ミカサ「終わらない旅」 (14)




※パロ元の漫画が分かった女神は結婚してくれ。

※進撃でややホラー風味。地の文あり。




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――ガチャンッ!

ミカサ 「あっ」


よろけた拍子に手から滑り落ちたカクテルが、絨毯をぶどう酒で染め上げる。


ジャン  「……おい、ミカサ!」


近くにいたジャンが、あわててハンカチを取り出す。しゃがみこんだ私は、ふと
何かの気配を感じて顔を上げた。


ジャン  「ああ、染みになってる。知らねえぞ、お前に請求が来ても」ポンポン


呆れたような声は、右から左。私は膝をついたまま、ぼんやりとそちらを見る。
さっきまであった異質な気配はなくなって、元の壁に戻っていた。


サシャ  「ふむふむ…つけ合わせの野菜は水っぽいですけど、まあまあの味ですね!」ゴックン

コニー  「うっめ!!肉、うんっめえ!!」ガツガツ


豪華な料理に舌づつみを打つ同期たちを尻目に、私は立ち上がる。
授与式のあとから始まったささやかなパーティーは、
まだ終わりそうにない。


アルミン 「ミカサ、アップルパイでも持ってこようか?」

ミカサ  「……ん、私はもういい」

エレン  「――あ?」

ミカサ  「どうしたの、エレン」

エレン  「お前、タイ落としてんぞ」ヒョイ

ミカサ  「私のはちゃんとついている」

アルミン 「ミカサのじゃないの?」

ミカサ  「とりあえず拾っておいて、あとで警備兵に渡せばいい」

真ん中に青い石のはまったそれを、私はポケットに入れた。

ミカサ  「エレン、この会場ってどれくらい部屋があるの?」

エレン  「すげえ広いだろうな。外から見た時もデカかったし」

ジャン  「元はさる侯爵家の離宮だったらしいからな、調査兵団の本部と同じ
      ぐらいじゃないのか?」

ミカサ  「そう……」

エレン  「あ、もしかして便所の場所分かんねえのか?」

ミカサ  「え、エレン…そういうことは、あまり大声で」

アルミン 「もう、デリカシーがない!」

エレン  「わ、わりい…」

ジャン  「トイレか?たしか、この大広間出て、まっすぐ行った突き当りを右だ」

ミカサ  「ありがとう、ちょっと行ってくる」

テーブルを離れて、パーティーを楽しむ兵士たちの間を通り抜けた。


ドンッ

ミカサ 「あ、すみませ――」

ぶつかった相手は、あっという間に見えなくなった。

ミカサ 「……聞こえたの?」ガチャッ


広間を抜けると、赤い絨毯の敷きつめられた長い廊下に出る。
突き当りを右……うん、あそこだ。




ジャーッ、キュッ

ミカサ  「……ふうっ」

ミカサ  (せっかく外に出たから、一周してから戻ってみよう)

私はトイレを出て、大広間とは反対の方へ歩く。
シャンデリアのある天井を見上げながら、豪華な執務室や、お姫様の寝室を覗いた。

ミカサ  (ここは、ダンスホール?……すごくきれい)

<ポンッ


肩を叩かれて振り返ると、会場警備の憲兵がいた。


モブ憲兵 「おい、調査兵。迷ったのか。大広間の場所は分かるか?」

ミカサ 「え、ええと……、大丈夫、です」

モブ憲兵 「めでたい日だからな、楽しんで行けよ」ニコッ

ミカサ 「……はい」

あいまいな笑顔で答えると、憲兵は機嫌よく帰っていった。


ミカサ 「……?」



ふと、突き当たりの壁に目が行く。

……扉だ。

天使の彫刻がほどこされた大理石の壁に、不釣り合いな木の扉。


ミカサ (……気になる)


ドアノブに手をかけてみると、それはあっさりと開いた。


ギィィッ…


ミカサ 「はしご付きの寝台……警備の憲兵が仮眠をとる所?」


ベッドを隠すカーテンが、風に揺られてふわっと持ち上がる。
ここにはこれ以上何もなさそうだ。


ミカサ 「……帰ろう」

背を向けた瞬間。


――ドサッ

ミカサ 「なに?今……」


ドスンッ、バタンッ


ミカサ (なにかが、落ちる音。しかも、かなり重い)

嫌な予感がする。さっきまで全く人の気配がなかったのに、あちこちのベッドから
息遣いのようなものが聞こえてくる。


ミカサ 「……」ゴクリ


私はしばらく考えて、寝台のカーテンを一気に開いた。



ミーナ  「ハアッ、はあっ、はあ……!」

ミカサ 「!?」


そこに寝ていたのは、おさげの女の子――茶色のジャケットは血まみれで、
訓練兵のエンブレムがついている。……私はそこで気づいた。
この子、頭が半分かじられてる!!!


