞いた一人となったのです。


水音。
それを彼女は呆然と耳にしました。

初めに有り得ないと否定し。
次にまさかと切望し。
最後に間違いだと確信して。

もう一度同じ事を繰り返し、違いの無い結果に立ちすくみました。


彼女の口からは何の意味も持たない音が零れます。
余りに長い絶望に病んだ心は、現実を受け入れようとはしませんでした。
何も、何もできないままに時間だけが流れます。


……一体どれ程経ったでしょう。

女性はふと気付きました。
辺りが何だか騒がしいのです。

力無く周囲を見渡せば、いつの間にか人の流れができていました。
老いも、若きも、男も女も、誰も彼もが町の入り口へ向けて、呆然とした表情で歩んでいます。


何が起こっているのかと視線をやった女は……それを目にして、他の町人と同じものになりました。


ふらふら、ふらふら。
自分の目が何を写しているのかも理解できない女は歩き続けます。

ふらふら、ふらふら。
その手には既に桶はありません。
そんな事にも気付けない程に乱れた心で、女は歩き続けます。


そうして、彼女は辿り着きました。





町の外に何があるか、彼女は良く知っています。

枯れた大地。
草花一つ見当たらない、不毛の赤い土だけが広がっているのです。

何も、何も、何も、どれだけ探しても何も見つからない「終わり」が町を取り囲んでいるのです。


そう、昨日まではそうだったというのに。


――命を祝福する、春の息吹が女の頬を撫でました。


柔らかく暖かい風に乗るのは緑の香り。
いつしか、そんな物が存在する事すら忘れ果てていた、命の匂いでした。


眼前に広がるのは、一面の芽吹きでした。
死んだはずの大地を割って、ほんの小さな草の芽達が頭を覗かせているのです。


女は、全身の力を失って座り込みました。
そして、震える手を伸ばします。

信じがたい現実は、間違えようのない真実として、女の指先に触れました。





誰もが声を上げました。
誰もが天を仰ぎ見ました。
誰もが滂沱の涙を零しました。

きっと彼らは、生涯この日を忘れる事はないでしょう。
何よりも確かな救いを目にした、この奇跡の日を。


絶望の日々は、ここに終わりを迎えました。
これより先は辛い事など何一つだってありません。

良き一日の次に、更に良き一日が来る。
そう誰もが確信できる優しい日々が始まりを告げるのです。


何故断言できるかなど、そんなものは決まっています。

この地の御使いが誰であるか。
それを知っているならば、きっとそこらの子供にだって未来が分かるに違いないのですから。





メインクエスト 『救いの日』 END


■ 機能解放


『外出』

領地状況の回復により、少しならばあなたの手が離せるようになりました。
以降、毎週の行動選択に「外出」が追加されます。

主な外出先は「町」「領主の館」「ユーリの聖域」です。

外出時は、お好みで精霊の誰かを連れて行く事ができます。



■ 機能解放


『妖精のお店』

領地状況の回復により、少しならばあなたの手が離せるようになりました。
以降、金貨を農作業に直接関係しない部分へ費やせるようになります。

妖精のお店では様々な家具を購入できます。
また、「輝く種」を持っていない状態でも「1000金貨」を支払う事で通常の召喚を行えるようになります。



■ 機能解放


『嗜好』および『文化』

領地状況の回復により、領民達が最低限の生活以上の部分に興味を持ち始めました。
以降、嗜好と文化の成長が発生するようになります。

文化の成長には「メイン / サブ / キャラクタークエスト」が関わります。
また、他領地との交易で成長させる事もできます。


■ 機能解放


『文通 / 交易』

領地状況の回復により、作物の一部を他の用途に使用できるようになりました。
以降、文通コマンドより実行する事ができます。

畑の一つを選択し、そこで取れる作物を一ヶ月間、他の御使いへ送ります。
代わりにまとまった金銭入手、嗜好品要求、文化流入のいずれかを発生させる事ができます。
友好度が高い程、そして作物の評価が高い程、交易内容は強化されます。


『文通 / 支援要請』

近隣の領地から難民が流れ込み始め、領地状況が流動的になりました。
以降、文通コマンドより緊急時の支援要請を実行する事ができます。

これは緊急時のみの機能で、通常時は使用できません。
支援を要請した場合、発生中の問題を一つ問答無用で解決してくれます。

代価として、回復後に何らかの要求が為されます。
これには絶対に応じなければなりません。
金銭か、作物か、それとも他の何かかは相手の気分次第です。
友好度が高い相手ほど代価は軽くなりますが、要求回数を重ねる毎に重くなります。



■ 機能解放


『領地状況変動』

近隣の領地から難民が流れ込み始め、領地状況が流動的になりました。
以降、毎週少しずつ「領地状況の悪化」が発生します。

これは当然「作物」による回復で相殺できます。

『生活』 低い程、あらゆるマイナスイベントが発生しやすくなる。
『健康』 低い程、病気が発生しやすくなる。病気発生中は精霊やNPCの好感度が上がりにくくなる。
『嗜好』 低くとも影響は無いが、高いとプラスイベントが発生しやすくなる。
『文化』 低くとも影響は無いが、高いと精霊やNPCの好感度が上がりやすくなる。



■ 機能解放


『月初イベント』

近隣の領地から難民が流れ込み始め、領地状況が流動的になりました。
以降、毎月の初めに「ランダムイベント」が発生します。

ログインボーナスとは異なり、プラスとマイナスが半々の確率で発生します。
ただし、これは領地状況によって多少の変動を起こす事ができます。

よっしゃ終わった寝ゆ
おやすみなさい
解放された機能のアレコレは明日やります


本当に綺麗な文章書くなぁ
他になんか書いてれば知りたいわ


■ ソーシャルゲーム版の評価


『きす☆ゆあふぁーむ』


中堅出版社によって開発運営されるソーシャルゲーム。
ジャンルは「萌え豚媚び媚び系いちゃらぶほのエロハーレム独占箱庭ソーシャルゲーム」
まごうことなき公式名称、公式サイトにも勿論書いてある。

「攻撃力と防御力の数値を比べ合って勝敗を決める」だけのソシャゲが粗製乱造されていた黎明期に生まれた。

ユーザー同士での争いやランキングを廃し、協力を必要とさせる点。
絵以外のキャラ設定を固め、ストーリーでしっかり語らせる点。
最高レアリティ排出率が1%を切る事も珍しくはなかった界隈において、SSR10%という高確率の上に天井まで付いていた課金ガチャ。
極低確率とはいえ無料のフレンドガチャでもSSRキャラが入手可能で、課金アイテムを必ずしも必要としないという無課金への優しさ。
プレイヤーの工夫の余地があるゲームシステム。
何のストレスも生まれない、「天使しかいねぇ」と称される優しい世界。

こういった、当時としては驚く程の画期的な要素が受け、人気と評価を獲得した。


実は大元はゲームでは無かった。

2003年に発売された「萌える英○語 もえ×ん」のブームに便乗した「萌えるレシピブック」がその前身。
擬人化された野菜が可愛らしく料理の作り方や、基本的な調理器具の使い方を教えてくれる書籍である。
便乗でありながらそこそこ売れたこのシリーズは細々と長い間続き、オタクの食生活改善に一役買っている。
「きす☆ゆあ」の熱心なファンからは聖書と呼ばれる必携の書。

このシリーズを担当していた者の一人が乱立するソシャゲに目を付け「これはもしや、ウチも行けるのでは?」と閃いた事がゲーム化のきっかけ。
書籍部門とゲーム部門の協力が取り付けられ、同出版社の稼ぎ頭の一つとして台頭する事に。


こういった経緯から、書籍方面のメディアミックスにすこぶる強い。
特に漫画はまず外れが無く、どれもファンには安心してオススメできる出来。

反面、社内での折り合いが悪いのかそれ以外では微妙。
特にアニメ方面は散々。
書籍部門が十分に手を入れられた「OVA」はそこそこの高評価なのだが、これに味をしめてアニメ部門主導で作られた「TVアニメ」版はというと……。

世界観を無視してぶち込まれた精霊同士の醜い嫉妬。
オリジナル御使いのセクハラ中年おやじとしか思えないお寒い言動。
にも関わらず「お前らは褒められればそれで嬉しいんだろ?」とばかりに御使いがとことん持ち上げられる「さすみつ」展開。
当たり前にこんなもん「きす☆ゆあ」じゃねぇとの怒りを買い、ゲーム本体を揺るがしかねないレベルの炎上大爆死を遂げた。

良く訓練された御使いは、新しい展開が発表された直後に担当部門を割り出し、その時点で当たり外れのレッテルを貼るようになっている。

>>420
ありがとうございます、これだけです。
古い小説サイトには投稿経験がありますがサイトごと消滅しました。


今日は夜8時からー


■ 7月 1週目


救いの日より一月が経ちました。

この間、あなた達は大変に忙しい日々を過ごしました。

領地のあちこちの町で馬車の上から手を振って回ったり。
謁見を希望する周辺の領主達と顔を合わせたり。
銅像や絵画のモデルとなってみたり。

まぁそういった事です。
気疲れすることばかりでしたが、それもこれも救済が上手くいったためなのです。
良かった良かったと、そう思っておくのが良いでしょう。


……あの日受け入れた呪いは、今もまだあなたの胸の中に残っています。
それはどうやら完全に消える事は無さそうです。
あるいは、あなたの「一緒に休もう」という言葉のためかも知れません。

ですが、大した問題ではないとあなたは思っています。
今のところ悪影響はありませんし、今後悪化するような気配も感じません。
むしろ、きっとこの楽園での時間が彼を癒してくれるだろうと、そう確信しています。


さて、そんなこんなで聖域に戻ったあなたは、エラから今後について話を聞いていました。

まずは、現状についてです。


「領内の大地は力を取り戻し、各地の畑では作物が実りを育てています。
 これならば領民自身の手で命を繋ぐための糧を生み出す事が叶いましょう。

 ……ですが、残念ながら完全な回復は未だ遠いようです。
 今後も御使い様にはご助力を頂けますよう、伏してお願い申し上げます」


その言の通り、領内を回る間にも荒地に芽吹く緑は幾度も目にしました。
呪いの影響が完全に絶えた訳では無いのかまだ少しずつではありますが、確かに回復には向かっているようです。

この分であれば、あなたが多少手を離しても問題は起こらないでしょう。
畑で取れた作物や、入手した金貨の使い道だってある程度自由にしても良さそうです。


適当な休日を設けて羽を伸ばしに出かけるのも良いでしょう。
妖精に金貨を支払って、家を広げてもらった時のように家具を作ってもらうのも悪くないアイデアです。

作物の使い道として挙げられるのは勿論交易です。
御使いとしての先達であるユーリはどうやらあなたよりも懐に余裕がありそうです。
幾らか高めの値で購入してもらうのはきっと難しくありません。
金銭でなく嗜好品との交換も可能でしょうし、文化交流の条件として使うのも有りです。

また、交易は幾分の友好も生む事でしょう。
領内の状況が許すならば、積極的にやっておくに越した事はありません。


※ 幾らか修正を加えています。
※ 修正部分には ◆ を表示してあります。


■ 機能解放

『外出』

領地状況の回復により、少しならばあなたの手が離せるようになりました。
以降、毎週の行動選択に「外出」が追加されます。

主な外出先は「町」「領主の館」「ユーリの聖域」です。

外出時は、お好みで精霊の誰かを連れて行く事ができます。


◆ 町へ外出した場合は、基本的に「デート」として扱われます。

◆ 初めの内は「交流」よりも低い効果しかありませんが、領内状況次第では逆転します。
◆ 特に「嗜好」「文化」が大きく影響します。



■ 機能解放


『妖精のお店』

領地状況の回復により、少しならばあなたの手が離せるようになりました。
以降、金貨を農作業に直接関係しない部分へ費やせるようになります。

妖精のお店では様々な家具を購入できます。
◆ 家具はイベントの発生条件に関わる他、日常の描写に変化を加えられます。

また、「輝く種」を持っていない状態でも「1000金貨」を支払う事で通常の召喚を行えるようになります。



■ 機能解放


『文通 / 交易』

領地状況の回復により、作物の一部を他の用途に使用できるようになりました。
以降、文通コマンドより実行する事ができます。

畑の一つを選択し、そこで取れる作物を一ヶ月間、他の御使いへ送ります。
代わりにまとまった金銭入手、嗜好品要求、文化流入のいずれかを発生させる事ができます。
友好度が高い程、そして作物の評価が高い程、交易内容は強化されます。

◆ 交易を行っている間、対象の領地との友好度が自動上昇します。



『文通 / 支援要請』

近隣の領地から難民が流れ込み始め、領地状況が流動的になりました。
以降、文通コマンドより緊急時の支援要請を実行する事ができます。

これは緊急時のみの機能で、通常時は使用できません。
支援を要請した場合、発生中の問題を一つ問答無用で解決してくれます。

代価として、回復後に何らかの要求が為されます。
これには絶対に応じなければなりません。
金銭か、作物か、それとも他の何かかは相手の気分次第です。
友好度が高い相手ほど代価は軽くなりますが、要求回数を重ねる毎に重くなります。


「回復は土地だけに限ったものではありません。
 御使い様の慈悲は彼らの心に強く刻まれ、確かな希望を生みました。

 自身の命だけを見るのではなく、明日を歩む者のためとなる物を生み出そうと彼らは尽力を始めています」


そう、これも忘れてはなりません。

ただ生きるために生きる日々は終わりました。
まだ完全に癒されきっていない体に鞭打ち、領民達は様々な事に取り組んでいます。

幼な子の笑みのために甘味の栽培を試みる者が居ました。
受け継がれた物を失わぬために、打ち捨てられていた技術を掘り起こす者が居ました。

誰もが「明日はあるのだ」と信じられたがために、今や領内は活気に満ち溢れています。



■ 機能解放


『嗜好』および『文化』

領地状況の回復により、領民達が最低限の生活以上の部分に興味を持ち始めました。
以降、嗜好と文化の成長が発生するようになります。

文化の成長には「メイン / サブ / キャラクタークエスト」が関わります。
また、他領地との交易で成長させる事もできます。


と、ここまでは良い話です。

あなたの前に跪くエラは、ここで眉を僅かに下げました。
ここからは余り良くない話なのです。


「ですが、同時に周辺地域からの難民流入が始まっております。

 平時であれば止める事もできたやも知れませんが、今の世は呪いに侵されております。
 ……我が領も、過去に南方へ逃れる者を咎めずに居た過去がございます。
 我ら只人ではこれを止める術がございません」


エラの発言は裏を返せば、御使いであるあなたならば止められるという意味を含んでいます。
あなたが来るなと一言言えば、信仰篤き者はその足を絶望に折るでしょう。
無視して流入した者も、余所者はすぐにあぶりだされ送り返されるに違いありません。

ですが勿論、あなたは追い返すつもりはありませんでした。

問題が起こったら起こったで、その時考えれば良いのです。
問題を起こすかも知れないからと全てを跳ね除けるのはあなたの流儀ではありません。

幸い、人口増加に伴う最大の問題だろう食糧難については幾らでも解決の目処が立てられる事ですし。


■ 機能解放


『月初イベント』

近隣の領地から難民が流れ込み始め、領地状況が流動的になりました。
以降、毎月の初めに「ランダムイベント」が発生します。

ログインボーナスとは異なり、プラスとマイナスが半々の確率で発生します。
ただし、これは領地状況によって多少の変動を起こす事ができます。



■ 機能解放


『領地状況変動』

近隣の領地から難民が流れ込み始め、領地状況が流動的になりました。
以降、毎週少しずつ「領地状況の悪化」が発生します。

これは当然「作物」による回復で相殺できます。


『生活』

◆ 低い程、マイナスイベントの確率が上がり、『健康』『嗜好』『文化』が成長しにくくなる。
◆ 高い程、『健康』『嗜好』『文化』が成長しやすくなる。


『健康』

◆ 低い程、病気が発生しやすくなる。病気発生中は精霊やNPCの好感度が上がりにくくなる。
◆ 高い程、『嗜好』『文化』が成長しやすくなり、一部の『文化』には更に大きく成長を促す。


『嗜好』

◆ 低くとも影響は無い。
◆ 高い程、精霊やNPCの好感度が上がりやすくなり、精霊とのデートの質が上がる。


『文化』

◆ 低くとも影響は無い。
◆ 高い程、プラスイベントの確率が上がり、精霊とのデートの質が上がる。



※ 今更ですが設定と実情がそぐわない気がしてガッツリ変更しました、ごめんなさい


受け入れるとのあなたの決定に、エラは僅かに微笑んだ……ような気がしました。

しかしそれはほんの一瞬の出来事でした。
表情はすぐに引き締められ、そこに感情を読み取る事は出来ません。

一月前よりも随分と血色が良くなった彼女は、どうやら鎧も新調したようです。
己の内を幾らか漏らしていたのは体と心が弱っていたためでしょう。
今のエラはあなたがゲームを通して良く知っていた、あの鋼の少女に良く似てきています。


そうして次に、エラはあなたの前に目録を差し出しました。
書いてあるのは数多の物品の名と、その売却額です。


近隣の領主達はあなたとの謁見の際、様々な贈り物を差し出してきました。
どうか難民の目こぼしを、という事でもあったのでしょう。
ただ、残念ながらあなたが家に置いておきたいと思う物はありませんでした。

数々の品を前にどうするべきかとエラに相談した所、売れば良いと提案されたのです。
受け取った物をどう扱おうが構わない、との事でした。

悪いような気もしたのですが、今は先立つ物も必要です。
文化的に問題がある訳でも無いと確認できたため、あなたはエラに任せて売却してもらいました。
それがどうやら終わったようで、金貨の詰まった箱を馬車に乗せて持ってきてくれたようでした。


まとまった額の金貨を前に、あなたは頬をほころばせます。
これがあればやりたかった事を幾らか前に進められそうです。
使い道を考えて、よしよしと頷きました。


と、そこへ。
こちらが最後になりますが、とエラが一冊の本を差し出しました。

心当たりの無いあなたは不思議に思いつつ、表題を確かめます。



『ユーリ監修 女性を幸せにするテクニック集』



……表紙には「これであなたも今日から幸せハーレム王!」などと文字が躍っています。
ついでに、ユーリをモデルにしたのでしょうか、キャスケットを被った少年らしき人物が得意げに舌を出すイラストも描かれています。
思いの外、茶目っ気溢れる人物だったのでしょうか。

乾いた笑いを隠せないあなたを前にして、エラまでも何だか微妙な雰囲気を纏っているように思えました。





■ メインクエスト報酬

『1000金貨』
『ユーリ監修 女性を幸せにするテクニック集』



◆ 『ユーリ監修 女性を幸せにするテクニック集』

南方の御使いユーリが手ずからしたためた、女性を幸せにするテクニックを纏めた本。

毎週の好感度自動上昇量が「+1」される(永久)


■ 7月 1週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆
『健康』 ☆☆☆

『嗜好』 
『文化』 


◆ 作付状況(2/2) 拡張費用 『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv3 生活+2 30金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv4 健康+3 40金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1 嗜好+2 20金貨/週


◆ 精霊リスト(3/5) 拡張費用 『700金貨』

『ロコ』        N   トウモロコシの精霊   好感度33
『スピナ』      R   ホウレンソウの精霊  好感度46
『さくら&ちえり』  R   サクランボの精霊    好感度10


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度21


◆ 倉庫

『1420金貨』

『女神の羽根 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』


■ 新規クエスト発生


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

「スピナ」の好感度が40以上。
「三人がけソファセット」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


さて翌日。

あなたはほぼ一月ぶりの自由を満喫していました。
御使いの役目とはいえ、やはり堅苦しい生活はどうにも性に合いません。
のどかな聖域での日々がもうすっかりあなたの標準なのです。

これからは少々忙しくなりそうな予感はありますが、今の所はまだ何も起きていないようです。
今月は平穏なまま過ごしていけるでしょう。


※ 初月は「月初イベント」が発生しません、準備期間としてご利用下さい ※


のんびり起きてきたあなたは女神像に祈りを捧げました。
こんな当たり前の事も、昨日家に戻るまでは随分と間を空けてしまっていました。

その分も合わせて、真摯に手を合わせます。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は50……50です……。
 うーん平均的。
 その当たり前さは個人的に嫌いではありません……せん……ん……」





女神像はあなたの祈りに応え、ぱぁっと光を放ちました。

そして、像の手から涙型の小石が転がります。
おっ、とあなたは喜び、指先ほどの大きさのそれを拾い上げました。

見た目通り「女神の涙」という名の品です。
デイリークエストの報酬として知られていた物で、およそ肥料のようなものと思えば間違いありません。
課金アイテムの超劣化版なのですが、無償で得られる事を思えば十分ありがたい物です。
そもそもとして、この現実の世界に課金アイテムがあるかどうかも疑わしい所なのですし。

あなたは女神像に頭を下げ、早速畑に小石を埋めに出るのでした。



■ 女神の涙

今週の作物による領地状況回復量が「+1」されます。


畑の各所に小石を埋め終わったあなたは、朝食のために家に戻りました。

あなたを出迎えたのは、美味しそうな匂いです。
今日の朝食当番はロコとスピナでありました。
一緒に食器を並べる二人は、あなたへ明るく声をかけます。

しかし、食卓への直行は阻止されました。
土いじりをしたのなら、ご飯はちゃんと手を洗ってから。
声を揃える双子に引っ張られ、あなたは井戸に向かいます。


なんてことないいつもの日常を初めながら、今週も楽しく過ごせそうだと、あなたはぼんやり考えました。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 作付変更

◆ 施設拡張

◆ 文通

◆ 妖精のお店

◆ 外出


>>下1


朝食を終えた後、あなたは自室で机に向かいました。

便箋と筆を取り出し、さて、と一拍。

あなたが今知る御使いはユーリただ一人です。
当然、この文は彼に出すものです。
問題となるのは内容ですが……。



『選択肢』

◆ 普通に友好を深める

◆ 交易を提案する


>>下1


今回は普通に友好を深めよう。
あなたはそう決めて、筆を走らせ始めました。

交易はまたの機会で良いでしょう。
領内も完全に落ち着いた訳ではありません。
様子を見るというのも大事な事です。


勿論、まず触れるべきは例の本についてです。

表紙はおふざけが混じっていたあのテクニック集ですが、これが中々真面目な本でした。
女性がどこを見てもらいたがっているか。
女性が発している男が見逃しやすいサインとは。
そういった辺りがかなり詳しく書かれていたのです。

あなたとしては、うむむと唸る他ありませんでした。
この世界に渡るまではまるで女性との関わりが無かったあなたです。
女性は殆ど未知の領域であり、接触に慣れたとはいえ経験値不足は否めません。

実際、本を信じるとするならばこれまで何となく見過ごしてきた物は多そうです。
全く気付かない所でガッカリされていたのではないかと、少々冷や汗もかきました。


良い物を貰ったと、そう思っておくべきでしょう。
まずはこれに感謝を示さねばなりません。


そこまで書いて、あなたはふぅと息を吐きました。

脳裏に描かれるのは、本に関する事です。
ユーリが書いたのですから、当然本人も書かれていた事は実践しているのでしょう。
それを会得するまでにどんな苦労があったのやら、あなたは若干気にならなくもありません。

ですが、そうそう踏み込むのも野暮でしょう。
まかり間違ってからかっているように思われても問題です。

まだこうして文章でしかやり取りをしていない仲であるのです。
変に取られかねない事は避けるべきでしょう。


さて、では後は何を書くべきか。
あなたは一考します。



『選択肢』


◆ 先日までのパレード等の苦労について (世間話/友好度+)

◆ 相手の領地状況に興味を示す (嗜好品/文化調査)

◆ その他 (自由記述/内容によっては友好度が大きく+などの可能性有り)


>>下1


そうだ、相手の領地について聞いてみよう。
あなたはそう思い至りました。

今後、交易を交わす可能性が最も高い相手です。
その際にどんな利益が見込めるかを知っておくのは悪くない選択肢でしょう。


あなたは早速筆を進めました。


それからしばらく後、あなたの元へ新しく手紙が届きました。

ユーリからの返信です。
さて、どのような内容になったでしょうか。
あなたは少しばかり緊張しながら、封を開きました。


『まず改めて君の尽力と、領地の回復に祝福を贈りたい。
 おめでとう。
 君達の未来に確かな幸いがある事を、南の地から祈っている。

 その節目の記念にと考えた贈り物はどうやら正解だったみたいだね。
 君と精霊達の幸福な生活の一助となれたならば、これに勝る喜びはないよ』


相変わらず男性的とはちょっと言い難い、癖のある丸文字でした。
本の表紙に描かれていたイラストがユーリである可能性を考えれば、何となく可愛らしく思えてしまいます。

いやいや何を失礼な。
あなたはブンブンと頭を振っておかしな考えを振り払いました。
前回も通った道です。
最も苦しい時期を助けてくれた恩人に対して何を考えているのでしょうか。

あなたは猛省し、先を読み進めます。


幾らか無難な世間話を挟んだ後に、本題にさしかかりました。
ユーリの聖域が存在する南の領地に関してです。


『君が僕達の土地に興味を示してくれた事はとても嬉しく思っているよ。
 実を言うと、僕はここが大好きなんだ。
 これは君と僕だけの秘密だけど、時々お忍びで町に出たりもしている。

 (……もし、君も同じ事をしたければ妖精に頼んでみると良い。
  彼らは建築だけじゃなく、変装だって得意だからね)


 君は 『芸術』 に興味はあるだろうか?
 もしあるとすれば、僕達の町を十分に楽しんで貰えると思う。

 町のあちこちでは小さな 『楽団』 が活動しているんだ。
 朝、昼、夕、それぞれの鐘の代わりに楽器を吹き鳴らす彼らは町のシンボルさ。
 子供達に将来の夢を聞いたなら、楽団員と答える子はきっと多い。

 最近では純粋に彼らの楽曲を楽しむ 『劇場』 なんてものも出来たらしい。
 ただ、ここについては残念ながら詳しくない。
 本当にまだ出来たばっかりで、僕もまだ顔を出せてはいなくてね。


 それと、以前そちらに贈った砂糖については覚えている事と思う。
 その原料の、聖域以外での栽培が安定した軌道に乗りつつある。

 今、多くの料理人達がその利用法を熱心に研究している所だ。
 どうやら 『砂糖菓子』 の生産が本格的に始まりそうで、僕も楽しみで仕方ない。
 甘いものには目が無くってさ』


あなたの予定が合えば、折を見てこちらを訪れて欲しい。
その一文の後は慣例の締めの言葉で、手紙は終わりました。


あなたは頭の中で、何とはなしに欧州風の町並みを思い描きました。

甘い香りを漂わせて砂糖菓子を売るおしゃれな店の前を、バグパイプやアコーディオンを構えた一団が通り過ぎます。
石畳の町に音楽を響かせながら彼らが向かった先には大きな劇場。
この宣伝に引き寄せられた人々は彼らに続いて進み入り、ひと時の幻想を味わう……。

そんな光景です。

うんうん、とあなたは頷きました。
まるで憧れの海外旅行です。
実際のところ、世界すら渡っておいて今更憧れるものでもありませんが。


その内に是非一度、ユーリの町を訪れてみよう。
あなたはそう脳裏に刻み、大事に手紙をしまいこむのでした。



■ ユーリ友好度上昇


>>下1 コンマ判定


■ ユーリ友好度上昇

21 + 4 = 25


■ 7月 2週目


「はい、ダンナサマ。
 あーん♪」


昼前の台所。
今日の料理番であるあなたとロコは二人で並んでいました。

スピナとさくらちえりは、畑で収穫に精を出しています。
二人きりの空間を楽しむ機会をロコが逃す訳もありません。
フォークに刺したホウレンソウを味見でしょうか、あなたへと差し出して満面の笑みです。

あなたも今更このぐらいでどうこうなったりは勿論しません。
抵抗無く口を開けて、ぱくりと頬張りました。

今日も良い緑の味です。
塩加減もばっちりです。

あなたは笑顔を浮かべて、ロコへと親指を立てました。


「あ、ごめんねダンナサマ。
 口の横にちょっとついちゃった」


おっと、恐らく茹で汁か何かでしょう。
あなたは指摘に従い、唇の横を探ろうとしました。

が、それをロコは止めます。
拭いてあげるね。
そう言ってあなたへと背伸びしたロコの狙いはもちろん。

ちゅ、とあなたの口の真横にロコが触れました。
唇には触れないギリギリの所を、誘うように掠めて逃げていきます。

そこを、反撃のようにあなたは捕まえました。


「ぁ……んっ」


優しく腰の後ろに腕を回して逃げ道を塞ぎ、そっと唇を重ねます。
ロコが爆発しないよう余り濃厚にはせずに。
でも唇を甘噛みするぐらいの遊び心をほんのり乗せて。

最近気付いた事ですが、ロコはこのやり方が好きであるようです。
ロコのつまさきに少しばかり力が足され、押し付けられる体がより密に重なりました。


十分にロコが満足した頃合を見計らって、あなたは腕の力を緩めます。

夢見心地の様子でロコはあなたは見つめました。
どうやら今回のキスは随分御気に召した様子です。

拭いてもらったなら、お礼をしなくちゃね。
そうおどけるあなたに、もう一発追撃です。
飛び跳ねるように伸び上がったロコは、あなたの頬に柔らかい感触を残していきました。


