シンゲキロンパ CHAPTER 03 (362)





???『すごいよヒストリア』

???『もうこんなに読めるようになるなんて』

ヒストリア『だって、おねぇちゃんが教えてくれるから』

???『あ、だめだよ。鼻水垂らしてちゃ』

???『ヒストリアはもうちょっと女の子らしくしないと』







???『はい、かんで』

ヒストリア『ふんんんんん』ズビー

???『おう』

???『はい、よくできました』







ヒストリア『ねぇ?』

???『ん?』

ヒストリア『女の子らしくって何?』

???『そーだね』

???『女の子らしくっていうのは』

???『この子みたいな女の子のことかな』







???『ヒストリアもこの子が好きでしょ?』

ヒストリア『うん』

???『いつも他の人を思いやっている優しい子だからね』

???『ヒストリアもこの子みたいになってね』

???『この世界は辛くて厳しいことばかりだから』

???『みんなから愛される人になって助け合いながら
    生きていかなきゃいけないんだよ」

ヒストリア『…うん』







ヒストリア『じゃあ私、おねぇちゃんみたいになりたい』

???『え!?』

ヒストリア『私…大きくなったら
      おねぇちゃんみたいになれるかなぁ?』

???『……』







???『いいよ!!』ガッパ

ヒストリア『わ!?』

???『いいよいいよ』

???『そのままでいいよ』

ヒストリア『うわ…』







???『ごめんね、ヒストリア』

???『もう時間になっちゃった』




コツン




???『今日も私のことは忘れてね』

???『また会う日まで』

ヒストリア『え――』







ピリ

ザッザッ




ヒストリア『あれ?』




ヒュウウウウウウウウ




ヒストリア『あの女の人…』

ヒストリア『だれ…?』











CHAPTER 03

僕と私の兵団裁判

(非)日常編







CHAPTER 03 

DAY 10




ヒストリア「…これが私の知る全て」

ヒストリア「私がここに来た理由」




アルミン(2度目の事件の翌日…)

アルミン(僕たちは全員、食堂でクリスタ…
     いや、ヒストリアの告白を聞いていた)

アルミン(ヒストリアは僕たちに全てを明かした)

アルミン(クリスタ・レンズは偽名で、
     本名はヒストリア・レイスであること)

アルミン(ウォール・シーナ北部の小さな牧場で
     孤独な幼少期を過ごしたこと)

アルミン(5年前、ウォールマリアが没落してから数日後に
     領主の名を名乗る父親が現れたこと)

アルミン(その時に目の前で母親が殺されたこと)

アルミン(自分も殺されそうになったとき、
     偽名を名乗ることを条件に見逃されたこと)

アルミン(そして、それから2年間を開拓地で過ごし、
     12歳のときに訓練兵団に志願したこと…)

ヒストリア「クリスタなら、こんな自分語りを始める前に
      昨日のことを謝るんだろうね」

ヒストリア「みんなを道連れにしようとしてごめんなさい…って」

ヒストリア「クリスタ・レンズはいい子だから」




クリスタ『違う違う違うッ!!』

サシャ『ク、クリスタ…』ガタガタ

クリスタ『一体何度言えばわかるの!?
     ユミルの計画に巻き込まれたのは私だよ!』

アルミン『違う! 巻き込まれたのはサシャだ!
     君が[ピーーー]はずだったのをサシャが殺してしまったんだ!』

クリスタ『違うッ!!』

アルミン『違わないッ!!』

クリスタ『…ッ!!』

アルミン『クリスタ、もうやめにしないか…!?』

アルミン『こんな事したって誰も救われない!』

アルミン『こんな事… ユミルもサシャも望んでない!!』



ヒストリア「でもヒストリア・レイスは、親からも誰からも
      愛されたことがなくて…」

ヒストリア「それどころか生まれたことを望まれなかった子で…」

ヒストリア「それもこの世界じゃ特に珍しくもない話で
      都の地下とかではよくあること…」




???『…お前さえ』

???『お前さえ産まなけ……』グッ



ヒストリア「…正直に言うとね」

ヒストリア「私、どう謝ればいいかわからないの」

ヒストリア「ううん、もしかすると…
      自分が悪いことをしたって思ってないのかもしれない」

ミカサ「………………」

ヒストリア「どう?」

ヒストリア「みんながっかりしたでしょ?」

ヒストリア「本当の私はこんなに空っぽで」

ヒストリア「クリスタ・レンズみたいないい子はどこにもいなくて」

コニー「そんなことねーよ」

ヒストリア「え…?」

コニー「だってよ…」

コニー「だって、お前は…
    サシャを助けようとしてくれたじゃねえか」

ヒストリア「………………」

ヒストリア「…でも、私はみんなを道連れに」

ジャン「それでオレたちが恨んでるとでも思ってたのか?」

ジャン「…まあ確かに、ちょっとはムカついたけどよ」

ジャン「あいつが抱えたモンに比べれば…
    オレたちの怒りなんてちっぽけなもんだ」





サシャ『みんなが死んで私だけが生き残るなんて…』

サシャ『そんなの絶対耐えられません』

サシャ『そんなの絶対…』

サシャ『絶対… 嫌ですから…』




ジャン「あいつは全部抱えて死んでいった」

ジャン「オレたちの怒りも、悲しみも、やるせなさも…」

ジャン「恐怖と絶望にひっくるめて全部、持って行っちまった」

ヒストリア「………………」

ジャン「お前はそんなあいつに手を差し伸べて、
    重荷を肩代わりしようとしただけじゃねえか」

ジャン「…そんなお前をどうして恨めるよ?」





サシャ『もういいんです、本当に』

サシャ『ここで私が犠牲になれば全て収まる…』

サシャ『だったらもう… それでいいじゃないですか』




アルミン「…もしもヒストリアがいなかったら、
     サシャは孤独のまま死んでいったと思う」

アルミン「ユミルの罠にはまって、訳もわからずに、
     何の心の拠りどころもなく…」

アルミン「だけど君が、最後までサシャの味方でいてくれたおかげで…」

アルミン「ほんの少しだけど、サシャは
     救いを得ることができたんじゃないかな」

ヒストリア「………………」

アルミン「だからさ、ヒストリア… うまく言えないんだけど」

アルミン「…ありがとう」

ヒストリア「………………」

ヒストリア「……いいの?」

ヒストリア「本当に… こんな私を受け入れてくれるの…?」

ベルトルト「受け入れるも何も…」

ライナー「もうとっくに受け入れてるぞ」

ライナー「俺たちは仲間なんだからな…」

ヒストリア「うっ…」









ヒストリア「うああああああああああああああああああ……!!」







アルミン(ヒストリアは泣いた)

アルミン(声を枯らして泣き続けた)

アルミン(今まで溜め続けた思いを吐き出すように…)




ヒストリア「あああああああああああああああああああ……!!」




アルミン(こうして… ユミルとサシャの裁判は幕を閉じた)

アルミン(本当の意味で…)









モノクマ「くっさーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」







アルミン「…!!」

モノクマ「くっさいよオマエラ!くさすぎだよ!」

モノクマ「ちゃんとお風呂入ってる!? ちゃんと歯磨いてる!?」

コニー「モ、モノクマ…!」

モノクマ「あらやだ、あんた目ヤニ付いてるわよ!
     ほらこっち来なさい!お母さんが取ってあげるから!」カーッ ペッ

コニー「や、やめろ!きたない!」

モノクマ「おとなしくしなさい!まったくあんたって子は!
     遅刻は問答無用で減点だって、あれほど言って聞かせたでしょ!」

ベルトルト「遅刻って… 何のこと?」

モノクマ「何のこと…だと…」

モノクマ「訓練だよ訓練!もう忘れたのかオマエラ!」




11 訓練兵達は50日間の訓練を行います。
  訓練への参加は強制ではありません。

12 訓練の総合成績が一番優秀だった者には、
  “ファイナルデッドルーム”への挑戦権が与えられます。




ジャン「…ああ、そういえばあったなそんなの」

ライナー「訓練への参加は自由なんだろう?
     とやかく言われる筋合いは無いはずだが」

モノクマ「まあ、そりゃそうなんだけどさ…
     監督教官の身としては寂しいわけですよ」

モノクマ「こっちはウキウキしながら訓練メニューとか作ってんのに、
     オマエラはサボる上にくっさい話してるし」

ジャン「くさい話だと…!?」

モノクマ「だって、そうじゃないのさ」




ジャン『な… なんだ…そりゃあ…』

クリスタ『…っ』

ジャン『お前正気かよ!? ふざけんじゃねえよ!』

ジャン『なんでオレたちが殺されなきゃならねえんだ!
    何の関係もないオレたちが…』




モノクマ「自分たちがブラウスさんの身代わりとして
     標的にされたと知ったとき…」

モノクマ「血相を変えて異を唱えたのは、
     どこのどなたでしたっけ?」

ジャン「…! あ、あれは…」

モノクマ「あれは?」

モノクマ「あれは… 何だっていうの?」

ジャン「…っ」

モノクマ「…ほらね」

モノクマ「いい加減に認めなよ。オマエラは
     己だけ助かればいいと思っている身勝手な生き物なんだ」

モノクマ「それを友情だの家族愛だの、
     ご大層なものを並べ立てて隠しているだけなんだ」

モノクマ「うぷぷ… 最初におしおきされた誰かさんが良い例だよね」




ミーナ『みんな…信じてよ!』

ミーナ『私は人類の為に!!みんなの代わりに!!』



モノクマ「『重荷を肩代わり』?『俺たちは仲間』?」

モノクマ「かーっ、やだやだ。セリフがくさすぎて吐き気がするよ…オッ」

モノクマ「オエエエエエエエエエエエエエッ!!」ビチャビチャ

ジャン「…ッ!」

モノクマ「…ボクはね、もっと自分に正直になった方がいいと思うんだ」

モノクマ「もっと素直になって、
     怒ったり憎んだりしてもいいと思うんだ」

モノクマ「…あの2人みたいにね」









ミカサ「………………」

アニ「………………」







ジャン「…!!」

モノクマ「うぷぷ… さっきはみんなが
     レイスさんを受け入れるような流れだったけど」

モノクマ「全員が全員…って訳ではなさそうだねぇ」

ミカサ「………………」

アニ「………………」

モノクマ「ま、そりゃそうだよね。レイスさんは仮にも
     【ここにいる全員を殺そうとした】訳だから…」

モノクマ「あれが当然の反応だよねー」

アルミン(僕はモノクマが示す2人を見た)

アルミン(ミカサは腕を組んで壁に寄りかかり、
     アニは頬杖をついたまま虚空を見つめている)




ミカサ「………………」

アニ「………………」




アルミン(2人ともさっきから言葉を発していない)

アルミン(そして、2人の眼差しには…
     どこか冷ややかなものがあった)

モノクマ「うぷぷぷ…」

モノクマ「そうそう、そうやって怒れよ。憎しみ合えよ」

モノクマ「言ったでしょ。オマエラはそういう生き物だって」








ミーナ『クズだよあんたらは!!』




ミーナ『認める訳ねーだろ!真っ白なんだよ私は!』




ミーナ『いい加減にしろよこのもやしが!!』








モノクマ「殺りたい放題、殺らして殺るから…」

モノクマ「殺って殺って殺って殺りまくっちゃえっつーの!!」

今日はここまで

アルミン(僕は再びミカサとアニを見た)

アルミン(2人は何も反応しない。彫刻のように動かない)

アルミン(瞳に冷たい光をたたえたまま…)




