七海「魚河岸丸天?」 (20)

モバP(以下P)「飛鳥、七海、朝早くからおつかれ。いいロケだったぞ」

飛鳥「朝の魚市場の賑わいは想像以上だね」

七海「お魚もたっくさんで楽しかったれす~!」

飛鳥「目についた魚の薀蓄を語り続けるから楽しいのは十分理解ったさ」

P「仲買の人にも知識量で驚かれてたぐらいだしな」

七海「飛鳥ちゃんも元気いっぱいれしたよ? ほら、イルカのときに」

飛鳥「それは触れないでくれ……まさかイルカ肉を口にするなんて……」

P「食べた後イルカだと説明されたときの慌てっぷりは取れ高あったぞ!」

七海「クセがあって臭いって聞いたことありましたけど、やっぱり新鮮だと全然そんなことなかったれすね~」

飛鳥「だから触れるなと云っただろう!」

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P「撮影もスムーズに進行したので思ったより早く終わったな。まだ昼前か」

飛鳥「余裕があるならここで何か食べてから帰る、というのはどうかな」

P「飛鳥から言うなんて珍しい。撮影で色々食べてたが足りなかったか?」

飛鳥「別にそういうわけじゃない。キミもここまで来て何も食べずに帰るのは酷だろうと思ってね」

七海「そうれすね。せっかくなんで美味しいお魚食べていきましょ~♪」

P「そう言ってくれるならお言葉に甘えさせてもらうか。市場に飲食店街もあったしそっちまで行ってみよう」

七海「プロデューサーはどんなお魚が食べたいれすか?」

P「そうだなぁ、ロケで見たしらすが美味そうで気になってる」

飛鳥「あぁ『秋しらす』かい」

七海「しらすの旬は春と秋れすが、秋しらすは越冬に備えて脂を蓄えてるので春しらすとは違った美味しされすよ~」

P「大きさも俺が知ってるしらすより少し大きくて太ってる感じだったな」

飛鳥「関東では身が小さい春しらすが人気だからね」

七海「しらす以外にも美味しいお魚たくさんありますよ~!」

P「そうだな、色んな種類のものを食べられる店を探してみるか」

七海「あ、あそこのお店すっごい賑やかれす!」

P「昼前とはいえ盛況だなぁ、開いたドアの向こうから店員の元気な声が聞こえてくる」

七海「えっと、お店の名前は……魚河岸丸天?」

飛鳥「ほう、丸天を選ぶとは流石だね」

P「飛鳥は知ってるのか」

飛鳥「魚河岸丸天は静岡県東部に複数の店舗を持つ海鮮食堂さ。ボクの記憶が確かなら、しらす丼もあった筈だよ」

七海「入口のポップには海鮮かき揚げが名物みたいれすね~」

飛鳥「ふふっ、確かにここのかき揚げは一度は見てみるべきかもね」

P「よっしゃ、ここにするか。席空いてるか聞いてくる」

店員「いらっしゃっせー! 何名ですか?」

P「3人です。奥のお座敷がいいんですが空いてますか?」

店員「こちら手前のテーブル席はすぐご案内できますよ!」

P(入口のすぐ横か、通路も狭いし嫌でも人目につくな……)

