転校生「貴方の体質を教えてください」男「…」 (140)

学校 ウサギ小屋


男「うん」ガチャ

モシャモシャ

男「たんと食べるんだぞ。ヨウ、ウメ、お前たちは僕の希望なんだからな」


「あ! やっぱり中庭にいたんだね、も~~~!」スタスタ


男「委員長おはよう。今日もいい天気だね」キィ パタン

委員長「おはようじゃないよ、もうこんにちわ、だよ!」プンスカ

男「あれ? あぁ、もう昼過ぎなのか」


チュン チュン


男「最近は時間が過ぎるのが早いなあ…」ボー

男「それで? 委員長はお昼ごはん食べてからの登校?」

委員長「いやいや、違う違う。…まあ、そういう子が最近多いけどさ」ハァ

男「みんな自由でいいじゃないか」

委員長「またそーいうこと言う。私達は学生なんだよ?」


委員長「──世間様が未だ大地震で騒がしくっても、この学園の生徒なんだから!」

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男「うん。そうだね」


【──今から一年前のこと、日本で大地震が起こった。】

【街をみっつ陥没させるほどの大規模な災害範囲。】

【周辺地域は壊滅状態。無論、この学園も被害を被った。】


委員長「ぎゃー! また地割れにこんな雑草が生えて! 掃除したのに!」ギニャー

男「どんどん生えてくるよ。餌に困らなくていいけどね」


【多くの人が死んだ。多くの建物が壊れた。多くの未来が潰えた。】

【──かに、思われた。】


委員長「あぁもう…ほとんど…」

委員長「生徒どころか教師だって、余震を怖がって学園から居なくなっちゃうし…」グスン

男「もう一年前の話なのにね。それに震源だった街から、この学園はだいぶ離れてるのに」

委員長「でも、最近もけっこう揺れたよ? 昨日の夜とか……」

男「気づかなかった」

委員長「…多分、震度四弱ぐらいあったと思うケド…」ぐぬぬ

男「知らなかった」

男(実際、そこまで興味がない。人は居なくなったけれど、居なくなっただけだ)


【そう、今も一年前も誰ひとりとして死にはしなかった。】

【世界で最大観測の震度を叩き出した、あの日。】

【災害に巻き込まれた命あるもの全てが死ななかった。】

【──我々は数百年という時を超え、やっと、神という存在を認識したのだろう。】

【これは大げさな表現ではなく、本当に人類はそう悟ったのだ。】

【──人は、次なるステージへと上る時代が訪れたのだと】


男「それで? 委員長はなぜ俺を探してたの?」

委員長「わっ、忘れてたァー! そうだよ、来るんだよ真っ昼間から! しかもこのご時世に!」

男「落ち着いて」セイセイ

委員長「落ち着いていられますかネ! ゴホン、ごめん落ち着くよ、うん」コホン

委員長「──実は、今日は珍しいことにホームルームがあります」

男「それは珍しいことだ」

委員長「全然そう思ってない顔してるね! でも聞いたら驚くぞお、なぜかって言うとォ───」



~教室~


男(…本当に珍しいことだった)


転校生「ハジメマシテ☆ 今日から皆様と半年間ほどだけ仲良くさせてもらおうかと思ってる私の名前は──」


男(転校生、って。ほんとに来たんだ、この先のない学園に)

転校生「ってなカンジでぇ~ぐふふ! 頑張ってゆきますので、よろぴこお願いします!」


パチパチ… パチ…


男(おざなりの拍手。そりゃそうだ、半年後に学園は廃校になるんだから)ぱちぱち

転校生「んふふ~」ニッコニコ

男(気にしてない様子…キャラが濃いな…)

転校生「じゃあじゃあ、私ぃに質問あるかたー? どなたかー? いますー?」シュピッ シュピッ

「それじゃ、はぁい」

転校生「ドウゾ! なんだって聞いちゃって下サイ! なんだって答えちゃいますから!」ニィー!

「転校生さんはぁ、どーしてこの学園に転校したんですかー?」

男(いい質問。というか教室に居る全員が気にしてる、なぜ今更に転校していたのか)チラ

男(もしや地雷を抱えた少女なのかもしれない)

転校生「ワオ! まさかそんな質問がしょっぱなくるとは~っ…」ドキドキ

男(どうやら俺の杞憂だったようだ…)

転校生「ええい迷うな私、頑張って答えなきゃ友達百人できません──ズバリ!」

転校生「この学園に転校してきた理由は、ただひとつです!」シュバッ

グッ バッ! シャキィーン!


転校生「──私が【仮設黄泉学校】定員漏れにて、ここに飛ばされたからですよ!」バァーーン


男「……!」ピク


シィーーン…


「…え…嘘…黄泉学校って…最近、あの震源地に建てられた…」

転校生「ご質問は一人ひとつ! 次の方! 次の方はいらっしゃいませんか!?」

「お、おい、あそこの学校に通えるということは…」

転校生「ハイ! なんでしょう!」


「アンタも……【超能力】……使えるって、コトか?」


転校生「…超能力…」

転校生「ふふっ、ははっ、くくく…」

男(笑ってる…)

転校生「超能力ですって? そんなコト…私、この私…」



転校生「──もちろん使えますよ! 当たり前じゃあないですか! 思いっ切り使えちゃいます!」キラキラキラ

男(この転校生が…)

男(──震源地である三都市、その中で一際に大被害を被った黄泉市の住人──?)

転校生「しかァし! 詳しく言うと、超能力ではありません! 正式名は未だ公表されてませんが、」フフノフ


「なぁ! ちょっと見せてくれよ、能力ってやつを!」

「見てみたい…ニュースでやってたけど、ナマでみたいよね~?」


転校生「えぇっ? 私は構いませんが、でもぉ~…」モジモジ

「いいじゃん別に! 咎めるような教師も大人もいねーよ、ここには!」


転校生「ムムム。それはアリ、実にアリですね、ならばご披露させていただきましょうか!」クル

転校生「──タイプホルダー、系統は個人、登録名は『ギャグ体質』です」パサリ


男(体質……?)

転校生「大人たちは言うのです。貴女はいつか世界の常識を覆す、天使にも悪魔にもなると」

くる…

転校生「では、その一端を皆様にお見せいたしましょう!」ニコ

男(なぜか嫌な、予感が──)バッ

転校生「ひゅうう~~……」スゥウウウウウッッッッ


転校生「──今日からお世話になります私は転校生です宜しくお願いしまあああああああああああああああ!!!!」ビリビリビリ

ビリビリビリ! ビシッ! バキン!

男(なんっ)ビリビリ

ガタガタガタガタガタ!! ガガッ! パァリン! バギッ!


転校生「ああああああああああああああああああああああ!!! …ふぅ…」スッ


ガシャアンッ… パラパラ… キィイイ バタン!


男「─────………………」


…シィーン…


転校生「あは。【この声】如何だったでしょうか? 皆様の鼓膜を破らず、まるで冗談みたいに──」

転校生「教室の窓を割り、机を破壊し、髪の毛を逆立たせ、黒板を傾けさせた」


転校生「そう。いわゆるギャグ描写、漫画の一コマのように」ニッ

転校生「これが私の体質。『ギャグ体質』です! んじゃ、みんなよろしくゥ!」シュピッ☆


男「………」

転校生「どうでした? ねえどうでした?」キョロキョロ

男「………」

転校生「フフフ! どうやら私ってば強烈なインパクトを残せたご様子、ではでは私から質問です!」


転校生「──私とトモダチになりたい方!」バッッ


~放課後・ウサギ小屋~


男(あれで友達ができるワケがない…)ザッザッ

男「…けれど」スッ

委員長「すごかったね転校生の娘! なんていうか、うん、とにかくスゴイ!」パァアア

男「……」

委員長「あれが黄泉市の能力者なのか~……うん? どうしたの?」ニコ

男「なんでここに居るの?」

委員長「今更ッ!? さっきからずぅーっと手伝ってたじゃない! ヒドイ!」ガーン

男「ごめん。全然気にしてなかった」ザッザッ

委員長「き、気にしてなかった…? どゆこと?」キョトン

男「……。委員長、俺は凄いともヤバイとも思わなかったよ、彼女のこと」

委員長「サラッと無視するよね……そう? だって超能力だよ、凄いことじゃない」

男「悪いことは、どんなに凄くても、凄いことじゃないよ」

委員長「……」

男「アレには関わらないほうが良い。興味本位で近づいたら危ない目に合う」

委員長「うん、そうかもね。けど私もこーやって地味にウサギさんの世話してる方が好きだよ?」

男「俺も」ザッザッ

委員長「うん! ……にしても薄情だよね。飼育係の生徒たち」ザッザッ

男「……」ザッザッ

委員長「それに教師も逃げていった生徒たちも。──みんな、段々と自分勝手になってる」

男「誰もが自分のことで必死だよ。自分本意なのは悪いことじゃない」


余震続く土地、何時訪れるか分からない二次被害、…そして、


男「誰だって【訳の分からない病気】に罹りたくないだろうしね」

委員長「病気……うん、確かに」コクコク

男「それに勝手なの俺もだし。…飼育係が居なくなったから、ウサギたちの世話ができる」

委員長「…………」

委員長「男くんって、表情薄い割にけっこう可愛いこと言うよね」

男「もしかして馬鹿にしてる?」

委員長「褒めてる褒めてる」ニヨニヨ

男「………」サッサッ コロコロ

委員長「あっ! こっちにフン転がさないで! 私ここにいるよ!? 存在無視しないで!?」


「──あのー、すみません。質問があるのですが、」

転校生「そのウサギ、あとで食べるんですか?」キラキラキラ


男「──……」

委員長「──あ…」ビクッ


転校生「っ? ??」ブムュウウウ


男「顔を強く金網に押し付けてると、跡が残るよ」

委員長(普通に話しかけた!)ドキー!

転校生「ほほ! 失礼、醜い所をお見せしてしまい…」フキフキ

委員長(ワケのわからないノリで返してきた!)ヒィー!

転校生「それで? 食べるんですか? そのウサギ?」

委員長(どれだけ気になるの! 食べたいの? うさぎ食べたいの!?)

男「食べないよ。可食部位が少なすぎる」

委員長(淡々と凄いとことをッ!)

転校生「あはっ☆ なかなか想像通りの方のようで安心しました、わたし!」ニコ

男「それで要件は?」スタスタ

ガチャ パタン

転校生「ほほう? なぜそう思いに?」キラリン☆

男「わざわざここに来るぐらいだ、そう思うのも当然だろうに」

委員長「あ、あの~…まだ私、小屋の中に居るんですけど~…?」

転校生「これはまた。お話が早く済みそうで助かります、ええ、本当に助かります」

男「……」

転校生「と! 言っても! …要件は単純明快なのですよ、単なるやり残しってヤツです」

男「やり残し?」

転校生「私の自己紹介、──唯一あなただけ【聞いてませんでしたよね?】」ニコ

転校生「それが転校生さんてきに許されなくて~今後の学校生活計画にとって由々しき問題なのですよ~」

男「黄泉市の生き残り、入学漏れで半年後に廃校になるこの学園に転校してきた女の子」

転校生「それと【タイプホルダー】です」

男「……ギャグ体質」

転校生「あらまー? ちゃんとしっかり聞き遂げてました? てっきり私……」ツンツン

転校生「クラスメイトの中で一人だけ【唯一すぐさま耳を塞いでいたから】、知らないのかと。ムフフ」チラリ

男「………」

転校生「……何か間違ったこと言いましたカネ?」キョトン

委員長(──ヤダ! この空気から即刻離れたい、のに! 出口を封鎖されてる! それが狙いだったの!?)

男「いや、通りにかなってる。確かに君の自己紹介時に耳を塞いでいた」

男「──だからもう一度、と? 御免だね、君の病気には付き合ってられないんだ」

転校生「病気、ですか」

男「人様に迷惑のかかるモノに自制が効かない。…それは病気、正しい見解だと思うけれど」スタスタ

転校生「なるほど」フムフム

男「君、卒業まで静かにしといたほうが良いよ。まあ半年後には廃校だけど、ここで敵を作らないほうが良い」

転校生「唐突に物騒な指摘で驚く私なのですが!?」

男「この学園内は無法地帯だ」ザリッ…

男「例え日常的ないざこざでさえ、後の行動は全て暴力的な解決へ向かう【流れ】がある」

転校生「またまた~っ! 何も知らない転校生さんを脅そうってたって何も出ませんよ~?」ヒラヒラ


「……ううん、彼の言うとおりだよ」

委員長「──もうこの学園は普通じゃない、それは、本当のことだから」


転校生「ほほう? その根拠は?」チラ

委員長「……っ、それは…っ」

転校生「ここが暗黒スラム街のような殴って蹴ってとんでもバイオレンスフィールドだとか?」

委員長「………」ギュッ

転校生「マヂ?」

男「先日、一人の男子生徒が屋上から飛び降りたよ」ガチャ

転校生「なんですとッ!?」

男「かろうじて死にはしなかったけど、脊髄を痛めて腰から下が動けくなったってさ」キィ…

委員長「…なんで閉じ込めたの、男くん…」ジトー

男「逃げようとしたから。──転校生さん、実は飛び降りはそんなに問題じゃないんだ」

転校生「と、というと…?」

男「飛び降りの原因はイジメ、壮絶な暴力に耐えきれず自殺を選んだ。けれど死ななかった、…ギリギリだった」

男「救急車がこの学園に入れなかったから。…人が、この学園に入ることを恐れたから」

転校生「えーと、つまり? 救急隊員が? 車が、ってことです? つか、その理由は?」

男「そんなモノはないよ」

転校生「ワッツ?」

委員長「……無いんだよ、本当に。みんな【この学園に来たくない】と感じて嫌になるんだって」

転校生「HAHAHAHAHA! リアリー?」

男「つまり俺が言いたいのはね、転校生さん」


男「──この学園で事件に巻き込まれた時、法治国家でありながら、誰も助けてくれない」

男「【大人や国や警察や教師や正義や道徳や人権】なんて全て、一歩、遅れてやってくる」


男「だとすると、どうだろうか?」

転校生「フムフ。その一歩は大きな過ちを犯すに容易だと?」

男「イグザクトリー」ビシッ

委員長(意外とノリがいいよね男くん……)

男「だからアドバイス。君は静かに学校生活を終え、半年後まで──」

委員長「……」ぎゅっ

男「──? どうしたの委員長?」

委員長「…あれ、見て…」フルフル

男「………」チラ


転校生「──くっくっくっくっ…キャハハ! アーッハッハッハッハッ!」


男「なぜ笑う?」

転校生「くくっ…そのとおりですよ、ええ、私ってほら体質がアレでしょう? ギャグ、じゃないですか…」プルプル

転校生「まったく笑う通りなくってもね、まさか【本当にその通り】なら笑うしかないでしょう…?」プクク

委員長「ね、ねえ…もう行こうよ、この子やっぱりおかしいよ…」クイクイ

男「待って」

男「──君は今、本当にその通り、と言ったよね?」

転校生「はい。嘘はつきませんよ」ニコ

男「じゃあ…本当に…」

転校生「ありがとうございます。貴方、私に注意喚起するように情報提供してくれましたよね?」

委員長「…え…」

転校生「これは厄介な方ですよね~~、では私が何者かもお見通しで?」

男「さあ。どうだろうね」

転校生「んふふ。ますます厄介な方ですよ、さーーーてまるっと予想してた問題関係なくきちゃったかぁ~~~」ノビー

転校生「───私が探してる【ホンマル】ってやつが、目の前に」スッ…

男(? なんだ、背中に凄い鳥肌が……)ザワァッ

転校生「まずは改めてゴアイサツから。二度目まして、私黄泉市の入学漏れでやってきた───」スタスタ

転校生「あふいっ!?」コケッ

委員長「あ…転け──」


男「横に跳べッ!! 委員長ッ!!」ドンッ!

委員長「──ええッ!!? どういうッ、うぎゃー!!?」バッ


転校生「おっとっとっと…」トットットッ…

男(!! こっちに千鳥足で来た──!! ぐっ…!!)ババッ

転校生「わわーっ!? あぶなーい!!」

男(逃げ──え、足が動かない、何故!?)


どしーんっ☆


委員長「……痛いッ!? ちょっと男くん!? なんで急に押すのよー!?」バッ

委員長「って……あれ、ウソ、なんで……!?」


男「ぐぅッ……!?」ギリギリギリ

転校生「もーう、無駄に動くから痛い目にあうんですよー?」ギチギチギチ


委員長(取り、押さえられてる…!? まるで刑事さんが犯人を抑えるみたいに…今の一瞬で何があったの…!?)

転校生「ですが見事。一瞬で私の【ギャグ】を見破った先見性、素晴らしい限りじゃあないですか」ニコニコ

男「ッ……転校生は、必ず男子生徒にぶつかる…的な…!?」ギリギリ

転校生「その通り! 転校生というポジはいかに大切なシチュなのか存分に理解されてて嬉しいです!」ニコー

委員長「んなバカなことある!?」ガーン

転校生「それが体質です、委員長さん。…曲がり角に食パン加えてたらほぼ自動発動です」

委員長「なにそれすごく生きづらそう!!」

男「うぐッ……あの、さッ…出来ればこうなった原因をお聞かせ願いたいんだが…ッ!」

転校生「それは後で宜しいのでは?」

転校生「──時間はたっぷりありますよ、貴方が早めてくれた分だけ、それはもう沢山ね」グイッ

男「うがァッ!?」

委員長「男くん!? ちょ、やめなさいよもぉー! 何を急にこんなことして!? 離しなさいってば!!」

転校生「ますます気になります、貴方。…彼女を残したのは止めることに期待して?」

男「…買いかぶり過ぎだよ、俺のことを…」グググ

転校生「何度でも買いますし何度でもかぶりますよ。貴方は重要度はマックスです、推測の余地さえあり得ません」ギリギリ

男「…………」

転校生「諦めました? いいご覚悟です、ええ、被害が他人に及ぶ前に───」


男「せーの、よっと」ガコォンッッ…


転校生「……!?」ずるりっ

どんっ!

転校生「きゃっ!」どしんっ

男「──走れッ! 委員長、こっちだ!!」ダダッ

委員長「え、今、えっ、肩が──う、うん! わかった!!」ダダッ

たったったったっ…


転校生「………」ぽけー

転校生「あんまり無茶はしてほしくないんだけどなぁ…私、【個人系統】だし…」ウーン

転校生「よっと、まあ仕方ないですカネ」にまーっ

転校生(──私の【体質を逆手に取った行動】、ますます疑惑が晴れていく限りですよ、くくっ)


~~~


委員長「はぁ…はぁっ…うっ…久しぶりに走ったからお腹が…」グッタリ

男「体育の授業がなくても、日頃から動くべきだよ」ドサリ

委員長「なにおぅ」

たったったったっ…


転校生「………」ぽけー

転校生「あんまり無茶はしてほしくないんだけどなぁ…私、【個人系統】だし…」ウーン

転校生「よっと、まあ仕方ないですカネ」にまーっ

転校生(──私の【体質を逆手に取った行動】、ますます疑惑が晴れていく限りですよ、くくっ)


~~~


委員長「はぁ…はぁっ…うっ…久しぶりに走ったからお腹が…」グッタリ

男「体育の授業がなくても、日頃から動くべきだよ」ドサリ

委員長「なにおぅ!? …って大丈夫なの肩は!? さっきガコンって鳴ってたけど!?」バッ

男「うん…外してみた…」ダラー

委員長「ぎゃーっ!? お見事なばかりにゆっらゆら!!」

男「そうしなきゃ逃げられなかったし…それに、肩の関節外すのは雰囲気壊しに必要で…」ハァハァ…

委員長「意味わからないこと言わないでよ…! 大丈夫なの、それ…!?」

男「…付け直せるけど、今はもうちょっとだけ外しておく」

委員長「一番君の頭がおかしいかも!?」

男「これは【センサー】だ…即興のね…随分と身体を張った…その説明は後でするから…」ググッ

委員長「ど、どこに行くの…?」

男「逃げるんだ、逃げなきゃ捕まる。転校生さんに捕まれば……希望が終わる」

委員長(希望…?)

男「ここじゃ他人は役に立たないし、元より関わらないし、最初から期待はしない」

男「委員長…君も早く俺から離れた方がいい、一秒でも早く…ここより遠くへ…」

委員長「……ッ」

委員長「駄目だよ、そんなこと。出来るわけがないでしょ、だって私は委員長だもの!」

男「…それは凄い」

委員長「もっと褒めていいよ! …最初から勘違いだって可能性もある! 何処かすれ違っただけの可能性だってある!」

男「あぁ…それはとても良いことを聞いたよ。そうか、勘違いか」

メキメキ…

男「──出来ればそうであってほしい、そう願うしか無いね」バッ

委員長「そうしかあり得ませ──きゃあっ!?」グイッ ゴロン!



