魔法幼女でぐれちゃふ☆マギカ戦記 (103)

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早乙女「では、転校生を紹介します。暁美さん?」

ほむら「暁美ほむらです」

パチパチ パチ

ほむら(もうこのやりとりも何度目になるのかしら)スタ スタ

早乙女「貴女の席は―――って、あら?」


ほむら(あそこの席に……まどか)チラッ


まどか「…………」


ほむら(今度こそ貴女を救い出――――ッ!?!?)ビクッ



まどか「――――」ニタァ




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保健室


まどか「―――なるほど。貴様が話に聞いた、"魔導師"暁美ほむらだな?」

まどか「最初に言っておく。私は鹿目まどかではない」

ほむら(い、一体なにが、どうなっているの……!?)

まどか「ターニャ・デグレチャフ……いや、これも本名とは言い難いが」ハァ

ほむら「本物のまどかはどこ!?」ジャキッ

まどか「ほう、現代銃とは懐かしい! 本物を直視したのは初めてだ!」パァァ

まどか「というか、神聖な学び舎でソレを少女に突きつけるのは校則違反なのではないかぁ?」

ほむら「答えなさい……!」


まどか「信じるか信じないかは君次第だが、"存在X"……言いたくはないが神のような存在とでも思ってほしい」

まどか「奴が、"ワルプルギスの夜"を打ち滅ぼした暁には私を元の世界へ戻すとほざいていた」

ほむら「!!」

まどか「本物の鹿目まどかという少女も、そののちに元へと戻るのだろう」

ほむら(もしそれが本当なら、むしろ好都合……?)

ほむら「貴女の行動目的は?」

まどか「まぁ、十数年振りの現代日本を ―― 多少魔法じみてはいるが ―― この少女の体躯で堪能しても良いのだが」


まどか「私は我が身の安定と、存在Xへの叛逆を希望する」ニィ

放課後


さやか「まどかー! 帰りにCDショップ寄っていい?」

まどか「無論だ。この転校生も連れて行って構わないか?」

さやか「保健室で仲良くなったの? まあいいけど。よろしくね転校生」


ほむら「……貴女、よくその喋り方で周りと馴染めているわね」

まどか「おかしくなったのは鹿目まどかではなく世界の方だ、ということがよくわかるだろう?」フッ

CDショップ


さやか「ふんふふ~ん♪」


ほむら「―――つまり、私の時間遡行のせいでこの世界の因果が膨らみ、異世界にまで影響を及ぼし始めた、と」

まどか「全く、私は存在Xの奴隷ではないッ! 理不尽極まりないッ! 実に忌々しい、がッ!」グッ

まどか「……良い機会が与えられたとも思っている」ククッ

まどか「世界の更なる外側での行動……奴を陥れるための素材集めには十分な条件だ」ニタァ

ほむら「……まどかの顔でその顔をしないでほしいのだけれど」

まどか「フンッ。因果を滅茶苦茶にしている張本人に指図される筋合いは無い」

まどか「久々の自由だ。貴様の意に反し、好き勝手にやらせてもらうぞ、存在Xッ!!」


まどか「それで、早々に私を魔法少女にしてはくれないか? 魔法が使えない状況は、今となっては隔靴掻痒だ」

ほむら「……まどかを魔法少女にさせるわけにはいかない」

まどか「ほう。何故だ?」

ほむら「魔法少女は、絶望を産む"魔女"になるからよ」

まどか「"魔女"?」


ケテ…

タスケテ、マドカ…


ほむら(この声、インキュベーター!)

まどか「どうやら無線が入ったようだ」

まどか「美樹君、君はしばらくここで愛しの彼への悪意あるプレゼントを物色していたまえ」クルッ タッ

さやか「えっ? あ、ちょっ! まどか!?」

ほむら「全く、私より勝手に行動するなんて!」タッ


さやか「……えっと?」ポツン

魔女の結界


使い魔たち「「「アンソニー、アンソニー」」」

まどか「おお! これはこれは、いよいよもってファンタジーという感じがしてくる!」パァァ

まどか「思えば私の転生先は随分と現実的な魔法世界だったからな……むしろこういうのを最初にイメージするものだ」ウンウン

キュゥべえ「助けてまどか! 魔女に襲われているんだ!」

まどか「なんだこいつは?」

キュゥべえ「君の願いを叶えてあげる! その代わり、魔法少女に変身して戦うんだ、まどか!」

まどか「この猫のような魔法生物に願掛けをすればいいのか?」

ほむら「こいつは無限に沸いてくる感情の無い宇宙人よ。それより」

ほむら「……本当に魔法少女になるの? 他にも方法が―――」

まどか「くどいッ!!」


まどか「私にとっては鹿目まどかが魔法少女であろうがなかろうがどうでもいい。ワルプルギスの夜さえ倒せればな!」

まどか「それが気に喰わないのなら、暁美ほむら。貴様の得意な時間遡行でなんとかして見せろ!」

ほむら「……っ」

まどか「無言は肯定と受け取ろう。瞬時に判断を下せないようでは、本当にまだまだ中学二年生の女の子のようだな」フンッ


キュゥべえ(な、な、なんかすっげぇイレギュラーが居る!)ビクビク


まどか「おいマスコット。私を魔法少女にしろ」

キュゥべえ「ヒッ。き、君の願いはなんだい?」プルプル

まどか「願い? そうだな……"神に準じる存在への命令下達権の獲得"、とでも言っておこうか」

シュィィィィィィィィィィン……

キュゥべえ「―――っ!? そんな願いが叶うなんて!?」

まどか「お? おお! これは素晴らしい! 魔力が全身に滾って来るッ!!」キラキラ

キュゥべえ「まどかの固有魔法は"服従の魔法"……って、聞こえてないみたいだね」

まどか「神に祈らずしてこの力ッ!!! ふっ、くく、ふはははははぁぁっ!!!!」

まどか「まったく、最高に愉快ッ!!!」ニカァ

ほむら(ああ、私の女神が邪神に……)


まどか「これは……エレニウム九五式に比べて随分とパワフルだ」ツンツン

キュゥべえ「それはソウルジェムと言って―――」

まどか「軍服に小銃。やはり私の魔装具はこのイメージになったか」バァン!

キュゥべえ「ぎゅぷっ」パァン! ビチャビチャ!

ほむら(い、いえ、最近のアイドルだって軍服じみているし、あれはあれで可愛いのよ……きっと……)グッ

まどか「それで、この魔界の害獣どもを蹴散らせばいいのか? 散弾銃、いや機関銃が欲しいところだな」

まどか「――そうか! 武器さえも魔力の産物ならば、術式など組み替え放題ではないかあっ!!」ニタァ


ドガァン! ズバァン! パパパパパッ!

ギャー! アンソニー! アンソニー! ギャー!


まどか「フフ、フハハハッ! これは痛快ッ!! 現代ストレスの解消にもってこい、だっ!!」ウェヒヒィ!

ほむら(まどかの皮をかぶった化け物……!)


まどか「ふぅ。平和主義者の血が騒ぐ」

ほむら(どの口が言ってるのかしら……)

ほむら「貴女、普通に空も飛べるのね」

まどか「……あのテスト飛行の日々が体に染みついているからかも知れんな」

まどか「それで、最後に残ったあのデカ物が魔女か」ズバァン!


