【艦これ】雪風「あっ!山城さんが花瓶の掃除を!」 (57)




パリンッ!


山城「あ……あぁ……!」

山城「ど、どうしましょう!」

山城「提督の大切にしている花瓶が……」



ドキドキドキ……


雪風(ど、どうしましょう……)

雪風(雪風、山城さんが花瓶を落としちゃったところ……)

雪風(ぜんぶ見てしまいました!)





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山城「また、とんでもないミスを犯してしまったわ……」

山城「これが知られたら私、今度こそ解体(クビ)かも……」

雪風「!」

山城「うぅ……姉様、私はいったいどうすれば……」

雪風「……」



キョロキョロ


雪風(い、今お部屋の近くにいるのは……どうやら雪風だけのようです!)

雪風(そして、しれぇは用事でしばらく帰ってきません……!)

雪風(こうなったら……み、見なかったことに……!)


タッタッタッ……!


……
…………
………………






コソコソ……


龍驤(右……左……)

龍驤(よし、誰もおれへんね!)


龍驤(この角を曲がれば、もうウチの部屋や……)

龍驤(あとは、買うてきた“コレ”を胸に!)

龍驤(たった1カップ……たったの1カップしか上がらへん……)

龍驤(誰にもきっとバレへん……はずや!)


ドッシ~ン!


雪風「きゃっ!」

龍驤「あいたぁ~っ!」






雪風「いたたぁ……」

龍驤「あわわ!か、かんにんや!」

龍驤「大丈夫か……ってあちゃ~、ひざ小僧すりむいてるやん!」

龍驤「一緒に医務室いこか、なっ?」

雪風「い、いえっ!こちらこそ、ごめんなさ……はっ!」


雪風「ゆ……雪風は何も見ていません!」

龍驤「!?」

雪風「何も見ていませんからっ!」






龍驤(な、なんやのこの子……)

龍驤(も、もしかして!“コレ”のことがもうバレたんか!?)


龍驤「ち……違うんや雪風!この箱の中はただのフツーの下着なんや!」

龍驤「べべべ、別にやましいことなんて、ななななんもあらへ……」

雪風「執務室では、何も起きていませんからっ!」

龍驤「……へっ?」






雪風「ほ、本当ですから!」

雪風「で、ではっ、失礼します!」

龍驤「あ……ちょ、雪風!?」


タッタッタッ……


龍驤「あらら、行ってしもた……」



……
…………
………………





雪風「はぁ……はぁ……!」

雪風(雪風はとうとう、嘘をついてしまいました……)


雪風(で……でも、これは山城さんのためなんです!)

雪風(誰にも知られないまま、山城さんが割れた花瓶をどこかに隠せば……)

雪風(しれぇもきっと分かりません!)

雪風(そうすれば、山城さんは解体されずに済みます!)






雪風(それに……しれぇにバレなくても、あれを見ていたことを知られたら)

雪風(きっと山城さんは、雪風のことを嫌いになってしまいます……)


雪風(そう……これで、いいんですっ)

雪風(これで……)

雪風「……」



……
…………
………………





ドーン……!


大鳳「ひっ……!」

大鳳「……え、演習の音、びっくりした……」

大鳳「……」



大鳳(……だめ)

大鳳(震えが、おさまらない)






大鳳(先の作戦で、艤装の燃料用ガソリンタンクが破損……)

大鳳(あわや大惨事になりかけてもう一か月以上になる)


大鳳(あの事故は私の練度不足に起因するものであって)

大鳳(艤装のタンクの改良も、すでに提督が手配してくださった)

大鳳(なのに……この大鳳は……)

大鳳(こうして体調不良を取り繕って、ずっと医務室のベッドにいる)






大鳳(どうして、身体が言うことをきかないのかしら……)

大鳳(私には大きな期待が寄せられている……一刻も早く、艦隊のお役に……)


