男「今年も良い感じのカボチャを貰ったが」(58)

男「また幼馴染んちにおすそ分けだな、これは」
ゴソゴソ
ピラッ

男「ん? 手紙?」
ペリペリ
ガサガサ


祖母『元気にしていますか? 今年もカボチャを送ります」

  『今年は特によく出来たので、少し多めです』
  
  『過去最高の自信作です』

  『ハロウィンが近いので、お菓子にして配るのはどうでしょう』

  『レシピを同封しますので、作ってみて下さい』

  『カボチャを作る方の祖母より』

男「あー、そういやそろそろハロウィンか」
ピラッ

男「これがレシピ……ふむふむ……」

男「……ふむ」

男「母ちゃんはどうせ作らないだろうし……」

男「……うん」

男「いつも世話になってるし……今回は俺が作ってみっかな?」

男「うんうん、そうしよう!」

男「材料はあるかな……」
スタスタ




男「あと足りないのは、メープルシロップと?」ポチポチ

幼「あっ!」

男「おっ? よう! 幼!」

幼「や、やあ! あはは、奇遇だね、男」

男「幼は……晩飯の買い物か?」

幼「うん、毎日の事だしね」

幼「それより、男が食品売り場に居るなんて珍しいね。 どうしたの?」

男「ちょっと料理をな。しようと思って。今日は材料集めだな」

幼「料理? 男が? 珍しい……と言うか」

男「ん?」

幼「料理なんて初めてじゃあない?」

男「そうだな。目玉焼きも上手く焼けんからなー、ははは」

幼「その……差し支え無ければ、理由を聞いても良いかな?」

男「あー、今年もばあちゃんが大量にカボチャを送ってくれたんだけどよ」

幼「そうなんだ。 毎年美味しいよね、おばあさんのカボチャ」

男「それは毎年幼が料理してくれるからだろ」

幼「え、えぇ? い、いや……それは」

男「去年もスープと煮つけ作ってくれたじゃん、すげー美味いやつ」

幼「あ、あれはほら! やっぱり素材が良かったんだよ。うん」

男「カボチャだけ美味くても、料理出来なきゃ食べられないし」

男「あの味は、花嫁修業完了しました!って感じだったぜ?」

幼「は、花嫁……ぁぅ……」ポー

男「そうそう、今年のカボチャは特に良く出来たらしくてな」

男「で、ばあちゃんがハロウィンのお菓子でも作れば?っつって」

男「レシピまでつけてくれてたからさ」

男「いっちょ作ってみっか!と思ってよ」

男「足りない材料を買いに来たって訳だ」

幼(最近、男と一緒に居る時間が全然無い……これはチャンスなのでは?)ブツブツ

男「?」

幼(今年も料理を振舞って、胃袋を掴んでいくとか……でもそれだと去年と……)ブツブツ

男「どした? 俺が料理するのがそんなに変か?」

幼「!!」ハッ

幼「ち、違うよ、違う! そうじゃなくて!」

男「またあわあわしてるぞ? 大丈夫か?」

幼「あ、あぅ……す、すまない……」

男「大丈夫、大丈夫」ナデナデ

幼「…………」

男「……落ち着いたか?」ナデナデ

幼「……お、落ち着いたとも、うん」

男「そか、良かった」

幼「コホン……それで、男は何を作るんだい?」

男「おう、これ……ウチに無い材料をメモって来たんだけどな」
ポチポチ
サッ

幼「ふむ……材料を見るに、焼き菓子を作るのかな?」

男「そうそう! よくわかるな!」

幼「バニラオイルはウチにあるのを使うと良いよ」

男「え?」

幼「滅多に使う物じゃあないし、使うのは少量だよ。買っても持て余すと思うよ?」

男「確かに……それじゃあお借りするかな?」

幼「うん」

男「このお礼はお菓子でするぜ!」

幼「!」

男「まぁ、上手く出来るかわからんけど、な」

幼「あ、ありがとぅ……」カァッ

男「あー、それじゃおすそわけもあるし、一緒に帰ろうぜ」

幼「う、うん? 一緒に? あ、いや……おすそわけ?」

男「カボチャ。 たくさんあるからさ」

幼「ありがとう! じゃあこちらもお返しは料理でするよ」

男「おう、今年も期待してるぜ」