転校生「なわけあるかーーーいっ!!」ビッシイイイイイイ!



転校生「───避けましたか、今?」バッ ストン

男「君が来るだろうとわかったからね…」

転校生「わお。すごすぎでしょ、アナタ」

委員長「!? えっ!? なにそれ!? 急に現れて、えっ!? どういうこと!? マジック的な!?」

転校生「ツッコミですよ。その場に居ないツッコミ役がボケ空間に唐突に現れるの、読んだことありません?」ニコニコ

委員長「は…?」

転校生「安易な言葉に言えば【テレポーテーション】ってやつっしょ! チィース! よろしくぅ!」シュッシュッ

委員長「なに、やめ、そのパンチなに…? やめてよ、も~…!」ササッ

男「…! 当たっちゃダメだ委員長! それから逃げろ!」グイッ

委員長「え? でも痛くも痒くも無いけど…」ペチンペチン


転校生「──ほほう、なるほどなるほど。つまり外された関節で私の登場を予知したと?」フムフム


委員長「………ワッツ?」

転校生「あ。心読みました、こういったヤカラ絡みってよく吹き出しで『コイツうぜーな』なのありますよね?」

転校生「その流れで彼との会話を聞き選んで──彼のセンサーとやらも見破り、いえ聴き破りました」

委員長「……もうギャグとか関係ないぐらいヤバイ人じゃないこの子ッッ!?」

男「俺もそう思うよ…!!」ダダッ

転校生「逃げないでくださいよ~~!」スタスタ

男「っ…!?」ダダダダダ

転校生「走って逃げられると思います? こちとら十秒を一秒にだって出来る【タイプホルダー】ですケド?」ニンマリ

スタスタスタ

転校生「…規格外なんですよね、私、【体質だって限度はあるし強弱もある】んです」

転校生「非常識な世界でも、その非常識な世界にとっての常識はある……」シュン

転校生「ですが──その世界で私の体質は【非常識】です。わかりますか、私は非常識の中の非常識だってことを」

男「なにが、言いたい…!」

転校生「どうやって私を常識にしました?」じぃー

転校生「分からないのですが、どうやら貴方にとって私の体質は常識っぽい感じで見破られてます、気になります教えてください」

転校生「……肩の関節、そう簡単に外れませんよ? でもギャグ調な掛け声で【私の体質に則って外しましたね?】」

転校生「外れた関節。ギャグ調子で外れたので、私が近くに来れば自動的に治ると、総判断したんですよね? そうですよね?」

男「何度も言うが、どうやら君は俺のことを買いかぶりすぎてるようだ…っ!」ダダダダ

転校生「質問しているんです。質問に沿った答え以外は答えないで下さい」スタスタ

男「はぁっ…はぁっ…いや、これでも君の行動原理に則って話してるつもりだけどね…」

ダダダダ

転校生「偉い余裕ですね、貴方。歩いてる私より、走ってる貴方のほうが」

男「…そう見えるかい?」チラ

転校生「貴方、【体質】はなんですか?」

男「残念ながら…そんなモノは患ってない…!!」

転校生「ご冗談を。ギャグ体質にギャグで返すと取り返しの付かないことに成りますよ」ニコ

男「へぇ…例えば…?」ニコ

転校生「あはは。そうですね、例えば──」クス

転校生「──貴方がもし、この学園がどのような状態に陥ってるかを知れば…もしくは納得をして頂けるかと」

転校生「そう。あの大地震の震源地であった3都市から遠く離れた学園にて、」



転校生「【この学園内に居るほとんどすべての人間に『タイプホルダー』の疑いが───】」ニィーーー

転校生「───うばぁうッッッ!!!!?!!!!?!」


ばっこぉおおおおおおおおおおおおおおおんんっ!!!



男「はぁ…はぁ…!」タッタッタッ…

男「フゥー…【やっと引っかかった】か…随分と走らされたな…」グイ…

パラパラ… カコンッ ゴロゴロ…


転校生「きゅー……」バタリンコ

男(【おとぼけキャラが急にシリアス気味に打ち明けたら、不意の一撃が来るギャグ】)チラリ

男「見事、顔面から壁にぶつかってくれた…考えれば分かることだろうに…」


クル… スタスタ… スタ…


男「…この学園内に、体質持ちが居るってね…」スタスタ…

男(そんなコト…とっくに気づいているよ、誰もが…生徒たち全員が…なんとなく心の端で…)


委員長「──あ、居た! 二人共おしゃべりしながらどこまで行く気なのよ!!」タタッ


男「ふぅーーー…小言は後だ、今は逃げよう。彼女が伸びてるうちに…」

委員長「うわぁ…壁に人型の大穴が開いてる…どういう状況なのコレ…」

男「まるでギャグだね。それでいて彼女にはなんらダメージがないようにみえる…」

男「【本人にはギャグ】でも【対象には見た目通りの衝撃】…ってことだろうか…」

委員長「解説は後でいいから! 今はとにかく逃げようよ!」グイグイ


~~~


委員長「…大丈夫なの?」

男「多分、平気。どこまで学園内の構造を把握してるか分からないけれど、時間稼ぎには有効だ」メキ

男「…離れれば関節もまた、外れた。センサーも健在だし、少し作戦会議といこう」

委員長「作戦会議って…もしかして彼女をどうにかするつもりなの…!?」

男「警察も教師も生徒たちも、俺たちには無関心だ。助力を求めても無意味なのは君だって知ってるだろう」

委員長「でも…」

男「言うべきか迷ったけれど、一応、言っておく」チラ

男「──彼女はこの学園で【体質持ち】を探してる、それが目的で俺を狙ってるらしい」

委員長「…はあ!? じゃあやっぱり勘違いじゃない! 君が超能力もってるわけないもの!」

男「……それはわからない、きっと、誰も肯定も否定も出来ないよ」

委員長「ど、どうして!? 君自身が違うっていうのなら…!」


男「──君だって体質持ちかもしれない」


委員長「……え?」

男「気づいてるはずだ。この学園内に流れる雰囲気、ただ事じゃないのに皆気づかないふりをしてる」

男「いや【逃げないでいる】。ここにいる在校生は【敢えて学園に残ることを良しとした】人間たちだ」

男「それはおかしいことだよ、大変なことなんだよ。…でも君も俺も逃げなかった、ここに何故か居る」

委員長「わ、私は…違う、そんな能力なんて持ってないし…ちゃんと自分の意思でここに居る…!」

男「それですら誰かに操られていたら?」

委員長「操られて…!?」

男「憶測だよ、信じなくていい。けれど俺は……いいや僕は、今の感情すら疑うね」スク…

男「──【希望】は失わせない、例え、それが誰かの思惑でも」ジャリ


男「僕は抗うよ。だってそれが僕の【本質】だから」

~~~

転校生(──個人…にしては場の流れが都合が良すぎる。では、『展開系統』?)

転校生(『強化系統』でないのは明らか。では展開系統の『タイプホルダー』とみて行動しましょうか)

転校生「まったく…一筋縄ではいかないと思ってましたが、タチの悪い展開系ですか…運の悪い限り…」ハフゥ

転校生(出来れば体質名まで分かると状況運びも楽なんですが…なんだろ、猛者に対し反抗心…)

転校生「ルサンチマン体質…痛みと他人への共感性欠如…サイコパス体質…なんでもありですね…」

ガチャ

転校生「まあ。あちらの研究所に連れてけば嫌でも名前は分かりますし、」


男「………!」


転校生「──出来れば大人しく捕まってくれれば有り難いのですが、ねえ…?」ニマー

男「…どうしてここが分かった」ジリ…

転校生「転校生との出会いは一日中。どんなに逃げても巡り合うのが【メタ】です」

転校生「私が転校生という立場である限り、どこまで逃げても私は現れます。どこにだって、貴方の側に居ます」

男「…それは怖い、まるでヤンデレみたいだ」

転校生「居ますよ? 会いたいです? ヤンデレ体質に好かれたら尻の毛一本まで愛憎まみれの対象になりますケド」

男「…そりゃすごい」

転校生「おしゃべりはここまでです。楽しいですけど【そちら側の思惑】に乗るのはいただけない」スッ

転校生「今から貴方をタイプホルダーと認識、対処します。どうかご覚悟を」スタスタ

男「僕は違うよ、体質なんて持ってない」ジャリ…

男「よく見て、よく聞いて、考えるんだ。ギャグ体質だと言っても…自ら罠に飛び込むのは、少しは躊躇うだろう…?」

転校生「………!?」ピタリ

男「ああ、良かった。そこで止まってくれて安心したよ、本当に」ニコ

転校生「───なん、ですって!? 嘘だ、どうしてコレがここに……!?」

男「【やっぱり君はそれが大の苦手】なんだね。そうだろうよ、きっとそうじゃなきゃダメだ」スッ

男「──用意させてもらった、君の最大の弱点を」



【バナナの皮】ポツーン



転校生「貴方…ッ!! なんてモノを……!!」ギリリッ

男「おっと近づかないほうがいい。君はギャグ体質、いくら避けようとも絶対に踏んで壮大に転ぶだろう?」ニッ

転校生「……!!」バッ

男「そうだ。ここは『体育倉庫室』、君のような体質が転べば如何なるオチになるか理解できるだろう」

男「──一年前の地震で、倉庫自体の強度も脆弱、そして老朽化で今にも崩壊寸前だ……」ニヤリ

転校生「…随分と私のことを知って頂けたようで、嬉しい限りですよ…ッ!」ギリッ

男「僕の方こそありがたいね」

転校生「チッ…バナナが学園内で食べられないことは把握済みでしたのに…」

男「とある彼女のお昼ごはんだったんだ、偶然にも入手できたんだよ」

委員長(もうだや、この会話…)

転校生「………。それで私に何のお話でしょうか?」

男「まずは誤解をときたい。君はどうやら僕を【学園内を操る首謀者】だと思ってる、そうだね?」

転校生「ええ。勿論です、根拠は私自身が証明してます。……私という非常識に対抗しすぎているから」

委員長(…!? たったそれだけで…!? そんなの言いがかりにも程がある───)



転校生「──私は、体質で人を殺せますよ」



委員長「……ぇ…」ビク

男「まあ、だろうね」

委員長(だろうねって貴方ねえ!?)エーッ

転校生「今回の私は『転校生』ポジですから、でたらめなギャグ発展などしないでしょう」チラ

委員長(うっ!? ヤバッ!? 隠れてる方みてる!? こっちみてる!?)ササッ

転校生「しかしそうであっても度が過ぎる。その落ち着きよう、手玉に取りよう、全てが怪しい」

男「………」

転校生「一般人は逃げます、怖がります、怯えます。…はて? それでは貴方は一体何者でしょうか?」コテン

男「一般人だよ」

転校生「ありゃ、そうですか」スッ


…スタン


男「……。なぜ歩を進めるんだ?」

転校生「ウサギ小屋に訪れた私を情報で煽ったのも貴方、所見の体質持ちを手玉に取ったのも貴方」スタ

スタ スタ スタ

転校生「最大弱点のバナナも用意し、一方的な主導権を握る場面を作り上げ、」

男「………」

転校生「【ギャグキャラの私を本気にさせた理由は一般人だから、とは説明は付きません】」

グリッ…

男「危ないよ、君は踏んでいるよ、そのバナナ……」スッ

転校生「何を隠してるんです? なぜ投降しないんです? なぜ諦めない?」ジッ

男「怪我をしたくなかったら、足をどかしたほうがいい。この倉庫は本当に危ないんだ、生徒全員が知っていることだよ」

転校生「【和解だってあったはずなのに】。貴方は私との戦闘を望んだ、──思うに私に見つかってほしくない秘密がある?」


グリリ…


男「…それ以上はやめといたほうがいい」

転校生「話してくれれば離しますよ」

男「…危ないんだ、本当に」

転校生「…危ないのはここにいる全員でしょう、それは」

委員長(──え…それって…)

男「……。俺は希望が潰えてほしくないんだ、この学園にとっての唯一残された、それを」

転校生「希望…?」

男「だから学園を牛耳るボスとやらでもないし、体質もちなんて一度も意識したことがない。君が望む答えは……」

男「……俺は持ってないんだ、本当だよ、これは事実なんだ」

転校生「………」ジッ

男「俺に出来ることは、【思いつく】ことと【準備】することだけ」

転校生「へえ、つまりは【画策する】ことと【手玉に取る】ということですか」クスクス

男「物は言いようだ、悪いように捉えないで欲しいよ」

転校生「捉えますよ。それが貴方にとって掛け替えのない本質なのであれば───」


トントントン…


転校生「──悪戯、そうですね【悪戯体質】……とでも呼びましょうか、なんともまあ可愛らしくも悪質なタイプホルダーですよ」

男「イタズラ…体質…」

転校生「所感では個人系っぽいですが、すると【私と似た体質なのかもしれないですね】、なんともまあ数奇な運命だ」

転校生「さて、当初の目的通り体質持ちを発見。抵抗したため沈静化、そして確保に移ります」ビシッ

男「待て。話はまだ終わってない、勝手に締め切らないで欲しい」

転校生「いや待てません。動きます、この足首を捻ります! …勘違いされてるようですが、私、かなり不死身ですよ?」


──ズリュリュ…


転校生「たかがバナナで転んで崩壊した建物の下敷き程度で、死ぬと思います?」

男「待ってくれ! まだ話は終わってない…!」

転校生「貴方がこのオチを望んだんでしょう、では一緒にオチをつけましょうよ」



転校生「爆破オチ。そんなちんぷでオマヌケでギャグチック、素敵でしょう?」ニッ



───グリリリリイイイイイイイイイイ!!!!



転校生「あ~~~~~~~~~れぇ~~~~~~~~~」シュパァッ!

男「──委員長! 柱を殴れ! 今すぐにだッッ!」バッ

委員長「えっ!? 今!? わ、わかった!!」グググ


委員長「てっ、てぇーいっ!! あ痛っ!?」バチコン


グラグラ…


転校生「───!」

男(建物崩壊オチ。それは得てしてその起点となるギャグから発展するとは限らない……!!)ババッ

グラグラ… ガタガタ…


委員長「うわあ!? 本当に揺れて───」

男(──登場人物、展開的、連鎖ギャグオチ! 傍から見ればモブでも展開最大集約であるオチではトリガーとなり!)チラ

転校生「──…」ニッ

男(たった1つの無関係な行動すら、君の体質に促されるだろう……!!)



転校生&男(──神の【イタズラ】なご都合主義の【悪役への天罰】!!!)ニヤッ

委員長(なんか二人していい感じに笑い合ってるーーーーー!!!)



転校生「──、まいりました、やりますね」ドテーン

男「──、させないよ、君の望んだエンドなんて」ドテーン


ガタガタガタ!! ガシャーン! パリィン!


転校生「滑るまでが想定とは。おや、逃げないです? 展開の方向性はわかりやすいほどに私ですが?」

男「ギャグまで滑らせるつもりないよ。君とは決着を付けなければならない、とことん付き合うさ」

委員長「……ちょっとぉ!? 私が聞いた作戦と違うんですケド!?」ババッ

男「君は逃げていいよ。というかモブ扱いだろうし、そこにいても天井が抜けて助かると思うし」

転校生「待って下さい。モブはモブ、オチに関係ないなら生死も追求されないままエンドの可能性も?」コテン

男「やっぱ逃げて、委員長」

委員長「なんなの!? もうもうなんなの!? 私やっぱり見捨てて部屋に帰れば良かったーーー!!」ワーン

転校生「いやはや、イタズラ的ですね。ここまで踊らされたらむしろギャグですよ」

男「それ、やめてくれない? 悪戯ってことばあまり好きじゃあないんだ、これはれっきとした作戦だよ」

転校生「私のような不真面目でギャグ調子な体質を相手取る貴方の作戦は、れっきとした悪戯ですよ」

転校生「…胸を張って下さい。黄泉市で【黒風】とまで呼ばれ恐れられた私が褒めてるんです、光栄に思って下さい」ニコ

男「病気持ちに褒められても」

転校生「おや? なにやら先程から悪者ぶってませんか、貴方───貴方、もしや私に【勝負】する気ですか?」キャー

男「今の展開は【悪者が制裁を受ける場面】だ。一般生徒だと【言い切り続けた一般人】に暴力を働いた君が制裁を受ける」

転校生「…………」ニコ


ガシャーン!! ゴゴゴゴゴ!!!


男「だがしかし、けれどつまり、展開次第では僕も悪者。君を誤魔化し、委員長までを巻き込んだ。…これは悪いことだよ」

転校生「そうでしょうね、そうであればまさに実に【オモシロイ!!!】 それは笑えるギャグですよ!!!」ニコー

男「…ご期待に添えたようで」

委員長「ごめん! 本当に待って!? よくわかんないけど、とりあえず私必要かなあ!?」ギャーッ

転校生「ホホのホ! 面白いギャグほど第三者の目があってこそ!!」ジリジリ…

男「展開の統一化を狙うなら君の存在もまた重要だ。大丈夫、きっと死にはしないよ」ジリジリ…

委員長「お家かえりたぃいぃいぃぃ!!!」

転校生「勝負ですよ…男さん…場は最終局面でどちらも否を認めず、頑固に己を押し通した…!」

男「こうなるまでに時間稼ぎは大変だったよ…ジョーカー役への制裁は君の客観的思考よりだからね…!」


ガタガタガタガタガタガタ!!


転校生「さて、ここまでして貴方は何を望みます?」

男「──僕は知らない。君が望む答えは持ってない、以上」


転校生「お見事。では………【どちらがより悪者か、神の悪戯でギャグなオチにおまかせしましょうか……】」スッ…

メシメシメキメキメキィイイ…!! バキィン!!


