王馬「東条ちゃんって性欲あるのかなー?」 (377)

(エロい展開は)ないです。
基本的に男子のトークが中心です。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1507996819

天海「やぁ、真宮寺君。ちょっと待たせちゃったすかね?」

真宮寺「いいや、僕も今来たところだヨ」

星「……今日は俺も邪魔させて貰ってるぜ」

天海「あ、星君。珍しいっすね。何かいいことでもあったんすか?」

星「何、今朝の料理が気に入っただけさ」

真宮寺「ククク……なら、キミの今日の話題は決まったようなものだネ……」

百田「よう!お、今日は珍しく全員揃ってるみたいだな!」

天海「やあ、おはようっす百田くん」

真宮寺「じゃあ、早速活動開始だネ……皆がどんな話題を持ち寄り、発展させていくのか……今から興味が尽きないヨ」

星「フン。そんな大げさなことじゃねーさ」

百田「その前に、ちょっといいか?今日はお前たちに……新メンバーを紹介するぜ!」

天海「新メンバー?それって誰っすかね?」

真宮寺「まァ、何となく予想はつくヨ……」

百田「よし、入ってこい、終一!」

最原「……はは。やぁ、みんな」

真宮寺「ククク……やっぱりネ」

天海「最原君っすか。成る程、って感じっすね」

星「へぇ……最原か。最近は女子とばっかりつるんでたみたいだが、どういう心境の変化だ?」

最原「うぐぅ!?」

百田「まぁまぁ、そう言うなって!ま、確かに俺も最近は終一とあんまりコミュニケーション取れてなかった気がしたからな」

最原「百田くん達がたまに図書館で集まってるって話を聞いて、僕も混ぜて貰えないかお願いしたんだ」

百田「おう!そういうわけで二つ返事でOKを出したわけだが、問題ないよな?」

天海「いいんじゃないっすかね?最原君なら大歓迎っすよ」

真宮寺「僕も問題ないヨ。超高校級の探偵である最原君なら、僕達とはまた違った視点で『彼女』を観察してくれるかもしれないからネ」

星「最原なら口も固そうだし、余計なことを言いふらしたりもしないだろうし……ま、いいんじゃないか?」

最原「あ、ありがとう……みんな」

最原(うぅ……これは結構、罪悪感が大きいな……)


~~~~

最原『え?調査の依頼……?』

赤松『う、うん……正直、私は気が進まないんだけどね……』

茶柱『何を仰っているんですか!女子のピンチなんですよ!?』

最原『えっと……話が見えないんだけど……』

東条『私も乗り気ではないのだけれど……一応、当事者でもあるみたいだから私から説明させてもらうわね』

最原(当事者?東条さんが?)

東条『最近、一部の男子が……図書室に集まって何かしているらしいのよ』

最原『図書室に……?』

東条『最原君には、彼らが一体何をやっているのか……それを調べて貰いたい、ということらしいわ』

最原『……その説明だけだとまだイマイチピンと来ないんだけど……その人達に直接聞いちゃ駄目なの?』

茶柱『何を言ってるんですか!そんなことをしたら、証拠を隠滅されてしまうじゃないですか!』

最原『そ、そんな大げさな……そもそも、誰が集まってるのかな?東条さんが当事者、っていうのも気になるところだけど』

春川『……それは私から説明するよ』スッ

最原『え……!?春川さん……!?』

春川『……何?私がいるのがそんなに意外?』

最原『い、いや……そういうわけじゃ』

春川『話戻すよ。まず、東条が当事者、ってところだけど……』

春川『ここ最近、何人かの男子が時々東条のことチラチラ見てるんだよ。たまたまとかそういうのじゃなく、明らかに意図的にね』

最原『……それって、つまり』

春川『そう、最初に気付いたのは私ってこと。それで、そいつら全員がその後図書室に集まってる……偶然だとは思えないでしょ?』

最原『……それだけじゃ、なんとも言えないかな。確かに気になることかもしれないけど…』

最原『当事者である東条さんが気にしてないのなら、第三者である僕達が口出しするほどのことじゃないと思う』

茶柱『キエエエエエエエエエエエエエ!やっぱり最原さんも男死の味方をするんですね!許せません!今すぐネオ合気道の餌食に――』

春川『黙ってて。殺されたいの?』ギロッ

茶柱『は、はい!スイマセンでした……』

春川『……まぁ、最原ならそう言うだろうとは何となく思ってたよ。でも……』

春川『これから話す情報を聞いたら……最原だって依頼を受けざるを得なくなるはずだよ』

最原『……え?』

春川『ある意味、最原にも関わってくる事だしね』

最原『それって、一体……?』

春川『――その変な集会のメンバーの1人は……百田なんだよ』

今日は以上です

~~~~

最原「……」

百田「どうした?終一。急に黙ってよ」

最原「あ、いや……他の男子はメンバーじゃないんだね」

星「ああ。俺がいるのにキーボやゴン太がいないってのは、確かに妙に思うかもしれねぇがな」

最原「いや、そういうわけじゃ……って、王馬君もだよね?」

百田「ああ、王馬な……他のやつも含めて、別にハブってるわけじゃないんだが……ちょいとばかし事情があってな」

最原「事情?」

百田「ま、それも含めて追い追い説明してやるから。まずは歓迎会だ!」

真宮寺「まァ、既に見知った間柄だけどネ」

天海「最原君はコーラでいいっすか?」

最原「あ、うん。ありがとう」


最原(……メンバーは、真宮寺君、天海君、星君、そして百田君……確かに春川さんの報告通りみたいだ)

~~~~

最原『百田君が……!?でも、それが僕にも関わることって、どういう意味?』

春川『……アンタさ、ここ最近、百田と一緒に行動した覚えある?』

最原『え?』

最原(ここ最近一週間は……確か……)

最原(夢野さんのマジックの練習に付き合ったり、入間さんの発明の実験体にされたり……)

最原(東条さんに料理を教えて貰ったり、春川さんと一緒に茶柱さんのネオ合気道の特訓に参加したり……)

最原(あとは、赤松さんと一緒にピアノの練習を……?)

最原『……全然百田君と絡んだ覚えがない!?』

最原『いや、それどころか……男子と一緒に過ごす機会すら全くなかった!?』

最原『も、もしかして僕……ハブられてるんじゃ……!?』ガーン

赤松『そ、それは違うよ!きっと皆、最原君に気を使って誘いにくかったんだと思うよ……多分』

入間『いっつも女の尻ばっか追っかけてる、軽薄で必死な童貞野郎だと思われてるかもな!ヒャーッヒャッヒャ!』

最原『うわあああ!』

赤松『も、もう!入間さん少し黙ってて!』

入間『は、はひいいい!』

春川『まぁ、最原の自業自得な面もあるからそれは置いておいて』

白銀『あ、置いておいちゃうんだ……』

春川『……おかしいと思わない?いくら最原の予定が埋まってたからって……』

春川『百田が何かそういう集まりに参加するなら……真っ先にあんたを誘うはずだよ』

最原『……!』

春川『一応聞いておくけど、百田と喧嘩とかしてないよね?』

最原『……いや。確かに、ここ最近は百田君とじっくり話す機会は無かったけど……』

最原『それでも、喧嘩をしたり気まずくなったりとか……そんな覚えはないな』

春川『なら、決まりだね。百田はあんたにも言えないようなこと良からぬことをしようとしてるか』

最原(良からぬって……大げさな……)

春川『――それか、『女子といつも一緒にいる』最原だから……言いにくいことだったのか、ってところだね』

最原『……!成程、春川さんが言いたいことがわかったよ』

最原『僕経由で女子に秘密が漏れてしまうかもしれない……それを恐れて百田君は僕を誘えなかった。春川さんはこう考えているんだね?』

春川『そういうこと。だから私から……じゃなくて『女子全員』からあんたに依頼したいのは――』

春川『これから数日間男子と一緒に行動して、信用を得てから……』


春川『その怪しげな集会に参加して――目的を探ること、だよ』

以上です

最原『……正直、百田君が何か悪いことを企むとは思えない』

春川『……』

最原『――だけど、僕も個人的に気になってきたし……その依頼、引き受けるよ』

春川『……ありがと。じゃ、早速今日からお願いね』

白銀『ええ!ちょ、ちょっと、それは地味に困るよ!最原君には、今日これから私の作った衣装を試着してもらうことになってたんだよ!?』

アンジー『そうだよー!終一、明日はアンジーの絵のモデルになってくれるって約束してたよね?』

東条『私が言うのも何だけど……最原君はもっと自分のために時間を使ったほうが良いのではないかしら』

最原『ははは……否定出来ないね……』

春川『もう決まったことだから。皆も、いいね?』

茶柱『は、はい!』

白銀『うう……せっかく最原君に似合いそうなキャラの衣装を仕立てて来たのになぁ……』

赤松(しばらく最原君はお預けかぁ……)

東条『私は本当に気にしてないのだけど……』

春川『決まりだね。じゃあ、最原後はよろしく。私も何か分かったら情報は伝えるから』

最原『う、うん』

最原(女子全員からの依頼、って話だけど……)

最原(どう考えても、春川さんが一番入れ込んでるよね)

最原(……まず間違いなく、百田君が絡んでるせいだろうなぁ)

アンジー『終一、終一。ちょっといいー?』ヒソヒソ

最原『ん?どうかしたの、アンジーさん』

アンジー『斬美のためだから仕方なく終一との約束を譲ってあげたけど……その埋め合わせはしてほしいなー』

最原『あ、そうだったね。ゴメン、アンジーさん。この依頼を完遂したら、今度こそモデルに……』

アンジー『ううん。モデルはもう大丈夫』

最原『え?』

アンジー『そのかわり……今度一緒になった時には、終一と『柔軟体操』したいんだー』

最原『……『柔軟体操』?』

アンジー『そう、柔軟体操。アンジーがいた島ではねー、仲良くなったら一緒に柔軟体操するのが普通だったんだよ』

最原(友好の証、ってことかな?なんで柔軟体操なのかはわからないけど……)

最原『そんなことで良かったら、付き合うよ』

アンジー『にゃははー!神ってるね~!じゃあ、約束だよ?もし約束を破ったら……』

アンジー『――バチが当たるよ?』

最原『う、うん……』

以上です

~~~~

百田「まぁ、飲め飲め!俺のおごりだ!」

最原「あ、ありがとう……」

真宮寺「食堂から勝手に持ってきただけだよネ?」

星「うちの学園はそこんところ緩いから、まぁ問題ねーだろ」

天海「あ、ポテチもあるっすよ?」

最原「図書室でポテチっていいのかな……?」

~~~~

百田『一時期お前が女子のところばっかり行ってたからよ、俺との友情を忘れちまったのかと思って寂しかったぜ』

最原『ははは、ごめんね。何か気付いたら頼まれごとが溜まっててさ』

真宮寺『超高校級の探偵としての仕事だけじゃ無さそうだったよネ。まァ、男子の中では一番、君が頼みを聞いてくれそうってのはわかる気がするヨ』

天海『同感っすね。なんというか最原君は、お人好しのオーラが出てるっすよ』

星『都合のいい男、と思われるかもしれねぇぞ。程々にしておいた方がいいんじゃねぇか?』

最原『……そうだね。気をつけておくよ』



夢野「……実際、今もこんなことを引き受けておるしのう」

赤松「や、やっぱりこんなのやめたほうがいいって……。バレたら最原君だってどう思われるか……」

春川「最原だって了承してることだよ。アイツを疑うわけじゃないけど……男子を庇って嘘の証言をする可能性だってあるわけだし」

白銀「で、でも……流石に隠し撮りみたいなことは止めたほうがいいんじゃないかなぁ……?」

入間「今更何言ってやがる!俺様に色々作らせたくせによ!」

茶柱「あの……何故転子の研究室に集まったのでしょうか……?」

春川「他の男子が間違っても入ってこないような場所が良かったからね。入間、もうちょっと大きなモニター用意できなかったの?」

入間「無茶言うなよ!昨日の今日でここまで用意してやったんだから、もっと俺様に感謝しろよな!」

アンジー「んー。なんだかアンジーもコーラ飲みたくなってきちゃったよ」

東条「私が用意するわ」

赤松「あ、いいよ私がやるから。東条さんは座ってて」

茶柱「転子もお手伝いします!」

東条「でも……」

茶柱「東条さんは気にせず、モニターに集中して男死の悪行を目に焼き付けて下さい!」

東条「……困ったわね」

~~~~

最原(上手く写ってるかな?しかし、流石は入間さんだな……これだけ至近距離で見てもただのボタンにしか見えないよ)

最原(春川さんが考案し、入間さんが制作したこの『ボタン型小型カメラ』は……マイク内蔵で音声も拾える優れものだ)

最原(僕の学生服のボタンの一つをこれに変えている……おそらく皆も気づかないだろう)

最原(音声だけでなく、映像も送ってしまうから……筆談で皆に注意を促すことも出来ない)

最原(僕としては、皆が変なことを言わないことを祈るしか無い……!)


最原「早速だけど、この集まりは何を目的とした、どういう集まりなのか……教えてもらってもいいかな?」

真宮寺「そうだネ。言葉にするのはちょっと難しいけど……」

百田「そんな難しいもんでもねーだろ。この百田解斗が命名した素晴らしい名前があるじゃねーか!」

天海「……あれ、本気で言ってたんすか?だとしたら最原君に言うにはちょっと恥ずかしいんすけど」

星「俺は名前なんて気にしねぇ。好きなように呼びな」

百田「よし!過半数の承認を得たから正式決定だな!」

真宮寺「……ぼくはまだ何も言ってないヨ?」


百田「俺達は――『キルミーファンクラブ』だ!」

最原「……へ?」

以上です

~~~~

「「……」」シーン


春川「……何それ」

赤松(キルミーって……)チラッ

茶柱(東条さんのこと……ですよね?)チラッ

アンジー(モテモテだね斬美ー)ジーッ

東条「……無言で私を見るのはやめてくれないかしら」

白銀「うわぁ……リアルでファンクラブとか作っちゃう人、地味に初めて見たかも」

夢野「待てい。リアルでもアイドルのファンクラブとかはあるじゃろうが」

入間「メイドババアはいつアイドルになったんだよ!歳考えろ!」

東条「……」ピクッ

王馬「そういう入間ちゃんはTPOをわきまえたほうがいいと思うけどねー。主に自分自身の存在について」

入間「ええ!?俺様の存在自体が不適切!?」ガーン

赤松「ちょ、ちょっと!流石に言い過ぎだよ王馬くん!」

王馬「いやー、しかしなかなか……つまらなくない展開になってるみたいだね。にしし!」

茶柱「何言ってるんですか!女子の名誉が傷つけられてるかもしれないというのに!これだから男死……は……?」

茶柱「ひえええええええええ!?な、なんで王馬さんがここにいるんですか!?」

赤松「え……ええええ!?い、いつの間に……!?自然に会話に入ってくるから、気づかなかったよ……」

白銀「じ、地味にびっくりだよ……」

夢野「相変わらず読めん奴じゃのう……」

アンジー「王馬もコーラ飲むー?」

王馬「あ、俺はドクペがいいなー」

東条「私が用意するわ」

春川「目をそらしちゃ駄目だよ、東条。ちゃんと見届けないと」

東条「……私にどうしろと言うの」

王馬「入間ちゃん、キー坊が探してたよ?なんか約束してたんじゃないの?」

入間「ゲッ!忘れてた!今日はアイツの体をメンテしてやる予定だったのに!」

王馬「全く……約束も守れないのかなこの脳内ピンクは」

入間「だ、だってぇ……春川に頼まれた発明品を徹夜で作ってたから、それどころじゃ……」

王馬「約束を破った上に言い訳までするのかこの雌豚!いいからダッシュでドクペ取って来いよ!」

入間「は、はいいいぃ!行きます、イきますううううう!」

ドタドタドタ

王馬「さーて、うるさいのもいなくなったことだし、鑑賞の続きといこっか!」

春川「……一番厄介なやつに見つかっちゃったね」

赤松「そっか……キーボ君経由で入間さんの不在を知って、それでなにかあると勘付いたわけだね」

王馬「へへへ、そんなところかな。入間ちゃんだけならともかく、女子全員の姿が見えなくなるなんて……これは何かあるとしか思えないよね?」

王馬「きっと男子に内緒で何か企んでるんだろうなと思って……茶柱ちゃんの研究室に寄ってみたら見事ビンゴ!ってわけだよ」

茶柱「何故、転子の研究室だとわかったんですか……?」

王馬「男子に内緒の集まり、となると……なるべく男子が寄り付かない場所にしようと思うでしょ?」

王馬「男子嫌いの茶柱ちゃんの研究室にわざわざ立ち寄る物好きなんて、男子の中じゃ最原ちゃんくらいだもんねー」

春川「……そこまで読まれてたか。食えないやつ」

王馬「それより、大事なのはこっちでしょ。皆で見届けようよ!『キルミーファンクラブ』について!」

以上です

~~~~

最原「……」

真宮寺「……」

天海「……」

星「……」

百田「……キルミーファンクラブだ!」

最原「あ、うん……聞こえてたよ?」

天海「ま、そんな反応になるっすよね」

最原「えっと、確認なんだけど……『キルミー』って、東条さんのことでいいのかな?」

百田「おう!『東条ファンクラブ』だとファンクラブのくせになんだか他人行儀だし、『斬美ファンクラブ』だと逆に馴れ馴れしい」

百田「だから親しみやすさとファンクラブとしての体裁を考慮して決定したのが……『キルミーファンクラブ』ってわけだ!」

最原「確かに、ファンクラブができるくらい人気がある人って、大体ニックネームの1つや2つ持ってる気がするけど……」

最原(名付けられた本人は……どう思ってるかな)

百田「ま、俺のネーミングセンスを持ってすればこれくらいどうってことねぇ」

最原「う、うん……悪くはない、と思うよ」

百田「さすが終一!わかってるな!」

最原「ははは……」

最原(ネーミングはともかく、今確認すべきは……)


最原「要するに、この集まりって……東条さんのファンクラブ、ってこと?」

真宮寺「……あながち、大きく間違ってるわけでもないヨ」

最原「具体的には、どんな活動をしてるの?」

天海「ははは、ファンクラブ、って呼べるほどの大した活動はしてないっすよ」

天海「基本的には、そうっすね……東条さんの魅力について、ダラダラと駄弁る集会……ってところっすね」

最原「東条さんの魅力について……?」

真宮寺「そうだなァ……まずはこの集まりがどういう経緯で発足したのか、それを語ったほうが良さそうだネ」

真宮寺「そもそものきっかけは、僕と天海くんの他愛ない雑談だったんだヨ」

天海「ええ。それぞれの昔話について話が盛り上がって」

天海「実は自分、小さい頃家にメイドさんがいた……って話をしたんすよ」

真宮寺「メイドの話題から東条さんの話題へと発展していくのは……そこまで時間がかからなかったネ」

最原「成程……君たち2人が発端だったわけか」

天海「まぁ、そういうことになるっすね。この際だからついでに言っちゃうと……自分、小さい頃はそれなりに裕福な家庭で育ったんすよ」

天海「で、家に住み込みのメイドさんを雇ってたんすけど……その人は当然、プロなんすよ」

天海「料理に裁縫、掃除や修繕。なんでもこなせる凄い人だったっす」

天海「自分も、小さいながらそのメイドさんに憧れというか……尊敬の念を抱いてたんすよ」

真宮寺「そこから、今の自分達の身近にもそういう存在がいるじゃないか……という話になった訳だネ」

~~~~

王馬「へぇー。天海ちゃんって、いいところのお坊ちゃんだったんだ」

夢野「意外な話じゃのう。今のあやつの雰囲気からは想像できん」

白銀「そっちよりも、天海君と真宮寺君が仲良いって方が地味に意外かも……」

茶柱「雰囲気的には、全く接点の無さそうな2人ですからね。共通の趣味でもあったんでしょうか?」

春川「天海はともかく、真宮寺の趣味って……碌なもんじゃ無さそうだよね」

赤松「うーん……でも、真宮寺君ってあんな格好してるけど、話してみると結構面白いんだよ」

赤松「博識だし、こっちの話も興味深そうに聞いてくれるし。なんというか、案外コミュニケーション能力高そうなんだよね」

茶柱「……それならば、何故あんな妙な格好をしているのでしょうか?」

赤松「それは……謎だね……」

王馬「ま、服装に関しては真宮寺ちゃんのこと言えない人もいると思うけどねー」

東条「私、そろそろ退席してもいいかしら?夕食の仕込みをしないと」

王馬「何言ってるんだよ!ここからが面白い……もとい、核心に迫るところじゃんか!」

春川「辛いかもしれないけど……目をそらしちゃ駄目だよ」

東条「……」

~~~~

真宮寺「実際僕も、東条さんの美しさについては目を見張るものがあると常々思ってたんだヨ」

真宮寺「当然、見た目だけの美しさの事じゃない。まァ、外見も美しいのは否定しないけどネ」

真宮寺「けど、一番美しいのはその在り方だヨ。僕達と同じ高校生とは思えないほど、完成された『奉仕』の精神」

最原(正直、真宮寺君も僕と同級生だとは思えないほど大人びてると思うけど……)

最原(僕も、東条さんが普通の人とは違うって言うのは何となくわかる気がするな)

真宮寺「勿論、心だけじゃない。それを実現するための知識や技術も彼女には備わっている……全く、感嘆するより他ないネ」

天海「実は自分も東条さんと関わるうちに、そのメイドさんのこと思い出しちゃって……感動して、泣きそうになったんすよ」

真宮寺「そういうこともあって、話が思った以上に弾んだって訳サ」

最原「そうして、2人で盛り上がってた所を……百田君が見つけた、って感じかな?」

星「いいや、次に加わったのは……俺だ」

最原「え?」

以上です

~~~~

アンジー「美しい、だって。羨ましいねー斬美」

東条「……」

アンジー「アンジーもよく是清とお話するけど……是清ってば神様にお祈りしないくせに、神様のことばっかり聞きたがるんだよ」

アンジー「もっと神様のことも斬美とおんなじくらい、敬ってほしいなー」

赤松「今のところ……特に変なことは誰も言ってないね。やっぱり、気にしすぎじゃないかな?」

春川「……まだ、だよ。百田が……いや、星と百田はまだ話してないでしょ」

王馬「まぁまぁ、星ちゃんの話も聞いてみようよ!」

夢野「お主は楽しそうじゃのう」

~~~~

最原「2人の雑談に参加したのは、星君の方が百田君より先なんだ?」

星「ああ。ま、そうは言っても俺は真宮寺達の語った内容とはちょっと違うがな」

最原「と、言うと?」

星「真宮寺と天海の語ってることは、言ってみりゃ東条の『人間として』の魅力だ」

星「俺がまず語ったのは……『女として』のアイツの魅力さ」

最原「えっ……!?」

最原(……これ、女子たちに聞かせても大丈夫な内容かな?)