ミカサ「………………」

アニ「………………」

ジャン「お、おい、お前ら…」

ミカサ「………………」

アニ「………………」

ヒストリア「ミカサ… アニ…」

ミカサ「………………」









ミカサ「…別に怒ってない」







モノクマ「………………」

モノクマ「…は?」

ミカサ「私は別に怒ってない。憎んでもいない」

ミカサ「勝手な想像で話を進めないで」

コニー「ミカサ…?」

ミカサ「私はただ呆れていただけ」

ミカサ「的外れなモノクマの物言いに…」

モノクマ「的外れ…?」

モノクマ「いやいや… だってキミは、
     裁判のときに言っていたじゃんか」




ミカサ『ここであなたのエゴイズムに殺される訳にはいかない』




モノクマ「レイスさんがやろうとしていた事を
     真っ向から否定して…」

モノクマ「メッタメタに批判してたじゃんか!」

ミカサ「確かに言った」

モノクマ「ほらみろ!」

ミカサ「でも、私はこうも言った」




ミカサ『…世界は残酷』

ミカサ『ずっと感じていた。ここは…そんな世界の縮図だと』




ミカサ「この世界は…」

ミカサ「みんなが幸せになるようにはできていない」

ミカサ「誰かを守るためには、誰かを犠牲にしなければならない」

ミカサ「【尊重できる命には限りがある】から…」

ミカサ「ヒストリアは【尊重できる命】としてサシャを選んだ」

ミカサ「ただそれだけ」

ミカサ「私はそれを憎らしい事だとは思わない」

モノクマ「ふーん… よく言うね」

モノクマ「イェーガーくんが殺されたときは
     あんな事言ってたくせに」




ミカサ『家族がいるのはあなただけじゃない…!』

ミカサ『自分の家族を救うために、
    他人の家族を犠牲にする理はない…!!』



ミカサ「…あれはエレンが殺されたから」

ミカサ「私の【尊重できる命】を守ることができなかったから」

ミカサ「あんなに近くにいたのに、
    守ることができなかったから…」

アルミン「ミカサ…」

ミカサ「………………」

ミカサ「…今の私にはやるべき事がある」

ミカサ「ので、まだ死ぬわけにはいかない。でも…」

ミカサ「【尊重できる命】を守ろうとしたヒストリア…
    そしてユミルの気持ちもわかる」

ヒストリア「………………」

ミカサ「だから…」

ミカサ「私は2人を恨むことができない」

モノクマ「…なんだよそれ」

モノクマ「憎んでないっていうの…?
     あんなに明確な殺意を向けられたのに?」

ミカサ「………………」

アニ「………………」

モノクマ「じゃ、じゃあ…
     レオンハートさんはどうなんだよ!」

モノクマ「キミも裁判のときに言っていたじゃんか!」





アニ『サシャが殺人犯に仕立て上げられた。
   そんなの可哀想だから他の奴らが全員死ね』

アニ『あの女が言ってるのはそういう事だよ』




モノクマ「キミだって怒ってるんだろ!?」

モノクマ「レイスさんが勝手に自分たちを巻き込もうとしたから…」

モノクマ「殺したいほど憎んでるんだろ!?
     さっきから不貞腐れてるのはそういう事なんだろ!?」

アニ「………………」

アニ「…え?私?」

モノクマ「…は?」

アニ「ごめん、聞いてなかった」

アニ「眠くて…」

モノクマ「うっ…」









モノクマ「うああああああああああああああああああ……!!」







ポヨヨーン




ベルトルト「…行っちゃった」

コニー「お、おい… 大丈夫か?
    モノクマのやつスネちまってたけど…」

ジャン「ほっとけ。いい気味だぜ」

ヒストリア「あ、あの…ミカサ…」

ヒストリア「私…何て言ったらいいのか…」

ミカサ「何も言う必要はない。あなたはあなたの戦いをしただけ」

ヒストリア「………………」

ライナー「ところで、ヒストリア…」

ライナー「さっきの話なんだが…」

ヒストリア「…え?」

ライナー「お前の過去の話に出てきた人物のことだ」

ライナー「幼少期、度々お前に会いに来ていたという…」





???『すごいよヒストリア』

???『もうこんなに読めるようになるなんて』

ヒストリア『だって、おねぇちゃんが教えてくれるから』

???『あ、だめだよ。鼻水垂らしてちゃ』

???『ヒストリアはもうちょっと女の子らしくしないと』




ヒストリア「お姉さんのこと?」

ライナー「ああ…」

ヒストリア「お姉さんが…どうかした?」

ライナー「俺は思うんだがな…」









ライナー「そいつが俺たちの記憶を奪ったんじゃないのか?」







今日はここまで

今後は毎週日曜日に更新します

ヒストリア「…!?」

コニー「は…? ど、どういう事だ?」

ライナー「さっきの話を思い出してみろ」








コツン




???『今日も私のことは忘れてね』

???『また会う日まで』

ヒストリア『え――』







ライナー「その女性に会った後、お前はいつも
     そいつの事を忘れていた…」

ライナー「…そうだったな?」

ヒストリア「う、うん…」

ヒストリア「おでことおでこをくっ付けたら、
      急に頭が痺れたみたいになって…」

ヒストリア「次の瞬間には…
      その人が誰だかわからなくなってた…」

ジャン「ちょ、ちょっと待て! それってまるで…」

ベルトルト「【記憶を消された】…そう見えるよね」

ジャン「…!」

ベルトルト「その人は【記憶を消せる力】を持っていた」

ベルトルト「そして… その力を使って、
      ヒストリアの記憶を部分的に消した…」

ヒストリア「き、記憶を消したって… どうして…?」

ライナー「不都合だったからだろう」

ヒストリア「え…?」

ライナー「そいつにとっては、お前との面会は不都合な事だったんだ」

ライナー「だから、無かったことにした」

ヒストリア「無かった…ことに…?」

ライナー「何が不都合だったのかは知る由もないが…」

ライナー「それを忘れさせる為に使った【記憶を消せる力】…
     普通の人間ができる事じゃない」

アルミン「つまり、その人が【記憶を消せる力】を使って
     僕たちの記憶を無くしたっていうの?」

ライナー「ああ。もしくは、【それと同等の力を持った者】によってな」

コニー「そ、それなら…そいつが全ての黒幕なのか!?」

コニー「俺たちを拉致して記憶を奪った
    このコロシアイの【首謀者】なのか!?」

ベルトルト「…いや、それは違うと思うよ」





モノクマ『オマエラは元々、全ての記憶が無い状態だったんだよ?』

モノクマ『それを心優しいボクが保護して、
     なんとか訓練兵団入団直前の記憶まで戻してあげたってわけ』

モノクマ『つまり、オマエラの記憶を奪ったのは【別の誰か】で、
     ボクはそんなオマエラを助けてあげたの。アンダスタン?』




ベルトルト「モノクマは、記憶を奪った人間は
      【別の誰か】だって言ってたよね?」

ベルトルト「僕らを攫ったときには、すでに記憶が無い状態だったって…」

ジャン「だから、それはモノクマのウソだろ!」

ベルトルト「そうかな? 僕にはそうは思えないけど」

アルミン「…やけに確信めいた言い方をするね」

ベルトルト「…!」

アルミン「何かそう考える根拠でもあるの?」

ベルトルト「…いや、なんとなくそう思っただけだよ」

ミカサ「………………」

アニ「…ねえ、みんなちょっといい?」

コニー「…ん?」

アニ「どうでもいいけどさ…」

アニ「これからみんなで施設を探索してみない?」

ジャン「…は? 何だよいきなり…」

アニ「前にモノクマが言ってたでしょ」





モノクマ『えー、コホン…』

モノクマ『この施設では、兵団裁判を一つ乗り越えるたびに
     新しい世界が広がるようになっております!』

ベルトルト『新しい世界だって…?』

モノクマ『ほら、この施設に何ヶ所か、鍵のかかった場所があったでしょ?』




アニ「最初の兵団裁判の後…
   この施設の鍵のかかった場所に入れるようになったよね?」

ライナー「飼育小屋、ライブハウス…それに書庫か」

アニ「でも、まだ入れない場所もいくつかあった」

アニ「今回そこが…空いたんじゃないかと思ってさ」

ベルトルト「…そうか。『兵団裁判を乗り越えるたびに』という事は…」

ライナー「今回、また新しい場所が開放された可能性があるな…」

アニ「…そういう事さ」

アニ「今からちょっと見に行ってみない?」

アニ「いつまでもこんな場所で話してるよりは、気も紛れると思うけど」

ライナー「…なら、そうするか」

ライナー「話の続きはその後でもできるしな」

アニ「みんなもそれでいい?」

コニー「あ、ああ…」

ヒストリア「そうだね…」

ジャン「別に構わねえが…」

アニ「…決まりだね。じゃあ、また手分けして探しに行こうか」

今日はここまで

― 林 ―




ジャン「…わりぃ、今戻った」

ライナー「随分遅かったな。何かあったのか?」

ジャン「あ、ああ…ちょっとな」

ライナー「…? まあいい。これで全員か?」

ベルトルト「いや、ミカサがまだだよ」

コニー「何やってんだ、あいつ…もうかなり経ってるぞ」

ライナー「…仕方がない、始めるか」

ヒストリア「え? ミカサはいいの?」

ライナー「このまま待っていても埒が明かないだろう。
     こっちも暇じゃないんだからな」

アニ「………………」

ライナー「あいつには後で俺から言っておく。
     じゃあ、それぞれ報告していってくれ」

コニー「よし、俺から言うぜ」

コニー「俺が行ったのはあそこだ。
    ほら、でっけえ煙突から煙が出てたやつ」

ライナー「ああ、そこは俺も気になっていた。
     今朝になって煙を上げ始めたんだよな」

アルミン「中に入れたの?」

コニー「ああ… 中は巨大な溶鉱炉だった」

ベルトルト「溶鉱炉…?」

コニー「いやあ、あそこ汗が止まらないくらい暑くてよ…
    マジで溶けちまうかと思ったぜ」

ベルトルト「溶鉱炉って…なんでそんなものが?」

アニ「意味なんて無いよ。ここはそういう場所なんだから」

ベルトルト「そういう場所って…」

アニ「モノクマが私たちに
   コロシアイをさせる為だけに作られた場所…」
   
アニ「…ここまで言えばわかるしょ?」

ベルトルト「………………」

モノクマ「んもう、人聞き悪いなあ!」

コニー「おわっ!? また出た!」

モノクマ「まあもちろん、“そういう使い方”をしてくれても
     一向に構わない訳だけれど…」

モノクマ「あれはそもそも、その為のものじゃないよ!
     【ある物】を作り出す上で欠かせないものなんだからね!」

ライナー「【ある物】…?」

モノクマ「おっ、気になる? やっぱ気になる?」

モノクマ「でも今は教えませーん!
     どうしても知りたければ…」

モノクマ「訓練に参加しろーーっ!!」




ポヨヨーン

ジャン「…何なんだ、一体」

アニ「放っときなよ。どうせ訓練に参加させる為の口実だから」

ジャン「………………」

ライナー「…やれやれ、とんだ邪魔が入ったな」

ライナー「それじゃあ、気を取り直して、
     どんどん報告していってくれ」

ヒストリア「じゃあ、次は私から…」

ヒストリア「私はその溶鉱炉から
      ちょっとだけ離れた建物に行ってみたんだ」

ヒストリア「そこの鍵も開いててね」

ライナー「どうだった?」

ヒストリア「うーん、何だろう?
      うまく言えないんだけど…」

ヒストリア「色んな部品や機械が置いてあって…
      作業場…? いや、研究開発所みたいな…」

アルミン「何かを作る場所ってこと?」

ヒストリア「うん、そんな感じかな。
      作りかけの装置なんかも結構あったから」

アニ「私は別の建物を見てきたよ」

ベルトルト「もしかして、小高い丘の上にあった丸い屋根の?」

アニ「そうだけど… どうしてわかったの?」

ベルトルト「いや… その建物の方で
      ちらっと君の姿が見えたから…」

ライナー「鍵は開いてたのか?」

アニ「うん、中は… 観測所っていったところかな」

コニー「なんだそれ?」

アニ「気温や湿度、気圧なんかを事細かに測っているようだった。
   おまけに… 天気の予想なんかもしてたよ」

アルミン「天気の予想って…どういう事?」

アニ「そのままの意味さ。大きな黒板に色々書かれていてね。
   この日は晴れ、この日は雨って感じで…」

アニ「ちなみに、明日は【晴れ のち 曇り】だったよ」

ライナー「外の天気の事か?」

アニ「いや、この施設の中らしいけど」

コニー「…? この施設に天気なんてあんのかよ?
    一応、天井の明かりで昼と夜はあるようだけど…」

ヒストリア「うーん、その天井の明かりで
      晴れや曇りっぽくするって事なんじゃない?」
      
ヒストリア「雨は…よくわからないけど」

ライナー「ジャンはどうだった?」

ジャン「………………」

ライナー「おい、ジャン!」

ジャン「…! あ、ああ…」

ライナー「どうしたんだ、さっきから」

ジャン「な、何でもねーよ… ちょっと考え事してただけだ」

ジャン「えっと、オレが調べてきた場所についてだったな…」

ジャン「オレは…書庫に行ってきた」

コニー「書庫…? そこはもう開いてたじゃねーか」

ジャン「忘れたのか? 書庫の中には鍵のかかった扉があっただろうが」




ライナー『アニとジャンはどうだった?』

アニ『こっちも1つ解放されてたよ。
   本棚がたくさんあって、色んな書物がズラリと並んでた』

サシャ『それってもしかして…』

ジャン『ああ、書庫ってところだろうな』

ジャン『それと、その中にもう1つ扉があったんだが、
    そっちは閉鎖されてたぜ』



ライナー「あの扉が開いてたのか?」

ジャン「ああ」

ベルトルト「中は?」

ジャン「普通だよ。また本がズラリと並んでただけだった」

ジャン「あとはまあ… その奥にもう1つ
    鍵のかかった扉があったくらいだな」

コニー「ん? 扉の中にまた扉が…って事か?」

ジャン「そういう事だ」

アルミン「僕の方は収穫なしだった」

ライナー「そうか… それなら後は俺とベルトルトだな」

ヒストリア「何か見つけたの?」

ライナー「まあな」

アルミン「わざわざこの林に僕たちを集めたって事は…
     もしかして、例の石碑?」

ライナー「さすがに鋭いな。その通りだ」

アニ「………………」

ライナー「それじゃあ、さっそく見に行くとするか」

今日はここまで



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            栄誉ある戦士 ここに眠る                

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            席次5位 エレン・イェーガー


            席次不明 ミーナ・カロライナ


            席次不明 ユミル


            席次9位 サシャ・ブラウス










ジャン「…!!」

ヒストリア「また増えてる…」

アニ「………………」

コニー「この前に見たときは…
    エレンとミーナだけだったよな…?」

アルミン「………………」

ライナー「今回加わったのはユミルとサシャ…」

ライナー「やはりここには、死んだ人間の名前が記されるようだ」

ベルトルト「おまけに、名前の横にある“席次不明”と“席次9位”…」

アルミン「ライナー、現時点での僕たちの成績は?」

ライナー「そう言うと思ってな。紙に書いたものを持ってきた」

名前          PT

ミカサ・アッカーマン  10
ミーナ・カロライナ   10
アニ・レオンハート   09
ライナー・ブラウン   09
ベルトルト・フーバー  09
ユミル         09
ジャン・キルシュタイン 08
コニー・スプリンガー  08
サシャ・ブラウス    07
クリスタ・レンズ    07
アルミン・アルレルト  06
エレン・イェーガー   00