「えへへー♪
 ごちそーさま♪」


すこぶるご機嫌のロコは鼻歌混じりで料理の続きです。

さ、あなたも作業に戻りましょう。
畑に出ている三人も、そろそろお腹を空かせている頃でしょうから。



■ 好感度自動上昇

『ロコ』

33 + 2 = 35

『スピナ』

46 + 2 = 48


■ ログインボーナス


その日の夜、あなたはお風呂上りに居間に立ち寄りました。

今日の入浴はあなたが最後。
もう皆それぞれの部屋に戻っています。
あなたも後は寝るだけですが、湯加減の良さになんとなく女神様に感謝したい気分になったのです。


ほこほこの湯気を立てながらあなたは女神像に祈ります。

あぁ女神様。
今日も穏やかな一日と、心地よいお風呂をありがとうございます――。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は58……58です……。
 平均値……なんと聞こえの良い言葉でしょう……」





あなたの眼前に、ころんと小石が転がります。

涙型のそれは先週も見た物と全く同じでした。
どうやら今週も畑仕事に良く励みなさいと、女神様は仰っているのでしょう。

明日の朝に埋めよう。
忘れないようしっかりと頭に刻んだあなたは、自室に戻って夢の世界に旅立つのでした。



■ 女神の涙

今週の作物による領地状況回復量が「+1」されます。


■ 7月 2週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆

『嗜好』 
『文化』 


◆ 作付状況(2/2) 拡張費用 『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv3 生活+2 30金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv4 健康+3 40金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1 嗜好+2 20金貨/週


◆ 精霊リスト(3/5) 拡張費用 『700金貨』

『ロコ』        ノーマル トウモロコシの精霊   好感度35
『スピナ』      レア    ホウレンソウの精霊  好感度48
『さくら&ちえり』  レア   サクランボの精霊    好感度10


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『1490金貨』

『女神の羽根 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

「スピナ」の好感度が40以上。
「三人がけソファセット」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


あなたは気分良く目覚めを迎えました。

領地の状況は上々です。
最近の領民は、しっかりとした満腹感を覚えるだけの食事が取れているとの事でした。
そぎ落とされていた肉も徐々に付き始め、順調に回復に向かっているようです。

大変に良い事です。
その背を押していけるよう、今日も一日頑張ろう。

ベッドの誘惑を振り切って、あなたは元気に立ち上がりました。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 作付変更

◆ 施設拡張

◆ 文通

◆ 妖精のお店

◆ 外出

※ 安価出し忘れてました


>>下1


ちょっとどこかに出かけてみようか。
あなたはそう思い至りました。

町を歩いて回るのも良いでしょう。
何か用事があれば領主の館を訪ねればエラに会うのは簡単です。
また、いっそ遠出してユーリの土地に出向いてみるのも有りなのでは無いでしょうか。


ただ、ユーリはあなたと対等以上の立場です。

『未だ関係がそう深くない』 今、出向いたとして 『必ず会えるとは限りません』

相手の都合が合わず……例えば他の御使いとの会談を優先されてしまう可能性もあります。


勿論、だからといって無駄足にはならないでしょう。
土地の文化を肌で感じる事は出来るでしょうし、精霊の誰かを連れて行けばデートを楽しめるかも知れません。


それを踏まえて、あなたの選択は……。


『選択肢』


◆ 町

◆ 領主の館

◆ ユーリの領地


※ 精霊を連れて行く場合は、ここで指名して下さい



>>下1


「うん! いくいく!
 えへへ、ありがとうダンナサマ!」


あなたが誘うと、ロコはすぐさま快諾しました。
それはもう大層な喜びようです。
言葉の初め、うん、の辺りでもう既にあなたに抱きついていたほどです。

ロコは散歩用のリードを見せられた大型犬のようでした。
抱きついたまま頬へと何度もキスを繰り返し、準備をすると言って部屋へ駆けていきました。
床を蹴る度に跳ね回る黄金のポニーテールなど、もうそのまんま犬の尾です。


ロコが少し前から、町へ行きたいと言っていたのをあなたは思い出します。
何やら昼間から部屋にこもってゴソゴソと用意していた物がようやく今日見れるのでしょうか。

あなたは何だか、ただのデート以上の楽しみが沸いてくるのを感じていました。


――が、しかし。


「…………ちょっと早かったかも、ね」


ぽつりとロコが呟きます。


ユーリの助言通り、妖精の力を借りて変装したあなた達は町の中央通りを歩いていました。

確かに町は十分な回復を見せています。
道行く人々の顔色は、先月のパレードの時より更に良くなっていました。
足取りも皆軽快です。

ただ、その軽快さはなんというか、あくせくとした物でした。
町人は新しく始まった日々に追われているように見て取れます。

勿論、それは悪い事では全くありません。
彼らはみな、町を良くしようと走り回っているのです。
かつてあなたが居た世界のような、ただ時間に追われて焦るような姿とは違います。

希望に背を押されて走り出したは良いものの、ちょっと勢いが良すぎてつんのめっている。
そんな感じでしょうか。


ロコの言う通り、まだちょっと早かったのでしょう。
落ち着いて二人で町を楽しむには、あともう少しかかりそうです。

……ロコは寂しげに、腰の後ろに提げた荷を撫でました。
こちらの出番も同じく後に回されそうです。


誘ったあなたとしては若干気まずい事態です。

思わず、ロコへ頭を下げました。
ちょっと気持ちが逸りすぎていたかも知れないと。

それにロコは首を横に振ります。


「ダンナサマだけじゃないよ。
 ワタシだって来たくて来たんだから。

 それよりちょっと歩いてみよーよ。
 折角来たんだもん!
 探してみたら、何か楽しい事見つかるかも!」


パッと気持ちを切り替えたようです。

ロコはいつもと変わらない笑顔に戻り、あなたと腕を組みました。
ぎゅうぎゅうと苦しいくらいに体を押し付け、いざ探検だと前方を元気に指差します。


「それにー、歩くだけでもきっと楽しいよ?
 だって、ダンナサマと一緒だもん♪」


なるほど、道理です。
あなただって、ロコが居てくれるなら砂漠の横断だって楽しめそうな気がするのですから。


くっつきあって歩くあなた達を、擦れ違う町人達が見送ります。
羨ましいと顔に浮かべる者、微笑ましく見守る者。
様々いますが、素の感情を表に出せている事だけは皆共通です。

人々の心に生まれた余裕は、そのようにしてあなたの目に入ってくれました。


■ ロコ好感度上昇

◆ 『嗜好』 『文化』 補正無し


>>下1 コンマ判定


■ ロコ好感度上昇

35 + 5 = 40



■ 条件達成通知

キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

上記クエストの発生条件を達成しました。
「ロコとの町への外出」を行うと、イベントが自動発生します。

ここまででー。
おやすみなさい。

明日は仕事がさっさと終わるのが確定してるので多分7時から始めます。


■ ソーシャルゲーム版の評価


『魔王』


直接登場はしない。
ほとんど舞台装置のようなもの。
御使いが世界に派遣される事となった原因。
魔王の呪いはとことん禍々しくひたすら悪い物として描写される。

その正体についてゲーム内で描写された事は無い。

スピンオフ作品として発表された「きす☆ゆあ」の前日譚、勇者の活躍を描いた外伝小説にてついに明かされるかと思いきや。
全四巻予定の内、二巻が発売された所で担当作家が急死。
その後作者を交代して再開される事もなく、魔王未登場のままなんとなく無かった事にされている。

考察班はしつこく続刊を求めているようだが、いかんせんライトでポップな「きす☆ゆあ」では班員不足の感は否めない。

仕事めっちゃ楽なので7時からやりまぁす!


■ 7月 3週目


太陽の輝きは最近とみに増しました。
じりじりとした日差しは日毎に強まり、畑に出ていればあっという間に汗だくです。

鎌でほうれん草の収穫をしていたあなたは、痛くなり始めた腰を、ぐーっと伸ばして労わりました。
その間にも汗は頬を伝い、首を通ってシャツに染み込んでいきます。
べっとりと肌に張り付く感触が少々不快です。


「主様、よろしければこちらで休憩いたしませんか?」


そこへやってきたのはスピナです。
今日は掃除当番だった彼女の手には手桶がありました。
井戸のすぐ近く、風呂の掃除を終わらせて、そのまま流れで水を持ってきてくれたのでしょう。

実にありがたい申し出でした。
あなたは残ったほうれん草を跨ぎ跨ぎ、スピナの元へ向かいます。


「んぐ、んぐ、んぐ……っはぁぁ……」

「まぁ、そんなに喉が渇いていたんですか?」


手桶から水を汲んだカップは一息で空っぽです。
あなたの良い飲みっぷりに、スピナはくすくすと笑いました。
そうして、手が土だらけのあなたに代わってもう一杯を汲み渡します。

あなたは礼を言い、どっかりと草の上に腰を下ろします。
体を落ち着けて飲むよく冷えた井戸水は、全身に染み渡るようでありました。
世にある幸せの内でもこれは恐らく上位に入るに違いありません。


と、スピナがそんなあなたの隣へ、寄り添うように座りました。

あなたは少々焦ります。

スピナが不快な思いをしてはいけません。
汗臭いしべとべとだから離れた方が良いと、あなたはそっと身を引きました。


「いえ、大丈夫ですよ。
 主様の香りは不思議と、嫌いではありませんから」


ほらこの通り。
スピナはどこか甘く囁いて、あなたの胸板へもたれます。
その表情は笑んだまま、少しも変わりはありません。

本当に不快であればこんな事は出来ないでしょう。
それならいいかと、あなたは安堵しました。


そのまま、次にスピナはあなたの腕に触れました。
興味深そうに細指を往復させ、あなたにくすぐったさを感じさせます。


「……色、随分変わりましたね」


スピナの言う通り、あなたの腕は最近浅黒く焼けてきています。
毎日この炎天下で農作業をしているのです。
日焼け程度は当たり前に起こります。


「スピナは、肌の焼けた男は嫌いかな?」

「どうでしょう……。
 余り、こだわりは感じないように思います」


まるで焼けた様子の無いスピナに、あなたは問いました。

あなたの黒い腕を滑る、白いスピナの指。
そのギャップに、どこか距離のような物を感じてしまったからでしょうか。

幸いスピナは肌の色で好みを分ける事は無いようです。
茫洋とした顔で、特に悩む事も無く答えます。


スピナはそのまま、あなたと自分の肌を比べ始めました。
腕を重ね合わせるように置き、掌を合わせ、指同士を甘やかに絡めます。

その指先の動きに、あなたは翻弄されました。
あなたの指と指の間、そこから悪戯に顔を出すスピナの白い指は何かの暗喩めいた淫靡さを纏っているように思えてなりません。
スピナはただ遊んでいるだけなのだと、確かに分かっているにも関わらずです。


ごくりとあなたの喉が鳴りました。

スピナと直接接しているあなたの利き腕は、正体不明の熱を帯びつつあります。
あなたは知らずの内に、熱の篭った視線をスピナに向けていました。

そしてそれを、至近距離で直視したスピナは十全に理解したようです。


「……はい、主様。
 望まれるのでしたら、どうぞ」


嬉しそうに微笑み、スピナはあなたに身を委ねました。


「まだ分からない事も多いですけれど、求めて下さる時だけは分かるようになりました」


そう誇らしそうに言うスピナを、あなたは草の上へ優しく押し倒しました。

長さのまるで違う指を執拗に絡め、本能が求めるままにあなたはスピナの唇を貪りました。
スピナの抵抗は微塵も無く。
むしろ、もっともっとと強請る幼子のようにあなたを誘いました。


熱く滾る太陽の下、あなたとスピナの交歓は。
三人で仕事を続けていたロコ達が呆れて呼びにくるまで、長く長く続きました。



■ 好感度自動上昇

『ロコ』

35 + 2 = 37

『スピナ』

48 + 2 = 50


◆ 作物レベル上昇

ホウレンソウLv5 『健康』+3 45金貨/週


■ システムメッセージ

『ホウレンソウの精霊 スピナ』 の好感度が上限に近付いています。
現状のままでは、スピナの好感度を 『60』 を超えて成長させる事は出来ません。

上限を超えて好感度を成長させるためには 『上限突破』 を行う必要があります。
『上限突破』 は、キャラクタークエストの閲覧報酬に含まれています。


■ ログインボーナス


ロコに追われるまま仕事を終えたあなた達は、家の中へと戻りました。
これからは皆それぞれ自由時間です。

ロコは汗だくの体を流すために井戸へ。
さくらとちえりは螺旋階段を昇って展望台へ。
スピナは砕いたコーンを手に、双子の後を追いました。
三人で小鳥に餌でもやるのでしょうか。

そんな中、あなたが向かったのは女神像です。

溢れる欲に任せて、一時とはいえ仕事をサボってしまった懺悔です。
あなたは深く深く反省し、申し訳ありませんと頭を下げました。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は22……22です……。
 ……。
 …………。
 ………………。

 いぇー! ゾロ目いぇぇーい!!」





ぱぁん!

あなたの額に、凄まじい勢いで何かがぶつかりました。
思わずあなたはうめき声を上げて仰け反ります。

すわ、これは女神様のお叱りか。

そう思いもう一度、すみませんでしたと腰を折ります。


……と、下げた視線の先には何かが落ちていました。
あなたに直撃したと思しきそれは、どこからどう見ても一粒の種です。
淡い光を放つそれは、勿論見覚えのある物でした。


落ち込んだ所から一転。
あなたは歓声を上げました。

種を掲げて喜ぶあなたに、天の上から暖かい視線が注がれたような気がしたのはきっと間違いでも無いでしょう。



■ アイテム獲得

『輝く種 x1』


■ 7月 3週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆

『嗜好』 
『文化』 


◆ 作付状況(2/2) 拡張費用 『700金貨』

『畑①』 トウモロコシLv3 生活+2 30金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv5 健康+3 45金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1 嗜好+2 20金貨/週


◆ 精霊リスト(3/5) 拡張費用 『700金貨』

『ロコ』        N   トウモロコシの精霊   好感度37
『スピナ』      R   ホウレンソウの精霊  好感度50
『さくら&ちえり』  R   サクランボの精霊    好感度10


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『1565金貨』

『女神の羽根 x1』
『輝く種 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

「スピナ」の好感度が40以上。
「三人がけソファセット」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


あなたは上機嫌のまま、今週の予定を考えました。

家には空き部屋があるのです。
手に入れたばかりの種で召喚に挑むのも良いでしょう。

また、エラから受け取った1000枚の金貨はまるで手付かずのまま取ってあります。
これを使って畑や家を更に広げるという手もあります。

勿論、精霊達とよろしくやるのもグッドです。
遠方のユーリとの手紙のやり取りも悪くありません。
いっそゴキゲンに任せてあの鋼の少女、エラを冷やかしに行くという考えも有りなのでは?


ふんふんふん、とあなたは鼻歌を漏らします。

つまる所、いつも通りの自由な週の始まりでした。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 作付変更

◆ 施設拡張

◆ 文通

◆ 妖精のお店

◆ 外出

安価出し忘れるとかいう


>>下1


よし、畑を広げよう。

思い立ったが吉日、あなたは早速金貨をばらまきました。


「うひー! きたきたー!」

「あぁ、このかがやきがたまらないのぉ……」

「げへへへへ、みつかいさま、きょうはなにをいたしやしょう」


ぽこんぽこんと飛び出るのはいつも通りの連中です。
何だかおかしなノリの妖精に付き合い、あなたは鷹揚に命じます。

うむ、畑じゃ。
畑を広げて欲しいのじゃ。
まさか出来ぬとは言わんじゃろう。


「へへー!」

「ははー!」

「ぐふふふふ、みつかいさまにはかないませんなぁ」


そういう事になりました。


わっほーい。
調子はずれの掛け声と共に、妖精達は霊脈めがけて穴掘りを開始しました。

それを確認したあなたは……家に戻って机に向かいます。
前回体験した通り、畑作りはあなた達だけではとてもではないですが出来ません。
エラに頼んで兵士を派遣してもらうべく、書状を作らねばならないのです。
聖域への進入は不敬云々というのは、前例と強い要望で何とかなるでしょう。

確実に派遣してもらえるよう。
しかし同時に、エラ達の負担が大きくなりすぎないよう。
十分以上に気をつけて、あなたは文面を整えました。





――そうして数日後には新たな畑が出来ました。

それに満足し、感謝を伝える手紙を書き上げるあなたは……今この時に至ってさえ気付いていなかったのです。
新しい畑が出来上がったという事が、一体何を意味するのかを。


「やっとわたしの番なのね?」

「ずっとこないかと思ったわ?」

「「おにいさま、これってつまりそういう事よね?」」


はい、そういう事です。

椅子に座るあなたは、額からだらだらと冷たい汗を流していました。
あなたの手は背もたれの後ろに回され、可愛らしいリボンでぐるぐる巻きです。
両足だって同じです。
椅子の足にくっついてしまって、もう一人では立ち上がる事さえ出来ません。
絶対に逃がしてなるものかという執念をひしひしと感じました。


精霊は一日に、畑一枚分の種しか作る事が出来ません。

畑が三。
精霊も三。

――回避の手段など、この世のどこにもありません。


深呼吸を一つ、二つ。
期待の眼差しを送る双子を前に、あなたは懸命に心を落ち着けました。

……実際、これ以上待たせる訳には行きません。

さくらとちえりの二人は毎日を楽しく過ごしています。
しかし同時に、時折寂しそうにするのにもあなたは気付いていました。
日々愛を交わすあなた達に対して疎外感を感じていた可能性は否めません。
もしかしたら、きちんとお役目を全うできているロコとスピナへの劣等感もあったかも知れないのです。

あなたは意を決して、口を開きました。


「よし。
 ……さくら、ちえり。
 待たせてごめん。
 随分遅くなっちゃったけど、お役目のキス、しようか」

「ほんとう!?」

「やった、やったわさくら!」


たちまち満面の笑みを浮かべた二人は手を取り合い飛び跳ねます。
フリルだらけの赤いゴシックロリィタが、彼女達と一緒に喜びの舞を踊りました。


「じゃあわたし! わたしからやりたいわ!」

「うん! わたしは見てるから、がんばってねさくら!」


元気良くビシッと手を上げたさくらがどうやら先手のようです。
激励のハイタッチをちえりと交わし、鼻息も荒くあなたへと近寄ります。

思わずまじまじと見てしまったさくらの動きが、あなたの罪悪感を酷く刺激しました。

さくらはもう、どう見たってお子様です。
とてとてと音が聞こえそうな歩き方も。
よじよじと必死なあなたの膝への昇り方も。
そして、椅子の上に膝立ちになって、普通に座るあなたとやっと目線が合う小さな体躯も。

絶対的な禁忌を犯すのだという実感が、今更あなたの心を抉りました。


「……おにいさま。
 本当に、わたしのこと……きらいじゃない?」


それが顔に出てしまったのでしょうか。
いつかと同じ問いが投げられます。

さくらの瞳は今再び、不安に揺れていました。


……それを見て、あなたの心は本当に決まりました。

縛られた腕を、あなたは必死によじります。
リボンで巻かれていると言っても、所詮は小さな女の子の力です。
あなたが本気で抵抗すれば何の事もなく解けました。


そうして自由になった腕で――あなたはさくらを抱き寄せます。

いつもの子供を抱き上げるやり方ではなく。
ロコやスピナと同じように「女」を包むやり方で。


あなたの心が痛む?
それが何ほどの事だというのでしょう。

常識も、良識も、この世界ではあなたの知る物とは形を変えているのです。
これ以上ためらう事は、さくらとちえりのためにも許される事ではありませんでした。


「……おにいさま」


いつの間にか、あなたの隣にはちえりが近付いてきていました。
あなたの服を掴み、じっと見上げています。

そうして、さくらと二人で異口同音に。
初めて会ったあの時の、誓いを求める言葉は繰り返されます。



「「どうかすえながく、命おわるまでいっしょにいさせてくれるかしら?」」



あなたの答えは静かに、淡く触れるだけの口付けをもって。

今度こそ、間違える事無く返されました。


■ 作物状況 自動変更

畑に空きがあるため、自動的に種が植えられました。


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv3  生活+2 30金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv5  健康+3 45金貨/週
『畑③』 サクランボLv1   嗜好+2 20金貨/週


■ 7月 4週目


「おにいさま、おにいさま!」

「おにいさまったらおにいさま!」

「「もうあさよ! あさのくちづけの時間がきたわ!」」


ちゅっ、ちゅっ、ちゅ。
宣言通りにキスが降り、あなたはその目を開きました。

ここ数日、あなたの朝の目覚めはこんな感じで始まります。

さくらとちえりは、もう大変な事になっています。
ようやくお役目を果たせたのがこの上なく嬉しいのでしょう。
一晩二晩ぐっすり寝た程度ではまだまだ喜びが収まる様子はありません。
事あるごとにキスをねだり、種が生まれなくなっても練習だと言ってあなたに挑みかかります。


……あなたは色々と諦めがつきました。

あなたが持つ常識では豚箱にぶち込んでおくべき性犯罪者ですが、この世界ではそうではないのです。
幼な子を泣かせる方がよほどに重罪です。

むしろ、ロリコンになる事を望まれてすら居ます。
そしてあなたも、さっさとそこまで振り切ってしまおうと努力の日々です。


起こしてくれてありがとう。

そう言って、あなたはちえりの背に手を回し、引き寄せました。
シルクのような頬に手を添えて、反対側に軽くキスをします。
ちえりはたちまち、あなたが触れた所を手でおさえ、可愛らしく黄色い悲鳴を上げました。


「おにいさま、おにいさま。
 わたしにもそれ、してくれる?」


それを見逃すさくらではありません。
あなたの方へと顔を突き出し、瞳を閉じます。

勿論、あなたに断る理由はありませんでした。

同じように頬に顔を寄せていきます。


と、いざ触れるという所で、突然さくらが顔の向きを変えました。

完全に狙い澄ましたタイミング。
あなたの唇は幼いそれに啄ばまれてしまいます。


「あぁ!」


と声を上げたのはちえりです。
悪戯に笑うさくらを指差し、ぷりぷり怒って言い放ちます。


「さくらだけずるいわ!
 おにいさま!
 わたしもそっちの方がいい!」


……これはどうやら、もう一度の必要がありそうです。

勿論、ちえりにだけでは済まないでしょう。
ちえりとのキスを終えれば、今度はさくらが「ちえりの方が一回多い」と言い出すに決まっているのです。
どうやら二人共にしてあげなければならないようでした。


クスクスと笑っている所を見るに、さくらは完全に狙っていたのでしょう。

あなたはこうして朝から、小癪な小娘達に振り回されるのでした。





■ 好感度自動上昇

『ロコ』

37 + 2 = 39

『スピナ』

50 + 2 = 52

『さくら&ちえり』

10 + 2 = 12


■ ログインボーナス


結局、それから三周もキスをばらまいてようやくベッドから起き上がれたあなたです。
まさか今度は「わたしは1回ほっぺただった」と始まるとは思いもしませんでした。


両手に双子をぶらさげて、あなたは居間に入りました。
朝食の香りが漂う中、あなた達は三人並んで女神像に手を合わせます。

どうか今週も、天からお見守りください。

自称性犯罪者と、性犯罪希望のロリっ子二人の祈りが女神様へと注がれました。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は79……79です……。
 よしよし、よくぞ手を出しましたね。
 私も喜ばしいのでおひねりを差し上げましょう……しょう……ょう……」





祈っていたあなた達の眼前に、光が生まれました。

おや、これはいったい。
そう思って手を出してみると、掌にぽすんと収まったのは小さな紙の包みです。
ひねって止めてある口を開くと、中から出てきたのは何枚かの金貨でした。

おかあさまのおいわいね!

そう喜ぶ二人の頭を、あなたは微笑ましく撫でてあげました。



■ アイテム獲得

『50金貨』


■ 7月 4週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆
『嗜好』 ☆
『文化』 


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv3  生活+2 30金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv5  健康+3 45金貨/週
『畑③』 サクランボLv1   嗜好+2 20金貨/週


◆ 待機作物リスト

――


◆ 精霊リスト(3/5) 拡張費用 『700金貨』

『ロコ』        N   トウモロコシの精霊   好感度39
『スピナ』      R   ホウレンソウの精霊  好感度52
『さくら&ちえり』  R   サクランボの精霊    好感度12


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『1110金貨』

『女神の羽根 x1』
『輝く種 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

「スピナ」の好感度が40以上。
「三人がけソファセット」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


開かれた窓の外、家のすぐ近くに一本植えられた木をあなたは眺めます。

ほんの僅かに桃色がかった白の花。
それを幾重にも分かれた枝いっぱいにまとうのは、サクランボの木です。
畑の真上ではないので毎日果実が取れる事はありませんが、代わりにこうして花で楽しませてくれるようです。

さくらとちえりが最初に生んだ種は、いつも見える所にとここに植えられました。
これからはずっといつだって、家族の目を癒してくれる事でしょう。
……季節感は失われる気もしますが、そんな物は今さらです。


新しく加わったあなた達の象徴を眺めながら、気分良くあなたは今週の予定を組み立てました。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 作付変更

◆ 施設拡張

◆ 文通

◆ 妖精のお店

◆ 外出



>>下1


■ 施設拡張

所持金と費用の関係から、自動的に家が選択されます。


「おやおや、こんしゅうもですかな?」

「みつかいさまもすみにおけませんなぁ」

「あんたもすきねぇ」


訳のわからないたわ言を吐く妖精達です。

いえ、考えてみればたわ言でも無いかも知れません。
家を広げるという事は、精霊を増やす意思があるという事です。
それはつまり、日常的に口付けを交わす相手をどんどこ増やすのと同義です。


「じっさいのとこ、はーれむってどうなんです?」

「しあわせですか? たのしいですか?」

「どろどろですか? ぐさぐさですか?」


……あなたは妖精の疑問に答えず、そっと家を指差しました。


どばっと数を増やした妖精達は、それはもう猛烈な速度で家を組み立てます。

あなたの家はついに二階建てになるようです。
幅広で手すり付きの昇りやすい階段はざくざくと出来上がり、その先にあっという間に部屋が作られます。

居間から直接繋がった新たな一室には、女神様のシンボルマークが高々と取り付けられました。
その周囲に、独特なヒゲを生やした個体がノミを使って彫刻を仕上げていきます。
恐らく神話の一場面か何かなのでしょうか。
どうやらここは礼拝堂のつもりらしく、完成後には女神像が運び入れられました。

また、一部は地下に飛び込んでいきました。
盛大な作業音が聞こえる辺り、何やら派手にやっていそうです。
地下室……秘密基地……。
あなたの心は期待に躍らざるを得ません。

と、後ろを振り向けば畑の隣には塔が出来上がりつつあります。
壁の一面に開いた穴から飛び出した群れは、あっという間に木製の羽が作りつけられました。
なんと風車小屋です。
これを使えばトウモロコシの粉挽きもぐっと簡便になるに違いありませんでした。



そうして太陽が大して動きもしない内に、我が家の拡張は終わりました。

見事な出来映え。
ロコもスピナもさくらもちえりも、そして勿論あなただって妖精達に一心不乱の賞賛を送ります。
妖精達は誇らしそうに胸を張ってくれました。


ところが、何やら妖精達の数が足りません。
ちょうど十人程がまだ帰ってきていないようです。

どうしたのかと思い、あなたは尋ねました。


「おや? みつかいさまはおわすれで?」

「いえのしたにあるもの、ほってるとこですな」

「なにがでるかな、なにかでるかなー」


答えを得ると同時に、凄まじい衝撃があなた達を襲いました。

ずどん!
ずどん!
ずどん!

妖精達が慌てていない所を見るに、これはその十人程の仕業のようです。


衝撃は一撃毎に強まります。
地面は地震のように揺れ、とても立ってはいられません。

皆で集まりしゃがみこんだあなた達は、ハラハラと作業を見守ります。

ずどん!
ずどん!
ずどん!


音と衝撃はどんどんどんどん強くなり。

そして――。



>>下1 コンマ判定 下一桁が6以上なら……?


どぱぁん!


そんな音を立てて、それは炸裂しました。

音の出所は家の裏。
あなたは振動が収まった地面を駆けて、精霊たちと一緒に走り出します。



そうしてあなたが見たのは、なんと意外な光景でした。

地面から立ち上がっているのは水の柱です。
いえ、あたりを覆う湯気を見るに、正確にはお湯の柱でしょう。
その中でバチャバチャと、何人かの妖精が熱さに転げ回っています。


「う、うおおおぉぉぉぉぉお!?」


あなたのテンションは、一瞬で上限を突破しました。

精霊達は思わずびっくりしましたが、これは仕方の無い事です。
温泉大国、日本。
その出身であるあなたが、この事態を前にして平静を保てる理由は微塵もありません。



――あなたの聖域の地下深くには、霊脈のみならず『温泉』まで流れていたのです……!