星「勿論それだけじゃねぇが……そっちは後にしとくぜ」

星「時に、最原。この才囚学園……女子のレベルがかなり高いと思わないか?」

最原「え?」

星「皆、タイプは違えど容姿端麗で、おまけにそれぞれが秀でた才能を有している」

星「その分個性的な奴が多いがな。言ってみりゃ、全国の高校生男子が羨むような環境に俺たちはいる訳だ」

最原「う、うん。僕も……みんな、か、可愛いと思うよ」

最原(女子に見られてるのに、こんなこと口にだすのは……恥ずかしいな……)

星「だがな、俺に言わせりゃ……アイツらの殆どはまだまだガキだ。自分らの持つ魅力を発揮できてねぇ」

最原「……それって、どういうこと?」

星「『他人に見られること』ってのを意識してねぇんだ。まぁ、まだ恋愛経験の薄そうな学生の身じゃ無理もねぇことかもしれないが」

星「女は、他人の目を意識することで化けるもんさ。立ち振舞や、化粧一つとってもな。人から見られた自分の姿を意識することで、自分を磨いていくわけだ」

星「手っ取り早いのは好きな相手でもできることさ。これは女に限ったことでもねぇがな」

最原(……星君は一体何歳なんだよ……)

星「だがな、色恋沙汰に疎そうなことに変わりねぇのに……東条だけは、その女としての美しさを身に着けてやがる」

星「お前なら、何故なのかわかるんじゃないか?」

最原「……『超高校級のメイド』としての才能が、そうさせてるってことかな?」

星「ああ。アイツの言うところの滅私奉公の精神ってのは、俺がさっき言ったことと似通ったところがあるからな」

星「メイドってのは奉仕する相手に不快な思いをさせないため、見苦しい印象を与えないため、立ち振舞いや外見には当然気を使わなきゃならねぇ」

星「要は、常に『他人に見られること』を意識せざるを得ない。……結果として、それが女の魅力として現れてるわけだ」

最原「……成程。なんとなくだけど、星君の言いたいことは伝わったよ」

星「色気が足りねぇのが玉に瑕だがな。ま、それはこれから男を知れば嫌でも身につくだろうさ」

最原(今のはアウトかなぁ)

天海「は、ハードボイルドっすね……参考になるっすよ」

以上です

~~~~

茶柱「む、むむむ……!転子たちをお子様扱いとは……大きく出ましたね星さん!」

白銀「でも、地味にレベルが高いとも言ってたよ。一応、褒めてくれてるんじゃないかなぁ?」

赤松「そうだね、最原君も私達のこと……か、可愛いって言ってくれてたし……」カアア

春川「私たちに聞かれてるからってリップサービスしただけかもしれないけどね」

アンジー「女としての美しさを身に着けてる、だって。羨ましいね斬美ー」

王馬「色気がない、とも言ってたけどねー。いやーさすが星ちゃん!つまらなくない話だったよ!」

東条「……」

白銀「私も、人に見られること意識してコスプレしてるつもりではあるんだけどなぁ……」

夢野「お主のはコスプレというより、もはや変身レベルじゃからのう。人目を意識とかそういう領域じゃない気がするのじゃが」

赤松(……もうちょっと、最原君好みのお化粧意識した方がいいのかな……?でも、最原君ってそういうの疎そうだし……うーん)

春川(――問題は、次、だね……)

~~~~

最原「えーっと、じゃあ……百田君はどんなきっかけで参加したの?」

百田「あー……それも星の口から説明してもらった方がいいだろうな」

最原「……えっ?」

百田「さっき言ってただろ、後にしておくって。正直オレは女としての魅力どうこう言われてもピンとこねーんだが……」

百田「星が語った、もう一つの話。そっちにすげー共感したから、この会に参加させてもらうことになったんだ」

最原「もう一つの話、か……」

星「やれやれ。大人の話はここまでか。じゃあ、こっからはお前ら向けに話すとするぜ」

最原「うん、お願いするよ」

星「最原、今朝東条が用意してくれた朝食……お前も当然食ったよな?」

最原「え?あ、うん。何時も通り、美味しかったよ」

星「……それだけか?やれやれ……超高校級の探偵って肩書の割にゃ、観察力が足りないんじゃないか?」

最原「……?どういうこと?」


星「小皿にベーコンエッグが付いてただろ?」

最原「え?うん、確かに。でもそれが一体」

星「あのベーコンエッグ、俺ら一人ひとり……目玉焼きの焼き方が違ってたんだ。気付いてたか?」

最原「……え?」

星「お前のはどんなのだったか、思い出してみろ」

最原「えっと……ごく普通の目玉焼きだったよ。黄身は半熟で、表面は多分蒸し焼きにしたんじゃないかな」

星「……俺のは両面焼きだ。しかも黄身に完全に火が入るくらい、ガッチガチにな。ターンオーバーを超えた、オーバーハードって奴さ」

最原「ま、まさか……!?」

天海「自分のも両面焼きだったっす。ただ黄身は半熟より少し固めくらいで、いわゆるターンオーバーってやつっすね」

真宮寺「僕のはサニーサイドアップだったヨ。姉さんがまだ元気だった頃、僕に作ってくれたのと同じ……思い出の味サ」

最原「東条さんは、僕らの好みに合わせて、一つ一つ料理に手を加えてるってことなのか……!?」

星「ああ。目玉焼きだけに限った話じゃないと思うぜ」

最原「そんな……!自分の分も含めたら16人分の料理を用意して……しかも味付けを変えてるだなんて、そんな途方もなく手間がかかることを……!?」

最原(……でも、東条さんなら……あり得るかもしれない。だけど……)

最原「……それに今まで、気づかなかったなんて……」

星「――まぁ、そう気を落とすなよ、最原。無理もねぇ。東条だってそんなことアピールしなかったし」

星「むしろ……それに気づかれることすら、アイツは良しとしなかったのかもしれねぇな。気配りは怠らず、決してそれを悟らせない。全く大した女だよ」

最原「……今まで、当たり前のように東条さんにやってもらっていた事。僕は十分に感謝してるつもりになってたけど……」

星「全然、感謝を伝え足りてない……ってか?その考えもどうかと思うぜ。アイツは俺達に感謝されるためにやってるわけじゃねぇからな」

星「滅私奉公。口にするのは簡単だが……それを実行できる人間がこの世にどれだけいるのやら。途方もねぇ努力が必要な筈だぜ」

最原「……」

星「――だけどよ、最原。虚しいと思わねぇか。そんなアイツの努力を……」

星「――誰も褒めてやれねぇなんてよ」

最原「……!」

星「当然、アイツは褒められるために奉仕してるわけじゃない。感謝したりなんかしたら、逆にアイツの誇りを傷つけてしまうかもしれない」

星「だが、俺達がここで勝手に駄弁ってる分には、誰も文句は言えねぇ筈だ。アイツ自身にも、な」

最原「それじゃあ、星君が言ってたのは……!」


星「――アイツが普段の奉仕活動の中で、どんな気遣いをしてるのか。そういった情報を共有して――」

星「その働きを労ってやる……そんな連中が、少しくらいいたって問題ねぇだろ?――ってことだ」

以上です

~~~~

百田『まぁ、星は労う、なんて偉そうな言葉を使ってるが……』

百田『要は東条の仕事っぷりを、もっと皆知ったほうがいいんじゃねーか?と俺も思ったんだよ』

百田『だから、その時雑談してたメンバーを巻き込んで……『キルミーファンクラブ』を設立したってわけだ!』

最原『あ、百田君が言い出しっぺなんだね』

百田『おう!だから当然、リーダーも俺だ!』

最原『この会、リーダーとか必要なの……?』

天海『まぁ、いいんじゃないっすかね』

星『フン、好きにしろ』



春川「……赤松、気付いてた?目玉焼きのこと……」

赤松「……ううん。星君の話を聞いて初めて気付いたよ……」

茶柱「う、うう……転子は恥ずかしいです……!男死ですら気付いていた東条さんの気遣いを、完全にスルーしていたなんて……!」

夢野「んあー。……流石じゃのう、東条よ」

白銀「東条さん、いつもそんな凄いことやってたんだね……うう、世話になってばっかりの自分が情けなくなるよ……」

アンジー「偉いよー!斬美ー。神様も斬美を褒めてあげなさいって言ってたよー!」

東条「……」フルフル

王馬「と、東条ちゃんが……俺達のためにそこまでしてくれてたなんて……」ジワァ

王馬「うわーん!感激だよおおおおおおおおおお!ママああああああああああああ」

東条「……流石に、もう退席させてもらうわ……!」バッ

春川「ちょっ……!待って東条!まだ百田達の話は終わってないから!」ガシッ

東条「お願い……っ!もう許して頂戴……!これ以上私が話を聞く必要はないでしょう……!?」ググッ

春川「……じゃあ、『依頼』するよ。男子が他に悪巧みをしてないか調べるためにも……最後まで付き合って」

東条「……!?」

東条「……その『依頼』……引き受けさせていただくわ……」

王馬(うわ春川ちゃんえぐいなー)


茶柱「……あの、赤松さん?さっきから、何故春川さんはあそこまで東条さんを引き留めようとしているのでしょうか?」ヒソヒソ

赤松「多分……当事者である東条さんがいないと、百田君達を観察する大義名分を失っちゃうからだと思うよ……」ヒソヒソ


王馬「うーん……今の星ちゃんの話は感動モノだったけど、展開としてはつまらなかったかなー」

王馬「ま、その分東条ちゃんのつまらなくない反応が見れたし、結果オーライだね!」

今日は以上です

~~~~

最原「うん、話を聞く限り……有意義な集まりだと思うよ」

百田「だろ!流石は俺の助手だ、わかってるじゃねぇか!」

最原「ファンクラブなんて言うから、てっきり、東条さんの隠し撮り写真でも交換してるのかと思ってヒヤヒヤしちゃったよ」

真宮寺「心外だなァ……僕たちは東条さんが不快に思うようなことをするつもりは無いヨ」

星「漫画やアニメの見過ぎじゃないか?最原も、まだまだお子ちゃまだな」

最原「ハハハ……そうだね」


最原(……隠し撮りも無し、と。今ので、春川さんに頼まれてた確認事項は大方聞き出せたかな)

最原(あと残ってるのは……他の男子がメンバーに入っているのかどうか、か)

最原(不審がられないよう、上手く聞かないとね)

最原「あ、そういえば……さっき、他の男子がいないのは事情があるとか言ってたけど……それってどういうこと?」

最原「東条さんの気遣いを皆にもっと知ってもらいたいって言うなら、なるべく人数は多いほうがいいんじゃないの?」

天海「それは、確かにその通りなんっすけど……」

百田「ああ……王馬の奴がな……」

最原「王馬君?彼が何かしたの?」

真宮寺「いいや、何もしていないヨ。ただ……『何かしそう』、ってのが僕達の共通認識だネ」

百田「流石の王馬も、意図的に人を傷つけるような嘘をつくとは思わねぇが……」

百田「あいつにこのファンクラブの存在を教えたら、ここで共有した情報をあることないこと面白おかしく吹聴しそうだろ?」

最原「確かに……王馬君ならやりそうなことではあるかもね」

星「嘘をつかなければいいってもんでもねぇ。さっきも言ったが、東条自身、俺達に褒められるために仕事してるわけじゃねぇんだ」

星「俺たちがアイツの気遣いを悟って、逆に気を使う……なんてことは、東条からしたらあんまりいい気分じゃねぇだろうさ」

天海「勝手な言い分かもしれないっすけど……俺達は東条さんに伸び伸びと仕事をしてほしいんすよ。ストレスを与えたくないんす」

真宮寺「『負担をかけない』、ということが……逆に『負担』と感じさせる事もある……ってことサ。東条さんのような人に取ってはネ」

最原「成程ね。皆が東条さんの事を大切に考えてるのはわかったよ」

百田「終一を誘わなかったのもそういう理由からだしな。お前は隠し事を見つけるのは得意かもしれないが、隠し事は下手くそだろ?」

百田「東条ともよく一緒にいるし、お前の態度から東条に悟られちまうかもしれないからな!」

最原「ははは……否定できないな……」

最原(もっとも、この会話も全部東条さんに聞かれてるんだけどね……)

最原「じゃあ、キーボ君とゴン太君は誘わないの?」

百田「その2人自身には何も問題ないんだが……ゴン太は王馬に隠し事なんて出来ねぇだろうし

百田「キーボは王馬の口車に乗って、全部喋っちまいそうだろ?」

百田「だから、そいつらに関してはしばらくは保留扱いって訳だ。ま、機会があれば誘ってみるさ」

最原「つまり結局のところ、その2人も王馬君絡みな訳だね……」

天海「ははは。こんな話、王馬君には絶対聞かせられないっすね」

真宮寺「ククク……それこそ、何を言いふらされるかわかったもんじゃないネ」

以上です

~~~~

王馬「ま、バッチリ聞いてるんだけどねー」

夢野「最原達もタイミングが悪かったのう……」

アンジー「陰口は駄目だって神様も言ってるよー」

王馬「しかし、百田ちゃん達がそこまで東条ちゃんを気にかけてたとはね……さすがの俺も読めなかったよ」

王馬「ま、その気遣いも……最原ちゃんと女子達の企みのせいで台無しになったわけだけどね!ねぇねぇ、東条ちゃん、今どんな気持ち?」

東条「……」

王馬「それにしてもひどいよね……皆して俺を一体何だと思ってるのさ」

春川「いや、それはアンタの日頃の行いってやつでしょ」

王馬「えー?そこまで信用を失うような事をした覚えはないんだけどなー?」

茶柱「くっ……!?どの口でそのような世迷い言をほざくのでしょうか?」

王馬「女子の皆もひどいよ!俺だって東条ちゃんの事をママにしたいくらい大切に思ってるのに!」

王馬「傷つけるようなこと……するわけないだろ!」

白銀(地味に信用出来ないなぁ)

赤松「そ、そうだよね……いくら王馬君でも、今回みたいな秘密の会話を言いふらしたりはしないよね」

王馬「いや?普通に言いふらすけど?」

赤松「ええ!?」

夢野「赤松のフォローも無駄になったのう」

春川「……アンタ、本当にどういうつもりなの?」

王馬「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ、春川ちゃん」

王馬「だってさぁ、東条ちゃんの気遣いを身内だけで共有しようなんて……要は百田ちゃん達の自己満足でしょ?」

王馬「本当に東条ちゃんに感謝してるなら、皆にも伝えて、直接本人に感謝の言葉を送ってあげたほうがいいに決まってんじゃん!」

東条「……それを、私自身が望んでいないとしても?」

王馬「うん!逆に聞くけどさ、東条ちゃんは人に感謝されて嫌な気分になる?」

東条「……それは……」

王馬「ならないよね?照れたり恥ずかしかったりはするかもしれないけど……間違っても不愉快にはならないでしょ」

王馬「褒められるために仕事してるわけじゃなくても……褒められたら嬉しいんじゃない?」

東条「……」

王馬「それを嫌がる人間なんて、それこそ相当なひねくれ者だけだよ。ま、俺が言えたことじゃないけどね!にしし」

東条「……ふふ、そうね。例え皆に知られてしまったとしても、いずれにせよやることは変わらないものね」

王馬「そうそう!これからも期待してるよ、キルミーママ!」

東条「……これだけは声を大にして主張させて貰うわ。私はあなたのお母さんではないのよ……!」

王馬「えー、つれないなぁ……」

白銀(キルミーには突っ込まないんだ……)

春川「……」

赤松「な、なんか……王馬君に全部持っていかれちゃったね」

茶柱「まぁ、東条さんが元気を取り戻したようなので良しとしましょう!悔しいですが、転子も王馬さんの話を聞いて納得しました!」

茶柱「今後は、今まで以上に東条さんに感謝の気持ちをお伝えします!あと、明日の朝食はモツ鍋でお願いします!」

アンジー「えー……朝からモツ鍋は重いよー」

東条「前向きに検討するわ」

夢野「いや、それはしなくてよいぞ」

白銀「まぁ、これにて一件落着!って感じだね」

王馬「――まぁ、ここで大団円、とならないのが俺なんだけどね」ボソッ

赤松「ん?王馬君何か言った?」

王馬「にしし!なんにもー?」


王馬(俺抜きで内緒話に花を咲かせてた百田ちゃん達)

王馬(そして、それを勝手に覗き見してた春川ちゃん率いる女子達……と、最原ちゃん)


王馬(――どっちにも、ちょっとお灸をすえてやる必要があるよねぇ)ニヤァ

以上です

入間「オラァ!!ドクペ持ってきてやったぞチンカス!」バァン

白銀「あ、入間さんのことすっかり忘れてた」

赤松「そういえば出かけてたんだったね」

茶柱「通りで静かだったわけですね」

夢野「もう少し遅くても良かったのにのう」

入間「ええ!?帰ってくるなりこの仕打ち!?」

入間「そ、そんなことより……あの糞チビはどこ行ったんだよ!せっかく人が性奴隷になってやったっていうのによ!」

白銀「入間さん、それでパシリって読ませるのは無理があるんじゃないかなぁ?」

赤松「アレ?そういえば、王馬君の姿が見えないね」

東条「変ね……つい今しがたまでここで私達と一緒に隠し撮りを見ていたのに」

茶柱「な、なんというか……『隠し撮り』とはっきりと明言されると、流石に後ろめたい気分になりますね……」

春川「今更だね。ここに自分の意志で集まった時点で、私たちは一蓮托生だよ」

赤松(半ば強制的にって感じだった気がするんだけどなぁ……)

入間「はぁ!?あのツルショタ、わざわざ俺様にドクペ取りに行かせておきながら、自分はどっか消えるとかどういうつもりだよ!?」

東条「……気に掛かるわ。このタイミングで王馬君が消えた意味……単なる気まぐれとは思えない」

アンジー「んー……つまり斬美はー、小吉が何か目的があって何処かに行った……って言いたいの?」

東条「……私の思い過ごしだといいのだけれどね」

最原『それで、皆、普段はどうやって東条さんを観察してるの?』

百田『どうやっても何も……観察は観察だろ?』

天海『まぁ、平たく言えば……東条さんの行動をじっと眺めてる、ってところっすかね』

最原『まぁ、そうだろうね……』

真宮寺『どうやら、最原君は何か意見があるようだネ』

最原『いや、あんまり素直にじっと見てると……勘の鋭い東条さんにはバレちゃうかもしれない、って思ってさ』

星『ふむ……一理あるかもな』

最原『だから、どうかな?直接東条さんと関わる機会を増やすっていうのは』

百田『ほうほう……つまり、どういうことだ?』

最原『東条さんって、ビジネスライクな印象を持たれやすいけど……話してみると結構気さくな面も見せてくれるんだよ』

最原『仕事を手伝ったり、雑談してみたり……なんだっていいんだ。直接、東条さんと会話してみて欲しい』

最原『そうすれば、彼女の魅力ももっと伝わると思うし……ただ見つめるだけよりも、有意義な時間になるんじゃないかと思うんだ』

最原『東条さんともっと交流を深めて……皆で仲良くなれたら、それが一番理想的だよね?』

最原『そうすれば、この場だけじゃなくて、もっと自然な流れで東条さんに感謝の気持ちを伝えられる機会が増えると思うよ』

天海『成程……説得力があるっすね』

真宮寺『確かに、僕達自身が、どこか彼女に対して壁を作っていたのかもしれないネ』

星『ここでグダグダ言ってねぇで、直接本人に言えってのは……全くもってそのとおりだな。こりゃ一本取られたぜ』

最原『ちょ、僕はそこまで……!?』

百田『――やっぱり、お前を誘ってよかったぜ、終一!お前は優秀な助手だ!』

春川「――最原に依頼してよかったよ。上手くまとめてくれたみたいだね」

白銀「普段は自信なさげなのに、こういうときは地味に決めるんだよね、最原君」

赤松「最原君、随分東条さんに理解があるんだね……」ジー

東条「……そんなに見つめられても困るのだけど」

入間「陰でコソコソシコるより、直接ズッコンバッコンしに行け、ってことだな!全くどうしようもねぇな思春期のエロ猿共は!ヒャーヒャッヒャッ!」

春川「……」ギロッ

入間「ひいい!」

夢野「どうしようもないのはお主の頭の方じゃろ……」

茶柱「では、この件はこれで解決ですね!」

アンジー「斬美に何事もなくてよかったよー」

春川「……そうだね。じゃあ、これで解散に――」


王馬『あれれー?みんなここで何やってるのー?』


春川「!?」

以上です

最原『え、王馬君!?』

百田『げっ、王馬!?なんでここに……』

王馬『えー何その反応。傷付くんですけど。俺が図書館に来ちゃいけないわけー?』

百田『いや、そういうわけじゃねぇんだが……』

王馬『それに、なんでここに、ってのは俺の台詞だよ!みんなで図書室で何やってたのさ!』

百田『いや……その……』

真宮寺『一応、確認しておくけど……知っててわざと聞いてるわけじゃないよネ?』

王馬『んー?気になるねその発言……何かやましいことでもしてたのかな?』

春川「……アイツ……!」

赤松「お、王馬君!?何やってんの!?」

入間「うわ、あの馬鹿、なんで図書室にいるんだよ!?」

茶柱「も、もしや……転子達が隠し撮りしてることをバラすつもりでしょうか!?」

白銀「そ、それは地味に困るよ!だって弁明のしようがないもん!」

東条「いえ……バラすつもりならあんな白々しい聞き方をしないはずよ。何が目的かはわからないけど……」

茶柱「と、とりあえず……転子が連れ戻してきます!」

夢野「やめい。男子にどう説明するつもりなんじゃ」

茶柱「で、ですが……」

アンジー「んー。何言い出すかわからないから、まだしばらく監視続けた方がいいかもねー」

最原『……いや、僕も真宮寺くんと同じことを思ったよ』

王馬『……へぇ。どういうことかな、最原ちゃん』

最原『さっき、君は『ここで』何をしてるのか……って聞き方をしたよね』

最原『本当に細かいニュアンスの違いでしか無いんだけど……どうも引っかかったんだ』

最原『本当にたまたま図書館に来て、それで僕達に遭遇したって言うのなら……『こんなところで』って表現を使うんじゃないかな?』

最原『さっきの言い方だと……最初から図書室に僕達がいるのは分かっていたように聞こえるよ』

王馬『……いやー、流石は最原ちゃんだね。ま、実際隠すつもりも無かったんだけどね』

星『さっき思いっきり誤魔化そうとしてなかったか?』

王馬『そうだっけ?覚えてないや!』


夢野「ああ、最原のやつ、余計なことを……」

春川「……最原は、王馬も映像を見てることを知らないからね。とは言え、これはマズイね……」

白銀「最原君の推理力が、裏目に出ちゃったね……」

王馬『というかさ、皆、気づかれてないと思ってたの?バレバレだったよ。一部の男子が図書室に集まってたの』

百田『うっ……!』

星『まぁ、最原にも勘付かれてたみたいだしな。他のやつにも気づかれてたなんて十分あり得る話だろ』

王馬『あと、時々東条ちゃんのことジロジロ見てるのにも気付いてたよ!もしかして、この集まりってそれ関係?」

王馬『そこのところが気になったから、直接乗り込んでみた、ってわけ!』

真宮寺『……参ったヨ。そこまで第三者に気づかれていたとはネ』

天海『最原君の言うとおり、これからはアプローチを変えたほうが良いかもしれないっすね』


赤松「……王馬君、上手く誤魔化してくれたみたいだね」

茶柱「うーん……ですが、ますますわからなくなりました。王馬さんは、一体何をしたいのでしょうか?」

入間「童貞共のエロエロトークに混ざりたかっただけじゃねーか?」

アンジー「んー。でもでもー、話はもうほぼ終わりかけてたよねー?」

東条「……終わらせないため、なのかしら」

赤松「え?」

東条「……嫌な予感がしてきたわ」

百田『まぁ、知られちまったもんは仕方ねぇし……正直に話してやるか』

最原『うん。僕にしてくれた話を、王馬君にもしてあげればいいんじゃないかな?』

王馬『いよっ!待ってました!』

百田『俺達は――『キルミーファンクラブ』だ!』

王馬『ふーん』

百田『反応薄っ!?』


・・・


星『――とまぁ、こんな感じだな』

王馬『……そ、そんな事を……俺に内緒にしてたなんて……』ジワァ

王馬『うわああああああああん!仲間はずれなんてひどいよおおおおおお!』

真宮寺『王馬君、うるさいヨ』

王馬『ははは!真宮寺ちゃんは厳しいね』ケロッ

百田『そんなわけだから、アイツには話すんじゃねーぞ』

王馬『OK!わかったよ!任せといて!』

星『……振りじゃねぇんだぞ。本当に分かってんだろうな?』

王馬『全く、信用ないなぁ。心配しなくても、俺の口から直接伝えたりしないって!』

真宮寺『……何か含みのある言い方だネ。それに、君の日頃の行いを顧みれば、当然の反応だと思うなァ』

王馬『真宮寺ちゃん何か俺に冷たくない?』

天海『あ、王馬くんもポテチ食べるっすか?』

王馬『俺、カラムーチョがいいなー!』


夢野「あやつら、図書室でやりたい放題じゃな……」

東条「後で掃除しておくわ」

王馬『東条ちゃんの良さを語り合う、っていうのはわかったけどさー』ボリボリ

王馬『それだけじゃ、なんか物足りなくない?』モグモグ

星『……何が言いてぇんだ?』

王馬『だってさ、今ここには男子しかいないんだよ?折角だしさ……』

王馬『そういう時にしか出来ない、男同士の話をしようよ!』

天海『男同士の話、っすか?』

王馬『そうそう!ガールズトークならぬ、ボーイズトークってやつだよ』

最原『えっと……具体的には、どんな話をするの?』

王馬『またまたー。最原ちゃんだって分かってんでしょ?』

王馬『年頃の男子が集まってする話なんて……大体決まってるよね?』


春川「……!」

赤松「も、もしかして……王馬君の狙いって……」


王馬『東条ちゃんって、好きな男子とかいるのかなー……とか』


東条「!?」


最原『……!?ちょ、ちょっと待っ』

王馬『いや、それ以前の話だね。そもそも――』


王馬『東条ちゃんって性欲あるのかなー?』

以上です

東条「」

春川「……やってくれたね、王馬のやつ……!」

赤松「こ、これ……放って置いたらマズイんじゃ……」

夢野「……だからといって、止める事もできんしのう」


~~~~

天海「せ、性欲……っすか?」

王馬「うん、性欲!」

最原「な、何てことを……!」

真宮寺「……何か様子が変だネ、最原クン」

最原(他にいくらでも表現しようがあっただろうに……!恋愛感情だとか恋愛願望だとか……!)

最原(それなのにどうして……!よりにもよって……『性欲』なんて言葉を使ったんだ!東条さん本人も聞いてるって言うのに!)

王馬(最原ちゃんその表情やめて笑いこらえるのしんどい)


星「要するに、東条にも普通の女子と同じように、異性に対する興味や関心、恋愛に対する憧れがあるんじゃねーか……ってことだろ?」

王馬「さっすが星ちゃん!よくわかってるねー!」

星「普段のアイツからは想像も出来ねぇが……アイツも年頃の女であることには違いない。そういう感情があってもおかしくねぇだろうさ」

最原「そ、そういう話は……避けたほうが良いんじゃないかな?」

星「ん?どうした最原?これくらい、ありふれた話題じゃねぇか」

天海「性欲って言葉を聞いたときはちょっとビビったっすけど……よく考えたら気になる女子について話すっていうだけの、ごく普通の男子高生の雑談っすよね」

最原(マズイ!このままだとそっちの方に話題が流れてしまう!)

百田「……」

最原「も、百田君も、ちょっと注意して――」

百田「いや、いいんじゃねぇか?別に」

最原「へ?」

百田「当人の前で言ったらそりゃただのセクハラになっちまうだろうが……こうやって俺達の間だけで話すだけなら何の問題も無しだ」

百田「それに、こういう話題ってのは……男子同士の結束を高めるいい機会になると思うしな!いっちょここは、ここにいる全員で本音トークといこうじゃねぇか!」

星「フン、偶には年相応のくだらねぇ話も悪くないかもな」

天海「確かに、ウチのクラスってこうやって男子だけで集まる機会って中々ないっすからね。結構楽しみっすよ」

真宮寺「昔から、『異性』と『性』に関する話は、最もポピュラーな話題として重要なコミュニケーションツールになっているんだヨ」

真宮寺「だから多少『そっち方面』の話題のほうが……盛り上がるかもしれないネ。ククク……」

王馬「お!皆ノリがいいねー!じゃあ、下ネタ解禁ってことで!」

最原(百田君のコミュニケーション能力の高さがアダになったか……!ど、どうする……?)

最原(多少強引に、話を切り上げさせるか……?)