ミカサ 「――!」


それに、私は、知っている!この子を知っている!


ミーナ  「みか、さ?」

ミカサ 「あ……あっ、あ……」

ミーナ 「なんで、ここにいるの」

見開かれた目から、涙がこぼれた。

ミーナ  「団長……団長は……どこ……?」

ミカサ  「あ……私は……団長?」

ミーナ  「お願い、あなたが、ハアッ…どうして、ここに、いるの……か、
      わからない、けど」

ミーナ  「団長に、はやく……"しるし"を届けて」

ミカサ  「しるし……?ねえ、ミーナ」

ドサッ


また音がした。……隣の寝台からだ。


ハンナ  「ハアッ、はあ、はあ」


……折れている。血まみれの足が、外側に折れている。


ハンナ  「ミカ、サ……?……はやく、団長に……」


「――ハンナ、ハンナ!」


その時、上の寝台から声がした。

ハンナ  「サムエル……サムエルなの?……私は、"還って"きてるわ!」

サムエル 「ハンナ…そうか、じゃあ……ここは、俺たちの寝台なんだな!?」


ミカサ 「……」


私は梯子に足をかけて、そっと上ってみた。
そこにいたのは、黒髪の訓練兵だ。どこもおかしくない。


サムエル 「……ハンナか?」


ただし、片腕がないことをのぞけば。


サムエル 「ち、ちがう!お前、ハンナじゃないな!?誰だ!!」

ミカサ  「わ、私はミカサ……あなた、サムエル?エレンの班にいた……」

ハンナ  「落ち着いて、サムエル。私は下よ。フランツも、みんないる……
      ミカサは敵じゃないわ」

サムエル 「目が見えねえんだ、畜生!巨人に吹っ飛ばされて、頭をぶっつけちまった……
      しるしは、こいつに預けて大丈夫なのか!?」

ハンナ  「うん……ミーナは、たぶん、そうしようとしていたわ」

サムエル 「そう……か。おい、ミカサ」

ミカサ  「え?」

サムエル 「"しるし"を外して持っていけ、袖についてるから、ちゃんと切りとれよ」

ミカサ  「で、でも……」

サムエル 「おい、モタモタすんな!首席のくせに…左の袖についてる奴だ!!」

ミカサ  「あなた……左腕が、ないの」

サムエル 「……」


一瞬の、沈黙。


サムエル 「うわあああーーーっっ!!」


悲鳴。私は思わず彼から離れてはしごを下りた。


サムエル 「ハンナ!ハンナ!!くそ、俺の左腕がっ……"しるし"ごとなくなっちまった!!」

トーマス 「いつもこうなんだよ、サムエルの奴……」

そこで、下の寝台にいた彼が話し出す。

トーマス 「肉を食う約束は覚えてるくせに、左腕を吹っ飛ばされたのは忘れちまう。
      いつも同じ、繰り返しだ……」

ミカサ  「トーマス……あなたも覚えてる、エレンの班だった……でも、おかしい。
      だって、あなたたち、みんな」

トーマス 「ああ、でも今日はいつもと違うな。
      お前、なんでここにいるんだ?団長はいないのか?」

ミカサ  「みんな、死んだはずなのに……!」


ドサッ、ドスンッ


折れ曲がった、骨の突き出た足。握られたままのブレード。


ミーナ  「トム、フランツ……」


空気をふるわす、荒い呼吸音。苦しげなうめき声。


ミーナ  「ナック、ミリウス……!」


臓物。血。血、血、血――。


ミカサ 「だ、誰か――!」

混乱。それだけを武器に走り出した私の襟首を、ナックがつかまえた。


振り払おうとした手を、トーマスとミーナがつかむ。混乱でもつれる足をとられ、
トーマスが私を寝台に引きずりこんで、片手を振り上げた。


バシンゥ!!


