タコ「料理勝負をしないか?」 タイ「受けて立つ!」 (21)


??「おい、あんたはこのあたりの海を縄張りにしてるタイじゃないか?」ニュル…

タイ「その通りだが、お前は? ずいぶん赤いが、もしかしてタコか?」

??「ふん……大した洞察力だな」ニュルニュル

タイ「タコがこの私になんの用だ?」

タコ「オレはあんたと勝負がしたい」ニュルルッ

タイ「勝負?」


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タイ「勝負の種目は?」

タコ「ずばり……料理勝負!」

タコ「ある人間一人に試食させ、審査させて、勝敗を決めるんだ」

タコ「そして、もちろん……負けた方は勝った方の手下になる!」

タコ「オレもそれなりに海じゃ名を知られた存在だし、あんたにとっても得な話のはずだ」

タイ「……面白い」


タコ「ちなみにあんたの得意料理はタイ焼きだったな?」

タイ「ああ、私のタイ焼きは尻尾にはアンコを入れないスタイルだ」

タイ「そういうお前は?」

タコ「オレはもちろん、自分を材料にするスタイルさ」ニュルニュル

タイ「なるほど、タイ焼きVSタコ焼き、というわけか」

タイ「いいだろう、受けて立つ!」

タイ「ところでどうでもいいが、なんで陸にいるんだ?」

タコ「今は水浴びしたくない気分でね」

タイ「そうか、最近は涼しくなってきたしな」


タイ「しかし、今のままの条件じゃ納得できない」

タイ「種目はそちらが選んだんだから、こちらにも何かアドバンテージが欲しい」

タコ「当然の主張だな」

タイ「ならば、私にはどういう条件をくれる?」

タコ「だったら……向こうに三人の人間がいる」

タコ「そのうちのどいつに試食させるか、あんたが選んでいいぞ」

タイ「分かった、その条件で受けよう」


タイ「あなたたちに質問をしたい」

タイ「タコと甘い物、それぞれ好きか嫌いかを答えて欲しい」



人間A「タコは大嫌いだし、甘い物も嫌いだ」

人間B「タコは好きだし、甘い物も好きだよ」

人間C「タコは大好物だが、甘い物も好きだな」



タイ「……なるほど」

タイ(ちなみにタコと甘い物以外の食物は特に好きでも嫌いでもないらしい)

タイ(一人ずつ、分析していくとするか)


タイ(まず、Aを選んだ場合――)

タイ(甘い物が嫌い、つまりタイ焼きは嫌いだが、タコは大嫌いなので、私が勝つ可能性が高い)

タイ(Bにした場合――)

タイ(タコもタイ焼きも好きなわけだから、勝敗の読めない五分五分の勝負になる)

タイ(Cに試食させた場合――)

タイ(甘い物が好きだが、タコは大好物なわけだから、私の敗北が濃厚だ)

タイ(まとめるとこうなる)



  タコ タイ 

A ×  △  → タイ焼きの勝ち

B ◎  ◎  → 五分五分

C ☆  ◎  → タコ焼きの勝ち

大好き:☆ 好き:◎ 嫌い:△ 大嫌い:×



タイ(よし……決まった)


タイ「人間Aに審査をやってもらおう!」

タコ「……いいだろう」

タイ「それでは、審査をお願いする」



人間A「分かった、任せてくれ。自分の舌に忠実に判定するよ」



タイ「それでは――」

タコ「クッキングスタート!」


タイ「ゆくぞ!」

タイ「はああああああああ……!」ジュゥゥゥゥ…

タイ「アンコを詰める!」シュババババッ

人間B「速い! みるみるうちにタイ焼きが出来上がっていく!」



タコ「なんの!」

タコ「中身詰めて……」シュバババババッ

タコ「どおりゃああああっ!」クルクルクルッ

人間C「こっちも凄いぞ! 十個同時に作ってやがる!」


タイ「完成だっ!」

タコ「こっちも出来たっ!」





人間A「それじゃ、試食させてもらおうか」


<先攻>

タイ「まず、私のタイ焼きを食べてみてくれ」

人間A「う~ん……」モグモグ…



<後攻>

タコ「今度はオレのを……」

人間A「う~む……」モグモグ…



タイ(どっちの料理も反応はイマイチ……ま、当然か)

タイ(だが、“嫌い”と“大嫌い”の差で、私の勝利は確実だ!)