最原「いや、でも……東条さんに性欲なんてあるとは思えないし……」

真宮寺「……ちょっと失礼なんじゃないかなァ?」

最原「!そ、そうだよ!失礼だよ!いくらなんでも、こんな話題は東条さんに――」

真宮寺「いいや、失礼っていうのは……君のことだヨ、最原君」

最原「……え?」

以上です

真宮寺「性欲と言うものは食欲、睡眠欲と共に……人間が持っていて当たり前の欲求だヨ」

真宮寺「人によって大きい、少ない、という違いは当然あるけど……それを無い、と断言して良いのは本人だけサ」

真宮寺「誰であれ、持っていて当然のモノ……それを否定するというのは、人間性の否定にも等しいことだと思うなァ」

最原「そ、そんな大げさなことじゃ……」

真宮寺「そもそも、この集まりは東条さんの……まァ、ファンクラブだって前提は理解しているよネ?」

真宮寺「そこで語るべきは、彼女の『人間としての美しさ』なんだヨ」

真宮寺「彼女は決して給仕用のロボットなんかじゃなく……僕達と同じく心を持った人間なのサ」

真宮寺「君のその発言は、彼女の人間としての要素を排除した……本末転倒な意見だということを認識してほしいネ」

最原「え、えっと……その……ゴメン」

最原(なんかわからないけど……押し切られてしまった……!)

王馬「にしし!最原ちゃん、真宮寺ちゃんのスイッチを入れちゃったみたいだね!」

~~~~

夢野「……顔は見えずとも、映像のブレ具合から最原の動揺が伝わってくるのう」

白銀「なんとか話をそらそうとしてるみたいだけど……駄目っぽいね」

入間「な、何だよこいつら……結局エロエロトークしてんじゃねぇかよぉ……」

茶柱「つ、遂に男死達が獣の本性を現して来ましたね……!」

アンジー「終一も是清も、どっちも斬美のために一生懸命になってるからタチが悪いねー」

東条「……」

赤松「も、もう……これ以上は話を聞かないほうが良いんじゃないかな……?ねぇ、春川さ――」

春川「……百田の、バカ。なんで王馬なんかの口車に乗っちゃうのさ」ボソッ

赤松(あ、これどうしようもないかも)

~~~~

百田「どうしたんだ?終一。さっきからあんまり乗り気じゃねーみたいだけどよ」

星「下ネタが苦手……ってわけでもねぇよな?年相応のスケベ心持ってるのは、見てりゃわかるぜ」

最原「ちょっ!?スケベ心って……!?」

天海「最原君だって、気になる女子の1人くらいいるんじゃないっすか?まぁ、誰とは言わないっすけど」

真宮寺「女子の前でそういう態度を取るならまだわかるんだけどネ。ここには男子しかいないんだから、もっと素直になってもいいと思うなァ」

最原(ま、マズイ……!余計なことを言ったせいで、僕の方に矛先が向いてしまった!)

王馬「ホント、今更カマトトぶらないでほしいよね。最原ちゃんがムッツリスケベだなんてこと、みんなわかってるのにさー」

最原「はぁ!?な、何てこと言うんだよ王馬君!」

王馬「何てことも何も……最原ちゃんは隙あらばスカートの中を覗こうとする、超高校級のパンチラハンターでしょ?この前だって階段で――」

最原「フンッ!」ドゴォ バキッ

百田「終一!?」

以上です

~~~~

ブツッ

白銀「あれ?モニターが消えちゃったよ?」

入間「ああ!?あの馬鹿、俺様の発明品をぶっ壊しやがったな!?」

夢野「他の5人が特に変わった動きをした様子もないし、間違いなく下手人は最原じゃな……」

赤松「階段で!?階段で何なの最原君!?」グイグイ

茶柱「お、落ち着いてください赤松さん!そんなことをしても続きは映りませんから!」

春川「まさかあの最原が……随分思い切ったことをやったね」

アンジー「それだけアンジー達に聞かれたくなかったんだろうねー」

白銀「あの会話だけでも十分に察せたけどね……」

東条「……頃合い、ということでしょうね」

赤松「え?」

東条「もうこれ以上は映像を覗き見ることは出来ないのだから……今度こそ本当に解散すべきタイミングなのではないかしら?」

夢野「まぁ、これ以上ここにいてもしょうがないしのう……ちょうどいい機会を最原が与えてくれたと考えるべきじゃな」

茶柱「夢野さんに賛成です!あ、でも夢野さんはもう少しここに残ってくれてもいいんですよ?」

赤松「んー……まぁ、そうかもね。階段のことは……後で最原君に直接聞けばいいか」

白銀「いや、駄目だよそれ!?私達が会話を盗み聞きしてたってバレちゃうから!」

春川「わかってると思うけど……ここで見聞きしたことは他言無用だよ。ま、男子がそこまでバカじゃなくて安心したよ」

アンジー「アンジーも、斬美と同じくらい神様を愛してもらえるように頑張るよー」

東条「……色々あったけれど、これでようやく一段落ね」

パッ

白銀「あ、モニターまたついたよ」

東条「」

夢野「んあ?じゃがこれは……さっきのカメラの映像とは違うようじゃぞ?」

茶柱「これは……天井付近から撮影してるのでしょうか?上からの映像みたいですが、さっきまでの5人に加えて、最原さんの姿まで映ってます」

春川「確かに、男子全員カメラに収めるとなると……俯瞰できる位置から撮影する必要があるね」

白銀「けど、そんなところにカメラなんてあったっけ?」

赤松「……あれ?」

アンジー「んー?楓、どうしたー?」

赤松「あ、いや……王馬君、左手に何か変なもの隠し持ってるように見えるんだけど……」

入間「あぁ?変なもんだぁ?お前のヘアピンより変なものなんてそうそうな……あ……?」

入間「あああああ!?あ、あのチビ……俺様の発明品を勝手に使ってやがる!」

春川「……発明品?」

入間「あれは、俺様が極秘に開発した……『カメレオンドローン』のリモコンだ!」

白銀「ドローン?ってことは、この映像ってもしかして……」

入間「こいつは完全に無音駆動で、かつ景色に同化する機能を備えた偵察用のドローンだ!」

入間「1mも離れればもう背景と見分けることも出来ないくらいの優れもので、完璧な隠し撮りが可能なんだよ!」

赤松「そ、それは……冗談抜きでかなりすごい発明だね……」

入間「だろ?俺様の胸の垢を煎じて飲ませてやろうか?ヒャーヒャッヒャッ!」

赤松「――で?入間さんはこの発明品、何に使うつもりだったの?」

入間「……」

~~~~

最原「ゲホッゲホッゴホッ!ふうう……はぁ、はぁ……」ゼェゼェ

百田「しゅ、終一……お前マジでどうしたんだ?いきなり思いっきり胸を叩いたりして……喉になんか詰まったのか?」

天海「一昔前に流行った芸人のギャグみたいだったっすね。いきなりだったんでびびったっすよ……」

王馬(く、くくく……マジで勘弁してくれよ最原ちゃん……笑いこらえんのキツすぎるって)プルプル

最原「ふう…うん、わかった」

百田「へ?」

最原「僕も……本音トークに参加するよ」

星「さ、最原……お前二重人格か何かなのか?心境の変化がまるで読めねぇぞ……」

真宮寺「……一流のスポーツ選手の中には、自分の気持ちの切り替えるために、ルーティンと呼ばれる特定の行動をする人もいるらしいけど」

真宮寺「最原君にとっては、さっきの行動がそれに当たるのかもしれないネ」

星「全力で胸をぶん殴ることがか?そんなルーティン聞いたことねぇがな……」

最原「ご、ごめんね。僕もそういう話に興味が無いわけじゃないんだ。たださっきまではちょっと混乱してて……」

百田「お、おう……まぁ、結局参加するってんなら問題ねぇさ!」

王馬「じゃあ、こっからは、最原ちゃんも参加して本音トークの再開だね!」


王馬「……いやぁ、本当に……つまらなくない展開になってきたね!」ニイィ

以上です

~~~~

春川「王馬は、最原がカメラを壊すかもしれない、ってことまで読んでたんだね。だから予め、入間の研究室からドローンを盗んできていた」

夢野「イタズラのためにそこまでするか……相変わらず恐ろしいやつじゃの」

白銀「で、男子に本音を話させて……それを私たちに聞かせようって訳だね」

茶柱「で、ですが……もう、流石にもう盗み聞きはやめた方がいいのでは無いでしょうか?」

アンジー「確かに、斬美も辛そうだしねー」

茶柱「それもありますが……やはり、秘密の会話を聞かれたら、誰だっていい気分はしないと思いますよ……例えそれが男死であったとしても……」

赤松「う、うん、そうだよね。やっぱりこれ以上は……」

白銀「――でもさ、男子達がどんな事を話すのか、地味に気にならない?」

春川「……そりゃ、気になるけどさ。でも……」

白銀「それに、ここからは最原君も本音で話すっぽいし……」

白銀「普段私達のお願いを嫌な顔もせずに引き受けてくれる最原君が、本当はどう思ってるのかとか……知りたくない?」

入間「え?アイツいっつも嫌そうな顔してないか?」

春川「……」

赤松「……私、やっぱり気になるよ。最低な考えだってことはわかってるけど……」

春川「……私には赤松にとやかく言う資格はないね。私も……同じこと考えてたから」

東条「……」

茶柱「と、ということは……?」

春川「……東条、みんな。無理に付き合わせちゃってごめんね。もうこれ以上は一緒にいてなんて言えない。単なるワガママだから」

春川「私と赤松は場所を移すから、あとは皆自由に――」

東条「……ハァ。春川さん、あなた、自分の言ったことを忘れてしまったの?」

春川「え?」

東条「これは『依頼』だと……先程そう言ったでしょう。一度受けた依頼を、完遂もせずに逃げることは私には許されていないわ」

東条「悪業も、共に背負いましょう。メイドとして、そして……あなた達の友人として、ね」

赤松「東条さん……」

白銀「うーん、何かけしかけたみたいで悪いし……私も残るよ」

茶柱「ぐ、ぐぬぬ……春川さん達だけを悪者にするわけにはいきません!この茶柱転子、ここにいる皆さんと運命を共にします!」

夢野「やれやれ……ここまで来たらウチだけ抜けるというわけにもいかんじゃろ」

春川「……ありがとう、皆」


入間「何かいい話風にまとめようとしてるけどよ……やろうとしてることはただの覗き見だよな?」

春川「……」ギロッ

入間「ひいい!な、何だよぉ……俺様何か間違ったこと言ったかよぉ……」


東条「……ただし、忘れないで頂戴ね、春川さん?」

春川「ん?」

東条「私は、受けた依頼は何が何でも完遂するつもりよ。例え多少無理をしてでも、ね」

春川「……?」

以上です。

~~~~

王馬「早速だけど……東条ちゃんって彼氏いると思う?」

星「いや、いねぇだろ」

天海「多分いないと思うっすよ」

真宮寺「恋する乙女って気はしないネ」

最原「うん、僕もそう思うよ」

百田「へ?そうなのか?終一まで即効で否定するんだな」

最原「だって、東条さんって大体いつも学園内にいるしね」

天海「俺や真宮寺君みたいに、フィールドワークに出かける用事もそう無さそうっすからね」

真宮寺「才囚学園内では、彼女は自分の立ち位置をきっちり決めているみたいだヨ」

真宮寺「つまりは、僕達同級生を仕えるべき主人、そして自分はそれに奉公するメイド……という風にネ」

星「学園内での奉仕こそがメインの活動であり、そして主人に対して恋愛感情は抱かない……とアイツ自身が定めてるんだとしたら――」

星「この学園生活中は、まず恋人なんてできねぇだろうさ」

百田「成程な……アイツはそれで満足なのか?」

星「そればっかりは本人に聞かなきゃわからねぇ」

天海「そもそも、恋い焦がれる東条さんってのも中々イメージしにくいっすね」

星「さっきも言ったが、東条だって年頃の女なんだ。恋愛に対する興味はあって然るべきなんだがな」

百田「……普段からメイドとして接してると忘れそうになるけどよ、アイツも俺達と同年代なんだよな」

百田「つまり、この才囚学園に来る前は……普通の女子高生として日常を過ごしてた筈だよな?」

最原「……うん、その筈だよ。確かに、あんまり想像がつかないね」

真宮寺「その時には、メイドじゃない素の東条さんが見れたのかもしれないネ」

百田「アイツも、そこらの女子高生みたいにテレビの話題や男の話題でキャーキャー言ってたかも知れないってことか……」

星「……こう言っちゃ悪いが、確かに全く想像できねぇな」

王馬「今みたいに給仕服じゃなく、セーラー服とか着てたのかなー?」

天海「……想像してみたら、なんかコスプレ感が凄いっすね」

王馬「ぶっ。くっ……くくく……ひ、ひどいこと言うね天海ちゃん。まぁ確かに、普段のあの服が決まりすぎてるからね!」

最原「普通に考えたら、メイド服のほうがよっぽどコスプレっぽいのにね」

真宮寺「ククク……白銀さんに聞かれたら、『それは偏見だよ最原君!』とでも言われるかも知れないネ」

星「……そもそも、東条の奴、いつからメイドやってるんだ?」

百田「確かに、言われてみりゃ謎だな。流石に生まれたときから、って筈もないしな」

最原「あ、僕それ東条さんに聞いてみたことあるよ」

天海「知ってるんすか最原君?」

真宮寺「……彼女は、なんて答えたんだい?」

最原「なんでも、アルバイトでメイドを始めたのがきっかけだって言ってたよ」

百田「バイトォ!?マジでぇ!?」

王馬「はっはっは!面白すぎるよ東条ちゃん!」

星「……何事にもきっかけは必要だとは思うが、まさかバイトとはな……」

天海「メイドのアルバイトなんて、そもそも募集あるんすかね……?」

真宮寺「女子高生にメイドをさせるとか、碌な依頼主じゃなさそうだヨ……なんて言うのは、邪推し過ぎかナ」

王馬「いや、あるじゃんか……若い女の子向けのメイドの求人が常にある場所がさ!」

最原「それって、まさか……」

王馬「そう!メイド喫茶だよ」

天海「ぶっ。ふふ……流石に、メイド喫茶は無いっすよ」

星「だな。『おかえりなさいませ、ご主人様』とかいう東条は想像できな……いや、想像したくねぇな」

百田「うぐっ。くっ………星、お前その声で変な台詞言ってんじゃねぇよ……」

星「ああ?『萌え萌えキュン』とでも言ってほしかったのか?」

最原「ぶふぉっ」

真宮寺「くっ……」プルプル

天海「ほ、星君……それは反則っすよ」プルプル

王馬「wwwwwwwwwwwwww」

百田「うっ、くっ、くくくく……ほ、星、てめぇ……くっ……」プルプル

星「ふっ、やれやれだな。だけどよ、想像したくねぇだろ?あんなところで男に媚び売る東条なんてよ」

真宮寺「ふーっ……まぁ、見ていて気持ちのいいものじゃ無さそうだね」

最原「そ、それはそれで失礼じゃないかな?女の子として可愛い所を見せようとしてるわけだし」

真宮寺「さっきも言ったけど、東条さんの魅力ってのはそういう部分じゃないからネ」

天海「まぁ、もし東条さんが務めてるメイド喫茶とかあったら通いつめるっすけどね」

百田「んー、でもやっぱり、東条がメイド喫茶ってのも何か違う気がするんだよな……上手く説明できねぇんだけどよ……」

百田「アイツのキャラじゃねぇっつうか……なんて言ったらいいんだろうな」

王馬「あー。百田ちゃんの言いたいこと何となく分かるよ」

王馬「つまり……東条ちゃんは萌えない!ってことだよね!」

以上です

~~~~

東条「……」フルフル

赤松「と、東条さん……皆、別に悪口言ってるわけじゃないから……」

東条「……セーラー服がコスプレだの、萌えないだの……彼ら、ファンクラブという言葉の意味を履き違えているのではないかしら」

春川「……彼氏はいない、とも断言されてたね」

東条「……それに関しては……否定出来ないわね」

白銀「気にしないで、東条さん!ちゃんとした生地で作られたセーラー服なら、安っぽく感じないから東条さんにも絶対に似合うよ!」

アンジー「うーん、斬美が言ってるのはそういう意味じゃないと思うなー」

夢野「しかし、東条の言うことももっともじゃぞ。もっとマシな話題もあったじゃろうに」

春川「……ううん、これ、全部……王馬に誘導された会話だよ」

赤松「え?」

春川「話題の主導権を握ってるのは間違いなく王馬。男子達に話題を振って本音を引き出しつつ……自分の発言は上手く抑えてる」

春川「……私達が聞いてることを理解した上で、一番自分にとって面白くなるよう、会話を誘導してるんだよ」

茶柱「あ、悪趣味な……!」

春川「……ま、会話を盗み聞きしてる私達が言えたことじゃないんだけどさ」

茶柱「うっ……」

東条「……前から薄々思ってはいたのだけれど」

赤松「えっと……何を?」

東条「王馬君のママ呼びとといい、今の会話内容といい……私、年齢より老けて見られているのかしら」

赤松「な!?そ、そんなこと無いよ!東条さんは確かに大人びてて綺麗でミステリアスな雰囲気を持ってるけど……老けて見えるなんてことは絶対にない!」

入間「東条ってまだ未成年だったのか!?てっきり特別編入生的な何かかと思ってたのに……」

東条「……」

春川「……」ギロッ

入間「へ、へっ……も、もう怖かねぇぞ……」ビクビク

赤松「……」バンッ!

入間「ひっ!?」ビクン

白銀「あ!だったらさ、東条さん、もうちょっとスカート丈の短いメイド服着てみない?仕上がりも着心地も全然コスプレっぽくない、いいのがあるんだよ!」

夢野「つまり、それもコスプレってことじゃろうが……」

東条「……遠慮しておくわ」

白銀「うーん……アレを着た東条さんなら、、男子に絶対に萌えないとか言われないと思うんだけどな……」

茶柱「萌えなくてもファンクラブができるんですから、今のままで十分ではないでしょうか?」

赤松「うん、わざわざ萌えさせる必要もないと思うよ!」

赤松(最原君が本気でファンクラブ入りしたら困るしね)

~~~~

天海「萌えない、っすか。確かにメイドって聞くとそういうイメージあるかもしれないっすけど……」

天海「実際に昔メイドと関わった身からすると、メイドさんに対してそういう感情は湧きにくいっすね」

真宮寺「メイドと言うものに、萌え……即ち恋愛感情にも似た感情の高揚を感じるのは……確かに特異な文化だと思うヨ」

真宮寺「日本において、何がきっかけでそういう風潮が生まれたのか……調べてみたら案外面白いかもしれないネ」

最原「そういうのも、民俗学の一種なのかな?」

真宮寺「いいや、僕個人のただの興味サ」

百田「萌えない、萌えない……か」

百田「そもそも萌えって何なんだろうな?」

真宮寺「そこら辺は、今度『超高校級の同人作家』にでも聞いて見るとするヨ」

星「お前、そんなやつとも交流があったのか?」

真宮寺「前に、和風ホラー系の作品を作るとかで……監修に協力したことがあるのサ」

真宮寺「まァ、確実に言えることは……僕達が東条さんに抱いている感情は、萌えなんかではないってことだネ」

星「違いねぇな」

王馬「じゃあ、どうすれば東条ちゃんに萌えを感じるようになるかな?」

百田「萌えが何なのかわからねぇんだから、どうもこうもねーんじゃねぇか?」

王馬「けどさ、よく言うじゃん。一般的なのは……『ギャップ萌え』だって!」

最原「ギャップ……?」

王馬「普段はクールで、身だしなみもきっちりしてる人が……実は、不器用だったりドジだったりすると……そのギャップでより一層可愛く感じたりするってやつだよ!」

天海「成程、わからなくもないっすね。ただ……」

真宮寺「東条さんは、見た目も立ち振る舞いも完璧で……ギャップなんて感じさせないネ」

王馬「うん、そうだね。だから東条ちゃんの場合なら、例えば……あんなに完璧にメイドとして振る舞ってるのに――」

王馬「実はいちごのパンツを穿いてました!とかいいんじゃない?」

最原「い、いちごのパンツって……」

星「……さすがの東条でも、そんなの穿いてたら流石に引くぜ」

百田「それが許されるのは小学生までだろ……」


王馬「にしし!だよねー!でも、そしたらさ……」

王馬「東条ちゃんって、どんな下着身につけてるんだろうね?」

以上です

~~~~

白銀「うわー……まぁ、やっぱりそういう話題にもなるよね……」

茶柱「だ、男死!遂に超えてはいけない一線を超えましたね!」

白銀「厳密にはまだ超えてないけどね。……時間の問題っぽいけど」

入間「お前、いちごのパンツ穿いてんのか?」

東条「そんなわけ……無いでしょう……」

アンジー「斬美がぐったりしてるよー……」

赤松「と、東条さん……辛かったら見なくていいから、ね?」

東条「……いいえ、これは当然の報いよ。盗み聞きなどという愚かな真似をしてしまった私への、ね……」

夢野「その理論でいくと、ウチらにも罰が下りそうなんじゃが……」

東条「……おそらくそうなると思うわ」ボソッ

赤松「え?今なんて――」

春川「静かに。まだアイツらの話は終わってないよ」

~~~~

百田「し、下着って……パンツとかブラジャーとかのことか?」

王馬「それ以外に何があるのさ百田ちゃーん」

星「フン、照れてやがるのか?最原を見習ったらどうだ?早速考察モードに入ったぞ」

最原「へ!?そ、それは違うよ!」

真宮寺「けど、今明らかに考え事をしてたよネ?」

天海「東条さんの下着がどんなものかを推理したんっすね。いやぁ、さすがっすよ最原君……」

最原「ちょ、皆して変な邪推はやめてよ!」

王馬「そもそも、超高校級のパンチラハンターである最原ちゃんなら……直接東条ちゃんのパンツ見たことあるんじゃないの?」

最原「あ、あるわけないだろ!」

王馬「でも、赤松ちゃんのパンツはたまに見てるよね?」

最原「……そ、それは……」

最原「……見てたんじゃなくて、見えたんだよ」

王馬「うわすげぇ犯人っぽい言い草」

百田「終一……」

天海「でも、東条さんってロングスカートだし、よっぽど激しい動きでもないとパンツなんか見えそうに無いっすよね」

真宮寺「加えて、本人の動きにも隙がないからネ。間違ってもスカートがめくれ上がることはないだろうサ」

星「だとよ。残念だったな、最原」

最原「……何を言ってるのかわからないな」

百田「つまり、東条は下着を見られることを気にする必要がない、ってことだよな」

百田「で、見せるような相手もいないとなれば……下着なんてなんでもいい、って事にならないか?」

星「ふっ……甘いな百田」

百田「な、何ィ!?」

星「アレだけメイドとして完璧に振る舞ってる東条のことだ。身に着けるものにも相当気を使ってるはずだ」

星「手袋を見てもわかるだろ。アレはそんじょそこらの安もんじゃねぇ。どこぞの一流のブランドのものか……あるいは自作したのか」

星「下着だってそうさ。例え、他人に見られることを想定していなくったって……身を引き締めるためにそれなりに高級なやつを身に着けていると思うぜ」

真宮寺「さっきのルーティンの話じゃないけど……そういう部分で、意識を切り替えているのかもしれないヨ」

真宮寺「見えないところへの気遣いが、仕事に対する意識へと繋がる――それこそ、メイドに必要な奉仕の精神に通じるものがあるのかもしれないネ」

百田「こ、高級な下着って……す、スケスケのやつか!?」

星「……お前は、高級ランジェリーが全部エロいやつだとでも思ってるのか?」

星「素材に拘ったもの、デザインに拘ったもの……種類は色々あるぜ。お前が言うようなのも当然あるけどな」

星「もし女にプレゼントしてぇってんなら、アドバイスくらいはしてやれるぜ」

百田「うっ……!?」

真宮寺「……ちなみに、星君は……東条さんの下着の色は何だと考えているのかな?」

星「黒……いや、紫ってところか。ダークな色合いの方が、あいつには映えるだろうさ」

真宮寺「ククク……意見が一致したネ」


最原(お、大人だ……!同級生なのに……!)