ギャッ! シュゥゥゥ…


ほむら「バラの魔女、ゲルトルート。逃げないうちに倒してしまうなんて、さすがまどか」

ほむら(あれだけの魔法をバカスカ撃って、ソウルジェムが全く穢れていないなんて……)

まどか「なんだぁ? この世界の敵さんも大したことはないな。これならダキア公国の観光客御一行様の方がまだマシだ」ニヤリ


シュィィィン…


まどか「結界が晴れた。一件落着、というわけか」

ほむら「これが魔女の卵、グリーフシード。減った魔力を回復できるわ」

まどか「魔力が食事や睡眠で回復しないとはな。ならば、暁美君が持っていると良い」

ほむら(このまどかと共に行動することで、何かが見えてくるかしら……)


カツン…


まどか「誰だッ!!」ジャキッ


マミ「あ、貴女たちは、一体……」プルプル


まどか「見るからに同業者だが、敵か? 味方か?」ギロッ

ほむら「……さぁ。私にもわからないわ」

マミ「グ、グリーフシードなら、あ、あげるわ。だ、だから、う、撃たないで……」プルプル

まどか「か弱い少女に銃を突き付けられただけで命乞いなどするものではないぞ、全く」ハァ

ほむら(その面構えをなんとかしてから言いなさいよ)

まどか「私としては対ワルプルギス用に2個魔導大隊は用意したいと考えている。貴様、我が指揮下で動くつもりはないか?」

マミ「ま、まどう……だい、たい……?」ガクガク


ほむら「2個大隊って、貴女、まさか魔法少女で軍隊でも作るつもりなの!?」

まどか「そうでもせねば倒せぬのではないのか?」

ほむら「……確かに、あらゆる現代兵器をぶつけても奴にはあまり効果が無かった」

まどか「魔法生物は魔法で倒せ、ということだろう」

まどか「であれば、だ。統率のとれた行動と有能な指揮によって魔法を最大効率化することで、我らが勝利を手にすることができる」

まどか「喜べ、黄金の魔導師よ! 貴様は我が旗の下で人類の救世主となるのだッ!」ニタァ

マミ「は、はいぃぃぃっ!!! がんばりますぅぅっ!!!」ウルウル

ほむら(ああ、最初期の師弟関係が……!)ガクッ


ほむホーム


まどか「中々に趣のある部屋だな。気に入った」

マミ「どうして私、こんなことに……」トボトボ

まどか「あとで貴官の魔法を分析する必要があるからな。無論、暁美君の魔法も」

マミ「ヒッ」

ほむら「……ワルプルギスの夜関連の資料はここにまとめてあるわ」

まどか「ならばしばらくの間ここを司令部……いや、参謀本部として利用させてもらおう」

ほむら「貴女は前線に出ないつもり?」

まどか「もったいない! ワルプルギス以外の全ての魔女は新兵訓練の的となってもらう」ニィ

ほむら(なんという……)


まどか「この世界の最大の欠点は魔法に関する統一した組織が無いことだな」

まどか「おかげで私がトップに君臨せざるを得ないとは……」

ほむら「私は認めないわよ」

まどか「ところで、効率的に魔法少女を徴兵する方法案は何かないか? 巴二等兵」

マミ「は、はい! えっと、その、グリーフシードを無料配布する、とかでしょうか……」オドオド

まどか「はぁぁぁぁぁあ?」イラッ

マミ「ひぃっ!! すいません、すいません、すいませぇぇんっ!!」ビクビク

まどか「暁美君」

ほむら「……最大効率だけで言えば」

ほむら「インキュベーターと協力して、新しい魔法少女を大量生産すればいいわ」

まどか「採用」


キュゥべえ「呼んだかい?」キュップイ

マミ「きゅ、キュゥべえぇぇぇっ!! 来てくれたのねっ!!」ウルウル

まどか「マスコットよ。聞いた話では、貴様は魔法少女を増やしたいらしいな」

キュゥべえ「世界平和のためにね」

ほむら「宇宙のエネルギーのために、でしょ?」

キュゥべえ「……そこまで知っているのか。君達は一体」

まどか「この世界で唯一魔法ネットワークを構築しているのが貴様らインキュベーターだそうだな」

キュゥべえ「ま、そうとも言えるね」

マミ(いんきゅべーたー?)

まどか「そこでだ。いくつか交換条件さえ飲んでくれるのならば、我々も貴様の布教活動に協力してやろうと思う」

キュゥべえ「協力?」



まどか「対象者を一堂に集め、大量に魔法少女を獲得できる場を提供しよう」ニタァ


翌日


まどか『て、テストテスト。こほん』

まどか『全校生徒の皆さん、お昼休みにこんにちは。保健係の鹿目まどかです』

まどか『えっと、うちの学校が国の調査に協力することになったそうです』

まどか『それで、女子生徒の皆さんは体育館に移動してください。あ、男子は今日は大丈夫です』

まどか『簡単なお話を聞くだけなのですぐに終わるそうです。よろしくお願いします』ペコリ



ほむら「……貴女、変身の魔法まで使えたのね」

まどか「あぁ?」イラッ


体育館


女子生徒1「なんだろなんだろ」

女子生徒2「早く解放してよね」

さやか「まどかも大変だなぁ」

仁美「ですわね」

マミ(彼女の固有魔法、服従の魔法で大人たちを操ってここまでやるなんて……)

ザワザワ…


まどか「あ、あのっ! 壇上から失礼しまっ――」

キーン

まどか「うっ……すみません。えっと、今から皆さんひとりひとりのもとに喋るネコさんが行きます」

キュゥべえs「「「きゅっぷい!」」」

マミ(キュゥべえがいっぱい!?)ガーン

まどか「そのネコさんと楽しくおしゃべりをしてください」ニコ


シュィィィィィィィィィィン!!

シュィィィィィィィィィィン!!

シュィィィィィィィィィィン!!

シュィィィィィィィィィィン!!

シュィィィィィィィィィィン!!

シュィィィィィィィィィィン!!

シュィィィィィィィィィィン!!

シュィィィィィィィィィィン!!

シュィィィィィィィィィィン!!



ほむら(壮観ね……)

マミ(なにこれ……)


女子生徒1「ホ、ホントに魔法少女になっちゃった!?」キラキラ

女子生徒2「すごい! 変身した!?」キラキラ

さやか「ってことは、恭介の腕が治ったの……!?」キラキラ


まどか「あー、ごほんごほん」

まどか「魔法少女になれなかった素質無しの無能共は帰ってよろしい」

まどか(思った以上の収穫だ。これで最低限の人数は確保できたな)

まどか(一人でも多い方が訓練の質も上がり、生存率も確保できるというもの)

まどか「選ばれし魔法少女の諸君! 今日という輝かしい日に感謝しようではないか!」

まどか「諸君は、世界を巨悪から救うヒーロー、いやヒロイン、魔法少女として大活躍するのだ!」


ウワァァァァァァ!! ヤッタァァァァァ!!


ほむら(インキュベーターよりタチが悪いわ)


まどか「では、暁美君。新米の彼女たちに魔法の基礎を叩き込んでくれ」

ほむら「わ、私が?」

まどか「君もグリーフシード分働きたまえよ」

ほむら「……こんなに大勢の前に立つのは、苦手よ」

まどか「……はぁ、全く。おい! 巴! 巴上等兵は居るか!」

マミ「は、はいっ! 今行きます!」


女子生徒1「あの金髪の人、先輩じゃない?」

女子生徒2「先輩を顎で使うなんて、鹿目さんって一体……」

ほむら(板についてきてるじゃない、巴マミ……)


マミ「―――以上が魔法の基礎知識です。何か質問はありますか?」


さやか「はいはーい! どうしてこんなに魔法少女が必要なんですか?」


まどか「良い質問だ、美樹さやか君。実は"ワルプルギスの夜"という巨大な魔女が、我らの街、見滝原を破壊せんとしているのだ」


エッ… ザワザワ…


まどか「君達は皆、この街に、この土地に、家族が、友人が居るだろう? それをみすみす卑劣な魔女や使い魔どもに奪われてしまってもいいのかっ!」

まどか「魔力を纏った以上は見滝原に貢献を為せ! 民草の礎となれ!」

まどか「我らと、宇宙の守護者インキュベーターの力で、この土地に生きる人々を、絶望の淵から救おうではないかァ!!」


ウワァァァァァァ! ウワァァァァァ!