七海「どうかしたんれすか~?」

飛鳥「すぐには入れなさそうかい?」

店員「あっ!」

P飛鳥七海「え?」

……


七海「奥の席座れましたね!」

飛鳥「ロケで来てることは認識してたようだし、気を利かせてもらえたようだ」

P「ここは素直にご厚意を受け取っておこう。さて、メニューっと」

七海「あ、プロデューサー、しらす丼れす!」

P「写真付だからわかりやすくていいな……て、なんだこの海鮮かき揚げ丼は!?」

七海「これ、かき揚げなんれすか?」

飛鳥「そう、ここの丼にそびえ立つこのかき揚げは大きい、もとい高いのさ」

P「普通かき揚げといえば平べったいものを想像するが、まさか縦長とは予想外だった」

七海「どれくらい長いんれすかね?」

飛鳥「正確な長さは解りかねるが、20センチはあるんじゃないかな」

P「そりゃ凄まじい。しらすもいいがこっちも気になってきたぞ」

飛鳥「丼でなく単品でも同じものがあるから、それを頼むといい」

P「それなら一緒に食べられて一石二鳥だな」

飛鳥「そうだ、先に二人には忠告しておこう」

七海「なんれすか?」

飛鳥「ここの料理は全体的にボリュームがある。かき揚げもあることだし、そこを気を付けて選んだらいい」

七海「了解なのれす!」

店員「ご注文お決まりですか?」

P「丸天丼をひとつ」

七海「あれ、しらす丼じゃないんれすね」

P「せっかくだから色々食べられるやつにしてみた。これはしらすも乗ってるしな」

飛鳥「成程ね……あ、ボクはまぐろのフルテールシチュー定食を」

七海「太刀魚の塩焼き定食ください~」

店員「ご飯大盛り無料ですがいかがですか?」

P「丸天丼だけお願いします。あと海鮮かき揚げもひとつください」

店員「ほかにご注文は? 今日は金目鯛の煮付がおすすめですよ」

P「煮付けか……じゃあそれもひとつ!」

店員「はい喜んでー!」

飛鳥「そんなに頼んで大丈夫かい?」

P「まぁ何とかなるだろう!」

飛鳥「やれやれ……」

店員「御造り盛り合わせお待たせしましたー!」

店員「すいません後ろ通りまーす!」

ワイワイガヤガヤ

P「活気に満ちてるなぁ」

七海「元気一杯でお客さんも大漁れすね~!」

飛鳥「如何にも漁港の食堂といった具合だろう。こんな喧噪に身を投げるのもたまには悪くない」

P「お客さんも親子連れからお年寄りまで、まさに大衆食堂って感じだな」

七海「プロデューサー、そこのテーブルに若い男の人たちもいますよ~」

飛鳥「何故だろう、あの集団の雰囲気や服装に既視感があるが……?」

P「そういえば、この地域はあるアイドルグループのファンがよく訪れると聞いたことがある」

飛鳥「へぇ、つまり同業者の御膝元というわけかい」

七海「どんなグループなんれすか?」

P「メンバーが地元の女学園に通うスクールアイドル、だったかな」

飛鳥「この先、合同ライブで出逢う未来も、あるいはあるのかも知れないね」

P「アイドル群雄割拠だなぁ……お、料理来たみたいだぞ」

店員「お待たせしました。丸天丼ご飯大盛りと、太刀魚塩焼きの定食です」

P「はーい」

七海「定食はこっちれす~」

店員「続いてフルテールシチューです。あとこちらがセットのあら汁になります」

P「定食には元からお盆に乗ってるから、俺の分か」

飛鳥「丸天の丼ものにはあら汁がセットになってるからね」

店員「かき揚げと煮付も順にお渡ししますねー!」


P「さて、いよいよ食べてみますか!」

七海「どれも美味しそうれすね~」

飛鳥「一品ものも食べていればそのうち来るだろうしね」



「いただきます!」


P「まずはあら汁から……あぁ、魚介の旨味がこの一杯に凝縮されて……こんなん美味いに決まっとるわ」

七海「体がぽかぽかしてきます~」

飛鳥「確かに、肌寒いこの時期はまた格別だね」

P「これだけでご飯いくらでも進みそうだ」

飛鳥「ちなみに定食のご飯は何杯でも、あら汁は1杯無料でおかわりが可能だよ」

七海「こんなに美味しいのにおかわりできるなんて! とってもお得れす!」


P「丸天丼はマグロ、トロ、サーモン、イカ、エビ、しらす。色とりどりで見た目も良いな」

七海「海鮮丼って綺麗れすよね~」

P「ん、見た目に違わずどれも美味い! 生しらす初めて食べたが釜茹でより好きかも」

七海「太刀魚も脂が乗ってて美味しいれす~♪」