幼「そ、それじゃあ買い物を済ませて帰ろう……一緒に」

男「おー」



幼「ふふ」

男「ん? どした?」

幼「いや……こうして並んで歩くのも久しぶりだな、と思ってね」

男「そうか? 最近は……そうか。 久しぶりか」

幼「そうだよ、久しぶりだよ、ふふふ」

男「嬉しそうだな? そんなに楽しみか?」

幼「ん? うん。そりゃあ楽しみだよ、とてもね」

男「ばあちゃんの自信作らしいからな、きっと美味いぞ」

幼「ん?」

男「ん?」

幼「! そ、そう、カボチャ! 楽しみだよ! うん!」

男「お、おうよ」

幼(危ない危ない……落ち着くんだ私!)スーハースーハー

男「どうした? またあわあわして」

幼「何でもないよ、うん。カボチャをどう料理しようかと思って」

男「あ、去年の煮つけが、めちゃ美味しかったからリクエストしてもいいか?」

幼「わかったよ、煮つけは決定で……ふふっ」

男「ん? 今度は何だ?」

幼「去年の煮つけは、めちゃ美味しかったのか、と思って」

男「おう、めちゃ美味かった。 あ、もちろんスープも……って」

男「あれ? 俺、言ってなかったっけか?」

幼「さっきスーパーで美味しかったとは言ってたけれど……」

幼「めちゃ美味しかったとは聞いてない、かも」

男「そりゃ悪かった。 めちゃ美味かったぜ!」グッ!

幼「作り甲斐があるよ」ニコ

男「……」

幼「ん? どうしたの?」

男「い、いや、何でもない」



男「それじゃこれ、ほい」ドッサリ

幼「わぁ……これは凄いね。 おばあさんが自信作と言うのもわかる気がする」

幼「こんなに頂いても良い物なのかな?」

男「まだまだたくさんあるし、貰ってくれ」

幼「それじゃあ遠慮なく頂きます。 ありがとう」ペコ

男「おう。 こっちこそ、バニラオイルありがとな」ペコ

幼「お互い、料理頑張ろうね」

男「頑張るぜ!……って、高校3年の秋、こんな事をしていていいのかと」

男「思ったり思わなかったりだけどな、ハハ」

幼「勉強ばかりでは疲れてしまうし、息抜きは必要だよ」

男「だよな! 息抜きは必要だよな!」

幼「う、うん……ふふっ、息抜きばかりでは駄目だけどね?」

男「う……うんうん。 それじゃサボってるだけだもんな、うん……」

幼「ふふ……それじゃあ、私の料理はハロウィン当日に……」

幼「そう言えば、男はいつお菓子を作るのかな?」

男「あー、考えて無かった。ハロウィン当日に作るかな?」

幼「焼き菓子なら、前日までに作っておいて」

幼「ラッピングして、当日ご近所に配るのも良いんじゃないかな?」

男「そうだな……そう言えば町内会のお知らせに何か書いてあったな」

幼「子供達が回っても良い家は、ジャック・オー・ランタンを玄関先にってやつだね」

男「幼の所は? 参加するのか?」

幼「ウチはお母さんが市販のお菓子を準備して参加するそうだよ」

男「数に限りはあるだろうけど、ウチも参加してみっかな!」

幼「ジャック・オー・ランタンは町内会長さんの所で借りられるよ」

男「そか。 あとでカボチャ持って挨拶行くかな」

幼「うんうん。 わからない事があれば何でも聞いてね?」

男「頼もしいぜ。 もしもの時は頼む」

幼「お任せを。 ハロウィン、楽しみだね」

男「楽しくなってきたな! 俺も仮装とかするかなー」

幼「ふふっ、『息抜き』は程々に、ね?」

男「う、おぅ」

幼「それじゃあね」

男「ん、じゃあなー」
バタン


幼「……よしっ! 頑張るぞっ!」



男「さて、とは言え、前日にいきなり本番って訳にはいかんから……」

男「ちょっとだけ料理してみるかな!」
ガチャガチャ

男「……仮装も……手間がかからないなら何かしてーな」

男「吸血鬼とかどうかな? いや、もうちょっと捻った方が……」ブツブツ




ハロウィン当日

ピンポーン

男「はーい」
タタタッ
ガチャ

幼「トリックオアトリート!」

男「うぉっ!」ビクッ!