噴出した温泉は、瞬く間に見事な岩風呂へと整えられました。

源泉掛け流し露天風呂。
自宅の裏手にまさかの豪華施設誕生です。
あなたと精霊は功労者たる妖精を何度も何度も胴上げし、喜びを爆発させました。



■ 家具獲得

『源泉掛け流し露天風呂』

最高の贅沢を、あなたに――。
好感度が「60」を越えている精霊と「いちゃらぶ混浴」を楽しむ事が出来る。


■ 7月 月末


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆
『嗜好』 ☆
『文化』 


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv4  生活+2 35金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv5  健康+3 45金貨/週
『畑③』 サクランボLv1   嗜好+2 20金貨/週


◆ 待機作物リスト

――


◆ 精霊リスト(3/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N   トウモロコシの精霊   好感度41
『スピナ』      R   ホウレンソウの精霊  好感度54
『さくら&ちえり』  R   サクランボの精霊    好感度14


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『510金貨』

『女神の羽根 x1』
『輝く種 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』
『源泉掛け流し露天風呂』


■ 7月 月末


今月も問題なく終わり、あなたは納得に頷きました。

浮かれていた領民達もそろそろ地に足が付き始めてくれたようです。
エラの報告によれば、手をかけただけ応えてくれるようになった作物達と日々笑顔で格闘しているとか。

また、日々の楽しみにも目覚め始めています。
あなたがエラから渡された紙には、ちょっとしたレシピが書かれていました。
トルティーヤのサクランボジャムサンドです。
領民達の間で少しずつ広まり始めたというそれを、是非今度試してみようとあなたは心に誓いました。


「御使い様の御機嫌麗しく、私も嬉しく思います。
 何か、よほど喜ばしい事がおありでしたか?」


跪いたエラが尋ねます。

彼女の様子も随分と変わりました。
若いだけあって回復も早いのでしょう。
早速肉になり始めた栄養は、やつれていた頬にまずは女性らしい曲線を蘇らせました。
くすみ、ほつれていたプラチナブロンドのハーフアップも、今日は日差しに照らされて輝いています。

エラ自身が己の名を恥じずに顔を上げられるだけの、鮮烈な美を取り戻しつつあるようです。


それを確認して嬉しくなったのだと言おうか言うまいか。
少々迷ったあなたでしたが、結局この場では保留し、温泉の話題でお茶を濁しました。


大きな動きは領内に無く、エラの報告も長く続く事はありません。
ほんの少しの時間で話は終わり、最後の用件となりました。


「当家にも幾分の余裕が生まれております。
 これよりは微力ながら私共も、御使い様が行われる救済の一助となりたく存じます」


エラは再び深く頭を下げ、あなたの言葉を待ちました。

以前と違い、今回は要望を伝えても何の問題もありません。
あなたの願いを叶えるだけの余地はあるはずです。
勿論、その限度というものはあると忘れてはいけません。

金貨を望めば、勿論捧げられるでしょう。
蔵を開けろと命じれば、彼らは己の食を切り詰めて領民達に施します。


あなたに求める所があるならば、この場で言葉にすると良いでしょう。


■ 領主への要望



>>下1 何かを要求しますか? (要求する場合は内容を指定して下さい、デメリットはありません)


しばし考えて、あなたは口を開きました。

領民達の腹は満ちています。
病に対する抵抗力もそれなりにはあるでしょう。
嗜好品に手を伸ばす心の余力もどうやらあります。

ならば、とあなたは考えました。
その次に目指すのは文化的な生活です。

ユーリの領地では日々音楽が奏でられているように、領民達にも生活以外の何かを与えたいとあなたは考えました。

あなたの言葉に、エラは静かに拳を握りました。
元々硬かった表情を更に硬く引き締め、身をもって忠誠を示すように深く頭を静めます。


「……御使い様の御心は、確かに。
 どうか私共にお任せ下さい」


エラはそう言い残し、館に戻っていきました。
これからすぐに過去の記録を漁り、飢餓の中で失われた文化の復元に当たるようです。
どうやら彼女はやる気満々です。
馬車へ乗り込む足取りは、戦場へ向かう騎士と寸分の違いもありません。

あなたは安堵に息を吐きました。

失われた文化がどのような物かは未だ分かりませんが、あなたの要望は確かに叶えられるようでした。



■ 要望受諾

『文化』 が一ヶ月間、僅かずつ自動上昇します。


■ 8月 月初イベント


さて翌週。

収穫を終えたあなたの元へ、領主からの使いがやってきました。
鎧を脱いで剣を置き動きやすい格好となっている今では分かりにくいですが、騎士だという女性です。

聖域に男を踏み込ませる事は――あなたが要望した場合を除き――憚られるため、普段から彼女を含む数人が交代で作物を受け取りに来ています。
もうすっかり馴染みの顔でした。
ロコなどは親しげに声をかけますがそれに調子良く返答して良いのかどうか、毎度悩む顔はあなたの日常の一部です。


そんな彼女ですが、今回はなにやら報告があるようです。

さて何事か。
土の上に跪く騎士の声に、あなたは耳を傾けました。



>>下1 コンマ判定


それは喜ばしい報告でした。

領民達の一部が野の獣を捕獲し、飼育を始めたというのです。
捕らえられたのは以前あなたの畑でトウモロコシをつまみ食いした、あのウリボーです。
どうやら領民達は、あの厄介な獣を農耕に利用する事に成功したようでした。

実が成らぬと諦められ、捨て置かれた農地は山のようにあるはずです。
元々存在していた農耕馬さえ潰して食料にしてしまったこの領地では、あの意外と力強い豚は大層重宝する事でしょう。


笑顔で報告を終えた女騎士に、良い報告の礼としてあなたはサクランボを手渡しました。



■ 生産強化

領民達の自給自足効率が一時的に上がりました。

『生活』 の自動減少量が一ヶ月間 『1』 減少します。


■ 8月 1週目


「おにさんこちら!」

「手のなる方よ!」

「「つかまえられたら、キスしてあげる!」」


さくらとちえりの猛攻は留まる所を知りません。
今までのお預け分を取り戻すのだとばかりに、何度も何度もあなたを狙い続けます。

今回はそれにちょっとしたお遊びを付け加える気になったようです。
ロコとよくやっている、トウモロコシ畑の中での鬼ごっこ。
これを今回はあなたに対して挑んできました。


あなたとしては、これはどうすれば良いのか分かりません。

勿論追いかけない訳にはいかないけれど、余り必死に追いかけるのもどうなのか。
しつこく残る倫理観の一欠けらがあなたの動きを鈍らせました。


そしてそれは、この二人を相手にしては命取りであるのです。

躊躇した一瞬であっという間に二人は見えなくなりました。
小さな体は大きな背丈のトウモロコシに覆い隠され、どこに行ったかもうさっぱり分かりません。


だけどご安心。
あなたが必死に探す必要は無いのです。

ずばっ!
突然あなたの左右の茎が退けられ、そこから何かが飛び掛ってきます。
何かなんて隠す必要は無いのですが、まぁ勿論さくらとちえりです。
逃げたのなんて「フリ」でした。


「「つかまえるのは、実はこっちよ!」」


そういう事です。
相変わらず小癪な事を考える双子でした。

鬼に捕らえられたあなたはトウモロコシを巻き込みながら押し倒され、愛らしい双子は馬乗りです。


早速、さくらとちえりは勝者の権利を行使しました。

右から左から、息つく間もない猛攻です。
口だけに留まらず、あなたの顔中どこもかしこも可愛らしい啄ばみに襲われました。
何度も何度も、何度も何度も。


「スピナとは、ずっとキスしていたものね」

「ロコとだって、いっつもずっとキスしているわ」

「「だったらわたしたちだって、ずっとずーっとキスするの」」


くすくすと、双子は微笑みます。

二人を止めてくれる者はありません。
何せ周りは全方位、緑で覆い隠されているのですから。


こうしてあなたは双子が十分満足するまで、延々と秘密のキスを求められたのです。





■ 好感度自動上昇

『ロコ』

39 + 2 = 41

『スピナ』

52 + 2 = 54

『さくら&ちえり』

12 + 2 = 14


◆ 作物レベル上昇

トウモロコシLv4  生活+2 35金貨/週


■ ログインボーナス


長々と双子を愛を交わしていた分だけ、あなたの午後の仕事は忙しない物になりました。

女騎士の到着までに間に合わず、彼女にも頼み込んで手伝って貰った程です。
謝礼にと差し出したサクランボは受け取ってもらえるまでに随分と時間がかかりました。
ひたすら恐縮する姿に押し付けはまずかったかとも思いましたが、爽やかな甘さに頬を緩ませていた表情を見るにそう悪い事でもないでしょう。

そんな一日を終えて、あなたは新設の礼拝堂に入りました。
正面中央に鎮座するのは勿論いつもの女神像。

新居の居心地はいかがですかと、あなたは祈りの形に手を合わせます。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は37……37です……。
 中々悪くない住み心地ですよ……。
 ……ですが、そこの壁の彫刻、少々私の胸が小さすぎはしませんか……せんか……んか……」





ちゃりりんと女神像の前に金貨が落ちました。

どうやら気に入ってくれているようです。
あなたは何だか嬉しくなって、新居おめでとうございますと追加の祈りを捧げました。



■ アイテム獲得

『25金貨』


■ 8月 1週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆
『嗜好』 ☆
『文化』 0


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv4  生活+2 35金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv5  健康+3 45金貨/週
『畑③』 サクランボLv1   嗜好+2 20金貨/週


◆ 待機作物リスト

――


◆ 精霊リスト(3/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N   トウモロコシの精霊   好感度41
『スピナ』      R   ホウレンソウの精霊  好感度54
『さくら&ちえり』  R   サクランボの精霊    好感度14


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『535金貨』

『女神の羽根 x1』
『輝く種 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』
『源泉掛け流し露天風呂』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

「スピナ」の好感度が40以上。
「三人がけソファセット」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


あなたは何と無しに広がった家を眺めました。

二階建ての立派な家となった今、ここには優に八人は暮らせるでしょう。
温泉を抜きにしても、日本であれば幾らでも羨む者がいそうな水準です。
そろそろ住民を増やしても良い頃かも知れません。

いやいや、それとも今の家族達との時間をこのまま延長するのも悪くありません。
ロコは町へ行く準備をまだ続けていますし、スピナも何だか最近ではあなたに意味ありげな視線を送っています。
さくらとちえりだって、ようやくあなたと本当の意味で仲良くなれるのだと張り切っている様子です。


全く贅沢な悩みです。
あなたは自分の恵まれぶりに何だかおかしくなりました。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 作付変更 (選択不可)

◆ 施設拡張 (選択不可)

◆ 文通

◆ 妖精のお店

◆ 外出



>>下1


■ 精霊との交流


『選択肢』


◆ ロコ

◆ スピナ

◆ さくら&ちえり


>>下1


■ キャラクタークエスト 『支えたい、その命』

条件が達成されました。
自動的にイベントを開始します。

なお時間がアレなので明日に回されます。
おやすみなさーい。

毎週のキスシーン書くのクッソ楽しくてやばい。
眠気以外で自分を止められない。
しあわせ。

ロコさん好感度46でねか?外出分消えてる


■ ソーシャルゲーム版の評価


『上限突破』


数多のソシャゲに実装されてきた機能。
「きす☆ゆあ」においても大体他のソシャゲと大差ない内容。
キャラクター毎に用意された専用のクエストを達成し、イベントを閲覧する事でレベル(好感度)上限が解放される。

サービス開始当初は「限凸に重ねが必要ないのはありがたいな」という意見が多かったが、評価は徐々に覆った。

例によって例のごとく同じ上限突破でも、レアリティの低いキャラと高いキャラでは後者の方がクエスト達成の難易度は高い。
レアまでならば家具の購入など金貨さえあれば何とか出来る物が大半なのだが、Sレア以上は一線を画している。
一定の文化的発展が必要な上に、特定の施設の建設が要求されるケースが大半を占めるため。
SSレアの中には「博物館」に代表される高難度施設もあり、数多くの御使いが「キャラクエ難民」として建設条件の模索に奔走する事に。

「金払うから限凸させてくれ」
「普通にガチャでキャラ重ねる方が楽」
「俺の博物館どこ……ここ……?」

といった嘆きが塔のように積み重ねられた。
現在は情報の集積により難民問題は解決されているが、当時を振り返って頭痛を覚える御使いは多い。

彼らの苦労は一時期「きす☆ゆあ」本スレのテンプレに以下のようなQ&Aが載っていた事にも現れている。


Q:
○○ってどうすれば建設できるんですか?

A:
いちいちここで聞くなwiki見ろカス
wikiにも載ってなかったらまだ誰も見つけてないという事ですのであなたが見つけてここで報告してくださいお願いします


また、この難民問題によって生まれた文化もある。

件のSSレアキャラの立ち絵を恐るべき適当さで切り抜き、画像検索で一番に出てきた博物館画像に貼り付けただけというコラ画像からそれは始まった。
このキャラはその日の内に完全に「素材」と化し、後に「世界中の博物館を旅した女」と二つ名が付く程の「雑コラ祭り」に発展。
問題解決後もこの流れは残り続け、今日も御使い達を楽しませている。

>>571
ありがとうございます、普通に加算忘れてました
修正しておきます


今日は普通の日なので8時からやります


収穫を終えた後、夕刻までの時間。
一日の内で最も自由な一時です。

夕食の支度をするには早すぎ、といって何かやるべき事も無い。
掃除も洗濯も、大体は終わってしまっているのです。
ですので大概は皆でソファに集まって適当な話でもするのですが……。


「……ふふ、よく寝ていますね」


今日は起きているのはあなたとスピナ、二人だけでした。

大き目のローテーブルを囲う四つのソファ。
一つが三人がけのそれらの内、正面にはさくらとちえりが肩を寄せ合って眠っています。
向かって右で寝相良く横たわっているのはロコ。
こちらは若干シャツの裾がずれ、久しぶりのおへそが顔を覗かせていました。

今日はやや雲が出た天気です。
家の中もやや薄暗く茫洋とした雰囲気で、この時期にしては涼しめの気温と併せて昼寝には中々悪くありません。
三人だって眠りにつこうというものです。


それに釣られたのか、あなたの口からもあくびが漏れました。


「うん……。
 俺も、ちょっと寝ようかな」


その欲求に無理に逆らおうとは思いませんでした。

元々、あなたは自由で緩やかな生活を望んでいます。
適度に働き、好きな時に眠る。
まさしく理想通りと言えましょう。
隣に座っていたスピナに断り、空いているもう一つのソファで横になろうと立ち上がります。


「それでしたら、こちら……いかがですか?」


そこへスピナはあなたを止め、自分の膝を示しました。
膝枕のお誘いです。

む、とあなたは考えます。
思い返すのは展望台、いっときの秘密基地に作り上げた二人きりの世界でした。
あの気だるい楽園はあなたの心に強く残る物がありました。

遠慮する理由はありません。
あなたは嬉しさを隠さず、スピナの言葉に甘えます。


「重くないかな?」

「いいえ、少しも。
 とても心地よい重みですから」

「そっか……。
 ん……でも辛くなったら、下ろしてくれていいからね」


やや低めのスピナの体温は夏の午後に気持ちよく感じました。
ふわりとあなたを受け止めた抱擁も眠りに誘うものです。
途端にあなたの瞼は下がり始めました。

そんなあなたの胸元に、スピナの掌が優しく添えられます。
無意識の内にその手を緩く握り、同時に意識はゆるゆると沈んでいきました。


「……はい、いいえ。
 辛くなんて、きっとなりません」


落ち行く最中。
微かに届いた囁きを、あなたはさて、聞き取れたかどうか。


――そうして。



そうして……「私」は一人、眠る楽園を眺めます。

私の頬が自然と緩みます。
どうして緩まずにいられるでしょう。

妹か娘か、ともかく純粋に慕ってくれて、愛らしく背を追ってくれる双子の姉妹。
対等の友として、何の衒いも遠慮も無く私の手を引いてくれる、真夏の太陽のような少女。
そして、私の何もかもをただ受け止めてくれる、この世界の中心。

誰もが皆、ここにある平穏を当たり前に甘受しているその様に。

あぁ、と。
余りに幸福すぎて、意味の宿らない声を漏らしそう。


奇跡のような時間でした。
ただ己が己である事を、何の代価も無しに許される。

どれ程の価値がそこにあるかを、果たして私の膝に眠るこの人は、分かってくださっているでしょうか?


「……ふふっ」


愚問でした。

分からないはずが無いのです。


過去の記憶を、私は思い返します。

辛い物ではありません。
悲しい物でもありません。
別になんて事は無い、当たり前の過去しか私には無いのですから。

ただ酷く窮屈だっただけの、つまらない記憶です。





――あなた、本当に他人の気持ちが分からないのね。



強く残っているのはその言葉でした。

未だ体を持たず、現世と一つ位相を異にする世界をさまよう魂だった頃。
精霊達の中で私は一人浮いていました。

理由なんて、その一言で足りましょう。
だって本当に私には、人の心が分からないのです。


同胞に遠慮をして我慢を重ねる少女に、私は言いました。

なぜやりたいようにしないのでしょう。
苦手な者があるならば距離を離せば良いのです。
自分の形を変えてまで耐える事に、果たして意味はあるのでしょうか。

激昂する少女の様に、私はそうなってからようやく、自分の行いが間違っている事に気付くのです。


――あなたは間違ってる。


誰もが口々に言いました。
それはそうでしょう。
だって私自身でさえ、間違っていると分かったのです。
端から見た方がどう思うかなんて、きっと決まりきった事。


――そんな生き方は間違ってる。


えぇ、そう知りました。
でもどうすれば良いと言うのでしょう。


――教えてあげる。

――私たちが教えてあげる。

――間違えているあなたを、私たちが治してあげる。


確かな気遣いの篭ったその言葉に。
私は大きな安堵を覚えたものです。

これだけ多くの精霊達が言うのだから。
違っている私を治してくれるというのなら、当たり前に生きる事も出来るだろうと。
私はそう錯覚してしまったのです。


――あなた、本当に他人の気持ちが分からないのね。


その言葉を最後に、最も根気強かった精霊が去ったのはいつの事だったのか。
当時疲れ果てていた私は、良く覚えてはいませんでした。

私は結局違ったままで、治る事など無かったのです。

前提がズレていました。
治る先など私にはありません。
私という魂は元々こういう形であって、ここから先にはどうしたって進んで行けない。
そう知れた事が、恐らく一番の収穫だったのでしょう。


それからの私は、誰からも離れました。

間違った者が居てはいけない。
誰も彼も、相手も私も、ただ憂鬱な思いをするだけです。

何をして生きたかなどまるで覚えていません。
きっと、延々と眠るだけの生を送ってでもいたのでしょう。


……だから、あなたに呼ばれた時は半ば捨て鉢にも近しかったのです。

どうだって良い。
なるようになれば良い。
どうせ私には、まともな暮らしなど出来るはずも無い。


――だって私には、他人の気持ちなんて分からないのですから。


それでも、私は懸命に努力しました。
ただお役目のため、新しく得た手本を真似て、いつかの努力を再現しました。

何が迷惑かすらも分かっていないのに。

こんなに傍迷惑な女も居ません。
改善の見込みも無ければ、責めた所でその意味さえ読み取れない。

早々に見捨てられるだろうと。
そうなってくれた方がゆっくり眠れて楽に居られると。
私は愚かにもそう思っていたのに。



――スピナ。
   こういうのは、読み取ろうとして読み取るものじゃないよ。



しかしあなたは、ただ静かに受け止めてくださいました。

無理をしなくても良いのだ。
私は私のまま、あるがままの歩幅で歩けば良いのだと。



――生きるのは、きっとゆっくりの方が楽しいよ。



その言葉がどれほど私の心に染み入ったかを、あなたは分かっていてくださるでしょうか?


それからの日々を、私はただ自由に過ごしました。

もしかして。
もしかしたら。
私がどうあろうとも、あなたならば受け止めてくれるのではと。
そんな淡い期待を抱いて。


果たしてあなたは、柔らかな春の泉のような方でした。

私がどれほど寄りかかろうとも。
あなたは決して私を変えようとはしませんでした。

この頭のおかしい女の性を、理解しようと心を砕いてさえくださったのです。


記憶の旅より戻り、私は眼を開きます。

そこには変わらず四つの寝顔。
どれもが、何より愛しい至宝でした。


「――愛しています。
 何よりも、誰よりも」


思いの丈を言葉に乗せて。
それで私は感傷を捨て、すぅ、と息を吸いました。

……まどろみの楽園に、旋律を一つ。

あなた達が――私の家族が、どうか安らかでありますようにと。
眠りの妨げにだけはならないよう、囁くように子守唄を歌いましょう。



輝ける、夢見るような日々でした。
奇跡のような時間でした。
ただ己が己である事を、何の代価も無しに許される。

どれ程の価値がそこにあるかは、頭の悪い私だって知っています。


だから私は、きっとお返しをしなければならないのです。


この楽園に祝福を。
愛しき人々に、限りない幸福を。

この穏やかな一時が、どうか明日への活力となりますように。


――スピナの美しい歌声は、それからしばし続きました。

あなた達の誰もが、眠りの内に夢を見ます。
奇しくもそれは全く同じ夢でした。


どことも知れぬ町の中。
賑わう通りを褐色の少女が、元気一杯に駆けていきます。

彼女は一人ではありません。
振り返り手を振る先には、手を繋いで後を追う双子の姉妹。
二人を抱き止めた少女は困り顔で、速いと拗ねる幼な子達をなだめます。

そうして最後。
全てを見守っていた一人の男が、女の手を引いて追いつきました。

集まった五人は笑い合い、どこまでも続いていそうな道の先へと歩くのです。


特別な事など何も無い静かな夢。

それはいつの時にも、どこの町にもきっとある。

当たり前の、一つの家族の肖像でした。





キャラクタークエスト 『まどろみの楽園』 END

(書いている内に予定とは違う方向に筆が進んでしまったせいで題名変更かけました、ごめんなさい)

(報酬との辻褄が若干合わなくなってます、ご了承ください)


■ 上限突破


『スピナ』

好感度条件 60 → 100
レアリティ R → R+


◆ 作物能力変化

ホウレンソウLv5  健康+3 文化+1 55金貨/週


◆ 文化の萌芽

領内に 『癒しの文化』 が芽生えました。
文化成長と共に、関連施設が自動的に建設されます。


■ 新規クエスト発生


◆ キャラクタークエスト 『楽園の夜』

「スピナ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


■ 8月 2週目



「ダンナサマ、どうどう?
 こんなの作ってもらっちゃった!」


夕方、西日で家が赤く染まる頃。
食事の支度をしていたあなたの前にロコが飛び出してきました。

驚く事にいつもの服装ではありません。
大胆に肩を露出させるオフショルダーではなく、ホルターネックのワンピースです。
やや灰色がかったアイボリーは褐色の肌を引き立てていました。
殆ど脚の付け根まで見せている普段とは違い、ふわりと広がったスカート部分に隠されている姿は新鮮さを覚えます。
その逆に、完全に何も纏っていない腕の女性的なラインにも艶かしさを感じざるを得ません。

ざっくり言えば、物凄く似合っていました。
あなたが思わず目を見開くぐらいには。


一体どうしたのかと問えば、なんと妖精の作であるとの事です。

そういえばとあなたは思い出しました。
先日の外出時、あなた達は妖精に変装の依頼をしたのです。
その際に衣服を変えていたのですから、彼らが服を用意できるのは当たり前の事でした。

……ロコはついに、単独で妖精を呼び出す事に成功したようです。
きっと裏で、地味に挑戦を続けていたのでしょう。


勿論、あなたは素直に賞賛しました。
ロコの見せてくれた新たな魅力的な姿に手を叩かず、何を褒めろというのでしょう。


「えへへー♪
 そーぉ? そんなに似合ってる?」


ロコはたちまち上機嫌。
どこがいいかと何度も聞いて、あなたが答える度に頬の赤みを増していきます。

そうして、そんなに良いならもっと近くで見て欲しいと、ずずいとあなたに近寄りました。


「ほら見てダンナサマ!
 後ろはね、こんな風になってるの!」


と、そこであなたは気付きました。
これは罠です。
ロコの顔を見れば一目瞭然、完全にあなたを狙う肉食獣のそれでした。

ロコが纏うホルターネックワンピースの背中部分は、大胆に腰近くまでが露出するタイプだったのです。


突然飛び込んできた素肌の滑らかさに、あなたは思わず以前の記憶を思い出しました。
意図せずに覗いてしまった着替え中の、長い金の髪以外に何も遮る物の無かったあの姿が鮮明に蘇ります。

ドキリと心臓が跳ねるのを、あなたは明確に感じました。


「ね、どうかなダンナサマ。
 ……こっちも、良く似合ってる?」


にやりと笑って、ロコはあなたを誘います。

あなたは頷かざるを得ません。
出来ればもっと隠して欲しいとは思うものの、似合わないと言えば大嘘になるのです。

ですが最低限の抵抗はしようとあなたは口を開きました。
以前話した時は、新しい服はおとなしい物にすると言っていたのです。
そこを少々つついてみたのですが。


「んー、んふふ♪ 気が変わっちゃった。
 今ならね、いつでもいいかなって」


何が良いのか。
それを問いかける暇も無く、ロコは向き直ってあなたの首へと腕を回します。
そのまま二人が重なるまで、秒とすらかかりませんでした。


あなたは色々と諦め、ロコの愛に応える事としました。
いつも通りにそのしなやかな体を抱き締めて……そこであなたは当然気付きます。

向き合って抱き締めれば、手が触れるのは当然、さらけ出された素肌に他ならないのです。


一瞬にして理性をゴリゴリと削られるあなたへと、ロコは嬉しそうに抱擁を強めるのでした。


■ 好感度自動上昇

『ロコ』

46 + 2 = 48

『スピナ』

54 + 2 = 56

『さくら&ちえり』

14 + 2 = 16


■ ログインボーナス


耐え切った。
あなたは耐え切りました。

過去最大級の理性への暴行を前に、あなたは自身を抑える事に辛くも成功しました。
あなたは勝利したのです。
別に負けてはいけない戦いでも無いというのは今は触れずにおきましょう。


ともあれ、あなたは茹った頭を冷やすため、礼拝堂へと入りました。
女神像へと手を合わせ、一人戦勝報告です。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は15……15です……。
 ……。
 別に、負けてしまっても良いのでは……では……は……」





「「あーっ!」」


と、その時。
鋭い叫びが家の裏手から響きました。

一体何事かと、あなたは慌てて走ります。


「おにいさま、おにいさま!」

「たいへんなの、たいへんなのよ!」

「「大事なおふろが、こわれちゃったの!」」


悲鳴の主はさくらとちえりだったようです。
二人は殆ど涙目で温泉を指差してあなたへと訴えます。

……なんとお湯が真っ黒です。

何事かと良く良く調べてみれば、どうやら配管のどこかで土か何かが混じってしまっているようです。
とてもではないですがこのままでは入れません。

あなたはすぐさま妖精を呼び寄せ、修理を依頼しました。

突貫工事だったせいで脆い作りになっていたのかも知れない。
そう責任を感じたらしい妖精は無償での修理を約束してくれました。

……しかし残念ながら、今週は温泉は使えなさそうです。
以前のように、井戸で汲んだ水を沸かすしか無いでしょう。


あなたと双子は顔を見合わせ、がっくりと肩を落としました。



■ 施設故障

今週は 『いちゃらぶ混浴』 が行えなくなりました。


※ 混浴可能な精霊が居ないため、実質無害です。


■ 8月 2週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆24
『健康』 ☆☆☆29
『嗜好』 ☆3
『文化』 ☆1


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv4  生活+2       35金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv5  健康+3 文化+1 55金貨/週
『畑③』 サクランボLv1   嗜好+2       20金貨/週


◆ 待機作物リスト

――


◆ 精霊リスト(3/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N    トウモロコシの精霊   好感度 48/60
『スピナ』      R+   ホウレンソウの精霊  好感度 56/100
『さくら&ちえり』  R    サクランボの精霊    好感度 16/60


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『645金貨』

『女神の羽根 x1』
『輝く種 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』
『源泉掛け流し露天風呂』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

「ロコ」の好感度が40以上。
メインクエスト『救いの日』を閲覧済み。
上記の条件を満たした状態で外出し、ロコを伴って町を訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『楽園の夜』

「スピナ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


しょんぼりしていた双子を慰めてから、あなたは自室に入りました。

あなた自身、温泉の故障は酷いショックでした。
しっかり肩まで浸かりとろけた声を漏らして全身を弛緩させるのは、毎日の大事な大事な日課だったのです。
くそぅ、くそぅ、と机に八つ当たりする程です。


しかしまぁ、余り長く落ち込んでいる訳にも行きません。
あなたは気を取り直し、今週の予定を組み立てます。


『今週の行動選択』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚

◆ 作付変更 (選択不可)