P「そして気になるテールシチュー」

飛鳥「テールシチューはぶつ切りにしたマグロのテール部分を煮込んだものさ。良かったら食べてみるかい?」

七海「やった~! いただきます~」

P「俺もひとくち……お、肉厚なのに箸で簡単にほぐせる柔らかさ」

七海「デミグラスシチューの甘みがテールと合いますね~♪」

P「マグロステーキとか火を通すとどうしてもパサつきがあるが、こうしてシチューと絡めると上手く解消されてるな」

飛鳥「ここでは異色を放つ洋風メニューだが、中々のものだろう?」

P「あぁ、見事に驚かされた。もうひとくちもらっていい?」

飛鳥「かなりボリュームがあるから、ひとくちと言わず好きなだけ取ってくれ」

店員「お待たせしましたー! 続いて海鮮かき揚げと金目煮付です!」

七海「うわぁ! やっぱりおっきいれすね~!」

P「写真より実際に見ると余計大きく見えるな……かき揚げがビールジョッキくらいはあるぞ」

店員「あとこちらがかき揚げ用の天つゆです! ごゆっくりどうぞー!」


飛鳥「さぁ、食べようじゃないか」

P「いただきまー……って、これどうやって食べればいいんだ?」

七海「マグロテールみたいに崩せないし~、丸かじりれすかね?」

飛鳥「ふっ、丸天初心者にありがちな発言だね」

七海「むぅ~飛鳥ちゃん、どうすればいいんれすか~!」

飛鳥「本能の赴くままに丸かじりなんてのも間違いじゃないが、セオリーがあるとすれば……こうさ!」

P「天つゆを上からかける、だと!?」

七海「お汁を吸って柔らかくなるんれすね~!」

飛鳥「こうして柔くなった上から順に削っていけばいい。かき氷と同じ要領さ」

P「かき揚げをかき氷のように食べる日がくるとは」

七海「あ、上手くはがせました~! あむっ……普通のかき揚げの味れす!」

P「とにかく見た目のインパクトがデカいな。しかしかき揚げでこの量となると結構油が……」

飛鳥「金目鯛の煮付、ほろほろで美味しい」

P「あ、ズルい俺も!」

七海「この金目鯛もおっきいれす~」

……


P「あー食った、しばらく魚はいいな……」

飛鳥「まったく、ボリュームがあると忠告しておいたのにキミは頼みすぎだ」

七海「でも全部食べちゃいましたね~」

P「かなり頑張ったぞ。飛鳥のテールシチューも半分近く俺が食べることになったし」

飛鳥「あの量は流石にボクひとりじゃ到底かなわないさ」

P「初めから残りを俺に食べさせるつもりだったからあんな忠告したのか」

飛鳥「ふっ、想像に任せるよ」

店員「はーい、お皿さげるわねぇ。あとこれお茶のおかわりね」

七海「ありがとうございます~」

店員「お嬢ちゃんたち可愛いねぇ、どこから来たの?」

飛鳥「東京からです」

店員「あら、まさかお嬢ちゃんたち朝来てたテレビの人!?」

P「はい。あの、お店にご迷惑になるので、あまり大きな声では……」

店員「じゃあお嬢ちゃんアイドルなんだね! どうりで可愛いと思ったよ! あ、そうだサインお願いしてもいい? 色紙とマジック持ってくるから!」


P「このおばちゃんパワー……大衆食堂らしい接客……なのか?」

飛鳥「これもまたひとつの雰囲気として、そうとも云えるかもね」

………
……


七海「――ということがあったんれす。最後まで面白かったれすよ~」

葵「それで、サインは書いたん?」

七海「一緒に写真も撮って、お店に飾ってくれました~♪」

葵「魚料理は気になるけど、行ったら雰囲気に呑まれそうっちゃ……」

七海「あんなに元気なのは魚市場にある店舗だからで、他のところはもう少しゆったり入れるみたいれすよ~」

葵「そうなん? だったらうちも行きたいなー!」

七海「プロデューサーにお願いしてみましょ~♪」


飛鳥「なんて言ってるが、スケジュールはどうだい?」

P「仮に行けてもあのかき揚げをこの短いスパンで食べに行くのは勘弁願いたい」

飛鳥「そびえ立つかき揚げは、さながらバベルの塔か……」

シリーズ過去作

みく「炭火焼レストランさわやか?」
幸子「キャッツカフェ?」
ありす「喫茶マウンテン?」
みちる「コメダ珈琲店?」
翠「スガキヤ?」
茜「パスタ・デ・ココ?」
乃々「味仙?」

名古屋飯が続いたので静岡に戻りました。
ここまで読んでくださった方に、海鮮丼を。

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