ほむら「……で、本音は?」

まどか「無論、世界平和だが?」


翌日 


女子生徒1「鹿目隊長! おはようございます!」

まどか「うむ」

女子生徒2「鹿目隊長! 今日からよろしくお願いします!」

まどか「うむ」

ほむら「……"隊長"?」

まどか「我らの組織に名前が必要だったからな。年相応に、"見滝原を魔女から守り隊=MMM"という名を冠した」

まどか「ちなみに暁美君は副隊長だ」ニッ

ほむら「あ、そう……」


昼休み


まどか「各員にマスコット君を所持させ、常に連絡を取れるようになったのはいいが」

まどか「いかんせん全員が学生というのは面倒だな」ハァ

マミ「日中出現する魔女への対応ができないですものね」

まどか「貴官の脳内は花畑かぁ? 巴伍長」ジロ

マミ「ヒッ」

まどか「訓練が放課後に制約されるのが厄介なのだ。はぁ、時間停止の魔法でもあればいいのだがなぁー」チラッ

ほむら「……まさか、私の魔法を使って訓練時間を延ばすつもり?」

まどか「幸い、例の交換条件によって最低限のグリーフシードはインキュベーターが供出してくれている」ニタァ


放課後 校庭


ザワザワ…

まどか「MMMの諸君。本日は諸君に自衛できる程度の技術を身につけてもらう」


さやか「はーいっ!」

仁美「頑張りますわ!」


まどか「副隊長。巴軍曹。よろしく頼む」

マミ「えっと、ここに居るみんなをリボンで結び付ければいいんですよね」シュイン

ほむら「……行くわよ」カチッ

さやか「えっ?」


ドゥーーン


ピタッ…


さやか「な、なにこれ!? 時間が、止まってる……!?」


まどか「フハハッ! 一定のレベルに達するまで、時間を気にせず訓練ができるぞぉ!」

ほむら「それで、彼女たちに何をさせる気?」

まどか「肉体の鍛錬と同時に精神力を養ってもらう」

マミ「ま、魔法は?」

まどか「もちろん魔法要素はふんだんに盛り込ませてもらおう。ふんだんに、な」ウェヒィ


まどか「総員、肉体強化魔法、展開!」


仁美「えっと、こうでしょうか……」シュインシュイン


まどか「皆には魔力が尽きるまで楽しく遊び回ってもらう。そうして己の限界を知るといい」


さやか「魔法で遊んでいいの!?」キラキラ


まどか「花火の打ち上げ台をそこかしこに設置させてもらった。さぁ、パレードの開幕だ」ニタァ


ヒューーー… ヒューーー… ヒューーー…

ドォォォン! ドォォォン! ドォォォン!


ほむら(まるで空襲だわ……)プルプル

マミ(ひぃぃ……!)ブルブル


キャー! イヤー! グワー!

ドォォォン! ドォォォン! ドォォォン!


ほむら「ちょっと!? こんなことして、彼女たちが挫けてしまったらどうする気なの!?」

まどか「新設即応大隊の訓練時に比べれば遥かにマシだ」

まどか「そもそも、女学生どもがまともに規則を遵守する兵卒になれるとはハナから思ってなどいない」

まどか「故に、挫けてもらっても一向に構わない。むしろその方が都合がいい」

ほむら「それ、どういう……」


ドォォォン! ドォォォン! ドォォォン!


まどか「思春期特有の妄想力とでもいうか、憧れに対する信仰心には凄まじいものがある」

まどか「それを統御するのは普通難しいが、こちらには魔法と言う魅力的な崇拝対象があるのだ。何もてこずることはない」

まどか「魔法の為ならその身を捧ぐ。魔法の為なら手段を選ばない。その非論理的行動こそが彼女たちの本質だ」

まどか(だからこそ、まずは魔法に対する恐怖心を植え付けなくてはならない。最も怖いのは、"もう何も怖くない"と思い込むことだ)

まどか「せっかくの貴重な兵士がすごすごとやられるようでは目も当てられない」

まどか(年端も行かない少女たちが戦場へと駆り出される姿には心が痛む)

まどか「見給え。綺麗な魔導砲撃だろう?」ニタァ

ほむら(この悪魔……!)ゾワッ


ドォォォン! ドォォォン! ドォォォン!


女子生徒1「こほっ、けほっ……い、息が……」

さやか「大丈夫!? きっと一酸化炭素中毒だ、今治してあげるっ!」シュインシュイン

まどか「美樹訓練兵、何をしている」

さやか「何って、見りゃわかるでしょ!? 治癒魔法だよっ!」

まどか「ふん、どけ」ドンッ

さやか「うわぁっ!」バタッ

女子生徒1「かはっ……かひゅ……」

まどか「……喉を火傷している。全く、誤診が命取りになるところだ」シュインシュイン


女子生徒1「あ、ありがと……ございま……」

まどか「自分の身は自分で守れ」クルッ タッ ヒュンッ

女子生徒2「あれが……同じ、"ヒト"なの……?」プルプル

仁美「……ようやく砲撃が、止みましたわ」プルプル


まどか「新兵諸君。これが魔法の威力、魔法の怖さ、魔法の恐ろしさである」

まどか「なぜ魔法が怖いのか。それは、君達が魔法を正しく理解していないからに他ならない!」

まどか(そう、魔法は怖いのだ。だからこそ慎重になり、自分の身を守ることを重視するというもの)


まどか「さぁ! 無限の時の中で、この私が直々に、本当の魔法の扱い方を叩き込んでやる!」


―――ドォォォン! ドォォォン! ドォォォン!



さやか「アハハッ! その気になれば痛覚も消せるんだァ!」ニヤァ


仁美「生きてる体なんて邪魔なだけですわぁ!」ニタァ


マミ「もう何も怖くないっ!」パァァ


一同「「「この命、隊長に捧げますッ!!」」」




まどか(どうしてこうなった……ッッッ!!!!!!)ガクッ



ほむら「貴女の狙い通り、最強の魔法少女軍団……いえ、ゾンビ軍団が出来上がったみたいね」

まどか「あ、あれー? い、いや、もっとこう、恐怖に怯えながらも運命に立ち向かう感じを想定していたのだが……」プルプル

ほむら「理不尽な暴力を与えながらも献身的なサポート。DV依存症のような何かね、アレ」

まどか「あー、巴曹長? その、いい感じのタイミングでリボンを切ってもよかったのだが……」

マミ「お心遣い、痛み入ります! ですが私は、隊長の与えて下さった達成感に勝る宝石は無いと愚考します!」キラキラ

まどか「なんだこいつ……」ゾワァ


別の日 見滝原総合病院


マミ「総員、傾注! MMM隊長より、訓示!」

まどか「本日はここ、見滝原総合病院にて発見された孵化しかけのグリーフシードを用い、実地研修を行う!」

まどか「我々は、貴様らに期待しない。だから私としては、望む。私を絶望させるなと!」

まどか(さすがに本物の魔女と対峙すればいくらか恐怖におののいてくれるだろう)ウンウン


さやか「魔女め……正義の鉄槌を食らわせてやる……!」グヘヘ

仁美「隊長様に良いところを見せないとですわ……!」デヘヘ

ほむら(このゾンビども……)