◆ 施設拡張 (選択不可)

◆ 文通

◆ 妖精のお店

◆ 外出



>>下1


『選択肢』


◆ 町

◆ 領主の館

◆ ユーリの領地


※ 精霊を連れて行く場合は、ここで指名して下さい



>>下1


■ キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』

条件が達成されました。
自動的にイベントを開始します。

一日にイベント二つは体力的にキツメなので、早いんですけどここまでで。
すみません。


あとちょっと相談なんですけど『今週の行動選択』を変更しようかと思ってます。
具体的には。

Aグループ

◆ 精霊との交流
◆ 精霊召喚
◆ 外出

Bグループ

◆ 作付変更
◆ 施設拡張
◆ 文通
◆ 妖精のお店
◆ 何もしない

みたいに分けて、各グループから行動を1個ずつ選ぶ感じで。
実際やるならBグループは多分、負担軽減のため描写がかなりザックリになると思います。

家具購入や作付変更で行動一回分完全に潰しちゃうのはもったいなくて選ぶのに抵抗あるんじゃないか疑惑。

すぐさま変更するという訳でも無いと思うんですが、もし良ければご意見いただけると助かります。
よろしくお願いします。

個人的にはもっと細かく分けちゃってもいいと思う

A、召喚(する、しない選択) 行動消費無し

B、作付変更、施設、妖精市

C、交流、外出、文通、何もしない 2回選択

みたいな感じで
のんびりやるのも好きなんだけど進みがかなり遅いかなーって
(メインシナリオ的な意味よりももっとキャラ出したいとかいろいろやってみたいって意味で)
あとイベント以外の交流や外出はもちっとざっくりやって負担軽減してもいいと思う

(そりゃ試してみなきゃ何も分からんわなと気付いた顔)

>>613-615
ご意見ありがとうございます。
そりゃそうだと気付いたので明日一回試しに>>613採用でサックリ目にやってみます。
ありがとうございました。

あと配慮は大丈夫です。
ちょっと私が変に力入れすぎただけなので。
こちらこそ言い方アレでごめんなさい。

ではおやすみなさい。


ありがとうございます。
励みになります。

決して無理せず、質を保ちつつ、かつゲームシステム改善を目論見て仕事中にうんうん唸って考えたアレが以下の通りになりました。


■ 月の流れ

◆ 月初イベント (ランダムに良い事&悪い事)

◆ 非常事態の時のみ支援要請する? しない? の選択

◆ 今月は交易する? しない? の選択

◆ 週行動 x4

◆ 月末イベント (エラによる御用聞きタイム)


■ 週の流れ

◆ 毎日のお勤め (好感度自動上昇)

◆ ログインボーナス

◆ 「輝く種」 系のアイテム所持時のみ、召喚する? しない? の選択

◆ 作付変更 / 施設拡張 / 妖精のお店 / 何もしない  の選択

◆ 交流 / 外出 / 文通 / 金貨召喚 の選択



文通、交易、支援要請は冷静に考えれば切り離すべきでした。

これならば目下最大の懸念だった「メイン金策手段の交易がやりにくい問題」を解決しつつ、
現状通りの書き方でも私の負担は変化なさそうです。
◆ 作付変更 / 施設拡張 / 妖精のお店 / 何もしない  の選択
この部分はどれも文量を取られない物で揃えましたので。

あわせて、交易の仕様をちょっと変えます。
これまでは金銭or嗜好(フレーバー)or文化の選択だったのですが、金銭&嗜好(フレーバー)&文化へとぐぐっとお得に。


『交易』

畑の一つを選択し、そこで取れる作物の全てを一ヶ月間、他の御使いへ送ります。
代価として通常よりも多くの金銭を入手でき、嗜好品と文化が流入します。
友好度が高い程、そして作物の評価が高い程、交易内容は強化されます。

交易を行っている間、対象の領地との友好度が自動上昇します。


とりあえずこれで試しにやってみて、ダメそうならまた考えます。

今日は普通の日なので8時からやります
よろしくお願いします


町は、前回の訪問時とは少々様相を変えていました。

浮き足立っていた住民はそろそろ落ち着き、当たり前の生活を始めたようです。
何かしたいという気だけが逸り、何をすべきか分からずバタバタと走り回る。
そんな風な人々はもう辺りには見当たりません。

一歩一歩しっかりと歩いていけば良いのだと、彼らの足取りからは意が伝わります。
あなたはほっと息を吐きました。
この分ならば、ここは良い町になるでしょう。
日々の暮らしの中、彩りを求めて訪れるにはきっと申し分の無い所に違いありません。


「それで、今日はどうする?」


あなたは手を繋いで歩くロコに尋ねます。

今日のロコは珍しく腕を組みませんでした。
代わりに指と指を絡ませて、いわゆる恋人繋ぎです。
たまには変化を入れた方がどきどきするでしょ? とは彼女の言。
体勢を低くして悪戯に上目遣いをしたロコに、あなたは思惑通り心臓を跳ねさせたものです。

そんなロコは、あなたに聞かれてにんまり笑いました。
今回は本来の目的もどうやら達成できそうです。
まさしくそういう笑みでした。


「今日はねー……これ!」


腰の後ろにつけた大き目のポーチから、ロコはそれを取り出しました。






「あっっっまーい!!」


幼い声が通りに響きました。
大きな目をいっぱいいっぱいに見開いて、ぽろりとこぼれないか心配になるほどです。

ちょうどやんちゃ盛りくらいでしょうか。
まだまだ小さな女の子が、ロコから受け取った木の棒の先、琥珀色の透明な塊を舐めた途端に大喜びしたのです。


「お姉ちゃん! なにこれすごい!」

「えへへー♪ 凄いでしょ凄いでしょ?」


しゃがみこんで女の子に目線を合わせて、ロコは頭を撫でてあげていました。
素直な笑顔がよほど気に入ったのでしょうか。
ロコ自身も子供になったかのようにニコニコ顔です。

なにこれなにこれと、女の子は騒ぎます。
ロコが渡したのは手作りの飴でした。
以前ユーリから贈られた食料の内、殆どを残しておいた砂糖から作った物です。

どうしても使いたいから取っておいて欲しい。
そうお願いされて理由も聞かずに許可していたあなたは、なるほどと頷きました。
確かに使い道としてはこれ以上無さそうです。


子供達は皆、飢餓の中で生まれ育ってきました。
口にした甘味など、最近になってようやく顔を出した道端の花の蜜と、後は双子の尽力で出回りだしたサクランボぐらいの物でしょう。
ベッコウ飴は未知の喜びそのものです。


「これはね、御使い様から皆に渡してあげてって、預かってきたの」

「御使い様から!?」

「そうそう、御使い様から。
 ちっちゃい子達みーんなに配ってあげてって!」


女の子はたちまち、更に顔を輝かせました。
甘い飴だけでも嬉しいところに、これは御使い様からのプレゼントだというのです。

同時に、周りで何事かと様子を見ていた人々もざわつき始めました。
御使い様と言ったか?
確かに言った、御使い様だ。

途端にあなたは居心地が悪くなりました。

妖精印の念入りな変装をしているためにバレる事は無いとは思いますが、何分自分自身の事です。
更に言えば飴を用意したのはあなたではなくロコなのです。
功績を伴わない評価が上積みされるなど想定外も良い所でした。

そんなあなたへ、こっそり顔だけ振り向いたロコがぺろりと可愛く舌を出します。
……それだけで許してしまおうかと思えた辺り、あなたも大概かも知れません。


「だからね、知ってる子みんな集めて欲しいの。
 あなたの友達も、友達の友達も。
 お願いできる?」

「うん! すぐに呼んでくるね!」


ロコにお願いされた女の子は、びっくりするぐらいの勢いで飛び出しました。
この分ではきっと、町中の子供が集まるまで時間はかからないでしょう。


予想は勿論外れず、あなたの考えた通りになりました。
すぐさま両手では数え切れない人数が集まり、御使い様の飴を求めてロコに群がっています。

幸い、飴が足りなくなるような事は無かったようです。
幾らか余った分は我が家で消費すれば良いでしょう。
特にさくらとちえりならこういった物は大好きそうに思えます。

思いがけず美味しい思いをした子供達は、皆幸せ心地でした。
御使い様は何て言ってたの、どうして飴をくれたの、などとロコを質問攻めにしています。
ロコも大した物で子供達の心を打つような返事を次から次に飛び出させます。
勿論、あなたには少しも心当たりの無い事ばかりでしたが。

子供達は、全く散る気配がありません。
だからか、ロコは新しい提案を口にしました。


「折角集まったんだから、一緒に遊ぼっか!
 みんなで出来る遊びでね!」


ロコはあなたを手招きます。

周囲の大人達に取り囲まれ御使い様の話をせがまれていたあなたは、それでからがら抜け出せました。
とはいえ、次にはみんなで出来る遊びとやらを考える必要がありそうでしたが。


そうして――。



「んー、疲れたぁ……」


ぐーっと伸びをして、一旦輪を抜けた「ワタシ」は広場の隅に座り込む。
ちょっと子供達の勢いを甘く見ていたかも知れない。
さくらとちえりで慣れたつもりで居たけれど、どうやら子供というのは集まる程に元気になるらしい。

こっちはもうクタクタだっていうのに、皆は日が沈むまで走り回っていられそう。
今もダンナサマの足元からボロキレを緩く丸めた「ボール」を掠め取り、男の子が得意げに笑っている。

この遊びは何でも「サッカー」というらしい。
ダンナサマの故郷ではとても人気があるんだとか。
殆どの決まり事を抜きにした簡易版、とは言っていたけど足しか使えない時点でもう十分に大変だと思う。


それにしても。

ワタシは立てた自分の膝を肘置きに、頬杖をつく。
汗ばんだ手で触れた自分の頬はもうどうしようも無いくらいに緩んでいた。

それにしても良い景色だと、そう思えてしまうのだから仕方ない。

ワタシはずっとずっと、この景色を見たかったのだ。


未だ誰の救いも届かなかった、暗い絶望の日々。
その中をワタシは、魂だけで独り漂っていた。

独りだったのは、まぁ当たり前の事。
本当はそんな事しなくて良いのだから。
むしろ、やらない方が良い事だから。

あんまりにも救われない事ばかりが世界には溢れていた。

誰もが餓え。
誰もが涙し。
誰もが狂い。
世界にあるのは絶望ばかりで、どれだけ歩いても嘆きばかりが耳に届いたあの日々。

きっと、直視して歩いた精霊は多くない。
現世を見つめる必要なんかどこにも無い。
女神様が遣わした御使い様に呼ばれるまで、精霊だけが住む異界で待っていれば良いというのに。

わざわざ苦しむばかりの旅に、どうして出る馬鹿がいるだろう。

死に際の老婆の手を握る事すらできない無力さに、己を百度殺したくなるような不毛の旅に。


――まぁ、ワタシは出ちゃったわけだけど。


本当に馬鹿だったと自分で思う。
きっと思い上がっていたのだ。
誰の手を借りなくても、誰かは救える。
御使い様みたいには出来なくたって、きっと一人二人はどうにかできるはずだって。

そして結局、何も出来なかった。

当たり前すぎて笑える程。
その時のワタシは手も足も無かった。
誰にも見えない、誰にも聞こえない、漂うだけの魂が手助けなんて出来る理由が無い。


でも同時に、見ておいて良かったとも思っている。

だってそのお陰で知れたんだから。
この世界が、全ての命が、一体何で出来ているのかを。



ワタシは誰も救えなかった。

死に際の老婆の手は握れず。
僅か一つの芋を巡った殺し合いは諌められず。

倒れた幼な子の息が少しずつ、少しずつ小さくなって止まるのを、何も出来ずに見つめて。
妹か弟かも分からないその小さな遺体を抱いてうずくまる少女の……渇ききって流れる事すら出来ない涙を拭く事も出来なかった。


――まだ、あんたは生きてるかい?


だから、救ったのは全然別の誰かだった。
死んだ子供と同じぐらいにやせ細り、歩くのにすら命を賭ける、そんな有様の年嵩の女の人だった。

少女は身を硬くした。
その理由をワタシは知っている。
本当の本当にどうしようもなくなった村が、終わった命を奪い合って滅びるのを何度か目にしたから。
この町はまだそこまで届いていなかったけれど、いつそうなったっておかしくなかった。


――取りゃあしないから睨むなよ、クソガキ。


どっかりと。
もう二度と動きたくないとばかりの座り方だった。
怯える少女のすぐ隣に、女の人は深く深く根を下ろした。

そうして、投げ捨てるように二つの袋を放り出した。


目をまん丸に開いた少女の顔を、ずっと覚えている。
中身は濁った水と、ほんの小さな木の実が幾らか。
その時勢においては何の誇張も無く、本当に殺し合いが起きるくらいのご馳走だった。

どうして良いのかとためらう少女に女の人は短く、さっさと食えと怒鳴りつけた。
もし誰かに見つかったらどうなるか考えての事だと思う。
それで、手近な石で割った木の実を、少女は次々に口に放り込みだした。


――悪いね。本当は間に合わせるつもりだったんだけど。


一瞬、少女が止まる。
耐えるように小さな手が握られ、けれどすぐに動きは再開した。


――なんでかねぇ。
   もういよいよとなったら、昔の事ばかり思い出すんだ。
   とっくの昔におっ死んだ馬鹿な親父の事とかさ。


少女が聞いているかどうか。
どちらでも良いというように、中空へ向けて言葉が漏れる。


――どんなに悪い事があったって、きっとどこかに道は開ける。
   辛い時にこそ気張って生きる事を忘れちゃいけない。
   そうすれば、きっと誰かが見ていてくださる。

――そんな世迷言をしょっちゅうほざく馬鹿な奴だったよ。
   世の中そんなに甘い事ばかりじゃないだろうにね。


女の人の表情は、茫洋としすぎてよく分からなかった。
微笑んでいるようにも、泣いているようにも、どちらでもない何かにも見えて。

それからしばらく、時間が空いた。
袋の中の木の実は全部が消えて、水も残さずお腹に収まった。


――あんた、その子に食い物を分けていただろう?


どこかへ向いていた目は、少女へ向けられた。
戸惑ったように頷くのを見て、言葉は続く。


――ただ、それをあたしは見てた。
   そんだけの話さ。


はぁ、と。
疲れ果てたように息を吐いて。

……それでもう、彼女は二度と動かなくなった。





その日、少女はその場で夜を過ごした。
小さな体を両手で抱いて、大きな体に包まれるようにして。



その全てを、ワタシは見ていた。

だからつまり、これも「それだけの話」なんだと思う。


よっ、と声を上げて、ワタシは立ち上がる。

この通り、ワタシはいつだって立てるし、歩ける。
走る事だって簡単だし、もっと難しい事だってきっと出来る。

ダンナサマに。
人に優しく在れる、素敵な人に手を取り引っ張ってもらえたのだから。


休憩を挟んで落ち着いた体をぐいぐいひねって準備運動。
その最中に、ワタシは「キーパー」をやっている少女を覗き見た。
ワタシが最初に声をかけた、飴の甘さに叫んでいた子。

小さな声が思わず漏れた。
驚いた時に目を見開く癖がそのままだったのを思い出して、それがあんまり嬉しかったものだから。


「よーしふっかーつ!
 ワタシもまーぜーてー!」


突然の襲撃にわっ、と沸いた子供達に飛び込んでボールを奪う。
こういうのはワタシの得意技だ。
ダンナサマにもしょっちゅうやって、その度に優しい呆れ顔が向けられるのが楽しくてたまらない。

ボールの扱い方は大体覚えた。
子供達の間を縫って、少女が待つゴールへ一直線。


自由に動かせる足が、今のワタシにはある。
なら出来る事はいくらでも、それこそ山のように転がってる。

ワタシは見た。
ならやる事は決まってる。
「それだけの話」を、どこにだって有り触れた、当たり前の話にするために。



すくいあげるように足を振り切って、飛んだボールは少女のもとへ。

丸い布の塊を抱きとめたその顔は、きっと世界で一番輝かしいものだった。





キャラクタークエスト 『世界で最も価値ある笑顔』 END


■ 上限突破


『ロコ』

好感度上限 60 → 100
レアリティ N → N+


◆ 作物能力変化

トウモロコシLv4  生活+2 文化+1  45金貨/週


◆ 文化の萌芽

領内に 『スポーツ文化』 が芽生えました。
文化成長と共に、関連施設が自動的に建設されます。



■ 新規クエスト発生


◆ キャラクタークエスト 『褐色の誘い』

「ロコ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、ロコとの混浴を行う。


■ 8月 3週目


「きゅーう、じゅーう、じゅーいち……」


数える声を背に、あなたは足音を立てないようにこっそり動きます。
向かう先は二階の一室。
まだ誰も入っていない未使用の寝室です。

収穫も早めに終わり、家族の皆で遊ぶ時間でした。
さくらとちえりの要望で、今日はかくれんぼに興じています。


「じゅーにぃ、じゅーさん、じゅーよん……」


最初の鬼はちえり。
六十を数えたら探し始める事になっています。

音で行き先がばれないよう、抜き足差し足、けれど急いであなたは動きました。


ところが向かった先で残念ながらトラブルです。
いざ隠れようとした場所には、なんと先客がおりました。


「おにいさま?
 もう、びっくりしたじゃない」


さくらです。
両開きのクローゼットを開けてみれば、ちょこんと座り込んでいたのです。

ごめんごめんと謝って、あなたは別の場所を探そうとしましたが。


「……ろくじゅう!」


遠くからその声が聞こえました。
残念ながらもう時間は無いようです。

仕方なく、あなたはさくらを膝に抱えて、狭いクローゼットに一緒に入りました。


「…………」

「…………」


遠くでパタパタと足音がする中、あなたとさくらは息を潜めました。
真っ暗なクローゼットには二人分の呼吸音だけ。

あなたの感覚は、暗闇と無音で研ぎ澄まされていきます。
膝にすっぽり収まり、抱えた両腕が余裕で余る体躯の柔らかさ。
すぐ目の前の小さな体から香る、甘いミルクのような匂い。

全てがさくらの幼さを強調するようでした。
こんな子に毎日している事を思い出し、唐突に湧き上がった罪悪感と背徳感があなたを強張らせます。


「……おにいさま」


と、さくらが囁き声であなたを呼びました。
何だろうと返事をすると、もぞもぞと体の向きを変えて振り向きます。


あ、これは。

そう直感した通り、さくらはあなたに顔を近付けました。
罪の意識に逃げようとする体を抑え、あなたは触れるだけの口付けを受け入れます。
もう慣れた物でした。
精神面以外は。


……ただ、その次は初めての事。


「……しらなかったわ」


さくらは背伸びをするようにあなたの耳元へ。
その動きで首もとの鈴を、しゃん、と鳴らして。
でも外に音が漏れないように、吐息がくすぐる程に唇を近づけて。


「くらい所って、どきどきするのね?」


正体不明。
一体どこから生まれたのか理解できない程の、色を伴った囁きでした。

ざわ、と肌があわ立つのをあなたは感じました。
再びもぞもぞと膝に戻っていくさくらが、何か知らない生き物のようにすら思えます。


平常心、平常心……!

ちえりがクローゼットの扉を開けて、あなたと密着するさくらにずるいと怒るまで、あなたはそう唱え続けたのでした。





■ 好感度自動上昇

『ロコ』

48 + 2 = 50

『スピナ』

56 + 2 = 58

『さくら&ちえり』

16 + 2 = 18


◆ 作物レベル上昇

トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  50金貨/週


■ ログインボーナス


その後のかくれんぼは何事も無く五回を繰り返して終わりました。
十分満足した双子姉妹は、ロコを誘って修理の終わった露天風呂です。
地平に沈む夕日を眺めながらの入浴は、今日は彼女達の特権でした。

その間に、あなたは日課の祈りを済ませます。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は81……81です……。
 そろそろ一緒に入っても良い頃合の子がいますね……。
 むしろ飛び入りでも良いのでは……ここは一つきっかけでも作ってあげましょう……しょう……ょう……」





家の裏手から歓声が聞こえました。

悲鳴では無いので勿論あなたは飛び出したりはしませんでした。
例え毎日唇を交わす仲であろうとも、風呂を覗いて良い道理はありません。
あなたは落ち着いて逆側に出て、何か分からないかと見渡しました。


すると一目瞭然です。
夕日と共に差し込んだ一筋の光が畑に突き刺さり、そこを中心に燐光がぶわりと広がりました。

どうやら女神様の祝福のようです。
この分ではきっと明日は大忙しでしょう。

露天風呂の方から聞こえる祈りの声に合わせて、あなたもまた感謝に頭を下げました。



◆ 今週の作物の効果が『2倍』になります。


■ 8月 3週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆☆
『嗜好』 ☆
『文化』 ☆


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  50金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv5  健康+3 文化+1  55金貨/週
『畑③』 サクランボLv1   嗜好+2       20金貨/週


◆ 待機作物リスト

――


◆ 精霊リスト(3/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N+   トウモロコシの精霊   好感度 50/100
『スピナ』      R+   ホウレンソウの精霊  好感度 58/100
『さくら&ちえり』  R    サクランボの精霊    好感度 18/60


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『770金貨』

『女神の羽根 x1』
『輝く種 x1』


◆ 家具

『三人がけソファセット』
『源泉掛け流し露天風呂』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『褐色の誘い』

「ロコ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、ロコとの混浴を行う。


◆ キャラクタークエスト 『楽園の夜』

「スピナ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


■ 精霊召喚 / 輝く種


その夜、夕飯後の空いた時間に、あなたは掌に種を乗せて考えました。

家の部屋は半分以上が無人のままです。
そこに新たな住人を加えるかどうか、あなたは少々悩みました。

人手が増えれば勿論日々の仕事は楽になります。
また単純に、今も明るい家の中が一段騒がしくなるのは、きっと大変素敵な事です。

ただ、今の五人での生活が酷く心地良いのです。
このままもう少し。
そういう気持ちも無くは無い、というのも本音でした。



『選択肢』


◆ 精霊を召喚する

◆ 今回はやめておく


>>下1

多分上の選択肢を指していると思われるので、召喚する方で話を進めます。
違ったら指摘して下さい。


よし、とあなたは立ち上がります。

あなたは今夜、精霊を召喚します。
この家に新たな家族を迎え入れるのだと、そう心を決めました。

ならばやっておかねばならない事がある。
あなたは意気揚々と、四人が談笑する居間へと踏み込みました。


「あの、主様……?
 それは、一体何を?」


不思議そうなスピナに、あなたは答えます。


「言うなれば、祈りの一形態かな」

「はぁ、なるほど。
 そういうものなのですね」


あなたはテーブルと椅子を動かし、その位置を整えていきます。
僅かの狂いも無く、美しい配置となるように。

それが終われば台所の調理器具。
更に次はローテーブルを囲むソファをです。


ガチャといえば宗教。
宗教といえば祈り。
なるほど、あなたの言もあながち間違いではないのかも知れません。

ガチャに挑む際には身を清め、家内を整えよ。
そう教える一派に、あなたは今日入信した様子でした。


そうしてあなたは四人を引き連れ、地下に入ります。

勿論、召喚陣周辺のチェックも欠かしません。
一欠けらのゴミも無いかを入念に調べ上げ、それから呼吸を整えました。

完全、完璧、パーフェクト。
確信が持てるだけの時間をかけて、あなたは召喚に挑みます。


握った拳が開かれ、種が落ち、そして発せられた光は――。



01~50 ノーマル
51~85 レア
86~00 Sレア
ぞろ目 SSレア

>>下1 コンマ判定


すぅ。

すぅ、でした。



何かと言えば、音がです。
銅が銀に変じる、かぁん一つすら響きませんでした。

ゆらりと召喚陣から立ち上がった光は銅のまま、何の兆しも見せません。

うん、とあなたは頷きました。
まぁこんなものです。
最も大きい確率を当たり前に引き当てた、ただそれだけの話でした。


あなたは気を取り直し、揺らめく光を眺めます。

レアリティなどただの飾り。
現実となった今では何の意味も持ちません。
持たないのです。
持たないったら持たないのですから、そっと噛まれたあなたの唇はきっと見間違いです。

サービス開始当初から過労で命を落とすまで、10%で引けるはずのSSレアを一度も引き当てた事が無い――。
そんなあなたの事実は、今は何の関係も無いのです……。


銅の光はやがて、徐々にその光量を強めていきました。
同時に、その中に人影を生み出します。

さて、今度は誰が来るのだろう。

じっと見つめる五対の瞳の前に、ついに新たな精霊が――。



01~10 コメ
11~20 玉ネギ
21~30 ジャガイモ
31~40 ひよこ豆
41~50 大豆
51~60 レタス
61~70 小麦
71~80 長ネギ
81~90 ソバ
91~00 キャベツ


>>下1 コンマ判定


光が収まった時、そこに居たのはすらりとした体躯の少女でした。

年の頃は十代半ばでしょうか。
良い所の学生を思わせるしっかりした作りのブレザーとカーディガンに身を包み、縁無しのメガネをかけています。
二つに分けた薄緑の髪を体の前に垂らし、緩く編んだ様からは優等生の雰囲気が漂っていました。

彼女が何の精霊かは、肩にかけた鞄を見れば明らかでしょう。
意匠化された葉で作られたようなそれは、もうパッと見でキャベツです。

おー、と背後のロコから声が漏れました。

物凄い頼りになりそうな出来る子。
初見の印象はそういう物でしょう。

あなた自身、そうだったのを良く覚えています。


「……」


そんな彼女は、ローファーをこつこつと鳴らしてあなたの前へ。
緊張から、誰かが唾を飲む音が聞こえた気がしました。


張り詰めた静寂が支配する地下室を、少女の声が割り開きます。


「まいどどうも、こちらこういう者です!」


キャベツ鞄の中からすぱっと勢い良く差し出されたのは……名刺でした。
受け取ればそこにはこう書いてあるのが分かります。


"キャベツの精霊 ルシュ"


「呼んだという事は、まぁ私を好きにできるという事です。
 お役目なので抵抗も反抗もしませんが、是非楽しませて下さいね。
 楽しめた分はキッチリお返ししますから。

 利益には利益を。
 それが私のモットーなので!」


ニカッと笑って少女は言います。
その笑顔は家族の誰とも似ていませんでした。

もういっそ、清清しい程の営業スマイル。
まさしく商人の笑顔に他なりません。


物凄い頼りになりそうな出来る子。

なるほど確かにその通り。
大概の仕事を安心して任せられるだけの能力を持つ事は、あなたは良く知っています。

ただし。
有形無形は問いませんが、支払える何かがあればの話。


「これからよろしくお願いします、御使い様。
 良いお付き合いが出来る事を心から願っていますよ」


扱いやすいけど面倒くさい。
矛盾しているようなしていないような評価をされるキャベツの精霊。


そんな彼女と握手を交わし。


(……家族、ちゃんとなれるかなぁ)


なんて、ちょっと微妙な不安を抱くあなたでした。

寝ます
おやすみなさい


■ ソーシャルゲーム版の評価


『レアリティ』


入手難度を示すパラメータ。
ノーマル、レア、Sレア、SSレアとあり、後ろに行く程入手が難しい。
ソシャゲではおなじみのアレ。

ただし他のソシャゲと違い、レアリティが高ければそれだけで有用かというと少々違う。
基本的に「きす☆ゆあ」のレアリティは「役割」で分けられている。
低レアは生活の根幹を支える主食や主要野菜がメイン。
高レアは人々を楽しませる嗜好品である果物や香辛料の割合が多くなっている。

一般的なソシャゲのようにSSレアを揃えれば何でも出来る、という事にはならない。
ノーマルやレアを片っ端から処分してしまい領地を餓えさせ病気を蔓延させる、というのは他ソシャゲ経験者が陥りやすい罠。


このため、仕様上レアリティと有用性が釣り合わないケースも多々ある。
特に有名なのは三名。

「絶対領民健康にするウーマン」「レアリティ詐欺の緑の方」ことホウレンソウの精霊、スピナ。
「食卓を塗り潰す赤」「レアリティ詐欺の赤い方」ことトマト。
「器用万能」「もうこの子一人でいいんじゃないかな」「レアリティとはいったい」こと大豆。

特に「大豆」はレア以上しか排出されない課金ガチャでは入手できない関係上、下手なSSレアよりも貴重とされる事も。
攻略wikiの「特に有用な精霊」のページでは数々のキャラを差し置いて最上位に位置し、
文字色まで変えた太字で「絶対に処分してはいけない」としっかりくっきり記されている。