天海(あやかりたいっすね)

王馬(いやー、あっちにもカメラ仕掛けておくべきだったなー。女子の皆はどんな顔してこの話聞いてるんだろ)

~~~~

赤松「さ、最原君のバカッ!」カアア

茶柱「……どうやら、最原さんには後でお話を聞く必要があるようですね……!」

夢野「控えめに言っても最低な言い訳じゃったな」

白銀「しかも、あの反応だと常習犯っぽいしね……」

入間「へ!どうせ見られて困るような子供っぽい奴穿いてるんだろ!このお子様パンツ松が!」

アンジー「皆、今は斬美の方を気にしてあげたほうがいいと思うなー」

東条「……」

赤松(……東条さん、『考える人』みたいになってる……)

白銀「……ちなみに、東条さん。今身に着けてる下着の色って……?」

東条「……紫よ。上下共……」

アンジー「おー。竜馬当たってるよー!すごいねー!」

茶柱「か、かなり大人っぽいのを着けてるんですね……」

東条「……」ピクッ

茶柱「あ!ち、違います!今のは決して、そういう意味で言ったわけじゃ……!」

春川「……」

アンジー「それでそれでー、どうして魔姫は――」クイッ

アンジー「そんな安心したような顔してるのかなー?」クイッ

春川「!?べ、別に……安心なんて……!」

以上です

天海『あ、ちょっといいっすか?さっきの東条さんは萌えないって話、自分なりに考えてみたんですけど――』


東条「……まだその話題を引きずるのね」

白銀「正直、3次元で萌えるも何もないんじゃないかなと思うんだけどなー。私の個人的な意見としてはね?」


天海『身長の高さが理由の一つにあるんじゃないっすかね?』

王馬『あー、東条ちゃん背高いもんね!』

最原『確かに。僕よりも高かったはずだよ』

百田『終一は170くらいだったよな?それよりも高いのか……』

星『確かに、普通の女子高生と比べたら高い方だな。だが……』

星『そもそも、ウチのクラスの女子、背高いやつが多くないか?』

百田『あー、確かにそうかも知れねぇな。割と平均に近いのってアンジーとかハルマキ辺りか?』

最原『……僕だって男子の平均くらいの身長だと思うけど、それでも僕より身長高い人何人もいるからね……』

王馬『ま、俺とか星ちゃんに比べたら、皆巨人みたいなもんだけどね!』

真宮寺『それ、自分で言うんだネ』

天海『あと、露出の少ないメイド服だから目立たないっすけど……東条さんって結構胸も大きいっすよね?』


白銀「わー!男子って本当に女子の胸の大きさとか語り合ったりするんだー!」

赤松「白銀さん、なんでそんなに嬉しそうなの……」

白銀「いや、こういうテンプレ的な会話って、フィクションの中だけかと思ってたから……地味に感動だよ!」

入間「ま、貧乳に人権なんてねぇからな!」

春川「……」

入間「な、なんとか言えよぉ……」

アンジー「うーん、美兎ってかなり面倒くさい性格してるよねー……」

茶柱「天海さん、男死の中では比較的まともな人だと思っていたのですが……残念です。こんな形でお別れをすることになるなんて……」

夢野「何を考えておるんじゃ。やめい」

天海『あの身長であのスタイル……超高校級のモデルとしてもやっていけそうだと思うっすよ』

真宮寺『あのクールな風貌と合わせて……『美しい』って言葉がピッタリだと思うなァ』

最原『確かに、可愛いとかよりも……綺麗とかそっちの言葉のほうがしっくり来るね』

星『ああいう女が、惚れた男相手にはどんな顔を見せるのか……拝んでみたいもんだな』


白銀「困った顔してる東条さんなら今ここで見れるけどね」

アンジー「『憂いを帯びたその表情もまた……美しいヨー……』」

アンジー「どう?是清のマネ、似てた?」

東条「……」

夢野「微妙じゃな……」

赤松「あ、あんなこと言われたら、普通照れちゃうよね……。そういう意味じゃ、やっぱり東条さんは凄いよ……」

東条「……私が、何も思ってないとでも……?」

茶柱「東条さんは、もう少し喜怒哀楽を表情に出せば良いのではないでしょうか?その点、転子は自信ありますよ!」

夢野「お主はお主で過剰じゃと思うが……」

東条「……努力してみるわ」

百田『惚れた男、か。東条ってどんな男がタイプなんだろうな?』

王馬『何々?百田ちゃん、東条ちゃんのこと狙ってるの?』


春川「……」ピクッ


百田『ばっ……!?ちげーよ!』

百田『ただ、アイツが求める男の条件って……とんでもなくレベルたけーんじゃねーかと思ったんだよ』


春川「……」ホッ

赤松(春川さん可愛いなぁ)


百田『アイツ自身現実離れしたスペックの持ち主だし、そのパートナーともなれば、当然それに匹敵する能力なり地位なりが求められるわけだろ』

百田『そうなると、どれ位のレベルの人間ならアイツに相応しいのか……いまいち想像つかねぇなと思ってよ』


星『……確かにな。どんだけ金持ちで顔も性格も良くて家柄に恵まれてたとしても……』

星『それで東条を落とせると断言はできねぇな』

真宮寺『滅私奉公をモットーにしている彼女が、誰か1人のためだけに身も心も捧げるっていうのは……ちょっと想像できないネ』

最原『それ、東条さんが恋愛してる姿は想像できないって言ってるようなもんじゃないかな?』


東条「……」

茶柱「この男死達は……好き勝手言いますね……!」

夢野「ウチらが聞いてるとは思っておらんのじゃから、そりゃ好き勝手に言うじゃろ」

白銀「東条さん!男子達にあんなこと言われないためにも、もっと等身大の女の子アピールした方がいいよ!だからこのミニスカメイドコスを」

東条「気持ちだけ受け取っておくわ」


王馬『でもさ、恋愛してる姿が想像できないといえば――』

王馬『茶柱ちゃんもそうだよね?』


茶柱「!?」

以上です

百田『茶柱?あー……』

天海『彼女の場合は、恋愛に興味が無いというか……』

真宮寺『男子そのものを忌み嫌っているようだからネ』


茶柱「き、聞き間違えではなかったようですね……!ま、まさか転子が次の標的に!?」

赤松「お、王馬君……!まさか……!」

白銀「女子全員の話を振るつもり、なの……?」

東条「……思った通りね」

春川「東条、アンタこの展開を予想してたの?」

東条「確証は無かったけれど……あんなおもちゃを手に入れた時点で、王馬君が私の話題だけで満足するとは考えていなかったわね」

東条「そう、彼なら……私達全員を巻き込むはず。『その方がより、つまらなくない展開になる』、と……そう考えるはずだと思ったのよ」

入間「ケッ!性格のワリーチビだな」

夢野「お主のそれは突っ込み待ちなのか?」

茶柱「こ、このままでは女子の皆さん全員が犠牲に……!そんなことは断じて許せません!」

赤松(……東条さんのこと聞いちゃった時点で、もう手遅れな気がするけど)

アンジー「んー。アンジーは男子の皆がアンジーのことどう思ってるか、聞いてもいいかな」

茶柱「な!?正気ですかアンジーさん!」

アンジー「だって、さっきの話聞いてた感じだとー、皆、斬美のいいところをいっぱい話してたよね?」

茶柱「そ、それは……あの集まりが東条さんのファンクラブだからであって……」

アンジー「陰口を言うような悪い子は、あそこにはいないと思うな。もし誰かが変なこと言おうとしても、きっと終一が止めてくれるよー!」

茶柱「そ、その最原さんだってドスケベじゃないですか!さっきの話を聞いてたでしょう!?」

アンジー「アンジーは別にそれでも構わないよ?」

茶柱「え」

赤松「……」ピクッ

茶柱「と、とにかく!これ以上卑劣な真似は許せません!かくなる上は、転子自ら図書室に乗り込んで……」ガシッ

東条「……」

茶柱「あ、あの……?東条さん、何故転子の腕を掴んでいるのですか……?」

東条「――履き違えては駄目よ、茶柱さん。これ以上無いほど卑劣な真似をしているのは……私達の方なのよ」

茶柱「!?」

東条「彼らはただ、友人同士で雑談に花を咲かせているだけ。年頃の男子が集まっているのだもの。そういう話題にもなるでしょう」

東条「……それを、卑怯にも陰からコソコソ覗き見しておいて好き勝手文句を言う……それが私達が今やっていることなの」

茶柱「う、うう……!」

東条「それに、忘れているかも知れないけれど……私は『依頼』を受けているの。この鑑賞会に、最後まで付き合うという依頼をね」

春川「あっ……」

東条「受けた依頼は、必ず完遂してみせるわ。例え依頼主であるあなた達からの妨害を受けたとしてもね」

東条「――これは滅私奉公よ。決して私怨などでは無いわ……!」

赤松(東条さん、やっぱり怒ってるのかな……)

以上です

最原『茶柱さんか……まぁ、確かにいっつも夢野さんと一緒にいる印象があるね』

星『……というか、アイツが一方的に付きまとってるようにも見えるんだが……』


茶柱「な、何てことを!やはり男死はいい加減なことばかり言いますね!」

夢野「……案外、男子もちゃんとみてるんじゃな」


百田『というかよ、アイツってアレじゃねーのか……?』

天海『アレ、ってなんすか?』

百田『いや、その……アイツっていっつも夢野を追いかけ回してるだろ』

百田『それに、事あるごとに『夢野さん可愛い』って言ってるしよ……やっぱ……』

真宮寺『……彼女たちが、『禁断の関係』だと……百田君はそう思ってるのかナ?』

最原『き、禁断の関係って……』

天海『……つまり、茶柱さんが同性愛者じゃないか……ってことっすよね?』


夢野「!?」

茶柱「」

百田『お、おう……いわゆる、百合?ってやつだ』

王馬『関係ってよりは……茶柱ちゃんの一方的な片思いに見えるよねー!』

天海『茶柱さんがアレだけ夢野さんを気にかけているのは、彼女の事を1人の女性として愛しているから……。成程、そういう捉え方もできるっすね』


夢野「て、転子……!お主、ウチの事をそういう目で見ていたのか……!?」ガクガク

茶柱「ち、違います!あ、あんなの男死の勝手な妄想じゃないですか!騙されないで下さい!」

夢野「お主も、う、ウチの小さい穴を狙っておったんじゃな……!?そ、それ以上近づくでない!」

茶柱「ゆ、夢野さぁん……」ジワァ

白銀「うーん……茶柱さんの普段の夢野さんに対する接し方見てると、あながち男子の妄想とも言いきれないよね」

春川「追い打ちかけてどうすんの……」

入間「レズの上にロリコンとか……どうしようもねー変態だな!」

茶柱「て、転子はレズじゃありませーん!」

最原『ちょ、ちょっと待って。茶柱さんは、そういうのじゃないと思うよ』

真宮寺『僕も、最原君の意見に賛成だネ』


茶柱「!ゆ、夢野さん!今の聞きましたか!?男死の中にも、分かってくれる人はいるみたいですよ!」

夢野「んあ……最原と真宮寺か……」

茶柱「真宮寺さんは不気味な人かと思ってましたが、見直しましたよ!」


真宮寺『茶柱さんが夢野さんに対して抱いている感情は、恋愛的な好意ではなく……愛玩動物に向けるような好意だと僕は思うヨ』


茶柱「え」

夢野「んあ?」


真宮寺『つまりはペットってことだネ』


夢野「!?」

茶柱「!?」

以上です

最原『ちょ!?何も僕はそこまで――』

星『ペット扱いか……そう考えると確かにうなずける部分も多いな』

天海『猫飼ってる人なんかは、そっけない態度もまた可愛いって言いますもんね』

星『……』ピクッ

王馬『どれだけ邪険に扱われても懲りずに夢野ちゃんを追いかけ回してるのは、夢野ちゃんの事をペット扱いしてたからなんだね!うん、それなら納得だよ!』


夢野「て、転子……!お主は、ウチのことをそんな風に思っておったのか……!」ワナワナ

転子「ち、違います!あ、あんな不気味な人の言うことを信用しないで下さい!」

白銀「うーんこの見事な手のひら返し」

入間「レズでロリコンの上に飼育調教とか……ご、業が深すぎんだろぉ……」カアア

茶柱「か、勝手に転子に属性を追加しないでくださーい!」

最原『ちょっと、皆先走り過ぎだよ……。真宮寺君も、本当はそんなこと思って無いんでしょ?』

真宮寺『ククク……ほんの冗談のつもりだったんだけど、予想以上に信じこまれてしまったネ。まァこれは、茶柱さんの日頃の態度のせいでもあるかナ』

百田『な、なんだ……冗談だったのかよ……お前が言うと冗談に聞こえねぇっての……』

真宮寺『ただ、彼女が同性愛者じゃない、って考え自体は……僕の本心だヨ』

最原『うん、僕もそう思う』

星『何か根拠でもあんのか?』

最原『そうだな……そうそう、茶柱さんは、ああ見えてアイドル好きだったりするんだよ』

星『ほう……そりゃまた、やけに乙女チックな趣味を持ってんだな。だが、それがなんだってんだ?』

最原『ああいう、人に夢を与えられる存在に憧れを持っているんだってさ。夢野さんの事がお気に入りなのも、それが理由だと思うよ』

星『……成程』

天海『夢野さんは、『超高校級のマジシャン』――成程、確かに老若男女、皆に夢を与えられる存在と言えそうっすね』

東条「そういうことだったのね。ふふ、素敵なことだと思うわよ、茶柱さん」

茶柱「さ、最原さん……!助かりました!男死なのは残念ですが、アナタは転子の良き理解者です!」

夢野「……ウチは、『超高校級の魔法使い』なんじゃが」

アンジー「うーん、秘密子もブレないねー」

赤松「……茶柱さんも、最原君には随分心を許してるんだね。色々お話してるみたいだし……」ジー

茶柱「あ、赤松さん……?そんなに見つめられても困るのですが……」


王馬『じゃあさー、最原ちゃんは、茶柱ちゃんがノンケだって主張するわけ?』

最原『の、ノンケって……彼女だって年頃の女子高生なんだよ。異性に対する興味くらい持ってるんじゃないかな?』

百田『……その割には、アイツ男を毛嫌いし過ぎてないか?』

真宮寺『独特の思考を持っているのは間違いないネ。それも彼女の個性ではあるんだけどサ』

天海『とは言え、別にこっちが変なことでもしなければ、茶柱さんだって極端なことはしないと思うっすよ』

星『実害も特に無いしな。大声で威嚇するのは控えて欲しいモンだが……』


百田『けどよ……俺はハグしようとしただけで投げ飛ばされたぜ?』


春川「!?」

以上です

天海『は、ハグって……!?』

星『お、オイオイ……そりゃあマズイんじゃねぇか百田』

真宮寺『……また随分と大胆な告白だネ。まさか君がねェ……』

王馬『うーん。これは今後の百田ちゃんとの付き合い方を考えちゃうなー』


春川「茶柱……今の百田の発言、どういう事?」

茶柱「ヒッ……!?お、落ち着いて下さい春川さん!というか答えようがないというか」

春川「いいから。答えて」

アンジー「魔姫、女の子がしちゃいけない顔になってるよー」

東条「落ち着いて、春川さん。そもそも茶柱さんは被害者よ」

春川「私は茶柱に聞いてんの」

夢野「んあ……」ガクガクガク

入間「……」ブルブルブル

赤松「あー……アレのことだよね、多分」

春川「……赤松、なんか知ってるの?」ピクッ

赤松「ほら、アレだよ。百田君がよく言う――」

百田『お、オイ!お前らなんか勘違いしてねーか!?』

最原『百田君、その言い方だと間違いなく誤解されるよ……』

百田『俺はただ、アイツが夢野に怒られたって落ち込んでた時に……』

百田『慰めてやるつもりで、『ハグしてやろうか?』って聞いただけだっつーの!』

天海『……百田君。それ、相手が茶柱さんじゃなくてもセクハラ案件っすよ』

星『投げられただけで済んでまだマシだったんじゃねぇか?』

王馬『うん、裁判沙汰になってもおかしくないよねー』

百田『な、なんだよ……ただのコミュニケーションじゃねぇかよ……そこまでマズイこと言ったか?』

真宮寺『……東条さんや茶柱さんの恋愛感情云々の前に、百田君について議論したほうがいい気がしてきたヨ』

王馬『うーん。それはそれでつまらなく無さそうなんだけど、また次の機会にしようよ。こっちにも事情があるからね』

真宮寺『……?』

白銀「あー。確かに百田君、赤松さんにも前似たようなこと言ってたね」

赤松「そうそう。百田君ってなんというか……欧米的な価値観でも持ってるのかな?ハグを挨拶の一部だと思ってるフシがあるんだよね」

入間「そ、そんなわけねーだろ!絶対にスケベ心丸出しで言ってるに決まってんだろうが!」

夢野「単にそういう事に無頓着なだけかもしれんぞ」

東条「……そういえば、この会話の中でも、彼は一歩引いたような立ち位置にいるわね」

アンジー「解斗にとっては、宇宙が恋人なのかもねー」

春川「……」

茶柱「た、確かに転子は投げ飛ばした覚えはありますが……断じて指一本触れられてはいません!ほ、本当ですよ?」

赤松「まぁ、百田君もいつもの調子で言っちゃっただけだと思うし、茶柱さんも春川さんも、そこまで気にすることじゃ――」


春川「……私、それ、言われたこと無いんだけど」


「「……」」シーン

以上です

赤松「……ほ、ほら!百田君って他人を気遣える人だから、その時はたまたま落ち込んでた茶柱さんに言っちゃっただけだって!」

春川「……赤松の時は、アンタ落ち込んでたの?」

赤松「え、えっと……」

春川「……というか、別にフォローとかいいから。別に何とも思ってないし」

赤松(そんな悲しそうな顔してよく言うよ……)

東条「……さっき、百田君は『コミュニケーション』って言葉を使ったわよね?」

赤松「え?う、うん……そうだけど……」

東条「私の推測でしか無いのだけど……もしかしたら百田君は、ハグを今よりもっと仲良くなる手段だと考えているのかも知れないわね」

春川「……それが何?」

東条「春川さん、貴女は間違いなく女子の中で一番百田君と多くの時間を過ごしているし、絆も深いでしょう」

春川「は!?そ、そんなことないし!それに、今の話とは何の関係も……」

東条「百田君もそう思っているのではないかしら。春川さんと自分との間には、堅い信頼関係が築けていると。だからこそ――」

東条「わざわざハグなんてするまでもない。……そう判断しているのかも知れないわ」

春川「……」

春川「……まぁ、ハグなんてしようとしてきたら……投げ飛ばすけどね」

赤松(よ、よかった……春川さんの表情もかなり柔らかくなったみたい。東条さん、ナイス!)

入間「単純に胸がでかいやつがよかっただけなんじゃ」

赤松「」バンッ

入間「ひっ」

茶柱「ど、道場の床をあまり叩かないで下さい……」

~~~~

最原「僕も、それに関しては百田君の発言が迂闊だったと思うよ」

百田「うーん……終一にまでそう言われるってことは、そうなのかも知れねぇな……」

王馬「……さっきといい、最原ちゃんは結構茶柱ちゃんをフォローしてるよね?」

最原「え?確かに……そう言われればそうかも」

最原「ただ、僕は……茶柱さんが男子に対しては平気で暴力振るうような、ひどい人だと思われたくないんだよ」

星「フン、それなら心配無用って奴だぜ、最原」

最原「へ?」

真宮寺「僕達だって……茶柱さんがそういう人じゃないなんてこと、分かってるってことサ」

天海「彼女は、明るくて優しい心の持ち主だと思うっすよ。ただ男子に対してはちょっと極端な対応になるだけで」

百田「おう!俺も、アイツの友達思いなところはバッチリ評価してるぜ!」

最原「ハハハ……なんだ、僕が心配することじゃなかったね」


王馬(……この中で誰にフォーカスを当てれば、一番つまらなくない展開になるかって考えると……)

王馬(うん!やっぱり最原ちゃん一択だよね!)

以上です
終わり見えねぇなこれ

~~~~

夢野「……案外、転子の評判はいいみたいじゃのう」

茶柱「な、なんというか……流石にむず痒い気分になりますね……!」カアア

赤松「男子だって、皆ちゃんと茶柱さんのいい所を分かってくれてるみたいだね!」

東条「悪いけれど、問題はここからなのよね」

春川「……だね。間違いなく王馬が何か仕掛けてくるはず」

アンジー「気をしっかり持ってね、転子」

茶柱「そ、そこまで言われると今度は不安になってきました……」