アルミン「…やっぱり一致しない」

ライナー「ああ。この通りで言ったらユミルは席次2位、
     サシャは4位になるはずだ」

ライナー「同じ点数で成績に差があるとしても、
     ユミルは3~6位、サシャは9~10位…」

ライナー「サシャは一応合うが、ユミルは合わない」

ヒストリア「エレンとミーナの順位も合わないっていうのは、
      前回の捜索でも言われてたよね…」

アルミン「………………」









ま  る  か  じ  り




席次不明

ミーナ・カロライナ 処刑執行















ト  モ  グ  イ




席次9位

サシャ・ブラウス 処刑執行







アルミン(…ミーナの時と同じだ)

アルミン(ここに記されたサシャの席次は、
     処刑の時に見たものと同じだ)

アルミン(これって…)




ヒストリア「ね、ねえ…」

ライナー「ん?」

ヒストリア「この席次っていうのが、今の私たちの成績と
      関係ないんだとしたら…」

ヒストリア「考えられる可能性は、前にライナーが言ってた…」









ライナー『俺たちが記憶を失う前の成績なんじゃないか?』








ライナー「…ああ、十分に考えられる」

ライナー「エレンとサシャの“本物の訓練兵団での成績”は
     5位と9位だった…」

ライナー「そう考えれば納得がいく」

コニー「な、なら… やっぱり今の俺たちは…」

ライナー「おそらく、モノクマの言う通り…
     その時の記憶をなくした状態なんだろうな」

ジャン「………………」

ライナー「まあ、“席次不明”については
     相変わらず分からないままだが…」

ライナー「俺たちが揃って記憶喪失だっていう話は、
     いよいよ現実味を帯びてきた」

ライナー「なにせ… ユミルが今回の事件を企てたのは、
     失われた記憶が戻ったせいだったんだからな」




アニ『モノクマは、失われた記憶を取り戻すことが
   今回の殺人の動機になると言っていた』

アニ『そして、もし…
   記憶が取り戻した人物がユミルであったのなら…』

アニ『今回の事件を企てたとしても不思議じゃない』



ベルトルト「…それにしても、信じられないよ」

ベルトルト「いくら記憶を取り戻したからって…」








モノクマ『どうしてレンズさん以外の全員を殺そうとしたんだろうね?』








ベルトルト「ユミルが… 僕たちを殺そうとしてたなんて」

アニ「ベルトルト」

ベルトルト「…!」

アニ「あれはモノクマがそう言ってるだけだから。
   何度も言わせないで」

アニ「ユミルはそんな事をするような奴じゃない」

ベルトルト「あ、ああ… 悪かったよ」

ライナー「…少し話が逸れたな」

アニ「………………」

ライナー「とりあえず、今回の捜索はここまでだ」

ライナー「一度、見つけた場所をまとめてみるか… ベルトルト」

ベルトルト「ああ、うん…」

  施設の特徴


・ 地下3メートルに巨大な鉄板?

・ 屋外をそのまま建物で囲った構造




  施設内の場所


・ 訓練所
 
・ 食堂・調理場(食糧が充実)

・ 寄宿舎(大浴場、各々の個室がある)

・ 倉庫(訓練道具、生活用品、薬品類などが充実)

・ 飼育小屋(牛、豚、羊、ニワトリ、馬などを飼育)

・ ライブハウス(演奏用のステージがある)

・ 書庫(鍵のかかった扉がある。1つは解放済み)

・ 溶鉱炉

・ 研究開発所(作りかけの装置などがある)

・ 観測所(天気の予想をしている)

・ 林(死者の名前が記された石碑がある)

・ 赤い扉(裁判場に続く昇降機への入り口)

・ 裁判場

・ その他、鍵のかかっている箇所

ベルトルト「………………」

ライナー「…ん? どうした?」

ベルトルト「あ、いや…」








ユミル『へえ…わかりやすいじゃねえか。やるもんだな、ベルトルさん』




ユミル『相変わらず見やすいな、ベルトルさん』








ベルトルト「何でもないよ」

コニー「しかし、こうして見ると…
    今回解放されたのは訳わかんねえ場所ばっかりだな」

ヒストリア「溶鉱炉に研究開発所、それに観測所だもんね…」

ジャン「………………」

アルミン「…ジャン?」

ジャン「…ん?」

アルミン「ねえ、本当にどうしたの? さっきから全然…」

ジャン「な、何でもねーって…」

ジャン「ちょっと…考え事してただけだ」

ライナー「さっきも同じような事を言っていたが…」

ライナー「何を考えていたんだ?」

ジャン「別に何だっていいだろ…」

ジャン「それより、話はこれで終わりか?
    だったらオレは寄宿舎に戻るぜ」

ライナー「おい…」

ジャン「じゃあな」




スタスタスタ

コニー「何だ? あいつ…」

アニ「………………」

ライナー「…仕方ない。俺たちも戻るとするか」

ライナー「だいぶ時間も経っているようだしな」

ベルトルト「そうだね…」

ベルトルト「続きは明日…っていう事にしようか」

今日はここまで

アルミン(その後、食堂に戻った僕たちは食事を済ませ…)

アルミン(大浴場で汗を流した後、それぞれの個室へと戻っていった)

アルミン(個室に足を踏み入れた僕は、流れるようにベッドへと倒れ込み…)

アルミン(そのまま反射的に目を閉じた)




アルミン「………………」









アルミン(そして、瞼の裏に現れたのは…)

アルミン(昨晩に見たあの光景だった)















ライナー『座標はあいつが持ってる』











アニ『…あいつって?』

ライナー『モノクマだ』

ライナー『いや、正しくは…それを操っている人間か』

アニ『………………』

ライナー『あいつの言う【巨人に関する重大なヒミツ】っていうのは
     まさに座標の事だったんだ』

ライナー『あいつは座標を使ってこの施設から巨人を遠ざけてる。
     そうとしか考えられない』







アニ『…じゃあ何? あいつが卒業したクロに
   【巨人に関する重大なヒミツ】をあげるって言ったのは…』

アニ『“【始祖の巨人】をもつ自分を食べさせてあげる”って…
   そういう意味だったって言うの?』

ライナー『…さあな』

ライナー『だが、もしその通りだとすれば…
     俺たちの求めているものがすぐ目の前にある事になる』

ベルトルト『…そんな都合のいい話、ある訳ないよ。
      仮に本当だとしても…』

ベルトルト『こんなに手の込んだコロシアイを計画する人間が、
      簡単に【始祖の巨人】を手放すとは思えない』
      
ベルトルト『あれにはそれくらいの価値があるんだ』








ライナー『…なら、お前はこの状況をどう考えるんだ?』

ベルトルト『もしかしてだけど…
      ここは【楽園】の外なんじゃないかな?』

アニ『…【楽園】の外?』

ベルトルト『要するに、僕たちは今パラディ島にいるんじゃなくて…』

ベルトルト『大陸側にいるんじゃないか?それも敵国の…』







ライナー『…何だと?』

ベルトルト『大陸側なら、そもそも巨人がいないんだから、
      その脅威に晒されることもない』

ベルトルト『だけど、ここが僕たちの祖国であるマーレなら、
      僕たちを監禁する理由がない』

ベルトルト『つまり、ここは敵国…
      僕はこれが濃厚なんじゃないかと思う』







ライナー『…それならなぜ、パラディ島に潜入した俺たちが
     敵国に囚われているんだ?』

ライナー『なぜ俺たちだけじゃなく、
     あいつらまで捕まっているんだ?』

ベルトルト『それは… わからないけど』

ベルトルト『僕たちが記憶を失った数年間に、
      何かがあった…のかもしれない』

ライナー『………………』







ライナー『…アニ、お前はどう思う?』

アニ『…え?』

ライナー『お前はこの状況を、どう考える?』

アニ『………………』

アニ『私は…』







ライナー『…まあいい』

ライナー『とにかく、お前たちも気を付けろ』

ライナー『相変わらず状況はよくわからないままだが、
     1つだけ確実に言えるのは…』

ライナー『あいつは俺たちの敵だっていう事だ。
     もちろん、ここにいる連中もな』

アニ『………………』







ライナー『最悪の場合、俺の【鎧】やお前らの【超大型】、
     【女型】が狙われる可能性もある』

ライナー『いいか、絶対に気を抜くなよ?』

ライナー『いざとなれば…巨人化して対抗することも考えておけ』



◆ モノクマげきじょう ◆




モノクマ「ここは宇宙船の中。
     みなさまは宇宙を旅している最中なのです」

モノクマ「ノアの方舟をご存知ですか?
     そうです、我らは地球を捨て飛び去っているのです」

モノクマ「頭のおかしい隣人や、警察の横暴、
     酔っ払い運転や放火魔の危険性はありません」

モノクマ「排気ガスや、大気汚染が引き起こすぜんそくの心配も
     もういりません」

モノクマ「もちろん、受験や競争に悩まされる事もないでしょう」

モノクマ「ただ、自由で素晴らしい世界にもルールはあります。
     自由というのはルールで縛られた上で存在するのです」

モノクマ「もし、あなたが、あんなクソどうでもいい地球に
     どうしても戻りたいと、そう仰るのであれば…」

モノクマ「…ルールを守ってください。
     私の言っている意味はおわかりになるでしょう?」

モノクマ「では…秩序はみなさまと共に…」









「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『オマエラ、おはようございます!
     朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノクマ『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』







CHAPTER 03 

DAY 11




アルミン(朝か…)




アルミン「………………」




アルミン(あの夜の光景が頭から離れない)

アルミン(あれは一体…)

今日はここまで

来週はお休みします

― 寄宿舎 ―




ヒストリア「おはよう」

アルミン「…おはよう、ヒストリア」

ヒストリア「…大丈夫? ひどい顔だけど…」

アルミン「ああ、うん… あんまり眠れなくてさ…」

アニ「おはよう」

アルミン「…!!」

アニ「?」

アルミン「…あっ…ああ… おはよう…ございます」

アニ「…ございます?」

アルミン「い、いや…その… おはよう」

アニ「………………」

ヒストリア「…ねえ、本当に大丈夫?
      具合が悪いなら寝てた方が…」

アルミン「う、ううん… 大丈夫…」

アルミン「問題ないよ…」

ヒストリア「………………」

アニ「…大丈夫なら早く行こうよ、2人とも」

― 食堂 ―




アルミン(食堂では、すでに他のメンバーが朝食をとっていた)




ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ジャン「………………」

コニー「………………」




アルミン(彼らはちらりと僕らを見ただけで、
     すぐに目の前の食事へと目を戻した)

アルミン(がらんと広い空間に、カチャカチャと食器の音だけが響いている)

アニ「…やっぱり、みんな疲れが出てるね」

アルミン「………………」




アルミン(無理もない)

アルミン(たったの10日足らずで、悲惨な事件が立て続けに起きて…)

アルミン(仲間が4人も死んだんだ)

アルミン(僕だって、正気を保っているのがやっとなくらいで…)









ライナー『座標はあいつが持ってる』







ヒストリア「…アルミン?」

アルミン「えっ…!?」

ヒストリア「アルミン、やっぱり様子が変だよ」

ヒストリア「うっすらと汗もかいてるし…
      部屋で休んだ方がいいって」

アルミン「い、いや、そんな事ないよ。
     本当に大丈夫だから…」

アニ「…どうだか」

アルミン「えっ…」

アニ「今朝のあんたは明らかにおかしいよ」

アニ「まるで… 私たちに隠し事でもしてるみたいにさ」

アルミン「か、隠し事って…!」









うわあっ!!


