シンゲキロンパ CHAPTER 03 (223) 【現行スレ】





???『すごいよヒストリア』

???『もうこんなに読めるようになるなんて』

ヒストリア『だって、おねぇちゃんが教えてくれるから』

???『あ、だめだよ。鼻水垂らしてちゃ』

???『ヒストリアはもうちょっと女の子らしくしないと』







???『はい、かんで』

ヒストリア『ふんんんんん』ズビー

???『おう』

???『はい、よくできました』







ヒストリア『ねぇ?』

???『ん?』

ヒストリア『女の子らしくって何?』

???『そーだね』

???『女の子らしくっていうのは』

???『この子みたいな女の子のことかな』







???『ヒストリアもこの子が好きでしょ?』

ヒストリア『うん』

???『いつも他の人を思いやっている優しい子だからね』

???『ヒストリアもこの子みたいになってね』

???『この世界は辛くて厳しいことばかりだから』

???『みんなから愛される人になって助け合いながら
    生きていかなきゃいけないんだよ」

ヒストリア『…うん』







ヒストリア『じゃあ私、おねぇちゃんみたいになりたい』

???『え!?』

ヒストリア『私…大きくなったら
      おねぇちゃんみたいになれるかなぁ?』

???『……』







???『いいよ!!』ガッパ

ヒストリア『わ!?』

???『いいよいいよ』

???『そのままでいいよ』

ヒストリア『うわ…』







???『ごめんね、ヒストリア』

???『もう時間になっちゃった』




コツン




???『今日も私のことは忘れてね』

???『また会う日まで』

ヒストリア『え――』







ピリ

ザッザッ




ヒストリア『あれ?』




ヒュウウウウウウウウ




ヒストリア『あの女の人…』

ヒストリア『だれ…?』











CHAPTER 03

僕と私の兵団裁判

(非)日常編







CHAPTER 03 

DAY 10




ヒストリア「…これが私の知る全て」

ヒストリア「私がここに来た理由」




アルミン(2度目の事件の翌日…)

アルミン(僕たちは全員、食堂でクリスタ…
     いや、ヒストリアの告白を聞いていた)

アルミン(ヒストリアは僕たちに全てを明かした)

アルミン(クリスタ・レンズは偽名で、
     本名はヒストリア・レイスであること)

アルミン(ウォール・シーナ北部の小さな牧場で
     孤独な幼少期を過ごしたこと)

アルミン(5年前、ウォールマリアが没落してから数日後に
     領主の名を名乗る父親が現れたこと)

アルミン(その時に目の前で母親が殺されたこと)

アルミン(自分も殺されそうになったとき、
     偽名を名乗ることを条件に見逃されたこと)

アルミン(そして、それから2年間を開拓地で過ごし、
     12歳のときに訓練兵団に志願したこと…)

ヒストリア「クリスタなら、こんな自分語りを始める前に
      昨日のことを謝るんだろうね」

ヒストリア「みんなを道連れにしようとしてごめんなさい…って」

ヒストリア「クリスタ・レンズはいい子だから」




クリスタ『違う違う違うッ!!』

サシャ『ク、クリスタ…』ガタガタ

クリスタ『一体何度言えばわかるの!?
     ユミルの計画に巻き込まれたのは私だよ!』

アルミン『違う! 巻き込まれたのはサシャだ!
     君が[ピーーー]はずだったのをサシャが殺してしまったんだ!』

クリスタ『違うッ!!』

アルミン『違わないッ!!』

クリスタ『…ッ!!』

アルミン『クリスタ、もうやめにしないか…!?』

アルミン『こんな事したって誰も救われない!』

アルミン『こんな事… ユミルもサシャも望んでない!!』



ヒストリア「でもヒストリア・レイスは、親からも誰からも
      愛されたことがなくて…」

ヒストリア「それどころか生まれたことを望まれなかった子で…」

ヒストリア「それもこの世界じゃ特に珍しくもない話で
      都の地下とかではよくあること…」




???『…お前さえ』

???『お前さえ産まなけ……』グッ



ヒストリア「…正直に言うとね」

ヒストリア「私、どう謝ればいいかわからないの」

ヒストリア「ううん、もしかすると…
      自分が悪いことをしたって思ってないのかもしれない」

ミカサ「………………」

ヒストリア「どう?」

ヒストリア「みんながっかりしたでしょ?」

ヒストリア「本当の私はこんなに空っぽで」

ヒストリア「クリスタ・レンズみたいないい子はどこにもいなくて」

コニー「そんなことねーよ」

ヒストリア「え…?」

コニー「だってよ…」

コニー「だって、お前は…
    サシャを助けようとしてくれたじゃねえか」

ヒストリア「………………」

ヒストリア「…でも、私はみんなを道連れに」

ジャン「それでオレたちが恨んでるとでも思ってたのか?」

ジャン「…まあ確かに、ちょっとはムカついたけどよ」

ジャン「あいつが抱えたモンに比べれば…
    オレたちの怒りなんてちっぽけなもんだ」





サシャ『みんなが死んで私だけが生き残るなんて…』

サシャ『そんなの絶対耐えられません』

サシャ『そんなの絶対…』

サシャ『絶対… 嫌ですから…』




ジャン「あいつは全部抱えて死んでいった」

ジャン「オレたちの怒りも、悲しみも、やるせなさも…」

ジャン「恐怖と絶望にひっくるめて全部、持って行っちまった」

ヒストリア「………………」

ジャン「お前はそんなあいつに手を差し伸べて、
    重荷を肩代わりしようとしただけじゃねえか」

ジャン「…そんなお前をどうして恨めるよ?」





サシャ『もういいんです、本当に』

サシャ『ここで私が犠牲になれば全て収まる…』

サシャ『だったらもう… それでいいじゃないですか』




アルミン「…もしもヒストリアがいなかったら、
     サシャは孤独のまま死んでいったと思う」

アルミン「ユミルの罠にはまって、訳もわからずに、
     何の心の拠りどころもなく…」

アルミン「だけど君が、最後までサシャの味方でいてくれたおかげで…」

アルミン「ほんの少しだけど、サシャは
     救いを得ることができたんじゃないかな」

ヒストリア「………………」

アルミン「だからさ、ヒストリア… うまく言えないんだけど」

アルミン「…ありがとう」

ヒストリア「………………」

ヒストリア「……いいの?」

ヒストリア「本当に… こんな私を受け入れてくれるの…?」

ベルトルト「受け入れるも何も…」

ライナー「もうとっくに受け入れてるぞ」

ライナー「俺たちは仲間なんだからな…」

ヒストリア「うっ…」









ヒストリア「うああああああああああああああああああ……!!」







アルミン(ヒストリアは泣いた)

アルミン(声を枯らして泣き続けた)

アルミン(今まで溜め続けた思いを吐き出すように…)




ヒストリア「あああああああああああああああああああ……!!」




アルミン(こうして… ユミルとサシャの裁判は幕を閉じた)

アルミン(本当の意味で…)