~~~~

王馬「けどさー、やっぱりあそこまで男子に対して敵意を剥き出しにしてるのはおかしいよね?」

天海「そうっすね。だけど、もしかしたら過去に何かあったのかもしれないし……」

星「そこについて触れるのは、野暮ってもんかもしれねぇな」

真宮寺「……その割には、彼女は男子に恐怖心を持っているわけでは無さそうだよネ」

百田「ん?どういうことだ?」

真宮寺「天海君が考えているのはつまり、過去に男子の言動のせいで何か嫌な思いをしたことがある……つまりトラウマを抱えている、ってことだよネ?」

真宮寺「だけど、彼女が男子に接する時の態度は……敵意であって、憎悪や恐怖から来る悪意では無い……という感じがするヨ」

真宮寺「つまり、彼女はトラウマなんか抱えてない……と僕は思うなァ」

星「つまり、アイツが男子に対して攻撃的なのは、別の理由があるんじゃねぇか……ってことだな?」

真宮寺「そういうことになるネ」

王馬「そこらへん、最原ちゃんならなんか知ってるんじゃないの?」

最原「うーん……まぁ、確かに皆気になるところではあるよね」

最原「僕も直接理由を茶柱さんから聞いたわけじゃないんだけど……おおよその検討はついてるよ」

王馬「お!さっすが最原ちゃーん!その推理、聞かせてよ!」

最原「推理って程大げさなことではないんだけどね。これは、茶柱さんから教えてもらったことなんだけど」

最原「茶柱さんと一緒にネオ合気道を立ち上げた『師匠』がいるんだって。しかも、その人は男の人らしいんだ」

天海「へぇ、意外っすね。てっきり男子から身を守るために合気道を始めたのかと思ってたんすけど……」

星「最初から男を嫌ってたんなら……わざわざ男のところに習いにはいかねぇよな」

最原「うん、別に彼女はそういうつもりは無くって……ノリで新興流派を興したらしいからね」

百田「ノ、ノリって……マジかよ……」

最原「茶柱さんは、その師匠のことをとても尊敬している、大切な人だと言ってたよ」

真宮寺「……へぇ。男の人なら誰でも敵、ってわけでも無いんだネ」

最原「おそらくだけど……その尊敬する師匠に何か吹き込まれたんじゃないかな?」

最原「『男は狼だから、決して気を許すな』……みたいなことを、冗談交じりでさ」

真宮寺「それを信じ切ってしまい、心に刻み込んで……今に至る、という訳だネ」

百田「あー。それはありそうだな。アイツ、結構単純そうだし」

王馬「それを百田ちゃんが言うなら、間違い無さそうだね!」

百田「だろ?俺の人を見る目は確かだからな!」

天海「いやぁ、そういう意味じゃないと思うっすけどね」

以上です

~~~~

茶柱「た、確かに師匠から男死は敵だと教わりましたが……あ、アレは冗談だったんですか!?」

赤松「む、昔から素直な子だったんだね、茶柱さん……」

茶柱「むむむ……で、ですが、今更この生き方を変えることは出来ません!師匠、転子はどうしたら……」

白銀「でもさ、そのお師匠さんも男の人……つまり、『男死』なんだよね?それはいいの?」

茶柱「うぐ!?う……う、うううううううううううううう……!」

夢野「自らの思考の矛盾に耐えきれなくなって、オーバーヒートしておるな……」

東条「いずれは覚める夢のようなもの……遅いか早いかの違いよ」

東条「むしろ、理解ある級友達に指摘してもらえたのは幸運ではないかしら」

茶柱「……確かに、ここ才囚学園の男死達はまだまともな人達のようです。それは認めましょう。ですが男死を許すことは出来ません!」

白銀「そんな、もの○け姫みたいなこと言わなくても……」

最原『まぁ、そういうわけだから……彼女は自覚がないだけで、普通に性的嗜好はノーマルだと思うよ』

星『ふむ……しかし、そういうことなら……厄介かもな』

天海『厄介?それってどういうことっすか?』

星『さっきも言ったとおり、ウチのクラスの女子は全員レベルが高い。だがその一方で、自分の魅力に気付いていないやつも多い』

星『茶柱なんかは、その典型例だろうよ』

王馬『うーん、もっと具体的に言ってくれないとわからないかなー』

星『フン、要はだな……。最原、お前ならわかるんじゃないか?』

最原『え?僕?』

星『お前、茶柱の特訓にたまに付き合ってやってるって話だったよな?だったら――』

星『――アイツに対して、嫌でも女を感じたことがあるんじゃねぇか?』

最原『!?』


茶柱「!?」

赤松「……」

最原『な、ななな……!?』

王馬『星ちゃーん、最原ちゃん混乱しちゃってるみたいだから、もっとわかりやすく言ってあげてよ!』

星『具体的にはどんな特訓をしてるのかは知らねぇが、組手でもすりゃあ否応なしに体は近づくだろ。密着することだってあるかもしれねぇ』

最原『……それは、まぁ……』

星『そういう時、女の体の柔らかさを……実感させられなかったか?』

最原『……』

天海『確かに、茶柱さんも胸大きいっすもんね』

星『ま、胸に限ったことじゃねぇさ。匂いや肌の滑らかさ……女を意識する要素はいくらでもある』

星『アイツは顔立ちも整ってるし、髪も綺麗で艶がある。あんなお転婆な性格じゃなければ、引く手あまただろうよ』

星『そんな茶柱に一番身近で接してるのがお前なんだ。理解できねぇとは言わせねぇぞ?』

最原『……』


最原『……まぁ、確かにね』


茶柱「んなぁ!?」

赤松「……!」

最原『……茶柱さんだって、魅力的な女の子なんだ。それだっていうのに……』

最原『本人に自覚がないのか、遠慮なく体を密着させてきたり、あんな短いスカートで激しく動いたり……正直、困るよ』


茶柱「な、なななななななな」

春川「確かに、私も思ってたよ。それ、大丈夫なの?って」

白銀「お、思ってたなら言ってあげればよかったんじゃない?」

春川「本人が気にしてないならいいか、とも思ってたんだよ。まさか自覚なしとはね」

赤松「……」

王馬『またまたー!本当は嬉しいくせに!』

最原『……それも否定はしないけど』ボソッ

百田『お!言うじゃねーか終一!』ポンポン

真宮寺『ククク……素直になるのはいいことだヨ、最原君。ここには男子しかいないんだからネ』

最原『とは言っても、投げ飛ばされるって代償は伴うけどね……』

王馬『で、やっぱりパンツとかも見ちゃってるわけ?』

最原『……そりゃあ、当然……見えちゃうよね、アレだと』


茶柱「なあああああああああああああ!?」

夢野「転子の語彙力がしんでおるのう……」


天海『茶柱さん、おヘソもだしてるし……案外露出多い格好してますもんね』

星『アイツは、男子を嫌ってる割には……男に対する警戒ってもんが出来てねぇんじゃねぇか、って気がしてな』

星『要は……無防備なんだよ、アイツは。自分が男から『そういう対象』として見られることにな』

以上です

星『この学園内ならまだいいさ。男子連中も、茶柱を悪いようにはしねぇだろうさ。だが、ここを卒業したあとはどうだ?』

真宮寺『……そういう邪な考えを持った男の毒牙にかかるかもしれない、って言いたいのかなァ?』

天海『まぁ、アレだけの器量良しだから、見ず知らずのチャラ男に口説かれてもおかしくはないっすよね』

王馬『天海ちゃんも見た目は十分チャラいけどね!』

天海『ハハハ……それを言われると参るっすね』

百田『けど、男死にアレだけ噛み付いてる茶柱だぞ?そうそうそんな奴には引っかからねぇだろ』

星『最原の話じゃアイツも普通に女だって話だ。ロマンチックな恋愛に憧れてる面があるかもしれねぇ』

星『そういう隙を突かれると、コロっと落ちちまう女もいるのさ。男嫌いって公言してる奴でもな』

百田『そ、そういうもんなのか……?』

真宮寺『それに、僕が観察した感じだと……最原君と関わる時間が増えてから、茶柱さんの男子への接し方が幾分柔らかくなってきた気がするヨ』

百田『え?マジで?全く変わったようには見えねぇぞ……?』

王馬『さっき人を見る目は確かだって言ったのはどの口だよ百田ちゃーん』

最原『……アレで、柔らかくなってるのか?僕を投げ飛ばす時は全く遠慮してないけど……』

真宮寺『ここを卒業する頃になったら、すっかり角も取れて……普通の女の子になってる可能性も否めないヨ』

真宮寺『そんな時に、大胆な告白を受けたりでもしたら……案外、あっさりと恋に落ちてしまうかもしれないネ』

王馬『ダメ男にひっかかる茶柱ちゃんかー。意外としっくりくるかもね!』

真宮寺『僕はそんな茶柱さんは見たくないネ』

天海『そりゃあ、誰も見たくないと思うっすよ』

星『……いっそのこと』チラッ

最原『ん?』

星『アイツの性格を、アイツの魅力をちゃんと理解して、そしてアイツ自身からも信頼されてるやつが――』

星『――アイツをものにしちまえばいいんじゃねぇか、と思ってな』

最原『そりゃあ、それが一番だとは思うけど……』

最原『でもそれは、そんな都合のいい人がいたら、の話だよね?』

星『……ああ、そうだな』

赤松「……」

茶柱「……あれ?転子は一体……?」

白銀「大丈夫?一瞬茫然自失な感じになってたけど」

茶柱「……言われてみれば、確かに最原さんに対して無警戒過ぎたかもしれません」

茶柱「最原さん程度の男死であれば、いくらでも投げ飛ばせると……全く歯牙にもかけていませんでした」

茶柱「夢野さんや他の女子に対して、男死が危害を加えないよう常に目を光らせていたつもりでしたが……自分のことは何も考えていなかったかも……」

春川「実際、今まではそれで問題なかったのかもしれないけど、今後はもう少し自分に意識を向けるべきだね」

春川「茶柱よりも強くて、そういう不埒な考えを持ってるやつだっているかもしれないんだからさ」

夢野「強い男子が皆、ゴン太みたいに紳士なわけではないからのう」

茶柱「はっ!?もしかして、最原さんが転子の特訓に付き合ってくれてたのは、そういったいかがわしい理由だったのでしょうか!?」

赤松「そ、それは違うよ!最原君は確かにムッツリスケベかもしれないけど、そんなことのためだけに茶柱さんに付き合ったわけじゃないって!」

茶柱「は、はい!ス、スミマセン……」

赤松「あっ……ううん、こっちこそゴメンね、大声出しちゃって」

赤松「けど、最原君が茶柱さんを信じてくれたみたいに……茶柱さんも、最原君のこと信じてあげて……?」

茶柱「……まぁ、なんだかんだ言っても最原さんには恩がありますし」

茶柱「さっきの話の内容も、不問……というわけにはいきませんが、投げ飛ばし訓練増量ということで勘弁してあげましょう!」

赤松「そ、それも駄目だって!……むしろ、少し最原君と距離を置いたほうがいいんじゃないかな?またエッチな目で見られちゃうかも知れないし」

茶柱「で、ですが……ネオ合気道は定期的に男死を投げ飛ばさないと、技のキレが落ちてしまうので……」

東条「それはまた迷惑な流派ね……」

王馬『さっきの話を聞いてて思ったんだけど……最原ちゃんって、草食系の癖に結構女子皆と仲良いよね?』

最原『え?』

王馬『茶柱ちゃんみたいな、あからさまに男子嫌いオーラ出してるような子とも積極的に関わってるし、なんかキャラと違うなーって』

最原『うーん……言われてみれば、そうかもしれないね』

王馬『もしかして、案外女慣れしてたりする?中学時代はモテモテだったりとか?』


赤松「……!」

入間「な、なんだぁ?今度はダサい原の話題に切り替えるのか?」

白銀「変だね……てっきり女子を1人づつ標的にしていくのかと思ってたのに」

春川(いや、ちゃんと……女子が標的になってるよ)

赤松「……」


最原『ははは……そうだったら良かったんだけどね。実際は、全くそんなこと無かったよ。むしろ引っ込み思案気味だったしね』

天海『じゃあどうして、ここではそんな積極的になったんすかね?』

最原『そうだね、色々理由はあると思うけど……』

最原『一番はやっぱり……赤松さんのおかげかな?』


赤松「!」

以上です

天海『赤松さん?そういえば入学直後は、赤松さんと最原君が一番最初に仲良くなった感じだったっすね』

最原『うん。皆にも話したと思うけど、僕はその頃色々悩んでて、本当は才囚学園に入学するかどうかも迷ってたんだ』

最原『人を傷つけてしまうような才能が、本当に超高校級に相応しいのか、なんて。今思えば些細なことだったのかもしれないけど』

最原『それでも、その時の僕は……人の目が気になって仕方なくなるくらい、思い詰めてたんだ』

真宮寺『そんな時に出会ったのが……赤松さん、って訳だネ』

最原『うん。……彼女は、そんな僕のことを肯定してくれたんだ』

最原『それから、2人で一緒に行動するようになって……皆と仲良くなったのも、それくらいの時期だね』

百田『そういえば、お前たち最初は2人で、クラスの奴ら一人ひとりとコンタクト取ってたよな?』

最原『そうだね。僕がクラスの皆と仲良くなれたのも、赤松さんのおかげだよ』

最原『僕1人だけじゃ、正直そこまで行動に移せたか自信ないな……』

真宮寺『ククク……このクラス、初見じゃ話しかけづらい人が多いからネ』

星『フッ、全くだ』

王馬『それ、自虐かな?自覚あるなら改めようとか思わないの?特に真宮寺ちゃん』

真宮寺『悪いけどそれは拒否させて貰うヨ。この格好は僕のアイデンティティだからネ』

天海『才囚学園が突出した個性の持ち主の集まりだとは聞いてたけど……ここまでとは思ってなかったっすね』

百田『ああ……俺も正直ビビったぜ』

王馬『百田ちゃんのビビリは別の意味でしょ。それでそれで?最原ちゃんは赤松ちゃんと出会ったことで、今までの自分から変わるきっかけを得たわけだ』

最原『うん、そういうことになるのかな。それで、僕もいつまでも赤松さん頼りじゃいけないと思って』

最原『赤松さんがいないときでも、積極的にクラスの皆と交流するようになったんだ』

百田『終一が俺の助手になったのは、そんくらいの時だな!』

最原『うん。話を聞いたり、相談に乗ったりしているうちに、皆ともだんだん打ち解けてきて……』

星『そうして、便利屋最原が誕生してしまったわけだな』

最原『ははは……まぁ、僕としては悪い気はしてないけどね』

王馬『なるほどなるほど!よーくわかったよ!つまり……』


王馬『最原ちゃんにとって、赤松ちゃんは……大切な人、ってわけだね?』

以上です

赤松「……」

茶柱「こ、これは……果たして転子達が聞いていい内容なのでしょうか……?」

東条「……私達自身で選んだことよ。彼らがどんな内容を話そうが、私たちは彼らと普段通りに接しなければならないの」

東条「それは当然、赤松さんも理解しているわね?」

赤松「う、うん……」

春川「……相変わらず、話題のチョイスが悪質だね、王馬の奴」

アンジー「アンジーは気になるな。終一が楓のこと、どう思ってるのか」

白銀「でも、男子同士だとしても、全て包み隠さず話すってわけでもないよね?」

夢野「そこら辺は、王馬が上手く聞き出すのではないか?」

入間「あのムッツリスケベでドMの最原が素直に話すと思うのか?」

赤松「今ドMは関係ないよね?」

白銀(あ、否定はしてあげないんだ)

最原『た、大切な人、って……た、確かに大切な友人であることは否定はしないけど』

真宮寺『……でも、王馬君が聞いているのは、そういうことじゃないよネ?』

王馬『へへっ。流石に最原ちゃんでも、俺が言いたいことはわかるよね?』

最原『……それは……』

百田『ん?どういうことだ?』

天海『まぁ、正直口出すのも野暮かと思って今までは突っ込まなかったっすけど……この際だから聞いていいっすかね?』

天海『最原君は……赤松さんのことどう思ってるんすか?』

最原『……』

星『やれやれ……つついちまうのか、それを』

真宮寺『でも、まァ……皆気になっていることではあるよネ』

百田『え!?そうなのか、終一?』

最原『……赤松さんとは、別に……そういう関係じゃないよ』


赤松「……」

王馬『もう、分かってないな~最原ちゃんは。天海ちゃんは関係がどうのこうのじゃなくって、どう思ってるか、って聞いてるんだよ!』

最原『どう、って聞かれても……。赤松さんはその……大切な……友達、だから……』

天海『……』


天海『……じゃあ、俺が赤松さんを狙ってもいいんすかね?』


最原『へ?』


赤松「!?」


星『お、おい天海、そいつは――』

王馬『しっ!静かに、星ちゃん』

真宮寺『……』

天海『赤松さんは、間違いなく魅力的な女の子っすよ。しかも、今現在が完成形じゃなく、磨けば更に輝くダイヤの原石っす』

天海『俺なら、彼女の持つ魅力を更に引き出せる自信はありますよ』


春川「これは……」

入間「や、ヤリチンチャラ男がついに本性を表しやがったな!お、俺様達皆食われちまうんだ……!」

茶柱「そ、そんな訳ありません!ですが万が一と言うこともありますし、ここはやはり先制攻撃で天海さんを仕留めるのが……」ブツブツ

東条(……さて、最原君。あなたはどうするのかしら?)

最原『な、な……!?』

天海『星君も言ってましたけど、化粧一つとっても女性の印象って変わるもんっすよ。自分は妹がいたんでそういうことに理解はあるつもりっす』

天海『それに、俺はネイルアートにはちょっと自信があるんすよ。前赤松さんにしてあげた時は喜んでくれたっすよ』

天海『だからいっそ、彼女を俺のモノに――』


最原『そ、それは駄目だよ!!』


王馬『……』

真宮寺『……』

百田『……』

星『……』

天海『……ふっ』

最原『あっ』

以上です

百田『終一!お前も言うようになったじゃねぇか!』

星『……ここまで必死な最原は初めて見たかも知れねぇな』

真宮寺『ククク……良いものを見せてもらったヨ』

天海『いやぁ……俺も当て馬になった甲斐があったってもんっすよ』

王馬『みんなーー!聞いてたーー!?最原ちゃんが、駄目だってーーー!!』

最原『ちょ、ちょっと王馬君、やめてよ!?他の皆にも聞こえちゃうって!』

星『心配すんな。ここは地下なんだ。階段から聞き耳でも立ててねー限り上の連中には聞こえやしねぇよ』

百田『AVルームには誰も居ないことは確認してるしな。多少大声出しても問題なしだ!』

最原『だ、だからって……』

王馬『大丈夫だって!ここで話した内容は、絶対に誰にも言わないからさ!』

最原『うう……』

真宮寺『僕としては、赤松さんの魅力については大いに語り明かしたいところではあったんだけど……』

真宮寺『今回は、やめておくヨ。最原君に嫌われたくはないからネ。ククク……』

王馬『そうだね!最原ちゃんの必死さに免じて、赤松ちゃんの話はここまでにしておこっか!』

天海『あ、念のため言っておくっすけど、さっきのは本気じゃないっすからね?赤松さんが魅力的なのは本音ですけど……』

天海『俺も、人に偉そうに語れるほど……女性経験はないんで……』

星『おいおい、それこそ本気じゃないんだろ?ありゃあ、既に何人か女を泣かせてる男の風格だったぜ』

天海『ははは……勘弁してくださいよ』

天海『……ただ、今はそうでも……今後はどうなるかわかんないっすからね?最原君も、なるべく早く覚悟決めたほうが良いんじゃないっすかね』

最原『……』

赤松「……うぅ……」カアア

入間「……ケッ」

白銀「ふ、ふふふふ……見せつけてくれやがって……リア充共めっ……!」

アンジー「ふーん……」

春川「赤松、顔真っ赤だよ。……最原も同じくらい赤くなってるけど」

東条「良かったわね、赤松さん。最原君も、貴女のことを憎からず思っているみたいよ」

赤松「へ!?そ、そそ、そうかな……?って、『も』って何!?」

夢野「流石に、ウチでもわかるぞ、赤松よ……」

茶柱「こ、このままでは赤松さんが性欲の権化である最原さんの毒牙に……!」

茶柱「し、しかし……人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られてなんとやらと言いますし……うぅ、転子はどうすればいいのでしょう……!?」

赤松「こ、恋路!?ちょ、ちょっと茶柱さん!最原君が言いたいのは、そういうことじゃないから!……多分」

東条「では、貴女はどうなのかしら?」

赤松「そ、それは……」

東条「……早く決断をした方が良いのは、貴女も同じことよ、赤松さん」

赤松「へ?」

東条「彼に好意を抱いているのは……貴女だけではないかもしれないわよ」

赤松「……」

夢野「しかし、意外に冷静じゃのう、アンジー。てっきりお主は最原を……」

アンジー「んー?終一はアンジーのお婿さんになるんだよ?」

夢野「んあ!?」

アンジー「終一も楓も、まだあの感じだと、今すぐどうこうしようってワケじゃ無さそうだし」

アンジー「それに、アンジーは終一と『約束』してるからね。焦る必要なんてないんだよー」

夢野「約束……?」


白銀「ねぇ、入間さん?入間さんはいいの?最原君、赤松さんに気があるみたいだけど」

入間「お、俺様は別に……あんな童貞丸出しのフニャチン最原なんかに興味はねーし……」

入間「それに、最悪俺様は愛人……いや、肉便器でも全然問題ねーからな!むしろ望むところってやつだ!」

白銀「うーん……入間さんはもっと自分を大切にしてあげたほうが良いと思うなぁ」


百田『しかし、終一もいつの間にかちゃんと青春してたんだな……ボスであるこの俺を差し置いて』

百田『喜ばしいことではあるが……寂しくもあるな』

最原『そ、そんな大げさな……』

王馬『なーに言ってんの百田ちゃん!そういう百田ちゃんの方こそ――』


王馬『春川ちゃんとの仲は……どうなってるのさ?』

以上です

春川「……チッ。いずれ来るだろうとは思ってたけどね」

茶柱「は、春川さん……」

春川「……そんな不安そうな顔しないで。大丈夫、自分の撒いた種だから……何言われようがちゃんと受け止めるよ」


百田『ん?ハルマキか?なんでそこでハルマキが出てくるんだよ?』

王馬『え?だって、百田ちゃんと春川ちゃん、よく一緒にいるでしょ?』

百田『おう!ハルマキも終一と同じく、俺の助手だからな!ボスと行動を共にするのは当然だろ?』

王馬『うーん、百田ちゃんに期待した俺がバカだったかなー』

百田『何だよその言い草!?』


春川「……」

入間「数秒で死にそうな顔になってるじゃねーか……」

白銀「百田君に甘酸っぱい話を期待しちゃ駄目ってことだね……」

天海『そういえば2人は、どういうきっかけで仲良くなったんすか?見た目だけで言ったら割りと納得できる組み合わせだとは思うんすけど……』

真宮寺『昔の春川さんは、積極的に他人と交流するような人じゃなかったからネ』

星『まぁおそらく……百田の方からちょっかいかけたんだろ?』

最原『ちょっかいって……もう少し言い方ってものが』

百田『まぁ、そう間違ってもいないけどな。アイツが中々クラスに溶け込めてないみたいだったから……俺がトレーニングに誘ったんだ』

天海『トレーニングってあの……最原君も一緒にやってるアレっすよね?半ば強引に付き合わされたっていう』

最原『……まぁ、そうだね』

百田『最初はものすげぇ目で睨まれたり、暴言言われたりもしたが……俺が諦めず何度も誘っているうちに、渋々参加してくれるようになって』

百田『今じゃ、俺がサボろうとすると無理やり引っ張り出そうとするくらいになったからな!』

王馬『自分から誘っておいてサボるのはどうかと思うけどね』

真宮寺『でも、確かに百田君と一緒にいるようになってから……徐々に彼女もクラスに馴染んでいったよネ』

星『若干強引なところもあるが、今じゃ女子たちのまとめ役もやったり、頼もしい奴になったな』

最原『うん、誰が相手でも物怖じせずに発言してくれるし……僕も、助けられることが多いよ』

天海『そういう意味じゃ、百田君のおかげって部分もあるっすよね』

百田『いいや、それはアイツ自身の力だ。俺はそのアシストをしたにすぎねーよ』

百田『なんたって……俺はアイツのボスだからな!』

春川「……百田の奴……」

赤松(春川さん、嬉しそう)

東条(笑顔が隠しきれてないわね)

白銀「ここまでなら良い話なんだけどね」

夢野「王馬がいるからの……ここからどうなることか」

茶柱「転子の時と同じ展開な気がしますね。春川さん!お気をつけて!」

春川「……」


王馬『じゃあ、一番春川ちゃんの事を理解してそうな百田ちゃんに聞きたいんだけど……』

王馬『春川ちゃんって、どんな男子がタイプだと思う?』

百田『ん?なんだお前ハルマキのこと狙ってんのか?』

王馬『いや、そういうわけじゃないけどさ。でも、今日はそういう話しようって言ったでしょ?』

百田『まぁ、そうだな。ハルマキの好きなタイプか……うーん……』

百田『……参ったな。正直全然見当もつかねぇ』

最原『……うわぁ』

天海『……』

真宮寺『……』

星『……やれやれだ』

王馬『マジかよ』

百田『な、なんだよお前らその反応は!?俺にだってわからないことくらいあるっつーの!』

真宮寺『そういうことじゃないんだけどネ』

天海『ま、まぁ……彼女も茶柱さんみたいに、恋愛に関しては無頓着な面もありそうっすからね』

星『アピールの方法がわからなくても仕方ねぇ、ってわけか。相手がお子ちゃまならなおさらだな』

百田『何言ってるんだ、お前ら?確かにハルマキはまだまだ子供っぽい部分はあるが』

最原『いや、それは春川さんのことじゃ……』

百田『アイツは、割とそういうのに興味あると思うぞ?』

王馬『え?どういうこと?』


百田『アイツ、最近は薄く化粧するようになったからな』


春川「!?」

以上です

最原『え!?化粧って……春川さんが!?』

百田『いや、女子高生なら、普通に化粧くらいするだろ』

天海『それはそうっすけど……』

真宮寺『……あの春川さんが、ネェ……』

星『……俺も、すっかり化粧っ気のない女だと思いこんでたが……やれやれ、全く気付けなかったぜ』

百田『まぁ、本当につい最近だからな、アイツが化粧始めたのは。それに本当にうすーくだし』

百田『常に助手の事を見守っている、この俺じゃなきゃまず気づかなかっただろうさ!』

王馬『へぇ……思ったよりやるじゃん、百田ちゃん』

王馬『ちなみに、春川ちゃんにはなんか感想は伝えてあげた?』

百田『いいや、そういう野暮なことはしてねぇよ。知ってるか?思春期に入った時にオシャレに目覚めるかどうかは、周囲の理解によって決まるんだ』

百田『例えば、化粧したり髪をいじったり……そういう行動を親や友達からからかわれたり笑われたりすると、それがトラウマになって、そういう事するのに抵抗が生まれちまうんだとさ』

百田『せっかくアイツがそういう事に興味を持つようになったんだ。なら静かに見守ってやることがボスとしての俺の役割だと思ってな』

王馬『うーんこの男は』

春川「あ、あっ……あ、あのバカ……!」カアア

茶柱「だ、大丈夫ですか春川さん……?」

赤松(気づかなかった……)

白銀「まぁでも、百田くんの言うとおり、私達くらいの年齢になったらお化粧なんて普通にするし、恥ずかしがるようなことでもないよね」

夢野「ウチだってステージに上るときくらいはしておるからのう」

春川「き、気づいてたんなら、何か……何かないワケ……!?」

赤松「ここで暴露されたのは恥ずかしいけど、気付いてくれたのは嬉しい、って感じかな……?」

アンジー「複雑な乙女心だねー」

春川「そこうるさい!」

入間「ひぃ!」


天海『けど確かに……春川さんってピアスも着けてるし、オシャレには普通に興味持ってそうっすもんね』

最原『……普通順序が逆のような気もするけど……まぁ、超高校級の生徒たちに、一般常識を当てはめてもしょうがないか』

真宮寺『僕達のクラスには……ただの1人も『普通』なんて言葉が当てはまる人はいないからネ』

星『フン、違いねぇな』

王馬『服装も結構攻めてるよね!スカート丈、女子の中で一番短いんじゃない?』

最原『いや、それはどうだろう?赤松さんも茶柱さんも、同じくらい短いと思うけど』

王馬『お、さすが最原ちゃん!常日頃から女子のスカートをチェックしてるだけあるね!』

最原『そ、そんなことないって!』

茶柱「……やっぱり、最原さんはどうしようもないですね」

赤松「お、王馬君に誘導されてるだけだから……多分」

夢野「ウチのスカートもかなり短めだと思うんじゃが……何故最原はそこには触れんのじゃろうな?」

茶柱「……」

赤松「……」

夢野「んあ?」

アンジー「アンジーもそうだよー。不思議だね?」

白銀「いや、アンジーさんそもそも水着だし……」


王馬『最原ちゃん、春川ちゃんのスカートの中もしっかりチェックしてるんでしょ?春川ちゃんがどんなパンツ穿いてるか、教えてよ!』

最原『……』

百田『お、おい王馬……』

王馬『いいじゃんか、ここには男子しかいないんだし。それに今更良い子ぶったってもう手遅れだって!だから、素直に――』

最原『いや、そういうことじゃないんだ』

王馬『え?』

最原『実は、僕……春川さんのパンツは見たことないんだよ』

以上です

見返したら›>100の赤松のあとの白銀の台詞必要ないですね
無視して下さい

王馬『……またまた~とぼけちゃって。……いい加減、その嘘つまらないよ?』

最原『いや、嘘じゃないんだって!確かに、僕は赤松さんや茶柱さんのパンツは見ちゃったことはあるけど……』

最原『春川さんに関しては、ただの一度も見る機会はなかったんだよ』

最原『というか、皆だってそうじゃないの?』

天海『……確かに、春川さんがパンチラとかしたら、かなり印象に残りそうっすもんね』

天海『パッと思い浮かばないってことは……一度もそういうことがなかったから、ってことっすかね』

百田『……ん?』

王馬『……ふーん。どうやら、それは嘘じゃ無さそうだね』

真宮寺『比較的彼女と過ごす時間が多い最原君でも、スカートの中を見たことはない……と』

真宮寺『最原君が決定的な好機を見逃し続けてる、ってのはちょっと考えにくいし、彼女自身が見せないように意識している、と考えるべきだネ』

最原『確かに、春川さんの身のこなしって全く隙がない気がするよ。スカートを手で抑えなくても、変にめくれたりしないし』

星『なんかスポーツでもやってるのかもな。……いや、それなら茶柱だってそうじゃねぇとおかしいか。単純に本人の意識の問題だな』

王馬『ふーん……あんなにスカート短いのに、残念だね、最原ちゃん』

最原『……』

春川「……フン、いい気にならないでよ、王馬」

赤松「す、凄いね春川さん……」

茶柱「や、やはり、常日頃からそういうことを意識しているのですか……?」

春川「……当たり前じゃん。アンタ達は油断しすぎ。それだけ短いスカート穿いてるんだから、ちょっと動いただけでも中見えちゃうかも、って気にするのが当然でしょ」

茶柱「うぐっ!?」

赤松「返す言葉もございません……」

春川「パンツ見せるためにミニスカート穿いてるんだとか思われたくないでしょ?そんなの、ただの痴女だよ」

茶柱「う、うう……」

赤松「で、でも女子としてはやっぱり、ミニスカートって外せないし……」

東条「……」

春川「だったら、なおのこと周りの目を気にするべきだね。アンタ、隙が多いし。それとも、最原になら見られてもいいとか思ってるわけ?」

赤松「へぇ!?そ、そんなことないよっ!?」

春川「ふふっ、どうだかね。とにかく、誤解されたくないんだったら、動きには気をつけて――」


百田『……なぁ、いいか?』

王馬『どうしたの?百田ちゃん』

百田『さっきの、誰もハルマキのパンツ見たことないって話だけどよ』

星『それがどうかしたか?別に最原は間違ったことは言っちゃいねぇと思うが』


春川「……?百田のやつ、何を――」


百田『いや……俺、普通にアイツのパンツ見たことあるんだけど』


春川「!?」

短いですが以上です

最原『え、ええ!?ほ、本当に?百田君』

百田『あ、ああ。だからてっきり、終一も見たことあるもんだと思ってたんだが……』

王馬『一応確認しておくけど……百田ちゃんが直接スカートめくったわけじゃないよね?』

百田『んなわけあるかぁ!?そんなことしたらぶん殴られるっつーの!』

星『それはマズイって認識はあるみてーだな』

天海『殴られるとかそういう部分が問題なわけでもない気はしますけどね』

真宮寺『ふーん……ちなみに、百田君はどういうタイミングで春川さんのパンツを見たのかナ?』

百田『えっと……トレーニング中だな。たまに腹筋とかするんだけどよ、俺が腹筋してる時はハルマキが足抑えて、ハルマキが腹筋する時には交代するわけだ』

王馬『ああ、腹筋してる最中に、チラチラ見えちゃったってこと?』

百田『お、おう。教えてやったほうが良いとは思ってるんだが、指摘したらしたで殴られそうだからな……』

真宮寺『成程……つまり、その時、その場に最原君はいなかったわけだネ?』

百田『ん?ああ、そういやそうだな。俺とハルマキ2人だけのトレーニング中の話だ』

最原『……通りで、僕に覚えがないわけだ』

ヒュンッ

ガシッ

春川「……離してよ、東条」ググッ

東条「春川さん、貴女今モニターを破壊しようとしたわね?流石にそれは看過出来ないわ」グググッ

赤松「い、今……一体何が……」

茶柱(恐ろしく素早い攻防……!転子でなければ見逃してましたね)

白銀「それにしても……今の会話内容って……」

赤松「……」

茶柱「……」

夢野「……」

アンジー「……」

入間「……痴女」ボソッ

春川「!?ち、違う!私は痴女じゃない!」

入間「で、でも……さっき自分で……」

春川「違う……!違うんだって……!信じてよ……!」

茶柱「そ、そうですよね!春川さんが自分から百田さんにパンツを見せたなんて、そんなことはありえません!」

アンジー「他の男子相手には絶対に見せてないのに?」

茶柱「そ、それは……どうなんでしょう……?」

春川「あ、アンタまでそんな弱気にならないでよ!」

茶柱「で、ですが……普段の春川さんは、男死相手に隙を見せるような人ではないのも事実ですし……」

春川「そんなこと言われたって……!」

東条「その様子だと、貴女自身、百田君に下着を見られていたことに気付いていなかったのかしら?」

春川「……寝耳に水だよ。まさか、アイツに見られてたなんて……」

白銀「男子の心情的にも、伝えにくいかもね。軽蔑されるかも、って考えちゃうだろうし」

夢野「百田の場合は単純に殴られることに怯えておったようじゃがのう……」

春川「……」

真宮寺『どうやら……春川さんは随分と百田くん相手には気を許しているようだネ』

最原『え?』

真宮寺『気が緩んでいる、と言い換えても良いかナ?要は、百田君の前だと緊張が取れて、リラックスしているってことサ』

真宮寺『彼女は普段、他の男子達にスカートを覗かれないよう、気を張り詰めている訳だヨ』

真宮寺『だけど、本当に信頼できる人と一緒にいるときは、そういう意識が薄れてるわけだネ』

真宮寺『犬が飼い主の前でお腹を見せるのと一緒だヨ。動物にとって最大の弱点を、無防備にさらけ出せるほどの安心と信頼があるってことサ』

王馬『あー何となく分かるよ。春川ちゃん、どことなく忠犬っぽいところあるもんね!』

百田『え?マジで?アイツはどっちかって言うと猫っぽくねーか?』

最原『春川さんって律儀だし、どっちかっていうと犬っぽい気がするけど……猫要素はどこに?』

百田『目つきが鋭いところだな!』

最原『……』

天海『つまり、それだけ百田君は信頼されてるってことっすね』

星『良かったじゃねーか百田。お前の活動は身を結んでるみたいだぜ』

百田『……うーん。でもなぁ……』

星『何か不満でもあんのか?』

百田『いや、アイツ自体には不満はねーよ。ボスである俺をそこまで信頼してくれてるのは正直すんげー嬉しい。ただ……』

百田『さっきの犬の例えで言うところの、腹を見せるってのは、要するに『この人なら弱点を見せても襲ってこない』って信頼があるからこそだろ』

百田『つまり、ハルマキの場合は、俺ならパンツなんて見ないって信頼してくれてるってことだ。だから油断したんだな』

百田『それだって言うのに、俺は普通にパンチラ見ちまったわけだ……』

最原『そ、そこまで気に病むことでもないんじゃない?』

百田『いいや、アイツの信頼を裏切るわけにはいかねーよ。次にパンチラを発見したら、正直に教えてやることにするぜ!』

王馬『マジかよこいつ』

以上です

白銀「……だってさ。よかった……のかな?春川さん」

春川「……余計なお節介にも程があるでしょ、あのバカ」

茶柱「どうします?あとで転子がお仕置きしておきましょうか?」

春川「いいよ、自分でやるから。それにしても……真宮寺も最原も、人のことを犬呼ばわりとはいい度胸だね」

白銀(あ、猫はいいんだ)

赤松「なんだか、百田君に振り回された感じだったね。王馬君ですら困惑してたし……」

アンジー「だけど、痴女疑惑は払拭できてよかったねー魔姫」

入間「へっ!どうだかな!俺様はまだ疑ってるぜ!」

春川「……好きにしなよ」

入間「見られるのって、案外興奮するからな!特に最原なんかは気づかれてねーと思って、遠慮なく俺様の胸やらパンツやら見てきやがるしよ」

入間「だから俺様も、体が火照って火照ってしょうがないんだよぉ……んんっ……」

赤松「入間さんその話後で詳しく聞かせてね?」

入間「ひゃんっ!」

春川「ハァ……ま、なんだかんだ言って、いつも通りの百田だったね」

東条「裏表が無いといえば聞こえは良いけれど……春川さんにとっては少し残念なところもあったのではないかしら?」

春川「……別に、関係ないよ」

赤松「もう、春川さんも素直じゃないんだから」

春川「……そうだね。私は、アンタや最原程素直にはなれないよ」

赤松「い、今は最原君は関係ないでしょ!?」

春川「ふふ」