幼「お菓子かいたずらかー……」

男「幼、その格好……凄いな!」

幼「えっ?」

男「めちゃ本格的じゃねーか! びっくりしたわ!」

幼「そ、そうかな? ま、まあちょっと頑張ったけども、そんなにかな?」

男「マジで、アイドルの衣装かよ……今日イチ驚いたわ……」

幼「と、とりあえずその……部屋にあげてくれないかな?」

幼「料理もあるし、その……」モジモジ

男「ん?」

幼「そこまで驚かれると、恥ずかしいので……」モジモジ

男「……おぉ、すまんすまん、入ってくれ」



男「いやー、しかしびっくりしたー」

幼「……」

男「あ、すまんすまん、気悪くしたか?」

幼「……いいや、違うんだよ……その、う、嬉しくて」カァァ

男「そ、そうか……でもホントに凄いぜ」

男「特にそのスカート……カボチャのスカート?」

男「幼の事だから、自分で作ったんだろう?」

幼「う、うん。 今回のコンセプトはカボチャの魔女って事で」

幼「魔女っぽく、それでいて可愛さは残した衣装にしたいと思って」

男「マントと帽子も凄い……俺の100均のとじゃ違うなー」

幼「でも男の衣装も似合っているよ」

男「このマスカレードマスクだけは頑張った。 ベースは100均だけど」

男「ネットで調べて、滅茶苦茶デコった」

幼「うんうん、輝いているよ!」

男「ちょっと写真撮ろうぜ」

幼「えぇ」

男「なんか今日はネガティブだな……似合ってるって」

男「めちゃ可愛いから大丈夫だって!」

幼(めちゃ可愛いって言われた! めちゃ可愛いって言われた……)カァァ

男「撮るぞー」

幼「う、うん!」

男「カボチャの魔女っぽいポーズ!」

幼「こうかな?」
サッ

男「いいね!」
パシャ

男「どうだ、かなり良い感じで写せた!」
サッ

男「やっぱり素材が良いと、腕前は関係ないか、ははは」

幼「う、こうして見ると、やっぱり恥ずかしいな……」

男「次! 一緒に撮ろうぜ!」

幼「う、うん!」

男「うし! 行くぞ!」

幼(顔、近い……)

男「幼、笑顔が硬いぜ?」

幼「す、すまない」アセアセ

男「せっかくの可愛さが減るぜ? ほら、スマイルスマイル!」ポンポン

幼(肩ポンポンされた……ふふ、嬉しい)ニヘー

男「シャッターチャンス!」
パシャ

男「おー、さっきより更に良い写真が撮れた!」

幼「あっ、ニヤけた顔が……」

男「幼がたまに見せるこの表情、俺は好きだぜ?」

幼「え?」

男「幸せ~って感じで、好きだ」

幼(今か! 今がその時なのかな?)

幼(い、言うぞ……言ってしまうぞ)

幼「わ、私も男の事がす」

ピーンポーン

男「ん?」

幼「あ! 子供達が来るのは6時から8時までの間だからそろそろ……」

ピンポーン

男「という事は……来たな、ちびっ子達」

男「ほら、幼も」

幼「え?」

男「ちびっ子達を驚かせちゃおうぜ?」

幼「で、でも……」

ピンポーピンポーピンポーン

男「だーいじょうぶ! 似合ってるから。 ほら!」
サッ

ピンピンピンピンピンポーン

男「はーいよー! 今出るよー!」
グイッ
タタッ

幼「あわわ」
タタッ

幼(慌てず……焦らず……頑張れ私!)