モノクマ「くっさーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」







アルミン「…!!」

モノクマ「くっさいよオマエラ!くさすぎだよ!」

モノクマ「ちゃんとお風呂入ってる!? ちゃんと歯磨いてる!?」

コニー「モ、モノクマ…!」

モノクマ「あらやだ、あんた目ヤニ付いてるわよ!
     ほらこっち来なさい!お母さんが取ってあげるから!」カーッ ペッ

コニー「や、やめろ!きたない!」

モノクマ「おとなしくしなさい!まったくあんたって子は!
     遅刻は問答無用で減点だって、あれほど言って聞かせたでしょ!」

ベルトルト「遅刻って… 何のこと?」

モノクマ「何のこと…だと…」

モノクマ「訓練だよ訓練!もう忘れたのかオマエラ!」




11 訓練兵達は50日間の訓練を行います。
  訓練への参加は強制ではありません。

12 訓練の総合成績が一番優秀だった者には、
  “ファイナルデッドルーム”への挑戦権が与えられます。




ジャン「…ああ、そういえばあったなそんなの」

ライナー「訓練への参加は自由なんだろう?
     とやかく言われる筋合いは無いはずだが」

モノクマ「まあ、そりゃそうなんだけどさ…
     監督教官の身としては寂しいわけですよ」

モノクマ「こっちはウキウキしながら訓練メニューとか作ってんのに、
     オマエラはサボる上にくっさい話してるし」

ジャン「くさい話だと…!?」

モノクマ「だって、そうじゃないのさ」




ジャン『な… なんだ…そりゃあ…』

クリスタ『…っ』

ジャン『お前正気かよ!? ふざけんじゃねえよ!』

ジャン『なんでオレたちが殺されなきゃならねえんだ!
    何の関係もないオレたちが…』




モノクマ「自分たちがブラウスさんの身代わりとして
     標的にされたと知ったとき…」

モノクマ「血相を変えて異を唱えたのは、
     どこのどなたでしたっけ?」

ジャン「…! あ、あれは…」

モノクマ「あれは?」

モノクマ「あれは… 何だっていうの?」

ジャン「…っ」

モノクマ「…ほらね」

モノクマ「いい加減に認めなよ。オマエラは
     己だけ助かればいいと思っている身勝手な生き物なんだ」

モノクマ「それを友情だの家族愛だの、
     ご大層なものを並べ立てて隠しているだけなんだ」

モノクマ「うぷぷ… 最初におしおきされた誰かさんが良い例だよね」




ミーナ『みんな…信じてよ!』

ミーナ『私は人類の為に!!みんなの代わりに!!』



モノクマ「『重荷を肩代わり』?『俺たちは仲間』?」

モノクマ「かーっ、やだやだ。セリフがくさすぎて吐き気がするよ…オッ」

モノクマ「オエエエエエエエエエエエエエッ!!」ビチャビチャ

ジャン「…ッ!」

モノクマ「…ボクはね、もっと自分に正直になった方がいいと思うんだ」

モノクマ「もっと素直になって、
     怒ったり憎んだりしてもいいと思うんだ」

モノクマ「…あの2人みたいにね」









ミカサ「………………」

アニ「………………」







ジャン「…!!」

モノクマ「うぷぷ… さっきはみんなが
     レイスさんを受け入れるような流れだったけど」

モノクマ「全員が全員…って訳ではなさそうだねぇ」

ミカサ「………………」

アニ「………………」

モノクマ「ま、そりゃそうだよね。レイスさんは仮にも
     【ここにいる全員を殺そうとした】訳だから…」

モノクマ「あれが当然の反応だよねー」

アルミン(僕はモノクマが示す2人を見た)

アルミン(ミカサは腕を組んで壁に寄りかかり、
     アニは頬杖をついたまま虚空を見つめている)




ミカサ「………………」

アニ「………………」




アルミン(2人ともさっきから言葉を発していない)

アルミン(そして、2人の眼差しには…
     どこか冷ややかなものがあった)

モノクマ「うぷぷぷ…」

モノクマ「そうそう、そうやって怒れよ。憎しみ合えよ」

モノクマ「言ったでしょ。オマエラはそういう生き物だって」








ミーナ『クズだよあんたらは!!』




ミーナ『認める訳ねーだろ!真っ白なんだよ私は!』




ミーナ『いい加減にしろよこのもやしが!!』








モノクマ「殺りたい放題、殺らして殺るから…」

モノクマ「殺って殺って殺って殺りまくっちゃえっつーの!!」

今日はここまで

アルミン(僕は再びミカサとアニを見た)

アルミン(2人は何も反応しない。彫刻のように動かない)

アルミン(瞳に冷たい光をたたえたまま…)