まどか「ここが結界の入り口だ。プリクラでも撮るつもりでくぐるといい」

まどか「中は使い魔でいっぱいだ。まぁ、遊園地のシューティングゲームのようなものだろう」

\HAHAHA!/

マミ「グリーフシードは無限にあるわけじゃないわ。いかに少ない魔力で多くの成果を出すかも重要よ!」

まどか「兵站を軽視するくらいならお家に帰れ! いざ、進発せよ!」

\ウォォォォォッ!/


お菓子の魔女 シャルロッテ結界内


ほむら「って、結界の中はもう壊滅状態……使い魔一匹残っていないわ……」ハァ

まどか「あいつら、魔力消費の激しい波動系の魔法を避け、肉体強化と物理攻撃のみで破壊しているのか……」プルプル

ほむら「魔女の居る場所へ、どういうわけか一本道が開かれているわね。マミかしら?」

まどか(これ、叛逆でもされようものなら私でもヤバイんじゃないか?)ゴクリ


シャルロッテの部屋


まどか「あのお人形さんが、魔女、だとぉ? 随分と幼女趣味が過ぎるな」

マミ「あら、可愛いのね」ウフ

まどか「暁美副隊長。敵は強いのかね」

ほむら「お菓子の魔女シャルロッテはいわゆる奇襲型。敵に疑似餌を叩かせて、本体が影から飛び出すタイプよ」

まどか「少々新兵には荷が重いか……」

マミ「っ! 隊長殿、私が志願します!」


まどか「よせ。貴官には無理だ」

マミ「私だって魔法少女です! みんなの先輩です! 任に堪えうると確信します!」

ほむら「やめておきなさい、巴マミ。私が代わりに行くわ」

マミ「くっ……隊長殿ぉっ!!」ヒシッ

まどか(ヒェッ)

まどか「し、仕方ない。最善を尽くしてこい、巴"先輩"」

マミ「あ、ありがとうございますっ……!!」キラキラ 


ほむら「……どうなっても知らないわよ」ジロ

まどか「……なにかアドバイスをください、暁美さん」


さやか「マミさん! あんなふざけた人形、蹴散らしてやってください!」

仁美「巴さん! がんばってー!」


マミ「身体が軽い! こんな気分で戦うのは初めて!」シュババッ!

マミ「疑似餌だとしても、私の瞬発力で何とかして見せるわっ! ティロ・フィナーレ!」ズバァン!


グバァァァッ!!(※恵方巻)


マミ「!!」


ガブッ!!


マミ「」プラーン


キャァァァァァ! イヤァァァァァァ!


まどか(ひぃぃぃぃぃっ!!!!)ガクガクブルブル


まどか「おいっ! 時間止めろ!」アセッ

ほむら「言われなくてもっ!」カチッ

ピタッ …

まどか「……アレ、ホントに大丈夫なのか? マミの頭についてたソウルジェムさえ私が持っていれば大丈夫、とのことだったが」

ほむら「それを貴女が持っている限り、マミの魂は死なないわ」

ほむら「ただ、早いところ原形を取り戻してあげないと、みんなの精神衛生が良くないわね」

まどか「それくらいは私の魔法でなんとでもなる、が……」シュインシュイン

ほむら「魔女はなんとかするから、そっちは任せたわよ」カチッ


ほむら「恵方巻は倒したわ」

マミ「た、たた、たいちょぉぉぉっ!!!」ダキッ ムニッ

まどか(このデカ乳、嫌がらせか!! あ、いや、ご褒美なのか……?)ムム


さやか「やっぱりまどか隊長はすごいや! マミさんをあの状態から無傷で助けるなんて!」

仁美「鹿目隊長様万歳! ですわ!」


まどか「諸君、よく聞け。このように頭をすっからかんにして敵の懐へと吶喊するようでは、グリーフシードの浪費にしかならない!」

マミ「ほ、本当にごめんなさいっ!」ウルッ

まどか「だが、マミは無事生還した。なぜか! それは、巴准尉の魂がソウルジェムに格納されていたからである!」

マミ「!」

さやか「!」

仁美「!」


まどか「ソウルジェムさえ砕かれない限り、君達は無敵の戦士なのだ!」


\ウォォォォォッ!/


まどか「人はいずれ死ぬ。だが、見滝原は残る」

まどか「ならば! MMMの魂は、ソウルジェムに永遠に残り、見滝原を守り続けるということ!」

まどか「この魂が朽ち果てるまで、我らの街を守るのだァ!」


\ウワァァァァァァ!/


まどか(これで本当に絶望しないんだろうな、暁美副隊長!?)ドキドキ

ほむら(絶望は回避できたけど、なぜか希望を与えてしまったようね……)


別の日 学校


上条「やぁ、おはよう。鹿目さん」

まどか「ほう、久しぶりの登校だな。腕はもう良いのか」

上条「それが奇跡的に治ったんだよ! お医者さんたちもビックリ――」

まどか「…………」チラッ

さやか「ッ……」コソッ

まどか「奇跡など、観測と体系化が不十分なゆえの錯覚」

上条「えっ?」

まどか「言うなれば、素晴らしき勘違いです」ニコ

上条「そ、そうかもね。あはは」


さやか「あ、あのさ、まどか隊長……」

まどか「ハァ。クラスでは隊長はよせと言ったはずだが?」

さやか「あっ! え、えっと、まどか? ちょっと相談があるんだけど、いいかな?」

まどか「……暁美君」チラッ

ほむら「嫌よ。かかわりたくないわ」

さやか「ちょっ!? も、もう! まどか! 屋上行こっ!」

まどか(また厄介な……)ハァ


学校の屋上


まどか「で、どうした。美樹訓練兵」

さやか「その……この魔法少女の最強の身体ってさ、えっと……ゾンビみたいなもの、だよね?」

まどか「魂と肉体を分離しているからな」

さやか「……こんな体でも恭介に受け入れてもらえると思う?」

まどか(やはりこの話か)

まどか「大前提として、仮に貴様が通常の人間の身体であっても上条恭介は君になびくのかね?」

さやか「うっ! さすが隊長、痛いところをついてくるなぁ」アハハ


まどか「とりあえず、兵士の恋愛における常識を教えておこう」

まどか「第1に、前線へ赴く前に結婚しろ」

さやか「けっ……!?!?」カァァ

まどか「第2には子どもを作れだが、これは男女が逆の場合だな」

まどか「いやそもそも初潮を迎えていなければ―――」

さやか「ちょ、ちょっと待ってまどか!? 私たち、まだ中学生だよ!? 結婚だなんて!!」

まどか「誰も日本国の法律にのっとって結婚しろとは言ってない。こういうのは形だけで良い」

さやか「そ、それって、どういう……」


まどか「これは暁美副隊長から聞いた話だが、志筑訓練兵も上条を恋慕しているのだそうだ」

さやか「え……」

まどか「だったら志筑と美樹と上条の三人で、一夫多妻で結婚すればいい。なんなら私が服従の魔法を上条にかけてもいい」

さやか「どぅ、え、えええっ!?!? な、なな、何言ってんの!? 無理だしダメだし!!」

まどか「はぁ……」ガクッ

まどか(成程。思春期の女学生を相手にするのは大変だな)ハァ

まどか(だが逆にこれを利用して、絶対に生き延びようという強い意志を植え付けられるのではないか……?)ムム


まどか(試してみるか)

