黒奈「お命……頂戴する」 ガヴ「!!?」 (59)


-ガヴリール宅-


ガヴ「……」カタカタ


ガヴ「……」カチッ


ガヴ「……おっ、よっしゃ」


ガヴ「……」カタカタ


ガヴ「……」カタカタ





<ピンポーン



ガヴ「ん?」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1509101489



<………



ガヴ「……」





ガヴ「……」カタカタ


ガヴ「……」カタカタ





<ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポピンポピンポピンポピピピピピピピ


ガヴ「だぁあああああ!! うっさい!! 出る! 出るから待ってろ!」ガタンッ


<……



ガヴ「はぁ……」パタン




ガヴ「ったく、誰だよこんな(ネトゲに)忙しいときに……」ブツブツ


ガヴ「ヴィーネ……いや、サターニャか?」


ガヴ「どっちにしろ、ドア開けたら文句言って……」



ガチャッ







黒奈「……」ズォォオオオ

ガヴ「……」




ガヴ「……」



ガヴ(え、誰?)






黒奈「……」

ガヴ「……」

黒奈「……」

ガヴ「……あの」

黒奈「……」

ガヴ「どっかで会ったことあったっけ?」

黒奈「……」

ガヴ「えっと……」

黒奈「……」

ガヴ「……」



ガヴ(いや、何か言えよ!! 怖いんだけど!!)



ガヴ「……」

黒奈「……」



ガヴ(マジで誰なんだこいつ……黒いフードとか被ってて、見るからに不審者なんだけど)

ガヴ(なんかどす黒いオーラみたいなのも見えるし……)

ガヴ(まさか、通り魔とかじゃないだろうな)



黒奈「……」

ガヴ「……ん?」



ガヴ(……あれ? というかこいつもしかして……)



黒奈「あなたが……天真先輩?」

ガヴ「えっ?」

黒奈「……」ジッ

ガヴ「ああ、うん。天真は私だけど……」

黒奈「そう……」

ガヴ「……」





黒奈「それじゃあ……お命……頂戴する」ジャキンッ

ガヴ「なんで!!?」





黒奈「油断はしない……一撃で決める……」ゴゴゴゴゴ…

ガヴ「ちょっ、待て待て待て!! ストップ!! ストーップ!!」

黒奈「……なに?」

ガヴ「いや、『なに?』じゃないだろ! なにいきなり物騒なことしようとしてんだ!」

黒奈「ダメ?」

ガヴ「ダメだよ! むしろなんで良いと思ったんだよ!」

黒奈「……あ」



黒奈「お命……頂戴……します?」

ガヴ「いや、敬語の問題じゃなくて!」



黒奈「……」

ガヴ「とりあえずその槍しまえ! 危ないから!」

黒奈「……そうやって油断させたところで……私を倒すつもり……」

ガヴ「しないから! しないからさっさとしまえ!」

黒奈「……」



黒奈「……」スッ

ガヴ「はあ……何なんだよまったく」


黒奈「……」

ガヴ「……」

黒奈「……」

ガヴ「……えーっと……」

黒奈「……」

ガヴ「……とりあえず、ここで騒がれるのもあれだし、中に入れ」

黒奈「……お邪魔します」ペコリ





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





ガヴ「……それで、お前は誰なんだ?」

黒奈「……」

ガヴ「私はお前のこと知らないし、恨まれる覚えもないんだけど……」

黒奈「私は……舞天高校一年の黒奈……」

ガヴ「黒奈……ってうちの生徒だったのか」

黒奈「……」コクリ

ガヴ(確かによく見たらうちの制服を着てるな……)

ガヴ「で? なんであんな事しようとしたんだよ」

黒奈「千咲に……認めて貰うため……」

ガヴ「千咲? お前タプリスの知り合いなの?」

黒奈「……違う」

ガヴ「違うのかよ。じゃあなん……」

黒奈「……」ズイッ

ガヴ「でっ……!?」ビクッ





黒奈「千咲と私は友達……知り合いじゃない……間違えないで」ゴゴゴゴゴ…

ガヴ「ちょ、分かった! 分かったから落ち着け!」



黒奈「……そう。分かったならいい」

ガヴ「お、おう」

ガヴ(あーもー! なんだこいつ扱いずらい!)