委員長「わぁー!? 天井が……ッ!?」

男「──……」チラ

転校生「………」ジッ



男「……」ニコ

転校生「───!」



ズガゴォオオオオオオオオオオオオオンンン……



パラパラ… バキン ガララ…





「───そう、答えは【誰も傷つかないし誰も死なない】が正解だ」


委員長「…ぇ…」


「───崩壊寸前の体育倉庫。一年前の地震と老朽化なのは【生徒全員が知っている】」


転校生「……」


「つまり、この【上下左右学園】に在校する者は応じて【体育倉庫内で暴れたら危険】だから…」

「…阻止する、崩壊を。巻き込まれる実験人材を無闇矢鱈に【外来種に侵されること】を良しとしない…」


男「僕たちは助かる。謎の力によって死にはしない、…まるで茶番のようなエンディングだよね」ニコ

委員長「なにこれ…ウソ…こんなのあり得るのかって今更だけどさ…ッ!」

委員長「──天井が浮いてるじゃん! 柱ないのに、空中に!」ギャーッ

転校生「……【体質】……」

男「どうやら居るみたいだね、これを見るまで信じられなかったけど、どうやらキミの言うとおり…」


男「【ここで僕達が怪我、又は死ぬことを良しとしない連中が体質とやらを発動したらしい】」


転校生「端からこれを…私の目に見せるために…ウサギ小屋から、ずっと煽り続けた、と…?」

男「難しいよ、人間関係は。僕はどうやら委員長に言わさえれば唐変木質な所があるらしい」

男「……出来れば会話での和解が望ましかった、けれど、こうなってしまえば元の木阿弥」


パラパラ…


男「──終わり良ければ全て良し」

転校生「ククッ」

転校生「アーッハッハッハッハッ!! なんともまあ! 【知らなければ証明すればいいと!?】 手玉ッ! 取られ続けましたよ本当にっ!!」

委員長「……ッ…」

男「さて、黄泉市から入学漏れでやってきた謎の転校生さん」

男「遅ばせながら自己紹介といこう。──友達にはなれないかもだけど、君の希望は叶えられるかもしれない」


男「ハジメマシテ、こんばんわ、男と言います。宜しくね」スッ

転校生「初めまして私の初めてのお友達さん! 貴方ならきっと【この学園を悪戯に終わらせることが出来るでしょう!!】」ガシィッ


委員長「──悠長に握手してるところ申し訳ありませんがぁ!? 結構コレ危なめじゃないですかあ!?」


男「…行こうか」

転校生「…ええ、行きましょうか」ニコ


ガッシャアアアアアアアアン……



~~~


委員長「疲れた…今日一日超ハードだった…」ズーン

転校生「よっと。確かに人為的な後はありませんでしたし、ともかく体質が発動されたことは理解しました」パンパン

男「最後まで疑うんだね、君。体質と比べてえらく生真面目な性格だ」

転校生「体質と本質は相互関係では無いですよ、わかっているでしょう貴方なら」

男「…だからこその病気だろう」

転校生「ま! ときたまものすごーくマッチングする輩も居るには居るのですが、……特に貴方とか」ジトー

男「…………」フゥ

転校生「けれどまあ、人は本質に沿った生き方を曲げ続けるのが人生ですから」

転校生「───信用しましょう、貴方を。これを見せられたら嫌でも納得せざるを得ないですし」ニッ

男「有り難いお言葉、どうもありがとう」

転校生「…私が予想した状況より、数段ヤバそうですね、この上下左右学園」

転校生「私達の争いを傍から覗き見にしながら【オチに関しては茶々を入れてくる】とは」

男「………」

転校生「徒党をくんでる可能性がアリます。裏で四天王やら幹部やら支部長やら居る可能性が見えてきます」

男「あの、もしや君がそう言うとリアルでそうだったギャグ……的な流れになったりする?」

転校生「あはは。まさかそこまで万能じゃあありませんよ、私『個人系統』ですし、そこ、融通効かないんです」ニコ

男「…個人系統」

転校生「はてさて。貴方の目的は悪戯にはぐらかされましたが、…私の目的は無事に解消されました」

男「…どうする?」

転校生「どうするもなにも、解決させますよ。それに貴方にも活躍させてもらいます、その【体質】……」

転校生「正式な登録は出来ませんから、私がとってつけた体質名をつけておきます」


転校生「悪戯、悪戯体質。その【神が認めざるを得なかった人類史上初めて他界に干渉できるチカラ】」

転校生「──その覚醒者として、私の仕事を手伝ってもらいますよ?」ニマー


男「…ああ、よろしく頼むよ」

委員長「…断らないんだね、男くん…」

男「断ったら探られる、人間関係で面白おかしく押し通されるのは嫌いなんだ、僕は」

転校生「【貴方が隠し事しているのは知っています】。でも、貴方が手伝ってくれる限りは探りません」フフフノフ

委員長(なんなのこの人達……)

男「さて、探られる前にこの場から逃げよう。面倒事は苦手なんだ」クル

転校生「おや? 貴方ならそういった面倒事解消はお得意のようにお見受けされましたが?」

男「……それは勘違いだよ、転校生さん」


男「悪戯な詮索は、大の苦手なんだ。僕的にね」

転校生「これは失敬、ナハハ! ではでは逃げましょう!」


ダダッッ


委員長「なにをいい感じにセリフを──ちょっと!? 二人共逃げ足早くなーい!? 置いてかないでぇー!!」

第一話 終


きまぐれに更新ノシ


過去作↓
女友「アンタの体質って何なの?」男「…」
女友「アンタの体質って何なの?」男「…」 - SSまとめ速報
(https://hayabusa.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1376309335/)


金髪「お前の話、超同人誌すぎだろww」男「そうですか?」
金髪「お前の話、超同人誌すぎだろw」男「そうですか?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1486897051/)

ウサギ小屋


男「………」ぼ~~~


委員長「フムフム。つまり体質とは、大まかに3つの系統に分かれるんだね」

転校生「イグザクトリー! 『個人』『展開』『強化』───」ニパー


転校生「とある条件から引き起こされる【ジンクス】が現実を改変する『展開』!」

転校生「体質という【結果】で心身が強制的に凶悪に変貌してしまった『強化』!」

転校生「比較的に他の系統よりは割りかし取り扱いが楽な『個人』!」

ぴっぴっぴっ

転校生「例えどんなに体質種が多くても系統は3つ! コレだけは揺るぎない真実です!」

委員長「なるほど~~」

転校生「そこを押さえておけば、どんなに凶暴なタイプホルダーでも対処はできますし策は練れます」ニコ

委員長「凄い、まるで専門家みたいだね」

転校生「一応は私、黄泉市でけっこう偉いんですよ? だから上下左右学園の潜入にも選ばれました」

転校生「──私の系統は『個人』。まあ、これが一番の選考の理由なんですがね」

委員長「えーっと、その、転校生さんってアレだけ凄いこと出来るのに……個人? なの?」

転校生「ホホー! いいとこつきますネ! 委員長サン!」

転校生「体質とは言わば病気であり、自然現象であって──【災害】でもあります」

委員長「さ、災害……」

転校生「迷惑でしょう。災害が二本足で歩き回って会話して、その先、何十年と生きるんです」

転校生「なんて迷惑か。そんな人間があってはならない。居てはならない、けれど居てしまうし生きています」

委員長「う、うん…そりゃそうだよ、どんなに駄目だ迷惑だって言われても…」

委員長「タイプホルダーって人たちも、ちゃんと一緒に生きてるんだから」

転校生「はい!」ニコ

転校生「つまり然るべき土地で、まずは迷惑度を図り、きちんとした研究機関で登録を行わなければならない」

転校生「【体質持ちを世界に放つのは時期尚早】」ビシッ

転校生「本当に、その通りなんです。未だ一年前の大地震から世界は立ち直っていない、だからこその黄泉市なんです」

委員長「……なのに、その体質持ちが上下左右学園に居る……」

転校生「探さなければ。見つけなければ。保護しなければ」



「──世界は、閉ざされるかもしれない」



転校生「………!」

男「この学園が、この学園だけに起こってる現実が世界中に広がってしまう」

男「例えばそう、君が属する機関によっての………体質のあら捜しが──かな?」

転校生「なんのことでしょう?」ニコ

男「誤魔化しきれてないよ」

転校生「単なる体質持ちの転校生さんですけど~? そうまで担ぎ上げられますと、困っちゃうのです」

男「よく言うよ。個人系統で黄泉市でえらく、この学園に潜入する機会を獲てる時点で……」

委員長「ハイハイハーーイ! そういった邪険になる話じゃなくって、もっと楽しく話そうよ! ねっ!」

男「委員長。彼女、転校生さんは個人だから他人に迷惑かけないからココにいて大丈夫だよ、っていいたいらしいよ」

委員長「そういうコトなの?」

転校生「そうですね。迷惑がかかりにくい個人系統だから、が選考理由です」

男「………」じぃー

転校生「まだなにか? 可能性だけでの論議を行うよりもっと、互いに現実に即した議題でも出しましょうか?」ニコニコ

男「いや、結構です」フィ

転校生「あら。逃げられちゃいました」テヘ☆

男「…………」

委員長「ハァ~~…なんだろ、二人だけだとほんっと怖い雰囲気で会話するよね~~…」

委員長「うん、まあ聞きたい話はだいぶ聞けたし、お返しに今度は私の番だね」

転校生「待ってましたー! 委員長サン、是非ともお聞かせ下さいな!」わくわく

委員長「…でも、本当に学園内の不思議な話程度でいいの?」

転校生「十分すぎますよ! こちらとしては全く情報なしのてんてこまいっちんぐなのです、超大変さんなのです」プクー

男「…つまり」

転校生「はいはい?」

男「黄泉市に居る何かしらのタイプホルダーであっても、この学園内を覗き見れなかったと?」

委員長「え、そんな人が居たりするの!?」

転校生「肯定しましょう」ニコ

男「だろうね。それでいて君だけが潜入してきた───いや【出来てしまった】が正しいかな」

転校生「………」ニコニコ

委員長「その、転校生さんは、なんでも良いから情報がほしいって話……で、済む話ですよね? なんで険悪なムードになるのー!」

男「うん、だね。どうやら僕が居たら話が進まないようだ、ちょっと小屋の外に出てるよ」

ガチャ キィ

転校生「あらら良いんですよ? 私、男サンとの腹の探り合い会話好きですし~!」ニヨニヨ

委員長「煽らない煽らない」

男「最後に1つ、転校生さん。僕から謝罪の意味として、予め補足説明しておくよ」

転校生「補足説明? まだ情報をもらってないのに?」キョトン

男「話は早いほうが良いからね。多分、委員長はとある5つの情報を言うと思う」

委員長「なんでわかったの!?」

男「……、それは多分、全部【当たり】だと僕は思うよ」


パタン


転校生「うふふ。こりゃまた格好良く去りますね、キメてますね、ほくそ笑んでますね」ムフフ

委員長「素でやってるから突っ込まないであげて……」ドンヨリ

転校生「はてさて。お膳立てさせてもらいましたし、どーぞどーぞ! ゲロっちゃってくださいな!」

委員長「分かりました、でも、後でまた男くんと剣呑な空気になんてならないでね? ゼッタイだよ?」


委員長「まず、ひとつめ」ピッ


『放送室の唸り声』


委員長「学園の生徒、または教師などの大人たちは全寮制。つまり自宅は敷地内にあるの」

委員長「夜12時以降の校舎は見回り担当者以外、立入禁止。なのに──聞えるの、微かにすすり泣くような唸り声が…」

転校生「夜、人気無いはずの校舎内で唸り声……囁き声?」

委員長「さあ? みんな唸り声って言ってるから、ウゥ~~! とかガォ~~! なんじゃない?」

転校生「そりゃまた豪快な泣き方で。それでそれで放送室とは何の関係が?」

委員長「その唸り声の発信源って、どうもスピーカーから出てるみたいなのよ」フゥ

転校生「スピーカー……あのチャイムを鳴らす?」

委員長「そう。でも不思議なのがここから、誰かの悪戯だと思うじゃない? でも放送室って無いのよ、うちの学園って」

委員長「厳密に言うと封鎖されてる、が正しいかな。板を釘で打ち付けてガンガンって、もう誰も入れない状態」

転校生「な、なぜそのような無意味で意味深な状態に……」ワナワナ

委員長「それも分かんない。あと半年で廃校だもの、誰も気にしたりしないわ」ハァ

委員長「──ああ、この流れなら『蒐集クセのカラス』かな」

転校生「しゅうしゅう…それでいてカラス…?」

委員長「カラスって光るもの拾うって聞かない? だけど学園に住み着いてるカラス、光るものじゃなくて本を集めるの」

転校生「そりゃまた勤勉なカラスちゃんで!」ガビーン

委員長「でしょー!? 私も被害にあってるんだから! それも一やニじゃないの! 十冊以上よ!?」


~~~


ワーワー キャーキャー


男(随分と盛り上がってるようで…)チラ

男「さて、彼女の目的に添うのも大切だが、こちらも疎かにしては本末転倒…」

男(確かこの辺に人参を植えていたはず、なんだが。…心無い生徒が立ち入って荒れ放題だ)キョロキョロ

男「まあ、荒れた大地だと生命力強い野菜が育つと言うし…しかし柵によって区画を強化するのも…」


ゴソゴソゴソ ゴソゴゴソ

      ……カツン……


男(? カツン? なんだ、何かスコップの先に硬い感触が───)ガツガツ

男「石などは既に取り除いたはず…」モゾリ


ずる

  ずるずる ずる ずるるる


男「蔓状なものが埋まってるのか? なぜだ、ちゃんと雑草も引き抜いて」



【ビニールに包まれたトランシーバー】ずるるるるるるるる…



男「は、コレは、一体…?」


『ピー…ガガッ ジジジッ…』

『ジガガッ…えます、……ブブブブ…んですよね?』

『──【私が放送室の唸り声です】。どうもこんにちわ、…こんにちわ、かな? 外見えないけど…フヒッ…』



男「……………」

『き、きこえてるんですかー? 男さん? 返事下さい、じゃないとわたっ、わたひっ! いけね噛んじゃった…クフフ…』

男(───遠い、呼び出そうにも小屋に居る彼女たちに声は届かない…)チラ

『あのーマジ、聞こてますかね? え、失敗したの私?』

男「…君は誰だ?」

『あ! 良かった通じてたし、つか、早めのリスポンス頼みますよ~まったく~』

『──つかつか自己紹介はもう既に済ませたっしょ? 私が【放送室の唸り声】だってさ』

男(唸り声…確かそれは学園内の五つ噂の一つだったはず…)

男「そう、なのか。ではその放送室の唸り声である君が、どうしてこんなことをしている?」

『ジジッ ジピュン …よいしょっと、難しい話は抜きにしちゃってさぁ、男さん。即決に伝えますね、コッチの話を』



『貴方達、暴れ過ぎです。これ以上、平穏な上下左右学園に脅威を持ち込むのであれば───』

『──強硬手段に出ます、私、貴方達のことすべてまるっきし全部【学園内全員に公表します】』



男「なんだとッ? 一体それはどういう意味───」

『困るんですよ、学園内に学園外の話を持ち込まれるのは。迷惑でやかましくてうるさくて、うざったくて…』

『非常に困るんです、とにかく。だから脅しですね、もう学園内で暴れないと誓えるのなら公表しません』

『……どうです? 男さんにとっては悪くない話ではないです?』

男「……………」


『──ねえ、ウサギ小屋の飼育委員さん?』


男「……。体質云々のことを言っているのであれば、見当違いだ。僕は元より穏便にことを済ませたいと思っている」

『では貴方のトモダチである転校生さんはどうっすか? ん? あっちもそうであると?』

男「それは、訂正するべきだ放送室の唸り声。彼女は決して僕の友達ではない、単なる知り合い程度の関係だ」

『なんの言い訳にもなりませんけど? フヒッ ウソ下手くそすぎだろ、マジワロけるww』

男「だから違うと、」

『ま、どっちだっていいよ。結局は彼女を止めなければならない、幾ら貴方が穏便派であっても…』

『彼女は止まらない。転校生は学園内で暴れまわり、迷惑をかけ、騒音かきたてるのだから』

男「───チッ、つまり、僕にその役目を押し付けるつもりなのか、君は」ギリッ

『ッハ!アハハ! 面倒っしょ? 大変っしょ?』

『そりゃそう黄泉市直送の大物タイプホルダーの壁になれと言われてんだ。私はゴメンだね、絶対に』

『だから貴方に頼む。貴方は彼女相手に一矢報いた、それを私は知ってるし、知ってるからこそ脅してる』



『──転校生を学園から追放しなければ、君たち全員の持つ秘密を全部バラす』



男「お前…ッ」

『おっとと、そーいう逆上は止めといたほうが身のため。こっちは全て【見えてる】んだ、全てをね』

男「なに…見えてる、だと…?」バッ

『その通り。だから何をしたって無駄だし、隠れても見つけるし、逆にコッチを探しても無意味だし───ジジッ』


『【そうやって筆記会話によって秘密裏に転校生と作戦を練っても無駄だって話なのよ、まったくもって】』


委員長「……ッ?!」ビクッ

男「チッ、バレたか」

転校生「…………………」

『気づいてたに決まってるだろー? 馬鹿だなぁ、全部見えてるんだから隠しても無駄だって』

委員長「きゅ、急に男くんが音もなく戻ってきたと思ったら……なんなの、どういった話なのコレ!?」

転校生「足音を立てない彼の技量も去ることながら、つまり、トランシーバーで聞き取るだけじゃないというワケですか」

男「今は黙ってて。──なるほど、君からの条件は聞いた。では今度は本人含め対談といこうよ」

『フーヌー? 続けて?』

男「率直に言おう。僕に彼女を止める気持ちもなければ力もない、…見ていたのなら知っているはずだ」

『謙遜すんなって、男さんさ、君って結構ヤバイことさらってやっちゃってるワケだよ?』

『その転校生と名乗ってる人間。そいつは人間じゃない、化物なんだ、災害なんだ、タイプホルダーの中でも別格なんだ』

男「化物…」チラ


転校生「……………」ニコニコ


男「…それも昨日、身をもって知った。見ていたはずだろう、何を今更そんなことを」

『解決方法わかっててする会議は好きじゃないな~~~君ってば言いたいことあるならハッキリ言えば?』

男「ああ、ならそうする。──君の要件は飲めるだろう、完遂できるし、見事やり遂げられるだろう」

委員長「ええっ!? な、なんてことを言うの君ってば!?」

転校生「~~♪」ピュ~

『あっそ。ならちゃっちゃとやっちゃってよ』

男「でも、やらない」

『…はい?』

男「君の話には乗らない。断固、断る姿勢でいようと思う」

委員長「男くん…! なんて格好いいこと言っちゃうの! やっぱこーいう気持ちが大切なんだよ…!」キラキラ

転校生「私…もしかして君とのフラグ立っちゃってました!? やっぱ転校生だから!?」キャーッ

男「ちょっと黙ってて」

『あのさあ、また同じ話する? 良いの? ばらしちゃうよ? 転校生は良いとしても君の秘密は──』

男「無理なものは無理なんだ。これは友情にほだされたワケでもないし、そもそも友達でもない」

委員長「…男くん…」

転校生「フラグ無しは良いとしてもフレンドもなしですか!?」ガーン

『ジビュン! ガガガガッ! …つまり? どういうことですか?』

男「僕の希望は誰の手にも触れさせない。君はね、土足で入り込んだんだ。ズカズカと心無い足が……僕の希望へと」

『……もしかして人参を植えてた畑のこと言ってます?』

男「君はやってはいけないことをした、僕の希望を少しでも汚したんだ」

男「この時点で君は、転校生さんより劣っているよ。僕の個人の信用度で言えばね」

『もう一度考え直して下さい、男さん』

男「駄目だ。もう難しい話はなしでいい。君が望んだ結果はこうなった──僕を怒らせた、たったそれだけの話だったね」

『残念ですよ、ええとってもね。じゃあ話はおしまいですか』

男「ああ、話は小難しい話はお終い。僕もそろそろ喉が痛くなってきたんでね、今度はそうだ、もっと楽しい話をしよう」

『ハァ?』

男「笑える話だよ。最後に一つ洒落を言ってみようか、うーんそうだなぁ…」

男「──ウサギが二匹居るのは何故だと思う?」

『………。シャレなんですかそれ? つーかウサギは匹じゃなくて、』


───ブワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

男(──そうだね、)チラ

委員長「きゃっ!?」ブワァ!!

『!? しまっ、───ジジッ』



転校生「───二羽じゃろうがぁぁぁぁぁあああああああああいいいっっっっ!!!」ズビシィーーーーー!!



                                ドガァン…




委員長「……!? 今のって、爆風が凄いの来て──あれ!? 転校生さん居ない!? つか足元にでっかい穴が!?」

男「遠くの方で破壊音が聞こえたね、なるほど。これが突っ込みテレポートか」カチャ

男「思いっきり物理的じゃないか、何がテレポーテーションだ──あと多分、失敗してるだろうけど転校生さん」

『ジジジッ ガピュッ …知ってて煽ったんですね、そんなネタフリやめてください、マジで』

男「随分と落ち込んでるトコロ申し訳ないけれど、そこどこ?」

『あーーえ~~~っと……多分、放送室かなあっと……思われます、ハイ』

男「メチャクチャなんだね、君の体質で状況が」

『あちゃーですよ、まったくもって。この状況は別にいいですけど、ギャグがスベったのは頂けない』

男「トランシーバーだと会話しにくいから切るね、じゃ」ピッ

『あ、ちょっ』ピチュン

委員長「……それゼッタイ面倒だから切ったでしょ、男くん」じぃー

男(放送室の唸り声は室内に居なかった。しかし体質は発動───つまり、彼女の爆速より上回る速度で回避した…のか?)