~~~~

王馬(これ以上百田ちゃんに好き勝手喋らせるわけにはいかないよねー。皆、さっきから百田ちゃんのペースに飲まれちゃってるし)

王馬(そろそろ、多少強引にでも話題を変えないとね!)

王馬「ま、百田ちゃんと春川ちゃんが固い絆で結ばれてるのはよくわかったよ」

百田「おう、分かってもらえたみたいで何よりだ」

王馬「ただ、ちょっと思ったんだけど……さっきから俺たち、パンツの話ばっかりしてない?正直食傷気味だよ」

最原「え?い、いや……そういうわけでも無いと思うけど」

天海「まぁ、今まで話題に上がった女子って……東条さん以外皆スカート短いっすもんね。必然的に、そっちに話題が流れてもしょうがない気がするっすよ」

王馬(お、天海ちゃん、ナイスアシスト!)

王馬「じゃあ、今度は趣向を変えてスカート長めの女子の話でもしよっか!そうすれば、パンツの話題から一旦離れられるでしょ」

星「俺は構わねぇが……最原がガッカリするかもしれねぇぞ?」

最原「ぼ、僕だって別に構わないよ!」

真宮寺「……だけど、東条さん以外で、ミニスカートじゃないのって……」

王馬「あーそっか。候補者は1人だけだね」


王馬「だって……白銀ちゃんしかいないもんね!」

以上です

~~~~

白銀「あー……とうとう私の番が来ちゃったかぁ」

赤松「やっぱり、この流れだと全員に話題振られるよね……」

茶柱「くっ……女子達が次々と犠牲になっているというのに、このまま手をこまねいて眺めることしか出来ないというのでしょうか……!」

春川「犠牲って……大げさでしょ。せいぜいあの程度だよ」

東条「貴女がそれを言うのね」

夢野「既に自分の番が終わったやつは気楽じゃのう……」

白銀「まぁでも、自分がどう思われてるかってのは地味に気になるし、ポジティブに考えるとするよ」


星『白銀か……アイツは女子の中じゃまだとっつきやすい方だな』

天海『誰とでも気軽に話してくれるタイプっすからね。入学当初は赤松さんと同じくらい話しやすかったっすよ』

最原『僕も、白銀さんとは比較的早く仲良くなれた感じがするよ』

真宮寺『尖った個性を持っていた他の女子と比べて、比較的落ち着いた感じだったからネ。たまに妄想の世界に旅立っているようだけど』

百田『アイツ自身も、超高校級のコスプレイヤーっつう尖った才能持ってんのにな』

星『……その割には、アイツがコスプレしてるところ見た覚えがねぇ気がするが』

天海『……そういえば、俺も無いっすね。結構話す方だとは思うんすけど』

最原『ああ、それは白銀さんの信念に基づくものだと思うよ。彼女、コスプレはTPOを弁えて楽しむものだって言ってたから』

最原『特別なイベントでもない限りは、この学園内じゃ、白銀さんの研究教室内くらいでしかコスプレしないんじゃないかな?』

真宮寺『へぇ……それは立派な心掛けだネ』

王馬『真宮寺ちゃんなんて、いっつもコスプレしてるようなもんなのにね!』

真宮寺『……まァ、それも否定はできないネ』

真宮寺『確かに入学直後、白銀さんに『それ何のキャラのコスプレ!?』って聞かれた覚えがあるヨ』

百田『マジかよ……白銀のやつ、勇気あるな……』

王馬『その時期、話しかけたくない奴ランキングぶっちぎりでナンバーワンだったもんね真宮寺ちゃん』

星『確かに、白銀のそれは立派な心掛けではあるんだが……』

百田『なんか、イマイチ印象が薄いよな。別に悪いやつでもないし存在感が無いわけでも無いんだが』

王馬『本人がいっつも口にしてる、『地味』ってやつだね!』

最原『う、うーん……確かに、ウチのクラスは男子も女子も個性的だから、相対的に見ればそう、かも……』

星『他が濃すぎるだけで、女としちゃあ間違いなく上玉の部類なんだがな』

天海『背も高いし、スタイルもいいっすからね。それでいて明るく、誰とでも分け隔てなく接してくれる……』

真宮寺『普通の学校だったら……日常に色を添えてくれる、『学園のアイドル』的な存在になっていてもおかしく無いよネ』

最原『当然の権利のように僕より身長高いからね。……さっきも言ったけど、僕高校生男子の平均身長なのにさ』

星『学園のアイドルどころか、ファッションモデルだってやれるぜ。あのレベルならな。ただ……』

星『俺の見たところ、身長は東条のほうが高い気がするな』

天海『胸は入間さんや赤松さん、茶柱さんの方が大きそうっすね』

星『……一流の素質を持っていながら、周りに超一流の素材が集まってるせいで、相対的に地味な印象になっちまってるのは……否めねぇな』

真宮寺『ククク……罪作りな場所だネ、この『才囚学園』は』

百田『でも、あの性格とあの容姿なら、一歩学園を出たらモテまくっててもおかしくねーよな?』

最原『うん、白銀さんは学外のイベントにも積極的に参加してるし、交友関係も広そうだしね』

最原『最近じゃ、企業のスポンサーが付くレベルの人気らしいからね。衣装代を気にする必要がなくなったって喜んでたよ』

王馬『へぇー。結構手堅くやってんだね』

天海『なんというか、学園外に普通に彼氏がいる、って言われても驚かないっすよね』

星『確かに、普通にいそうではあるな。男にも免疫がありそうだ。コスプレイヤーなんてやってりゃ、嫌でも野郎の視線に慣れるだろうしな』

百田『……』

天海『……』

真宮寺『……』

星『……』

最原『……』

王馬『……ねぇ、他に何か無いの?ホラ、白銀ちゃんって地味に貴重なメガネっ娘でもあるし!』

百田『メガネならゴン太もかけてるじゃねーか』

王馬『あ、百田ちゃんはもういいよ』

百田『なんだぁ!?』

王馬『そうだ、最原ちゃんは白銀ちゃんのコスプレ見たことあるんでしょ?感想とか無いの?』

最原『あ、うん……そうだね……確かに白銀さんのコスプレは凄いよ』

最原『……なんせ、骨格レベルで変わるからね、彼女。声も身長も……性別すら超越してそのキャラクターそのものに完璧になりきるんだよ』

星『そ、そいつは確かにとんでもないが……それはコスプレっていうのか?』

最原『……正直、どうだろう。目の前で見てても、全く原理がわからないからね……』

王馬『……じゃあさ、露出の多い、エッチな衣装のコスプレとかは見せてもらったこと無いの?』

最原『うーん……基本的に、白銀さんはそういうのは好まないかな。たまにはそういうのもすることはあるけど』

王馬『お!いいじゃんいいじゃん!じゃあ、最原ちゃんはそれを見て、興奮しちゃったりするの?』

最原『……ただ、さっきも言ったけど、白銀さんはそのキャラに完璧になりきるんだ。つまり、元の白銀さん要素がゼロになるんだよ』

最原『さから、『女友達がエッチなコスプレしてる』のを見てるって言うよりは、『フィクションのキャラクターそのもの』を見てるって感じがして、正直そこまで……』

王馬『……』

最原『……』

王馬『……次、いこっか!』

最原『そうだね』

以上です

白銀「……えぇ!?私の話、アレで終わり!?」

入間「結局、地味以外の評価は無いみてーだな。これで自他共に認める、名誉地味眼鏡ってわけだ!」

茶柱「で、ですが、評判は悪くないみたいでしたし……」

赤松「そ、そうだよ。ホラ、素質は一流とか……」

白銀「漫画とかだと噛ませで終わるやつじゃんそれ!」

夢野「別に、学園外でモテモテならばそれはそれで良いではないか。スポンサーが付くほど人気があるのなら、男なんていくらでもよってくるじゃろ」

白銀「この白銀つむぎが金やちやほやされるためにコスプレをしていると思っていたのかァーーーーッ!!」

入間「ひっ」ビクッ

白銀「あ、ゴメン。一回言ってみたかったんだよね」

東条「まだ、彼氏がいそうとも言われただけマシではないかしら」

白銀「うーん……でもそれも、私が魅力的だから、みたいなポジティブな考えによるものじゃ無さそうだよね……」

白銀「アイツ男慣れしてそうだし、普通に男いるんだろ?みたいな」

東条「……」

アンジー「主は言いました……地味であることは悪ではない、と」

白銀「……うん、私もよくわかったよ。普段自分で地味地味言ってるけど……人に言われると案外ダメージあるんだね」

白銀「やっぱり、私もパンチラの一つでもしないと、ヒロイン候補にはなれないのかなぁ……」

春川「……もうその手の話はいいから」

入間「手っ取り早く、ドスケベな衣装でコスプレでもすりゃいいじゃねーか。童貞どもが目の色変えて視姦してくれるぜ!ヒャーッヒャッヒャッ!」

白銀「むっ……その発言はいただけないよ。コスプレっていうのは、自己顕示欲を満たすものじゃなく、キャラクターへの愛情を示すものなんだから!」

白銀「自分がちやほやされるためだけにキャラクターを利用するのは、私許せないからね!」

入間「けっ、めんどくせーオタクだな。そんなんだからあの最原にさえ微妙とか言われてんだろうが!」

白銀「うぐっ……!」

赤松「最原君を計測器扱いするのはやめてあげない?」

王馬『次の子は、話題に事欠かないと思うよ!なんせある意味、真宮寺ちゃん以上の異端児だからね!』

最原『異端……?』

真宮寺『人のことを異端扱いは止めて欲しいネ。まァ、誰かは何となく察しは付くけど』

王馬『そう!アンジーちゃんだよ!』

天海『満を持して、って感じっすかね』

星『クラスの女子の中で、ある意味一番尖ってる奴だからな』

百田『アンジーか……アイツ捉えどころがなくて何かおっかねぇんだよな……』

王馬『それは百田ちゃんがビビりなだけでしょ』

百田『はぁ!?そ、そんなわけねーだろうが!』


アンジー「ありゃま。今度はアンジーの番になったよー」

白銀「くっ……王馬君もかなり露骨に私の話題から切り替えたね……」

赤松「さっきまでは一応、自然な流れで話を発展させてたのにね……」

春川「それでも王馬の話に普通に乗ってる辺り、アイツら、完全に自分達の目的忘れてるんじゃない?」

東条「これでいいのよ。これだけ男子が集まっているのだから、特定の1人に話題を限定するよりも余程健全よ」

夢野「自分から矛先が逸れて嬉しそうじゃな東条」

東条「そんなことはないわ。これも滅私奉公ですもの」

入間「便利な言葉だなオイ」

アンジー「皆どんな話を聞かせてくれるのかなー?楽しみだねー!」

茶柱(や、やはりアンジーさんは、転子たちとは感性が違いますね……)

>>265
×最原『さから
○最原『だから


以上です

天海『アンジーさんを初めて見た人が思うことって、やっぱり……』

百田『ああ、アレだろ。『アイツ、寒くないのか?』って』

星『まぁ、似たようなもんだな。流石に水着にコート羽織っただけのアレが制服と言われた時は度肝抜かれたぜ』

王馬『真宮寺ちゃん以上に攻めてるよねー。他にもツッコミどころ満載の服装いっぱいあるけど、アンジーちゃんの前では霞んじゃうもんね』

最原『冷静に考えれば、メイド服が制服っていうのも普通じゃないんだけど……』

天海『アンジーさんのアレ見た後だと、特に違和感ないっすもんね』

王馬『寒さはともかく、羞恥心はどうなんだろうね。見た感じ平然としてるけどさ』

最原『多分、本人は全く気にしてないと思うよ』

王馬『だよねー!けど、本人は気にして無くても、こっちとしては困っちゃうよね、最原ちゃん?』

最原『……まぁね。正直、未だにアンジーさんの姿見るたびドキッとするよ』

星『ま、ちょっとばかし思春期の男子には刺激が強いかもな』

最原『……と、というか、さっきから僕ばっかり槍玉にあげられてるけどさ……皆はどうなの?』

百田『どうなの、ってどういうことだ?』

最原『だって、同級生の女の子があんな露出の多い格好してたり、ふとした拍子にパンツが見えちゃったりするんだよ?』

最原『しかもホラ、ウチのクラスの女子って皆か、可愛いし……ドキドキしないほうがおかしいと思うんだけど』

天海『まぁ俺は年の近い妹がいたんで……多少は女性に免疫付いてるっすよ』

真宮寺『僕も姉さんがいるからネ。クラスの女子も皆容姿端麗だけど……姉さんには及ばないヨ』

星『……俺にそれを聞くのか?』

百田『俺は、えーっと……特に無いけど、まぁボスだしな!』

最原『……』

王馬『聞いた相手が悪かったね最原ちゃ~ん』

百田『そういえば、アンジーって肌褐色だけどよ、アイツってどこ生まれなんだ?』

星『アンジーって名前からして、ハーフだとは思うんだが……それ以上のことは何にもわかんねぇな。多分、南国出身ってくらいか?』

百田『島だとか神様だとかイケニエだとか……不穏なことばっかり言ってるけど、肝心なことはさっぱりわかんねぇんだよな』

王馬『百田ちゃん、オカルト系の話苦手だもんねー』

百田『だ、だから違うって言ってんだろうが!』

天海『少なくとも、日本生まれ日本育ち、ってことは無いっすよね。言葉のイントネーションも独特ですし』

真宮寺『最原君なら、夜長さんの出身地なり、育った環境なり……何かしら聞いてるんじゃない?』

最原『いや、僕もアンジーさんの出身地は知らないよ。聞いてもはぐらかされちゃうんだ』

最原『だからむしろ、真宮寺君なら何か知ってるんじゃないかって思ってたくらいだよ』

真宮寺『そうかい、残念だヨ。そして、僕もその期待には答えられそうにないネ』

真宮寺『僕も一応、『超高校級の民俗学者』として、日本だけじゃなく、世界中色んな国の風習、儀式を学んできたつもりだけど……』

真宮寺『残念ながら、夜長さんの出身地に関しては全く検討がつかないんだ』

真宮寺『さっき百田君も言及した『神への信仰』、そして『イケニエ』……これだけなら該当する地域や民族はいくらでも存在するんだけど』

真宮寺『……お祈りした者の望む姿に形を変える神様なんて、聞いたこともないヨ』

最原『そっか……真宮寺君でさえ心当たりが無いとなると、もうお手上げだね』

真宮寺『個人的に、何度か夜長さんに島の文化やしきたり……そして、信仰の対象である『神様』について聞いてみたりもしたんだけど、のらりくらりと躱されてしまってネ』

星『結局、あいつの生い立ちについては謎のまま、ってわけか』

真宮寺『まァ、それはそれでこちらで考察する楽しみがあるからネ。それに……』

真宮寺『例え彼女が多くの謎を抱えていたとしても……彼女の持つ美しさが色褪せることはないと思うヨ』

以上です

夢野「確かに、アンジーに関してはウチらも知らないことが多いからのう」

白銀「『秘密は女を女にする』ってやつだよね!」

東条「それは少し違うのではないかしら?」

アンジー「別に、アンジーは教えてあげても良いんだけどね。ただし、神様にお祈りしてくれたらねー!」

入間「俺様はカルトに興味はねーんだよ!」

アンジー「うーん、可哀想だけど未兎には罰が当たるねー」

入間「ひぐぅ!?」

赤松(……最原君、本当は女の子なら誰でも良いんじゃ……)

春川(……百田って性欲あるの?アイツも思春期の男子の筈だよね?)

茶柱「あ、あの……お二人とも、大丈夫ですか……?」

王馬『じゃあ、そんな真宮寺ちゃんに質問するけど、ズバリ、アンジーちゃんの魅力って何?』

真宮寺『そうだなァ……彼女の持つ一番の美しさは、その心の強さだと思うヨ』

最原『心の……強さ?』

真宮寺『芯の強さと言い換えても良いかもネ。彼女は困難を目の当たりにしても動揺せず、感情を剥き出しにもせず、常に自分のペースを保っている』

百田『たまにおっかねぇ顔はするけどな……』

真宮寺『おそらく、彼女は……どんな絶望的な状況に追い込まれても、決して自分を見失うことは無いと思うヨ』

真宮寺『それが彼女の信仰心から来るものなのか、それとも生まれ持っての素質なのか……そこのところは定かではないけどネ』

真宮寺『そしてその信仰心の高さも、彼女の一途さ、真摯さの現れと言えるかもしれないネ』

王馬『ふーん……真宮寺ちゃん、随分とアンジーちゃんを買ってるんだね』

真宮寺『まァ、多少は贔屓目も入ってるかもしれないヨ。何せ、彼女は僕と仲良くしてくれる数少ない女子の1人だからネ』

星『何だ?お前、女子に嫌われてるのか?』

真宮寺『こんな格好をしているせいか、一部の女子からひどく警戒されてしまっていてネ。話しかけても、いい顔をされないんだヨ』

真宮寺『僕と普通に接してくれる女子なんて……それこそ、夜長さん、赤松さん、白銀さん、夢野さん……それに東条さんくらいしかいないからネ』

百田『そうか……お前も苦労してるんだな……?……って、普通に多いな!?』

天海『それだけいれば十分じゃないっすかね?』

真宮寺『ククク……友達は多いに越したことはないからネ』

茶柱「ゆ、夢野さん……?いつの間に、真宮寺さんと仲良くなったんですか!?」

夢野「クラスメイトなのだから、普通に会話くらいするじゃろうが……」

赤松「茶柱さんも、偏見を捨てて真宮寺くんと仲良くしてみたらどう?見た目ほど……って言ったら失礼だけど、悪い人じゃないよ」

茶柱「う、うーん……ですが、どうも真宮寺さんは苦手なんですよね……」

茶柱「視線を感じると、妙な気分になるんです。何というか、こう……首筋の辺りがゾワゾワするような、何か別の世界線でひどい目にあったような……」

夢野「何じゃ、それは。被害妄想も大概にせんか」

茶柱「そ、そうじゃないんですよ!夢野さぁん……!」

アンジー「うーん……是清、褒めてくれるのは嬉しいんだけど、もっと可愛いとかそういうこと言って欲しいな」

白銀「心が強い、って言われても女の子は喜ばないよね……」

東条「春川さん、貴女も真宮寺君は苦手なのかしら?」

春川「ん……茶柱ほどではないけど、どうも不気味なものを感じるんだよね。少なくとも、二人きりにはなりたくないかな」

東条「変わったところはあるけど、そこまで言うほど怖い人でも無いと思うわ」

春川「まぁ、私の考え過ぎってこともあるかも知れないね」

入間「ん?俺様アイツに話しかけられた覚えないぞ?」

以上です

真宮寺『加えて言うなら……そういう天真爛漫で、人懐っこいところもまた、夜長さんの魅力かもしれないネ』

天海『確かに、アンジーさんもまた誰とでも分け隔てなく仲良くなれるタイプっすよね。皆のことも名前で読んでますし』

星『名前呼びってのは、他人との距離感を縮めるのに、強引だが一番手っ取り早い方法だからな。アイツが意図してやってんのかはわからねーが』

最原『思い返すと……確かに、アンジーさんはグイグイと積極的に距離を詰めてくるタイプだったね』

最原『最初は戸惑ったりもしたけど、今ではかなり仲良くなれたと思ってるよ。彼女の持ち前の明るさに元気付けられたことも、一度や二度じゃないしね』

百田『まぁ、そうだな。アイツの明るさは俺も認めてる。だがよ……』

百田『たまには怒ったり泣いたりすることだって、人間には必要なんじゃねーかとも思うんだよな。ま、余計なお世話かもしれねぇけどよ』

百田『いつも明るく元気よく、ってのは立派だが……ずっとそれじゃ疲れちまうだろ?たまには弱い所を見せたっていいじゃねぇか』

百田『それを補い合ってこそ、より絆も深まると思うしな!』

王馬『よっ!常に弱い所を見せてる百田ちゃんが言うと説得力があるね!』

百田『お前さっきから喧嘩売ってんのかぁ!?』

最原『ハハハ……あっ、そういえば……』

星『どうかしたか?最原』

最原『アンジーさんについてちょっと思い出したことがあるんだ。もしかしたら、真宮寺君の考察の手助けができるかもしれないよ』

真宮寺『へェ……聞かせてもらってもいいかな?』

最原『うん。これはつい最近アンジーさんに教えてもらったことなんだけど……』

最原『アンジーさんが育った島では、仲良くなったら友好の証として一緒に『柔軟体操』をするらしいんだ』

天海『……柔軟体操、っすか?』

星『なんだぁ、そりゃあ……?』

最原『僕も、聞いた時は戸惑ったよ。それで、僕も今度アンジーさんと一緒に柔軟体操をすることになったんだ』

百田『うーん……俺達がやってるトレーニングみたいなもんか?』

最原『それもまだ良くわかってないんだよね。だから、もしかして真宮寺君なら、そういう風習がある地域に心当たりがあるんじゃないかと思ってさ』

真宮寺『……参ったネ、全く見当がつかないヨ。それどころかむしろ、更に謎が深まった気がするヨ……』

最原『そっか……かなり珍しい文化だから、この情報ならもしかして、と思ったんだけど……』

真宮寺『もしかしたら、その『柔軟体操』っていうのは……そのままの意味じゃないのかもしれないネ』

最原『え?』

真宮寺『何かの隠語かもしれない、ってことサ。そこら辺は、実際にアンジーさんと柔軟体操をすれば判明すると思うヨ』

最原『確かに、それもそうだね』

真宮寺『良かったら、後でその内容も僕に教えてくれると嬉しいなァ』

最原『わかったよ。アンジーさんも、人に言えないようなことはしないと思うからね』

赤松「……アンジーさん。柔軟体操って、何するの?」

アンジー「柔軟体操は柔軟体操だよー」

赤松「アンジーさん、柔軟体操って何?」

アンジー「柔軟体操は柔軟体操だよー」

赤松「柔軟体操って何!?」

アンジー「柔軟体操は柔軟体操だよー」

茶柱「さ、流石に……人には言えないようなことをするつもりではない……ですよ、ね……?」

アンジー「……」

茶柱「な、なんで無言になるんですかぁ!?」

春川「あの馬鹿は、相変わらずだね。誰にでもお節介焼こうとしてさ」

東条「でも、満更でも無いのでしょう?」

春川「……別に、そうわけじゃ」

夢野「流石にもう取り繕うのは無理があるじゃろ」

白銀「さっきから、百田君のことばっかり気にしてるもんね春川さん」

入間「何ニヤけてんだよ気持ちわりーな」

春川「……」

以上です

天海『そういえば、最原君に聞きたいことがあるんすけど……』

最原『え?僕?』

天海『さっき、春川さんのスカートの話題になった時、『赤松さんや茶柱さんも同じくらい短い』って言ってたじゃないっすか』

最原『……そんなことも言った気がするね』

天海『その時、どうも引っかかったんすよ。だって、他にもスカート短い人はいるっすよね?』

百田『確かに、アンジーだって十分ミニだしな』

最原『いや、だってアンジーさんは水着じゃ……』

天海『アンジーさんだけじゃないっすよ。他にも、ミニスカートの人はいますし』


夢野「お?天海は気付いたようじゃのう。その通りじゃ、言ってやれ言ってやれ」

茶柱「だ、駄目ですよ夢野さん!この流れだと、次は夢野さんが犠牲に……!」

夢野「遅いか早いかの違いじゃろう。こういうことはさっさと終わらせてしまうに限るわ」

茶柱「くっ……複雑ですが、逞しい夢野さんも素敵です!」



天海『だってホラ、入間さんもかなり短いっすよね?』



夢野「……んあ?」

入間「お、俺様か!?」

白銀「あー、そっち行っちゃったかー」

アンジー「ドンマイだね秘密子ー。そしてウェルカム未兎」

春川「……覚悟しておきなよ」

入間「や、やめろよぉ……脅すなよぉ……」

最原『入間さん?……そういえば……』

星『言われてみりゃあ、確かにそうだな。あの場面で、アイツの名前が上がらないのは変だぜ』

最原『う、うん……特に意識してたわけじゃないんだけど……普通に忘れてたみたいだ』

王馬『にっしっしー。そいつはどうかな?最原ちゃん』

最原『え?』

王馬『俺が思うに、それは忘れてたわけじゃなくって……最原ちゃんの認識の問題だと思うよ』

最原『……認識って、どういうこと?』

王馬『つまり、最原ちゃんの中では、入間ちゃんの……ミニスカート以外の別の部分に意識が集中してるから、印象が薄れちゃってるってこと!』

百田『別の部分、って言ったら……』

天海『……胸っすね』

最原『!?』

入間「ひぎっ!?い、いきなり下ネタかよぉ……!」

白銀「え?今ので?」

茶柱「口を開けば胸だの下着だの……男死達は本当にどうしようもないですね!」

夢野「……それを覗き見てるウチらもじゃな」

茶柱「……」

春川「そのほとんどの話題の中心にいるのは最原だけどね」

赤松「……最原君も男の子だし、と思って今までは大目に見てたけど……コレからはもうちょっと厳しく接したほうがいいかな?」

アンジー「これから先の会話内容によっては、終一もイケニエだねー」

東条「……本来、男子高校生ならば彼くらいの感性が普通なのではないかしら?」

王馬『そういうこと!最原ちゃんの中では、入間ちゃん=おっぱいの図式が成立してるから、ミニスカートって言われてもピンとこなかったわけ!』

最原『ちょ、待ってよ!別に、そんな……!』

天海『けど確かに、入間さんの胸って凄いっすもんね』

星『全くだ。あのプロポーション……女優でも中々お目にかかれねぇぞ』

星『高校生離れした……いや、日本人離れした、天性の曲線美だ』

百田『確か、アイツも終一より背高かったよな?……いや、マジでどうなってんだウチのクラスの女子は』

天海『外見だけでも、オーディションでもしたのかと思うくらい高水準っすもんね』

最原『ちょ、ちょっと、勝手に話進めないで!』

王馬『じゃあ、最原ちゃんは入間ちゃんの胸に目が行かないんだ?あのわざとらしく露出させた谷間にも興味なし?』

最原『……いや、そりゃあ……嫌でも、目に入っちゃうけどさ』

王馬『はい、最原ちゃんの目に入っちゃういただきましたー』

以上です

星『いや、そいつはしょうがないと思うぜ。男なら、アレに目が行かないほうがどうかしてる』

天海『巨乳率が高いウチのクラスの中でも……随一の大きさですもんね』

百田『でけぇだけじゃなくて、胸元露出して谷間まで見えてるもんな……ありゃ男子には目に毒だぜ』

最原『……百田君でも、そう思うんだね』

百田『ん?当たり前じゃねぇか。でかい胸ってのはやっぱ……ロマンがあるからな!』

最原『ははは……春川さんには今の言葉、言わないほうがいいよ』

百田『ばっ……当たり前だろうが!アイツにそんなこと言ったらぶっ飛ばされるっつーの!』

王馬『パンツの話題には食いつかなかった百田ちゃんですら、胸の話題になったらこれだもん。やっぱりおっぱいって凄いね!』


春川「……」ドンドンドン

茶柱「は、春川さん……お願いですから……床、凹んじゃいますから……」

春川「……百田も、最原も……覚悟しておきなよ……」

アンジー「終一、余計なこと言っちゃったねー。これはオシオキが必要だよ」

赤松「その時は、私も混ぜてもらおうかな。ちょーっと見境ないと思うんだよね、最原君」

白銀「これが男子高校生のおっぱいトーク……実際に聞けるなんて感激だよ……」

夢野「くっ……自分も大きいからって余裕じゃな白銀……見ておれよ、今にウチだって……!」

東条(……私から慰めの言葉をかけたところで、きっとただの嫌味にしか聞こえないでしょうね)

入間「な、何だよコイツら……人のことやらしい目で見やがってよぉ……!お、俺様、マワされちまうのか……!?」

入間「ああっ!でも、それはそれでっ……ああんっ!」

白銀「入間さん、なんか違う世界に旅立っちゃってるみたいだけど……」

夢野「しばらくしたら戻ってくるじゃろ。放っておけ」

真宮寺『……』

王馬『……対照的に、真宮寺ちゃんは興味薄そうだね。おっぱい嫌いなの?』

真宮寺『別に、そういうわけじゃないヨ。ただ……僕としては、人の美しさというのは外見だけで決まるものでは無いと考えているからネ』

真宮寺『見た目の美しさは必ず、加齢によって徐々に失われてしまうもの……そんなものに、人間の価値の重きを置きたくないんだヨ』

真宮寺『確かに、入間さんは容姿だけなら、女子の中でも上位を争うだろうネ』

真宮寺『だけど……『それ以外』が……ちょっと残念すぎる気がするなァ……』

天海『まぁ……言いにくいっすけど……かなりぶっ飛んだ性格してますからね』

星『……あの恵まれすぎた容姿を……あのイカれた言動で全部台無しにしやがるからな。全く、勿体ねぇやつだ』

百田『アレで性格まで良かったら、全く非の打ち所がなかったかもしれねぇな。アイツの性格を知った今となっちゃあ想像できねーけどよ』

最原『もしそうだったら、今頃学園内外から引く手あまただったろうね』

王馬『実際の入間ちゃんは、性格の酷さのせいで、容姿のアドバンテージを0……いや、マイナスにしちゃってるもんね』

王馬『普通の学校だったら、間違いなく腫れ物扱いだったね!でも……』

星『それに関して言えば……正直他の連中も似たようなもんだからな。俺も含めてな』

最原『ここ、才囚学園は、そんな極端な個性も受け入れてくれるところだからね。確かに、入間さんの言動にはうんざりさせられることもあるけど……』

最原『だけど僕は、それもアリなんじゃないかと思うよ。あんな性格の彼女だからこそ、生み出せた発明品だってあったはずだ』

最原『おとなしくしてれば非の打ち所の無い美少女……なんて称号は、彼女には必要ないんじゃないかな』

真宮寺『既に自分の事を非の打ち所がない完璧な存在……と思いこんでいるようだからネ』

最原『は、はは……棘があるね真宮寺君』

白銀「さっきまで、誰が相手でも基本べた褒めしてた真宮寺君が、ここに来てやけに攻撃的だね」

茶柱「安易に容姿だけで人を評価しない、と言えばまともな人に見えますが……男死というものは、本来女子がくしゃみしただけでも大喜びする存在な筈」

茶柱「それだというのにあの言いよう……やはり真宮寺さんは気味が悪いですね!男死とかそういう枠を超えて、人間としてどこか変です!」

夢野「お主に余計なフィルターがかかってるだけじゃと思うがの」

入間「え、えっと……これは、褒められてると喜ぶべきなのか……?それとも貶されてるって悦ぶべきなのか……?」

春川「余計なこと考えないでおとなしくしておくのがいいと思うよ」

東条「最原君は、そのままの貴女も受け入れると言ってくれたわ。多少は自分の言動を省みる必要はあると思うけれど、変に意識する必要は無いはずよ」

入間「だ、だよな!へっ!やっぱ最原のやつはどうしようもねー童貞だな!俺様の魅力にすっかりまいってるじゃねぇか!」

東条「……省みるべきなのは、そういう部分よ」

赤松「確かに、さり気なく『美少女』とか言ってたもんね、最原君。別に言う必要のない場面で」

入間「ひっ……」

アンジー「主は言いました……ここには美少女しかいないから問題ない、と」