ミカサ「………………」

アニ「………………」

ジャン「お、おい、お前ら…」

ミカサ「………………」

アニ「………………」

ヒストリア「ミカサ… アニ…」

ミカサ「………………」









ミカサ「…別に怒ってない」







モノクマ「………………」

モノクマ「…は?」

ミカサ「私は別に怒ってない。憎んでもいない」

ミカサ「勝手な想像で話を進めないで」

コニー「ミカサ…?」

ミカサ「私はただ呆れていただけ」

ミカサ「的外れなモノクマの物言いに…」

モノクマ「的外れ…?」

モノクマ「いやいや… だってキミは、
     裁判のときに言っていたじゃんか」




ミカサ『ここであなたのエゴイズムに殺される訳にはいかない』




モノクマ「レイスさんがやろうとしていた事を
     真っ向から否定して…」

モノクマ「メッタメタに批判してたじゃんか!」

ミカサ「確かに言った」

モノクマ「ほらみろ!」

ミカサ「でも、私はこうも言った」




ミカサ『…世界は残酷』

ミカサ『ずっと感じていた。ここは…そんな世界の縮図だと』




ミカサ「この世界は…」

ミカサ「みんなが幸せになるようにはできていない」

ミカサ「誰かを守るためには、誰かを犠牲にしなければならない」

ミカサ「【尊重できる命には限りがある】から…」

ミカサ「ヒストリアは【尊重できる命】としてサシャを選んだ」

ミカサ「ただそれだけ」

ミカサ「私はそれを憎らしい事だとは思わない」

モノクマ「ふーん… よく言うね」

モノクマ「イェーガーくんが殺されたときは
     あんな事言ってたくせに」




ミカサ『家族がいるのはあなただけじゃない…!』

ミカサ『自分の家族を救うために、
    他人の家族を犠牲にする理はない…!!』



ミカサ「…あれはエレンが殺されたから」

ミカサ「私の【尊重できる命】を守ることができなかったから」

ミカサ「あんなに近くにいたのに、
    守ることができなかったから…」

アルミン「ミカサ…」

ミカサ「………………」

ミカサ「…今の私にはやるべき事がある」

ミカサ「ので、まだ死ぬわけにはいかない。でも…」

ミカサ「【尊重できる命】を守ろうとしたヒストリア…
    そしてユミルの気持ちもわかる」

ヒストリア「………………」

ミカサ「だから…」

ミカサ「私は2人を恨むことができない」

モノクマ「…なんだよそれ」

モノクマ「憎んでないっていうの…?
     あんなに明確な殺意を向けられたのに?」

ミカサ「………………」

アニ「………………」

モノクマ「じゃ、じゃあ…
     レオンハートさんはどうなんだよ!」

モノクマ「キミも裁判のときに言っていたじゃんか!」





アニ『サシャが殺人犯に仕立て上げられた。
   そんなの可哀想だから他の奴らが全員死ね』

アニ『あの女が言ってるのはそういう事だよ』




モノクマ「キミだって怒ってるんだろ!?」

モノクマ「レイスさんが勝手に自分たちを巻き込もうとしたから…」

モノクマ「殺したいほど憎んでるんだろ!?
     さっきから不貞腐れてるのはそういう事なんだろ!?」

アニ「………………」

アニ「…え?私?」

モノクマ「…は?」

アニ「ごめん、聞いてなかった」

アニ「眠くて…」

モノクマ「うっ…」









モノクマ「うああああああああああああああああああ……!!」







ポヨヨーン




ベルトルト「…行っちゃった」

コニー「お、おい… 大丈夫か?
    モノクマのやつスネちまってたけど…」

ジャン「ほっとけ。いい気味だぜ」

ヒストリア「あ、あの…ミカサ…」

ヒストリア「私…何て言ったらいいのか…」

ミカサ「何も言う必要はない。あなたはあなたの戦いをしただけ」

ヒストリア「………………」

ライナー「ところで、ヒストリア…」

ライナー「さっきの話なんだが…」

ヒストリア「…え?」

ライナー「お前の過去の話に出てきた人物のことだ」

ライナー「幼少期、度々お前に会いに来ていたという…」





???『すごいよヒストリア』

???『もうこんなに読めるようになるなんて』

ヒストリア『だって、おねぇちゃんが教えてくれるから』

???『あ、だめだよ。鼻水垂らしてちゃ』

???『ヒストリアはもうちょっと女の子らしくしないと』




ヒストリア「お姉さんのこと?」

ライナー「ああ…」

ヒストリア「お姉さんが…どうかした?」

ライナー「俺は思うんだがな…」









ライナー「そいつが俺たちの記憶を奪ったんじゃないのか?」







今日はここまで

今後は毎週日曜日に更新します

ヒストリア「…!?」

コニー「は…? ど、どういう事だ?」

ライナー「さっきの話を思い出してみろ」








コツン




???『今日も私のことは忘れてね』

???『また会う日まで』

ヒストリア『え――』







ライナー「その女性に会った後、お前はいつも
     そいつの事を忘れていた…」

ライナー「…そうだったな?」

ヒストリア「う、うん…」

ヒストリア「おでことおでこをくっ付けたら、
      急に頭が痺れたみたいになって…」

ヒストリア「次の瞬間には…
      その人が誰だかわからなくなってた…」

ジャン「ちょ、ちょっと待て! それってまるで…」

ベルトルト「【記憶を消された】…そう見えるよね」

ジャン「…!」

ベルトルト「その人は【記憶を消せる力】を持っていた」

ベルトルト「そして… その力を使って、
      ヒストリアの記憶を部分的に消した…」

ヒストリア「き、記憶を消したって… どうして…?」

ライナー「不都合だったからだろう」

ヒストリア「え…?」

ライナー「そいつにとっては、お前との面会は不都合な事だったんだ」

ライナー「だから、無かったことにした」

ヒストリア「無かった…ことに…?」

ライナー「何が不都合だったのかは知る由もないが…」

ライナー「それを忘れさせる為に使った【記憶を消せる力】…
     普通の人間ができる事じゃない」

アルミン「つまり、その人が【記憶を消せる力】を使って
     僕たちの記憶を無くしたっていうの?」

ライナー「ああ。もしくは、【それと同等の力を持った者】によってな」

コニー「そ、それなら…そいつが全ての黒幕なのか!?」

コニー「俺たちを拉致して記憶を奪った
    このコロシアイの【首謀者】なのか!?」

ベルトルト「…いや、それは違うと思うよ」





モノクマ『オマエラは元々、全ての記憶が無い状態だったんだよ?』

モノクマ『それを心優しいボクが保護して、
     なんとか訓練兵団入団直前の記憶まで戻してあげたってわけ』

モノクマ『つまり、オマエラの記憶を奪ったのは【別の誰か】で、
     ボクはそんなオマエラを助けてあげたの。アンダスタン?』




ベルトルト「モノクマは、記憶を奪った人間は
      【別の誰か】だって言ってたよね?」

ベルトルト「僕らを攫ったときには、すでに記憶が無い状態だったって…」

ジャン「だから、それはモノクマのウソだろ!」

ベルトルト「そうかな? 僕にはそうは思えないけど」

アルミン「…やけに確信めいた言い方をするね」

ベルトルト「…!」

アルミン「何かそう考える根拠でもあるの?」

ベルトルト「…いや、なんとなくそう思っただけだよ」

ミカサ「………………」

アニ「…ねえ、みんなちょっといい?」

コニー「…ん?」

アニ「どうでもいいけどさ…」

アニ「これからみんなで施設を探索してみない?」

ジャン「…は? 何だよいきなり…」

アニ「前にモノクマが言ってたでしょ」





モノクマ『えー、コホン…』

モノクマ『この施設では、兵団裁判を一つ乗り越えるたびに
     新しい世界が広がるようになっております!』

ベルトルト『新しい世界だって…?』

モノクマ『ほら、この施設に何ヶ所か、鍵のかかった場所があったでしょ?』




アニ「最初の兵団裁判の後…
   この施設の鍵のかかった場所に入れるようになったよね?」

ライナー「飼育小屋、ライブハウス…それに書庫か」

アニ「でも、まだ入れない場所もいくつかあった」

アニ「今回そこが…空いたんじゃないかと思ってさ」

ベルトルト「…そうか。『兵団裁判を乗り越えるたびに』という事は…」

ライナー「今回、また新しい場所が開放された可能性があるな…」

アニ「…そういう事さ」

アニ「今からちょっと見に行ってみない?」

アニ「いつまでもこんな場所で話してるよりは、気も紛れると思うけど」

ライナー「…なら、そうするか」

ライナー「話の続きはその後でもできるしな」

アニ「みんなもそれでいい?」

コニー「あ、ああ…」

ヒストリア「そうだね…」

ジャン「別に構わねえが…」

アニ「…決まりだね。じゃあ、また手分けして探しに行こうか」

今日はここまで

― 林 ―




ジャン「…わりぃ、今戻った」

ライナー「随分遅かったな。何かあったのか?」

ジャン「あ、ああ…ちょっとな」

ライナー「…? まあいい。これで全員か?」

ベルトルト「いや、ミカサがまだだよ」

コニー「何やってんだ、あいつ…もうかなり経ってるぞ」

ライナー「…仕方がない、始めるか」

ヒストリア「え? ミカサはいいの?」

ライナー「このまま待っていても埒が明かないだろう。
     こっちも暇じゃないんだからな」

アニ「………………」

ライナー「あいつには後で俺から言っておく。
     じゃあ、それぞれ報告していってくれ」

コニー「よし、俺から言うぜ」

コニー「俺が行ったのはあそこだ。
    ほら、でっけえ煙突から煙が出てたやつ」

ライナー「ああ、そこは俺も気になっていた。
     今朝になって煙を上げ始めたんだよな」

アルミン「中に入れたの?」

コニー「ああ… 中は巨大な溶鉱炉だった」

ベルトルト「溶鉱炉…?」

コニー「いやあ、あそこ汗が止まらないくらい暑くてよ…
    マジで溶けちまうかと思ったぜ」

ベルトルト「溶鉱炉って…なんでそんなものが?」

アニ「意味なんて無いよ。ここはそういう場所なんだから」

ベルトルト「そういう場所って…」

アニ「モノクマが私たちに
   コロシアイをさせる為だけに作られた場所…」
   
アニ「…ここまで言えばわかるしょ?」

ベルトルト「………………」

モノクマ「んもう、人聞き悪いなあ!」

コニー「おわっ!? また出た!」

モノクマ「まあもちろん、“そういう使い方”をしてくれても
     一向に構わない訳だけれど…」

モノクマ「あれはそもそも、その為のものじゃないよ!
     【ある物】を作り出す上で欠かせないものなんだからね!」