大残業確定してます
これだから週末嫌い
8時は多分まず無理、下手すれば9時か10時になるかもです

遅くなりました
10時からやります
明日は休みなのでちょっと長めにやって補填したい

見直したらくっそ紛らわしい書き方だった
休みなのは仕事です、すみません
更新は明日もやります


「えぇ、では契約内容はこんな所で。
 スムーズに話が進むのは大変助かります」


きりり。
そんな効果音が似合いそうな様子で、ルシュはメガネの位置を直しながら微笑みました。
勿論、営業スマイルで。

一階に上がった所でルシュが真っ先に求めたのは、今後の生活におけるルール設定でした。
ルシュが譲れない箇所とあなたが譲れない箇所。
その辺りのすり合わせです。

といっても、そう難しい話ではありません。
あなたは元々多くを求めるつもりはありませんし、ルシュも自室のプライバシーさえ守られるなら多少の譲歩は厭わない構えのようです。
結局、他の四人と殆ど変わらない条件で決定となりました。
ローテーブルを挟んだ向かいで、まとめた紙をもう一度眺めて満足そうです。


さて、そんなルシュを見て目を輝かせるのは双子の姉妹でした。

自信に満ちた表情に、ぴしっと着こなしたブレザー、すっと伸びた背筋。
いかにも出来る女という雰囲気には何か感じ入る物があったようです。


「こう? こうかしら?」

「ちょっと違うわ。 きっとこうよ」


ルシュの様子を観察しながら、二人で座り方の稽古を始めています。
残念ながら可愛らしいお遊戯としかなっていませんでしたが。


「んー、こうじゃない?
 どう、ダンナサマ? かっこよくなってる?」


更にロコまでそこに加わりました。
さくらとちえりの間に座ったまま、ぐっと体を伸ばしてあなたに意見を求めています。

こちらもコメントに困る出来でした。
全身に力が入りすぎ、石膏か何かで固められたような感すらあります。
背筋は伸びているというよりも、反っているという方が正しいでしょう。


「うん、その、大分違うように見えるよ」


えー、とロコはがっくり猫背です。

もうちょっと頑張りましょ?
そう言ってさくらとちえりがロコの体を押し戻しますが、やっぱり上手くいきません。


「ふふ、コツを教えましょうか」


と、ルシュは紙をローテーブルに置き、立ち上がります。
そのままロコの後ろに歩き、肩に手を置きました。


「まずは体の中心に、芯を一本通しましょう。
 ただし、そこにしがみついてはいけません。
 真っ直ぐ立った芯の上にお皿を乗せる……そんなイメージです」


肩を固定したまま、ルシュはロコの背中をすっと押し撫で。
促されてぐぐっと伸び上がった所で。


「はい、ストン。
 どうです?
 ちょうど良い所に収まった気がしませんか?」


声に釣られて僅かに沈んだロコの体が、驚く程安定した姿勢になりました。
正しい形に収まった背骨が透けて見えそうなくらいです。
見ていたさくらとちえりは勿論、ロコ本人でさえびっくりした表情でした。


「すごいわ、すごいわ!」

「ルシュったら、すごうでの先生だったのね!?」

「もしかしたらそうかも知れませんね?
 さ、お二人もやってみましょうか」


はぁい、と元気に返事をする二人に、ルシュはもう一度腕を奮います。
今度も見事に大成功。
どこかのお嬢様のような素晴らしい姿勢で座る少女が三人誕生しました。

互いの姿を確認して、皆きゃいきゃいと楽しそうにしています。


「まぁ……あの、先生。
 私もよろしいでしょうか……」

「……いえ、スピナさんは十分綺麗だと思いますけど」

「え……そう、ですか」


対照的に、スピナはしょんぼりうな垂れました。

まぁ仕方の無い事です。
びしり、というよりも、しっとり、という風ではありますがスピナだって綺麗な座り方であるのです。
下手に手を加えればかえってバランスを崩してしまいそうで助言などしようもありません。


家族になれるかどうか。
そんな心配はどうやら杞憂だったかも知れません。

あなたは心の中でそっと反省しました。

ルシュはなかなか面倒見が良さそうです。
これなら問題なくあなた達の中に馴染んでいくでしょう。

今はやや距離がある対応ですが、初対面なのですからそんなものは当たり前。
むしろこれまでの四人の接近速度が驚くべき水準だったのです。
あなたの持つ常識と変わらない距離感は、少なくない安心感をもたらしてくれました。


(常識人。
 ……良い響きじゃないか)


ほう、とあなたは安堵を抱きます。
一口含んだほかほかのお茶も、なんだか普段より落ち着いた味に思えます。


「あ、そうそう。
 忘れる前に最初のお勤めといたしましょうか」


その落ち着いたお茶でむせかけました。

そういえばそうだったと、あなたは思い出します。
別に忘れていたという訳では無いのですが、あなたは御使いでルシュは精霊です。
となれば勿論、キスを抜きに語る事は出来ません。


ルシュはこぼさないようお茶を戻すあなたの隣へと、ぴったり並んで座りました。
唇を重ねあうには丁度良い距離です。

メガネの向こうのパッチリとした瞳は僅かにも逸れずにあなたに向けられています。
しみ一つ無い少女らしい両手はそっと行儀良く、膝を覆うスカートの上に。
かっちりしたブレザーは隙間無く肌を隠し、性の匂いを僅かにも漏らしません。

それが逆に、酷くあなたの郷愁を誘いました。
薄い緑の三つ編み以外に、一切の「非現実感」がありません。
この場合の現実とはつまり以前の世界……日本を指します。

つまり、あなたにとって眼前でキスを待つルシュは生真面目な女子学生以外の何者にも見えませんでした。


「こういうお役目と理解して来たわけですし、遠慮はいりませんよ。
 さ、どうぞ、御使い様のお好みのやり方で」


ルシュはあっさりと言って目を閉じました。

その言葉には何のてらいも、あるいは強がりも感じられません。
全くさっぱり言葉の通り、キス自体にはまるで抵抗も無いようです。

あなたは途端に妙な気分になりました。
悪い遊びに手を出してしまったような心境です。
その物ずばりで言ってしまえば、お金を出してルシュを連れ込んだような錯覚でした。


あなたはちらりと横目で皆を確認します。
ロコをはじめに四人は、静かにあなたとルシュを見守っていました。

精霊達にとってはちょっとした特別な儀式です。
正確に言えばスピナはさらりと流した物ではあるのですが、それはそれです。
現にスピナとて空気を感じ取ったのか、邪魔をしないように手で口を覆っていました。

勿論、そこに責めるような色はひとつだってありません。
錯覚は錯覚でしかないのですから当然です。


「どうしました?
 ……あぁ、本当にお好みで構いませんよ。
 私をどう扱いたいのか、早い内に色々知っておきたいですから」


再びそう告げるルシュを、気持ちを落ち着けて見つめます。

幸いにして、罪の意識は一瞬の物。
すぐに消え去ってくれたために、口付けに抵抗を感じる事はありません。
近しい年頃のロコとは毎日熱烈に愛を交わしているのですし、さくらやちえり程の犯罪臭では無いのです。

静かにあなたを待つルシュの肩を抱き寄せ。
そうして、その唇を奪いにかかります。



『選択肢』


◆ 重ねるだけの軽いキス

◆ 愛を伝えるような長いキス

◆ 互いを貪るような深いキス


>>下1


ほんの一瞬触れるだけ。
それであなたとルシュの距離は離れました。
ロコと双子が祝福の声を上げ、スピナは軽く手を叩きます。

それで終わりと分かったのか、ルシュは閉じていた目を開きました。
異物が撫でていった唇をペロリと舐めて、一つ頷いています。


「なるほど。
 そのスタンスでしたら私も楽ですね。
 他人の唇の感触というものも、思いの外悪くなかったですし。

 では今後は、このやり方に合わせるようにします」


事前の言通り、キス自体には何の感慨も無いようでした。

実にビジネスライク。
その様にあなたは何だか安心したような、逆にちょっと残念なような気になりました。
複雑な男心というやつでしょう。


あなたとの間に落ちた種を拾い上げ、ルシュはにっこり営業スマイル。
改めてよろしくお願いしますと、計算しつくされたであろう角度で、綺麗に頭が下げられたのでした。


■ 人数増加ボーナス

各作物の獲得金貨量が上昇しました。



◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv5  健康+3 文化+1  60金貨/週
『畑③』 サクランボLv1   嗜好+2       25金貨/週


◆ 待機作物リスト

キャベツLv1 健康+1 25金貨/週


◆ 精霊リスト(4/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N+   トウモロコシの精霊   好感度 50/100
『スピナ』      R+   ホウレンソウの精霊  好感度 58/100
『さくら&ちえり』  R    サクランボの精霊    好感度 18/60
『ルシュ』      N    キャベツの精霊     好感度 10/60


■ 今週の行動選択 / 雑事


一通りやるべき事を終え、あなた達は各自の部屋に戻りました。

あとは寝るだけ。
勿論あなたもさっさとベッドに入ります。
明日も畑仕事が待っているのですから。

ただ、その眠りに落ちるまでの少しの時間。
明日は何をしようかと、あなたはぼんやり考えます。



『選択肢』


◆ 作付変更

◆ 施設拡張 (選択不可/所持金不足)

◆ 妖精のお店

◆ 何もしない

お店冷やかすだけってのはアリ?

>>693
書いておけばよかったですね、全然有りです


うん、とあなたは心を決めました。

さくらとちえりは少しお休みです。
新しい精霊がやってきた事を領民に伝えるためにも、ルシュとの交代は良い選択かも知れません。
明日サクランボを取り終えたら、早速種を撒くとしましょう。



◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv5  健康+3 文化+1  60金貨/週
『畑③』 キャベツLv1    健康+1       25金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1 嗜好+2 25金貨/週


■ 今週の行動選択 / メイン


翌日、さくらとちえりがちょっと拗ねはしましたが、植え替えは問題なく終わりました。

領民の皆にルシュの事を伝えたい。
その一言で抗議を引っ込めた二人を、あなたはいっぱい抱き締めてあげました。


さて、新しい仲間を加え、こうして始まった今週です。
どういう日々にしようかと、あなたは予定を組み立てます。




『選択肢』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚 (選択不可/所持金不足)

◆ 文通

◆ 外出


>>下1


週の半ば。
あなたは畑の収穫を放り出し、慌てて走っていました。

向かう先は風車小屋。
理由はといえば、突然の通り雨です。
急に暗くなった空に、おや、と思った数瞬後にはもう振り出しました。

バタバタと叩きつけるような強い雨は肌に痛みを感じる程。
とても畑仕事どころではなく、家よりも近かった風車小屋へと向かっているという訳です。


早速ぬかるみ始めた地面を蹴り、頑丈な壁を伝って裏へ。
そこにある小さな扉を開けて滑り込むように中へ入ります。

と、そこには。


「あら、主様も雨宿りですか?」


ぽややんと笑む、あなたと同じくずぶ濡れの先客がおりました。


スピナです。
スピナですが、一瞬、まるで別の誰かに見えました。

あなたは思わず息を呑みました。

とうに見慣れたはずの姿が、今再び新鮮さをもって立っているのです。
濡れた衣服は当然のように肌に張り付き、たおやかな曲線をくっきりと浮かび上がらせます。
その上を覆う水を滴らせる長い黒髪は淫靡さを助長する以外の役割を持ちません。


「……?
 あぁ、どうぞ主様。
 まさか追い出すなんて致しません」


すすす、とスピナは壁際に寄ってあなたを招きます。
どうやら小屋が狭くなるからと遠慮していると考えたようです。

ただ、ここは二人程度でどうにかなるような大きさではありません。
風車を動力にしたひき臼を中心に数人は座って余裕を残すでしょうし、諸々の道具を置く分のスペースもあります。
スピナの心配は的外れというものです。

そもそもとして、あなたはスピナの肢体に見惚れていたのですから。
スピナは全く気付いていないようですが。


この雨の中、外に出る事は出来ません。
誘われたというのに距離を開けるのも悪いでしょう。
あなたは床を濡らしながら、スピナの方へと歩みました。





「……」

「……」


そうして、並んで座ることしばし。
雨音は未だ続き、風車小屋には静寂が満ちています。

高所にしか窓が無く、外界から切り離されたような空気。
奇しくもあの展望台と似た条件が揃ってはいましたが、明確に異なる点も一つありました。

他でもない、隣に座り、雨音に耳を傾けて楽しんでいるスピナです。
見目にまるで頓着しないスピナは、雨に濡れていてもそのままでした。
透けて見える素肌を隠そうとも、何か問題だと思っている様子もありません。


見てはいけない。
そう思っているのに、視線を引き付ける力は強力に過ぎました。

肉感的とは言えません。
スピナはどこもかしこもほっそりとして、肉という言葉から縁遠く感じます。
けれどそこから香り立つものは余りに魅惑的でした。

控え目なカーブを描く胸元など、異性を誘引する何らかの魔法が働いている可能性を疑いたくなる程の色を漂わせていました。


あなたの心は、とてもあの時のようには落ち着けません。

一秒毎にスピナへの欲が降り積もります。
もし今、三度目の膝枕に誘われでもしたら。
そう想像し、何をしでかすか分からない自分に、あなたは大きな不安を抱きました。


……このままではいけない。

あなたは何か、何か気を紛らわす事は無いかと頭をぐるぐると回転させます。



>>下1 何か話題や行動をどうぞ (何も無ければ、沈黙を選べば問題なく進行します)


「スピナは、今入る皆についてどう思う?」


ぱっと思い浮かんだ話題を、あなたはそのまま口から出しました。

ロコ、さくら、ちえり。
スピナは皆にどういう感情を抱いているのか、聞いてみようと思ったのです。

雨音に集中していたスピナは、そっと閉じていた目を開きました。
そして、はて、という風に頬に手を当てます。
むむ、という声が聞こえてきそうな雰囲気でした。


「どれぐらい好きかとなると、とても難しく思います。
 気持ちばかりが大きくて……例える物が見つかりません」


あなたは思わず微笑ましくなりました。

どう思うか。
そう聞かれて出てきた大前提が「好き」だというのです。
何だかとてもスピナらしい気がして、酷く嬉しくなったあなたでした。


ではルシュはどうだろう。
あなたは続けて問いました。

これから共に暮らす新たな住人を、スピナはどう思っているのでしょう。


「ルシュさんはまだ、何とも言えません。
 ただ……いいなぁと、少しだけ」

「へぇ、どのあたりが?」

「芯のある辺り、でしょうか。
 私には、そういう確かな物は縁が無いような気がするものですから」


確かに、それは感性で漂うような在り方のスピナには無い物でしょう。

くす、とスピナは笑います。
そこに陰を帯びたものは見当たりません。
ただ本当に良いと思っただけなのでしょう。
羨ましいとも、そうなりたいとも、スピナは思ってはいなさそうです。

あなたはこれもまた嬉しくなりました。
仲良くなるきっかけには、この好感はきっと十分以上の材料です。


あなたはほっと息をつきました。

スピナは何の心配も無さそうです。
これまで通り、皆と良くやっていけるでしょう。
あくびが出そうな程の穏やかな安寧の日々はこれからも続いていきそうです。

と、そこでスピナが小さく動きました。
少し開いていたあなたとの距離を詰め、あなたへとペタリと濡れた体をくっつけます。
そのまま寄りかかるようにして、あなたの肩に頭を預けました。


「最後に主様ですけれど、言葉にするよりも、こうした方が伝わるかと思います」


スピナはまるで子猫のようでした。
甘えるように、求めるように、あなたに自身を押し付けます。
実に分かりやすい愛情表現でした。


今居る皆。
その言葉には当然、あなたも含まれます。
発言者たるあなたは自分を抜かしていたつもりでも、スピナには全くそうではありません。
どう思うか聞かれたから、素直に答えてくれたのでしょう。


酷く心臓に悪い状態です。

ただでさえ美しく色香を放つスピナが、今日は水気を纏ってより妖艶になっているのです。
そんな彼女に身を擦りつけられて平静でいられる男が存在する訳がありません。
距離が縮まり、より鮮明に姿が目に入るようになっては余計にです。


「……主様は、私の事はどう思っていて下さいますか?」


そこに、更なる追撃です。

スピナはあなたに触れたまま、ゆるゆると見上げました。
どこか期待に濡れた光をその目に宿して。
そこ以外の世界に興味が無いとでも言うように、あなたの瞳だけをじっと見つめています。


聞いたのだから、聞かれるのは当たり前。
当たり前なのですが、あなたはどうやら油断をしていた模様です。

息を乱し、視線を揺らし、一通り動揺の兆候を繰り返しました。
その間も、スピナがあなたから目を逸らす事はありません。

それで、あなたは覚悟を決めました。
あなた自身がスピナをどう思っているか。
その素直な気持ちを、真摯にスピナへと訴えます。



>>下1 言葉、あるいは行動で気持ちを示して下さい


あなたの心は一時、酷く揺れました。

スピナは愛を、男女の愛を求めているようにしか見えません。
今この場で押し倒し、情欲を満たしあう事を望んでいるように。
そのようにしても抵抗せず受け入れてくれるのではないかという、そんな願望が芽生えた事は否定できません。

けれど違うのです。

子猫のよう。
いいえ、そうではありません。
スピナは実際に、子猫そのものと言って良いでしょう。

自身の行いがどれだけ男を狂わせるのかなど、スピナは知りません。
ただ単純に、本当に真っ直ぐな好意を伝えてきているだけなのです。

だというのに。
都合の良い妄想に囚われてこの美しい女性を汚すなど、どうして出来るというのでしょう。


あなたは自身の中の欲望に、固く固く蓋をしました。
それから、心を占める好意をそのままの形で掬って、スピナへと手渡します。


「スピナは大事な家族だよ。
 ずっと一緒に暮らしていたいと、そう思ってる」


あなたの答えに、スピナはぱっと花開きました。

喜びに満面を染め切って、より強くあなたに寄り添います。

誰がどう見ても幸せそのもの。
そんな表情です。


「はい、主様。
 私も同じ気持ちです」


そうしてスピナはあなたに全てを預けて、再び雨音を楽しみ始めました。
あなたもまた、暖めるように肩を抱くだけで、先を求めるような事はありません。

二人きり。
だというのにいつものように唇を交わすわけでもなく。
時間はどこか曖昧で、甘く包み込むように。


通り雨は未だ続き、世界は遠く風車小屋を囲います。

どうかまだ、もう少しだけ止まないで欲しい。

それはきっとあなたとスピナ、二人共にとって同じ願いだった事でしょう。


■ スピナ好感度上昇判定


パーフェクトコミュニケーション!

最低保証好感度 +7


>>下1 コンマ下一桁が更に加算


■ スピナ好感度上昇

58 + (7+9) = 74

58+16のために電卓起動するレベルで眠いのでここまでで。
書いてて思ったけどスピナさんこれクッソ性質悪い天然サークルクラッシャーなのでは。
おやすみなさい。


■ ソーシャルゲーム版の評価


『キャベツの精霊 ルシュ』


いつもHEIZEN、余裕の顔の商売人。
営業スマイルを崩さない、ブレザー姿の出来る女。
トレードマークはキャベツ型の肩掛け鞄。

いまいちパッとしない緑髪の地味子という評価で、毎年恒例の年末人気投票でも奮わない順位。
全差分でメガネを外さない点からメガネクラスタからは一目置かれているが、それだけ。

「華が無い上にデレないとかどうすればいいの」
「三つ編みなのに何故黒髪じゃないのか」
「取ってつけたようなキャベツ要素」

など、本当にいまいち人気が無い。

商売人気質を生かしてイベントでの出番は何度かあったが、それもキャラを強く印象づける程ではない。
いっそ清々しい程に腹黒ければいわゆる「ちひろ」方面のキャラとして活躍できた可能性は高かったが、
なまじ常識を持ち合わせるために突き抜けた感に欠けるのは否めない。
請け負った役割に抜けた部分を残すようなドジも、あるいは茶目っ気も見せず、淡々と終わらせて身を引く仕事人ぶりも影の薄さに拍車をかける。


そもそも話題に上る回数も乏しく、二つ名や通称の類は無い。
ただ、夏の水着イベント出演時にイラストの雰囲気がやたら変わっていたために「整形疑惑」が持ち上がった事はあった。

甘藍(カンラン)だから「ラン」に
なるかと思ったが……さすがに蘭と
区別できんか(^^;

7時くらいからやれそうです
ランちゃんも考えたんですがこの性格の子をランちゃんで呼ぶのに謎の抵抗があった次第


■ 8月 4週目


家の増築による増えたのは、礼拝堂や風車小屋だけではありません。
召喚陣とは別の箇所に新たに増えた地下室は、なんとも便利な代物でした。

普段の水仕事の邪魔にはならない台所の隅、床板を一部跳ね上げると、そこからは階段が続いています。
一人がぎりぎり通れる程度の狭いそこを下りれば、ひやりとした空気があなたの肌を撫でました。
ロウソクのか細い光に照らされて目に入るのは、白い小山です。

そっと手を伸ばしてすくいとれば、何であるかは一目で分かるでしょう。
大量の雪でした。

あなたは学生の頃、歴史の授業で習った内容を思い出します。
冬の間に降った雪を溜め込んでおいて食品の低温貯蔵に利用する……いわゆる「氷室」です。

この夏場にどこから雪を引っ張り出したのかは分かりませんが、妖精のやる事をいちいち深く考えるのも時間の無駄とあなたは苦笑しました。


ともあれ、これのお陰であなた達の食生活は格段に改善される事となります。
一例として、作付の変更によりサクランボは畑から姿を消しましたが、まだ幾らかは氷室に残っています。


「お疲れ様です。
 よければこちら、お使いください」


氷室から戻ったあなたに、すっと手ぬぐいが差し出されました。
新たに加わった仲間、ルシュによるものです。

あなたは何も暇つぶしに地下に潜ったわけではありません。
今後何かあった時のための非常食として、食材を運び入れていたのです。
両手に余るトウモロコシを抱えて狭い階段の上り下り。
いくら下は涼しいとはいえ、多少の汗は流れていました。

礼を言って手ぬぐいを受け取り、顔を一拭き。
それだけで蘇ったような気分です。


「お礼を言うのは私ですよ。
 御使い様のお陰で助かりました。
 何分、この腕は力が弱いようでして」


ルシュは自分の腕を摘んで言います。
筋肉の気配はそこにはありません。

見た目通り、か弱い少女の細腕では一度に運べる量にも限度があります。
運び入れに難儀していた所を見かけ、手伝いを申し出たのは当たり前の成り行きでした。


「いやいや、こういうのは男の仕事だからね。
 他にも手伝える事があったら、気軽に言ってくれていいよ」


ですので勿論、あなたはそう返します。

降臨から四ヶ月以上。
あなたの体も最近すっかりたくましくなってきました。
畑仕事による筋肉痛が起きる事はもうありません。
多少の力仕事は屁でもないのです。


「それでは折角ですので種を。
 ちょうどこれからですので」


対してルシュは、あなたの肩に手を添えて、ぐぐっと伸び上がりました。
ほんの一瞬触れるだけ。
召喚の日に行ったものと寸分違わぬキスをして、それで離れていきました。


「はい、ありがとうございます。
 早速こちら、植えてきますね」


表情に微塵の揺らぎも無し。
あなたに頭を深く下げて、平静そのものでルシュは畑へ去りました。

その颯爽とした背中を、どうしていいやらという思いであなたは見送ります。
なんというか、クールでした。
ルシュとの口付けはビジネスライクすぎて、心臓を跳ねさせる余地が皆無なのです。
ロコとも、スピナとも、さくらやちえりとも違う、全く新しい戸惑いです。


一人残されたあなたは、後ろ頭を軽く摩りました。

ルシュはそういう個性の子なのでしょう。
そこをとやかく言うつもりは、勿論ありません。

出来るだけ早く慣れないといけないな。
そんな風に思わされた、ある日の昼下がりでした。


■ 好感度自動上昇

『ロコ』

50 + 2 = 52

『スピナ』 ※ 交流時に「女神の羽根」を消費し忘れていたので、加算しています ※

75 + 2 = 77

『ルシュ』

10 + 2 = 12


◆ 作物レベル上昇

ホウレンソウLv7  健康+4 文化+1  65金貨/週


■ 好感度ボーナス



「……ん……はぁ……あるじ、さま……」


あなたの腕の中。
全身を使ってあなたに縋るスピナは、切ない声を上げています。

スピナが特に好む、貪りあうような深いキスの最中。
あるじさま、あるじさま、と。
幾度も繰り返される甘い呼びかけに、あなたの頭は狂い溶けそうにすら思えました。

唇が離れ、舌が唾液の橋を伸ばし、そして次の瞬間にはより深くと再び襲い掛かり。
その度にあなたの背に回されたスピナの手には力が篭ります。
二度と離さず、死の瞬間までこうしていたいと言わんばかりに。


「は、ん……や、ぁ……あるじさま……。
 はなさないで、ください……もっと、んぅ……」


ぴちゃ、ぴちゃ、くちゅ、くちゅ。
睦みあうあなた達を包む展望台の異世界には、それだけが木霊します。

じじじ、と。
そんな幻聴が聞こえるのではないかとあなたは疑いました。
精神を形作る何かは致命的な焼失を続け、取り返しのつかない変質はその勢いを止めようとはしません。
視界は幾度と無く白く弾け、今自分がどこにいるかさえ見失いそうです。


……それでもあなたが触れたのは、肩と背と腰、それだけでした。
決して、何も知らず、けれど何もかもが淫らな女を、劣情に任せて貪る事だけはしませんでした。






「はぁ、はぁ……はぁ……。
 あるじさま、やはり、キスは心地よい物ですね……」


うっとりと、身を起こしたスピナが言います。

息を乱し、髪を乱し、服を乱し。
サキュバスか何かとしか思えない様のままで。


あなたは肯定も否定もできません。
確かに心地よい物であるのは確かです。
しかし、それと同時に恐るべき拷問でもありました。

体勢を変え、そっと大変な事になっている部位を……押し付けたいという欲を最後まで抑えきれたそこを、あなたは隠します。
こちらに興味を持たれたらと思うとバレる訳にはいかないのです。


「……あら?」


と、スピナが声を上げました。

不思議そうに床に手を伸ばします。
その先に転がるのは、今しがたのキスで生まれた種達です。
一見「マキビシ」のようにも見える尖ったそれらの中から、スピナは一粒を拾い上げました。


「まぁ……。
 主様、こちらをご覧になって下さい」


それを両手で作った器に乗せて、あなたへと差し出します。

そこにあったのは――。



>>下1 コンマ判定


奇数 輝く種
偶数 奇跡の種
ゾロ  天命の種


おぉ、とあなたは目を見開きました。
黄金の種は、輝く種の上位に存在する貴重な品です。
ゲーム中の表現で分かりやすく言えば、課金ガチャのチケットでした。


光を放つ種を手に、スピナは大喜びです。
といってもロコや双子のように飛び上がったりはせず、ニコニコと微笑むだけですが。


「主様。
 これはもしかしてなのですが」


上機嫌のスピナは、すすすとあなたに近寄ります。
先程のキスがまたも再開されるのかとおののき、あなたは僅かに身を反らしました。
そんな動きにも気付かず、スピナは続けます。


「この種で呼ばれた方は……私と主様の子供という事になるのでしょうか?」


思わず、あなたは笑いを零しました。

残念ながらそうはならないでしょう。
種は召喚の触媒となるだけです。
呼ばれて現れる精霊はあなたの血を継ぐ訳でも、スピナが腹を痛めて産む訳でも無いのです。

あなたの返答に「しゅん」と萎れるスピナが何だかおかしくて。
慰めるように、慈しむように、あなたは細い体を抱き寄せて、その頭を撫でるのでした。





■ アイテム獲得

『奇跡の種 x1』

レア以上確定の召喚を行える、黄金に輝く種。
SレアとSSレアの召喚確率も通常時より大きく上昇している。


■ 好感度「60」突破

スピナとの『いちゃらぶ混浴』が可能になりました。
混浴を希望する場合は、以下の例を参考に行動を指定して下さい。




1) 『今週の行動選択』の際に『交流 スピナ 温泉』と指定する。

2) 『今週の行動選択』で『交流』が選ばれた後、対象を決定する際に『スピナ 混浴』と指定する。


■ ログインボーナス


展望台から下りたあなたは、まず礼拝堂に向かいました。

あの種を授けてくれたのは勿論女神様でしょう。
真っ先にお礼を言うのは当然の礼儀です。

しっかりと命の形に手を合わせ、あなたは感謝を伝えます。
女神様、いつもありがとうございます。

……それとついでにもう一つ。
スピナがもう少しだけでも、男心に優しくなってくれますようにと、儚い願いも一緒に。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は14……14です……。
 スピナの心を操る事は出来ません。
 ですが、そうですね……裸の付き合いだけは回避できるよう、気を利かせて差し上げましょう……しょう……ょう……」





祈りを終えたあなたは、そろそろ一汗流すかと家の裏手に回りました。

温泉。
素晴らしい言葉です。
日本人ならば心の中に思い描いただけで、ほぅと息を漏らすに違いありません。

ゆっくり浸かろう。
茹で上がるまでのんびり入って、溜まった煩悩を癒すのだ。

あなたは意気揚々と、鼻歌交じりに歩きます。



……が、しかし。


「ぷき?」

「ぷー」

「「「「ぷきゅきゅ?」」」」


あなたは頬を引きつらせました。

一体どこから侵入したのか。
丸々とした縞模様の豚、ウリボー達の一家族が気持ちよさそうに温泉を楽しんでいるのです。


あなたはこの不埒者共を結構な時間を費やして追い出しました。
天然露天風呂は見事あなたの手に戻ったのです。

ですが、だからと湯を楽しむ事は出来ません。
何分相手は野生動物。
見た感じ相当な長時間浸かっていたようですし、どんな影響があるか分からないのです。
しっかりと清掃するまでは使用禁止とせざるを得ません。


がっくりと膝を付き、長々と溜息ひとつ。
あなたの楽しみは、少しの間お預けとされる事となりました。



■ 施設故障

今週は『いちゃらぶ混浴』が行えなくなりました。


■ 精霊召喚 / 種


その夜、夕飯後の空いた時間に、あなたは掌に種を乗せて考えました。

再び手に入った種。
これを使うかどうかについてです。

あなたは先週、ルシュを召喚したばかりです。
彼女がまだ完全に馴染めていないのにもう一人、というのは少々考える所ではあります。

ただ逆に、同期として仲良くなる可能性だってありました。
馴染みが無い場所に一人きり。
それよりは新入り二人で手を取り合えた方が気が楽という事もあるでしょう。


『選択肢』


◆ 精霊を召喚する

◆ 今回はやめておく

◆ ○週間保留する (2~4週間の自由指定 保留中はこの選択が発生しません)


>>下1


うん、決めた。
あなたは一人呟いて立ち上がりました。

やはりルシュには同期が居た方が良いでしょう。

あなたは過去、日本での生活を思い返します。
中学を卒業してすぐ、高校など受験さえする余裕も無く、あなたは就職しました。
そこで苦楽を共にした同期は、一時あなたの心を支える友人となってくれたのです。

……もっとも、その友人は会社のブラック具合からすぐに退職を決めたため、同期は一月もせずに居なくなってしまったのですが。


嫌な記憶を振り払い、あなたは部屋を出て地下に向かいます。
勿論、五人の精霊を引き連れて。


召喚陣の前。
あなたは種を握った手を差し出したまま、一瞬の奇跡を待っていました。

じりじり、じりじり。
心が僅かずつ焦げていくような時間が地下に流れます。


「あの、御使い様。
 これには一体どのような意味が?」

「……祈りの一形態、かな」

「……なるほど。
 いえ、こういった事は個人の思想ですし、私は何も」


ルシュが疑問を呈し、あなたが答え、そしてどこか呆れたような空気が漂いました。

しかし勿論、そんな事で揺れるあなたではありません。
静かに、待ち望む時を見極める事に集中します。


あなたが同行させた五人の精霊は、皆その手にロウソクを持っていました。
ゆらりゆらり。
ロウソクの炎は揺れ、一時たりとも同じ形を保ちません。

それこそを、あなたは見えざる「運」の指標としました。
炎の形に、己が命運を分ける「流れ」を見るのです。

これぞまさしく「光源教」

かつて、燃え尽きた世界を救った英雄達がこぞって捧げた祈りの形。
その傍流とも言える儀式です。


――そうして、その一瞬は訪れました。


ぶわり。
どこからかほんの僅かな風が吹いたのでしょうか。
五つの炎は、全く同じタイミングで揺れたのです。


あなた機を逃さず、その瞬間を確実に捉えました。

握った拳が開かれ、種が落ち、そして発せられた光は――。





01~50 レア
51~85 Sレア
86~00 SSレア

>>下1 コンマ判定


かぁん!