ガチャッ

子供達「「トリックオアトリートー!」」

子供A「お菓子くれなきゃいたずらするぞー!」

子供B「するぞー!」

子供C「お菓子ちょーだいー」

男「はいはいよー、カボチャのクッキーやるから、いたずらは止めてくれー」
サッ

子供達「「わーーーい! お菓子だーーー!」」

引率のおばさん「男君、ありがとね……あら?」

男「いえいえ……ん?」

幼「……」コソコソ

おばさん「幼ちゃん? あらあらあら! かっわいいー!」

幼「ど、どうも……」テレテレ

子供A「ホントだ! お姉ちゃんチョーかわいい!」

子供B「アイドルみたいだ! すげー!」

男「そうだろうそうだろう。 俺たち二人頑張ったんだぜ?」

子供C「それにしては兄ちゃんのはイマイチ! あははははは」

子供B「ホントだ、イマイチだ! あははははは」

男「あー、そういう生意気な子供にはお菓子やらなーい」

子供A「バッカ、お前ら! こんな時は『すっごく良いですね!』で乗り切る約束だろー」

子供達「「二人ともすっごく良いですね!」」

男「なんか釈然としねーけど、ほらクッキー」
サッ

子供達「「ありがとー!」」

男「ふふん、俺は仮装はイマイチだが、そのクッキーには自信がある!」

子供A「え! これ兄ちゃんが作ったの?」

子供B「お姉ちゃんじゃなしに?」

子供C「うっそだー」

男「ウソじゃねーって、な? 幼?」

幼「そうだよ。 そのクッキーはお兄さんが一所懸命頑張って作ったんだよ」

子供達「「へぇ~」」

子供D「あの……トリックオアトリート……いいですか?」

子供E「お菓子くれなきゃいたずらだー!」

子供F「郵便受けに味付け海苔をたくさん入れたりするぞー!」

男「おおっと! お菓子やるからいたずらしないでくれー」

子供A「じゃあ、俺たちは次の所行こうぜ!」

子供B「兄ちゃんありがとー!」

子供C「お姉ちゃん、衣装可愛かったよー」
タタタ

おばさん「ごめんなさいね、長居して。 ありがとね、二人とも」

男「いえいえ」

幼「夜道、気を付けて下さい」

子供D「お菓子ー!」

子供E「この海苔を郵便受けに入れちゃうぞー」

男「わかった、わかったから順番に……」



男「ふいー……もうそろそろ八時か……ちょっと疲れたな」

幼「もう子供は来ない……かな?」

男「クッキー2袋余っちまったな」

幼「たくさん作ってたね、凄いよ、男」

男「おう、昨日は一日クッキー焼いて焼いて焼きまくったぜ」

幼「そう言えば、私まだ貰ってないね」

幼「お菓子をくれなきゃいたずらするぞー」

男「おっと、幼にはいつも世話になってるから別枠だぜ」
サッ

幼「あ、可愛いラッピング」

男「中身も特別だぜ、見てみ」

幼「それじゃあ遠慮なく」
ペリペリ
ガサガサ

男「どうよ」

幼「わぁ……ちゃんとカボチャの形してて、チョコでジャック・オー・ランタンが描かれている!」

幼「どうして私だけ?」

男「ホントは全部それで行こう!と思ってたんだけどさ」

男「8枚焼いた時点で諦めた……」

男「俺が集中してクッキーを焼けるのは8枚が限界だった……と」

幼「ふふ、型抜きやデコレーションはちょっと大変だよね」

男「この作業をあと何枚分やるのか…って考えたらさ」

男「子供用は普通に丸型でいいかなって」

男「だからそのクッキーは一番頑張って作った物なのだ!」

幼「あ、ありがとう……凄く嬉しいよ」

幼「一枚だけ、今食べても良いかな?」

男「おう! 自信作だ! 食べてみてくれ!」

幼「それでは、頂きます」
ポリッ
モグモグ

男「……」

幼「うん! 凄く美味しいよ!」

男「へっへっへ……やったぜ!」
ぐぅ~~~~~~~~~~~

男・幼「「…………」」

幼「ふふっ、それじゃあ食事を温めるね」

男「すまんな、催促したみたいで……」
ぐぅ~~~

幼「今回はリクエストのあった煮つけと、新作で蒸したカボチャを……」