トーマス  「……っ、」

彼の手は、仰向けになった私の顔のすぐ横に沈んでいた。
荒い息をついて見下ろすトーマスが、顔を近づけてくる。


トーマス「呼んだって、誰も来やしない!……お前が出てったら、それっきりになっちまうんだよ!!」

ミカサ 「それ、きりって」

トーマス「いいから、早くっ……ここにいる誰のでもいいから、
     "しるし"を切り取って、団長に渡してくれ!」

ミカサ 「団長……って、誰のこと?ハンジさん?それとも、」

ミカサ 「なんで、あなたたちがここにいるの、……団長がやっているの?」


ミーナ 「ちがうわ、ミカサ。団長は私たちを導いてくれる人よ」


答えてもらったけど、さっぱり分からない。
『団長』の正体も、どうして"しるし"とやらを届けなきゃいけないのかも。


ミカサ 「……どいて、トーマス」

トーマス「あ、ああ…悪い」スッ

ミカサ 「あなたたち、幽霊なの?……温かいし、血の匂いもするのに」

トーマス「俺たちは……「ミーナ!」

ミリウス「ミーナ、早く来てくれ!フランツが!」

二つ先の寝台のカーテンが、開いた。

下半身をなくしたフランツが、臓物と血をまき散らしながら、最後の呼吸を終える。
うつろに開いたままの目を、ハンナがそっと閉ざした。

寝台から、傷ついた訓練兵たちが立ち上がって、フランツを囲む。


ミーナ 「……団長に"しるし"を届けないと、私たちはみんな……終わってしまうの」

ミカサ 「終わってしまう?」

ミーナ 「かりそめの安らぎすらなくして、永遠に……真っ暗な中をさまようんだって、
     団長が言ってたわ」

そう答えたミーナは、小さなナイフで……もうちぎれかかっていた、
左袖のエンブレムを切り取った。二本の剣が交差したそれを、私の手に握らせる。



ミーナ 「"Das ist nicht mein Flügel"」

ミカサ 「――え?」

ミーナ 「"それは私の翼ではない"……"私の知ったことではない"って意味よ。覚えておいて」

ミカサ 「……」

ミーナ 「お願い、行って!はやく、はやく団長を探して!」


どんっと背中を押されて、私は走り出した。


ミカサ (――こわい。どうしてミーナたちがいるのか、それが分からないのが、いちばん怖い)

寝台のあいだを通り抜けて、木の扉を目指す。


バターンッ


そこは、さっきまでと変わらない廊下だった。真っ赤な絨毯が続く上を、私は必死に走る。

ギイ…


後ろで、ドアがきしむ音。

顔だけ振り返って見ると、ドアの向こうでまた、寝台のカーテンがはためいた。


バターン……

ミカサ 「団長……団長を、探さないと」

つぶやきながら、走る。手の中のエンブレムだけが、これが夢ではないと教えていた。



ミーナ 「大丈夫。ミカサがきっと、団長を見つけてくれるよ」

ミカサが行ってしまったあと、私はいつものようにみんなを励ました。
傷が重くて動けない訓練兵も、聞いてくれている。

ミーナ 「だからみんな、カーテンを閉めて。また飛び立つ時まで体を休めて。
     三年間の訓練に比べれば、簡単なことじゃない」

私がパンパンと手を叩くと、外に出ていた訓練兵たちが寝台へ戻っていった。

サムエル 「……なあ、ミーナ」

ミーナ  「うん。言いたいことは分かるよ。不安なんだよね」

私は梯子を上って、サムエルと向かい合う。見えていない目が、私を映していた。

ミーナ  「あのね、サムエル。団長がこっそり教えてくれたんだけど……いつか、もっとたくさんの
      訓練兵たちを"すくいあげ"たら、私たちみんな、星になれるんだって」

サムエル 「星……?」

ミーナ  「うん」

サムエル 「目が見えなくても、なれるか?」

ミーナ  「もちろん。だから、ちゃんと休もう?この"繰り返し”もいつか絶対に終わるから。
      団長がそうしてくれるから」

サムエルを寝かせて、私はそっと梯子を下りる。
もう眠ってしまった仲間もいるみたいだ。あちこちから寝息が聞こえる。

ミーナ  「……だから、私たちは飛び続けないといけないの」

誰に伝えるともなく、呟く。

ミーナ  「いつか救われる、その日まで」

切ります
下半身切られてもしばらくは息があるってどっかで読んだ
あとサムエルは死亡で進めてます

頑張って下さい…!
上から目線ですみません。
私、進撃ネタ大好きです!!!
昔書こうとしたら荒らされまくったんですよねぇ…
関係ない話ですね、すみません。
面白いと思います!
ゆっくり休みながら書いてください!
長文失礼しました!

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