まどか「マスコット君。志筑訓練兵をここへ」

キュゥべえ「きゅっぷい」

仁美「あわわっ!?」ストン

さやか「えっと、誰かの空間転移系魔法で仁美をテレポートさせたの?」

まどか「いいか、その魚のように小さな脳みそを使ってよく考えろ訓練兵ども」

まどか「貴様も志筑君も間違いなく今次の大戦で命を落とす!」

さやか「!!」

仁美「!!」


まどか「だがそれは名誉なことだ! わずかに生き残った魔法少女たちによって語り継がれる英霊となろう!」

まどか「勇敢に巨悪と戦い、多くの罪なき命と愛すべき夫を守り切った婦女子として永遠に崇められるだろう!」

仁美「お、夫だなんて……///」テレッ

さやか「服従の魔法で恭介を操るのはどうかと思うけど、でもそんなことも言ってられないんだね……」

まどか「無論、生きて還ってきた者には、この上ない真実の愛が待っている」

まどか(それを頼みに生き延びてくれよ、諸君)ニコ

仁美(あの微笑み……生きて還れると思うな、ということですの!?)ブルッ

まどか「命あるうちに結婚くらいはしておくべきだ、とだけ言っておこう」

さやか「えっと、要はおままごとみたいなことなんだよね?」

まどか「命懸けのな」


ハコの魔女 エリー戦


まどか「なんだこのクソザコ魔女は!? こんな奴に手間取る魔法少女がいれば敵より先に私が殺してやる!」


さやか「隊長に殺されたんじゃ、恭介に抱きしめられる資格なんて無いね!」

仁美「それは私も同感ですわ!」

さやか「はぁぁぁぁっ!!!」ズサァァァッ!!

仁美「いやぁぁぁぁっ!!!」バシュゥゥゥゥ!!

エリー「ギィヤァァァァァァァァァァ……」


さやか「はぁ、はぁ……やるね、仁美」

仁美「ふふ、さやかさんには負けられませんもの……」

さやか「一緒に、結婚しよう!」

仁美「ええ!」

ガシッ!!


ほむら(……!?!?)


風見野 廃れた教会


まどか「よくこんなちょうどいい場所を知っていたな」

ほむら「まぁ、昔ね。にしても、まさかあの3人を結婚させるなんてね」

まどか「愛すべき人間が居るとなれば無理をしなくなるのが人の常だ。愛国的洗脳でもされてなければな」

ほむら(だいたいこのまどかの考え方はわかってきたけれど、どれも裏目に出ているような……)

マミ「教会の飾りつけ、終わったわ。いつでも初めていいわよ」

まどか「ご苦労、巴少尉」

ガヤガヤ ワイワイ

上条「――――」フラフラ

ほむら「参列者は訓練兵たち、新郎は服従の魔法。で、神父は?」

まどか「仕方ない。私が務めよう」ニコ


まどか「新郎、上条恭介♪ 貴方は新婦たちが病める時も健やかなる時も以下省略」

上条「チカイマス……」

まどか「新婦、美樹さやかと志筑仁美♪ 貴女たちは新郎が病める時も健やかなる時も以下省略」

さやか「誓うよ、あたし」

仁美「ええ、誓いますわ」

まどか「それでは♪ 誓いのキ―――」

さやか「ちょ、ちょっと待ってまどか!」

まどか「……あぁ?」


さやか「その、さっき仁美とも話したんだけど……恭介の服従を解いてもらってもいい、かな?」

仁美「どうかお願いしますわ、鹿目さん」

まどか「……ハァ。たしか、参列者の中に記憶操作系の魔法を使える訓練兵が居たな?」

さやか「まどか……!!」パァァ

仁美「鹿目さん……!!」パァァ

まどか「どうなっても知らんぞ」シュィン

上条「ん……あ、あれ? どうして僕、こんなことを?」キョロキョロ


上条「―――そんな、2人が怪物と闘わなくちゃいけないなんて……」

さやか「恭介、お願い。今だけは、夢を見させて」

仁美「私たち、後悔したくありませんの」

上条「……わかった。僕だって、2人のことは嫌いじゃないし、むしろ、その、好きっていうか……」テレッ

まどか「」イライライライラ

上条「だけど、これだけは絶対に約束してほしい」

上条「必ず、2人とも、生きて帰って来て」

さやか「―――うん!」

仁美「―――ええ!」


チュッ チュッ


パチパチパチパチ!


まどか「」ニッコリ


さやか「たとえ肉体が滅びようとも!」

仁美「皆の心に生きる存在として帰ってきますわ!」


ほむら(…………)


ほむら「―――で、彼の記憶を消去して家まで転送させたのはいいけれど、"あっち"はどうするのかしら?」

まどか「さすが暁美副隊長。気配に気づいていたか」

マミ「え、え?」

まどか「"彼女"をここへ」

ほむら「私も元々そのつもりだったから、別にいいのだけれど」ヒュン ヒュン


杏子「う、うわああ! な、なんだ!? 今度は時間が動き出したぁ!?」


マミ「さ、佐倉さん!?」


ザワザワ ドヨドヨ


杏子「テ、テメェら、何勝手にヒトん家を占拠してやがるんだ!」プルプル

ほむら(さすがの杏子でもこの2個大隊を前にしては戦いを挑んで来ないのね)

マミ「た、隊長殿! これは、どういう……!」アセッ

まどか「巴中尉と、そこの佐倉杏子との関係は暁美副隊長から聞き及んでいる」

まどか「幻惑の魔法さえ使えれば最強の一角とも言える貴重な戦力らしいではないか! 使わない手は無かろう?」ニタァ

マミ「で、ですが……」

まどか「何か?」ニコ

マミ「は、はいぃ……仲直りしますぅ……」グスッ

ほむら(恐怖って簡単に人を支配できるのね)


まどか「佐倉杏子君。君は状況を理解できているようだ。その聡明さ、ぜひ仲良くさせてもらいたい」ニコ

杏子「な、なんなんだよ……お前たちは……っ」プルプル

まどか「ときに、君は神を信じるか?」

杏子「はぁ? …………」

杏子「……神の名を騙る悪魔なら、この眼で見たことがある」ボソッ

まどか「そう。その通り。そこでだ、私は今ここに、改めて宣言する」

まどか「ああ、神よ……」

まどか「貴様を切り刻んで」

まどか「―――豚のエサにでもしてやる、とッ!!!」


まどか「諸君、良く聞いておけ!」

ほむら「!」

まどか「非情な運命ばかりを突き付けてくる、くそったれの神に代わって!」

まどか「我ら魔法少女のあるうちは、我々が神に取って代わるのだ!」

まどか「傲慢な神とやらを、失業させてやれ!!」


\ウワァァァァァァァ!/


まどか「では戦友諸君。戦争の時間だ」ニタァ



杏子(さっきまで神父やってた人間の台詞かよ……)プルプル


ほむホーム


ほむら「…………」

まどか「ふぅ」

マミ「……っ」ドキドキ

杏子「…………」ムスッ

ほむら「揃ったわね。じゃぁ、ワルプルギスの夜討伐へ向けた作戦会議を始めるわ」

杏子「おい! あたしはまだ認めたわけじゃねーぞ!」バンッ!