人間A「じゃあ結果発表するよ」

人間A「二つの料理のうち、おいしかったのは――」


人間A「後攻!!!」サッ





タコ「やった!」ニュルルッ



タイ「は……!?」

タイ(え……? え……? えぇ……!? ええぇぇぇ……!?)

タイ(な、なんで!? なんでだぁっ……!?)

ぐにゃぁ~~~…!


タイ「ちょ、ちょっと待て!」

人間A「なに?」

タイ「なぜだ? あんたはタコが大嫌いじゃなかったのか!?」

人間A「ああ、大嫌いだよ。タコなんか食わされたら、無条件でそっちを負けにしてたよ」

タイ「ならどうして、私が負けなければならない!?」

人間A「だって……俺、イカは好きでも嫌いでもないから」

タイ「……へ?」


タイ(ま、まさか……まさか……!?)



タイ『その通りだが、お前は? ずいぶん赤いが、もしかしてタコか?』

タコ『今は水浴びしたくない気分でね』

人間C『こっちも凄いぞ! 十個同時に作ってやがる!』



タイ(ずっと陸にいたのは、自分に塗った“色”が剥がれないためだとしたら……ッ!)

タイ(タコ焼きを十個同時に作れたのは、十本の腕のおかげだとしたら……ッ!)

タイ(そういえば、ヤツは一度も自分をタコだと名乗ってない……ッ!)

タイ「タコッ! お前の正体は……ッ!」



イカ「そう、オレはイカだったのさ」ニュルニュル



タイ「なんだってえええええっ……!!!」


タイ「こんな……こんな馬鹿な……ッ!」

イカ「オレがイカというのを踏まえて、改めて三人の情報をまとめるとこうなる」

イカ「Aが審査員だと、イカは好きでも嫌いでもなく、甘い物は嫌いだから、オレが勝つ」

イカ「Bを選んでいたら、イカは好きでも嫌いでもなく、甘い物が好きなわけだから、あんたが勝つ」

イカ「Cを選んでいても、同じくあんたが勝っていた」



  タコ タイ イカ

A ×  △  ○  → タコ焼き(中身イカ)の勝ち

B ◎  ◎  ○  → タイ焼きの勝ち

C ☆  ◎  ○  → タイ焼きの勝ち

大好き:☆ 好き:◎ 普通:○ 嫌い:△ 大嫌い:×



タイ「BかCを選んでいれば、私は勝てたのかっ……!」

イカ「オレはもちろん、事前にあの三人の好みを把握してたが、この勝負はあんたに有利だった」

イカ「だが、あんたは確実に勝てる勝負をしようとしたばっかりに」

イカ「2/3の確率で勝てた勝負で、1/3のハズレを引いてしまったってわけだ」

タイ「ぐっ……ぐぐぐっ……!」

イカ「この勝負……オレの思惑通りオレをタコだと思い込んだ、あんたの負けだ!」

タイ「あああ……あああああああっ……!!!」

イカ「約束通り、今日からはオレの手下になってもらうぜ」ニュルルッ

タイ「はい……」


……

……

ヒラメ「よぉ~、タイ」スイスイ

タイ「ん?」

ヒラメ「お前、料理勝負に負けて、そいつの手下になっちまったんだってな?」

タイ「ああ……完敗だったよ」

ヒラメ「お前を負かすなんて……いったいどんな奴に負けたんだ?」

タイ「イカ様にやられたのさ……」








― 終 ―

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