【ガルパン】好きな人の話。 (12)

※「好きな食べ物の、二人の話。」の続きというかオマケのような話

※今回食べ物関係ないです

※とても短いです、ご了承下さい

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【アンチョビ編】

本を貸す、という行為が好きだ。
あまり理解はされない嗜好だと思う。

偏見かも知れないが、本が好きな人ほど、他人に本を貸すのを嫌がるものだと思う。
何故なら本ってのはすごくデリケートな物なんだが、人によって扱いに天と地ほどの差があるからだ。

読む時はブックカバーをかけて、ページに折り目がつかないように大切に大切に読む人も居る。
背表紙が陽に焼けたりしないように、本棚の位置にこだわる人も居る。

かと思えば全く頓着しない人も居る。
平気で食べ物を零したりな。

ペパロニに漫画を貸した時の事。
読みながら眠ってしまったらしく、思いっきり折り目が付いて返ってきた。
こういうリスクがあるから、本好きな人は、あまり他人に本を貸したがらない。

スミマセン姉さん新しいの買って返しますと平謝りのペパロニに対して、私は憮然として次は気を付けろよと言ったが、実は内心喜んでいた。
ペパロニが折り目を付けた本。
これはこれで、世界にひとつしか無いものだからだ。

この折り目は、ペパロニが本を読みながら寝た証拠。
私がアンツィオを卒業しても、この本は私の手元に残る。
折り目を見るたびペパロニを思い出す事になるんだ。
それが嬉しい。
まあ、だからと言ってよくぞ折り目を付けてくれたと褒めるのもなんだか違うので、ポーズとしてとりあえず怒るけどな。

痕跡本と言うらしい。
そのまんま、痕跡のある本のこと。
折り目に限らず、書いた本人にしか分からないメモ書き、栞に使ったノートの切れ端、果てはぺしゃんこになった羽虫等々。
その本にしか無い痕跡に興味を持つという嗜好。
調べてみると痕跡本専門の古本屋もあるそうで、色んな世界があるなと感心する。

私にとって、本についた痕跡は汚れじゃなく、謂わば歴史なんだ。
というわけで今、私の本が一冊、誰かさんの部屋にお出掛けしている。

一度、あいつに痕跡本の話をした事がある。
それを聞いたあいつは、じゃあ何か貸してくれと言った。
私の嗜好を理解してくれたのかは定かじゃないが、私の嗜好に付き合ってくれたのは確かだ。
不器用だが嬉しい事を言ってくれる。

丁重に扱えよ、と言って本を貸した。

あいつは痕跡を残すような本の扱いをする奴じゃないとは思うが、あの本があいつの部屋に滞在したというだけでも私は嬉しい。
ああ、カレーの匂いでもついて返ってきたら面白いかもな。

私の、一番のお気に入りの恋愛小説。

多少回りくどいが、あれは私なりのラブレターだ。
あいつがその事に気付くとは思えないし、気付かなくてもいい。
本が返ってきたら、それだけで思い出になるからな。

私だけの思い出になれば、それでいい。

【アンチョビ編終了】

以上です

次回、いつになるか分かりませんが大洗の車長会議のシチュエーションで書きます
それぞれの好きな食べ物の話で

よろしければ、そちらもお付き合い下さい

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