ガッシャーン







アルミン「…!?」

ジャン「な、なんだ…!?」

ヒストリア「今の声は…!」

アニ「…!」

ライナー「ベルトルト…!」

今日はここまで

― 調理場 ―




ベルトルト「痛っ…!」

ライナー「おい!どうした!」

ヒストリア「大丈夫!?」

ベルトルト「う、うん、なんとか…」

アニ「…何があったの?」

ベルトルト「いや、ちょっと床で滑って転んじゃって…」

ジャン「って、何だこりゃ… 床がびしょ濡れじゃねえか」

コニー「あっ、わりい… それ俺がこぼした水だ」

アニ「…何で拭いておかないのさ」

コニー「いや、水なら放っておいても乾くと思って…」

ジャン「お前な…」

ヒストリア「怪我はない?」

ベルトルト「ああ、うん… ちょっと頭をぶつけたみたいだけど」

ライナー「頭を? どこに?」

ベルトルト「えっと、多分あれ…」

ベルトルト「だと…」

アルミン(ベルトルトの顔が凍り付く)

アルミン(その視線を追った僕たちの顔からも、一斉に血の気が引いた)




ライナー「…!」

ヒストリア「ねえ、あれって…」




アルミン(僕たち全員の視線の先には…)

アルミン(倒れて曲がった“物体X”の姿があった)





6 “物体X”の破壊を禁じます。




コニー「な、なあ… これってマズいんじゃ…」

コニー「今ので壊れちまったとしたら、ベルトルトが…」

ライナー「馬鹿を言うな! そもそも、こうなった原因は
     お前にあるだろう!」

コニー「俺が悪いってのか!?」

アニ「…そりゃそうでしょ」

コニー「ど、どうすりゃいいんだ!? このままじゃ…」

モノクマ「エクストリーーーーーーーム!」

アルミン「…!!」

コニー「うわああああああああああ!?クマが出たあああああああ!」

モノクマ「だからさぁ…クマじゃなくて…」

モノクマ「モノクマなんですけど!しかも、監督教官…って、あれ?」

ライナー「モノクマ…!!」

モノクマ「はいはい、モノクマですよ。
     どったのみんな? 青ざめた顔しちゃって」

ベルトルト「い、いや… これは…」

モノクマ「何だか、すべって転んで“物体X”に当たっちゃった
     どうしようみたいな顔してるけど… どったの?」

ベルトルト「…!!」

アニ「…見てたんだね」

モノクマ「うん、見てたよ。っていうか、この施設において
     ボクに見えないものはほぼ無いからね」

ベルトルト「な、なら… これは…」

モノクマ「ああ、安心していいよ。壊れてないから」

コニー「ほ、本当か!?」

モノクマ「うん、でも気を付けてね。
     これは角度が命なんだから」

ライナー「それなら、規則違反はしていないから
     お咎めは無し…って事でいいんだな?」

モノクマ「まあね」

ベルトルト「ほうっ…」

ヒストリア「よかったね… 2人とも」

コニー「あ、ああ… マジで殺されるかと思ったぜ…」

ジャン「…お前はもう少し反省しろよな」

コニー「ああ、すまん… 次から飲み物は
    こぼしても分かりやすいミルクにするか」

アニ「…そういう問題じゃないでしょ」

モノクマ「ていうかさ…」









モノクマ「どうして誰も“物体X”のこと聞かないの?」







ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ヒストリア「…え?」

モノクマ「いやほら、“物体X”なんてよく分からない言い方されたら
     気になるものじゃない? ふつう」

モノクマ「それなのに、今の今まで誰1人として
     それを聞きに来ないのは何故なのかなあ…と思って」

ジャン「別に… 聞く必要がないからだろ。
    ご丁寧に『物体X』なんて張り紙も貼ってあるじゃねえか」

ヒストリア「これが“物体X”だって事はみんな認識してたし…」

モノクマ「いやいや、ボクが言ってるのは
     【どれが“物体X”なのか】じゃなくて…」

モノクマ「【“物体X”とは何なのか】って事だよ」

モノクマ「みんなその辺り気にならないのかなあ…なんて」

コニー「それは…」

モノクマ「それは?」

コニー「そ、それは…」

コニー「………………」

コニー「あ、あれ…?」

コニー「そういや… なんでだ…?」

モノクマ「あー、わかった」

モノクマ「怖いんでしょ?」

コニー「は…?」

モノクマ「聞くのが怖いんじゃない?」

モノクマ「きっとそうだよ。オマエラは怖がってるんだ。
     【“物体X”とは何なのか】って聞くのを」

コニー「こ、怖がってる…?」

モノクマ「うん、まあ無理もないよね。
     オマエラの境遇を考えればさ…」

ライナー「…どういう事だ」

モノクマ「うぷぷ…」

ライナー「お前… 一体何を知ってる」




モノクマ『オマエラは元々、全ての記憶が無い状態だったんだよ?』

モノクマ『それを心優しいボクが保護して、
     なんとか訓練兵団入団直前の記憶まで戻してあげたってわけ』




ライナー「お前が俺たちを保護したという話と…
     何か関係があるのか?」

モノクマ「さあね。訓練に参加しないオマエラには教えませーん」

モノクマ「でも、これだけは言っておくよ」

モノクマ「この施設にいる限り、オマエラの安全は保証されてるんだ」

モノクマ「たとえオマエラがどんな人間であっても…」

モノクマ「ルールを守る限り、ボクがオマエラを守ってあげるよ」

モノクマ「そう、【ルールを守る限り】は…」

ジャン「ふ、ふざけんなよ…」

ジャン「何が守るだ…!」








エレン『おい…ミーナ…』




ミーナ『イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!』




ユミル『……ウ……ァ……』




サシャ『ん゛ん゛ん゛ん゛んんんんんんんん~~~~!!!!』








ジャン「オレたちに…殺し合いをさせておいて…!」

モノクマ「それはそれ、これはこれ」

モノクマ「前にも言ったでしょ? これはギブ&テイクだって」




モノクマ『オマエラをここまで助けてやったんだから、
     少しくらいボクのわがままを聞いてくれたっていいでしょ?』

モノクマ『ボクの道楽に付き合ってくれたっていいでしょ?』




ジャン「…ッ!」

モノクマ「というわけで、ボクはこれで失礼するね。
     どうぞ良きコロシアイライフを」

モノクマ「そしてその為には、ルールの順守を」

モノクマ「では…秩序はみなさまと共に…」




ポヨヨーン

アルミン(モノクマはそう言って、僕らの前から姿を消した)




ジャン「クソがッ!!」




ガンッ




アニ「…物に当たらないでよ」

ジャン「うるせえ!」

アルミン「ジャン!」

ジャン「…っ!」

ジャン「…部屋に戻る」




スタスタスタ




ライナー「おい!待て!」

ヒストリア「ジャン!」

ベルトルト「………………」

コニー「ああ、クソッ! なんでこうなるんだよ!」

アルミン(そうして、しばらく佇んでいた僕たちだったが…)




コニー「…俺も戻る」

ヒストリア「私も…」




アルミン(1人、また1人と調理場から姿を消した)

アルミン(重苦しい沈黙を残して…)

アニ「…私たちも戻ろう」

アルミン「………………」

アニ「…アルミン?」

アルミン「えっ…!? ああ、うん…」

アルミン「そうだね…」

アニ「………………」

― アルミンの個室 ―




アルミン(個室に戻った僕は、流れるようにベッドへと倒れこんだ)




アルミン「はぁっ…」




アルミン(自然とついた溜息が震えている)

アルミン(まだ起きて間もないのに、信じられないほど気だるい)





ジャン『オレたちに…殺し合いをさせておいて…!』




アルミン(ジャンの言った事は僕も感じていた)

アルミン(本当なら僕だって、あの場でモノクマに
     怒りをぶつけていたかもしれない)

アルミン(あの言葉を聞くまでは…)









モノクマ『たとえオマエラがどんな人間であっても…』







アルミン(モノクマは何か知っているのか?)

アルミン(あの3人の事を…)




ライナー『最悪の場合、俺の【鎧】やお前らの【超大型】、
     【女型】が狙われる可能性もある』

ライナー『いいか、絶対に気を抜くなよ?』

ライナー『いざとなれば…巨人化して対抗することも考えておけ』




アルミン(鎧、超大型、巨人化… 確かに言っていた)

アルミン(僕らの故郷を襲ったのは、超大型巨人と鎧の巨人…)

アルミン(いや、まさかそんな…)

コンコン




アルミン「…!!」




コンコン




アルミン「だ、誰…!?」

アニ「アニだよ」

アルミン「アニ…!?」

ガチャ




アルミン「な、何か用…?」

アニ「………………」

アルミン「どうしたの…?」

アニ「…今、時間ある?」

アルミン「え…?」

アニ「ちょっと一緒に来てくれない?」

今日はここまで

― 観測所 ―




アルミン(アニに連れて来られたのは、予想外の場所だった)




アルミン「ここって、今回開放された…」

アニ「そう、観測所」




アルミン(アニはそう言って室内を見上げた)

アルミン(天井は半球状になっていて、
     大きな天窓が備え付けられている)
     
アルミン(中でも目を引いたのが、天窓に向かって伸びる
     巨大な筒状の物体…)

アルミン「あれって何だろう」

アニ「望遠鏡らしいよ。星を見るための」

アルミン「ほ、星を…?」

アニ「嫌味っていうか、悪趣味だよね。
   モノクマの性格がよく出てる」

アルミン「………………」



DAY 11  晴れ のち 曇り

DAY 12  曇り

DAY 13  曇り

DAY 14  晴れ のち 曇り

DAY 15  晴れ

DAY 16  曇り

DAY 17  曇り

アルミン(次に目が留まったのが、部屋の隅に置かれた黒板だった)



アルミン「あれってもしかして、昨日アニが言ってた…」

アニ「…そう、天気の予報さ。
   7日間分を書き出してるらしいよ」

アニ「今日はこの生活が始まって11日目だから、
   【晴れ のち 曇り】だね」

アルミン「…これって、この施設の中の天気なんだよね?
     意味あるのかな、天気なんて」

アニ「…さあ、私に聞かれてもね」

アルミン(そう言ったきり、アニは黙り込んだ)

アルミン(僕は慌てて次の話題を探す)




アルミン「そういえば、今回開放された場所って行ってみた?
     ここ以外で…」

アニ「行ってないよ。そのうち見てみようとは思ってるけど」

アルミン「そっか…」

アルミン(再び会話が途切れる)

アルミン(訪れる沈黙が苦しくて、僕はアニを横目で見た)




アニ「………………」




アルミン(僕をここまで連れてきたアニは、
     全く本題に入ろうとしない)

アルミン(かく言う僕も、なかなか切り出せずにいた)

アルミン(聞きたい事があるはずなのに…)





アニ『…じゃあ何? あいつが卒業したクロに
   【巨人に関する重大なヒミツ】をあげるって言ったのは…』

アニ『“【始祖の巨人】をもつ自分を食べさせてあげる”って…
   そういう意味だったって言うの?』




アルミン(…聞くなら今だ)

アルミン(アニに連れ出されたときから固めていた決意を
     僕は再び自分に言い聞かせた)

アルミン(だけど…)




ドクン




アルミン(喉まで出かかった言葉は、再び体の奥に押し戻されてしまう)

アルミン(自分の中の何かが、聞くのを必死に止めようとしている)

アルミン(僕はなんとなく予感していた)

アルミン(この事を聞いてしまえば、もう後には戻れない)

アルミン(すごく聞きたいのに…聞きたくない)




ドクン




アルミン(…くそっ、しっかりしろ)

アルミン(昨日は平静を保てていたじゃないか…)

アルミン(何度目かの葛藤の後、ようやく口を開きかけたときだった)




アニ「アルミン」

アルミン「えっ…!?」

アニ「あんたは気付いた?」

アニ「昨日、食堂でヒストリアが語った事…」

アルミン「…?」

アニ「あいつはね、ウォール・マリアが破壊された時期を…」

アニ「“5年前”って言ったんだよ」

アルミン「えっ…」





アルミン⦅ヒストリアは僕たちに全てを明かした⦆

アルミン⦅クリスタ・レンズは偽名で、
     本名はヒストリア・レイスであること⦆

アルミン⦅ウォール・シーナ北部の小さな牧場で
     孤独な幼少期を過ごしたこと⦆

アルミン⦅5年前、ウォールマリアが没落してから数日後に
     領主の名を名乗る父親が現れたこと⦆




アルミン「…!!」

アニ「私たちが訓練兵団に志願したのは、
   ウォール・マリアが堕ちてから2年後だよね?」

アニ「モノクマの言うように、そこから数年間の記憶が
   抜け落ちているとしても…」

アニ「どうしてあいつは… はっきりと“5年前”だなんて
   言えたんだろうね」

今日はここまで

アルミン(確かにそうだ…)

アルミン(モノクマは、僕らの記憶が欠落しているのは
     “数年間”としか言っていない)

アルミン(それを考えれば、ウォール・マリアが堕ちたのが
     何年前かなんて、はっきりとは言えないはずだ…)