ガチャッ


大鳳「あ……」

雪風「あっ……!」






大鳳「こ、こんにちは、雪風さん」

雪風「こ、こんにちはっ」

大鳳「どうしたの?医務室に用事?」

雪風「い、いえ……執務室では、何も起こってなんか!」

大鳳「執務室?医務室よ、医務室」

雪風「うっ……」


大鳳「軍医さんは今、席を外して……あっ!」

大鳳「ちょっと、膝すりむいてるじゃない……」

雪風「うぅ……」

大鳳「……私が、処置してあげる」

雪風「あぅ、雪風はべつに一人でも……」

大鳳「いいの、消毒液とガーゼ探しておくから膝を洗っていらっしゃい、ね?」

雪風「す……すみません……」





大鳳「少し染みるわ、我慢して……」

雪風「ひゃっ……!」

大鳳「ふふ、これに懲りたら……今度から怪我には気を付けてね」

雪風「怪我……怪我……そうでした!」

雪風「大鳳さん、お怪我はその……大丈夫だったんですか?」

大鳳「……!」


大鳳「え、えぇ……大丈夫」

大鳳「被雷の外傷も、思ってたほどなかったから……」

雪風「そうだったんですか!よかったぁ……!」

大鳳「……」






大鳳「でも」

雪風「?」

大鳳「どうしてなのかしら……こう」

大鳳「胸の中が締め付けられるような、そんな状態がなぜかずっと続いてて」

雪風「!」


大鳳「も、もちろん!出撃とあれば、いつでも出られるつもりなの」

大鳳「み、みんなは、私のことを数少ない装甲空母だって期待してくれているし、でも、その……」

雪風「じ、実は……雪風もそうなんです」

大鳳「え?」






雪風「し、執務室では、なにもなかったんです!本当ですよ!」

雪風「だから、し、執務室にはいかないほうがいいです……本当です!」

大鳳(それは何も聞いていないわ……)


雪風「でも、さっきからなんだかずっと、胸がくるしくて」

雪風「こんな気持ちになったのは……はじめてで、その」

大鳳「……」


大鳳「そういう、ことだったのね」

雪風「!」

大鳳「私、分かってしまったわ」

雪風「えっ!」

大鳳「そんな顔しないで、執務室では何も起こっていないのよね?」

雪風「は……はいっ、本当ですっ」






大鳳「……私が言いたいのはそういうことじゃなく」

大鳳「こういうことって、誰にでもあるんだなぁって……」

雪風「?」


大鳳「はい、これでいいわ」

雪風「あ……」

雪風「大鳳さん、本当にありがとうございますっ!」

雪風「このおれいは、いつか!」

大鳳「いいの、あなたが元気そうならそれで」







雪風「……大鳳さんも!」

大鳳「?」


雪風「雪風も皆さんも、大鳳さんがげんきな姿で顔を出してくれるの……楽しみにしてますから!」

大鳳「!」

雪風「それではっ」


ガチャンッ


大鳳「……」






大鳳「今の言葉は、本当……」

大鳳「ふふ、正直な子」

大鳳「嘘か本当か顔を見ただけで分かっちゃうもの」


大鳳「……そうよ、私も」

大鳳「きっと……自分に嘘を……」


大鳳「……」

大鳳「……あ……あっ……」


大鳳「……かった……怖かったぁ……っ!」

大鳳「あぁぁぁぁ……!」



……
…………
………………





雪風「ほ、本当ですから!」

雪風「本当に、執務室ではなにも!」

時津風「分かってる分かってる~」

時津風「そんなことより、本当にお腹空いてないの?」

時津風「雪風の分の昼食まで食べていいだなんて!」

雪風「はい……雪風は今、食欲がぜんぜんないんです……」

時津風「?」


時津風「まぁいっか、こんど何かでお返しするねー!」

時津風「はむっ、もぐもぐ……」

時津風「うぅん!海軍カレーは最高!おいしいおいしい♪」

雪風「……うぅ」


……
…………
………………






雪風「……」

雪風「鎮守府の中にいたら、いつか誰かに本当のことを話してしまいそうです……」

雪風「しばらくこうして、外で気持ちを落ち着かせましょう……」


「あら……」

「こんなところで、何しているんですか?」

雪風「ひゃっ……!?」







間宮「玄関先で浮かない顔して……」

間宮「うふふ……もしかして、何か悪い事でもしたんですか?」

雪風「間宮さん……い、いえ!」

雪風「や、山城さんは花瓶なんて、わ、割ってません!本当です!」

間宮(あらら……そっちのパターンだったの……)