ライナー「【ある物】…?」

モノクマ「おっ、気になる? やっぱ気になる?」

モノクマ「でも今は教えませーん!
     どうしても知りたければ…」

モノクマ「訓練に参加しろーーっ!!」




ポヨヨーン

ジャン「…何なんだ、一体」

アニ「放っときなよ。どうせ訓練に参加させる為の口実だから」

ジャン「………………」

ライナー「…やれやれ、とんだ邪魔が入ったな」

ライナー「それじゃあ、気を取り直して、
     どんどん報告していってくれ」

ヒストリア「じゃあ、次は私から…」

ヒストリア「私はその溶鉱炉から
      ちょっとだけ離れた建物に行ってみたんだ」

ヒストリア「そこの鍵も開いててね」

ライナー「どうだった?」

ヒストリア「うーん、何だろう?
      うまく言えないんだけど…」

ヒストリア「色んな部品や機械が置いてあって…
      作業場…? いや、研究開発所みたいな…」

アルミン「何かを作る場所ってこと?」

ヒストリア「うん、そんな感じかな。
      作りかけの装置なんかも結構あったから」

アニ「私は別の建物を見てきたよ」

ベルトルト「もしかして、小高い丘の上にあった丸い屋根の?」

アニ「そうだけど… どうしてわかったの?」

ベルトルト「いや… その建物の方で
      ちらっと君の姿が見えたから…」

ライナー「鍵は開いてたのか?」

アニ「うん、中は… 観測所っていったところかな」

コニー「なんだそれ?」

アニ「気温や湿度、気圧なんかを事細かに測っているようだった。
   おまけに… 天気の予想なんかもしてたよ」

アルミン「天気の予想って…どういう事?」

アニ「そのままの意味さ。大きな黒板に色々書かれていてね。
   この日は晴れ、この日は雨って感じで…」

アニ「ちなみに、明日は【晴れ のち 曇り】だったよ」

ライナー「外の天気の事か?」

アニ「いや、この施設の中らしいけど」

コニー「…? この施設に天気なんてあんのかよ?
    一応、天井の明かりで昼と夜はあるようだけど…」

ヒストリア「うーん、その天井の明かりで
      晴れや曇りっぽくするって事なんじゃない?」
      
ヒストリア「雨は…よくわからないけど」

ライナー「ジャンはどうだった?」

ジャン「………………」

ライナー「おい、ジャン!」

ジャン「…! あ、ああ…」

ライナー「どうしたんだ、さっきから」

ジャン「な、何でもねーよ… ちょっと考え事してただけだ」

ジャン「えっと、オレが調べてきた場所についてだったな…」

ジャン「オレは…書庫に行ってきた」

コニー「書庫…? そこはもう開いてたじゃねーか」

ジャン「忘れたのか? 書庫の中には鍵のかかった扉があっただろうが」




ライナー『アニとジャンはどうだった?』

アニ『こっちも1つ解放されてたよ。
   本棚がたくさんあって、色んな書物がズラリと並んでた』

サシャ『それってもしかして…』

ジャン『ああ、書庫ってところだろうな』

ジャン『それと、その中にもう1つ扉があったんだが、
    そっちは閉鎖されてたぜ』



ライナー「あの扉が開いてたのか?」

ジャン「ああ」

ベルトルト「中は?」

ジャン「普通だよ。また本がズラリと並んでただけだった」

ジャン「あとはまあ… その奥にもう1つ
    鍵のかかった扉があったくらいだな」

コニー「ん? 扉の中にまた扉が…って事か?」

ジャン「そういう事だ」

アルミン「僕の方は収穫なしだった」

ライナー「そうか… それなら後は俺とベルトルトだな」

ヒストリア「何か見つけたの?」

ライナー「まあな」

アルミン「わざわざこの林に僕たちを集めたって事は…
     もしかして、例の石碑?」

ライナー「さすがに鋭いな。その通りだ」

アニ「………………」

ライナー「それじゃあ、さっそく見に行くとするか」

今日はここまで



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            栄誉ある戦士 ここに眠る                

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            席次5位 エレン・イェーガー


            席次不明 ミーナ・カロライナ


            席次不明 ユミル


            席次9位 サシャ・ブラウス










ジャン「…!!」

ヒストリア「また増えてる…」

アニ「………………」

コニー「この前に見たときは…
    エレンとミーナだけだったよな…?」

アルミン「………………」

ライナー「今回加わったのはユミルとサシャ…」

ライナー「やはりここには、死んだ人間の名前が記されるようだ」

ベルトルト「おまけに、名前の横にある“席次不明”と“席次9位”…」

アルミン「ライナー、現時点での僕たちの成績は?」

ライナー「そう言うと思ってな。紙に書いたものを持ってきた」

名前          PT

ミカサ・アッカーマン  10
ミーナ・カロライナ   10
アニ・レオンハート   09
ライナー・ブラウン   09
ベルトルト・フーバー  09
ユミル         09
ジャン・キルシュタイン 08
コニー・スプリンガー  08
サシャ・ブラウス    07
クリスタ・レンズ    07
アルミン・アルレルト  06
エレン・イェーガー   00

アルミン「…やっぱり一致しない」

ライナー「ああ。この通りで言ったらユミルは席次2位、
     サシャは4位になるはずだ」

ライナー「同じ点数で成績に差があるとしても、
     ユミルは3~6位、サシャは9~10位…」

ライナー「サシャは一応合うが、ユミルは合わない」

ヒストリア「エレンとミーナの順位も合わないっていうのは、
      前回の捜索でも言われてたよね…」

アルミン「………………」









ま  る  か  じ  り




席次不明

ミーナ・カロライナ 処刑執行















ト  モ  グ  イ




席次9位

サシャ・ブラウス 処刑執行







アルミン(…ミーナの時と同じだ)

アルミン(ここに記されたサシャの席次は、
     処刑の時に見たものと同じだ)

アルミン(これって…)




ヒストリア「ね、ねえ…」

ライナー「ん?」

ヒストリア「この席次っていうのが、今の私たちの成績と
      関係ないんだとしたら…」

ヒストリア「考えられる可能性は、前にライナーが言ってた…」









ライナー『俺たちが記憶を失う前の成績なんじゃないか?』








ライナー「…ああ、十分に考えられる」

ライナー「エレンとサシャの“本物の訓練兵団での成績”は
     5位と9位だった…」

ライナー「そう考えれば納得がいく」

コニー「な、なら… やっぱり今の俺たちは…」

ライナー「おそらく、モノクマの言う通り…
     その時の記憶をなくした状態なんだろうな」

ジャン「………………」

ライナー「まあ、“席次不明”については
     相変わらず分からないままだが…」

ライナー「俺たちが揃って記憶喪失だっていう話は、
     いよいよ現実味を帯びてきた」

ライナー「なにせ… ユミルが今回の事件を企てたのは、
     失われた記憶が戻ったせいだったんだからな」




アニ『モノクマは、失われた記憶を取り戻すことが
   今回の殺人の動機になると言っていた』

アニ『そして、もし…
   記憶が取り戻した人物がユミルであったのなら…』

アニ『今回の事件を企てたとしても不思議じゃない』



ベルトルト「…それにしても、信じられないよ」

ベルトルト「いくら記憶を取り戻したからって…」








モノクマ『どうしてレンズさん以外の全員を殺そうとしたんだろうね?』








ベルトルト「ユミルが… 僕たちを殺そうとしてたなんて」

アニ「ベルトルト」

ベルトルト「…!」

アニ「あれはモノクマがそう言ってるだけだから。
   何度も言わせないで」

アニ「ユミルはそんな事をするような奴じゃない」

ベルトルト「あ、ああ… 悪かったよ」

ライナー「…少し話が逸れたな」

アニ「………………」

ライナー「とりあえず、今回の捜索はここまでだ」

ライナー「一度、見つけた場所をまとめてみるか… ベルトルト」

ベルトルト「ああ、うん…」

  施設の特徴


・ 地下3メートルに巨大な鉄板?

・ 屋外をそのまま建物で囲った構造




  施設内の場所


・ 訓練所
 
・ 食堂・調理場(食糧が充実)

・ 寄宿舎(大浴場、各々の個室がある)

・ 倉庫(訓練道具、生活用品、薬品類などが充実)

・ 飼育小屋(牛、豚、羊、ニワトリ、馬などを飼育)

・ ライブハウス(演奏用のステージがある)

・ 書庫(鍵のかかった扉がある。1つは解放済み)

・ 溶鉱炉

・ 研究開発所(作りかけの装置などがある)

・ 観測所(天気の予想をしている)

・ 林(死者の名前が記された石碑がある)

・ 赤い扉(裁判場に続く昇降機への入り口)

・ 裁判場

・ その他、鍵のかかっている箇所

ベルトルト「………………」

ライナー「…ん? どうした?」

ベルトルト「あ、いや…」








ユミル『へえ…わかりやすいじゃねえか。やるもんだな、ベルトルさん』




ユミル『相変わらず見やすいな、ベルトルさん』








ベルトルト「何でもないよ」

コニー「しかし、こうして見ると…
    今回解放されたのは訳わかんねえ場所ばっかりだな」

ヒストリア「溶鉱炉に研究開発所、それに観測所だもんね…」

ジャン「………………」

アルミン「…ジャン?」

ジャン「…ん?」

アルミン「ねえ、本当にどうしたの? さっきから全然…」

ジャン「な、何でもねーって…」

ジャン「ちょっと…考え事してただけだ」

ライナー「さっきも同じような事を言っていたが…」

ライナー「何を考えていたんだ?」

ジャン「別に何だっていいだろ…」

ジャン「それより、話はこれで終わりか?
    だったらオレは寄宿舎に戻るぜ」

ライナー「おい…」

ジャン「じゃあな」




スタスタスタ

コニー「何だ? あいつ…」

アニ「………………」

ライナー「…仕方ない。俺たちも戻るとするか」

ライナー「だいぶ時間も経っているようだしな」

ベルトルト「そうだね…」

ベルトルト「続きは明日…っていう事にしようか」

今日はここまで

アルミン(その後、食堂に戻った僕たちは食事を済ませ…)