アルミン「もし、ヒストリアの言う通り、ウォール・マリア襲撃が
     “5年前”の出来事だとしたら…」

アルミン「僕たちの記憶が抜け落ちている期間は
     3年って事になるよね…」

アニ「………………」

アルミン「確か、従来の訓練兵団での訓練期間も
     3年くらいだったはずだから…」

アルミン「僕たちは、訓練兵団での記憶を丸ごと消されていて、
     ヒストリアはその失われた記憶を取り戻してる…?」

アニ「そう決めつけるのはまだ早いんじゃない?」

アルミン「え…?」

アニ「私は、ヒストリアが“5年前”って言ったのは
   無意識的だったんじゃないかと思ってる」

アルミン「無意識的って…どういう事?」

アニ「つまり、ヒストリアは消された3年分の記憶を
   取り戻しつつあるけど…」

アニ「…本人はそれに気付いていないって事さ」

アニ「知らず知らずのうちに、無くした記憶の一部分を
   口走ってしまったんじゃないか…ってね」

アルミン「うーん… そうなのかな?
     あれだけの発言で考えるにはちょっと…」

アニ「根拠は他にもあるよ」

アルミン「え…?」

アニ「だって、ヒストリアがあの発言をしたとき…
   誰も“5年前”っていう言葉に口を挟まなかったじゃない」

アルミン「…!」

アニ「あんただってそうでしょ?」

アニ「今私に言われて気付いたみたいだけど、あのときは
   “5年前”って聞いて何の違和感もなかったんでしょ?」

アルミン「…確かに、あのとき僕は何も思わなかったけど」

アルミン「他の人たちはわからないよ。単に聞き逃しただけか、
     違和感に気付いていながら敢えて口にしなかった可能性も…」

アニ「私はそうは思ってない」

アルミン「………………」

アニ「アルミン、ここまで言えばわかるでしょ?」

アニ「記憶が戻り始めてるのはヒストリアだけじゃない…
   あんたら全員が、失われた記憶を思い出しつつあるんだよ」

アルミン(ドキリとした)

アルミン(失われた記憶…)

アルミン(モノクマではない【別の誰か】によって奪われたという、
     僕たちの過去…)




アニ「…私が心配してるのは、記憶を取り戻したことによる
   新たなコロシアイさ」

アニ「ユミルは記憶が戻ったせいであんな凶行に走ったんだ。
   私たちの中で、また同じような事が起こらないとも限らない」

アニ「もうあんな悲劇を繰り返すわけにはいかないんだよ。
   何か先手を打たないと…」

アルミン(アニは珍しく焦っているようだった)

アルミン(いつもはあまり表情を見せない彼女だが、
     今は眉間にしわを寄せて考え込んでいる)




アルミン「…今日僕を呼んだのは、その打開策について相談するため?」

アニ「そう。あんたなら、何かいい考えを
   出してくれるんじゃないかと思ってね」

アルミン「…気持ちは嬉しいけど、正直どうすればいいのかわからないよ」

アルミン「失った記憶の中身がわからない以上は、対策も何も…」

アニ「…そう、わかった」

アルミン「ごめん、力になれなくて」

アニ「それなら、これだけは聞かせて」









アニ「あんたはどこまで思い出してる?」







アルミン「え…?」

アニ「この生活が始まってから、あんたは何か思い出さなかった?」

アニ「見覚えのない光景が突然脳裏に現れるような…
   そんな体験をしなかった?」

アルミン「…!!」

アニ「ねえ、アルミン… 教えて」

アニ「あんたはどこまで思い出してる?」

アルミン「どこまで…って」

アニ「………………」

アルミン「そんなこと言われても…」

アルミン「僕は…」









アルミン「…っ!!」











???『おい… 何をする気だ!?』

???『やめろ!!』

???『ごめん… でも…』

???『もう耐えられない…』



アルミン「ううっ…!」




アルミン(今のは…!?)




アルミン「…っ」

アルミン「………………」




アルミン(…あれ?)

アルミン(アニがいない…?)

今日はここまで

― 書庫 ―




アルミン(いなくなったアニを探していた僕は、
     書庫にたどり着いた)

アルミン(第2の事件の前、アニがここで
     本を読んでいたのを思い出したのだ)




アルミン『ア、アニ!?』

アニ『…何をそんなに驚いてるの』

アルミン『い、いや…』

アニ『…私が本を読んでるのがそんなに意外?』

アルミン『そ、そうじゃなくて…
     てっきり誰もいないと思ってたから…』



アルミン「あの時はあそこにいたんだけどな…」




アルミン(僕は書庫の一角… 以前アニが立っていた
     本棚の前に目をやった)

アルミン(書庫の中に人気はなく、ひっそりと静まり返っている)




アルミン「ここじゃないのか…」




アルミン(僕は思わずため息をついた)

アルミン(急にいなくなるなんて… 一体どこに行ったんだよ)

アルミン(諦めて踵を返そうとしたとき…)

アルミン(僕はふと、ある事を思い出して足を止めた)




ジャン『えっと、オレが調べてきた場所についてだったな…』

ジャン『オレは…書庫に行ってきた』

コニー『書庫…? そこはもう開いてたじゃねーか』

ジャン『忘れたのか? 書庫の中には鍵のかかった扉があっただろうが』



アルミン(そういえば…)

アルミン(この書庫の中にも、開放された扉があったんだっけ…)




ライナー『あの扉が開いてたのか?』

ジャン『ああ』

ベルトルト『中は?』

ジャン『普通だよ。また本がズラリと並んでただけだった』



アルミン(僕は再び書庫に向き直り、奥へと向かって歩いた)

アルミン(ぎっしりと詰まった本棚が立ち並ぶ、本の森…)

アルミン(その森の最深部… ちょうど本棚の陰になっている箇所に、
     ひっそりと佇む扉があった)




アルミン「…まさか、この中に?」




アルミン(…ないとは言えない)

アルミン(僕はしばらく迷った後、意を決して扉を開けた)

ガチャッ




アルミン「…えっ?」

ジャン「…ッ!?」




ガコン




アルミン「…ジャン?」

今日はここまで

アルミン(扉の中にいたのは、予想外の人物だった)




ジャン「ア、アルミン…!? なんでここに!?」

アルミン「それはこっちの台詞なんだけど…」

ジャン「…っ!?」

アルミン「僕はアニを探してるんだ。ここには来なかった?」

ジャン「き、来てねえよ! この扉が開放されてからは、
    オレの知る限り他の奴らは一度も…」

アルミン「…えっ?」

ジャン「…っ! と、とにかく、アニは来てねえ!
    探すなら他を当たれ!」

アルミン(他を当たれって言われても…)




アルミン「ジャンはここで何をやってたの?」

ジャン「な、何って… 本だよ、本!
    ここにはそれ以外ないだろ!」

アルミン「本…」




アルミン(僕は辺りを見回した)

アルミン(さっきまでの部屋と同様、この空間も
     所狭しと本棚が並べられている)

アルミン(ただ違うのは… さっきよりも
     かなり埃っぽいという事だろうか)

アルミン「何の本を読んでたの?」

ジャン「なっ… 何のって…」

アルミン「いや、本ならさっきの場所にもあったから…
     ここにはもっと違う種類のものがあるのかなって」

ジャン「…っ!!」

アルミン「ねえ、一体何の…」

ジャン「し、知らねえ!
    オレが何を読もうと勝手だろうが!」




タッタッタッ

バタン

アルミン(ジャンはそのまま部屋から出て行ってしまった)




アルミン「…?」




アルミン(ジャン… 一体どうしたんだろう)

アルミン(なんだか昨日から様子がおかしかったけど…)

アルミン(1人取り残された僕は、
     ジャンのいた場所まで歩いていき…)

アルミン(近くの本棚を調べ始めた)




アルミン「…これか」




アルミン(ジャンが読んでいた本はすぐに見つかった)

アルミン(他の本はかなりの埃を被っているのに対し、
     その本だけは綺麗に取り払われていたのだ)

アルミン(加えて、その本がある位置には、
     埃の上に何回も取り出したような跡がついていた)









ガチャッ




アルミン『…えっ?』

ジャン『…ッ!?』




ガコン








アルミン(僕に気付いたジャンは、
     その本を慌てて本棚に押し戻していた)

アルミン(あの動揺っぷり…
     そんなにすごい事が書かれているのか?)

アルミン(僕は本棚に手を伸ばし、その本を手に取った)

アルミン(かなり古い本なのだろう。表紙は風化し、
     中の紙束は酷く黄ばんでしまっている)




アルミン「………………」




アルミン(僕は、なぜか高鳴り始めた己の心臓を意識しながら…)

アルミン(ゆっくりと、表紙をめくって読み始めた――――)









九つの巨人















「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『えー、施設内放送でーす』

モノクマ『えまーじぇんしー、えまーじぇんしー!』

モノクマ『オマエラ訓練兵諸君は、至急、
     訓練所にお集まりくださーい!』







今日はここまで

― 訓練所 ―




アルミン(訓練所には既に他のメンバーが集まっていた)

アルミン(僕が探していたアニは
     まだ来ていないようだったけど…)




アルミン「ミカサ!」

ミカサ「アルミン」

アルミン「今までどこに行ってたの!?
     昨日の探索から急にいなくなって…」

ミカサ「心配させてごめん。私は大丈夫」

ライナー「私は大丈夫… か」

ミカサ「………………」

ライナー「お前… 本当にどこにいたんだ?
     探索を放り出してまで行くような所なのか?」

ミカサ「あなたに干渉される筋合いはない」

ライナー「………………」

アニ「おまたせ」

アルミン「…!」

コニー「おっ、アニも来たな。これで全員か?」

ベルトルト「そうみたいだね」

ジャン「おい、モノクマ! 来てやったぞ!
    さっさと姿を現しやがれ!」

~♪
~♪


~~♪
~~♪


~~~~♪
~~~~♪




ポヨヨーン




アルミン(いつもの軽快な音楽が鳴り響く)

アルミン(だけど、そこには…)

アニ「………………」

ベルトルト「………………」

ヒストリア「…あれ?」

ミカサ「………………」

コニー「モノクマのやつ… いねーぞ?」

アルミン(いつもとは違う展開に戸惑う僕たち)

アルミン(その後しばらく待っても、モノクマが現れることはなかった)




コニー「な、なあ… これってどういう事だ?」

ベルトルト「………………」

ヒストリア「何かあったのかな…?」

ライナー「さあな。本人が来ないなら確かめようもない」

アニ「………………」

ライナー「解散するぞ。時間の無駄だ」

アルミン(僕たちがその場から立ち去ろうとした時だった)




モノクマ「どういう事ですか!? 説明してください!」

モノクマ「ですから、詳しい話はこの後の会見で…」




アルミン(後方から、モノクマが早足に近づいてきた)

アルミン(1人でせわしなく動き回りながら…)

ベルトルト「あれは… モノクマ?」

ライナー「そうみたいだが… 何をやっているんだ?」




モノクマ「その話は聞いていません!
     いつわかった事なのですか!?」

モノクマ「つい先ほどです。この度も急遽、
     私の不倫会見を取りやめてこちらの説明に…」

モノクマ「不倫会見はやらないという事ですか!?」

モノクマ「またそうやって逃げるおつもりですか!?」

モノクマ「どうかご容赦ください。
     人類の存続に関わる事ですので…」

アルミン(時にはうつむき加減で歩き、時には横でメモを取りながら
     モノクマがこちらに向かってくる)

アルミン(どうやら、1人で何人もの人物を演じているらしい)




ジャン「…また茶番かよ」

アニ「………………」




アルミン(モノクマの小芝居に呆れながらも、
     僕たちにはただ見守ることしかできない)

アルミン(モノクマはそのまま演技を続けながら、
     いつもの檀上に上がっていった)

モノクマ「定刻になりました。ただいまより、
     訓練兵団主催の緊急記者会見を開催いたします」

モノクマ「なお、この度予定されていたモノクマ氏による
     不倫会見は後日に延期いたしますので、ご了承ください」

モノクマ「では、まず監督教官の同氏から、
     今回の速報を受けてご説明をお願いします」

モノクマ「はい、皆様、この度は
     お集まり頂きありがとうございます」

モノクマ「今から2時間ほど前、訓練兵団監査チームによる
     調査結果報告が上がりましたので、お知らせいたします」









モノクマ「【裏切り者】の正体が判明いたしました」







今日はここまで

パシャッ パシャッ パシャッ パシャッ




モノクマ「どういう事ですか!? 【裏切り者】の正体とは!?」

モノクマ「そのままの意味です。我々訓練兵団はかねてより、
     訓練兵として紛れ込んだ【裏切り者】の正体を探っておりました」

モノクマ「今回、その調査が身を結び、誰が【裏切り者】なのかが
     分かった…という事でございます」





モノクマ『ネタばらしするとさぁ、
     実はオマエラの中には【裏切り者】がいるんだよ』

コニー『は…?』

モノクマ『そして仮にその【裏切り者】が1位を勝ち取った場合…』

モノクマ『【自分だけここから出たい】とか【自分以外を処刑してほしい】とか、
     そんな事言うかもしれないよねー!』




モノクマ「誰なのですか!? その【裏切り者】とは!?」

モノクマ「お答えしましょう。【裏切り者】の正体は…」









モノクマ「ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーです」







ライナー「なっ…!?」

ベルトルト「…!!」




パシャッ パシャッ パシャッ パシャッ




モノクマ「ライナーとベルトルト…!?」

モノクマ「【裏切り者】は1人ではなかったという事ですか!?」

モノクマ「はい。誠に遺憾ながら、我々訓練兵団は
     複数名の【裏切り者】の侵入を許してしまっておりました」

モノクマ「そして、何を隠そう、あの2人こそ…」









モノクマ「超大型巨人と鎧の巨人の正体なのです」







今日はここまで

アニ「………………」

ヒストリア「…え?」




パシャッ パシャッ パシャッ パシャッ




モノクマ「なんと!? あの2人の正体が巨人!?」

モノクマ「しかも、人類の仇そのものである
     超大型巨人と鎧の巨人ですと…!?」

モノクマ「驚かれるのも無理はないでしょう。
     私自身、未だに信じられない思いですので」

モノクマ「しかし、事実なのです。人が巨人に変わることも、
     あの2人が多くの人を殺めたことも…」









モノクマ「それらは全部、本当のことでーす!!」







アルミン(僕たちは身動きが取れなかった)