委員長「っていうか! さっきの会話ってなに…!? なんで男くん脅されてたの…?」

男「……。僕だけじゃない、ここに居た全員が脅されていたよ」カチャ

委員長「ここに居た全員? え、つまり、それって、私も?」キョトン

男「転校生さんを黙らせて学園から追い出さなければ、一人ずつの秘密を全生徒にバラすって」ビリッビリッ

委員長「ええっ!? いやっ、別に誰かに知られて困るような秘密なんて───」ピタリ

男(へえ。あるんだ、意外だな)

委員長「と、ともかくだよ! 話は破断したとして、これからどう動くべきか考えよう!」バッ

男「いい心がけだよ。僕も同意見だ、それにあっちの彼女の方もね、……転校生さん」カチ

『状況は?』

男「あっちのリアクションは無し。僕はトランシーバーの電波範囲をチェック、放送室ギリギリまで届くようだ」

『なら会話していたトランシーバーは私が持つコレで間違い無し、と。いささか厄介ですね』

男「そうだね。放送室の出入りは?」

『出入り口は一つ、引き戸式のドアのみ。委員長サンの話通り板と釘で封鎖されてました、今は貫通してますケド』ニシシ

『あと窓がガムテでガチガチに閉ざされてます。この暗さ、一見、密室のように思えますねぇ』

男「コンビニかなにか、食事を行った形跡はあるかい?」

『いまちょうど調べてますよ。ほほう、ビンゴ。消費期限2週間前の菓子パン発見でごぜーますぜ、旦那』ヘヘッ

男「確証は取れたね。転校生さん、決め付きは悪手だ。僕達が来るまで警戒は怠らないよう」

『貴方達こそ背中を取られないようお気をつけて』チュッ

男(……。絶対に最後、投げキッスしてたな)ピッ

委員長「………」じぃー

男「さて、状況はあまり芳しくないようだ。僕達では対処する実力が欠けるから、すぐさま……何?」

委員長「はぁ、いいえ、なんか二人共こーいった状況だと仲良しだなぁ~っと、委員長さんは思いまして」フゥ…

男「怒るよ?」

委員長「説明もない端的な主張をされた!」

男「…君も気をつけたほうが良い、彼女との距離感を。むやみやたらに近づいて困るのは君だけだ」

委員長「それは、体質持ちだから、かな?」

男「理由はなんだっていいよ。人を嫌う理由に【総意する理由】が当て嵌まるのはおかしいだろう」スッ

ザリザリ…

男「委員長は委員長だけの理由で嫌えばいい。誰かと同じ理由で嫌う必要なんてないよ」

委員長「……。君って本当に素直じゃないよね、私はそー思いました…」

男「そう? まあ、こちとら誰かさんの面倒事背負い込むでるからね。さあ、早く合流しよう」グリグリッ

委員長「わかりました。そういえば男くん、さっきから何をしてるの?」

男「ちょっとした布石。無駄に終わるならそれでよし」

ストン

委員長「? 置いてっちゃうの、それ?」

男「ああ。このトランシーバーを盗聴可能性も否めない、委員長、彼女の電話番号知ってるよね?」

委員長「う、うん、今日教えてもらったし、それに君もでしょ?」

男「そんな記録はないけど」スタスタ

委員長「そもそも登録してないんだ!」ガーン


放送室内


転校生(くらい、暗いですね。真っ暗闇は苦手です、明るい状況が好ましい限りです)キョロキョロ

スッ…

転校生「───私には見えているぞ、隠れて覗き見にするぐらいなら、出てきたらどうだ」ビッシィイイ…

転校生「………やはり反応無しですか」シーン

転校生(大体この手のギャグで『…やるじゃないか』と性格関係なく反応してくれるんですケドも)ガサリ

転校生(消費期限2週間前、足の早い菓子パン、出入り口のない密室───これは【共犯】ですね)

転校生(密室の状況下でモノの出し入れが可能だった。少なくとも二週間は十分に暮らせる供給が行われいた)

転校生(『放送室の唸り声』には仲間が居ます。男サンも疑っていた、くふふ、一般人にし得にはもったいない素養)

転校生「……どちらにせよ、私の体質が反応した。ここに居たのは確実なのでしょう」

スタスタ パキン

転校生「仲間…瞬間移動できる体質…壁をすり抜ける…もう少し何か獲られるのならば…獲ておきたい…」ガサゴソ


──カチン


転校生「? なんでしょうコレ? まあるくて硬い、それでいて微かに匂うのは嗅ぎ覚えのある───」スッ

転校生「ああ、薬莢ですか」ニコ



パリィン…



転校生「──逃げても無駄ですよ、この部屋、既に私の【展開状態内】ですから」ゴソゴソ

転校生「すみませんねえ。ああ、もしかして窓を突き破って脱出する腹積もりでした? ごめんなさい、そーゆうのも駄目なんです」ニコニコ


「…………」


転校生「おやおや。姿がお見えできない、うーむ見事に闇に紛れてますね。まるで探偵漫画のお約束のようだ、…体質です? それ?」

「……………」

転校生「お返事なし、と。なら私からご説明すると【この部屋に展開されたのは主要キャラに敵主要キャラの片鱗を見る】というメタ的な扱いです」

転校生「私、けっこう秘密持ちキャラでしょう? だから貴方の存在を知っても【彼にも委員長さんにも話しません。だってアナタ、今回の体質持ちと関係ないから】」

「…………」

転校生「そういった展開なんです。そういった体質なんです。ああ、こんな早くも【この展開】を消費してしまうのは頂けないのですが…」クスン

転校生「───かまけて、捕まえた尻尾ぐらい引っ張り出しても構いませんよね?」ニマーッ

「…………」ジリッ…

転校生「なぜ体質を使わないのです? 争いましょう、戦いましょう、醜く互いの体質を使って騙しあいましょうよ」

転校生「ね? 楽しい楽しい……勝負の時間ですよ」スッ


だだぁんっ!!


「!!」バッ

転校生「逃げても無───」ズニュッ


ズリィイイイイイイイイイイ!! シュバァアアア!!!


転校生(──え…私……転ん、だ…!?)フワ


「………」


転校生(何故だ、体質が発動するような陽動など、…まさか、アナタが? どうやって? そんな集結力なんて…)

どっしゃああああ!!

転校生「くっ…待ちなさい!! 逃げるな!! 私はアナタに話を……!!」バッ


タッタッタッタッ…


転校生「……やられた、ふふっ、むしろ私の扱いが悪役だったんでしょうか、まるであっちが主人…公…?」ピタ

転校生「……まるで齟齬無く話を進めたるための、王道……」


「──転校生さん!? ちょっと大丈夫!?」


転校生「ぇ、あ、あはは! えーえー大丈夫ですとも! ヘーキです!」パパッ

委員長「本当にっ? いきなり床に倒れてるんだもん…! だ、誰かに襲われたの…!?」

転校生「いえいえ。そんなコトありません、ギャグ体質ですから汚れた部屋だと転ばずに居られないのです」ニコニコ

委員長「ほんと厄介な体質だね……」

男「……………」ジッ

転校生「なにか?」

男「いや無事で何より。それで、なにかわかったことは?」

転校生「そちらこそ無事でなによりです。話した以外、特にはありません」

男「それは意外だね。君のような目敏い人間なら早期発見こそが厳守だと思っていたけれど」スタスタ

転校生「例え本質であれど技量はしれてます。アナタのような天賦の才に巡られた方に任せたほうが良いではないかと」

男「僕は体質なんて持ってない。君が言っているだけだ」

転校生「ならばさっさと学園内の秘密を暴き、一緒に手を繋いで黄泉市総合病院にて調べましょう」ニコ

男「御免被る」

転校生「そう言われても」

委員長「だァーもう! ちょっと見直したらすぐこれだ! ハイ喧嘩やめやめ! 二人とも静かに!」パンパン

男「……。状況はお察しの通り、放送室の唸り声を手引する仲間がいる。恐らくタイプホルダーで間違いない」

転校生「ええ。では食料提供は良いとして、脱出はお仲間さんがやったと?」

男「転校生さんの体質は凶悪だ。結果逃げられたが、実はすこし気になる点があるんだ。そこは断言できない」

転校生「……。へえ、なるほど」

委員長「えっと、それはどういうこと…なの、かな…?」キョドキョド

男「転校生さん、内緒にしていることがあるなら今のうちだよ。今なら黙って文句も言わず聞いてあげるからさ」スタスタ

委員長(アレ!? 華麗にスルーされちゃってます私!?)ガーン

転校生「はて? なんのことやら?」

男「言っても良いのなら言うけど、君が自発的に転ぶことなんてアリ得るかって話だよ」カチャ

転校生「えへへ。そりゃあまあギャグ体質なんで」テヘヘ

男「そう。言いたくないんだね、だったらそれでいいよ。…僕はその言葉を納得する」

転校生「どういう意味でしょうか? 私が何か隠し事でもしていると! まっさかトモダチ相手に秘密ごとなんて!」

男「……。らしくなく、随分と今日は素直な転校生さんだ。──そうか、君も人に知られたくないことがあるんだね」チラ

転校生「……」ニコニコ

男「では利害の一致とみなして共闘を願う。僕は放送室の唸り声を阻止し、存在を暴きたい」

転校生「言ったでしょう? 私は元より貴方と友達だ、利益関係無行く協力関係でありますよ」

男「ありがとう」

転校生「いえいえ」

委員長「うんうん! これで二人仲良しってこと、むがごぉ!?」ムグゥ

男「……。じゃあ作戦開始だ、敵の正体と体質を暴きに行こう」

ピッ

男「──どうも、放送室の唸り声。僕からプレゼントは受け取ってもらえたかな」ボソボソ

『ジジジッ……わざと置いていったんですか、コレ』

委員長「……!?」ムグーッ

転校生「ほほう?」

男「君との会話手段を失うことを忌避しかった。…といえば聞こえがいいかな?」

『とんだ嘘吐き野郎ですね。知ってますよ、見てましたよ、偶然でしょうがコレは』

委員長(バレてる…盗聴の恐れがあったって言ってたし…つかなんで口を塞いでくるの男くん!?)モガモガ

男「ふぅん。なら現在、僕達が何処に居るのかすらも把握していると?」

『ジジジジッ とーぜん、放送室でしょう。あまり暴れないでくださいよ、転校生さんにも伝えてくださいよ、マジで』

転校生「あはは。無理です、もう当分住めませんよ、この状態じゃ」クスクス

『……化物め…ビジュジュ…』

男「なるほど。それは素晴らしい体質だ、君はどうやら人の所在地と行動を伺える万能な体質を持っているようだね」

『あの、この今の会話って意味あります? もう交渉決裂ですよね? 話終わりましたよね?』

男「では何故トランシーバーを用意した?」

『無視すんな。つか、は? そりゃ会話するためっしょ? 何言ってんだこいつ ビジュン』

男「僕に転校生さんを止めるための脅しをするのなら、直接声を聞かせる必要なく、置き手紙程度で十分だろうに」

男「──なのに君はわざわざトランシーバーを用意した。何故だろう、僕はそこがとても気になる」

『話がこじれた時に交渉するつもりだったからですけどーーそんなこともわからないんですか~~~~???』

男「……うるせ、ばか……」ボソリ

転校生「……!? ぶほぉ!? クックックッ…」

『聞こえてますケド?』

男「あれ? 聞こえちゃってた?」

転校生「アハハ! 貴方のような人でも軽い悪口いうんですね、意外でした。笑っちゃいましたよ」プークスクス

『追い詰めてるハズなのに、なんかそっち和気藹々で腹つんですけど』

男「気分を害してしまったのなら謝るよ。逃走中の君の精神を崩すのは申し訳ない気持ちでいっぱいだ」

『…………………………………………』

男「知っているよ。この雑音──合間合間に入るノイズ、これって君が移動する度に起こるノイズだね?」

転校生「ははぁ、なるほどなるほど。中庭の時に聞いたノイズ……それは移動した為の音でしたか」

転校生(ならば突っ込みテレポート以前に行動された。何処か【脱出特化】のギミックがあるハズ)ガサゴソ

男「君は臆病でいて、大胆だ。あの封鎖された放送室で閉じこもり、転校生さんの体質を怯え、それでいて僕含め脅してきた」チラ

『……………』

男「体質。そう──体質だよ、自分が彼女を相手取っても【勝てるタイプホルダー】だと確信している、逃げ切れる自信を持っている」

男「居場所が分かるんだ、会話や光景を、離れた位置から確認できるんだ。それは素晴らしいことだよ、確かな優位性だからね」

『何が言いたい』

男「さてここで問題。委員長、何処に居ると思う?」

転校生「───!」ピク

委員長「………………?」キョトン




『……………………………………………………そこにいるだろ』




男「チェック。君はウソ付いた、誤魔化しきれてないよ」

『…さっきまで会話していた』

男「携帯電話は? 君は僕達の光景を見れ聞けるらしいが、その会話を聴き逃していたのか?」

『聞いていた。だが見えている! 放送室内で貴方と化物と委員長が居る!』

男「……なわけないだろ……」ボソリ

『なわけないわけがない!!!!』

男「チェック。君はまたウソを吐いた──トランシーバーを見てご覧」

『……ぇ……』

男「そう、よく見て見るんだ。そうじゃない、入力側じゃなく……出力側だよ……」ボソボソ

『……!? 土が、埋め……!?』

男「──僕からのプレゼントだ、唸り声。そのトランシーバーは出力側、即ち【僕の声が聞き取りづらいものとなっている】」

委員長(さっき男くんがやってたヤツ!?)

男「おや? さすればこれはおかしな話だ、ミス唸り声。君はなぜ僕の小言を聞き取れたのだろう?」

男「耳が良い? それは素晴らしい、では僕達の光景を随時追い続けられる? それは無理だろう?」

男「君は【僕達の声を聞き取れるだけだ、遠くから声の位置……または音を認識できる程度のタイプホルダーなのだろう?】」

『ち、違う! 私は君がいる場所を把握できている……!! なにをしても無駄! 無駄無駄! さっさと諦めろ!』

男「話を戻そうか。答えてくれ、じゃあ委員長は【どこにいる?】」

『!! 貴様のすぐ横だ…!』

男「違う。君のすぐ側だ」

『嘘だ! あり得ない! …君と化物と委員長! その三人でそこにいる!』

男「違うよ、違う。君と一緒に中庭で君の姿を陰ながら覗いているんだよ」

『違う違う違う!! 私の体質は完璧だ! そう【言われたし頑張れって応援された!!】』

男「………。君の体質は残念ながら見破られた、僕にはわかっている」チラ

転校生「……………」ニコ

男「放送室の唸り声。お前は完璧じゃない、だから僕たちはこれから追い詰める。追いかける、…そして正体を暴き、阻止する」

『できやしないッ!!!』

男「喧嘩を売る相手を間違えたようだね。どう、誰に唆されたのか知らないが君はこれから負けるんだ」

男「……宣戦布告だ、よくよく考え、行動しろ。そして最後に一つ報告だ」パッ

委員長「ぷはぁっ!」

男「どうぞ。言いたいことがあるなら言っていいよ」スッ

委員長「………。首を洗って待ってろ!!」

転校生「ひゅ~~~♪」

『───…………』シーン

男「だってさ。これで僕たちの意思、伝わったかな?」

『ジジジッ しにくされ』

男「………」カチャ

転校生「クックックッ。最後のノイズ、無様に逃走してましたね」クスクス

委員長「あぁ…委員長らしからぬことを私は言って…あぁ…ぶっちゃけてぇぇぇ…っ」ドンヨリ

転校生「それでそれで男サン。放送室の唸り声、相手サンの体質は見破られたので?」

男「うん。──対象人物の会話を遠距離に聞き取る、又は条件下の元【居場所を把握するタイプホルダー】だ」

転校生「ほほう? 見るのではなく、聞くだけ。はて、なにやら敵サンは委員長サンの居場所に難儀してたようですが?」

男「会話だよ。実は【委員長だけはトランシーバーで放送室の唸り声と会話していない、この中で一人だけ】やってないんだ」

委員長「……そうだっけ?」

転校生「そうなのでしょう。彼が仰るのなら、そのとおりなのでしょう。……だから最後に会話させたと」

男「ミス唸り声は相手と会話して、初めて居場所を把握できる。会話するまでは【声だけが聞える、会話のみが聞える】んだ」

スタスタスタ

男「違和感は初めての自己紹介。唐突に『私が放送室の唸り声』と語り始めた時だった」

転校生「……! まるで男サンがウサギ小屋内で、委員長さんの話を聞いていたかのように…!」



『──【私が放送室の唸り声です】。どうもこんにちわ、…こんにちわ、かな? 外見えないけど…フヒッ…』



委員長「わ、私が話を持ち出したから──いい機会だと勘違いして、男くんに接触した……ってこと…!?」

男「そう。コレを埋めていた畑の近くに、君たちが居ると勘違いした。つまり端からは全員の居場所を掴めてなかった」ゴソゴソ

カチカチカチ

委員長「会話が条件なら…男くんが小屋の方に移動することも分かった…じゃあ筆談がバレたのは…」

男「フェイクだね、見えてはなかった。移動した=何かしている、と思ったのだろう」ピッ

ピロローン ブーブー

転校生&委員長「?」ゴソゴソ

男「今、作戦内容をメールで送ったから後で読んで。──この会話も相手には筒抜けだ、行動は早いほうが良い」スッ

転校生「いい流れですね、事件が解決へと向かう兆しが心地良い。男サン、これを見てくださいな」ガコォン

男「これは…」

委員長「──だ、ダストシュート…!? まだこんなの残ってたの!? てっきり全て撤去されてたかと!」

転校生「ゴミの分別化や落下事故等などで見かけなくなったものですが──ふぅーむ委員長サンの反応から見るに、ここにだけのようだ」

男「そこから逃げ出した、にしては度胸がある人だな」チラ

ヒュウウウウ~~…

転校生「元より脱出特化用に改造してるのでは?」ガコン

男「あり得るね。部屋のゴミをここから捨ててないのなら、本来の用途で使われないだろうし」スタスタ

男「──あらかた把握できた、じゃあ皆さんメールを読んで各自行動開始と行こうか」

男「『放送室の唸り声』は僕達の秘密を全校生徒に告げるという。僕はそれを許せないし、委員長もまた許しがたい行為だと罵った」

委員長「の、罵ってはないよ!! ……文句は言ったけど!!」

男「条件として転校生さんを撤退させよと言い出した。出来るだろう、けれど僕は君の方を取ろうと思う」チラ

転校生「私の腕の中はいつだってフリーですよ!」バッバッ

男「希望は汚されない。僕は僕の本質を突き通す───茶々を入れるのなら撃退するまでだ、すべての力を持ってして挑ませてもらう」

男「──イタズラに、僕達に手を出したのが間違いだったと思わせようじゃあないか」

中庭 廊下


「──クソッ、クソクソッ! だァーもうッ! 何なんだアイツはぁ!?」ガンッ

「……痛い……」ジーン

(【常識外】過ぎる……たった数回の会話でコチラの情報をありったけ持っていきやがる……ッ!)ギリリッ

「──でも、」


『聞こえているか、唸り声』


「!! 聞こえてます!! アナタには私の声は聞こえてないでしょうけど、私は聞こえてます!! 見ているのですか!?」ババッ

『よくやってくれた、君はワタシの思う以上のことをやってのけた。十分過ぎる成果だ、感謝の言葉を君に贈りたい』

「ああぁあ…そんなっ…私はやれることだけを、やったまでで……」ホロリ

『──コチラの確証を得られた。私の体質は彼女の体質を上回る、と』

「!! つまり接触したのですか!? あの化物と!?」

『この事実は、希望への一歩となるだろう。それを君と一緒に成せたことを誇りに思う』

「もったいないお言葉です……!!」

『すなわち君の鬱屈した立場も改善されるだろう。──待ち給え、置かれた状況を見事覆してみせよう』

『しかし訊け。行動するのは君であり、無茶をするのも君だけだ。……ワタシは君を手助けするだけ』

「わ、わかっています。それは端から理解しています」ゴク…

『走り給え。逃げ給え。愚行たる逃走こそが【真なる希望】への一歩となるだろう』

「…………」ギュッ

『ワタシは君に期待しているよ、だから、頑張り給え』

「………」

「わかりました。私、頑張って逃げおおせます。──アレが発動するまで、全力で死ぬ気で対抗します」

(弱ってる場合じゃない。例え数段飛ばしに状況が突き進んでも【私が優位なのは変わりない】)ダダッ

(全てはあの人の言うとおりに進んでる。あの人が褒めてくれたのだ、これからもっといい状況になるに違いない!!)

「私は逃げる!! たったそれだけのことっ!!」ギュルッ

(相手がどう出るか、何処に居るか知っている!! どんなに距離があっても聞き逃さない!! 私の体質──)


ギュルルルル…


(──『地獄耳体質』!! 私の耳は…自分の噂話や、何処で呟かれてるか聞き取るのだ…!!)


ギュルルルルルル!!!


「……」ピタ

「──さっきから聞える、この音、なんだよ…?」チラ



「ハァ──────ハッハッハッハッ!!!! とぉうッッ!!!」ババーーーーン

「今日こそ来たれり我が宿敵ッ!! 学園に住み着いた魑魅魍魎が跋扈する私こそッ!!」ダダァンッ

「謎の転校生!! 黄泉市入学漏れのギャグ体質ゥーーーーーーーー!!!」


転校生「てんこぉーーーせぇーーサンッ! なのでぇーーーすゥッッ!!!!」ドドン!!


「……!?」バッ

転校生「ほほう、ほうほう? 何処から多様の生徒様たちが中庭に集まってしまった様子…」キョロキョロ


「? アレ噂の転校生じゃね?」

「なんで屋上に突っ立ってんの…?」

「おーい! そこ危ないって! 前に自殺未遂の生徒が立ってた場所だぞー!」

(もうココまで来ちゃってんの!? つかなんで屋上いんの!? 遠回りだろそっち!? ほんっとあの化物はァ…!!)ジリッ…

転校生「フーヌ? 流石に名乗り出た瞬間に、無様逃げ出すような分かりやすい敵サンではないようで」

転校生「──と思いましたが…」ニヤリ

「!!」ビクン

転校生「お一人だけ静かに見てる方がおらっしゃったようで…クスクス…あなた、もしや唸り声さんってぇ奴ですかぁ…?」ニヤニヤ

(バレてる…ッ!!)ババッ

転校生「おぉっと!? ここから逃走に走りますか、素晴らしい逃げっぷり!!」ガビーン

転校生「ならばコチラとしてはその矜持に則って、頑張らなきゃいけない所存でありますよォ!!」スッ…


「え…ウソ…!?」

「お、オイ!? 危な……ッ!!?」


転校生「──鬼さん、そーちら♪」


ヒュンッ…


「きゃーーーーー!!!!???」

「落ち……ッ!?」


(馬鹿野郎!! 化物が屋上から落ちた程度で死ぬわけねーだろ常識的に考えてさぁ!!)ダダダッ

転校生「うーん、いい風」バサバサ…

(直接向かい打ってくる!! 私の方へ障害など関係なく向かってくる!! 着地した直後、背中を狙ってくる…!!)