アルミン(大浴場で汗を流した後、それぞれの個室へと戻っていった)

アルミン(個室に足を踏み入れた僕は、流れるようにベッドへと倒れ込み…)

アルミン(そのまま反射的に目を閉じた)




アルミン「………………」









アルミン(そして、瞼の裏に現れたのは…)

アルミン(昨晩に見たあの光景だった)















ライナー『座標はあいつが持ってる』











アニ『…あいつって?』

ライナー『モノクマだ』

ライナー『いや、正しくは…それを操っている人間か』

アニ『………………』

ライナー『あいつの言う【巨人に関する重大なヒミツ】っていうのは
     まさに座標の事だったんだ』

ライナー『あいつは座標を使ってこの施設から巨人を遠ざけてる。
     そうとしか考えられない』







アニ『…じゃあ何? あいつが卒業したクロに
   【巨人に関する重大なヒミツ】をあげるって言ったのは…』

アニ『“【始祖の巨人】をもつ自分を食べさせてあげる”って…
   そういう意味だったって言うの?』

ライナー『…さあな』

ライナー『だが、もしその通りだとすれば…
     俺たちの求めているものがすぐ目の前にある事になる』

ベルトルト『…そんな都合のいい話、ある訳ないよ。
      仮に本当だとしても…』

ベルトルト『こんなに手の込んだコロシアイを計画する人間が、
      簡単に【始祖の巨人】を手放すとは思えない』
      
ベルトルト『あれにはそれくらいの価値があるんだ』








ライナー『…なら、お前はこの状況をどう考えるんだ?』

ベルトルト『もしかしてだけど…
      ここは【楽園】の外なんじゃないかな?』

アニ『…【楽園】の外?』

ベルトルト『要するに、僕たちは今パラディ島にいるんじゃなくて…』

ベルトルト『大陸側にいるんじゃないか?それも敵国の…』







ライナー『…何だと?』

ベルトルト『大陸側なら、そもそも巨人がいないんだから、
      その脅威に晒されることもない』

ベルトルト『だけど、ここが僕たちの祖国であるマーレなら、
      僕たちを監禁する理由がない』

ベルトルト『つまり、ここは敵国…
      僕はこれが濃厚なんじゃないかと思う』







ライナー『…それならなぜ、パラディ島に潜入した俺たちが
     敵国に囚われているんだ?』

ライナー『なぜ俺たちだけじゃなく、
     あいつらまで捕まっているんだ?』

ベルトルト『それは… わからないけど』

ベルトルト『僕たちが記憶を失った数年間に、
      何かがあった…のかもしれない』

ライナー『………………』







ライナー『…アニ、お前はどう思う?』

アニ『…え?』

ライナー『お前はこの状況を、どう考える?』

アニ『………………』

アニ『私は…』







ライナー『…まあいい』

ライナー『とにかく、お前たちも気を付けろ』

ライナー『相変わらず状況はよくわからないままだが、
     1つだけ確実に言えるのは…』

ライナー『あいつは俺たちの敵だっていう事だ。
     もちろん、ここにいる連中もな』

アニ『………………』







ライナー『最悪の場合、俺の【鎧】やお前らの【超大型】、
     【女型】が狙われる可能性もある』

ライナー『いいか、絶対に気を抜くなよ?』

ライナー『いざとなれば…巨人化して対抗することも考えておけ』



◆ モノクマげきじょう ◆




モノクマ「ここは宇宙船の中。
     みなさまは宇宙を旅している最中なのです」

モノクマ「ノアの方舟をご存知ですか?
     そうです、我らは地球を捨て飛び去っているのです」

モノクマ「頭のおかしい隣人や、警察の横暴、
     酔っ払い運転や放火魔の危険性はありません」

モノクマ「排気ガスや、大気汚染が引き起こすぜんそくの心配も
     もういりません」

モノクマ「もちろん、受験や競争に悩まされる事もないでしょう」

モノクマ「ただ、自由で素晴らしい世界にもルールはあります。
     自由というのはルールで縛られた上で存在するのです」

モノクマ「もし、あなたが、あんなクソどうでもいい地球に
     どうしても戻りたいと、そう仰るのであれば…」

モノクマ「…ルールを守ってください。
     私の言っている意味はおわかりになるでしょう?」

モノクマ「では…秩序はみなさまと共に…」









「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『オマエラ、おはようございます!
     朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノクマ『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』







CHAPTER 03 

DAY 11




アルミン(朝か…)




アルミン「………………」




アルミン(あの夜の光景が頭から離れない)

アルミン(あれは一体…)

今日はここまで

来週はお休みします

― 寄宿舎 ―




ヒストリア「おはよう」

アルミン「…おはよう、ヒストリア」

ヒストリア「…大丈夫? ひどい顔だけど…」

アルミン「ああ、うん… あんまり眠れなくてさ…」

アニ「おはよう」

アルミン「…!!」

アニ「?」

アルミン「…あっ…ああ… おはよう…ございます」

アニ「…ございます?」

アルミン「い、いや…その… おはよう」

アニ「………………」

ヒストリア「…ねえ、本当に大丈夫?
      具合が悪いなら寝てた方が…」

アルミン「う、ううん… 大丈夫…」

アルミン「問題ないよ…」

ヒストリア「………………」

アニ「…大丈夫なら早く行こうよ、2人とも」

― 食堂 ―




アルミン(食堂では、すでに他のメンバーが朝食をとっていた)




ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ジャン「………………」

コニー「………………」




アルミン(彼らはちらりと僕らを見ただけで、
     すぐに目の前の食事へと目を戻した)

アルミン(がらんと広い空間に、カチャカチャと食器の音だけが響いている)

アニ「…やっぱり、みんな疲れが出てるね」

アルミン「………………」




アルミン(無理もない)

アルミン(たったの10日足らずで、悲惨な事件が立て続けに起きて…)

アルミン(仲間が4人も死んだんだ)

アルミン(僕だって、正気を保っているのがやっとなくらいで…)









ライナー『座標はあいつが持ってる』







ヒストリア「…アルミン?」

アルミン「えっ…!?」

ヒストリア「アルミン、やっぱり様子が変だよ」

ヒストリア「うっすらと汗もかいてるし…
      部屋で休んだ方がいいって」

アルミン「い、いや、そんな事ないよ。
     本当に大丈夫だから…」

アニ「…どうだか」

アルミン「えっ…」

アニ「今朝のあんたは明らかにおかしいよ」

アニ「まるで… 私たちに隠し事でもしてるみたいにさ」

アルミン「か、隠し事って…!」









うわあっ!!


ガッシャーン







アルミン「…!?」

ジャン「な、なんだ…!?」

ヒストリア「今の声は…!」

アニ「…!」

ライナー「ベルトルト…!」

今日はここまで

― 調理場 ―




ベルトルト「痛っ…!」

ライナー「おい!どうした!」

ヒストリア「大丈夫!?」

ベルトルト「う、うん、なんとか…」

アニ「…何があったの?」

ベルトルト「いや、ちょっと床で滑って転んじゃって…」

ジャン「って、何だこりゃ… 床がびしょ濡れじゃねえか」

コニー「あっ、わりい… それ俺がこぼした水だ」

アニ「…何で拭いておかないのさ」

コニー「いや、水なら放っておいても乾くと思って…」

ジャン「お前な…」

ヒストリア「怪我はない?」

ベルトルト「ああ、うん… ちょっと頭をぶつけたみたいだけど」

ライナー「頭を? どこに?」

ベルトルト「えっと、多分あれ…」

ベルトルト「だと…」

アルミン(ベルトルトの顔が凍り付く)

アルミン(その視線を追った僕たちの顔からも、一斉に血の気が引いた)




ライナー「…!」

ヒストリア「ねえ、あれって…」




アルミン(僕たち全員の視線の先には…)

アルミン(倒れて曲がった“物体X”の姿があった)