アルミン(あまりにも唐突な、衝撃の告白…)

アルミン(僕たちはただ、ゲラゲラと笑う
     モノクマを見ることしかできなかった)




モノクマ「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」

モノクマ「あー、言っちゃった! ついに言っちゃった!」

モノクマ「“人類史上最大最悪の絶望的事件”の一端…
     その根幹とも言える絶望的な事実を…」

モノクマ「ついに言っちゃったーー!!」

アルミン(モノクマはもう小芝居をやめていた)

アルミン(唖然とする僕たちが可笑しくてたまらないというように、
     腹をかかえて笑い転げている)




モノクマ「ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!」

モノクマ「ねぇねぇ、今どんな気持ち?」

モノクマ「仲間だと思っていた人間が
     実は人類の仇だったと知って…」

モノクマ「今どんな気持ち!?」

コニー「い、いや… どんな気持ちっつーか…」

コニー「いくら何でもブッ飛び過ぎだろ…
    作り話するなら、もうちょっとそれっぽく…」

モノクマ「うぷぷ… ほら、よく言うじゃない。
     “事実は小説より奇なり”って」

モノクマ「事実っていうのはね、それが事実であればあるほど、
     にわかには信じがたい内容なんだよ」

ヒストリア「だ、だからって…
      そんな話、信じられる訳が…」

モノクマ「そう? ここにいる大半の人は
     思い当たる節があるみたいだけど」





ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

アニ「………………」

アルミン「………………」

ジャン「………………」




コニー「…お、おい、どうしたんだよお前ら?」

ヒストリア「な、なんで… 何も言わないの…?」

ジャン「…モノクマの言ってる事は、たぶん、正しい」

ヒストリア「え…?」

ジャン「憶えてるか? 昨日の捜索で、オレは
    書庫の中にあった扉が開いていたのを見つけたんだ」




ジャン『えっと、オレが調べてきた場所についてだったな…』

ジャン『オレは…書庫に行ってきた』

コニー『書庫…? そこはもう開いてたじゃねーか』

ジャン『忘れたのか? 書庫の中には鍵のかかった扉があっただろうが』



ヒストリア「う、うん… 確か、その扉の中も
      ずらりと本が並んでたって…」

ジャン「そうだ。オレはそこで“ある本”に目が留まって、
    捜索の間ずっと読みふけっていた」

ジャン「アルミン… 今お前が後ろ手に持っている本にな」

アルミン「…!!」

ジャン「お前も読んだんだろ、それ」

アルミン「…うん」

ジャン「みんなに見せてやれ」

今日はここまで









九つの巨人







ヒストリア「九つの…巨人…?」

コニー「ずいぶんと古臭い本だな…
    これがどうしたっていうんだ?」

アルミン「この本には、その、何ていうか…
     僕らの常識を超えた内容が記されていたんだ」

アルミン「そう、まるでモノクマの言うような…」









モノクマ『【巨人に関する重大なヒミツ】をプレゼントしまーす!!』








アルミン「【巨人に関する重大なヒミツ】…
     そう呼べるような内容がね」

ヒストリア「えっ…?」

アニ「………………」

アルミン「…読んだ方が早いと思う。見てみて」









これは、ある人物の証言をもとに著者がまとめた回想録の一部である――――











1800年以上前、大地の悪魔はユミル・フリッツという名の少女と契約し、
彼女に『始祖の巨人』の力を与えた。

これがすべての巨人の始まりである。

巨人の力を得たユミル・フリッツは、道や橋を造るなど大陸の発展に大きく
貢献した。彼女の死後、『始祖の巨人』は『九つの巨人』に魂を分けられ、
これを継承した彼女の子孫たちは巨人の力によって広大な帝国を築き上げる。

子孫たちはユミルの民、帝国はエルディア帝国と呼ばれ――――



コニー「…は?」

ヒストリア「ユ、ユミル…!? ユミルってまさか…」

アルミン「…いや、ここに書かれているのは
     僕らの知ってるユミルとは別人だと思う」

ヒストリア「え…?」

アルミン「記述によれば、ユミルは死んでることになってるし…
     そもそもこれは、1800年以上も前の話だからね」

アルミン「…まあ、だからって無関係とも思えないけど」

ミカサ「………………」

アルミン「僕が見て欲しいのはそこじゃないんだ。
     ちょっとページを飛ばすよ…」

今日はここまで





この章では、『始祖の巨人』から魂を分けられた『九つの巨人』について紹介する。

序章で述べた通り、エルディア帝国が世界で権勢を振るっていた時代、
『九つの巨人』はエルディア王家を含めた各名家に代々継承されてきた。

まずは、各巨人の通称と特徴を以下に述べる。







① 始祖の巨人

全ての巨人の頂点に立つ存在。
魂を分けた後も、その大元は代々王家に継承されていた。
エルディア帝国壊滅後は、フリッツ王と共にパラディ島へと逃れている。


② 女型の巨人

汎用性に優れた巨人。
高い機動力と持続力に加え、硬質化能力も併せ持つ。
範囲は狭いが『無垢の巨人』を呼び寄せることができる。


③ 鎧の巨人

硬質化に特化した巨人。
全身を覆う皮膚は常に硬質化しており、盾としての機能を果たす。
その硬さを利用した突進攻撃も破壊力に優れる。


④ 顎の巨人

強襲型の巨人。
小ぶりな分、『九つの巨人』の中でも素早さはトップクラスである。
強力な爪と顎で大抵の物は砕くことができる。


⑤ 獣の巨人

濃い体毛に覆われた大型の巨人。
これといった特性のない巨人だったが、ジーク・イェーガーの継承によって
驚異的な能力を開花させる。詳細は次章にて述べる。


⑥ 車力の巨人

四足歩行型の巨人。
並外れた持続力をもち、長期間の巨人化を可能とする。
用途に合わせた兵装が可能で、軍事作戦の幅を大きく広げることができる。


⑦ 超大型巨人

60m級の超大型巨人。
その巨体ゆえに動きは遅いが、桁違いの破壊力を有する。
全身から発する高温の蒸気は攻撃、牽制、目眩ましなど汎用性が高い。


⑧ 戦槌の巨人

マーレの英雄へーロスと共にエルディア帝国を滅ぼしたとされる
タイバー家の有する巨人。その詳細は謎に包まれている。



ヒストリア「…!」

コニー「お、おい… 鎧の巨人と超大型巨人って…」

アルミン「うん… ウォール・マリアを破壊したあの2体の巨人だよ」

アルミン「ここに書いてある巨人の特徴と絵が… 完全に一致してる」

ミカサ「…ねえ、アルミン、
    『九つの巨人』というのは9体いるのでしょう?」

ミカサ「ここには8体分の記述しかないけど、9体目は?」

アルミン「それが… わからないんだ。
     このページだけ下の方が破られてて…」

ミカサ「………………」

コニー「え、えーっと… つまりこれって…
    どういう事だ…?」

ヒストリア「この『九つの巨人』のうちの2体が
      ウォール・マリアを壊しにやって来たって事だよね…?」

ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ヒストリア「というか、ここに書かれている内容って…」









ヒストリア「まるで、巨人の正体が人間だと言っているような…」







モノクマ「うぷぷ… そういう事」

モノクマ「超大型巨人と鎧の巨人って、何もない場所から突然現れたんでしょ?」

モノクマ「それから、壁の中では一番強度の低い門の部分を破壊したんでしょ?」

モノクマ「そして、逃げ惑う人たちには目もくれず、
     その場で急に消えちゃったんでしょ?」

モノクマ「つまり、そういう事だよ」

コニー「どういう事だよ!?」

モノクマ「彼らは他の巨人たちとは違うって事さ」

モノクマ「知性を有し、なりたい時に巨人になって、
     なりたくない時には巨人じゃなくなる」

モノクマ「それが彼ら… 『九つの巨人』なんだよ」

ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

モノクマ「じゃあ、あとは好きにしちゃってちょーだいな。
     煮るなり焼くなり、好きにしちゃってちょーだいな」

アニ「………………」

モノクマ「…あ、そうだ。忘れるところだった」

モノクマ「ついでと言っちゃなんだけど、ここでオマエラの
     訓練成績の中間発表をしておくね」

ヒストリア「ちゅ、中間発表…?」

モノクマ「現時点でのオマエラの成績は、こうなってまーす!」

名前          PT

ミカサ・アッカーマン  1690
ミーナ・カロライナ   10
アニ・レオンハート   00
ライナー・ブラウン   00
ベルトルト・フーバー  00
ユミル         00
ジャン・キルシュタイン 00
コニー・スプリンガー  00
サシャ・ブラウス    00
ヒストリア・レイス   00
アルミン・アルレルト  00
エレン・イェーガー   00

アルミン「…!!」

ジャン「なっ…!?」

アニ「………………」

ヒストリア「…えっ?」

モノクマ「それではみなさま、素敵なコロシアイ生活を」

モノクマ「うぷぷぷぷ…」









モノクマ「アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」







今日はここまで

ポヨヨーン




アルミン(耳障りな高笑いと共に、モノクマは姿を消した)

アルミン(後に残されたのは…)




ジャン「おい、ミカサ!」

ミカサ「………………」

ジャン「お前… これはどういう事だよ!?」





ユミル『訓練は自由参加だったはずだ。
    サボったからってペナルティはねえよ』

クリスタ『で、でも…全員はさすがに…』

ユミル『全員でサボるからこそ意味があるんだよ。
    これなら【裏切り者】に出し抜かれる心配もないしな』




ジャン「訓練で出し抜くのはなしだって…
    みんなで示し合わせてたじゃねえか!」

ミカサ「そんな約束をした覚えはない」

ジャン「なっ…!!」

ミカサ「そんな事よりも、今はもっと確認すべき事があるはずだけど」

アルミン(ミカサはそう言ってちらりと目を流す)

アルミン(その視線の先を追ったジャンは、ギュッと歯を噛みしめた)




ジャン「…ああ、そうだったな」

ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ジャン「どういう事なのか… 説明してもらおうじゃねえか」