……それで、終わりました。

あなたは静かに天を仰ぎます。
ふふ、と自虐の笑みが浮かぶのをどこか遠い所の自分が知覚しました。

思い出すのはあの記憶。
ガチャ欲を必死に我慢して溜めに溜めた種50粒。
それを全てイベント限定ガチャに投入して、Sレア一人さえ引き当てられなかった悲しみの日です。


ぐっとあなたは拳を握りました。
あの日の衝撃に比べれば、なんて事はありません。

平気平気。
全然平気です。
涙なんか出ません。
男の子ですから。


持ち直したあなたの前で、銀色の光は徐々に強まります。

その光の中より歩み出るのは。

今回はさて、一体誰でしょうか――?



01~10 カボチャ
11~20 トマト
21~30 ニンジン
31~40 アスパラ
41~50 ゴボウ
51~60 ワサビ
61~70 パプリカ
71~80 ナス
81~90 柚子
91~00 ダイコン


>>下1 コンマ判定


真っ先に目に入った物は、鮮烈な赤でした。

燃えるように広がった紅の帯は、どこか挑発するような彩りであなたを誘います。
重力に引かれ、一つに纏まり、さらりと地へ垂れ下がる。
その全てが完成された美を形作っていました。


「まずは感謝するぞ。
 よくぞ、よくぞこの私を呼び出した」


くくく、と自信と野望に満ちた笑み。

それであなたは確信します。
此度現れたのは、あの真っ赤な野菜です。
スピナと双璧を成すレアリティ詐欺の赤い方。

あなたは思わずにっこり笑いました。
素晴らしい相手を引き当てたと、そう心を躍らせたのです。


「ここに宣言しておこう。
 最早お前達は、私抜きでは生きられない。

 ――あらゆる食事は、今この時より赤く染められるのだ」


「さぁ崇め奉るが良い。

 我こそは食卓を塗り潰す者。
 真紅を纏う侵略者。

 このトマトの精霊――マト様の前に、万民等しく跪くのだ!」


ふははははー。

と、テンション爆発中のマトちゃんです。

それを前に、あなたは精霊達を振り向いて、ぐっとガッツポーズを決めました。
やったぞみんな。
これで好きなだけタコスが食える!
いささか空気に呑まれた顔の皆の手を取り、勝手にハイタッチを決めて回ります。


「お、なんだそんなに嬉しいのか。
 ふはは! 分かっているではないかこやつめ!」


うんうんとマトちゃん様は上機嫌。
そんな彼女ともパチンと手を合わせ、あなたは召喚成功を喜びました。


言葉は尊大。
けれどその御姿は可憐です。
あとポンコツ臭も山盛りに。

真っ赤なツインテールにちっこい背丈。
可愛らしいシェフコートの上に羽織った真紅のマントは、良く見れば仮装のような安物です。
服を押し上げる丸く実った果実の下で組んだ腕は、不器用なのか片手がはみ出して微妙に格好つきません。

彼女こそがトマトの精霊。
ファンスレにおいて熱心な信者のみに語られた裏の二つ名を「君、名前の前にプチって付くよね?」のマトちゃんです。


「では案内するが良い。

 くく、私の覇道の第一歩を先導できるのだ。
 喜びに身を捩っても良いぞぉ?」


たゆんとお胸を揺らして得意満面。

あなたはそれに合わせた演技を心がけ、ははぁと腰を折るのでした。


と、ここまではあなたの良く知る姿でした。

意外だったのはここから。
いつものローテーブルを囲うソファに座った途端の事でした。


「くくく……んぁー、疲れた」


尊大に組んでいた腕をほどき、背もたれにデロンと寄り掛かります。

あなた達は勿論、皆で目を丸くしました。
同一人物とは思えないだらけ振りです。

困惑する皆を代表して、ロコが口を開きます。


「え、えぇ……それいいの?
 何か大分崩れちゃってるけど」

「ぁー? いいよいいよ別に。
 トマトの精霊たるもの常に世界を赤く染める気概を持て、なんて皆言ってたけど、正直そこまで気張る気ないし。
 あーゆーのはたまにやるから良いんだよ。
 毎日ふんぞり返ってる相手と暮らすとかめんどいっしょ?」


まさかの速攻キャラ崩壊、そしてまさかの正論でした。

確かに一日二日なら平気でしょう。
しかし一月二月となれば食傷気味になりそうな感は否めません。

あなたはそっと、やっぱりゲームと現実は違うのだと実感しました。
マトちゃんのこんな姿は今まで見た事がありません。
ゲームの彼女は常に先程までのような姿だったのです。


「それにぃ、別に気張らなくたって私は世界に愛される運命だからね。
 ほっといても食卓は赤くなるから平気平気」

(あ、でも根っこは同じっぽいな)


同時にあなたは頷きました。
根拠がどこかに吹っ飛んでいる妙な自信はあなたが知る彼女のままです。


「なー、御使い。
 あんたもこういうの、好きだろ?」


マトちゃんは両手でたわわなお胸を持ち上げて、あなたに誘惑を仕掛けます。
ロリな体に見事な果実。
いわゆるロリ巨乳な子でしたが、滲み出る色気という物が足りません。

ロコやスピナの猛攻に晒され続けたあなたに、今更効果がある物ではありませんでした。
むしろ微笑ましさが先に立ち、思わず赤い頭をよしよしと撫でるあなたです。


「ほぉら、なー?」


それでも色仕掛けが成功したと思っているのか。
くくく、と笑ったマトちゃんは自慢げです。

ほんとだねー、と返すロコを中心に、生暖かい空気が広がりました。


「主様……。
 交代、交代を要求いたします」


すっとあなたの横に近付いたのはスピナです。
要求通りにマトの横を譲れば、彼女は早速頭を撫で始めました。

スピナの表情は緩みに緩んでおりました。
座るマトの正面に立ち、熱心に愛でています。
まさか本当に我が子と思っているのではと、あなたは少し心配になりました。

それだけでは収まりません。


「わたしも! わたしも!」

「おにいさまとスピナだけなんて、とってもずるいわ!」


更にさくらとちえりも飛び掛りました。
左右から挟み撃ちにするように、真っ赤な髪を手に取ります。

勿論、それを見て黙っているロコではありませんでした。
残った後方、背もたれの向こうから褐色の腕が伸びて侵略者への侵略です。


「お? お?
 ふははは! なんだお前達、もうこの私の虜となったか!
 仕方の無い連中よのぅ! ふはははは!」


うんうんとあなたは見守りました。
マトちゃんが楽しそうで何よりです。


残る最後の一人。
マトの同期となるルシュはと言えば、笑いの輪から一歩外。

しかし、一人ソファに残った彼女は皆と同じく楽しそうにしていました。

あなたの視線に気付いたのでしょう。
心配不要とばかりに微笑みます。


「大丈夫ですよ。
 愉快な方は嫌いではありません。
 同期がああいう方だと、一層ここの暮らしを楽しめそうです」


言葉にどうやら嘘は無さそうです。
なら良かったと、あなたは精霊の塊に目を戻しました。


わちゃわちゃとしているそこからは、徐々に色を変え始めた声が漏れていました。


「ちょ、ちょっとお前達。
 私が好きなのはわかっ、わかったから、そろそろなー?」


どうやらマトちゃんは熱烈な歓迎はもうそろそろ良いようです。
さくらとスピナの間からあなたへと投げられた視線には、どうにかして、とのメッセージが篭められていました。



『選択肢』


◆ このまま眺めてるのもいいか

◆ 飛び込んで救出する

◆ 皆を落ち着かせる

◆ その他 (自由記述)


>>下1


はいはいそこまで。
あなたはパンパンと手を叩いて、皆を落ち着かせました。

調子に乗りやすく、ポンコツで、言ってしまえばちょろいマトちゃんです。
構いたくなるのは分かりますが本人に嫌がられてはいけません。
皆もそこは分かっているのか、しっかり一度目で止めてくれました。

ロコはごめんねと手を合わせ、双子はまた後で遊びましょうと笑いかけます。
「どうしても?」と最後まで粘ったのはスピナでしたが、あなたが「どうしても」と頷けばしょんぼりしつつも従います。


「はー、助かったわ、あんがと。
 愛情表現はほどほどが一番だよ」


一番安全そうなあなたの隣で一息。
ふーぃと安堵に身を緩めて、ずずずとお茶を飲みました。


そこで、マトは何かに気付いた風でした。
お茶をテーブルに戻し、あなたへ向き直ります。


「愛情表現で思い出したわ。
 ほら、ちょっとかがんでかがんで。
 お礼にこっちからしてあげるからさ」


あなたの胸元を一掴み。
ぐいっと引き寄せて……。

ガチン。

と音が鳴りました。


歯でした。
接近した唇同士が勢いを殺しきれず、ガッツリ芯に響く接触事故です。


「うごごごご……!」

「んぐぐぐぐ……!」


思いがけない痛みに、あなたとマトは悶えました。
二人揃って口元を押さえ、とにかく痛みを我慢します。


そんな失敗キスでも、女神様はセーフ判定を下さったようです。

悶えるあなた達と、心配する精霊達。
その中心に、パラパラとトマトの種が降り注ぎ、小さな山を作ります。

マトちゃんはそれを見て、何とか持ち直しました。
ぐぐっと元気に大きな胸を張り、最初のようにふんぞり返ります。
瞳に溜まった少しの涙は、この際見なかった事にすべきです。


「ふふん。
 ……光栄に思うがいい。
 この私の初めてを受け取った、世界で最も幸福な男となれたのだからな!」


ふはははは。
頬を少し赤く染め、小さな侵略者は笑います。

その赤みはさて、キスに失敗したからか、それとも案外純情だったからなのか。


そこの所は追及せずにいる方が、きっと彼女にとっては良い事なのでしょう。


■ 文化侵略開始

領民の食卓が赤く染まり始めました。
トマトによる文化成長が発生する度に、料理文化がトマトに侵食されていきます。


■ 8月 4週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆☆
『嗜好』 ☆
『文化』 ☆


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週
『畑②』 ホウレンソウLv7  健康+4 文化+1  65金貨/週
『畑③』 キャベツLv1    健康+1       25金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1  嗜好+2        25金貨/週
トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週


◆ 精霊リスト(5/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N+   トウモロコシの精霊   好感度 52/100
『スピナ』      R+   ホウレンソウの精霊  好感度 77/100
『さくら&ちえり』  R    サクランボの精霊    好感度 18/60
『ルシュ』      N    キャベツの精霊     好感度 12/60
『マト』        R    トマトの精霊       好感度 10/60


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『915金貨』


◆ 家具

『三人がけソファセット』
『源泉掛け流し露天風呂』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『褐色の誘い』

「ロコ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、ロコとの混浴を行う。


◆ キャラクタークエスト 『楽園の夜』

「スピナ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『目には目を、歯には歯を』

「ルシュ」の好感度が40以上。
「ルシュ」の召喚から1ヶ月以上が経過している(8月3週召喚)
上記の条件を満たした状態で、ルシュとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『精霊をダメにするあなた』

「マト」の好感度が40以上。
「精霊をダメにするクッション」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、マトとの交流を行う。


■ 今週の行動選択 / 雑事


その後、自室に戻ったあなたは愕然としました。

マトちゃんは、ロリっ子です。
さくらやちえり程ではありませんが、中学校入りたて程度の見た目なのです。
そんな彼女と唇を重ねて、あなたは僅かな罪悪感すら感じませんでした。

あ、これまずいな。
そう思うあなたですが、残念ながら病の進行を止める術はありません。

この生活を続ける以上、ストライクゾーンが拡張していくのは最早定めなのです。


諦めの境地に達したあなたは、明日の予定を考えました。
……まぁその、現実逃避というやつです。


『選択肢』


◆ 作付変更

◆ 施設拡張 (選択不可/所持金不足)

◆ 妖精のお店 (冷やかしOK)

◆ 何もしない


>>下1


畑からはキャベツが消え、新たにトマトが植え付けられました。

早速実った赤い実をあなたはがぶりと一齧り。
そして、くぅぅと声を上げました。
鮮やかな甘みと酸味が舌を奮わせたのです。
世に野菜は数あれど未調理でここまで人を唸らせる物はそう多くは無いでしょう。

そんなあなたを見たマトちゃんといえば、もう得意絶頂です。
もう一つどうだ? こっちも赤いぞ?
美味しそうな所を選び取って、さぁ食えやれ食えと世話焼き放題。

可愛らしいその姿に、もう一つぐらいならとあなたは手を伸ばすのでした。



◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv7  健康+4 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1  嗜好+2  25金貨/週
キャベツLv1    健康+1  25金貨/週


実ったトマトは早速出荷されていきました。

あなたはくすりと笑います。
トマトという野菜は中々衝撃的な作物です。
生のままでも十分ですが、加工の用途も素晴らしいバリエーションを誇ります。

赤い侵略者の自称は伊達ではありません。
歴史においても実際に大きな革新を起こしているのです。
勿論、この領地でも起こるでしょう。

料理の楽しさ、奥深さ。
それを知る時が来たのです。

――世界よ、赤く染まれ。


……などと、心の中だけで支配者ごっこを繰り広げつつ、あなたは予定を組み立てます。


『選択肢』


◆ 精霊との交流 (温泉入浴不可)

◆ 精霊召喚 (選択不可/所持金不足)

◆ 文通

◆ 外出



>>下1


ゴシゴシ、ゴシゴシ。
妖精印のブラシで、あなたは懸命に岩をこすります。

ウリボーの家族による温泉侵略の後始末でした。

野生動物が病気を持っていないと考えるのは愚かでしょう。
そうでなくとも、浴槽内で粗相をしていないとも限りません。

となれば勿論、そのままでは利用できません。
徹底的な洗浄が今求められているのです。


一旦湯を止め、水を抜いた岩風呂の中であなたは汗を流します。

ぐぬぬと湧き上がる悔しさが止まりません。
同じ汗を流すのならば熱い温泉で流したかった。
そんな当たり前の愚痴が次から次に湧き上がります。

けれども手を止める事はありません。
手抜きをして精霊達に何かあったなら、あなたは自分を許せないでしょうから。


「ふぅ……。
 御使い様、そろそろ休憩しませんか?
 一度水を飲んでおいた方が良さそうですよ」


幸いにして、掃除に当たっているのはあなただけではありません。

ブレザーを脱ぎ、ワイシャツとスカートだけになったルシュも一緒です。
長袖をくるくると二の腕までまくった姿は、目に涼しく感じます。

ルシュの提案に、あなたは賛成しました。
未だ暑い日が続いています。
今日も漏れなく炎天下。
流れる汗は止め処なく、確かに水分補給をしておかなければ熱中症の心配も出てきそうです。

ここまでやったという目印にブラシを置いて、あなたはルシュと並んで座りました。


井戸から汲んだばかりの冷たい水を、カップ一杯。
体の中からじわりと広がる冷気を、あなたとルシュは楽しみました。


「それにしても、ありがとうルシュ。
 一人でやるよりずっと楽だよ」

「いえ、私もここの一員ですから。
 食べさせて貰っている分は当然働かないといけません」


ニコリと笑って、ルシュは答えます。

あなたとの距離はおよそ体二つ。
他の精霊では中々空かない距離でした。

そこに寂しさを覚えた事に、あなたは何だかおかしくなります。

これが普通の世界で生きていたというのに、今や違和感を感じているのです。
誰かが常に寄り添っていてくれる。
そんな生活はすっかりあなたの中心に根付いたようでした。


「どうかな、皆とは上手くやれてる?」

「はい、特に問題無く。
 スピナさんのペースには時々戸惑う事もありますけど、それも良いスパイスです」


スピナはまぁそうだろうなぁ。
あなたは勿論同感します。
独特の思考と雰囲気で周囲を振り回すスピナは常識を持つ人間程、強い戸惑いを覚えるでしょう。
ルシュのような常識人であればまさしくですが、今のところは楽しめているようで何よりです。


「ロコさんは一見強引に見えて、色々気を使ってくれていますし。
 さくらちゃんとちえりちゃんも良い子です。
 マトさんは……ふ、ふふふ」


思わず、といった様子でした。

ルシュとマトは部屋が隣同士です。
同期という事もあり、早速親交を深めているのは普段から見て取れていました。

この様子ではどうやら上手く楽しんでいるのでしょう。
マトと、というよりも、マトで、となっている可能性は否定できませんが。


それから少しして、何となく話が途切れました。

漬物を延々かじっている最中、お茶を一口のんで息を吐く瞬間のような空白です。


そこでふとあなたは気付きました。
先程の質問は、何やら話題に困った父親のようでした。
学校はどうだ、友達とは上手くやってるか。
そんな雰囲気では無かったでしょうか。

むむ、とあなたは眉を寄せます。

さして面白い話題では無かったでしょう。
つまらない時間だと思われていないか、あなたはやや心配になりました。


楽しませて欲しいと、召喚時にルシュは言っていました。

それに応えるならば今この時も、何か楽しい話題を振る努力をすべきなのでしょうか……?



>>下1  何か話題や行動をどうぞ (何も無ければ、沈黙を選べば問題なく進行します)


「ルシュは何か、やってみたい事はある?」


閃きに任せて、あなたは尋ねました。

精霊は召喚される際に体を得ます。
それまでは魂だけで漂っていると聞きますし、やれる事は急に増えたという事になります。
ならば自然と、やりたいと思う事が芽生えているのではないかとあなたは考えました。


「やりたい事、ですか」

「うん。
 別に今やりたいとかじゃなくてもいいよ。
 将来的にこんな事に手を出してみたいとか、そういうのでも」


あなたの言葉に、ルシュはしばし考え込みました。
どうやら適当に返すつもりは無いようです。
あなたはそれに安堵を覚えつつ、言葉を待ちました。


「そうですね……。
 折角の体ですし、目一杯動かしてみたいとは思います」


と、返ったのはやや意外な答えでした。


「私、汗を流すのは余り嫌いでは無いようなんです。
 この間の氷室への上り下りもちょっと楽しかったですし。

 ……実を言うと、この掃除も義務感よりそちらの方が強かったぐらいでして」


ははぁ、とあなたは頷きます。
道理で疲れる仕事を率先してやっているはずです。
てっきり仕事人気質から来るものと思っていましたが、まさか楽しんでいたとは。


そう考えて、あなたはふと思い出します。
現実とは似ているようで似ていないゲームの中のイベントをです。

ある年の夏、水着イベントにてルシュはイラスト差分を獲得して登場しました。
そのイベントにおいて、彼女は遠泳やらサーフィンやらビーチバレーやら、他の精霊に求められるままに参加していたのです。
もしかするとあれらも、頼まれたからではなく半ば趣味でやっていたのかも知れません。

優等生のような見た目、出来る女の雰囲気。
しかしそこからまさかのアウトドア趣味をルシュは持ち合わせていたようです。


ただ、あなたは同時に余り良くない物も思い出しました。

水着イベントに登場したという事は、当然水着になったという事です。
その姿を鮮明に描いてしまったあなたは、ルシュの胸元へと視線を動かしました。
大きくはないものの、美しく整った形の二つの果実を思い描いて。

勿論、あなたはすぐに目を逸らしました。
ですが残念な事に、ルシュが見逃してくれる事は無いようです。


「あ、こちら興味がおありですか?
 特に拘りは有りませんし構いませんよ。
 ロコさんやスピナさんとの行為を見る限り、相当溜まっているのでは?

 私自身もそちらの喜びに興味が無いと言えば嘘になります。
 御使い様がそうしたいのであれば、抵抗はしません。」


背筋をしっかり伸ばした良い姿勢のまま、ルシュはあなたに自分を差し出しました。

しれっと平然。
余りにも開けっ広げ。

言葉の意味を完全に理解しているというのに、ルシュは完全無抵抗を宣言しています。


目を白黒させるあなたを、メガネの向こうからクールな視線が貫きます。

常識人?
どこがだよ。
あなたは思わず、自分のルシュに対する評価へ強かに突っ込みを入れました。

普段は確かに常識人なのに、何故こういう肝心な所でおかしくなるのか。
頭を抱えたい気分にあなたは陥りました。


「触らないんですか?」


ルシュは不思議そうにあなたを見つめます。

本当に、心の底から何とも思っていないのは一目瞭然です。
あなたが腕を伸ばし、その若い肢体をまさぐった所で悲鳴の一つも上げないに違いありません。

その様を想像して、あなたは思わずごくりと唾を飲みました。


『選択肢』


◆ そういうのは良くないと叱る

◆ お言葉に甘えて腕を伸ばす

◆ もうちょっと仲良くなってからにする

◆ その他 (自由記述)


>>下1


そういうのは良くない。
それは恋人同士の営みであって、軽い気持ちでやって良い事では無いのだ。

あなたはそう叱りつけました。

……が。


「本当にそうでしょうか?

 私達精霊は女神様に女として作られ、男性である御使い様の元に送り出されたんです。
 そしてその際に、こうして女の体を与えられました。
 普通に考えて……そういう事なのでは?
 恋人以外はするべきではないというなら、その時まで性別を与えなければ良いはずです」


ルシュはあなたに反論しました。

あなたの叱り付けに反発した、という様子ではありません。
彼女は本当にそう考えていて、意見の相違を埋めようとしているように見えました。


「私達から生まれる作物は情の多寡によって質を変えます。
 そして、一般的に肉体的接触は多くの情を生むとも聞いています。
 忌避する理由は全く有りません」


やたらと説得力と道理に満ちた言葉に、あなたは思わず詰まりました。
この刃に対する反撃手段を、あなたは一般常識以外に持ち合わせません。

そしてその一般常識というのは、この御使いの聖域では大した役には立ってくれないのです。


「ですけど、強要するつもりもありません」


と、そこでルシュは引き下がってくれました。
やや前傾になっていた体を戻し、あなたから再び距離をとります。


「御使い様の好みが優先ですから。
 もしその気になったらいつでもどうぞ、という話です」


あなたはほっとしました。

このまま押し切られ、彼女の体をまさぐる事になる。
そんな事態だけは避けられたようです。





その後は話題を続ける事もなく、あなたたちは掃除に戻りました。

ごしごし、ごしごし、と。
ブラシの音が響く中、あなたがずっと気まずさを引き摺っていたのは、まぁ仕方の無い事でしょう。


■ ルシュ好感度上昇判定


ノーマルコミュニケーション

最低保証好感度 +1


>>下1 コンマ下一桁が更に加算


■ ルシュ好感度上昇

12 + (1+9) = 22


◆ 作物レベル上昇

キャベツLv2  健康+1  30金貨/週

日付も変わったしここまでで
おやすみなさい


■ ソーシャルゲーム版の評価


『トマトの精霊 マト』


食卓を塗り潰す者。
赤き侵略者。
中二が入った尊大ポンコツロリ巨乳という属性を武器に高い人気を誇るレアリティ詐欺の赤い方。

領民絶対健康にするウーマンのスピナに対し、こちらはSSレア未満のキャラで唯一初期から文化発展能力を持つ。
料理関連には特に強く作用し、畑に植えておくと凄まじい勢いでトマトを使った料理が増え続ける。
「田舎の素朴なパン屋がいつのまにか巨大ピザチェーンになってた」
「普通の下町風定食屋がチキンライス専門店と化してた」
などという頭のおかしい報告に事欠かない。
料理文化の一定以上の発展を条件として要求する施設も多く、これらを設置したければ必然的に大半の御使いはお世話になる。

クエストやイベントで登場する時は大体お神輿状態。
いいように扇動され調子に乗って騒ぎを起こし、その影響力でもって周囲を引きずり回していく。
圧倒的なカリスマによる物と本人は思っていて、裏ではマスコットやアイドルのような扱いを受けている事に気付いていない。


通称はマトちゃん様。
ファンスレ住民は跪きつつ足元prprを忘れない奴隷ちゃん。

二次創作では結構な頻度で共産主義者と化すが、勿論公式ではそんな描写は一切無い。

今日は普通の日なので8時からやります

普通の日(大嘘)
すみません、8時半からで

ここまでのガチャ結果は完全に大当たりしてますわ
これで「SR出ないわーつれーわー」とか言ったらフレンドに真顔で舌打ちされるレベル


■ 8月 月末


「――以上が、復元に成功した彫金技法の詳細になります。
 安定的な供給には未だ難が残りますが、教育が進めばじきに解消されるでしょう。
 こちらはサンプルとしてお持ちしました。
 どうぞお納めください」

「えぇ、では失礼して。
 ……なるほど、これは良い物ですね。
 自然物をモチーフにしながら幾何学的構成を成り立たせるというのは、中々苦労したのでは?」

「完全に一から再び、となればこの短期間では不可能だった事でしょう。
 正式に学んだ職人が生存していたのは僥倖でした。
 これも女神様のお導きかと」


毎度の月末。
エラの報告を聞く日となりました。

ですが今回、エラの話を主に聞いているのはあなたではありません。
あなたの隣に座るのはルシュです。
僅かの乱れも無くきっちりと着込んだブレザー姿の彼女は、メガネを光らせながらてきぱきと話を進めていきます。


(……こういうのを敏腕秘書って言うのかな)


あなたはまるでやる事がありません。
自分の頭の中で情報を整理するよりも、ルシュが要約をまとめて説明する方が早いのです。
殆ど座っているだけ、という状態になりつつありました。


「販路の方は……確認するまでもありませんか」

「はい、既に南方の商人とは商談を進めております。
 御使い様の命による復元となれば、彼らが手を伸ばさない理由は有りません」

「でしょうね。
 御使い様もそういう事でよろしかったですか?」


よろしいです。
あなたは頷きました。

今回はまだ話についていけています。
要は先月あなたが要望し復元された文化……彫金により作られた商品の販売に、あなたの名を使うという事です。
御使い様が直接指示して蘇った技術という触れ込みは、商品の価値と需要を格段に跳ね上げるのです。