転校生(ふむ植木ですか。まあ緩衝材程度にはなってくれるでしょう、そもそもギャグで済ませるから無傷で済みますケド)ゾバァッ!


バキバキバキッッ!! ドサァッ!!

(たとえ私みたいな非力な人間じゃ到底逃げ切れない──)バッ


でも。


転校生(さあ地に足がついた瞬間に襲ってやりましょう。蹂躙してやりましょう、よい、しょっと)バサァッ 



転校生「さーて、弱々しい敵サンはどこ、痛ッ!?」ザクザクザクッッ!!


しーーーーん…


転校生「───? げほっ、…? カフッ……!?」ビシャッ

転校生(……なん、ですかコレ──なんで私【フェンスに串刺しになって】るん、ですか?)


「うわぁーーーーッ!? やばいってアレ!? マジで死ぬって!?」

「し、下から鉄の棒が……一直線に突き刺さって…!?」ゲロロッ

「先生呼んでこいよ!! つか救急車!! 早く呼べって!!」


転校生「……? ?? ???」ゴフッ

(──やったっっ!! お前はやっぱり上回れていない!! あの人の体質以上の【収束率】を作り出せないんだッ!!)くる…

ダダダッ

(ギャグで無傷に着地できる展開収束率を、あの人の無傷で終わらせない収束率が上回った!! これは素晴らしいこと!!)

「逃げられる!! 私は立ち向かえるんだ!! あの人のために頑張れるんだ!! だから───」



転校生「だから? なんです?」ニコ


「──は?」

(なんっ、で生きて)

転校生「【次コマ復活ギャグ】」

転校生「──ギャグ中の致命傷は刹那に治る、それぐらいポピュラーなギャグかと思われますが?」ブォンッ

「きゃあ!?」ドッサァァアアア…

転校生「ふぅ、驚きました。少しだけですが死にかけたことは笑えないぐらい驚きました、ええ、事実ですよコレは」ハフゥ

「き、貴様ぁ~…ッ…なんて規格外な体質だよぉ…ッ!!」

転校生「あの、知ってて喧嘩打ってきたのはアナタでしょ? 覚悟して向かってきてくださいよ、拍子抜けしちゃいますから」

「ぐッ…!!」ジャリッ

転校生「まーだ鬼ごっこ続けるんですかー? 私も男サンも委員長サンも、さっさと終わらせて口を割らせるほうが笑えると思うんですケドー?」ケリッ

「あっ!? ぐぅうう…!!?」ズサァアア…

転校生「さァさァゲロちゃってくださいな? 私、これでも黄泉市でも偉い方なんで──」

転校生「──拷問尋問詰問、なんでも許されちゃうんです。アナタ、壊れたくないでしょう? 死なないけど死んだら嬉しいぐらいに壊されたくないでしょう?」ニマーッ

「っ……っっ……!!」ジリジリ

転校生「大丈夫。アナタの命は亡くなりませんし死にませんから安心して」ニコッ

転校生「──死んでも何度も何度も何度も、生き返らせますカラ。笑って、笑えることしか救いがない未来にしてあげますカラ」


転校生「ね? 話して、正直にさ?」ニコニコ


「……アンタは勘違いしている」

転校生「なにが?」

「自分が無敵だってことを…そう自分で思い込もうとしている…けど私は知ってるんだ、弱点を…」

転校生「なにを?」

「【アンタの弱点】を。この学園に来たのは間違いだった、アンタは素直に……学園外で死ぬべきだった、それが正解だった……」

転校生「……。アナタの耳が聞き取る範囲は学園外まで及ぶと言うのですか」クックックッ

転校生「なら話が早く済みますね。──そこまで知っているのなら、躊躇わず喋ったらどうです?」チラ

「……ッ…」ズリッ

転校生「さァ! 死にたくないのならご正直にお話を! …弾丸飛び交う戦場に生身一つで生き延びた【私の実力】…」

転校生「話すか、抵抗するか、──選択を」ニコ



カァー カァー カァー



「……終わった」

転校生「? ええ、終わりましたね、アナタの逃亡劇は」

「私の狙いは一つ…アンタは追ってくる、逃げる私を終えるのは行動力のある【アナタだけ】だと分かっていた…」ズリズリ…

「自分の体質じゃあ対抗できない、知っているし骨身に染みてる…けれど、それは予定調和だった……!!」

転校生「なにを言っている?」

「私は囮だった。生き餌だった、ただそれだけの存在。大物タイプホルダーを【彼と彼女から引き離すこと】だけに使われたのだ…」

転校生「…まさか」バッ

「とっくに上回れているんだよ、バカタレ。アンタの…お前の体質はあの人にとってなんら脅威にならない…!」


放送室


「うっ…ううぅっ……」

ポタ ポタポタ ポタタ…

委員長「──おとこ、くん…どうして…どうして【ダストシュートから飛び降りたの】…」グラァ…


パタリ…

~~~


転校生「…………」ジッ

「さァどうする問題児!? アッチで黒風とまで恐れられた化物が何を躊躇ってる…!?」

転校生「吐きなさい」

「あ…? ──ぐゥ!?」グイッ

転校生「この学園を操っている黒幕は誰だ? 何を目的に【大量のタイプホルダー】を匿っている?」

「ハッ! やっぱりお前の目的はソレかよ…!」

転校生「………」

「自分の胸に聞いてみろよ、大量殺戮者。…誰の危険から皆を護ってると思ってるんだ?」

転校生「御託は良い、聞き飽きた。答えだけを言え」



「世界はとうに終わってる」

「だから、この学園だけは終わらせない。それだけがあの人の目的で、希望だ」



転校生「……」

「この意味、わかるよなあ? 学園外が今、どういう状況下に陥っているかなんて───」

「──その一端を担ったお前なら、全部全部、お前ならわかっているんだろ…!!」

転校生「……。意味がわかりませんね」

「世界は終わってる」

転校生「そう黒幕の方に唆されたのですか? 哀れですねぇ、世界の未来なんてタガの外れた妄想に囚われて」

「黙れッ! 悪魔ッ!!」

転校生「悪魔、ですか。……それは私のようなヒトに対し呼んで良い名前じゃあありませんよ」

「……? どういう意味だ?」

転校生「どうやらアナタのような末端では話にならない様子だ。残念極まりない、本当に心から残念」パッ

「ぐっ!? は、ははッ、じゃあどうするッ? 殺すのか? 目障りだからと消すのか私を……!」

転校生「そんな展開自体もったいないので省略ですね」クル

「…は…? ど、何処へいくつもりだ!?」

転校生「何処にも。この学園、すわなちアナタの耳が聞き取る範囲以上は何処にも行きませんし、生きません」

転校生「放送室の唸り声さん。私は誰よりも安泰な未来を望む人間の一人、そして助け舟です」チラ


転校生「その目的のためには手段を選ばない」

転校生「──だったら、世界の一つや二つ、滅ぼしかけてもやむ無しですよ」ニコ


「! な、何をする気なんだ…!?」

転校生「さあ? そんなのやってみてから考えて宜しいかと、…ずっとそうやってきましたし、そう生きてきましたから」

転校生「だから今もそうやって進んでいこうと思います。唸り声、どうか貴方も幸せな未来に行けることを」スッ…


スタンッ


転校生「──心から、願ってます」ヒュン

「………!? 消えた…ッ?」バッバッ

(ギャグ体質で無音で瞬時に移動する方法なんて──いや、それよりも失敗した、私は煽れなかった)

(【私を殺害するまで引き付けなければならなかったのに】)グググ…

「はっ…はっ…はぁ~……あぁ…聞こえてる…これじゃあ聞こえてしまう、全部の声が……」ジジジッ


ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる

「──ははっ、あははは! うるさい…うるさい…うるさいうるさいうるさい!!」

ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅる

「──ああああああああッッ!!!!」ギュウウウウウッ…


ぶちっ ポタタ…


「ハァッ…ハァッ…くそっ、これで何回目だよ、鼓膜潰すの…」クス


『ガオォン! スタ… スタスタ…』


「!?」ビクッ

(音が──この場所は、地下の施設、まさか生きてるのか…?)


『ジジジッ 聞こえてるんだろう、話をしよう』

『僕はここにいるよ。ああ、暗くて見えづらいが──とても心地居場所だ、まるでそう…』

『…君の心の中に居るようで、温かい』


「………ッ」ググッ

「──覗くなよ、変態が」スタ スタスタ…




第二話 終

数分前 放送室


『現状は3:1でコチラが有利。人数的な意味合いでもミス唸り声は勝利から三歩も出遅れている』

『体質、狙い、互いの位置、これら3つの優位性は覆されてはならない』

『転校生さんは唸り声を。君なら体質を使ってすぐさま追いつけるだろう、その後、【それなりの】確保を頼む』

『委員長は僕と一緒に【秘密を全校生徒にバラす手段】を暴き、そして出来る限り解除する』

『無理はしなくていい。危険はない、ただし無茶はしないで欲しい』

『──タイプホルダーは思うに、無理矢理を突き通すことが得意な連中だから』

『そんな無茶苦茶な存在に事前情報無しに特攻するのは推奨しない』

『では、健闘を祈る』


委員長(──なんて、書いてあったけれど)


チッチッチッチッチッ……


男「…………………」

委員長(男くん。さっきからずっと口を閉じたまま黙りこくっちゃってるんだよね)ウーム

男「委員長…」スッ

委員長「あ、うん? なになに?」

男「転校生さんが向かって三十秒ほど立ったけれど──なにか感づいたことや、思うことはある?」

委員長「えっ、いや! 別に特には……?」

男「うん。だよね、僕もそう思う、それが普通だし当然のことなのだろうけど…」


この違和感、なんだ?


男(今すぐ行動に移さなければならない。なのに思考が滞って、停滞する。なにを悩む? 己が成すべきことは違うハズなのに)

委員長「えーっと、悩んでるならさ! 互いに【ここが怪しくね?】ってな場所を言い合えば良いんじゃないかな?」ニコ

男「言ったけど、相手は声と場所を遠距離で把握するタイプホルダー、安易な口出しはご法度だ。委員長、気をつけて」

委員長「スンマセン」ビクッ

男「…でも」スッ

男「今、こうして立ち止まるより幾分マシかも知れないね。ごめん、その提案に乗るよ」

委員長「え、良いの? あっちに聞こえちゃうんでしょう?」

男「良いんだ、聞こえても今から対処するのは難しい。なにせ転校生さんが追手だよ? それに…」

男(もし唸り声の仲間によって対処されても、状況が悪化するのは相手側。捕まってしまえば供述が取れる)

男「……。委員長は何処が怪しいと思う?」

委員長「あ、うん。えーっとね、やっぱり実行中に私たちに邪魔されない手段を取ると思うんだ」

委員長「まずは壁新聞。張り紙だね、何十枚や何百枚と刷って学校中に張り出すの」

委員長「次に噂話。根拠は薄くなるけど、誰かの秘密が【ウケて】しまえば途端に広まっちゃうと思うから」

男「………」コク

委員長「あとそれと───ううん、でもね? こーいうのって思うのだけれど…」

男「そうだね。準備が掛かる、そして多人数での計画的な行動が必要とされるだろうね」

委員長「…だよね、だからちょっとばかり違うなかなーって思うんだ」シュン

男(僕達を脅してきた唸り声。脅すからには準備が整ったと言うこと、…すなわち発動場所が把握できやしない自信があるハズ)

男(全校生徒に秘密をバラす手段。その方法と経過、そこを抑えれば全ては解決)

委員長「男くんさ、こうなったら片っ端から怪しいトコロに突撃しちゃおっか? タイムリミットはわからないけれど…」

委員長「こう悩んでるウチに他の人が行動に移しちゃうかもしれない、って考えると、いても立ってもいられなくて」ポリポリ

男「…ああ、それも良いかもしれない」

けれど、

男(──なんだ、なにを僕は立ち止まっている? どうして【ここから】立ち去ることが出来ないんだ…?)

委員長「男くん……?」

男(なにか見落とした? ある程度の体質は見破れた。例え仲間が居てもここから巻き返しは困難のはず──)

男(敵の体質は一通だ、受信はできても送信は不可能。もし居場所を知っても転校生さんが追っている、接触は出来ない)

男「通信手段……方法……秘密を暴露……」ピク



チッチッチッチッチッ



男「───トラン、シーバー………」

委員長「? どうしたの?」

男「委員長。転校生さんは体質を発動し、ココを滅茶苦茶にした、そうだね」

委員長「う、うん。見たとおり部屋にある形あるもの全てぶっ壊していったね、あの人」アハハ

男「じゃあなぜ、」カチャ



男「このトランシーバーは無事なんだ?」



委員長「え? そりゃまあ、奇跡的に被害被らない場所にあったとしか…」

男「どうして無事な場所にあったんだろうか」

委員長「だ、だから奇跡的に! 偶然にも【このトランシーバーだけ】は無事に──あれ? なんでコレだけ無事なの?」キョトン

男「【意図的に無意識に、僕達が干渉できない場所に置いてあったから】」

委員長「は、はあ? そんな無茶苦茶なコトあるワケ……あっ」

男「……っ」バッ


がしゃああんっ

バサバサッ バキッ! パラパラ…

委員長「…!? 男くん…!?」

男「──やられた、そのこの部屋にあるだろう無事に済む場所がわからない」

委員長「いや! 思い出してみようよ! ソレを拾ったときのことを思い出せば、」

委員長「あ…そうだ、私たちは直接コレが置いてあった場所を知らない…転校生さんが拾ったんだった…」

男「………」ギュッ

委員長「で、でもさ? 思ったけど無事に済む場所がどう秘密を暴露する方法とかかわってくるの?」


まずい、非常にまずい。


委員長「ねえ、もう行こうよ? ココに至って始まらないよ、早く行動しなきゃ駄目な気がするよ」


こんな【展開】があって許されるのか、まるで規格外、まるで常識はずれ。


委員長「どうしたの? なにを躊躇ってるの?」


意図的に思わされている。ココには何もない、行動に移さなければならず立ちさなければ正解じゃない。


委員長「──ここにはもう何もないよ?」


そう、誰かに自分たちが思わされている。そっちが心地良い展開だと勝手に促される。


男(これが体質…ッ)


全校生徒に秘密をバラし、事前準備を抑えられること無く、転校生さんを相手取る理由。

スイッチひとつで校舎中に声を伸ばし、体質によって壊されないブロックを仕組めば無事に発動する装置。


男(知っているはずだ、それを自分は【知っているはずだッ!】 ここから出たいのに出たくない、【だから知っているはずなのに!!】)

クルッ スタスタスタ ダンッ!

男(出てはいけない理由、それは、室名表記にも書いてある──)バッッ


『放送室』


男(──でも【それがどうした】と明確な理由が有耶無耶になっていく)

委員長「男くん…?」



【29分01秒】

…カチン…

【28分59、58、57…】チッチッチッ…



男(躍起になって探しても堂々巡りがオチだ、救いなのはそうだと分かることだけ)

男「…ならアレを試すしかない…」バッ

委員長「あれ? アレってなに──ってどこ行くの男くん!?」

男「説明してる暇は無いんだ。すまないが、転校生さんへの伝言を頼みたい」グッ

ガコォン

委員長「……!? ダストシュートでなにするつもり…!?」

男「『本気でやらないと痛い目を見るのは君だ』、そう彼女に伝えてくれ」

委員長「ま、待ってよ! どういうことなのかちゃんと説明してよ…!」

男「大丈夫、安心していい。僕の秘密や転校生さんの秘密。それに君の秘密は必ず守り通すから」

男「誰にだって見てほしくない過去はある。でも、きっと僕たちの希望は揺るがない」グイッ

委員長「待っ──」

ヒュッ… ガコォン! ガタン! ガタタタッ!



委員長「──嘘…本当に落ちていっちゃった…嘘嘘、なんでなんで…?」

委員長(うッ、だったら! 私だって着いてく!)グイグイッ グイィーー

委員長「…開かない…? どうして、なんでッ! さっきまで軽々と開いたのに…!?」ガタガタ

バギィッ!

委員長「痛ッ!」ドシャアア

委員長「あ……取っ手が壊れて──おとこ、くん…どうして…」ポタ パタタ…


~???~


ガタン! ゴロロロ…

男「ぐッ…!? かはぁッ!?」ドシャッ

男(──ここ、は…? くッ、真っ暗で何も見えないが…匂いから察するにごみ収集施設…地下…)

男「しかし何にしても、は、ははっ、っくく…」プルプル

男(落ちて【正解だった】。今ならわかる、放送室から校舎内のスピーカーを通して秘密を暴露…)

男「きっと目の前に装置はあった…なのに思考も予測も出来なかった、だが今はできる…」

男(なんて規格外。転校生さんも大概だったけれど本人が側にいたからこそ、あの脅威だ)ゴソゴソ

【圏外】

男「…側にタイプホルダーがいなくとも、多人数を己の体質に巻き込む…これが『展開系統』か…」ユラリ

スタン

男「聞こえているんだろう、話をしよう」

男「僕はここにいるよ。ああ、暗くて見えづらいが──とても居心地良い場所だ、まるでそう…」

男「…君の心の中にいるようで、温かい」

男(作戦変更だ、唸り声の相手は僕がする。ああ、でも元よりそれが…)

男「…あちら側の作戦だった場合、うん、はたしてどうしたらいいんだろうね…」


~放送室~

転校生「大丈夫ですか?」

委員長「うん…平気、結構出てるみたいだけど痛みもないし…」

転校生「無理はせずに、ちゃんと落ち着いてから状況を教えてください」

委員長「ごめん…でも優しいね、転校生さん…」ギュッ

転校生「落ち度は私にあります。こんなオチはギャグ体質とて見逃せません、爆破オチより質が悪い」

委員長「よし、うん、起こったことを話すね──男くんはダストシュートから落ちて、ついていこうとして失敗した」

転校生「取っ手が折れてますね、ぽっきりと。…委員長サンが触った途端にですか?」

委員長「そうだよ。男くんは平気そうに開けたのに、私のときだけ…運が悪かったのかな…」

転校生「いいえ、体質です」

委員長「え…!?」

転校生「これ以上、侵入者を増やさない展開なのでしょう、やはり、これは展開系統と見て間違いない」スッ

転校生「──……。それで? 男サンは何をアナタに言い残してました?」

委員長「そ、それは…」


『本気でやらないと痛い目を見るのは君だ』


転校生「はは。なんていうか、まあ流石ですよね。やっぱ見破られちゃってましたか」テヘペロ

委員長「ど、どういうこと…?」

転校生「実は私、唸り声に手引する存在と接触しています。それも数分前のことなのですよ」

委員長「……っ…」ピクッ

転校生「とある展開を発動させましてね、これがなんとも強制力高めのヤツだったのにむしろ逆手に取られてしまって…」

委員長「待って!!」

転校生「ん。なんでしょう?」

委員長「もし、私の勘違いだったら否定して…転校生さんって、個人系統なんだよ、ね…?」

転校生「あらら! 委員長サンもオミゴト! そこ最初に勘づくとは流石ですよね~~」ニコニコ

委員長「…どういう意味…?」

転校生「わたくし、三系統で個人にカテゴライズされてますが──全ての系統を使える特殊体質なのです」

委員長「特殊体質っ? ぜ、全部使えるってこと? 三系統、全部?」

転校生「回数制限がありますケドね!」

転校生「それも結構強力なやつ仕込んできましたよー? まぁそんな余裕をビシィッと敵サンに突かれちゃったワケですが」

転校生「それもまた男サンにも見破られた様子。まったくあの人、何が見えてるんだろうなぁ~」ポリポリ

委員長「…………」

転校生「んふふ。私のこと信じられなくなってきました?」ニコ

転校生「いいんですよ、元より【そういうポジションで学園内で暴れまわるつもり】でしたから、どーぞ嫌ちゃってくださいな」クスクス

委員長「……それで良いよ」

転校生「!」

委員長「私が思う『助けたい』って気持ちは、弱い私じゃ叶わないことだから」

委員長「ここで動くためには何だってする。きっと貴女の力だって安全じゃないし【正義】でもない、けれど…」


『大丈夫、安心していい。僕の秘密や転校生さんの秘密。それに君の秘密は必ず守り通すから』


委員長「──男くんは助けられる、そうでしょう?」ギュッ

転校生「……。お友達ですからね、そりゃあ助けますよ、絶対に」ニコ

委員長「それで十分だよ!」グッ

転校生「すみません、試す口ぶりで。貴女のご覚悟はたくさん伝わりました、ならば未来のフラグの為にゲッツしましょう」スッ

転校生「──いざッ! ハッピーエンドのハーレムエディションへ!」

委員長「えいえいおー! 待ってッ!? それどーいう意味!?」