黒奈「……」

ガヴ「……で、そのタプリスの友達が、私に何の用だ?」

黒奈「あなたを倒して……千咲に認めて貰う……」

ガヴ(話が全く見えん……)

ガヴ「なんで私を倒す事がタプリスに認めて貰うことになるんだよ」

黒奈「……そう……聞いたから」

ガヴ「聞いた? 誰に?」

黒奈「銀色の……親切な天使……」

ガヴ「銀……」



ガヴ(ってラフィエルかよ!!!)

黒奈「その人に……千咲に認めて貰いたいなら……天真先輩を倒せばいいって……」

ガヴ「待て」

黒奈「え?」


ガヴ「そいつの話は信じるな」

黒奈「……どうして?」

ガヴ「その天使の話は嘘だからだ」

黒奈「嘘……? でも……嘘を付いてるようには見えなかった……」

ガヴ「騙されるな。そいつは外面だけは良いが、他人を弄るのが大好きなとんでもない天使だぞ」

黒奈「……」

ガヴ「よく考えろ。タプリスの先輩である私と、よく知らない胡散臭い天使、どっちを信じる?」

黒奈「……でも……あなたは何だかボサボサで天使らしくないし……信用出来ない……」

ガヴ「うぐっ」

黒奈「部屋も汚れてるし……」チラッ

ガヴ「そ、それは今関係ないじゃん!」


黒奈「それに……あなただけじゃなくて……あの銀色の天使も……千咲の先輩なんじゃ……?」

ガヴ「ぐぬぬ……」



ガヴ(くっ……こいつ、サターニャよりは頭が良いみたいだな……)



黒奈「……そもそも……あなたは私が倒すべき敵……」ジャキンッ

ガヴ「いっ!?」ビクッ

黒奈「敵の言葉には……惑わされない」ゴゴゴゴゴ…

ガヴ「だから槍は危ないからやめろって!!」



ガヴ(くそっ、このままじゃ私の部屋がまた壊される! 何とかして話を逸らさないと……)



黒奈「……」ゴゴゴゴゴ…

ガヴ「そ、そもそも、なんでお前はタプリスに認めて貰いたいんだ?」

黒奈「……」

ガヴ「お前、悪魔だろ? 天使に認めて貰いたいなんて、よっぽどの理由があるんじゃ……」

黒奈「……知りたい?」

ガヴ「ああ。というか理由も分からずぶっ飛ばされてたまるか」

黒奈「分かった……少し長くなるけど……」









黒奈『……』テクテク


黒奈(1ヶ月と13日前の朝……私はいつものように……1人で通学路を歩いていた……)



ヒラッ…



黒奈『……』テクテク


黒奈(フードを被って少し俯き気味に歩いていた私は……ポケットから落ちたハンカチに……気づかなかった……)



黒奈『……』テクテク


『あ、あのっ』


黒奈(そのまま歩いて行こうとした私に……後ろから……声がかけられた)


黒奈『……』ピタッ


黒奈(誰かに話しかけられるなんて久しぶりだったから……びっくりしながら私は振り向いた……)


黒奈『……』クルッ


黒奈(するとそこには……)




タプリス『ハンカチ落としましたよ』


黒奈(私の黒いハンカチを拾って……控えめに差し出す1人の天使……千咲が居た……)



黒奈『……』

タプリス『ど、どうぞ』ギュッ


黒奈(千咲は驚きで固まる私の手のひらを……包み込むように優しくハンカチを手渡してくれた……)


黒奈『……』

タプリス『それではですっ』ペコリ



タタタ…



黒奈(私は千咲にお礼を言おうとしたけど……千咲は軽くお辞儀をすると……すぐに走り去って行ってしまった……)


黒奈『……』


黒奈(私は千咲が見えなくなると……手のひらの上のハンカチを……じっと見つめた)

黒奈(千咲が拾ってくれた黒いハンカチには……まだ千咲の温もりが残っている気がして……)