今はまだ数少ないそれは、運良く購入できたなら家宝とする者も少なくないでしょう。


「御身の寛大なる御心に、感謝致します」


あなたの返答にエラは深く頭を下げました。

そんな彼女にあなたは逆に感謝したい気持ちでした。
あなたの要望に対して、彼女は素晴らしい成果を出してくれたのですから。
勿論、エラの抱く信仰を思えば安易に頭を下げる訳にも行かないのですが。


ルシュのお陰で、思いの外早く報告は終わりました。

自分の役割を終えたルシュは早々にこの場を辞しました。
ほんの小さな空気の切れ目にするりと入り込み自然と立ち上がるタイミングから、
ちらとあなたに目配せし、うん、ご苦労、との言葉を引き出す辺りまで完璧でした。

女学生のような見た目と釣り合いが取れない辣腕ですが、随分助かりました。
これからは毎回ルシュを同席させるのも良いかも知れません。


さて、最後の用件です。

エラは再びあなたの前に跪き、頭を垂れました。
前月と同じく、あなたの求める所を知るべく、言葉を待っています。





■ 領主への要望



>>下1 何かを要求しますか? (要求する場合は内容を指定して下さい、デメリットはありません)


あなたは考えた末、何も要求しない事としました。


「今回は大丈夫。
 次の機会にお願いするよ。
 今はゆっくりと、力を溜めておいて欲しい」

「……っ。
 お言葉、確かに賜りました」


と、何やら誤解が生じた気がします。
どこか感極まったような気配を、あなたは眼前の少女から感じました。

正直な所、何をしても良い方良い方に取られそうにも思え、若干諦めの境地です。
そんなあなたの苦笑と共に、今回の会談は終わりました。



■ 要望無し

何も起こりません。


■ 9月 月初イベント


野菜の積み込みを終えて、女騎士は汗を拭いました。
あなたから受け取った手拭いに顔を埋め、ガシガシと。

すっかり馴染みとなった彼女は、あなたにとってはありがたい事に中々フランクな性格でした。
最初の頃こそ緊張でガチガチになっていたものですが、今やこの程度の事は平気でやってくれます。
挨拶の際にももう跪く事は無く、気軽に片手を挙げて済ませる程。

"お嬢様に知られたら物理的に首が飛ぶので内緒でお願いします"

そんなお願いだってできてしまいます。


さて、そんな彼女ですが出発前にあなたに向き直りました。
どうやら今回は何やら報告があるようです。



>>下1 コンマ判定


「へぇ、流れの薬師が……」


そうなんですよ、と女騎士は嬉しそうに頷きました。

彼女が言うには町ではちょっとした薬草ブームが起こっているようです。
ふらりと立ち寄った流れの薬師が、町の近くに薬草の群生地を発見したとの事でした。
怪我の消毒と血止めに優れた効能があるらしく、化膿に悩む人が随分減っているようです。

何ともありがたい事です。
今後も長く領民の助けとなってくれるようにと、あなたは祈りました。



■ 健康増進

領民達の健康状態が一時的に改善されます。
『健康』の自動減少量が一ヶ月間 『2』 減少します。

旬補正は実際付けたい所ですが管理の煩雑さがマシマシなので未実装です
ご了承下さい


■ 交易


女騎士を見送ったあなたは、作物を綺麗に取り尽くした畑を眺めました。

領地の状態も随分回復しています。
この分ならば畑の一枚程度を交易に回しても問題ないでしょう。

ユーリの領地、南方との取引は確かな利益を生んでくれるはずです。
また、商人が行き来する事となるのですから、様々な商品や文化の流入も見込めます。
あなたの土地に活気をもたらすためにも積極的に取り組むのは良い選択のはずです。


■ 9月 1週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆☆
『嗜好』 ☆
『文化』 ☆


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv7  健康+4 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1  嗜好+2  25金貨/週
キャベツLv2    健康+1  30金貨/週


◆ 精霊リスト(5/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N+   トウモロコシの精霊   好感度 54/100
『スピナ』      R+   ホウレンソウの精霊  好感度 79/100
『さくら&ちえり』  R    サクランボの精霊    好感度 18/60
『ルシュ』      N    キャベツの精霊     好感度 22/60
『マト』        R    トマトの精霊       好感度 12/60


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『1065金貨』


◆ 家具

『三人がけソファセット』
『源泉掛け流し露天風呂』

旬の作物が多少引きやすくなるとかはあっても面白そう。ソシャゲ特有のピックアップガチャ

>>826
面白そうなので採用します
ありがとうございます


あなたは領内の状況と、ルシュがまとめてくれた予想利益について思い返しました。

交易がどれ程の益を生むかに関わるのは二つです。
作物の評価の高さ。
それと交易相手との友好です。

確かトウモロコシを例に出した予想があったなと、あなたは記憶を探ります。



■ 交易計算式 (トウモロコシを例に)

基礎金額 : 55 × 4 = 220

評価倍率 : Lv5 × 5% = 25%

友好倍率 : 友好度 = 25%

最終金額 : 220 + 25% + 25% = 330


ただ、同時に気をつけなければならない事もあります。

交易を行う作物は、一ヶ月間作付変更が出来ません。
また、領外に輸出する以上、当然ながら領民達の手には届かなくなります。
領民達が弱っている時に根幹となる作物を交易に使うのは避けた方が良いでしょう。


それを踏まえて、あなたは交易を行うべきかどうかを考えました。


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv7  健康+4 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1  嗜好+2  25金貨/週
キャベツLv2    健康+1  30金貨/週




■ 交易を行うならば、畑を選択して下さい。
   この場で作付変更をした上で指定する事も出来ます。

   今回は見送るならば、その旨指定して下さい。


>>下1


■ 交易計算式 / トマト

基礎金額 : 30 × 4 = 120

評価倍率 : Lv1 × 5% = 5%

友好倍率 : 友好度 = 25%

最終金額 : 120 + 5% + 25% = 156



あなたは熟考の末、トマトを輸出する事としました。

これから一ヶ月、ユーリの領地は赤い侵略を受けるのです。
欧風文化にトマトとなれば、これはもう相性が悪い訳がありません。
きっと喜んでくれるだろうと、あなたは満足げに微笑みました。



■ 交易開始

『156金貨』を獲得しました。

一ヶ月間、ユーリの文化が流入します。


■ 9月 1週目


家の中はどんどん賑やかになってきました。

十分な広さを持っていたはずの食卓も今や少々手狭です。
テーブルの上は所狭しと料理が並び、椅子も隣との距離が随分近くなりました。

そろそろ買い換えるべきかとも考えますが、これはこれで楽しいものです。


あなたの向かいでは座ったルシュの後ろから、ひょこっとロコが顔を出しました。
背もたれにぺったりとくっついたロコは、ルシュの顔の横へと手に持った物を差し出します。

ルシュは塩いる?
いえ、今日はそのままで。

そんな風に気軽に言葉を交わす彼女達は年頃も近く、親しい学友めいています。


ふははふははと聞こえる台所に目をやれば、たっぷりのトマトスープが入ったカップを双子が受け取っています。
よそっているのは勿論マト。

赤いわね!
とっても赤いわ!
そうだろう赤かろう。

何が良いのかは分かりませんが、赤いという言葉は彼女にとっては褒め言葉のようです。
朝から尊大キャラに戻って楽しそうでした。


「あぁ……素敵ですね、主様」


そして、全体をうっとり見やるスピナです。

当番ではなかった彼女は、今日は朝食の出来上がりを待つだけの係です。
何をやるでも無かったからか始めた皆の観察は、琴線に触れるものであったのでしょう。
はぅ、という吐息に喜びを乗せて満足げでした。


ここ最近の日常は大体こんな感じでした。
皆の中での関係は固まりつつあるようです。

ちびっこはちびっこで。
学生は学生で。
いえ、ロコもルシュも学生ではないのですが、まぁ雰囲気の話です。

スピナは一人ふらふらしている事が多くなっています。
ただ、それは孤立しているという訳ではありません。
スピナは自由なだけなのです。
色んな意味で。


「……主様は、子供は何人欲しいですか?」


自由でした、本当に。
朝の食卓で出す話題としてはちょっとズレているでしょう。

あなたは返答に困り、笑って誤魔化そうとしましたが。


「ダンナサマ、ダンナサマ!
 ワタシは三人ぐらいがいいなー!」


ロコはチャンスを見逃さなかったようです。
すかさず攻撃に移りました。

いつの間にかあなたの背後に接近し、後方からの抱きつきです。
背もたれでは防御できない後頭部が凶悪な柔らかさに包まれました。
それの正体が何かを一瞬で理解したあなたから、即座に冷静さが奪われます。


「でもダンナサマがもっと欲しかったら、何人でもいーよ?」


更にスピナの真似でしょうか。
耳元に息を吹きかけるような囁きがぞわりと肌をあわ立たせます。


全員が揃う朝の食卓。
そこで始まった突然の展開に、あなたは慌てに慌てました。

真正面から興味深そうに見つめるルシュと、真隣から羨ましそうに見つめるスピナ。
二人の視線が更に精神をじりじり焦がします。
ここにマト達が加わったらどうなってしまうのでしょう。


「い、いや、その話は一旦後にしよう?」

「えー? どうしよっかなー?
 ……キスしてくれたら忘れてあげられるかも?」


くすくすと楽しそうなロコに、あなたはどうやら勝ち目がありません。
犯人の要求を呑む以外に手は無いようでした。

勿論、嫌だと思う気持ちは微塵も存在しません。
ロコとのキスは酷く心地良く、いつまでも続けていたいと思える時間です。

……ただ、出来れば人目につかない場所でが良いと、心から願った朝の出来事でした。



■ 好感度自動上昇

『ロコ』

52 + 2 = 54

『スピナ』

77 + 2 = 79

『マト』

10 + 2 = 12


■ ログインボーナス


お祈りお祈り。
朝食を終えたあなたはスタコラと礼拝堂に入ります。

そして、手を合わせて祈りました。

出来れば今後、幾つもの視線に晒されながらのキスは避けられますようにと。



>>下1 コンマ判定


あなたの前に、ころんと小石が転がりました。

以前にも見た「女神の涙」のようですが、色が異なります。
同じ畑の強化アイテムですが効果違いの亜種のようでした。


良い物をもらえた事に、あなたは願いを聞き届けてもらえたような気がしました。

ありがとうございます女神様。

あなたは頭を下げて、早速畑へ小石を埋めに向かいました。



■ 女神の涙 / 金貨

今週の作物による金貨獲得量が畑一枚につき「+5」されます。


■ 今週の行動選択 / 雑事


なお、祈りの効果はありませんでした。

畑仕事の最中、あなたは見事にロコとスピナの毒牙にかかりました。
その姿は完全にばっちりくっきり、他の精霊達に目撃されています。
どころか、マトなどは二人を参考にあなたに挑みかかり追撃をお見舞いしてくれました。

"その願いは私の力を超えています……ます……す……"

エコーのかかった女神の声の幻聴に、あなたは頭を抱えました。


ま、それはともかく、今週もお勤めです。




『選択肢』


◆ 作付変更

◆ 施設拡張 (選択不可/所持金不足)

◆ 妖精のお店

◆ 何もしない


>>下1

まーちーがーえーたー
コピペしてそのままでしたすみません


■ 9月 1週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆☆
『嗜好』 ☆
『文化』 ☆


◆ 作付状況(3/3) 拡張費用 『1200金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv7  健康+4 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週  ※ 交易中 ※


◆ 待機作物リスト

サクランボLv1  嗜好+2  25金貨/週
キャベツLv2    健康+1  30金貨/週


◆ 精霊リスト(5/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N+   トウモロコシの精霊   好感度 54/100
『スピナ』      R+   ホウレンソウの精霊  好感度 79/100
『さくら&ちえり』  R    サクランボの精霊    好感度 18/60
『ルシュ』      N    キャベツの精霊     好感度 22/60
『マト』        R    トマトの精霊       好感度 12/60


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度25


◆ 倉庫

『1221金貨』


◆ 家具

『三人がけソファセット』
『源泉掛け流し露天風呂』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『褐色の誘い』

「ロコ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、ロコとの混浴を行う。


◆ キャラクタークエスト 『楽園の夜』

「スピナ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『目には目を、歯には歯を』

「ルシュ」の好感度が40以上。
「ルシュ」の召喚から1ヶ月以上が経過している(8月3週召喚)
上記の条件を満たした状態で、ルシュとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『精霊をダメにするあなた』

「マト」の好感度が40以上。
「精霊をダメにするクッション」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、マトとの交流を行う。


■ 今週の行動選択 / 雑事


なお、祈りの効果はありませんでした。

畑仕事の最中、あなたは見事にロコとスピナの毒牙にかかりました。
その姿は完全にばっちりくっきり、他の精霊達に目撃されています。
どころか、マトなどは二人を参考にあなたに挑みかかり追撃をお見舞いしてくれました。

"その願いは私の力を超えています……ます……す……"

エコーのかかった女神の声がどこからか聞こえたような幻聴に、あなたは頭を抱えました。


ま、それはともかく、今週もお勤めです。




『選択肢』


◆ 作付変更

◆ 施設拡張

◆ 妖精のお店

◆ 何もしない


>>下1


「はたけひろげますか」

「しかたありませんなー」

「……で、おだいはいかほどいただけるんで?」


すっかりお馴染みの妖精さんは、今回もそうして頑張ってくれました。

畑は広がり四枚目。
交易も始めた今、畑はいくらあっても良いのです。

さて、畑に空きが出来たのです。
早速ここに何を植えるか、あなた達は相談しました。


◆ 作付状況(3/4) 拡張費用 『2000金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv7  健康+4 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週  ※ 交易中 ※
『畑④』 ――



◆ 待機作物リスト

サクランボLv1  嗜好+2  25金貨/週
キャベツLv2    健康+1  30金貨/週



『選択肢』


◆ サクランボ

◆ キャベツ


>>下1


◆ 作付状況(3/4) 拡張費用 『2000金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv7  健康+4 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週  ※ 交易中 ※
『畑④』 キャベツLv2    健康+1       30金貨/週






ちゅ、とすら音はしません。

本当にさらりと触れるだけ。
あなたが教えた通りの口付けで、ルシュとの種作りは終わりました。

ルシュはありがとうございますとにこやかに笑み、早速種植えと相成りました。


■ 今週の行動選択 / メイン


さて、これで今週の雑事は終わりました。

後は普段通りの作付と収穫を繰り返すだけで良いでしょう。
あなたも自由に時間を使えます。

精霊達とゆるゆる過ごすか、交易を始めたユーリに友好を深める手紙を出すか、それともいっそどこかに出かけるか。
暖かい空気にあくびをかみ殺しながら、あなたはのっそり考えました。




『選択肢』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚 (選択不可/所持金不足)

◆ 文通

◆ 外出



>>下1


あなたの聖域はそう狭い物ではありません。
家と畑を中心に、視界いっぱいの丘が該当します。

ただ、普段こちらに用が出来る事はありません。
何分本当に丘しか無いのです。
わざわざ出歩いてみても大した物は見つかりません。
ずっと遠くをうろつく動物の家族が見えれば幸運、といった程度です。

ですので余り人が居る場所でも無いのですが、どうやらこれからは例外が生まれるようでした。


「や、精が出るね」

「御使い様?
 こんな所までどうされたんです?」


夕暮れの丘に座り込んでいたのはルシュでした。

薄手のパーカーとハーフパンツ。
きっと妖精の手による物でしょう。
動きやすい格好の彼女は、どうやらランニングに勤しんでいたようです。
うっすらと汗ばみ、赤みが差した顔はいつもとは少し雰囲気を変えていました。


「あぁ、別に用って程じゃないんだ。
 たまたま上から走ってるのが見えたから」


展望台でスピナと共に小鳥の糞の掃除をしている最中、あなたはルシュを見つけました。

丘を走る彼女に一体何事かと思い様子を見に来たのですが、心配などまるで不要のようです。
以前言っていた通り、運動を楽しんでいただけでしょう。


そうでしたか、とルシュは頷きます。

どうやら今は休憩中。
あなたが傍に居ても邪魔になる事は無さそうです。
折角来たのだからと、あなたは横に座って話でもする事にしました。


「御使い様は、運動はなさらないんですか?」

「うーん、畑仕事以外は何もしてないね。
 ……する暇が無いとも言うけど」

「あぁ、確かに。
 ロコさんとスピナさんで手一杯ですか」


くすくす。
ルシュは楽しそうに笑います。
朝の食卓で襲われた一件に代表される事態は時折起こります。
その度に興味深そうに見つめていた辺り、彼女にとっては愉快な光景だったのでしょう。


(笑ってないで止めて欲しいんだけどなぁ)


そう思うあなたでしたが、口に出す事はありません。
彼女にとっては、あれはむしろ望ましい光景のはずです。
良い事だとは思えても、あなたの羞恥に共感して止めに入ってくれる事は期待できません。

その辺りの常識の相違は、前回の交流で知れました。
世の道理はルシュの味方をしています。
意見を覆すのは難しいでしょう。

むしろ、理論武装が出来てしまったために、あなたの理性のタガが若干外れやすくなったような気さえします。


「いっそ外した方が良いかと思いますよ」


あなたの表情から読み取ってしまったのでしょうか。
ルシュの追撃がぐさりと刺さります。

このままでは少々具合の悪い話になりかねません。


あなたは慌てて、話題を探しました。



>>下1  何か話題や行動をどうぞ (何も無ければ、沈黙を選べば問題なく進行します)


「……たまには運動もいいな。
 折角だし一緒に走ろうか」

「いいですね。
 では一勝負というのは?」

「よし、乗った」


あなたの露骨な話題逸らしに、ルシュは何も言わず乗ってくれました。

袖で汗を拭って立ち上がり、筋を伸ばして準備運動です。
あなたもそれに倣い、ぐいぐいと。

そうして体を整えたあなた達は、ルールを設定します。


「先にバテた方が負けのシンプルなルールでどうでしょう。
 敗者は勝者に一度従う、といった辺りで」


あなたに異論はありません。
互いにニヤリと笑い合い、同時に走り出しました。

徒競走のように全力で地を蹴るような事はしません。
スピードではなくスタミナの勝負なのですから。

ふ、とあなたは余裕でした。
ルシュはまだ肉体を得て短く、逆にあなたは畑仕事で数ヶ月鍛えられています。
勝算は十分以上にあると、あなたはほくそ笑むのです。


■ ランニング勝負

01~70 あなた勝利
71~00 ルシュ勝利

>>下1 コンマ判定


先に力尽きたのはルシュでした。


「はっ……はっ……ま、まって、ください。
 も、もう、だめ、です」


息も絶え絶え。
そういった様子でルシュは立ち止まり、膝に手を当てて敗北を宣言しました。
順当な勝利でした。
あなたはまだ少々汗ばんだ程度で、呼吸の乱れもろくにありません。

離れた距離を歩いて戻り、あなたはルシュに声をかけました。
お疲れ様。
その余裕ぶりに、ルシュはぐうと唸ります。


「参り、ました。
 ……ですけど、近い内に逆転して、みせますから」


切れ切れの言葉で負け惜しみ。
どうやら彼女は中々の負けず嫌いのようです。


「…………ふぅ。
 少し、落ち着きました。
 それで、命令はどのように?」


休みながら、ルシュはあなたに問いかけます。

勝者であるあなたには今や、一度の命令権が与えられました。
どんな事でも、とは行かないでしょうが大抵の事は命じられるでしょう。


さて何にしようか。
考えるあなたに、その光景が飛び込みました。


薄手のパーカー。
その胸元が、息を整える前傾姿勢のために僅かに浮いているのです。

それ自体は大した事ではありません。
今は日もどんどん傾き、徐々に薄暗くなっています。
服の中は勿論深い陰影に沈み、見通す事などできません。
そもそも、ロコなどはもっととんでもない格好をしょっちゅうしています。

……ただ、相手がルシュというだけで事情は変わりました。

普段、彼女はブレザーを着込んでいます。
着こなしには一分の隙も無く、胸元どころか鎖骨さえろくに見えません。

そんなルシュが見せた油断は、酷く背徳的な魅力を放っていました。


あなたは頭を振って、邪まな考えを追い払います。

命令権。
胸元の間隙。
この二つを結び付けようとする欲望は、それでも中々消えませんでした。


「はぁ、ふぅ……」


幸い、ルシュはあなたの様子に気付いていないようです。
きっと疲労が原因でしょう。

あなたはほっと息を吐き、改めて命令を考えました。



>>下1  何を命令しますか?

『ゲームオーバーは無い』

と最初に明言してますので、明らかに抵触するのは弾きます
安価以前にルール上のアレで無効とします


「これからも二人で、何か体を動かすことをしよう。
 そういう命令でどうかな」


あなたはそう命令……いえ、提案しました。

共に走ったひと時は、何だか童心に返ったようでした。
健全な喜びというやつです。
この生活を始めて以来、初めての感覚だったかも知れません。


「えぇ、構いませんよ。
 渡りに船というものです。
 次は私が勝ちますから」


ルシュも挑むようにあなたを見上げます。
ふふふと笑い、あなた達は手を打ち合わせました。

これはもう、明日からは油断が出来ません。
気を抜いた日々を送って体を鈍らせれば、今度はあなたが敗北の苦渋を味わう事となるでしょう。
ライバルを得た気分です。
あなたの生活にまた一つ、彩りが足されるようでした。


さて、そろそろ夕飯も出来ている頃合でしょう。
温泉にのんびり浸かって、たっぷりかいた汗を流したくもあります。

あなた達は並び歩いて、家を目指します。

その間も、幾らかの情報交換が行われました。
ランニング中の呼吸のコツをルシュが聞き、あなたが答えます。
どうせ勝負をするなら伯仲していた方が楽しいのです。
敵を強める事に否やはありません。


二人の距離は、体一つと半分ほど。
前よりもやや縮まったそれは、ごく普通の友人のように見えました。


■ ルシュ好感度上昇判定


パーフェクトコミュニケーション!

最低保証好感度 +7


>>下1 コンマ下一桁が更に加算


■ ルシュ好感度上昇

22 + (7+3) = 32

今日はここまで
おやすみなさい

何か書いててルシュさんどんどん好きになってきた


■ ゲームのヒント


『精霊と仲良くなるには』


精霊と交流や外出を行う、あるいは作物の生産を行うと好感度が上昇します。
この「好感度」は「精霊からのあなたに対する好感度」だけでなく「あなたからの精霊に対する好感度」も兼ねています。

あなたが理性を溶かし、精霊と今以上に仲良く(意味深)なるには、好感度が一定のラインを超える必要があります。


また、この閾値を低下させる手段も存在します。

これにはあなたと精霊達の間にある考え方の溝を埋める必要があります。
言い方を変えれば、あなたは「正しい御使いの心得」を学ばなければなりません。

さて、御使いに関して最も詳しい者と言えば……?

今日は普通の日なので8時です
よろしくお願いします


■ 9月 2週目


「いやー……なんていうかさ。
 凄いよね皆」


あなたの腕の中で、もぞもぞと動く少女が言いました。

真っ赤な髪の先を片手でちょいちょいいじる、今日は崩れた方のマトちゃんです。

今は髪だけじゃなく、顔も真っ赤に染めていました。
空いた方の手はあなたの胸元をぎゅっと握って、離れるのも近付くのも出来ないようにしています。

さて、彼女が何を言っているかというと。


「ぶっちゅーだの、ぐっちゅぐっちゅだの。
 何あれおかしくない?
 あそこまでやらなきゃいけないの? マジで?
 ……いや確かにやってみはしたけども!
 アレ毎日やってなんで平気なの!?」


スパンスパンとあなたの胸に平手が打ち込まれます。
羞恥からくる、大した力ではないそれは別に痛くはありません。


あなたはそんな彼女に何だかほっこりしました。

マトはこれまで、他の精霊を参考にあなたと唇を交わしました。
我流で何とかしようとしなかったのは、恐らく初日の歯をぶつけた失敗によるものでしょう。
あなたが誰かを抱き締める度に、彼女は強い観察の視線を送ってきたものです。

ただ、参考にする相手が少々悪かったようです。

片や、隙間無い熱烈な抱擁を求めるロコ。
片や、蕩けて混ざり合うような深さを好むスピナ。

最初からそのレベルに並び立とうとしたマトは、毎日毎日キスの後はまっかっかでプルプルです。
涙目の事も多々ありました。
あなたはそんなマトに繰り返し「そこまでする必要は無い」と伝えたのですが……。


「でも、やるって決めたのに投げ出すのも嫌……」


そういう事のようでした。
どれだけの羞恥に襲われようが、決めた事はやり通す所存との事です。
実際、こうして茹で蛸状態には陥っても一日も実戦を欠かしてはおりません。

力を入れるべき場所を盛大に間違えていました。


「はぁ……言っててもしゃーないし、やろっか。
 ほら、舌出してよ」


あなたの胸元が解放されます。
マトちゃんは今日もやる気のようでした。
ですが、その視線は泳いでいますし、もう既にいっぱいいっぱいの雰囲気です。

流石にそろそろ方向修正を加えようと、あなたは決心しました。

初めからあの二人のやり方は難度が高すぎます。
最終的にあそこを目指すとしても、ゆっくり少しずつ慣らしていくべきです。
その途中で、マトが本当に楽しめるやり方も見つかるかも知れませんし。

そういった事を懇切丁寧、あなたはマトに語り聞かせました。


「……み、御使いがそういう風にしたいって言うなら」


そっと目を逸らして、赤い少女は言いました。
明らかに怖気づいていた所に逃げ道を用意してもらえて安堵した、という風ですが、そこを指摘するのは野暮でしょう。


あなたは苦笑して、マトを優しく抱き寄せました。
身長に比して大きなボリュームの胸が、あなたに触れて柔らかく形を変えます。
これからキスを交わすのだと強く意識したマトは、慌てて目蓋を固く閉じました。

その唇に、あなたはほんの少しだけ触れ、離れます。

マトはしばし目を閉じていましたが、やがて不思議そうに開きました。
これで終わり?
そう顔に書いてあります。


「今日はこれで。
 明日からちょっとずつ進めていくって事でどうかな」


胸が当たらないよう体を引き、あなたはマトを気遣いました。


ですが、マトの意見は違ったようです。

離れようとするあなたを掴んで引きとめ。
目をぐるぐる泳がせながらも、意を決して伝えます。


「流石にこれじゃ練習になんないから……もっかい」


今度はマトがあなたを啄ばみました。
触れるだけの交わりがもう一度、あなた達を繋ぎます。


「……」

「……」


沈黙が漂います。

あなたは何となく、雰囲気が変わった事を感じていました。
マトの顔に浮かぶのは今や羞恥だけではありません。

そして、その直感はどうやら正解でした。


「…………もっかい」


マトは小鳥のように、繰り返しあなたを襲いました。
一回だけのはずが、二回三回。
どうやら初回にして好みのやり方を引き当てたようです。


楽しみ方をしった少女がより楽しめるように、あなたは腕をマトの背に回しました。
ロコとスピナ、二人と共に培った技術で、楽しみに集中できるようにと小さな体を支えます。

あなた達の逢瀬は、仕事の時間だと呼びに来る双子の乱入まで、それなりに長く続いたのでした。



■ 好感度自動上昇

『ロコ』

54 + 2 = 56

『スピナ』

79 + 2 = 81

『ルシュ』

32 + 2 = 34

『マト』

12 + 2 = 14


■ ログインボーナス


畑に出る前にあなたは一人礼拝堂です。

さくらとちえり、元気な二人に引き摺られるマトはいつも通りに見事な赤。
自分が楽しんでしまっていた事を冷静に振り返って、あふれ出る羞恥に飲み込まれたのでしょう。
赤い赤いと囃し立てられながら畑に出ていきました。

そんな姿を見れましたと、あなたは女神様に近況報告です。



>>下1 コンマ判定


女神像
「今週の運勢は86……86です……。
 うーんポンコツ。
 良い物を見れたのでご褒美を差し上げましょう……しょう……ょう……」



その時、突然外が明るくなりました。
薄曇りの空を割って、光が降り注いだのです。

これは幾度か見た女神様の祝福でしょう。
こうしてはいられないと、あなたは表に向かいます。
ずもももと育つ作物の群れは取っても取っても追いつかないのです。

……そうして飛び出した畑では、何やらマトが転げまわっておりました。

何事かと双子に問えば、喜び勇んで光の柱の中に飛び込み、真上を見上げてしまったようです。
そりゃあ眩しさに目もやられるという物です。


あるいはこれも女神様の愛と言えるのでしょうか。
あなたは苦笑しつつマトを助け起こし、収穫の前に介抱に当たりました。



◆ 今週の作物の効果が『2倍』になります。


■ システムメッセージ / 友好度自動上昇


『ユーリ / 交易』

25 + 3 = 28


■ 9月 2週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆☆☆
『嗜好』 ☆
『文化』 ☆


◆ 作付状況(3/4) 拡張費用 『2000金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv8  健康+5 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週  ※ 交易中 ※
『畑④』 キャベツLv2    健康+1       30金貨/週