~~~

男(光一つ無い闇の地下室、…出口を探すのは危険か)ガシャンッ

男(足元も不安定な程に積み重なった廃棄物。一年前の地震からきっと多くのゴミが放置されたままなのだろう)

男「まるで、幸せの残骸だな…」


「そうですか? ワタシには単なる不要物にしか見えませんが」


男「! お早い到着だね、ミス唸り声。もしや出口は一つでも入り口は沢山あるのかい?」

「…ほんっと厄介だ、あんた。あの人が化物より【あんた】に注目したのが今ならわかりますよ」

男「褒め言葉はいらないよ。でも、ありがとう。僕の呼びかけに答えてくれて」

「…………」

男「なにも警戒しなくていいよ。話があるだけだ、単純な話、そろそろお終いにしないか?」

「くくっ、まるですべて終わったような言い方だけどさ──なにが出来たワケ? あんたに?」

「ここに落ちたのは驚きましたよ、ええ、でも【それだけ】だ。何一つとして解決できたか? ああ出来てない、ただ1つたりとも」

男「暴露方法は予測できた。後は放送室に戻るだけ、これで十分だろう?」スッ…

「あの人の体質からは逃れられない、いや、あんたならきっと頭でわかってるハズ。それに…」スッ…

パシャッ カシャッ パシャッ

男「!」

「──スキをみて写真に収めようとか、ライトで周囲を照らそうとか思わないほうが良さげですけどね、男さん」

男(これ、は──僕の周囲に大規模な廃棄物が、所狭しと積み重なっている…今にも崩れそうな…)ピタ

「安全な脱出ルートはワタシだけが知っている。主導権を握ろうと躍起になっても、己の境遇に苦しめられるだけだ」クスクス

男「…追いつめられたのは僕の方だったか」パチン

「いいえ、元から進歩などしてません。驚いたと言ったでしょう? それ、馬鹿だなって思ったからです」

「──初めから条件を飲んでいれば良かったのに、こうなる前に、ずっと最初から」

男「……」

「自分で自分を苦しめている。バカ以外になんと言えばいい?」

男「ああ、滑稽だろうね。でもそんなバカな僕の元へ、君は来てくれた」

「………」

男「ずいぶんと優しいね、憐れで不憫な僕の立場に同情してくれたのかい?」

「ワタシはどうでもいい。けれどあの人はあんたを求めている、仲間にしたがっているからここに来た」

男「へえ、随分と僕を買ってくれているようだ。あれだけ拒否したのに未だ僕を欲しがるとは」

「知らないからだ、あんたが学園外の状況がどうなっているのかを」

男「……どういう意味だ?」

「もう世界は終わっている。いや、終わりかけている。だからあの人は学園内だけでも救いたがっている」

「──希望を失わせないために」

男「……………」


ビジュン!


「今つけたテレビを見てみろ。あんたの隣りにある光、それがテレビだ」

ザアアアアアア…

男「……。砂嵐しか映ってないが、これがなに? もとよりココは圏外だろうに」

「違うよ、それはケーブルテレビだから普通に番組放送中。…とあるダクトからケーブルが伸びたまま捨てられたんだ」

男「では、なぜ映らない?」

「【放送する場所がないからだよ】、この意味…あんたならきっと全てまるっとわかりきるだろう?」

男「───……」


ザアアアアアア…


男「三日前、僕は普通にニュースを見た記憶がある」

「同じだよ、ここでも地上でもテレビは全て止まっている。録画した同じ番組を何度も何度も繰り返し見てるだけ」

「学園に居る人間たちだけが気づいてない、そう、あの人が体質で展開を広げてくれただけ」



ザアアアアアアアアアアアアアアアア……



「誰だと思う? それをやった人間、すなわち【テレビを使用不可にした化物】は?」

男「……」

「誰だと思う? さぁ答えてよ、一般人さん。学園生徒の一人として常識的な模範解答を聞かせてちょうだいよ」



「──世界を終わらせたのは、誰だと思う?」

男「──まあ転校生さんだろうね、きっと」



「!! なんで平然とあんたは…っ!」

男「まあここまで引っ張られたら。すると君はあれか、転校生さんがやってきた理由ってのは…」

「ああ…! ここも滅ぼしに来た以外、なんだって言うんだ…っ!? だからアイツはいちゃいけない、存在しちゃいけない災害なんだッ!!」

「だからあの人がみんなを守ってくれる! それがっ、どうしてッ、わかってくれない…!?」

男「僕は知らないから」

「は…?」

男「二人の人間がいる。学園を守る人、学園を危険に陥れようとする人」

男「その二人が敵対していて、でも何方かにつかなければならない、と言うのなら」クイッ

男「僕は、顔も性格も、生で直で、声が聴こえる人のほうに着いて行く」

「お、おかしいだろ…お前だって、転校生のヤバさを知ってるだろ…」

男「さあ? そもそも体質なんてふざけた病気を持ってる時点で、どっちも得体のしれないものだよ」

スタスタ スタスタ

「……!?」ビクッ

男「僕は揺るがない。一度決めたことは絶対に譲らないし、譲らせない」スタスタ

「しッ、死ぬぞ!? 廃棄物の下敷きになりたいのか…!?」ザザッ

男「ねえ、ミス唸り声」

男「聞かせてくれないかな──どうして、君はさっきから口調が一定しないんだ?」ピタ

「…ッ?」

男「ずっと気になっていた。初めて会話した時から今まで、一度も安定した話し方をしていない」

「ぐッ…い、今はあたしのことはどうだって──」

男「どうでもよくないよ。僕は君と会話しているんだ、誰も僕達に横槍を入れる権利はない」

(なんだよ──こいつ、一体なにを考えて…、)

男「どれだけ学園外が滅んでいようが、転校生が素晴らしく頭のイッている存在だったとしてもだ」

(──まさか、嘘だ、あり得ない、そんな素振も流れも無かったのに、言おうとしてる、のか…?)

男「大切なあの人の約束も、君との会話には必要ないものなんだよ」

「…な、なんだよ、やめろって、何を…」

男「だから言わせて欲しい。僕は君が【この地下室】に来てくれた時点で、ひとつの言葉を君に送りたいんだ」

「や、やめろ…!」

男「ああ、本当に、わざわざ僕なんかの為にこんな場所に来てくれて──」


男「【あ──」




グニュウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアア!!!!!



男「っ!?」バッ

「?! ──な、にッ…? この感覚…ッ?」

男(上の階で何かが起こってる…世界そのものが押し潰されそうな圧迫感、これは一体…)



~放送室~


委員長「…………」ダラダラダラ



グニュウアアア!!! キンキンキンキンッ!!

転校生「────」キィーーン…

バギギギッ!! バリバリバリバリッ!!



委員長「そのっ、えっと、なにをやってるのカナ? 転校生さん…?」

転校生「────……?」チラ

転校生「あ。今はちょっと『他次元』に干渉してる最中なので、すみません、そちらの声が聞こえないんです」ニコ

委員長「た、他次元…?」

転校生「この唸り声の協力者が施した展開系統のブロック。我々では到底、干渉など出来ない」

転校生「しかし、裏を返せばこうまで強力な展開ならば、なにかしらのファクター的な物があるハズ」

転校生「ので! じゃあもう別の次元で覗いちゃいましょうってコトですね!」


グニュウウウウウウウウウアアアアアアアアアアアアア!!!


転校生「【他次元】とはつまり【別世界線】と言い換えられます」

転校生「次元とは一通でしてね、時間の流れと一緒で干渉不可であり決して突破は不可能です」

転校生「で・す・が! この特別体質こと『ギャグ体質』は不可能を可能にするもの!」

転校生「同じ時間、同じ場所、同じ登場人物に──敵味方と舞台と話数…そしてコマ割り…」スッ


転校生「【他コマ干渉ギャグ】、時にギャグキャラは時間の流れを無視できます」ていっ


委員長「…………ごめん、もうわかんないや、うん、ごめん」ズーン

転校生「おやおや、もしやドンビキされてるご様子? うーぬ、ギャグ体質としてはいただけないリアクション…」

転校生「まあ安心してくださいな。ここまでけったいな展開は一度限り」ニコ

転校生「三つあるうちの、生きているうちに一回だけ使える超イミフ展開の一つなので」

パキィー……ン…

転校生「ハァーイ! どうやら無事に取り出せられましたので、ご確認っと!」

委員長「と、とにかく無事に突破できたってことだよね? でも、だけど…」ヒョコ



【カレンダー】


転校生「………………」

委員長「カレンダー…? こ、これが重要なファクターなの…?「

委員長「男くんをおかしくさせて、転校生さんでも無理やりじゃないと行けなかった理由──うッ、なに頭が痛…っ」

ジジジッ

委員長「!! そうだ…! そうだよ何を言ってたんだろ私…!? ここじゃない! 放送室だよ!!」バッ

転校生「………………」

委員長「全校生徒に知らせるための装置! なら放送室のレコーダー以外あり得ないのに!」

転校生「委員長サン、これ…」

委員長「うぎゃーッ! やっぱり再生中のカセットテープが中に入ってるゥー!」ガチャガチャ

転校生「待って、ください。それよりもまず一緒にこの、カレンダーを見て…」

ジジジッ

転校生(──あ、やばい、なにか頭のなかに入ってき、)ビジュン!

転校生「………」パッ…


ひらりひらり パサ…


委員長「これでよし! 後は男くんを助けに行くだけだよ──って、どうしたの?」

転校生え? ああ、いえ、得には…忘れたのなら大したことないのでしょうし…」

委員長「よくわからないけど、今は呑気にカレンダーを見てる場合じゃないよ!」バッ

転校生「…カレンダー…」ぴく

ギギギ!