~~~~


真宮寺「そういう最原君こそ、もっと素直になったらどうだい?一番彼女の被害にあっているのは、他ならぬ君のはずだヨ」

真宮寺「愚痴の一つや二つ……あってもおかしく無いんじゃないかな?」

最原「うーん……正直一つや二つじゃ収まらないから、言ってもどうしようもないって気もするんだよね」

星「お前と入間、普段どんな会話してんだ?仲良く日常会話……なんてのがまかり通る相手じゃねぇだろ」

天海「確かに気になるっすね。口を開けば下ネタが飛び出すあの入間さんが、2人だけの時は一体何を話すのか……」

最原「2人だけの時でも、実際のところいつもと変わらないよ……下ネタ言ったり、発明品の実験体にしようとしたり……」

最原「……あ、そうだ。彼女、実は料理できるんだ。だからたまに、手料理を振る舞ってくれるよ」

百田「ま、マジでか!?全然イメージと合わねぇな」

星「ほう……アイツも女らしいところがあるんだな」

王馬「その発言、今だとセクハラだよ星ちゃん!それにしても、意外だね。まさかあの入間ちゃんが……」

天海「けど実際、女の子の手料理って憧れるっすよね。いや、毎日東条さんが料理作ってくれてますけど」

真宮寺「特定の誰かのために作る料理っていうのは……また別物だからネ」

星「で、肝心の腕前は如何程のモンなんだ?」

最原「……」

王馬(最原ちゃん、今『あ、しまった』って顔したね)

百田「あっ……やっぱメシマズなのか?」

最原「……い、いや、実は……僕、その料理を……一回も食べたことが無いんだよね」

王馬「え?」

天海「それ、どういうことっすか?」

最原「え、えーっと……それは……ちょっと、色々事情があってさ。だ、だから結局、まだ一回も料理の感想も言えてないんだ」

星「……随分歯切れの悪い言い方だな」

王馬「なーんか、怪しいよね……ま、言いたくないなら放って置いてあげようか!」

百田「ん?お前にしちゃやけに素直に引き下がるな」

王馬「ひどいなー百田ちゃん。俺にだって分別くらいあるって!」

王馬(どうせあっちで問い詰められるだろうしね)

~~~~


夢野「お主、料理なんて出来たのか」

茶柱「い、意外と女子力高いんですね……正直見くびってました……」

入間「あったりまえだろうが!料理の一つや二つ、この天才美少女入間様に出来ないわけがねぇだろうが!ヒャーッヒャッヒャッ!」

赤松「ぐ、ぐぬぬ……」

白銀「……その割に、最原君が一回も料理を食べたことがないっていうのは、変だよね?」

春川「アンタ……料理に変なもんでも入れたんじゃないの」

入間「ば、ばばばば馬鹿なこと言うなよ!お、俺様は別に髪の毛とかラブジュースとか、そんなものを料理に入れた覚えはないからな!」

春川「……まさか、本当に入れてたの?」

白銀「……うわぁ」

東条「食べ物を粗末にするのは関心しないわね」

赤松「い、入間さん!最原君になんて物食べさせようとしてたの!?」

アンジー「ちょっとこれは未兎にもキツいオシオキが必要かもねー」

入間「ああああああんっ!」

~~~~


最原「そ、そうそう。入間さんとの会話内容だったね。えっと……キーボ君のメンテナンスや新装備のことなんかもよく話してくれるね」

王馬「ああ、なんか装備が追加される度にドヤ顔で俺に解説してくるんだよねーあのポンコツロボット。大した機能でも無いのにさ」

最原「あとは、そうだな……あ、そうだ。王馬君の事も、結構話してくれるよ」

王馬「……え?俺?」

最原「うん。イタズラされたとか、罵倒されたとか……あとは発明品パクられたー、とかね」

王馬(ま、今もパクってるしね)

百田「お前、入間にそんなにちょっかい出してんのか?まさかいじめてるわけじゃねぇだろうな?」

王馬「人をいじめっ子みたいに言わないでよね百田ちゃん。そんなつまんない事するわけないじゃん」

最原「うん、僕も王馬君がいじめてるとは思ってないよ。彼女も、口では色々言ってるけど……王馬君に構ってもらえて嬉しいんじゃないかな」

王馬「……」

最原「入間さんって、あんな性格してるから、最初は中々クラスにも溶け込めなくて……話し相手は赤松さんくらいだったよね」

王馬(うちのクラスそういう人多くない?)

最原「今ではなんだかんだクラスの一員として受け入れられてるけど、それでも敬遠しがちな人もいるみたいだし」

真宮寺「……」

最原「そんな彼女を放っておけなくて、僕もちょくちょく一緒に過ごす機会をつくってるんだけど……もしかしたら、王馬君も同じような事考えてるんじゃないのかな?」

最原「イタズラっていう手段を使って、彼女が孤独を感じないようにしてるんじゃないの?」

王馬「……ちょーっと妄想が過ぎるんじゃない?最原ちゃん。つまんないよ、そういうの」

星「ふっ……お前も素直じゃねぇな、王馬」

百田「なんだかんだ、お前もクラスの一員として行動してるんだな!見直したぜ!」

王馬「あー暑苦しい暑苦しい」

王馬(ちょっとばかし思わしくない流れだねこれは。向こうであの淫乱ピンクも調子乗ってそうだしなー)

王馬「というか、今はそういう話がしたいわけじゃないでしょ。入間ちゃんが女の子として魅力的かどうか、大事なのはそっちだよ!」

天海「女性としての魅力っすか……まぁさっきも話しましたけど、容姿だけならほぼパーフェクトだと思うっすよ」

天海「ただ、やっぱり言動にはもう少し気を使って欲しいっすね。いくら容姿端麗で才能に恵まれていると言っても、それで全てを許容できるわけじゃないっすからね」

真宮寺「同感だヨ。彼女は、観察対象としては中々に興味深い素材ではあるんだけど……女性としての魅力には欠けている、と断言するヨ。僕にとっては、ネ」

星「相変わらず歯に衣着せぬ物言いだな、お前は」


「――あれ?皆さん、こんなところで何をしているんですか?」

以上です

王馬「あれ?キー坊じゃん。そっちこそこんなところで何してんの?ここには雑草生えてないよ?」

キーボ「人を草刈りロボット扱いするのはやめて下さい!それにしても、見たところ男子の殆どが集まっているようですが……」

百田「今度はキーボか、ここも随分と人が増えたな」

最原「キーボ君は、人って言っていいのかな……?」

天海「あ、キーボ君もコーラ……は、飲まないっすよね」

キーボ「……相変わらず、この学園にはロボット差別が横行していますね。今の一連の発言、然るべき機関に報告させて貰いますからね!」

星「お前の所属も相変わらず謎だな……」

真宮寺「そういう君は、どうして図書室を訪れたのかな?読書をしに来たようには見えないけど」

キーボ「僕は入間さんを探していたのですが……入間さんどころか誰一人クラスメイトの姿が見当たらなかったので、学園中をあちこち探し回ってたんです」

百田「誰一人って……女子も誰もいなかったってのか?」

キーボ「ええ。途中で王馬クンには遭遇しましたが、それ以外は誰にも会いませんでしたね」

最原(皆、茶柱さんの研究教室にいるだろうからね)

王馬「その様子だと、まだ入間ちゃんは見つかってないみたいだね」

王馬(ま、見つかる筈無いけどね!)

キーボ「ええ、その通りです。しかし、困りましたね……人の話し声が聞こえたので、もしかしたら、と期待していたのですが」

星「しかし、妙なこともあるもんだな。女子連中はどこに消えたんだ?」

真宮寺「案外、僕達と同じように……女子達は女子達で、密談に勤しんでいるのかもしれないネ。クックック……」

~~~~


夢野「今度はキーボまで来おったか……」

茶柱「更に人が増えるんですか……失礼、キーボさんはロボットでしたね」

白銀「ど、どうしよう!?今ので、バレたりしないよね!?真宮寺君の意見も地味にニアピンだし!」

春川「アイツのはただの冗談でしょ。気にすること無いよ」

東条「私達がここにいることは、最原君と王馬君も知っているのだから、有耶無耶にして誤魔化すでしょうね」

入間「なんだあのナメクジ野郎!この完璧な肉体美を誇る入間未兎様のどこが女としての魅力に欠けるってんだ!チ○コ溶けてんじゃねぇか!?」

アンジー「多分、そういうところだと思うなー」

赤松「まぁ、キーボ君なら……あんまり過激なことは言わないんじゃないかな」

春川「……王馬が何かやらかすかもしれないけどね」

赤松「うっ……」

~~~~


天海「だけど、入間さんを探してるっていうのは……タイミングいいっすね」

キーボ「え?皆さん、入間さんの居場所を知っているんですか?」

百田「いや、知らねぇぞ。ただ、今俺達はちょうど、入間について話してたところなんだ」

キーボ「……?この人数で、ですか?」

真宮寺「彼女だけではないけどネ。この才囚学園の女子たちの……女性としての魅力や美しさ。それを語り合っていたんだヨ」

キーボ「はぁ……いまいちピンときませんね」

王馬「ま、ロボットに人間と同じ感性を期待するだけ無駄ってもんだよね」

キーボ「し、失礼な!僕だって、君たちと同じくらいの美的センスと分析力は備わっていますよ!」

王馬「じゃあ、試しに入間ちゃんについて語ってみてよ。ロボットの脳みそ……はないから、CPUをフル活用してさ!」

キーボ「そのわざとらしい言い間違えは気になりますが……まぁいいでしょう」

キーボ「入間さんの外見について客観的に評価するならば……身長や胸囲と言ったいわゆる『スタイル』という部分では、女性の平均値を大きく上回っています」

キーボ「顔立ちに関してもかなり整っている部類ですね。これらのデータを統合し結果を導き出すならば――」

キーボ「彼女は非常に優れた、いわゆる『美しい』女性と言えるでしょうね」

王馬「わーお。実にロボットらしい回答だね」

真宮寺「……僕たちはそういうことを言っているんじゃないんだヨ」

キーボ「え!?ま、まさか……僕の機能に何か不備が!?」

天海「いや、そういうわけじゃなくって……俺達も、入間さんの見た目の良さは認めてるっすよ」

星「だが、アイツの性格にちょっと……いや、多いに問題があるって話にもなっててな」

真宮寺「見た目だけではなく、内面も加味した美しさ……それが僕達の議題なんだヨ」

キーボ「内面、ですか。確かに入間さんの発言はやや過激な気はしますね」

キーボ「ですが、彼女の持つ才能は間違いなく一流です。僕も何度も彼女の世話になっていますし、内面を考慮しても美しいといえるのでは?」

百田「うーん……まぁ、アイツの才能がすげぇのは認めるけどよ」

最原「うん、僕達のクラスの中で、社会に与える一番影響が大きいのは、まず間違いなく入間さんだろうね」

星「だが…それは内面って言えるか?」

天海「ちょっと違う気もするっすね」

真宮寺「……才能と人となりは、必ずしも一致しないものだヨ。如何に優れた才能を有していたとしても、それだけでは人間性を評価することは難しいものサ」

王馬(『ロボットの君にはわからないかもしれないけど』の言葉を飲み込んだね真宮寺ちゃん)

真宮寺「彼女に関して言えるのは、優れているのはその外見と才能だけであって、それでは美しいとはとても――」


キーボ「えっと……それの何が問題なのでしょうか?」

真宮寺「!」

キーボ「確かに入間さんの言動は僕にも理解できないことばかりで、戸惑うことは多いですが……それでも彼女が優れた才能を持っているのは事実です」

キーボ「そして才能だって、立派な個性ではないでしょうか?十分にその人を評価する材料になり得ます」

キーボ「彼女は問題児かもしれませんが、だからといって彼女が生み出した優れた発明品の数々が消えるわけではありません」

真宮寺「……」

キーボ「思うに、世間の人々は、人に多くを求めすぎている気がします。例え優れた功績を残した人でも、一つでも欠点があればそこを徹底的に批判されてしまいます」

キーボ「挙句、その人が成し遂げた偉業そのものさえ否定されてしまう。僕には正直理解できません」

キーボ「どこを取っても完璧な聖人君子など存在しない。そんなことは、ロボットの僕よりも人間であるあなた達のほうが理解している筈では?」

王馬「……」

キーボ「おっと話が逸れましたね。魅力についてですが……その人に心酔し、その人の事を求めるというのであれば、どんな内容であれそれは『魅力』と言えるでしょう」

キーボ「そういう意味では、僕は入間さんに魅力を感じています」

最原「……」

キーボ「入間さんは、十分に魅力的な女性です。それは僕が保証しますよ!」

天海「……」

百田「……」

星「……」

キーボ「あ、あの……皆さん、どうかしましたか?急に静まり返って……僕はそんなにおかしなことを言ったでしょうか?」

真宮寺「……君が君なりによく考えていることは十分に伝わったヨ」

真宮寺「だったらこれ以上……僕がとやかく言うのは野暮ってものだネ。おとなしく引き下がるとするヨ」

天海「一人でも理解者がいるなら……それは十分に幸せなことなのかもしれないっすね」

百田「まぁ、そうだな。何を魅力と考えるかは、そいつ次第……ってことだな」

星「ロボットの癖に、随分と熱く語るじゃねぇか、キーボ」

キーボ「ほ、星クンまでロボット差別ですか!?もう、この学園に安息の地はありませんね……」

王馬「……」

最原(……?変だな、いつもの王馬君なら、『ロボットに保証されてもねー。工業製品じゃないんだから』くらいは言いそうなのに)