ガヴ「ストップ」

黒奈「……なに? ここから良い所なのに……」

ガヴ「この話あとどれくらいかかる?」

黒奈「これはまだプロローグ……これから第1章お礼とお昼ご飯編が始まる……」


黒奈「全部話すと……だいたい5時間くらいかかると思う……」

ガヴ「長すぎるだろ! 日が暮れるわ!」

黒奈「でも……私と千咲の全てを話すには……それでも全然足りない……」

ガヴ「いや、そんなに語らなくていいから。要点だけ簡潔に話せよ」

黒奈「……ぶー」プク

ガヴ「そんな顔してもダメだ」

黒奈「……」

ガヴ「私だって(ネトゲで)暇じゃないんだよ。何時間も付き合ってられるか」

黒奈「……仕方ない……断腸の思いで……要点だけ話す……」

ガヴ「はいはい。さっさとしろ」









黒奈『千咲の……先輩?』

タプリス『はい! 天真先輩と言って、私の憧れの先輩なんです』


黒奈(3日前のお昼休み……私は千咲の……天界時代の話を聞いていた)

黒奈(初めは天使学校の話とか家族の話をしていたけど……そのうち……千咲の先輩の話になった……)


タプリス『天使学校を首席で卒業するくらい優秀な天使で、それにすごく優しいんです! 天真先輩は天界に居た頃、雨の日に傘を忘れた私を傘に入れてくれた事があって……』

黒奈『……』


黒奈(「天真先輩」との思い出を話す千咲の表情は……今までで一番明るくて……楽しそうだった……)

黒奈(普段の私には絶対に見せない顔……そう思うと少しだけ……胸が苦しくなった)


タプリス『……ただ、最近の天真先輩は悪魔に誑かされたせいで、駄天してしまっているんです。引きこもりのような生活を送っていて、以前の素敵な姿は見る影もありません』

黒奈『……』


黒奈(千咲はそう言うと……視線を足元に落として……寂しげな顔をした……)


タプリス『……あ、でも! 私が天真先輩のお部屋でうっかり寝てしまったとき、先輩は私に布団を掛けてくれたんです! そういう優しい所はやっぱり昔と変わっていなくて、だからいつか、元の天真先輩に……』

黒奈『……』


黒奈(それからも……コロコロと表情を変えて「天真先輩」の話をする千咲を眺めながら……チャイムが鳴るまで……私はお弁当を食べていた……)


黒奈『……』


黒奈(いつもは美味しいはずのお弁当も……その日だけは……味が全く分からなかった……)












ガヴ「……」

黒奈「私は……千咲のあんな楽しそうな顔も……悲しそうな顔も……見たことがなかった……」

黒奈「千咲にそんな顔をさせるあなたが……私は羨ましくて……許せなかった」

黒奈「だから私は……あなたに勝って……私なら千咲をもっと……ずっと笑顔にさせられるって……そう認めて貰いたかった……」

ガヴ「……そうか」

黒奈「千咲を……あんなに良い子を悲しませるなんて……あなたは駄目な先輩……あなたに千咲は任せられない……」

ガヴ「いや、別に任せられた覚えはないんだけど……」

黒奈「つべこべ言わない……」グサッ

ガヴ「うおっ!」ビクッ



黒奈「……」

ガヴ「お前なー……槍は危ないからやめろって何回言えば分かるんだよ」

黒奈「……」

ガヴ「大体、私を力づくで倒した所でタプリスが喜ぶとは限らんぞ」

黒奈「分かってる……本当は言葉で……あなたを……説得するべきだって」グサ

ガヴ「だったら……」

黒奈「でも……私は喋るのが得意じゃないから……だから……行動で示すしか……」グサグサ

ガヴ「……」



黒奈「私があなたを倒して……千咲に認めて貰うしかない……」グサグサグサ

ガヴ「あの、分かったから話しながら床に槍刺すの止めてくれない?」


黒奈「……」

ガヴ「このままだと私の部屋が穴だらけになるんだけど」

黒奈「……じゃあ……勝負してくれる……?」

ガヴ「いや、だからそれは……」

黒奈「……」ジーッ

ガヴ「……」



ガヴ(……どうする? このまま追い返すのは……流石にマズいだろうな。なんか色々勘違いしてるし)

ガヴ(でも、かと言って馬鹿正直に相手したら私の部屋が消滅する……)

ガヴ(あー、くそ……めんどくせぇ。何だって私がこんなこと……)



黒奈「……」ジィィィッ…

ガヴ「……」ダラダラ



ガヴ(あー、やばい……めっちゃこっち見てる……)

ガヴ(何か……何かないか? こいつが納得するような方法は……)



ガヴ「……あ」

黒奈「……?」



ガヴ(そうだ。これなら……)



ガヴ「なあ黒奈」

黒奈「……何?」

ガヴ「私を倒すって、要は私と勝負出来れば良いんだよな?」

黒奈「……」コクリ

ガヴ「そうか。それなら……」

黒奈「……何か考えがあるの?」

ガヴ「ああ」





ガヴ「私に良い考えがある」ニヤリ




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



-ガヴリールの家の前-



タプリス「……」



タプリス(白羽先輩に言われて来たは良いものの……天真先輩の家に一体何があるんでしょう?)