委員長「う~~~~~ぬッ!! ッハァ…ハァ…やっぱり開かない、転校生さんお願い!」

転校生「えっ? あぁハイハイおまかせあれ! どーんと奇抜奇天烈なわたくしがやっちゃいます!」


~~~


「…今のなんだと思う」

男「転校生さんだろうね。というかそれ以外の可能性を少しも考えたくない」

「まったく同意見…」

男「さて、転校生さんが何かしらの対処を行ったと見て、…唸り声、君はどう状況をみる?」

「……。単純な話、負けじゃん、あたしの」

男「ああ。君の負けだ、いや──君だけの負けだと言い切っていいだろうね」

「どういう意味?」

男「君の協力者、もとい学園を影から操り自ら学園生と全員のガーディアン役を買ってでた人物…」

男「その黒幕は、君と共同関係を結びつつも、あっぱれ。到底、協力者とは呼べない間柄だからだ」

「…証拠は?」

男「放送室内で滞った『放送装置』についての思考が、ダストシュートからの落下の際にクリアになった」

男「…どうしてか、それは君が放送室から退去する為であり、そして【黒幕の体質から逃れる為】の出口だったから」

「つまりあんたは、あたしが転校生から逃れるために使用した──だけじゃないと見破ったと」

男「体質同士は合間見れない。転校生さんからの受け織りだけど、状況は少なくとも、君にツキが回るような展開ではなかった」

男「──展開体質での援護支援は無い、そう、僕は考えたんだ」

「つまり、あたしは使い捨て要因でいつ死んでも黒幕には関係なく、そしてまた黒幕は要件を無事に済ませた、と」

「へぇ…なるほどね…じゃあ、あたしから質問。あんた、さっき言いかけた言葉あるっしょ?」

男「ああ」

「それ、正解だ。あたしの体質から逃れられる唯一無二の手段だよ、お見事だね」


【ありがとうございました】


男「体質には、条件があると僕は思う。それが【トリガー】、ギャグ体質である転校生さんは体質を発動する際…」

男「ギャグを行い天変地異を引き起こす。発現に沿った破茶滅茶な破壊を行うことが出来る。それがトリガーだ」

「ふぅん、じゃあ、あたしは?」

男「【ヒソヒソ話】」

男「──もとい、うわさ話や陰口、端的に言えば【マイナスな印象】を口に出すと君の耳に入る」

「なぜそう思う?」

男「そう難しい話じゃない。はじめの自己紹介を思い出してみればいい」

男「そう、君は既に有名人だった。放送室の唸り声としてマイナスポジションに見事に収まっていたからね」

男「君は君自身を噂する人物のマイナス的会話を、遠距離にて聞き取り、居場所を把握するタイプホルダーだった」

「…マイナスな会話が、トリガーだと言いたいワケか」

男「なら話は簡単だ。逆なことを言えばいい、君の存在を感謝し認め、プラス的会話を行えば発動は止まる」

男「そしてプラスマイナスで換算できるなら、敵意を持ったまま会話を行えば、また体質も強まる」

男「だから、君が地下室に訪れた瞬間からずっと感謝の言葉ばかり並べた。まあ歯切れの悪い返事ばかりだったけどね」

「……。当たってるよ、それ、あんたが言ったとおりマイナス噂を耳が拾う」

「そしてプラス的な言葉を、あたしに直接言える立場なら、それはもうマイナスじゃない、…限りなくプラスだ」

「だからその言葉は絶対に聞きたくなかった。…ずっとずっと敵意を持って欲しかった」

男「だろうね、それ故の安定しない口調だったんだろう」

「! は、はは、そこまで見破るか…」

男「慣れもまたプラスだ。理解されることは緩和と平和にも繋がる、すなわち相手側に有利だと思わせるぐらいなら…」

「常に煽るような刺々しい口調と、安定しない人物像を植え付ける」

男「うわさ話をすれば遠距離にて聞き取り、悪意を持ったまま会話すれば居場所まで分かる」

「──そう、それが『地獄耳体質』の正体だ」


ジジジッ ピチュン!


「まいった、降参だよ、降参だって」ヒラヒラ

男「あまり状況は芳しくないだろうしね、ああ、今でもさっきの要求は未だに可能だよ?」

「諦めたらどうかってか。そうじゃんねぇ、確かに『あの人』にとっても使い捨てだろうし…」

ジャリ

「今ココで無様に逃走したって誰もとがめやしないか、うんうん、確かにそのとおりだわ」

男「僕は追わないよ。それに転校生さんだって委員長だって、秘密が暴露されなければ危害は加えない」

「ハッ! どーだか、あんたや彼女がよくても──転校生、こっちはどうでるかわかったもんじゃない」

男「本当にそう思っているの?」

「え?」

男「……。いや、失言だった、忘れてくれ。君の顔も知らないしどこかで出会ってもすれ違うだけ」

「うん。この奇妙な暗闇での会話を最後に君とはお別れしようと思う、ああ、そうそう…」

「ここから無事に脱出するためには──そのテレビから伸びるコードを伝っていけばいいよ」スッ

男「コード?」ヒョイ

「とあるダクトから伸びてると言ったじゃん? 近くに出口があるから、あとは壁伝いに進んでいけばいい」

男「………………。ああコレか」グイグイ

「転校生と彼女にも伝えておいて。遠くでもいい、直接じゃなくても『名指し』で感謝の言葉を言えば止まるから」

男「了解した。…君はこれから何処へ行く?」

「さてね。放送室は壊されちゃったし、学園の外はほんとどうなってるか、わかったもんじゃないし」

「確かめる勇気だって無い。どこかでひっそりと生き延びてみせるよ、弱虫なんだ、あたしは」

男「そうか。なら頑張って」

「あんたこそ、よくわからない味方によくわからない敵を相手に頑張って」

男「一介の生徒に期待をし過ぎだと僕は思う」

「言えるだけましじゃん、あたしなんて、……期待ってコトバ自体すら忘れかけてるよ」

クル

「それじゃあ、さようなら。またどこかであたしの噂でもしたら耳にするぐらいならしてあげる」

男「期待してていいよ」

「…よく言う。うん、それじゃさよなら」スッ

男「──ああ、さようなら、唸り声」



男「そして【ありがとうございました、唸り声】」



               ─────ブツン!!!!


「…………」スタスタ

「…………」スタスタ

「………?」スタ…



「…………………………………………………え」ピタ

「ッ!!? ッ?? !!?!??!??」ゾクゾクゾクゾクッッ



「ぇ…嘘…嘘嘘嘘…」バッッ バッッ

「なんっ──どうしてッ、そんなコトあり得るわけッ!?」キョロキョロ



『ダウト。君は僕に嘘をついた』



「あり得ないあり得ないあり得ないッ! だってそれは──」ババッ

『崩壊寸前の山のように連なった廃棄物。果たしてそれは本当に崩壊寸前だったのか』

ザリッ

「──あっ…それはあまりにも…人として、ヒィッ!?」キョロキョロ

『暗闇でまず確認することとは? …それは壁だ、壁伝いであればいずれ出口に繋がるルートになる』

『極力避けたかった君は、僕の選択肢を脅して削ぎ、とある一択に絞らせたかった』

『それが中央、この地下室の真ん中を通させること、だと僕は思う』

(ぐッ…!! 何処だ、何処に──足音だけは聞こえるんだ、それを捉えて…!)

『だが、予測に反して僕は慎重だった。壁伝いに移動し始めて、君は異様に焦っていた』

『それでは自分がいる出口付近へ近づいてしまう。それに転校生さんの体質によって状況は一変した』

『負けの確定だ。暴露は阻止され、味方には捨てられ、君自身が追い詰められた。だから…』

「どこに、どこにいるんだ一体……!?」


『君は僕を[ピーーー]ことを決意した』


『──ダクトからコードが伸びたまま放棄されたテレビ、それは人知れず電源が落ちた』

『君はコードを手繰れば出られると言ったが……果たしてその先は本当に出口だったのだろうか?』

『その先は、そのコードの先はもしやすると──』

『──中央に入った大規模な亀裂、一年前の大地震で発生した、底の見えない穴へ繋がっていたのではないか』

(だ、駄目だ! 地下室内に足音が反響して場所が把握できない──もう逃げるしかッ)くる

『推論は否めない。正確性もこの暗闇の中では得られない、でも、そうであってもわかってしまう』

『この声、僕の声、そして【転校生さん】の声、……君は今、ちゃんと聞こえているのかな』

(どうしてどうしてどうしてなんでどうして!?)ダダッ

『いや聞こえやしない。転校生さんに送った作戦メール、実は委員長の方とは違いがあるんだ』

敵対視する程ではなかったら、本気で、心から思う気持ちで愛おしんで欲しい。

『そのプラス思考。もとい【相手を思いやる気持ち】、そう、これこそが君が一番危険視していたモノ』スッ

「ぐぅうううッッ……!!?」ズッシャアアア…

『本当の意味で地獄耳体質……だっけ? その体質発動を止めるトリガーだったからだ』

「はぁッ……はぁッ……やめ、やめて…!」

『君は嘘をついた。僕に対し名指しの感謝するコトバのみで体質は止められると言い切った』

『…けどねミス唸り声、僕は君が、あの放送室で、社会から隔離された異室で、人間関係を立っていたことを知っている』

『人とのかかわり合いをやめた理由は、人と人との人間味を恐れていたからだ』

『では己の噂を流す意味は? 関心をもたせれば放送室の密室を暴かれる、なのに君は敢えて噂されるよう奇行した』

『【人に噂され、体質によって会話を聞き取り、人とのかかわり合いを絶ちたくなかったからだ】』

『なぜ其のようなことをした? つまり君は密室に居ながら人間関係を諦められないほど臆病で、小さな人間であり…』


『けれど同時に、自分という人間と仲良くして欲しくなかった』


「…やめて、やめてよ…」ブルブルブルブル

『本当に体質から逃れるためには、誠実な思い──善意な感情が必要だった、つまり君はそれを聞き取れない』

『君は【プラスコトバを聞き取れない、聞き入れてしまえばなにも聞こえなくなる体質だったから】』

「ううっ…ひっぐ…ううううっ…」

『嘘をついんたんだ。僕を殺すために、君はどうしよもない嘘で人を陥れようと決意した』

『──だから僕も、その思いに応じて見ようと思うよ』スッ





男「殺すぞ」ボソリ




「ひ──ひぁ…っ!? あああああああああああああああ!!!?」

男「……………」

「ひっ、ひっ、ひぁ…ひぎっ、やだ! やめ、やめてよ、やだやだ…!!」ブルブル

男「聞こえるかい、唸り声」

「聞こえっ、聞こえてるっ!! ちゃんと聞こえて────」

男「………」

「──なによ、その目…っ…でも、その目で分かった…確信したわ、あんたの正体ってヤツ…!」ブルブル

「あ、あたしの体質…地獄耳体質は『糸電話』のように…悪意のイトで繋がり言葉を聞き入れる…」

「悪意的思考が、負の感情が向けられるほど聴力は強まり…会話すれば遠距離で居場所すら把握する…」

「言わば数値なの…悪意が高いほど良い…その逆は駄目…」

「善意や仲間意識、感謝の言葉で耳は遠くなる、でも数値が減少するだけッ! 一言で聞こえなくなるなんてあり得ない!」

男「………」

「でもッ、アンタの声は聞こえなくなった…それでまた【たった悪意の一言で聞こえるようになった!】」

「それでわかったわ…そう、そうなのね…あんたって人間は元より…」

「【最初から最後まで! その言葉に善意も悪意もこもっていない!!】」


シーン…


男「僕の声が聞こえるね、唸り声」グイッ

「ひいッ!?」

男「上っ面な優しさと根拠の無い褒め言葉。表面上より深層心理に深く介入する君の体質、実に憐れだ」

男「嘘を見抜ける。地獄耳体質は言葉の裏に隠された本質を見透かす、そういった体質なのだろう」

男「…でも」パッ

ドン!

ドン!

(え──なにし、押し出された、いや待って!? あたしの後ろって確か──)ぐらり…

男「僕は不器用なんだ。本心じゃなくても行動に矛盾が生じる…まるで、そうだね…」

男「好きな女の相手に虐めてしまう、イタズラをしてしまう男子のように」ガシッ

「ひぃいいいいいいいいいい!!!?!??」

男「まあ君のことなんて全く興味なんてないけど、しかし、一点だけは非常に興味があるんだ」

「後ろっ、あたしの足元ッ! なにもない! 後ろは地震できた穴が!」

男「知ってるよ。だから腕を引っ張って支えてる、落ちたくないだろう? 死にたくはないだろう?」グラグラ

男「答えてもらおうか。君個人の意見だ、返答次第では僕でも悪意ある言葉が吐けてしまうかもしれない」

「なにを言ってるの…!?」

男「僕の秘密。どこまで知っている」

「……!?」

男「吐け」スルルル…

「あぁっ!? あぁあぁあぁあ…っ! 知らない、知らない! あたしは何も!」ズルルル…

男「本当に? ウソを付くなよ、実は知っているんじゃないか?」シュルルルル…

「本当に! 本当よ! 何も知らない! 頼まれただけ、あの人にテープで脅すよう言われただけ!」

男「……」

「信じて、お願い! あたしは何も知らないの! 本当に本当よ!」ブルブルブル

男「そう、か」

(──チャンス、無事に切り抜けられると意識が浮ついて、あたしの耳が聞き取りづらくなってる)

(安堵の感情が言葉にこもり始めてる! 信用もまた信頼! その隙をついてこのまま、あんた諸共一緒に───)

グググ

男「うん。なら十分だ、ありがとう唸り声」パッ

「ぇ…………ぁ…」ヒュッ…

(なッ、何ィーーー!? こ、こいつ何ら躊躇いなく手を離しッ! ぁぁああああ!!)

男「転校生さん達そろそろかな、今のうちに脱出ルートを探しとくか」クル

(落ちる、落ちるっ! あぁッ! ──こ、こいつはゼロだったんだ、あたしが甘かった)

男「……」スタスタ

(プラスもマイナスもない。きっと敵味方関係なく、相手に向ける言葉に魂が少し足りとも宿っていない)

(偶然にも靴底でありんこを踏みつぶした以下の感情で喋ってる)

(なんてヤツ…まさか転校生よりも【優しい人たちを失う怖さよりも】…心底、こいつが一番恐ろしいなんて…)


ヒュウ…  ドシャアアア…


男「来たか」ピタ


ドッガァアアアアアアアアアアアン!!


転校生「──おまたせしやしたー! よっと、って暗!? 生きてますか男サン!?」シュタ

男「生きてるよ」ヌボォ…

転校生「ヒィイイイ!? いきなり真っ暗闇から無表情に現れないでくだサイよぉ!?」ビクッ

男「こっちは無事に済んだよ、君の方は──まあ良からぬ方法で突破できたんだろう」

転校生「本気出せって煽られましたからねぇ」ニヒヒ

転校生「──それよりも、男サン。そんな終わった話よりも今の話をいましょうよ」

男「なにかな?」

転校生「それ、なんです?」ビシッ


「……………」ちーん


男「放送室の唸り声。脅して色々と聞き出してた、でも無理したら気絶してしまったよ」スタスタ

転校生「ありゃ~…これはこれはご愁傷様ッス…」ナムナム

男「ちょいと後ろに崖があるぞ、落ちるぞ、ってイタズラに冗談で言ってたんだけどね…」

男「夜目が聞かなくなってたみたいだ。おや? 耳から血…鼓膜が破れてるのか、なるほどそれでか…」

男(カメラフラッシュに効果があったようだ。お互い様だ、テレビで夜目を下げてきた彼女も同類)


「男ぐぅうううん”! だいじょーぶぅううう!?」


男「委員長…」

転校生「一番アナタを心配してましたよ。私まで普段以上のやる気出ちゃいましたから」ニコニコ

男「…偽りのない言葉だと思う?」

転校生「疑うので? ま! 嘘でも真でも、土壇場じゃ言ったもん勝ちってな所あると思いません?」

男「……。ああ、そうだね」

転校生「それじゃーあ、みんなで楽しく帰還しましょう!」


第三話 終

~体育館~


転校生「よいしょーッッ!!」

バィーンッ! ガコォン!

委員長(わ、凄い。打ち付けたボールが天井近くまで跳ねた…鉄骨にはまってるし…)

転校生「おしゃーー! これでわたくしたちのチームが優勝ですよぉ! みんなーっ!」キャー


「あ、うん…や、やったね転校生さん…」

「すごいすご~…い…」

「これもはやバレーじゃないよ…」


転校生「ありがとう皆さんありがとう! チームスポーツってやっぱりステキ!」ダバーッ

委員長(楽しそう。でも私は額の怪我で見学、そして……)パカ


『体育の授業終わり、つまり今日の放課後にて、みんなで学園の外を覗いてみよう』

『放送室の唸り声──もとい眼鏡さんが教えてくれた状況を確認しに行くんだ』


委員長(世界が滅びかけている、なんて、到底信じられないことだけど…)

委員長「でも…」


~回想・放送室~

委員長「学園の外が滅んでる…!? んなのっ、まさか、ウソでしょ!?」

男「だから確認しに行こう。鵜呑みにするぐらいなら実際に目で見たほうが早いし」チラ

転校生「………」

男「味方であれ友達であれ、──こうまで疑われている人物が口を閉ざすなら、行動するしか無い」

転校生「おやおや? ミナサマのお役に立てる情報なら幾らだって滑らすつもりですよ?」

委員長「本当になにも知らないの…?」

転校生「ええ、なにも。放送室の唸り声──もとい眼鏡ちゃんが言う『学園外の危機』は初耳に近い」

委員長「……。似たような情報は知ってるってコト?」

男「………」ジッ

転校生「そうも睨まないでくだサイよ、事実を言ってるまでです」ニコニコ

男「じゃあ君はこう言いたいわけだ。世界は滅びかけてるかも知れない、でも原因は君ではないと」

転校生「滅ぶかもしれない可能性を知ってながらココに来た、が正しい言い分です」

男「ではその理由はなんだ? 自分のことじゃなければ口にするのはたやすいだろう?」

転校生「無論、体質ですよ」


世界は未だ常識はずれの力に対応しきれていませんし、脅かされてます。

指導者たる人物や機関、ルールや法律などもってのほか。


転校生「私は見てきましたし、聞いてきました。どれだけ世界が危うい状態なのかを知っています」

男「君が上下左右学園に来て二日目。もし眼鏡さんや君の言い分が正しいとするならば…」



眼鏡「──三日前から、世界は唐突に終わりを迎えた、ってことでしょ」



委員長「うっ…」ビクッ

眼鏡「なにも知らないけど原因は知ってて、上下左右学園に来た。…それ信じるなら結局そーなるじゃん」

男「そうだね。でも君は学園外が滅びる原因を転校生さんのせいだと言っていたけど?」

眼鏡「そらそうよ。今でも十分そー思ってるケド」

転校生「ハッハー! こやつめっ☆」ニコニコ

眼鏡「ハァ…あのさ…コイツのどこを信じればいいワケ? 教えてほしいんだけど?」ビシィッ

男「だから【行動】だ。みんなで実際に学園の外を己の目で確認しに行く、…今日の放課後で良いかな」

転校生「ええ。わたくしは一向に構わないですよ」ニコ

眼鏡「あたしも行く」

委員長「………っ」

男「委員長。無理はしなくていい、こうまで敵が明確なら君の安全の保証はできない」

委員長「で、でも…」

転校生「いざとなったらドンっとわたくしに任せても宜しいのですよー?」

男「ハッキリ言って、学園内では味方なんて居ないと思うんだ」

委員長「うっ…実はちょっと転校生さんも信用できない、かも…」チ、チラ

眼鏡「プッ! おもクソ敵視されてやんの」クスクス

転校生「えぇ~…わたくし信用皆無ですかぁ~…」しょぼーん


男「──この僕だって、君にとっては敵なのかもしれない」


委員長「……」ピク

眼鏡「…………」

転校生「そうですねぇ、取り敢えずわたくしにとって、黒幕よりアナタのほうが怖いですけど」クス

男「決めるのは君だ。誰も止めないよ、自由に考えていい。…答えは放課後まで待ってるから」

委員長「待って、男くん!!」バッ

眼鏡「……チッ」

転校生「?」チラ

委員長「私はこの学園の生徒、上下左右学園の二年B組の委員長!!」

男「うん。それはとっくに知ってる」コク

委員長「私は!! …私は…本当になにもできない、転校生さんや眼鏡さんや、君みたいに…」

委員長「誰かを敵視したり、貶めたり、戦ったり頑張ったりできるとは思えない…でもね…」

ギュッ

委員長「──見過ごせないよ、知ってて知らないフリなんて無理なんだ、きっと」グググ…

男「もしかしたら死ぬかもしれない。そんな可能性があり得るんだよ、それでもいいの?」

委員長「………」コク

男「そう、か」

転校生「男サン。彼女を図るのもう止めときましょうよ、放送室でわたくしを煽るほどの強情なお人ですしね」

男「流石は自分の死亡すらギャグで済ませる人間だ、容易く言うね」

転校生「安心してくだサイ。ここじゃあ人は簡単に死にませんよ」ニコ

男「? どういう意味?」

眼鏡「ああ、そっからはあたしが説明する。つーかアンタ等は黒幕について何も聞かなすぎじゃない?」


転校生「まあ勝てますし☆」キラリン

男「興味が無い」キッパリ

委員長(わ、忘れてた…)ガビーン


眼鏡「ハァ~…あんたら、凄いわ、うん、まーいいよ、変に状況を捉えられるより動きやすいだろーしね」

眼鏡「化物が言った【ここでは人は簡単にしなない】という根拠。それは黒幕の『体質』に関係してくるワケよ」

眼鏡「まず言っとくけど、これを言うのは味方になったワケじゃなく世界崩壊有無の根拠の一つとして捉えて欲しいから」

転校生「心得てますよ。命乞いには有益な情報を吐くべきです、実に献身的ですね」ニコニコ

男「転校生さん、少し黙ってて」

眼鏡「黒幕と直接面識してない。会話自体も一方的だし、けれど相手の明確な自信を感じた。あたしは学園外は滅びかけてると信じたよ」

眼鏡「でも、それはいい。世界が滅んだって関係ない、世界はここだけ。放送室内だけで十分だし」

委員長「………」

男「なるほどね。君は食料提供以外に黒幕に関わることを良しとした理由があった、と」

眼鏡「アレは勝手にやられたの、別に頼んでない。でもその通り、あたしは黒幕に加担することを認めた理由がある」

転校生「それはつまり、わたくしから命を護ることですか?」

眼鏡「いや、そうだけどそうじゃない」



眼鏡「───死んでも、生き返るの。例えグッチャグチャに滅茶苦茶にぶっ飛んでも、綺麗さっぱりになる」



委員長「生き、返る…!? それが黒幕の体質だっていうの…!?」

転校生「ホーーーーゥ…まさか本当にその通りだとは…なるほど、だからわたくしに喧嘩をふっかけた…」

男「……。君が地下施設で僕を巻き沿いにしようとした理由がそれ?」

眼鏡「…………」

男「転校生さんを敵視すれば『生き返りの恩恵』を受ける。だから加担した、それは分かったけれど──」

男「──僕達には当て嵌まらない。死んだらそれまで、結局は人は簡単に死なないとはならないと思うが」

委員長「お、男くん? まずは生き返りできる体質について話し合うべきじゃないカナ…?」

眼鏡「恩恵ね…フン、言っとくけどあたしが体質とやらに目覚めたのは半年前。詳細を話せるほど専門家じゃないの」

眼鏡「そーいうのはソッチ。化物の方が詳しいでしょーよ、さあ、どーいうことか言ってあげてよ」

転校生「……………」

委員長「なにか知ってるの……? 転校生さん?」

転校生「ええ、まあ。知っているといえば断言できるでしょうね、『知っている』と」チラ

男「……なにか?」

転校生「いえ。この事実を口にして無茶を───言い換えれば【特定の誰かが良からぬイタズラ】を思いつくのがあまり…」

眼鏡「………」

転校生「ここでぶっちゃけるのが得策ではないかと、思いまして」

男「何をどうの恐がっているのか、正直、興味がそそられる話ではあるけれど、とりあえず転校生さん」

男「この場は僕だけじゃなく、多人数での話し合いだ。騙し合いはよろしくないと思うけれど?」

転校生「言うじゃあないですか。この場まで絶妙な駆け引きで持ち込んだ貴方だからこそ言えたセリフだ」ニシシ

男「妙に持ち上げるね、キミがどうのこうののたまっても逃げられる立場じゃないことは十二分に理解できているとおもっているけれど?」

眼鏡「……くっく」

委員長「ちょっとッ!? ここでその不穏な空気は委員長さん的に見逃せませんけども!?」

男「転校生さん」

転校生「へいへい。わーかりやしたとも、みなのソウルフレンド転校生さんは正直にゲロってみせてみましょうとも」ヘヘー

転校生「──ようは体質が問題なのですよ、黒幕のね」スビジッ

転校生「他人を無条件で復活、敵味方関係なし、黒幕に賛同する意思など皆無となれば……」


転校生「奴は『展開』体質。つまり、黒幕の体質は上下左右学園全域に達していることになります」


~~~


委員長(──体質、体質ね……ぶっちゃけ今だにどこまで体質が凄いのかって、理解できてないところはあったりするよ)

転校生「どりゃーッッ!!」ズボァゴォーン


委員長「……。身近にすごい人がいるけどね…」

委員長(でも今一歩、世界の危機が体質によって引き起こされてる…学園外が滅んでるかも、なんて信じられない…)ギュッ

グググ…

委員長「だったら確かめなきゃね…自分の目で、ちゃんと…」

「あ。いいんちょー」

委員長「えっ! あ、うん! どうしたの?」

「そろそろ授業終わりだけど、せんせーいないから探してくれない?」

委員長「え…? あ、本当だ…さっきまで居たのに…」キョロキョロ

「こっちは片付けしとくから、おねがーい!」

委員長「うん、わかった。じゃあ行ってくるね」

~~~


委員長(見た人の話だと、体育倉庫に向かったって言ってたけど…確か教員室があったよね…)スタスタ

ガララー

委員長「せんせぇー! そろそろ授業が終わるんですけど、点呼の方を~~……」


しーーーーーん


委員長「あれ? 居ない?」

委員長(先に職員室に帰ったのかな? いやそれは流石に───むっ? 隣の倉庫から物音…)

委員長「…先生? そこにいるんですか?」

ギシッ ぎしっ ギシッ

委員長(……? なに? なにかが、軋しむ音? 別に地震で揺れてるわけでもないし───)


「あっ、あっ、やめっ、せんせっ、ヤダ!」


委員長「───ぇ」


「だめだってば──そとにきこえちゃ、~~~~~っっっっっ!!!!?」


委員長(えっ、こっ、この声……確かクラスの女子──いや、待って、違う、嘘、そんなワケっ)


「今更なに言ってんだ? 倉庫中に響くぐらい喘いでおいて」

「言わないでっ」

「ハッ! ハハッ! いいよそれ、燃えてくるじゃねえかオイ、どうだ、ほらっ?」

「~~~~~ッッ!!」


委員長(これってもしかしなくても──)