6 “物体X”の破壊を禁じます。




コニー「な、なあ… これってマズいんじゃ…」

コニー「今ので壊れちまったとしたら、ベルトルトが…」

ライナー「馬鹿を言うな! そもそも、こうなった原因は
     お前にあるだろう!」

コニー「俺が悪いってのか!?」

アニ「…そりゃそうでしょ」

コニー「ど、どうすりゃいいんだ!? このままじゃ…」

モノクマ「エクストリーーーーーーーム!」

アルミン「…!!」

コニー「うわああああああああああ!?クマが出たあああああああ!」

モノクマ「だからさぁ…クマじゃなくて…」

モノクマ「モノクマなんですけど!しかも、監督教官…って、あれ?」

ライナー「モノクマ…!!」

モノクマ「はいはい、モノクマですよ。
     どったのみんな? 青ざめた顔しちゃって」

ベルトルト「い、いや… これは…」

モノクマ「何だか、すべって転んで“物体X”に当たっちゃった
     どうしようみたいな顔してるけど… どったの?」

ベルトルト「…!!」

アニ「…見てたんだね」

モノクマ「うん、見てたよ。っていうか、この施設において
     ボクに見えないものはほぼ無いからね」

ベルトルト「な、なら… これは…」

モノクマ「ああ、安心していいよ。壊れてないから」

コニー「ほ、本当か!?」

モノクマ「うん、でも気を付けてね。
     これは角度が命なんだから」

ライナー「それなら、規則違反はしていないから
     お咎めは無し…って事でいいんだな?」

モノクマ「まあね」

ベルトルト「ほうっ…」

ヒストリア「よかったね… 2人とも」

コニー「あ、ああ… マジで殺されるかと思ったぜ…」

ジャン「…お前はもう少し反省しろよな」

コニー「ああ、すまん… 次から飲み物は
    こぼしても分かりやすいミルクにするか」

アニ「…そういう問題じゃないでしょ」

モノクマ「ていうかさ…」









モノクマ「どうして誰も“物体X”のこと聞かないの?」







ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ヒストリア「…え?」

モノクマ「いやほら、“物体X”なんてよく分からない言い方されたら
     気になるものじゃない? ふつう」

モノクマ「それなのに、今の今まで誰1人として
     それを聞きに来ないのは何故なのかなあ…と思って」

ジャン「別に… 聞く必要がないからだろ。
    ご丁寧に『物体X』なんて張り紙も貼ってあるじゃねえか」

ヒストリア「これが“物体X”だって事はみんな認識してたし…」

モノクマ「いやいや、ボクが言ってるのは
     【どれが“物体X”なのか】じゃなくて…」

モノクマ「【“物体X”とは何なのか】って事だよ」

モノクマ「みんなその辺り気にならないのかなあ…なんて」

コニー「それは…」

モノクマ「それは?」

コニー「そ、それは…」

コニー「………………」

コニー「あ、あれ…?」

コニー「そういや… なんでだ…?」

モノクマ「あー、わかった」

モノクマ「怖いんでしょ?」

コニー「は…?」

モノクマ「聞くのが怖いんじゃない?」

モノクマ「きっとそうだよ。オマエラは怖がってるんだ。
     【“物体X”とは何なのか】って聞くのを」

コニー「こ、怖がってる…?」

モノクマ「うん、まあ無理もないよね。
     オマエラの境遇を考えればさ…」

ライナー「…どういう事だ」

モノクマ「うぷぷ…」

ライナー「お前… 一体何を知ってる」




モノクマ『オマエラは元々、全ての記憶が無い状態だったんだよ?』

モノクマ『それを心優しいボクが保護して、
     なんとか訓練兵団入団直前の記憶まで戻してあげたってわけ』




ライナー「お前が俺たちを保護したという話と…
     何か関係があるのか?」

モノクマ「さあね。訓練に参加しないオマエラには教えませーん」

モノクマ「でも、これだけは言っておくよ」

モノクマ「この施設にいる限り、オマエラの安全は保証されてるんだ」

モノクマ「たとえオマエラがどんな人間であっても…」

モノクマ「ルールを守る限り、ボクがオマエラを守ってあげるよ」

モノクマ「そう、【ルールを守る限り】は…」

ジャン「ふ、ふざけんなよ…」

ジャン「何が守るだ…!」








エレン『おい…ミーナ…』




ミーナ『イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!』




ユミル『……ウ……ァ……』




サシャ『ん゛ん゛ん゛ん゛んんんんんんんん~~~~!!!!』








ジャン「オレたちに…殺し合いをさせておいて…!」

モノクマ「それはそれ、これはこれ」

モノクマ「前にも言ったでしょ? これはギブ&テイクだって」




モノクマ『オマエラをここまで助けてやったんだから、
     少しくらいボクのわがままを聞いてくれたっていいでしょ?』

モノクマ『ボクの道楽に付き合ってくれたっていいでしょ?』




ジャン「…ッ!」

モノクマ「というわけで、ボクはこれで失礼するね。
     どうぞ良きコロシアイライフを」

モノクマ「そしてその為には、ルールの順守を」

モノクマ「では…秩序はみなさまと共に…」




ポヨヨーン

アルミン(モノクマはそう言って、僕らの前から姿を消した)




ジャン「クソがッ!!」




ガンッ




アニ「…物に当たらないでよ」

ジャン「うるせえ!」

アルミン「ジャン!」

ジャン「…っ!」

ジャン「…部屋に戻る」




スタスタスタ




ライナー「おい!待て!」

ヒストリア「ジャン!」

ベルトルト「………………」

コニー「ああ、クソッ! なんでこうなるんだよ!」

アルミン(そうして、しばらく佇んでいた僕たちだったが…)




コニー「…俺も戻る」

ヒストリア「私も…」




アルミン(1人、また1人と調理場から姿を消した)

アルミン(重苦しい沈黙を残して…)

アニ「…私たちも戻ろう」

アルミン「………………」

アニ「…アルミン?」

アルミン「えっ…!? ああ、うん…」

アルミン「そうだね…」

アニ「………………」

― アルミンの個室 ―




アルミン(個室に戻った僕は、流れるようにベッドへと倒れこんだ)




アルミン「はぁっ…」




アルミン(自然とついた溜息が震えている)

アルミン(まだ起きて間もないのに、信じられないほど気だるい)





ジャン『オレたちに…殺し合いをさせておいて…!』




アルミン(ジャンの言った事は僕も感じていた)

アルミン(本当なら僕だって、あの場でモノクマに
     怒りをぶつけていたかもしれない)

アルミン(あの言葉を聞くまでは…)









モノクマ『たとえオマエラがどんな人間であっても…』







アルミン(モノクマは何か知っているのか?)

アルミン(あの3人の事を…)




ライナー『最悪の場合、俺の【鎧】やお前らの【超大型】、
     【女型】が狙われる可能性もある』

ライナー『いいか、絶対に気を抜くなよ?』

ライナー『いざとなれば…巨人化して対抗することも考えておけ』




アルミン(鎧、超大型、巨人化… 確かに言っていた)

アルミン(僕らの故郷を襲ったのは、超大型巨人と鎧の巨人…)

アルミン(いや、まさかそんな…)

コンコン




アルミン「…!!」




コンコン




アルミン「だ、誰…!?」

アニ「アニだよ」

アルミン「アニ…!?」

ガチャ




アルミン「な、何か用…?」

アニ「………………」

アルミン「どうしたの…?」

アニ「…今、時間ある?」

アルミン「え…?」

アニ「ちょっと一緒に来てくれない?」

今日はここまで

― 観測所 ―




アルミン(アニに連れて来られたのは、予想外の場所だった)




アルミン「ここって、今回開放された…」

アニ「そう、観測所」




アルミン(アニはそう言って室内を見上げた)

アルミン(天井は半球状になっていて、
     大きな天窓が備え付けられている)
     
アルミン(中でも目を引いたのが、天窓に向かって伸びる
     巨大な筒状の物体…)