まどか「佐倉君は先ほど敢行した幻惑魔法の修行がし足りないらしいなぁ? 巴中尉?」ニコ

マミ「んふ♪ いつでもしごいてあげるわよ?」ニコ

杏子「ヒッ……」

まどか「暁美君、続けたまえ」ニコ

ほむら(えぇ……)


ほむら「まず、第1目標はワルプルギスの夜本体の撃破。だけど、これを達成するためには、強力で膨大な数の使い魔を退けなければならない」

まどか「こちらの魔力も限られている。補給線を維持しながらの電撃戦、しかも対空戦ときたもんだ」

ほむら「ええ。だから前線部隊、後方展開部隊、補給部隊を編成するわ」

まどか「前線は我らのうちほむら以外の3人。後方に3個中隊、補給に1個中隊を割り当てよう」

マミ「えっと、補給は回復や時間停止のようなサポートメインの魔法の人たちで編成ですよね」

ほむら「私はそこで前線と後方を繋ぐ役目かしら」

まどか「あまり時間はかけられない。都市防衛戦ではあるが、大将首を手早く取らねばな」


ほむら「そして本体について。最初は逆立ちしているのだけれど、ある程度ダメージを与えるとひっくり返って正位置になるわ」

まどか「ほう?」

ほむら「正位置になってからの奴は凄まじい。だから、なった瞬間にまどかの一撃で決着をつける」

杏子「つまり、ひっくり返すまではあたしたちでやれってことか」

ほむら「そうね。これだったらまどかの魔力消費を抑えながら勝ちを狙える」

マミ「たしか、隊長殿の全力なら一撃でワルプルギスの夜を倒せるけど、魔力が空っぽになってしまうんでしたよね」

ほむら「そうよ。そうなったらまどかは死ぬわ」


まどか(魔力が空っぽになったら魔法少女は死ぬ。そういう嘘を流しておいた)

まどか(私がマスコット君と交わした交換条件は以下の3つだ)

まどか(1つ目、グリーフシードの最低限の供給)

まどか(2つ目、いかなる妨害行為をもしないこと)

まどか(3つ目、魔法少女の真実について絶対に口外しないこと)

まどか(つまり、ソウルジェムが穢れきった時に魔法少女が魔女になるという事実を隠蔽した)

まどか(もしこの条項を破棄したら、すべての魔法少女を、絶望を感じるヒマなく私が射殺すると言っておいた)

まどか(奴らが欲しいものは希望と絶望の相転移だからな。こうして交換条件は守られているというわけだ)


マミ「にしても、とても厄介な魔女ね……。魔力がゼロになった魔法少女を、魔女に変えることができる能力を持っているなんて」

まどか(最終決戦まで脱落者は誰1人出すつもりはないが、対ワルプル戦では正直どうなるかわからない)

まどか(戦場で魔女になってしまうことは予想がつくので、そのようなデマも広めておいた)

まどか「巴大尉。前にも言った通り、たとえ元戦友だとしても魔女になったら敵だ。殺せ」

マミ「わ、わかっています……」

まどか「また、むやみに敵の数を増やすのも得策ではない。常に魔力切れには注意し、魔女に成り下がるくらいなら撤退するよう指導を徹底せよ!」

マミ「はっ! 通達してきます!」タッタッタッ

杏子(マミ、一体どうしちまったってんだ……)


ほむら「仮に瀕死の魔法少女がワルプル撃破後に残っていたらどうするつもりなのかしら?」

まどか「その時は私の余剰魔力で抹殺する。魔女へと変化する余力を残すことなく、だ」

まどか(本当は他の方策を用意しているが、ここで言うのは得策ではない)

杏子「……グリーフシード惜しさにそこまでしなくてもいいじゃねえか」

まどか「違う。インキュベーターの裏切りを念頭に置く必要がある、と言っている」

ほむら「ッ!」

杏子「?」

まどか(まるで第2次大戦末期の米ソ関係だな。戦後のパワーバランスまで考えて戦わねばならんとは)


まどか「奴は今次の大戦において、参戦するすべての魔法少女を魔女にし、エネルギーを得たいと考えているはず」

杏子「そ、そうなのか? あの野郎……」

まどか「であれば、交換条件を破棄し、なんらかの妨害工作は行われると見てまず間違いないだろう」

杏子「なんらかってなんだよ」

まどか「……例えば兵士たちの間に、私が嘘を吐いていて信用できない、ということを流布させる」

ほむら「疑心暗鬼を煽られたら統率が取れないわ」

まどか「せっかくワルプルギスの夜を撃破したとしても、魔法少女同士で戦わされる羽目になるやもしれん」

杏子「なんだよ、それ……」


まどか「だが、宇宙生命体相手に戦争を仕掛けるのは無謀に過ぎる。どこかで外交的バランスを取らなければならない」

ほむら「それが、瀕死の魔法少女を殺す、という脅しをすることになるのね」

杏子「キュゥべえにしてみりゃ食い物を取り上げられるようなモンだろうけど、ホントに通じんのか?」

まどか「この戦争の第1目標はワルプルギスの夜撃破だ。では、第2目標は?」

ほむら「……鹿目まどかの生存の保障」

まどか「たとえ主目標撃破後であっても、司令塔が崩壊すれば全部隊の壊滅まであり得るからな」

杏子「確かに合理的だな。綺麗ごと言って全員生き残るハッピーエンドをうそぶくよりはマシかも知んないけどさ」

杏子「魔女になってまどかを襲うくらいなら死ね、ってことかよ」ケッ

杏子(マミが知ったら、どうなるか……)

ほむら「…………」


まどか「実際、どうしたって人死には出るだろう。それも、か弱い女学生が無惨に殺されるのだ」

ほむら「ええ、そうね」

まどか「もし可能なら生き延びてもらいたい。が、どうしても死ぬのなら、魔女などにならず、安らかに眠ってほしい」

杏子「なるほど、な」

ほむら「貴女の甘さが裏目に出ないことを祈るわ」

まどか「ふん……」

杏子「けどよ、戦ったあとのグリーフシードはどうすんだ? キュゥべえからの供給はどうせ無くなるんだろ?」

まどか(まぁ、それは考えなくていい。存在Xとの契約によって私は帝国へと戻るだけなのだから)

ほむら「ワルプルギスの夜がドロップするグリーフシードに期待しましょう」


見滝原工業地帯 舞台装置の魔女 ワルプルギスの夜 決戦当日


マミ「大隊長入場!!!」ビシッ!

まどか「御苦労」スタ スタ


さやか「…………」

仁美「…………」

魔法少女s「…………」


まどか(動揺の色も無い鍛え上げられた少女たち。磨き上げられた魔装具一式は乱れも無い)

まどか(誰が見ても訓練の行き届いた精鋭に見える)

まどか(だがまだ完ぺきではない。お菓子の魔女戦で巴少佐がやらかしてくれた様な、少女の殻を脱ぎ捨てきれていない部隊員が大半だろう)

まどか「……期待しているぞ、お前たち」ニコッ

まどか(やさしく微笑んで士気アップだ♪)


さやか(あの表情は地獄の訓練で何度か見た……!)ブルッ

仁美(気合を入れなければ隊長殿に殺されてしまいますわっ!!)ブルッ


まどか「MMM諸君! 本日をもって貴様らは無価値なウジ虫を卒業する!」

まどか「本日から貴様らは見滝原を守護する魔法少女である!」

まどか「諸君、かつて私をあやしてくれた人のため、赤子を抱く母のため、我らの背にいる人々のため」

まどか「忌むべき怨敵らから皆を守るために私は行こう」

まどか「この空を埋める幾万もの敵だろうとも、私は押し止めよう」

まどか(何かあったら私が守ってやる。慎重に行けよ諸君)


さやか(本気だ!! 隊長殿は見滝原のため!!)

仁美(たとえ全ての魔女を敵に回しても退かぬ覚悟ですわ!!)


さやか「最高だよ、まどか隊長! いきなり晴れ舞台を用意してくれるなんてさぁ!」アハハハ

仁美「えぇ、実はわたくしお芝居がしたい気分でしたの! 舞台装置の魔女なんてとっても気が利いてますわぁ!」ウフフフ


まどか「うむ、そうだな」ニコ

まどか(乗るフリをしてくれている。礼儀正しく育ったものだ)ウンウン

まどか「さあ! 私に続け。私に続け、見滝原を共に守らんと欲する魔法少女たちよ!」


\ウワァァァァァァァァァァァァ!!/


ほむら(話が噛みあってないわ……)


ヒューーー… ヒューーー… ヒューーー…


まどか「えー、現在見滝原上空の天候はスーパーセル改め空一面の魔導砲弾」

マミ「弾着観測……ッ!」


ドォォォォォン! ドォォォォン! ドォォォォン!