タプリス(確か白羽先輩は「面白いものが見れる」と言っていましたが……)



『……!』

『……』



タプリス「……あれ? 中から話し声が……誰か居るんでしょうか」



『……』

『……』



タプリス「……って、この声はまさか!?」ガチャッ







ガヴ「くっ、お前中々やるじゃないか……」カチャカチャ

黒奈「当然……私は人形遣い……『操作』はお手の物……」カチャカチャ

ガヴ「何だよ人形遣いって……」カチャカチャ



タプリス「黒奈さん!! なんで天真先輩の家に居るんですか!?」バンッ



ガヴ「って、うわっ!? タプリス!?」ビクッ

黒奈「……スキあり」ガガガッ

ガヴ「ちょっ、待っ!」\ドゴォォオオオン/





TV『ゲームセット!』



ガヴ「……」

黒奈「……ぶい」ピッ

タプリス「……え? 格闘ゲーム?」



黒奈「……」

タプリス「えっと、何故お2人はゲームを……」

ガヴ「タ~プ~リ~ス~……」ギロッ

タプリス「ひっ!?」



ガヴ「真剣勝負に水を差すとはいい度胸だなぁ……?」ゴゴゴゴゴ…

タプリス「あ、あわわわわ……何かは知りませんが申し訳ありませ……!」ガタガタ

黒奈「……」シュバッ

ガヴ「むっ」

タプリス「え、く、黒奈さん!?」



黒奈「私は勝った……約束通り……千咲にはもう近付かないで……」

ガヴ「いや、流石に今のはノーカンだろ! あそこでタプリスが来てなければ私が勝ってたし!」

黒奈「往生際の悪い……運も実力の内……潔く負けを認めるべき……」

タプリス「約束? あの、それってどういう……」

ガヴ「そんなの認められるか! 格闘ゲームは自力で勝ってこそだろ!」

黒奈「何を言おうと……千咲が私に勝利を運んで来てくれた……その事実は変わらない」

タプリス「あ、あの。お2人とも、これは何の……」

ガヴ「じゃあ3回勝負だ! 3回勝負! それで決着を付けるぞ!」

黒奈「意地汚い……あなた本当に千咲の先輩なの……?」

ガヴ「うっさい! このまま引き下がれるか!」

タプリス「あの、説明を……」


黒奈「何回やろうと結果は同じ……素直に諦めるべき」

ガヴ「マグレ勝ちがそう何度も続くと思うなよ!」



ガヴ&黒奈「ギャーギャー」



タプリス「……」






タプリス「……い」プルプル







タプリス「いい加減にしてくださーーーーい!!!」ドカァァアアアン





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





ガヴ「……」

黒奈「……」

タプリス「……なるほど。話は分かりました」

ガヴ「……」

黒奈「……」

タプリス「黒奈さんがここに来ていた理由も、お2人が勝負していた理由も」

ガヴ「……」

黒奈「……」

タプリス「その上で、お2人に言いたいことがあります」





タプリス「バカなんですか!!?」ダァンッ

ガヴ&黒奈「」ビクッ





タプリス「まず黒奈さん!」

黒奈「……はい」

タプリス「あなたは1人で色々と突っ走り過ぎです! 何ですか私の為に天真先輩を倒すって! 何をどうしたらそんな話になるんですか!」

黒奈「わ……私は……千咲の笑顔が見たくて……」

タプリス「言い訳無用です! 私が一度でもこんなことして欲しいと言いましたか!?」

黒奈「……」

タプリス「大体あなたは初めて会った時から紛らわしい行動ばかりして……!」ガミガミ

黒奈「……っ」プルプル

ガヴ「お、おいタプリス。もうその辺に……」

タプリス「天真先輩もです!!」ダンッ

ガヴ「」ビクッ



タプリス「なんで勝負を受けちゃったんですか!? しかも負けたら私に近付かないって……もっと後先をよく考えてください!」

ガヴ「いや、でも、そうでもしないと納得しそうになかったから……」

タプリス「だとしても! せめて私を呼んでからにしてください!」

ガヴ「……」

タプリス「大体、知らない悪魔を家に上げるなんて無用心にも程があります! いいですか? そもそも天真先輩は悪魔に誑かされたから……!」ガミガミ

ガヴ&黒奈「……」















タプリス「はぁ……はぁ……お2人とも、反省しましたか?」



黒奈「……ハイ……ゴメンナサイ」グッタリ

ガヴ「ハンセイシマシタ……」グッタリ



タプリス「まったく……もうこんなことはしないでくださいね!」

ガヴ&黒奈「ハイ……」

タプリス「本当にもう……!」プンスカ

黒奈「……」





黒奈「……千咲」

タプリス「何ですか黒奈さん」

黒奈「私じゃ……ダメ?」

タプリス「え?」

黒奈「私じゃ……天真先輩の代わりには……なれない……?」

タプリス「……はあ」





タプリス「あのですね……そんなの当たり前じゃないですか」

黒奈「……っ」グサッ




タプリス「黒奈さんは悪魔です。悪魔なんかが天使の代わりになれるはずありませんし、黒奈さんは黒奈さんでしかありませんよ」

黒奈「……」

タプリス「それに、天真先輩は優秀で、優しくて、とても素敵な天使なんです! そんな先輩の代わりになれる人なんて、悪魔はおろか天使ですら存在しません!」フンス

黒奈「……」

タプリス「……そもそも! あなたと天真先輩では一緒に過ごしてきた時間も全然違います!」

黒奈「……」ピクッ



タプリス「片や天使学校の頃からの先輩、片やこの前知り合ったばかりの友達ですよ? そんなの、比ぶべくもないじゃないですか」

黒奈「……」

タプリス「だいたい私はまだあなたのことをよく知りませんし、今回のように思い込みで暴走する前にもっとお互いのことを……いえ、悪魔と馴れ合うつもりはありませんが……」