王馬「ま、キー坊の忠犬……いや、忠ロボットっぷりに免じて、入間ちゃんの話はここまでにしてあげよっか」

以上です

~~~~


白銀「えっと……これで入間さんのターンは終わり、ってことでいいのかな?」

茶柱「中々怒涛の展開でしたね……」

白銀「私の時の3倍くらい話が盛り上がってたよね……。どこの円卓の騎士だよ!って感じ」

夢野「良くも悪くも、話題には事欠かん奴じゃからな」

入間「……」

アンジー「どうしたの?未兎。ぼーっとしちゃって」

東条「今しがたのキーボ君の発言が原因ではないかしら」

赤松「キーボ君、結構ストレートに主張してたもんね。私、あんなこと言われたら顔真っ赤になっちゃうよ」

東条「先程のように?」

赤松「も、もう!」

東条「ふふ、冗談よ」

春川「それとも、さっき真宮寺に言われたことを気にしてるとか?別に、あんなの気にする必要なんて――」

入間「あ?なんで俺様があんなクソ雑魚ナメクジの発言を真に受けると思ってんだ?」

春川「……」

赤松「え?じゃあ、一体――」

入間「いや、これもしかして……俺様、逆ハーレム行けるんじゃねぇか?」

春川「……は?」

入間「だってよ、今までの会話からしてキーボと最原は俺様にゾッコンみてーだし、あの糞チビも俺様に気があるみてーじゃねぇか」

入間「つまり、このまま行けば、童貞共はみんな俺様の虜になるって寸法だ!」

赤松「……」

入間「全くしょうがねー奴らだぜ。俺様は1人しかいねぇってのによ。わかったわかった、一人ずつ相手にしてやるからかかってこいよ!」

入間「え?ちょ、ちょっと待って、2人一遍は無理だって!だ、ダメェ……そっちは違う穴だよぉ……」

東条「……」

白銀「……うわぁ」

アンジー「うーん、神様もこれは救えないって言ってるよー」

春川「……本当に、どうしようもないねコイツは」

赤松「ま、まぁ……無理に変わろうとしなくても、入間さんはこのままでいいんじゃないかな?」

赤松(これで性格まで良かったら、本当に強敵になっちゃうもんね)

夢野「ここまで話題に上がったのは、東条・転子・赤松・春川・白銀・アンジー・入間……か」

夢野「つまりとうとう……次はウチの番、というわけじゃな」

茶柱「ゆ、夢野さん……」

夢野「……そう不安そうな顔をするでない、転子。確かにウチも不安がないと言えば嘘になるが……」

夢野「それでも、既に皆が通ってきた道じゃ。ウチだけ逃げるというわけにもいかんじゃろ」

茶柱「夢野さん……!」

夢野「それに、ウチはもう昔のような無気力なウチではないわ。例えどんなことを言われようとも……受け入れてやろうではないか」

茶柱「か、格好いいです!夢野さん!」

夢野「さぁ、王馬よ。ウチは……ウチは、お主の思い通りにはならんぞ。いつでもかかってくるがよい!」


王馬『……』

王馬『じゃあ、東条ちゃんに話戻すけどさー』


夢野「んあ!?」

以上です

キーボ『え?何故そこで東条さんの名前が?』

百田『あー。そういやキーボにはこの集まりの本来の目的を言ってなかったな』

最原『そういえば、話題がかなり逸れちゃってたね』

王馬『全くだよ!皆して好き勝手他の女子の話しちゃってさ!』

真宮寺『……僕の記憶が正しければ、話題を二転三転させていたのは主に君だった気がするけどネ』


夢野「な、何故ウチを飛ばして東条の話題に戻るんじゃ!?そして最原達も……何故誰も疑問に思わんのじゃ!?」

茶柱「ゆ、夢野さん……」オロオロ

夢野「あ、アレか!?好きな女の子に意地悪したくなるという……思春期男子特有のアレなのか!?」

入間「んなわけあるか!あいつら全員俺様のカキタレだからな」

白銀「入間さんのそれも妄想だけどね?」

茶柱「ゆ、夢野さん……」ポロポロ

夢野「ええい!泣くでない、転子!それではウチが……ウチが、より一層惨めになるではないか……!」

茶柱(スミマセン夢野さん……でも、どこかホッとしてしまっている転子がいます……)

茶柱(男死にも最低限の良識と良心があったのだ、と……)ポロポロ

赤松「流石に王馬君も、夢野さんをそういう話題に巻き込むのは気が引けたのかな……」

東条「夢野さんのため、と言うよりは男子のためではないかしら。そういう特殊な性的嗜好を持っていると私たちに勘違いされぬよう、配慮したのかもしれないわ」

春川「流石の王馬も、他の男子がロリコン扱いされるのは可哀想だと思ったのかもね」

夢野「お、お主らも何を言っておるんじゃ!ウチもお主らと同じく、花の女子高生じゃぞ!まだまだ青い果実じゃが、それでも幼女扱いされる謂れはないわ!」

アンジー「大丈夫だよー秘密子。主は言いました……それはそれで需要がある、と」

夢野「んあああああああああああああああ!」

春川「……それにしても、今更東条の話題に戻してどうするつもり?本来の目的……東条のファンクラブ活動に軌道修正したってこと?」

赤松「うーん……あの王馬君が、素直にそんなことするかな?」

東条「……正直なところ、不安しか感じないわね」

星『まぁ、本来の目的考えれば東条の話に戻るのは当然っちゃ当然だが……今日の所の話題は大方出尽くしたんじゃねぇか?』

天海『そうっすね。参加者が多かった分、濃い話ができたと思うっすよ』

王馬『えー!?俺はまだ全然話し足りないよ!』

真宮寺『それじゃあ、一体君はこれ以上東条さんの何を語り合いたいと言うのかな?』

王馬『そうだね、まだまだいっぱいあるけどとりあえず――』


王馬『東条ちゃんって、ぶっちゃけ、SとMどっちだと思う?』


東条「」

以上です
もうすぐ終わります

百田『うん?奉仕が生き甲斐ってんだから、どっちかって言うとM寄りなんじゃねぇの?』

星『仕えた相手を自分の思うようにコントロールしたい、って考えならSかもしれねぇぞ』

真宮寺『泣いて縋る東条さんと、嗜虐的で妖艶な笑みを浮かべる東条さん……容易に想像できるのは前者の方かなァ』

天海『でも、たまに東条さんがお説教する時に見せるキリッとした表情もいいっすよね』

最原『うーん……どっちでも有り得そうだね』

キーボ『え、えっと……皆さん急に何の話を……?』


茶柱「な、なななな……!?」

白銀「ど、どうしちゃったの皆!?何で急にディープな話になったの!?」

赤松「へ、変だね……普通に話が進んでるし。どうして誰もおかしいと思わないんだろう……」

東条「……二週目、ということね」ボソッ

赤松「え?」

春川「……そっか。王馬がやりたいことがようやくわかったよ」

東条「……最初は、彼らの中でも気恥ずかしさがあったのでしょう。いくら男子だけの集いと言えど、異性についての話をするのだから」

東条「でも、それは最初だけの話。女子一人ひとりの話で盛り上がり、皆の緊張が抜けたところで……今度はより深く切り込んだ話題を提供する」

東条「先程までの話題……つまり一周目は、今後の会話への抵抗を無くすための布石……とでも言えばいいのかしら」

夢野「……ウチはまだ一回も番が回ってきておらんがのう」ボソッ

入間「それってつまり……こっから先は更にエグい下ネタのオンパレードってことか?」

春川「多分、そういうことだと思う。でも、もうこれ以上あいつの悪巧みに付き合ってやる義理はないね。今回は、これで解散ってことにしようか」

赤松「うん……私もそれがいいと思う。このままだと誰も幸せにならない結果になりそうだし」

東条「……そうね。流石に、私もこれ以上は堪えるわ」

白銀「うーん。ま、仕方ないよね」

夢野「ま、待てい!ウチは……ウチはまだ、自分の評価を聞いておらんぞ!このままむざむざ引き下がれんわ!」

アンジー「アンジーも、もっと神った会話内容聞いてみたいなー」

入間「貴重なドローンの稼働実験中なんだ。俺様はもうちょっと観察していくぞ」

春川「見たい奴は好きにしていいよ。私たちはこれで――」

茶柱「……申し訳ありません、春川さん」

春川「……何?そこに立たれると邪魔なんだけど……」

茶柱「……夢野さんにだけ、更なる罪を背負わせるわけには行きません。アナタ達にも、ここで続きを一緒に鑑賞して貰います!」

春川「!?」

赤松「え……ええ!?」

東条「な、何を言っているの茶柱さん!?これ以上は、もう……」

白銀「いや、気になることは気になるけど……そこまでする?」

茶柱「私たちは一蓮托生だと、最初に言ったのは春川さんの筈です!転子は……転子は、地獄まで夢野さんにお供します!そして当然、皆さんにも付き合ってもらいますからね!」

夢野「……転子」

アンジー「にゃははー!神ってるよ、転子ー!」

赤松「そ、そんな……」

東条(この気迫……!私と春川さんの二人がかりでも突破できるかどうか……)

春川(くっ……これも、王馬の狙い通りって事?このために、わざと夢野の話を飛ばしたの……?)


王馬『最原ちゃん、なんか東条ちゃんの好物とか弱点とか知らないの?そっから、東条ちゃんがSかMかを推理できるかもしれないよ!』

最原『東条さんの……?好きなことが滅私奉公なのは言うまでもなく、って感じだけど……あとは……』

最原『……あ、そうだ。東条さんって……実はこんにゃくが切れないんだよ』


東条「……!」

百田『へ?そうなのか?意外だな……』

天海『そういえば、こんにゃく使った料理を作ってもらった覚えないっすね』

真宮寺『万能メイド東条さんの意外な弱点、というわけだネ』

王馬『けどそれだけじゃ、東条ちゃんの性癖はわからないよねー』

星『こんにゃくが切れないからM、とかこじつけてみるか?』

天海『はははっ、それは暴論っすよ』

王馬『とある名家に仕える東条ちゃん。会食会の際、和食を作るよう主人に命じられるが……』

王馬『こんにゃくが切れないために、煮物を満足に提供することができず、大切な客人を怒らせてしまう』

王馬『激昂した主人が、東条ちゃんに用意したとっておきのオシオキとは……!?』

星『クッ……なんで急にストーリー仕立てなんだよ』プルプル

最原『じゃあ――こんにゃく責め、とか?』

百田『ぶっ……おいなんだよ終一、その面白ワードは』

最原『いや、こう……こんにゃくでほっぺをペチペチ叩いて……『お前には調教が必要のようだな』――って』

最原『それに対して東条さんは、涙目で……『申し訳ありません、ご主人様……!斬美はこんにゃくも満足に切れない、駄目なメイドです!』――みたいな』

星『っ……お、おいおい、コントじゃねぇんだぞ……何で一人称名前……っ』プルプル

百田『くっ……はっはっは!性癖歪みすぎだろ終一!』

最原『ははっ、無いよね、流石に』

真宮寺『クッ……クックック……最原君の妄想トークとは、貴重な物を聞けたネ』

天海『発想が斜め上だったっすね。いやぁ、楽しませて貰ったっすよ』

キーボ『最原クン、君は一体何を言っているのですか……?』

王馬『くっ……くくくっ……面白すぎるって最原ちゃん』プルプル



東条「……」ワナワナ

以上です

白銀「うわぁ……皆、テンションおかしいよ……」

夢野「……しょうもない下ネタも平気で言えるくらい、会話のハードルが下がってるみたいじゃの」

アンジー「男子同士の馬鹿話なんて、案外皆こんなノリなのかもねー」

赤松「……」

入間「こ、こんにゃくはレベルが高すぎるよぉ……」

春川「……茶柱、アンタ本当にこのまま続ける気?今度は夢野が犠牲になるかもしれないよ」

茶柱「……確かに、男死のケダモノっぷりを侮っていました。正直今の会話内容はドン引きです」

茶柱「ですが、転子は覚悟を決めました。ここで聞いたことは、墓場まで持っていきます。例え転子や夢野さんが被害を受けたとしても――」

茶柱「それが夢野さんの望みであるのならば、転子はもう迷いません!辱めを受けることになろうとも、愚かなことをした自分への罰だと受け入れましょう」グッ

春川「……」

赤松「……そうだね、確かに私達は男子を責めることはできない」

赤松「だ、だけど……これ以上は男子が可哀想だよ!皆、誰にも聞かれてないと思ってちょっとはしゃいじゃってるだけなんだから!」

赤松「これ以上見続けたいって言うなら、私、モニターを壊してでも止めるからね!」

入間「ばっ……!?や、止めろ!俺様の研究室の備品だぞ!」

アンジー「主は言いました……毒を喰らわば皿まで、と」

「「……」」

白銀「やっぱり、【盗撮なんて良くない】からやめようよ!」

入間「だから、今更何言ってんだよ!最初っから、【全員の同意があった】じゃねぇか!」


春川「その同意も、今となっては無効のはずだよ。【王馬が介入してきた】からね」

アンジー「でもでもー、その後、【誰も止めなかった】よー?」


赤松「でも……流石に、【超えちゃいけない一線】はあるよ!」

茶柱「そんな一線、最初にここに集まった時点で【とっくに超えてしまっている】んですよ!」


東条「……ええ。それに関しては私達が愚かだったわ。尊厳を傷つけられているのは、私達ではなく彼らの方だと言うのに。だからこそ、【過ちはここで終わらせるべき】なのよ!」

夢野「ええい!そんな正論など知らんわ!ウチは、ただ【自分の評価が知りたいだけ】なんじゃ!」


「「……」」シーン

春川(……あっちも、引く気は無い、か。議論は拮抗してる。一つおかしい意見もあった気がするけど……)

春川(硬直が続くってことは、実質こっちの負けみたいなもの。自分で巻いた種とは言え、偉いことになっちゃったね……)

春川(この状況、一体どうしたら――)


『――あ!皆、こんなところにいたんだ!探しちゃったよ!』

赤松「え?今の声って……」

夢野「……ゴン太か?」

白銀「この状況で、更に人が増えちゃうのかー……」

春川「また、面倒なことに……!」


百田『お!ゴン太、お前も来たのか!』

星『そういや、今日は姿を見なかったな。学園の外に出てたのか?』

ゴン太『うん!今日は朝から、ちょっと離れた山まで新種の虫さんを探しに行ってたんだ!』

真宮寺『通りで、朝食の時見かけなかった筈だヨ』

王馬『ゴン太がいたらすぐわかるもんねー。でっかいし』

最原『じゃあ、今帰ってきたばかりなの?』

ゴン太『うん、そうだよ!それより、皆は図書館で何をしてたの?あ!虫さんの図鑑を見てたとか?それなら、ゴン太も混ぜてほしいな!』

天海『いや、残念だけどそれは違うっすよ。でも、ゴン太くんも混ざるっていうのは大歓迎っす』

キーボ『聞いてくださいよゴン太クン。ここの皆、さっきから変な会話を』

王馬『俺達は、東条ちゃんについて話してたんだよ。キーボはロボットだから内容を理解できてなかったみたいだけどねー』

キーボ『な!?馬鹿にしないで下さい!情報処理能力は人と同じレベルでちゃんと備わってます!』

星『……ロボットなのに人間レベルでいいのか?』

ゴン太『え?そうなの?ちょうど良かった!実はゴン太も、東条さんを探してたんだよ!』

王馬『え?』

赤松「え?ゴン太君が、東条さんを……?」

入間「何だお前ら、乳繰り合う約束でもしてたのか?」

赤松「次喋ったらモニター壊しちゃうからね?」

入間「……」

東条「……ああ、アレのことかしら」

春川「アレ?」

東条「ええ、今朝、獄原君に――」


ゴン太『実は、ゴン太、今日朝3時に起きて、学園から出発しようとしたんだけど――』

百田『……3時って、朝なのか?』

ゴン太『それだと朝食が食べられないからって、東条さんがお弁当をつくってくれたんだよ!』

最原『え!?東条さんもその時間に起きてるの!?』

ゴン太『ううん、ゴン太の予定を覚えててくれたみたいで、それに合わせて早起きしてくれたんだって』

星『……マジかよ』

真宮寺『……十分に彼女のことを評価してたつもりだったけど、まさかあっさりこちらの想像を上回ってくるとはネ』

ゴン太『しかも、お弁当の中身は、大好きな虫さんを再現してくれたんだよ!とってもリアルで綺麗だったから、食べるのもったいなくなっちゃった!あ!後で写真も見せてあげるね!』

天海『……いわゆる、キャラ弁……ってことっすかね?……虫がモチーフだと色彩に欠けてそうっすね』ボソッ

王馬『……ママ』


ゴン太『だから、ゴン太……東条さんに改めてお礼が言いたいんだ』

ゴン太『美味しいお弁当作ってくれて、ありがとう!って』

ゴン太『それと……いつも美味しい料理を作ってくれて、ありがとう!って!』

以上です。
多分次で終わります

『『……』』

ゴン太『あれ?皆、どうしちゃったの?急に静かになって……ゴン太、変な事言っちゃった?』

百田『……いいや、お前は何も間違った事を言っちゃいねぇよ』

星『……間違ってたのは、俺達の方さ。ようやく我に返ったぜ』

天海『なんで、あんなにヒートアップしちゃったんすかね……』

最原『冷静になると、僕、とんでもないこと言っちゃってたな……かなり恥ずかしいよ……』

真宮寺『まァ……今日ここに集まった皆は、多かれ少なかれそう思っているだろうネ』

キーボ『さっきから、皆さんの言っていることの意味がさっぱりわからないのですが……』


「「……」」

春川「……良かった。ゴン太のお陰で、皆が冷静さを取り戻してくれたみたい」

アンジー「ちぇー。つまんないのー」

白銀「流石はゴン太君、紳士だね」

入間「これが、賢者モードってやつか……」

赤松「……我に返るって意味では、私達もそうだよね……」

茶柱「……転子は一体、何をやっていたのでしょう……」

夢野「……」

~~~~

百田「ゴン太、東条にお礼を言いに行くって言ってたよな?俺も一緒に行っていいか?」

ゴン太「え?百田君も?勿論、いいよ!」

星「俺もついていくぜ。……最原の言うとおりだったな。直接気持ちを伝えた方が、いいに決まってる」

天海「俺も、ついていきますよ。……っと、その前に、ここの片付けをしないといけないっすね」

真宮寺「じゃあ、僕も天海君を手伝うヨ。その後に改めて、東条さんに会いに行こうかな」

最原「……僕も、真宮寺君達に混ぜて貰おうかな。あんまり一度に訪ねても迷惑になりそうだし……」

最原(それと……隠しカメラ壊したことも、入間さんに弁明しないとな……)

王馬「ま、しょうがないね。じゃあ、今日はこれで解散ってことにしよっか!」

百田「おう、それでいいぜ。悪いな、片付け任せちまってよ」

天海「気にしないでいいっすよ。元々、菓子持ち込んだの俺ですし」

最原「あ、百田君じゃなかったんだ」

星「コイツは名ばかりリーダーだからな。ワリィな、天海、真宮寺、最原。俺達は一足お先に失礼するぜ」

真宮寺「構わないヨ。変わりと言っては何だけど、後で僕達も行くってことを伝えてくれると助かるなァ」

真宮寺「あと、今日の集会……途中、色々と脱線したりもしたけど……僕は、有意義な時間だったと思うヨ」

星「ああ、そうだな……たまにはこういう話も悪くねぇ」

百田「おう!またいつかやろうぜ!その時は男子全員参加でな!」

キーボ「最後までよくわかりませんでしたが……とりあえず、僕は入間さんを探しに行きます。それでは」

ゴン太「うん!皆、またね!」


王馬(あーあ。ゴン太にしてやられちゃったね。ま、つまらなくない時間だったし、十分かな)

王馬(……あ、夢野ちゃんの事忘れてた。……皆も気にしてないみたいだし、別にいっか)

~~~~

白銀「……男子、解散しちゃったね」

東条「……こうしてはいられないわね。彼ら、私を訪ねに来るようだし……」

春川「私達も、解散ってことでいいんじゃない?」

赤松「そうだね、流石に女子が誰もいなかったら、また不審がられちゃうし」

入間「俺様もドローンを回収……の前に、キーボの体を弄ってやらねぇとな」

茶柱「では転子も自分の研究教室に……って、ここでしたね」

夢野「……やはり、納得できんわ。確かにウチは小柄かもしれんが……ウチくらいの身長の女子は珍しくはないじゃろ。何故ロリ扱いされねばならんのじゃ」

赤松「うーん……さっき男子も言ってたけど、ウチのクラス、背が高い女子が多いから……相対的に夢野さんが凄く小さく見えちゃってるんじゃないかな?」

夢野「んあ……」

アンジー「次の時も、また皆で集まろうよー!」

白銀「いや、もう懲り懲りだよ……」

春川「じゃあ……皆、お疲れ様」

~~~~

最原(――あの集まり……『キルミーファンクラブ』の活動から、数日経った)

最原(あの後、男子で東条さんのところに日頃の感謝を伝えに言った。会の目的を知った後だったからか、東条さんは冷静に受け止めてくれた)

最原(ただ、僕の方をちょっと怖い顔でじーっと見てた気がしたんだけど……気のせいだよな……?)

最原(あと、入間さんにカメラを壊した事を謝罪しに行った。意外なことに、全然怒られなかった)

最原(カメラを壊した理由についても、女子から聞かれる事はなかった。正直ほっとしたよ)

最原(……ただ、どうも最近、一部の女子の行動に違和感があるんだよな)


最原(まず、赤松さん。僕と一緒にいる時……何故か、絶対に僕の前を歩こうとはしなくなった)

最原(どうも不自然だったから、直接彼女に聞いてみたんだけど……)


赤松『ほ、ホラ!女子たるもの、3歩後を歩けって言うし!』

最原『それは、随分前時代的な考え方だと思うけど……』

赤松『いいから!最原君は前向いて歩いて!』

最原『う、うん……でも、そういうのも、大和撫子っぽくていいかもね』

赤松『え?そ、そうかな……えへへ』


最原(確かに不自然ではあったけど……あの時のはにかんだ笑顔は可愛かったな……)

最原(――他には、茶柱さん)

最原(彼女は、何故かロングスカートを穿くようになった)

最原(それだけならまだしも……それじゃ動きにくいからってエグいスリットを入れて。じゃあ何でロングスカートにしたんだ……?)


茶柱『やはり、女子たるものあまり足を露出しすぎるのもどうかと思いますからね!』

茶柱『これならば、最原さんも余計なことを考えずに済むでしょう。さぁ、特訓の続きをしますよ!』


最原(……正直、前のミニスカートのときよりもドキドキしちゃうから、勘弁して欲しい)


最原(――そうそう、前にアンジーさんと交わした『約束』……実はまだ実行できていないんだ)

最原(アンジーさんに会う機会が無かったわけじゃないんだけど……約束を果たそうとするたび、何故か赤松さんが偶然傍を通りかかるんだ)


アンジー『終一はこれからアンジーと柔軟体操するんだよー』

赤松『じゃあ、私も混ぜてもらっていい?実は私も最近体硬くってさ』

アンジー『残念だねー。これは先着2名までなんだよー』

赤松『じゃあ、傍で見てるだけでもいいからさ。どんなことやるのか知りたいし』

アンジー『……』

赤松『……』


最原(……あの時の赤松さん、ちょっと怖かったような……気のせいかな?)


最原(……そういえば、夢野さんは風邪を引いたらしい。実は、ここ最近薄着をしてたんだとか。それには気づかなかったな……)

最原(後でお見舞いに行ってあげようかな?女子の部屋までお見舞いってあんまり良くないかもしれないけど、夢野さん相手なら皆から変に思われることもないだろう)

最原(他にも……そう言えば、百田君が変なことを言ってたな。最近春川さんが怖いって)


百田『アイツと2人だけでトレーニングしてる時……ここ最近、なんか、ずっと見られてるんだよ』

百田『あの鋭い目で、じーっとこっちを睨んでてよ……なんか、監視されてるみたいで落ち着かねぇ……』

百田『……え?パンツ?いや、アイツ、俺が目線を動かそうとするだけで臨戦態勢に入るからな』

百田『蛇に睨まれたカエルって、ああいうのを言うんだろうな……あの視線を感じるだけで、こっちはもう身動き取れなくなるぜ』

百田『だから、最近はアイツの目をじっと見返すことにしてんだ。そうすると、何故かアイツの方から視線を外してくれるからな』


最原(春川さんも、パンツ見られてることに気付いたのかな?)

最原(……そう言えばこの前、逃げる王馬君をすごい形相で追いかける春川さんを見かけたけど、アレと何か関係があるのかも?)

最原(そんなこんなで、多少不思議なことはあったけど――)

最原(それをさほど疑問に思うことは無く、僕はいつもどおりの学園生活を送っていた)

最原(そして、今日は――)


東条「ごめんなさいね、最原君。わざわざ貴方の手を煩わせてしまって」コツコツ

最原「ううん、気にしないで。僕の方がいつも東条さんの世話になってるし……それに、東条さんからのお願いなんて、珍しいからね」コツコツ


最原(今日は、東条さんのお手伝いとして、厨房に立っている)

最原(僕もそこまで料理ができるわけじゃないけど……簡単な食材のカットと、皿洗いくらいだったらなんとか役に立てそうだ)

最原「けど、やっぱり東条さんは凄いね。人数分の食事を用意するってのが、どれだけ大変なことか。料理ってマルチタスクの典型例みたいなものだし」

最原「その大変さを、おくびにも出さずに毎日こなしてるんだから。本当に、頭が下がるよ」

東条「ふふ、ありがとう。でも、私だって、何も思っていないというわけでもないのよ?たまには、溜まった鬱憤を晴らしたいと思うときだってあるわ」

最原「へぇ、意外だね。東条さんでもやっぱり、辛いと思うことはあるんだ?」

東条「いえ、普段の奉仕活動ではそんなことは無いのだけど……それでも、ストレスを感じてしまうことはあるわね」

最原「そういう時には、遠慮なく僕達クラスメイトを頼ってほしいな。皆だってきっと、東条さんために何かしてあげたいと思ってるはずだから」

東条「……ありがとう。では、早速お願いしようかしら」

最原「え?」

東条「今日、最原君を呼んだ理由……貴方に頼みたいことと言うのは、これよ」

ペチッ

最原「……こんにゃく?あ、そっか……東条さん、こんにゃく切れないんだっけ」

東条「ええ、その通りよ。今日は煮物を作ろうと思ったのだけど、私はこの有様だから。……引き受けて、くれるかしら?」

最原「勿論だよ。こんなことで東条さんの役に立てるなら、喜んで」

東条「ありがとう、助かるわ。……本当、情けない自分が嫌になるわね」

最原「そんな、大げさだよ。こんにゃくが切れないだけなんだから」コツ

東条「いえ、これは大変なことよ。もし将来、メイドとして仕事に就いた時……」

東条「こんにゃくを切れないことで、ご主人様を怒らせてしまうようなことがあるかもしれないもの」

最原「……?(何処かで聞いたような話だな……)」コツコツ

東条「全く、こんなどうしようもない私を――」

東条「教育……いえ、『調教』してくれるご主人様が、何処かにいないかしら」

最原「……」ピタッ

東条「どうしたの?最原君。包丁が止まっているわよ」

最原「は、はは……ごめんね」コツコツ

最原(……聞き間違い、だよな?今、東条さんが……『調教』って言った気がするけど……まさかそんな)

東条「でも、困ったわね……こんにゃくを使う料理を作る度に、最原君を呼ぶわけにも行かないし」

東条「煮物が作れなくて、ご主人様の大切な御客人を怒らせてしまうようなことがあったら……メイド失格だわ」

最原「……」ピタッ

東条「もしかしたら、ご主人様からオシオキされてしまうかもしれないわね」

最原「と、東条さん……もしかして……」

東条「さっきから、どうしたのかしら、最原君?手が止まっているわ」

最原「……」


東条「あ、でも……こんにゃくで頬を叩くのはできればやめて欲しいところね」

東条「だって――食材が勿体無いものね」ニッコリ


最原「……」ダラダラ

最原(あ、明らかに……東条さんは、あの時の僕達の会話内容を知ってる!一体、何故……!?)

最原(……そうか!あの隠しカメラ……本当は壊れてなかったんだ!入間さんが怒らなかったのもそれで納得がいく!)

最原「あ、あの……東条さん……その……ご、ごめんなさい……!」

東条「貴方が何故謝るのか、私にはわからないわ」

東条「だって、謝るべきはこの私。こんにゃくも満足に切れない、駄目なメイドですもの」

最原「……」ガクガクブルブル


東条「私は……いえ、斬美は、この通り不出来で駄目なメイドだから――」


東条「――しっかりと、調教して頂戴ね?……ご・主・人・サ・マ?」ニッコリ



終里

以上となります。
長期間お付き合い頂きありがとうございました。

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