ライナー「…説明?」

ジャン「とぼけるんじゃねえよ!」

ジャン「元々怪しいと思ってたんだ!
    お前らだけ入団式以前の記憶がないとか言ってたよなぁ!?」




ライナー『改めて説明させてもらうと、こういう事だ』

ライナー『みんなには入団式直前までの記憶があるようだが、
     俺たち2人に限ってはそうじゃなかった』

ライナー『自分の名前と必要最低限の知識…それしか残されていなかった』

ライナー『話を聞いてるうちに思い出してきた部分もあるが、
     それでもぼんやりとしかわからない』

ライナー『ミーナは家族の為に殺人を犯したと言っていた。
     だが俺たちは…家族の名前すら思い出せない』



ジャン「おまけに、最初にそれを知ったアルミンに
    口止めまでしてたって!?」




アルミン『そうなんだ…僕はてっきり、
     二人は古くからの友人だと思っていたんだけど』

ライナー『…信じられねえのはわかる。
     だから俺たちも言い出せなかった』

ライナー『特に【裏切り者】の存在が示唆された今…
     真っ先に怪しまれるのは俺たちだろうからな』




ベルトルト『…ねえアルミン、
      虫のいい頼みだっていうのは承知してる。だけど…』

アルミン『…わかってる。この件は誰にも言わないよ』

ライナー『…すまねえな』



ライナー「あの話は嘘じゃない」

ジャン「あぁ!?」

ライナー「俺たちには本当に記憶がなかった」

ライナー「アルミンに口止めをした理由も、あの状況では
     俺たちが真っ先に疑われると思ったからだ」

ライナー「…その事はすでに話しているだろう」

ジャン「あの時とは状況が違うだろうが!お前らは名指しされたんだぞ!?
    お前ら2人が【裏切り者】だって事を!」

ライナー「逆に聞きたいんだが、どうしてモノクマの言う事を
     そう簡単に信じるんだ?」

ライナー「人間が巨人になるなんて…
     突拍子もない話だとは思わないのか?」

アニ「…ライナーの言う通りだよ」

ジャン「…!」

アニ「ジャン、もう少し冷静になりなよ」

アニ「あんたがライナー達を疑ってるのって、
   その本を読んだからなんでしょ?」

アニ「でも、そこには…」

ジャン「んな事ぁわかってんだよ!!」

アニ「…!!」

ジャン「オレだってわかってんだよ!
    突拍子もない話だって事くらい!」

ジャン「こんな話を簡単に信じちまってる自分も
    どうかしてるって思ってる!」

ジャン「でもよ… じゃあこれはどう説明するんだ!?」

ジャン「自分の中にあるこの激しい感情は…
    どう説明するっていうんだよ!?」

今日はここまで

ジャン「オレがその本で、人間が巨人になる事を知ったとき…」

ジャン「真っ先に浮かんだのは、お前ら2人の顔だった…!」

ライナー「………………」

ベルトルト「………………」

ジャン「何故かはわからねえ… でもよ…」

ジャン「オレの中の“何か”がずっと訴えかけてくるんだよ!
    あいつらはオレたちの…人類の敵だってな!」

ジャン「なあ… お前らは一体何なんだよ!?」

ジャン「自分たちが巨人である事を隠して、オレたちの仲間ヅラして…」

ジャン「楽しかったか!? 被害者たちの哀れな姿を眺めるのは!」

アニ「ジャン…」

ジャン「わかってんのかよお前ら!? 自分たちが一体何をしたのか!」

ジャン「お前らはな… 最低最悪の大量殺人鬼なんだよ!!」

アルミン「ジャン!!」

ジャン「…!!」

アルミン「ジャン… 落ち着いてよ」

アルミン「まだそうと決まったわけじゃないから…」

ジャン「…ッ」

ライナー「…潮時だな」

アニ「…!」

ベルトルト「ラ、ライナー…?」

コニー「し、潮時って… どういう事だ?
    自分たちが【裏切り者】だって認めるのか?」

ライナー「そうじゃない。お前たちと行動できるのは
     ここまでって意味だ」

ヒストリア「ど、どういう事…?」

ライナー「俺たちが【裏切り者】であろうがなかろうが、
     そんなのはどうでもいい…」

ライナー「そういう強い疑念が生まれてしまった以上、
     もう今までの関係に戻る事は不可能だろう」

ライナー「今後俺たちは、2人だけで行動する。
     お前たちとの接触も必要最低限に留める」

ライナー「…その方が安心だろう」

アニ「ちょっと待ってよ、ライナー。
   それじゃモノクマの思う壺…」

ライナー「わかってる。だが、今はこれが最善だ」

ライナー「このまま俺たちがここにいたら、
     新たな争いの火種になりかねない」

ライナー「行くぞ、ベルトルト」

ベルトルト「ラ、ライナー!待ってくれ!」




スタスタスタ




ヒストリア「ちょ、ちょっと待って!」

コニー「お、おい! 本当にそれでいいのかよ!?」

ミカサ「………………」





スタスタスタ




ライナー「…言っただろう、これが最善だと」

ベルトルト「………………」

ライナー「俺たちは… 俺たちのやり方でケリをつける」

今日はここまで

アルミン(こうして、ライナーとベルトルトは
     僕たちのもとから去っていった)

アルミン(残された僕たちは、しばらくその場に留まっていたが…)

アルミン(あたりが暗くなり始めると、夕食を摂るために
     食堂へ向かった)




アルミン「………………」

ミカサ「………………」

ジャン「………………」

コニー「………………」

アニ「………………」

ヒストリア「………………」




アルミン(誰も何も話さない)

アルミン(ふと見ると、みんなの顔には
     ひどい疲れの色が表れていた)

アルミン(重苦しい食事を済ませた後…)

アルミン(僕たちは大浴場で汗を流し、それぞれの個室へと戻っていった)




アルミン「………………」




アルミン(天井を見ながら思考を巡らせる)

アルミン(僕の中にあったのは、言いようのない不安と混乱と…)

アルミン(とてつもなく大きな疑問)

アルミン(あの2人が【裏切り者】だとしたら…)

アルミン(アニは?)




ライナー『最悪の場合、俺の【鎧】やお前らの【超大型】、
     【女型】が狙われる可能性もある』

ライナー『いいか、絶対に気を抜くなよ?』

ライナー『いざとなれば…巨人化して対抗することも考えておけ』




② 女型の巨人

汎用性に優れた巨人。
高い機動力と持続力に加え、硬質化能力も併せ持つ。
範囲は狭いが『無垢の巨人』を呼び寄せることができる。



アルミン(…とても偶然とは思えない)

アルミン(もし、アニもライナー達の一味だとしたら…)

アルミン(どうしてあの時、モノクマに名指しされなかったんだ…?)




アルミン「………………」




アルミン(人類の仇… 【裏切り者】…)

アルミン(何だろう… 何か引っかかる…)

アルミン(何か…)

◆ モノクマげきじょう ◆




モノクマ「……………」

モノクマ「何見てんだよ。オマエラ…誰だよ」

モノクマ「どうせ「まだコロシアイが起きないのー?」
     「早く誰か死ねよー」とか思ってんだろ?」

モノクマ「まったく、悪趣味だね」

モノクマ「でも、同感だよ」

モノクマ「あー、早く誰か死なないかなー」

モノクマ「ホント、ひとの生き死にって見せ物として最高だよねー」

モノクマ「命をなんだと思ってるって言うヤツもいるけど、
     別に命に価値なんてないんだよ」

モノクマ「どうせ死んだらすぐに忘れられるし、
     代わりなんていくらでもいるしね」

モノクマ「そういう意味ではデスゲームの死人は幸せだと思うよ」
     
モノクマ「死をネタにされるだけでも幸せなんだよ」

モノクマ「うぷぷ…つぎは誰にどんな幸せが訪れるのかな?」

モノクマ「ワックワクのドッキドキだよねー」









「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『オマエラ、おはようございます!
     朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノクマ『さぁて、今日も張り切っていきましょう~!』







今日はここまで

CHAPTER 03 

DAY 12




アルミン(翌朝、僕たちは食堂で朝食を摂っていた)

アルミン(同じテーブルにいるのは、コニー、ヒストリア、そしてアニ…)