黒奈「それなら……もっと……」

タプリス「それでも……え?」

黒奈「もっと……いっぱい時間をかければ……天真先輩と同じくらい……ううん……それ以上に……千咲と仲良く……なれる?」

タプリス「……それは」



黒奈「……」

タプリス「……」

黒奈「……千咲?」

タプリス「えっと、その……」

黒奈「……」ジーッ

タプリス「……」



タプリス「……な」



タプリス「なれませんよ! 私は、悪魔とは必要以上に仲良くする気はありません!」

黒奈「……」



タプリス「悪魔は天使の倒すべき敵です! それだけは、いくら時間をかけようとも変わりません!」

黒奈「……そう」シュン

タプリス「……」

黒奈「……」





タプリス「……と、言いたいところですが!」

黒奈「え?」




タプリス「あいにくと、私には未来は分かりません!」

黒奈「……」

タプリス「ですから、未来のことはそのときになるまで、何も確かな事は言えないんです!」

黒奈「……つまり?」

タプリス「……つ、つまり! えっと、だからその……」

黒奈「……」



タプリス「可能性は……0%じゃないということです。あなたの言ってることは」

黒奈「……!」




タプリス「た、ただし! 言っておきますが限りなく0%に近いですからね! 普通に考えたらありえないんですから!」

黒奈「千咲……」

タプリス「私が言っているのは、万が一ということです! ……いえ、万ではありません! 億が一、兆が一です!」

黒奈「……」

タプリス「ほんとに、本当~~~にちょっとだけの確率なんです! ほとんど0なんですからね!」

黒奈「……ふふっ」

タプリス「なっ、何を笑ってるんですか!」

黒奈「いい……今は……それで十分」

タプリス「え?」

黒奈「0じゃないなら……望みがある……」

タプリス「……」


黒奈「今はダメでも……いつか……きっと……」

タプリス「……ありえませんよ。そんなの」

黒奈「ううん……ありえる……絶対はないから……」

タプリス「……」

黒奈「だから……これからも……よろしくね? 千咲」

タプリス「っ……勝手にしてください! もう知りません!」プイッ

黒奈「……うん……頑張る」

タプリス「……」カァァ

黒奈「……」








ガヴ「あのー……」



タプリス「はっ! て、天真先輩!?」

黒奈「む……」


ガヴ「えっと、話終わった?」

タプリス「は、はい! 終わりました!」

ガヴ「そ。ならいいけど」

黒奈「終わってない……千咲との話は……まだこれから……」

タプリス「ダメです! 今は天真先輩が優先です!」

黒奈「……」ムスッ

タプリス「な、なんですかその顔は!」

ガヴ「あー仲良いのはいいんだけどさ、そういうのは出来れば余所でやって……」

タプリス「ち、違います! 仲良くなんてありません!!」

黒奈「違わない……私と千咲は……仲良し……」

ガヴ「はいはい」



ガヴ「とりあえず、ほれ」ポイッ

タプリス「わっ!?」ビクッ

黒奈「……」パシッ

タプリス「っとと……コントローラー?」パシッ

ガヴ「うむ」

黒奈「……なに……まだやる気?」

ガヴ「あー違う違う。もう『勝負』は関係ないから」

ガヴ「普通にプレイしよう。3人で」

タプリス「え?」

黒奈「……」