間宮「……外はもう寒くなってきましたし、ここにいると風邪を引いちゃいますよ?」

間宮「よかったら、私のお店にいらっしゃいな」

雪風「……で、でも……雪風は今お金をもっていません……」

間宮「いいんですよ、今日は特別ですっ」

間宮「ほらほら♪」

雪風「……」



……
…………
………………





ワイワイ……ガヤガヤ……


間宮「ここは鎮守府の見学区画にある、一般の方向けのお店」

間宮「他の艦娘はほとんど来ることがありませんから、ゆっくりくつろいでくださいね」

雪風「は、はいっ……ありがとうございます……」


ズズッ……


雪風「……はぁ~」

雪風「間宮さんのホットココア、とっても美味しいです!」

間宮「うふふ、よかった!」







間宮「……本当は、もう少し凝ったものを出してあげたかったんだけど……」

間宮「さっき烹炊所から戻ってきたら、今日は予想以上の客入りがあったみたいで」

間宮「材料がほとんど残ってなくて……任せてた伊良子ちゃんにも、悪い事しちゃった」

間宮「雪風ちゃん、ごめんなさいね」

雪風「いいえ、雪風は、そんな!」


間宮「……さて、私は洗い物をしますから」

間宮「ごゆっくりどうぞっ」

雪風「は、はいっ」







ジャー……ゴシゴシ……


間宮「ふんふ~ん♪」

雪風「……」


雪風「……うぅ」







キュッ……


雪風「……あの、間宮さんっ」

間宮「はぁい、どうしました?」

雪風「間宮さんは、その」


雪風「“嘘”ってついたこと……ありますか?」

間宮「嘘、ねぇ」


雪風「あっ!し、執務室では、何も――」

間宮「うふふ……ありますよ、嘘をついたこと」

雪風「……えっ!?」

間宮「正確には、みんなに隠しごとをしている……と言った方が正しいのかも」






雪風「それはいったい、どんな……」

間宮「そうね……本当はこれ、いつか伊良子ちゃんに先に伝えようと思っていたことなんですけど」


間宮「私がこうしてお菓子やお料理を振舞うのは、食べてくれる人……特に、あなたたち艦娘を思ってのこと……」

間宮「それは、本当」

雪風「……?」

間宮「だけど……」


間宮「私のお菓子やお料理を、“一番”食べて欲しいなって思っている人は……」

間宮「本当は……あなたたちの他にいるんです……」

雪風「え、えぇ~っ!?」






雪風「ほんとですか!?そ、それは、すきな人とかですか!?」

間宮「あらあら……てっきり、怒られると思っていたのに……」

雪風「そんなことありません!とっても素敵なことだと思います!」

雪風「それで……その人って?」

雪風「も、もしかしてしれぇのこととか……!?」

間宮「うふふ、残念ながらそうじゃないんです」

雪風「なぁんだぁ、そうなんですか……」



提督「ぶぇぇぇーくしょぉぉいっ」

将校「大丈夫かね、君」






雪風「その人はよく、お店にはいらっしゃるんですか?」

間宮「いいえ……きっと一度も」

間宮「というより、私自身はその人たちの姿を見たことがないんです」

雪風「えっ……“たち”?」

雪風「“見たことがない”?」

間宮「うふふ、おかしな話なんですが……これは、前世の記憶というものなのでしょう」

間宮「私のように“昔のこと”を思い出す艦娘も、稀に生まれてくるらしくて」

雪風「??」






間宮「あの時、私の大事なお仕事は……途中までしか果たせなかった」

間宮「でも、その後も、あの方々はきっと……私を待っていたんです」

間宮「過酷な海の上で、ずっと」

雪風「……」


間宮「今はもうきっと、叶わないことなのかもしれない……でも」

間宮「いつかはこの願いを、本当に果たせたらいなって」

間宮「そうすれば、こんなどうしようもない隠し事に悶々としなくていい……って」

雪風「……」

間宮「私はずっと、そう思ってきたの」






雪風「うぅ……結局その人たちが誰なのか、さっぱり分かりませんでした……」

間宮「ごめんなさい……こんな話をしても、誰にも理解してもらえないと思います」

間宮「けど、こればかりは私にも……」

雪風「……でも!」

間宮「?」


雪風「間宮さんの作るお菓子やお料理が、どうしてどれも美味しいのか!」

雪風「それは分かった気がします!」

間宮「雪風ちゃん……」







雪風「雪風、そろそろ鎮守府に戻って……山城さんに会ってこようと思います!」

雪風「そして……」


グゥ~……


雪風「あっ……」

間宮「クスッ……もしかして、お昼食べてなかったんですか?」








雪風「雪風、そろそろ戻って……山城さんに会ってこようと思います!」

雪風「そして……」


グゥ~……


雪風「あっ……」

間宮「クスッ……もしかして、お昼食べてなかったんですか?」







間宮「でしたら、これもどうぞっ」

雪風「わぁっ!羊羹!」

雪風「何から何まで、ありがとうございます!」

雪風「間宮さんの嘘が……いつか、嘘じゃなくなるといいですね!」

間宮「うふふ……そうねっ」


間宮「それじゃ、お気を付けて……雪風ちゃん」

雪風「はい!それでは!」


タッタッタッ……






雪風(雪風も、嘘を嘘じゃないようにしなきゃ!)