アルミン「あれって何だろう」

アニ「望遠鏡らしいよ。星を見るための」

アルミン「ほ、星を…?」

アニ「嫌味っていうか、悪趣味だよね。
   モノクマの性格がよく出てる」

アルミン「………………」



DAY 11  晴れ のち 曇り

DAY 12  曇り

DAY 13  曇り

DAY 14  晴れ のち 曇り

DAY 15  晴れ

DAY 16  曇り

DAY 17  曇り

アルミン(次に目が留まったのが、部屋の隅に置かれた黒板だった)



アルミン「あれってもしかして、昨日アニが言ってた…」

アニ「…そう、天気の予報さ。
   7日間分を書き出してるらしいよ」

アニ「今日はこの生活が始まって11日目だから、
   【晴れ のち 曇り】だね」

アルミン「…これって、この施設の中の天気なんだよね?
     意味あるのかな、天気なんて」

アニ「…さあ、私に聞かれてもね」

アルミン(そう言ったきり、アニは黙り込んだ)

アルミン(僕は慌てて次の話題を探す)




アルミン「そういえば、今回開放された場所って行ってみた?
     ここ以外で…」

アニ「行ってないよ。そのうち見てみようとは思ってるけど」

アルミン「そっか…」

アルミン(再び会話が途切れる)

アルミン(訪れる沈黙が苦しくて、僕はアニを横目で見た)




アニ「………………」




アルミン(僕をここまで連れてきたアニは、
     全く本題に入ろうとしない)

アルミン(かく言う僕も、なかなか切り出せずにいた)

アルミン(聞きたい事があるはずなのに…)





アニ『…じゃあ何? あいつが卒業したクロに
   【巨人に関する重大なヒミツ】をあげるって言ったのは…』

アニ『“【始祖の巨人】をもつ自分を食べさせてあげる”って…
   そういう意味だったって言うの?』




アルミン(…聞くなら今だ)

アルミン(アニに連れ出されたときから固めていた決意を
     僕は再び自分に言い聞かせた)

アルミン(だけど…)




ドクン




アルミン(喉まで出かかった言葉は、再び体の奥に押し戻されてしまう)

アルミン(自分の中の何かが、聞くのを必死に止めようとしている)

アルミン(僕はなんとなく予感していた)

アルミン(この事を聞いてしまえば、もう後には戻れない)

アルミン(すごく聞きたいのに…聞きたくない)




ドクン




アルミン(…くそっ、しっかりしろ)

アルミン(昨日は平静を保てていたじゃないか…)

アルミン(何度目かの葛藤の後、ようやく口を開きかけたときだった)




アニ「アルミン」

アルミン「えっ…!?」

アニ「あんたは気付いた?」

アニ「昨日、食堂でヒストリアが語った事…」

アルミン「…?」

アニ「あいつはね、ウォール・マリアが破壊された時期を…」

アニ「“5年前”って言ったんだよ」

アルミン「えっ…」





アルミン⦅ヒストリアは僕たちに全てを明かした⦆

アルミン⦅クリスタ・レンズは偽名で、
     本名はヒストリア・レイスであること⦆

アルミン⦅ウォール・シーナ北部の小さな牧場で
     孤独な幼少期を過ごしたこと⦆

アルミン⦅5年前、ウォールマリアが没落してから数日後に
     領主の名を名乗る父親が現れたこと⦆




アルミン「…!!」

アニ「私たちが訓練兵団に志願したのは、
   ウォール・マリアが堕ちてから2年後だよね?」

アニ「モノクマの言うように、そこから数年間の記憶が
   抜け落ちているとしても…」

アニ「どうしてあいつは… はっきりと“5年前”だなんて
   言えたんだろうね」

今日はここまで

アルミン(確かにそうだ…)

アルミン(モノクマは、僕らの記憶が欠落しているのは
     “数年間”としか言っていない)

アルミン(それを考えれば、ウォール・マリアが堕ちたのが
     何年前かなんて、はっきりとは言えないはずだ…)




アルミン「もし、ヒストリアの言う通り、ウォール・マリア襲撃が
     “5年前”の出来事だとしたら…」

アルミン「僕たちの記憶が抜け落ちている期間は
     3年って事になるよね…」

アニ「………………」

アルミン「確か、従来の訓練兵団での訓練期間も
     3年くらいだったはずだから…」

アルミン「僕たちは、訓練兵団での記憶を丸ごと消されていて、
     ヒストリアはその失われた記憶を取り戻してる…?」

アニ「そう決めつけるのはまだ早いんじゃない?」

アルミン「え…?」

アニ「私は、ヒストリアが“5年前”って言ったのは
   無意識的だったんじゃないかと思ってる」

アルミン「無意識的って…どういう事?」

アニ「つまり、ヒストリアは消された3年分の記憶を
   取り戻しつつあるけど…」

アニ「…本人はそれに気付いていないって事さ」

アニ「知らず知らずのうちに、無くした記憶の一部分を
   口走ってしまったんじゃないか…ってね」

アルミン「うーん… そうなのかな?
     あれだけの発言で考えるにはちょっと…」

アニ「根拠は他にもあるよ」

アルミン「え…?」

アニ「だって、ヒストリアがあの発言をしたとき…
   誰も“5年前”っていう言葉に口を挟まなかったじゃない」

アルミン「…!」

アニ「あんただってそうでしょ?」

アニ「今私に言われて気付いたみたいだけど、あのときは
   “5年前”って聞いて何の違和感もなかったんでしょ?」

アルミン「…確かに、あのとき僕は何も思わなかったけど」

アルミン「他の人たちはわからないよ。単に聞き逃しただけか、
     違和感に気付いていながら敢えて口にしなかった可能性も…」

アニ「私はそうは思ってない」

アルミン「………………」

アニ「アルミン、ここまで言えばわかるでしょ?」

アニ「記憶が戻り始めてるのはヒストリアだけじゃない…
   あんたら全員が、失われた記憶を思い出しつつあるんだよ」

アルミン(ドキリとした)

アルミン(失われた記憶…)

アルミン(モノクマではない【別の誰か】によって奪われたという、
     僕たちの過去…)




アニ「…私が心配してるのは、記憶を取り戻したことによる
   新たなコロシアイさ」

アニ「ユミルは記憶が戻ったせいであんな凶行に走ったんだ。
   私たちの中で、また同じような事が起こらないとも限らない」

アニ「もうあんな悲劇を繰り返すわけにはいかないんだよ。
   何か先手を打たないと…」

アルミン(アニは珍しく焦っているようだった)

アルミン(いつもはあまり表情を見せない彼女だが、
     今は眉間にしわを寄せて考え込んでいる)




アルミン「…今日僕を呼んだのは、その打開策について相談するため?」

アニ「そう。あんたなら、何かいい考えを
   出してくれるんじゃないかと思ってね」

アルミン「…気持ちは嬉しいけど、正直どうすればいいのかわからないよ」

アルミン「失った記憶の中身がわからない以上は、対策も何も…」

アニ「…そう、わかった」

アルミン「ごめん、力になれなくて」

アニ「それなら、これだけは聞かせて」









アニ「あんたはどこまで思い出してる?」







アルミン「え…?」

アニ「この生活が始まってから、あんたは何か思い出さなかった?」

アニ「見覚えのない光景が突然脳裏に現れるような…
   そんな体験をしなかった?」

アルミン「…!!」

アニ「ねえ、アルミン… 教えて」

アニ「あんたはどこまで思い出してる?」

アルミン「どこまで…って」

アニ「………………」

アルミン「そんなこと言われても…」

アルミン「僕は…」









アルミン「…っ!!」











???『おい… 何をする気だ!?』

???『やめろ!!』

???『ごめん… でも…』

???『もう耐えられない…』



アルミン「ううっ…!」




アルミン(今のは…!?)




アルミン「…っ」

アルミン「………………」




アルミン(…あれ?)

アルミン(アニがいない…?)