ガヴ「これ4人までプレイ出来るし、タプリスも居るから丁度いいだろ?」

タプリス「えっと、それは構いませんが……私、こういうゲームはやったことがなくて……」

ガヴ「大丈夫大丈夫。やり方なんてやってる内に覚えるでしょ」

タプリス「そうでしょうか……?」



ガヴ「まーどうしても不安なら、黒奈にやり方を教えてもらいなよ」

タプリス「えっ?」

ガヴ「こいつ結構上手いし」

黒奈「……」

タプリス「……えーっと」チラッ

黒奈「……千咲」

タプリス「な、何ですか?」ビクッ


黒奈「……かもん」スッ

タプリス「なんで両腕を広げてるんですか!?」

ガヴ「じゃあ私はネトゲしてるから、覚え終わったら呼んでくれ」スチャッ

タプリス「あっ、て、天真先輩!?」



ガヴ「……」カタカタ

タプリス「せ、先輩……」

黒奈「安心して……優しく教えてあげるから……」

タプリス「うっ……結構です! この程度、悪魔の手を借りるまでもありません!」


黒奈「……本当?」

タプリス「はい! ほら、このスティックを倒せば右に……あ、あれ? なんで左に……」カチャカチャ

黒奈「それ……持ち方逆……」

タプリス「あっ」

黒奈「……」

タプリス「……だ、大丈夫です。まだ持ち方を間違えたくらいで、これくらい……」

黒奈「……」

タプリス「ジャンプはこれでしょうか? ……あれ? 変な構えをして……」ポチポチ

黒奈「それはガード……ジャンプは……ここ」

タプリス「え? あ、なるほど……」ポチ

黒奈「……」

タプリス「……」



黒奈「……千咲」

タプリス「……な、何ですか?」

黒奈「私に教わるのは……嫌?」

タプリス「うっ……」

黒奈「……」

タプリス「い、嫌という訳ではありませんが……その」

黒奈「……その?」

タプリス「天使が悪魔に借りを作るのは……」

黒奈「気にしないでいい……千咲と私は……友達だから……」

タプリス「……」


黒奈「私は千咲に教えてあげたい……それじゃ……ダメ?」

タプリス「……えっと」

黒奈「……」

タプリス「……」



タプリス「……し、仕方ないですね! 今回だけは、あなたの力を借りてあげます!」

黒奈「!」




タプリス「その代わり、ちゃんと教えてください! 悪魔だからって手を抜いたら許しませんよ!」

黒奈「うん……任せて」

タプリス「そ、それで! 攻撃するときはどのボタンを押せばいいんですか?」

黒奈「弱攻撃はここ……強攻撃はこれ……あと空中攻撃したいときは……」

タプリス「じゃ、弱攻撃、強……? あの、もう少し分かりやすく……」

黒奈「ごめん……急ぎすぎた……」

タプリス「い、いえ。大丈夫です!」


黒奈「まずは……弱攻撃から教える……ここのボタンを押して」

タプリス「はい。弱攻撃ですね……出来ました!」ポチ

黒奈「うん……これは威力が低いけど……隙の小さい技で……」




ワイワイ……









ガヴ「……」



ガヴ「……はあ」



ガヴ「私はキューピッドじゃなくて、エンジェルなんだけどな」



-おしまい-

黒奈と2年組の絡みを見たいなーと思う今日この頃。

HTML化依頼出してきます。

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