コニー「…他の奴らはどうした?」モグモグ

ヒストリア「ライナーとベルトルトはともかく…
      ミカサとジャンもいないね」

アニ「…ミカサは訓練でしょ。ジャンは知らないけど」

コニー「訓練か… 今までちょいちょい居なくなってたけど、
    まさかそういう事だったとはなあ…」モグモグ

ヒストリア「………………」

コニー「………………」モグモグ

ヒストリア「…ねえ」

コニー「…うん?」ゴックン

ヒストリア「大丈夫なのかな、訓練…
      このままだとミカサが1位になっちゃうけど…」

コニー「別にいいんじゃねーか? 結局【裏切り者】は
    ライナーとベルトルトって事になったんだし…」

コニー「【裏切り者】が1位を取る心配が無くなったんだから、
    むしろ俺は安心してるけどな」

アニ「…本当にそう思ってるの?」

コニー「…え?」

アニ「本当に… あいつら2人が【裏切り者】だと思ってるの?」

コニー「ど、どういう意味だよ…
    だって、モノクマがそう言ってたじゃねーか」

アニ「ライナーも言ってたけど、どうしてモノクマの言う事を
   そう簡単に信じるの?」

アニ「これはどう考えても、私たちにコロシアイをさせるための口実…」

アニ「つまりは動機だよ」

コニー「………………」

アニ「あいつの口車に乗せられてどうするのさ…」

アルミン「………………」

ヒストリア「…アルミン、どうしたの?
      さっきから黙り込んでるけど…」

アルミン「………………」

アルミン「…やっぱりおかしいよ」

ヒストリア「…え?」

アルミン「昨日からずっと考えていたんだ…
     どうしてモノクマは【裏切り者】の正体を明かしたんだろうって」

ヒストリア「それは… 今アニが言ったように、
      私たちにコロシアイをさせるためじゃ…」

アルミン「もちろんそれはあるだろうけど、
     それでも腑に落ちない点がいくつかあるんだ」

アルミン「まず、ライナーとベルトルトが
     本当に【裏切り者】だったとして…」

アルミン「それをあの場で明かす意味って、
     あんまりないと思うんだよね」

アルミン「だって、正体を明かしちゃったら…
     もう【裏切り者】としては機能しなくなっちゃうから」

ヒストリア「だから、それはコロシアイを…」

アルミン「僕たちにコロシアイをさせるためだったら、
     正直に【裏切り者】を明かす必要はないんだよ」

アルミン「僕がモノクマだったら、全く別の人物の名前を言うと思う」

アルミン「真の【裏切り者】の正体は言わずに…」

ヒストリア「…えっ?」

コニー「…?」

アニ「………………」

アルミン「………………」

ヒストリア「そ、それってつまり…」









ヒストリア「あの2人以外に真の【裏切り者】がいるってこと…?」







今日はここまで

アルミン「…そう考えればしっくりくるんだ」

アルミン「そもそも、【裏切り者】っていうのは
     モノクマ側の人間を指すんだろうけど…」

アルミン「あの2人は… モノクマと
     敵対しているようにしか見えなかった」

アニ「………………」

アルミン「つまり、ライナーとベルトルトは
     【裏切り者】なんかじゃなくて…」

アルミン「【裏切り者】の濡れ衣を
     着せられただけなんじゃないかな」

アルミン「真の【裏切り者】の存在を隠すために…」

コニー「…? え、えーっと…」

アルミン「…モノクマにとっては一石二鳥の作戦だよ」

アルミン「真の【裏切り者】の存在を
     僕らの目から遠ざけられる上に…」

アルミン「僕たちを疑心暗鬼にさせ、仲間割れさせる事で、
     コロシアイが起きやすい状況を作り上げる…」

アルミン「…今の状況のようにね」

ヒストリア「そ、そんな… それじゃあ、私たちは…」

ヒストリア「まんまとモノクマの策略に乗せられてたって事…?」

アニ「…だから、最初からそう言ってるでしょ」

アニ「あんなに凝った小道具まで作って…
   本当に悪趣味なやつだよ」

コニー「こ、小道具…?」

アニ「どこかの誰かが大騒ぎしてた例の本さ」









九つの巨人







コニー「ま、まさか… あれもモノクマが仕組んだってのか?」

アニ「…他に誰がやるのさ」

コニー「…!!」

アニ「あんなデタラメを真に受けた誰かさんが
   大声で喚き散らしたおかげで…」

アニ「何の関係もないライナーとベルトルトは
   私たちから孤立してしまった」

アルミン「………………」

アニ「まったく… もう少し冷静に考えて行動してほしいね」

カチャ




アニ「…ごちそうさま」

コニー「ん? まだ半分くらい残ってるじゃねえか」

アニ「あんまりお腹減ってなくて」

ヒストリア「大丈夫?」

アニ「いつものことだよ。私、朝は弱いから」

アルミン「………………」

アニ「じゃあね」

― 訓練所 ―




アルミン「アニ!」

アニ「…アルミン?」

アルミン「はあ……はあ……」

アニ「どうしたの? まだ朝食食べてたでしょ?」

アルミン「…追いかけてきたんだ、アニを」

アルミン「これからどこに行くの?」

アニ「ライナーとベルトルトのところだよ。
   無茶してないか心配だからね」

アルミン「………………」

アニ「…何? 何か言いたそうな顔だけど」

アルミン「…いや、別に」

アニ「…まあいいや。私もあんたに聞きたい事があったんだよね」

アルミン「…聞きたい事?」

アニ「さっき食堂でしてた話だけど…
   あんた、肝心な事を話してなかったよね」

アルミン「…え?」

アニ「真の【裏切り者】は誰なのか…って事だよ」

アルミン「………………」

アニ「もし、あんたの言う通り、ライナーとベルトルトが
   【裏切り者】の汚名を着せられただけで…」

アニ「真の【裏切り者】が他にいるとしたら…
   それは誰だと思ってるの?」

アルミン「………………」

アニ「何の考えも無しに、あんな話をした訳じゃないんでしょ?」

アルミン「………………」

アルミン「真の【裏切り者】は…」









アルミン「アニじゃないかと思ってる」







今日はここまで

アニ「………………」

アニ「…私?」

アルミン「………………」

アニ「私が真の【裏切り者】だって… そう言ってるの?」

アニ「私がモノクマと通じてるって…?」

アルミン「…うん」

アニ「………………」

アニ「…あはっ」

アニ「あはははははははははははははははっ!!」

アルミン「…!?」

アニ「すごいねアルミン… あんたって奴は」

アニ「まさかここまでとは思わなかったよ…」

アルミン「アニ、それじゃあ…」

アニ「まったく… 傷つくよ」

アルミン「…!」

アニ「一体… いつから」

アニ「アルミン… あんたは私を
   そんな目で見るようになったの?」

アルミン「……3日前の夜」

アニ「…え?」

アルミン「見たんだ、僕…」

アルミン「君が、ライナーとベルトルトと…」

アルミン「訓練所の隅で話しているのを…」





ライナー『最悪の場合、俺の【鎧】やお前らの【超大型】、
     【女型】が狙われる可能性もある』

ライナー『いいか、絶対に気を抜くなよ?』

ライナー『いざとなれば…巨人化して対抗することも考えておけ』



アニ「………………」

アニ「…そう、あれを聞いたんだ」

アルミン「…うん」

アニ「………………」

アルミン「安心して。この事はまだ誰にも話してないから」

アニ「…それで、望みは何?」

アルミン「…え?」

アニ「私を脅しに来たんでしょ? 何をしてほしいの?」

アルミン「いや、そういう訳じゃなくて…」

アニ「じゃあ、この場でその話を打ち明けた理由は何?」

アルミン「それは…」

アニ「………………」

ガッ




アルミン「…!!」

アニ「あんたさぁ… 一体どういうつもり?」

アニ「あの場面を盗み見て、私を脅すでもなく
   ノコノコとこの場にやって来て…」

アニ「馬鹿なの? 口封じに殺されるとは思わなかった?」

アルミン「ア、アニは… そんな事しないだろ…!」

アニ「あんたに私の何がわかるの?
   出会って10日くらいしか経ってないのに…」

アニ「私がそんなに良い人に見えた?」

アルミン「い、良い人…?」

アルミン「そ、その言い方は… あまり好きじゃない…」

アニ「…え?」

アルミン「だって、それって…」

アルミン「自分にとって都合の良い人のことを…
     そう呼んでいるだけじゃないか…!」

アニ「…っ!」





アルミン『良い人か…』

アルミン『それは… その言い方は僕はあまり好きじゃないんだ』

アルミン『だってそれって… 自分にとって都合の良い人のことを
     そう呼んでいるだけのような気がするから』

アニ『……』

アルミン『すべての人にとって都合の良い人なんていないと思う』

アルミン『誰かの役に立っても他の誰かにとっては
     悪い人になっているかもしれないし…』

アルミン『だから… アニがこの話に乗ってくれなかったら…』











アルミン『アニは僕にとって悪い人になるね…』







ドサッ




アルミン「うっ… ゲホッ! ゲホッ!」

アニ「………………」

アルミン「アニ… 僕はただ…」

アルミン「君の力になりたいだけなんだ…」

アルミン「良い人でも悪い人でもなく… 1人の仲間として…」

アニ「………………」

アニ「……もう少し早く言ってほしかったよ」

アルミン「…え?」

アニ「…何でもない」

アニ「とにかく、アルミン… あんたの気持ちはよくわかった」

アニ「だけど、これはあくまで私たちの問題だから…
   あんたの力を借りるわけにはいかない」

アニ「気持ちだけ受け取っておくよ」

ギュッ…




アルミン「…!? ちょ、ちょっ… アニ…!?」

アニ「――――――」

アルミン「…!!」

アニ「アルミン… おかげで少し気が楽になったよ」

アニ「ありがとう…」

アルミン「う、うん…」

バッ




アニ「………………」

アルミン「………………」

アニ「…ごめんね、急に抱き着いたりして」

アルミン「い、いや、別に…」

アニ「じゃあ、また」

今日はここまで

― 大浴場 ―




アニ「…来たね」

アルミン「………………」

アニ「尾けられてない?」

アルミン「大丈夫…だと思う」

アニ「…そう」

アルミン(アニと訓練所で別れた後、僕は大浴場に来ていた)

アルミン(彼女と再び話をするために…)




アニ『1時間後に大浴場に来て。そこで全て話す』




アルミン(訓練所で僕に抱き着いたアニは、耳元でそう囁いた)

アルミン(僕はその言葉を信じて、アニに従ったのだ)

アルミン「…でも、どうして場所を変えたの?」

アニ「あそこだと誰の目があるかわからないからね。
   誰かさんにも秘密の会話を聞かれたし」

アルミン「だからって、なんで大浴場に…」

アニ「この時間に風呂に入るやつなんていないでしょ」

アルミン「………………」

アニ「…さて、本題に入ろうか」




アルミン(アニはそう言うと、ゆっくりと歩み寄ってきた)

アルミン(下を向いて息を吐き、意を決したように僕の目をのぞき込む)




アニ「…はじめに聞かせてほしいんだけど」

アルミン「…?」

アニ「訓練所であんたが言った言葉… あれは本心?」





アルミン『アニ… 僕はただ…』

アルミン『君の力になりたいだけなんだ…』

アルミン『良い人でも悪い人でもなく… 1人の仲間として…』




アルミン「…うん、本心だよ」

アニ「本当に私の力になってくれるの?」

アルミン「うん」

アニ「これから私が打ち明ける話を聞いても?」

アルミン「それは…」

アニ「………………」

アルミン「…話の内容によるかな」

アニ「…それもそうだね」

アルミン(アニは少しだけ笑って下を向いた)




アニ「………………」




アルミン(それからしばらく、アニは何も話さなかった)

アルミン(伏目になり、髪を耳にかける動作を何回も繰り返している)




アルミン「………………」




アルミン(僕はただ黙って、アニの言葉を待った)

アニ「………………」

アニ「…結論から言うね」

アルミン「………………」

アニ「結論から言うと… 
   あんたの予想は半分当たってて、半分外れてる」

アルミン「半分…?」

アニ「当たってる方の半分は… あんたが盗み聞きした会話のこと」





ライナー『最悪の場合、俺の【鎧】やお前らの【超大型】、
     【女型】が狙われる可能性もある』

ライナー『いいか、絶対に気を抜くなよ?』

ライナー『いざとなれば…巨人化して対抗することも考えておけ』



アルミン「それじゃあ…!」

アニ「…そう」

アニ「私の正体は女型の巨人…」

アニ「ライナーとベルトルトと一緒に壁を襲撃して…」

アニ「大勢の人たちの命を奪った」

今日はここまで

アルミン「…!!」

アニ「………………」

アルミン「『ライナーとベルトルトと一緒に』って事は…」

アニ「…そう、ライナーは鎧の巨人で、ベルトルトは超大型巨人」

アニ「だから、モノクマの言っている事は事実なんだ」

アルミン「だ、だけど… あの時の襲撃に女型の巨人なんて…」

アニ「…忘れた? あの本に書かれていた女型の巨人の説明」




② 女型の巨人

汎用性に優れた巨人。
高い機動力と持続力に加え、硬質化能力も併せ持つ。
範囲は狭いが『無垢の巨人』を呼び寄せることができる。




アニ「女型の巨人は『無垢の巨人』…
   つまり九つの巨人以外の巨人たちを呼び寄せることができる」

アニ「私はその能力を使って、島の巨人たちを引き付けながら
   壁に近づいた」

アニ「そして壁に到達すると… ライナーとベルトルトが
   壁を破壊して、その騒動に紛れる形で壁内に潜入した」

アルミン「じゃあ、あの本に書かれている内容も…」

アニ「事実さ。少なくとも、私の知見とは【完全に一致してる】」

アルミン「それなら、僕たちは…」

アニ「パラディ島に逃れたエルディア人の子孫さ」

アニ「そして、私たち3人は、その中に潜む【始祖の巨人】を
   奪還するために送り込まれたマーレという国の戦士…」

アニ「…大陸側に残ったエルディア人の末裔なんだよ」

アルミン「………………」

アニ「…あの本はどこまで読んだの?」

アルミン「大体は目を通したよ」

アルミン「だから、エルディアとかマーレとかパラディ島とか…
     それらの名前が何を指しているかくらいはわかってる」

アルミン「アニたちが【始祖の巨人】を取り戻そうとしている理由も、
     巨人の力を所有するマーレの国力を確固たるものにするため…だよね」

アニ「…すごいね、アルミン。ただでさえ突飛な内容なのに、
   もうそこまで読み取ったの?」

アルミン「うん… でも、何ていうか… 現実味がないんだよね」

アルミン「まるで、おとぎ話を読んでいるみたいで…」

今日はここまで

アニ「……現実味がない、か」

アルミン「…え?」

アニ「…いや、無理もないよ」

アニ「結局、私たちは箱の中の猫だからね。
   箱を開けてみなければ、その中の猫の生死はわからない」

アニ「…いや、もしかすると、はじめから
   箱の中に猫なんていないのかもしれない」

アニ「それがわかるのは、箱を開けた人間だけ…」

アルミン「…アニ?」

アニ「…ああ、ごめん。話が逸れたね」

アルミン「………………」

アニ「とにかく… 今の私に言えるのはこれだけだよ」

アニ「あの本の内容は真実で、私たち3人の正体は巨人…」

アニ「あんたらは、かつてフリッツ王と共にパラディ島へと逃れた
   エルディア人の子孫で、世界中の憎まれ者…」

アニ「私たちは、フリッツ王と袂を分かち、かつてエルディア人が犯した
   罪を償うためにマーレに残ったエルディア人の末裔…」

アニ「私たち3人は、その贖罪の一環として
   【始祖の巨人】を取り戻すために送り込まれたマーレの戦士…」

アニ「…わかる? あんたらにとっては
   私たちが【裏切り者】に見えるだろうけど…」

アニ「私たちにとっては… あんたらこそが【裏切り者】なんだよ。
   少なくとも、私たちは大人からそう教わった」

アニ「立場によって誰が【裏切り者】なのかは変わるんだ」

アニ「…それだけは忘れないで」

アルミン「………………」

アニ「…でも、立場の是非について
   今ここで議論するつもりはないよ」

アニ「今はもっと話さなきゃいけない事がある…」

アニ「私たちにとっても、あんたらにとっても…
   想定外の事が起きているからね」

アルミン「…それって、ここでの生活のこと?」

アニ「…そう。その事に関しては、私たちもあんたらも状況は同じ」

アニ「同じ入団式で急に意識を失って、
   気が付いたらこの施設に閉じ込めれていて…」

アニ「モノクマを名乗る何者かに殺し合いを強要されている」

アニ「…これが外れてる方の半分」

アニ「私がモノクマと通じてるっていう、あんたの予想」

アルミン「………………」

アニ「私は真の【裏切り者】なんかじゃない」

アニ「あんたらと同じ… この監禁事件の被害者なんだよ」

アルミン「でも、それならどうして…
     アニはモノクマに名指しされなかったの?」

アルミン「君もあの2人と同じなのにどうして…」








モノクマ『ライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーです』







アニ「おそらくだけど… あいつは
   私たち3人の仲間割れを狙ったんだと思う」

アルミン「えっ…?」

アニ「今あんたが言ったことは、
   ライナーとベルトルトも感じていたんじゃないか…ってね」

アニ「あの2人から直接聞いたり言われたりした訳じゃないけど…」

アニ「…あの一件以来、どうにも避けられているような気がするんだ」

アルミン「避けられているって… アニが?
     ライナーとベルトルトに?」

アニ「…そう」

アニ「あんたが覗き見したあの日から… 私たちは毎晩、
   こっそり集まって話し合いをしていたんだ」

アニ「…まあ、毎晩と言ってもまだ2回しかやってないけどね」

アニ「昨日の夜に3回目をやるはずだったんだけど…
   私にはお声が掛からなかったんだ」

アニ「モノクマがあいつらを【裏切り者】として
   名指ししたのが昨日…」

アニ「…私には、あの一件で
   あいつらの心境に変化が生じたとしか思えない」

アニ「“なぜ自分たちだけが名指しされて、
   同じ『九つの巨人』を持つアニの名が呼ばれなかったのか…”」

アニ「“もしかして、アニはモノクマと通じているんじゃないか…”」

アニ「…そんな疑念を抱いたとしか思えないんだ」

アルミン「つまり、モノクマのあの発表は、
     ライナーたちと僕らの仲を切り裂く事だけが目的じゃなくて…」

アルミン「ライナーたちの間でも
     仲間割れを起こさせるのが目的だった…っていう事?」

アニ「…私にはそうとしか考えられない」

アニ「悔しいけど… 完全にやられたよ」

アニ「おかげでライナーとベルトルトは孤立して、
   私もライナーたちやあんたから疑念の目を向けられた」

アニ「コロシアイが起きやすい状況を作るという
   あいつの策略にまんまとハマってしまったんだ」

アルミン「コロシアイ…」

アルミン「コロシアイが… 起きやすい状況…」








エレン『おい…ミーナ…』




ミーナ『イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!』




ユミル『……ウ……ァ……』




サシャ『ん゛ん゛ん゛ん゛んんんんんんんん~~~~!!!!』








アルミン「そんなの駄目だ…!」

アルミン「あんな悲劇は… もう…!」

アニ「…アルミン、私に力を貸してほしい」

アルミン「アニ…」

アニ「私たち3人がやったこと…
   あんたにも思うところはあると思う」

アニ「私たちの立場、あんたらの立場…
   ここで語り尽くせない思いはお互いにある」

アニ「だけど、今はそれらを一旦心から外してほしい」

アニ「目の前の脅威からみんなを守るために…」

アルミン「………………」

アニ「アルミン… どうか私に力を貸して」

アルミン「………………」

アルミン「…わかった」

アニ「…!」

アルミン「力を貸すよ。断る理由があるもんか」

アニ「アルミン…」

アニ「…ありがとう」

アルミン「…それで、これからどうする?」

アニ「うん… まずはあの2人に会いに行こう」

アルミン「あの2人って…」

アニ「ライナーとベルトルトさ」

アニ「この状況を打ち破るには… あいつらの力も必要だからね」

今日はここまで

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年02月10日 (土) 21:36:27   ID: Glj9tSkB

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