マミ「今ッ! 突撃ッ!」

\パッパラッパパッパパー/

まどか「総員! 交戦開始<エンゲージ>!」

杏子「ひぇぇ、マジであの爆炎の中に突っ込むのかよ!」

まどか「使い魔師団の中に単騎で突っ込んでもらっても一向に構わんが?」ニコ

杏子「っせ! わーってるよ!」

ほむら「時間停止、行くわよ! 前線部隊総員、マミのリボンにつかまって!」カチッ


カチッ

まどか「――爆炎を抜けると、そこは本丸だった」


ワルプルギス「キャハハハハハハハハハハハハハ!」


まどか「こんにちは! そして、さようなら!」ニコ

杏子「おい! まどかは下がってろ! 上半身は"あたしたち"に任せな!」

杏子「―――ロッソ・ファンタズマ!!!」

杏子(本体)「行くぜぇ!!」

杏子s「「「「おうっ!」」」」


ワルプルギス「キャハハハハハハハハハハハハハ!」


まどか「私はしばらく側面攻撃を仕掛けてくる使い魔の処理、か」バシュン! バシュン!

ほむら「後方の安全は確保したわ! 巴マミ! 今のうちに!」

マミ「あの歯車にとっておきをぶち込んじゃっていいのよね!」

マミ「隊長殿との訓練で鍛え上げられた必殺技、行くわよ……!」


シュィンシュィンシュィン…


マミ「―――ティロ・フィナーレ・ウルティモ!!!」


ドォォォォォォン! ドォォォォォォン! ドォォォォォォン!


まどか「おおっ、三連装砲!」

ほむら(まるで陸上戦艦ね……)


ワルプルギス「キャハハハハハハハハハハハハハ!」


ほむら「次弾装填! って、残存魔力は!?」

マミ「ご、ごめんなさい。手持ち分のグリーフシード、全部使ったけど、ちょっと調子に乗っちゃったみたい……」

ほむら「―――ッ!」カチッ! シュバッ! 

ほむら「―――ほら、連れて来たわ!」シュバッ!

さやか「うわっとと! マミさん! 追加のグリーフシードです!」

マミ「あ、ありがとう美樹さん!!」

さやか「んで、杏子も! ケガ、治療するよ!!」

杏子「おう! "あたし"をひとりずつ頼む!」


まどか「…………」フム


まどか(一応戦線維持は出来ている。順調だ。あとは消耗戦、時間の問題か?)

まどか『後方部隊諸君! 私のテレパシーは受信できているな!』

まどか『奴らに天上の世界から鉄槌を下してやろう! いかに自らが無力なのか諭してやるのだ!』

まどか(あとは巴中佐の一発でひっくり返るだろう! 後方部隊は保身に入れ!)

仁美(総員、全力で攻撃をしろ、ということですわね!)

仁美『了解ですわ! 見滝原と隊長様に栄光あれ!』


マミ「もう一発……! ティロ・フィナーレっ!!!!」


ドォォォォォォン!


ワルプルギス「キャハハハハハハハハハハハハハ!?!?」ガクン


杏子「やったか!?」

ほむら「これで体がひっくり返るわ!」

まどか「意外に早い出番となったな。早いに越したことはないが」

まどか「出でよ、トレッチガン。最高出力……」キュィィィィィ…

まどか「私は神を信じない。市場原理こそ全てなのだ……!」ボソボソ


ワルプルギス「」グルン


まどか「―――今、終わらせる!!!」


バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!


バシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!


さやか「きゃあっ!?」

杏子「ぐっ!! すげぇ魔力だ……ッ!」

マミ「なんて魔弾なの……!!」

ほむら「行ける……! これなら……!!」


まどか(……おかしい。順調すぎる)

まどか(存在Xが与えた試練が、こんなにも条理で満ちていようか……)


ワルプルギス「」


ワルプルギス「」シュイィィィンッ!


まどか(―――――ッ!?!?)

マミ「え……嘘、そんな……っ」プルプル





ワルプルギス「キャハ?」



杏子「ち、小さくなりやがった……あたしたちより少し小さいくらいか!?」

ほむら「な、何よあれ……あんなの、見たこと無いわ……」プルプル

さやか「どういうこと!? どうなってんの!?」


ワルプルギス「キャハ!」ビュンッ!


まどか「しまっ――――」


ビュン! ビュン! ビュン!


杏子「がはっ……」グサッ

マミ「ぐっ……」バシュッ

ほむら「ぬぅぅっ……!」ズバァッ

さやか「え、えっ!?!? なんで、3人とも、血、吹いてんの!?!?」


まどか(なんだあの高速人型飛翔体は!? それにあの動き、まるで……!)




       まるで……私……!?




ワルプルギス(幼女)「キャハ!」




まどか「美樹! 3人の手当てを頼む!」

さやか「えぇっ!? で、でもぉっ!」

まどか「無駄口を叩く暇があったら、生き残るために最善を尽くせ!」

さやか「わ、わかったよ、まどか!」

ほむら「貴女、どうする気なの……!?」グフッ

まどか「私が奴を追うしかないだろう!」ビュンッ!


まどか(なんだあれは……まるで私、ターニャ・デグレチャフの飛行をコピーしたかのような動きではないか!)ヒュン! ヒュン!

使い魔「キャハ!」

まどか「邪魔だっ! どけぇっ!」バシュン!

まどか(なるほど舞台装置の魔女め、くだらない演出をしてくれる!)


まどか(理屈は全くわからんが、今はともかくアイツを追わなければマズイッ!)ヒュン! ヒュン!

使い魔「キャハハ!」

まどか「くそ、キリが無い!」バシュン!

まどか(後方が撹乱されれば、間違いなく包囲戦に持ち込まれる! そうなれば殲滅されて終わりだ!) ヒュン! ヒュン!

使い魔「キャハハハ!」

まどか(早くヤツの動きを……止めなければ……、早くッ!)ヒュン! ヒュン!


ワルプルギス(幼女)「キャハ!」ヒュン! ヒュン!


ワルプルギス(幼女)「キャハ!」ヒュン! ヒュン!

女子生徒1「きゃぁっ!!」パリーン

女子生徒2「ぐわぁっ!!」パリーン

魔女1「……キャハ?」

魔女2「キャハハ?」


仁美「戦線が崩れていきますわ!? 魔法少女たちが次々に魔女に……いったい何が!?」

まどか「後方部隊へ通達! 幼女型ワルプルギスには構うな! 自らの職務を遂行しろ!」ヒュン! ヒュン!

まどか(ここで使い魔に対する壁が薄くなりでもしたらワルプルギスの思うつぼだ!)

仁美「わ、わかりましたわ!! 皆さん、よろしくって!?」



キュゥべえ「きゅっぷい」


仁美「キュゥべえさん!? こんなところに現れて、危ないですわよ!」

キュゥべえ「おかしいと思わないかい?」

仁美「な、なにがですの?」

キュゥべえ「今まさに魔法少女たちを魔女化している敵を無視しろ、なんて命令を出すなんて」

仁美「それは……」

キュゥべえ「つまりそれって、戦線後退は許容できない。徹底して遅滞戦闘に努めよ、ってことだよね?」

キュゥべえ「まどかは手柄を独り占めしようとしているかもしれないよ。あるいは……」

キュゥべえ「君達を魔女にすることでわざと魔法少女の数を減らして、終戦後の分け前を確保したいのかもね」

仁美「…………」


仁美「いいえ。まどか隊長様に限ってそんなことはあり得ません」

キュゥべえ「どうして?」

仁美「あのお方は、心の底から見滝原の人々のために御身を捧げるおつもりなのです」

仁美「まだまだ未熟なわたくしたちにはわかるべくもありませんが、きっと戦略上の意味があっての命令」

キュゥべえ「君も魔女になってしまうかもしれないんだよ?」

仁美「わたくしたちのような一兵卒にできることは、ただ隊長様を信じ抜くことだけですわ!」

キュゥべえ「……わけがわからないよ」

仁美「隊長様に神の御加護があらんことを!」


ワルプルギス(幼女)「キャハ!」ビュン!