◆ 待機作物リスト

サクランボLv1  嗜好+2  25金貨/週


◆ 精霊リスト(5/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N+   トウモロコシの精霊   好感度 56/100
『スピナ』      R+   ホウレンソウの精霊  好感度 81/100
『さくら&ちえり』  R    サクランボの精霊    好感度 18/60
『ルシュ』      N    キャベツの精霊     好感度 34/60
『マト』        R    トマトの精霊       好感度 14/60


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度28


◆ 倉庫

『186金貨』


◆ 家具

『三人がけソファセット』
『源泉掛け流し露天風呂』


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『褐色の誘い』

「ロコ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、ロコとの混浴を行う。


◆ キャラクタークエスト 『楽園の夜』

「スピナ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『目には目を、歯には歯を』

「ルシュ」の好感度が40以上。
「ルシュ」の召喚から1ヶ月以上が経過している(8月3週召喚)
上記の条件を満たした状態で、ルシュとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『精霊をダメにするあなた』

「マト」の好感度が40以上。
「精霊をダメにするクッション」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、マトとの交流を行う。


■ 今週の行動選択 / 雑事


祝福のお陰で今日のあなたはたっぷり疲れました。

取った端から生えてくる。
何の比喩も無くそんな調子だったのです。
腕も足も、腰も背中も、全部が全部くたくたです。


(……だからこそ、温泉が最高なんだよなぁ)


あ゙~……。
と、そんな声を出して肩まで浸かるあなたは、茹だる頭で明日の予定を考えました。


『選択肢』


◆ 作付変更

◆ 施設拡張 (選択不可/所持金不足)

◆ 妖精のお店

◆ 何もしない


>>下1


■ システムメッセージ / 作付変更

以下のように変更されました。


◆ 作付状況(4/4) 拡張費用 『2000金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv8  健康+5 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週  ※ 交易中 ※
『畑④』 サクランボLv1   嗜好+2       25金貨/週


◆ 待機作物リスト

キャベツLv2  健康+1  30金貨/週

(レベルアップ処理忘れてるのに気付いた顔)


■ 修正版


◆ 作付状況(4/4) 拡張費用 『2000金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv8  健康+5 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週  ※ 交易中 ※
『畑④』 サクランボLv1   嗜好+2       25金貨/週


◆ 待機作物リスト

キャベツLv3  健康+2  30金貨/週


「わたしのばんね!」

「まちくたびれたわ!」

「「おにいさま、キスしたいから早くかがんで!」」


はいはい、とあなたは双子の口付けを受け入れました。
そうして生まれた種を手に、さくらとちえりは大はしゃぎです。

余程自分の種を植えたかったのでしょうか。
もうすっかり幼女とのキスに動じなくなったあなたは、微笑ましくそれを見送りました。


■ 今週の行動選択 / メイン



『選択肢』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚 (選択不可/所持金不足)

◆ 文通

◆ 外出



>>下1


「おにいさま、こっちよこっち」

「こっちでいっしょに遊びましょ?」


あなたは双子と共に二階の廊下を歩いていました。

あなたの右手はさくらが。
逆の左手はちえりが。
片方ずつの分担で、両手であなたを引っ張っています。

さて向かう先は一体どこなのか。

誰かの部屋では無いでしょう。
二階はまだ誰も入っていないのです。
空き部屋と掃除用具入れ、それと物置のようなスペースがぽつんとあるだけの、ちょっと寂しい一画となっています。


「ほらここよ、おにいさま」


と、その物置こそが目的地であったようです。
さくらはあなたの手を離し、小走りで駆け寄って扉を開けました。

物置とは言ってもそう大きな空間ではありません。
上下二段に分かれたそこは狭く、大人はおろか子供だって真っ直ぐ立つ事は出来なさそうでした。
横幅もあなた一人が足を縮めて寝るのが精一杯。

そんな場所の下段へと、さくらとちえりは楽しそうに飛び込みました。


あなたもまた、誘われるままに入り込みました。

すると二人は扉を閉めてしまいます。
ほんの小さな隙間から差し込む光以外に何も見えない、真っ暗闇の出来上がりです。
そんな中を手探りで、さくらとちえりは左右からあなたを挟んでぺっとり座りました。

あなたは不思議に思います。
こんな所で一体なにをするのでしょうか?
勿論気になって、あなたは問いかけました。


「しー。
 大きなこえはだしちゃだめ」

「かくれんぼなの。
 おにはみんなよ」

「「だれかに見つけられちゃったら、わたしたち三人が負けちゃうの」」


くすくすと、楽しそうな囁きだけが届きます。

なるほどとあなたは納得しました。
子供の頃、似たような遊びをした記憶があなたにはありました。
別に誰に探されてもいないのに妙に必死に隠れたものだと、妙に懐かしい気分です。


必要も無いのに、あなた達は息を潜めました。

静かな静かな時が流れます。
互いの呼吸音以外に聞こえるものはありません。
両腕に抱きついた幼い体温と、同時に伝わる鼓動だけが、あなたに時の流れを感じさせます。


日差しは徐々に和らいできたとはいえ、未だ暑い日も多く。
今日もまたそれなりの温度に加え狭い場所に三人です。
時間の経過に従って僅かずつ蒸してきたのでしょうか。
二人と接している部分が、何だか汗で湿ってきた気がします。

……そのためか、思わずあなたは二人の姿を思い返しました。

最近では妖精の服作りもすっかり定番です。
精霊は皆こぞって小遣いでお洒落を楽しむようになりました。
さくらとちえりも例外ではありません。

今日の装いは白のノースリーブワンピース。
腰元のリボンと裾を飾るフリルが可愛らしい、年相応の服装です。
そして勿論、暑さ対策に薄手で、スカート部分も短めでした。


ごくりと、あなたは唾を飲み込みました。

意識してしまえば、腕の感触も意味を変えていきます。
ぎゅっと抱き締められた腕。
その肘近くには、皆無に近い、しかし無いとも言いがたい柔らかさを感じます。
掌は何も意識せずに置いていましたが、すべすべのふとももにしっかり触れていました。

自分が相当まずい状態にあると、あなたは今更理解したのです。


「あっ」


と、左手に抱きつくちえりが声を上げました。
ほんの小さな音でしたが、無音の暗闇にはよく響きます。

ちえりはもぞもぞと動き、体勢を変えました。
見えはしませんが、きっと膝立ちでしょう。
あなたの肩に手をかけ、息がかかる程顔を寄せている事から恐らく間違いありません。

そうして、舌を出せば耳朶を舐められるような距離から、囁きます。


「さくらの言うとおりだったわ。
 おにいさま、どきどきしてるのね?」


……本当に耳を舐められたかと、あなたは錯覚しました。

小さな唇から発せられた音は、魔力をもってあなたの鼓膜を揺らしました。
まるで羽箒のよう。
もどかしく、微弱に過ぎ、しかし確かな快楽がくすぐっていったのです。


「ちえりにおしえてあげたのよ。
 いっしょにかくれた時、とってもどきどきしたものね?」

「ふしぎだわ。
 くらいだけで、他にはなんにもないのに」

「「なんだか、いけない事をしているみたい」」


ちり、と。
あなたの頭の中で何かが焼け落ちました。

全て壊すんだ(理性)


途端に息苦しさを感じたあなたは、思わず深く息を吸いました。
陸に上がった魚のように。
あるいは、今際の折の一呼吸のように。

しかし、現状でそれは悪手です。

幼く甘い、さくらとちえりの香りが、あなたを更に溶かしました。
焼失はより勢いを増し、日々の中で開拓されつつあったあなたの可能性を引きずり出そうと何かが暴れます。

更に悪い事に、あなたの変容を感じたのでしょう。
二人はあなたにぺたりとくっつきます。


「「おにいさま? どうかしたの?」」


想い人にすがる女。
まさにそのものの様でした。


(まずい、まずいまずいまずい!)


あなたは焦りました。
何かと焦る事の多い日常ですが、その中でも最大の焦燥でした。

このままでは目覚めてはいけない物が目覚めてしまう。
直視すべきでない可能性に気付いてしまう。
主に性癖とかそういう方面で!

そんな確信があなたを突き動かしました。
……確信している時点で手遅れなのではないか、という指摘は、まぁあなたのために一旦棚上げといたしましょう。



>>下1  何か話題や行動をどうぞ (何も無ければ、沈黙を選べば問題なく進行します)

逆に考えるんだ、(誘惑に)負けちゃってもいいさと。


「い、いや、何でもないよ。
 ……ところで、さくらとちえりは、何かしてほしいことある?」


二人はどうやらきょとんとしたようでした。

それでも何でもないという言葉を信じてくれたようです。
あなたを心配するのは終わりにして、元の体勢に戻りました。
左右からぺったりくっついて、あなたの腕を抱き締める格好です。

あなたはほっとしました。
このまま耳元で囁き続けられれば本当におかしくなってしまいそうです。

それさえ回避できたならば、大丈夫大丈夫。
何にも問題ありません。


「キスがしたいわ。
 ロコとしてるみたいな、ずっとずっと長いキス」

「わたしもおなじ。
 スピナとしてるみたいな、すごくすごく深いキス」

「「わたしたちだって、一回くらいやってみたいわ」」


ま、そんなわきゃ無いのですが。


クリティカルヒットに、あなたは声を出さずに呻きました。

好奇心からきゃいきゃいと、二人は可愛い声で批評します。
ロコはあんなに楽しそうだった。
スピナはあんなに幸せそうだった。

その度に小さな体は動き、あなたの腕を魅惑の肌がくすぐります。
全く同じタイミングであなたの手が二つとも脚の間に挟まれた瞬間には、思わず変な声を上げそうになりました。


「ほ、他には何か無いかな……?」


あなたは必死でした。
何とか活路を見出すべく、話を別の方向に動かします。

さくらとちえりは、それに少々不服のようでした。
それでも一応、拗ねた声ですが答えます。


「だったらわたしは、ご本がいいわ。
 いろんなお話がよみたいの」

「わたしはお外に出てみたい。
 お花をさがしておさんぽしたいの。
 お庭にかざったら、きっときれいだわ」


さくらのも楽しそう!
ちえりのだってすてきだわ!

二人は途端に声を上げ始めました。
隠れている事も忘れたのでしょうか。

こんなお話が良い。
あんなお花を見つけたい。
互いの意見を楽しみ合い、やろうやろうと黄色い声です。


あなたはようやく、本当にほっとしました。

実に可愛らしい意見です。
これならば幾らでも叶えてあげられます。
どちらの願いを叶えてあげても、きっと二人とも喜んでくれるでしょう。


……ですが同時に、罪悪感もあなたは抱いています。

二人は幼いから。
それだけの理由で我慢を強いているのも確かです。

やってみたいと口に出した最初の希望を、他の物で代替する事は本当に正しいのかと。
あなたは酷く苦い気分で悩みました。


やがて二人は声を落とし、あなたの腕を抱く力を強めました。
願いを叶えてくれるのかどうか。
その答えを待っているに違い有りません。

一拍。
二拍。

少しの時間を挟んだ末に、あなたは口を開きます。


※ 自由記述する時間が無いとの指摘を受け、下2に変更しています ※



『選択肢』


◆ 大人のキスを教える

◆ 本を買う約束をする

◆ これから一緒に散歩する

◆ その他 (自由記述)


>>下2


あなたは覚悟を決めました。

自身の中の、未だ日本の常識を残す部分。
そこに住む自分に、ロリコンと後ろ指を差される覚悟をです。

思えば呆れる程にどうでもいい話でした。
常識? 道徳?
そんな物、幼い女の子を悲しませてまで守る物なのでしょうか?

答えは言うまでもありません。


「……キス、しようか」


あなたは言葉にして、しっかりと伝えました。
これでもう後戻りは出来ません。


「……ほんとう?」

「ほんとうにしていいの?」

「「やっぱりダメって、言ったりしない?」」


念押しに確認する二人に、あなたの心は痛みました。

にわかには信じられない。
言ってみたけれど叶えられるとは思っていなかった。
そういう意思が、戸惑ったような声色から伝わってくるのです。


「今まで本当にごめん。
 もうさくらにもちえりにも、我慢なんてさせない」


謝罪と同時に、あなたは動きます。

二人の信頼を得るには言葉だけでは足りないでしょう。
明確な態度として、しっかり示す必要があるのです。


抱き寄せた二人の唇を、あなたは順番に奪いました。
今まで二人にはした事の無い深さで。


驚いた様子のさくらとちえりは、しばらく二人で見詰め合っていたようでした。

ようやく闇に慣れてきた、ぼんやりとした視界の中。
顔を寄せて相談する二人を、あなたは待ちます。

決着まではそうかかりませんでした。
おずおずと、双子の片割れがあなたの胸に縋ります。


「さいしょはわたしからよ、おにいさま。
 ちえりは後がいいみたい」


だろうなぁ、とあなたは頷きました。

さくらとちえり。
良く似た双子ですが、その内面には僅かながら差異もあるのです。
どちらかといえばさくらの方が何事にも積極的で、ちえりは後ろに続く事が多く感じます。


「ん……っ」


そんなさくらは、やはり自分からあなたに仕掛けました。
薄く開いた口を寄せ、あなたの唇を食みにかかります。
ロコとは頻繁にやっている、甘噛み混じりのキスでした。

ですが勿論初めての事。
その技量は拙く、かじって遊ぶ以上の物にはなっていません。


今までのあなたなら、それに任せるままになっていたでしょう。
微笑ましく見守るだけ。
幼な子の遊びに付き合うスタンスで。

けれど今は違います。
そこはこうするのだと、あなたは反撃をもって教えました。

小さな、小さな……他人の味を知るには幼すぎる唇を、あなたは貪ります。
食み、吸い、時にくすぐるように舐め。
禁忌によって味付けされた露を啜り、大人のキスを教育します。


「ぁ……やっ、おにい、さま……」


その最中、未知の感覚にさくらは身を引きました。

それでもあなたは逃がしません。
離れた体を引き戻し、もう一度愛を注ぎます。


やがて、さくらの抵抗は消えました。

幼い肢体を突き動かす衝動のまま、あなたに全てを押し当てて。
これこそが幸福なのだと、全身をもって示していました。



……ようやく交歓が終わった時。
さくらはもう膝立ちを維持する力さえ残っていませんでした。

あなたに縋ったまま、くたりと崩れ落ちて、あなたの右脚の上に座り込み。
情欲に熱く塗れた吐息を、ただ繰り返すだけとなりました。


「おいで、ちえり」


あなたが呼び掛けると、物置の中にガタリと大きな音が響きました。
ちえりが大きく身震いし、何かに当たってしまったのでしょう。

ちえりは、混乱していました。
本当に身を任せて良いのかどうか。
さくらの様を目の当たりにして、惑ってしまったのでしょう。


「大丈夫……おいで」


そんなちえりに、あなたは再度呼びかけます。

きっと、何も大丈夫じゃない。
ちえりはそう理解していました。
自分の片割れの女としての開花、その始まりをまざまざと見せ付けられたのですから。

それでも、ちえりはあなたの手を取りました。


決定的な理由は何だったか、恐らくちえり自身にも分かりません。

好奇心が勝ったか。
崩れ落ちたさくらから、それでも幸福を読み取ったか。

……あるいは、暗く狭い物置が持つ魔力だったのかも知れません。


ちえりはどうやら、吸収が早いようでした。

初めはさくらと似たり寄ったり。
けれどほんの僅かの時間で、口付けの合間に色を含んだ声を混じらせるようになりました。
さくらよりもずっと早く、あなたの手による変貌を迎えています。


そんな彼女を愛しながら、あなたは僅かに苦笑しました。
理由は二つ。


一つは、未だ息の荒いさくらが、ちえりを羨むように見上げている事。

恐らく、一巡だけでは収まらないでしょう。
ちえりの次はさくら。
さくらの次はちえり。
それが終われば、またもう一度。

あなたが物置から出て行けるまで、きっと長い時間が必要です。


もう一つは……それを想像し、楽しみだと思ってしまえた事。

誤魔化しようがありません。
この幼すぎる双子を相手にしても「そういう気持ち」になれる。
それをあなた自身で完全に証明してしまったのです。


「おにい、さまぁ……。
 やだ、わたし、まだしたい……」


ちえりはあなたに抗議して、首に抱きつきました。
思いやりも何も無し。
ただ情欲を押し付けるように口付け、かじり付きます。

どうやら考え事がお気に召さなかったご様子です。
あなたは謝罪の意を篭めて、生意気に伸ばされた舌を弄びました。

それにも嫌がらず、もっともっとと強請る姿を、あなたは可愛らしいと思う事が出来ました。



こうしてあなたの一日は、誰も見つけない暗闇の中。
長く、長く。
熱と嬌声に挟まれて、ずっと続いたのです。


■ さくら&ちえり好感度上昇判定


パーフェクトコミュニケーション!

最低保証好感度 +7


>>下1 コンマ下一桁が更に加算


■ さくら&ちえり好感度上昇

18 + (7+6) = 31


◆ 作物レベル上昇

サクランボLv3  嗜好+3  30金貨/週

自由記述で「全部叶える」が来ると思って溜めてた力を全部キスに注ぎ込んだらこうなった(言い訳)

ここまでで。
おやすみなさい。


新スレ立て用に諸々準備中

今日は普通の日ですが、スレ立てにどれだけかかるかで開始時間変動しそう
夜にまた通知します


【安価コンマ】箱庭系萌えソシャゲの世界へ異世界転移Part2【オリジナル】
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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1510741913/)


テンプレ作るの疲れたので9時からお願いします。


■ 9月 3週目


太陽が地平の向こうに沈んで、月が煌々と照る時間。
あなたの家の裏からは、姦しい声が響くのが定例となりました。

妖精が掘り当ててくれた温泉は、広い露天風呂として整えられています。
温泉宿にあってもおかしくない程の立派なものです。
一人で入るには少々もったいないお風呂は精霊達の恰好の交流の場でした。
今日もまた、皆がきゃいきゃいと入浴を楽しんでいるようです。

となれば、ちょっと寂しいのがあなたでした。

この家にただ一人の男。
流石に女性六人を侍らせて裸の付き合いとは行きません。
少なくとも、現状では。


あなたは一人、塩トマトをつまみにお月見です。
これでアルコールの一つもあればと、あなたはぼんやり考えます。


このひと時は、寂しいと同時に気楽な時間でもあります。

一日の時間の中で、睡眠以外では殆ど唯一の一人で過ごす機会。
どこまでも気を抜いていられるというのは正直助かるのです。

勿論、精霊達に囲まれているのが嫌なわけではありません。
誰かに寄り添ってもらえるというのは幸せな心地ですし、どちらを向いても魅力的な異性ばかりというのは男として最上の環境でしょう。
更に彼女達とは毎日唇を重ね、抱き締める度に柔肌の感触が楽しめるのです。
文句や不満などどこを搾っても出るはずがありませんでした。

それに、賑やかな日々の暮らしも楽しい事ばかりです。
共に笑い、共に働き、共に食し、また明日と眠って、おはようと挨拶を交わす。
限界を超えて酷使されるだけの、泥中を泳ぐような過去の生活は、もう既に思い出す事さえ困難です。
全ては幸福と安寧によって塗り潰されてしまいました。


ただ、女性だらけの中に男一人では、気を使う事も多いという話なのです。
知らず知らずの内に溜まった気疲れを癒す静かな時間も日々には欠かせない物。

鮮やかな彩りをそっと受け止める空白を、あなたはこうして楽しむのです。


それからしばし。
用意した皿も綺麗に空き、あなたがうとうとし始めた頃。
パタパタという足音が聞こえ出しました。

風呂に隣接して作られた脱衣所から続く渡り廊下を、精霊達が歩く音です。


最も元気な先頭はロコ。
金色の尻尾を揺らし、跳ねるように駆ける様が目に見えるようです。

そのすぐ後ろはさくらとちえり。
ロコと競い合うように走っているに違いありません。

最後尾はきっと、ルシュとスピナ。
皆から一歩を空けて見守るルシュに、ふわふわゆったりとしたスピナが並ぶ形。

あと一つ、マトらしい音はありません。
彼女がどうなっているかを考えて、あなたはくっと笑います。
今日も綺麗に茹で上がって、誰かの背の上に居るのでしょう。


足音だけでどれが誰か分かる事に、あなたは何だか嬉しくなりました。


果たして、その予想は大当たりでした。


「ダンナサマー! 上がったよー!」


渡り廊下へ続く扉を元気に開けて、ロコが飛び込んできました。
勢いを落とす事なくソファに座るあなたの元へ。
すぐ隣にぼふんと着地を決めた直後に、早速いつもの抱擁です。


「えへへー、湯上りのワタシをプレゼントだよー♪」


真横から腕を伸ばしたロコを、勿論あなたは抱きとめました。
よく温まったぽっかぽかの体が柔らかくあなたを襲います。
豊かな胸の感触も、普段より一段ふかふかに思えました。


「ロコだけずるいわ!」

「わたしたちもギューってしたい!」


そこに小さな双子も参戦です。

たちまちの内に、あなたは全身を占領されました。
こうなるともう自由は利きません。
彼女たちが満足するまでもみくちゃにされるのみです。


あなたは思わず頬を緩めます。

もうすっかり慣れっこ。
この温もりが無ければ生きていけないのではないかと思うぐらいに、当たり前の体温です。
一人離れるだけで寂しさを感じるなど、一体どれほどの贅沢なのでしょうか。


そんな事を考えている間にも、事態はどんどん進みます。
ロコがそんな暇を与えてくれる訳が無いのです。

お風呂の間離れてて寂しかったから。
そんな風に嘯いて、あなたの唇を情熱的に奪いました。
すぐ近くのさくらとちえりに見せ付けるように。

見せ付けられた側はといえば、顔をちょっと赤く染めて食い入るような姿勢です。
もしかしたらお風呂の中で手本を見せる約束でもしていたのかも知れません。

物置であなたに色々教え込まれて以来、二人はとても勉強熱心なのです。


それならばと、あなたはロコを更に強く抱き寄せます。
背に這わせる掌で想いを語りながら、良く見えるように角度を調整したりもします。
すると、ロコの瞳がゆるりと弧を描きました。
あなたの推測は正解だったようで、協力に感謝を伝えてくれたようです。


もう一人のお手本、スピナも部屋の入り口までやってきていました。
彼女もまた表情と雰囲気に期待を滲ませているように思えます。

つまりはまぁ、そういう事。


どうやら今日は、双子が眠気を覚えるまであなたが解放される事は無さそうでした。


■ 好感度自動上昇

『ロコ』

56 + 2 = 58

『スピナ』

81 + 2 = 83

『さくら&ちえり』

31 + 2 = 33

『マト』

14 + 2 = 16


■ ログインボーナス


勉強会が終わりを告げるまではそれなりにかかりました。

印象的だった出来事といえば、やはり途中で回復したマトでしょう。
彼女からしてみれば、目を覚ましてみればいきなり眼前で延々深く長いキスが見やすいように実践されていたのです。

免疫に乏しいマトちゃんは悲鳴を上げる余裕さえなく、うわぁうわぁと零しながら全身真っ赤でした。
温泉からはもう上がっているのにもう一度のぼせるのではないかと思えた程です。
そうなる事を狙って自室ではなくソファに彼女を下ろしたであろうルシュも、全く中々良い性格。


ともあれ、これを含めて今日も良い一日でした。
嬉し楽しく幸福に、そんな日々の感謝を篭めて、あなたは女神像に一礼します。



>>下1 コンマ判定


今回貰えたのはすっかり見慣れた小石です。
明日一で畑に埋めれば、今週いっぱいは良質の作物が取れるでしょう。

特に味が良くなるのは何より嬉しい事です。
あなたは明日の食卓を楽しみに、思わず口内に湧く唾液を飲み込みました。



■ 女神の涙

今週の作物による領地状況回復量が「+1」されます。


■ 友好度自動上昇



その翌日、もう一つ嬉しい事がありました。
南方の御使い、ユーリからの手紙が届いたのです。

ユーリとは交易を行う間、何通かのやり取りを行っていました。
それらは当たり障りの無い普通の世間話程度の物でしたが、今回はちょっと違います。


『もし、君の時間が空いたら一度こちらに遊びに来ないか?』


そう誘う一文がありました。
社交辞令という風には読み取れません。
本当にあなたと顔を合わせたいとユーリは思っているようです。

あなたはその手紙を、大事に机の引き出しに仕舞いました。

折角のお誘いです。
あなたの気が向いたなら、ちょっと南方まで足を伸ばすのも良いでしょう。



『ユーリ』

28 + 3 = 31





■ 条件達成通知


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

上記クエストの発生条件を達成しました。
「ユーリの領地への外出」を行うと、イベントが自動発生します。


■ 9月 3週目


◆ 領地状況

『生活』 ☆☆☆
『健康』 ☆☆☆☆☆
『嗜好』 ☆
『文化』 ☆☆


◆ 作付状況(4/4) 拡張費用 『2000金貨』

『畑①』 トウモロコシLv5  生活+2 文化+1  55金貨/週

『畑②』 ホウレンソウLv8  健康+5 文化+1  65金貨/週
『畑③』 トマトLv1      健康+1 文化+1  30金貨/週  ※ 交易中 ※
『畑④』 サクランボLv3   嗜好+3       30金貨/週


◆ 待機作物リスト

キャベツLv3  健康+2  30金貨/週


◆ 精霊リスト(5/7) 拡張費用 『1200金貨』

『ロコ』        N+   トウモロコシの精霊   好感度 58/100
『スピナ』      R+   ホウレンソウの精霊  好感度 83/100
『さくら&ちえり』  R    サクランボの精霊    好感度 33/60
『ルシュ』      N    キャベツの精霊     好感度 34/60
『マト』        R    トマトの精霊       好感度 16/60


◆ フレンドリスト

『南方の御使い ユーリ』 欧風文化 友好度31


◆ 倉庫

『336金貨』


◆ 家具

『三人がけソファセット』
『源泉掛け流し露天風呂』 ※ 混浴解禁 ※


■ 待機イベント一覧


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

『生活』が☆☆☆以上
『健康』が☆☆☆以上。
『文化』が☆☆以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、領主の館を訪問する。


◆ サブクエスト 『南方の御使い』

「南方の御使い ユーリ」の友好度が30以上。
上記の条件を満たした状態で外出し、ユーリを訪問する。


◆ キャラクタークエスト 『褐色の誘い』

「ロコ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、ロコとの混浴を行う。


◆ キャラクタークエスト 『楽園の夜』

「スピナ」の好感度が80以上。
「快適ダブルベッド」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、スピナとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『わかってきたわ、わかってきたの』

「さくら&ちえり」の好感度が40以上。
サクランボを作付している。
上記の条件を満たした状態で、さくら&ちえりとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『目には目を、歯には歯を』

「ルシュ」の好感度が40以上。
「ルシュ」の召喚から1ヶ月以上が経過している(8月3週召喚)
上記の条件を満たした状態で、ルシュとの交流を行う。


◆ キャラクタークエスト 『精霊をダメにするあなた』

「マト」の好感度が40以上。
「精霊をダメにするクッション」を購入済み。
上記の条件を満たした状態で、マトとの交流を行う。


■ 条件達成通知


◆ メインクエスト 『その軌跡を称えて』

上記クエストの発生条件を達成しました。
「領主の館への外出」を行うと、イベントが自動発生します。


■ 今週の行動選択 / 雑事


茹でてバラしたコーンを匙で一掬い。
無造作に口の中に放り込めば、自然な甘さが舌を楽しませてくれました。
女神様の慈悲は滋味へと変わったのです。

ぷちぷちと弾ける感触もたまりません。
手を止めるタイミングが掴めず、口の中が片付く度に次から次へ。


そんな風に幸福を噛み締めるあなたでした。



『選択肢』


◆ 作付変更

◆ 施設拡張 (選択不可/所持金不足)

◆ 妖精のお店

◆ 何もしない


>>下1


■ 今週の行動選択 / メイン


あんまりにも美味しいものですから、あなたはついつい食べ過ぎました。
重いお腹を引き摺り引き摺り、ソファにどさり。
その横をすかさず奪ったさくらとちえりがあなたに尋ねます。

明日はどういう日になるかしら?

ふぅむ、とあなたは頬を撫で。
さてどうしようかと考えました。


『選択肢』


◆ 精霊との交流

◆ 精霊召喚 (選択不可/所持金不足)

◆ 文通

◆ 外出



>>下1

(交流に関しては特定状況下でのみ2人以上同時交流可とかあってもいいと思うけど処理めんどくさくなっちゃうかね??)

安価下

>>984
ありです
ただ現状では未解放です

まぁぶっちゃけ同感です
メインは月末時限式、サブは都度自動発生にした方が参加者もこちらも楽そう
異論が無ければそうします

(もう残り少ないし区切れも良いので、いっそこちら埋めてOKです)

(次の投下分出来上がるまでに埋まってなかったらセルフ埋めしますので、無理に埋めなくても大丈夫)

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