~~~

転校生「良いですか? わたくしの見解ですが、黒幕の仲間は学園内に存在します」

転校生「遠距離にて居場所や声を把握する体質、または他人を思うがままに操れる体質など───」

転校生「──【特定の条件下に落とし込まれれば、わたくしだって簡単に逃れられません】」

転校生「まずは仲間へご報告を。怪しい展開や非常識な人間が現れたら、即座に逃走を図ってください」

転校生「体質の驚異はその【非日常】の悪どさですからね」

~~~

「──助けて…誰か、あっ、あんっ! 助けて……!!」

委員長「…………」


「誰もこねーよ。いつまで期待してんだ? どうにもならないって事はお前が十分に理解してるだろ」

「──一生、このままだよ。この学園が終わるまでずっとずっと、オレのオモチャなんだよ!」

「アハハッ! ハハァーーーハハハッ!!」

「さて…」ズルッ

「…っ…」

教師「──ここまで便利だとはな…体質とやらは…正直びっくりしてるよ…」クククッ

「…くされ外道…ッ」

教師「うーん? なにを言う、お前だって愉しんでたろう?」

教師「何人ものクラスメイトの秘密をばらして、オレにリークしてたやつが言えたセリフじゃねーなぁ?」

「それはあんたが…ッ」

教師「それを誰が聞く? この隔離された学園で誰が見破れる? 他の女子共がボロボロにされて…」

教師「いまの地位に立ててるお前の言葉を、誰が素直に信じる?」

「……ッ…」

教師「誰も信じないッ! そうッ! そもそもオレの行為を誰一人として咎めることなどできやしないッ!」



教師「この力があればッ! いくらだって犯罪を犯しても裁かれないッ! アハハッ! どうだ、このオレこそ神だ……ッ!」



ガララーッ! バンッ!


教師「──あん?」

「私が認めない」

認めてはいけない。このような事実を、見過ごす訳にはいかない。


教師「お前…」

「話はすべて聞かせてもらいました、先生──この事は、ご報告させていただきます!」


委員長「例えッ! それが貴方の体質であってもッッ!!」


教師「…………」

委員長「覚悟してください」


ただの一歩たりとも、足を遠のかせる訳にはいかないのだ。


教師「確か君は、委員長、ああ、君はこのクラスの委員長だったね」

委員長「そうですが」チラ

「……!」

委員長(なんてひどい…)ダダッ

「わ、わたし…」

委員長「いいんです。今は服を着てください、ほら、はやく」

「………」

教師「違うんだよ、誤解なんだ。これは暴行などじゃなく、私と彼女は…しいていうなら…恋人関係でね…」

委員長「恋人関係? ならばなぜ、脅迫するような物言いを彼女に?」

教師「…聞いていたのか」

委員長「ええ。それはもうばっちりと、貴方が彼女を脅して関係を持ったこと、他の女子を脅して迫ったことも」

教師「へぇ…そう…」

委員長「聞いたことはすべて教師や周囲の人達に伝えます、覚悟してください」

教師「………」

委員長「さ、立てる? もう大丈夫──きゃあっ!!?」ぐいっ

教師「まあ待ってよ、少しはこっちの話しも聞いてくれよ」グググ

委員長「……!? 離しッ、て…!!」

教師「なにもそう焦らなくても良いだろ。【時間はたっぷりある】、まずはそう…誤解を解こうよ、ね?」

委員長「誤解!? だからそんなこと……あるハズないじゃないですか!?」

教師「本当にそう思ってるの?」チラ


「……、………、」


教師「一つずつだ、一つずつ君に質問をするとしよう。まず、誰が君に助けを求めた?」

委員長「私はちゃんと聞きました…!! 彼女が助けを呼ぶ声をきちんと…!!」

教師「そうか、それは済まないことをしたね」ニコ

委員長「な、なぜ貴方が謝るんですか…!?」

教師「それは嘘なんだよ。…互いに関係を深めていると、時折、私たちは擬似的に愉しんでいたんだ」

教師「疑似プレイとでも言おうかな? 彼女は別に本当に助けてほしいわけじゃない」

委員長「そんなコト…」チラ

「………」

教師「ほら正直に言ってご覧よ」

「……ごめ、んなさい…ちが、うんです…」

委員長「……!?」

教師「失礼な話だが、君は今まで男女の付き合いに経験はあるのかな?」ニコニコ

委員長「な、なんでそんなこと答えなくちゃいけないんですか…!?」

ずいっ

教師「これが大人の付き合い方だからだよ?」

委員長「ッ…」ビクッ

教師「しかし疑問に思うのもわかるし、この行為が犯罪なのも認めるよ」

教師「──私は大人だ、彼女は子供。教師と生徒、それは犯してはならない絶対的なモノだろうね」

教師「だが、誤解はしては困る。私と彼女はきちと愛し合い、男女の交際を行っている清いカップルだ」


ズズズ…


委員長「じゃ、じゃあ…私が聞いた悲鳴は…単なる誤解…?」

教師「断言はしないよ。私は誤解を解きたいだけだからね。君が思うなら、そうなのかもしれない」

教師「君は……このクラスの委員長だったね? 聡明な君なら、納得はそう難しくないと思うけれど」


ズズズゾゾゾゾゾ……


教師「───だから、君は私の言葉を信じてくれるかい?」

「……ッ…!?」ビクゥッ

教師「……。どうかな?」

委員長「わ、わたしは…」

教師「うん?」にこにこ

委員長「………」スッ

教師「……。どうやら理解してくれたようだね、ありがとう、でも納得しづらいのは分かるよ」クル


すたすた… ポン


「う…っ」

教師「彼女とは愛し合ってる。これだけは誤解なきよう願いたいんだ、ね?」

「……」ブルブルブル…


教師「そう思ってくれたなら、委員長、どうか【言葉にして言ってくれたら】ありがたい」ニコォ


委員長「そう、ですね」

教師「!」

委員長「私は誤解していたようです、先生。貴方の行為を……邪なコトだったと、勘違いをしてました」

教師「そうかい、それは本当に良かった…それじゃあ認めてくれるんだね…?」ズズズ


委員長「ええ。認めましょう、私は誤解していました」


教師「………」ニコォ

教師(───よしッ! よしよしよしよしッ! 認めたァ…その言葉…きちんと【俺の行為】を認めたなァ!?)ズズッ!

ズバァ!

教師(俺の体質は……己の行為を認証させた時ッ! この時を持ってして発動条件となるッ!)

グニュウウウウ~~~

教師(もうお前はこの【檻】から逃げられない…永遠と続く展開から一歩とも…骨の髄まで遊び尽くしてやるよ…)

委員長「………」ジッ

教師(オイオイオイ! なんだァ? その目は…今だに疑ってるな? 俺の行いを? だがもう遅いッ!)スッ

パァン!

「!!?」ビクゥッ

教師「ほら、いつまでそんな格好してるつもりだ? 同級生に見られてるぞ、早く着替えなさい」

「は、はい…」

教師(ククク…そら着替えはクソガキの後ろだよ、でも、わかってんだろうな? オイ?)

「っ…っ…」ブルブル

教師(【すでに誰も体育倉庫から出られない】、【こんな場所に居続ける違和感なんて沸かない展開だから】)

委員長「……先生は」

教師「? なんだい?」

委員長「手伝ってあげないのですか? 彼女、着替えるのもやっとな様子ですよ」チラ

「…っ……っ……」ブルブル

教師「ああ、確かに。いつもなら手を貸してあげるんだが、…困ったな、どうやら私も普段どおりじゃないらしい」スッ

委員長「……すみません。私が乱入してきたばかりに」

教師「良いんだよ。むしろ私こそ不注意極まりなかった、生徒に見つかるような場所で……」

委員長「…………」

教師「行ってしまう、なんて、…………!」ピク

教師(今……)バッ

委員長「……………」

教師(【コイツはなんて言った?】)



委員長「………………」ジッ



教師「キミ…」

委員長「先生。もう一度言っておきます、私は本当に意味で誤解していたんです」

教師「ど、どういう…」

委員長「驚いてたんです。だって、そう都合よく会えるとは思えないじゃないですか」

委員長「──昨日今日でそう何度も、貴方のような人に、こうも巡り合うなんて」

教師「な…なにを言ってるんだ…?」

委員長「だから私は勘違いしていた。貴方はまた私たちを脅かす存在、…転校生さんや眼鏡…さん、みたいに…」


委員長「この学園の平和を壊す存在が、私の思う悪の存在がやってきたんだんだって」


教師(は…? 急になにを……コイツ、頭おかしいのか……?)

委員長「……男くんや転校生さんは、私のこと、ちょっと勘違いしてるみたいだけれど……」スッ


「……うわぁあああ!!」ババッ


教師「!」

教師(し、しまった展開が進んで…! ぎ、疑問が残るが、そのままアイツに襲わせれば良いッ!)

教師(押さえつければあとはどうとでも───!)


委員長「私は……」シュッ

「わあああっ!! ……えっ!?」ガシッ


ギュルルッ! ブォンッ!


「ギャッ!?」パァンッ!

教師「………は?」

教師(うそ、だろ……今の投げ技…? 一本背負い!?)

委員長「ふぅー……」バサァ

委員長「うん。これでも私、実はけっこう図太くて、機転がきくオンナなんですよ」ニコ

「…っ…う…ぁ…」

委員長「ダメだよ。有段者を相手にダルダルな服装なまま近づいちゃ、投げてって言ってるようなものだから」

教師「お前……」

委員長「先生、タイプホルダーですよね。でも、別に悪の親玉さんに私を襲えって言われたわけじゃなく…」

委員長「…単純に私が偶然に、遭遇しただけ。だから勘違いしてました、だから謝りたいんです」


委員長「【彼に関わらない問題】なら、私が出しゃばっちゃっても良いですよね?」


教師「どういう意味──うわぁっ!?」

委員長「──投げますよ」シュバッ

教師「ぐぇぇッッ!? ぐごおッ!?」ブォン

ドッシャーン!

委員長「ふぅー、久しぶりの背負投げ。意外とうまくいけたかな?」


教師「っ……ッ……ッ!」パクパク


委員長「あ。その腰から落としました、かなり衝撃が脊髄にはいりました、なので結構、真面目に動いたら危ないです」

教師(ま、まったく身体が動かなッ、なん、だコイツ────)


委員長「大丈夫? へいき?」スッ

女生徒「う、うん…」


教師(【体質が発動していない?】【俺の行いに対して違和感を持ち続けてる?】)

教師(──馬鹿な! あり得ないッ! コイツは確かにこの場の違和感を認めたハズだッ!)


この俺の展開体質の『種付おじさん体質』はきちんと展開されている!


教師(い、いや…仮にもし…違和感があっても…大の大人に対して、暴力を働くことに躊躇いがなさすぎるだろ!?)グググ…

教師(なんだ、何かが違う…何かがコイツはおかしい…それはなんだ…探さなければ、この違和感を…)


ずりっ ずりっ


委員長「! 駄目ですよ、先生。動いたら酷くなりますよ、怪我が」

教師「り、理由を聞きたい…ゴホゴホッ…なぜ私を投げたんだ…?」

委員長「なぜって、そりゃあまあ、当たり前じゃあないですか、なにを言ってるんですかまったく」ハァ

委員長「───先生が、悪人だからですよ」

教師「あ、悪人!? どうして悪人だと決めつけた…!? 君はいったいなにを言ってるんだ…!?」

委員長「先生って黒幕の仲間でしょう? だから先生は女生徒を助けないんでしょう?」コテン

教師「…………は?」

委員長「恋人の着替えを恋人の先生が助けないなんて変じゃないですか。不自然じゃあないですか、先生」

教師「不自然…だから…」

委員長「そう、なので先生は悪人です。だから先生を投げるのです、以上です」

教師「………こッ……」


こいつ、頭が狂ってる。おかしいんじゃない、俺が間違ってるんじゃない。

前提が間違ってるんだ。この女の【違和感の認め方】が尋常じゃないほど異常なんだ。


教師(種付おじさん体質で違和感消失。俺は、女性との恋人と認識された、ハズ)


しかし、この認識(恋人)を持ってして、

──恋人の着替えを手助けしないだけで投げ殺しかけていいとまで断定する、その認識方。


教師(俺は一体、何者に体質を仕掛けたんだ……?)ブルルッ


悪人基準が、常人のそれじゃないッ!


委員長「先生?」ニコ

教師「ひぃぃ…ッ!?」

委員長「意外とタフなんですね。お腹ブヨブヨで、反射神経悪そうで、綺麗に受け身取られました?」

教師「わ、私は…」

教師「──私は違うぞッ!? 君の考える悪人、そう、恋人を間違っても蔑ろにする人間じゃないッ!!」

委員長「…これも、そういったプレイの一種だと?」

教師「その通りだ! き、君はその基準をきちんと定めてるのかい!? わからないだろう!? 知らないだろう!?」

委員長「ええ、わかりません」コク

教師「【では君は間違っている! その認識は、私を貶める身勝手な考えだ!】」


グニュウウウウウウウ~~~


委員長「……」

教師「ハァッ……ハァッ……!?」

委員長「た、確かに! そうですね…あなたの言うとおりです、私の…私の身勝手な考えでした、すみません…」

教師「……ッ」


効いている…ちゃんと効いている…


委員長「じゃあ、恋人ならちゃんと手伝ってください? ね?」


なのになんだその笑顔はッ! 怖いッ!

~~~

眼鏡「……」ぼぉー

転校生「おりゃーっ! 見ててください、この流星の如き──この煌めきッ! シューティングダスト!」


ズッ… ドォン!

ィィィィィイィイイイイイイ!! バッッッゴォ───

しーん…


「きゃッ──えッ…!?」

「なになになに!? どーいうことッ!? どーなってんのッ!?」キョロキョロ

「ボールが打たれた瞬間、この場から消えたよ!? 消し飛んだの!? ボールの残滓ごと!?」


眼鏡(目がしょぼしょぼする…これ、消し飛んだボールの残滓が粒子状になって周囲に舞ってる、とかかな…)ゴシゴシ

転校生「くァーハッハッハッハッ! ってね? 流星のごとく粒子にしちゃうっつー、あれでしてね、うまくギャグ思いつかなかったっつてね!」

眼鏡「……弁償だぞ、フツーに」ボソリ

転校生「そうでしょうかッ?! そうなった場合、やっぱり教師の方と親御さん同伴で謝罪会見勃発でしょうかッ!?」シュババッ ズドムッ

眼鏡「知らねーよ……つぅかコート真反対の壁際に居るやつの独り言、拾ってこっちくるんじゃねえよ…」ぐいぐいぐい

転校生「え~? 仲良くしましょうよ、今後も末永くソウルメイトとして世界の平和を掲げて暗躍跋扈していきましょーよ!」ニパー

眼鏡「うるせぇ…するか、絶対そんなこと…あっちいけって…」ぐいぐいぐいぐい


ちらり


眼鏡(まったく、疲れるっつーの。放送室出て授業出んのも久しいのに、いちいち化物がきて吐き気がヤバいわ)

転校生「? なんです?」ニコニコ

眼鏡(わかってんのか。あたしは敵、あんたらと立場が違うどころか【生きている場所さえ違う】ってこと、理解してるのか)カパリ

ぽち ぽちぽち

眼鏡(つーのに協力関係? あたし含め、放課後で学園外を見に行こうだって? …呆れる、緊張感がまるで無い)ポチポチ

転校生「こうも堂々と無視して携帯を弄られてしまうと、些かむかつきも湧きにくい! やりますね!」

眼鏡「悪魔。あんたはそれでいーわけ」

転校生「なんです? 急に? あと、わたくしに向けて『悪魔』と呼ぶには少々と役不足ですよ」

眼鏡「ハッ! じゃあなんだ、あんたは世界を救いに来た天使とでもいいたいのか?」ヒッハハ

転校生「おしいッ!」

眼鏡「……あん?」

転校生「天使とやんや、悪魔とよいしょと。世界全土と恐れ忌避され、畏怖を込め、数多と呼ばれまくったわたくしですが…」

転校生「断言します。わたくしは、その程度の存在意義でこの世に存在し、あなた達と行動を共にしておりません」

眼鏡「どういう意味だ……?」

転校生「【運命】なのですよ、これは。抗いようもない、世界のね」

転校生「運命とはつ・ま・り! カミサマです! 古今東西、津々浦々。どこもかしこも見たくても見えない未来調和はカミサマがご活躍!」

転校生「カミサマの意義は? それは運命の選択! わたくしは運命を司り、収縮し、瓦解させて、ここにいます!」

眼鏡「………」

転校生「不思議に思われます? そーでしょう! それが正しい! コイツは何を言っているのか分からない、それが人間としての正しい見解だ!」

バッ くるくるくる~~~

転校生「あなたは苦悩し、洗礼させ、そして答えを導き出す──尊き子羊なのですよ、わたくしから見たらね?」にしし

眼鏡「……頭おかしいのか、テメー」

転校生「ふふふ。良いのですよ、それが答え。わからないのがこの世界にとって貴女が無事に適応できているという証明なのですから」

眼鏡「お前がぶっとんでんのは元からだったが……話すたびにもっと酷くなる、奴らはよく無事にテメーと会話できてるな」

転校生「あ! それはわたくしも不思議なだなって思ってましてね、多分、彼らは世界にとって異分子なのでしょう。ええ、たぶんきっとそうなのです」

眼鏡「ハッ! カミサマのアンタが言うならそーなのだろうよ。で、その異分子様たちのことどう思ってるんだ?」

転校生「どうとは?」コテリン

眼鏡「はっきり言って邪魔だろ。あの目が死んでる男子生徒はまだ良い、だがもう一人は正直なところ───」


転校生「彼女を失うのが怖いと?」


眼鏡「──……」ピクッ

眼鏡「意味が、言っている意味がわっかんねーな化物。なんだ突然おい? 怖いだぁ? ふっざけんなボケナス」

転校生「まあまあ正直になられてもいいのでは? 聞こえにくいのでしょう? 彼女の声が、委員長の声は貴女の耳だと、とてもとても」クスクス

眼鏡「チッ、余計な勘ぐりするんじゃねーよ」


『  ごせないよ、  て知らないフ   て無理な   っと』


眼鏡「……一般人を巻き込むのかよ、テメーは」

転校生「巻き込むも何も、望み望んで先陣を切ったのは彼女らですよ? わたくしはそれに同行するのみに限られますから」

転校生「しかし、心配されるご気持ちは十分深く理解してるつもりです。ですが、それは杞憂です。無問題なのですよ、最初からね」

眼鏡「どうしてそう言い切れる、カミサマだからか?」

フルフル

転校生「運命の選択は全人類に備わっています。切り離すもくっつけるのも、その人次第で幾つにも別れていきます」

眼鏡「…なら、」


人も殺せるのか、あたしらみたいに。

転校生「………」

眼鏡「選択次第でどーにでもなれるんなら、いっそ手を出してしまった『あたしら』みたいになれるってか?」

転校生「ん~~???」

眼鏡「あん? んだよ、誤魔化す気か?」

転校生「いえ、いえいえ、正直なところ貴女がどう人を殺したかを考えてたもので──まあいいでしょう、それはそれだ」ピタリ


転校生「眼鏡さん。そんなのもうどうだっていいので、今を楽しみましょうか?」


眼鏡「……は?」

転校生「やっちゃったもんはシカタネーですし、考えても意味ないですし、ぶっちゃけ興味もさほどですし」

眼鏡「オイ!! それをテメーがいうか!? 完全にここ来る前に戦争バンバンやらかしてきただろーが!? こっちは聞いてるんだぞ、耳で!?」

転校生「人を殺す、運命選択でありえるでしょう。人を殺さず平和の道を、それだって十分あり得る世界戦でしょう」

転校生「世界は滅びかけてる。けれどそれは運命じゃない、定められた運命のはずがない」じっ

眼鏡「……ッ…」

転校生「望んで楽しみましょう。今は、学園外がどうなっていようと──一時の平穏と幸せを、噛み締めましょうよ」

眼鏡「…どうするってんだよ、外、見られたら終いじゃねーの?」

転校生「なら今の授業を楽しましょう! ほらほらほら、未だプレーは続行中! 細っこい身体に筋肉の未来投資を開始しては!?」ぐいぐいぐい

眼鏡「ちょッ!? こら…!? やめ…!?」ちらり


123対2


眼鏡「点数が頭おかしい数字になってんのに勝負できるワケねーだろ!?」

転校生「なぜか今日は調子よくってバンバン点数が入るんですよねー! れっつごー! 泣けようぐいす平安京ー!」

~体育館準備室~


女生徒「…あ、ありがとうございます」

教師「いや…別に構わんが…」スッ


委員長「…………」ジィー


教師(見られている。なんて冷たい目だ、まるで『犯罪者』を見るかのよう…)

教師(体質は発動している。ではなぜこうもうまくいかない? ──ならば更に陥れるしか、決着は無い)

教師(恋人(仮)の着替えを手伝っている今……彼女がこちらに対しアクションは見せない今、チャンスだとも言える)


そしてこれが【最後】のチャンスになるのか、自分の行い次第だ。


教師「上着を羽織りなさい」ススッ

女生徒「は、はい…」


もう心から確信した。彼女は、俺の体質から逃れる素質【可能性】がある。

経験上ありえないことだったが、認めるしか無い、己の未来のためにも……


教師(……クククッ…ああ、良いだろう…最初こそ焦ったが、体質が聞くことは証明済み…)ニタァァ

教師(不思議な事ながら、わかるんだよ。自分にはさらなる展開が起こせることを、なんとなくな…)クク

委員長「終わりましたか、先生」

教師「あ、ああ、無事に終わったとも。待たせてしまって済まないね、それとも監視してたのかな?」

委員長「ええ。もちろん、先生はだって黒幕のお仲間さんですから、たとえ恋人でもね」

教師「………? 親玉、と先程から言ってるけれど、それは一体どういうことだ……?」

委員長「この学園を陥れようとしつつ、けれど一定数は救おうとしている。みたいな不思議な人のことです」

教師「すまない。君が、本当に何を言っているのか分からないんだが」

委員長「───知らないんですか、黒幕のことを?」キョトン

知らない。誰だそれは?

そんな存在初めて聞いた、…学園に広まる噂話の一つにあっただろうか?

教師「俺は…私は、その黒幕と言われる者に関係してないし聞き覚えもないが…」

委員長「えぇっ!? で、でも先生って…体質…持ってますよね、きっと…そういった不思議な能力みたなの…」

教師「? なんだそれは?」

委員長「んんっ!?」

教師「不思議だな。君はいつそう思ったんだい? 私が変な力を持っているだなんて」

委員長「だって…私がそう思って…あれ? でもなんで急に私って、先生のことを疑ってしまった…?」


───なるほど、それが原因か。


教師(理解したぞ…出会っていたんだな…過去に、私のような体質を扱う人間に…私欲のままに行動する人間に…)

教師(彼女は明らかな特殊感性だ。一般人とは相容れなくなる程の経験を積んでしまい、結果、私との齟齬が起こった)


ならば話は簡単だ。警戒レベルを落とせるほどの、安易な解決方法。ククク。


委員長「わ、わたしは…」

教師「落ち着き給え。もしや君はとても怖い目にあったんじゃあないか? 常識を覆す、とても奇妙な出来事に」スッ

委員長「なんでこちらに近付こうとするんですか?」

教師「…………。いや、うん、待ってくれ、えーっと、そうだそうだ、とりあえずコーヒーをだそう、とりあえず落ち着こう」

委員長(いや、恋人同士が逢瀬を楽しんだ空間でお茶なんて。それに授業だってそろそろ───)

教師「私は気にしないよ」グニュウウウ

委員長「あっ、はい。ありがとう…? ございます…?」

教師「じゃあ気にせず、そこに座ってくれ。ああ、君も一緒にどうだい? それとも断るかい?」チラ

女生徒「えっ……あ、いやっ……はい…いただきます……」ストン

コポコポ コポコポ

教師(更に確信した。俺が最も恐れていた可能性、彼女が体質持ちだということ)カチャカチャ

教師(俺の予想を超える展開があった場合、私の『種付おじさん体質』は確実に露見する)


【奇妙な現象に対し言いくるめた際、相手は俺のことを疑わなくなる】


教師(…この効き目が悪かっただけだ。彼女は体質で対処したのではない)

教師(くくく。着実に一歩一歩と陥れていくぞ、クハハ…すでに君は『言いくるめ』だけじゃない…2つ目の発動も身に受けている…)


そして、これから行うのは3つ目の『体質能力』だッ!


教師(逃しはしない。決して、俺のユートピアを崩壊なんぞさせはしないのだ…!!)



第四話 終

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