【ハピネスチャージ】めぐみ「クイーンラブリー?」【プリキュア】 (17)

ハピネスチャージプリキュアの二次創作です。

・悪堕ち要素あり
・誠めぐ、誠ひめ要素あり。

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プロローグ:キュアラブリー

ぴかりが丘にそびえる一本の煙突、その頂上にキュアラブリーは立ち尽くしていた。
街の景色が一望出来る、この場所が好きだった。
 
夕暮れに染まる街並み、その真ん中に流れる河川は陽の光を浴びて、キラキラと輝いている。
プリキュアにならなければ、見る事の出来なかった景色だ。
 

 「あれは……」
プリキュアとなって強化された視力が帰宅途中の学生達を捉える。ラブリーが助けた事のあるぴかりが丘学園の同級生だ。
 
黒髪を三つに編み込んだ少女が繁華街を歩いている。
彼女はぴかりが丘学園の生徒会長だ。成績も優秀で、将来の夢は弁護士だとか。
河川敷には少し背の高い少女がいた。バレー部のエースでありながら、キャプテンも兼任している彼女はメンバーからの人望も厚い。
 

学園内では多用な個性を持つ彼等だって、こうしてみれば一介の学生に過ぎない。
ラブリー自身もそうだ。地球を救ったプリキュアとて、変身を解けば民衆に紛れてしまう。
 


「うぅっ……誠司ぃ……」
惨めさに耐え兼ねて、凍える様にしゃがみ込む。
助けを求めて開いた口からは、自然と幼馴染の名前がこぼれた。


ラブリーは多くの人を救ってきた。強者は弱者を助けなければならないと思った。
それこそが力を持った者の責任だと思い、事実として、今日までキュアラブリーは強者で有り続けてきた。
 
 
「でも本当の私は……強くなんか無かった……」
ラブリーの瞳には暗い感情が浮かんでいる
愛乃めぐみは勉強が出来ない。努力しても平均点が良いところだ。
愛乃めぐみが運動も出来ない。運動神経は悪くないと自負しているが、決して良い方ではない。
 
何もかもが中途半端だ。
少なくとも自分が一角の人物になれる様な器でないことは確かだった。
 

それが愛乃めぐみの現実だ。
愛乃めぐみは弱者だった。

「うっ……うぅっ……!」
夕陽は沈みかけ、空には既に幾つかの星が瞬きはじめている。
感情の逃げ道を探すかのように、ラブリーの瞳からはとめどなく涙があふれた。


1人になりたかった。
涙を堪えたくなかった。
 
今の現実が理不尽なのではない。
プリキュアとしての日々こそが分不相応だったのだ。
 
今こそ幼稚なメサイアコンプレックスから目覚めなくてはならない。
〈キュアラブリー〉は確かに救世の英雄たる人物だったが、〈愛乃めぐみ〉は違う。
 
 
〈キュアラブリー〉は〈愛乃めぐみ〉を包括していたが、逆はない。
ラブリーは、変身を解いては空も飛べないし、巨悪とも戦う事は出来ない。
 
〈愛乃めぐみ〉はただの女子中学生に過ぎなかった。
 

一章:愛乃めぐみ①
 
ぴかりが丘の中心部に位置する住宅街。そこから少し南に位置する繁華街。
その境目にブルースカイ王国の大使館はあった。
 
「はぁ~……この間期末テストが終わったばっかだっていうのに、今度は進級テストなんてちっともハピネスじゃないよー!」
「ほら、めぐみっ!そんな事言ったって問題は解けないぜ。」
一向に進まないペンに口から溢れるのは愚痴ばかりだ。

誠司の喝を受け、渋々と目の前の問題集に手を伸ばす。
しかしどこまでページをめくっても、続くのは白紙ばかり。
めぐみはこれでもか、というくらいに深いため息をつくのだった。

テーブルを囲むのはめぐみ、ひめ、誠司の3人。
今日は春休み初日。
この勉強会は誠司とひめが、めぐみのためにと提案したものだった。

「めぐみ、ここはこの数字を代入してだな……」

そう言ってめぐみをサポートする誠司。
最近のめぐみを殊更に心配してくれていたのは誠司だ。

神をも相手取った戦い。
プリキュアとしての最後の戦いが終わってから、めぐみはどこか呆けていた。
 平和が1番というのは確かだが、刺激の無い日常に退屈していたのも事実だ。

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