雪風「すみません!通ります!」

老人「!」

孫「わわっ」


タッタッタッ……


孫「あ~、びっくりしたぁ……」

老人「あ、あぁ……そうさなぁ」

老人「……」


老人(……今、手に握られていた羊羹、あれはもしや……)






老人「……おい、ボン!羊羹食うか?」

孫「えぇーっ、アイスの方がいいよ~!」

老人「ま、どっちでもえぇ……」


老人「たしかブルネイに送られたのが、昭和19年の末だったか……」

老人「あの時、どっちも食いそびれちまったからなァ」

孫「?」


老人「さ、あの店で一服して、帰ろう」

孫「うん!」



……
…………
………………




龍驤「おっ……なんや大鳳、体調はもうええんか?」

龍驤「なんか目のあたり、めっちゃ赤いけど……」

大鳳「えぇ、もう大丈夫」

大鳳「全部吐き出しちゃったから……」

大鳳「私はそれを乗り越えて、前を向いているだけ」

龍驤「?」


龍驤「クスッ……なんや変やけど、まぁええわ!」

龍驤「我らが空母機動部隊に、おかえりやで!」

大鳳「えぇ、ただいま!」







龍驤「そういえば……変と言えば、さっきの雪風もなんや変やったなぁ」

大鳳「え?」

龍驤「なんか隠し事しとるような……執務室がどうたらって」

大鳳「もしかして、龍驤さんのところにも?」

龍驤「ん?なんや……会ってたんはウチだけやなかったんやね」


龍驤「まぁ……ウチもあの子には嘘ついてもうたし、フェアとちゃうから」

龍驤「執務室の云々は特に詮索してへんのやけど……」








大鳳「龍驤さんの嘘?」

龍驤「アハハ……ちと、あんたに差をつけたろって思って、あるものを買いにね……」

大鳳「??」

龍驤「まぁ結局、“アレ”は返品してもうたし」

龍驤「代わりにプリプリの可愛い服買うてきたった!」

龍驤「やっぱ人間……自分に自信持って、胸張って生きなアカンのやね!」

大鳳「……言ってることがよく分からないわ」

龍驤「ゴホン……ッ」








龍驤「そ、そんなことより……」

龍驤「あの雪風って子は、今まで人を傷付けるような嘘なんてついたことあらへん」

大鳳「えぇ、そうね」


龍驤「せやし、あの子の嘘は……」

龍驤「きっと、誰かのためについた嘘なんやろうね」



……
…………
………………







提督「……あれま」

山城「な、なんでしょう?」

提督「そういえば私の花瓶が、どこにもないような……」

山城「……!」



雪風(し、しれぇが……お部屋に帰ってきていました……!)

雪風(山城さんに先に謝ろうと思ってたのに……)

雪風(そ、それどころじゃなくなっちゃいました!)








提督「んん-……」

提督「おっかしいなぁ……」

山城「~~……っ!」


雪風(ど、どうなってしまうのでしょう……!)

雪風(このままじゃ、山城さんは……!)










「ごめん……なさい」









提督「んぁ!?」

山城「提督の花瓶は……先ほど、私が割ってしまいました……!」

山城「今は片付けてしまって……もう、ありません……!」

提督「なな……っ」


山城「ごめんなさい……」

山城「本当に、ごめんなさい……!」

提督「……」


ドキドキドキ……


雪風(あわわ……!)






提督「今は亡き先代がくれた花瓶……残念だ」

山城「……!」


提督「……が、よく正直に言ったな」

山城「え……」


山城「て、提督……!?」

提督「いくつになっても、正直に話すってのは……どうもカロリー使うんだよなぁ」

提督「私もさっきの会議の席で、今月溶かした建造費の件をだいぶ誤魔化してきたところだ」

提督「……山城は凄いよ、本当」

山城「へ、え、えっと……」






山城「でも、でも……!」

提督「?」

山城「山城はいつもこんな調子で……みんなに迷惑を……」

山城「もうこれ以上は、申し訳が……」

提督「なにを今更」

山城「う……」


提督「こちとら、そんなことはとっくに勘定に入れて、艦隊動かしてんだ」

提督「気にするなよ」









「それよりも……正直に話してくれて、私は嬉しいよ……山城」

「提督……!」


「これからもよろしく頼むな」

「は、ハイ!」










雪風「……」

雪風「……グスッ、エグッ……!」


バタンッ!


雪風「山城さん!しれぇ!」

雪風「雪風……実は、実はぁ~っ!」



―――――――――fin―――――――――



これで以上になります

ここまで読んで下さった方、楽しく書かせていただきありがとうございました!

覚えていてくれた人が!(驚愕)

涙がで、出ますよ…

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2017年10月26日 (木) 07:01:11   ID: UfGMhq_J

山城さんがシリーズ・・・待ってました!!
また違うバージョンで書いてほしいです!楽しみです!

2 :  SS好きの774さん   2017年10月26日 (木) 07:08:14   ID: UfGMhq_J

山城さんがシリーズ・・・待ってました!!
また違うバージョンで書いてほしいです!楽しみです!

3 :  SS好きの774さん   2017年10月26日 (木) 07:10:13   ID: UfGMhq_J

誤って連投してしまいましたすみません!

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