男「はー、やっぱり幼の料理めちゃ美味いな!」

幼「ありがとう、完食してくれて嬉しいよ」

男「やっぱさ、料理って経験だよなー」

幼「え?」

男「実は試しにいくつか別のお菓子も作ったんだけどよ……」

男「クッキー以外は不味くて食えたもんじゃ無かったんだな、これが」

幼「へぇ……それは処分してしまったのかい?」

男「ガッツでほぼ食ったさ……お残しなんて許されねーからな」

男「せっかくのばあちゃんのカボチャだからな」

幼「ほぼって事は残っているものもあるのかな?」

男「プリンが、残ってる……」

幼「プリン! へぇ」

男「容器が無かったから、コップで2個作ったんだけど」

男「美味いかどうか、わからない……」

幼「……それ、二人で食べよう!」

男「え、上手くいった自信が全くないんだけど……いいのか?」

幼「それでも! 二人で、食べよう」

男「おう、そんじゃ取ってくるぜ」
スタスタ

幼(二人で……2個しかないプリンを、食べる……)

幼(特別な感じがして……嬉しい!)ニヘー

幼(はっ!? 駄目だ駄目だ……ニヤけずにニヤけずに……)

男「冷え具合はばっちりっぽいけど……ホントにいいのか?」
スタスタ

幼「う、うん! もちろん!」

男「そんじゃ、はいよ、コレ」
コトッ

幼「結構大きなコップで作ったんだね」

男「ちょっとデカ過ぎだよな……このコップ1個でプリン3個分なんだ」

幼「なるほど、プリン6個分のレシピで作ったんだね?」

男「そう! しくじったよなー」

幼「味見はしていないんだよね?」

男「してないなー」

幼「レシピ通り作ったんだよね?」

男「そう、それ大事な?」

幼「ん?」

男「ばあちゃんから貰ったレシピ、大人数向けでさ」

男「俺、そんなにいらんから、とりあえずこんくらいかなー?って」

男「勝手に量減らして作ったら、まぁ失敗でな。ケーキとかタルトとか……」

幼「あははは……お菓子はね、レシピ通り作るとほぼ失敗しないんだよ」

男「じゃあこのプリンは……?」

幼「食べてみよう」

男「よ、よし来た!」

幼「お先に、頂きます」
パクッ

男「……どうだ?」

幼「食べてごらんよ」

男「おう! 頂きます!」
パクッ

男「……こんなバカな!?」

幼「すっごく美味しいよね!」

男「マジかー、ばあちゃんごめんー、そしてありがとうー」
パクパク

幼「ふふっ、美味しいし、嬉しい」
パクッ

男「嬉しい?」

幼(しまった、つい本音が……)

幼(ど、どうしよう。 今がチャンスの時なのか?)

幼(言ってみるか!)

幼「そ、そう。 私は男」

ピーンポーン

男「ん? こんな時間に誰だ?」

幼「……ひょっとして、まだ回ってる子が居るのかな?」
スタスタ
ガチャ

子供Y「あ、あの……トリックオアトリート……まだ大丈夫ですか?」

子供Z「うぅ……遅くなってごめんなさぃ……グスグス」

子供Y「もう泣くなよ。 遅くなったのは俺のせいだから」

子供Y「妹が気にする事じゃないんだってば」

子供Z「でもぉ…グスッ」

男・幼「……」コクッ

男「うわー! お化けだー!」

幼「お菓子をあげるから、いたずらはしないでー」

子供Y「あ、ありがとう、お兄さん、お姉さん!」

子供Z「うぅ…ありがとーございます」ペコ

幼「ほらこれ、とっても美味しいカボチャのクッキーだよ」

子供Z「うわぁ……お姉さん、本物のカボチャの魔女?」

幼「そう、私は魔女なの。 魔法が使えるんだよー」

幼「このクッキーを食べるとニコニコ笑顔になれるよ」

幼「カボチャの魔女がそんな魔法をかけておいたんだ」

幼「だからほら。 もう泣かないで?」

子供Z「うん! 私もう泣かない!」

子供Y「ありがとうございます!」ペコ

幼「二人とも、お菓子袋はまだまだ入る?」

子供Y「はい、ここが一軒目なので……」

幼「それじゃあ、カボチャの魔女がもう一つ! 魔法を使ってあげる」
スッ

男(スマホ?)