今日はここまで

― 書庫 ―




アルミン(いなくなったアニを探していた僕は、
     書庫にたどり着いた)

アルミン(第2の事件の前、アニがここで
     本を読んでいたのを思い出したのだ)




アルミン『ア、アニ!?』

アニ『…何をそんなに驚いてるの』

アルミン『い、いや…』

アニ『…私が本を読んでるのがそんなに意外?』

アルミン『そ、そうじゃなくて…
     てっきり誰もいないと思ってたから…』



アルミン「あの時はあそこにいたんだけどな…」




アルミン(僕は書庫の一角… 以前アニが立っていた
     本棚の前に目をやった)

アルミン(書庫の中に人気はなく、ひっそりと静まり返っている)




アルミン「ここじゃないのか…」




アルミン(僕は思わずため息をついた)

アルミン(急にいなくなるなんて… 一体どこに行ったんだよ)

アルミン(諦めて踵を返そうとしたとき…)

アルミン(僕はふと、ある事を思い出して足を止めた)




ジャン『えっと、オレが調べてきた場所についてだったな…』

ジャン『オレは…書庫に行ってきた』

コニー『書庫…? そこはもう開いてたじゃねーか』

ジャン『忘れたのか? 書庫の中には鍵のかかった扉があっただろうが』



アルミン(そういえば…)

アルミン(この書庫の中にも、開放された扉があったんだっけ…)




ライナー『あの扉が開いてたのか?』

ジャン『ああ』

ベルトルト『中は?』

ジャン『普通だよ。また本がズラリと並んでただけだった』



アルミン(僕は再び書庫に向き直り、奥へと向かって歩いた)

アルミン(ぎっしりと詰まった本棚が立ち並ぶ、本の森…)

アルミン(その森の最深部… ちょうど本棚の陰になっている箇所に、
     ひっそりと佇む扉があった)




アルミン「…まさか、この中に?」




アルミン(…ないとは言えない)

アルミン(僕はしばらく迷った後、意を決して扉を開けた)

ガチャッ




アルミン「…えっ?」

ジャン「…ッ!?」




ガコン




アルミン「…ジャン?」

今日はここまで

アルミン(扉の中にいたのは、予想外の人物だった)




ジャン「ア、アルミン…!? なんでここに!?」

アルミン「それはこっちの台詞なんだけど…」

ジャン「…っ!?」

アルミン「僕はアニを探してるんだ。ここには来なかった?」

ジャン「き、来てねえよ! この扉が開放されてからは、
    オレの知る限り他の奴らは一度も…」

アルミン「…えっ?」

ジャン「…っ! と、とにかく、アニは来てねえ!
    探すなら他を当たれ!」

アルミン(他を当たれって言われても…)




アルミン「ジャンはここで何をやってたの?」

ジャン「な、何って… 本だよ、本!
    ここにはそれ以外ないだろ!」

アルミン「本…」




アルミン(僕は辺りを見回した)

アルミン(さっきまでの部屋と同様、この空間も
     所狭しと本棚が並べられている)

アルミン(ただ違うのは… さっきよりも
     かなり埃っぽいという事だろうか)

アルミン「何の本を読んでたの?」

ジャン「なっ… 何のって…」

アルミン「いや、本ならさっきの場所にもあったから…
     ここにはもっと違う種類のものがあるのかなって」

ジャン「…っ!!」

アルミン「ねえ、一体何の…」

ジャン「し、知らねえ!
    オレが何を読もうと勝手だろうが!」




タッタッタッ

バタン

アルミン(ジャンはそのまま部屋から出て行ってしまった)




アルミン「…?」




アルミン(ジャン… 一体どうしたんだろう)

アルミン(なんだか昨日から様子がおかしかったけど…)

アルミン(1人取り残された僕は、
     ジャンのいた場所まで歩いていき…)

アルミン(近くの本棚を調べ始めた)




アルミン「…これか」




アルミン(ジャンが読んでいた本はすぐに見つかった)

アルミン(他の本はかなりの埃を被っているのに対し、
     その本だけは綺麗に取り払われていたのだ)

アルミン(加えて、その本がある位置には、
     埃の上に何回も取り出したような跡がついていた)









ガチャッ




アルミン『…えっ?』

ジャン『…ッ!?』




ガコン








アルミン(僕に気付いたジャンは、
     その本を慌てて本棚に押し戻していた)

アルミン(あの動揺っぷり…
     そんなにすごい事が書かれているのか?)

アルミン(僕は本棚に手を伸ばし、その本を手に取った)

アルミン(かなり古い本なのだろう。表紙は風化し、
     中の紙束は酷く黄ばんでしまっている)




アルミン「………………」




アルミン(僕は、なぜか高鳴り始めた己の心臓を意識しながら…)

アルミン(ゆっくりと、表紙をめくって読み始めた――――)









九つの巨人















「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『えー、施設内放送でーす』

モノクマ『えまーじぇんしー、えまーじぇんしー!』

モノクマ『オマエラ訓練兵諸君は、至急、
     訓練所にお集まりくださーい!』







今日はここまで

― 訓練所 ―




アルミン(訓練所には既に他のメンバーが集まっていた)

アルミン(僕が探していたアニは
     まだ来ていないようだったけど…)




アルミン「ミカサ!」

ミカサ「アルミン」

アルミン「今までどこに行ってたの!?
     昨日の探索から急にいなくなって…」

ミカサ「心配させてごめん。私は大丈夫」

ライナー「私は大丈夫… か」

ミカサ「………………」

ライナー「お前… 本当にどこにいたんだ?
     探索を放り出してまで行くような所なのか?」

ミカサ「あなたに干渉される筋合いはない」

ライナー「………………」

アニ「おまたせ」

アルミン「…!」

コニー「おっ、アニも来たな。これで全員か?」

ベルトルト「そうみたいだね」

ジャン「おい、モノクマ! 来てやったぞ!
    さっさと姿を現しやがれ!」

~♪
~♪


~~♪
~~♪


~~~~♪
~~~~♪




ポヨヨーン




アルミン(いつもの軽快な音楽が鳴り響く)

アルミン(だけど、そこには…)

アニ「………………」

ベルトルト「………………」

ヒストリア「…あれ?」

ミカサ「………………」

コニー「モノクマのやつ… いねーぞ?」

アルミン(いつもとは違う展開に戸惑う僕たち)

アルミン(その後しばらく待っても、モノクマが現れることはなかった)




コニー「な、なあ… これってどういう事だ?」

ベルトルト「………………」

ヒストリア「何かあったのかな…?」

ライナー「さあな。本人が来ないなら確かめようもない」

アニ「………………」

ライナー「解散するぞ。時間の無駄だ」

アルミン(僕たちがその場から立ち去ろうとした時だった)




モノクマ「どういう事ですか!? 説明してください!」

モノクマ「ですから、詳しい話はこの後の会見で…」




アルミン(後方から、モノクマが早足に近づいてきた)

アルミン(1人でせわしなく動き回りながら…)

ベルトルト「あれは… モノクマ?」

ライナー「そうみたいだが… 何をやっているんだ?」




モノクマ「その話は聞いていません!
     いつわかった事なのですか!?」

モノクマ「つい先ほどです。この度も急遽、
     私の不倫会見を取りやめてこちらの説明に…」

モノクマ「不倫会見はやらないという事ですか!?」

モノクマ「またそうやって逃げるおつもりですか!?」

モノクマ「どうかご容赦ください。
     人類の存続に関わる事ですので…」

アルミン(時にはうつむき加減で歩き、時には横でメモを取りながら
     モノクマがこちらに向かってくる)

アルミン(どうやら、1人で何人もの人物を演じているらしい)




ジャン「…また茶番かよ」

アニ「………………」




アルミン(モノクマの小芝居に呆れながらも、
     僕たちにはただ見守ることしかできない)

アルミン(モノクマはそのまま演技を続けながら、
     いつもの檀上に上がっていった)

モノクマ「定刻になりました。ただいまより、
     訓練兵団主催の緊急記者会見を開催いたします」

モノクマ「なお、この度予定されていたモノクマ氏による
     不倫会見は後日に延期いたしますので、ご了承ください」

モノクマ「では、まず監督教官の同氏から、
     今回の速報を受けてご説明をお願いします」

モノクマ「はい、皆様、この度は
     お集まり頂きありがとうございます」

モノクマ「今から2時間ほど前、訓練兵団監査チームによる
     調査結果報告が上がりましたので、お知らせいたします」









モノクマ「【裏切り者】の正体が判明いたしました」







今日はここまで

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