まどか(なんだ!? 急に上昇した!?)

まどか(そうか、後方の撹乱は効率が悪いと見たか!)ビュン!

まどか(次の一手はおそらく、高高度からの魔弾乱射。使い魔も巻き込んでの地獄絵図を描く気だな)

まどか(そんなことをされたら、さすがに彼女たちを守り切れない……っ!)ビュンッ!


さやか「……二つの閃光が、宇宙へと延びていく」

ほむら「ワルプルギスの夜から放たれる数々の攻撃の豪雨の中を」

マミ「気高くかけるその姿は」

杏子「まるで、魔法の妖精……」


ワルプルギス(幼女)「キャハ!」ビュン!

まどか(こいつ、どこまで上昇する気だ!? まもなく宇宙空間だぞ!?)

まどか(さすがの魔法少女といえども、飛行制御、圧力調整、体温維持、酸素生成、肉体強化……キツイ!)

まどか(だがそれは相手も同じはず……!!)

まどか(まさかこいつ、私とのタイマンを望んでいるのか? ここがそのステージだと言いたいのか?)

ワルプルギス(幼女)「キャハ!」クルッ

まどか(なんと非合理な……なるほど、確かに元人間らしい)フッ

まどか(無論、やつを一撃で仕留める魔力はある。が)

まどか(それは私が魔女になること、すなわち眼下に広がる地球の崩壊を意味している)

まどか(まさに前門の虎、後門の狼と言ったところか)クッ


まどか(……奥の手を使わざるを得ない)


まどか「主の恵みを信じよ」

まどか(状況を打開するには、最初にキュゥべえにもらった命令下達権を利用するしかない)

まどか「主は我々をお見捨てにならず」

まどか(本当は、この願いをもって全ての魔法少女を人間に戻すつもりだったが。いや、これこそが奴の狙いか)

まどか「我が惑星の敵を打ち滅ぼす力を……」

まどか(すまない、暁美ほむら……君の戦いは、まだまだ続きそうだ)

シュィィィィィィン…

まどか「―――与えたまえ」ジャキッ!


ワルプルギス(幼女)「キャハ?」


??「もういい。もういいんだよ、もう一人の私」



まどか「……ッ!?」



??「私の願いは、全ての宇宙の、過去と未来の全ての魔女を、この手で消し去ること」

??「私をこの世界に呼んでくれてありがとう。貴女を宇宙の再構築に巻き込んじゃって、ゴメンね!」

まどか「……もしや、貴女が存在Xなのか!?」

??「ううん、私は神様じゃない。そっちの子たちを連れていくためにこの世界に来ただけ」

??「この世界の未来は、もう一人の私に任せるね」

まどか「お、おい!」

??「それじゃぁ、いこっか」


ワルプルギス(幼女)「キャハ?」


シュワワワワワワ…


まどか「―――ハッ。い、今のは、なんだったんだ? フー・ファイターか?」キョロキョロ

まどか「ワルプルギスの夜と、あの女神は、消滅した?」

まどか「勝った……のか?」


存在X(星座)「この世界は安定を得た。その上、お前には信仰心が芽生えたようだ」

まどか(星の並びが顔になった……奴か)

まどか「信仰心? あぁ、この"まどか"とかいう概念に対する信仰は芽生えたらしい」

まどか「やはり最後に信じられるのは人の子の超人的な意志だけだ。ニーチェもそう言っている」

まどか「神は死んだ、とな!」

存在X「ほう……」


まどか「それで、自称神とやらが、この私をタダでこき使おうというのではあるまいな?」

存在X「約束は守ろう。お前は元の世界に戻す」

まどか「それと、この世界の私はまだ貴様に対する命令権を所持している」

まどか(まさか神に準じる存在が複数現れるとはな)

存在X「言ってみろ」

まどか「この世界のすべての魔法少女を人間に戻せ。先の大戦で魔女になった者も含めて」

まどか「それが、この世界のあるべき未来。"まどか"が再構築し、魔女が消滅した宇宙の中の、ひとつの答え……だ」

存在X「なるほど、確かに"まどか"に対する信仰心を持っているようだ」


存在X「よかろう――――」


見滝原工業地帯


使い魔「キャハ! キャハ!」

杏子「クソ、使い魔に押されてる!」

仁美「前線の皆さんは、生き残った私たちが守りますわ!」

使い魔「キャ―――」

マミ「……あ、あれ? 使い魔たちが……」

ほむら「……消滅していく」

女子生徒1「あ、あれ……?」

女子生徒2「私たち、なんで……?」

仁美「あ、ああ、魔女になった皆さんも次々と元の姿に……!」グスッ

マミ「まさか、これって!」

杏子「勝ったのか!? まどかの奴が!!」


さやか「み、見て! 空から、まどかが降ってくる!」




まどか「…………」フワフワ




ほむら「ま、まどかァー!」ダキッ


ほむら「まどか!? 貴女、まどかなのね!?」ポロポロ

杏子「何言ってんだ? どう見てもまどかじゃねーか」

まどか「んぅ……あ、あれ? 貴女は……?」

ほむら「そうよね! わかるはずないわよね! 私は、暁美ほむら!」グスッ

さやか「えっと? これ、どういうこと?」

まどか「あ、さやかちゃん! これって、どういう状況なの?」

さやか「おおう!? まどかがこんな可愛らしい喋り方をするなんて!?」

マミ「ご無事ですか! まどか隊長!」

まどか「た、隊長!? ええっと……?」

ほむら「中身が入れ替わってる。ということは、つまり、私たちは勝ったのよ」


ほむら「見滝原と、鹿目まどかを、守ったのよ……!」


ほむホーム


まどか「――――そんなことがあったんだね」

杏子「まさか、こっちのまどかが本物だとはな」

さやか「うぅ、幼馴染としての記憶が改ざんされてるなんて……」

マミ「でも、こっちの鹿目さんは可愛らしくて好きよ。あ、もちろん前の隊長のことも尊敬してますけれど」


ほむら(気付いたら私たちは魔法少女から人間に戻っていた。それだけじゃなく、魔女もインキュベーターも世界から消えていた)

ほむら「彼女、今頃何をしてるのかしら……」

まどか「……あのね、ほむらちゃん。私、宇宙でのこと、少しだけ覚えてる」


まどか「これはね、優しい心を持った人みんなが願った結末の一つなんだって」ウェヒヒ


――――――――――――――――
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南方大陸


ヴィーシャ「―――えっと、少佐殿? 先ほどの訓示は一体……」

ターニャ「神を切り刻んで豚のエサにする、のくだりか?」

ヴィーシャ「は、はい。何かあったのですか?」

ターニャ「一つ確信を得たのだ。神は不条理であり、それを正すのは人の子しかいない、と」

ターニャ「それと、せっかくの存在Xをおとしめるチャンスを逃してしまった……」シュン

ヴィーシャ「えっ?」


ターニャ「結局私も合理性を欠いた、一人の感情的な人間だった、ということだ」

ターニャ「私の戦いは、此度の戦争以上にまだまだ続くらしい……」ハァ





おわり

いいssだった、掛け値なしに

これは素晴らしいSS

素晴らしい

乙ー よかった

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