幼「ちょっと待ってね、今魔法の呪文をかけるから」
ポチポチポチ

子供Z「魔法使いはスマホで魔法を使うの?」

幼「そうだよー。もうすぐかかるよー」
ペコリン

男「おい幼、魔法って」ヒソヒソ

幼「大丈夫、任せて」ヒソヒソ
クルクルクル
ピタッ

幼「はーい、そのお菓子袋に魔法をかけましたー」

子供Z「なんの魔法?」

幼「そのお菓子袋がいーっぱいになる魔法だよ、ふふっ」

子供Z「わーい! やったー!」

子供Y「あの……それはその……」

幼「大丈夫! 次に隣の家を訪ねてみて」ヒソヒソ

幼「きっと魔法がかかってるから、ね?」ニコ

子供Y「あの、本当にありがとうございます……」

幼「妹ちゃんが笑ってるのに、お兄ちゃんが困った顔してると」

幼「また妹ちゃんを泣かせてしまうよ?」

子供Y「はい、わかりました!」

子供Y「ありがとうございます!」

子供Z「お兄ちゃん、早く次に行こうよ!」

子供Z「うん! 仮面のお兄さんと、魔女のお姉さん!」

子供Z「本当にありがとうございました!」ペコ

子供Y「ありがとうございましたっ」ペコ

男「君たち、見ない顔だけど家はどこなの?」

子供Y「ここから5分くらい歩いた所にあるアパート」

子供Z「最近引っ越してきたんだー」

幼「そうなんだ……もう夜遅いから、帰り道気を付けてね?」

子供Y・Z「はーい!」

幼「うん、良い返事だ! じゃあ次の家に行っておいで」

男「またなー」フリフリ

子供Z「またねー」ブンブン



男「で? 魔法ってなんだ?」

幼「お母さんにラインしたんだよ」
ポチポチポチ

幼「『今から行く兄妹にありったけのお菓子をあげて』ってね」

男「なるほど……お菓子の備蓄は大丈夫なのか?」

幼「大丈夫。 たっぷり買い込んでたから」

幼「余った分は私とお母さんのおやつになる予定だったし」

男「そっか……それじゃあの二人のお菓子袋は一杯になって笑顔になるな」

幼「それと帰り道が心配だから、二人を送って行くようにラインしておいたよ」

男「おぉ、素敵な気配り! 流石だなー」

幼「いえいえ、そんなそんな」

男「なんか最後に良い事した感あるよな、はは」

幼「ふふふっ……二人、可愛かったね」

男「あぁ、可愛い兄妹だったなー」

幼「さて……プリンの残りを食べようよ」

男「あ、そだった。 食ってる途中だった」

幼「~♪」
パクッ

男「……今さらだけどあの二人、俺と幼で送って行けば良かったんじゃね?」
パクッ

幼「わ、私はこの格好で外の道を歩く度胸は無いよ、はは……」

男「まだそんな事を……似合ってるって!」

幼「……ありがとう」
パクッ

男「そういえば何か話してる途中だったよな?」

幼「ん? ん~~……今年のハロウィンは~……」

幼「男と一緒に楽しめて、とても嬉しいって話だよ」
パクッ

男「そだな! 楽しいハロウィンだな!」

幼「うん!」

幼(これで良い……今の楽しい雰囲気を壊す事は無い……)

幼(私は焦らない……焦らないぞ……)

幼(楽しいままで今日を終えるぞ……)

男「あ、そだ。 写真、もっと撮ろうぜ」

幼「えぇ? 写真はもう……あ、さっき撮った写真、ラインで送って貰えるかな?」

男「それは勿論オーケーだけど、もっと撮ろうぜ?」

男「幼友さんに送れば、幼の仮装がどれだけ可愛いか、わかってくれると思うんだよな」

幼「あぁ、はは……それはそうかも」

幼「じゃあ、もうちょっとだけ……浮かれてみようかな」

男「それじゃ撮るぞー」

幼「うんっ」


幼(次のチャンスは……クリスマスっ!)




ハロウィン翌日の早朝

幼馴染の友「…………ん……ライン……誰?」
ポチ

幼友「なんじゃこりゃあああああああああああ!」
ガバッ!

幼友「可愛いにも程があるでしょうよ、幼ぁぁぁぁぁぁああああぁああ!」

幼友「送信履歴は! 夜9時!」

幼友「なんで私は寝てたの?」

幼友「今からトリック! トリックでお願いします!」ハァハァ


おわり

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